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公衆衛生における R&Dの危機に終止符を

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公衆衛生における R&Dの危機に終止符を
122
122
Oxfam Briefing Paper!
!
Oxfam Briefing Paper!
!
Ending the R&D
Ending
the
R&D
符を:
Crisis in Public
Crisis
in
Public
Health:
Health:
Promoting pro-poor
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止
貧困克服の医療イノベーションを促進しよう
発展途上国の人々が罹患している病気の多くは、先進国とは異なり大変な
苦しみと深刻な健康状態をもたらしています。医療イノベーションは、新
薬、ワクチン、診断技術の開発を通じて、これらを克服する可能性を持っ
ています。しかし、実際に開発されたものはごくわずかで、この危機を解
Promoting
pro-poor
medical
innovation
medical innovation
決するための活動は不十分なのが現状です。研究開発(research and
development: R&D)への資金援助は不十分で、またドナー同士も協調
性 に 欠 け て い ま す。 さ ら に 資 金 援 助 は 知 的 財 産 権 ( i n t e l l e c t u a l
Diseases that disproportionately affect the developing world
property: IP)の枠組みに大きくとらわれています。適切な医薬品やワク
cause immense suffering and ill health. Medical innovation has
チンを人々に届けるには、現在のR&D体制の改革と、有望で新しいアプ
the
potential
deliver new medicines,
and
Diseases
thattodisproportionately
affectvaccines,
the developing
world
diagnostics
to overcome
diseases,
yet few treatments
ローチに積極的に投資していくことが必要です。
cause immense
sufferingthese
and ill
health. Medical
innovation has
have
emerged.
to resolvevaccines,
the crisis and
are
the potential
toCurrent
deliver efforts
new medicines,
inadequate:
financing
for research
and development
(R&D) is
diagnostics
to overcome
yet
few treatments
3) 津谷
翻訳 李
博 1) 柳平
貢 2) 張 these
転夢 1)diseases,
米良 彰子
喜一郎 4)
insufficient,
uncoordinated,
andtomostly
tied
tocrisis
the system
have emerged.
Current efforts
resolve
the
are of
intellectual
rights.
Delivering
appropriate
medicines
inadequate:property
financing
for research
and
development
(R&D) is
1)東京大学大学院
and
vaccines
requires
reforms
to
the
existing
R&D
system
insufficient, uncoordinated, and mostly tied to the systemand
of a
2)東京大学薬学部
willingness
to invest in
promising
new approaches.
intellectual property
rights.
Delivering
appropriate medicines
3)オックスファム・ジャパン
and vaccines requires reforms to the existing R&D system and a
willingness to invest in promising new approaches.
4)東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学
!
!
目 次
page
概要 1
5
2.IPモデルでは発展途上国の疾病負担を解決することはできません
7
3.R&Dには巨額の資金調達が早急に必要です 1.はじめに
10
4.IPにとらわれたR&D体制では、成果限られています
12
5.R&Dの資金調達は、一般参加性型で、透明的で、協調的でなければなりません 20
23
7.発展途上国のR&D能力を向上させよう 27
8.グローバルR&Dフレームワークをつくろう
31
9.結論と提言 36
注(Note) 38
6.IPの枠組みを超えて
参考文献(Reference)
英日用語集(glossary in English and in Japanese) 51
55
概 要
発展途上国のヘルスニーズを満たすための新しいワクチン、診断技術、医
薬品などの開発に使われている資源は不十分です。世界で最も貧しい90%
の人々を苦しめている疾患のために使われている金額は、世界中の医学的
研究費のわずか10%以下です。これは「10/90ギャップ」と呼ばれていま
す。発展途上国の死亡や罹患の原因を予防し、治療するための適切な医薬
品の不足は、悲惨な結果をもたらしています。毎年50万人もの人々が、
「見捨てられた熱帯病」(neglected tropical disease: NTD)によって亡く
なっています。豊かな国では十分な治療が施されている結核のような疾患
によっても、毎年200万人が亡くなっています。また女性や子供のような
特別なニーズを持っている患者にとって、既存の医薬品が適切でないこと
があります。
貧しい国々で流行している疾患のR&Dの不足には、いくつかの理由があ
ります。ドナー国政府や発展途上国は、これらの疾患のための研究に十分
な資源を投資していません。「見捨てられた疾患」(neglected disease:
ND)に対する2007年のドイツの資金援助は、わずか2,070万ユーロでし
た。これはドイツ全体の研究予算のわずが0.12%です。
貧しい国の市場では金銭的な見返りが少ないので、発展途上国の疾患の
R&Dを製薬企業は優先していません。また1995年のWTOの「貿易関連知
的財産権協定」(Trade Related Aspects of Intellectual Property Rights:
TRIPS協定)では20年間の国際的な特許保護が採択されましたが、これは
発展途上国のヘルスニーズを満たすための医薬品研究開発を促進する事に
失敗しました。そればかりか製薬企業に医薬品の寡占を許し、途上国に
とって負担しきれない薬価をもたらしています。
1999年から2004年にかけて、世界のR&Dから誕生したNDの新薬はわずか
3つでした。これははなはだ不十分です。進展を阻む主な障壁は以下の3つ
です。
• 不十分な資金援助:世界中の生物医学的研究と製品開発に10万ドルが使
われているとすると、そのうちNTDの研究に使われているのはわずか1
ドルです。そして製品開発パートナーシップ(Product Development Partnership: PDPs)基金のうち、豊かな国の政府から提供を受けているのは
わずか16%です。
• インセンティブ・メカニズムについての大胆で創造的な思考の欠如:事
前買取制度(Advanced Market Commitment: AMC)、優先審査保証(Prior1
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper 122, November 2008
ity Review Vouchers: PRV)、PDP、オーファンドラッグ・プログラム
(Orphan Drug Program)のような新しいフレームワークは重要なR&Dの
支援のために奨励されるべきであり、新しい考え方に対し開放的である
証拠でもあります。しかしこれらはみな、広範囲に実施される前に留意
しなければならない欠点を抱えています。
• R&Dに関する協調性の欠如:国内や国家間に協調性がないので、リ
ソースの利用が非効率で重要なニーズが無視されています。
発展途上国を苦しめている疾患のR&Dを改善するための新しいアイデア
が、最近出始めています。パテントプール(patent pool)はIPを一括管理
し、第三者がライセンス料を支払う事で特許を利用できる仕組みです。こ
れは適切な処方や固定用量配合剤(fixed-dose combination)に関する後続イ
ノベーションを促進します。さらに、ジェネリック医薬品の価格競争を促
し、薬価を引き下げることができます。賞金ファンド(prize fund)は、公
衆衛生への製品の貢献度に応じて、発明者に賞金を与える制度です。これ
はIP財産という既存のフレームワークをサポートするだけのインセンティ
ブを超え、R&Dインセンティブの幅を広げます。R&Dの費用を回収する
ための高額な価格設定が必要がないので、この賞金制度は医薬品アクセス
の向上に特に効果的です。
インセンティブ作りに加え、発展途上国の研究機能の強化によって医薬品
開発費用の削減ができるかもしれません。また、これによって新たなイノ
ベーション中心の形成や、医学R&Dに関するより多くの医療問題の克
服、より公平な国家間のR&D費用の分担などが可能になるかもしれませ
ん。この投資によって現地や地域規模の製造および監督機能、臨床試験能
力、科学的な専門知識の発展が見込まれます。
これらの話題が注目を集めているのは望ましいことです。WHOを通し
て 、 「 公 衆 衛 生 ・ イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ I P に 関 す る 政 府 間 作 業 部 会 」 ( I n t e rGovernmental Working Group on Public Health, Innovation and IP:
IGWG)が発足しました。これは自分たちのヘルスニーズがより反映され
るようなR&Dのグローバル・システムを望む途上国の要望に応えるため
です。IGWGは2008年5月、「グローバル戦略と行動計画」(Global Strategy and Plan of Action)を作成しました。これはイノベーション達成への
新しいアプローチのためのロードマップとして機能し、また既存の技術が
公平に共有されることを保証するものです。
こうした努力の集積によって、グローバルR&Dフレームワーク作りが進
むでしょう。このフレームワークによって、R&D向上の取り組みに協調
性が生まれる可能性があります。また発展途上国がイノベーションに貢献
2
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
するための後押しにもなるでしょう。このレポートでOxfamは、グローバ
ル・フレームワークと連携した「R&Dのためのグローバル基金」(Global
Fund for Research and Development)が、発展途上国の公衆衛生に重くのし
かかっている疾患のR&Dを向上させるために即時的で積極的な役割を演
じる事ができると述べています。このような基金の資本は、各国の財力に
比例した出資によって賄われるでしょう。
人類の健康を向上させるべくグローバルR&D編成の方法を模索すること
は、究極的には全ての国の共同の責務です。支払不能を理由に、世界の大
多数の人々から効果的な医療へのアクセス権を奪ってはなりません。
Oxfamは以下の6点を提案します。
1. WHOは多方面の機関と協力し、医療分野の「R&Dのためのグローバル
基金」を設立するにあたってリーダーシップを発揮すべきです。このグ
ローバル基金はR&Dフレームワークと連携するべきです。この基金に
対しGDPに応じた寄付を全ての国がすべきですし、また慈善セクターの
参加も望まれます。課題の優先順位の決定には、全ての協力者が関わる
べきです。
2. 新規化合物の発見や新薬開発に加えて、発展途上国や、その中でも女性
や子どもといった集団のニーズに対応するような処方についても全ての
国家、慈善財団、製薬企業、製品開発パートナーシップによるR&Dの
議事項目に加えてゆくべきです。
3. 例えば、賞金ファンドは特許制度の欠陥を回避する事ができます。パテ
ントプールは特許制度がイノベーションの障壁になるのを防ぎます。特
別なニーズを満たせるかという観点で、こうした新しいR&Dインセン
ティブに対しドナーや発展途上国が実施と評価をしていくことが必要で
す。結核賞金ファンドとUNITAIDパテントプールは、創造的なフレー
ムワークのさらなる展開のためのよい見本となっています。
4. ODAや自国の研究予算を通して、ドナー国は発展途上国を広く苦しめ
ている疾患のR&Dへの援助を拡大してゆくべきです。発展途上国は自
国の予算をR&Dに優先的に割くべきです。全ての国はR&Dフレーム
ワークを通じて、大学や研究機関、民間資金と協調しながらR&Dに貢
献してゆくべきです。こうしたフレームワークは、「国際保健パート
ナーシップ」(International Health partnership: IHP)のような発展途上国
に対するヘルスエイドの合理化への第一歩となるかもしれません。
5. 民間の慈善財団を含むドナーは、R&Dに対する資金援助の優先順位を
決定する際に、国際的な合意がとられた基準にしたがわなければなりま
せん。具体的には、R&Dに対する資金援助の質と量に関する情報の透
3
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
明性や、関連する情報へのオープンアクセス、途上国の学界や研究機関
の萌芽の育成、技術移転の支援、途上国の持続可能な臨床試験能力開発
の長期計画、意思決定における発展途上国と市民社会の参加、製品の
オープンライセンスを含む開発製品のアベイラビリティなどが資金援助
の際に確保されていることが重要です。
6. 発 展 途 上 国 の 疾 患 に 適 応 し た 新 し い ヘ ル ス ニ ー ズ に 応 え よ う と し た と
き、IP制度には欠陥があることを、製薬企業や大学は認識しなければな
りません。また企業や大学は専門知識や化合物ライブラリーへのアクセ
ス権を提供し、PDPを支援しなければなりません。さらにNDに取り組
む単独または共同の研究センターを展開し続けなければなりません。
R&Dの過程で生じるコストを削減し、効果のある新薬をいち早く患者
に届けるために、ジェネリック企業、バイオテクノロジー企業、学界は
早期開発段階から協力するべきです。
4
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
1. はじめに
科学イノベーションは数百万人の命を救い、苦痛や貧困を和らげることが
できます。しかし、貧しい人々のヘルスニーズを満たすような新しいワク
チン、診断方法、医薬品の開発のために使われている資源は不十分です。
1990年に、ある画期的な研究によって「10/90ギャップ」が指摘されまし
た。これは世界で最も貧しい90%の人々を苦しめている疾患に割かれた金
額が、世界中の医学研究費の10%以下であるというものです1 。
貧しい国で蔓延している疾患のR&Dが不足している原因は、2つありま
す。それは新製品を購買する能力が途上国にないことと、そうした疾患の
研究に投資しようとする自主性が先進国政府にないことです。製薬企業に
とっても、そうした疾患に取り組むにあたって歳入面で十分なインセン
ティブがありません。一方で製薬企業は「ブロックバスター」
(blockbuster)と呼ばれる、製品当たりの年収が100万ドル以上の医薬品の
開発に力を入れています。
初めて10/90年ギャップが指摘されてから20年近くが経ちましたが、未だ
にこの問題は解決していません2 。世界の生物医学的研究と製品開発に年
間10万ドルが使われているとすれば、そのうち「見捨てられた熱帯病」
(neglected tropical diseases: NTD)のR&Dに割かれているのはわずか1ド
ルです 3 。1975年から1999年にかけてのべ1,393の新薬が開発されました
が、そのうち「見捨てられた疾患」(neglected diseases: ND)の治療が目的
のものは1%に過ぎませんでした 4 。R&Dの資金規模の絶対数は増加傾向に
あるものの、状況は少しも変わっていません。実際、1999年から2004年
にかけて世界のR&Dから生まれたNDの新薬はわずか3つでした 5。
この議論で一つのポイントとなるのが、WTOによる1994年の「貿易関連
知的財産権」(Trade Related
Aspects of Intellectual Property Rights:
TRIPS)協定の採択です。これは最貧国を除く全ての国に、製薬産業を含
むすべての技術分野で、20年間の特許保護を含むアメリカスタイルのIP制
度の導入を求めたものです6 。
多国籍製薬企業の後押しによって先進国政府の主導で導入されたTRIPS協
定は、先進国では不完全ながらもイノベーションの活性化に機能しまし
た。しかし途上国のニーズを満たすことには明らかに失敗しています。
2006年の報告書”Public Health, Innovation and Intellectual Property
Rights”の中で、WHOは「市場面のインセンティブが不十分」だったため
に「途上国におけるTRIPS協定の実施が、製薬業界のR&Dを著しく促進す
るエビデンスはない」という結論を出しました7 。その上、IP保護は途上
5
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
国のジェネリック医薬品の価格競争を妨げ、医薬品価格の高騰を引き起こ
し、数百万人の貧しい人々に悲惨な結果をもたらしました。
途上国の疾患に対する医薬品不足は、人類の健康に対する権利の実現を脅
かし、「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals: MDGs)の
達成を妨げています 8 。長期的に見れば、NDにますます感染しやすくなっ
ている途上国にも影響がでるかもしれません 9 。この報告書では、政府や
製薬企業が途上国の疾患(WHOによってType!とType"に分類されている
疾患)に対するR&Dを刺激するために今までに何を達成してきたのかを再
確認します 10 。途上国の疾患のR&D資金は増加傾向にあるものの、その額
は依然として不十分です。また、しばしば非協調的で限られた成果しか見
込めないような取り組みを支援してしまっています。
しかし、資金面の問題を解決するだけでは不十分でしょう。厳格なIP規制
の義務づけを基本とするフレームワークは、途上国の疾患に対する医薬品
の価格高騰と不足を招いています。これは援助金のみで「解決」する問題
ではありません。途上国は先進国と共に責務と恩恵を平等に分かち合う対
等なパートナーとして、イノベーションのグローバル・フレームワークに
参加する新しいアプローチの準備ができています。このレポートでは、よ
り持続可能で実行可能な方法で人類の健康を改善していくための、R&D
の新しいモデルを模索します。患者の支払能力に関係なく、人類の健康を
改善していくようなグローバルR&Dを確保する方法を探していくべきで
す。これは、究極的には全ての国の責務です。
6
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
2. IPモデルでは発展途上国の疾病負担を解
決することはできません
過去10年にわたって、OxfamはIPルールが途上国の医薬品アクセスを阻害
しないように全世界で市民社会とともに活動してきました。
2001年11月に全てのWTO加盟国によって採択された「TRIPSと公衆衛生
に関するドーハ宣言」(Doha Declaration on TRIPS and Public Health)の中
で、公衆衛生はIPの権利の施行より常に優先されるべきであることが宣言
されました。しかし2001年以降も先進国政府と製薬企業はドーハ宣言を無
視し続け、自由貿易協定や一方的な圧力によって、途上国にいっそう厳格
なIP保護を押し付ける強引な計画を押し進めました11 。
専らIP制度に基づくR&Dフレームワークでは、主に途上国で必要とされ
ている医薬品の開発に関して、製薬企業の十分な経済的インセンティブを
与える事はできません。実際多くの製薬企業で、感染症に関するR&D部
門の縮小または閉鎖が続いています 12 。その上、IPそのものがしばしばイ
ノベーションの障壁となりえます。「特許のいばら」(patent thicket) 13 は
研究者の新規治療法や新規技術の開発能力を大きく制限します 14 。先進国
においても、R&Dに対する既存のアプローチが次第に立ち行かなくなっ
てきています。というのも、ほとんどの製薬企業が供給ルートに自身の医
薬品を供給できていないのです 15。
統計によれば、R&Dの不足は、感染症の予防と治療に必要な多くの医薬
品、診断技術、ワクチンが不足あるいは全く存在しない事を意味しま
す 16 。この事が途上国の人々にもたらす結果は悲劇的です。アフリカでは
主な死因が未だに感染症であり、女性や子どもを中心として年間数百万人
が亡くなっています 17。「見捨てられた疾患」(neglected tropical diseases:
NTD)が原因で年に50万人が亡くなっていますし 18 、NTDによる慢性的障
害や社会的差別でさらに数百万人が苦しんでいます 19 。安全な妊娠や出産
のための医薬品の供給ルートは大きく抑制されています。1980年から
2007年にかけて、前臨床から事前登録段階の審査をうけた医薬品はわずか
17でした。それに対し、同じ時期に審査を受けた心疾患に対する新薬は
660でした20 。先進国では抑制されている結核のような疾患でも、途上国
では依然として猛威を振るっており、ヘルスクライシスの一因となってい
ます(Box 1参照)。
7
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
Box 1: 結核の診断技術、ワクチン、医薬品の深刻な不足
結核によって、年間200万人近くが亡くなっています。毎年50万人が多剤
耐性結核に罹患し、13万人以上の死者を出しています 21 。2006年のある調
査によれば、結核治療薬に対する耐性は調査した79ヶ国すべてで見つか
り 22 、そのうち症例数の半分を中国、インド、ロシアが占めていました。
さらに、HIV検査陽性の人のうち3分の1が結核にも感染していました 23。
成人に対して免疫を付与する効果はないものの、幼児に限定的な効果のあ
る現行の結核のワクチンが世界で初めて導入されたのは1923年のことでし
た。また、最近使われている第一線の治療方式が開発されたのは1960年代
のことです 24。
IPに基づいたR&Dフレームワークは、女性や子どもといった特定の集団
に対する多くの医薬品の不足をもたらします。これは特許保持者にとっ
て、そうした医薬品の開発を優先する経済的なインセンティブがほとんど
ないためです。そのため、サハラ砂漠以南のアフリカではHIV陽性の半分
以上が女性であるにも関わらず、抗レトロウイルス薬が妊娠中や授乳中の
女性に与える影響について取り組んだ研究はほとんどありません 25。
安全で実用的な製品に対する子ども達のニーズは、ほとんど無視されてき
ました。この原因の一つに、子ども達が構成する市場では企業の採算がと
れないことが挙げられます。生理機能が未熟であるために、子ども達には
年齢や体重に応じた処方が必要になります。また、処方は投薬者にとって
実用的なものでなければなりません。しかし子ども達に対する臨床試験は
これまで行われてきておらず、したがって年齢に応じた適切な投薬量も確
立されていません。一部の専門家の計算によれば、子ども達に投与されて
いる医薬品の実に60%以上が、子ども達への使用許可がないまま使われて
いるそうです 26。
R&Dの不足に対する懸念は、特にWHOにおいて、発展途上国を行動に駆
り立てました。2006年から2008年にかけて、「公衆衛生・イノベーショ
ン・IPに関する政府間作業部会」(Inter-Governmental Working Group on
Public Health, Innovation and IP: IGWG)は途上国のニーズをより反映する
ようなR&Dフレームワークの必要性を訴えました 27 。幾多の交渉の末、グ
ローバル戦略とほぼ完全な行動計画が決まりました 28 。これはIPを重要な
仕組みとして捉えてはいるものの、一方でWHOや全ての国々に対して、
イノベーションを届ける新しい方法を認識するよう呼びかけ、さらには既
存の技術の公平な共有を呼びかけたものです。
8
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
国と製薬会社はIGWGの裁定に耳を傾け、IPに基づく体制の上を行く、新
しいR&Dのアプローチを実施していかなければなりません。また、途上
国がR&D能力を向上させていく事も重要です。国や製薬会社が導入して
きた改善策の数は未だ少なく、R&D基金の増加、実施策の改善、知識共
有の円滑化を途上国の医薬品供給を確保しつつ実施していくためには、ま
だまだ多くのことが必要です。
9
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
3. R&Dには巨額の資金調達が早急に必要
です
途上国の疾患に対する医薬品開発のためには、今まで以上の公的資金援助
が必要です。これは全ての先進国と途上国の政府の責務です。
R&Dに対する公的資金援助には、「プッシュ」(push)と「プル」(pull)が
求められます。プッシュとは、新規の適応薬に繋がる基礎研究や、医薬品
を市場に導入するまでの経費を援助することです。それに対し、プルとは
民間セクターや「パブリック-プライベート連合」(public-private entity)に対して資金面や市場面でのインセンティブを与えることを意味しま
す。
製薬企業が出す革新的な医薬品には、公的資金援助をうけた研究が元に
なっているものが多くあります。米議会が2000年に出した報告書によれ
ば、1965年から1992年にかけて導入された21の革新的な医薬品のうち、
政府援助を受けた研究から得られた知識や技術を応用したものは15でし
た 29。
一刻を争う需要にも関わらず、ドナーの失敗は惨憺たるものです。途上国
を優先したR&Dへの資金援助が確認できる先進国政府はほとんどなく、
したがって彼らの功績を評価することはできません。Families USAという
健康擁護団体は、この分野におけるアメリカ政府のR&D予算を計算しま
した。そして、途上国に蔓延している疾患に対し成果をだすためのプッ
シュの増額には、いくつかの政府機関の予算の増額が必要である事を指摘
しました。例えば、NIHには2009年度予算の6.7%の増額が必要です。ア
メリカの資金援助の水準が低い事は事実ですが、EUや日本からの支援は
さらに低水準です。国境なき医師団(MSF)は、世界第3位の経済大国であ
るドイツが「見捨てられた疾患」(neglected disease: ND)に対して2007年
に行った資金援助はわずか2,070万ユーロで、これはドイツの研究費の総
額の0.12%にとどまることを指摘しました。
先進国政府が支持する既存のR&D体制も、深刻な資金難の状態にありま
す。公共セクター、慈善財団、製薬企業の持つリソースを組み合わせるこ
とで新規医薬品・ワクチン開発を目指す多くの製品開発パートナーシップ
(Product Development Partnership: PDP)が、過去10年の間に発足しまし
た。PDPにはその効果を制限するような特定の欠陥があるものの、NDの
R&Dをもたらす一つのアプローチとして支持されるべきものです。しか
し先進国政府からのPDPに対する資金援助は16%に留まり、これは慈善財
団とは対照的です。実に資金援助の79%が、ゲイツ財団によるものです。
EUを代表して主な資金援助を行っている欧州委員会は、わずかながら支
10
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
援を行っています。しかし、ドイツのように一切援助をしない国もありま
す 30。
このようなPDPの放置は、特に都合の悪いタイミングで起こっています。
薬効を見定めるための臨床試験を行わなければならない64の候補化合物に
ついて、PDPはパイプラインを持っています。これらの臨床試験を完遂す
るためには、巨額の資金援助が必要です 31 。NDに対するR&Dへの資金援
助不足が起こっている一方で、先進国政府は、自国の製薬企業に対して豊
かな国をターゲットにした薬剤の開発を促進するための資金援助を増加さ
せています。いくつかの先進国政府は、R&Dに対する支援金額を、特に
プッシュの形で増やしています。これは新薬開発のための基礎研究に対す
る 援 助32 、 お よ び 製 薬 企 業 と 学 術 機 関 の 連 携 強 化 か ら 成 り 立 っ て い ま
す 33。
11
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
4. IPにとらわれたR&D体制では、成果は
限られています
近年、援助資金を貧困撲滅イノベーションに利用するための新しいR&D
モデルが提案されてきました。これは事前買取保証(Advanced Market
Commitments: AMC)、優先審査保証(Priority Review Vouchers: PRV)、製
品開発パートナーシップ(Product development Partnership: PDP)、税額控
除(Tax Credit)の4つです。Oxfamはこれら4つを全て支持していますが、
それぞれのモデルには欠陥があり、それゆえ効果が制限されてしまいま
す。
各モデルの利点と欠点は後述します。こうした新しいR&Dモデルに共通
する問題は以下の通りです。
• イノベーションへの援助資金の分配が不十分で不適切です。
• 貧しい人々を多く抱える中所得国にとって、新規の製品が適正価格でないこ
とがあります。
• 途上国にとって、新規の製品が不適切なことがあります。
• IP権利の保証によって後続イノベーションや科学研究の拡大が制限され、知
識の共有が阻害されています。
• 不十分な管理体制と不透明性によって、こうしたモデルの計画と実施に悪影
響が出ています。
事前買取制度(Advanced Market Commitments: AMCs)
新規の医療製品の中には、市場の需要不足のために途上国では入手困難な
ものがあります。AMCは、こうした製品(特にワクチン)の開発と市場への
迅速な導入を促すためのインセンティブです。AMCでは、ドナー国が法
的拘束力のある保証契約(legally binding guarantee)をします。これは特定
の疾患に対するワクチンが開発された場合、そのワクチンの途上国への拡
散のためにドナー国が固定金額を支払うというものです。この保証契約に
は技術規格が定められており、対象となるワクチンはこの規格を満たさな
ければなりません。AMCの発案者によれば、AMCは企業に開発競争を促
し、最良のワクチンを開発する環境を提供することができます。
しかし2005年のG8で発足した最初のAMCは、ドナー国と途上国に大きな
金銭的負担を強いるものでした(Box 2参照)。
12
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
Box 2: 肺炎球菌のAMC: ドナーへの教訓
世界初のAMCでは、毎年160万人の子供の命を奪っている肺炎球菌の予防
ワクチンの購入のために15億米ドルが支払われました。資金援助を行った
のは、カナダ、イギリス、ロシア、イタリア、ノルウェイ、ゲイツ財団で
した 34。
このAMCは、援助資金の使い方としては適切ではありません。肺炎球菌
疾患が貧しい子ども達の健康に暗い影を落としているのは事実ですが、一
方で既にワクチンの巨大な市場が途上国に存在していたことも事実です。
2005年にAMCが発足した段階で、2つのワクチン候補がすでに大手製薬企
業によって開発され、当局の承認を待っていました。したがって、「この
AMCがワクチン開発のインセンティブとして機能した」、と主張するこ
とはできません。そうではなく、これは途上国の需要を満たすよう、政府
の助成金で企業を奨励するための調達契約といったところでしょう。
このAMCは、ドナー国と途上国に大きな出費を要します。出費は多く、
一回の投与あたり少なくとも7米ドルの前金が必要となります。これは製
薬企業の巧みな交渉戦略に原因の一端があります。
AMCの資金が枯渇した時、途上国におけるワクチンの後続価格が適切な
金額となるかは不鮮明です。ワクチンの価格は高くても一回投与当たり
3.5米ドルに収束し、これは多くの最貧国の一人当たりの医療費と同じ金
額です。ワクチン製品の新興マーケットへの導入は開発競争や急激な価格
低下をもたらしますが、GAVI同盟(Global Alliance for Vaccines and
Immunizations: GAVI)もドナー国も、そうした導入を可能とする約定を協
議していません。
価格交渉や費用が不透明なため、AMCが製薬企業にもたらす追加利益が
どれほどのものか定かではありません。国境なき医師団(MSF)の計算によ
れば、先進国へのワクチンの適用を考慮に入れれば、追加利益は6億米ド
ルを超える可能性があります 35。
新規ワクチンの開発促進と長期的な適正価格を保証する「健全な市場」を
奨励する方法を考えていくことが必要です。ワクチンのジェネリックメー
カーが開発競争のもっと早い段階で協力し合うことができれば、寡占のリ
スクならびに国が協定の最後に背負いきれない財政負担を負うリスクを回
避する事ができるでしょう。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
こうした懸念にも関わらず、ドナー国とAMCモデルの支持者は、主に結
核とマラリア 36 のワクチンに対する次なるAMCの発足を計画しています。
こうしたケースに対し、最初のAMCの教訓によって得られた明確なガイ
ドラインが存在します。具体的には以下の通りです。
• AMCは対象となるワクチン開発を選別する必要があります。具体的に
は、「プル」がもたらす大きな経済的インセンティブなしでは、ワクチ
ン開発や臨床試験が進まないような開発に限るべきです。
• AMCに対する資金援助は、実際の支払いが行われるまで年間のR&D経
費に計上すべきではありません。なぜなら、支払いの誓約からワクチン
が最終的に開発されるまでには時間の隔たりがあり、実際の支払いはド
ナーの誓約から数年後になる場合があるためです。
• イノベーションのためのAMCは、開発が終了間近のワクチンの調達資金
として使用されるべきではありません。
• AMCは、特に低コストのメーカー間の競争を通して、途上国に対して医
薬品の低価格をもたらすでしょう。資金を効率的に利用するためには、
ドナーが支払う前金はできるだけ低い事が望ましいでしょう。AMCが終
わった後の後続価格は途上国にとって適正な価格でなければなりませ
ん。
• 対象となるワクチンが先進国の市場にも適応がある場合は、製薬企業へ
の援助額を大きく低下させるべきです。
• AMCによって、後続イノベーションが促進されねばなりません。”first
in class”のワクチンが新規メーカーの市場参入とAMCからの資金援助を
妨げないように、AMCの援助は段階的に投入されなければなりません。
• 学術研究などの他のR&Dイニシアティブに付随する形で、AMCへの資
金援助が必要です。
ワクチンへのアクセスは、全ての途上国で保証される必要があります。世
界で初めてAMCからの助成金を受けたワクチンは、AMCを運営する公衆
衛生・イノベーション・IPに関する政府間作業部会(Inter-Governmental
Working Group on Public Health, Innovation and IP: IGWG)のメンバーで
ある62の途上国にしか行き渡っていません37 。したがって、この62ヶ国に
含まれない、特に中所得国の国々には、製薬会社に十分な利益を提供する
ためにさらに高い「段階的な」薬価が設定されています。このシステムで
は中所得国が高い薬価を支払うことができない可能性があり、こうした
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
国々に住む貧しい人々からワクチンへのアクセス権を奪ってしまうことに
なります。
Oxfamは原則として段階的な価格設定を支持しています。しかし、貧しい
人々の間にtrade-offが生まれることは許容できません。貧しい人々の運命
が、GAVIの交渉価格が採用されるか否かに左右されてはなりません。
中所得国における医薬品の適正価格を保証するために、GAVIは援助国と
被援助国の双方と協議し、価格低下とGAVIによる資金援助などの支援策
を、中所得国向けに適応拡大するなどの方法を検討する可能性がありま
す。あるいは、全ての途上国でIPの権利に対しドナーと中所得国に前払い
金を求めるなどの方法もあります。そうなれば、途上国でより低価格のワ
クチンを提供するような、新興マーケットのメーカーの開発競争を促す事
ができるかもしれません。
製品開発パートナーシップ(Product Development Partnerships:
PDPs)
PDPは、民(public)、官(government)、製薬産業(pharmaceutical
industry)の持つ、Type!とType"の疾患のR&D資源を束ねる非営利団体で
す。PDPは、途上国を集中的に苦しめている疾患の医薬品不足に対する理
想的な解決策として、賞賛を浴びています。実際、PDPは適切なR&D活動
を主導・促進することが証明されてきました。しかし「見捨てられた疾
患」(neglected diseases: ND)の新薬供給メカニズムとしての効果までもが
示されたわけではありません。有望な候補化合物があるにも関わらず、
PDPから生まれた新薬はわずか3つに留まっています 38。
PDPには次のような利点があります。
• 製薬企業はPDPによって自社単独で取り組むよりも圧倒的に低コスト
で、より透明なR&Dに取り組む事ができます。企業が単独で医薬品開発
に取り組む場合は8億米ドルのコストがかかるのに対し、PDPではそれ
が1.15-2.4億米ドルしかかかりません 39。
• PDPは非営利団体であるため、製品に特許はありません。特許のない製
品はジェネリック医薬品の開発競争と価格低下を促進するでしょう 40。
しかし、PDPはその可能性を大きく制限してしまうような多くの問題を抱
えています。まず、PDPの活動には十分な協調性がありません。したがっ
て医薬品開発に向けた資金獲得のために競争が発生し、知識の共有や技術
15
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
比較が困難になってしまっています。協調性の欠如は、意味なく繰り返さ
れる需要予測等の不適切な資源利用をもたらします。IP管理の適切なビジ
ネス戦略等の経験から得られた教訓が、PDP内で共有される事は滅多にあ
りません。
加えて、PDPは製薬企業との距離感をつかみかねています。PDPは、R&D
のための学術データ、化合物ライブラリー、インフラの面で製薬企業に大
きく依存しています。産業界のパートナーである製薬企業からIPを取得で
きず、製品の独占価格を受け入れざるを得ないPDPもあります 41 。製薬企
業は、大きな収益可能性のある市場に対しては、IPに関する譲歩を渋りま
す。デング熱やHIV、AIDSなどがこのケースです。中所得国において製
薬企業がIPの管理を維持する場合、そうした国々での医薬品は負担しきれ
ない価格になるかもしれません。
ドナーが財政・金融のインセンティブを追加提供する事で、医薬品アクセ
スは改善されます(途上国のためにIPの権利を購入するなど)。他にも、ド
ナーの投資から生まれたIPは、全てPDPが管理するように定めるといった
方法もあります。PDPがIPの権利を確保できない場合は、中所得国の差別
的価格設定も途上国の「段階的な」価格設定問題に含めて扱わねばなりま
せん 42。
PDPがIPの権利を確保した場合、IPの公開によってジェネリック競争が促
進されるのか、あるいは裕福な途上国に高い薬価を強いる段階的価格設定
に甘んじてしてしまうのかはわかりません。「見捨てられた疾患のための
医薬品イニシアティブ」(Drugs for Neglected Diseases Initiative: DNDi)が
開発したマラリア薬のASAQは特許が公開されており、企業が価格競争を
行う事ができます。寡占状態でも、規模の経済のために十分低い薬価が実
現されるのかもしれません。しかし、やはり最低価格は価格競争によって
生み出されることを歴史が物語っています。
PDPと政府は、知識のアクセスと共有をさらに強化していかねばなりませ
ん。WHOのグローバル戦略は、政府援助による研究の成果のパブリック
アクセス促進を呼びかけています。それを受けて、PDPはPDP間や学術
界、産業界のパートナーと知識を共有すべきです 43 。PDPは製薬企業と大
学に対し、化合物ライブラリーへのアクセスを解放するように働きかける
べきです 44 。民間企業はPDPの公的援助を受けるR&Dに「ただ乗り」(free
ride)している状態で、見返りとして自身の研究成果を提供していない場合
があります。ある解説者は、知識と研究成果の民間セクターへの一方通行
が「巨大な吸込み音」(giant sucking sound)になっていると指摘しまし
た 45 。このような場合、公的援助を受けた研究の成果は、確かに民間セク
ターのイノベーションを促進するのに役立っています。しかし企業間の情
報交換の欠如は、技術と知識のさらなる発展を妨げてしまっています。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
優先審査保証(Priority Review Vouchers: PRVs)
PRVは最近米国の法律に組み入れられた新しいインセンティブメカニズム
です 46 。PRVでは、NDに対する新薬の売り出しに成功した見返りとして、
FDAが製薬企業やPDPといった団体に対し任意の医薬品の優先的審査を保
証するクーポン(voucher)を与えます 47 。このクーポンは第三者に完全に譲
渡可能です。途上国において大きな収益が見込める医薬品にこのクーポン
を適用することで、企業は医薬品の独占販売期間を最大18ヶ月延長するこ
とができます。専門家は、このクーポンの価値を3.21億米ドルと見積もっ
ています48 。
PRVは、製薬企業やバイオテクノロジー企業のR&Dを促進します。PDPは
さらに、NDに対するプロジェクト完遂を保証するための重要な資金支援
策になりえます 49。しかし、PRVには以下のような懸念があります。
1. 中所得国におけるND医薬品の価格設定
米国の法律では、問題となっているND医薬品のIPは企業が管理し続け
ます。医薬品の販売に対し段階的な価格設定が適用される場合、中所
得国は高すぎる薬価を支払わなければならないことがあります。製品
の種類が限られている中小バイオテクノロジー企業は、特に収益に敏
感です。したがってこうした企業は、投資した分を回収し、十分な収
益を確保するために、中所得国に少しでも高い薬価を求めます 50。この
ため、中所得国における適切な医薬品価格を保証するための戦略が必
要です。より好ましいのは、可能であれば、クーポンと引き換えに途
上国におけるIPが放棄されることです。
2. NDに対する医薬品の適切性
途上国における使用状況や、子どもや女性といったの小集団の特定の
ニーズを考慮した医薬品の開発に対し、製薬企業にとって義務もインセ
ンティブもありません。IPの権利は開発に成功した企業が保持し続ける
ため、途上国での効果を改善させるような固定用量配合剤(fixed-dose
combination)などの処方の改善を、他のメーカーが行うことができません。
この問題を解決する方法には次のようなものがあります。(1)FDAの承認
の前提条件として、米国と途上国の専門家委員会によって当該医薬品に関
連する処方も含め承認する51 。(2)後続イノベーションのためにIPを放棄す
るように、法律で定める52 。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
3. PRV提供資金の不適切な分配
PRVはR&Dに対し過剰な報償を与えてしまっている場合があります。
PRVでは、医薬品が米国で初めて登録された時に報奨金がでます。した
がって開発段階で十分な支援を受けていたり、米国以外で既に医薬品の
登録が済んでいる製品は、単に「米国での登録がまだだったから」とい
う理由で「棚からぼたもち」(windfall profit)の報償を得ることになります。
Novartisはすでに抗マラリア薬であるCoartemを開発していますが、今後
米国のFDAにCoartemを登録する事で3.21億米ドルに相当するPRVを取得
する予定です 53 。Coartemが既に広範なマーケットを構成しているにも関
わらず利益を得ることになります。このような何もせずに得られる利潤を
許容してしまうと、NDに対するR&Dの促進策としてのPRVの信用が失わ
れてしまいます。したがって、法律の修正が必要です。
オ ーフ ァ ン ド ラ ッ グ ・ スキ ーム ( O r p h a n
me)と税額控除(Tax Credit)
Drug
s c h e-
米国とEUのオーファンドラッグ・スキームでは、報償金を出す国の国内
で比較的少人数の人々を苦しめている疾患の新薬に対して、市場独占権と
金銭的利益が与えられます54 。この仕組みは、主に途上国を苦しめている
疾患の医薬品にも適用できます。メーカーには税額控除と特許期間の延長
が認められます。しかしオーファンドラッグ・スキームによる市場寡占の
拡大によって、利潤を追求するメーカーが高額な薬価を設定する恐れがあ
ります。
税額控除はしばしばオーファンドラッグ・スキームがもたらす利得の一つ
として与えられますが、単独で与えられる場合もあります。米国では希少
疾患のR&Dのために行われた臨床試験の費用の50%に対して税額控除が
認められます。途上国のために「優先」疾患と見なされている特定の疾患
の研究を加速するために、さらなる税額控除を導入した国もあります。英
国では、既にHIV、AIDS、結核、マラリアのR&Dに対して税額控除を提
供する仕組みがあります。
このスキームは、民間に対し新たなR&Dを促進するための重要なインセ
ンティブを生み出します。しかしスキームそれ自体だけでは、途上国で蔓
延している疾患のR&Dのインセンティブを効率的に生み出すメカニズム
にはなり得ません。WHOは、オーファンドラッグ・スキームの税額控除
はNDに対するイノベーションを刺激するのに十分でないと指摘しまし
た。先進国に見られる「市場独占権の拡大」という考え方は、市場そのも
のがない場合を考慮していないためです。税額控除という仕組みは、利益
が見込める環境においてのみインセンティブとして有効に機能します 55。
18
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
したがって、税額控除が効果的に機能するためには、国は他のインセン
ティブ(PRVや、製薬企業のPDPへの貢献を対象とした控除)と協調して機
能するような控除の仕組みを設計する必要があります。こうした仕組み
は、民間セクターの研究を奨励するインセンティブを、グローバルに生み
出すことができるでしょう。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
5. R&Dの資金調達は、一般参加型で、透
明的で、協調的でなければなりません
管理体制と透明性
それぞれのR&Dメカニズムが正しく機能するためには、高い水準の管理
体制と透明性が必要です。しかし「見捨てられた疾患」(neglected disease: ND)に対するR&Dインセンティブを設計したり、R&Dに取り組んだ
りしている機関は、途上国の関心を十分に反映できていません。さらに不
透明な意思決定がしばしば行われています。例えば最近の肺炎球菌の事前
買取制度(Advanced Market Commitment: AMC)に関する重要な決定は、全
てドナー委員会のみで行われたようです。最近、ある雑誌はこう指摘しま
した。「途上国の国民が先導している”global”な製品開発パートナーシッ
プ(Product Development Partnership: PDP)は一つもないし、伝染性NDの
影響を深刻に受ける途上国に住んでいるPDP委員は一人もいない」 56。
PDPは途上国や市民社会の代表者を含むという点で大きく異なります。
PDPの初期段階から彼らが参加することは、途上国が自国のヘルスシステ
ムにその製品を導入する予定がある場合、非常に重要となります。国立の
研究機関を抱え、途上国の政府と協議するPDPは、展望の共有がしやすく
なります。例えば、「見捨てられた疾患のための医薬品イニシアティブ」
(Drugs for Neglected Diseases Initiative: DNDi)はブラジル、ケニア、イン
ドの研究機関と協力しています。全てのR&Dの意思決定機関に、途上国
からの重要かつ有意義な代表者が必要です。
途上国が意思決定に参加することで、新製品の適切性と適正価格が保証さ
れ、またそれらが途上国の保健計画と優先度に合致することが保証されま
す。こうした途上国の参加が「特別扱い」というよりもむしろ「政治的権
利」として認識されれば、途上国のR&D管理の意思決定へのさらなる参
加への呼びかけは影響力を増していくでしょう。したがって、途上国は自
国の財力に応じてR&Dを促進して行くための資金援助をしなければなり
ません。
新しいメカニズムの下でR&Dと製品にかかる費用に関しても、透明性が
欠けています。こうした情報は資金提供者と患者にとって費用を吟味する
のに欠かせません。例えば、「ワクチンと予防接種のための国際同盟」
(Global Alliance for Vaccines and Immunizations: GAVI同盟)はその最初の
優先審査保証に対して包括的に評価するプログラムを設けました。しかし
それは肺炎球菌ワクチンのために製薬企業に支払うべき実際の金額を見積
もってはいませんでした。加えて、同じワクチンを他の企業に発注した場
合の金額に言及することもありませんでした。こうした事実から、市民社
20
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
会は「資金提供者はワクチンに対し必要以上に高い金額を支払っており、
結果的に開発途上国の貧しい子ども達に届けるワクチン数が減ってしまっ
た」と指摘しています。
協調性
NDのR&Dには、国内外の協調性が欠如した例がたくさんあります。ま
ず、途上国の疾患に対するR&Dの出費に関して、国内で一本化できてい
ない国がいくつかあります。省庁間に協調性がなければ、政府はR&Dに
関する資金援助の全体像を正確に把握する事ができません。これではND
治療に関するR&Dのグローバル需要を満たすための目標設定は難しいで
しょうし、政府が義務づけられた課題に対し責任を維持していくことも難
しいでしょう。
肺炎球菌のAMCのような同じプログラムに共同出資する場合を除き、国
家間にもR&Dの資金援助に協調性が見られません 57 。この協調性の欠如は
リソースの大きな無駄遣いを招き、しばしばR&Dの出費に大きな不均衡
を生み出しています。いくつかの新しい取り組みと途上国の疾患のR&D
資金調達機関の間で、資金不足が広がっています 58 。それに対し、GAVIを
事務局としてゲイツ財団と5つの国から共同出資された肺炎球菌のAMC
は、着実な協調性と協力によって、求められる成果に対し十分な出資を確
保する事ができることを証明しました。
国内外の協調性の欠如は、他の疾患にの優先順位の設定にも悪影響を与え
ます。影響力のある代弁者がいない疾患が必要な資金が得られない一方
で、資金提供者とメディアの関心を集めた疾患が、不十分ながらも、提供
資金の大部分を受け取っています。
よりよい新薬、診断技術、ワクチン、処方ための資金提供の優先順位は、
民衆による抗議の程度に左右されてはなりません。例えば、広がりつつあ
る薬剤耐性菌に対抗する新しい抗生物質は、未だに国や民間セクターに
とって優先事項ではありません。またエボラ出血熱やマーブルグウイルス
のような疾患の研究は未だにありません 59 。課題の優先順位が不適切なの
は、ドナーからの資金援助のやり方にも問題があるためです。欧州委員会
は、第6回「研究枠組プログラム」(Research Framework Programme)で、
HIVやAIDS、結核やマラリアのR&Dに対して4.2億ユーロをつぎ込みまし
た。一方で、その他のNDに対して支払われた金額は、全て合わせてもそ
の1割しかありませんでした 60。2008年の11月に開かれる欧州委員会主催
の「貧困に関する疾患」に関する会議では、主な話題は結核、HIV、
AIDS、マラリアに集中するでしょう。一方で、他の疾患は補足として付
け加えられるだけしょう。
21
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
特にPDPのような研究機関は、適切な優先順位の決定を確保する事ができ
ません。PDPは資金提供者からの資源を求めて互いに競争します。このよ
うな「自由参加型」の制度では、PDPに扱われていないか、あるいは小さ
なPDPしか取り組んでいないような疾患は、切迫する疾病負担(disease
burden)にも関わらずほとんど資源が配分されません 61。
提供資金を追跡する新たな取り組みがあります。これは特にオーストラリ
アの「国際保健のためのジョージ研究所」(George Institute for International Health)が主催しています。しかし、先進国政府が国内外で道徳的に
協力し合い、信託や資金といった民間の財源と共にそうした資金を運用し
なければ、成果は見込めません。
先進国政府と途上国の資金援助の取り組みを協調させるために、より定式
的なフレームワークが必要です(下記参照)。これは、「国際保健パート
ナーシップ」(International Health partnership: IHP)のような途上国への支
援を合理化するような異なる取り組みに反映させることができますし、
「生物多様性情報クリアリング・ハウス・メカニズム」(Convention on
Biological Diversity’s Clearing House Mechanism)のような、情報の拡散に
努めるような取り組みにも反映させる事ができます 62 。IHPと協調するこ
とで、こうした取り組みは被援助国に対して議論への参加、ならびに「本
当に必要な財政援助、優先順位、自国にとって妥当なアプローチとは何
か」について議論を呼びかけることができるでしょう。こうしたフレーム
ワークは製薬企業からの貢献内容の透明性を高め、さらにそうした認識そ
のものがインセンティブとしても機能するでしょう。
最後に、制度のフレームワーク内で共同作業をする国々は、異なるインセ
ンティブメカニズムを統合する事によって、製薬企業あるいはPDPの新薬
の開発意欲が高まるかを見定めなければなりません。これにより、既に他
の国や基金から報償やインセンティブを受け取っているような企業やPDP
に対する過剰な支払いを免れることができます 63。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
6.IPの枠組みを超えて
インセンティブ・メカニズムとして特許独占のみを頼りにしている限り、
途上国を苦しめる疾患のR&Dには大きな障壁がつきまといます。知識の
共有と後続イノベーションの改善についての話し合いでは、いくつかの新
しい試みが提案されています。そうした議論の下では、民間企業へのイン
センティブのうち、特許保護による市場独占以外の可能性も話し合われて
います。
パテントプール(patent pool)
UNITAID (international drug-purchasing facility)とWHOのグローバル戦略
の下で話し合われているメカニズムの一つに、パテントプールの利用があ
ります。パテントプールは複数の団体間の合意に基づいて行われ、各団体
の特許を集めてプールし、これを第三者が利用できるようにするもので
す。この合意では特許利用のライセンス期間が設けられ、特許の利用に対
し特許保持者に支払うべき特許使用料が定められています 64。この仕組み
は、イノベーションが過去の研究で得られた知識や発見に基づいている事
を考慮しています。パテントプールは「特許のいばら」(patent thicket)を
克服し、研究者が医薬品の新しい萌芽を育むために知識を共有し利用する
のを可能にし、一方で既存の医薬品へのアクセスを向上させる事ができる
でしょう 65。UNITAIDに対する市民社会と国々の懸命な努力によって、よ
り大きなイノベーションと医薬品アクセスを刺激する初めてのパテント
プールが間もなく実現するでしょう(Box 3参照)。
Box 3: UNITAIDパテントプール
UNITAIDは最近、原則として医薬品のパテントプールの設立を承認しま
した。ライセンスの共同管理はジェネリック企業のライセンシングを援助
し、薬価の低下をもたらすでしょう。特に抗レトロウイルス治療の第二選
択薬の医薬品価格が低下するでしょう。さらに複数の企業から集めたIPを
統合管理する事で後続イノベーションが促進され、固定用量配合剤や小児
処方の開発などを通して既存薬の効果が高められるでしょう。
他の疾患に対してもパテントプールを適用していいのか、ライセンス合意
の下で開発されたジェネリック医薬品を中所得国に販売していいのか、と
いった難しい問題をUNITAIDは抱えたままです。2008年、少なくとも3つ
の多国籍製薬企業がパテントプールに試験的な援助を行いました 66。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
賞金ファンド(prize fund)
「世界保健総会決議60.30」(World Health Assembly Resolusion 60.30)にお
いて、WHOの加盟国はR&D費用と薬価を切り離した新しいインセンティ
ブメカニズムを呼びかけました。既存のインセンティブモデルはイノベー
ション費用の回収のための高い薬価設定に依存しており、それゆえ途上国
の医薬品アクセスが保証されていないことが問題の根本です。
賞金制度は、イノベーションと薬価のもつれを解く可能性を持った、革新
的な「プル」メカニズムです。発明者には製品の公衆衛生への貢献度に応
じた賞金が与えられます。この制度では発明者が特許を保持し続けること
が可能です。しかし受賞者は受賞と引き換えに先買権を放棄するよう求め
られます。これによってジェネリック企業の競争が発生し、大幅な薬価低
下が見込めます。一方で、受賞者には知識をパブリックドメインに帰すこ
とが求められるので、後発のイノベーションも促進されるでしょう。
賞金制度は製薬企業を含む様々な関係者にますます賞賛され、利用されて
きました。例えば製薬企業の1つであるEli Lillyは、新しい医学的研究技
術のイノベーションを刺激するために独自の賞金制度を創設しました 67 。
政府資金によるインセンティブとして賞金制度を導入しようという試みも
あります。2007年に米上院に提出された「医療イノベーション賞金ファン
ド条例」(Medical Innovation Prize Fund Act) 68は、新薬承認時に医薬品の
開発者に対して、製品の公衆衛生に対する貢献度に応じた賞金を与えると
いうものでした 69。
途上国は、賞金ファンドとオープンアクセスの支持者である「知識エコロ
ジー・インターナショナル」(Knowledge Ecology International)と協力
し、現行の医薬品開発インセンティブに対する実行可能な代替案として、
賞金ファンドの設立を提案しています。例えば、ボリビアとバルバドス
は、WHOにイノベーション促進のためのいくつかの賞金ファンドの提案
をしており、そのうちの1つに安価で簡便な結核診断に対する賞金制度が
あります70 (Box 4参照)。
24
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
Box 4: 結核診断賞金ファンド71
現在利用されている結核の診断法は100年以上前に開発されたものです。
この方法では、資格を有するヘルスワーカーが患者の痰を数日かけて顕微
鏡で検査する必要があります。これでは現地のヘルスワーカーによって賄
われている、質素な環境下での迅速な診断は不可能です 72。
結核診断賞金ファンドは、3種類の資金援助によってイノベーションを促
進させる事ができます。
1.以下の条件を満たす診断技術の導入に対して送られる、1億米ドルの賞
金。受賞者は、診断技術が世界規模で開発競争されるのに必要な全ての
特許、データ、専門知識を公開しなければなりません 73。
a)1回分あたり1ドル以下で製造が可能。
b)途上国のヘルスシステムに簡単に拡散・適応できる。
c)3時間以内に結果がわかる。
d)正しい結果が高い割合で得られる。
2.ある目標の途中に設定した小目標を達成した場合に贈られる、比較的規
模の小さい技術開発賞金(technical-challenge prize)。
3.目標達成のために必要な専門知識のうち、最も公共的に貢献したものに
贈られる年二回の「最多貢献賞金」(‘best contribution’ prize) 74。
開発者に特許と独占権の保持を可能にする点で、「グローバルヘルスのた
めのインセンティブ」(Incentives for Global Health: IGH)から提案されて
いるその他の賞金制度は他の制度と異なります 75 。「ヘルスインパクト基
金」(Health Impact Fund: HIF)は、明確なヘルスインパクトを持つ新薬・
新ワクチンの開発に対するインセンティブを生み出す巨大なグローバル基
金として広まりつつあります。受賞者は、10年間に渡り製品のヘルスイン
パクトに応じた金額を年に1回授与されます 76 。医薬品アクセスを保証す
るために、ファンドは受賞企業に10年間の支払い期間の間「生産と供給の
平均コストに近い承認価格」で製品を世界に販売するように求めます。ま
た特許登録者はファンドがジェネリック企業に当該ライセンスを発行する
ことを容認しなければなりません77 。ただしジェネリック企業へのライセ
ンス公開は特許保持者が十分な供給を保証しない国に限られます。また、
受賞期間後も公開は続きます。しかしHIFはジェネリック競争の拡大と適
切な処方・薬剤併用のための後続イノベーションの促進に失敗していま
す。これは、未だに医薬品が寡占状況下にあるためです 78。
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
賞金制度の実施には、重要な問題があります。相対的なヘルス・ベネ
フィットや貢献度に応じた賞金に基づく制度では、様々な医薬品の相対的
な恩恵や研究者の貢献度を正確で偏見のない方法で測定する手段が必要で
す 79 。ドナーは中間製品同様、どうやって最終製品に報償を与えればよい
かを決定しなくてはなりません。後者の賞金制度は、特に学界、小企業、
途上国の企業の開発者にとって魅力的でしょう。
26
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
7. 発展途上国のR&D能力を向上させよう
途上国と先進国の政府は、途上国の研究機能強化に投資すべきです。その
見返りとして、医薬品開発のコスト削減、新しいイノベーション中心の形
成、より多くの疾患の克服、公衆衛生向上のための適切な製品の共有など
が期待できます。
こうした恩恵を得るためには、途上国と先進国の政府は現地または地域の
製造と監督機能の展開、既存の臨床試験能力の有効利用、科学の専門知識
などに対して投資する必要があります。ドナー国は、2005年に導入され、
2008年の「援助効果に関するアクラサミット」(Accra summit on aid
effectiveness)で更新された「援助-効果原則」(aid-effectiveness principles)にしたがって行動すべきです 80。
現地の製造能力
長期的に見れば、先進国政府が途上地域の生産性の向上に投資すること
で、薬価を引き下げる事ができます。最貧国は少なくとも2016年までは
TRIPSの施行を免除されています。したがってこれらの国は、特許のある
新薬を合法的に製造することができます。長い目でみれば、現地に有望な
生産拠点があることは、大学などの現地の研究機能を刺激し、現地のヘル
スニーズへの製品の適応(特に新薬の合剤と処方)を促すでしょう81 。しか
し現地の製薬企業は、研究機能、品質管理、人や技術のアベイラビリティ
などに関する多くの技術的な問題に直面しています。また、発展の余地の
ある「規模の経済」(scale of economics)の保証などの、市場についての問
題も解決せねばなりません。規模の経済はベンチャー企業に生産に対する
収益をもたらし、薬価を削減するための十分な生産量を確保することがで
きます。
この分野での「南-南協力」(South-South co-operation)には期待が高まっ
ており、実際にそうした協力の中から新しい可能性が生まれています。ベ
ンチャー統合契約の下、10年でリパッケージ医薬品の販売から処方を束ね
るまでに成長したウガンダ企業があります。この企業は、今では国内消費
の10%を供給するまでになっています 82 。この統合契約には、インドの傑
出したジェネリックメーカーが関わっています。この企業が技術サポー
ト、仲介、専門技術の転移などを買って出ました。途上国間の協力は、製
薬分野を大いに活性化させます。例えば、品質保証の基準を統一し、地方
で生産された医薬品の現地マーケットを構築することで、規模の経済を助
成し、非関税障壁(non-tariff trade barriers)を回避する事ができます 83。
27
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
臨床試験
通常、臨床試験は医薬品開発の中で最もコストのかかる行程で、その額は
開発費の60%に上ります 84。したがって開発のネックと見なされることが
しばしばあります。その臨床試験が、次第に途上国に外注されるように
なってきました。同じ臨床試験でも、インドで実施する場合、そのコスト
はアメリカで実施する場合に比べ60%も安くなると見積もられていま
す 85 。臨床試験参加者をより素早くリクルートする事で、試験期間を少な
くとも6ヶ月短縮する事ができます。これにより、製薬企業が特許下で医
薬品を販売する期間が増えます 86 。臨床試験を請け負う事は、現地の製薬
企業にとってビジネスになります87 。この分野での成長が著しいのは、イ
ンドの企業です。「治療未経験」患者の大きなプールは、医薬品の「患者
にとっての現実のニーズ」88 に対する効果のテストを手助けします。この
巨大プールは、あらゆる疾患に対する医薬品開発にとって重要な物です。
大多数の途上国が、臨床試験を行うにあたって多くの問題に直面していま
す 89 。データを集めたり臨床試験参加者の世話をしたりする科学者やヘル
スワーカーを育てる教育機能が、不足しています。またそうした人材の需
要によって、ただでさえ脆弱な他のヘルスシステム分野から人材を奪って
しまっています 90。
多くの国は、ごく基礎的なインフラしか持っていません。研究設備、適切
な臨床試験設備は当然の事ながら、安定した電力供給さえままなりませ
ん。多くの疾患では、遠く離れた田舎の臨床試験参加者に接触し、服薬遵
守(compliance)を徹底し、追跡調査する事は困難です。さらに、患者が対
象の疾患に罹患しているかを確認するための簡単な診断機器も不足してい
ます 91。
多くの発展途上国で、医薬品の品質と臨床試験の倫理基準を監督する能力
は非常に弱く、インフォームドコンセントも常に遵守されているわけでは
ありません。貧しい国出身の臨床試験参加者の試験後の運命も、倫理的問
題になっています 92。
大きな資金提供団体や双方向的なドナーは、設備投資に乗り気ではありま
せん 93 。しかしアメリカやEUなどのいくつかのドナー国が途上国の臨床試
験能力の改善に大きく貢献している事を受け、意識は少しずつ変わって来
ています94 (Box 5参照)。
28
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
Box 5: ヨーロッパ-途上国臨床試験パートナーシップ(European and
Developing Countries Clinical Trials Partnership: EDCTP)95
EDCTPは14のEU諸国、ノルウェー、スイスと、サハラ以南のアフリカ諸
国の間のパートナーシップです。これはサハラ以南のアフリカにおける、
HIV/AIDS、マラリア、結核に対する医薬品開発の、後半フェーズの臨床
試験の促進に焦点を当てたものです。EDCTPでは、臨床試験の機能を確
立するための多施設プロジェクトを支援しています。2008年6月に、この
パートナーシップは800万ユーロ(約1,240万米ドル)をアフリカのメディカ
ルリサーチに投入すると発表しました 96。
現在まで、資金援助は主にEDCTPやjoint TDR、ゲイツ財団といった巨大
な資金援助団体によって行われてきました。今後は、学術交流や専門訓練
といった双方向の支援が増えて行く事が望まれます。
貧困地域における研究機能の開発
科学における協力体制と教育制度に対する長期的な資金援助によって、途
上国は自分たちのイノベーション目標を達成する能力を高める事ができま
す。イノベーション目標の例としては、既存の医薬品を現地のニーズに適
応させる事などが挙げられるでしょう。途上国の疾患が現地の研究努力に
よって解決されうるためには、十分な資金援助が必要です。
数は少ないものの、いくつかのパートナーシップが既に設立されていま
す。その中には、TDRや”John E. Fogarty International Centre for Advanced Study in the Health Sciences in the USA 97”が主導の一連のプログラ
ム等があります。途上国における米国のその他の調査は、しばしば軍から
援助を受けています(Box 6参照)。
Box 6: John E. Fogarty International Centre for Advanced
Study in the Health Sciences98
Fogartyセンターは低中所得国に対して共同研究と機能確立の資金援助を
しています。さらに、途上国の研究能力を向上させるために制度化された
教育援助金も用意されています。サハラ以南の地域において、Fogartyセ
ンターは約20の国の活動を支援しています。そのうち、30%はHIVなどの
性感染症の研究に、12%が非伝染性の疾患の研究に投資されています。
29
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
他国の政府もこうした取り組みに関心を示していますが、十分な資金提供
を持って自らの誓約を果たしている所はありません。例えば、”EU-Africa
Strategic Partnership and EU-Africa Action Plan”(2008-2010)の一部で、
EUの国々は以下のような決議をを出しました。”...R&Dの知識をアフリカ
に根付かせるためにも、R&Dのグローバル共同研究プロジェクトへのア
フリカ出身科学者の参加を増やしていく必要がある...99 ”しかし、この実用
的な提言は、研究の協力体制を促進するために、実際に長期の資金援助と
いう具体的な行動に変換されねばなりません。研究や臨床試験能力を促進
させるために、途上国もまた、国内の資源に投資していく必要がありま
す。
30
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
8. グ ロ ーバ ル R & D フ レ ームワ ー ク を つ く
ろう
特に発展途上国において、公衆衛生の欠乏は不十分で不適切なその場しの
ぎの改善案に端を発しています。R&Dに対しては、国際的で体系的な取
り組みが必要です。
この先7年間、WHOは「グローバル戦略と行動計画」(Global Strategy and
plan of Action)を通して世界各国が協調しあってゆく道筋を切り開いて行
かなくてはなりません。それは資金やイノベーションの新しいリソースを
開拓するため、R&Dのコストを公平に負担するため、そしていかなる
R&D制度でも全ての国、全ての人のニーズを満たす事を保証するためで
す。
R&Dに対する国際的な取り組みは可能か?
医薬品の販売における国際的な寡占には、全ての人々のニーズを満たすよ
うに製造、販売するという義務が伴いますが、この義務は守られていませ
ん。しかしR&Dに対する国際的な新しい取り組みを展開して行く事は難
しいでしょう。IP制度を唯一のイノベーションインセンティブと捉え、
R&Dコストを高額な薬価と結びつけようとする現在の揺るぎない姿勢を
考えると、R&Dの新しい国際的アプローチを展開させて行くのは一筋縄
ではありません。しかし、製薬業界の動向や、インド、中国、ブラジルと
いった国々の研究機能の向上によって、R&Dの共同管理が可能になって
きています。産業界は新しい現実と可能性に適応し始めています。製薬企
業は、途上国のイノベーションの不足が、業界の法的権利を脅かしている
事に気づき始めました。
未 来 の 展 開 拠 点 と し て 、 企 業 は 新 興 マ ー ケ ッ ト に 注 目 し て い ま す 100 。
GlaxoSmithKlineは新興マーケット部門を新たに設立しました。これは新
興マーケットにおける売り上げと、これからの成長、そしてコストカット
のチャンスを見越しての事です。2008年、豊かな国での企業の成長率は
1-6%ですが、ラテンアメリカ最大の経済国(ブラジル、アルゼンチン、メ
キ シ コ ) で の 成 長 は 5 - 2 0 % で し た 101 。 こ れ ら の 市 場 は 規 模 が 小 さ い も の
の、成長の兆しがあります。さらに、一度は貧しい人々のみの問題である
と見なされた疾患が、潜在的なターゲットとして企業に再認識され始めま
した。結核などの「見捨てられた疾患」(neglected disease: ND)が、先進
国の間で関心を集めてきています 102。
31
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
新薬開発や臨床試験を行うために、また低いコストで医薬品を製造するた
めに、企業は途上国のリソースに注目し始めました。途上国との連携の多
くが新薬開発の部分的な外注ですが、イノベーション費用の分担の見返り
として、IPの共有(ライセンスに関する同意を通したもの)を行う多国籍企
業もあります 103 。新興マーケット企業のIPマネジメントとアクセスの増進
に関する戦略は、注視していく必要があります。
自国の医療イノベーションと生産性を大きく進展させている途上国もあり
ます。最近、ブラジルが国立の研究機関で有望な3つの抗レトロウイルス
化合物を発見した事を公表しました。この化合物は天然物由来で、薬効と
低毒性が確認されているそうです 104 。キューバはMeningitis B 105 に対する
ワクチンを始めて開発しましたし、インドは世界で最大のdiphteriapertussis-tetanusワクチンの生産量を誇っています 106。
NDに対する多くの新薬を開発するために、ブラジルはバイオテクノロ
ジー企業であるGenzymeと協定を結びました107 。インド政府はND研究に
対する多くのインセンティブを設置しています 108 。「科学と産業研究のイ
ンド協議会」(Indian Council of Science and Industrial Reaserch)とインド
の製薬企業であるLupinのパートナーシップによって、結核治療に将来有
望なSudoterbが生まれました 109。さらに、新興国の企業は貧困地域の医薬
品開発のために南-南協力を強化しています。例えばブラジルのOswaldo
Cruz財団 110 はモザンビークにAPV製品の生産拠点を設置しています。企業
は製品開発パートナーシップ(Product Development partnership: PDP)にも
積極的です。例えば、Ranbaxyは「メディスンズ・フォー・マラリア・ベ
ンチャー」(Medicines for Malaria Venture: MMV)の構成メンバーです。
R&Dの資金面での国際的な団結
世界人口の90%のヘルスニーズを満たす新しい薬剤、ワクチン、診断技術
の生産を確保するためには、R&Dに対して各国が一致団結する事が必須
です。R&Dの真の意味でのグローバル・システムを組み立てるために
は、量、質共に強化された支援が必要です。しかし途上国もまた、自国の
公衆衛生ニーズに関わる疾患に対してイノベーションを促進するための貢
献度を上げ、活動の幅を広げて行く必要があります。グローバルR&Dフ
レームワークは、そうしたR&D改善の取り組みを協調させるのに役立つ
でしょう。
途上国のヘルスニーズに応えるための国際的な協力と協調に関する問題を
打開するアイデアには、様々なものがあります。著名な科学者とNGOが
提言するR&D条約では、まずR&Dに対する各国の貢献の「基準」を定め
32
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
ることが提案されています。これは持続可能なR&Dの資金援助を保証す
るためです。各国は自国の「基準」を守るため、思い思いの方法で援助を
します。例えば、パテント制度を利用した方法(高い薬価を支払う方法)
や 、 直 接 R & D に 資 金 提 供 す る 方 法 が あ り ま す111 。 こ の 条 約 は グ ロ ー バ
ル・フレームワークへの新しいアプローチを提案しており、政府を含めた
関係者の中で深めていくべきものです 112。
製薬業界も、NDの「R&Dのためのグローバル基金」(Global Fund for Research and Development)の独自の構想を導入しています 113 。この基金は臨
床試験を含むR&DプロジェクトへのPDP主導の予測可能で長期的な資金提
供を保証するものです。これによって異なるプロジェクト間の調和と知識
共有が可能になります。この基金は独自の科学的基準に基づいた意思決定
を心がけており、これにより意思決定プロセスに「政治」(politics)が介入
するのを防ぐ事ができます。製品は途上国に低価格で提供されます。また
オープンライセンスによってジェネリックメーカーの競争を促進させる事
もできます 114。
しかし、この業界の提案はPDPによる製品開発への資金提供にしか重点を
おいていません。また、一部のNDしか対象になっていません。この案で
はPDP対象外の疾患、処方、その他の研究優先事項は除外されています。
そのため、この案では新薬の開発は促進されるものの、イノベーションと
医薬品アクセスの間の大きなジレンマを解決することはできません。ND
に対するジェネリック医薬品の生産は可能になるものの、同じ製品のその
他の使用においてはIPは守られたままです 115 。多くの場合、第二選択薬が
途上国にとって問題になります。例えば、デング熱治療においてC型肝炎
治療が未来の新薬の二次薬になった場合、IPが発生し製薬企業によって排
他的に販売されることになります。特にC型肝炎が大きな問題となってい
る貧しい国々で、これは医薬品アクセスの欠乏を引き起こします 116。
すでに提案されたグローバル基金が貧しい国々の疾患のR&Dを改善する
のに前向きな役割を担うのは確かですが、グローバル基金を通してイノ
ベーションを支援していく道は他にもあります。2001年にOxfamは、
WHOの支援の下で50億米ドル規模のグローバル基金の設立を呼びかけま
した。これは貧しい国々の感染症を治療するための新しい薬剤やワクチン
の開発援助を目的としたものです。基金の資本は各国の財力に応じた資金
提供によって賄われます。これは全ての国の責務です。この基金の下では
近年の断片的な研究活動が統合され、明確に決定された優先順位に基づい
て公衆衛生分野の資源配分がなされるでしょう 117。
規模の再編が必要だったり、国々からの査定が必要な基金は、以下の原則
に基づいて作り上げられます。
33
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
• 基金はグローバルR&Dフレームワークの一部である必要があります。ま
た途上国で蔓延する全ての疾患に対する医薬品を重要視すべきです。
• 基金はPDPの内外に関わらず、小企業や国営機関の基礎研究を含めた全
てのR&D関連研究に資金援助すべきです。
• 全ての国々が自国の財力に応じて基金に貢献すべきですし、必然的に全
ての国々が意思決定のテーブルに参加すべきです。
• 基金の資金を元に開発された新しい薬剤、ワクチン、診断技術は、全て
の途上国で適切な価格で提供されるべきです。
• 多国籍製薬企業を越えて科学的専門知識が拡散するためにも、基金の規
約の中に技術移転についての条項を含めるべきです。
健康志向のイノベーションと医薬品アクセスのためのグローバル・フレー
ムワークによって、目的化合物やノウハウ、技術が広く利用可能になるで
しょう。
R&Dへの資金提供のガイドライン
グローバル基金とグローバルR&Dフレームワークには、豊かな国が確実
に、体系的に、効果的に資金を提供する事が必要です。分別ある科学的根
拠に基づいた意思決定に加えて、ドナーはBox7の基準にしたがわなけれ
ばなりません。
Box7: R&Dへの資金提供の基準
• 途上国の大部分を悩ます疾患のR&D費用の報告には、透明性が求められ
ます。正確なR&Dコストの申告が必要です。
• 科学データと実験結果は著作権フリーで共有されるべきです。
• 途上国の長期的なニーズを満たすために、研究機関の機能確立、技術転
移、臨床試験機能の展開とその適切な運営について合意がなされるべき
です。
• 最終製品には適切な薬価が保証されるべきです。
34
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
• 国内外のレベルの意思決定プロセスにおいて、途上国(政府や市民社会)
にも平等な発言権が与えられるべきです。
• 資金提供を含めた国際的な協力について合意がとられるべきです。
多国籍機関の役割
政府や産業界とは別に、多国籍機関にもR&Dで担うべき役割がありま
す。グローバル戦略の実施という役割に加え、WHOはエビデンスに基づ
く新しいイノベーションモデルを評価、促進していかねばなりません。世
界のリソースを有効活用するための研究拠点や様々な財政支援を協調させ
る中心的な役割は、WHOが担うのが最適です。というのも、WHOは構成
国の利益に貢献するという国際的な責務を担っているからです。国連の他
の機関、特にUNDP、UNCTAD、WIPO、UNIDO、世界銀行にも重要な役
割があります。それは、R&Dを発展させて行くために途上国の利益を創
造し、維持して行く事、必要なリソースを育てること、様々なタイプの
R&Dを協調させる有望なフレームワーク作りを喚起していくことで
す 118。
35
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
9. 結論と提言
医療イノベーションの不足は国際問題であり、リソースの大幅な増加と、
効果的で協調的な戦略が必要とされています。現行のR&D体制は各国の
可能性、技術、リソースを十分に活かせていません。開発途上国のR&D
を改善して行こうという試みは断片的で、その場しのぎであり、大規模の
改革を招くものではありません。
イノベーションのグローバル・システムを協調的で効果的な方法で改善し
て行くために、Oxfamは以下の提言をします。
1. WHOは多方面の機関と協力し、医療分野の「R&Dのためのグローバル
基金」(Global Fund for Research and Development)を設立するにあたっ
てリーダーシップを発揮すべきです。このグローバル基金はR&Dフ
レームワークと連携するべきです。この基金に対しGDPに応じた寄付を
全ての国がすべきですし、また慈善セクターの参加も望まれます。課題
の優先順位の決定には、全ての協力者が関わるべきです。
2. 新規化合物の発見や新薬開発に加えて、発展途上国や、その中でも女性
や子どもといった集団のニーズに対応するような処方についても、全て
の国家、慈善財団、製薬企業、製品開発パートナーシップによるR&D
の議事項目に加えてゆくべきです。
3. 例えば、賞金ファンドは特許制度の欠陥を回避する事ができます。パテ
ントプールは特許制度がイノベーションの障壁になるのを防ぎます。特
別なニーズを満たせるかという観点で、こうした新しいR&Dインセン
ティブに対しドナーや発展途上国が実施と評価をしていくことが必要で
す。結核賞金ファンドとUNITAIDパテントプールは、創造的なフレー
ムワークのさらなる展開のためのよい見本となっています。
4. ODAや自国の研究予算を通して、ドナー国は発展途上国を広く苦しめ
ている疾患のR&Dへの援助を拡大してゆくべきです。発展途上国は自
国の予算をR&Dに優先的に割くべきです。全ての国はR&Dフレーム
ワークを通じて、大学や研究機関、民間資金と協調しながらR&Dに貢
献してゆくべきです。こうしたフレームワークは、「国際保健パート
ナーシップ」(International Health partnership: IHP)のような発展途上
国に対するヘルスエイドの合理化への第一歩となるかもしれません。
5. 民間の慈善財団を含むドナーは、R&Dに対する資金援助の優先順位を
決定する際に、国際的な合意がとられた基準にしたがわなければなりま
36
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
せん。具体的には、R&Dに対する資金援助の質と量に関する情報の透
明性や、関連する情報へのオープンアクセス、途上国の学界や研究機関
の萌芽の育成、技術移転の支援、途上国の持続可能な臨床試験能力開発
の長期計画、意思決定における発展途上国と市民社会の参加、製品の
オープンライセンスを含む開発製品のアベイラビリティなどが資金援助
の際に確保されていることが重要です。
6. 発 展 途 上 国 の 疾 患 に 適 応 し た 新 し い ヘ ル ス ニ ー ズ に 応 え よ う と し た と
き、IP制度には欠陥があることを、製薬企業や大学は認識しなければな
りません。また企業や大学は専門知識や化合物ライブラリーへのアクセ
ス権を提供し、PDPsを支援しなければなりません。さらにNDに取り組
む単独または共同の研究センターを展開し続けなければなりません。
R&Dの過程で生じるコストを削減し、効果のある新薬をいち早く患者
に届けるために、ジェネリック企業、バイオテクノロジー企業、学界は
早期開発段階から協力するべきです。
37
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
注(Notes)
on Health Research for Development, Health Research: Essential Link to Equity in Development, New York, Oxford University
Press, 1990 (www.cohred.org).
1Commission
2途上国の全ての健康問題に関する研究に割り当てられた世界中の総支出
額は測定が難しいものの、「ヘルスリサーチに関するグローバルフォー
ラム」(Global Forum for Health Research)などの研究によれば、「途上
国のニーズにに対するヘルスリサーチは、多くの分野で総じてリソース
不足です。そして『10/90ギャップ』という言葉は、現時点の数字を表し
ているわけではありませんが、ニーズと投資の継続的なミスマッチを象
徴」しています。10/90ギャップについてはwww.globalforumhealth.org
USA, Investing in Global Health Research: Neglected Tropical
Diseases, Washington: Families USA, 2007, p. 2. Available at
http://familiesusa.org/issues/global-health/global-health-neglected.pdf
(last accessed: October 2008).
3Families
4NTDは問題の一端でしかない事に注意しなければなりません。NDは
WHOによって「低所得国の農村で暮らす貧しい弱者を排他的に苦しめる
疾患」と定義されています。これには、leishmaniasis、onchocerciasis、
Chagasdisease、eprosy、結核、schistosomiasis、lymphaticfilariasis、sleepingsickness、denguefever が含まれます。次のレポートはい
わゆるTypeI、II、III疾患別に、途上国のヘルスニーズについて論じて
います。Fn.9を参照して下さい。P.Hunt(2007)‘Neglected Diseases:
A human rights analysis’, World Health Organization. Available at:
www.who.int/tdr/publications/publications/pdf/seb_topic6.pdf (last accessed October 2007)
Trouiller, P. Olliaro, E. Torreele, J. Orbinski, R. Laing, and N. Ford
(2002) ‘Drug development for neglected diseases: a deficient market and a
public-health policy failure’, The Lancet 359 (9324): 2188–94; for updated figures, see E. Torreele and P. Chirac (2005) ‘Global framework on
essential health R&D’, The Lancet 367 (9522): 1560–1.
5P.
6最貧国は、2016までに製薬に関する特許規定を免除されています。
7
WHO: ‘Public Health, Innovation and Intellectual Property Rights. Report
of the Commission on Intellectual Property Rights, Innovation and Public
Health’, Geneva, 2006. Available at
www.who.int/entity/intellectualproperty/report/en/index.html (last accessed October 2008).
88番目のMDGの目標の一つは、『「製薬企業と協力して」、途上国の適
正価格の必須医薬品アクセスを確保する』ことです。
38
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
9例えば、イタリアでマラリアやleishinimiasisといったNDが増えている
事を指摘するレポートが最近出されました。これらの疾患はサハラ以南
のNDとして有名ですが、西洋では最近まで実際に知られてはいませんで
した。Guardiannewspaperの’Climatechangebringsmalaria back to
Italy’を参照して下さい。
イタリアで広まりつつある別の疾患に、chikungunyaがあります。これ
は熱帯ウイルスによるもので、ワクチンがありません。BBC
の Mosquitovirus arrives in Europe’を参照して下さい。
10
「TypeⅡ疾患は豊かな国と貧しい国の両方で発生していますが、そのほ
とんどが貧しい国で起きています。HIV/AIDSと結核がその例です。
Type"疾患は、途上国で圧倒的にあるいは排他的に発生しているもので
す。African sleeping sickness (trypanosomiasis)、African river blindness
(onchocerciasis)がその例です。」(WHO, 2006, op. cit., fn. 7) しかし、
豊かな国でも貧しい国でも発生しているマラリアや糖尿病といったType#
疾患にも、途上国の状況に適応した製品の為のリサーチニーズがありま
す。
Briefing Paper, ‘Patents vs Patients: Five Years after the Doha
Declaration’, November 2006 at
www.oxfamamerica.org/newsandpublications/publications/briefing_papers
/patents_patients/Doha5_Final_paper_101106_2.pdf
11Oxfam
12Moranらによれば、製薬企業は「効率的に利益を生まない感染症部門
を縮小、スピンオフ、閉鎖しています。こうした製薬企業には、
HepatitisCやHIVといった豊かな国で収益をもたらすような感染症に
対するプログラムを抱えていた企業も含まれ」ます。M. Moran, A. Ropars, J. Guzman, J. Diaz, C. Garrison: 'The New Landscape of Neglected
Disease Drug Development', London School of Economics and Political
Science/ Wellcome Trust: London, 2005, p. v.
13「特許のいばら」とは、幾十にも重なる特許によって、特許侵害の観
点から企業のさらなる製品開発や商品開発が妨げられる事を言います。
Heller (2008) ‘Where Are the Cures: How patent gridlock is blocking
the development of lifesaving drugs’, Forbes, August 11, 2008 at
www.forbes.com/forbes/2008/0811/030.html
14M.
C.Cookson (2008) ‘Patent war hits life sciences’, Financial Times, September 24, 2008 at
www.ft.com/cms/s/0/fdff91e6-89d0-11dd-8371-0000779fd18c.html?nclick
_check=1
Birgit Verbeure, Esther van Zimmeren, Gert Matthijs, Geertrui Van Overwalle: ‘Patent pools and diagnostic testing’, TRENDS in Biotechnology,
Vol. 24, No. 3, March 2006.
39
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
15真のイノベーションを促進する代わりに、製薬企業は、IPルールに基づ
く保守的なインセンティブを原因の一部として、製薬の特許の拡充に力
を注いでいます(ever-greening)。これはブロックバスターの収益を確保
し、真のイノベーションの代わりに’Me-too‘医薬品を開発する為です。
161975年から1997年までのうち、R&D活動から得られたNDに対する医薬
品、ワクチンの数がわずか13であったというのは、有名な話です。さら
に1999年から2004年の間には、NDの新薬は3つでした。Cf. P. Trouiller,
P. Olliaro, E. Torreele, J. Orbinski, R. Laing, and N. Ford (2002) ‘Drug
development for neglected diseases: a deficient market and a public-health
policy failure’, The Lancet 359 (9324): 2188–94; for updated figures see
E. Torreele and P. Chirac (2005) ‘Global framework on essential health
R&D’, The Lancet 367 (9522): 1560–1.
17世界では、感染症によって年間1100万人の方が亡くなり、そのうちの
ほとんどが低ー中所得国で起きています。HIV/AIDS、結核、低呼吸感
染症といった3つの感染症が、途上国でとくに多くの人々の命を奪って
います。感染症は特に途上国の子どもたちの命を奪います。WHOの統計
によれば、低ー中所得国の子ども達の死因のトップ10のうち、実に7つ
が感染症で、毎年650万人の方が亡くなっています。www.dcp2.org/file/
6/DCPP-InfectiousDiseases.pdf
18NTDは、NDの一部です。NTDは一般にはType"疾患として知られてお
り、途上国で圧倒的にあるいは排他的に発生しているものです。African
sleeping sickness (trypanosomiasis)、African river blindness
(onchocerciasis)がその例です。WHOによれば、次の疾患がNTDとして
知られています。African trypanosomiasis、Chagasdisease、Dengue
fever、Leishmaniasis、Leprosy、Lymphaticfilariasis、Malaria,Onchocerciasis、Schistosomiasis、tuberculosis.
World Health Organization
(WHO), Neglected Tropical Diseases: Hidden Successes, Emerging Opportunities (Geneva: WHO, 2006).
19www.who.int/tdr/diseases/default.htm
development for maternal health cannot be left to the whims of the
market’, The PLos Medicine Editors, S Med 5(6): e140
doi:10.1371/journal.pmed.0050140, June 24, 2008
20‘Drug
212006年、新たに920万人の結核が報告されました。www.who.int/tb/
publications/2008/factsheet_april08.pdf for more information.
22
M. A. Aziz, A. Wright, A. Laszlo, A. De Muynck, F. Portaels, A. Van
Deun, C. Wells, P. Nunn, L. Blanc, and M. Raviglione, for the WHO/
International Union Against Tuberculosis And Lung Disease Global Project on Anti- tuberculosis Drug Resistance Surveillance (2006): ‘Epidemiology of antituberculosis drug resistance (the Global Project on Antituberculosis Drug Resistance Surveillance): an updated analysis’, The
Lancet 368 (9553): 2142–54.
40
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
23
www.usaid.gov/our_work/global_health/id/tuberculosis/techareas/tbhiv.ht
ml
www.newscientist.com/channel/health/hiv/dn12871-tb-vaccine-poses-threa
t-to-hivpositive-babies.html
24
Global Alliance for TB Drug Development (TB Alliance): Pathway to Patients. Charting the Dynamics of the Global TB Drug Market, 2007. Available at:
www.tballiance.org/downloads/publications/Pathway_to_Patients_Overvie
w_FINAL.pdf
25
Médecins Sans Frontières – Campaign for Access to Essential Medicines:
‘Putting Patients’ Needs First: New Directions in Medical Innovations’,
2008
useを試算した報告書の草案の中で、
WHOの専門家が計算した値に基づくものです。治療はしばしば‘offlabel‘になり、結果的に潜在的な危険性のある過小/過剰投与を引き起こ
します。HIVや結核などの疾患は複数の薬剤の投与が必要で、しばしば
一日に複数回の服薬が必要な場合があります。したがって固定用量複合
剤が、唯一承認のための実用的なものさしである場合があります。子ど
もたちは潜在的な栄養失調や寄生虫への感受性と合わせて、複数の疾患
に苦しんでいる可能性があります。
26この数字は、医薬品のoff-label
27www.who.int/phi/en/
28
‘Global Strategy and Plan of Action on Public Health, Innovation and Intellectual Property’, WHA 61.21, 24.05.2008. Available at
www.who.int/gb/ebwha/pdf_files/A61/A61_R21-en.pdf
これはIPを重要な仕組みとして捉えてはいるものの、一方でWHOや全
ての国々にイノベーションを届ける新しい方法を認識するよう呼びか
け、さらには既存の技術を公平に共有することを呼びかけるものです。
Mintzberg, ‘Patent nonsense: evidence tells of an industry out of social control’, Canadian Medical Association Journal 175 (4), 15 August
2006, www.cmaj.ca/cgi/content/full/175/4/374
29H.
30Oxfamの調査によれば、欧州委員会は結核、HIV/AIDS、マラリア克服
の為に4.5億ユーロ、その他のNDの克服の為に4500万ユーロを出資して
います。
International Federation of Pharmaceutical Manufacturers Association (IFPMA)によれば、今後10年の間に製品開発を完遂する為に約103
億米ドルが必要だといいます。しかしこの数字は独立した第三者の試算
ではなく、R&D費用の計算には誇張が含まれているかもしれません。
31The
41
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
Innovative Medicines Initiative (IMI)という新しい資金
援助の流れを発表した。これはR&Dを支援する為に7年間に渡って20億
米ドルを用意するというもので、豊かな国の様々な疾患を克服する為に
製薬企業と協力して行っていくというものです。この総額は、1996年の
集計開始から公私基金を通して全てのPDPによって使われた14億ドルと
いう試算値を大きく上回ります。豊かな国で新薬が必要とされている事
は事実ですが、途上国の疾患に対する医薬品の圧倒的な欠乏は、貧しい
人々をむやみに苦しめ続けることを意味します。
Andrew Jack: ‘EC nears deal with drug makers’, Financial Times, 20 December 2007.
32例えばEUはthe
33大学、公的機関、製薬企業のさらなる連携によって、新規化合物、研
究設備、科学知識がパブリックドメインで利用可能でないことに対する
懸念が高まります。それにより、科学イノベーションをニッチの狭い商
業ニーズに限定してしまう事が問題です。大学自体は次第にIPの公開を
渋るようになっています。これは個別のマンデートに関わらず、IPを商
業利益のソースとしてしか考えていないためです。大学を‘patent
trolls’と呼ぶオブザーバーもいます。
M. Lemley (2007) ’Are Universities Patent Trolls?’, Stanford Public Law
Working Paper No. 980776 at
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=980776, Aptil 11,
2007.
34
www.vaccineamc.org/files/AMC_FactSheet_v2.pdf
35
T. Von Schoen Angerer (2008) ‘Questioning the 1.5 billion dollar vaccine
deal’, Development Today, April 25 2008.
36最近、アメリカはHIV/AIDS、結核、マラリアといった感染症克服ワク
チンの開発のためのAMCへ資金提供をするための法律を成立させまし
た。
set target price’でワクチンを提供するように求め、その後は最低価格の‘tail price’で提供するように求めるものです。
37このスキームは、企業に対して助成金が続く限りは
383つの新薬は既に市場に出回っており、その他のいくつかの新薬は臨
床試験の後半のフェーズに到達しています。この3つのPDPの医薬品は
次のような文章とともに登録されました。paramomycin intramuscular
injection (IM) for visceral leishmaniasis [Institute for OneWorld Health,
IoWH], artesunate+amodiaquine fixed-dose combination (FDC) for malaria [Drugs for Neglected Diseases Initiative, DNDi], and artesunate+mefloquine FDC for malaria [DNDi].
42
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
WHO 2006, pp. 75–76, op. cit., fn. 7. Also R. Widdus and K. White
(2004) ‘Combating Diseases Associated with Poverty: financing strategies
for product development and the potential role of public–private partnerships’, Initiative for Public–Private Partnerships for Health, 2004. Available at www.globalforumhealth.org/filesupld/ippph_cd/06.PDF
39See
40PDPから出た二つの製品は、特許がありません。これは抗マラリア薬の
ASAQとparomyocinです。
41Oxfam委託の調査によれば、PDPが開発の初期段階から関わっていた
り、開発コストの大部分を負担している場合は、PDPがIPを獲得する傾
向が強いようです。
42中所得国に提示される薬価は、最貧国に提示される薬価と同程度でな
ければなりません。
Global Strategy from the Inter-Governmental Working Groupのsection 2.4bでは、「途上国の公衆衛生ニーズに関連した知識と技術のさら
なるアクセス向上」が呼びかけられています。これは特に「政府から支
援を受ける全ての研究者が、自分たちの最終結果報告の電子版をデータ
ベースに供する事を強く徹底されることで、政府援助の研究の結果への
パブリックアクセスを向上させる」というものです。例えば、豊かな国
の政府は、パブリックアクセス可能な科学的データベースを構築する事
ができます。the NIH Pubmed Central and the Wellcome Trust Initiativesが、科学論文とデータへのアクセス拡大の先駆けです。
43WHO
44民間セクターと大学の化合物ライブラリーへのアクセス拡大は、新し
いWHO Global Strategy and Plan of Actionの要です。
research on Product Development Partnerships,
Suerie Moon, August 2008.
45Oxfam-commissioned
Diseases Amendment to the Food and Drug
Administration Revitilization Actで導入されたものです。
関連項目www.fda.gov/oc/initiatives/HR3580.pdf (pages 151-153 of the
PDF)
46優先審査保証は、Negleted
47この証券は第三者に譲渡可能です。
48PRVは特許期間は延長しないものの、特許の実用期間を効果的に延長さ
せます。
49PDPは豊かな国の疾患の医薬品の開発/販売はしませんが、証券を第三
者(多国籍製薬企業)に一定額で売却する事ができます。
Moran, A. Ropars, J. Guzman, J. Diaz, and C. Garrison (2005) 'The
new landscape of neglected disease drug development' London School of
Economics and Political Science; Wellcome Trust: London, 2005. Available at:
www.wellcome.ac.uk/stellent/groups/corporatesite/@msh_publishing_grou
p/documents/web_document/wtx026592.pdf (Last accessed: Oct. 2008)
50M.
43
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
51これはNDの医薬品開発に対する税額控除を導入する複数の法律によっ
て提案されたものです。
Senate Bill No. 2351 (110th Congress), or ‘A bill to amend the Internal
Revenue Code of 1986 to provide a tax credit for medical research related
to developing infectious disease products’ introduced on November 14,
2007 entitled.
WHO Global Strategy and Plan of Actionのsection 2.4bにおいて、
各国に対してさらなる開発、公私基金による投資や、適切なライセンス
ポリシーを通したノウハウの拡散を呼びかけました。これには途上国の
公衆衛生ニーズに関連する、合理的で、適正価格で、非差別的な製品開
発の為のイノベーションへのアクセスを促すオープンライセンスも含ま
れますが、これに限った話ではありません。
52The
53Novartisは、CoartermのFDA申請に関するOxfamの追求に対して「
NovartisはFDAの承認を獲得しています。Coartermに関して、米国の
NDAに申請するというNovartisの決定は、PRV法の制定に先立ってなさ
れたもので、その一部は患者のニーズとFDAの奨励によってもたらされ
たものです。」と答えています。
Orphan Drug Actは患者数が20万人以下の疾患の医
薬品を対象にしています。
54アメリカでは、the
55WHO,
2006, pp. 86-87, op. cit., fn. 7.
T.J. Tucker and M. Makgoba: ‘Public-private partnerships and
scientific imperialism’, Science, Vol. 320, 23 May 2008, pp. 1016-17.
56Cf.
57欧州委員会はこの点での進展を試みています:2008年11月、研究
ギャップ認識し、資金援助の優先順位付けをするための‘Challenges for
the Future – Research on HIV/AIDS, Malaria and TB という会議が開か
れました。
http://poverty-related-diseases.teamwork.fr/?page=intro&type=
Disease
Control、the Fogarty Institute、USAID、the Department of Defense、
58例えば、アメリカではNDに対する出費は、NIH、Centersfor
NIAIDといった様々な機関や省庁に属しています。多数の研究機関や開
発機関がカナダやEUに依存しています。
59両者とも、散発的な大流行によってこの40年間に数千人の死者を出し
ています。Ebolaは感染力が高く、これ以上の死者を避ける為にも世界は
さらなる流行に備えなければなりません。
Oxfam research, Johanna von Braun. Interview with Ole Olesen
– DG Research of the European Union, Neglected Diseases Unit.
60Internal
44
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
61例えば適応のある新しい抗生物質がこの分類に含まれます。多くの団
体が事態改善に向けて努力を続けているものの、供給ルートは依然とし
て枯渇しており、公衆衛生に大きなリスクをもたらしています。
Pneumonia、neonatal sepsis、maternal sepsisといった感染のおそれのある疾患対し、効果的な抗生物質が求められ
ています。
and www.cbd.int/chm/ for more
information. National focal points of the Clearing House Mechanism provide, among other things, information about available technologies. They
could be extended to co-ordinate funding schemes at the national level.
62www.internationalhealthpartnership.net
63その他のタイプの協力も必要です。例えば、ある団体が新規の臨床試
験拠点の設置に関してどのように資金を運用したかを記録し、他の企業
やPDPがそれを利用できるようにします。またスクリーニングの段階で
弾かれた化合物を共有することで、他の研究者の活動との重複が避けら
れます。
Ecology International: ‘IGWG Submission on Collective
Management of Intellectual Property – The Use of Patent Pools to Expand
Access to Needed Medical Technologies’, 30 September 2007. Available at
www.who.int/phi/public_hearings/second/contributions_section2/Section2
_ManonRess-PatentPool.pdf
64Knowledge
65情報技術の分野では、似たような手法が一般的です。
World AIDS Conference)の中で、Gilead
Sciences、Johnson and Johnson、Merckの3つの多国籍製薬企業がパテ
ントプールに対して試験的な援助をほのめかしました。Glaxo Smith
Kline は「原則的に」パテントプールの使用を支援するポリシーを発表
しました。
66NGOとの公開会議(特にthe
67www.innocentive.com
68
S.2210 the Medical Innovation Prize Fund Act of 2007, first introduced in
2005 as H.R. 417. Available at: www.keionline.org/miscdocs/Prizes/experts_on_s2210.pdf
69参加は自発的です。賞金制度の批判の一つに、ヘルスインパクトの測
定の難しさと適切な金額の設定の難しさが挙げられます。したがって専
門家の中には、制度の有効性を調査し、測定技術の向上よりも個人への
賞金授与を先にすべきであると主張する人もいます。カナダやオースト
ラリア
70BoliviaとBarbadosは、いくつかの疾患の治療薬の開発の為の5つの賞
金制度を提案しました。提言に関しては、次を参照して下さい。
www.keionline.org/index.php?option=com_content&task=view&id=4
45
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
Working Document – Barbados and Bolivia. Proposal 1: Prize Fund for
Development of Low-Cost Rapid Diagnostic Test for Tuberculosis.’ Available at www.keionline.org/misc-docs/b_b_igwg/prop1_tb_prize.pdfこの
賞金は様々な多国籍機関や国の公的機関の代表者によって管理され、政
府から直接、あるいは異なる形の資金援助を受けます。
71
Knowledge Ecology InternationalやMSFなどによって最近提唱されてい
る結核賞金ファンドには、オープンソース・オープンアクセスな重要な
要素があります。これは基本的に共同研究や知識へのアクセスを刺激す
るいくつかのインセンティブを含んでいます。例えば、賞金の一部は研
究やデータ、技術を開放した、受賞者とは関係のない科学者や技術者に
送られます。これは最終的な成果に対し、どれだけ外部から貢献したか
によって決まります。
TB Partnership、UNITAID、Foundation for Innovate
New Diagnostics(FIND)が今後4年で16ヶ国で導入される薬剤耐性結核の
診断を発表しました。これは新規化合物によるテストで、2日で診断が
できます。 Rapid Tests for Drug-resistant TB to be Available in Developing Countries’, 30 June 2008. Available at
www.who.int/tb/features_archive/mdrtb_rapid_tests/en/ (last accessed:
October 2008).
72最近WHOやStop
73診断のために必要な関連する特許、データ、ノウハウの権利を獲得す
るために、ライセンス機関(the TB Licensing Agency: TBLA)が設置され
ます。
74少なくとも最多貢献賞金の半額は、途上国で活動する研究チームのた
めに割り当てられています。
for more information and to download A.
Hollis, T. Pogge (2008) ‘The Health Impact Fund. Making New Medicines
Accessible for All’, Incentives for Global Health, 2008.
75www.yale.edu/macmillan/igh/
76‘HIF’-計画の立案者達は、政府とドナーの出資が年間で60億米ドルであ
る事を条件として毎期しています。さらに、この額はHIFの成長に伴っ
て拡大する可能性があります。
77Hollis/Pogge
(2008) p. 1, op. cit.
78薬の限界収益価格(HIFが開発会社のデータに基づいて算出)が、ジェネ
リックメーカーの自由競争環境下での価格よりも高いのではないかとい
う懸念があります。また競争の制限によって、規模の経済が制限され、
薬価が高くなるという指摘もあります。寡占モデルの批判として、下記
リンクを参照して下さい。Jamie Love. Open licensing vs Monopoly Controlled Supply. Available at:
www.keionline.org/index.php?option=com_jd-wp&Itemid=39&p=112
79しかしながら、カナダやオーストラリアなどのいくつかの国で、最近
になって市場に出た新薬のヘルスインパクトを測定する方法が開発され
たことは注目すべきです。これはとくに、薬の治療有意性を既存の他の
介入と比べるものです。
46
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
80Oxfamは、支援が予測可能的に、長期的に、可能ならば貧しい国の予算
もしくは保健セクターに直接与えられることを条件としています。これ
は途上国内の発展を援助し、自国のニーズに合った科学政策を可能にす
るためです。支援は豊かな国の商品やサービスの販売状況に左右されて
はなりませんし、途上国に特定の政策の実施を強要するものではありま
せん。結局、支援の方法は透明で合理的でなければなりません。
81最近では、ドイツのみが小数の国の現地生産を支援しています。
J. Haakonsson (2008) ‘Governance and Upgrading in the Global Value
Chain for Pharmaceuticals. With Case Studies on Uganda and India’, unpublished PhD Thesis, Department of Geography, University of Copenhagen.
82S.
83
GTZ (2007) ‘The Viability of Local Pharmaceutical Production in Tanzania’, Eschborn, 2007, pp. 43-44. Available at:
www.gtz.de/en/themen/laendliche-entwicklung/13421.htm (Last accessed:
Oct. 2008)
T. Kearney (2006) ‘Make Your Move: Taking Clinical Trials to the
Best Location’, available at www.atkearney.com
84A.
85
K.S. Jayaraman: ‘Outsourcing clinical trials to India rash and risky, critics warn’, Nature Medicine, Vol. 10, No. 5 (May 2004), p. 440.
(ibid.)によれば、「FDAは参加者の20%以上が
途上国出身者の場合、そのデータを承認しない」といいます。
86しかしながらJayaraman
87「2005年、インドの臨床試験産業は1億米ドル規模である」
The Associated Chambers of Commerce and Industry of India: ‘White
Paper on Indian Pharma Industry Quest for Global Leadership’, 2006.
Available at www.cygnusindia.com/Articles/
Indian_Pharma_Industry_Quest_for_Global_Leadership-09.11.pdf
Ellis: ‘Operational challenges: clinical trial partnerships in Africa’,
DNDi Newsletter, June 2008, www.dndi.org/newsletters/16/4_1.html
88Sally
89しかし最近の研究によれば、サハラ以南のアフリカには既にマラリア
治療薬の新しいパイプラインをテストする十分な能力があるといいま
す。Moran et al, Clinical Trial site capacity for malaria drug
development’, Health Partnerships Review, Global Forum for Health
Research at www.globalforumhealth.org/filesupld/hpr/
HealthPartnershipsReview_Full.pdf
47
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
90
Piero O. Olliaro and Steven C. Wayling: ‘Facing dual challenge of developing both products and research capacities for neglected diseases’,
Global Forum for Health Research: Health Partnerships Review. Focusing
collaborative efforts on research and innovation for the health of the poor.
Available at
www.globalforumhealth.org/filesupld/hpr/HealthPartnershipsReview_Full.
pdf
leishmaniasisの治療に対する臨床
試験に関しては、「現場に適応したより簡便な診断技術がない場合、
lumbar puncturesやsplenic aspirates といった侵襲の技術を用いて」診断
を確定させるべきです。(Ellis, op. cit., fn. 9)
91例えば、sleepingsicknessやvisceral
92仮に新薬が臨床試験を通過し、市場への導入を承認された場合、途上
国および先進国での医薬品の有効性調査への協力への見返りとして、参
加者は無料で治療を受け続ける必要があります。さらに言えば、低コス
トかつ承認期間の短縮によって企業はその分の利益を得ているわけで
す。これは特にType #疾患にいえることです。
93Olliaro
and Wayling, op. cit., fn. 10.
Emergency Plan for AIDS Relief)
Reauthorisation Billを通して途上国の臨床試験能力開発に投資していま
す。これはUSAIDを、途上国の機関強化や、途上国の臨床試験のプロト
コル管理、及び実行能力の向上を目的とした公私パートナーシップの利
用権限をもつ機関としています。
94アメリカは特にPEPFAR(President’s
95www.edctp.org
96
Naomi Antony: ‘Clinical Trials in Africa Receive Funding Boost’, 6 June
2008. Available at:
www.scidev.net/en/health/malaria/news/clinical-trials-inafrica-receive-funding-boost.html
97
Naomi Antony: ‘Clinical Trials in Africa Receive Funding Boost’, 6 June
2008. Available at:
www.scidev.net/en/health/malaria/news/clinical-trials-inafrica-receive-funding-boost.html
98
99
www.fic.nih.gov
21 February 2008. See
www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+TA+P6-T
A- 2008-0067+0+DOC+XML+V0//EN&language=EN
100
Oxfam International: ‘Investing for Life: Meeting Poor People’s Needs
for Access to Medicines through Responsible Business Practices’, 2007.
Available at www.oxfam.org/files/bp109-investing-for-life-0711.pdf
101IMS
Health, World Pharmaceutical Market Summary (2008)
48
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
102アメリカでは、NDは女性と子どもを苦しめています。地理的には
MississippiDelta、Apalachia、メキシコ国境付近の内部の都市で顕著です。
Steve Sternberg: ‘US poor are vulnerable to neglected diseases’, USA
Today, 25 June 2008.
103
P. Engardio and A. Weintraub (2008) ‘Outsourcing the Drug Industry’,
Business Week, September 4, 2008 at:
www.businessweek.com/magazine/content/08_37/b4099048471329.htm
104
‘Brazil discovers new ARV candidates’, Scrip World Pharmaceutical
News, No 3394, 4 September 2008.
105
WHO, 2006, p. 145, op. cit., Fn. 7.
106DPTワクチンのその他の主要な生産拠点は、韓国とブラジルです。
press release, ‘Oswaldo Cruz Foundation and Genzyme Form
Collaboration to Advance New Drugs for Neglected Diseases’,
www.genzyme.com/corp/media/GENZ%20PR-072307.asp
107Genzyme
108Oxfam委託の調査によれば、インセンティブには臨床試験への資金援
助や準公的機関への直接的な資金援助、ソフトローンなどが含まれま
す。
109しかしながら、LupinはインドとアメリカでIP権利の取得に失敗し、製
品へのアクセスに悪影響が出ています。
www.csir.res.in/External/Utilities/Frames/collaborations/main_page.asp?a=t
opframe.htm&b=leftcon.htm&c=../../../Heads/collaborations/Nmitli.htm
110
www.fiocruz.br
111
T. Hubbard and J. Love (2004) ‘A new trade framework for global
healthcare R&D’, PLoS Biology, Vol. 2, No. 2, February 2004, pp. 01470150. Available at http://biology.plosjournals.org/perlserv/?request=getdocument&doi=10.1371/journal.pbio.0020052 (last accessed October
2008).
112条約の可能性と挑戦への合理的で誠実な探求どころか、製薬企業のみ
ならず、企業出資のアカデミック機関からも多数の批判を受けていま
す。
113NDのR&D基金は、2007年の11月のWHOIGWGの会議で初めて多国
籍製薬企業のメンバーによって導入されました。その後のプレゼンテー
ションは、様々な会合や会議、ワークショップで行われています。
World Health Assemblyの期間中にOxfamがNovartisから得たものです。
114この情報はthe
49
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
115ND医薬品のための研究基金から得られたデータの恩恵を受けている製
薬企業は、異なる目的でそのデータを使用する場合には相応の金額を支
払うべきです。
1163190万人という試算値は、アフリカだけでHepatitisCに苦しむ人々の
数です。世界には1.7億人の患者がいます。
www.who.int/mediacentre/factsheets/fs164/en/
117
Oxfam Great Britain: ‘Fatal Side Effects: Medicine Patents under the
Microscope’, 2001. Available at
www.oxfam.org.uk/resources/policy/health/downloads/fatal_side_effects.rt
f(last accessed October 2008).
Global Strategy and Plan of Actionの実行のため
にどうベストを尽くせるかといった内部のアセスメントを得なければな
りません。
118これらの機関は、the
50
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
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Patents vs. Patients: 5 years after the Doha Declaration, Oxfam Briefing
P a p e r N o . 9 5 , N o v e m b e r 2 0 0 6 a t : h t t p : / / w w w. o x f a m a m e r i c a . o rg /
newsandpublications/publications/briefing_pap ers/patents_patients/
Doha5_Final_paper_101106_2.pdf
Public Health, Innovation and Intellectual Property Rights, Commission on
Intellectual Property, Innovation and Public Health, May 2006 at http://
www.who.int/intellectualproperty/report/en/index.html.
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
© Oxfam International November 2008
This paper was written by Rohit Malpani, Corinna Heineke, and Dr Mohga
Kamal- Yanni. Oxfam acknowledges the assistance of Philippa Saunders,
Esmé Berkhout, Suerie Moon, Johanna von Braun, Nicoletta Dentico,
Donald Light, Anthony So, Nabiha Syed, Ben Krohmal, and Nimisha Pandey
in its production. It is part of a series of papers written to inform public
debate on development and humanitarian policy issues.
The text may be used free of charge for the purposes of advocacy,
campaigning, education, and research, provided that the source is
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
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100 countries to find lasting solutions to poverty and injustice: Oxfam America, Oxfam Australia,
Oxfam-in-Belgium, Oxfam Canada, Oxfam France – Agir ici, Oxfam Germany, Oxfam GB, Oxfam
Hong Kong, Intermón Oxfam (Spain), Oxfam Ireland, Oxfam New Zealand, Oxfam Novib
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
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New York: 355 Lexington Avenue, 3rd Floor, New York, NY 10017, USA
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Linked Oxfam organisations. The following organisations are linked to Oxfam International:
Oxfam India - 2nd floor, Plot No.1, Community Centre (Sujan Mohinder Hospital), New Delhi,
India,
Tel: +91 (0) 11 4653 8000, fax: +91 (0) 11 4653 8099, email: [email protected],
website: www.oxfamindia.org Oxfam International and Ucodep Campaign Office Via Masaccio, 6/
A 52100 Arezzo, Italy Tel +39 0575 907826, Fax +39 0575 909819 email: [email protected]
Oxfam observer member. The following organisation is currently an observer member of Oxfam
International, working towards possible full affiliation:
Fundación Rostros y Voces (México) Alabama 105, Colonia Napoles, Delegacion Benito Juarez,
C.P. 03810 Mexico, D.F.
Tel: + 52 5687 3002 / 5687 3203 Fax: +52 5687 3002 ext. 103 E-mail:
comunicació[email protected] Web site: www.rostrosyvoces.orgT
All information is correct as of 2008.
For inquries in regards to Japanese translation, please contact:
Oxfam Japan Maruko bldg. 2F, 1-20-6, Higashi-Ueno, Taito-ku, Tokyo 110-0015, Japan
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Web site: www.oxfam.jp
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公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper, November 2008
英日用語集(glossary in English and in Japanese)
A
Accra summit on
aid-effectiveness
Advanced Market
Commitment (AMC)
援助効果に関するア
クラサミット
事前買取制度
aid-effectiveness principles 援助-効果原則
C
Convention on Biological 生物多様性情報クリ
Diversity’s Clearing House アリング・ハウス・
Mechanism
メカニズム
D
disease burden
疾病負担
Doha Declaration on
TRIPS and Public Health
TRIPSと公衆衛生に
関するドーハ宣言
E
economies of scale
規模の経済
European and Developing ヨーロッパ-途上国臨
Countries Clinical Trials
床試験パートナー
Partnership
シップ
F
fixed-dose combination
固定用量配合剤
G
George Institute for
International Health
国 際 保 健 の た め
ジョージ研究所
K
Knowledge Ecology
International
知識エコロジー・イ
ンターナショナル
M
Medical Innovation Prize
Fund Act
医療イノベーション 賞金ファンド条例
Medicines for Malaria
Venture (MMV)
メ デ ィ ス ン ズ ・
フォー・マラリア・
ベンチャー
Millennium- Development ミレニアム開発目標
Goals (MDG)
N
neglected disease
見捨てられた疾患
non-tariff trade barriers
非関税障壁
O
official development
assistance
政府開発援助
Orphan Drug Credits
オーファンドラッ
グ・クレジット
P
patent pool
特許プール
priority review vouchers
(PRV)
優先審査保証
Product Development
Partnership (PDP)
製品開発パートナー
シップ
public-private entity
パブリック-プライ
ベート連合
Global Alliance for
Vaccines and
Immunizations (GAVI)
ワクチンと予防接種
のための世界同盟
Global Strategy and Plan
of Action
(WHO)グローバル戦
略と行動計画
H
Health Impact Fund
(HIF)
R
Research and Development 研究開発
ヘルスインパクト基
金
S
South-South co-operation
南-南協力
T
Tax Credits
税額控除
I
Incentives for Global
Health (IGH)
グローバルヘルスの
ためのインセンティ
ブ
Indian Council of Science 科学と産業研究のイ
and Industrial Reaserch
ンド協議会
intellectual property
知的財産権
Inter-Governmental
公衆衛生・イノベー
Working Group on Public ション・IPに関する Health, Innovation and IP 政府間作業部会
(IGWG)
International Health
partnership (IHP)
Trade-Related Aspects of
Intellectual Property
Rights (TRIPS)
W
World Health Assembly
Resolution
貿易関連知的所有権
世界保健総会決議
国際保健パートナー
シップ
55
公衆衛生におけるR&Dの危機に終止符を. Oxfam Briefing Paper 122, November 2008
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