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サンタさんの着ている服の素材は何です か
2015.12.30 ニ ッ セ ン ケ ン 分 室 「 思 い つ き ラ ボ 」 No.5 5 サンタさんの着 ている服 の素 材 は何 です か・・・ 思 いつきラボも 2015 年 最 後 の原 稿 となります。クリスマスのにぎわいも落 ち着 いたと ころですが ふとした会 話 から「サンタさんはなんで赤 い服 を着 ているの?」という単 純 な質 問 が出 てきました。誰 もがサンタさんの服 は赤 いと思 い込 んでいるので一 見 して 認 識 できますが いつごろからこのスタイルがサンタさんのイメージとして定 着 したので しょうか・・・姿 を見 ただけでサンタさんだと分 かるのもやはり衣 装 のもつイメージ効 果 で成 り立 っています。 サ ンタ ク ロ ース 衣 装 の 歴 史 サンタさんの言 い伝 えで 4 世 紀 頃 の司 教 聖 ニコラウス(セントニコラウス)がモデルというのが有 力 な説 と なっていて サンタクロースもこのセントニコラウスが転 じたものというのが語 源 となったとされています。カト リックの司 教 なので祭 服 の中 に赤 色 はもちろんあるのですが 赤 いナイトキャップをかぶることはないので やはりどこかでイメージづけられたことと思 われます。現 に 1800 年 代 から 1900 年 代 初 頭 のクリスマスカー ドには緑 や青 や紫 や茶 色 の毛 皮 のサンタさんが描 かれているものが多 く残 っているそうです。 ふくよかでにこやかなサンタイメージが定 着 したのはアメリカの清 涼 飲 料 水 メーカーの広 告 が火 付 け役 となったのも有 名 な話 ですが コーポレートカラ ーが赤 であったことで浸 透 していったのは間 違 いないようです。さてサンタ クロースのモデルになった司 教 の時 代 背 景 を考 えれば衣 料 の素 材 になり うるものは“麻 ”“綿 ”“毛 ”“毛 皮 ”くらいしかありません。麻 や綿 といっても 現 代 のように植 物 の分 類 ができていたわけではありませんので繊 維 になっ たものを“麻 ”と呼 んでいるだけです。サイザル麻 やマニラ麻 などは“麻 ”の 名 前 がついてはいますがリュウゼツランやバショウフの仲 間 なので す。“綿 (めん)”も同 様 で綿 状 ( わたじょう)の花 になる植 物 も含 んでいます。“毛 ” も動 物 の種 類 は特 定 しませんが動 物 の毛 ということになります。“絹 ”も 紀 元 前 から作 られてはいましたがシルクロードで貿 易 品 としていた貴 重 な ものだったのでヨーロッパという地 域 的 なことから候 補 からは外 しています。 いずれにせよ化 学 繊 維 は当 然 なかった時 代 ですので植 物 繊 維 か動 物 繊 維 の 天 然 繊 維 から作 られていることになります。綿 織 物 にしろ麻 布 (あさぬの)は紀 元 前 数 千 年 前 の文 明 遺 跡 からその切 れ端 や生 地 そのものが出 土 していますので 西 暦 300 年 前 後 であればかなりのレベルのものが作 られていたと考 えられます。 羊 飼 い も聖 書 に出 てくるくらいですから羊 の毛 から糸 をつくり生 地 に仕 上 げていたのも出 土 品 から考 察 すると紀 元 前 2200 年 くらいからだと考 えられています。 寒 い地 域 でしかも 12 月 の冬 であればウール 100%の薄 手 の毛 布 みたいな生 地 で縫 製 された服 であろうと 考 えられます。羊 の毛 皮 はこのころは色 付 けすることもないので鮮 やかな赤 色 に色 をつけるのは困 難 と 一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 〒111-0051 東京都台東区蔵前 2-16-11 (本部) TEL: 03-3861-2341 FAX: 03-3861-4280 WEB: www.nissenken.or.jp 2015.12.30 考 えられます。白 の縁 取 りの部 分 は白 い毛 の動 物 の毛 皮 でないとあのフサフサ感 は出 せませんのでシロ ウサギの毛 皮 と考 えます。あとは赤 色 に染 める方 法 ですがウールを赤 く染 めるのはアカネという植 物 の根 やカイガラムシの体 内 の赤 色 色 素 をつぶして乾 燥 させて染 めることは今 でも出 来 る手 法 なので染 めること もさほど難 しいものではなかった時 代 と考 えます。 サ ンタ さ ん の 服 をつくる のな ら ば ・・ ・ ここまでくると筆 者 だったらサンタさんの衣 装 をつくるならどうするという推 測 になってしまいますが 当然 正 解 も確 かめられないのでまとめますと 素 材 は 羊 毛 100% 組織は 平織 フラノ(ちょっと厚 手 の毛 織 物 ) 染 色 は 赤 の天 然 染 料 の糸 染 め 加 工 は 湯 洗 で生 地 の目 を詰 まらせ厚 みを出 す 縫 製 は 白 ウサギの毛 皮 で縁 取 り ということで当 時 は作 っていたと思 います。筆 者 の思 い込 みですが再 現 はできる手 法 です。冬 のクリスマス の日 にあまり寒 々しい恰 好 (かっこう)もできませんのでこんないでたちが相 応 (ふさ)わしいのではと思 いま す。 またちょっと話 が逸 れてしまいますが 日 本 では歴 史 的 に毛 織 物 について書 かれた文 献 がほとんど見 当 たりません。もちろん交 易 品 として持 ち込 まれものはあるのでしょうが物 造 りとしての毛 織 物 は明 治 以 降 で ないと記 述 がありません。もちろん羊 が生 息 していたわけでもありませんので動 物 の毛 を糸 にするという 発 想 はなかったのだと思 います。動 物 は毛 皮 として加 工 されるもので防 寒 服 にはなっていたのですが 綿 織 物 や麻 織 物 と絹 織 物 しか国 内 では作 られることはなかったようです。 筆 者 が知 っている話 としては平 安 時 代 の歴 史 書 “扶 桑 略 記 (ふそうりゃくき)”という本 の中 に越 後 の国 で は「兎 褐 (とかち)」という綿 織 物 に兎 の毛 を混 ぜて織 られた生 地 の生 産 が盛 んで 704 年 に朝 廷 に献 上 し たと書 かれているということです。越 後 は現 在 の新 潟 県 あたりで寒 い地 域 なので防 寒 対 策 として生 活 の 知 恵 で綿 に兎 の毛 を混 ぜたのかもしれません。しかしこれも毛 織 物 とは呼 びにくく分 類 的 にはウール混 の 綿 織 物 ということになってしまいます。伝 統 品 として今 また再 現 すれば話 題 になるかもしれません。 2 0 1 5 年 最 後 のコ ラム 今 年 もありがと うござ いました 今 年 最 後 のコラムですが筆 者 の勝 手 な想 像 原 稿 になってしまいました。「この 内 容 ならクリスマス前 に書 いといてよ」という声 も聞 こえてきそうですが思 いつきなもの で・・・。ともあれ今 年 も読 んでいただき感 謝 しております ありがとうございました。 原 稿 担 当 :竹 中 直 (チョク) 一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 〒111-0051 東京都台東区蔵前 2-16-11 (本部) TEL: 03-3861-2341 FAX: 03-3861-4280 WEB: www.nissenken.or.jp