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Ⅱ - 経済産業省
2. 調査対象地域の概況 2.1 インドの社会経済状況 (1)概況 インドの国土の面積は約328万Km2(パキスタン、中国との係争地を含む)、日本の約8.7倍 である1。国土の最長距離は、南北3,214km、国土はパキスタン、ネパール、中国、ブータ ン、バングラディッシュ、ミャンマーと国境線を接している。 北にヒマラヤ山脈、東にベンガル湾、西にアラビア海、インド洋に逆三角形の型で突き 出した本土と、ミャンマーの南海上に浮かぶアンダマン・ニコバル諸島、及び本土南端の 西岸沖合いのラクシャドウィープ諸島で構成される。 インドの人口は 10 億 2,702 万人(2001 年国勢調査)で、世界人口の約 16%、中国に次 ぎ世界第 2 位である。インドは多民族国家であり、インド・アーリア族、ドラビダ族、モ ンゴロイド族等の複数の民族で構成されている。公用語はヒンディー語、イギリス植民地 時代の名残である準公用語の英語、他に憲法で公認されている州の言語が 21 ある1。 図 2-1 1 2 インドの全域地図2 外務省 各国・地勢情報 2009 年 7 月現在 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/india/data.html http://www.merriam-webster.com/maps/images/maps/india_map.gif 3 (2)社会状況 ①政治 インドは共和制の連邦国家で、1947年の英国領からの独立以来、軍事クーデターはなく、 選挙によって政権が交代する内政運営を続けている。1998年に発足したバジパイ政権(イ ンド人民党(BJP))下で、経済自由化政策による高い経済成長が実現したが、都市部と農 村部との貧困格差が広がり、2004年にはコングレス党を中心とするマンモハン・シン政権 が成立、2009年の総選挙においても、与党コングレス党が勝利し第2次マンモハン・シン政 権が発足している。 ②人口構成 インドは前述の通り世界第2位の人口を有しているが、その半分が24歳以下となっている。 人口構成のピラミッドを見ると、若年層が多いインドでは底辺が長い三角形を描いている。 豊富な労働人口を抱えていることがことが分かる。 インド特有の問題としては貧困層の存在がある。世界銀行の予測では、1 日 2 ドル以下で 生活する人は全人口の 76%(2005 年時点)とされる。また、インド計画委員会によれば、 貧困層3の規模は 2004 年時点で人口の約 3 割を占めており、10 年前と比較すると都市部・ 農村部とも改善の傾向が見られる。 図 2-2 インドの人口構成 出典:経済産業省 通商白書 2010 3 1 日 1 人当たりのカロリー摂取量(都市部:2,100kcal、農村部:2,400kcal)を満たす 1 人当たりの月 額消費額のラインを貧困ラインと規定している。なお、インド計画委員会は、食料、基礎的な教育や医療 等への支出額を基準とした定義への見直しを検討している。 4 表 2-1 インドにおける貧困層の割合 出典:Economic Servey 2010-2011 (3)経済・財務状況 インドは1991年に実施した経済改革以降、GDPベースで年間平均6%で成長しており、 2006年には9.7%を達成している6。2008年9月の米国発金融危機を引き金に、インド経済も 大きなマイナス影響を受け2008年度(08年4月~09年3月)の改訂実質GDP成長率は6.7% となり、前年度から大幅に低下した。その後は政府主導の景気対策により、内需主導での 回復基調に転じている。 産業別のGDP成長率(実質)では、2009年10~12月期の農業部門のマイナスが成長率を 押し下げたがGDPの約7割を占める商業、運輸、金融、保険、不動産、通信等サービス部門 が堅調に推移している。 図 2-3 インドの産業別寄与度の推移 出典:経済産業省 通商白書 2010 5 また、2011年2月には中央統計局が2010年度第3四半期の実質GDP成長率を8.2%(前年 同期比)と発表している。 こうしたサービス産業の発展は経常収支にも現れている。経常収支は2003年度までは黒 字で、サービス収支及び海外出稼ぎ者からの送金などにより、貿易赤字を十分に補ってい た。しかし、2004年度からは原油価格の高騰から再び赤字になり、2009年度の経常収支は、 マイナス380億9,930万ドルの赤字(JETROインド統計「基礎的経済資料」 )となっている (表 2-2参照) 。 海外貿易、直接投資の状況としては、貿易収支は赤字が継続しているが、輸出入の取引 高は年々増加傾向にある(表 2-2参照)。2007 年度の主な輸出品目は原油・石油製品(15.6%)、 宝石・宝飾品(12.4%)、繊維製品・既製服(12%)となっており、輸入品目は石油・石油 製品(33.4%) 、電子機器(8.5%) 、電気機械除く機械類(8.2%)、金・銀(7.5%)となって いる。主な貿易相手国は、輸出では米国(13%) 、UAE(9.7%)、中国(6.8%)で日本は 11 位(2.2%)、輸入では中国(11.4%)、サウジアラビア(8.1%)、UAE(5.6%)で日本は 11 位(2.7%) となっている4。米国向け輸出の主力商品は繊維製品や既製服、UAE 向けは石油製品である。 一方、輸入では中国からは電子機器、機械類、鉄鋼などが中心となっている5。 表 2-2 2001 年度 インド国際収支の推移 2002 年度 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度1) 2007 年度2) 3,400 6,345 14,083 2,470 9,902 9,766 17,403 貿易収支 11,574 10,690 13,718 33,702 51,904 63,171 90,060 輸出 44,703 53,774 66,285 85,206 105,152 128,083 158,461 輸入 56,277 64,464 80,003 118,908 157,056 191,254 248,521 サービス収支 3,324 3,643 10,144 15,426 23,170 31,810 37,550 所得収支 4,206 3,446 4,505 4,979 5,855 6,573 5,910 15,856 16,838 22,162 20,785 24,687 28,168 41,017 8,551 10,840 16,736 28,022 25,470 45,779 108,031 6,686 4,161 13,744 13,000 15,528 15,541 44,806 直接投資 4,734 3,217 2,388 3,713 3,034 8,479 15,545 証券投資 1,952 944 11,356 9,287 12,494 7,062 29,261 借り入れ 1,261 3,850 4,364 10,909 7,909 24,534 41,962 銀行資本 2,864 10,425 6,033 3,874 1,373 1,913 11,757 ルピー建債務返済 519 474 376 417 572 162 121 その他 781 578 1,699 656 1,232 3,953 9,627 外貨準備高 54,106 76,100 112,959 141,514 151,622 199,179 309,723 経常収支 経常移転収支 資本収支 外国投資 注 1)一部訂正、注 2)速報値 出典:Reserve Bank of India, Handobook of Statistics of the Indian Economy 2007-2008 より作成 4 5 JETRO 統計 http://www.jetro.go.jp/world/asia/in/ JBIC インドの投資環境 2008 年 11 月 6 単位:百万ドル インドへの海外直接投資額(FDI)は 2007 年度だけで約 155 億ドルと、年々増加傾向に ある。2007 年の海外直接投資は主に金融などのサービス、IT 分野、住宅・不動産、建築・ 土木、通信と多岐に渡っているが、近年では電気機械、貿易、石油・天然ガス、住宅・不 動産、冶金部門での投資が急増している。投資国別にみると、モーリシャスが常に 1 位で 2007 年には全直接投資額の約 40%を占めている4。これはインドとモーリシャス間の租税 条約上のメリットによるところが大きい6。その他の国としてはシンガポール、米国や英国 を始めとする欧州、日本となっている。 直接投資先の流入状況を地域別でみると、2000 年 4 月~2008 年 3 月の累計で、マハラ シュトラ州が 182.9 億ドルと最大で、全体の 29.3%を占める。次いでデリー近郊が 108.5 億ドル(17.4%) 、カルナタカ州が 38.4 億ドル(6.1%)の規模で投資が行われている5。 なお、日系企業のインドへの進出企業数は、2010 年 10 月 1 日時点で、725 社(2009 年 は 627 社)となっている。 州別の企業数では、1 位デリー準州・ハリヤナ州(328 社) 、2 位タミルナドゥ州(240 社)、3 位マハラシュトラ州(198 社)となっている。 図 2-4 インド各州における日系企業拠点 出典:在インド日本国大使館 日系企業インド進出地図7 6 経済産業省 通商白書 2007 http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2007/2007honbun_p/index.html 7 2.2 グジャラート州の概況 (1)全体概要 本事業の調査対象地域であるグジャラート州は、インド西部に位置し、総面積は 196,024 km と北海道の約 2 倍強の大きさである。州人口は約 5 千万人で、州都はガンディナガー ルで、行政区の中心となっている。主要都市は人口が多い順にアーメダバード、バローダ、 バブナガール、ジャムナガール、バルーチ、アンクレシュワール、スーラト、ダヘジ等と なっている。 図 2-5 グジャラート州の位置 (2)経済・産業状況 グジャラート州の州内総生産 (State Domestic Product:SDP)は全国 6 位(2006 年)とな っており、 近年の SDP 成長率では 16.4%と他州と比べて著しい経済成長を遂げてきている。 7 http://www.in.emb-japan.go.jp/Japanese/List%202010.pdf 8 表 2-3 1 2 3 4 5 6 7 インド主要州における州内総生産と成長率 (Rs. crore) 州総生産額 成長率 州 2003-2004 2004-2005 2005-20062003-2004 2004-2005 2005-2006 Maharashtra 337,495 378,839 432,413 12.77 % 12.25 % 14.14 % Uttar Pradesh 227,086 246,618 279,762 9.65 % 8.60 % 13.44 % West Bengal 189,099 208,578 236,044 12.53 % 10.30 % 13.17 % Andhra Pr. 190,880 210,449 236,034 13.52 % 10.25 % 12.16 % Tamil Nadu 175,897 200,781 223,528 11.07 % 14.15 % 11.33 % Gujarat 168,080 186,181 216,651 18.76 % 10.77 % 16.37 % Karnataka 128,556 148,541 170,741 9.42 % 15.55 % 14.95 % 出典: For Sl. No. 1-32 -- Directorate of Economics & Statistics of respective State Governments, and for All-India -- Central Statistical Organisation インドでも工業化が最も進んだ州のひとつと位置づけられるグジャラート州のマクロ的 な産業構造は下図の通り石油・化学工業、食品加工、鋼業・金属・非鉄金属産業が製造品 出荷額の約 8 割を占め、アーメダバード、スーラト、バローダ、アンクレシュワール等に 主要産業が立地している。 図 2-6 グジャラート州における主要産業別構成(2007 公表データ) 州総生産は、US ドル換算で約 193 億 US ドル、特に、製造業セクター約 52 億 US ドル を州内で生産しており、輸出規模はインド全体の 21%を占めている。 また、州内での地下資源(石油・ガス) 、港湾施設を利用した、石油精製、製薬等を含む 化学品、機械、繊維、鉄・非鉄金属精錬等の重化学工業主体の産業立地が進んでおり、石 油精製、化学品製造はインド国内での 3、4 割のシェアを占めている。 9 表 2-4 グジャラート州における主要産業別構成とシェア セクター 州内におけるシェア (%) 全国におけるシェア (%) 石油精製品 30.8 38 化学製品(製薬含む) 26.7 30 機械工業 9.5 7 食品・飲料製造 9.2 9 冶金工業 7.4 11 繊維・服飾 7.2 15 非鉄鉱物 2.4 12 プラスチック製品 1.9 10 製紙 1.2 11 出典: Industries Commissionerate, Industries in Gujarat 2007 より作成 産業投資に関しては、インド全体のうち 22%8をグジャラート州が占めており、固定資本 投資規模では 17%を同州が担っている(2004-2005 年)。同州の経済活動の主要部分は、積 極的な製造産業振興により支えられてきており、インド全体の 16%9の付加価値製品がグジ ャラート州の製造部門で生産されており、これは他州と比べて、同州における製造業の集 積規模、成長度合いが高いと言える。 表 2-5 インド各州の固定資本、生産高、付加価値創出比較表 出典: Industries Commissionerate, Industries in Gujarat 2007 より作成 グジャラート州は、これまで積極的な産業振興によりスーラト、アンクレシュワール、 8 9 Reserve Bank of India Report August 2008 Industries Commissionerate, Industries in Gujarat 2007 10 バローダ、ハジラ、ダヘジ等に石油化学、製薬、化学品、LNG 精製、非鉄製錬やセメント、 製鉄等の素材産業、繊維、ダイヤモンド加工業、新エネ産業(風力、太陽光)等の集積が 顕著に進んでいる。 図 2-7 グジャラート州における業種別産業立地の概略 出典: NDE 2007 Presentation グジャラート州の経済成長の主要因は、州政府のモディー首相のリーダーシップによる 積極的な民間投資・産業開発/誘致政策にあると考えられる。タタ・モーターズの NANO 製 造工場、スズキ自動車/日本郵船が進める自動車専用埠頭(RORO ターミナル)の同州への 誘致に際しても、積極的な誘致施策がとられた。また同州の Dholera 地区において、5,000ha に及ぶ経済特区開発計画が進行中であり、現行の産業集積トレンドに加え、より大規模な 産業集積が行われる予定である。 (3)州政府の組織概要 グジャラート州政府は、首相(Chief Minister)以下、26 の部(Deparments)が設置され ており、それぞれ大臣(Minister)が任命されている。その下に、次官(PS:Principal Secretary) 、次官補(DS:Deputy Secretary)、副次官補(Under Scretary)と続いてい る10。 1. 10 Agriculture & Co-operation Department 日本語訳は仮訳。 11 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. Education Department Energy and Petro Chemicals Department Finance Department Food and Civil Supplies Department Forests and Environment Department General Administration Department Home Department Health and Family Department Industries and Mines Department Information Department Labor and Employment Department Legal Department Legistlative and Parliamentary Affairs Department Narmada and Water Resources, Water Supply and Kalpsar Department Panchayats and Rural Housing Department Ports and Transport Revenue Department Roads and Building Department Rural Development Science ad Technology Department Social Justice and Empowerment Department Sports, Youth and Cultural Activities Department Tribal Development Department Urban Deelopment Department Women and Child Development Department 以上各局のうち、エコタウン整備に係る協力において日本側との対応を担っているのは、 上記の環境森林局(Department of Forests and Environment)と鉱工業局(Indutries and Mine Department)である。当該2局の特徴は次の通りである。 環境森林局(Department of Forests and Environment) 環境森林局は主に環境部と森林部に分かれ、持続可能なエコロジー社会の実現を目的に、 そのための政策策定や実施を行なっている。環境部はグジャラート州における環境保護法 (1986 年)にも関係する事案を管轄しており、政策実施機関として1)Gujarat Pollution Control Board(公害管理局)、2)Gujarat Ecology Commission、3)Gujarat Institute of Desert Ecology と4)Gujarat Environmental Management Institute を統括している。 主要な所轄事項としては、州内における持続可能な開発の実現と、環境配慮に長けた技術/ システムの導入をすることとなっている。 環境森林局の組織は次の通り、大臣、次官、次官補、副次官補の序列で組織が構成され ている。 12 図 2-8 環境森林局組織図 鉱工業局(Indutries and Mines Department) 鉱工業局は州における工業・経済開発を進める上で重要な役割を担っている。主管対象は 中小企業を始め、全ての産業開発にあり、商業、貿易、 産業連携、中小企業開発、国際展 示会・フェアの開催等を支援・実施している。産業政策の実施やプログラム策定にあたっ ては、 同局の幹部とともに各地区に配置された District Industrial Commissionerate (DIC) がその作業に当たり、それを実行している。 また鉱工業局の下には、様々な下部機関が Boards、あるいは Corporations と呼ばれる機関としてあり、州における鉱工業分野の発展 に向けた取り組みを担当している。なお、Gujarat Indsutrial Development Corporation (GIDC11)はその下部機関のひとつであり、その所轄業務は、工業団地開発、各種産業イン フラ整備など、民間事業者の投資、事業化を支援する役割を担っている。 鉱工業局の下部機関リスト 1. Industries Commissionerate 2. Commissioner of Cottage Industries 3. Commissioner of Geology and Mining 4. Commissioner of Payments 5. Director of Government Printing and Stationery 6. Gujarat Infrastructure Development Board 7. Gujarat Soil Work Arting Board 8. Gujarat Diamond Development Board 9. Gujarat State Khadi & Village Industries Board 10. Guajrat Industrial Development Corporation 11. Gujarat Industrial Investment Corporation 12. Gujarat Mineral Development Corporation 13. Guajrat State Financial Corporation 14. Gujarat Rural Industries Marketing Corporation Ltd. 15. Tourism Corporation of Gujarat Ltd. 11 08 年 11 月に実施された投資促進の訪日ミッション等も GIDC が中心となり実施された。 13 16. Gujarat State Handloom & Handicraft Development Corporation Ltd. 2.3 スーラット市の概況 (1)全体概要 スーラット市は、中心に流れるタピ川を軸として 7 つの行政域からなる都市である。人 口約 390 万人(2009 年推計)を有し、グジャラート州ではアーメダバードに続き2番目に 大きい、インドでもっとも成長している都市のひとつである。 図 2-9 スーラットの位置と行政域 14 表 2-6 市の設立 SMC の設立 面積 人口 人口密度 10 年間の成長率 行政域 役所数 シビックセンター 選挙区 スーラット市の概要 1852 年(グジャラート州で最初) 1966 年 326.51km2 247 万人(2001 年) 288 万人(2001 年、拡大した地域を含む場合) ~390 万人(2009 年) 249.4 人/ha(112km2 の範囲内) (2001 年) 85.9 人/ha(326km2 の範囲内)(2001 年) ~122.5 人/ha(2007 年) 62% 7 行政区域 83 カ所 16 カ所 38 区 出典:SMC 提供資料 (2)経済・産業状況 ス ー ラ ッ ト は 、グ ジ ャ ラ ー ト 州 全 体 の GDP の う ち 11.5% を 産 出 し て い る 。 1991- 2001 年 の 経 済 成 長 率 は 約 47%で 州 全 体 の 約 23%と 比 べ て 高 い 成 長 率 と な っ て い る 12。 スーラットの代表的な産業は、繊維業とダイヤモンド加工業である。前者は 、イ ン ド 国内全体の繊維製造の約3割を占める等集積が進んでいる。 繊維業における雇用数 図 2-10 12 産業別雇用数(1988-97 年:左グラフ) (1998-07 年:右グラフ) Directorate of Economics and Statistics, Government of Gujarat による。 15 2007 年の統計結果からスーラットの産業は、以下の特徴がある。 2006-7 年、グジャラート州の GDP のうち、11.5%を占める。 45,000 の機械式織機を有し、国内の織物製造のうち 40%を占める。 国内の繊維製造のうち 28%を占める。 インドからの合成繊維輸出のうち 18%を占める。 インドからのダイヤモンド輸出のうち約 65%を占める。 世界のダイヤモンド原石の加工・研磨業の 42%を占める。 国内のダイヤモンド原石の加工・研磨業の 70%を占める。 605 の大中規模の企業がスーラットを拠点としていることも特徴である。財閥系企業のエ ッサールグループ(エッサールパワー、エッサール製鉄)をはじめ、インディアンオイル、 ラーソン&トゥブロ、NTPC、クリブコ、リライアンス、HPCL 等の石油精製、石油化学、 製鉄、ガス、電気に関連する企業が多く立地している(表 2-7) 。 こうした企業の多くは、港が整備されているハジラ、マグダラ、Bhatpor、Choryasi に 集中して立地している(図 2-11)。 表 2-7 スーラットの大中規模の主要企業 出典:Surat & Tapi District Profiles 16 図 2-11 スーラットの大中規模の主要企業の位置 小企業(SSI)に関しては、41,300 社以上がスーラットを拠点としている。主要産業は大 中企業とは異なり、繊維、化学染料、ダイヤモンド加工、エンジニアリング関連(機械/ 備品製造)である。繊維業とサービス産業関連の企業が、それぞれ 24,000 社、11,000 社と 大半を占めている) 。内、Choryasi には 34,844 社が集積している。 図 2-12 産業の集積地域 スーラット地区(行政単位とは異なる広域のスーラット)には、税金等の優 遇 を 受 け ら れ る SEZ( 特 別 経 済 区 域 )が 各 地 に 整 備 さ れ て お り 、外 資 企 業 の 誘 致 を 含 め 企 業 誘 致 が 活 発 に 行 わ れ て い る 。港 湾 が 整 備 さ れ て い る ハ ジ ラ の SEZ 17 には大手財閥エッサールグループの本拠地がある等大手企業の立地も進んで いる。 図 2-13 主要な経済特区の位置 2) 主要産業における個別企業の動向 ①石油・ガス・電気 Indian Oil Corp. Limited:Choryasi と Bhatpor に事業所を有する。 Oil and Natural Gas Corporation (ONGC):インドの石油・ガス生産量の 80%以上、 同国の精製能力の 10 分の 1 のシェアを占めるインドの公共部門企業。788.273 百万ト ンの原油と 4,630 億 m3 の天然ガスを生産しハジラに工場を有する。 Essar Power:515 メガワットの供給能力を有する発電所をハジラに有している。 Reliance Industries:エネルギー(ガス・石油)やプラスチック、石油精製、ポリエ ステル・中間繊維等の石油化学製品を製造するインド最大財閥企業のひとつ。インド 国内ではダヘジやバローダ、ジャムナガールを含む 12 か所に製造拠点があり、スーラ ットではハジラに拠点を置く。ハジラ工場ではポリエステル・ポリプロピレン等を製 造しハジラ港にて原材料と製品の積み下ろしを行うための自社専用埠頭を有する。 National Thermal Power Corporation (NTPC):インド最大の電力会社。石炭とガス から 31,704 メガワットの電気を供給している。水力、採炭、電力設備製造、石油・ガ ス探査、電力取引・配電事業も行っている。スーラットでは Kawas に工場がある。 Hindustan Petrochemical Corporation Limited (HPCL):ムンバイに本社を置く石油 会社で Choyasi に事業所を有する。 Indo Burma Petroleum Limited:ムンバイに本社を置く石油会社で Choyasi に事業所 を有する。 18 ②製鉄 Essar steel:ダヘジ近隣のハジラに立地する E 社は、ガスベースの HBI(直接還元製 鉄法)5 基(3 x100tph、1 x 120-125tph、1 x 220-225tph)、電炉 4 基、シンタープ ラントにより製鋼を行っている。市中回収スクラップ(原料全体の6%のみ)を原料 に電炉による製鋼を行っている。年間 450 万トンの粗鋼生産を行っている。2010 年 12 月には新たに 173 万トンの製鋼能力を有する高炉が完成し、製鋼が開始されると ころである。 ③セメント Ambuja Cement:インドのセメント会社の中では最大収益を得ており、セメント輸出 量もインド最大である。また、世界一低コストでセメント生産を行っている。インド の海洋をバラセメントによって輸送する方法を考えた最初の企業であり、スーラット にはバラセメントのターミナルを持つ。ここでは、バラセメントを 15,000 トン貯蔵可 能であり、アップロード施設もある。 ④繊維 Garden Vareli:インド最古の繊維エンジニア兼ポリエステル糸製造会社。スーラット では Vareli に工場を有する。ひと月あたり 4,200 万メートルの繊維を生産する。 Welspun:繊維製造が中心だが、パイプ製造や製鉄、石油・ガス探査も行う。本社は ムンバイにあり、スーラットにはマーケティング事務所が置かれている。 ⑤肥料/製薬 Krishak Bharti Cooperative Limited (KRIBHCO):スーラットのハジラに拠点を置く、 生物肥料の製造会社である。複数州にまたがってひよこ豆やエンドウの種子加工を行 う工場を持つ他、ハジラに 2 つのアンモニア生産工場と 4 つの尿素生産工場を有する。 ハジラの生物肥料工場は 1998 年に拡大工事を行い、1 年間で 250 トンの生物肥料を生 産する能力を有する。アゾトバクターや根粒菌を使った肥料生産を行っている。 ⑥重電・機械 Larsen & Toubro:ムンバイに本社を置く機械製造業・エンジニアリングの会社。イン ドで最大の石炭ガス化装置と世界最大の石油精製用化学反応炉を有する。ハジラに事 業所を有している。また、三菱重工業とはハジラ地区のボイラー工場およびタービン・ 発電機工場を共同出資して設立しており、超臨界圧石炭焚きボイラーと超臨界圧蒸気 タービン・発電機の製造を手掛けている。 ⑦造船 ABG Shipyard:インド最大の造船所。スーラットの Magdala 港近くに事務所と工場 を有する。 19 (3)市政府の行政機構概要 スーラット市政府(SMC(Surat Municipal Corporation))は、以下の通り選挙で選ば れた市長以下、同じく市議会議員から構成される委員会、理事会及び行政職のトップであ るコミッショナー13が各種の意思決定を行っている。 図 2-14 スーラット市(SMC)の組織構成 出典:SMC 提供資料 下図は、SMC が取り組む各種の分野であり、エコタウンの検討に関しては水供給、排水リ サイクルを管理するエンジニアリング(Engineering)部、廃棄物管理を担当する保健 (Health)部で両部を全体で統括しているのが技監(City Engineer14)である。 13平成 21 年度 1 月に北九州市が訪印した際にスーラット市として北九州市に対してエコタウン整備に向け た協力の意思表示を行ったのがコミッショナーであり、スーラット市から北九州市でのワークショップ参 加に際し、訪日スタッフの選定、常任委員会、市長への説明等を担った。 14 2010 年 12 月の北九州ワークショップに参加したひとたちは City Engineer である。 20 図 2-15 分野別の所掌範囲 出典:SMC 提供資料 21