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持続可能で 豊かな住生活とは

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持続可能で 豊かな住生活とは
9
一般社団法人 不動産協会広報誌(隔月発行)
2015 年
月号(通巻 95 号)
特集
持続可能で
豊かな住生活とは
少子化・高齢化を伴う人口減少社会の到来。
世帯数の減少。
顕在化する空き家問題。
ライフスタイルの多様化。
こうした環境変化に対して住宅はどうあるべきか。
良質で持続可能な住宅ストックを形成し、
豊かな住生活を実現するために必要な方策を考える。
カナダ ケベック州
巻頭対談……………………………… 持続可能で豊かな住生活の形を考える
視点論点……………………………… 住宅取得支援税制における床面積要件のあり方
クローズアップ… …………………… 省エネと健康を両立させる次世代の住宅
データ&オピニオン…………………… 空き家問題の解決に向けて
人口減少社会への処方箋… ………… 超高齢化社会における住宅の未来像
まちづくりのフォーカス… …………… まちのエネルギー消費の抑制に成功した
「横浜スマートシティプロジェクト」
P r o l o g u e
少子化・高齢化を伴う人口減少社会の到来。
世帯数の減少。
顕在化する空き家問題。
ライフスタイルの多様化。
こうした環境変化に対して
住宅はどうあるべきか。
良質で持続可能な住宅ストックを形成し、
豊かな住生活を実現するために必要な
方策を考える。
持続可能で
豊かな住生活とは
特集
C o n t e n t s
視点論点
クローズアップ
6
8
データ&オピニオン 10
まちづくりのフォーカス 14
住宅取得支援税制における床面積要件のあり方
大柿晏己・日本住宅総合センター専務理事
人口減少社会への処方箋 12
持続可能で豊かな住生活の形を考える
浅見泰司・ 東京大学大学院工学系研究科教授
園田眞理子 ・明 治 大 学 理 工 学 部 建 築 学 科 教 授
FORE95_mokuji.indd 2
巻頭対談 1
省エネと健康を両立させる次世代の住宅
田辺新一 ・早稲田大学創造理工学部建築学科教授
空き家問題の解決に向けて
牧野知弘・オラガHSC代表取締役社長
超高齢化社会における住宅の未来像
水村容子・東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授 まちのエネルギー消費の抑制に成功した
「横浜スマートシティプロジェクト」
15.9.24 10:37:22 AM
浅見泰司氏
東京大学大学院工学系研究科教授
持続可能で豊かな
住生活の形を考える
わが国の住生活を取り巻く環境は、少子化・高齢化を伴う人口減少と
世帯数の減少、空き家の増加、ライフスタイルの多様化などによって、大
きく変化している 。 そのような変化の中にあって、わが国の人々が豊か
な住生活をおくるための方向はどうあるべきか? 都市計画や住宅政
策のあり方を研究する東京大学大学院工学系研究科教授の浅見泰司
氏と、高齢者住宅やコミュニティを研究する明治大学理工学部建築学科
教授の園田眞理子氏に議論していただいた 。
てきましたが、配偶者の死別や高齢離
婚が増えて、高齢の単身者の割合が多
に現実に空き家となった住宅の活用策
す。今や、空き家の増加を防ぐととも
ことは、空き家の増加にもつながりま
ると予想されています。世帯数が減る
数は2019年をピークに減少に転ず
2010年をピークに減り続け、世帯
題研究所によると、わが国の人口は
きています。国立社会保障・人口問
浅見 ここ数年の間に、わが国の住生
活を取り巻く環境はかなり変わって
ありましたが、これが緩みました。そ
といった「結婚規範」のようなものが
何歳ぐらいに結婚しなければいけない
値観が変わってきたことです。以前は、
常に重要だと思うことは、伝統的な価
人々の価値観が変化し、ライフスタイ
ルも多様化してきました。特に、私が非
うのは、
重要な課題になると思います。
のライフプランをどう整備するかとい
方も含めて、高齢で単身になった方々
わが国の住生活を
取り巻く環境変化
くなっています。高齢者の多くは、住
を模索する空き家対策が重要な政策課
れから、親子が一緒に暮らしたり、高
宅を持っていますが、その住宅のあり
題として浮上してきました。
だという「家族規範」もありましたが、
15.9.24 10:44:21 AM
FORE94_01_05_kantou.indd 1
対
頭
巻
1979年千葉大学工学部建築学科卒、93年千葉大学大学院自然科学
研究科博士課程修了。
( 株 )市浦都市開発建築コンサルタンツ、
(財)
日本建築センター建築技術研究所を経て、97年より明治大学 。専門
は建築計画学・住宅政策論 。特に高齢社会に対応した住宅・住環境
計画について、多数の研究、政策提言などを行っている。川崎市住宅
政策審議会会長、東京都住宅政策審議会会長代理 。主な著書に、
『 世界の高齢者住宅̶日本・アメリカ・ヨーロッパ』
『
、 建築女子が聞く住まいの金融と税制』
( 共著 )他 。
園田眞理子氏
明治大学理工学部建築学科教授
それに、高齢の単身者が増えている
こともあって、単身者の総数が大きく
これも薄れつつある。家族以外の人と
同居するシェア居住が増えているのも、
齢になった親の扶養は長子がするもの
増加していることも注目されます。単
身者というと、若年層が主だと思われ
NO.95
1
1987年ペンシルヴァニア大学よりPh.D.の学位取得 。東京大学助手、
講師、助教授を経て、2001年東京大学空間情報科学研究センター教
授、12年東京大学大学院工学系研究科教授 。主な著書に、
『 都市工
学の数理』
(日本評論社、単著)
『
、 地理情報科学:GISスタンダード』
(古
今書院、
共編著)
『
、都市の空閑地・空き家を考える』
(プログレス、
編著)
、
『 住環境:評価方法と理論』
( 東京大学出版会、編著 )がある。
談
浅見泰司(あさみ やすし)
東京大学大学院工学系研究科教授
園田眞理子
(そのだ まりこ)
明治大学理工学部建築学科教授
Future
of
Real Estate
の不安を少しでも減らしたいという意
不安定化する中で、若年層は、将来へ
それから、若年層の保守化がよく話
題にのぼるようになりました。社会が
とが重視されるようにもなっています。
る方も普通に生活できるようにするこ
て、ハンディキャップを持っておられ
マライゼーションが次第に浸透してき
られるようになりました。また、ノー
ミュニティへの貢献を重視する人も見
変化しつつあります。なかには、地域コ
人々の生活の関心事も、仕事だけで
なく、ほかの関心事も重視する方向へと
なのは、結婚しない単身者が急増して
出てきます。しかし、それよりも重要
て環境が整っていないという話が必ず
として、保育園が足りないとか、子育
わが国では、少子化対策が議論され
ています。少子化が進む根本的な要因
思います。
つのポイントに絞ってお話ししたいと
園田 私は少子化、単身世帯の増加、
高齢化への対応、今後の住宅需要の4
うになりました。
ない、といった考え方も重視されるよ
が高齢者の介護をケアしなければなら
う予測から、その対策として社会全体
しかし人口減少とともに世帯数が減少
住むようになり、住宅が循環します。
高齢者がいなくなった住宅に若い人が
ありません。
若い人の人口が多ければ、
住宅等を増やせばいいというわけでは
ストレートにサービス付き高齢者向け
高齢化への対応については、高齢者
の総人口が増えていくことに伴って、
ります。
本的な対策が見られないことが気にな
京都の単身世帯率は %に上ります。
で政策を進めてきました。しかし、東
とが「住宅」であるという暗黙の前提
一人で住むことに対して不安を抱いて
しょうか。特に単身の高齢者の場合、
般的です。果たして、それで良いので
小さくて狭い住宅に住むというのが一
一応の設備は全部揃っているけれども、
世帯だ」
とおっしゃいました。単身者は、
浅見 園田先生は「単身者が増加す
る。特に東京の世帯数の約半分が単身
を向けるべきです。 世紀後半の日本
識が働いていることもあり、保守的に
いることです。子どもが生まれた後の
するというわが国の状況を考えると、
いるにもかかわらず、高齢者のための
の介護施設が不足するようになるとい
なっています。若年層の保守化は、い
ことよりも、なぜ子どもが生まれない
そこがそのまま空き家となっていくこ
その表れかもしれません。
ろいろな意味で社会の価値観を変えて
のか、ということに目を向けないと、
とが危惧されます。
の住宅政策は、 人以上の人が住むこ
いく要因になるかもしれません。その
少子化を防ぐ根本的な解決にならない
※ ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン (: normalization
)
1960年代に北欧諸国から始まった社会福
祉をめぐる理念の一つ。障碍のある人と健常者
とは、お互いが区別されることなく、社会生活
を共にすることが正常なことであり、本来の望
ましい姿であるとする考え方。また、それに向
けた運動や施策などが含まれる。
他、自然災害が多発していることか
と思います。
の住宅ですから、高齢者が安心して住
の受け皿となる民間の賃貸住宅も普通
施設に入るための財力もない方が多数
それにもかかわらず、単身世帯への根
いて、もっと考えるべきだと思います。
める住宅はそれほど多く供給されてい
のピーター・ドラッカーが、彼の著書で
ことができるシェアハウスや、住宅と
れるような、高齢者が安心して暮らす
住まい方をしつつ、プライバシーを守
が集まってコレクティブ(共同的)な
いらっしゃると思います。そういう方々
2013年は、1948年生まれの団
ません。その解決策として、様々な人々
後、 歳人口は減る一方です。経営学者
「すでに起こった未来」と言っています
共同施設的な要素を兼ね備えたコレク
える必要があると思います。
に考えて、これからの住宅のあり方を考
ほど誤りません。そういう現実をシビア
れを見れば将来の住宅需要の予測はそれ
まれたかが既にわかっていますので、そ
園田 浅見先生からシェアハウス、コ
た住宅の供給を期待したいですね。
のような新しいムーブメントを踏まえ
要だと思います。不動産業界には、こ
ティブハウスをつくっていくことが必
40
※
ら、住宅もそれに備えなければならな
私は、今後の住宅需要を考える上で
は、日本の人口分布の絶対的な特徴につ
塊の世代が 歳、1973年生まれの団
増加する単身高齢者のための
住宅とは?
いとか、高齢化の進行とともに大都市
また、住宅政策も単身世帯全体に目
47
塊ジュニアが 歳になった年です。その
65
40
が、 年前あるいは 年前の年に何人生
40
65
15.9.24 10:44:26 AM
FORE94_01_05_kantou.indd 2
20
2
今後の住宅需要を考える上では、
日本の人口分布の絶対的な特徴について、
もっと考えるべきだと思います。
65年前あるいは40年前の年に
何人生まれたかが既にわかっていますので、
それを見れば将来の住宅需要の予測は
それほど誤りません。
そういう現実をシビアに考えて、
これからの住宅のあり方を
考える必要があると思います。
2
巻頭対談
じゃない?」と、合理的です。シェア
ウスで一緒に暮らしたほうが楽しいん
「ちょっとウザいけれども、シェアハ
ストやエネルギーコストが安く済めば
フォーマンス)です。セキュリティコ
のキーワードは「コスパ」
(コストパ
に住むことに抵抗がありません。彼ら
で、昨今の若い人たちはシェアハウス
かがポイントだと思います。その一方
をブレークスルー―打開できるかどう
しかしてこなかったから、その価値観
れまでも巣箱の鳥同然のような住み方
りましたが、日本の単身高齢者は、こ
レクティブハウスについてのお話があ
変化です。
とが基本的な条件です。これは大きな
規取得できるのは共働き世帯であるこ
います。いま、都内のマンションを新
ロスし、それ以降も差が広がり続けて
通貨危機のときに初めて両者の線がク
なります。1997年~ 年のアジア
下がりで、共働き世帯は右肩上がりに
昭和の主流だった専業主婦世帯は右肩
と共働きの世帯数の推移を比べると、
働き世帯です。後者について専業主婦
ちの中で圧倒的に多いのはシニアと共
ンや駅近マンションを買っている人た
きを挙げると、都内のタワーマンショ
カメラを設置して終わり、と思われが
す。たとえばセキュリティだと、監視
で新しいビジネスや雇用が生まれま
園 田 セ キ ュ リ テ ィ 一 つ 取 っ て も、
バーチャルとリアルの組み合わせ次第
キュリティ向上にもつながります。
がいるようになれば、その住宅地のセ
いる人がいるとか、いつも住宅地に人
浅見 ガーデニングのために、庭に
人がいるとか、道路で何か作業をして
用を生み出すことにもつながります。
園田 浅見先生がおっしゃったことは
とても重要で、それが結局、地域の雇
いでしょうか。
と積極的に作ったほうがいいのではな
素人でも参入できるような機会をもっ
日本も住まいの管理に関して、
低廉で、
らせるので、負担は少なく済みます。
近くの高校生にアルバイトで芝生を刈
発想になりがちです。アメリカでは、
浅見 日本ではガーデニングを頼む
とき、お金を払ってプロに頼むという
購入することが最適解になるわけです。
とっては、利便性の高いマンションを
ると、もうアウトです。共働き世帯に
庭の手入れをしなければならないとな
は大変です。共働きで家にいないのに
共働きの女性が戸建住宅を管理するの
年収が高い世帯ということになります。
います。先ほど触れた、ガーデニング
ミュニティに持たせたほうがいいと思
ラスになるような生活互助機能をコ
ましたが、私は生活者にとって実質プ
たない人々のつながりである」と習い
講義で、
「コミュニティとは、地縁的
浅見 失われたコミュニティも見直
さなければなりません。都市社会学の
必要になります。
空き家に人を誘引していく手立てが
の新たなサービス事業を始めるなど、
家を管理して、福祉的活用や宿泊等
ご近所も自治体と協力し合って空き
も 減 り ま す。そ れ を 防 ぐ た め に は、
ます。地元自治体の固定資産税収入
ご近所にとっての外部不経済になり
はご近所です。空き家が増えること
えて、誰が一番困るかといえば、実
が増えてくるわけです。空き家が増
彼らが急激に抜けていくと、空き家
ほとんどが団塊世代です。これから
地に住み始めたいわゆる第一世代は、
スです。1970年代に郊外の住宅
4
※
※外部不経済=市場を通じて行われる経済活動
の外側で発する不利益が個人、企業に悪い効果
を与えることをいう。
コミュ
ニティ形成のあり方
て近所の住民が駆けつける、といった
です。とにかく、何か自分ができるこ
組織であって、とりわけて目的性を持
のに対して、いまは逆転して、マンショ
とをお互いにし合うことが重要で、そ
れがコミュニティを育てていくのでは
サービスができるかもしれません。
もう一つは、空き家の管理ビジネ
ンの方が年収倍率が高い。つまり、マ
ンションを購入するのは共働きで世帯
15.9.24 10:44:27 AM
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98
は戸建住宅の方が年収倍率が上だった
3
に よ っ て、地 域 の 資 産 価 値 が 落 ち、
居住は思っている以上に彼らの間で広
それに住宅価格の年収倍率が、住
宅を購入する際の尺度となっています
ちです。実際には、現場に駆けつける
などのアルバイトもある種の生活互助
がっています。
が、ほんの ~ 年前まで、首都圏で
人が必要です。そこで、ITを活用し
都内のマンション購入の主体は
共働き世帯
園田 最近の住宅市場で特徴的な動
NO.95
3
わが国の人口は
2010年をピークに減り続け、
世帯数は2019年をピークに
減少に転ずると予想されています。
世帯数が減ることは、
空き家の増加にもつながります。
いまや、空き家の増加を防ぐとともに
現実に空き家となった住宅の活用策を
模索する空き家対策が重要な
政策課題として浮上してきました。
Future
of
Real Estate
むようになると思います。
討する消費者が少しずつ増えている
ようです。そうなれば住宅の将来の
資産価値はより注目されるようにな
るでしょう。最近では、業者が既存
有者に示せば、理解が得られると思い
なコミュニティマネジメントを区分所
バリューアップが図れます。そのよう
いい。そうすれば、マンション全体の
皆が集まれるクラブハウスをつくれば
サービスルームをつくってもいいし、
所有者が共同出資して空き住戸にデイ
を持たせることを考えてもいい。区分
管理組合に一種の事業会社的なセンス
ます。そのためには、マンションの
ニティのあり方を考えるべきだと思い
は、管理組合も一歩先に進んだコミュ
資産価値を維持し、向上させるために
います。たとえばマンションも、その
園田 私は、これからの居住の価値
はコミュニティ力が左右すると思って
ないでしょうか。
などを肩代わりする、といった共助
し、若い世代は重いものの買い出し
とする炊事などを高齢者が肩代わり
育てだけではなく、若い世代が必要
ようになることが期待できます。子
コミュニティが様々な活動を担える
少し取り払うことによって、地域の
所があっていいと思います。業の壁を
者の方々に預かってもらえるような場
ちょっと風邪をひいた程度なら、高齢
アです。重い病気の場合は別として、
は、子どもが病気になったときのケ
ている共働きの人たちが困っているの
実に子どもを保育園に預かってもらっ
は皆さん子育てのプロです。また、現
格こそ持っていませんが、ある意味で
いのではないでしょうか。高齢者は資
齢者の知恵を活かすことを考えてもい
児童のために、子育ての経験のある高
います。
取り組んでいかなければならないと思
明し、購入者も自分自身の問題として
将来の資産価値について、きちんと説
園田 供給側もそうした住宅の長期
的プランや収益還元法に基づく住宅の
必要だと思います。
なくて、既存住宅の取引に際しても
ん。それは、必ずしも新築だけでは
性を啓発していかなければなりませ
入者に対して長期プラン作成の重要
要だと思います。供給側も住宅の購
長期的プランを自らつくることが重
それから住宅の購入者は、その住宅
の資産価値を目減りさせないための
宅をつくっていただきたい。
れた、何か夢を見させるような新築住
い住宅など、ある目的のためだけに優
られる住宅や電車オタクにはたまらな
えば、居室の中にバイクを入れて眺め
りに価値を有していると思います。例
ティを重んじる人がいる限り、それな
ティのある住宅は、そのアイデンティ
夢がありますね。また、アイデンティ
ンド的な住宅地をつくっていくことも
を重視した住宅をつくったり、健康ラ
浅見 マンションや戸建住宅の供給に
あたって、そのコンセプトとして自然
いる以上に親子間の結びつきが強く、
こともあって、私たちの世代が思って
ていますし、彼らが少子化世代という
金の贈与についての優遇策が講じられ
ています。税制面で、親からの住宅資
居を最優先にして持家を探すと回答し
住むファミリー層の約 割が親との近
た調査では、郊外の賃貸マンションに
私の研究室が川崎市郊外を対象に行っ
そして意外に多かったのは、親の家
に近いことが重視されていることです。
高かったのは防犯です。
も高かったけれど、それ以上に関心が
ます。耐震性や省エネ性に対する関心
の世代とは住宅選択の理由が違ってい
いるようです。環境面では、日当たり
境やコミュニティに高い関心をもって
関心が高いのは当然ですが、彼らは環
査では、ハード面のスペックに対する
ている若いファミリーを対象にした調
ようです。これから住宅を買おうとし
素でしたが、いまは全く様変わりした
取り」が住まいの購入を決める三大要
園田 私のような1950年代生ま
れの世代は、「価格」と「広さ」と「間
の一つになっているほどです。
るリノベーションがビジネスモデル
新築住宅へのニーズが
変わった
ます。そのような経営をしている管理
的なコミュニティをつくれば、高齢
浅見 既存住宅を購入することを検
住宅を買って、それを改修して、内
組合も実際にあります。
化が進んだ住宅地にも若い世代が住
や通風、緑への感応度が高く、私たち
装などは新築同様のかたちで供給す
浅見 保育園に入所できない待機児
童対策が問題になっていますが、待機
1
15.9.24 10:44:30 AM
FORE94_01_05_kantou.indd 4
デベロッパーには、
ハードとソフトを含めた住生活総合産業に
なることを期待したいと思います。
また、
「 住民それぞれが地域の環境を
より良いものにしていく
ことが、
ひいては住宅の資産価値の
維持・向上につながる」
という
好循環創出の秘訣を
住宅購入者向けにアピールして
もらいたいですね。
4
巻頭対談
も表れてくると思います。
そういったことが居住に対する行動に
に重要か、理解を深めてもらえるよう
住宅の供給側は、住宅の断熱化がいか
そのような状況は2005年時点にお
人が東京圏にいると推定されています。
要ではないかと思います。
できるようにしていくことが非常に重
が、暑さ、寒さを我慢する傾向がある
呂や給湯にはエネルギーを使います
す。エネルギー消費量をみても、お風
浅見 話が変わりますが、日本人は
暑さ寒さを我慢する傾向があるようで
一緒に購入するようです。
このように社会状況や住環境が大変化
も減少し始めると予想されています、
本格化し、2019年以降は、世帯数
2010年以降、わが国の人口減少が
テ ィ ッ ク に 変 わ り ま し た。そ し て、
など、住まいをめぐる環境はドラス
ンショックなどが立て続けに起きる
大災害である東日本大震災やリーマ
し実際には、戸数の少ない住棟に反対
て建替えができるとしています。しか
と、各棟の3分の2以上の賛成によっ
全区分所有者の5分の4以上の賛成
地建物を一括で建替える場合、団地の
時以外はほぼ不可能です。同法は、団
に基づけば、団地の建替えは全員合意
ません。たとえば、現在の区分所有法
て、法制度が揃っているわけではあり
不動産に関する法制度は、住宅の誕
生から解体までの全ての段階を見据え
していく必要があると思っています。
モデルをつくっていただきたい。
是非、地域で高齢者を支えるビジネス
士のつながりもつくる必要があります。
組入れなければなりませんし、住民同
物を建てるだけでなく、多様なソフトも
たいと思います。そのためには、単に建
の他の都市へ拡がっていくことを期待し
でつくっていただき、その動きが日本
域で支えるビジネスモデルをまず東京
ロッパーが中心となって、高齢者を地
浅見 高齢者が急増しているのに、高
齢者を地域で支えるビジネスモデルが
デベロッパーへの期待
いても明確には想定されていませんで
想定外の状況を前提において、税制や
した。住宅政策も、このようなまさに
努めていただきたいと思います。
住宅政策の課題
浅見 将来、高齢になった親をケアす
ることも考えて、親の近くに住むこと
を選択するのでしょうね。
せいか、暖房や冷房には思ったほどエ
する状況下にあって、住宅政策は、そ
金融での措置を含めて根本的に考え直
ネルギーを使いませんし、住宅の断熱
の考え方を根本から変えなければなり
本全体で750万人強の人たちが 歳
んが、様々な参入障壁があって、コ
ティビジネスを育てなければなりませ
があります。そのためにはコミュニ
たが、生活互助の仕組みをつくる必要
それからもう一つ。今後、高齢化が
進んでいくと、先ほどもお話ししまし
な法制度改革をすることが重要です。
件を現実的・合理的なものにするよう
あたって、区分所有者の合意形成の要
にさせないためには、団地の建替えに
いケースがあります。そのような事態
フスタイルにしたがって自由に間取り
ケルトンが維持されるとともに、ライ
がある都市環境のフレームと建物のス
場合によっては200年経っても価値
ね。さらに付け加えると、100年、
に向けてアピールしてもらいたいです
宅の資産価値の維持・向上につながる」
いものにしていくことが、ひいては住
「住民それぞれが地域の環境をより良
ことを期待したいと思います。また、
まだできていないのが現状です。デベ
化に対しての関心も低いようです。今
者が集まってしまって、建替えできな
園 田 2 0 0 5 年 に 住 生 活 基 本 法
ができてから 年の間に、未曽有の
年の夏も、急激な気温上昇から多くの
ません。 年後の2025年には、日
化すれば冬を暖かく、夏を涼しく過ご
以上になり、その3分の1の250万
高齢者が急増しているのに、
高齢者を地域で支えるビジネスモデルが
まだできていないのが現状です。
デベロッパーが中心となって、
高齢者を地域で支えるビジネスモデルを
まず東京でつくっていただき、
その動きが日本の他の都市へ
拡がっていく
ことを期待したいと思います。
せるようになり、
健康被害が減ります。
75
10
買いする人たちです。兄弟と親などが
高齢者が熱中症に罹っています。断熱
10
園田 デベロッパーには、ハードと
ソフトを含めた住生活総合産業になる
園田 それと、最近の新築マンション
の購入で目立つのが、 戸買い、 戸
3
を変えられるような、大胆な発想に基
15.9.24 10:44:34 AM
FORE94_01_05_kantou.indd 5
という好循環創出の秘訣を住宅購入者
ミュニティビジネスがなかなか育ちま
せん。技術的な方策も考慮しつつ、も
づいた住宅と住環境を実現してほしい
と思います。
う少しハードルを低くして、いろいろ
な人たちが実際にコミュニティに貢献
NO.95
5
2
Future
of
Real Estate
視点
論点
大柿晏己
日本住宅総合センター専務理事
氏
金贈与特例は現行制度ではなく、いわゆ
られた(ただし、この時代の住宅取得資
否かの判定が行われるのに対し、登録免許
税の申告時において適用要件に該当するか
贈与特例は、取得した翌年の所得税や贈与
乗特例」である)
。そして、住宅ローン
減税と住宅取得資金贈与特例については
年1月1日から、登録免許税特例につい
も遡及適用になじまないからである。
い課税関係が確定してしまうため、そもそ
税は移転登記等の申請時に要件の判定を行
る「両親・祖父母からの資金贈与の 分
住宅取得支援税制における床面積要件のあり方
わが国では、国民の住宅取得と住生活を支援するため、
住宅ローン減税をはじめ贈与税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税など
多くの税制上の特例を設けている 。
これらの特例には、取得する住宅の床面積についての要件が設定されている 。
床面積要件は、過去、何度か変更されてきたが、その改正経緯を踏まえ、
今後の床面積要件のあり方を考えてみたい 。
現行税法における住宅取得支援税制の
代表的なものは、住宅ローン減税(住宅
な理由がある。
め各種の要件を設定することには合理的
政策的配慮が必要な者だけに限定するた
い優遇措置」である。したがって、真に
や歳入確保の観点からとても容認できな
登録免許税の特例については翌 年1月
ついては 年1月1日に遡及して適用し、
ローン減税と住宅取得資金贈与特例に
をさらに200㎡にまで引き上げ、住宅
ところが、同年 月に再び租特令が改
正され、 月に引き上げたばかりの上限
現行の特例で床面積要件の上限が設定
されているのは、住宅取得資金贈与特例、
しやすいものであることが望ましい。
度は、できるだけ簡素で、取得者が理解
が、本来、住宅取得者にとっての支援制
ては同年 月1日から適用するとされた。
ローン年末残高の1%税額控除)
、住宅取
しかし、その適用要件は特例ごとに詳
細に定められているため、時にはかなり
この結果、住宅ローン減税と住宅取得
資金贈与特例の床面積上限は、 年1月
不動産取得税の特例、固定資産税の特例
このように租税には、それぞれ固有の
性格と課税原則があるから、特例ごとに
得資金贈与特例(住宅資金贈与に係る贈
複雑な事態を招くこともある。その典型
1日に遡って200㎡となり、 月改正
1日から適用することとした。
による180㎡は幻の上限となった。こ
れに対し、登録免許税の特例の方は、
ン減税、住宅取得資金贈与特例、登録免
昭和 年 月、租税特別措置法施行令
(以下「租特令」
)が改正され、住宅ロー
1月1日以降200㎡、という変則的な
月1日から年末までが180㎡、 年
下限 ㎡の妥当性
差異が生ずるのはやむを得ないと言える
与税の一定額非課税)
、登録免許税の特例
的な例が昭和 年の政令の改正である。
昭和 年の床面積要件の改正
これらは、いずれも政策税制とされ、
種々の適用要件が定められている。教科
許税の特例の床面積要件の上限が、それ
固定資産税額2分の1減額)である。
書的な定義によれば、政策税制とは「基
制度となった(別表参照)
。
年1月1日から 月 日までは165㎡、
本税制に対する例外であり、もし特定の
これは、住宅ローン減税と住宅取得資金
62
の3つである(現行の直系尊属からの住
宅取得資金贈与特例は平成 年の創設当
これに対し、床面積要件の下限は、原
則としてすべて ㎡である。
定された)
。
成 年度改正により240㎡の上限が設
初は上限が設定されていなかったが、平
21
62
6 61
50
24
61
控除等)
、固定資産税の特例(新築住宅の
(所有権移転登記等の税率軽減)
、不動産
住宅取得支援税制と適用要件
5
取得税の特例(住宅の課税標準の一定額
7
6
61
までの165㎡から180㎡に引き上げ
7
15.9.24 10:40:28 AM
FORE95_06_07_shiten.indd 6
5
61
政策目的がなかったならば、課税の公平
50
30
61
6
12
6
61
61
6
平均世帯人員は、2018年に ・ 人、
2035年には ・ 人まで減少を続ける。
れていなかった(登録免許税は例外)
。昭
現在の住生活基本計画における「最低居
象に追加した際に ㎡の下限が設定され、
住面積水準」の考え方( ㎡×世帯人員
そうなると必ずしも ㎡を必要としない。
和 年代後半に入り、既存住宅を特例対
別表のとおり、税制上の要件としての
床面積の下限は、昭和 年代には設定さ
29
+ ㎡)を前提とすれば、今後は、 ㎡
前後でも、十分に「健康で文化的な住生
年計画における「 人世帯の最低居住水
準の ㎡」が議論のベースにあったこと
ちなみに、現在の住生活基本計画は
来年 月を目途に改定される予定であり、
活を営む基礎として必要不可欠な住宅面
れていった。
積」という要請をみたすことになる。
33
この ㎡の根拠は政令に明記されてい
るわけではないが、当時の住宅建設五カ
平成5年以降、順次、 ㎡に引き上げら
10
「住生活基本
住宅建設五カ年計画とは、
法」の前身である「住宅建設計画法」に
は容易に推測できる。
を踏まえた再検討を行うものと思われる。
最近の社会経済状況や居住実態の変化等
本年からその作業が始まっている。改定
面積に関する目標値が登場したのは、第
定される住宅政策の目標である。住宅床
脱却し、今後は、床面積にこだわらず、
コール劣悪な住環境という固定観念から
税制上の特例についても、狭い住宅イ
作業においては、床面積水準についても
基づき、昭和 年を起点に5年ごとに策
3期五カ年計画(昭 ~ )からで、
「最
された。このうち、
「平均居住水準」は、
低居住水準」と「平均居住水準」が設定
べきであろう。
象に組み入れるような方向で見直される
質の高い住宅については積極的に特例対
とって豊かな住生活を実現する上で大
現行の住宅取得支援税制は、それぞ
れ効果を発揮しており、住宅取得者に
5期五カ年計画
(昭 ~平 )
において
「誘
導居住水準(都市型・一般型)
」に改定さ
れたが、その後、
「住生活基本計画(平
~ )
」においても、
「最低居住面積水準」
、
「誘導居住面積水準」として受け継がれて
いる。ただし、4人世帯の最低居住面積
そ、今後も特例制度を堅持するととも
きな恩恵となっている。であるからこ
ように改善されることを期待したい。
に、多様な住宅ニーズに柔軟に応える
15.9.24 10:40:31 AM
FORE95_06_07_shiten.indd 7
18
である ㎡という数値は、今日に至るま
NO.95
7
で改定されていない。
2 25
今後の世帯動向を踏まえた議論を
Future
of
Real Estate
51
61
ところで、国立社会保障・人口問題
研究所の推計( 平成 年1月推計 )に
日本住宅総合センター専務理事
大柿晏己(おおがき やすみ)
55
2
42
※各改正年度における租税
特別措置法施行令、地方税
法施行令( 附則 )等を基に
筆者作成
40
よると、2010年に ・ 人であった
( ※1)住宅取得資金贈与特例は、昭和 59年か
ら平成 17年末までは、いわゆる「5分5
乗特例」。 平成 21年から「一定額の非
課税特例( 現行制度 )
」が導入 。 当初
は床面積上限はなかったが、平成 24年
改正で240㎡の上限が設定 。
( ※2)登録免許税特例は創設当初( 昭和 42
年 )は、木造のみ下限 30㎡、既存住宅
が対象となった昭和54年から既存住宅
のみ下限 40㎡。 昭和 56年からすべて
下限 40㎡。
( ※3)不動産取得税特例は創設当初( 昭和
29年 )は面積制限なし。既存住宅が対
象となった昭和 55年から既存住宅のみ
下限 40㎡。 平成元年からすべて下限
40㎡。
( ※4)固定資産税特例は創設当初( 昭和 39
年 )は、上限 85㎡、昭和 44年から上限
100㎡。
2
2
50 2
10
3
4
50
50
別表 住宅取得支援税制における住宅床面積要件の改正経緯
1973年(社)
不動産協会事務局入社、
95年同事務局長 。 昭和 48年の新土
地税制以来、住宅税制、消費税、地価
税等の税制改正業務を担当 。2001年
( 財 )日本住宅総合センターに移籍 。
2006年より現職 。
40
50
40
50
50
27
ク ロ ー ズ アップ
早稲田大学創造理工学部建築学科教授
田
辺新一氏
省エネと健康を両立させる
次世代の住宅
冬は寒いのが当然と
思ってきた 。ところ
がデンマークの家は
冬 が 暖 かい。 気 候
のせいもあるが欧州
の住宅は夏も暑くな
い。 冬 の 寒 さ は 厳
しいが、住宅は全館
暖房で暖かい 。これ
に対して、断熱化や
気密化をしていない
日本の木造住宅は、
隙間と開口部から冷
暖房エネルギーが逃
げてしまうため、冬
が寒い 。ストーブな
どの個別暖房を使う
費量( GJ/世帯・年 )を比べると、日
の一部しか暖まらない 。
気候変動枠組条約の締結国であるわが国は、
2
(エネルギー消費削減)
に取り組まなければならない。
CO排出量削減
住宅部門の省エネが必須となる中で、
次世代の住宅は省エネや
自然エネルギーを賢く利用していくことが欠かせない。
住宅の省エネを普及させるには、
断熱化や気密化による住宅の省エネ化が、
住まう人の快適な暮らしや健康に繋がるという理解を広めていくことと
住宅に自然エネルギーを取り入れていくことが重要だ。
次世代住宅の技術開発について研究する早稲田大学創造理工学部建築学科教授の
田辺新一氏に省エネと健康を両立させる住宅について聞いた。
日本は、暖房エネル
ギー消費がドイツの
本は GJ( 2008年 )に対して、ド
分の1という利点はあるものの、家
近年、省エネ化や東日本大震災の影
響により、住宅部門は2010年度か
全館暖房を行っている欧米の住宅で
は高断熱・高気密化すると熱が室外か
エネルギー需給実績( 速報 )
」
)
。また、
年度
わが国のエネルギー消費のうち、住
宅部門( 家庭部門 )のエネルギー消費
要だ 。
ギー( 再生可能エネルギー)の活用が重
今後も省エネ化とともに自然エネル
米に比べて極端に暖房を使わないため
る。これほど差があるのは、
日本人が欧
倍~2倍以上のエネルギーを使ってい
J
( 年)
と、
欧米の住宅は日本の1
.4
房エネルギー使用量が小さいため高断
してきたわが国では、もともとの冷暖
していくべきだ。ただし、
冷暖房を我慢
暮らしを求めて、住宅を断熱化・気密化
得られる 。わが国も欧米並みの快適な
年)
、フランス GJ
資源エネルギー庁の「エネルギー白書
住宅の省エネというと、冷暖房をな
るべく使わないなど、快適性を犠牲に
だ 。欧米は年間 GJ/世帯・年の暖
イツは GJ(
2015」によると、わが国全体のエネ
するイメージが根強い 。しかし、わが
房を使っているが、日本は GJしか
果が見えにくい面がある。そのため、
住
年)
、英国 GJ(
'07
99
64
年)
、米国 G
宅の断熱化・気密化よりも「 高効率な冷
熱・高気密化してもエネルギー削減効
ら逃げなくなるため高い省エネ効果が
ルギー消費は1973年比で1
. 3倍
国の住宅の世帯当たりエネルギー消費
使っていない 。
(
増に対して、世帯数増などにより住宅
量は、欧米と比較すると、もともと小さ
は .0%を占めている
(
「 平成
部門は2.0倍に増えている 。他部門
暖房機器の導入を優先すべきだ」とい
ネルギー消費削減を進めつつあるが、
ら2013年度までに7
. 8%減とエ
れば、各国の世帯あたりエネルギー消
早稲田大学が次世代の住宅として実験的に設計・建築した「Nobi-Nobi HOUSE ~ 重ね着するすまい」
。
太陽熱給湯設備などがある「 設備コア」と、床暖房などのある「 居住ゾーン」
、温室や遮熱効果のある
「 Nobi-Nobi ゾーン」の三層構造で、高断熱やエネルギーハーベストを実現している 。
私は、1984年にデンマークに留
学する前までは、家の中でも夏は暑く、
欧米よりもエネルギー消費が
少ない日本の住宅
4
く、冷暖房を我慢しても省エネ効果が
少ない 。住環境計画研究所の調査によ
'07
'05
15.9.24 10:47:40 AM
FORE95_8_9_CLOSEUP.indd 8
44
61
に後れを取る住宅部門の省エネは喫緊
の課題だ 。
10
25
75
'07
40
14
8
Close-up
過ごせる 。
上下差を抑え、少ない冷房でも快適に
断熱・高気密化住宅は、輻射熱や室温の
ターになってしまう。これに対して、
高
になるからだ 。壁がまるで赤外線ヒー
陽光で熱くなり、輻射熱を感じるよう
なら、断熱化が不十分な壁の温度は太
という奇妙なことが起こりうる 。なぜ
冷房で足元は冷えるのに、暑く感じる、
断熱をしていない住宅では、夏の日中、
性は向上しない可能性が高い。例えば、
ば、省エネは達成できたとしても快適
していない住宅で高効率冷暖房を使え
そもそも人は、住宅で快適に過ごす
ために冷暖房を使う 。断熱化・気密化
だ。
に、住宅の安全性と健康性を評価する
握している。さらには、
この統計をもと
けられた病気やけがの発生データも把
宅個々のデータとともに、住宅に紐づ
住宅と健康に関する統計は、英国で
は整備されている。英国の自治体は、
住
求められる 。
計データが少ないため、エビデンスが
る。ただし、
因果関係を裏付けるには統
は断熱が普及しているからだと見られ
率は東北地方が高い。これは、
北海道で
ず、高血圧が原因となる脳卒中の死亡
高血圧患者は北海道に多いにも関わら
は高断熱住宅では起きにくい 。実は、
原因と言われている 。ヒートショック
化で血圧が上がる「ヒートショック」が
室やトイレに移る際に、急激な気温変
中や心疾患は、暖かい居室から寒い浴
与できるだろう。たとえば、
冬場の脳卒
患といった病気を抑え、健康増進に寄
今日でも断熱化や気密化による住宅
の省エネ性能の改善が、脳卒中や心疾
ルギー生産が大きい戸建て住宅で続々
保できるため、住居面積当たりのエネ
在のところ、太陽電池の設置面積が確
ZEHとなることを目指している 。現
省、環境省は、2030年に新築住宅が
住宅のことだ 。国土交通省、経済産業
正味でエネルギー消費をゼロにする
陽光発電などでエネルギーを生産し、
ギー( 電力・熱 )を少なくした上で、太
る。ZEHとは、
住宅が消費するエネル
ギー・ハウス
( ZEH )が出現しつつあ
現在供給されている新築住宅では、
省エネ化が進み、ネット・ゼロ・エネル
ものになるだろう 。
ネだけでなく、安全や健康を意識した
備・公表されれば、次世代の住宅は省エ
備していくべきだ 。こうした指標が整
康への影響を表示していく仕組みを整
統計化し、住宅そのものの危険度や健
生の見地から、住宅内での死亡要因を
いくことが求められるだろう 。( 談 )
的に自然エネルギーを利用( 収穫 )して
快適で健康な暮らしを送れるよう、
積極
ベスト」
と呼んでいる。次世代の住宅は、
ルギーの利用を、私は「エネルギーハー
えられてしまうため、こうした自然エネ
にはパッシブと呼ばれるが、受け身に捉
適性や健康にも効果が見込める。
一般的
採り入れることで、省エネだけでなく快
光照明を実現する仕組みだ 。太陽光を
使って太陽が当たらない屋内でも自然
例として、太陽光ダクトは、鏡の反射を
メージして、実験的に鉄骨造のZEH
早稲田大学は、2030年の住宅をイ
になると考えている 。その例として、
エネルギーを直接的に取り入れる住宅
私は、次世代の住宅は、ZEHを一歩
進めて、換気や採光、熱交換など、自然
とZEHが実現している 。
う意見が出る。しかし、
それは本末転倒
住宅の断熱化や気密化の大きなメ
リットは、快適で健康な暮らしを省エ
格付け指標「 HHSRS」( Housing
京大教授は、冬に高くなる乳幼児死亡
していた 。同誌を主宰した戸田正三
なお英国の保健省は、冬季の死亡率
の上昇を意識しており、その抑制のた
から改修が命じられる仕組みだ 。
明や空調、給湯に取り入れている 。一
住宅では、自然エネルギーを直接的に照
着するすまい」を設計・建築した。この
「 NobiNobi HOUSE ~重ね
ネで送れるようになることだ 。住宅は
Healthand Safety Rating
治体職員が格付けを行い、危険度が高
率を抑えるという公衆衛生学の見地か
めの調査研究と、断熱化や暖房の重要
1958年福岡県生まれ。1982年早稲田大学理工学
部建築学科卒業 。1984年同大学院博士前期課程
修了。1984~86年デンマーク工科大学暖房空調研
究所 。1986年早稲田大学理工学部・助手 。1988
年お茶の水女子大学家政学部・専任講師 。1992 ~
1993年カリフォルニア大学バークレー校環境計画研
究所 。1992年お茶の水女子大学生活科学部・助教
授 。1997年デンマーク工科大学エネルギー研究所、
ローレンスバークレー国立研究所客員研究員。1999
年早稲田大学理工学部建築学科・助教授 。2001年
早稲田大学理工学部建築学科・教授。2002~2003
年デンマーク工科大学・客員教授。2007年早稲田大
学理工学術院創造理工学部建築学科・教授 。現早
稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科・教授。
早稲田大学住宅・建築環境研究所所長。建築設備技
術者協会会長、
日本建築学会副会長。著書に「 床暖
房読本―快適・安心・人と環境にやさしい暖房のすべて」
( 風土社、2009年 )
「
、 21世紀型住宅のすがた」
(監
修、東洋経済新報社、2001年 )
など多数 。
自然エネルギーを
取り入れる次世代の住宅
本来、快適で健康な暮らしを送る場所
System)
を運用している 。HHSRS
い
( ~ 格)
と判定した住宅には政府
ら、日本の住宅の暖房の必要性を説い
性を提唱している 。わが国でも公衆衛
田辺新一(たなべ しんいち)
省エネによって快適で
健康な暮らしをつくる
であり、
住宅と健康の増進は不可分だ。
は、 ~ までの 段階で資格者や自
早稲田大学創造理工学部建築学科教授
戦前、京都帝国大学医学部衛生学教室
康増進を図る上で住宅の重要性を啓発
が発行していた雑誌「 国民衛生」は、健
10
15.9.24 10:47:41 AM
FORE95_8_9_CLOSEUP.indd 9
J
C
ている 。
No.95
9
A
A
Future
of
Real Estate
データ&
オピニオン 空き家問題の
解決に向けて
人口の急激な減少と高齢化が進むわが国では、従来は地方の問題として位置づけられていた
空き家問題が首都圏においても深刻化している。
空き家問題に詳しいオラガHSCの代表である牧野知弘氏に、
空き家増加に伴う影響と、空き家活用について聞いた。
オラガHSC代表取締役社長 牧野知弘氏
25
全国で約820万戸が空き家に
8
1
9
・
万戸に対して
6
0
6
3
「統計からみた我が国の住宅」
総務省の
(総務省、平成 年住宅・土地統計調査)
万戸、全住宅約
5
によると、全国の空き家の総数は
・ %に上る(図表1)。
900
16.0
800
14.0
700
12.0
600
10.0
500
8.0
400
6.0
300
200
4.0
100
2.0
900
16.0
0
1963
800
68
73
78
空き家数
(万戸)
700
8
4.0
2.0
2013
13
万戸
0.0
1
7
8
7
1500
図表2 首都圏の人口、
首都圏の高齢者人口、
首都圏の高齢者比率の推移
(万人) 1000
1
9
5
0
戦後の人口増と空き家問題の関連
万
万人であっ
1
3
0
5
首都圏の空き家の増加は、戦後の首都
圏人口の急増と繋がりがある。
年には約
2
4
1
1
年、首都圏人口は約
たものが
1
9
7
0
40.0%
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
40.0%
4000
5.0%
35.0%
0.0%
0
3000
る。 首 都 圏には全 住 宅の
3
500
人と1100万 人以上 増 加した( 図 表
年~
1
9
4
7
)
。 主な原 因は、若 者が地 方から首
都 圏 に 移った か ら だ。
年 生まれの団 塊 世 代は全 国に
8
0
6
万人もいる。首都圏人口はこの
年
万人も
1
9
6
0
約
年にかけて
6
2
5
団塊世代が東京に移ってきた
から
1
9
7
0
2
8.0
6.0
3500
1
9
4
9
10.0
割、約
8
空家率(%)
約
2003
3
が あるため、空 き 家 率は
98
5 11
%と比べれば低い水準に
93
0.0
2013
14.0
・ %と 全 国 平 均の ・
88
ある。 しかし、空 き 家 率
83
2003
12.0
としては低い数値でも首都
78
98
圏には膨 大 な 数の住 宅が
73
空き家数
(万戸)
93
存 在 することから、空 き
19632000
68
家 数が今 後加 速度 的に増
2500
加していくことが懸念され
0
3000
ている。
100
3500
用の住宅」、②別荘やセカ
200
4000
88
空家率(%)
空 き 家は大 き く4種 類
に分けられる。 ①「 賃 貸
300
(万人)
ンドハウスなどの「二次 的
400
住 宅 」、 ③「 売 却 用の住
500
83
(総務省
「住宅・土地統計調査」
より)
宅」、
④「その他の住宅」だ。
600
このうち④の「その他の住
宅 」 は、個 人の持 ち 家の
空き家を指す。 現在、地
域で大きな問題となっているのが、この放
置された個人住宅の空き家だ。
現在、東京を除く首都圏3県の個人
住宅の空き家は、全国の増加率と同等
ないしは上 回る率で増 加 している。 住
年に
2
0
1
3
宅・土地統計調査によると、全国の「そ
の他の住宅」の空き家は、
2
0
0
3
空き家というと、地方で発生する問題
であるという認識がこれまではなされて
50
3 10
年調査)
3
8
50
3
1
8
4
・ 万戸と 年前
(
8
48
と比較して ・ %増 となったが、同じ
53
期間において埼玉は ・ %増、千葉 ・
%増、神奈川でも ・ %増加し、
県の合計で個人住宅の空き家数は約 万
戸を数えるに至っている。
38
8
きた。 しかし空き家問題は、近年、首
6
都圏の郊外における問題としても捉えな
2
0
2
おす必要性に迫られている。
%の空き家が首都 圏に集中す
東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏
の空 き 家 総 数は
・ 万 戸 と、全
国の約
25
13 5
図表1 全国の空き家数、
空き家率
1950 1970
1980 1990
首都圏人口(万人)
2500
2000
2010
2020
首都圏の高齢者人口(万人)
2030 2040 30.0
2050
%
首都圏の高齢者比率(%)
25.0%
2000
20.0%
1500
15.0%
1000
10.0%
500
5.0%
0.0%
0
1950 1970
1980 1990
首都圏人口(万人)
2000
2010
2020
首都圏の高齢者人口(万人)
2030 2040
2050
首都圏の高齢者比率(%)
(国立社会保障・人口問題研究所
「都道府県別統計」
より)
10
FORE95-10-11オ�ニオン.indd 10
15.9.24 10:52:34 AM
指導、勧告、命令、さらには行政代執
た利用権を流通させるマーケットを創設
自体が難しくなっている。
すれば、流動化せずに凝り固まってしまっ
増えた。 彼らの多くは、都内の木造賃
行による撤去も可能とするものだ。 ま
貸住宅に暮らし、やがて首都圏郊外に広
た所有権を現金 化(流動化 )できるこ
た、平成
年度の税制改正では、特定
そ も そ も、 歳 以 上 は 首 都 圏 で
万人を超えるが、住宅取得者
い住宅を求めるようになった。
空き家等として勧告された住宅は固定
他にも、高齢者が隣同士で話し合って
家を つにまとめてしま う「 合 築 」 と
とになる。
たとえば上下水道は、使われなくなるこ
空き家の増加は、住宅の老朽化だけで
なく地域やインフラに悪影響を及ぼす。
万 戸 に 達 す る と 予 測 す る。
の持ち家である「その他住宅の空き家」
究 所は、空 き 家が除 却・滅 失されない
は増加する可能性が高い。 野村総合研
つながらない。若年層や一部の高齢者は、
郊外の中古住宅の需要が高まることには
規 供 給 を 政 策 的に抑 制したとしても、
因しているからだ。たとえば、住宅の新
外の中古住 宅に対 する需 要の減 少に起
必要だと思う。 なぜなら空き家は、郊
況を鑑みるに、解決にはさらなる対策が
だし、今後増加する空き家予備軍の状
これらの政策により、危険な空き家な
どのうち一定数の除却が進むだろう。た
よる税額に戻ることになった。
等とされると固定資産税が従前評価に
例を受けていたが、改正により特定空家
に国家問題なのである。
が必須となろう。 空き家問題はひとえ
今後の日本においては都市計画を今一
度見直し、「ひと」や「産業」の再配置
ないかと考える。
定資産税の減免を検討しても良いのでは
に対して、解 体 費や改 装 費の補 助、固
でケアでき、高齢者同士での「見守り」
にとっても複数の高齢者を同じ屋根の下
中で助け合えるのがメリットだ。 自治体
万人
資産税の特例措置の対象から除外される
いう手法もある。 高齢者
とで水が滞留し、悪臭の原因にもなりう
利便性を求めて駅近や都心のマンションを
とされる 歳代~ 歳代は
弱と少ない。 需 要が見 込めなければ戸
ことになった。これまで、
ぎる住宅を合体することで、 つの家の
人には広す
建住宅はいつか空き家化してしまう。
標準額が 分の に減額されるという特
の小規模住宅用地は固定資産税の課税
㎡以下
今 後、首都 圏の高齢 化がさらに進め
ば、住民の転居や物故が続き、空き家
上だった。空き家になった理由についても、
る。海外では米国・デトロイト市のように、
求めている。
ると、空き家所有者の ・ %が 歳以
東京と大阪を対象に行われた同調査によ
これを示すのが国土交通省が
年に行った「空家実態調査報告書」だ。
れなくなっていることが要因だ。
て供給された住宅が、高齢化に伴い使わ
現在の首都圏における空き家の増加
は、
年代から団塊世代に向け
倍と増加率が高い。
に対し埼玉 ・ 倍、千葉 倍、神奈川
歳以上の所有者の ・ %が「別の住
空き家率 %以上の地域で犯罪率が上
居に転居した」と答えている。また、築
年以上の建物が約 ・ %を占める。
万戸を超え、もともとは個人
空き家問題の解決に向けて
空き家率も ・ %を超えるという。
も
年には全国の空き家数は
同報告書は、高齢者が手放した築古の
昇しているというデータもある。 さらに
私は、今後発生する空き家への対策と
して、土地家屋の所有権を溶解させると
場合、
住宅に新たな買い手や入居者が現れず、
自治体にとっては固定資産税などの捕捉
層住居専用地域)では、バブル期に 億
る。 郊外のある高級住宅地(第一種低
郊 外の不動産売 買の現場では散見され
上 有 害 」「 著しく 景 観を損なっている」
壊等著しく保安上危険 」「著しく衛生
特別措置法」が施行された。同法は、「倒
空き家問題の解決が求められる中で、
今年 月、「空家等対策の推進に関する
としない所有者(たとえば相続で譲り受
利用権を交換する。 また利用権を必要
となる住 宅の所 有 者に対し、所 有 権と
アの住宅を対象に、網掛けを行い、対象
も可能となる。 自治体はこうした合体
そのまま空き家化していることを示唆す
いう 考 え 方を提 唱している。 自 治 体 等
円と評価された戸建住宅を売却しようと
などの空き家を「特定空家等」に指定し、
というものだ。 流動化しなくなったエリ
万円でも申し込みが無
しても、
1983 年東京大学経済学部卒
業。同年第一勧業銀行(現:み
ずほ銀行)入行。1986 年ボス
トンコンサルティンググループ入
社。1989 年三井不動産入社。
2002 年ガーデンホテルズ社(現:
三井不動産ホテルマネジメント)出
向。2005 年パシフィックマネジメン
ト
(現パシフィックホールディングス)
入社。2006 年日本コマーシャ
ル投資法人執行役員に就任。2009 年株式会社オフィス・牧
野及びオラガ HSC 株式会社設立、代表取締役に就任。主な
著書に「なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか」。「だから、日
本の不動産は値上がりする」、「空き家問題 ~ 1000 万戸の衝
撃」、
「インバウンドの衝撃」いずれも祥伝社新書、
「2020 年マ
ンション大崩壊」
(文春新書)など多数。
0
けた相続人等 )に対しては、交 換で得
個々の住宅の所有権と「交換 」 をする
が建設する高齢者施設の終身利用権を
率が低下し、税の徴収に影響が出かねな
1
郊 外の住宅分譲は、人口増に対応し
て
年 代 か ら 始 まっている。い
年 までの首 都
までも郊外には団塊世代が多い。 また、
年から
27
る。
1
1
2
0
0
9
0
0
い。
圏人口の増加率を見ると、東京の %増
60
30
年 代に供 給された住 宅に、
新たな居住者が現れないという実態は、
1
20
21
15.9.24 10:52:36 AM
FORE95-10-11オ�ニオン.indd 11
1
0
0
0
除却、修繕、立木伐採などの助言又は
牧野知弘(まきの ともひろ)
2
0
0
9
60
かったという。郊外では買い手を探すこと
オラガ HSC 代表取締役社長
4
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30
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No.95
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30
1
9
7
0
Future
of
Real Estate
シリーズ
人口減 少 社会への
処方箋
超高齢化社会における
住宅の未来像
者の居住実態に合わなくなっていること
は言えない。
水村容子
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授
イレのスペース確保、段差解消などのバ
だ。
超高齢化社会においては、居住者の身体機能が年齢とともに低下することに対応して
バリアフリーなどの住宅の改善が必要だ。
欧州でもっとも高い住宅水準と評されているスウェーデンの住宅政策を研究している
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授の水村容子氏に、
高齢者に対応した住宅のあるべき姿と課題を聞いた。
リアフリーが不十分であることがあっ
長期居住が政策的に誘導されてきた。し
社会的な視点から見ると、高齢者に
氏
度高齢者の日常生活に関する意識調査﹂
かし近年、高齢単身や高齢夫婦世帯が増
対する住宅へのハード面での配慮が十分
わが国では、居住面積の広い持家への
︵以下、高齢者意識調査︶によると、介
加しており、これらの高齢世帯にとって
でないことが、①老人医療費の増加の一
た。実際、内閣府が行った﹁平成 年
護が必要な高齢者のうち、住宅につい
広い住宅は持て余しがちなものになって
因となり、②介護コストの増大の原因に
高齢者が
直面する住宅の不便さ
て不満があるとした割合は計 ・8%
いる。内閣府の高齢者意識調査によると、
なっている︱ことも見逃せない。
超高齢化社会に対応した
住宅の課題
高齢化社会となった。現在の高齢化率
と高くないものの︵高齢者全体では同
た割合は、子や孫と同居している高齢者
﹁住宅が広すぎて管理が大変﹂と回答し
わが国は、2007年に 歳以上の
0%に上
・8%︶
、具体的に何が不満なのかを
高齢者の割合が総人口の %を超え、超
る。このような状況下において、高齢者
聞くと、要支援・要介護者の中では﹁住
︵2014年 月時点︶は
か、考えてみよう。
高齢者の視点から見ると、わが国の住
した割合が ・0%を占めており、高
宅の構造や設備が使いにくい﹂と回答
2人世帯は %と高くなっている。
は6・8%であったが、高齢の単身や夫婦
また、住み替えを行おうにも、高齢者
面での不十分さが影響していると考えら
ているが、その背景には、住宅のハード
在院数が長期化していることがあげられ
に対応する賃貸住宅は少ない上、高齢者
齢者全体の同 ・2%よりも ・8%
ポイントも高かった。介護が必要な高
宅では高齢患者は満足なリハビリ生活が
一つは、ハード面での不便さだ。これ
向け住宅などへの入居も、高齢者にとっ
できず、病院療養せざるを得なくなるか
れる。バリアフリーを採用していない住
て、経済的な理由からハードルが低いと
は敬遠されがちだ。サービス付き高齢者
もう一つの課題は、既存住宅が高齢
齢者ほど、住宅のハード面に不便を感
れ、車いすが通れる廊下幅員やバス・ト
までの住宅は、居住者の心身機能が年齢
12
わが国では、諸外国に比べて高齢者の
のニーズにこたえる住宅はどうあるべき
26
じていることがわかる。
宅には、主に二つの課題がある。
17
14
65
と共に低下することを想定せずに供給さ
47
32
21
26
・
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19
10
※ 世界保健機構
(WHO)
や国連の定義によると、高齢化率が7%を超えた社会を
「高齢化
社会」、
21%を超えた社会を
「超高齢化社会」
という。
日本は1970年に
「高齢化社会」
となり、2007年に
「超高齢化社会」
となった。
12
既 存 住 宅 の 改 善 は、 政
様になっている︶
。その一方で、戸建住
る︵もしくはバリアフリー化が可能な仕
どでは、バリアフリー化が行われつつあ
欧州の先進国では、都心部の住宅建設
ても介助者1人で最期まで住めるわ﹂と
策的な支援を通じて促
宅にはバリアフリー化の義務はない︵集
にあたって、集合住宅しか認めていない。
分のバリアフリー化基準への適合が求め
進していくことが重要
合住宅でも共用部のみが対象︶
。そのた
けでなく社会からもそ
だ。 し か し、 経 済 的 に
め、現在でもほとんどの3階建て戸建住
話すほどだ。
非 効 率 で あ っ た り、 躯
わが国でも、都心部での集合住宅の建設
られるようになった。優良な集合住宅な
体として物理的に改
宅にはエレベーターが設置されていない
にあたって、バリアフリーを採用した集
の改善が求められている。
修が不可能な住宅もある。
など、バリアフリー化は道半ばだ。
い。スペースが不十分なゆえに、たとえ
定した動線やスペースが確保されていな
ほとんどの住宅は、高齢者介護を想
こで大きな効果を発揮するのは住宅のバ
在院日数を短縮化する必要があるが、そ
方向感覚などの低下した居住者でも住み
加齢・障害・疾病などにより移動能力や
宅のバリアフリー化が義務付けられた。
改正した後、77年よりすべての新築住
ウェーデンでは、197 年に建築法を
アフリー化を義務化すべきだと思う。ス
これらの住宅の更新に際しては、バリ
に関する授業が行われているため、バリ
スウェーデンでは、小中学校から住生活
住宅の質に関する教育も欠かせない。
必要だ。
療・介護の専門家と連携していくことも
宅のバリアフリー化を進める際には、医
義務化していくべきだと思う。また、住
福祉の増進に寄与するものとして、促進・
わが国でも、バリアフリー化は公共の
宅において、生活を共同で行ないコミュ
さらに付け加えると、今後、集合住
る。高齢者の住み替えニーズを満たせる
価格的に求めやすい住宅の供給にも繋が
るし、都心部の高度利用がさらに進めば、
よってバリアフリー化は実現しやすくな
画を変更していくべきだ。集合住宅化に
合住宅に限定して認めるように、都市計
住み替えを前提とした
住宅ストックの構築を
これらの住宅は更新せざ
ば居室に移動リフトなどを整備できなけ
こなせるように﹁アクセスビリティ﹂の
アフリーが暮らしの常識になっている。
ニティが醸成されるようなコレクティブ
護者は自動車などで移動せざるを得ず、
る法律︶によって、高齢者への配慮が性
品確法︵住宅の品質確保の促進等に関す
わが国でも、2000年施行の住宅
移動できるから、身体が動かなくなっ
ドからバス・トイレまで直線リフトで
間取りのマンションを購入して、
﹁ベッ
保育室などの共用部の割合が大きく、共
は、住民が共に利用する炊事場、食堂、
る。スウェーデンのコレクティブハウス
減少する。
介護の労働効率を悪化させている。高齢
能表示され
るを得ないだろう。
れば、高齢者の入浴・排泄には多人数の
確保を義務付けた。同法には3階以上の
ある若いスウェーデン女性は、上図の
ハウスの導入を検討してはどうかと考え
者向けの住宅リフォームも、リハビリな
る ようにな
取り込むことが望ましいと考える。
︵談︶
こうした共助の仕組みを集合住宅の中に
日本人のワークバランスを見直しつつ、
る出生率の上昇も望めるのではないか。
代居住が進むだけでなく、都市部におけ
コレクティブハウジングが進めば、多世
世帯が見守る光景が日常的に見られる。
働き子育て世代の入居者の子どもを高齢
ど、介護の実態を把握した専門家が手掛
宅の共用部
は、 集 合 住
法において
リアフリー
年施行のバ
けていないケースもあり、高齢者の介護・
新築住宅をアクセスフリーに
行われていないことも課題だ。
り、2006
リアフリー化だろう。
介護者が必要になり、介護コストの増大
戸建住宅や集合住宅にはエレベーターの
ような寝室とバス・トイレが隣接した
だけでなく、子育て世代の住居費負担も
に繋がる。これに加えて、わが国では高
設置を義務づける条文もある。
スウェーデンの比較的高級な分譲マンションの
間取り。ベッドルームとバス・トイレが隣接す
る設計になっている。
齢者世帯は離れて暮らしているため、介
らだ。老人医療費の抑制には、高齢者の
リビングルーム
リハビリに適したリフォームが必ずしも
5
東洋大学ライフデザイン学部
人間環境デザイン学科教授
1990 年日本女子大学家政学部住居
学科卒。1992 年4月国立医療・病
院管理研究所協力研究員。1994 年
スウェーデン王立工科大学、スウェーデ
ン政府給費生として客員研究員(1996
年3月まで)
。1998 年日本女子大学
大学院人間生活学研究科生活環境学
専攻修了(博士)
。1998 年早稲田
大学理工学総合研究センター客員研
究員などを経て、2006 年4月東洋大
学 ライフデザイン学部人間環境デザ
イン学科准教授。2011 年4月同教授
就任(現在に至る)
。著書に『スウェー
デン「住み続ける」社会のデザイン』
(2014 年 1 月、彰国社)など。
水村 容子(みずむら ひろこ)
15.9.24 10:56:17 AM
FORE95-12-13_人口減少indd.indd 13
ベッドルーム
現在、既存住宅は、高齢者個々人だ
NO.95
13
バス
トイレ
Future
of
Real Estate
まちづくりの
ドレスポンスやネガワット取引の実証実
験は、住宅、オフィス、工場などの主体が
費を抑えることに成功した。日本最大、世
界でも有数の規模のスマートシティ実証
実験、
「横浜スマートシティプロジェクト」
をフォーカスする。
数としては日本最大、
世界でも有数のス
マートシティ実証実験として注目されて
いる
(図表 )
。
横浜市の林文子市長がYSCPを発
表したのは、
2010年 月 日。同日
1
3
アピールできる。海外展開が可能になれ
地元企業がスマートグリッドの実証に
成功すれば、
海外展開の際に信頼性を
と語った。
域経済を)
活性化させることができる」
エネルギーに対する意識が高まり、(地
を行うことで
「企業の皆さんの再生可能
の定例記者会見で、
林市長はYSCP
3
2010年から5年間にわたって行わ
ト
(Y S C P)」
の成果報告を行った。
証実験「横浜スマートシティプロジェク
連 携で行ってきたスマートシティの実
た。さらには 排出量を2030年ま
普及促進などに積極的に取り組んでき
エネルギー対策、
再生可能エネルギーの
を深刻に受け止め、
それまでも節電や省
う期待が込められている。
ば、
地元経済の活性化にもつながるとい
導し、産官民が協働して行ってきたデマン
海外展開と地域経済の
振興を目指した実証実験
標を大きくクリアして終えた。横浜市が主
地球温暖化の影響と見ら
横浜市は、
れる異常気象
(台風、
ゲリラ豪雨、
高温)
ティプロジェクト
(YSCP)」は、当初の目
横浜市は約4000
2015年6月、
世 帯の市 民、民 間 企 業 社と産 官 民
取り組み、まちそのもののエネルギー消
34
て再生可能エネルギーを生産するだけ
れてきたYSCPは、
太陽光発電によっ
年までに %減にする、
という目標も設
でに2010年比で %減、
2050
CO2
排出量 %減を達成するためには、
横
定している。横浜市が、
2030年に
※
行ってきた。実施主体は、
産官民の 市
者で構成されるYSCP推進協議会
車、
パナソニック、
明電舎、
東京電力、
東京
浜市の部門別エネルギー消費の中で最も
大きな割合を占める住宅部門
(全体の
%)
と業務部門
(同 %)
の省エネがよ
り重要になる。
YSCPは、
経済産業省からス
なお、
マートシティの実証実験を行う地域
(次
4000戸にHEMSの導入、
②発電
値 目 標を掲げた。① 横 浜 市 内の住 宅
※
世代エネルギー・社会システム実証地域)
能力 メガワット(一般家庭約7500
27
年から5年間にわたって行われてきたス
(横浜市、
アクセンチュア、
東芝、
日産自動
CO2
に指定されており、
参加企業、
参加世帯
ガス)
だ。
24
※
でなく、
既存の電力網と繋ぎ、
デマンドレ
24
スポンスとネガワット取引の実証実験を
80
24
そこで、Y S C Pでは、住宅部門や
業務部門の省エネを意識した つの数
5
29
1
15.9.24 11:02:47 AM
FORE95_14_17_まち�くり.indd 14
マートシティ実証実験「横浜スマートシ
7
ス
カ
ー
ォ
フ
まちのエネルギー消費の抑制に成功した
「横浜スマートシティプロジェクト」
日本最大の基礎自治体・横浜市で2010
14
大、
④ 排出量3万トン削減
(横浜市の
浜市内の電気自動車を2000台に拡
世帯分)
となる太陽光発電の導入、
③横
グリッド、
そしてY S C Pへの関心が高
に、
急速に再生可能エネルギーやスマート
だ。震災後の計画停電などをきっかけ
一掃されたのは2011年の震災以降
実証実験に寄与した
デベロッパーの参加
横 浜 市によると、2 0 1 1 年 以 降 、
う。また、
市民がY S C Pの実証実験
H E M Sの導入が急速に進んだと言
に参加する場合、
H E M Sの設置に計
万円
(国、
県、
市の補助の合算)
の補助
が受けられることもHEMS拡大を後
押しした。実際、
HEMSの導入戸数は、
2011年度の995戸から2012
年度には2640戸と1500戸以上
増加している。
さらに、
2011年7月に
三井不動産が、
同社が分譲する総戸数
117戸のマンション
「パークホームズ大
※
倉山」
にHEMSおよびマンション全体の
エネルギーを制御するMEMSを導入
し、
YSCPに参画すると表明したこと
と見られていた。目標が打ち出された
入 するという 目 標 達 成が非 常に困 難
H E M Sを一般家庭4000戸に導
京アステージが受託管理するマンション4
MEMSだ。そして2012年にも大
に自動で応じることができる先進的な
パークホームズ大倉山に導入さ
なお、
※
れたMEMSは、
CEMSからの制御
も大きかった。
2010年当初、
HEMSは商品化が
棟計200戸がHEMSを導入した上
い上、
設置費用が 万円以上と価格面
でも手頃とも言えなかった。そのため、
H E M Sを導入している住宅戸数は
2010年に 戸にとどまったことも
あって、
そのままのペースでは実証実験
を行う2014年度までに4000
給を統合的に管理するシステム。
※MEMS:マンションエネルギーマネジメント
システム
・
マンション用エネルギー統合管理シス
テム。
マンション全体のエネルギー需要と供給
を統合的に管理するシステム。
※CEMS:コミュニティエネルギーマネジメン
トシステム。地域全体のエネルギー需要と供
始まったばかり。
一般家庭の知名度が低
その達成が
Y S C Pの数値目標は、
非常に厳しいと見られていた。とくに、
まった。
年間 排出量約2000万トンの約 ・
排出量の削減率 %、
というものだ。
%分にあたる)
、
⑤実証実験参加者の
0
※デマンドレスポンス:電力の供給側
(発電所)
の発電量に応じて、
需要側
(一般家庭や工場
など)
が電力消費量を増減させること。た
とえば、
ピーク時に電気料金を値上げする
ことで、
各家庭や事業者に電力需要の抑制
を促す仕組みなどがある。
※ネガワット取引:電力会社との間であらか
じめピーク時などに節電する契約を結んだ
上で、
電力会社等からの依頼に応じて節電
した場合に対価を得る仕組み。
※HEMS:ホームエネルギーマネジメントシ
ステム
(家庭用エネルギー統合管理システム)
25
20
66
15.9.24 11:02:54 AM
FORE95_14_17_まち�くり.indd 15
CO2 CO2
戸の達成が危ぶまれていた。その懸念が
NO.95
15
16
CO2 15
図表1 実証実験の全体と実績
(横浜市+34社、15プロジェクトの連携)
■導入実績/目標
HEMS
(4,200件/4,000件), PV
(37MW/27MW), EV
(2,300台/2,000台)
(39千トン/30千トン)
, CO2削減率
(29%/25%) CO2排出削減量
資料提供:横浜市
Future
of
Real Estate
メニューの紹介及びメリット・デメリットの
ニューの紹介だけを受けるグループ、
②新
カットを行えば、
火力発電所1基分
(一
説明を受けるグループ、
③新メニュー加入
に当たる計 時間でも需要側がピーク
般家庭約100万世帯分)
の電力供給
が付与されるグループ
(変動料金に加入
にあたってメリット・デメリットの説明特典
万4441・ ㎡)
、
三井不動産の
「横
設備投資や焚き増しが不要になり、
そ
浜三井ビルディング」(地下 階地上
の分
万2884・
階建て、
同 万355・ ㎡)
、
そして横
浜 市 内で最大の床 面 積 をほこる三菱
排出量を削減できる可能性が
階建て、
同
ある。
補助を付与する)
の3グループに分けて、
それぞれのグループの新メニューへの参加
率と、
ピークカット量を測定する新たな
入率は ・ %に対して、
ピークカット効
デマンドレスポンスで
家庭部門の %の電力消費の削減
すると損をする世帯にも数千円程度の
地所の
「横浜ランドマークタワー」(地下
4階地上
みなとみらい」(地下4
㎡)、
三菱地所の運営する商業施設
「M A R K
階地上6階建、
同 万6189・ ㎡)
YSCPでは2013年から家庭部
門と事業部門のデマンドレスポンスの実証
果は ・ %と最も高かった。ただし、
全
実証実験を行った。 すると、
新メニュー
の紹介のみを受けた①のグループは、
加
実験を開始した。
たり、
自家発電や蓄電池からの電気を
ピークカットとは電力の逼迫時に合わ
せて、
需要側が一時的に節電などを行っ
フトやピークカットを実現することだ。
2013年 月から 月までに、
どれだけ
グループに分けた上で、
それぞれの家庭が
電気料金をより高く設定した家庭、
の3
料金を高く設定した家庭、
③ピーク時の
量を確認できる家庭、
②ピーク時の電気
実 験 は 、ま ず 1 9 0 0 世 帯 を ①
HEMSなどで自宅や地域で使用電力
1900戸世帯を対象に行った。
と連携したHEMSを導入している約
地域の
家庭を対象にした実証実験は、
電力供給と需要を調整できるCEMS
効 果は ・ %だったため、全 体への効
加入率が ・ %になり、
ピークカット
③の特典の付与を受けたグループだ。
体へのピークカット効果が高かったのは、
全体への効果も ・ %に止まった。全
①のグループの半 分 程 度にとどまり、
たものの、
ピークカット効果は ・ %と
メニューへの加入率は ・ %と倍になっ
などの説明を受けた②のグループは、
新
に止まった。新メニューの紹介とメリット
体に対するピークカット効果は ・ %
利用すること。
ピークシフトとは、
工場な
ピークカットを実現するかを測定した。
に蓄電などを行って、
電力ピーク時に蓄
果は ・ %と、
①、
②のグループよりも
ピークカットの効果が高いことがわかっ
を達成した。
寄与することなどがわかった。
この実証実験により、
先進的なDR実
験を行っている米国と同様、
日本でも特
た。
3種類の電力料金
2014年度は、
の新メニュー
(
( )
ピーク別料金
( )
時間
わが国では、2 0 1 6 年から電 力
小 売 りの全 面 自 由 化が開 始される。
電していた電力を使って全体の電力需要
が余分に発電している電力を抑制でき
帯別料金
( )
ピーク時報奨金)
をあらか
横 浜 市の実 証 実 験は、小 売 り 全 面 自
典の付与が新メニューへの加入率の増加に
る
(焚き増しの抑制)
。経済産業省の試
じめ用意した上で、
約1400世帯の
需要側が一日の電力使用量を平準
化できれば、
電力ピークに備えて供給側
算によると東京電力の管内で、 年間計
を平準化することだ。
4
4
13
5
30
7
4
2
7
8 15
7 47
6
HEMS導入世帯を①電力料金の新メ
ループは最大 ・ %ものピークカット
その結 果 、1 9 0 0 世 帯 全 体での
ピークカットが成功した。とくに③のグ
9
YSCPの実証実験の最大の目的は、
デマンドレスポンスによって電力のピークシ
想定し、
電力需要が落ちる真夜中など
どの需要側があらかじめ電力ピークを
火力発電所1基分の電力削減を
目指して
た。
気工業横浜製作所が工場として参加し
などだ。また、
産業部門として住友電
73
8760時間
(365× 時間)
の %
b
でYSCPへ参加を表明している。
YSCPには一般家庭だけでなく、
事業部門であるオフィスビルや商業施
設、
産業部門の工場も参加した。事業
7
15
2
a
c
部 門で参 画したのは丸 紅の1 0 0%
69
1
1
特 定 目 的 会 社 が 保 有・運 営 す る「 み
階 建て、延 床 面 積
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11
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2 16
3
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88
15
9
70
IS
CO2
2
11
85
39
24
「横浜ランドマークタワー」
YSCPの実証実験に参加した三菱地所の商 業 施 設
「マークイズみなとみらい」 YSCPの実証実験に参加した
なとみらいグランドセントラルタワー」
( 地 下2階 地 上
26
16
まちづくりの
由 化の中で、電 気 料 金の新メニューを
消費者に受け入れてもらう際の指針
となりそうだ。
オフィス、
商業施設も
ピークカットを達成
2013年の夏と冬に行われた実証
実験では、
①CEMSが統合BEMSに
全体の節電量を要請。
②要請を受けた統
※
合BEMSは各オフィスビルや商業施設
など 拠点それぞれのBEMSに個々の
オフィスビルの電力使用量に応じた節電
を依頼する。③これに応じて各ビルが節
電や発電、
蓄電池の電力を使用するなど
でピークカットを目指した。(図表 )
標の9割以上を達成することができた。
また、
節電に必要な価格は約 円/
が指標となることもわかった。
※BEMS:ビルディングエネルギーマネジメン
トシステム
(単体オフィス・商業ビル用エネル
ギー統合管理システム)
まちが電力需給に貢献できる
YSCPの実 証 実 験は、HEMS
導入戸数4200戸(目標4000
戸)
、
太陽光発電 MW
(目標 MW)
、
E V2300台(目標2000台)、
排 出 減 量3万 9 0 0 0トン
(目標
万トン)、 削減率 %
(目標 %)
のピークカットに成功。買
冬季、
夏季ともに最大 %
も測定した。実験の結果、
まちを構成する住宅や
YSCPは、
オフィスの省エネや創エネが、
全体の電力
とすべての目標をクリアした。
て、
オフィスや商業施設でも、
保有してい
円/
ピークカットの効果が見ら
る蓄電池や発電設備を活用して、
全体
取価格
れることが確認された。
の電力需給に貢献したいというニーズが
住宅やオフィスは、
どちらか
これまで、
と言えば系統電力
(発電所が発電した
高いことも明らかになった。
ネガワット取引を行った。
こ
電力)
を消費するだけの存在だった。そ
で、
節電や発電で生まれた電力を活用
の実験では、
節電量の買取
できることが明らかになった。
いわば、
ま
光発電や蓄電池が普及しはじめたこと
定を目指した。
ちそのものが発電所になったと言える。
れがHEMSやBEMS、
そして太陽
この結果、
入札によって
買取価格を決めることで
まちと発電所が、
互いに電力を融通し合
価格を入札で決めること
オフィスビルや商業施設の
えるようになれば、
横浜市だけでなく国
で、
節電に必要な価格の算
節電に対するインセンティ
の 削減目標の達成が見えてくる。
施設など 拠点を対象に
2014年の実証実験
では、
オフィスビルと商業
22
事 業 部 門であ るオフィスビルでも
2013年からデマンドレスポンスの実
節電は無償で行うのではなく、
なお、
節電量
( )
を買い取る
(イ
ンセンティブ・報奨金)
。
この
買取価格を複数設定する
ことで、
ピークカットがどれ
kWh
25
14
DR:デマンドレスポンス
30
27
需給に貢献できることを実証した。そし
29
以 上で
だけ達成されるかについて
37
2
kWh
証実験を行った。
図表2 オフィス、商業施設を対象に行われたデマンドレスポンスの実証実験
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ました。
の 必 要 性が説かれておりましたが、 関 連して自分 の 住 環 境と健 康につ いても考えてみ
私 の 場 合 、夏や冬になればエアコンやコタツを入れますが、住 宅 の 性 能というより冷
暖 房 器 具 の 力に頼って暑さや寒さを凌 いできた気がします。また、部 屋や場 所によって
温 度が違うため、少し移 動するだけで体 感 温 度は変わりました。そ の 際は、急 いで部 屋
できれば 一 定 の 快 適 な 温 度 で 過ごした 方 が 健 康に良 い の かもしれませ ん 。住 み 替 えを
間を移 動して いました。寒 暖 差によってアレル ギ ーや 風 邪 の 原 因にもなると聞くの で、
する機 会があれば、冷 暖 房 効 率 の 良 い 快 適な家に住 みたいものです。
(W)
一般社団法人 不動産協会
2015 年 9 月号<通巻 95 号>
発行日 2015 年 9 月 30 日
発行人 (一社)不動産協会
〒 100-6017 東京都千代田区霞が関 3-2-5 霞が関ビル17 階
Tel.03-3581-9421 Fax. 03-3581-7530
http://www.fdk.or.jp
編集人 不動産協会広報委員会
企画・編集協力 株式会社不動産経済研究所
株式会社シマ・コーポレーション
レイアウト・デザイン 株式会社タクトデザイン事務所
印刷 三美印刷株式会社
CO2
kWh
15
10
ブが増加。ピークカット目
NO.95
17
編集後記
Future
of
Real Estate
3 CO2
CO2
ス
カ
ー
ォ
フ
今 号 のクローズアップでは、日本 の 次 世 代 の 住 宅について、住 宅 の 気 密 化と断 熱 化
Future
of
Real Estate
」
夜の隅田川を
水上クルーズ船が
色鮮やかな光の航跡を残して
永代橋の向こうに消え去った。
かなたには超高層ビル群の灯りが
夜空にきらめく。
美しい水辺の夜景だった。
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