...

イ.トラムライン潤土直播(PDF:101KB)

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

イ.トラムライン潤土直播(PDF:101KB)
イ.トラムライン潤土直播
トラムライン潤土直播栽培は高能率・省力作業、酸素供給剤を使わない省資材、天候に左
右されない栽培方法であり、栽培と作業技術の両面から新しい直播技術を目指した大区画水
田に対応した省力・低コスト直播技術である。
1.トラムライン潤土直播栽培システムの特徴
) 代かき後の落水した田面に,酸素供給剤を用いずに催芽籾を高密度に散播して,苗立ちまで落水状態で管理する。
) 定 幅 散 布 機 を ハイクリアランストラクタ に搭載し,水田内の一定 経路 (トラムラ イ ン ) を 走 行 し な が ら 施 肥,播
種,薬剤散布を行う作業体系である。
2.種子予措から播種後の水管理
) 本栽培法では,高密度に播種するので,10 a当たり乾籾8 kg前後の種子を準備する。
) 塩水選や種子消毒は移植栽培に準じて行い,催芽籾を準備する。催芽程度は,完全に芽を切った状態が好ましい。
) 酸素供給剤を用いない。
) 播種は,定幅散布機により行う。また,播種時の田面は落水状態とし,出芽まで落水状態で管理する。
※従来,播種後の水管理は保温のため,播種後苗立ちまで湛水していたが,苗立ちの向上にはむしろ落水状態で管理す
る 方 が 望まし いこ とが 認 めら れて いる。この 落水 管理 により,転び 苗や 浮き 苗の 発 生 が 抑 制 さ れ る。潤 土 直 播 栽 培
は,まさにこの典型例である。
3.定幅散布機とトラムラインによる管理作業の体系
) 定幅散布機は,作業幅10mの水平多口パイプ噴頭型粒状散布機を小型ハイクリアランストラクタに搭載した管理作
業機である。
多口パイプ噴頭に送風機から風を送ることにより,空気の力で水田内に催芽籾や粒状肥料,粒状農薬を一定の幅に散
布することができる。
②動力散粒機と比較して,散布精度・能率ともに高く,大規模経営や大区画水田に適している。
) 施肥,播種および薬剤散布は,水田内の定められた10m間隔の経路を走行しながら作業する (トラムライン作業システム)
(図1)。
) 定幅散布機とトラムライン作業システムにより,1ha水田の播種は約30分で可能であり,条播や点播に比較して数倍も速
く,大面積の直播栽培が可能となった。
図1 トラムライン作業システムの概念図
) 播種と各種管理作業のほとんどを,ワンマンオペレーションで行うので,乾燥調製を除くha当たり延べ作業時間は
約50時間となり,他の直播栽培と比較してもきわめて高能率な作業体系である(表1)。
4.潤土直播栽培の留意点
) 散播方式のため,播種深さは田面の状態にもよるが土壌表面または表面下5mm程度にとどまるので,出芽・苗立ち
は良いが倒伏に対する注意が必要である。
) 短稈で耐倒伏性に優れる品種,例えば「どんとこい」や「キヌヒカリ」などを選定する。
「どんとこい」の特徴は (表2),
短強稈の良食味品種であり,「キヌヒカリ」よりも耐倒伏性に優れ,安定して多収である。
播種期が5月中下旬でも登熟歩合の低下が小さい。
北陸・関東以西の温暖地・暖地が適応地域である。
表2 潤土直播栽培における「どんとこい」の生育と食味
食味
苗立ち率 稈長
倒伏
玄米重
栽培年次
品種
(%)
(cm)
程度 (kg/10a)
平成6年
どんとこい
82
66
無∼微
629
0.44
キヌヒカリ
75
67
少
594
0.13
コシヒカリ
55
81
甚
434
0.81*
平成7年
どんとこい
85
65
無
654
1.00**
キヌヒカリ
83
69
無
520
0.65**
播種期:5月23日 (平成6年),4月25日 (平成7年).
播種量:6 kg/10a.食味は「ホウネンワセ」を基準に,−5∼+5で評価.
北陸農業研究成果情報 (平成8年) を改変.
) 定幅散布機による播種,施肥および薬剤散布作業では,同一経路を走行するので,走行に必要な地耐力のある水田
に限定される。走行部分の地耐力が弱い場合,例えば重粘土地帯では,セメント系資材で走行路を強化できる。
5.その他
トラムラインは溝型 であるため,(1)入水に要する時間が短縮される,(2)中干し時の溝切りを 必要としない,(3)収
穫時の田面乾燥が進む,等用排水路としての機能もある。
5.参考資料
)北陸地域直播稲作推進会議ほか 「北陸地域水稲湛水直播栽培導入・定着マニュアル」平成11年
)北陸農業試験場報告 第33号 「水稲の高密度散播直播栽培における生育制御」平成3年
)北陸農業研究成果情報 第12号 「定幅散布機」,「定幅散布機を基幹とする水稲の潤土表面散播栽培作業体系」平成
8年
)北陸農業研究成果情報 第12号 「水稲新品種『どんとこい』の直播適性」平成8年
潤土直播「どんとこい」播種(散布幅10mの定幅散布機使用
1.25人・hr/ha)
初期成育とトラムライン
穂肥施用(散布幅10mの定幅散布機使用1.32hr・人/ha)
(北陸農業試験場
佐々木良治)
Fly UP