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アジアの統合植生図化(第3年次) -地図情報の総合化-
アジアの統合植生図化(第3年次) -地図情報の総合化- 実施期間 平成 16 年度~平成 19 年度 地理地殻活動研究センター 地理情報解析研究室 佐藤 浩 1.はじめに 現存植生図は現在,日本等において整備済あるいは整備中であり,ミャンマー,タイにおいても調査年 は古いものの整備されている.しかし,アジア地域の「統合植生図」 (凡例の統一した現存植生図)は,ま だ出来ていない.本研究の目的は,平成 17 年度に検討したグランドトゥルース(Ground truth: GT)デー タ収集方法の検討を受けて,統合植生図化に資する中国を含む広域的なアジアの土地被覆分類図を作成す ることである. 2.実施内容 本研究では,昨年度と同様,中国科学院が作成した中国の1km グリッド土地利用データ(25 分類)と土 地被覆データ(17 分類)を使い,独立に作成されたという仮定の下,両者を重ね合わせて妥当な GT デー タを取得した.そして,NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration:米海洋大気庁)が提 供する 2003 年の1km グリッド TERRA/MODIS データから計算した 23 旬間の NDVI(Normarized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)に教師付き分類(最尤法分類)を適用して,土地被覆分類図を作成 した. なお,本研究は,文部科学省科学研究費補助金研究「アジアの統合植生図化」の一環として行った. (1)土地利用データ 土地利用データは 25 分類からなり,グリッド毎に土地利用分類の占有面積率が整数値で与えられている. 事前に,単一の分類(100%の面積率)からなるグリッドを抽出した. (2)土地被覆データ 土地被覆データは 17 分類からなる.このデータには,1km 画素における土地被覆の分類番号が整数値 で格納されているので,土地利用データのような占有面積率は導けない. (3)GT の収集と土地被覆分類 土地利用「田」と土地被覆「耕地」が重なる場所は,「田」の GT データとして活用できる.しかし,土 地利用「田」と土地被覆「常緑針葉樹」が重なる場所は,GT データとして選べない.このようにして,活 用可能な GT データを集めた.ただし,田[耕地]と畑[耕地](それぞれ,土地利用の田・畑と,土地被覆の 耕地の重ね合わせであることを示す)については,地域に応じて 23 旬間の NDVI 時系列変化パターンが異 なる.そこで,田[耕地]と畑[耕地]については中国9地域に細分類して,結局,46 分類の GT データを用 意した. 3.得られた成果 23 旬刊の NDVI データだけから分類した結果,GT データだけで正解率を評価すると,約 70%となった. 植生の分布パターンは地形によって左右されると考えられるので,23 旬間の NDVI に,NOAA の SRTM (Shuttle Radar Topography Mission)-DEM(Digital Elevation Model:数値地形モデル)と DEM から計算した傾斜, 起伏度,テクスチャ(Iwahashi and Pike,2007)を加えて 27 バンドとした.その結果,最終的な土地被 覆分類の正解率は 81%に向上した.図-1に,最終的な分類結果を示す.図-1は,田[耕地],畑[耕地] の地域別細分類を集約して元に復すとともに紛れやすい分類を集約し,さらに,彩色の都合上,分類を統 合した 24 分類からなっている.分類精度を別途評価するために,GT データとは独立に,植生学者による 110 点の現地調査結果を本研究の分類に読み換えて得られた 21 分類を対比したところ,正解率は約 46%で あった. 図-1 土地被覆分類の結果.110 点の黒点は,分類精度評価に使った植生学者による現地調査サイト. 凡例1-7: 田[耕地]; 8-16: 畑[耕地]; 17, 19: 有林地[常緑針葉], 有林地[常緑広葉]; 18: 有林地 [落葉針葉]; 20: 有林地[落葉広葉]; 21, 27: 有林地[混合林], 疎林地[混合林]; 22: 灌木林[灌木]; 23: 疎林地[常緑針葉]; 24: 疎林地[落葉針葉]; 25: 疎林地[常緑広葉]; 26: 疎林地[落葉広葉]; 28: 他 の林地[混合林]; 29; 高度被覆草地[草地密]; 30, 31, 38, 39, 44-46: 中度被覆草地[草地中], 低度被 覆草地[草地低], 砂地[砂漠], ゴビ[荒砂漠], 岩裸地[荒砂漠], 岩裸地[露岩地], その他[荒砂漠]; 32: 湖[水体]; 33: 氷雪[氷雪]; 34: 浜[湿地]; 35: 川原[湿地]; 36: 都市[市街地]; 37: 建設中[市街 地]; 40: アルカリ土壌[荒砂漠]; 41: 沼沢地[湿地]; 42: 裸地[草地疎]; 43: 裸地[荒砂漠] 4.結論 草地疎と裸地の分類が難しいことは,従来の土地被覆分類の研究でも指摘されているが,今後,中国の 土地利用・土地被覆データから採った GT データを使ってより広域的に土地被覆を分類すると,現地調査に よる検証用の GT と対比した場合,中国から隔たるにつれて正解率がどのように変化するか,調べる予定で ある. 参考文献 Iwahashi J,Pike RJ(2007):Automated classifications of topography from DEMs by an unsupervised nested-means algorithm and a three-part geometric signature.Geomorphology(in press).