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特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援

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特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
1
はじめに
政府は,平成22年4月1日に「子ども・若者育成支援推進法」(平21法71)を施行し,同年7
月23日には同法に基づく子ども・若者育成支援推進大綱として「子ども・若者ビジョン」の策定
を行いました。子ども・若者を取り巻く環境の変化とともに子ども・若者の抱える「困難」も複
雑化していることから,
「子ども・若者ビジョン」では3つの重点課題の1つとして「困難を有
する子ども・若者やその家族を支援する取組」を挙げ,それぞれの「困難」に合わせた支援を行
うこととしています。
内閣府では,平成22年7月に子ども・若者が抱える困難のうち「ひきこもり」に着目した調査
結果(「若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)
」
)を公表しました。ひきこも
りのほかにも,不登校やニート等子ども・若者が抱える困難は多岐にわたりますが,その中でも
高等学校中途退学者はフリーターや若年無業者等社会的弱者に至る可能性が高いとの指摘がある
一方で,中途退学後の彼ら/彼女らの実態は把握しきれていません。
こうした状況を受け,内閣府では,平成22年度に高等学校中途退学者の生活状況や意識,必要
としている支援を把握するため,文部科学省の協力を得て全国調査(以下「本調査」という。
)
を実施しました。
ここでは,本調査結果等から高等学校中途退学者の状況を見るとともに,実際に地域や民間団
体等で行われている取組事例の概要を紹介します。
2
「若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する調査)
」結果から
高等学校を中途退学した人のその後の生活状況や必要としている支援,展望はどのようなもの
なのでしょうか。高等学校中途退学者数等の現状に触れつつ,本調査結果から見える高等学校中
途退学者の姿を紹介していきたいと思います。
⑴
調査の概要
本調査は,平成22年7月から同年9月にかけて郵送送付・郵送回収によるアンケート調査の方
法により実施しました。調査対象は高等学校中途退学後概ね2年以内の者とし,協力を得られた
都道府県及び政令市にある公立高校から,中途退学した2651人に対して調査票を送付し,1176人
から有効回答を得ました(有効回答率44.
4%)
。
詳細な調査結果については内閣府 HP※1に掲載していますので,御参照ください。
⑵
高等学校中途退学率の推移
平成21年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)(以下,
「文部科学省調査」という。
)によると,高等学校における中途退学率(在籍者数に占める中途
7%と若
退学者数の割合)は平成17年度以降2%程度で推移していたものの,平成21年度では1.
干の減少傾向が見られました。ただし,このまま減少傾向をたどるのかについては,今後の推移
を注視していく必要があるでしょう(第1部第1章第2節3(3)高等学校中途退学者参照)
。
※1
62
http://www8.
cao.go.jp/youth/kenkyu/school/kaisetsu.html
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
⑶
現在していること
図1
現在していること(複数回答)
高等学校中途退学後概ね2年以内の彼ら/彼
0
女らが現在していることとしては,「働いてい
10
20
40
50
56.2
働いている
(図1)
。「働いている」人の内訳としては「フ
在学中
リーター・パートなど」が77.
2%と圧倒的に多
妊娠中・育児をしている
く,「正社員・正職員など」は17.
1%となって
家事・家事手伝いをしている
います(図2)
。平成22年労働力調査(総務省
その他
統計局,詳細集計)によると,本調査の対象者
特に何もしていない
とほぼ同年齢と考えられる15∼19歳の者のうち
(%)
60
13.6
仕事を探している
2%,「在学中」30.
8%となっています
る」56.
30
30.8
5.4
11.0
7.0
4.0
n=1,176人,M.T.=128.0%
無回答 -
雇用者は93万人であり,雇用者の内訳として
図2
は,「正規の職員・従業員」29万人(31.
2%)
,
現在「働いている」人の内訳(複数回答)
「パート・アルバイト」61万人(65.
6%)となっ
0
ていることから,高等学校を中途退学した者が
正社員・正職員など
正社員・正職員として働いている割合は相対的
フリーター・パートなど
に低いと考えられます。
家の商売や事業など
無回答
⑷
10
20
30
40
50
60
70
80
(%)
90
集
17.1
77.2
6.1
n=661人,M.T.=101.1%
0.8
中途退学した理由
中途退学した原因について文部科学省調査で近年の推移を見ると,平成10年度以前は主たる原
因として「進路変更」を挙げる者の割合が高かったものの,それ以降は「学校生活・学業不適応」
を挙げる者の割合が最も高くなっています(第1部第1章第2節3(3)高等学校中途退学者参
照)
。
本調査結果において中途退学した理由として当てはまるかどうかを聞いたところ,
「とても当
てはまる」「まあ当てはまる」と回答した者の割合について見ると,「欠席や欠時がたまって進級
図3
中途退学した理由
0
10
勉強がわからなかった
(n=1,176)
30
14.9
40
24.2
仲の良い友人が辞めてしまった
(n=1,174) 4.5
10.3
問題行動を起こした
(n=1,172)
人間関係がうまくいかなかった
(n=1,176)
48.6
52.0
27.8
14.8
11.5
24.1
12.5
7.6
(%)
60
50
33.8
校則など校風があわなかった
(n=1,176)
第一希望の高校ではなかった
(n=1,176)
20
20.8
13.3
21.2
46.3
25.1
0.9
親に辞めさせられた
(n=1,176) 2.0 2.9
とても当てはまる
経済的な余裕がなかった
(n=1,176)
5.4
まあ当てはまる
健康上の理由
(n=1,176)
9.1
0.8
妊娠した
(n=1,175) 3.2
4.0
高校生活以外に興味があることができた
(n=1,173)
早く家を出たかった
(n=1,175)
9.4
18.5
14.5
欠席や欠時がたまって進級できそうもなかった
(n=1,174)
早く経済的に自立したかった
(n=1,174)
16.0
10.6
36.3
21.8
29.5
9.9
8.6
25.4
13.6
54.9
30.0
20.1
特
22.2
(注)無効回答(当てはまるかどうか選択肢一つを選ぶべきところ,二つ以上を選んでいる場合等)については,各項目のnから除いています。
63
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
できそうもなかったから」(54.
9%)及び「校則など校風があわなかったから」(52.
0%)が5割
を超えており,「勉強がわからなかったから」(48.
6%)や「人間関係がうまくいかなかったから」
(46.
3%)と回答した者も5割近くに上っています(図3)
。
⑸
高等学校中途退学者を取り巻く家庭環境
高等学校中途退学者を取り巻く家庭環境はどのようなものなのでしょうか。支援の在り方を検
討する上で,高等学校中途退学者である子ども本人の状況とともに,本人を取り巻いている家庭
環境の状況についても見ていく必要があります。ここでは,保護者の学歴,世帯構成及び経済的
なゆとりに着目して紹介していくこととします。
ア
保護者の学歴
本調査の対象者の保護者の学歴を見ると,「高校卒業」(父親38.
0%,母親48.
4%)が最も多
く,「中学校卒業(高校中退を含む)
」(父親18.
7%,母親14.
9%)
,「短大・大学卒業」(父親
16.
2%,母親15.
1%)
,「専門学校卒業」(父親4.
3%,母親11.
3%)となっています(図4)
。
本調査の対象者の父親又は母親とほぼ同世代と考えられる35歳から49歳までの男女の最終卒業
学 校 に つ い て,平 成19年 就 業 構 造 基 本 調 査 の 結 果 を 見 る と,「高 校」(男 性42.
3%,女 性
44.
4%)が最も多く,「短大・大学以上(※)
」(男性40.
0%,女性36.
0%)
,「専門学校」(男性
10.
9%,女性15.
2%)
,「小学・中学」(男性6.
3%,女性3.
9%)となっており(図5)
,本調査
の対象者の父母の学歴は高等学校を卒業していない者の割合が高く,高等教育機関を卒業した
者の割合が低いことがうかがえます。
このことは,高等学校を卒業していない親を持つ子どもは,進路面で「高等学校を卒業しな
い」又は「短大・大学への進学が選択肢の一つにならない」という選択をすることが多いこと
を示している可能性もあり,その点を踏まえて高等学校卒業や高等教育機関への進学に対する
動機づけを支援することも高等学校中途退学を防ぐことにつながると考えられます。
ただし,①就業構造基本調査は本人が回答しているのに対し,本調査は調査対象者である子
図4
図5
保護者の学歴
0
10
20
30
40
50
平成19年就業構造基本調査に見
る35歳から49歳までの学歴分布
(%)
60
(%)
0
18.7
10
20
30
40
50
中学校卒業
(高校中退を含む)
14.9
6.3
小学・中学
38.0
3.9
高校卒業
48.4
42.3
高校
44.4
4.3
専門学校卒業
10.9
11.3
専門学校
15.2
16.2
短大・大学卒業
15.1
短大・大学以上(※)
40.0
36.0
11.2
わからない
7.4
11.6
無回答
2.8
(注)無効回答についてはnから除いています。
64
父親
(n=1,174)
母親
(n=1,175)
男性(n=12,548,500)
女性(n=12,383,200)
(※)平成19年就業構造基本調査では「短大・高専」
「大学」「大学院」の別に集計
されており,ここではこれらの数値を合算している。
なお,nについては推計値となっている。
(平成19年就業構造基本調査(総務省統計局)より内閣府作成)
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
どもが保護者の学歴を回答していること,②本調査では保護者の学歴を「わからない」
(父親
11.
2%,母親7.
4%)と回答した者や「無回答」(父親11.
6%,母親2.
8%)の者が一定数いる
こと,③保護者の学歴についての子どもの認識が正しいか検証できないことから,就業構造基
本調査と本調査との単純な比較はできないことに留意する必要があります。
イ
世帯構成
高等学校中途退学者が生活している「世帯」とはどのようなものなのでしょうか。本調査結
果によると,同居している家族の人数(本人を除く。
)は平均3.
19人であり,3.
2%の人はひと
り暮らしをしています(図6)
。ここでは同居している家族について,「
「母親」のみ」又は「
「母
親」及び「兄弟姉妹」のみ」と回答した者を「母子世帯」
,「
「父親」のみ」又は「「父親」及び
「兄弟姉妹」のみ」と回答した者を「父子世帯」と定義し,本調査の対象者の「ひとり親世帯」
の割合を算出してみると,「母子世帯」240人(21.
1%)
,「父子世帯」40人(3.
5%)となりま
す(図7)
。これは,平成17年国勢調査(総務省統計局)の調査結果を基に算出した15歳以上
特
20歳未満の子どものいる親族世帯に占める15歳以上20歳未満の子どものいる母子又は父子世帯
集
の割合と比較すると,「母子世帯」では約3.
6倍,「父子世帯」では約3.
2倍,本調査結果のほう
が高くなっています※2。
図6
同居している家族の人数
0
0人
10
20
3.2
1人
0
5
10
15
20
(%)
25
21.1
10.5
(参考)平成17年国勢調査
(n=168,189)
20.0
3人
27.7
4人
5.8
【父子世帯】
本調査(n=40)
3.5
20.0
5人
7人∼
ひとり親世帯の割合
【母子世帯】
本調査(n=240)
2人
6人
図7
(%)
30
(参考)平成17年国勢調査
(n=32,607)
11.0
4.2
3.1
無回答 0.1
n=1,175
1.1
(※2)ここでは,本調査又は平成17年国勢調査の結果を基に,次のとおり母子又
は父子世帯の割合を算出しています。
●本調査
母子(父子)世帯数
有効回答数−{(ひとり暮らしの者の数)+(無効回答者数)}
(注)無効回答についてはnから除いています。
●平成17年国勢調査
最年少の子どもが15歳以上20歳未満の子どものいる母子(父子)世帯数(※)
最年少の子どもが15歳以上20歳未満の子どものいる親族世帯数
(※)国勢調査における母子(父子)世帯とは,未婚,死別又は離別の女(男)親
と,その未婚の20歳未満の子どものみから成る一般世帯であり,20歳以上の
子どもがいる場合は含まれません。
ウ
経済的なゆとり
次に本調査の対象者の家族の経済的なゆとりを見ると,苦しいと回答した者(
「苦しい」と
「やや苦しい」の計)が63.
0%となっています(図8)
。また,主な収入源として「生活保護
を受けている」と回答した者も3.
8%おり(図9)
,本調査結果からは高等学校中途退学者の家
族に経済的なゆとりがあるとは考えにくくなっています。
なお,本調査の対象者のうち「母子世帯」に該当する者(上述「イ
世帯構成」参照)につ
いて見ると,家族の経済的なゆとりについて苦しいと回答した者が79.
2%,主な収入源として
「生活保護を受けている」と回答した者が13.
3%となっており,本調査の対象者全体よりも経
済的に苦しい状況がうかがえます(本調査の対象者のうち「父子世帯」に該当する者について
は,母数が少ないため分析をしていません。
)
。また,中途退学した理由として「経済的な余裕
65
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
図8
経済的なゆとり
図9
主な収入源(複数回答)
無回答
0.9%
0
10
あなた自身
ゆとりが
ある
8.8%
やや
苦しい
37.8%
6.3
祖父母
7.0
生活保護を受けている
n=1,175
(注)無効回答についてはnから除いています。
その他
50
60
(%)
70
53.5
兄弟姉妹
あなたの結婚相手・同棲相手
40
59.3
母親
ややゆとりが
ある
27.4%
30
26.4
父親
苦しい
25.2%
20
5.3
3.8
2.2
無回答 0.5
n=1,176人,M.T.=164.3%
がなかった」に「とても当てはまる」及び「まあ当てはまる」と回答した者(16.
0%)につい
て見ると,「母子世帯」及び「父子世帯」に該当する者(上述「イ 世帯構成」参照)の割合
が44.
4%となっています。
本調査結果から「ひとり親世帯」と高等学校中途退学との単純な関係性が明らかになったわ
けではありません。しかし,
「ひとり親世帯」は経済的問題も含め様々な複合的問題を抱えて
いる可能性があり,その要因を見極めた上で適切な対応をしていくことが求められています。
⑹
中途退学者の抱く将来展望
ここまで高等学校中途退学者の「現在」に着目して本調査結果を紹介してきましたが,「将来」
についてはどのように考えているのでしょうか。
ア
3年後の自分の姿を想像した今後の進路希望
まず,3年後の自分の姿を想像した今後の進路希望としては「正社員として働きたい」
(35.
9%)が最も多くなっており,正規雇用希望者が多いことがうかがえます(図10)
。また,
専門学校や大学への進学希望者も2割以上います。一方で,本調査の対象者の96.
8%は19歳以下
と年齢が若く,今後の進路希望について決まっていない者(
「まだどうしていいかわからない」
11.
5%)もいることを考慮に入れて支援方策を検討していく必要があるでしょう(図11)
。
イ
自分の将来への不安感
本調査の対象者の自分の将来への不安感を見ると,不安があると回答した者(
「たいへん不
安だ」と「やや不安がある」の計)は69.
6%となっており,7割近くの者が何らかの不安を抱
えていることがうかがえます(図12)
。「現在していること」別に自分の将来への不安感につい
て見てみると,現在「働いている(正社員・正職員など)
」者のうち自分の将来に不安を抱え
6%と,現在「高校に在学中(全日制・定時制)」の者(80.
8%)と比較
ている者の割合は56.
して低くなっており,就労している者の方が就学している者よりも相対的に不安感は低い傾向
が見られます。
ただし,相対的に不安感が低い「働いている(正社員・正職員など)
」者であっても5割を
超えており,高等学校中途退学者が抱く自分の将来像は楽観的なものではないことがうかがえ
ます。
66
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
図10
今後の進路希望
0
10
高校に再入学したい
20
図11
(%)
40
30
6.1
専門学校に入学したい
平成22年4月現在の年齢
19歳
4.9%
20歳∼
2.9%
無回答
0.3%
15歳
2.2%
10.1
大学に進学したい
12.9
アルバイトとして働きたい
16歳
28.9%
18歳
21.3%
9.9
正社員として働きたい
35.9
しばらく遊んでいたい 1.0
進学も仕事もせずに,
結婚したい
17歳
39.5%
2.3
まだどうしていいかわからない
11.5
その他
n=1,173
9.9
無回答 0.4
(注)無効回答についてはnから除いています。
図12
(注)無効回答についてはnから除いています。
ウ
特
n=1,156
「現在していること」別の自
分の将来への不安感
(%)
10 20 30 40 50 60 70 80 90
0
高卒の資格の必要性
全体
(n=1,174)
本調査の対象者のうち,高等学校を辞めた
7%に
ことを後悔していると回答した者は23.
仕事を探している
(n=160)
とどまっているものの(図13)
,中途退学後
に高卒の資格は必要だと考えた者は78.
4%に
上っています(図14)
。さらに,高等学校を
辞めたことを後悔していないと回答した者の
5%は中途退学後に高卒の資格は必要
うち67.
だと考えたと回答しており,高等学校中途退
学者を支援する際には,中途退学したことに
対する後悔の低さと高卒資格は必要だという
43.4
38.8
働いている(正社員・正職員など)
(n=113)
18.6
働いている(フリーター・パートなど)
(n=508)
20.7
高校に在学中(全日制・定時制)
(n=120)
75.0
56.6
38.1
66.5
45.9
80.8
48.3
36.1
家事・家事手伝いをしている
(n=129)
69.6
36.3
32.5
高校に在学中(通信制)
(n=180)
認識の高さという一見相反する感情を抱えて
いる者がいることに留意が必要となるでしょ
26.1
78.9
42.8
39.5
76.0
36.4
たいへん不安だ
やや不安がある
(注)無効回答についてはnから除いています。
う。
図13
高等学校を辞めたことを後悔
しているか
図14
無回答
0.6%
0
全体
(n=1,175)
10
20
30
40
後悔していない
(n=551)
50
60
78.4
後悔した
(n=279)
はい
23.7%
どちらとも
いえない
28.7%
中途退学後に高卒の資格は必
要だと考えたか
70
80
(%)
90 100
21.3
6.5 0.7
92.8
67.5
はい
32.3
いいえ
0.3
0.2
無回答
(注)無効回答についてはnから除いています。
いいえ
46.9%
n=1,176
67
集
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
⑺
求められる支援
ア
必要なもの
本調査の対象者にとって必要なものを見ると,「進路や生活などについて何でも相談できる
人」66.
6%,「生活や就学のための経済的補助」63.
1%となっています(図15)
。7つの質問項
目中5つの項目で半数以上の人が「必要」あるいは「ある程度必要」と回答しており,支援の
ニーズは高いと言えます。
イ
社会サービスに関する認知度
本調査の対象者が社会サービスについてどのくらい知っているかを見ると,奨学金・高校授
業料無償等の「進学支援制度」が52.
6%となっている一方で,「仕事で困ったときに相談する
方法」33.
8%,「雇用保険」30.
1%となっており,3割程度にとどまっています(図16)
。若者
のニーズに応えられる社会サービスを提供できる施設も既にあり,情報発信を通じて社会サー
ビス全般に関する認知度を上げること自体も高等学校中途退学者への支援の向上につながると
考えられます。
図15
必要なもの
0
10
20
低い家賃で住めるところ
(寮や下宿のようなところ)
(n=1,175)
29.4
生活や就学のための経済的補助
(n=1,176)
31.3
進路や生活などについて
何でも相談できる施設
(n=1,176)
40
50
26.4
30.5
必要
21.6
63.1
10
66.6
55.9
33.6
職業訓練を受ける方法
6.0
(n=1,175)
18.7
ある程度必要
30
40
50
60
(%)
70
30.1
24.7
23.1
生活で困ったときに相談する方法
8.4
18.4
(n=1,173)
1.5
地域若者サポートステーション
(n=1,176) 4.4 6.0
進学支援制度
(n=1,175)
56.3
20
24.3
仕事で困ったときに相談する方法
10.7
(n=1,175)
48.6
32.6
0
雇用保険
5.8
(n=1,176)
55.7
30.5
社会サービスに関する認知度
(%)
70
33.5
25.4
23.7
60
31.8
33.1
読み書き計算などの
基礎的な学習への支援 12.0
(n=1,176)
会社などでの職場実習の機会
(n=1,176)
30
18.0
進路や生活などについて
何でも相談できる人
(n=1,176)
仲間と出会え,一緒に活動できる施設
(n=1,175)
図16
16.7
よく知っている
33.8
26.8
35.9
52.6
だいたい知っている
(注)無効回答(知っているかどうか選択肢一つを選ぶべきところ,二つ以上を
選んでいる場合等)については,各項目のnから除いています。
(注)無効回答(必要かどうか選択肢一つを選ぶべき必要ところ,二つ以上を選
んでいる場合等)については,各項目のnから除いています。
ウ
高等学校を辞める際に相談をした人
本調査結果によると,高等学校を辞めることについて誰かに相談したかについて「相談した」
と回答した者は77.
9%であり(図17)
,実際に相談した人の内訳を見ると,「親」(90.
0%)に
次いで「高校の先生」
(51.
3%)となっている一方,「相談施設の職員」は1.
5%となっていま
す。このことから,親や高等学校の先生が中途退学に関する相談を受けた際,中途退学後にも
利用できる各種相談機関についての適切な情報を提供できるようあらかじめ専門施設について
の認知度を上げておくことが中途退学後に必要とされる支援へと結びつける有効な方法の一つ
になるのではないかと考えられます。
68
特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援
図17
辞める際に相談したか
図18
相談した相手(複数回答)
無回答
0.3%
0
10
20
30
40
50
60
70
80
(%)
90 100
親
90.0
兄弟姉妹
相談しなかった
21.9%
18.9
高校の先生
51.3
小中学校の先生
6.3
高校時代の友人
29.4
高校以外の友人
相談した
77.9%
25.0
先輩
11.0
中退経験のある人
n=1,176
18.0
相談施設の職員 1.5
インターネットで
交流のある人
2.6
その他
無回答
7.0
特
n=916人,M.T.261.0%
-
集
3
高等学校中途退学者への支援
本調査結果からは,高等学校中途退学者の多くが,就労,家庭環境,経済面等において様々な
ハンディキャップを負っていること,またそのうちの多くの者が将来への不安感を抱きつつ,多
様な支援を必要としていることが読み取れました。
ここでは,地域で行われている高等学校中途退学者に対しての支援の取組例を紹介するととも
に,今後の支援の在り方について考えます。
⑴
高等学校中退者への様々な支援
○地域若者サポートステーションを活用した支援事業
地域において,高等学校中途退学者を孤立させず,社会との接点を維持させ,さらに新たに就
学や就労に導くことは重要です。
厚生労働省では,地方自治体と協働し,ニート等の若者の自立を目指し,若者支援の実績やノ
ウハウを持つ地域の NPO 等に事業を委託し,
「地域若者サポートステーション」(愛称:サポス
テ)を設置(平成23年度:全国で110か所)しています。地域若者サポートステーションでは,
キャリア・コンサルタント等による専門的な相談等,自立に向けた様々な支援プログラムを実施
しています。平成22年度からは「高校中退者等アウトリーチ事業」
(平成23年度:全国60か所で
実施)を実施し,高等学校等と連携の下,進路の決まっていないおおむね1年以内の高等学校中
途退学者(予定者を含む)を対象に,訪問支援担当のキャリア・コンサルタント等による自宅等
への訪問支援(アウトリーチ)を実施し,学校教育から地域若者サポートステーションへの円滑
な誘導を行い,切れ目のない支援を通じ早期の自立・進路決定を促すものです。
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