...

平成20年度研究成果報告書 (PDF/1.21MB)

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

平成20年度研究成果報告書 (PDF/1.21MB)
平成20年度 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 研究成果報告書
ドラッグラショナル研究開発センター(プロジェクト1)
研究プロジェクト名 薬剤師支援システムの構築と医薬品の適正使用研究
研究代表者及び分担者
研究室名
職名
氏 名
研 究 の 役 割 分 担
医薬品情報解析学
教授
土橋 朗
研究総括 薬剤師の生涯教育支援サイトの構築
総合医療薬学講座
・薬物治療学分野
准教授
森川正子
医薬品の適正使用を目的とするデータベースの構築
循環器疾患と代謝性疾患に対する薬物療法の評価
医薬品の適正使用を目的とする薬物治療の評価
機能性分子設計学
准教授
小杉義幸
薬剤師業務を支援する医薬情報データベース及び情
報ネットワークの構築
臨床薬効解析学
教授
准教授
講師
山田安彦
高柳理早
大関健志
癌化学療法の適正化に向けた患者個別の投与設計シ
ステムの構築
医療実務薬学
教授
畝崎 栄
医薬品の適正使用を目的とするデータベースの構築
医薬品情報解析学
客員研究員 岡崎光洋
薬剤師の生涯教育支援サイトの構築
経済学
准教授
蔵本喜久
医薬の適正使用環境に関する研究
薬学実務実習教育
教授
安藤利亮
社会資源としての薬局のあり方-薬剤師側の視点
センター
准教授
井上みち子
と消費者側からの評価、薬物治療の適正使用状況の
評価
研究成果の概要
本プロジェクトが公開する添付文書 XML 検索表示システム、後発医薬品検索・選択支援システム、同種
同効薬検索システム、医薬品含有成分データベース(DB)の更新作業を引き続き行うとともに、保有する
含有成分データを利用して、
医薬品中にドーピング禁止薬物が含まれるか否かを判定するドーピング禁止薬
検索システムを開発した。また、小児領域の薬物治療を支援するため、すでに開発済みの医療用医薬品検索
システムを利用して、全医薬品の小児への適応情報を抽出し、汎用される 5 種類の計算式を用いて成人量
から小児用量を算出する小児薬適応検索・用量計算システムを開発した(小杉)
。本プロジェクトでは医薬
品・医療情報および薬学教育資源を共有化し、薬剤師の業務活動および学習活動を支援するため、ポータル
サイトとして MediGate を継続的に開発しており、このポータルサイトに内蔵することを目的として、医
療用医薬品に関する製品情報を持つ DB、
医療用医薬品添付文書を作成する上で利用される専門用語の DB、
薬効を示す医療用医薬品の主成分に関する DB、医療用医薬品に含まれる添加物成分に関する DB、そして
これらの DB を有機的に関連させ、検索対象とされる医薬品をリスト表示および一覧表示する検索ウェブ
システムを開発した。また、この統合的 DB に格納するため、違法ドラック DB と食物アレルギーDB を開
1
発した。同サイトには北海道を中心とする薬剤師研修会・セミナーなどの教育資源としての動画コンテンツ
が蓄積され、Medigate による利用者の認証を経て、登録会員へ配信されている(土橋、岡崎)
。
こうした情報公開を推進する共に、医薬品の適正使用の検討のため、循環器疾患の危険因子である脂質代
謝異常をとりあげ、スタチンの適正使用のためのエビデンスの構築とデータベースの構築を目的として、薬
物療法の評価を行った。血清 LDL-コレステロール(LDL-C)低下効果に明らかな差がある 2 種類のスタチ
ンを用いて脂質異常症患者における多面的作用を検証し、
スタチン投与によりヒトにおいてもコレステロー
ルに依存しない多面的効果が現れること、
そしてその程度はアトルバスタチンよりもプラバスタチンの方が
より顕著であることを明かとした(森川)
。
本プロジェクトでは、癌化学療法のプロトコルを収集し、各プロトコルにおいて認められる副作用に着目
して評価を行った。この評価は薬理学・薬物動態学に基づいた患者個別の用法・用量設定を可能とする投与
設計支援システムの構築を目的とするものである。
リン酸エストラムスチン(EMP)投与時のセロトニン代謝物 5-HIAA の尿中排泄量と悪心・嘔吐の発現
状況との関連性の解析から、EMP 投与によりセロトニンの一過的な上昇は起こり得るものの、悪心・嘔吐
との関連性は低いことを明らかとした。また、制吐作用をもつ 5-HT3 受容体拮抗薬の反応性の個人差に関
与する 5-HT3B 受容体遺伝子の遺伝子多型の探索から、5-HT3B 受容体遺伝子における複数の遺伝子多型の存
在を明らかにした(山田)
。また、消化器癌を中心とするがん化学療法のプロトコルでは、患者個別治療の
適正化へフィードバック可能な要因を調査した。血液透析施行消化器癌患者のイリノテカン塩酸塩
(CPT-11)およびその代謝物(SN-38、SN-38G)の薬物体内動態について検討を行った結果、透析患者に
おいても腎機能正常患者と同等の投与量を用いることが可能であることを明らかになった。この結果は、が
ん化学療法が困難とされる透析患者のがん治療の均てん化に寄与するものである(畝崎)
。
さらに医薬品を取り巻く適正使用環境を調査することを目的として、
一般市民の意識を医薬品購入時に参
考にするもの、医薬品販売の規制緩和、薬害に対する社会的責任などの観点からアンケート調査した。こう
した意識調査から現在の薬局薬剤師の役割を検証するとともに、今後の薬局・薬剤師による医薬品の適正使
用への貢献について検討を行った(安藤利亮、井上みち子)
。本計画では薬局の薬剤師と患者とのコミュニ
ケーションを支援するツールとして月刊誌「まちアポ」を企画・作成し、今年度までに約900薬局で13
万部を提供するに至っている。同雑誌を用いて、地域コミュニティにおける医薬品の適正使用を推進する薬
局機能を紹介すると共に、
薬局利用者による医薬品の適正使用の啓蒙を推進している
(土橋 朗、
岡崎光洋)
。
2
脂質異常患者に対する薬物療法の評価およびデータベースの構築
森川
正子(総 合医療薬学講 座・薬物治 療学 分野・ 准教授)
1. 当初の研究目 標
医薬品の適正 使用の検討の ため、 本年 度は 循環器疾患の危 険因子の脂質 代謝異常を とり
あげ薬物療法の 評価を行う。
脂質異常症は 、血清 LDL-コレステロ ール(LDL-C)ある いはトリグ リセリド( TG)の
異常高値、あるいは HDL-コレステロ ール( HDL-C)の異常低 値によって 定義される 脂質
代謝異常であり 、その治療目 的は粥状動 脈硬 化に基づく 心血 管疾患の予防 および治療 にあ
る。特に高 LDL-C 血症は動脈硬化の主 要な 危険因子であり、血清 LDL-C を低下さ せる こ
とは冠動脈イベ ントや脳卒中 の 発症リス クを 低下させること に繋がること が 多くの大 規模
臨床試験によっ て明らかにさ れている 。
HMG-CoA 還 元酵素阻害薬 (スタチン )は 、コレステロー ル生合成の阻 害に基づく 強力
な LDL-C 低下作用により、高 LDL-C 血症の 薬物治療におい て第一選択薬 としてその 地位
を確立しており 、心血管疾患 に対するほ とん ど全ての介入試 験において 良 好な成績を 残し
ている。また、LDL-C 低下作 用だけでは 説明 し難いスタチン の作用 、すな わちコレス テロ
ールに依存しな い多面的作用( pleiotropic effects)の存在 が示唆され ている。しかし、ヒ
トにおいて in vivo でスタチ ンの多面的 作用 を解析した研究 は 少なク、ス タチン薬物 間で
の直接的な比較 検討はほとん どされてい ない のが実情である 。
そこで本研究 では、LDL-C 低下効 果に明ら かな差がある 2 種類のスタチンを 用いて脂質
異常症患者にお ける多面的作 用を検証し 、さ らにスタチン薬 物間の相違に ついて明ら かに
することを目的 とした。これ らの検討に より スタチンの適正 使用のための エビデンス の構
築、データベー スの構築を行 う 。
2. 研究成果の概 要
上記の観点か ら、脂質異常 患者におけ るス タチン多面的作 用に関する研 究を行った 。
日本医科大学 多摩永山病院 内科 ・循環 器内 科外来を受診し た脂質異常症 患者 のうち 、栄
養士の指導のも とに食事療法 を行った 35 名(平均年齢 69.7±10.0 歳、LDL-C 154.8±26.0
mg/dL)を対象とし 、任意に プラバスタ チン 10 mg/day 投与群(19 名)とアトルバスタチ
ン 5 mg/day 投与群(16 名)の 2 群に割り付け、8 週間の投与前後におけ る血清パラ メー
タを解析した。
【結果】
対象となった 脂質異常症患 者は、軽度 肥満 ( BMI = 25.2±4.1 kg/m 2 )で、高 LDL-C 血
症を特徴とする 脂質異常症で あった。い ずれ のスタチンを用 いても患者の 血清脂質プ ロフ
ァイルは改善さ れ。この時 TC および LDL-C の低下率は、プラバスタ チンよりも アトルバ
スタチン投与群 の方が 2 倍程度顕著であった 。
多面的 作用 の指標 のリポ 蛋白結 合性 ホスホ リパー ゼ A2(Lp-PLA2)はい ずれの スタチ
ンによっても有 意に減少した( P <0.001)。しかし、Lp-PLA2 と LDL-C の低下率の間に相
関性は認められ なかった。LDL-C の低下 率で 補正すると、ア トルバスタチ ンよりもプ ラバ
3
スタチン投与群 の方が Lp-PLA2 低下率が大 きくなった( P <0.05)。
その他の多面 的作用を酸化 LDL、ネオプ テ リン、高分子 量アディポ ネクチンを用 い検討
をおこなったと ころ、酸化 LDL とネオプテ リンも減少傾向 を、アディポ ネクチンは 増加
傾向を示した。 またその変化 率は、プラ バス タチン投与群の 方が、変化率 が大きい傾 向に
あった。またア トルバスタチ ン投与群で FPG の有意な上昇が確認され た。
【結論】
プラバスタチ ンとアトルバ スタチンは 、LDL-C 低下作用に関し てはアトルバ スタチンの
方が強力である にも拘わらず 、Lp-PLA2 など の低下効果に関 しては両者の 間で相違は なく 、
LDL-C と Lp-PLA2 の低下効果の間に関連性 は認められなか った。し かも、LDL-C 改善 に
基づく間接的な 影響を取り除 くために LDL-C の低下率で補正 すると、 Lp-PLA2 などの低
下率はむしろプ ラバスタチン の方が顕著 であ った。
以上の結果よ り、スタチン 投与により ヒト においてもコレ ステロールに 依存しない 多面
的効果が現れる こと、そして その程度は アト ルバスタチンよ りも プラバス タチンの方 がよ
り顕著であるこ とが示された 。 Lp-PLA2、酸 化 LDL およびネオ プテリンは酸 化ストレス
の指標として、 また高分子量 アディポネ クチ ンは包括的な抗 動脈硬化因子 として取り 上げ
たが、高 LDL-C 血症患者へ のスタチン 投与 によっていずれ も改善される ことが示唆 され
た。特に Lp-PLA2 は、比較 的短い投与 期間 にも拘わらず明 確な変化を検 出できるこ とか
ら、スタチンの 多面的作用を 研究する上 で有 用な指標となる ことが期待さ れる。
また一方、既 報と一致して 本研究にお いて もアトルバスタ チン投与群で FPG の有意な
上昇が確認され た。メタボリ ックシンド ロー ムのように複数 の疾患が集積 する病態に 対し
て耐糖能の悪化 や筋肉障害な どの有害事 象を 回避しつつ安全 で有効なスタ チン療法を 提供
するために、多 面的作用に関 する詳細か つ正 確な理解が必要 になると考え られる。
3.研究評価及 び今後の研究 計画
スタチンは、 脂質異常症、 動脈硬化性 疾患 (脳血管障害、 虚血性心疾患 、末梢循環 障害
な ど ) の 治療 ・ 予 防の た め 広く 用 い られ て いる 。 現 在 、ス タ チ ンの 評 価 は、 主 に LDL-C
低下作用で行わ れている。し かし、本研 究で の検討の結果、 スタチンはヒ トにおいて 多面
的作用(抗酸化 ストレス作用 、包括的抗 動脈 硬化作用)があ ること、また この多面的 作用
は LDL-C 低下 との関連性が 薬の種類に より 大きく異なるこ とも確認され た。またあ る種
の薬では血糖値 異常の危険性 も再度確認 され た。これらは、 脂質異常症治 療薬,特に スタ
チン選択に際し ては、各薬物 の多面的作 用を 考慮して、患者 背景に最も適 した薬の選 択が
必要であること 示唆している 。
以上の結果は 、動脈硬化性 疾患の予防 ・治 療 のための薬物 選択検討に有 用な知見で ある
と考える。今後 さらに詳細な 検討を行い 、 我 が国における医 薬品適正使用 のためのエ ビデ
ンスの構築,デ ータベースの 構築を行い たい と考えている。
4.研究成果の 公表
国内学会発表
(1)栗島
彬 、山田
純司 、森川
正 子、 中込
明裕、草 間
芳樹、新
博次
脂質異常症 患者における スタチン薬 物間 の多面的作用の 相違に関する 検討
4
日本薬学会第 129 年会
2009 年 3 月
京都
5
薬剤師業務を支援する医薬情報データベース及び情報ネットワークの
構築
小杉
義幸(機 能性分子設計 学教室・准 教授 )
1. 当初の研究目標
病 院 や 薬 局 に お い て 薬 物 治 療 の 重要 な 役 割 を担 っ て い る 薬 剤 師 の 業 務 は 医 薬 分業 の
進展により広範 囲かつ複雑に なってきて いる 。特に、薬剤の安定供 給や適切な調 剤など
の従来の業務に 加えて、薬剤管 理指導、薬歴 管理、医薬品情報 提供などの新 しい業務が
加わり薬剤師の 役割を更に重 要なものに して いる。この 様に薬剤師 は多様な業務 を遂行
しながら、常に新 しい医薬品情 報を取り入 れ 、調剤業務に反映 するととも に、適切に患
者や医師に提供 することを求 められるこ とか ら、それら の業務を支 える薬剤師の 資質の
向上が大きな課 題となってい る。薬 学部6年 制への移行もこ のような背景 によるもの と
言えるが、同時に、す でに 4年制の 薬学部を 卒業した薬剤師 への対策も早 急に検討す べ
き課題である。一 方、医療現場で は業務の効 率化と安全性を 高めるために、オーダリン
グシステムや電 子カルテなど に代表され る医 薬事務の高度情 報化が計られ つつあり 、情
報基盤としての 医薬情報の電 子化・規格化 は 重要な取り組み の一つとなっ ている。この
傾向は薬局にお いても同様で 、患者 への情 報 提供・薬歴管理・会 計業務・レセ プト作成
などを支援する 調剤支援シス テムの導入 が進 み、薬局の コンピュー タ内には膨大 な量の
調剤記録および 薬歴が日々蓄 積されてい る。薬局は複数の診 療機関からの 処方箋を扱 う
ため、偏りのな い薬物治療 情報を比較 的容易 にデータベース 化すること が可能であ り、
統計的手法を用 いてこれを解 析すれば 、現状 の問題点や将来 の動向等を広 範囲に分析 可
能になるものと 予想される 。このよ うな時代 背景のもとで医 療現場と教育 研究機関の 協
力体制が確立す れば、両者の保 有する情報 資 産を共有でき、薬剤 師の資質向 上や薬学 生
への臨床教育に も貢献するこ とが可能で ある と思われる。
そこで 、本プロジ ェクトでは 、大学 と薬 局が協力して医 療現場に役立 つ医薬情報 を収
集もしくは新た に作成し、そ の情報をネ ット ワーク上で全員 が共有するた めの薬剤師 支
援システムの構 築を目指して きた。ネットワ ーク構築の手段 としては、双方向 の情報交
換を可能にする インターネッ ト を利用し 、大 学の研究者と地 域薬剤師を結 ぶツールと し
て運用を開始し ている。また、日々 作成・更 新される新鮮な 薬物治療や医 薬品の情報 を
電子化した形で データベース 上に保管す ると ともに、今後、薬歴情報 や医 薬品情報を 取
り扱う上で必要 と思われる ツ ールとして 、デ ータベース、XML(構造化 文書記述言 語)
と Web(ホームペ ージ)、統 計解析など の基 礎技術や薬剤師 向けの教育を 目的とした コ
ンテンツ作成技 術の蓄積も行 ってきた。
その経緯を踏ま えて今期は、医 薬品データ ベ ースの逐次更新 に加えて、保有 する含有
成分データを利 用して 、医薬品中に ドーピン グ禁止薬物が含 まれるか否か を判定する 検
索システムの開 発を検討した。また 、小児領 域の薬物治療を 支援する機能 として、小児
適応情報表示機 能および 小児 薬用量の計 算機 能の追加を検討 した。
6
2. 研究成果の概要
今期(昨年度)は、本 プロジェクト 開始当初 から続けている 医薬品データ ベースの更
新作業を引き続 き行うととも に、薬 剤師や医 師が患者に最適 な医薬品を提 供する業務 を
支援する薬剤選 択支援システ ムの開発を 目的 として、以 下の各種デ ータベースの 構築を
行い、それらを 利用した検索 システムの 有用 性を明らかにし た 。
(1) 医薬品デ ータベース の更新
本 プ ロ ジ ェ ク ト で は 医 療 用 医 薬 品の 添 付 文 書デ ー タ ベ ー ス お よ び 後 発 医 薬 品 デー タ
ベ ー ス を 継 続 的 に 運 用 し て きた 。 昨 年 度 も 日本 医 薬 情 報 セ ン タ ー ( JAPIC) 作 成 の 添
付 文 書 XML デ ー タ ( CD-ROM、 毎 月 更 新 ) お よ び 医 療 情 報 シ ス テ ム 開 発 セ ン タ ー
(MEDIS-DC)発行 の医薬品情報 データベー ス( JAMES、CD-ROM、毎月更新)の二
つを医薬品添付 文書マスター データとし て定 期的に入手し 、インタ ーネット上に 公開さ
れている以下の 情報サイトも 補完的に利 用し ながら、毎月(添付文書 XML 検索表示シ
ステムはおおよそ 3 ヶ月毎)の間 隔で更新作 業を行った。
標準医薬品マス ター( MEDIS-DC、毎月 ダウ ンロード)
診療報酬情報提 供サービス( 厚労省、毎 月ダ ウンロード)
添付文書 SGML データ(医薬品医 療機器総 合機構、毎日ダ ウンロード)
Web 公開し ている 統合医薬 品 デー タベース 検索システ ムの収 録件数は 以下の 通りで
ある。なお、製 品数は医薬品 個別コード ( YJ コード)でカウントした。
添付文書 XML 検索表示シ ステム
添付文書枚数:12,885 件、製品数:15,356 件(2008 年 6 月現在)
添付文書枚数:12,848 件、製品数:15,614 件(2008 年 9 月現在)
添付文書枚数:13,247 件、製品数:16,076 件(2009 年 1 月現在)
添付文書枚数:13,287 件、製品数:16,121 件(2009 年 3 月現在)
後発医薬品検索 ・選択支援シ ステム
全製品数:16,156 件、後発品指定製品数:7,293 件(2008 年 6 月現在)
全製品数:16,620 件、後発品指定製品数:7,558 件(2008 年 9 月現在)
全製品数:16,938 件、後発品指定製品数:7,765 件(2008 年 12 月現在)
全製品数:17,398 件、後発品指定製品数:7,971 件(2009 年 3 月現在)
同種同効薬検索 システム (2009 年 3 月現在)
製品数(累積):19,913 件、一般名:2,311 件、最小分類数 :1,199 種類
医薬品含有成分 データベース
医療用医薬品(2009 年 2 月版 JAMES のデータを使用)
製品数:18,838 件、成分名:2,860 件、成分基本名:2,351 件
7
一般用医薬品(2008 年 10 月版 JAPIC 一般用医薬品集のデ ータを使用)
製品数:12,079 件、成分名:1,953 件、成分基本名:1,418 件
(2) ドーピン グ禁止薬検 索システム
世界アンチ・ド ーピング機構 (WADA)が 毎 年改訂する「禁 止薬物リスト 」 の 2009
年版を用いて、 医薬品に使用 される禁止 成分 のリストを作成 した。WADA は医 薬品に
ついてその使用 法により除外 措置を設け てい るので、禁 止成分リス トにも禁止さ れる剤
形や投与経路情 報も付与した 。これ を運用中 の医薬品含有成 分データベー スの成分デ ー
タと照合して、一致 する成分が 含まれてい る 薬剤に禁止フラ グを書き込む とともに、若
干の解説も加え た。また、WADA はすべて の薬剤の静脈内 注入を禁止行 為に指定し て
いるので、注射薬 については 全添付文書を 調 査して 、用法に「静 脈内投与」な どの記載
のある 4,116 製品については含有成分にかか わらず禁止薬と した。この手 法を一般用医
薬品にも拡張し て集計したと ころ、全 医薬品 30,917 製品のうち 10,018 製品 が禁止薬
と判定された。 この結果をも とにマスタ ーテ ーブルを作成し 、 XML 形式に加工 してか
ら Web 検索システムに搭載 することで 、イン ターネット上か らも検索が可 能 となった 。
なお、判定結果の検 証を日本体 育協会のア ン チ・ドーピング部会 ドーピング データベー
ス作業班のメン バーに依頼し ている。
(3) 小児薬適 応検索・用 量計算システ ム
本プロジェクト が運用してい る添付文書 デー タベースへの要 望として 、患者の特 性に
対応した検索お よび表示機能 の充実が求 めら れている。特に小 児、高齢者、妊 婦、肝機
能や腎機能の異 常などの患者 への配慮は 適正 な薬物治療を実 践する上で重 要である 。そ
こで今回は 、小児領域 で汎用される 医薬品の 小児への適応の 有無を 表示す る機能と小 児
薬用量の計算機 能を実現する ために、デ ータ ベース管理ソフ トである Access の VBA
を使用したアプ リケーション の 構築を検 討し た。すでに 開発済みの 医療用医薬品 検索シ
ステムを利用し て、全医薬品の 小児への適 応 情報を抽出し、小 児に関 する用 法・用量な
どの記載がある 薬剤 5,595 品目に小児適応フ ラグを付与する とともに 、成人量 の 最大量
と最小量を数値 化して保存し た。また、 汎用 される 5 種類の計算 式を用いて成 人量か
ら小児用量を算 出する機能を 付与した。こ れ により、添付文書を 参照するこ となしに 小
児適応が判定で き、年齢、身長、体重を入力 すれば、表示され る成人量を 元に小児薬用
量を瞬時に計算 できるように なった 。小児領 域にあまり経験 のない医師や 薬剤師が利 用
すれば医療事故 防止に寄与し 、処方 や監査を 行う際の業務の 効率化の手助 けになる も の
と思われる。
3. 研究評価及び今後の 研究計画
本プロジェクト がこれまでに 構築したデ ータ ベースには、大 きく分けると 処方箋デー
タベースと医薬 品データベー スの二種 類 があ る。処方箋デー タベースとは 違って医薬 品
データベースは 逐次更新型の データベー スで あり、更新作業が重要 となる。その手段 と
して、これまで 主にテキス トエディタ(EM エディタ)の高 速なテキス ト処理機能と デ
ー タ ベ ー ス 管 理 ソ フ ト( Access) の 柔 軟 な ア プ リ ケ ー シ ョ ン 作 成 機能 を 組 み 合 わ せ て
8
データ加工の高 速化と自動化 の手法を確 立し 、更新作業の効率化を 図ってきた。その 結
果、添付文書デ ータベースを 中心に3種 類の サブシステムか らなる統合医 薬品データ ベ
ースをインター ネット上に構 築すること がで き、かつ安定的 に運用が可能 となって い る。
今回はこれに加 えて、ドーピング 禁止薬検索 システムを組み 込むことで、薬剤 師業務の
中 で も 比 較 的 新 し い ス ポー ツ 領 域 で 活 躍 する薬 剤 師 を 支 援 す る 仕 組 みを 構 築 す る こ と
ができた。ドーピン グ防止への 関心が高ま る 中、いわゆる「うっか りドーピン グ」を防
止 す る た めに 一 般 用医 薬 品 ( OTC)へ の 対 応に も 重 点 を置 い た 。ま た 、 医療 用 医 薬 品
については、それを処 方する医師、ある いは 処方変更を助言 する薬剤師の 業務を支援 す
るために、代替薬を 提示する機 能としての類 似薬(同種同効薬)検索 機能 との連 携を強
化した。この機 能を活用すれ ばスポーツ 競技 者への適正な薬 物治療の推進 とドーピン グ
検査への不安解 消に繋がると 考えている 。
小児薬適応検索・用量 計算システ ムについて は、小児領域の薬物治 療に経験の 浅い医
療機関はもちろ ん、これを専 門領域とす る医 療機関でもその 必要性が高い と言われて い
るものである。 しかし、添付 文書が SGML で規格化された 現在でも、効 率よくしか も
正確に適応情報 を抽出するこ とは難しく 、添 付文書記述方式 の更なる改善 が望まれて も
いる。小児に限らず、患者の 特性に対応 した 検索および表示 機能の充実が 求められて い
ることから、ど のような記述 が適当かも 検討 したの で将来の コード化への 第一歩にも な
ると思われる。どのようなシ ステムでも デー タの信頼性の確 保が利用普及 の前提とな る。
本 シ ス テ ム は ス タ ン ド アロ ン 型 の ア プ リ ケーシ ョ ン な が ら イ ン タ ー ネッ ト 上 の 添 付 文
書へのリンクは 可能なので、最終的に添 付文 書を確認させる ことで信頼性 と安全性を 担
保している。利用条件と して Access のイ ン ストールが必須 となるが 、多くの施設 で利
用してもらうた めには CD-ROM によ る Access の ランタイム版 を含めた形 式での 配布
が便利かもしれ ない。現状では、小児適 応と 用量のデータを 更新する作業 が自動化で き
ないため、迅速な更新 作業は困難 である が、類似のデータを 作成している 企業もある の
で入手した後の 簡単な加工で 更新は 可能 と思 われる。今後は 、要望の多 い Web シス テ
ムへの組み込み も考えている 。
今後の取り組 みとしては、デー タ収集の範 囲を医薬品に限 定せず、食品や化 成品にも
広げていきたい と考えている。ま た、わが国 の急速な国際化 の動きにも対 応できるよ う
に、基本情報だけでも 完全な英語 化を行う予 定である。国内で収集 された医療 情報が世
界で活用される ためにも、医 薬品情報の 英語 化が重要と考え ている。
4. 研究成果の発表
国内学会発表
(1) 小杉義幸 ,田中征義 ,寺澤孝明
医薬品成分データベースを活用した ドーピング禁止薬物検索システムの開発およ
びデータ更新の システム化の 検討
第 18 回日本医療薬学会,2008 年 9 月,札幌
(2) 小杉義幸
薬学導入教育に おける情報収 集およびデ ータ ベース作成技能 向上の試み
-医薬品情報活 用支援サイト 「くすりの 泉」 の利用-
日本薬学会第 129 年会,2009 年 3 月,京都
9
癌化学療法の適正化に向けた患者個別の投与設計支援システムの構築
山田
安彦(臨 床薬効解析学 教室・教授 )
高柳
理早(臨 床薬効解析学 教室・ 准教 授)
大関
健志(臨 床薬効解析学 教室・ 講師 )
1. 当初の研究目標
癌に対する 化学療法に おいて、多種多 様 なレジメン(プロト コル)が施行さ れている
のが実情である。抗悪 性腫瘍薬の 適正使用に 際しては、患者個別に 煩雑なプロ トコルを
チェックし、それに適 合している か否かの鑑 査が不可欠であ り、この適正化に 果たす薬
剤師の役割は非 常に大きい。し かし、一部の プロトコルにお いては、その設 定の根拠と
している国内外 で実施された データが混 在し 、明確にされていない ものもあり、それ ら
の日本における 外挿の妥当性 について問 題点 が指摘されてい る。さらに、副作用発現 時
の用法・用量の変更 など、抗悪性腫 瘍薬の患 者個別の投与設 計に関しては、十分な検討
が成されていな い。
本研究では、こうし た実情を背 景に、協力医 療機関における 癌化学療法の プロトコル
を収集し、特に各プ ロトコルに おいて認め ら れる副作用に着 目して評価を 行う。さらに
薬理学・薬物動態学 に基づいた 患者個別の 用 法・用量設定を可能 とする投与 設計支援シ
ステムの構築を 目的とする。
2. 研究成果の概要
上記の観点 から、抗悪性腫瘍 薬施用時の 副作用発現につ いて、原因となる抗 悪性腫瘍
剤およびその治 療薬に着目し た 薬理学・薬物 動態学的検討を 行った。その成果 の概要は
以下のようにな る。
(1) リン酸エ ストラムス チン( EMP)投与 時のセロトニン 代謝物 5-HIAA の尿中排泄 量
と悪心・嘔吐の 発現状況との 関連性の解 析
多くの抗悪性腫 瘍薬において 認められる 副作 用である悪心、 嘔吐の原因 の 1 つであ
るセロトニンに ついて、尿中 に認められ る代 謝物である 5-HIAA 量と悪心、嘔 吐の発
現状況との関連 性を検討する ことにより 、副 作用発現の指標 としての有用 性を評価す る
ことを目的とし 、前立腺 癌治療薬である EMP 投与患者における尿中 5-HIAA 濃 度およ
び悪心・嘔吐の 発現状況を検 討した 。
まず健常成人 5 名およびコントロ ール患者( 前立腺癌患者の うち、EMP が投与さ れ
ていない患者)7 名の尿中 5-HIAA/ク レアチ ニン (Cre) 値の推移を定 量したとこ ろ、
いずれの検体に おいても、基 準値( 0.4-3.5 µg/mg・Cre)内を推移 していた。 ついで、
EMP 投与患者 10 名の尿中 5-HIAA/Cre 値 の 24 時間推移を検討したところ 、患者に
よっては EMP 投与 後に一過性 の 5-HIAA 値の上昇を示し た例もみられ 、7-15 時の間
は平均値におい て基準値を上 回っていた。し かし、全ての患者に おいて嘔吐 は認められ
なかった。一方 、総 5-HIAA/Cre 値は、コ ントロール群と 比べ EMP 投与群におい て
有意に高値を示 した(P < 0.05、unpaired t -test)。
10
(2) 5-HT 3 受容 体拮 抗薬 の反 応性 の個人 差に 関与す る 5-HT 3B 受容体 遺伝 子の 遺伝 子多型
の探索
5-HT 3B 受 容 体 遺 伝 子 5’- 上 流 領 域 に 存 在 す る -102/-100 AAG deletion 多 型 と 、
5-HT 3 受容 体拮抗薬の 薬効発現との 関連性が 報告されている 。そこで 5-HT 3B 受容 体遺
伝子において、 健常成人を対 象として遺 伝子 多型の頻度解析 を行った。
検討した検体に おいて、 同遺 伝子 5’-上流領 域における遺伝 子多型の探索 を行ったと
ころ、2 ヶ所の新規の遺伝子 多型(-761G/A、-381T/C)および -102/-100 AAG deletion
が認められた 。既報告と 比べて 、-102/-100 deletion allele の存在頻度 (deletion allele
頻度: 0.40) は高値を 示し た。 また 、全 exon 領域にお け る多 型を 探索 した とこ ろ 、1
ヶ所のア ミノ酸 置換を 伴う 遺伝 子多型 (既 報告 ) が認め られた 。既報告 と比べ て C
allele の存在 頻度 (C allele 頻 度: 0.10) は低値を示した。
3. 研究評価及び今後の 研究計画
本研究により、 以下の点が明 らかとなっ た。
(1)の検討の結 果、EMP 投与 により 、セロトニ ンの一過的な上 昇は起こり得 るものの、
悪心 ・嘔 吐と の関 連 性は 低い こと が 明ら かと なっ た 。 した がっ て 、EMP に おい て は、
尿中 5-HIAA 量は副 作用である 悪心・嘔吐 発現 の指標とは なり得ないと 考えられた 。
また、(2)の検討に より、5-HT 3B 受 容体遺伝 子における複数 の遺伝子多型 の存在を明
らかにした。今後 は、同定した 多型の機能 解 析を行うことで、 5-HT 3B 受容 体を介した
5-HT 3 受容体拮抗 薬の反応性へ の影響を明 ら かにしていきた い 。
4. 研究成果の発表
国内学会発表
(1) 相馬敬史,大関 健志,横山晴 子,高柳理 早, 山田安彦
5-HT 3 受容 体拮抗薬の 薬効発現に関 連する遺 伝的要因の解析
日本薬学会第 129 年会,2009 年 3 月,京都
11
癌化学療法の適正化に向けた患者個別の投与設計支援システムと医薬
品の適正使用を目的とするデータベースの構築
畝崎
1.
榮(医療実務 薬学教室・教授 )
当初の研究目標
がん化学療法のプロトコルを収集しプロトコルの根拠となる文献情報へのアクセ
ス、及び関連プロト コルと比較が 可能なデー タペースを作成しプ ロトコルの評 価を行
う。さらに,薬理学・薬物 動態学に基づ いた 患者個別の用法・用量設定 を可能とする
投与設計支援システ ムを構築する 。
20 年度は昨年 度に引 き続き 消化器 癌のが ん化学療 法のプ ロトコ ルを収 集し、患 者
個別治療の適正化へ フィードバッ ク可能な要 因を調査する。今年 度は、透析を 施行し
ている慢性腎不全患 者における抗 悪性腫瘍薬 イリノテカンの体内 動態を調査し 、臨床
効果、副作用との関 連性を通して 、透析患者 に対するイリノテカ ンの有効性お よび安
全性を明らかにする 。
2.
研究成果の概要
透 析施 行患 者に おけ る イリ ノテ カン 塩酸 塩 水和 物( CPT-11)の 体内 動態 およ び安
全性については明ら かにされてい ない。そこ で維持透析施行消化 器癌患者の CPT-11
の体内動態および有 害事象につい て検討した 。
血液透析施行消化 器癌患者 14 例および、対 象群として腎機能正 常消化器癌患者 10
例を対象とし、投与量 50、60、70mg/kg(漸次増量)における CPT-11、SN-38(活
性代謝物)およびその代 謝物である SN-38G(グルクロン酸抱合体)の血 漿中濃度を
投与終了時(0)、投与 1、12、24、36、48、72 時間後に測定し、両群で投与量毎の
AUC、Kel、t1/2、Cmax の平均体内パラメ ータを算出し比較解 析した。
CPT-11、SN-38 の AUC は透析群と対照群 間で同等であったが 、SN-38G は透析群
で有意に高かった(P<0.01)。白血球減少 (grade1~4)は透析群で 14 例中 10 例
と対照群の 10 例中 6 例と比較して差は認め られなかった。透析患 者では SN-38G の
腎からの排泄が低下 し、AUC が上昇したと 考 えられた。しかし 、活性体である SN-38
濃度の上昇は認めら れず、SN-38G は腸肝循環されることなく胆 汁から排泄さ れたた
め、副作用に差がな かったと考え られた。透 析患者における活性体 SN-38 の体内動
態は腎機能正常患者 と同等であり 、薬物動態 学的に同等の投与量 での投与が可 能であ
ることが示唆された 。
3.
研究評価及び今後の研究 計画
消化器癌を中心と するがん化学 療法のプロ トコルを収集し、患 者個別治療の 適正化
へフィードバック可 能な要因を調 査した。今 年度は、血液透析施 行消化器癌患 者のイ
リノテカン塩酸塩( CPT-11)およびその代謝 物(SN-38、SN-38G)の薬物体内動態
について検討を行い 、透析患者に おいても腎 機能正常患者と同等 の投与量を用 いるこ
とが可能であること を明らかにし た。この結 果は、がん化学療法 が困難とされ る透析
12
患者のがん治療の均 てん化に寄与 するものと 評価される。今後は さらに汎用さ れるレ
ジメンまたは個別の 抗がん剤につ いて、その 安全性と有効性につ い て検討を加 える予
定である。
4.
研究成果の発表
国内学会発表
(1)竹内裕紀、葦沢 龍人、横山卓剛 、 木原 優、平良眞一郎 、今野 理、 城島嘉麿、
赤司勲、濱耕一郎、 中村有紀、岩 本整、平野 俊彦、長尾桓、畝崎 榮
血 液透 析施行 消化器 癌患 者のイ リ ノテカ ン塩酸 塩( CPT-11)およ びそ の代謝物
物(SN-38、SN-38G)の薬物体内動態の検 討
日本薬学会第 129 年会、2009 年 3 月、京都
13
社会資源としての薬局のあり方—
薬剤師側の視点と消費者側からの評価、薬物治療の適正使用状況の評価
安藤
利亮(薬学実 務実習教育セ ンター・教 授)
井上みち子(薬学実 務実習教育セ ンター・准 教授)
1. 当初の研究目標
調剤薬に対する薬 剤師の関わり について、 医療受益者側の意識 調査をおこな い、現在
の薬局薬剤師につい て検証すると ともに、今 後の薬局・薬剤師に よる医薬品の 適正使用へ
の貢献について検討 を行う。さら に、現在、 政策として推進され ている後発医 薬品の使用
についても調査を行 い、今後の後 発医薬品使 用拡大における問題 点について検 討を加える 。
2. 研究成果の概要
本学周辺の地域住 民を対象に、 医薬品購入 に関する一般市民の 意識のアンケ ート調査を
行った。
対象地域: 八王子市 (南陽台、堀之内、絹ヶ 丘 、越野 )、多 摩市(松が 谷、多摩ニ ュータウン )、
日野市(多摩平 、平山)地 区。
1)
ア ン ケー ト 方 法:医薬 品 、 薬剤 師 、 薬学教 育 に 関 する ア ン ケー ト を 戸別 配 布 (ポ ス トイ
ン)した。回答 の回収は郵便法 によった。ア ン ケート配布枚数 は 2000 枚、回収枚数は 420
枚(男性 135、女性 232、不明 53)で、回答率は 21%であった。
2)
アンケート結果
a 医 薬 品 購 入 時 に 参 考 に す る も の :一 般 用 医薬 品 購 入 時 に 参 考 に す る も の と し て 一 番 多 か
ったものは「薬剤 師の話」44%であり、
「薬箱 の薬の説明」31.9%、
「TV・新聞・雑誌の CM」
30.2%であり、「薬剤師以外の店員の説 明」と したものは 20.2%であった(複数回 答)。この
ことから、約半数の一般市 民は、OTC の購入に際しても、口頭での説明、それ も店員では
なく、薬剤師による 説明を求めて いることが 明らかとなった。ま た、OTC 購入場所の回答
では、ドラックストア 68.6%、薬局 51.7%であったことから、たと えドラックス トアであ
っても、薬剤師から の説明の方が 店員の説明 よりも望ましいと考 えているもの と思われる 。
b 薬販 売の 規制 緩和 に つい て :薬 販売 の 規制 緩和 (薬 局 やド ラッ グス トア 以外 でも 薬 が買 え
るように する )につ いての 問い に対す る回答 では、肯 定的回 答と しては、「い つでも 買え る
のでよい」49.3%、
「どこでも買えるのでよ い 」46%、
「安く買えるのでよい」44.5%の回答
があっ た。 否定 的回 答と して は、「安 易に 薬 を使用 する 人が 増え る」 66.2%、「事 故が 起こ
るのではないか不安」65.2%、「誰が責任 を取 ってくれるか不安」 61.4%があがった。こ れ
らのことから、一般 市民は薬販売 の規制緩和 を冷静に評価してい ることが伺わ れる。
c. 薬 害 に 対 す る社 会 的 責任 : 「薬 害 の 責任 は誰 に あ る か」 と い う問 い に 対す る 回 答で は 、
製薬会社、国、医師 、薬剤師の順 という順番 で多かった。このこ とから、一般 市民は、薬
剤師も薬害防止に大 きな役割を果 たすべきで あると考えているこ とが明らかと なった。
3. 研究評価及び今後の研究 計画
以上の事から、今 回の薬事法改 正の主眼で ある医薬品の規制緩 和について、 少なくとも
14
本学の周辺に居住す る住民は、肯 定的な受け 止め方をしている訳 ではないこと が明らかと
なった。登録販 売士制度が導 入され、薬 剤師の 役割がより限定・明確化され たことで今後、
一般市民の意識がど のように変化 していくの か、非常に興味深い ものがある。
4. 研究成果の発表
国内学会発表
日本薬学会第 130 年会、2010 年 3 月
発表予定
15
Fly UP