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米国のタンゴ楽団 - ウェブタンゴ:ウェブの世界でタンゴに浸る

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米国のタンゴ楽団 - ウェブタンゴ:ウェブの世界でタンゴに浸る
米国のタンゴ楽団
齋藤 冨士郎
米国は長い間「タンゴ不毛の地」と言われてきたし、今日でもそう思われているであろう。これに対
してアルゼンチン出身のカルロス・ゴンサーレス・グロッパ(Carlos González Groppa)は「ニューヨ
ークにおけるタンゴ(1925‐1937)
」という文章の中でこの期間でのニューヨークにおけるタンゴ楽団
の録音活動を紹介している
( Tangueando en Japón,
米国のタンゴ楽団
No.35 (2015), pp.62-70)
。
しかし彼が取り上げている
のはすべてアルゼンチン出
身のアーティストが主宰す
る楽団であって、米国出身
乃至は米国在住のアーティ
ストが主宰する楽団ではな
い。米国出身乃至は米国在
住のアーティストが主宰す
るタンゴ楽団が無かったと
いうことはやはり米国は
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「タンゴ不毛の地」と言わ
れても仕方がない。
しかし最近ではラウー
ル・ハウレーナ(Raúl
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楽団名
拠点地域
Alex Krebs Tango Quartet
Portland, OREGON
Ashevile Tango Orchestra
Ashevile, NORTH CAROLINA
Cuarteto Tanguero
Bloomington, INDIANA
Los Bandidos del Tango
Eugene, OREGON
Orquesta Sin Trabajo
Boston, MASSACHUSETTS
Orquesta Z
San Francisco, CALIFORNIA
Qtango
Albuquerque, NEW MEXICO
Redwood Tango Ensemble
San Francisco, CALIFORNIA
Seth Asarnow y su 6to típ.
San Francisco, CALIFORNIA
Tango No.9
San Francisco, CALIFORNIA
Tocato Tango
Bellingham, WASHINGTON
Trio Garufa
San Francisco, CALIFORNIA
Triunfal
Denver, COLORADO
以上の情報源はhttp://tangoclay.us/orchestras
QuinTango
VIRGINIA
Mandrágora Tango
Minneapolis, MINNESOTA
Héctor Del Curto
NEW YORK
Raúl Jaurena
NEW YORK
Jaurena)やエクトル・デル・クルト(Héctor del Curto)のように米国を拠点として活動するウルグア
イやアルゼンチン出身のアーティストも出てきた。又、Quintango のように「米国のタンゴ楽団」と呼
ぶことに何の問題もない楽団も出てきた。そこでインターネットを介して少し調べてみたところ、実は
米国各地でタンゴが盛んに踊られ、聴かれ、タンゴ楽団も少なくないことがわかった。上の表はウェブ
サイトの http://tangoclay.us/ orchestra/を通して調べた米国のタンゴ楽団である。勿論、これですべて
ということはなく、調べればもっと出て来るであろう。このサイトにはタンゴ楽団ばかりでなく、ミロ
ンガやダンス教室の情報も掲載されている。今日の米国は決して「タンゴ不毛の地」ではないのである。
これらの楽団のいくつかは CD も製作しており、インターネットを通じて購入もできる。
以下、この表に掲げたタンゴ楽団について判り得た範囲でその活動内容を紹介する。使用したメンバ
ーの画像は該当するウェブサイトから引用した。米国のタンゴ楽団は総じてプロというよりはセミプロ
的のように見える。
1.アレックス・クレブス・タンゴ・クアルテット(Alex Krebs Tango Quartet)
:http://www.tangoberretin.com/
アレックス・クレブスは 1997 年からアルゼンチン・タンゴ・ダンサーとして活動を始め、2001 年から
1
はオレゴン州ポートランドにアルゼンチン・タンゴ・スタジオ“タンゴ・ベレティン(Tango Berretin)”
を開き、また同じ年にバンドネオンを習い始めた。現在、六重奏団を主宰している。筆者の知り得た範
囲で 2 種の CD
・The Alex Krebs Tango Sextet Stamptandas, Ⓒ2011 Berretin Records
・The Alex Krebs Tango Quartet Looking Ahead on the Shoulders of the Past, Ⓒ2012 Berretin Records
がある(下の画像)
。
Quartet と称したり、Sextet と称したり、はっきりしないが、曲によってメンバーが入れ替わっており、
実態はアレックス・クレブスのバンドネオンを中心にする四重奏団と言ってよいだろう。2011 年の CD
はアレックス・クレブスとピアニストのアンドリュー・オリヴァー(Andrew Oliver)の合作品ばかりで
あるが、聴いてみるとピアソラ流でもプラサ流でもない、万人向きのタンゴになっている。2012 年の CD
では有名曲が多く含まれ、結構楽しめる CD である。
2.アシェヴィル・タンゴ・オーケストラ(Ashevile Tango Orchestra)
:
http://www.asheviletangoorchestra.org/
アシェヴィル・タンゴ・オーケストラはノー
スカロライナ州アシェヴィルに拠点を有する
タンゴ楽団で、南東部でのタンゴ音楽のコミュ
ニティでのライブ演奏を提供するために 2010
年に設立された、ということ以外には詳しい情
報はない。メンバーもその時々で入れ替わって
いるらしい。その時のメンバーによってバンド
ネオンとアコーディオンのどちらかを使って
いるようだ。
3.クアルテート・タンゲーロ(Cuarteto Tanguero):http://cuartetotanguero.moretango/org/
クアルテート・タンゲーロは、インディアナ州ブルーミントンに拠点を置く、バイオリン、ピアノ、
コントラバス、バンドネオンからなる四重奏団である。彼らは黄金時代のタンゴから現代タンゴに至る
まで、伝統的スタイルと現代の演奏嗜好の間のバランスを取った編曲に基づいた演奏スタイルを標榜し
2
ている。バイオリン奏者のダニエル・スタイン(Daniel Stein)とバンドネオン奏者のベン・ボガート(Ben
Bogart)は 2 人がブエノス・アイレスの Orquesta Escuela de Tango で研鑽を重ねている時に出会った。
2 人はそこで共同して演奏活動をした後で自己のタンゴ楽団結成を決意し、ピアニストのダニエル・イナ
モラート(Daniel Inamorato)とコントラバス奏者のマット・マコナハイ(Matt McConahay)を加え
たクアルテート・タンゲーロを 2012 年に設立した。クアルテート・タンゲーロはイリノイ大学、インデ
ィアナ大学、ブラウン大学、その他の場所のタンゴ研究会に出演し、2013‐2014 年にはいくつかのミロ
ンガを含むタンゴ研究会を立ち上げた。
4.ロス・バンディドス・デル・タンゴ(Los Bandidos del Tango)
:
https://www.reverbnation.com/
この楽団については、タンゴ・ダンサーのために伝統的タンゴから現
代タンゴに至る広い範囲のタンゴのライブ演奏を定期的に行っているこ
としか記述が無い。オレゴン州ユージーンを拠点としている。
5.オルケスタ・シン・トラバホ(Orquesta Sin Trabajo)
:
http://www.orquestasintrabajo.com/
オルケスタ・シン・トラバホはマサチューセッツ州ボストン
に拠点を置く楽団で、オルケスタと名乗ってはいるけれども、
画像で見た限りでは四重奏団である。メンバーはバイオリン奏
者兼編曲者のマリ・ブラック(Mari Black)、バンドネオン奏者
兼ボーカルのカルロス・モレノ(Carlos Moreno)
(彼は生体工
学の学位も持っている)
、ピアニスト兼編曲者のティリー・キム
(Tilly Kimm)
、コントラバス奏者のロブ・フラックス(Rob
Flax)の 4 人で、それぞれが担当楽器以外の分野でも活躍する
マルチタレントである。CD(左の画像)を入手して聴いてみた
印象では、バイオリンとピアノが大活躍する一方、バンドネオ
ンはリズムを刻むだけで、余り活躍していない。ボーカルに重点があるようだ。
6.オルケスタ Z(Orquesta Z)
:http://www.orquestaz.com/
ベ イ・エ リア
オルケスタ Z はサン・フランシスコ湾岸地域のタン
ゴ愛好音楽家によって 2011 年に結成された、アルゼン
チン・タンゴの音楽とダンスの教習と演奏のための非営
利団体である。1930~1950 年代のアルゼンチン・タン
ゴ黄金時代の多くのタンゴをレパートリーにしている。
メンバーはピアノ/ウクレレのバービー・ウォン
(Barbie Wong)
、コントラバスのサンディ・シュニー
ウィンド(Sandy Schniewind)
、バイオリンのウェーク
フォード・ゴン(Wakeford Gong)とヴィキ・ペレニー
3
(Viki Perenyi)
、ボーカルとバンドネオンのベンドリュー・ジョン(Bendrew Jong)の 5 人である。
7.キュータンゴ(Qtango)
:http://www.qtango.com/
ニューメキシコ州アルバカーキを拠点とするこの楽団については、こ
れまで 3 枚の CD を出していること以外に詳細はわからない。右の画像
は 3 枚目の CD のジャケット画像であるという。上に示したホームペー
ジによれば五重奏団+歌とある。楽器編成については記述が無いが、入
した CD を聴いた感じでは、ピアノ、バイオリン、ギター、コントラバ
スに管楽器も入っているらしい。演奏を聴いた印象は、土地柄を反映し
てカントリー&ウェスタン調タンゴと言ったところだろうか。
8.レッドウッド・タンゴ・アンサンブル(Redwood Tango Ensemble):
http://www.redwoodtango.com/
レッドウッド・タンゴ・アンサンブルはカリフォルニア州サン・フランシスコに拠点を置くタンゴ
楽団で、編成はチャールス・ゴルツィンスキイ(Charles Gorczynski)
(バンドネオン)
、アレクサンダ
ー・ラザレフ(Alexander Lazarev)
(ピアノ)
、スコット・オデイ(Scott O’Day)
(ギター)、ケンドラ・
ヴァーノン(Kendra Vernon)
(バイオリン)、セリア・ハリス(Celia Harrs)
(バイオリン)、ダニエル・
ファブリカント(Daniel Fabricant)
(コントラバス)の六重奏団(映像では5人であるが)である。こ
の楽団はダリエンソ、ディ・サルリ、トロイロ、プグリエーセ、その他のスタイルで古典タンゴから現
代タンゴまで幅広く取り上げ、サン・フランシスコ湾岸地域の多くのダンス・コミュニティで催される
ミロンガを巡演してまわっている。更に、ポートランド、シアトル、シカゴ、モントリオール、ロンド
ン、ニューヨーク、その他多くの都市にも巡演した。彼らは自作曲にも力を入れている。
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9.セス・アサーナウ・イ・ス・セステート・ティピコ(Seth Asarnow y su sexteto típico):
https://www.facebook.com/Seth-Asarnow-y-su-sexteto-tipico-267800436619580/timeline/
セス・アサーナウとはこの楽団のリーダー(男性)の名前である。アサーナウ自身はバンドネオン奏
者である。この楽団は各地のテレビや舞台のショーなどに手広く出演し、1930 年代から 1950 年代まで
のタンゴ楽団の音とスタイルの再現しつつ、タンゴの普及・啓蒙に力を入れている。
10.タンゴ No.9(Tango No.9): http://www.facebook.com/tangonumber9/
この楽団に関する詳細はわからない。メンバ
ーはジョシュア・ラウール・ブロディ(Joshua
Raoul Brody)(ピアノ)、グレグ・スティーブン
ス(Greg Stephens)
(トロンボーン)
、キャサ
リン・クルーン(Catherin Clune)
(バイオリ
ン)
、ゾルタン・ディバルトロ(Zoltan DiBartolo)
(ボーカル)の 4 人である。この楽団はすでに
4 枚の CD を出しており、又、この楽団の演奏
風景は YouTube にいくつかアップロードされ
ている。
11.トカート・タンゴ(Tocato Tango):
http://toniknightmusic.com/tocato-tango/
トカート・タンゴ(Tocato Tango)とは「タンゴによってクレージーに駆り立てられた」を意味する
アルゼンチン表現(ルンファルド?)であるという。編成はアコーディオン、コントラバス、バイオリ
ン、ギター、ピアノの五重奏団であるが、メンバーの名前はわからない。この楽団はワシントン州べリ
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ンガムに拠点を置き、ウァットコム(Whatcom)郡周辺の特別な
イベント、レストラン、クラブに定期的に出演し、又、私的及び公
的催し物にも出演している。CD の有無はわからない。
12.トリオ・ガルーファ(Trio Garufa):
http://www.triogarufa.com/
トリオ・ガルーファはサン・フランシスコ湾岸地域で 2001 年に結成され、米国国内を始めアルゼンチ
ン、カナダ、コロンビアでの公演を果たしており、そのレパートリーは古典タンゴからピアソラ作品に
至る。少なくとも 3 枚の CD を出している。
Trio Garufa 691013
Trio Garufa 691012
メンバーはギジェルモ・ガアルシーア(Guillermo García)
(ア
ルゼンチン人、ギター)
、アドリアン・ヨスト(Adrian Jost)
(ス
イス人、バンドネオン、アコーディオン、バヤン)
、サッシャ・
ヤコブセン(Sascha Jacobsen)
(米国人、コントラバス)の 3
人である。バヤンとはロシア式のアコーディオンで、独自の鍵
盤配列を持つ。音色は通常のアコーディオンと大差ないが、微
妙に違う点もあるという。かなり重いそうだ。
バヤン (出典;Wikipedia)
13.トリウンファル(Triunfal)
:CD に記載されている http://triunfal.vpweb.com/という URL で検
索しても何もヒットしない
トリウンファルは 18 世紀ロシア楽器のバラライカとバヤン、
それとクラシック・ギターによるトリオで、アルゼンチン・タン
ゴ・ダンサー向けのライブと共に、多くの文化的イベントで演奏
している。メンバーはウラジミール・セディク(Vladimir Sedykh)
(バラライカ)
、ユージン・サイモン(Eugene Simon)
(バヤン)、
グレゴリー・ニスネヴィッチ(Gregory Nisnevich)(ギター)の 3
人である。コロラド州デンヴァーを拠点とするという。
Triunfal
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14.キンタンゴ(QuinTango)
:http://www.quintango/com/
キンタンゴはヴァージニア州アレクサンドリ
ア在住のジョアン・シンガー(Joan Singer)
(多
分、右の画像の右から2人目の女性)が主導する、
北ヴァージニアを拠点とするタンゴ五重奏団で
ある。楽団編成はバイオリン 2、コントラバス、
チェロ、ピアノで、特別な場合を除いて、バンド
ネオンは入っていない。活動期間が長いのでメン
バーは少しずつ入れ替わっている。1998 年当時
は女性 4 人、男性 1 人であったが、2014 年では
女性 2 人、男性 3 人になっている(右の画像)。こ
れまでに 1998 年、2000 年、2003 年、2005 年、2008 年、2014 年と 17 年間に立て続けに 6 枚の CD(下
の画像)を出していることから、その精力的な活動がうかがえる。キンタンゴは全米各地の大きな演奏
会場で演奏することが多いようで、交響楽団との共演もあるという。
1998 年
2005 年
2000 年
2008 年
2003 年
2014 年
キンタンゴは初期は平易な演奏スタイルであったが、2008 年頃からマウリシオ・マルチェリやオス
バルド・ベリンジエリによる編曲を導入するようになって、やや難しいスタイルになって来たようだ。
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15.マンドラゴラ・タンゴ(Mandrágora Tango): http://www.mandragoratango.com/
この楽団については札幌市在住の岩垂 司氏からご教示をい
ただいた(私信及び Tangueando en Japon, No.18 (2006) p.97)
。
この楽団はミネソタ州ミネアポリス市を拠点とする四重奏団で、
メンバーは
ボブ・バーンズ(Bob Barnes)
(リーダー、バンドネオン、
アコーディオン、ドイツ・フランクフルト出身)
ローラ・ハラダ(Laura Harada)
(バイオリン、風貌と苗字か
らすると日系かも知れない)
スコット・マテオ・デイヴィース(Scott Mateo Davies)(ギター)
ニコラス・ガウデッテ(Nicholas Gaudette)
(コントラバス)
の 4 人である。
活動を始めたのは 2001 年で、それ以来、全米の 40 以上の都市で演奏活動を行ってきた。ボブは
“Mandragora”というタイトルのタンゴを作曲しており、それをそのまま楽団名にしたようだ。タンゴ
以外にワルツ、ミロンガ、スイング、ラテン・ダンス音楽も取り上げるが、ロックなどは取り上げない。
これまでに 3 枚の CD を出しているという。その 1 枚を聴いた感じでは、全体的に荒削りで未完成な
ところが大きいけれども、既成概念に囚われない演奏スタイルはやはり米国である。
16.エクトル・デル・クルト(Héctor Del Curto)
:http://www.hectordelcurto.com/
ニューヨーク・タイムス紙によって「素晴らしいプレーヤー」と賞賛されたエクトル・デル・クルト
はバンドネオン奏者一族の生まれで、祖父のエクトル・クリストバル(Héctor Cristobal)によってタン
ゴの世界、そしてバンドネオンの世界に惹き込まれた。17 歳の時にアルゼンチンにおける「25 歳以下の
最良のバンドネオン奏者」の栄誉を獲得し、オスバルド・プグリエーセのオルケスタにスカウトされた。
1999 年に彼はそのアーティスト活動によってイタリアン‐アメリカン・ネットワーク(如何なる組織か
は不明)からゴールデン・ノート賞を得た。恐らくその頃から拠点を米国に移し、ブロードウェイでフ
ォーエヴァー・タンゴ・ショーを指揮し、又、9 人編成のエターナル・タンゴ・オーケストラを結成し、
(恐らく)2008 年前後に CD を出した(下の左の画像)
。更に 2013 年に別なコンフント編成によるピア
ソラ作品だけを取り上げた CD を出した(下の右の画像)。
彼は米国最初のタンゴ音楽フェスティバルであるストウ・タンゴ音楽フェスティバル(Stowe Tango
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Music Festival)の設立音楽監督でもある。
17.ラウール・ハウレーナ(Raúl Jaurena)
:http://www.rauljaurena.com/
ラウール・ハウレーナについては日本でも良く知られている。ハウレーナはウルグアイのモンテビデ
オの生まれで、始めは父親からバンドネオンを学び、8 歳の時にはすでに子供タンゴ楽団のメンバーであ
った。彼は 1960 年代と 1970 年代を通してアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、チリでのいくつかの
タンゴ楽団のバンドネオン奏者及び編曲者として活躍し、又、著名なセーサル・サニョリのトリオのメ
ンバーでもあった。
米国に拠点を移した後、ハウレーナは米国、ヨーロッパ、アルゼンチンにおいて、指揮者として、独
奏者として、作曲家として、極めて多面的な活動を展開している。彼は 2007 年に CD「Te amo tango」
(Soundbrush RR 888)でグラミー賞を受賞した(岩垂 司氏のご教示による)
。彼の場合は米国のタンゴ楽
団というよりは、米国を拠点として国際的に活動するタンゴ・アーティストと言った方が適当であろう。
18.Tango-L と Tango-A:http://www.tango-l.com/
Tango-L と Tango-A はアルゼンチン・タンゴに関する国際的インターネット・メーリング・リストで
ある。Tango-L はアルゼンチン・タンゴに関する任意の話題に対する討論リストであり、Tango-A は世
界中の主要なタンゴ・イベントについてのアナウンスメント・リストである。所定のルールと方針を守
れば誰でもメンバーになれる。タンゴに関する情報交換・討論であれば Tango-L だけで十分である。使
用言語は勿論英語であるから、スペイン語を知らなくても問題は無い。筆者も Tango-L に登録しており、
冒頭に示したタンゴ楽団の情報も Tango-L を介して入手した。こうしたシステムは国土が広い米国と
元々オープンな性格の米国人ならではのものであろう。
こうして見てくると米国はタンゴの不毛の地どころか、想像以上にタンゴが盛んな国である。本格的
なオルケスタ・ティピカはまだ少なく、大部分がトリオ~六重奏団である。バンドネオンの代わりにア
コーディオンを用いる楽団も多く、全体の腕前はまだ発展途上と言ってよいだろう。しかし、タンゴ楽
団、タンゴ・ダンサー、タンゴ・コミュニティの相互の結び付きは日本より強いように見える。米国に
おけるタンゴは今後更に盛んになるのではなかろうか。これまで殆ど調査がされて来なかった米国のタ
ンゴ事情についても、今後は力を入れて行く必要が出てきた。
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