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la presse 2b.ai - Hiroko ITO Accordionist and Composer

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la presse 2b.ai - Hiroko ITO Accordionist and Composer
2007年 1月27日ー28日 土日版
街の灯りのセレナーデ
The Magic Box
1983年のある日、小林氏は伊藤浩子に、当時ジュリエット・グレコに伴って来日していたフラ
ンスのアコーディオンの巨匠マルセル・アゾーラを東京で遭わせることになる。
「これが私の最も
重要な人生の方向転換だったと思います。」
と彼女は言う。
「私は、彼と言葉を交わすことなく、
そこに座って聴いていました。けれども、私は彼と音楽で通じ合うことが出来ました。彼の音はまさ
に驚きでした。」伊藤浩子はすぐさま彼にレッスンを懇願した。
「私は小林先生にそのことを訳し
て欲しいと懇願したのですからおかしなものです。」
と彼女は笑う。マルセル・アゾーラは生徒を
教えていないので、パリのジョエ・ロッシーを紹介してくれた。彼はイブ・モンタン、
ジョルジュ・ム
スタキに代表されるフランスで著名な歌手達と競演し、1950年代のパリのサウンドトラック
の一部ともいえるほどであった。
「私はフランス語など知りませんでした。
でもそれが私を躊躇さ
せることなど考えられませんでした。。」
と彼女は続ける。
「私は本を買いに走りました。−それは
どのようにフランス語の手紙を書くか説明してある本でした。紙とペンをとって、私が彼の師事
を受けたい旨を書き記しました。」ロッシー氏はこの若い日本人の女性の手紙を受け取った。
が、彼女のもとには返答が来ることがなかった。
「私は返答を待ってなどいませんでした。私自身が気付く前に、荷物を
まとめ、
フランス行きの飛行機に飛び乗ったのです。新しい文化と遭遇
する心積もりは出来ていました。私が望んだのは、ただ、かの地でア
コーディオンを弾く、そのことだけでした。」
伊藤浩子は恐れも知らずに決断したのだった。
「私は長い道のりを経て、彼のレッスン場のドアの前までたどり着きました。
それは夏の日でした。
フランス人が長い夏休みを取るなどとは気が付かなかったのです。
それで私は待つ事を決めて、
その間にソルボンヌの大学のフランス語講座
に入ることにしました。
」何週間もあとにロッシー氏は帰ってきて、
この若いミュージシャンに感嘆し、彼女の願いを受け入れる事にした。
「それか
ら彼が亡くなるまでの10年間、私は彼の元で学びました。彼は私が愛する音楽の演奏の術を教えてくれました。」
伊藤浩子は何枚かのアルバムをリリースしている。
「フランス・クレヨン」
(Accordéon en couleur1993年)は、
ロッシーとの競演を実現し
たデビューアルバムである。彼女の初のソロアルバム
「ブルー・ピエロ」
(Bleu Pierrot1997年)。2006年4月に日本で
「はっぴいレクリ
エム」
(Tango Bayashi 2006年)がリリースされた。
現在、彼女はメルテイングポットというバンドを結成している。2000年に作られたこのバンドはまさに人種の坩堝だ。伊藤浩子、
アコーディ
オン、
グアドゥループから、
シルバン・ディオニ、
ギターと三味線を担当、
コロンビアからマウリツィオ・アンガリータ、
ダブルベース担当、
フランス
からクリスチァン・パオリそして日本から太田恵美子がパーカッション担当。
「私は、音楽の境界線を信じません。
このメンバーの顔ぶれは、私た
ち音楽を言い表しています。私たちは、3つの違った大陸からやって来て、一つになりました。何故なら私たちの音楽は違った文化からお互い
に影響しあい、共鳴しあい、貢献しあってこそ出来るものなのです。たとえば、太田氏は伝統的な日本民謡を歌い、かつドラムでロックも たた
いています。」
ブルース、サルサ、
タンゴから日本のお囃子に至るまで、伊藤浩子は幅広い音楽の中で、冒険することを恐れない。
「私はすべてのジャンルの音
楽が好きです。
そして、いろいろ違った音楽を聴いて、自分の物にすることが好きです。音は、溶けて混ざって何かおいしいものを作る調味料で
す。
また、私は他のジャンルのアーティストと共演するのが好きです。
コンサートは見事な創造の世界になるべきですね。」
メルティングポットは、
アコーディオンファンが多いフランスはもとより、
日本、
カナダ、香港などで幅広く活動している。
これらの旅は彼女に果て
しないインスピレーションを与えている。
「音楽を作曲するのは、自然なことなのです。私はあえてインスピレーションを探しません。物を見聞き
した時、
それが私の興味をそそると、
自然に音が現れて来る感じなのです。
」
と彼女は語る。
「即興は、私たちのコンサートにとても大切なものです。
私たちはその時の気分を大切にしながら、楽器を通じてお互いに語り合います。」
伊藤浩子のステージを聴くとアコーディオンが彼女の身体の一部のような印象を受ける。
その楽器を彼女はエレガントに広げたり縮めたりし
て、
その音楽は私たちを遠くどこかに連れて行ってくれる。
アルゼンチン、沖縄、
それともかの地パリの地下鉄の駅に。。。
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