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展示水槽に対する来館者の観覧行動

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展示水槽に対する来館者の観覧行動
博物館学雑誌第20巻 1-2合併号(通巻23号) 10'"'"'21ページ 1995年 5 月
【論文】
展示水槽に対する来館者の観覧行動
一水族館の観覧空間に関する建築計画的研究( 1) ー
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(1)一
佐藤信治**
坪山幸王*
YukioTSUBOYAMA
1.研究の目的
S
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j
i SATOH
的な知見を得る。
本稿は、水族館における観覧空間の計画に関する
研究の一環であり、これを展示物や「展示水槽J
1
)
②
上記、展示単位を構成する各要素(展示生物、
ディスプレイ、「展示水槽」及び解説板など)に対
に対する来館者の観覧行動の面より明らかにしよう
する来館者の観覧行動の分析から、「展示水槽」自
とするものである。
体の形成や、「展示水槽J 前面の規模、「展示水槽」
水族館は、いわゆる生体としての水生生物を展示
の対象にしており、「展示水槽」は、その収容装置
であるばかりでなく、展示プログラム上の一つの単
位を形成し、さらに、各展示物の見せ方をも決定づ
けるものとなっている。また、「展示水槽」は建築
物との固定度が極めて高く、その構築法や配置計画
を通じて、観覧空間の形成と深く関わっている。
の配置間関などについて、限定した対象に対する計
画上の知見を得る。
本研究は、このうち前者①に含まれるもので、以
下にその内容を報告文一 7, 8, 9) する。
2.関査対象及び方法
調査対象は、施設の比較的に充実している(財団
法人)日本博物館協会及び(社団法人)日本動物園
これらのことから、展示物はもとより、展示水槽
水族館協会の加盟館とし、さらにこの中から、観覧
は、水族館の観覧空間の計画を左右する中核的な存
空間の構成や設置「水槽」及び展示生物など、展示
在であることがわかる。しかしながら、水族館に関
内容のうえで比較考察を可能とする表ー 1 の 4 館
するこれまでの研究を概観してみると、必ずしも展
(U 館:上野動物園水族館、 Y 館:よみうりラン
示物や「展示水槽」にスポットを当てた研究は多く
表ー|
なく、まして、以下のような、来館者の観覧行動の
側面から究明しようとした研究はほとんどない 2) 。
そこで本研究では、展示生物を内包する展示水槽
に対する、来館者の観覧行動の解明を行おうとする
もので、この場合、それは次の 2 つの観点として捉
①
YI
I
l
11宮
0館
所在地
東京都
神奈川県
茨誠県
千葉県
展示生物種数
220 種
214 種
124 種
94 程
展示水柑関口幅合計
展示水舗数
観覧室面積
生物種数/展示水槽数
関口幅合計/展示水槽数
展示物や「展示水槽」を、まとまりのある一つ
142.3m 168.3m 124.6m
96 棺
展示水槽数/観覧室面積
えることができる。
展示・施設概要
U舘
87 糟
404曹
82.3m
33 柑
781.4m' 736.5m' 676.7m' 341.8m'
2.8 点
2.3 点
2.5 点
3
.1 点
3.1m
2.5m
1.5m
1.9m
O
. 12 糟/m' 1
0
. 12 楕/m' IO.06 槽/討 O.10 糟/ET
表 -2
調査概要
の展示単位と捉え、これに対する来館者の観覧行動
の分析から、展示水槽の配置や配列、設置水槽数な
ど、観覧空間を大きく把握するための計画上の基礎
* つぽやま
**さとう
ゆきお
()内は、回遊水槽餌付 11 ショウ時を除外した被験者数
日本大学・助教授理工学部海洋建築工学科干 274
しんじ日本大学・副手
向上
-10-
船橋市習志野台 7
-24-1
ド海水水族館、 O 館:海の子供の国大洗水族館、 I
て図 -2 、
3 をもとに考察する。総立止まり時間と
館:犬吠崎マリンパーク水族館)とした。これら各
総歩行時間の比率は、それぞれ52-----60% 、 40-----48%
館の概要は同表の通りである。調査方法は、観覧空
であり、観覧空間内の展示物や施設状況の相違に関
間内における観覧者行動の追跡調査3) と、同一被験
わらず近似している(図ー 3 )。
者に対するアンケート調査3) を併用し、表 -2 の期
また、図 -2 のごとく、総立止まり時間の比率は
日 4) にそれぞれこれを実施している。
総観覧時間が増加するに従って高くなるが、
3.観覧者行動の捉え方と分類
も、総観覧時間帯の増加とともに反転し、歩行時間
展示水槽に対する観覧者の観覧行動を、本研究で
4 館と
の比率の方が高くなる。このことから、総観覧時間
は、大きく図 -1 のように分類している。ここで、
の特に長い者では、一般に歩きながらの観覧にも充
立止まり観覧行動とは、
分な時間をかけていることがわかる。臨界点は I ・
2 秒以上展示水槽前に立止
まり観覧する行動を、また、歩行観覧行動とは、こ
0 館では -----40 分、 y.u 館では -----50分である。
れ以外の、文字通りの歩行によるすべての観覧行動
表一 3
を指す。一方、非水槽観覧行動には、陳列展示物に
展示水槽観覧行動別基礎資料
対する観覧行動やベンチでの休憩など、観覧室内に
おける展示水槽に対する観覧以外の行動を含むもの
とする。
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特に、立止まり観覧時間(以下、立止まり時間)、
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また、図ー 1 中の口内は、それぞれの観覧行動を
把握するうえでの主な項目で、中でも本研究では、
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vm い討日以::>J
立止まり観覧率(以下、立止まり率)、そして、そ
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の立止まり時間の合計、すなわち総立止まり観覧時
間(以下、総立止まり時間)を観覧行動の重要指標
4
0
としている。
5
0
立止まり率は、各展示水槽に何%の観覧者が立止
まったかの指標であるから、展示物に対する「誘引
力 J 5) 、文 14) と考えることができょう。また、立止ま
ボ γ 九日♂
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50
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(分)\凡明_...- u館-- y 館 --0-- Olr 十 I 信|
図 -2
総観覧時間別立止まり
時間・歩行時間百介比
り観覧時間は、同様に、観覧時間の長さであるから、
主に「魅了度 J 5) 、文 14) と考えることができる。従っ
て、後者の立止まり時間を総計した総立止まり時間
5.立止まり観覧行動に関する考察
は、観覧者の展示物に対する入念の度合いと考える
社会教育施設を標梼する水族館としては、その実
ことができ、本研究では、この入念の度合いを現す、
効上、展示物に対するより入念な観覧が期待される
総立止まり時間を、一方の主要な指標として考察を
5(人
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50(人「)
Y館
行っている。
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立歩
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図ー|
I 館
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観覧者行動分類
4.総立止まり時間と総歩行時間
観覧行動を 2 分する、立止まり時間と歩行観覧時
間(以下、歩行時間)の合計、総立止まり時間と総
歩行観覧時間(以下、総歩行時間)との関係につい
-11 ー
2
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千一霞Eヨ
(分分)
│
凡例目叩ー附口引回ー州国ー咽明|
糊貿時間
図 -4
総立止まり時間別総観覧時間区分
ところである。ここでは、その立止まり観覧行動の
後半では、後半での減少傾向が見られ、これを部分
各要素について、図- 4""'-'18 を用いて考察する。
的に見た場合でも、「水槽J が同寸同型で、かつ類
1)総立止まり時間と総観覧時間の関係
似生物を連続的に展示している配列では、進行に伴
う減少が確認された。また、前の水槽との間隔が連
図 -4 のごとく、総立止まり時間は、 30分を超え
る者もいるが、
4 館に共通して 5 ""'-'15分 (U ・ O 館
続性を欠く程聞いている場合での最初の水槽は、飛
は 5 ""'-'10分)の者が最多である。この総立止まり時
ばされがちになること、アルコープ状の水槽配置で
間は、各展示水槽に対する立止まり時間の合計であ
は、その両端部と最深部の立止まり率が向上するこ
るから、来館者の展示物への観覧意欲の現れと考え
となどが明らかになった。しかし、こうしたなかで、
ることができょう。
特に Y ・ O 館では、後半にも立止まり率の一際高
また、総立止まり時間と総観覧時間の間には、長
い水槽が配列されており、配置計画上に一つの知見
時間観覧者ほど、一般的に総立止まり時間が長く、
を与えるものとなっている。
逆に短時間観覧者ほどこれが短いという、明瞭な関
3)展示水槽配列と立止まり観覧率
連性のあることが明らかになった。
図 -6 は、配列順の各展示水槽の立止まり率を移
2)展示水槽配列と立止まり率・平均立止まり時間
まず、
動平均法7) を用いて表したものである。 10分ごとの
4 館とも、水槽ごとに可成りの数値差のあ
総立止まり時間は、
4 館とも、分布傾向が極めて明
ることが認められる(図- 5) 。配列順6) に各展示
瞭で、長時間観覧者ほど、どの水槽でも、立止まり
水槽と立止まり率との関係をみると、大きく前半と
率は高く、観覧者の入念の度合いと立止まり率との
概骨 '0'
片側 '0'
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止止
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平平
例
凡
凡人
ホ・番号
水掴番号
日置水纏
~
1
5
・水相
口その他の特殊水帽
・テラリ a ウム
~セアナリュウム企タイドプール
...水栂
ロ回避水帽
o
ドイヲロ 7 クア川ム
。実蛾水槽
マ写.録彫水栂
図上のタイプ表示は図一 29 に対応する
図ー 5
全水槽平均立止まり率・立止まり時間
凡.伊1
・立止まり時聞
ーーーー 10分
ーーー -20分
一・・・ー舗好
一- 30分ー
10
20
30
水信書号
図 -6
総立止まり時間別平滑化立止まり率
図ー 7
-12-
総立止まり時間別平均立止まり時間
聞に強い関連性のあることが窺える。
図 -8 から、 Y ・ U 館と I ・ O 館は極めて対照的で、
また全設置水槽問の比較として、図 -6 は、短時
前者は後者に比べて立止まり率が低く、 20-----40% に
間観覧者では、立止まり率の高低の差が大きく、逆
高い集中が見られる。これに対して後者には、こう
に長時間観覧者では、これが小さくなる特徴を示し
した際立つた集中は見られず、その大半が50% 以上
ている。このことは、短時間観覧者は、観覧に際し
の高い立止まり率を示している。しかしこの後者の
て、特定の水槽に偏る傾向のあることを示し、また
場合でも、被験者全員が立止まって観覧した水槽は
長時間観覧者は、設置された全水槽をほぽ満遍なく
見られなかった。この対照性の要因としては、以下
観覧していることを物語っている。
の分析などから、
4)展示水槽配列と平均立止まり時間
わっていることが確認された。
展示水槽ごとに平均立止まり時間について見てみ
4 館の設置水槽数の差が大きく関
しかし一方、平均立止まり時間は、
4 館とも 10-----
ると(図ー 7 )、 10分ごとの総立止まり時間別の傾
20秒に集中し、図 -.9 のごとく類似した傾向を示し
向は、短時間観覧者では全水槽を通じて数値差が小
ている。
さく、反対に長時間観覧者になるほど数値値が拡大
ここで、立止まり率と立止まり時間のそれぞれの
する特徴を示している。
数値の上位と下位の展示水槽について、 Y 館を代
これを立止まり率と対照すると、 4 館に共通して、
表にその内容を見てみると、次の通りである。
観覧入念度の高い観覧者は全水槽に満遍なく立止ま
表 -4 は、立止まり率と立止まり時間について、
るが、長時間観覧するものとそうでないものを峻別
上位と下位のそれぞれ10位までを、立止まり時間を
していることがわかる。一方、観覧入念度の低い観
軸に表化したものである。なお、 O 内の数値は、そ
覧者は、前述のように、特定の水槽には立止まるも
れぞれ上位と下位に同種生物が展示されている 4 館
のの、しかしその場合でも、観覧時間は一般的に短
中の館数を現している。まず、上位のものを見ると、
いという、相反する傾向のあることが明らかとなっ
展示生物は、ピラルクー、アロワナなどの熱帯の大
た。
型生物、ドチザメ・、アカエイ、ウツボなど恐怖心を
5)立止まり率と平均立止まり時間
起こさせるような生物、タツノオトシゴ、タカアシ
図 -5 を集計したのがそれぞれ図 -8 、 9 である。
ガニなど、一般の魚類に比べて体形や動きに特徴の
(水信)
3
0
;;|州:
表 -4
ホ崎署
平均立止まり時間別展示水槽概要
水槽咽
生物種劃
.示生駒種名
18
恒
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ネコザメ@、アカエイ@、ドチザメ@、コバンザメ、クロエイ、スズキ@
4 タイド マアジ、マイワシ②、マサパ②、カタクチイワシ②
171."眠 T* ウミガメ③、アカウミガメ@、タイマイ
上
~
(%)
図 -8
平均立止まり率別水槽数
位
%11.
ウ 7 ボ、イシダイ③、ゴイシウミへピ、イシガキダイ@
%0
個
カサゴ、コトヒキ②、カゴカキダイ⑤、タカノハダイ、ハヨフグ②
U
個
クエ@、マハ夕、ホンソメワケベラ、ア均ハタ②
U
個
スズメダイ、ツパメウオ②、チーウチ a ウウオ、カワハギ、ハタ
同信
プリ⑤
2111
1
1
11
1
コバルトスズメダイ、シリキルリスズメダイ、ハタタテダイ
~3
価
3111
釘佃
3s個
下
位
4~
個
33
個
平均立止まり時間別水槽数
ー
ツパメウ材、サピウツボ
E
モモイロサンゴ
アカハラヤッコ、チリメンヤッコ、ソメワケヤッコ
ーロマスc3l
*ニダJレマ*コゼ
47
価
クマドリ②、モンガラカワハギ②
39
個
カスミチ,ウチ,ウウ庁、アミチ国ウチ,ゥゥォ、チ,ウチ,ウウオ
シマドジ,ウ、ドジョウ
却価
マンジュウイシモチ、フタオピスズメダイ、ハナゴイ
制置
カワムツ、オイカワ
タイワンガザミ、イ yガニ
44
個
アカマツカサ③
42
帽
ザラサハタ②、コデテンフグ
個
Jlノサラシ②
個
アヤメエピ、ウケグチイットウグイ
|凡例ート U鑑-- y館--0- 0・十 1-1
-13-
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トゲチ,ワチ E ウウオ@、アケポノテ,ウチ,ウウオ②、ミゾレチ,ウチ,ウウオ
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ハナガササンゴ、ハナガタサンゴ
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(秒〉
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訂価
図 -9
ホ柑【間M口3 帽 立止(,まωり a 立止まり時間
【砂〉
前テラリ アマゾンマナティ、 7 ロリダマナティ、アロワナ@、コロソーマ③ピラルク
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9 イト. 7 ・-~、僻隊:備隊水槽、置:置水糟
ある生物、アオウミガメ、アカウミガメなどのウミ
ガメ類など、となる。また「展示水槽」では、間口
(事 /1<Y 館〉
10 固Eぷ込訟.LJ司
5
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20 ・I}};:;::::: 三E:当
3
0E視す一回
幅など規模の大きなもの、及び図 -5 との関連から、
回遊水槽、オセアナリュウム、テラリュウムなどの
E:三三ヨ
50 ・ 1叫将司
戸=司
6
0I:EZ雰門三百
6
0
12LJ E三ヨ
5
0 100( 耳)
特殊水槽8) が上位を占め、これに展示水槽の配列順
が関わっている。すなわち、入口に近い位置の水槽
40. ♂;♂::j
1
0
では、一般に展示物や「展示水槽」の如何に関わら
ず、立止まり率、立止まり時間とも高くなっている。
|凡…- u館-- y箆屯口富十 1 ・!
次に下位のものをあげると、「展示水槽」は置水
槽及び個水槽の小規模なものが多い。展示生物は上
図 -14
生物 l 種当たり立止
まり時間比率
位に比べて多種類にわたり、イワナ、ニジマスなど
図ー 15
生物|種
当たり総立止ま
り時間百介比
の淡水の生物、サラサハ夕、ヌノサラシなど見掛け
の地味な生物、水族館以外でも見ることのできるチ
6)各単位当たり立止まり時間
ョウチョウウオやタイの仲間など、また、水槽配列
1 水槽当たりの立止まり時間は(図 -10) 、 60秒
との関係では、前後に類似した生物が展示されてい
を超えるものがある一方、短時間観覧者ほどその比
る場合などとなる。
率は高く、これをさらに仔細に見ると、 10秒未満の
しかし、特に展示生物については多種多様な側面
を持つため、今後さらに詳細な分析が必要であると
考えている。
うち、
2-----5 秒が最多であった。平均値は表ー 3 の
通りである。また、間口幅 1M 当たり(図 -12) 、
1 生物種当たり(図ー 14) で見てもほぼ同様で、比
(累積人数%)
m
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率差こそあれ、
く Y 芭〉
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1
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4 館に共通した傾向となっている。
しかし、単位当たりの 3 者では、生物種当たりで 4
館の共通性が最も高い。
次に、これを百分比で比べると(図 -11 、 13、 15) 、
各単位当たりに共通して、立止まり時間が長くなる
に従って、総立止まり時間 30分以上の割合は漸増し、
反対に 10分未満の割合が漸減している。しかし、中
間帯 (10"-'30分)の変化は微小で、総立止まり時間
の長短が、上記各単位当たりの立止まり時間に深く
図 -10
水槽当たり立止ま
り時間比率
図ー 11
水槽当
たり総立止まり
時間百分比
7)立止まり水槽数について
(:被験者数%)
(累積人数%)
6
0
6
>
1
<YIP
一\刊
一一ふ
・
-4tEBl」1
・ g ・
一ヤ与
E
内HuaHuaHu
」
aaEqunF
がヘ一一
5
0
関わっていることがわかる。
1
0
図 -12
間口 1M 当たり立止
まり時間比率
図ー 13
間口 1M
当たり総立止ま
り時間百介比
-
図 -16
立止まり水槽数比率
図ー 17 立止まり
水槽数別総立止
まり時間百分比
14 一
4 館とも、水槽数20'""'40 に、合わせると 5 割以上
減少傾向を示している。 10秒未満では、 50槽以上立
が集中している(図ー 16) 9) 。これは Y ・ U 館のよ
止まり観覧した者もいるが、 20秒未満では 30槽まで、
うな比較的に多くの展示水槽を保有している館でも
30秒未満では 20槽、そして 40秒未満では、ほとんど
変わることはない。一方、図 -17 について、 70水槽
が設置水槽数の約 1/9 、すなわち 10槽以下となっ
以上、立止まり観覧した者を見ると、そのほとんど
ている。しかし、これが、 40秒以上では反転し、
が、順路通りの満遍ない観覧を行っており、
1 水槽
館とも、 10槽以上の立止まり観覧者数が増加してお
4
に費やした時間も平均20秒以上と入念であった。ま
り、どの水族館にも観覧者に特に人気の高い水槽の
た、各館の平均立止まり水槽数は表ー 3 の通りであ
あることがわかる。また、これらの者は、人数は 19
る。水族館計画にとって、水槽を幾つ設置すべきか
名と全数の 2 割弱と少ないが、観覧した水槽の平均
は極めて重大であり、これらのことは、保有すべき
値は 1 水槽当たり 32秒を超え、往復行動や戻り行動
水槽数に一つの指標を与えるものとなろう。
を伴いながら、極めて入念な観覧を行っていること
また、総立止まり時間別に見ると、長時間観覧者
がわかった。
また、総立止まり時間の長い者は、各時間帯を通
ほど立止まり水槽数は一般に多く、逆に、短時間観
覧者ほどこれが少ないという関連性を読み取れる。
じ七も、立止まり水槽の数が多く、短い者ではこれ
8) 観覧時間別立止まり水槽数
が逆になっている。
図 -18 は、 Y 館を代表に、
1 人当たりの立止ま
6.歩行観覧行動に関する考察
次に、展示水槽に対する一方の歩行観覧行動につ
り水槽数のグラフにおける 1 水槽ごとの立止まり時
間を 10秒ごとに 5 つに分け、それぞれ百分比で表し
いて、 Y 館と I 館の図ー 19---21 を代表に用いて考察
たものである。
する。
各図を比較すると、水槽数の分布は、 40秒以上の
1)総歩行時間と総立止まり時間の関係
総歩行時間は、それぞれ 5 '""'10分 (1 ・ U 館)、 10
グラフを除き、立止まり時間の増加に伴い、極端な
(
9
6
) 10 秒朱満
---15分 (Y ・ O 館)の者が最も多く、総立止まり時
(%) 20 秒未満
100
,
801-- ー-ーーーーーーーー・ーー-ーーー
間別の最頻値も、ほぽこれに一致している。最長は
80 1-ーーー-ーーーー『ーーーーーーー
40分26秒 (0 館)で、これら総歩行時間の長い者は、
必ずしも順路通りの観覧をしておらず、重複した動
50 ・ーーーーーーーーーーーーーーーーー
線を採る者が多い。また、 10分ごとの総立止まり時
間は、総歩行時間の各区分に幅広く分布しており、
総歩行時間と総立止まり時間との多様な関連性が窺
'10203040508080・
1
0 2
03
04
0 5
05
0 60(鳩)
(鳩)
(%)30 秒未満
1
0
1
(%) 40 秒未満
(%)40 秒以上
1
0
える。
2)総歩行距離と総立止まり時間の関係
(%)
(%)
8
Y館
8O
r
-
I 館
8
0
"
4
0
4
0
2
0
2
0
(水橋)
6
0
4
0
4
0
2
0
2
0
1
0 1
52
0 2
5 30 ~O ・・
(車種)
~J.-I附占fJJJ時b-蜘
図 -18
6
0
(分)
世斗
柄引 EJ-gfニアb附 n四割骨図 -19
水槽立止まり時間毎の水槽数比率
-15 ー
I
総歩行時間別総立止まり時間比率
(%)
5
0
(~)
5
Y 館
4
0
7.観覧者行動と滞留密度の関係
i 館
4
0
観覧行動には観覧室内の混雑の度合いが影響する
と考えられる。そこで、これを観覧室の滞留密度 10)
3
0
として、最も高い状況(表- 5)
を示した U 館を
もとに考察を行う。
2
0
1
0
表 -5
(M)
;
皆、吊
(
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御舟
、J
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uト
Lド晶-に
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六二三一三円 ι=o
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(
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1. 8 田園園園ヰ辿2l.j
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O
O
C
'
C
図 -25 総歩行
図ー 26 総歩行
図 -27 総歩行
山田回口一凶
速度百介比
ぃ・回口白
い・図口白
距離百分比
い回国阿国一
戸田図口図
凡例
ド圃釦回渉
覧者の個別差が少なくない。歩行速度が0.6M/S
C
J
.
.匀
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_ _ _ (}JJ
I
)
0.6 一一一九弘4d
館とも、大半がo .
2
'
"
"
0.
5M/S を占めているが、観
入館時刻は 15時以降の者が多く、閉館時刻を想定し
'''"hvnJU
内MOR 民U
nuO
分比
4
以上と早い者のほとんどは、低年齢層であり、また、
-A
n---Knu--'
,g、
,
UA
、,J
り水槽率百
時間百分比
時間百分比
3)総歩行速度と総立止まり時間の関係
川
'RunJ
'rA
n---
i
まり時間百
は短く、総立止まり時間が長くなっている。
最頻値は 0.4M/S (0 館のみ 0.3M/S) で、
-L 一白二一一U
山U
ぃ h
一 IM--E
4 館とも、 300M を超える者のほ
とんどは低年齢層で、これらの者では、総歩行時間
-nリ
一一-話一一-i
嗣huUI凶
えられる。一方、
一一一一位一U
江幽
J
川…
町一-nりり
的に小規模であり、行動に自由度が少ないためと考
----圃
'EE 一
4一pnuw
図 -23 総立止
まり・総歩行
I 館125'""150M) での集中率が高くなっている。そ
沿った直列的な配置であること、 I 館は面積が比較
図 -24 立止ま
図 -22 総立止
館に比べて Y ・ I 館は特定距離 (Y 館225'""250M、
の主な原因としては、 Y 館は水槽の大半が通路に
・-圃目 1
総歩行距離には、展示水槽の配置形態や観覧室の
規模が大きく関わっていることが考えられ、 u.o
、J--- 圃 E ・ E
,f 、肉Hυta--E----
総歩行距離別総立止まり時間比率
'''"hunJt
MOR 民U
伺M
図 -20
--an----
│
・ー附図ー川口→附四時|
叫 E り附
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R
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凡伊1
(M)
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1
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0
0 2
5
0 3
0
0
滞留密度基礎資料
:
。 125
0
1
2
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7
5 2
2
5 2
7
5 300・
1
5
0 2
0
0 2
5
0 3
0
0
1)総立止まり時間と総歩行時間の百分比と滞留密
度
滞留密度が高くなるに従って、立止まり時間は減
ての観覧行動と考えることができる。
少し、総歩行時間の割合が増加している。これは、
滞留密度の上昇に伴い、観覧者個人の自由な行動が
;;|四
2
0
1
0
1
1::「
制限され、集団の行動に組み込まれることが多くな
るためと考えられる。(図 -22)
2)総立止まり時間・立止まり水槽率と滞留密度
総立止まり時間は 20分以下で主に大きな変化がみ
自国国
│
られる(図 -23) 。密度が高くなると、総立止まり
時間の最も短い 10分以下の割合が増加し、逆に 10'"'"
20分の割合は減少する。特に低密度でこれが著しい。
( M / S ( M /
S)
高密度化が、特に短時間者の観覧への意欲を削いで
|凡例目嚇 dzfJJ 時E-附回開←|
いることがわかる。
図 -21
密度の変化に左右されないほぽ一定比率を示すが、
総歩行速度別総立止まり時間比率
また図 -24 の、立止まり水槽率は、 60% 以上では、
-16-
その一方で、 20%以下で漸増、 20""'"'60% で漸減し、
傾向と考えられ、動線の分析と対照すると、比較的
混雑の度合いが増すに従って、水槽を立止まり観覧
に自由な行動を可能にする 0.6 (人/m2 ) 以下と、
しようとする者の割合は低下する。
1
.2 (人/m2 ) 以上の水槽前に列ができ個人の行動
3)歩行観覧時間・距離・速度と滞留密度
に制約が加わる状態との間にあって、 0.6""'"' 1. 2 (人
総歩行観覧時間は 10分以下では、密度の上昇と共
/m2 ) はすいている水槽を探し先を急ぐ行動と、マ
にわずかな漸増がみられるものの、総歩行時間の長
イペースのゆっくりした行動による境目の状態であ
い 10分以上ではこれが複雑に変化している。長時間
ることがわかる。
歩行者には、各水槽聞をじっくり歩行する者や、動
8.観覧動線に関する考察
き回り重複観覧する者など様々な行動パターンが指
観覧行動を動線面から考察するために、追跡調査
摘され、これらが複雑に影響し合つての結果と窺う
のデータをもとにして、図 -28""'"'30 を作成した。図
ことができる。(図 -25)
-28 は I 館の観覧室の動線図11)である。また、図-
歩行距離(図ー 26) は、密度が高くなるに従って、
29 と 30 は向上のデータよりタイプ化12) 、パターン化
200""'"'280M の中間帯で減少し、 200M 以下で増加し
した各配置形態図とその各配置形態と各観覧行動と
ている。しかし、 280M 以下ではほぽ一定である。
の関係図である。図中の片側及び複合タイプは I 館
これらから、高密度化は、観覧行動を妨げ、歩行距
から、またアルコープタイプは U 館から、両側タ
離を短くする方向に働くことが明らかになる。
イプは Y 館からそれぞれ抽出している。
歩行速度における最も特徴的な傾向は 0.6""'"' 1. 2
1)展示水槽配置と観覧動線
(人/nt) 間の密度の変化である(図ー 27) 。これ
I 館(図 -28) 及び U、 Y、 O 館より、観覧動線
は、高密度化による観覧行動が制約される過程での
は展示水槽の配置に大きく左右されているのがわか
Pl-A 歩行観覧を主とする動線
片聞タイ
プ
Pl ・-立止まりの多い動線
;> ~ ヨ ~I
霊平崎観覧時間 4.4分 (56人)
霊平均慨覧時間 9.3分 (42人)
円手前のみショートカット動観
ア
jレ
コ
イタ
プ
プ
側イ両タ
霊平均観覧時間 2.3分 (5人〉
円片側通行の動線
Pl 順路に従勺た動観
皿 l ーノ
安
地 S句
円片咽のみ申動量
複合プイタ
霊平向観覧時間 8.1分 ol人)
円片ゾーンのみの動銀
室平均観覧時悶 8.1 分何人)
同 4 順路に沿.,た動規
Eヨ 自 自 自
室平絢観覧時間 2.0分 (22人)
1 階平而図
pl 片ゾーンのみの動線
霊平均観覧時間2ω子 (6人)
ー、':. 向
ー
プ
Pl 戻り行為の見られる勤線
室平均値覧時間 3.9分 <8人)
室平均観覧時間 u分 (21人}
JJ J
室平均鰻覧時間 4.9分 (39人)
円舛周辺のみ申動植
円往復行動の見られる動敏
室平均恨覧時間 5. I分(4[人)
同戻り行為の見られる動観
霊平均観覧時間 1.1 分([人 J
円満遍 Fよい勤蝿
場 ゆゆ 響
室平均観覧時間 3.4分 (8人 J
室平均観覧時間 3.8分 (30人)
室平均眠覧時間 5.1分 (61 人)
室平均観覧時間 7.2分(1 11人)
No. 数値は水穂番号を表し、図- 5 に対応する
図 -28
I 館観覧室平面図
図 -29
-17 ー
水槽配置形態別観覧動線図
る。片側及び両側タイプでは、飛ばし観覧を含みな
動線的には大きな差異は見られず、順路通りの Pl
がらも動線は一方向に流れるが、アルコープ及び複
と戻り行動の見られる P2 の 2 つに分けられる。被
合タイプでは、動線は複雑化しショートカットや交
験者の多い P1 をタイプ室の観覧時間で 2 分する
差が起こる。順路の選択について見ると、前者の場
と、図 -29 のように P1-A と PI-B になる。 P
合は、水槽に接近して観覧する様子が読みとれるが、
1-A に比べると、 P1-B では、満遍なく観覧が
その場合でも、その程度は、順路進行に伴って低下
行われており、従って、これに伴い各立止まり時間、
している。後者の順路選択では、入口と最初の展示
歩行距離、立止まり水槽数などの数値がいずれも高
水槽との連続性が関連していると考えられ、これが
くなっている。また、 P2 は、戻り行動の見られる
充分でない配置の場合、必ずしも水族館指定の順路
動線であるため、歩行距離が必然的に長く、これを
(I 館は l 階は左回り、
2 階は右回り)となってい
ない。また、年齢では、一般に、低年齢層(
7'
"
"1
2
仔細に調べると、
ほとんど 80M 以上となっている。
これに対して、立止まり水槽数は、 P1-A とほぽ
歳)の動きが大きいが、その多くは家族での来館の
同傾向で、年齢との対照から、その原因は主に 12歳
ため、総観覧時間にはほとんど違いは見られない。
以下の低年齢層によることがわかった。
2)配置形態別観覧動線
②アルコープタイプの動線
図 -29 の各ノ f ターンは各タイプ室における平均観
コの字形を基本として、観覧室の外周部分に水槽
覧時間の順に並べたもので、以下、これにもとづい
が配置されたタイプである。全被験者の約 1/3 以
て考察する。
上 (27人)が、順路通りの観覧パターン P4-A に
①片側タイプの動線
分類される。この他はいずれもショートカットの観
観覧室の片側に全展示水槽の配置されたタイプ。
立止まり跨信1
歩符略需1
面プ
lE。
lアレ
ll璽
プタイコ
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.
5
自
まま立止まり略周
立止まり水用量生
歩宥褒調E
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渚宮密度
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覧パターン (P 1 、 P2 、 P 3) で、合計すると 19
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金内P体包n4P0囲・E盆.-.・-丞.・.-臨E渥塗醤-9置議鍛-溢主造-釜室益a5主還益-還盆-週丞~益1
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O. I3 -l'" 人苦情
I.I'-UI 人ザ
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1 ・0 人/η部t土
1
.0
人と多く、水槽に沿った P4-A の動線とは対照的
の割合が高くなっているのがわかった。
に、 P4-B を含め交差の多い動線となっており、
9.まとめ
アルコープタイプの特徴が明らかになる。以上、ア
①展示物に対する入念度を表す、総立止まり時間
ルコープタイプは、大きくは、水槽を満遍なく観覧
とその他行動との関係をみると、長時間観覧者ほど、
する P4 のパターンと、 P1........P3 とに 2 分され、
設置水槽に満遍なく立止まり、
この対照的な傾向は、年齢を除く、各観覧時間、歩
時間も一般的、に長いが、しかし、それは一様ではな
1 水槽当たりの観覧
行距離、立止まり水槽数の各グラフからも明らかで
く、展示物によって、長時間観覧するか否かの峻別
ある。 P4-B の順路途中で逆回りするパターンは、
を行二っていることカt わかった。
滞留密度の図から比較的に低密度 (0 ........0.50人/ぱ)
一方、短時間観覧者ほど、限られた特定の水槽に
の割合が高い時に起こっている。また、全パターン
は立止まるものの、しかし飛ばし観覧が多く、一般
に共通することとしては、アルコープの奥、または
的に観覧した水槽数は少なく、かつ 1 水槽当たりの
コーナ一部分の水槽に立止まる傾向のあることがわ
観覧時間も短いことが明らかになった。
また、歩行観覧行動との関係は、総立止まり時間
かっ Tこ。
の長、短に関わらず多数であった。
③両側タイプの動線
観覧通路の両側に展示水槽の配置されたタイプ。
図 -29 の 4 つのパターンに分けられるが、大半が、
以下、総立止まり時間以外の主な事項についてま
とめる。
館の指定順路通りの最も無駄のない P2 と、両側の
②立止まり時間に対する歩行時間の割合は、約 4
水槽聞を往復する観覧行動の P3 のパターンで、そ
........5 割と、総観覧時間の長い者では、一般に歩きな
れぞれ約 4 割ずつを占めている。この両パターン以
がらの観覧にも充分な時間を費やじていることがわ
外では片側のみの P1 が22人(右側のみ観覧する人
かっ Tこ。
は内 1 人)と多く、 P4 は僅かに 1 人であった。 P
③立止まり率と立止まり時間は、相互に関連し、
2 と P3 は、非常に共通性が高く、図ー 30 において
水槽の配置・配列、また設置水槽数と深く関わって
も歩行距離を除き各要素とも同傾向を示している。
いることが明らかになった。
P2 に比べて P3 の動線をとる者は、仔細に見ると、
主要なものをあげれば、設置水槽数が多くなると、
往復途中での水槽の飛ばし行為の多いことがわかっ
一般に、立止まり観覧の率及び時間が減少すること、
た。 Pl は滞留密度、年齢との関係を除くと、各観
配置・配列では、入口付近での高い入念度、これに
覧時間、歩行距離、立止まり水槽数の項目において、
対して配列後半、及び画一的な展示での減少傾向、
P2 、
連続性を欠く配置ではその最初の水槽が飛ばされる
3 と比べると可成り異なった割合になってい
る。以上から、このタイプの順路構成の難しさが改
ことなどとなる。
また、総立止まり時間の平均値12........16分弱に加え、
めて確認された。
1 水槽当たりの立止まり時間は 2........5 秒が最多と、
④複合タイプの動線
中央の水槽とこれを囲む外周水槽から構成されて
水族館固有のものとは云え、その実態は意外に短く、
いるタイプ。すなわち、アルコープタイプとアイラ
このことから、社会教育施設を標拐する水族館にと
ンドタイプによる複合で、前出のアルコープタイプ
っての、今後に迫られる重要な課題が明らかとなる。
また、立止まり率及び立止まり時間の上位と下位、
との比較から、中央の水槽が強く観覧行動に影響を
及ぼしていることがわかる。全被験者の約 6 割が満
各 10槽の内容の分析からは、展示生物については、
遍なく観覧する P3 のパターンであり、立止まり水
今後、さらに検討を要するものの、熱帯の大型生物、
槽数の多い者の割合が高くなっている。年齢では、
恐怖心を起こさせる生物、動きや体形に特徴のある
P2........P4
生物などが、また、「展示水槽」では、間口幅など
は低年齢層が約半数を占めているのに対
して、 Pl では低年齢層は見られなかった。また、
規模の大きいもの、及び回遊水槽やオセアナリュウ
P4 の各観覧時間と歩行距離の図からは、その複雑
ムなど、特殊水槽がそれぞれ上位を占め、下位には
な動線の特徴がよく読み取れ、それぞれ大きい数値
置水槽及び個水槽の小型のものが多いことなど、が
-
19 ー
イ、解説板など、これをまとめた展示単位とし
明らかになった。
立止まり水槽数については、大多数の者が20""'-'40
槽の間で観覧し、設置水槽数の多い館では、立止ま
ての総称として用いている。
2)参考文献などのほか、同一観点、からの既往研究
り率が低下することから、効果的な展示には 40槽程
はない。
3)過去の入館者数から当日の入館者数を推定し、
度の設置が 1 つの目安となることがわかった。
④滞留密度の増加は、歩行時間に比べて、立止ま
調査員数 (15""'-'18名)との関係から、被験者数
り時間に影響が大きく、より高密度で観覧行動に自
を U ・ Y ・ 0 ・ I 館それぞれに、 102人、 21人、
由度が少なくなっている。
67人、 11人ごとに設定した。追跡調査及びアン
また、総立止まり時間、立止まり率、及び歩行距
ケート調査はこれにより設定された被験者に対
離において、滞留密度の増加とともに、主に各数値
して実施したものて、表 -2 中の被験者数は追
の低い者に大きな影響を及ぼしている。
跡調査及びアンケート調査のうちそれぞれ不良
⑤観覧動線は展示水槽の配置に大きく左右されて
いる。水族館の観覧形態の特徴として、水槽に対す
のものを除いた人数である。
4)小学生、中学生の夏期休暇期間中に実施した。
る近接観覧が確認されたが、これも、配置形態によ
また、は虫類館に変更された U 館以外、 Y、 O、
って異なり、片側及び両側タイプでは、飛ばしゃ戻
I の 3 館は、一部増築・改築が行われたものの、
り観覧を含みながらも、動線は一方向に流れるが、
今日も基本的には当時そのままに運営されてお
アルコープ及び複合タイプでは、これが複雑化し、
り、本研究の結果は、充分、今後の水族館計画
動線にショートカットや交差が起こり、水槽の配置
に基礎的な知見を与えるものとなると考えてい
如何では、館指定の順路と異なる動線の出現するこ
る。
5)文献 -14 の観察法は、『展示が成功したかどう
となど、が明らかになった。
かを基本的な次元で反映する「誘引力」と「魅
最後に、観覧者属性、特に年齢と観覧行動につい
ては、水族館の場合、家族や仲間とのグループ入館
了度」の二つの指数を観察データ』としており、
これに対応させた場合として用いている。
が多く、これらでは、低年齢層を除きグループ行動
をとる者が多く、大きな違いは認められなかった。
6)配列順は、必ずしも各水族館が指定した順路に
低年齢層の場合も、観覧室の随所で同行者と行動を
沿ったものではなく、観覧者が最も多く観覧し
共にする動きが確認され、歩行距離や速度、動線を
た水槽の配列順としている。
除くと顕著な違いは見られない。
7) 5 項移動平均法による。
以上、展示水槽を一つの単位とした考察を行って
8)個水槽、置水槽以外を総称している。
きたが、今後はさらに、冒頭にも述べたごとく、展
9)当図では水槽数を 10槽づつの区分としているた
示単位を構成する展示生物、「展示水槽」、及び解説
め、 I 館の 33水槽中の 4 水槽については 10水槽
板など、これらを個別的に捉えての研究を進めて行
に対応する数値に修正している。
10) 観覧室におげる 5 分ごとの入室者数と退室者数
くつもりである。
の差、すなわち滞留人員を観覧室の総床面積で
謝辞
本研究をまとめるに当たっては、日下部仁志氏、
館吉保氏、加藤幸江氏のほか、研究室の現、旧大
除した値。
11) 紙数上、
学院生、及び卒業生のご協力をいただきました。こ
4 館中、最小規模の I 館をその代表と
した。
12) 水族館では観覧室と展示水槽とは一体的な関係
こに深く感謝する次第です。
にあるが、ここでは展示水槽の配置形態をもと
に分類している。なお、調査 4 館には、含まれ
註
1)文中の「展示水槽」は、展示水槽そのものの語
意として、また、 rJ なしの展示水槽は、展示
生物、展示水槽そのもの及び水槽内ディスプレ
- 20-
なかったが、このほか、島状のアイランドタイ
プの配置形態などが考えられる。
引用・参考文献
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研究、来館者の観覧行動ーその 3
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研究、ーその 6
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4)坪山幸玉、他 1 名:水族館の観覧領域に関する
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研究、ーその 3
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高密度時における水槽規模別
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6)坪山幸玉、他 3 名:水族館に関する建築計画的
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低密度時にお付る水槽規模別
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展示水槽の観覧実態について
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立止まり観
- 21-
(1 995年 1 月 30 日受理)
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