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TP(技術資料) FTTH 対応戸建住宅用光配線システム

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TP(技術資料) FTTH 対応戸建住宅用光配線システム
TP01/BW-2011
TP
Technical Paper
TP(技術資料)
FTTH 対応戸建住宅用光配線システム
(Optical fiber distribution system for detached houses in FTTH)
第3版
公表 2011 年 8 月
取纏委員会
ファイバオプティクス標準化委員会
建物内光配線システム専門委員会
発行:一般財団法人 光産業技術振興協会
Optoelectronic Industry and Technology Development Association (JAPAN)
まえがき
これは光産業技術振興協会の標準に関する TP(技術資料)である。TP は,規格になる前段
階,標準化の技術的資料,規格を補足する などのために公表するものである。
アクセスネットワークにおけるブロードバンドサービス契約数の推移を図 1 に,FTTH 契約
数の推移を図 2 に示す(1)。ブロードバンドサービス契約数は 2010 年 12 月末で 3,458.5 万
となり,増加が続いている。従来の FTTH,DSL,CATV および FWA の固定系サービス に加
えて,BWA(WiMAX)および 3.9 世代携帯電話パケット通信サービス(LTE)といったモバ
イル(移動無線)によるブロードバンドサービスが契約数として公表されるようになった。ま
た,FTTH 契約数は依然として四半期毎に 65 万を超える純増数を維持しており,2010 年 12
月末で FTTH が 1977 万加入となり,2011 年 3 月末までには 2000 万加入突破が見込めるよ
うになった。
このように,アクセスネットワークの光化はここ数年で既に本格的な拡大期に突入しており,
インターネット,IP 電話,映像(IP テレビ・VOD)などの各種サービスが統合された光トリ
プルプレイサービスも一般家庭で広く利用可能な時代となっている。
本技術資料は,FTTH サービスを利用する戸建住宅における光配線構成や配線方法,構成す
る配線物品を系統的に整理したものであり,2009 年 6 月に公表された第 2 版に最新技術・製
品動向を反映し改定したものである。第 2 版作成当時と比較すると,FTTH サービス利用方法
の多様化とともに,配線設備の信頼性向上や,戸建住宅内への配線引込部材の簡素化,また宅
内器具などのデザイン配慮など住宅構造や居住者が好む生活環境により配慮した配線物品や施
工方法が用いられるようになってきている。このような背景の中で,居住者が希望するサービ
ス利用環境を実現するためには,既築住宅の場合には居住者本人,新築住宅の場合には居住者
および住宅提供者(住宅メーカ,設計者,施工業者など)自らが,最新の FTTH 光配線技術動
向を知ることが非常に重要である。
本技術資料は,そのような最新の FTTH 光配線技術動向を盛り込んだ情報発信・提供活動の
一環として作成されたものである。本技術資料が戸建住宅に光配線システムを導入しようとす
る居住者およびディベロッパ,設計者および施工業者のガイドラインになり,FTTH サービス
利用環境構築の推進・普及に一層のはずみがつくことを期待したい。
この TP(技術資料)の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開
後の実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。光産業技術振興協会は,
このような特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
かかわる確認について責任はもたない。
1
目次
序文 ........................................................................ 3
1. 適用範囲 ................................................................. 3
2. 定義及び略語 ............................................................. 3
2.1 定義 ................................................................... 3
2.2 略語 ................................................................... 4
3. 引用規格 ................................................................. 4
4. 光配線システムの基本構成 ................................................... 4
4.1 概要 ................................................................... 5
4.1.1 FTTH の光加入者系設備 ................................................. 5
4.1.2 住宅内情報配線の構成 ................................................. 6
4.2
光配線システムを構成する配線物品の概要 ................................ 7
4.2.1 光ドロップケーブル引留具及び関連部材 ................................ 7
4.2.2 光キャビネット ...................................................... 9
4.2.3 情報配線ボックス .................................................... 9
4.2.4 屋内配管 ........................................................... 10
4.2.5 光ケーブル ......................................................... 10
4.2.6 住宅内光配線コード ................................................. 12
4.2.7 情報コンセント ..................................................... 12
4.2.8 光コンセント ....................................................... 12
4.2.9 現場組立光コネクタ ................................................. 13
4.2.10 光ステップル ...................................................... 13
5.
戸建住宅への光配線施工事例
........................................... 15
5.1 光回線引込み方法の種類と特徴 ............................................ 15
5.2 屋内光配線方法の種類と特徴 .............................................. 16
5.3 居住者が工事前に確認すべき事項 .......................................... 20
6. ケーブル施工・接続
.................................................... 21
7. 保守・管理 .............................................................. 21
8. 試験・性能基準 .......................................................... 21
参考文献 ................................................................... 21
解説 ....................................................................... 23
※ 本技術資料の位置付け
・FTTH 対応戸建住宅用光配線システムに係わる技術の進歩に応じて,
改訂するものである。
・本技術資料に関して,ご意見・情報がありましたら,下記連絡先にお寄せ
ください。
連絡先:一般財団法人光産業技術振興協会 標準化室
e-mail : hyojun @oitda.or.jp
2
TP(技術資料)
FTTH 対応戸建住宅用光配線システム
Optical fiber distribution system for detached houses in FTTH
序文 この技術資料(TP)は,2003 年度から行なってきた建物内の光配線システム普及促進を
目的として,戸建住宅用の光配線システムに関する動向調査,研究をもとにまとめたガイドラ
インである。戸建住宅用の光配線システム構築において特に重要と判断される,光配線システ
ム構成,用語,部材等に関する技術情報をまとめ,ユーザ,設計・施工業者等へ情報提供する
ことにより,光配線システムの導入加速が進むことを目的としている。
1.適用範囲
本技術資料は,FTTH サービスを戸建住宅で利用するための光配線システムに関して,石英
系光ファイバの引込み,および,その情報配線ボックスとの接続,さらにそれらの構成物品の
設置,保守・管理,試験・性能基準について言及する。
本技術資料の主な利用者として,戸建住宅に FTTH 設備を整備したいと考えているディベロ
ッパ,住宅設計者,住宅メーカ,施工業者,居住者(または所有者)を想定する。なお,設備
範囲は,住宅外壁に設置する光ドロップケーブル引留と光キャビネット,住宅内に配線する光
インドアケーブル,および情報配線ボックス内の光回線終端装置(以後,ONU)までとする。
2.定義及び略語
2.1 定義 この技術資料(TP)で用いる主な用語の定義は次による。
1)引留
通信事業者が,架空配線引落し,あるいは地下配線の立上りの光ケーブルを住宅の
外壁に金物等を使用し引き留めること。
2)光キャビネット
住宅の外壁に設置し,外壁に引き留めた通信事業者の光ドロップケーブルと住宅内
に配線する光インドアケーブルを接続するための箱。光キャビネット内に,光ドロッ
プケーブルと光インドアケーブルの接続部や接続時に発生する光ファイバ余長を収納
する。光コネクタにより光ドロップケーブルと光インドアケーブルを接続し,設備分
界点とすることもある。
3)貫通孔
光ケーブルを住宅内に引込むための壁に設ける穴。引留点の近傍にエアコンのダク
トなどの貫通孔があれば,それを利用することもある。
4)光ドロップケーブル
光サービス加入者の住宅近傍の引き落し点(ドロップ用の分岐クロージャ)から,
住宅敷地内に引込むための自己支持型光ケーブル。
5)光インドアケーブル
光キャビネットから ONU までを接続する光ケーブルで,屋内配線専用ケーブル
のため支持線が無い。
6)光回線終端装置(ONU)
FTTH において,光ケーブルと UTP などの LAN ケーブルを接続し,光信号と電気
信号を相互に変換する装置。
7)情報配線ボックス
宅外からの情報(電話・放送・通信等)の取り入れ・取り出し配線を 1 ケ所に集約
するための配線盤。配線のみならず,ケーブルの終端部材,伝送機器,分配器なども
3
収容し,情報・通信設備の点検・保守・更新・相互切り替え等ができる。
8)ルータ
ネットワーク層のプロトコル定義に基づいてパケットの中継・交換を行う装置。
9)情報コンセント
通信系,放送系や電源コンセントを 1 箇所にまとめた配線器具。
10)PT 盤
通信事業者が,構外からの引き込み光ケーブルを接続する配線盤。通常は MDF 室
(通信機械室)内に設置される。
11)PD 盤
幹線ケーブルと水平ケーブルとを接続する配線盤。通常は住棟の共用部にある EPS
内に設置される。分岐配線盤,光接続箱ともいう。
12)IP 電話
音声を IP 網パケットと呼ばれるデータに変換して通信する電話。
13)端末設備
分界点以降の宅内配線および端末機器(ONU など)。
14)分界点
屋外設備である伝送路設備と宅内設備である端末設備との切分点。
15)成端
ケーブル端末にコネクタなどの器具を取り付けること。成端によって,各種の接続
装置,機器などと接続可能な状態となる。
16)光コンセント
屋内へ引き込まれた光ドロップケーブルまたは光インドアケーブルと住宅内光配
線コードとの接続に使用するインタフェースであり,本技術資料では光アウトレット
と光ローゼットを総じて光コンセントと呼ぶ。
17)光アウトレット
住宅内壁に埋込設置される光コンセント。
18)光ローゼット
住宅内に露出設置される光コンセント。
19)住宅内光配線コード
光ファイバ心線の外側に抗張力繊維などを縦添えし,更に,その外側にビニル,ポ
リエチレンなどの外被を施したコードの両端に光コネクタを取り付けたものであり,
光コンセントと ONU とを接続するために用いられる。
20)HUB
LAN 機器を相互に接続するための集積装置。
略語
CD
合成樹脂製可とう電線管
FTTH エフティーティーエイチ
LAN
ローカルエリアネットワーク
ONU
光回線終端装置
V-ONU 映像用光回線終端装置
PD
分岐配線盤,光接続箱
PT
配線盤
UTP
非シールドより対線
PLC
電力線搬送通信
3.引用規格
TS C 0017 ビルディング内光配線システム
2.2
4.光配線システムの基本構成
4
(Combined Duct)
(Fiber To The Home)
(Local Area Network)
(Optical Network Unit)
(Video-Optical Network Unit)
(Premise Distributor)
(Premise Terminator)
(Unshielded Twist Pair cable)
(Power Line Communications)
4.1 概要
通信事業者のビルから接続された光ケーブルは,光ドロップケーブルを介して住宅に引
込まれ,ONU にて電気信号に変換される。ONU から UTP などの LAN ケーブルにより,
ルータあるいは SW-HUB に接続され,さらに各部屋の IP 電話,パソコンなどの情報機器
にスター型に配線される。本章では光加入者系設備から住宅内情報配線の概要,設備条件
などを述べる。
4.1.1 FTTH の光加入者系設備
1)光加入者系設備イメージ
図 3 に,光加入者系設備のイメージ図を示す。通信事業者のビルから加入者宅近傍まで,
架空配線,あるいは埋設管路に配線された光ケーブルで接続される。加入者宅が戸建住宅
の場合,幹線光ケーブルから分岐接続された光ドロップケーブルにより住宅内に引込まれ
る。ここで使用される光ケーブルは石英系シングルモードファイバを用いたケーブルである。なお,
集合住宅に関しては技術資料「FTTH 対応集合住宅用光配線システム」を参照願いたい。
本技術資料の対象範囲
光キャビネットまたは
直接引込み
戸建引込み〔架空光〕
光コンセント
光コンセント
光ファイバケーブル
ONU
第一種 通信事業者
NTTビル
架空クロージャ
PD
集合住宅引込み〔架空光〕
所内設備
ONU
光ファイバケーブル
PT
地下用クロージャ
PD
ONU
集合住宅引込み〔地下光〕
マンホール
ハンドホール
PT
自営HH
戸建引込み(地下光)
光キャビネットまたは
直接引込み
光コンセント
ハンドホール
引上げ管
ONU
本技術資料の対象範囲
図3
FTTH の光加入者系設備イメージ
2)戸当たり光ファイバ心線数の選択
戸建て住宅に引込む光ファイバ心線数は,1 心あるいは 2 心が標準である。光コンセン
ト等の接続用品も 1 心あるいは 2 心用に製品化されていることから,これらのいずれかを
選ぶのが合理的である。
(1)1 心引込み
光ファイバ 1 心を通信用途として用いる。主にインターネット接続によるデー
タ伝送や IP 電話などに用いられる。通信用途とは別の光波長に変えて光 CATV 等
の映像サービスを重畳される場合もある。
5
(2)2 心引込み
1 心を主にデータ伝送や IP 電話などの通信用途に用いる。残りの 1 心は,光 CATV
等の映像サービスや将来に向けた予備心とすることが多い。
4.1.2 住宅内情報配線の構成
1) 住宅内情報配線の基本的な構成
図 4 に戸建住宅用情報配線の基本的構成を示す。図 4(a)は,主に新築住宅の場合の構成
例を示している。ONU やルータを集約した情報配線ボックスを光ドロップケーブルの引込
み場所近傍に設置し,情報配線ボックスから各部屋に予め用意されている配管を通じて各
部屋の情報コンセントまで LAN および同軸ケーブルが配線されていることを特徴とする
光配線システムである。このような構成の利点として,住宅内のどの部屋でもパソコンや
情報家電などの情報端末を使用することができること,また情報配線ボックスにて容易に
配線変更が可能であり,各部屋の用途変更やリフォームなどに柔軟に対応できるため,テ
レビ受信システムとの整合,将来の冗長性に優れていることが挙げられる。反対に欠点と
して,住宅建設時に配管や情報配線ボックスを設置するための費用がかかる点が挙げられ
る。
一方,図 4(b)は,情報配線ボックスがスペース的に設置できない場合(主に既築住宅の
場合)の構成例を示しており,光ドロップケーブルを直接住宅内に引込み,光コンセント
及び住宅内光配線コードを介して ONU に接続する光配線システムの構成である。このよ
うな構成は,多種多様な住宅環境や設備条件が考えられる既築住宅に対して,比較的光回
線の導入が容易であるという特徴がある一方で,既設の配管が利用不可能な場合には複数
の部屋に渡る情報配線が難しいといった欠点がある。
なお,図 4 は,FTTH 対応の戸建住宅で利用できる光サービスとして,インターネット
サービス,IP 電話サービスと合わせて,地上アナログ/デジタル放送・BS アナログ/デジタ
ル放送・CS デジタル放送等が視聴可能な光トリプルプレイサービスを利用した構成を示
している。最近では,データ通信用の ONU と映像サービス用の V-ONU が一体となった
ONU や,さらに,ONU,V-ONU,ルータ機能の全てが一体となった IP 電話対応ルータが
設置される場合もある。なお,光トリプルプレイサービスを利用しない場合は V-ONU は
必要なく,住宅内に引込まれた光回線は直接 ONU に接続される構成となる。
LANケーブル
光ドロップ
ケーブル
PC
情報コンセント
配管配線
IP電話
情報配線ボックス
電話線
ONU
テレビ
IP電話対応
ルータ
V-ONU
配管配線
同軸ケーブル
(a)情報配線ボックス有り(主に新築住宅の場合)
6
STB
PC
光ドロップ
ケーブル
LANケーブル
露出配線
IP電話
電話線
ONU
テレビ
住宅内光配線
IP電話対応
コード
ルータ
露出配線
光コンセント
V-ONU
露出配線
同軸ケーブル
STB
(b)情報配線ボックス無し(主に既築住宅の場合)
図4
住宅内情報配線の基本的な構成例
2)設備条件
(a)新築住宅の場合
(1)光ドロップケーブルを引込むための外壁貫通孔がある。
(2)外壁貫通孔から情報配線ボックスまで,光ドロップケーブル及び光インドアケー
ブル配線用の配管がある(2)。配管径は,Φ16mm あるいは Φ22 mm が一般的である。
放送用を含め 2 本。
(3)情報配線ボックスに ONU を設置するスペースがある。或いは,ONU を設置可能
な情報配線ボックスの設置スペースがある。
(4)情報配線ボックス近傍に ONU やルータを動作させるための電源がある。
(5)情報配線ボックスから各部屋までスター型に,情報配線用の配管がある。配管径
は,Φ16 mm あるいは Φ22 mm が一般的である。放送用を含め 2 本。
※ 光配線系とメタル配線系の LAN ケーブルや放送用同軸ケーブルの混在する情報
配線が集中する情報配線ボックスから各部屋までスター型配管があることで,将
来の配線変更に柔軟に対応ができる。配管が無い場合には,予め必要な部屋全て
に LAN ケーブル等を壁内配線しておき情報配線ボックス内で切り替えを行う方
法や,無線 LAN や PLC を用いるなどの方法がある。
(b)既築住宅の場合
(1)ONU を設置する場所の近傍に光ドロップケーブルを引込むための外壁貫通孔,ま
たはエアコンダクト用の貫通孔がある。
(2)ONU を設置する場所の近傍に ONU やルータを動作させるための電源がある。
4.2 光配線システムを構成する配線物品の概要
4.2.1 光ドロップケーブル引留具及び関連部材
7
光ドロップケーブルを戸建住宅に引込む際に使用する金具類である。戸建住宅において
は架空引込み※が一般的である。住宅外壁への取り付け状況を図 5 に,金具の詳細を図 6,
7 に,光配線クリートの詳細を図 8 に示す。
光ドロップケーブル引留具を引掛けた C 型金物を住宅外壁にネジ固定し,光ドロップケ
ーブルの支持線部を光ドロップケーブル引留具に巻き付け,固定する。また,光ドロップ
ケーブルは適当な間隔で光配線クリートを用いて外壁配線を行う。光キャビネットを使用
しない場合には,既設の固定電話用の外壁貫通孔やエアコンダクト等から光ドロップケー
ブルが直接住宅内に引き込まれる。一般的には,通信事業者の施工範疇である。
※
敷地の条件により,引落し点から延線した光ドロップケーブルを直に住宅の外壁
に引き留めることが困難な場合は,住宅の敷地内に引込み柱を建てることがある。
光ドロップケーブル
引留具
C 型金物
光ドロップケーブル
電線保護カバー
光キャビネット
光配線クリート
貫通孔保護カバー
光インドアケーブル
図5
住宅外壁への光ドロップケーブル,光キャビネット等の取り付け例(3)
C 型金物に掛ける部分
支持線
図6
光ドロップケーブル
図7
光ドロップケーブル引留具例
8
C 型金物例(3)
(外径2. 0mm)
図8
光配線クリート例
4.2.2 光キャビネット
通信事業者からの光ドロップケーブルと光インドアケーブル(宅内引込み用)の接続部
(融着接続,メカニカルスプライス接続,コネクタ接続)を収納する接続箱で,プラスチ
ック製で小型・軽量,防雨に対する保護を施した仕様のものが一般的である。外観を図 9
に示す。
一般的には,外壁貫通孔近傍の住宅外壁部に取り付ける。光キャビネットで,光ドロッ
プケーブルと光インドアケーブルをコネクタ接続し,このコネクタを分界点とすることが
ある。光キャビネットは一般的には,通信事業者が設置する。
光ドロップケーブルを直接宅内に引込む場合は,光キャビネットは不要である。
寸法:H183×W77×D37(mm)
質量:約 0.2 kg
図9
光キャビネットの例(3)
4.2.3 情報配線ボックス
リビング,書斎,寝室,子供部屋など,住宅内のどこの部屋においても,電話,TV,パ
ソコンなどの情報端末を使用できる環境を整えるためには,予め,各部屋に TV 用同軸ケ
ーブルや LAN ケーブルを配線しておく必要がある。情報配線ボックスは,主に,通信事業
者伝送路設備から引込んだ光回線,電話回線,および受信アンテナからの TV 受信線など
を集約し,各部屋にスター型に分配するための配線ボックスである。
9
情報配線ボックスのフリースペースには,ONU やルータなどの通信機器が置かれ,そ
れぞれのケーブルが配線される。情報配線ボックスの設置場所は,居住者が容易に点検で
きる箇所に設置することが望ましい。専用の設置場所がない場合は,例えば廊下の壁面や
天井裏,階段の壁面,下駄箱内等を利用することがある。外観を図 10 に示す。
10/100/1000M SW-HUB
TEL 端子
LAN 端子
AC コンセント
光ローゼット
フリースペース
TV 用ブースタ
TV 分配器
図 10
情報配線ボックス例(4)
4.2.4 屋内配管
住宅の壁内等に設置し,光インドアケーブル,LAN ケーブル,TV 用同軸ケーブルなど
を配線するための配管で,主に,可とう性を有する CD 管などの合成樹脂製可とう電線管
が用いられる。配管内径は主に,Φ16 mm,Φ22 mm のものが使用される。CD 管の外観を
図 11 に示す。
既設住宅への配管設置は困難であるが,新築時に各部屋まで配管を設置しておくと,部
屋の用途変更やリフォームに伴う配線変更,また,ケーブル張替えに柔軟に対応できるだ
けでなく,露出配線が回避でき室内の美観を損なわない利点がある。
配管に曲り箇所が多いと,ケーブルの通線が困難になるため,1 区間の曲りの数を 3 直
角以内とし,これを超える場合はボックスを設けておくことが望ましい。また,配管の曲
率半径は管内直径の 6 倍以上を推奨する。
※
合成樹脂製可とう電線管は,PF(Plastic Flexible Conduit)管と CD 管の 2 種類が
あり,PF 管は耐燃性(自己消火性)であるが,CD 管は非耐燃性(自己消火性な
し)である。識別のため CD 管はオレンジ色となっている。
図 11
CD 管例(5)
4.2.5 光ケーブル
FTTH サービスを戸建住宅で利用するために使用される光ケーブルには,住宅への引込
みに使用する光ドロップケーブルと宅内の配線に使用する光インドアケーブルがある。こ
れらの光ケーブルは,石英系シングルモード光ファイバ(SM)が用いられている。
10
1)光ドロップケーブル
光ドロップケーブルの構造例を図 12 に示す。光ファイバ心数は,1 心あるいは 2 心が標
準となっている。光ファイバ心線の両脇にはテンションメンバ(抗張力体)が並んで配置
され,黒色難燃ポリエチレン樹脂等で被覆されてケーブル部を構成している。ケーブル部
と支持線部は,細いブリッジ部を介して一体化され,容易に分離出来る構造となっている。
図 5 にあるように,支持線部は光ドロップケーブル引留具に引き留めて切断され,ケーブ
ル部のみが光キャビネットまたは宅内に引込まれる。
最近では,落雷などからの誘導による宅内機器損傷などの事故を防止するため,テンシ
ョンメンバには,繊維強化プラスチック(FRP)などの無誘導材料を使用することが主流
となっている。また,許容曲げ半径を従来の約半分である 15 ㎜程度まで低減した低曲げ
損失タイプの光ファイバ心線が使用されることが多くなり,ケーブルの許容曲げ半径の小
径化が図られている。
西日本エリアにおいては,クマゼミが産卵管を光ドロップケーブルへ突き刺すことで光フ
ァイバが断線する被害が発生している。被害の発生している地域ではセミ対策用の光ドロ
ップケーブルの使用を推奨する。
支持線部
寸法:約 5×2(mm)
ケーブル部
図 12
光ドロップケーブル構造例
2)光インドアケーブル
光インドアケーブルの構造例を図 13 に示す。1 心または 2 心の光ファイバ心線の両脇に
テンションメンバを配置し,難燃ポリエチレン樹脂等で被覆された構造となっている。居
室内に配線した場合の美観に配慮して,アイボリーなどを外被色とすることが多い。最近
では,許容曲げ半径を従来の約半分である 15 ㎜程度まで低減した低曲げ損失タイプの光
ファイバ心線を使用することが多くなり,ケーブルの許容曲げ半径の小径化が図られてい
る。
曲がりが多い配管内を配線する場合には,許容張力範囲内での通線が困難となる場合があ
る。その場合は,通線張力の低減を目的としてケーブル外被の低摩擦仕様でかつ外径が細
径化されたケーブル(細径低摩擦インドアケーブル)の使用を推奨する。
寸法:約 2×3(mm)
図 13
光インドアケーブル構造例
11
3)光ケーブルの使用上の注意
光ケーブルの敷設では,ケーブルの許容張力と許容曲げ半径に遵守して作業する。特に
光インドアケーブルなどの屋内敷設用少心光ケーブルは,許容張力が小さいため,外壁貫
通孔から情報配線ボックスまで敷設するのに過大な敷設張力が加わらないよう注意が必要
である。一般的に,光インドアケーブルでの許容張力は 150 N 程度(テンションメンバが
鋼線の場合であり,繊維強化プラスチック(FRP)などの無誘導材料を用いた場合 35 N 程
度),光ドロップケーブルでは 700 N 程度である。(参考として,UTP0.5-4P ケーブルの許
容張力は 110 N である。)
4.2.6 住宅内光配線コード
光コンセントと ONU を接続するために用いられ,住宅内でのフリー配線を可能とする
光コードである。一般に,光ドロップケーブルや光インドアケーブルに用いられる光ファ
イバよりも,コードの急峻な曲げに対応するために曲げによる光損失増加を大幅に低減し
た光ファイバが用いられる。光コネクタは SC 型光コネクタと互換性があり,住宅内の塵や埃か
ら光コネクタ端面を保護するために,防塵性のシャッター機能や簡易清掃機能を有する。
4.2.7 情報コンセント
情報コンセントの外観を図 14 に示す。情報コンセントは,電源コンセントの他に,LAN
用モジュラジャック(RJ-45),電話用モジュラジャック(RJ-11),および同軸ケーブル用
コネクタなどの情報配線系端子を備えており,TV,電話,パソコンなどの各種情報機器の
接続,電力供給が行える。この情報コンセントを使用することにより宅内の情報配線をす
っきりまとめることができる。
CS デジタル放送用など
U/V.CATV.BS.110 度 CS 用など
収容例:
100 V
抜け止めコンセント
LAN 用
電話用
電話用
図 14
情報コンセント例(6)
4.2.8 光コンセント
屋外から引き込まれた光ドロップケーブルと住宅内光配線コードとを接続するためのイ
ンタフェースであり,光ドロップケーブルの先端が光コネクタ成端(一般的には SC 型光
コネクタ)され,光コネクタアダプタを取り付けたものが収容される。居室側の差込み口
には住宅内光配線コードが使用される。本資料内では,以下に説明する光アウトレットと
光ローゼットを総じて光コンセントと呼ぶ。
この光コンセントにより,光ドロップケーブルと居室内の ONU とを宅内光配線コード
でワンタッチに接続することができる。光コンセントの光コネクタ端面を覗くとレーザー
光により目を痛めることがあるため,光コネクタを引き抜いた時にレーザー光が漏れない
よう遮光シャッターなどの安全対策を施したものが一般的である。
1)光アウトレット
12
光アウトレットは,電気コンセントのように居室の壁に埋込設置するもので,新築住宅
や既設配管を利用可能な既築住宅などで用いることができる。光アウトレットの例を図 15
に示す。
住宅内光配線コード差し込み口
(a)一連タイプ(7)
図 15
(b)二連タイプ(8)
光アウトレット例
2)光ローゼット
光ローゼットは,居室内に露出設置するタイプの光コンセントで,主に既築住宅で,ONU
を配管出口の無い場所に設置する場合や,賃貸住宅などで光アウトレットが取り付けられ
ない場合などで用いられる。光ローゼットの例を図 16 に示す。
図 16
光ローゼット例(9)
4.2.9 現場組立光コネクタ
光コンセント内に収容される光コネクタには,光ドロップ/インドアケーブルに現場で直
接取り付けられる現場組立光コネクタ(一般的には SC 型光コネクタ)が用いられている。
4.2.10 光ステップル
光ステップルは,主に居室内壁に露出配線する場合に,光ドロップケーブルや光インド
アケーブルを固定するために用いられる。釘や鋲を打ち込んで壁に固定するタイプと両面
テープで壁に固定するタイプがある。光ステップルの例を図 17 に示す。
13
(a)釘タイプ
図 17
(b)タブ付き両面テープタイプ
光ステップル例(10)
14
5.戸建住宅への光配線施工事例
5.1 光回線引込み方法の種類と特徴
新築住宅の場合には,予め光回線を引込むための外壁貫通孔や外壁貫通孔から情報配線
ボックスまたは光コンセント等までの屋内配管を住宅設計段階から準備することが可能で
あるため,光回線用の屋内配管があることを想定して記述する。この様な設備条件では,
予め住宅外壁に貫通孔が設置されており,貫通孔から光回線を屋内配管に引込む「配管に
光ケーブルを引込む方法」が用いられる。
既築住宅の場合においても,予め光回線を引込むための外壁貫通孔があり,光配線用の
屋内配管が準備されている場合(既設の電話線用配管等の利用も同様)は,新築住宅の場
合と同様の方法を用いることが可能である。
既築住宅では,光回線を引込むための既設の外壁貫通孔が利用できない場合,または無
い場合が多い。このような場合には,
「エアコンダクトを利用する方法」と「新規に外壁に
貫通孔を開ける方法」が一般的な光回線引込み方法である。
本節では,上記の代表的な光回線引込み方法の種類と特徴について,具体的な施工例の
写真を示しながら説明する。
1)配管に光ケーブルを引込む方法
配管に光ケーブルを引込む方法では,光ドロップケーブルを直接住宅内に引込む場合と
光キャビネットを介し光インドアケーブルを引込む場合の2通りが一般的に用いられる。
図 18 は,電柱上等から配線された光ドロップケーブルを住宅外壁に引き留め,直接住宅
内に引込む場合の施工例を示している。光ドロップケーブルを引込むための新たな外壁貫
通孔を設ける必要がないため,美観を損なわないという特徴がある。
C 型金物
屋外線引留具
C型光ドロップ
切断スリーブ
(セーフティーループ工法)
貫通孔保護カバー
光配線クリート
光ドロップケーブル
図 18
直接引込み方法を用いた光回線引込み施工例(住宅外壁部)
もう一つの方法として,外壁貫通孔近傍の住宅外壁部に光キャビネットを取り付け,光
キャビネット内で光ドロップケーブルと光インドアケーブルをコネクタ接続する施工方法
がある(図 5 を参照)。この場合には,住宅内へ光インドアケーブルが引込まれる。1)の
配管に光ケーブルを直接引込む方法と同様に新たな外壁貫通孔を設ける必要がないため,
美観を損なわないという特徴がある。
2)エアコンダクトを利用する方法
施工例を図 19 に示す。エアコンのダクトを利用して光ドロップケーブルを直接住宅内に
引込む方法である。新たに外壁に貫通孔を開ける必要がないという特徴があり,配管が利
用できない既築住宅の場合に多く用いられる方法である。ONU の設置場所がエアコンダク
トのある部屋から離れている場合には,屋内光配線が長くなるため美観上優れないという
15
欠点がある。このため,エアコンダクト付近に ONU を設置することが望ましい。
光ドロップケーブル
光配線クリート
エアコンダクト
図 19
エアコンダクトを利用した光回線引込み施工例(住宅外壁部)
3)新規に外壁に貫通孔を開ける方法
施工例を図 20 に示す。外壁に直径 1cm 程度の貫通孔を開け,そこから光ドロップケーブ
ルを住宅内に引込む方法であり,エアコンダクト等の貫通孔が無い部屋に引込む場合に用い
られる。室内に設置する ONU 近傍の外壁に貫通孔を開けることが可能であるため,屋内光
配線が最短で済むという利点がある一方,住宅外壁に新たに貫通孔を開けることが居住者に
好まれない場合が多い。
コーキング処理
光ドロップケーブル
光ドロップケーブル引留具
光配線クリート
図 20
貫通孔を用いた光回線引込み施工例(住宅外壁部)
なお,上記 2)および 3)の光回線引込み方法では,電柱上等から配線された光ドロップケー
ブルを直接住宅内に引込む場合が一般的であるが,居住者の住宅環境や通信事業者によって
光キャビネットを設置して光インドアケーブルを住宅内に引込む場合もある。
5.2
屋内光配線方法の種類と特徴
16
新築住宅の場合は,予め設置された屋内配管を利用した「配管配線」が行われる。一方,
屋内配管が利用できない既築住宅の場合には,光回線引込み箇所から住宅内壁に沿って光ケ
ーブルが配線される。この場合の屋内光配線方法は大きく「光ステップルを用いた露出配線」,
「ワイヤプロテクタ配線」,「フリー配線」の3種類に分類できる。
本節では,上記の屋内光配線方法の種類と特徴について,具体的な施工例の写真を示しな
がら説明する。
1) 配管配線
光ケーブルの露出がほとんど無く,最も美観が良い方法である。なお,配管の径によって
は1配管に異なった種類のケーブルを通線することも可能である。
屋内配管を利用した配線の場合には,配管出口の住宅内壁に光ケーブル貫通孔が設けられ
たアウトレットが埋込設置され,住宅内に引込まれた光ドロップケーブルまたは光インドア
ケーブルは直接 ONU に接続される。
最近では,美観や配線後の ONU 設置位置の自由度など居住者の要望に配慮した配線部材
や新しい配線形態が利用可能となっている。その施工例を図 21 に示す。住宅内に引込まれ
た光ドロップケーブルまたは光インドアケーブルは,配管出口の住宅内壁に埋込設置された
光アウトレット裏面において光コネクタ成端され,光アウトレットと ONU の間は住宅内光
配線コードでコネクタ接続される。光アウトレットや住宅内光配線コードの光コネクタ部に
は,漏洩光に対する安全性や住宅内の塵や埃などから光コネクタ端面を保護するために遮
光・防塵シャッター機能を有するものが一般的に用いられている。
光アウトレット
住宅内光配線コード
ONU
図 21 光アウトレットを用いた屋内光配線施工例
2) 露出配線
施工例を図 22 に示す。露出配線とは光ステップルを利用し,光ケーブルを住宅内壁面に
配線する方法である。工事時間も短く,最も一般的な配線方法であるが,配線が剥き出しの
状態となるため挟み込み・引っ掛け等の危険性が高い場所では好ましくないという特徴があ
る。リフォームや部屋の用途変更に伴い,配線を撤去する際には壁面に傷が残るという欠点
もあるが,最近では釘や鋲を打ち込んで壁に固定するタイプの光ステップルの他に両面テー
プで壁に固定するタイプが利用可能となっている。
17
光ステップル
光ドロップケーブル
図 22
光ステップルを用いた露出配線の施工例
3) ワイヤプロテクタ配線
施工例を図 23 に示す。ワイヤプロテクタ配線とは光ケーブルを保護するためのワイヤプロ
テクタを利用し,その中に配線する方法である。配線の挟み込み・引っ掛け等の危険性が高
い場所でも配線が可能であるという特徴がある。露出配線と同様に一般的な配線方法である
が,ワイヤプロテクタの形・色などで美観上の好みの分かれるところである。
ワイヤプロテクタ
ONU
図 23
ワイヤプロテクタ配線の施工例
4) フリー配線
フリー配線とは屋内において光ドロップケーブルまたは光インドアケーブルを全く固定し
ない方法であるが,上記2つの配線方法との組み合わせて用いられる場合もある。図 24 に
示すように,配線を固定せず,配線後余った光ケーブルは輪取りされて設置されるため,端
末機器の移動にも安易に対応は出来るが,配線の挟み込み・引っ掛けなどによるケーブルの
損傷や曲げを発生させる可能性が高く,一般的には避けた方が好ましい。やむを得ず用いる
場合には居住者の十分な注意が必要である。
18
ONU
IP 電話対応ルータ
光ドロップケーブル
図 24
フリー配線の施工例
なお,上記 2)~4)のいずれかの方法で住宅内に配線された光ケーブルは,直接 ONU に接続
されるか,最近では図 25 に示すような住宅内に露出設置可能な光ローゼットが用いられ,
屋内配管を利用する際に用いる光アウトレットと同様に,住宅内光配線コードを用いて ONU
にコネクタ接続する新しい配線形態も利用可能となっている。
光ローゼット
住宅内光配線コード
ONU
図 25 光ローゼットを用いた屋内光配線の例
19
表1
戸建住宅における光配線方法の種類と特徴
用途
配管が利用可能な住宅
(新築住宅,既築住宅)
光回線引込み方法
配管引込み
その他の既築住宅
エアコンダクト
新たに外壁貫通孔を設ける
新たに外壁に貫
必要がない
通孔を設ける必
配線の露出がほとんど無く,
要がない
美観に優れる
ONU 設置位置が
屋内配管設置のための初期 離れている場合,
投資が必要
屋内光配線が長
い
利点
欠点
新たに外壁貫通孔
ONU を設置する部
屋に貫通孔を設け
ることができ,屋内
光配線が短く済む
外壁に貫通孔を設
ける必要がある
対応する屋内光配
線方法
配管配線
露出配線/ワイヤプロテクタ配線
/フリー配線
ONU との配線※
光アウトレット
住宅内光配線コード
光ローゼット
住宅内光配線コード
※直接光ドロップケーブルまたは光インドアケーブルを ONU に接続する場合もある。
5.3 居住者が工事前に確認すべき事項
居住者が希望するサービス利用環境を実現するためには,居住者自らが工事に対する要望
事項を事前に確認しておくことが望ましい。本節では,主に既築住宅の居住者を想定し,居
住者の要望や既設住宅環境などに依存する情報について,事前に確認しておくことが望まし
い事項について説明する。
具体的には,下記の項目を事前に整理しておくことが望ましい。
1) ONU の設置位置
2) 屋内配管の有無
3) 屋内光配線方法(選択)
1) ONU 設置位置
通常,パソコン等の設置位置等が ONU 設置位置を決定する最大の要因と成ると考えられ
るが,その他に下記を事前に確認しておくことが望ましい。
・
・
・
・
・
商用電源の確保が可能である場所であること
高温多湿,水のかかる恐れのある場所ではないこと
直射日光を受ける場所ではないこと
不安定な場所ではないこと
希望する設置方法は据え置き型か壁掛け型のどちらか
2) 屋内配管の有無
ONU を設置する部屋まで屋内配管が設置されているかどうかを確認する。ONU を設置す
る部屋まで屋内配管がある場合(通常は既設の電話線用の屋内配管を利用する場合が多い)
には,新規に光アウトレットの工事(モジュラープレートの取り替えも含む)が必要かどう
かを確認しておくことが望ましい。なお,各部屋への屋内配管が利用可能で,情報配線ボッ
20
クス等の設置希望があれば,各部屋に配線される基点となる設置場所を確認しておくと工事
が円滑に行われる。
一方,屋内配管がない場合には,ONU を設置する部屋に貫通孔(既設の電話線用を含む)
または貫通孔として利用できるエアコンダクト等があるかどうかを確認する。
3) 屋内光配線方法(選択)
貫通孔から ONU までの屋内光配線方法としてどの手段を希望するかを確認する。屋内光
配線方法については,前節 5.2 を参照のこと。また,貫通孔から ONU までの配線ルートに
希望があれば整理しておくと良い。
ケーブル施工・接続
電柱等の引き落とし点から住宅外壁までの光ドロップケーブルの配線や固定,接続および住
宅内の光インドアケーブル配線や ONU 設置までは,一般的には通信事業者等の施工となる。
住宅内の施工については TS C 0017「ビルディング内光配線システム」に準じて行なう。特に,
フロア系光ケーブル敷設(6.3 章)の電線管路内配線(6.3.2 d))を参照。
光ケーブルの敷設では,前述のとおり,ケーブルの許容張力と許容曲げ半径を遵守して作業
する。また,光ファイバの接続時に発生する光ファイバ屑は一般ゴミとは区別して確実に処理
する必要がある。
6.
保守・管理
保守・管理は基本的には TS C 0017「ビルディング内光配線システム」に準ずるが,下記内
容にも配慮する必要がある。
7.
1) 新設・増設配線と機器設置の記録
配線系統図や使用機器の記録は,障害発生時の調査や配線変更・設備追加時に有用で
あるので,記録し保管しておくことが望ましい。
2)家庭内光設備に関する注意事項の周知
・ 光コンセントのコネクタ端面に手では触らないこと。コネクタ端面に汚れが付
着したり端面の破損があると,接続損失が大きくなり通信不能となることがあ
る。
・ ONU に接続されている光コネクタの端面や光アウトレットのアダプタ端面を,
絶対に覗かないこと。レーザー光により目を傷める恐れがある。
・ 家具類の移動の際,光ケーブルの踏み付け等による損傷(断線)に注意するこ
と。
・ 光ファイバに関する注意
光ファイバは直径 0.125 mm のガラスでできている。誤って光インドアケーブ
ルを切断した場合は,断面の光ファイバ部分には触らないようにすること。光
ファイバが手足に刺さったり,目に入るなどの怪我の要因となり危険である。
試験・性能基準
光ケーブルの敷設・接続終了後,通信事業者の局内設備から ONU 入力部までの光損失試験
もしくは ONU の受光レベル試験を行い,試験値が性能基準値を満足することが必要である。
試験と性能基準は通信事業者により異なる。
8.
参考文献
(1)「ブロードバンドサービスの契約数等」(平成 20 年 6 月末,総務省):
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/080917_2.html (2009.3.25)
21
(2)宅内情報通信・放送高度化フォーラム 基本施工仕様書
(3)㈱フジクラ「光配線ソリューションカタログ 2008 NO.1」:
http://www.fujikura.co.jp/catalog/hikari/book43.html (2009.3.25)
(4)積水化学工業㈱「ハイブリッド配線システム」:
http://www.hybrid-system.jp/ (2009.3.25)
㈱NTT ネオメイト「マルチホームネット」:
http://www.ntt-neo.com/service/multihomenet/index.html (2011.2.1)
(5)古河電工㈱「電設資材ガイド 2008~2009」:
http://www.furukawa.co.jp/tukuru/pdf/densetu/densetu_index.htm (2009.3.25)
(6)パナソニック電工㈱「マルチメディア対応配線システム」:
http://denko.panasonic.biz/Ebox/multimedia/mms_08_top.html (2009.3.25)
(7)住友電工㈱「Optigate」:
http://www.optigate.jp/ (2009.3.25)
(8)三和電気工業㈱ 製品情報:
http://www.snwd.co.jp/japanese/04product/new/index.html (2009.3.25)
(9)㈱八光電機製作所 製品案内:
http://www.hachiko-denki.co.jp/html/product_24.html (2009.3.25)
(10)全国通信用機器材工業協同組合:
http://www.zentsukyo.or.jp/products/hikari-b/hikaristaple/index.html (2009.3.25)
22
FTTH 対応戸建住宅用光配線システム
解説
Ⅰ.経緯
光産業技術振興協会,ファイバオプティクス標準化委員会傘下の建物内光配線システム分科
会では,ビルディング内の光配線に関する標準情報「ビルディング内光配線システム」(TR C
0017;1999)を作成し,改訂してきた。具体的には,光配線システム構成,配線方法,接続方
法,試験・管理方法の標準化を図ってきた。(現在は,この標準情報は標準仕様として再度最
新情報を盛り込んで改訂され,2006 年 1 月に TS C 0017 として発行された。)しかしながら,
戸建住宅の光配線システムに関する最新情報や標準化の動きはないのが実情であった。
そこで,分科会では,2003 年度から,戸建住宅の建物構造の調査,石英/プラスチック光フ
ァイバおよび周辺技術の調査,光配線の施工例や問題点の調査などを開始した。
本分科会では,戸建住宅への光配線を推進するためのガイドライン作成を目指して,実態調査
とともに最新技術動向調査,ガイドラインの概略内容の検討を行った。新築/既築戸建住宅につ
いて,光配線の実態調査を実施すると共に,光配線工事者からの聞き取り調査,配線部材使用
状況に関する情報収集などを行った。情報収集の結果,既築住宅は引込み・室内配線が建物構造
毎に異なるために一般化した技術資料の作成が難しいこと,および情報配線ボックスへの光回
線終端装置(ONU など)設置が住宅内光配線として理想的であると考えられることなどの理由
から,まず始めに新築住宅を対象とした技術資料を第 1 版として作成することとした。こうし
て 2005 年度から 2006 年度にかけて,技術資料の作成を具体的に進め,2007 年度に技術資料
「FTTH 対応戸建住宅用光配線システム」を第 1 版として公開するに至った。
2007 年度は,我が国における光回線導入事例の大部分が既築住宅であることを鑑み,既築住
宅への光配線施工事例の最新動向を中心に調査を進めてきた。その結果,第 1 版作成当時と比
較すると,様々な住宅構造や居住者が好む生活環境により配慮した光配線方法や配線物品が用
いられるようになってきたため,これを反映すべく,2008 年度より第 2 版の改訂作業に着手し
た。
第 2 版では,新築および既築住宅それぞれ異なる環境に対して適用される最新の光配線施工
事例として,居住者の関心が高い光回線引込み方法や屋内光配線方法の種類と特徴,それに用
いられる新たな配線物品に関する記述を主に追加した。
2009 年度は,FTTH 契約数が既に 1,500 万契約を越えて引き続き堅調に増加を続けている状
況で,FTTH や建物内光配線に関する技術動向調査は,従来とは切り口を変えて,①光ケーブ
ル技術,②接続技術,③施工技術,④光システムといった技術分野毎に行い情報を収集した。
その結果,戸建住宅に適用される光ケーブル,接続コネクタおよび配線物品等において,新た
な技術を盛り込んだ製品が用いられるようになってきた。これらの情報を反映するため,2010
年度より第 3 版の改訂に着手した。
第 3 版では,新たに用いられるようになった光ケーブル,接続コネクタおよび配線用品に関
する記述を主に追加した。また,施工事例および配線物品例において,できる限り最新物品の
写真への更新を図った。
Ⅱ.主な項目の説明
1.適用範囲
本技術資料の適用範囲は,戸建住宅への光ケーブル引き込みから,各住戸内の情報配線ボッ
クス内の光回線終端装置(ONU)までとする。
2.定義及び略語
光配線システムの主な構成要素である装置・配線物品の用語を定義づけた。
3.引用規格
TS C 0017「ビルディング内光配線システム」に関する規格を示した。
23
4.光配線システム基本構成
FTTH 対応戸建住宅で利用できる光サービスとして,インターネットサービス,IP 電話サー
ビスと合わせて,今後はデジタル放送等が伸びると考えられている。このような光サービスを
受けるための光配線システムとして,戸建住宅への光ケーブル引き込みから住宅に設置される
光回線終端装置(ONU)までを基本的な構成とした。
戸建住宅に引込む光ファイバ心線数は,1 心あるいは 2 心が標準であることから,1 心あるい
は 2 心とした。また,IP 電話や光トリプルプレイサービスが一般的に広く利用可能となってき
たため,V-ONU や IP 電話対応ルータを含む配線形態を基本構成とした。
通信事業者から配線された光回線は,光ドロップケーブルを介して住宅に引込まれる。この
際には,住宅内に直接光ドロップケーブルを引込むか,あるいは光キャビネットを介して光イ
ンドアケーブルを引込む方法がある。引込まれた光ドロップ/インドアケーブルは,光コンセ
ントにてコネクタ成端される。光コンセントには,新築,既築住宅や壁内配管の有無などの住
宅環境に応じて,光アウトレット,あるいは光ローゼットが使い分けられる。光コンセントか
らは,住宅内光配線コードが用いられ,V-ONU に配線される。光信号は,V-ONU と ONU の両
方にてそれぞれ映像光信号,インターネットなどのデータ信号に分けてそれぞれ電気信号に変
換される。なお,映像サービスを利用しない場合や,データ用と映像用一体型の ONU を用い
る場合には,住宅内光配線コードは直接 ONU に接続される。ONU からは,UTP などの LAN
ケーブルにより IP 電話対応ルータあるいは SW-HUB に接続され,IP 電話,パソコンなどの情
報機器に配線される。また,V-ONU からは同軸ケーブルを介してテレビまで配線される。配管
が利用可能な主に新築や既築住宅の場合には,配管を通じて LAN ケーブルや同軸ケーブルは
各部屋にスター型に配線される構成が基本となるが,配管が利用できない住宅の場合は,複数
の部屋にまたがる配線は難しいため,ONU を設置した部屋内にて LAN ケーブルや同軸ケーブ
ルの配線が行われる構成となる。
5.ケーブル施工・接続,保守・管理,試験・性能基準
ケーブル施工・接続,保守・管理,試験は,TS C 0017「ビルディング内光配線システム」に
準じて行うこととした。住宅内では一般の人が光コネクタや光ケーブルに触れる機会が多くな
るので,光コネクタの取り扱いなどへの注意を記載した。
Ⅲ.諸外国,国内他機関における標準化状況
構内配線の規格化に関して,国際標準化では ISO/IEC JTC1 SC25/WG3 にて ISO/IEC 11801
“Generic Cabling for Customer Premises”(2002)が進んでいる。一方,住宅用配線に関しては,
ISO/IEC 15018 “Generic Cabling for Homes”が規格化されているが,マルチモード光ファイバや
プラスチック光ファイバを媒体とした主に SOHO 環境向けの規格であり,本技術資料で扱う
ような FTTH サービスに対応した住宅内配線に関する規格化については,国内外ともに進んで
いないのが実情である。
集合住宅内の光配線部材に関しては,財団法人ベターリビング(1973 年設立)が,2008 年
12 月に,集合住宅に用いられる光配線システム機器に関して優良住宅部品認定基準を策定し
ている(1)。自営 PT 盤,PD 盤,光アウトレットについて記載されており,特に光アウトレッ
トは戸建住宅でも適用できることから,参照する必要がある。
また,NPO 光ファイバー普及推進協会(平成 15 年 5 月に特定非営利活動法人承認)は,中
小ビルオーナーへの情報化に関する啓蒙・普及と光ファイバ導入の推進支援などを目的として
活動しており,高度情報配線設備ガイドブックの作成を今後実施予定である。これは,マンシ
ョン・ビル・一戸建て,さらに新築・既築に分類し配線設備の標準化となるよう目指したもの
であり,本技術資料と非常に関連するため,今後とも注目していくこととする。
光ファイバ普及の国内活動に関しては,NPO 高度情報通推進協議会(平成 16 年 1 月に特定
非営利活動法人承認)が,情報配線施工技術の競技会,セミナー,技術認定制度などを通じて,
情報配線施工技術の発展・振興および人材育成などの活動を積極的に行っている。同協議会は,
24
技能五輪の「情報ネットワーク施工」競技に深く関与し,技術仕様 TS C 0017「ビルディング
内光配線システム」を参照して活動を進めている。当分科会とも関連性が高く,今後とも注目
していくこととする。
Ⅳ.参考文献
1) BLS OC: 2008 “優良住宅部品認定基準 光配線システム機器”,
(財)ベターリビング,2008
年 12 月 1 日公表・施行
Ⅴ.原案作成委員会
この TP(技術資料)はファイバオプティクス標準化委員会建物内光配線システム分科会にて
2009~2010 年度に原案を取纏めた。原案作成メンバは次のとおりである。
主査
主査
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
オブザーバ
オブザーバ
光協会
事務局
古川 眞一
関口 俊彦
石橋 克之
岩倉 大輔
小川 信二
高橋 俊明
菊地 秀夫
木村 明弘
小山 輝男
高橋
聡
田中 克典
田名網 一彦
谷口 輝行
原田 新一
村川 知宏
吉田 幸司
吉田 浩之
中村 洋子
金枝上 敦
初山 茂康
増田 岳夫
稲田
孝
矢崎総業(株)
日本電信電話(株)
(株)きんでん
古河電気工業(株)
住友電気工業(株)
住友電気工業(株)
(株)フジクラ
日本コムシス(株)
三菱電線工業(株)
(独)科学技術振興機構
(独)都市再生機構
(独)都市再生機構
積水化学工業(株)
横河電機(株)
(株)協和エクシオ
(株)協和エクシオ
(財)日本規格協会
(財)日本規格協会
経済産業省 産業技術環境局
経済産業省 産業技術環境局
(財)光産業技術振興協会
(財)光産業技術振興協会
(2009 年度主査,2010 年度委員)
(2009 年度委員,2010 年度主査)
(2010 年 3 月まで)
(2010 年 4 月から)
(2010 年 6 月まで)
(2010 年 7 月から)
(2009 年
(2009 年
(2010 年
(2010 年
(2010 年
(2010 年
6 月まで)
7 月から)
3 月まで)
4 月から)
6 月まで)
6 月から)
以上
25
禁無断転載
この OITDA 規格の TP(技術資料)は,光産業技術振興協会 ファイバオプティ
クス標準化委員会 建物内光配線システム専門委員会で審議・取纏めたものである。
この資料についてのご意見又はご質問は,下記にご連絡ください。
TP(技術資料):
FTTH 対応戸建住宅用光配線システム
(英語題名 Optical fiber distribution system for detached
houses in FTTH )
TP 番号:TP01/BW-2011
第3版
(第 1 版 公表日:2007 年 7 月 6 日)
(改訂第 2 版 公表日:2009 年 6 月 12 日)
改訂第 3 版 公表日:2011 年 8 月 3 日
発行者:一般財団法人
光産業技術振興協会
住所:〒112-0014 東京都文京区関口 1-20-10
住友江戸川橋駅前ビル 7F
電話:03-5225-6431
FAX:03-5225-6435
e-mail:[email protected]
26
(標準化室)
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