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第4回「高齢者クラウド」シンポジウムを開催いたしました。
「高齢者クラウド」 第 回シンポジウム 4 記録集 高齢者の経験・知識・技能を社会の推進力とす るための ICT 基盤「高齢者クラウド」の研究開発 東京大学 我が国は、総人口の 25%以上が 65 歳以上 第4回 「高齢者クラウド」 シンポジウム のシニア層で占められる超高齢社会を迎え、 2055 年にはシニア層が 40% を超える見込み です。しかしながら、最近の調査によると現 在のシニア層は 20 ∼ 30 年前と比べると心 身ともに 10 歳以上も若くなっているという 報告があります。それは、視点を変えると元 気高齢者が活躍できる社会をつくることで、 人口ピラミッドを再逆転し、超高齢社会に おいて安定した社会構造を構築できると見 開催概要 ることができることでもあります。 2014年12月2日(火) 日経カンファレンスルーム ( 日経ビル 6F ) において元気シニアの社会参加と就労を支 共催: 科学技術振興機構 戦略的イノベーション創出推進プログラム 「 高 齢 社 会 を 豊 か に す る 科 学・ 技 術・ シ ス テ ム の 創 成 」 シンポジウム 主催: 東京大学はIBMと連携し、超高齢社会 援するICT基盤、「高齢者クラウド」の研 究開発を、( 独 ) 科学技術振興機構 (JST) の研 究成果展開事業【戦略的イノベーション創出 推進プログラム】(S- イノベ ) の一環で展開 しております。今年で 4 回目を迎える本シ ンポジウムは、科学技術振興機構と合同で 開催し、S- イノベにおける「高齢社会を豊 かにする科学・技術・システムの創成」に 関する招待講演と研究発表、そして、「高齢 科学技術振興機構,東京大学 者クラウド」が提唱するモザイク型就労につ 後援: 論を行うべく、招待講演とパネルディスカッ 東京大学大学院・博士課程教育リーディング プログラム 「 活力ある超高齢社会を共創するグローバ ル・リーダー養成プログラム」 協力: 日本バーチャルリアリティ学会 超高齢社会の VR 活用研究委員会 協賛:日本バーチャルリアリティ学会 いてシニアの視点、ビジネスの視点から議 ションを展開しました。 目次 はじめに 「 高 齢 者 ク ラ ウ ド 」 の 研 究 開 発 p.04 廣瀬 通孝 東京大学 教授 小林 正朋 日本アイ・ビー・エム株式会社 開発リーダー/ リサーチ・スタッフ・メンバー 企画セッション 「 シ ニ ア 就 労 新 時 代 」p.10 長島 一由 リクルートワークス研究所 主幹研究員 兼 編集長 トークセッション コメンテーター 「 I T で こ ん な に 楽 し い! 広 が る! セ カ ン ド ラ イ フ」 p.20 p.20 廣瀬 通孝 東京大学 教授 浅川 智恵子 日本アイ・ビー・エム株式会社 フェロー 牧 壮 新老人の会・スマートシニアアソシエーション 代表 高木 治夫 京都フラワーツーリズム プロデューサー 生部 圭助 NPO自立化支援ネットワーク 理事長 パネルディスカッション 「 超 高 齢 社 会 を 変 え る 新 世 代 企 業 」 p.32 山口 豪志 ランサーズ株式会社 フェロー 南 章行 株式会社ココナラ 代表取締役 総合進行 檜山 敦 Atsushi Hiyama 東京大学 特任講師 久保田 雅俊 株式会社サーキュレーション 代表取締役社長 モデレータ 高木 啓伸 日本アイ・ビー・エム株式会社 シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー はじめに 廣瀬 通孝 Michitaka Hirose 東京大学 教授 の研究開発 プロジェクトマネージャー/ 研究リーダー 同時開催 科学技術振興機構 「高齢社会を豊かにする科学・技術・システムの創成」 シンポジウム 講演より 「高齢者クラウド」企画セッションに先立ち、本シ ンポジウムでは、S- イノベにおける「高齢社会を豊 かにする科学・技術・システムの創成」に参画して いる各研究グループより最新の研究開発の状況が報 告されました。 その報告の中で、『高齢者の経験・知識・技能を社 会の推進力とするための ICT 基盤「高齢者クラウド」 の研究開発』における最新の研究開発の状況をお届 けいたしました。 それではどうもありがとうございます。高齢者クラウドのプ ロジェクトの紹介をさせていただきます。まず僕は研究リー ダーの廣瀬でありますけれども、アウトラインについてお話し させていただいて、それから開発リーダーの小林さんにバトン タッチしたいと思います。 まず僕自身は基本的にすごくラフなところだけ話すにとどめ ようと思うんですけれども、左の図が 2055 年の人口ピラミッ ドであります。このシンポジウムに来られている方たちは、こ の問題の重大さに既に気付いておられると思います。見ていた だくとおわかりのように労働可能人口はだいたい 15 歳から 65 歳といわれておりますから、この図の赤い部分が、今の日本国 で働けるであろう人々、そのパーセンテージが 50% ぐらい、そ れが 2055 年のわが国の姿であるといわれております。シミュ レーションの中で一番正しく当たるのが人口推定だといわれて いますので、これは確実にこの世界が来るという事を、まず考 えていかなければいけないと思います。実は 1 人働くと何かよ くわからない人が一人背中に背負わされるという状態になるわ けでありまして、国としての活力はどうしようもなくなってし 4 これは「エントロピーが高い」という言い方を我々はするん ですけれども、要するに労働対象として非常に多様なものを扱 – – – – わなければいけなくなる事が、この原因の一つだと思います。 しかし情報技術は基本的にそういう多様なものを扱う事を一番 得意とする技術であるはずなので、ここにコンピュータを持ち 込む事は極めて自然な流れであって、コンピュータでこういっ た問題を、ある種隠ぺい化するプロジェクトが高齢者クラウド であります。 まう。非常に重要な問題だろうと思います。それで我々の認識 としましては、今高齢者問題を考えたときには、伊福部先生が おられるのであれですけれど、福祉問題の最大のプロフェッ サーである伊福部先生のプロジェクトですので、なかなかいい づらいところがありますが、こういう高齢化問題を「福祉」と 考えると国としての GNP がおかしくなってしまうのではない の、というのが基本的な我々のプロジェクトの考え方でありま す。高齢化社会と技術の関係を考えたときには、高齢者はどう しても弱者、それをどうやって支えていくかという文脈で語ら れがちなんですけれど、これから高齢者はマジョリティーにな この高齢者クラウドのプロジェクトの基本的な考え方が一枚 るんですね、マイノリティーとしての高齢者を考えている従来 のスライドにすべて示されているんですけれども、上のほうに のスタンスとマジョリティーとしての高齢者を考えていくスタ 高齢者の労働力があります。それは今申し上げたように非常に ンスは、おのずと違ってこないといけないんだろうというのが、 エントロピーが高くて、そのままの形では利用できない。機械 高齢者クラウドというプロジェクトを提案させていただいた 工学の分野でエントロピーが高い熱源というと、熱は入ってい 我々の基本的なスタンスになります。 るんだけれどもなかなか仕事として使えないという意味では、 利用率が非常に悪いという事になります。その間にクラウド型 実際、高齢者はほんとうに弱いのかというスタンスから、我々 のメディアとコンピュータを挿入する事により、これがいわゆ は思っておりまして、実際に僕なんかは大学におられます伊福 る仮想化という事になりますけれども、上の高齢者の方たちの 部名誉教授を前にして言うのもあれなんですけども、名誉教授 スキルなりなんなりをばらばらに分解して、それでピチピチの の先生って非常に強くて、肉体的には別として、知的な部分は 設計士 1 名とか営業 1 名という従来型の労働力を生み出す事は 非常にお強いです。ここにありますように、専門的知識を有す できないだろうかという事が、このプロジェクトのポイントと るあるいは経験があるとか、いろいろ若者に比べて、最近の いう事になります。 草食系の若者なんかに比べたらはるかに強い肉食系であると、 我々は認識しています。その一方で冗談はともかくとして、企 エントロピーの高い状態を細切れにして組み合わせるという 業は高齢者を採用するかというとですね、それはなかなか難し 事をもうちょっとわかりやすくいうと、モザイク型就労と我々 いところがあります。それは、伊福部先生が一番最初におっ は呼んでいて、モザイク型にすると就労と雇用を切り離して考 しゃったのは非常に重要だと思うんですけれども、高齢者が専 えられるのではないかという事であります。お年寄りになると 門的知識、経験があるという事は、裏返すと伊福部先生は可塑 やっぱり働くイコール会社に雇われるという事がだんだん重荷 性がないといういい方をされましたが、要するに配置転換とか、 になってくるわけで、そういったものを取りあえず分けていく 違った仕事をやれといわれるのは非常に難しいみたいですね。 ことが重要なのではないかと思いまして、それにコンピュータ だから高齢者に関して頑張れといってはいけないというところ メディアが使えるのではないかと。どういうかたちでモザイク があると。そしてそれから時間的な制約がある、これは肉体的 にするかはいろいろな考え方があって、今申し上げたように時 にもいろいろな問題が生じてくるでしょうから、フルタイムで 間モザイクみたいな、例えば月曜日と火曜日が都合がいい A さ 働くのはなかなかつらくなるかもしれない、時間的なもの空間 んがいて、水木金が働けるような B さんがいたとしたときに、 的なものスキル的なものいろいろ個人的な事情が入ってきます 全部合わせれればフルタイムの労働者ができるだろうというよ から、それは今までの人を雇う企業の立場からしてみると邪魔 うな考え方もできるでしょうし、下にあるようなスキルモザイ くさい話がたくさん出てくるというのは事実であります。 クは、スキルはばらばらに存在しているような人、例えば A さ はじめに・ 「高齢者クラウド」の研究開発 5 んは歴史の知識があって、B さんはフランス語がしゃべれて、 若者 C は飛行機が操縦できるみたいなところがあったらば、そ の 3 人合わせれば大変素晴らしいフランス旅行ができるだろう とか、スキル的に分解されて仕事が 1 つできるかもしれません。 小林 正朋 3 つ目は、遠隔就労みたいなかたちを取ってみると、遍在した 労働力をまとめる事ができるだろうみたいなところを、我々は Masatomo Kobayashi 考えて、その間にコンピュータを挿入する事によって、こうい う実世界の中で不可能である事をバーチャルの世界の中で実現 日本アイ・ビー・エム株式会社 する事を目指しているわけであります。以後、具体的な技術の 開発リーダー/ リサーチ・スタッフ・メンバー 内容に関して、小林さんに話していただこうと思っております。 最後 1 つだけ申し上げておきますと、伊福部先生も強調され ましたけれども、このプロジェクトは 10 年という非常に長い プロジェクトでありまして、コンピュータってどんどん変わっ ちゃうんですね。このプロジェクト自身、非常に我々が苦労し ているのが、そういう大きな物語を書くんですけれども、ある 部分、非常にまじめに研究開発しなきゃいけなかったのが突然、 ほかの技術的要因によっていとも簡単に解決されてしまうとい うような事があるかもしれません。それから実際、これは社会 実装という言葉をお題としてあげられているので、今日のこの あとに高齢者クラウドのシンポジウムで実際の就労をやってお られる会社の方たちと協働が始まろうとしているんですけれど も、実際のフィールドから見たときに、そういう技術というの はあんまり使えないよねといわれる可能性もあるんです。そう したときにどう軌道修正をしていくかという事を、そのアドリ ブといっては変ですけれども、そういうかたちで臨機応変にど う開発していくかという事が重要であって、今これからのコン ピュータサイエンスにおいては、その研究開発のやり方はグ ロースハックというんですけれども、現場においてだんだんそ の技術をちょっとずつ形作っていくというような方法論が非常 に重要だという事がいわれ始めてきて、その方法論をチャレン ジする意味においても、このプロジェクトは、我々にとって非 常にチャレンジングなプロジェクトだと思っております。 ここからは草食系の小林が務めさせていただきます。これ までの研究を踏まえまして、このプロジェクトでは開発すべ きテクノロジーを 3 つに絞り込みました。1 つはクラウドソー シング、仕事を細かく分解していつでもどこでも少しずつみ んなで働けるようにというテクノロジーです。 もう 1 つはテレプレゼンス、テクノロジーを使って空間を 越え、今までできなかった仕事をどのようにしていくかとい うところが研究のポイントになっております。 それから 3 つ目が、その 2 つのテクノロジー、いわゆるイ ンタフェーステクノロジーのベースにあるようなジョブマッ チングのテクノロジー、スキルの需要と供給を対応づけるよ うな技術という事ですね。それぞれの項目について研究開発、 それから実証実験を行っております。特にいま廣瀬先生がグ ロースハックとおっしゃいました、そこでその実証実験が特 に重要になってきています。 まずクラウドソーシングについては、「ソーシャル・クラウ ドソーシング」と呼んでおるんですけれども、ポイントが 2 つあります。1 つはクラウドソーシングをシニアの社会参加 の 1 つの手段と位置づけたとき、モチベーション、やる気と いったものが課題になってきます。そこで SNS ですとかゲー ミフィケーション、例えばランキングとかバッチとかいろい ろなソーシャルなサイトに導入されておるものですけれども、 そういった仕組みを組み込んでいく事でクラウドワーカーの 間のコミュニティーの感覚を醸成して、結果的にそのモチベー ションの向上を図ろうというアプローチです。 もう 1 つのポイントがあります。クラウドソーシングは不 特定の参加者に仕事をやってもらうというかたちなので、出 てくる結果の精度が非常に問題になってきます。そこでいろ いろな手法がこれまで提案されているわけですけれども、こ のプロジェクトではみんなで 1 つの問題を解くというシチュ エーションにおいて、ほかの人の入力を見る事による結果の 影響ですね、そういったものを確率論的にモデル化したスキ ル推定モデルを利用して、結果の精度を向上させたり、新し いスキルのある人を発掘したりといった事を図れると考えて おります。 6 そこで実証実験として、社会福祉法人日本点字図書館の協力 をいただきまして、こういった実証実験をしております。障 害者ユーザーで読書が困難な皆さん、例えば視覚障害ですと かディスレクシアといった障害を持っている方なんですけれど も、その方たちのテキスト DAISY という音声読みあげ図書を日 本点字図書館では作っております。 どうやって作っているかというと、いわゆる自炊ですね、本 を買ってきて裁断してスキャンして OCR(光学文字認識)にか けて、その文字認識のエラーを人手で直すという手順で作って おります。その校正の部分をクラウドソーシングで効率化して やろうというのが、この実証実験の目的です。そこでただのク ラウドソーシングではなくてコミュニティーの仕組みを取り込 む事で高齢者と若者が参加してもらって教え合いを引き起こす ことができるだろうとか、あるいはいくつか要求するスキルの 異なる校正インタフェースを用意して、うまく強みや弱みを補 い合うような協働の仕方ができるかどうかといったものを検証 項目としております。短いビデオにまとめてきたものがござい ますのでご覧下さい。 こういったインタフェースで次々と修正しています。これは いろいろな人が少しずつ働くと本がどんどん仕上がっていく事 をイメージで示したビデオです。 ていく傾向が見えており、若者よりも高齢者のほうが継続性が 高いクラウドワーカーといえるのではないかと思っておりま す。 それからモチベーションについて詳しくアンケート調査を 行っておりまして、やる気を引き起こす上で何が重要かという 質問に対して、年齢を問わず社会に貢献しているという感覚が 重要だといわれているんですけれども、年齢の違いは例えば高 齢者は人とのつながり、それに対して若者は自分自身のスキル の向上が必要といったところを重視している事が結果として出 ていいます。こういった感覚をうまく引きだしていくモチベー ション作りの仕組みが今後必要になってくると考えておりま す。 ゲーミフィケーションの効果なんですけれども、長く貢献し てくださっている人は自分自身の貢献、あなたは何位ですとか あなたはこれだけ作業しましたといったような成果の可視化を 好む一方で、新しい参加者・短期の参加者は全体の貢献、この プロジェクト全体でこれまで何冊できましたといったような部 分の情報が知りたいと答えております。こういった仕組みを続 ける上では、長く続ける人と新しく入ってくる人と両方重要で ここのポイントは、左側にたくさん光っている人が作業をし ている人なんですけれども、人の中にはたくさん作業をする人 もいるしちょっとだけの人もいる、ある特定の作業だけをする 人もいるし、いろいろな作業をする人もいるというかたちで、 そういったさまざまな参加者が少しずつ力を合わせる事で図書 の仕上がりが早くなっていく。これまで校正に何週間かかかっ ていたものが、この仕組みによって 1 日か 2 日に縮むという成 果が出てきております。もう少し傾向を分析します。 このプロジェクトはちょうど 1 年前の 2013 年から継続して おって一般参加者が 255 名、そのうち 60 歳以上が 111 名、そ れにもともとの日本点字図書館のボランティアの方々もおりま すので全部合わせると 300 名規模、そのうち半分ぐらいが高齢 者という構成になっております。この折れ線グラフは、週あた り作業人数の推移を表しています。高齢者は非常にやる気が長 持ちしているんですけれど、若者はだんだん飽きて少なくなっ すから、こういったゲーミフィケーションの仕組みをバランス よく組み合わせていく事が必要ではないかと考えております。 ここまでお聞きになって、この会場におられる半分ぐらいの方 がこのプロジェクトに参加したくなったと思うんですけれど も、こちらで参加を受け付けております、メモのために手順を 言います。「みんなでデイジー」で検索してみてください。 2 つ目はテレプレゼンスについてです。「コグニティブ・ア バター」というものですけれども、テレプレゼンスのロボット をどのようにうまく動かすかというしくみの研究をしておりま す。遠隔コミュニケーションにおいて、不随意的に動作を入力 伝達して、存在感を伝達したり操作負荷の軽減をしたり。これ はどういったことかといいますと、例えば遠隔で会議するため のテレプレゼンスロボットを考えたときに、ロボットの操作に 気を取られると会話に気が回らない、会話を始めてしまうとロ ボットの操作をする余裕がなく結局ロボットを使わずに、ずっ と立って会話しているのと変わらないというような、存在感が はじめに・ 「高齢者クラウド」の研究開発 7 なかなか感じられないという事がこれまではテレプレゼンスロ ちょっと教室でも笑いが起こっていますけれど。こういった感 ボットでは起こっていました。 じで、我々若手はシニアにタブレットを教えるときにハッとし てくださいとか、ちょっと失礼かなと思って言いませんよね。 そこで人間の自然な動きを遠隔地のロボットに伝えてあげ そういうところもあってこういった授業を全国に広めていけた る、あるいはちょっとした人間的な動きの揺らぎといったもの らどうかという事です。これはスカイプですんで、教室の前に をロボットで再現してあげる事で、操作する人の負荷を軽減す 立った先生が教えるといったところはこれで再現できます。 る、あるいは遠隔地で存在感をうまく伝えていく事ができるの ではないかと考えています。実証実験として仙台シニアネット ところが IT の講習は、教室の前から教えるだけじゃなくて、 クラブそれから西宮市清瀬台の自治会にご協力いただきまし 一人一人に寄り添って、困っている人に対してピンポイント て、テレプレゼンスの遠隔講義、これは IT を教える、IT 講習の のアドバイスをあげるというサポーターの役割も非常に重要 題材なんですけれども、その実証実験を始めております。 になってきます。その役割はやっぱりテレプレゼンスロボッ トの仕組みが必要なんではないかという事で、何種類か教室 に持ち込んで実証実験をしているところです。1 つは Double Robotics、これはアメリカの会社です。 仙台のほうに講師の方とサポーターの方がいて、西宮にはテ レプレゼンスロボット、卓上型と移動型がございまして、教室 の前にはスクリーン画面が写っております。なぜ西宮の人に仙 台の人が教えるんだと思っている方が半分ぐらいいらっしゃる これは入り口にも出ていたので、皆さんもご覧になったかと と思うんですけれども、実はシニアにうまく IT を教える事がで 思うんですけれども、Double Robotics というアメリカの会社 きる先生は結構貴重な人材です。そういったいい先生がいる地 の自走する iPad というものです。真ん中に Revolve Robotics、 域の人だけしか IT の講習を受けられないのは格差ではないかと これもアメリカの会社なんですけれども、日本語で「KUBI」と 思っておりまして、うまい先生の授業を全国に広めていきたい いう名前です。この KUBI というロボットの特徴は下を向く能 というような思いも込めて、この実証実験テーマを選んでおり 力がある事です。もう 1 つは「Cogi」、これはこのプロジェク ます。先生が教えているところの映像がありますので、ビデオ トで開発しているプロトタイプで、小杉さんというプロジェク でお見せします。 トメンバーが開発したので Cogi というんですけれども、KUBI と同様に据え置き型のシステムです。教室を見渡すような動き 【ビデオ音声】 講師:ちょっと、こう前に出していただけます? ご自分の左 手。右手人さし指で左手をトントンとたたいてください、 あちこち。 もできるようになっています。この Cogi の特徴は 2 つあって、 見渡すときにキーボードとかマウスで操作する必要がなくて、 先生の首の自然な動きに付いてくる。といっても首を動かすと Cogi の首が動くわけじゃなくて、先生のほうはパソコンの画面 を窓に見たてて、その窓をのぞき込むように顔を動かすと、そ これはタブレットへの触り方を講義しているところです。 のとおりの場所を遠隔ロボットが見ます。そちらのほうがパソ ちょっと飛ばします。 コンの画面を前にした人にとっては自然ではないかと考えてお 講師:ですからたたく必要ございません、触れてやればいいん です。我々は年取ってきますとね、手がかさついてきま すね。そのときにはうまくいかないときがあるかもわか りません。そのときにはちょっとハッとこうね、 (指先を) 濡らしてやって。 8 ります。もう 1 つ、このプロトタイプは木でできているので、 ちょっと温もりが感じられるという特徴があります。 このテレプレゼンスロボットによって、結果として遠隔の対 話の頻度が増加したという結果が出ております。それはいくつ か理由があって、1 つはサポートを必要とするような受講生を 遠隔から発見しやすいという事です、それからもう 1 つは受講 うなものを表したマッチングのモデル。それからこういった検 生の側から先生に話しかけやすくなるというような効果もあり 索では、回答は 1 つではない。人間の側からもこういう基準で ます。 見てみようかなといったいろいろな可能性があるわけです。そ ういったインタラクションを可能にして、人間の暗黙知を引き 出していくような事が可能ではないかという事をやっておりま す。これについては株式会社サーキュレーションさんの協力を いただきまして実証実験を始めるところです。 サーキュレーションさんはシニアエグゼクティブ人材と企業 をマッチングするビジネスをなさっているんですけれども、そ れぞれシニアエグゼクティブの専門家としての情報、あるいは 企業はこんな人を必要としていますという企業の情報をテキス ト情報で持っています。多くのテキスト情報を持っているんで すけれども、今は担当者の非常に高度なノウハウでマッチング しているらしいんですけれども、そこをある程度コンピュータ で支援してあげる事でこういう働き方のすそ野を広げる事がで それから存在感という面で、これは心理的な問題なので検証 きるのではないかと、実証実験を始めているところです。この は難しい面はあるんですけれども、存在感が伝わる事で遠隔地 サーキュレーションさんは夕方のセッションにお呼びしており との心の距離が縮まるといった面も大切なポイントではないか ます。 と考えております。 もう 1 つ、スキルを発掘するという意味で、ココナラとい 3 つ目はジョブマッチング、「高度就労人材検索エンジン」と う面白い仕組みがありまして、一般のマッチングですとかクラ いう名前で考えておりますけれども、一言でまとめると非定型 ウドソーシングといったような仕組みはまず仕事があって、そ データである人材情報と案件情報をマッチングして多様な特徴 こに応募するというかたちなんですけれども、ココナラのモデ を持つシニアの人材に「型」にはまらないようなマッチングを ルは、自分がスキルを出品して誰かがそれを買ってくれるとい 提供しようというものです。 うようなモデルです。そこでココナラさんと協力してワーク ショップを開きまして、最初はシニアの方、「俺に出せるスキ ルなんて全然ないよ」とみんなおっしゃるんですけれども、グ ループワークを進めるうちに、例えば「日中合弁企業で 20 年 間の経験があります」とか、あるいは「企業の不祥事の対応な ら任せろ」とか、あとは「イスラム教の国にお酒を持ち込むノ ウハウがあります」とか、そういう隠されたスキルがたくさん あるわけです、そういったものをうまく引きだす仕組みとして、 こういった仕組みも 1 つの手段になるのではないかと考えてい ます。ココナラさんも夕方のセッションにお呼びしています。 ここまで 3 つのテクノロジーの研究開発の状況をお話いたし ましたけれども、この技術開発をそれぞれ進めると当時に、次 のステップとしてこの 3 つを高齢者クラウドという 1 つの雲 の中において連携させていく、例えばジョブマッチングでマッ これはどういった事かと申しますと、従来の、実務経験何年、 チングした結果テレプレゼンスを使って働くとか、そういった この資格を持っています、このスキルを持っています、といっ 「ちょっと働く世界」と「しっかり働く世界」をつなぐ、ある たような人材のマッチングの仕組みだと消えてしまうシニア人 いは「現地で働く世界」と「遠隔でリモートで働く世界」をう 材の情報があるんですね。それで履歴書みたいなものには納ま まくつないであげるような仕組みを作る事がこのプロジェクト りきらない人の特徴というものをそのままテキスト情報、自然 の次のステップではないかと考えております。 言語のかたちでマッチングさせて、うまく案件とくっつける 事ができるのではないか。そのためには自然言語を処理する技 術だけではなくて人材のマッチングですから、ただの検索では ないですね。人材の中のどんな特徴を重視するのかといったよ はじめに・ 「高齢者クラウド」の研究開発 9 企画セッション 長島 一由 Kazuyoshi Nagashima リクルートワークス研究所 主幹研究員 兼 編集長 「シニア就労新時代」では、2030 年にはいよいよ 皆さま、こんにちは。ただ今ご紹介いただきましたリクルー 論を行いました。 いう事で、何をいいたいのかというと特にシニアクラウドです、 誌編集長の長島一由様のご講演に続いて、「高齢者ク ドで日本を救うんだという話を中心にさせていただきたいと思 深刻になっていく、シニア層の就労問題に対する議 トワークス研究所の長島一由です。今日はシニア就労新時代と リクルートワークス研究所、主幹研究員兼 Works これが日本を救う。シニアのミスマッチの解消でシニアクラウ ラウド」プロジェクトより廣瀬教授、IBM フェロー います。 起する、バブル世代から団塊ジュニア世代が 60 歳代 今ご紹介がありましたように、私はリクルートワークス研究 柔軟な就労事情と日本のシルバー人材センターの取 ず問題提起という事で中間報告書を公表させていただきまし の浅川智恵子様を交えた対談を展開し、長島様が提 後半にさしかかる次世代シニア問題、そして海外の 所で次世代シニア問題について調査研究をしておりまして、ま り組みについて理解を深めました。 た。今は年度末に向けて最終報告書を作成しています。問題提 起は誰でもできるんですが、その問題をどう解決するのかとい う事を集約している最中です。その一端を今日皆さまにお話し させていただきたいと思います。 この時間帯は、皆さんもちょっとお疲れのところだと思いま すので、頭の体操で 1 つクイズを出させていただきます。日本 人が非常に長生きになって健康になっている、ほんとうに喜ば しい事なんですね、その象徴が若返りです。 10 ル大量採用世代が生まれた年は 1967 年から 1970 年、団塊ジュ ニア世代は 1971 年から 1974 年、合わせて 8 年間の人たちを足 して 1,526 万人です。これは捕らえ方にもよるんですが、団塊 世代の人たちは 660 万人とも 1,000 万人とも言われていますが、 それを大きく上回る日本人の人口の最大ボリューム層になりま す。 これは漫画・アニメのサザエさんですが、波平さんと船さん の年齢設定は何歳かご存じでしょうか。そちらの男性は、いか がですか。 男性 B:波平さんは 55 歳ぐらい。船さんは 53 歳ぐらい。 答えは、まず波平さんなんですけれども 54 歳です。今の 54 歳というと BOØWY の氷室京介さんですね。実は私は今 47 歳 で来月 48 歳になるんですけど、船さんも 48 歳でキョンキョン と同じなんですね。それぐらい日本人が若返っています。 このサザエさんの漫画の初連載が 1946 年、戦後すぐです。 1947 年の平均寿命は男性 50 歳、女性 53 歳。2013 年には男性 80 歳、女性 86.61 歳という事で、戦後 66 年で 30 歳以上寿命が 延びている、その象徴ではあるんです。 人間は単に長く生きればいいというものではなく、その間を どういきいきと生きるのかという事が大事なんですけれども、 それを考える上で非常に危惧している事が、今回リクルートの 調査で明らかになってまいりました。ポイントは 3 つあります。 1 つは次世代シニアと我々が呼んでいるのは現在の 40 歳代な んですけれども、あとで定義をご説明しますが、この次世代シ ニアが 60 歳代後半になる 2030 年代には、合計約 188 万人が失 業者に陥るリスクがある。ちょっと前に団塊の世代の人たちが 大量退職する 2007 年問題、その人たちが 75 歳を超える 2017 年問題と言われていましたけれども、いずれこの 2030 年問題 2035 年問題がクローズアップされてくると思います。 188 万人がもし失業してしまうと最大年間 2 兆円強も年金財 政の影響がある。年金財政に対して悪影響というかマイナスに ならないんですけれど、結局 2 兆円は先送りになるんですが、 その間の就労収入があれば差し引きプラスマイナスで 4 兆円の 経済的な効果があると言えます。 それから 3 点目は 2035 年以降の問題なんですけれども、実 は今の日本的雇用慣行の意欲減退メカニズムによる次世代シニ アのモチベーションが低下しているのは今の問題という事にも 注意する必要があると思います。 そしてこの次世代シニアの定義なんですが、我々は今の 40 歳代のうちバブル大量採用世代と団塊ジュニア世代です。バブ 特に 2 つカテゴリがあるんですが、バブル大量採用世代の 特徴として青いラインは 1,000 人以上の企業、赤は 1,000 人未 満の企業なんですけれど、バブル大量採用世代というだけあっ て非常に大企業に遍在している傾向にあります。それに対して 同じ次世代シニアなんですけれども、この団塊ジュニア世代は 1971 年から 1974 年生まれの 4 年間はどの層に比べても非常に ボリュームは多い、ただ就職氷河期になっていますので、就職 の不満足度が高いということがいえます。むしろ中小企業も含 めて非常にボリューム層が多いという事がいえます。 この世代のもう 1 つの特徴は将来の経済的な備えに対して非 常に不安がある、今は年金制度が 2030 年以降は 65 歳から完全 支給という事でその先はどうなるのか、繰り返して言うようで すが、私たちが高齢者になるときはたして年金をいくらもらえ るかという事は明らかになっていません。そういった意味で不 安も大きいからこそ 60% 程度の 40 代の人たちは将来高齢者に なったら経済的な備えはかなり少ないと思っている人が 6 割程 度いるという事です。 経済的に不安があるとより長く働かなければいけないと思っ ているところがありまして、男性は四人に 1 人、女性は三人に 1 人が働けるうちはいつまでも働かなければいけないと思って いる特徴があります。特にこの層で気になる日本的雇用慣行の 話をするんですけれども、この 20 年間で管理職に就けない人 が非常に増えているという事なんです。 これは 1992 年と 2012 年の役職者比率ですけれども、赤枠で 囲った 40 歳から 44 歳、45 歳から 49 歳は、役職に就ける人が それぞれ 20% 程度も減っているんです。これがリクルートワー クス研究所の、役職に就けるかどうかモチベーションの研究 データなんですけれども、予測が当たり前だという結果ではあ るんですけれども、組織アイデンティティ、仕事での成長実感、 仕事自体の楽しみという事で、真ん中が 0 として、部長に就い 企画セッション・シニア就労新時代 11 ている人と、役職に就いてない人とでモチベーションの差があ このリクルートワークス研究所というのは通常は大手の、特 る、特に仕事での成長実感での差が非常に大きいという事です。 に一部上場企業 1,740 社向けに人材マネジメントについて調査 この 20 年間で役職に就ける人がどんどん減っている、まさに 研究を行っているんですけれども、このシニアの問題だけは企 これからボリュームが多い層ですから、ますます就けなくなっ 業の人材マネジメントだけでは立ち行かない話なんです、社会 てくるんです。 保障の話もあります。そういった事で国が何をすべきなのか、 企業が人材マネジメントとして何をすべきなのか、そして自治 モチベーションが二極化している上に最近導入されています 体とか地方で何をすべきなのかと整理して、今最終報告書をま 50 歳代で役職定年があって、あまり自分が関心を持てない仕事 とめています。 になってしまう。そして 60 歳定年になりました、継続雇用で 65 歳まで働く事ができます、しかし給与は実質半減化してしま うという事で、ますますモチベーションが下がった状態で無防 備に定年退職を迎えると、再就職先が見つからないという負の スパイラルに陥ってしまいます。 まず年金から説明したいと思うんですけれども、時間が限ら れているのでポイントは 2 点だけお話ししたいと思います。今 年 5 月に、当時の田村厚生労働大臣が 75 歳の年金選択制度を と言いました。選択制といっているんですけれども、マスコミ こういった状況を踏まえて、今回リクルートワークス研究所 には 75 歳支給というところが重く取られてしまったんですけ で就業者数のシミュレーション未来予測を行いました。その結 れども、実は選択制という意味は、今でも年金は 65 歳が真ん 果バブル入社世代、バブル大量採用世代と団塊ジュニア世代、 中の、60 歳から 70 歳までの選択制になっています。 現状の雇用推移でいったままと、働く希望を持った人たちがみ んな働ける状態との差を出したんですけれども、バブル入社世 今の仕組みでは前倒ししてもらうと月額 0.3% 減額されます、 代ではその差は 109 万人、団塊ジュニア世代では 79 万人とい 後ろ倒ししてもらうと月額 0.70% プラスになります。ただこれ う事で、このまま無防備に社会が何もしないで今のままいって を田村大臣に替わりまして、75 歳支給という事は別に決まった しまうと約 188 万人が失業するリスクがある。そして年金依存 わけではないんですけれども、これからの高齢者の推移を考え 性が高まって今でも生活保護を受ける人が非常に増えているん れば当然選択制になっていくんだろうと思います。 ですけれども、もっと多くなって社会が危機を迎えてしまう、 これは今から何とかやっていかなければいけないというのが、 そこで 75 歳で選択制になった場合の繰り上げ繰り下げに伴 今回の我々の強い問題意識です。 うシミュレーションという事を数字で出してみたんですけど、 ポイントは早くもらったほうが得なのか、あとにもらったら得 なのかという損益分岐点は、今の掛け率 0.7% だと後ろ倒しし てもらっている人は 1.3% しかいないんですね。これをもう少 し後ろ倒しで働けるうちは一生懸命働こう、あとで手厚くもら おうという仕組みに変えていく必要があります。ですから損益 分岐点を後ろ倒しするために加算度を上げていく事が 1 つのポ イントです。 もう 1 つは在職老齢年金がありまして、知っている人は知っ ていると思うんですけれども、60 歳以上で働いて月額 28 万円 とか 46 万円超えると減額されたり一部停止になってしまうん ですね。先ほどお話ししたように 2030 年には 65 歳からの年金 完全支給になりますので、現行での 60 歳から 64 歳の在職老齢 12 そのためのサバティカル休暇、別の言葉に置き換えると自己都 合休職制度というのがあります。自己都合休職制度について日 本企業でこの制度自体を持っているのが 12.5% しかありません、 実際に運用しているとなるともっと少ないんですね。例えばこ のサバティカル休暇制度というと、たまたま私は去年は北欧担 当だったので、北欧のいろいろな企業を見てまいりました。フィ ンランドは国民休暇法といってサラリーマン、社員が一年間国 の権利で休職できる事が保障されていました。 スウェーデンはこれを 2005 年にやめて今は企業が自律的に やっています。ストックホルムにあるエリクソンという電子機 年金は 2030 年に廃止されます。ただその先は 65 歳以降はどう するのかという事は、厚生労働省はこれからまさに設計をする ところです。もともと働く人のうちシニアは例外という時代に 作られた制度ですので、なるべく多くの人たちが働けるうちは 働こう、 専業主婦の 103 万円の壁の問題と似たような構造になっ ているので、これも見直ししていく必要があると思っています。 それから年金も選択制なのですが、定年制も選択制にしていか ざるを得ないだろうと思います。 なぜならば、東京大学の秋山弘子先生の高齢者の加齢による 自立という健康度調査があるんですけれども、女性の場合は 60 歳を過ぎて早期要介護に陥ってしまう人が 12.1%、70 歳代後半 にかけて緩やかに健康度・自立度が落ちていく人は 87.9%。一 方男性は健康自立度が、女性に比べて二極化しているんですね。 まず 60 歳を過ぎて急に早期要介護になってしまう人が男性は 19.0%、女性の 12.1% に対して 2 倍近く。定年退職後、地域に 溶け込めるか溶け込めないかで、男女の差もずいぶんあると思 います。一方で男性のほうが 80 歳 90 歳近くなってもずっと自 立し続ける 10% の人がいるんです。ですから特に男性の場合は 健康で長生き、自律的に生きられる人とそうでない人といるの で、やっぱり健康に合わせて年金も定年も自ら選択して、自分 のキャリアを自ら培っていける仕組みにする必要があります。 野村証券さんは来年 4 月から国内営業については 60 歳定年を 65 歳定年、それから継続雇用については 70 歳までと報道され ました。それからもう 1 つは定年の選択制ということでパイオ ニアというかモデル的に取り組んでいるのがカゴメさん、2012 年 4 月から 50 歳から自由定年制をしいています。 カゴメさんのユニークなのは 50 歳から自由定年なんですけ れども、会社がほんとうに必要だと思った人は 65 歳まできち んと同じ給料で雇用保障する、これをさらに 70 歳まで、ある いは定年制の廃止を検討しています。 先ほどもいいましたけれども、この表はリクルートワークス 研究所が調査した継続雇用の賃金水準なんですけれども、働く 日数が減るという部分もありますけれども、賃金が平均 55.24% とガクッと落ちるわけです。その落ちた中で無防備に定年退職 を迎えると、再就職先が見つからないという事なので、キャリ ア自律を促す人は準備期間を設ける必要があります。 器メーカーで、サービスデリバリー・マネージャーをしていた カティー・ゾルファガーリさんは、2009 年からテーブルの調度 品をネット販売する会社を興すために一年間休職をしました。 私も 20 代の時にフジテレビに勤めていまして、二年間休職を 取った事があるんですけど、日本企業だと休職をすると二年間 昇給を停止されるんです。ところがスウェーデンのエリクソン は、起業して一年間成功して戻ってきたら復職だけじゃなくて 昇格して戻す、もっとびっくりしたのは社員なんですけれども、 社長兼務をしたままエリクソン社員を続けている事です。 フィンランドでも交代休暇制度というものがありまして、こ れは交代休暇という名前からわかるように、単に休みを保障す るだけじゃなく失業者対策でもあるんです。1 人休職させる事 によって穴が空くので、そこに失業者を当てはめるという交代 休暇制度です。 これは我々の調査で交代休暇制度を活用している社員が 4% と最も多かったストラ・エンソという欧州最大の製紙会社です。 フィンランドでは今でも法律で交代休暇制度があるので、この 会社では 10 年以上勤めた人は 5 年おきに最大一年間休職でき ます。フィンランド人のダイボリッポネンさんは友人から屋根 の加工会社を買い取りました。フィンランドは寒いので、冬は 屋根の加工会社は仕事にならないわけですね。ですから自分の 友人から買い取った屋根の加工会社を軌道に乗せるために、春 に 4 カ月、秋に 4 カ月、また春に 4 カ月とばらして一年間休職 をとっています。ペッテリ・ランダネンさんは、フィンランド ではよくある事らしいんですけれども、家を建てるために一年 間休職をしました。彼の場合はでも単に趣味で家を建てるため に休んだだけではなくて、やっぱり工場もいつ閉鎖されるかわ からない、そういったときにいつ首になっても大工として食べ ていくために、こういうサバティカル休暇を活用して、それぞ れ 2 人は将来に備えてキャリア自立をしています。 北欧が間接税 25%ですから税制も違いますし、財源を伴うも のについては難しいかもしれませんけれども、日本でも例えば こういう取り組みをしている企業については公共入札をかける とき優遇してあげる、あるいは税を減免してあげるとか、そう いったかたちで官民一緒になってこういった制度を、キャリア 自立できる環境整備をする事は可能だと思います。これから今 日の本題へ入っていきたいと思います。 企画セッション・シニア就労新時代 13 やっぱり一番の課題はシニアミスマッチの解消です。現状で た場合の金額の 0.8%、2 割は民間へ出せば落札価格は落ちると も例えばハローワークがあります、全国にシルバー人材セン いう計算のもとに、その立ち上げた金額を仕事を請け負った人 ターがあります。いろいろ現場の声を聞くと、例えば私がもし 数で割っているんですけれども、一番高い一人当たりのコスト 62 歳だとして仕事をハローワークに、すみません、仕事を探し は A 市 64,295 円、一番安いところは J 市の 22,522 円というこ ているんですけれど、と行くと、それはシルバー人材センター とで 3 倍近く違うわけです。 へ行ってくださいと言われるわけです。そしてシルバー人材セ ンターに行くと、地域限定で仕事を紹介してくれます。ただ現 なぜ 3 倍近く違うのかというと公共と民間の仕事をどれぐら 状の仕事では多くのシルバー人材センターは全国で 1,300 あり いの比率で取っているかということです、やっぱり民間の仕事 ます。粗入会率といって 60 歳以上の人口に占める加入者の割 を積極的に取りにいっているところはコストが安く雇用創出で 合が全国平均 1.8%、カバー率は非常に少ないです。 きるわけです。 だから 2 番目のところに現状があって応用と書いてあります けれども、特定のスキルを求める企業と専門人材のマッチング している、ここまでは先進的なシルバー人材センターが取り組 んでいます。問題はこの先の 3 番、4 番です。 この発展段階で、これからシルバー人材センターあるいはシ ルバー人材センターに替わるシニアのミスマッチを解消する組 織がやるべき事は、今日本全国的に問題になっていますけれど も、今年日本創世会議が地方の人口消滅社会という警鐘を鳴ら した都市部の人材をいかに地方に人材移転できるかという事で す。 先ほどもいいましたけれど、バブル大量採用世代については、 なぜカバー率が非常に少ないのでしょうか。私が市長をやっ 私もまさにそうなんですけれども、都市部の大企業に遍在して ていた いるんです。その人たちをどうやって地方に労働移動するのか 子の場合は例外的にシルバー人材センターが無くて、 株式会社パブリックサービスでシルバー人材センターと同じ事 というところです。 をやっていたんですけれども、基本的に市が提供できるのは市 役所の駐輪場や駐車場管理とか公園の草刈りといった仕事で 通常キャリアコンサルタントが求人の求職をやっているんで す。 子都民、いわゆる東京まで働きに行っていた すけれども、これをもっと全国データベースを作って、今は総 ホワイトカラーの人たちに、そういう仕事を紹介しても、いや 務省さんとか経済産業省さんがデータベースを構築しつつあり ちょっとそれはやる気にならないな、というかたちでミスマッ ます、これを活用して都市部でキャリアコンサルタントが求人 チが起きているんです。現状は多くの働きたい人を今あるス を中心に行って、今でも事実上はやっているんですけれども、 ポットワークにつないでいるところです。ただやっぱり全国に マッチングアソシエイトと呼ばれる職を設けて、求職を中心に 1,300 もあると、先進モデル的なシルバー人材センターがあり 地方の求職情報をあっせんするポストですね、こういった人た ます。 ちを育成していく必要があります。 子でいう そこはきちんとキャリアコンサルタントを置いて、それまでど ういう仕事をしていて、そこでどういうスキルを持っているの これによって都市部から地方へ労働移転する事、そしてもう か、そして企業はどういうスキルを持った人材を求めているの 1 つが今日のクラウドの話なんですけれども、チームマッチン か、きちんとスキルマッチングをしているんです。 グです。これは今日も廣瀬先生と浅川さんにお越しいただいて いますけれども、リクルートも少し連携させていただいて、東 私が今、全国の政令指定 20 都市に調査をかけていて、全国 大と IBM の共同研究とか把握させていただいたりとか、それか のシルバー人材センター協会さんにもご協力をいただいて全国 ら今日はあとでランサーズの山口さんが来ています。ランサー の数字も教えていただいていますが、今までまったくそういっ ズというクラウドを使ってフリーのランサーに仕事を提供して た視点から調査は行われてこなかったみたいなんです。どう いる会社があるんですけれども、そこともいろいろと知恵を出 いった調査をしているかというと市民一人当たりの雇用を創り してやっているんです。 出すのにどれぐらいのコストをかけているのかという事なんで すね。それを今、政令市を調査していまして、20 市中 10 市か そこでは、モザイク就労といって、ある一人の人材が何かの ら回答がきています。 制約があって、何かがスキル的に欠けているあるいは時間的に 働けない制約がある、こういう人たちを例えばチームでマッチ 市民一人当たりの雇用創出コストは国からの補助金、市から ングする事によって一人の人材として仕事を提供しよう。例え の補助金、公共事業を請け負っている場合の随意契約で落とし ば A さん B さん C さんという人がいて時間のモザイク就労とい 14 う事で A さんは月曜日火曜日、B さんは水曜日木曜日、C さん たんですね、これがまず県域で仕事を紹介するようになってか は金曜日土曜日、それで例えばスキルでいうと、ランサーズさ ら、数はまだ少ないですけれども、当たり前といえば当たり前 んとこれから実証実験に入ろうとしているところは、私がフジ なんですが広域で仕事を融通し合う事によって 2 件から 48 件 テレビでディレクターをしているときに、今もやっていますけ までマッチングの成約率が 24 倍に上がっています。 れども、ニュース JAPAN という番組があります、この報道特 例えば滋賀県の連合に入っている甲賀市のシルバー人材セン 集で取り上げた脳性麻痺の天才画家、当時 13 歳の浅井力也君、 ターさんは仕事の内容や就業場所とかどんな内容なのかという 今はもう 30 歳になったんですけれども、彼は口もきけないし 事を会員がオンライン上で見られるようにしています。これは 歩けないし車椅子です。筆もちゃんとなんとかもって抽象画な まだ公開していませんけれども、もう 1 つ行った松山市のシル んですけれども、全国とか世界とかで個展を開いている画家で バー人材センターさんでは年度内には企業情報、例えば求人票 す。天才的な画家なので、例えば彼の絵は一枚 100 万円 200 万円、 は愛媛県で一番大きい製薬会社なんですけれども、月給 20 万 ものによっては 1,000 万円ぐらいする可能性があるんですけれ 円から 25 万円という事で、フルタイムの仕事を募集しています。 どもばんばん売れるものではないですね。その彼にもうちょっ これは求職者情報ですけれども、この人は希望勤務時間帯とか と日常的に仕事をしてもらえないかという事で、浅井力也君が 希望勤務地とか今まで経験した仕事内容ですね、これを会員の A さんとして絵を描いてもらいます、B さんは彼の絵をデジタ 企業と求職者がそれぞれオンライン上で見られる状態をこれか ルデータとして読み込んで、C さんがその絵を、先ほど写真が らトライしようとしています。 ありましたけれども、雑誌の表紙だったりカレンダーとかそう いった企業へあっせんする、こういったスキルマッチング。例 あともう 1 つは改めてシルバー人材センターを調査をして えば浅井力也君は今ハワイに住んでいます、B さんはデジタル 思ったんですけれど、先進的なシルバー人材センターは個人と 化を北海道でやります、C さんは東京で営業をもらう事で、こ 企業だけじゃなくて既にチームマッチングをして法人の仕事に の時間とスキルと空間のモザイク就労ができないかという実証 応えている事例です。松山市の保育園ですけれど、スキルマッ 実験に入ろうとしています。 チング事例という事で時間として曜日のマッチングはそうなん ですけど、例えばチームの会員ごとの仕事の配分ですが、W さ んは介護福祉士、D さんは看護師さんです。やっぱり介護士さ んとか看護師さんのほうがやっぱりおむつの交換とかしている わけです。そういう経験を持っている人たちのほうが同じ保育 をするのでも乳幼児保育まさにおむつを替える仕事ですね、そ うではない人を普通保育にしています。 それから滋賀県さんの企業はフルタイムの仕事で人を募集し ているんですね、そこに対してまさに A さん B さん C さん D さんの 4 人を組み合わせる事で一週間丸々カバーする、こういっ たチームマッチングを既にやっています。 ですからランサーズさんとトライアルする事が、今は障害者 の取り組みからスタートしますけれども、何か制約的な働き方 をしなければいけないというシニアをここに置き換えたとき、 シニアの仕事を作ろうとすると、どうしてもシニアの人が働 現状シルバー人材センターのデータベースを使って広域的な くと若者の仕事を奪うのではないかというところもあるんです マッチングが始まっています。今まで現場ではやっているアナ けれども、このチームマッチングがうまくいくと例えば若い人 ログではやっているんですけれど、これをクラウドに置き換え にも仕事を創り出しシニアにも仕事を創り出す、という補完関 てデジタル化する事で、起爆剤的にどんどんマッチングの成約 係がうまく成立する可能性があります。 数が増えたら日本を救うのではないかと思っています。取りあ えず私のプレゼンテーションは以上です。よろしくお願いいた 力也君の場合は障害者の話なんですけれども、ちょうど先週 します。ありがとうございます。 に厚生労働省さんの紹介で先進的な取り組みという事で、いく つかのシルバー人材センターを視察調査させていただきまし た。その1つが滋賀のシルバー人材センター連合会というとこ ろがありまして、現在 13 市 6 町会員数 11,958 人という事で、 ここは 2 年前からデータベースを活用して、これは全国ではな いんですけれども、全県ベースで広域的に仕事を融通し合おう ようになったんです。過去のシルバー人材センターは、今でも そうなんですけれども、地域限定でしか仕事を紹介してなかっ 企画セッション・シニア就労新時代 15 お話をうかがっていてすごくダイバーシティに共通する点が あるなと感じたんですね。実は私は女性としていろいろな女性 講演後対談 の活用とかいった事をいろいろサポートしているんです。それ ともう 1 つ障害者の就労というところも、いろいろ新しい障 コメンテーター 廣瀬 通孝 Michitaka Hirose 東京大学 教授 プロジェクトマネージャー/ 研究リーダー 害者の働き方、企業の成長に資する障害者雇用の在り方という のを考えているんですけれども。そうなったときすごく重要な のは、女性や障害者が社会に貢献していく事を、まずしっかり と認識してもらって、そして自分に何ができるか、自分にあっ た働き方、仕事を見つけていく。まずモチベーションを持って もらい、そしてその機会を作っていくという事を、女性に関 しては企業の中で IBM の中で取り組んでいますし、障害者に 関しては国内の 24 社の企業の方と Accessibility Consortium of Enterprises という組織を作って活動を始めているところです。 このダイバーシティというのは、女性は女性だし、障害者は障 害者であるというのは明らかなんですけれども、実際に高齢者 で難しいなと思ったのは、みんな認識してないですよね。多分、 浅川 智恵子 Chieko Asakawa 今ここにいらっしゃる 40 代の方々は、自分たちが実はすごく これからの日本を危機に陥れる世代であるという事を認識して ないし、問題といっても多分、みんな何が問題なのだろうと思っ ていると思うんですね。ただ、いま長島さんがおっしゃったい ろいろなデータがもし true なのであれば、これは大きな問題な 日本アイ・ビー・エム株式会社 フェロー ので対象者の方に準備をしていただかなければいけないのでは ないかとすごく感じています。まさにリモートで分散型に働く というのは、これから絶対に起きる。そういうときに IT があま り得意ではないとかそういった場合は非常に遅れるわけです。 そうすると今のシニア世代に提供できるような仕事、限られた 仕事しかできないという事にもなってしまいますし、機会も減 るという事です。やはり次世代高齢者予備グループの方々に何 らかの講習会とか、例えば企業の中でそういう講習会にきっち 廣瀬: どうもありがとうございました。それではプロジェ クトの側からここに 2 人座っておるので、なぜか一番僕がわ きに座ったので司会的な役割を果たさなければいけないとい う感じなのですけれども。どうも長島さん、ありがとうござ いました。長島さんの話をうかがっていて連想したのはネッ トの力で。震災のときに東北がやられた とき、全国から若 者が結構手伝ってまだ大丈夫なところからいろいろな品物を 送ったりとか、得意な人たちがネットで協働したことがあり ますね。あれも考えようによってはクラウド的な考え方なの かなと思いました。今すぐにでも可能な部分が非常に力にな るかと思いました。次はまず、取っかかりとして浅川さん、 何かコメント、質問をよろしくお願いします。 浅川: 長島さん、どうもありがとうございました。シニア クラウドでスキルマッチング等、新たな仕組みを作っていき たいと思っています。ほんとうに重要な課題だという事を再 確認いたしました。私自身、次世代高齢者問題という事につ いて今日初めて詳しくお話をうかがって、非常にずっと考え させられました。 16 り出るとポイントが付くとか、そういう施策を考えられるので はないかと思いました。秋山先生も 50 歳を超えたら第二第三 の人生を考えなさいとよくおっしゃっているんですけど、特に 次世代高齢者、予備高齢者グループの方には第二第三の人生を 考える社内におけるダイバーシティではないけれどチームを作 るとか、そういう事は考えられるのでしょうか。長島さん。 長島: 浅川さんがおっしゃるように、このマッチングはダイ バーシティと関連する話だと思うんです。キャリア自立 の研 修で、民間企業で、私が少なくとも知る限りでは、いわゆる去 年ぐらいですか、クローズアップされたのは追い出し部屋です ね、ローパフォーマーに対してのキャリア自立という事では研 修も含めて、全部の企業が積極的にやっているわけではないん ですけれども、やっぱりメーカーさんとか非常に厳しかったん で、追い出し部屋みたいなかたちでキャリア自立を促すという 事で、要はミドルとかハイパフォーマンスのキャリア自立研修 はなかなか進んでこなかったというところです。 ただ今は企業でも先ほどのカゴメさんのシニアの多様な働き 方がありましたけれども、キャリア自立についてポジティブに 捕らえて、もっとミドルとかハイパフォーマーでも外に飛び出 していく事が価値なんだと気付いている企業ですね。普通は、 ないかと思います。地味な話だと思うんですけれども、実は非 仕事のできる人に、いや、外に飛び出てもいいんだぜとやって 常に大事なポイントなのかなと思っています。 いたら優秀な人が出たら困るので、みんなやらないです。カゴ メさんとかリクルートもそうなんですけれど、会社を辞めても 廣瀬: 今の浅川さんの質問と関連する事をちょっと。東大の 労働市場で活躍する事が、自社ブランドの価値になるんだと気 恥をさらすと再来年ぐらいから東大は授業のシステムがちょっ 付いている企業と気付いてない企業があるんですね、そのあた と変わって、今までセメスター制だったものを 4 ターム制にす りの差もあるのではないかと思っています。 るという事で、就職は一体どうなるんだろうと学生がえらい心 配しているんです。そのときに東大は正確にいうと 4T プラス S 浅川: あと先ほどのサバティカル休暇はすごくいいなと思っ 制というものを取る事に、おそらく工学部がしていて、S とい たんですけれど、日本の社会でこういう事は可能でしょうか、 うのは長いサマーバケーションという意味で、そこで長いお休 ほんとうにきちんと勉強すればこれはすごくいいですよね。 みを取る事によって外に出て行けるような力強い人材を作ると いうような、一応きれい事としてすごくいいプランを作ったん 長島: そうですね。ほんとうに北欧は法律で定められて、先 ですけど、やや批判的な声もあるのは、サマータイムは日本で ほどもいいましたようにスウェーデンは 2005 年に国民休暇法 ちょっと行われて、すぐやめてしまったからです。 をやめて、今は企業が自立的にやっているという感じ。フィ サマータイムというのは基本的に時間を前倒しにして日が明 ンランドのほうは国で法律で義務付けられているんですけれど るいうちに会社を出て、もっと楽しく人生を送ろうみたいな話 も。やっぱり向こうは税制もちょっと違うし、大学院まで無料 をしたんだけれども、サマータイムといういいシステムができ だという事で学び直しが何回もできるという環境の違いもある たとしても、日本人はそこに残業を入れたりして結局働き続け んですが、それでもやっぱり自分に置き換えたときもそうだ る。その辺をみている僕も、浅川さんと同じような心配を持つ と思うんですけれども、いま企業に勤めて 40 歳過ぎていきな ようなところがあります。 りうまくいくかどうかわからないものについて、例えばベン 実際に東大でも S のところに先生が授業を入れてしまうんで チャーあるいは転職もそうですけれど躊躇しますね。ですから す。これは 5T ではないのと話になってしまいます。ある意味 お試しをする期間という意味でのサバティカルですね。 では美徳ですね、パッと空いたところに何か詰めないと気持ち それは例えば 20 代の時に大学院へ行くために休職させる企 が悪いみたいなところがあります。 業はあったと思うんです。いっときバブルのあとぐらいでしょ 今おっしゃるように外に出て行くといったとき、ある種の効率 うか、大学へ二年間ぐらいいかせて MBA を取ったら会社を辞 性を無視しなければいけないみたいな、ある種の別の価値観が必 めてしまったという民間企業のケースもあったので、自己都合 要になるような気がするんですけれども、その辺でうまく変わっ 休職制度の道が閉ざされている状態ではあるのだけれど、先ほ ていくものなのかどうなのか。我々のプロジェクトでも、そうい どの次世代シニアのキャリア自立を考えると、企業はその自己 う意識改革がかなり必要になるのかなと思っています。就労問題 都合休職制度についてもっと道を開いていく必要はあるのでは をずっと長い事やって来られた専門家としていかがですか。 企画セッション・シニア就労新時代 17 長島: 去年、僕は北欧の担当だったので一年間、北欧と日本 浅川: 今、ちょっと冗談のような話なんですけれども、その とを行ったり来たりしていました。やっぱり時間の価値、使い 毎日の自分の生活をデータ化して入力していくと、あるとき 1 方、マネジメントの仕方が全然違うなと思います。年間総労働 年 5 年 10 年経っていくと、あなたの 65 歳以上の人生はこうな 時間も確か日本が 1,750 時間ぐらい、そして北欧が 1,500 時間、 多少は差がありますけれどもものすごく開いているわけではな いんです。労働時間自体はそんなに代わらないんですけれど、 朝がまず早いですね。出勤が 6 時から 9 時の選択制で 6 時から 働いている人は 1 時とか 2 時にもう帰っていいんです。 幸福度が高いので、なぜ北欧のほうが幸福度が高いのだろう と調査してきたんですけれども。100% の答えはないんですが、 やっぱり休みのマネジメントですね。日本人だと最近は完全週 休 2 日制になって、土・日をうまくマネジメントして遊ぶ人は いるんですけれども、平日の夜となるとなかなか日本人は遊べ ないところがあります。北欧の人たちは朝早いですけれども、 平日の夜も遊んだりとか読書したりいろいろな有効な使い方が 非常にうまいですね。 週の労働時間はそんなにかわらないんですけれども、多分、 年間 250 時間の差のところは夏のバカンス 5 週間の部分ですね。 向こうは冬が厳しいので夏を満喫するんだという季候の環境の 違いはあると思うけれど、与えられた環境の中で時間を最大限 有効に使おうとしています。それを人生の時間軸に置き換えた とき、彼らがキャリア自立をして学び直しをして、いかに適職 に自分たちが就けるのかという事に対しての時間の使い方が貪 欲だというところは、非常に学びというか気付かされるところ がたくさんありました。 りますみたいに見せる。結構データを見せると危機感がわくか もしれないですね。just an idea で今ふと思ったんですけど、こ のままあなたはそんな生活ばかりしていると、70 歳になるとこ んなふうになっていますよみたいな。どうでしょう、先生。 廣瀬: これはまた浅川さんとの間で悪い冗談の言い合いが始 まるんですけれども、実はアニメで『未来日記』というのがあ るんです。日記というのは過去の出来事を書いていきますね、 それが未来が知らないうちに書かれているという魔法の日記帳 があるんです。今その研究を実はやっています。もしもあれで したらリクルートさんとの共同研究にいいと思うんですけれど。 それは学生にとっては非常に深刻な問題で、例えば卒業論文の 提出日に何が起こっているだろうかという事は、今の卒論の書 き具合とか研究の進み具合を見てみると結構、予測できたりす るんですね。おまえは大体 1 日何枚ぐらいずつ書けるんだから みたいなものとか、もう 1 つマクロな仕事でいえば今までの状 況からみていてもあんまり件数を入れても厳しいとか当選確実 みたいな感じの、そんなタイプのものをいくつか。 そこで重要なのは当たるかどうかという事ではなくて、先ほ ど長島さんがおっしゃったようにモチベーションなんですね。 そういうものでうまい具合にフィードバックしてあげると、頑 張らなければいけないとか、絶対 100% 無理といわれるとどう なるかわかりませんけれども、行動が変わりますね。そうする とだいぶ状況が変わってくるというようなことは、非常に有効 廣瀬: そういう意味では、だらっと時間を過ごしてしまうと 時間を無駄にしているところがあると思います。今お話をうか がっていて、コンピュータのもう 1 つの役割として、そうい うものを可視化させるところも、もしかしたらあるのかもしれ ません。細切れになってしまうと、それはモザイクではない ですけれども、結構な量の時間があるんだけれど、そういった ものをもうちょっとまとまった時間として認識させるところを ちょっとうまくバーチャルにできないかなという感じがしまし た。 18 だと思っていて、いま数人の学生がやっています。 長島: うちの研究所も、本来は未来予測が得意分野としてい るところなので、ぜひ連携をお願いしたいと思います。 廣瀬: あともう 1 つ僕はお話をうかがっていて、非常に興味 深いしどうお考えかなと思って質問を申し上げたいのは、高齢 者のジョブマッチングというのはある種、非常に難しいところ がありますね。先ほど小林さんがおっしゃったように、わりと 高級な人材に対しては人格的なものも必要だし、何ができるか という事以上に、この人がいるとうまくいくからみたいな感じ もあります。 しかしその一方で、 先 ほ ど 長 島 さ ん が お っ し ゃ っ た よ う に、次世代シニアは基本的に今のシニアイメージというより は、我々のプロジェクトの課題になっていますけれども、凡庸 な人々が就労していく事も考えないといけないんです。何がで きるかという事を可視化していくのが、これから非常に重要に なっていくかなという感じもします。 技術的にはむしろ逆に易しいほうに入るのかもしれないんで すけれども、だけど今の日本の状況だと何ができるかという事 も実はご本人もあまりよくわかってないという問題もありま す。 それから企業の側も一体誰が欲しいのかよくわかってないと ころがあって、その辺を可視化するという事、コンピュータ化 するときには、それができているとすごく楽になりますし、た いそうなプログラムをとらなくても、それこそ 20 年ぐらい前 のコンピュータでもそういった事ができるというところもある と思うんです。そういうかたちでの動きがあったらば紹介いた かったとか。いろいろ話を聞きながら、実は御社が欲しい人は こういう人ではないですかと、説得して変えていくというキャ リアコンサルタントの技術ですね。 ある程度のところまでコンピュータですそ野を絞っていく事 はできるけれども、最後のマッチングとか説得という人為的な 作業は、多分これからも残っていくんではないかなと思います。 多分 100% コンピュータお見合いで結婚しないのと同じように だきたいなと思います。 就職も、そういうコンピュータでできるところと人為的な部分 長島: 今の先生のお話しを聞いて、やっぱり今のシニアと次 はないですけれどシルバー人材センターではかなりアナログで 世代シニアで明らかに違うのは、多分メディアリテラシーが全 然違う、というのは間違いないと思います。例えば団塊の世代 の人であれば、インターネットができないでも仕事で何とか部 下にやらせて逃げきれたと思うんですが、我々は絶対にネット ができないと仕事にならないので。今は LINE とかやらないで 困っているところが、僕はあったりするんですけれども、LINE はやってなくても Facebook をやったり Twitter をやったり逃げ きれない。仕事だけでなくてプライベートでも逃げきれない世 代なので、そこはほんとうに安心はあるのかなと思うんです。 もう 1 つはコンピュータ以前の問題として、スキルマッチング をするときに、本人自身は何ができるかわからない、あるいは 企業もどんな人が欲しいのかがわからないんです。本当に就職 は恋愛とかお見合いとか結婚に例えられるんですけれど、初め は双方ともバーが高いんですよね、例えば結婚でも三高で収入 と、その辺の、どこまで絞っていけるか、先ほど説明した話で やっているところもあるので、ああいうのがクラウドを使って どこまで進化するのか、というのは非常に楽しみです。 廣瀬: 今日はほんとうに魅力的なお話しをどうもありがとう ございました。最後のお話しのところでちょっと僕が思ったの は、機械設計の中で CAD というものがあるんですね。CAD で すけれども、最初は CD だった、コンピュータデザインだっ たんです。それが最後まで aided の A が残るんです。おっ しゃったように最後の部分だけは、人間的な部分というのはコ ンピュータが入れない部分があると思うんです。コンピュータ が入れる部分も一方ではたくさんある、最終的に入れない部分 はどこなのかという事を我々も探していこうと思います。コン ピュータのほうは頑張りますので、ぜひご支援よろしくお願い いたします。ほんとうに今日はありがとうございました。 はこれぐらい学歴はこれぐらい身長はこれぐらい。マッチング でもそうで、企業が始めこういう人を求めているけれど、と言 うときはやっぱりバーが高いわけです。ちょうど昨日リクルー トキャリアが主催している、全国のキャリアコンサルタントを 400 人ぐらい集めて、その中からベスト 5 とナンバーワンを選 ぶ年間のアワードの審査員をやったんですけども、すごいキャ リアコンサルタントは何が違うかというと、それは話を聞きな がら「実は御社が欲しい人はこういう人じゃないですか?」と (言える) 。例えば企業でも初めは外国語できる日本人という制 約があったけれども、よくよく話を聞いてみたら日本語ができ る外国人でもよかったとか、初めは契約社員としていたけれど も話を聞いてみたら任期付きの正規職員・限定正社員でもよ 企画セッション・シニア就労新時代 19 トークセッション 牧 壮 Takeshi Maki 新老人の会・ 「シニア就労新時代」のセッションで提起された課 題を達成する ています。 の一つは IT が得意なシニアだと考え スマートシニアアソシエーション 代表 「IT でこんなに楽しい!広がる!セカンドライフ」 では、新老人の会・スマートシニアアソシエーショ ン代表の牧壮様、京都フラワーツーリズムプロデュー サーの高木治夫様、そして、NPO 自立化支援ネット ワーク理事長の生部圭助様の 3 名のシニア IT エバン ジェリストにご講演いただきました。 牧でございます。今日は朝早くから高齢者問題・技術開発、 先を見てこういうものがあるのではないかというアイデアもい ただきました。ただ今は次世代のシニアというお話をうかがい まして、そのあとの私は今後のシニアが今、情報社会をどう見 ているかという視点でお話しをさせていただきたいと思ってい ます。 私も後期高齢者ですけれども、シニアの世界にもイノベー ションが求められています。まさにわれわれシニア自身が、社 会からイノベーションを期待されている、そういう意味でシニ アの目線から見える今の情報社会は一体どうなっているでしょ うか。 シニア社会の潮流に私はどっぷりひたっているわけでござい ますけれども、大きな問題を抱えています。1 つは高齢化社会、 今は超高齢化社会と言われており、ますます今後進んでいくで 20 しょう。一方情報社会はどんどん高度化しています。われわれ たくわかりません。それから何を買ったらいいかわからない。 の年代から見ると一体情報というのは、どういう歴史をたどっ 店に行きます量販店に行きます。説明を受けます、ますます困 てきたかと言いますと、まず一番最初に情報を意識したのはテ ります。一緒に勉強する仲間がいないんです。教えてくれる人 レビですね、今から 60 年前、それまではラジオでした。ラジ は誰かいるのかな、いないんです。じゃあといって家族や子ど オは相手が見えないんです。報道が正しいかどうか情報が正し もに聞く、最悪です。相手にされません。昨日教えたじゃない、 いかどうかわからなかったのです。戦争中誤った情報が流され もう忘れたの。ぼけたんだからやめなさい、非常に多いですね。 ました。そしてテレビが出てきたとき、私は中学生でしたけれ ここにも 40 代次世代シニアの方がおられると思いますけれど ども、ものすごく感動しました。現場が見られたんです、正し も、自分のお父さんお母さんと比べてみてください、そういう い情報が見られたのです。 ご経験はないでしょうか、われわれはしょっちゅうございます。 ですからわれわれの年代はものすごくテレビにこだわる、家 そしてこういう言葉、何かやりたい、情報技術を活用して人生 でほとんどテレビを見ているシニアは非常に多いです。そのあ を変えたい、でも何かあったらどうしようかというのが、われ とに出てきたのがインターネットです。テレビは一方通行で われの率直な悩みです。 したがインターネットは双方向性がありました。これまたす ばらしい感動でした、しかしインターネットを使おうと思っ そこで今日ご紹介させていただくのは、われわれが今やって たら何か道具が必要です。では道具はどうしたかといったら おります活動の一端です。 Windows95 が家庭の中にパソコンが入ってきた年だとすれば、 「新老人の会」というのは、聖路加の理事長をやられた日野 今年で 20 年たちました。ところがパソコンが出てきてもわれ 原重明先生、今 103 歳の方が 100 歳の時に Facebook をやらな われはキーボートに慣れませんでした、われわれの年代でパソ いかと提案されました。 コンを初めて使ったのは 50 歳過ぎです。まさに五十の手習い だったわけです。うまく使えたわけがないのです。 ところがここへ来ましていわゆる SNS、Facebook が出て 7 年、 iPad が出て 4 年でございます。ここにきて情報に対する考え方 あるいは使い勝手が急に変わってきました。さあそこでこの高 齢社会と情報社会の 2 つの潮流をどう結ぶか、これがシニア問 題の大きな課題ではないかと思います。 あるデータによりますと、シニアのネット利用率この5年間 で相当進んだように思えます。特に 65 歳から 69 歳の半分以上 の方が使っておられる、80 歳以上では 25% と出ておりますが、 ガラケー主体かもしれません。今までの高齢者いわゆるシニア の情報技術というのは、シニアが情報技術から何か守られる、 要するにシニアが受け身である的な開発と、そういう目的の議 論がなされてきましたが、ないのはシニア自身がネットあるい その提案の骨子は、どんなに年を取って高齢化社会が出てき は情報技術を他者との交流媒体として位置付けていくという ても、世代を超えた地域を越えた新しいきずなを作っていこう、 事についての研究は極めて少なかったのではないかと思われま 何かシニアも新しい事を始めたらいいんじゃないか、新しい生 す。われわれシニアが、何か情報技術をやろうとしたとき、い きがいを作ろう、そしてシニアの能力を社会に還元しよう、ま くつかの壁があります。一番大きな壁は固定的な先入観、まず さに今までわれわれがここで議論してきた事です。 は「もう年だから」が非常に多いですね。「今さらこんなこと」、 そういう事によって予防医学ができて健康で健やかで長生きに 特に男性に多いです。「最新の情報機器なんてとても無理」、こ なる。こういう社会を作るのに、今までの社会にないものがで れも先入観です。最新の情報機器ほどシニアに優しいものはあ きないのか、と相談を受けて、どうも SNS ができそうだという りません。それから出だしのつまずきが非常に多いんです。せっ 事で始まったわけです。 かく入っても、道半ばで挫折。更にインターネットというのは そして 2000 年に日野原先生が提唱した「新老人の会」は、 非常に怖がられている、家族の脅かしが多いんです。お父さん 老人の定義を変えました。シニアというのは 75 歳以上、その 今更何するの、おばあちゃんそんなことやっていると諭される。 下は 60 歳から 75 歳までジュニア、皆さんジュニアなんです、 笑われる方が多いですけれども現実に多いんです。そしてシニ 60 歳以下はサポーター、こういう新しい定義をされました。 アを見ていると 20-60-20 の法則が当てはまります。 シニアの社会を変えられるのではないかと先生と話をして趣旨 トップの 20% のシニアは自分でドンドンやります、残りの はわかりました、しかしこういう会で SNS をやろうよとなった 20% は何をいってもやりません。問題はこの 60% がどちらへ とき、よく考えてみたら全国 47 都市で約 1 万 2,000 人、平均 転ぶか、やっぱりシニアにも問題があります。われわれシニア 年齢 71 歳の会員の組織は、どういう SNS にしたらいいのか、 は何を悩んでいるか、何かをやろうとして情報分野の話を聞こ あるいは SNS を使い切れるのか、なにせデジタルデバイドシニ うとすると用語がまったく理解できない。特に 3 文字用語がまっ アの集まりですから大変な事です、悩みました。そしていろい トークセッション・高齢化社会と情報社会の融合 21 ろ調べた結果 Facebook はどうだろうか。やっぱりシニアです から、一番先に私が気にしたのはシニアが安心安全に使えるも の、それからそれぞれのレベルに見合った使い方ができるかと いう事で Facebook を選びました。そしてそれを使っていく上 でタブレットという組み合わせはどうか、ただしシニアの世界 ですから、放っておいて自発的にできるわけはないという事で、 スマートシニア・アソシエーションというサポーティング組織 を作ったわけです。 平 均 年 齢 71 歳 が こ の 活 動 を 始 め て、 今 は 約 400 名 が Facebook で 交 流 し て い ま す。 年 寄 り が こ う い う ふ う に Facebook を使うことをザッカーバーグが予想したかどうか わかりませんけれどもスタートしたわけです。そしてその Facebook 上で何をやられているかというと、日野原重明先 生が毎朝おはようございますという事から「今日の一言」な ど、 シ ニ ア の 生 き 方 を 投 稿 し ま す。 こ れ に 対 し て シ ニ ア の Facebook を、果たして現実に見てくれるのだろうかという事 が大きな心配がございました。 日 野 原 先 生 の Facebook を 誰 が 見 て い る か と い う と、 Facebook 全体では女男別ですと男性の比率が高いのですが、 どうもこのページは女性のほうが見ています、しかもピークが 45 歳から 54 歳、まさに先ほどの次世代シニアの方が見ている んですね。これをどう解釈するか。 やはり次世代シニアの方がぼちぼち自分の将来が気になるの ではないか、それだけじゃなくてうんと若い人にもやはり見て いる人がいるんだという事がわかりました。それから実は日本 だけじゃない、こういうネットにアップロードしていく意見を 出していく発言していくという事は、もちろん日本が一番です がアメリカ、台湾、オーストラリア、言語もいろいろな人から コメントが入ってきます、今まで想像できなかった世界でした。 こういう事が始まりますと会の中では何をしたかというと、勉 強会です。100 歳が始めていますからそれ以外の人は、私は年 だと言えなくなりました。 100 歳の日野原先生が Facebook を始められたと言うことで、 新老人の会で iPad と Facebook の勉強会がスタートしました。 この 3 人の方は 90 歳代の女性です、ナインティーシスターズ、 毎回勉強会に参加されます。そして会員が Facebook を勉強し て iPad を勉強して、その使い方が楽しくなってきたらどんどん アップロードされます。この方は 93 歳の女性です、山に登っ てデジカメで撮ったものを iPad から、その場で発信してきます。 皆さんから沢山いいね!が付きます。この方は富士山のふもと の御殿場より勉強会のために東京まで通ってきた方です。それ が今は毎日富士山をアップロードしてくれる。88 歳のササキさ 22 んは毎朝散歩された記事をアップロードされています。それか ら地域を越えた交流が始まりました。 「新老人の会」は全国 47 の支部を持っていますから月報でこ そ報告がありましたけれど、それぞれの支部で何が起きている かというリアルタイムのレポートは今までありませんでした。 また iPad でこんな絵を描いたと聞くと、絵の描き方の勉強会が 始まります。あるいは海外旅行へ行った女性は、旅行先から画 像をアップロードしてきます、海外へ行ったらインターネット の使い方はどうするんだと、私に聞いて行かれました。 さて驚きはこれだけではありません、実は Facebook をやり ましょうよといったとき、われわれは認知症になるのを防ごう と思ったのです、ところがある日、私は認知症ですという方が 入ってこられた、これにはびっくりいたしました。この方は 60 歳、認知症と診断され、お先が真っ暗になりました。会社を辞 めました。しかし認知症になったからといって何もできないわ けではありません、確かにできない事はいっぱいありますが、 できる事も残っています。「そのできる事をやりたいんです」、 ということでこの方は毎日のようにアップロードしてきます。 認知症の方が自ら考えた思いをネット上に出すという事は、健 常者と思っている人もびっくり、あまりわれわれと変わらない のです。この方はできない事を IT 技術を利用してカバーされ ています。ですから情報技術をうまく使っていくとハンディ キャップの方は、健常人と同じ生活が期待されるわけです。 さてシニアライフで ICT というのはどういうところが有効か。 事につながります。ですからインターネットを情報発信のツー われわれ一般人は体力が低下します。そのうちウェアラブルな ルとしてシニアが使っていきたい、そしてシニアに優しい ICT 端末ができたら体力測定もできるかもしれません。問題はここ は、とにかく使って楽しくなければ駄目です。日常生活に密着 です、孤立孤独への道、シニアになるとどうしてもこの道へ行 したアプリがまだまだ足りません、それから仲間を作るのは大 きます、友達が減ります、外出の機会が減ります、人と話をす 事ですね。仲間がいるという事は挫折がなくなります。そして る事が少なくなります、家族と離れます。これはもう ICT の独 家族、友人とも一緒になって楽しめる何か。 壇場ではないでしょうか。それから認知症、物忘れが多くなり 私のところでシニアにアンケートを配りました。シニアとし ます。年を取って減るものばかりではないです、増えるものも て ICT に対応していけると思われる人は 2 割、ほかの方は不安 あるんです、探し物をする時間です、しょっちゅう探し物をし あるいは誰かが助けてくれるならできそうだと思っておられま ています。これもカバーしてくれます。 す。要はインターネットは危ないとか危険だとかいうのではな く、リアルの世界に密着したインターネットの活用法あるいは 自分の実力に応じた活用法をやっていけば決して危ない事はあ りません。 そういうことでシニアに今求められているのは自立・自助・ 共助ではないかと思います。いろいろなシニアに対して言葉が あります、私は今現在、後期高齢者ですけれどもこの文字が大 嫌いです。今私は好機幸齢者としてシニアの時代を楽しんでい ければ、こんな素晴らしい長寿社会はないのではないかと思い ます。 もう 1 つはどんなに年を取っても活動を強化したいという欲 求があるんです。勉強したい趣味を広げたい知識欲があります、 これにはやはりすごくインターネットの活用がいいです。最近 はインターネットで大学の授業が受けられる JMOOC がありま す。世界中の一流大学の講座が無料で聴ける、こんな素晴らし い時代が来たんです。問題はシニアならではどんな感動がある のかということです。 感動がなければシニアは始まりません。押し付けではシニア はスタートしません。自らやりたいというモチベーションが出 る、それには何か感動がなくてはいけません。そしてわれわれ 実は先々週、私はこういう本を出しました。これは今お話し はこれをやってきまして 2 年半、いろいろな事例を知る事がで したような、シニアが感動を得るような情報技術の使い方を紹 きました。昔の現役のころ取引先、部下の人と Facebook 上で、 介しています。それから先ほど認知症になったと申し上げた方 「おおっ、 おまえ元気か?何しとる最近は?」と言い合いました、 は、ついに本を出されました。「確かにできない事がいろいろ ものすごい感動です。 増えたけれども、それを情報技術がサポートしてくれて、まさ たびたび入院する患者さんに iPad を持って入ってもらいま に健常人以上にイキイキとしたライフを送っている」と、この す。暗い病室であったのが友達との会話が始まりました。毎晩 方は書かれています。こういう事でわれわれドップリとシニア それを見ていた隣のまたその隣の患者さんが、あんた何をやっ に漬かっている人間も、なんとか情報技術を使ってこれを広め ているのと、大きな社交場になりました。それから海外に住ん ていければと思っています。ただし世代間のサポートは不可欠 でいる孫とスカイプで長話し、これがタダです。というように です、ぜひご協力ご援助いただければと思います。どうもあり 孤独な生活から脱却して、どんなに核家族化が進んで親子が離 がとうございました。 れても、絆ができました。 ある女性に、iPad を持って施設へ入ってもらいました。今晩 はこんなおかずを食べたよ、こんなアクティビティーをやった よと写真を撮る。それを遠く離れた息子の家に送ったら、息子 家族が喜んだ。という事で、シニアが一番困ってくるのは孤独 な生活です。今までですと孤独な生活を見守る IT はいろいろ あったんですけれども、情報発信をすれば自動的に見守られる トークセッション・高齢化社会と情報社会の融合 23 トークセッション 高木 治夫 Haruo Takagi 京都フラワーツーリズム プロデューサー こんにちは。京都から来ました高木です、どうぞよろしくお ください。「ご当地なび」で検索していただきますとこのアプ 願いします。前を見ていただきたいのですが、今、京都ではこ リが出てきます。アプリを開いていただきますと、毎日更新さ んな感じで花が咲いています、紅葉がこんな状態です。ちょう れて、今の最新の花情報がお手元に届きます。今は最盛期なの ど今日は紅葉のまっ盛り、紅葉のじゅうたんがたくさん膨らん で、今日ですと、例えば 20 枚 30 枚の写真がアップされています。 できているというすばらしい季節になっています。 この花情報は、平成 20 年頃からスタートしまして、現在で この情報の日付を見ていただきたいんですけれども、おとと 約 1 万件の花情報が発信されています。継続的に続いてきてい いの 11 月 30 日など、最新の日付が出てきています。ここがす ます。参加されているのは、どんな方かというと第一に、タク ごく大切なところ、今の京都の花の最新情報が見られます。 シーの運転手。結構、高齢の方が多いですけれども、京都の文 化あるいは京都の歴史に詳しいタクシーのドライバーの方から 積極的に写真を投稿していただいています。さらには、タクシー だけでなく他の高齢者の方も情報を投稿されています。この情 報が京阪神のホテルの客室、iPhone アプリ、Android アプリ、 あるいはサイネージなどいろいろなかたちで出されています。 このアプリの花情報は、現在位置からその花のポイントまでナ ビゲーションしてくれます。安心してどこへでも行けます。そ の花を見たい、撮影ポイントへ行きたいと思ったらすぐ行く事 ができます。 なぜこのようなサービスを始めたかというと、これが京都の 月別の観光客の推移です。大体年間 5,000 万人の観光客が来ら れます。ピークは春と秋になります。今は京都のホテルは週末 になるとほとんど部屋が空いてないという状態になっていま これを見て京都へ行きたいなと思っていただいた人は手を挙 す。それだけ多くの方が来られます。 げていただけますか。 ーありがとうございます。 これこそがこの情報を出している一番のポイントです。 この情報を出している人は誰なのか、あるいはどれぐらい続 いてきたのかというところが大変重要なポイントになります。 今の京都の花情報は見ていただいた通りです。このアプリは iPhone やアンドロイドをお持ちの方は、ぜひダウンロードして 24 なぜ来られるか、花を見に来られます。花が観光にとって強 いキラーコンテンツになっています。 こういう事を実際に検証して、これは役に立つという事がわ かってきました。今日、咲いている花の事を知りたい、今から 行くところの花を知りたい、ガイドブックには書いていません。 今から行きたい、今から半日あったらここへ行けばいい、そう いう情報を出そうという事で続けてきました。それが 2007 年 秋ぐらいからスタートして今日現在まで続いてきました。 その「花なび」がいろいろと進化してきて、 「ご当地なび」、 「奈 良バスなび」 、 「徳島大学モバイル」など、あるいは各地域です と「嵐山なび」 、 「宇治なび」、「みささぎナビ」、「宇多津劇場」 へと展開してきました。こんなかたちで情報が出されています。 それぞれの「なび」に対してウェブサイト、それぞれの発信さ れる方に対して発信サイトを用意してみんなで情報を出して行 くという仕掛けになっています。集積して最新の投稿順から情 報が見られるというかたちになっています。 こういうかたちで拡がってきたものは、実は京都だけではな く、例えば、羽曳野市にも拡がりました。みささぎという、い わゆる古墳がたくさんある地域ですが、その周辺のナビをやろ うと集まって古墳の情報を出されています。こんなかたちで学 生たちも参加して、そして企業の方も参加しています。これは 香川県宇多津町でおひなさまの祭りがありまして、そこの情報 を出しています。学生が情報を作る、高齢者がその情報の場所 をきちんと説明するというかたちで、できることをお互いに役 割分担しています。観光情報として、宇多津の町の魅力を紹介 していこうと取り組まれ、こんなかたちで iPad を使って説明し て、プレスに掲載されています。 タクシーの運転手の方々が、なぜ継続しているかというと、 やりがいを感じておられるからです。やってみて面倒くさいな と思われるかと思ったんですけれども、案に反して、これはい い、やりがいがあると。ハンドルしか握った事のない人がカメ ラを持っている。写真がいろいろな人に見てもらえる。あるい はホテルのロビーに出ているという事で、大変やりがいを感じ ていただいて、今日現在まで続いてきています。 これは中井タクシーさんです。こんなかたちで写真を撮られ ています。道案内の途中、観光タクシーですので観光案内をさ れていますので、その道中の途中で写真を撮られて発信されて います。 この方は京都銀行の支店長を退職されて、現在 1,000 件以上 の情報を出されています。大変積極的に京都の案内を、京都の 魅力は俺しかわからないものがあるという事で、どんどん出さ れて、その結果ふるさとの応援大使にもなられました。 今まで取り組んできた宇多津や京都などで作成してきたデー タをオープンデータにしました。ツールを開発して、CSV で吐 き出したデータを変換して5段階の五つ星のオープンデータと して発信しています。このようなかたちでオープンデータのサ イトに情報として出しています。従来、ローカルなかたちで情 報発信をしてきたものをオープンデータ化しました。結果的に は IBM スマーター・シティー賞をいただきました。 大切な事は自治体との協創というところが大変重要と思いま す。市民だけでやるのではなく、自治体あるいは企業と協創し ながらより利用価値の高い情報を発信していく。それが役に立 つ、要するにニーズに合わせていくというかたちです。シーズ から出てきた情報を市民が参加する事によってニーズの高い、 より付加価値の高い情報に変えていく、それを観光情報の場合、 よりわかりやすく実現してきました。 今までやってきた事は何かといいますと、やりがいの舞台、 やりがいのプラットホームを作ってきました。 ここのオープン化した観光データには、必ず位置情報を持たせ ています。説明文だけではなく位置情報を持たせた情報を組み 込む事によって、外から来られたお客さまをナビゲーション、 コーディネーション、おもてなしをするとき、位置情報は非常 に重要で役に立ちます。 補足しておきますと、位置情報は、写真を撮ったときのデジ タルカメラの位置情報ではありません。デジタルカメラは GPS を持っていますが非常に誤差が大きいので、正確な位置情報を トークセッション・高齢者×オープンデータ×位置情報=地域創生! 25 地図からとってデータを作っています。 これからグローバルな展開へ拡げていくために、オープン データの取り組みを 1 年ほどやってきました。高齢者の方々に、 新たな技術、新たなグローバルな環境の中でスキルアップをし ていただきたいという思いもあり、オープンデータソンを京都 で実践してきました。 例えば、ウィキペディアの場合、これが英語の発信件数です けれども、日本語の発信件数は、このあたりになるので非常に 発信力が弱い。海外から来られるお客さんを招こうと思ったと き、どれだけたくさん英語で発信出来るかという事が重要にな ります。一方、グーグルの地図情報は、紙に印刷すると著作権 問題が出てきて、印刷して使う事は出来ません。そこで、オー プンストリートマップを使って、オープンな地図をローカルに 作ろうとしています。 これらは一体何のためにやっているのでしょうか。21 世紀最 大の成長産業とは何か。ここがポイントです。 これから整備しないといけない事がたくさんあろうかと思っ ています。それでも現在の観光を GDP で見ると、インターネッ トや自動車の産業よりも大きな GDP です。 ここからが今日の一番の本題です。オープンデータを使って 知恵の誘致をしようという試みです。 観光です。 これこそ大きなこれからどんどん増えていくシニアの活躍し ていく舞台だと思っています。世界的に年率 5% 成長している 産業、これが観光産業です。観光という部分に関しましては日 本の成長はまだまだ低いです。いかにこの観光を広めていくか、 そこに大きな雇用を発生させる要因があります、現在 1,000 万 人の観光客が来られています。特に最近は、海外の方々の観光 客の顔を見る機会が増えてきています。それが今後オリンピッ クに向けて 2,000 万人という数字になっていきます。非常に多 くの方々が来られます。 こういうセミナーをすると半分ぐらいは外国人が来るという スタイルになっていくのが、これからの日本だと思っています。 空港を見たとき、実は地域の空港では、海外からの入国数が多 くなってきています。地域空港では、日本人が出国するよりも、 ここに北木島というローカルなエリアがあります。岡山県笠 海外から入国される人の方が多くなってきています、非常にグ 岡市にあります。7,000 人いた人口が現在 900 人弱です。ここ ローバルなかたちで動いています。 で来年の 1 月に都会からたくさんの人に来ていただいて、田舎 全世界の旅行客数ですけれども日本の少し前がここ、それか ら今はこのあたり、2020 年ごろにはこのあたりまでこようとし ているわけですけれども、それでもまだまだイギリスのロンド ンに比べて 3,000 万人、 まだまだ 2,000 万人ですからしれている。 26 で、インターネット、あるいは英語、あるいは知識、あるいはウィ キペディアを書く能力を持った人など、いろいろな人が集まっ て、新しい観光情報を作り整備していく、そんな事をしようと しています。 魅力は何かというと、採石した跡にできた湖、そこにいる人 たち、もう 1 つはその島から切り出された石が皆さんの近くに あるという事です。例えば京都では五条大橋にあります。 この素晴らしい景観は、島に住んでいる人たちにとっては景 観ではなくゴミ捨て場ぐらいしか思ってない、実際に、ほかの ところにいくと冷蔵庫が捨ててあります。石を切った跡は廃坑 になっていくので水がたまっていきます。もともと 120 ヶ所ぐ らいあった石切場が、今は 2 つしか残っていません。中国産の 石が、はるかに安い価格で手に入るようになったので、産業が 一気に廃れていった、というわかりやすい事例のところです。 今、その跡に水がたまって非常にすばらしい景観になっていま 島外の人から見ると素晴らしい価値になる、そこに大きな価値 の差があります。 これからの時代、シニアがどんどん活躍するシーンは非常に たくさんあります。都会で頑張っていてもなかなか自分がやっ たことで、社会貢献を感じにくいと思います。花とかニッチな 世界はまだいいんですけれども、そうでないところに関しては なかなか難しいと思います。 モチベーションを高めるために、一番重要な社会とのつなが り、社会への貢献では、どういう効果が地域にあったか、そこ がポイントになってくると思います。そのためにぜひとも田舎 す。 に行ってサポートをしましょう、という事になります。 ここで切り出された石が、こういうかたちで京都の五条大橋 マップなど、オープンにワールドワイドで使われている環境に オープンデータとしてウィキペディアやオープンストリート になります。 情報を作成しましょう。日本語で最初はスタートして、次のス テップでは英語で出していくという事をやっていきましょう。 さて、東京ではどこにあるでしょうか。 そうすることによって田舎の観光力を高めていく。多くの外国 皆さんが一番よく使われている場所にあります。 東京駅丸の内駅舎です。こういうところに使われています、 これは重要文化財です。建て替えられましたけれども、昔の石、 北木石を使って作っています。 というぐらいに石というのは文化を支える非常に重要なもの になっています。ここ東京からはちょっと遠いですけれども、 よろしければ北木島へ来てください。何をするかというと地図 を整備します。現在の北木島はこういう場所にあります。そし て今地図を見ると何もないところです。グーグルで見ると東京 は細かく出ていますが、こういう田舎は何もない。これをみん なで書いて地図を作ろう。東京で東京の地図を書いてもなんの 役にも立たないんですけれども、こういうところを書くと役に 立つ。それが大事なんです。都会で洗練された知恵やテクノロ ジーを田舎で生かしましょう、これこそが重要なこれからの地 方の創生になってくると思います。 人が日本へ来られます。そのときに田舎にどう人を巻き込んで いくかが重要な事になってくると思います。都会でやっていた 事を、こういうところでやると観光への効果が、自分がやった 事がこんなふうに人を巻き込んできたのか、という事が見えて くると思っています。 地方創生という言葉があります。従来は企業誘致というかた ちで田舎の創生をすすめてきたのですが、最近は I ターン U ター ンと、人を一生懸命集めています。それもいいのですがなかな か苦戦しているところもあると聞きます。そこで次の手として 知恵を誘致しよう、一時的に、知恵をこの田舎に活かしてくだ さい、そうすることによってはっきりした効果を感じてくださ い、ここの交流人口を拡大させましょう、そのための切り口が 位置情報を持ったオープンデータです。 位置情報を持ったオープンデータを作るという手法で田舎に 知恵を誘致する、という新たな方法で地域創生に取り組んでい ます。大切な事は社会にどれぐらい貢献できるか。単なる自己 満足に終わるのではなく、その結果が自分にとって非常にわか りやすいシーンで、あるいは新たな成果として、感じられるか たちでなんとか実現する。皆さんの研鑽された知恵が田舎では 大変大きく発揮されます。ぜひとも北木島へ来ていただいて 一緒に田舎を創生していきましょう。 以上です。ありがとうございました。 これは私がアップしたんですけれども、ウィキペディアに。 こんなかたちで湖をアップしています。これは名前がありま せん。レイク 01、02、03、04 とか。しいてつければナントカ 石材丁場跡とかになるんですけれども、そんな名前では面白く ないですね。探検して撮影してきましたこれらの写真は、グー グルの衛星地図を見ながら探しました。ここに住んでいる人に とっては、これは何の価値もないと思われていますが、これが トークセッション・高齢者×オープンデータ×位置情報=地域創生! 27 トークセッション 生部 圭助 Keisuke Shobu NPO自立化支援ネットワーク 理事長 生部でございます。自立化支援ネットワーク(略称 IDN)と 教え、教室にいらっしゃった方が写真にありますような笑顔で いう名前の NPO の代表でございます。 今日は、私どもの NPO お帰り願えればうれしい、そんな気持ちを持ってやっておりま のお話しをさせてもらいます。ただシニアネットというシニア す。 が活動している仲間が全国に 100 ぐらいありまして、今回は私 どもの話をさせてもらいますけれども、お話しする事の大半が 私どもの特殊解ではなく一般解になるのではないかな、という 事でお話しをさせていただきたいと思います。 私どもは 2000 年に設立した NPO でございます、現在活動し ている事は図に示す 5 本の爪で表現しております。今回は ICT に関係するところに絞ってお話しをさせていただきます。これ が ICT 関係で現在やっております主な事ですが、上にあります のが「シニア情報生活アドバイザー」です。これは当初パソコ ンが中心でしたが、ICT をシニアに教えることを目指す人たち を養成しております。 シニア情報生活アドバイザー 2001 年から 2013 年までに、IDN でシニアに教える資格認定 を受けた人たちは 357 人います。年齢構成としては 60 歳から 70 歳、70 歳から 80 歳の方々が 40% 前後、ほとんどが 60 歳か ら 80 歳の方です。私はもう 5 日ほどで 74 歳になりますが、ほ ぼ私と同じような年齢の人で構成されている団体です。 グラフで男女比を見ますと男性のほうがちょっと多いです。 線が 2 本ありますが、赤いほうが先ほど全国に 100 ぐらいといっ 今日いろいろなお話しがあったように、シニアのスキル、対 応力を上げていかないといけないというような趣旨でやってい た人たちのデータ、青いほうが私ども自立化支援ネットワーク (IDN)のメンバーですが、ほぼ似通っております。 るものでございます。左側は、シニア情報生活アドバイザーの これは教室で実際に行っている講座のスケジュールです。左 資格を取得した人たちがこのような教室でシニアの方に ICT を から月・火・水・金、木曜日はお休み、土曜日は先ほどのシニ 28 ア情報アドバイザーを養成する講座を行っています。時間は上 社会インフラを使う、こちらは便利で快適・自己実現に使う、 から午前中、午後 1、午後 2 という構成で、毎週行っている講 こちらが情報の受発信、いわゆるコミュニケーションに使う、 座の内容です。ひとえにシニアの方がスマートシニアになって 欲しいという思いで講座をやっております。 こういう整理をしました。真ん中に例えばパソコンを置きます とここで書いている内容が若干違ってきます、同じようにタブ レット・スマホに書き換えますといろいろ変わってきます。 こういう内容の事をシニアの方に教えるというと語弊があり ますけれども、伝達をしてできるだけスマートになっていただ きたいと思っております。実はそれぞれのイメージを紹介する スライドを作りましたが、本日は時間がありませんのでこの部 分の話はここまでにさせていただきたいと思っております。 スマートシニア ここで「スマートシニア」という事に触れてみたいと思います。 シニアが ICT を賢く使って安全に便利に楽しく生活するよう になって欲しいと私は思っています。最近スマートという言葉 がいろいろなところで使われておりますが、スマートシニアに ついてもいくつか考え方があります。昔アメリカで言われ始め たころは、ネットを十分に活用して情報収集し積極的な消費行 動を取る、要は「ICT を駆使した買いもの上手」というような 考え方でいわれた事がありました。村田さんは、超スマートシ ニアという事をおっしゃっていまして、健康寿命を伸ばすと、 それから動けなくなっても動いているときと同じような情報の 入手ができる、そんな事を言われております。これは先ほどの 牧さんからお話があった賢く洗練された IT に通じたシニア、こ ういう定義をされております。 こちらにお示しする図は、シニアがぜひスマートになって欲 しいという視点で、ICT を使ってどのような事ができるかを整 理したものです。こちらは安全、健康に活用するという事で、 シニアと ICT と仕事 それでシニアと ICT と仕事という事で、最後は高齢者クラウ ドにお話しをつなぎたいと思います。 これは内閣府でおやりになった、高齢者の方々が仕事をし たいという調査結果です。ここには平成 20 年と 25 年のデー タが示されています。図でご覧になれますようにご覧いただ けますように、70 歳まで仕事をしたいとおっしゃっている方 が 56.8%、75 歳ではもう 10% 増える、これが 5 年前と比べる と 51.9% が 56.8% に増えているという事で、私はこの五年間の 変化は非常に大事だと思っております。働きたいというシニア の方がどんどん増えてきていると思います。もう 1 つこちらの データは働けるうちはいつまでも働きたいという方が 3 割近く いらっしゃることを示しており、シニアの就労意欲は非常に高 いといえます。 もう 1 つは最近の調査データがないかなと探して見つけた ものです。これは 60 歳以上の方の調査ですが、働きたい方が 40.5%、下が 63、64 歳、上が 65 歳から 69 歳、働きたくないと いう方が半分ほどいらっしゃいます。ここで言いたい事は、あ とにつながるお話しですが、働きたいとおっしゃっている方は 収入を期待したいとおっしゃっているといます。これらは一般 的なデータの話ですが、これからは敢えて話を泥臭くして、私 たちの状況の話をさせていただきたいと思います。 これは先ほどと同じ絵ですが、まず「シニア情報生活アドバ トークセッション・スマートシニアとIC T と仕事 29 イザー」になりたいというお方については、受講料を 32,500 円 方々に対しては東京都の最低賃金と決められたものに相当する いただきます。それで 3 時間の講座を 8 回受けていただき、最 額をお支払いできています。講師の方には、それに対してもう 後に認定試験を行います。試験には、学科試験と実技試験とプ ちょっといい支払いができています。 レゼンテーションがあります。アドバイザー講座の受講を決心 昨年、こういう話がありました。人を派遣して欲しいという された方はかなり意欲的な方です。やはりシニアの方に 32,500 話です。火木金の仕事で、時間は 9 時から 4 時まで。6 月から 円は負担が大きいです。受講して合格された方が講師として、 8 月は試行期間で、最初の契約期間が過ぎても、次年度以降も アシスタントとして講座を行っています。 継続して欲しいという事でした。 この講座を行っている人に着目したいと思います。この方は 奥さんに対して、 「あした四ツ谷の教室に講座をやりにいくん だ、それでこういうふうに受講される方が喜んでおられて、非 常にうれしい」と、奥さんに言ったとします。そうしますと奥 さんのほうは、 「ところで?」という話になります。そのときに、 「これはボランティアでやるんだ」と答えたときの奥さんの反 応としては、あした出かけると言うと、まず奥さんは喜ぶとい うところはベースとしてあります。これをわれわれの世界で言 いますと、 「ボランティア型」といえるかと思います。 それで話を戻りまして、「あした言ってくるからね」と言っ た時に、 「四谷へ行くための交通費実費はもらえる、弁当代も 出る、帰りにみんなとコーヒーを飲む費用もなんとか、それに 時々は一緒にワインを飲んで帰るという事もできるほどの謝礼 はもらえるんだ」と言ったときの、奥さんの反応は全然違って くるみたいですね。これをわれわれは「有償ボランティア」と 依頼されたのは、ハンディーキャップの方の社会復帰の支援 表現をしております。ベースはボランティアですが、そこに若 をしている NPO 団体でした。パソコンを教えるのですが、特 干の報酬、収入がある、こういう事を言っているわけです。 にパワーポイントのプレゼンテーション能力と発表マナー向上 私は NPO の代表としまして、ボランティア型でやっていく の実践教育をやって欲しいという事でした。このお話を聞いた と絶対長続きしないので、有償ボランティアのかたちで運用で とき私は、私どもの仲間に案内しても手を挙げる人が全然いな きるようにしたいと常に思っております。ただ有償ボランティ いのではないかと思いました。 アにもかなり幅があります。まず交通費だけ差し上げる事から ところが案内をしましたら、一日の間に 13 通のメールが来て、 始まって、講師に対する謝礼をあげる、そんなことになります。 私がやりたいと声が挙がりました。「有償ボランティア」といっ 現在できている事は、うしろにいらっしゃるアシスタントの たこのスキームで満足してもらっているのかなと思っていると 30 きに、こういうお話しがあったのです。やっぱりわれわれの仲 間は有償ボランティアもいいけれども、仕事があったらやりた いという意欲を持っている人がいるという事を、私ははっきり 感じました。最近はこういうところにも踏み込んで視野を広げ る事を考えております。 高齢者クラウドへの期待 これは実際に面接をして、採用が決まった人が講座をやって いるところを見に行って撮ってきた写真です。このような経験 をしておりましたときに、高齢者クラウドの話を聞かせてもら いました。ぜひこの高齢者クラウドで、私たちに対して「こう いう仕事を求めていますよ」と的確に伝えていただけると、わ れわれとしては活動の幅、活動機会が広がると考えました。高 齢者クラウドでは、モザイク化という事でスキルと時間と空間 という、スキームになっておりますが、先ほどの例では、パソ コンを教えるというというスキルとしてのモザイク、週に 3 日 間という時間のモザイクがありました。空間モザイクは遠隔と いう事もありますけれども通勤の距離という事も考えられるか と思います。この NPO の代表の方に「近くの人がよろしいん ですか」とたずねたら、「通勤費はかかってもいいです、私が 面接をしていい人を雇いたい」と言われました。 これはわれわれが日常行動している中でのひとつの例です が、シニアで活動している人たちは、仕事に対してかなりの意 欲、希望があると知っていただきたいと思っています。今後は 高齢者クラウドを考えていただくときに、そこら辺の事もよく 加味して、ぜひいい情報をいただいて、われわれが持っている スキルをご提供できればいいなと考えております。以上です。 ありがとうございました。 トークセッション・スマートシニアとIC T と仕事 31 パネルディスカッション パネリスト 山口 豪志 Goushi Yamaguchi ランサーズ株式会社 フェロー 「超高齢社会を変える新世代企業」では、革新的な 就労ビジネスを展開している新世代企業の代表者た ちと、シニア層の就労環境を創造していく方策を議 論しました。 ランサーズ株式会社フェローの山口豪志様、株式 会社ココナラ代表取締役の南章行様、株式会社サー キュレーション代表取締役社長の久保田雅俊様の 3 名をお招きし、それぞれの企業における事業の概要 とシニア層の活躍事例をご紹介いただいたのち、パ ネルディスカッションを展開いたしました。 南 章行 Akiyuki Minami モデレータ 高木 啓伸 株式会社ココナラ 代表取締役 Hironobu Takagi 日本アイ・ビー・エム株式会社 シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー 久保田 雅俊 Masatoshi Kubota 株式会社サーキュレーション 代表取締役社長 32 高木: よろしくお願いします。今ご紹介いただきました IBM の高木です。今日は非常にパワフルな方々の後のセッションと いう事で非常にプレッシャーがかかっているのですが、パネル の方では、最近の若者は草食系で元気がないという話がありま したが、まったく草食系ではないメンバー、見ていただければ わかるように敢えて肉食系のメンバーを集めさせていただきま した。今日は新しい社会モデルを探さなければいけない、社会 参加の在り方を探さなければいけないという事で、その中で IT が大きな役割を果たすというディスカッションがあったと思う のですが、そういう社会モデルを思い付いたとしても、それを 実現する、社会実装するのはなかなか簡単な事ではないと思い ます。 ここにお集まりいただいた 3 社はそういう新しいビジョンを 持ってモデルを作って、さらに実装してビジネスとして成立さ せるというサイクルを実際に回していらっしゃる方々です。日 本の中でも先進的な事を行っている 70 年代 80 年代生まれの若 手の方に、今日はお集まりいただきました。進行なんですが、 まず始めにお三方から 15 分ずつプレゼンをいただいた後で、 ディスカッションに入りたいと思います。 それでは、まずランサーズの山口様からプレゼンをお願いし たいと思います。ランサーズは日本におけるクラウドソーシン グのパイオニアとして 2008 年に起業し、その後拡大を続けて おり、現在は政府からも注目される存在となっています。では、 若干、唐突ではありますが、早速プレゼンに入って頂こうと思 います。よろしくお願いします。 山口: 紹介にあずかりました、ランサーズ株式会社です。プ レゼンのお時間を 15 分間程頂き、「新しい働き方の創造」とい うテーマで、我々のサービスについてお話しさせていただきま す。ではまず、私の自己紹介をさせて頂きます。私は、ランサー ズ株式会社の山口豪志と申します。前職では、クックパッドと いう、料理レシピの投稿・検索サイトを運営している会社にお り、レシピを通じて人々の生活を豊かにするという事を行っ ていました。そのあと、2 社目にこのランサーズという会社へ 入社し、最初は引っ越し業務から、事業のアライアンスやビジ ネス部門を担当した後、広報部門を発足させ、その後、先月か らランサーズのフェローをさせて頂いております。実際に何を 行っているかというと、「時間と場所にとらわれない新しい働 き方」を作るというのが、我々の企業理念であり、その企業理 念のもと、先月はアメリカのサンフランシスコに約2週間ほど リサーチに伺い、また、以前はドバイに伺い、アラブ諸国を視 察に訪れました。 では、これよりランサーズについてご紹介させていただきます。 ランサーズ株式会社は、創業者である秋好が現在も代表取締 役を務めています。 彼自体がもともと学生時代にフリーランス の活動をしていまして、学生起業家でもあるんです。学生時代 に大阪市内から外れた場所に住んでいて、そのときにちょうど 森首相が、これからは医療と介護とイットというコメントを残 していて、要は IT なんですけれど、これからは IT だという事で、 IT は面白いんじゃないかという事で近所の家電メーカーに走っ パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 33 れる事 1 年後 2009 年に freelancer.com、このオーストラリアの 会社は、実は一昨年ぐらいから IT をしていまして、400 億円以 上の企業価値のある会社になっています。ランサーズが展開す るクラウドソーシング業界は、徐々にマーケットが盛り上がっ てきていて 、予測値ですが、2018 年に約 2,000 億円 のマーケッ トになるでしょうという話になっております。 その中で、我々は半分ぐらいのマーケットシェアを持ってい ます。今では、会員数は 40 万人を越えて 41 万人、ちょうどこ のグラフにあるように 2011 年、震災以降に急激に利用企業さ んが増えてきているという背景があります。様々なメディアさ んにもご紹介いただいており、例えば NHK さんのクローズアッ プ現代や、BS テレビの各社さんにもご紹介ただいております。 て当時の VAIO を買って、そこから 1 日 18 時間ぐらいネットサー フィンをしているような生活をしていました。 彼がインターネットを始めた 2000 年初頭は、様々な IT ベン チャーが生まれた時代でもあって、そういう影響を受けて彼は 起業しました。彼が初めて頂いた仕事というのが東京の企業の 方から、 「君のホームページはかっこいいから僕にホームペー ジを作ってくれよ」ということで、5 万円でホームページを作 るという経験をしました。それが原体験にあり、その後 Nifty 株式会社に入り、WEB のディレクターとしていろいろな企業に 発注をする立場になりました。その時、自分と同じようにやっ ていたフリーの人に仕事を頼もうと思うと、企業はいろいろと よしみがあって、 「では A さんに B さんを連れて来てくれ、B さんいないです」みたいになかなか相見積が取りづらいのです。 様々な問題があって、そこである夏の暑い日に、ふとそういう 個人と企業の仕事をつなげるプラットホームが作れたらいいん じゃないかということで、2008 年にランサーズというクラウド ソーシングのビジネスモデルを、日本で一番最初に実現したと いうのが背景にございます。現在は渋谷にオフィスを構え、今 後はクラウドソーシングの業界を含め、ますます成長していく と思います。 では、簡単にビジネスモデルのご紹介です。今までのビジネ スは基本的に法人対法人、法人さんの一部、例えば出版業界さ んは外部のライターさんを使っていらっしゃるとか、業界に よってはフリーの方を活用する業界はもともとあったと思うん ですけれど、クラウドソーシングというのはほんとうに全ての 業種、業界にさまざまな優秀な知恵とか技術とか時間を貸して いただいて、ビジネスを推進していくプラットホームです。 我々はこの間をつなぐサービスを展開し、個人の情報の認定 とか評価、スキルの見える化、あとは金融の決済取引サービ スという部分を提供させていただくことによって、企業さん 個人さんが安心して取引を行うことの出来るサービスプラット フォームを行っています。 我々は 2008 年から事業を開始していますが、このビジネ スモデル自体は実は、US には比較的早くありまして 1999 年 Elance、そして、2003 年に oDesk、という会社が立ち上がって おります。彼らは実は去年、合併をしているんですけれど、年 間数千億円規模の仕事の取引が彼らのプラットホームでされて いるという非常に大きなサービスです。そしてわれわれから遅 34 我々のサービス登録者の内訳ですが、お手元に薄い冊子がある と思うのですが、そちらにもデータが載っています。せっかく ですので宣伝をさせていただくと、手にとっていただいた本は、 実はクラウドファンティングでお金を 300 万円集め、100 名以 上の方のご支援をいただき、その本丸々一冊のデザイン、編集、 ライティング、取材、全てクラウドソーシングの中の人にやっ ていただいて本ができているものです 。この本の中では、20 名のフリーランスを取り上げさせていただいていますがその中 にはシニアの方や女性、または海外で活躍していらっしゃる方 など、本当に幅広く紹介させていただいておりますので、ぜひ ご覧いただければと思います。 その中から抜粋なのですが、ユーザーの内訳といたしまして は、フリーランスの方が約 50%、副業の方主婦の方、法人さ んというかたちです。シニアというところでいくと全体のボ リュームからすると数 % にはなってくるのですが、実は 20 代 30 代の方々よりも、サービスをよりヘビーに使っていただいて いる方というのは、この 50 代以上の方に多いです。なぜそう なるかというとやはり技術がある、スキルがあるという事で、 そういった方々に安定的にお仕事を頼みたいというクライアン トのニーズがあったりします。 これは本の中にそれぞれ出てくるんですけれども、特にシニ アというくくりから見ると、福島のライターの方です。この方 は実は東北の某有名な大学の教授をやっていらっしゃった方 で、やはり教授なのでリサーチというか、文献を引っ張ってき たりとか、調べたりする事が非常に特技というか強みがある方 生かす、そういったシーンが増えてくる事によって会社の中で で、企業さんのまさにコンサルティング業務の一部としてデー やっていた業務もうまくオンライン上の人と組んで業務が進め タのリサーチなどで活躍されています。彼に直接お話をうか られる、必ず会社に出社してやらないといけない業務、もちろ がう機会があったんですけれど、やっぱり引退したあと家にい ん新しい企画を考える、新しい何かを生み出すときはみんな集 るのはつまらない、実際に何か活動する事によって社会につな まって話し合うのが重要だと思いますが、実際にそれはタスク がっていたい、社会に自分の技術、スキルを還元したいという 分けされて、これはいつまでにこういう資料を作ってくれだっ 思いがあってやっていらっしゃる。1 つ面白い事を言っていら たりとか、このプロダクトのテスト版を作ってくれというよう したのが、定年がない、クラウドソーシングで働く限りにおい な、ある種定義された業務であれば外部とうまくリレーション て自分が働きたいときにいつでも働く事ができて、年は関係な をとって進めていく事ができると言っています。 く自分の技術を生かす、そういったフィールドがあるという事 で、非常に評価をいただきました。こういった方々もランサー ズを使っていただいています。 利用企業さんとしてはほんとうに幅広く、パナソニックさん 始め、大手の企業さんから 地方の自治体さんのゆるキャラと か、地元の IT ベンチャーさんからもよく使っていただいており ます。業務内容としてはデザイン、ネーミング、ライティング、 システム開発、WEB 制作等々のデジタル業務が非常に多くなっ ているんですけれども、例えばテープ起こしだったりとか文字 校みたいなものだったり、実際アナログでやっていたものがデ ジタルに置き換わって、その部分を実際にやっていただいてい るという事例もあります。パソコンを見てちらちらして大変な ところはあると思いますが、ある程度のパソコン操作ができれ ば、年齢、性別問わず、そして時間と場所も問わずできるとい フリーランサーということでこれはグローバルナビというと う業務がございます。業務の発注元と受注元はやっぱり圧倒的 ころでご紹介いただいた方でございまして、この方自体は外資 に東京の仕事が多いです、半数以上が東京都内の仕事です。一 系にもともとお勤めだった方で、年齢は 60 歳を超えていらっ 方それを実施する人は地方を中心に東京以外の方々が多くなっ しゃるんですけれど、彼は一番クラウドソーシングを使ってよ ています。54% の東京の仕事が東京以外の 70% 各地域の人に かったというのは、営業ですね。自分がどんなに技術があった 実施されています。 りどんなにスキルがあっても結局それを誰かが売り歩いてくだ さいとか誰かが PR してくれないといけない、ただクラウドソー シングはどんどん仕事が月に 2 万件 3 万件と集まってくる、そ の中で自分の持っているスキルを生かせる仕事を見つけていた だいて、私はこういう経験があってこの仕事ならできますとい うプレゼンテーションをしていただければ、家にいながら仕事 ができる、まさに営業のパートナー部分がこのクラウドソーシ ングのサービスによって補完されているというコメントをいた だいております。 シニア向けの案件ということで、いくつか事例を持っている のですが、例えば Oisix さんのレシピ提供をするので食材をレ ビューしてみてくださいとか、シニア向けの携帯ショップの ネーミングを考えてくださいですとか、シニアの健康について コメントをくださいとか、さまざまな業務がございます。また コンペという形式があってさまざまな方にトライをしていただ クラウドソーシングにおける高齢者の新しい働き方という事 けるプラットホームなんですけれども、スキルアップとか本業 でいくつか紹介させていただきます。背景としては東工大の教 ではできない仕事とか収入アップという目的に活用していただ 授の比嘉先生とか、先ほどの世界一番大きなクラウドソーシン いたりしています。ランサーズの一番重要なポイントとしては、 グサービスの oDesk を紹介させていただいたんですけれど、や 個人のスキルの見える化がポイントになっています。 はりクラウドソーシングによってオンライン、インターネット 今まで作ってきた作品とかクライアントに提出したクリエティ につながる事によってさまざまなところで、さまざまな技術を ブなものとかも表現できますし、マイページを活用していただ パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 35 く事によって、スキル、実績、過去のクライアントからの評価、 高木: ありがとうございました。時間もバッチリ計ったよう こういったものでどんどん仕事が集まってくる環境が作れま に。福利厚生は私は知らなかったので、非常に感銘を受けまし す。 た。スポーツクラブですか。 山口: スポーツクラブだけではなく、例えば子育てでいえば ピジョンさんとかでグッズが安く買えるよ、とか数万社以上の 福利厚生を使えますので。 高木: クラウドソーシングのイメージが変わってきたという ことですね。 山口: 徐々に一般化する必要があると思っているんですけれ ど、そのときにこうだからこうと、単純なものではないですね。 こういうサポートもあるしこういうサポートもあると、いろい ろな事がケアされて、始めて不安や心配が払しょくされるので。 高木: ありがとうございました。また後ほどうかがいたいと 今までは個人のお話をしていたのですが、さすがに始めてオ 思います。次にココナラの南さん。ココナラは 2012 年に設立 ンラインで仕事をするとなったとき、さすがに 1 人ではなかな されました。個人の各種相談や占いなどのサービスとして、個 か心配だ、なかなか 1 人でできる業務範囲が狭まって難しいと 人のスキルに注目をした。非常にユニークなサービスで注目さ ころがあると思いますので、マイチームという形で、オンライ れています。よろしくお願いいたします。 ン上のメンバーとチームを組んで、私はライティングをやりま す、私はデザインをやりますというような形でメンバーを募っ 南: 皆さん、こんにちは。株式会社ココナラ代表の南と申し て一緒に仕事をとるというような、ランサーズマイチームとい ます。本日はよろしくお願いいたします。簡単に自己紹介だけ うサービスを始めさせていただいたり、47 都道府県イベントと させていただくと、もともと大学を出たあと銀行員を 5 年ぐら いう事で、フリーランスの方々の交流会を開催させていただい いやっておりまして、割とパリッとしたサラリーマンをやって たりしていて、各県のコミュニティづくりを積極的にしており おりました。そのあと企業買収ファンド、当時は会社を 5 件ぐ ます。やはり 1 人で家で働いて、家にずっといると寂しくなっ らい担当していましたけれど、大きいところだと社員が 2,400 たりするので、そういったリアルの出会いの場というのも提供 人、売り上げが 1,000 億円あるような会社を買収して、そこの させていただいております。 役員に名を連ねて経営を改善して、再上場したり売却したり、 企業さんの福利厚生もオンラインで提供していきますので、 そんな仕事を 7 年半ぐらいしておりましたので、キャリアの中 フリーランストータルサポートというところでワークスタイル 心は金融だったり企業再生みたいな事を中心にやってきており の利便性向上・充実と書かせていただいているんですが、近所 ます。 のスーパーが安くなるとか、スポーツクラブが割引で使えると か、そういったものを提供させていただいております。以上と 3 年ほど前に思い立って起業して、今ココナラでサービスを なります。 提供しています。今日は私がやっているココナラというサイト 36 ココナラとは というのが特徴かなと思っております。 どんなものが売られているかというと、人気のものは例えば 写真を送って似顔絵にしたりとか、これは Facebook でたまた ま知り合いが、ココナラで作った似顔絵をプレゼントしたり、 お子さんの似顔絵をマグカップにしてご両親にプレゼントな んていう話しもありました。あとは占いとか姓名判断とかそう いったものが人気だったり、それから旅行が好きな方は、あな たにあった旅行プランを作りますよというサービスを販売して いたり、それからコーディネートです、あなたの服装とかワー ドローブを送ってくれれば、あなたに合うコーディネートを送 ります、それからプレゼント用にワインを選びますよとか、こ んなスキルもサービスになってしまうというところです。 の説明をさせていただきたいと思います。ココナラはものを売 らないフリーマーケットという言い方をしております。では何 を売っているかというと、皆さんの得意な事、知識、スキル、 経験に基づいたサービスを販売できるというようなサイトに なっております。一対一で非公開でやりとりできまして、どな たでも自分のサービスを売ったり、どなたでも購入したりする 事ができます。特徴としてすべてのサービスが一律 500 円で販 売しています。皆さんが見ていただいているこの動画もココナ ラで 500 円で作ったものです。こういったアイデアを作って、 自分のスキルを試してみたいとか、誰かの役に立ったらうれし いなみたいな方がいつでも販売できるというようなカジュアル なプラットホーム、これがココナラというサイトです。サイト は全 21 ジャンルで約 24,000 種類の異なるサービスを売ってお ります。すべて実際に会わずに、あくまでオンラインで完結す るサービスのみとなっております。画面としてはこんな形のサ イトになっておりまして、先ほど動画を作ったサービスもこん な線画を動画にしてみませんか、あなたの商品やサービスの説 明をどうぞ、こういったサービスをたまたま見つけて、こんな 形でココナラの紹介動画を作りたいんだけどとお願いしたとこ ろ、一日でできあがってきたという事で、すごい驚いた記憶が それからもう少しビジネスよりだと、キャッチコピーを作り ますよ、それから調べ物をしますよとか 24,000 種類あるので、 かなり多岐に渡るものが売られておりまして、例えば僕はココ ナラのキャッチコピーを作ってくださいと言って出てきたプレ ゼンテーション資料なんです。これは電話で 7 人にヒアリング したそうで、かなり詳細なものを、例えば購入者の目線でいっ たらこういうキャッチがいいのではないか、それから出品者 の目線でいったらこういったペルソナだからこういったキャッ チがいいのではないかという、このレベルの仕事が 500 円で やってきたという事で、これもココナラ史上かなり驚いたお仕 事の1つです。いろいろなシーンがあります。例えば結婚式の 余興が思いつかないんだけどみたいな困った事もあれば、引き 籠もった息子さんのお気持ちがわからないだどうしようみたい な、そういったときもココナラで相談したらいいのではないか、 大体探せば何でもあります。もちろん漫画をココナラで作りま す、1コマ 500 円で作っていただいてこういうプレゼン資料を 彩る事もできちゃう。調べてわかる事はたくさんあるんですけ れども、調べてわからない事、背中を押して欲しいこととか、 そういった事をココナラで解決できたらいいなと思っておりま す。 あります。 基本的にオンライン限定ということで、今までテキストだけ なかなかオンラインでお仕事を発注するのかなと言うところ くいという部分も、一部あったかなと思うんですけれども、実 でいうと、先ほどご説明のあったランサーズさんと、すごい似 ているんじゃないかというところで、確かに似ているところは あるんですけれど、違いを先にご説明申し上げます。僕らは多 だったんですね、なのでパソコンが苦手な人はちょっとやりに は今年の 9 月から電話相談が出品できるようになりまして、こ マグカップにしてご両親に 分カジュアルでかつ、お仕事というよりかもう少しプライベー トな相談に近いというのが 1 つあります。値段帯が低いという ところもあるので、プロの人が提供するというか、ほんとうに 誰でも気軽にやれるというところ。ランサーズさんは仕事を発 注して応募する向きもあればこの人にお願いという向きもある んですけど、広く世の中一般クラウドソーシングといわれるも のは、基本的にこのお仕事を誰かやりませんかというのを投げ て、そこに応募するというパターンが主流なんですね。 僕らの場合は逆で、僕はこれをできますというのを先に提示 して、そこにお願いをして、あくまでも関係は一対一で、たく さんの人に募集をかけたりするような機能は今のところはない パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 37 ういった事の相談に乗りますというと、あらかじめ登録してお いた電話番号に購入した人と予約を取ったり打ち合わせたりし たら、お互い電話番号を知られる事ことはないんですね。ココ ナラ側から双方に掛けて匿名のまま電話で相談できる、そう いった機能を持たせております。 あまり売り上げとかそういったものは公開しないんですけれ ども、数字が入ってないのでいやらしいんですけど、ちょうど 去年に登壇させていただいて、多分 10 月ぐらいだったんですね、 当時偉そうな顔をして、ここで頑張っていますといっていまし たけれども、売り上げにすると横ばいちょっと頑張らなければ と思っていたころだったんですけれども、その後なんとか生き ていけるぐらいには売上が伸び始めて、引き続き頑張っていき たいなというところでございます。 をデザインする会社をやろうという事でやっております。 今日のシンポジウム用に少し会員数とか、高齢者の方々はど れぐらい活躍されているのかなというところをいくらか紹介し たいと思います。会員数ですと今は 12 万人ぐらいになってい ます、立ち上げて 2 年ちょっとです。ボチボチと増えてきてお りまして、もともとネットサービスという事で男性が多かった んですけども、今新しく入ってくる方は男性女性半々でじわじ わと 50 対 50 に近づいて行っています、昔は 8 対 2 だったのが 今は 6:4 までやってきましたという事で、結構女性でも主婦 の方とか使っていただいています。年代別にわけてみるとこん な形です。先ほどのランサーズに近いのではないかな、ネット を使っていらっしゃるからの比率に応じていると思うと、こん な感じかなと思うんです。昨年と比べてみたら、昨年も同じ資 料でお話したんですけれども、やっぱり 50 代 60 代の方が増え 僕らとしては一人一人の自分のストーリーを生きていく世の 中を作ると、こういったビジョンを掲げてやっております。い ろいろな方がいらっしゃるんですけれども、ちょっとこの方は テレビでも取り上げられた方なんですが、この方はココナラが きっかけで仕事依頼をもらえて、要は 500 円でお試しなんだけ れども、よかったので実際に仕事をさせてくださいというのが きっかけ作りになりましたとか、それからお金もうけがしたい わけじゃないんだけど、主婦の方がとにかく人に喜んでもらえ るとうれしいということで、自分のスキルを提供したりとか、 それから子供のころあきらめてしまった仕事をサラリーマンを やりながら、もう一回チャレンジしたいなという事で出してみ たら、それが思わぬヒットで、結果この方は独立してしまった んですけれども、今ではプロのイラストレーターに個人で仕事 が取れるようになりましたみたいな、こういったスキルを持っ た人たちと、それから何か自分で始めたいんだけれどもパート ナーが欲しいとか、誰かに手伝って欲しいというような人たち の出会いの場を作りに行くというのがココナラのコンセプトと いうことで、もちろんこの筆文字もココナラで作ってもらった ものです。 最近はいろいろなイベントでこういう筆文字でタイトルが出 ているものがあるんですけれども、実は結構ココナラで 500 円 とか 1,000 円でやっていた人が多いような裏側だったりします。 ベンチャーの方にも結構使っていただいています。こんな未来 38 てきています。最初はどうしてもネットに敏感な人が先に来る んですね、20 代 30 代がわっと伸びたんですけども、ココナラ の認知がじわじわ広まっていく中で 50 代 60 代の方にも、使っ ていただけるようになってきました。 カテゴリ別にどんな物が売れているかというと男性はちょっ とビジネスよりのものがやっぱり売れています。男性がココナ ラを使う場合は、ウェブマーケティングの相談をしたりとか、 画像とかイラストみたいなものも人気なんですけれども、ビジ ネスの相談とか IT プログラミングの相談なんていうものが、男 性が交流する場合は多いカテゴリです。一方女性の場合は占い とか心の悩み、恋愛、結婚ほとんどプライベートな相談です。 旦那さんの悩みとか子育ての悩みそれから女性の場合という事 でもないのかもしれませんけれども、年齢と共に結婚している 人、独身の人とかお子さんがいる人いない人と、立場が変わっ てくると、友達にも気軽に相談できない方が、年と共に増えて いかれるようです、そういった事もあって非公開でしがらみが なく聞ける場というのは、実はかなり重宝されていて、占いと ありますけれども、これは運勢を教えてくださいというんです けれども、内実はほとんどカウンセリングで自分がほんとうに こういう事で悩んでいるんだけれどもというような事がテキス ト文字のやりとりだったり、電話だったり、やられているのが 現状です。 ココナラを数字でみる 会員数:120,000人 10代: 3% 40代:22% 20代:28% 50代: 7% 30代:38% 60以上:2% いな、ものすごい方々がいらっしゃって、でもいざやるとなる とちょっとドキドキするんだよねというような事があったんで すけれども、一番印象的だったのは、その場で出品できてしま うので、出品された瞬間に世の中とつながるわけですね、いざ 注文が入ったら、ほんとうにその場で買われるかもしれない、 というやっぱり出品するとき、皆さんすごい興奮されていらっ しゃって、これは 1 つの自分のスキルの本質なのかなというの がすごく見ていて印象に残っております。 昨年より増加したのは40∼60以上 昨年より増加したのは40 60 歳以上の方でどんな活動をされている方がいらっしゃるか なというと出品だけは結構されているんですが、売れているも の売れてないものいろいろありまして、売れたもの、これはアッ トランダムにピックアップしてきたんですけれども、なんでも 売れてしまうので、こんなものも結構売れていて、メンタルサ ポートみたいなものもあれば、あなたにぴったりな座右の銘と か格言を提案します、こういったものも一回 500 円だったら買 う人もいるんですね。面白いもので、やっぱりこういうものが 欲しいなと思った人からすると、こういう提案はすごいうれし いようです。 それからビジネス経験が豊富な方が事業計画書作りのポイン トとか、契約書とかアドバイスしますよみたいな話から、翻訳 しますと広報のお手伝いをします、これは全部 60 歳以上の方 なんですけれども、あとはプライベートだと旅行のご相談をし ますとか、先ほどあった筆文字で書きますみたいなもの、それ と高齢者向けなのかもわからないんですけれども PC 操作をお 手伝いします、このようなものが売られていて、要はほんとう に何でもありというか、普段お金を取るようなスキルとか知識 じゃなくても、ちょっとした経験が売れるのがココナラの特徴 なのかなと思っています。 最後に今日なんとなく会場を見渡すとそのときにいらっ しゃった方もおいでになるのではないかと思っているんですけ れども、高齢者クラウドのワークショップを柏でやらせていた だきまして、そのときのご紹介をしてプレゼンを終わりにした いと思うんですけれども、大体十数名の年齢的には 60 代半ば から 70 歳後半ぐらいの方だったのではないかと記憶している んですけれども、柏方面の高齢の方、東大の研究チームの方に 集まっていただいてワークショップをやりました。 何をやったかというと、過去の自分の経験をふり返ってみて、 人に喜ばれた経験とかこんな仕事をしてきたとか、こういう事 をよく相談されるみたいな事を、まずちょっと書き出してみて、 それをもとにサービスをオンラインで提供できるかなと、実際 にその場でココナラに出品してしまおうというワークショップ をやりました、皆さん最初はちょっと売れるスキルなんかない 必ずしもスキルではなくて、自分が悩んだ事を先輩として教 えてあげたらいいんですよという視点でお話しさせていただい たら、こういった定年後は、定年する前は定年後はどう過ごし たらいいんだと不安だったんだよねという言葉だったので、で は定年を迎える方に、定年後の過ごし方をアドバイスして見た らどうですかとか、そんな事をしながらこんなサービスだった りとか、企業不祥事をなくすみたいなことをけっこう仕事でや られていた方が、そういった相談に乗りましょうとか、結構か ちっと官公庁に書類を出す仕事をされて来た方はど真ん中のそ ういったアドバイスをしますとか、それから中国で人事管理で 苦労されて工夫されてきたという方が、そういった事で悩ん でいる方にアドバイスをしますとか、それからもう少しプライ ベートだと親の介護が必要になったときどういった介護方法が できるか相談に乗ります、それから最近登山が好きなので高齢 になっても登山をやりたい人は話を聞きますよとか、知識スキ ルを売るとなると、結構ハードルが高い気がするんですけども、 仕事レベルじゃないといけないとか、でも多くの人は自分が 困っているとき同じような経験をした人に聞けるだけでも十分 というシチュエーションはすごいいっぱいあると思うんです。 そういったニッチは経験、知識スキルじゃなくて経験をつなげ ていきたいなというのが僕らココナラの思いという事で、今 やっています。はい、どうもありがとうございました。 よとおっしゃっていたんですけれども、話を聞いてみると、ほ んとうに日本を作ってきた超一流のサラリーマンだった方が多 かったんです、中東のどこどこにいたアカウントを取ってきた とか、どこどこ銀行のニューヨーク支店長だったんだよ、みた 高木: 素晴らしい。ありがとうございます。南さんもいろい ろ悩みを相談されているのでしょうか。 パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 39 南: 僕は最近は子育てというか、子どもの受験の悩みをココ ていない、母親は経理の「け」の字も分からない、そんな状況 ナラですごい相談して、ほんとうにわれながら自分のサービス でした。 は素晴らしいなと、3 週間ぐらい感動したんですけれども、な 私は 19 歳の時に自分で起業しています。父親の会社の清算 かなかこういう経験を売れる場というのはほかにあまりないで を済ませて、自分の会社を清算し、大手の人材会社に入社をさ すね。結構自分で言うのもなんですけれども、いいサービスだ せていただきました。人材紹介の業界では、シニアはびっくり なと思ってやっています。 するぐらいにターゲットではありません。人材紹介の派遣です ら 35 歳を超えるとなかなか転職できない、50 歳を超えるとエー 高木: 南さんがいつも Facebook で自画自賛されているのは ジェントは会うことすらしない。これは悪い意味ではなく、ビ 見慣れた光景ですね。今日は皆さん壇上から Facebook への投 ジネス的にそうなってしまうという事です。そんな状況下で、 稿ありという事になっているので、ぜひよろしくお願いします。 「シニアの経験と中小企業のリアルビジネスを結んでいく」と いう事業内容で、社内ベンチャーを立ち上げました。そして、 南: 早速会場の写真を、今ここに出ていますというのを先ほ シニアの方と 3,000 人ぐらいお会いさせていただく中で、彼ら どリアルタイムで上げてしまいました。ちょっとそそうを、悪 の労働環境をより広げられる可能性を感じ、サーキュレーショ いですね。 ンを設立しました。私が何者なのかを最初にご説明したので、 この新しい会社で何をやっているのかご説明させていただきま 高木: フォローするので大丈夫です。 す。 南: どうもありがとうございました。 ビジョンは壮大です。「世界中の経験、知見が循環する社会 を作る」という事です。実際、なかなか循環しづらいですね。 高木: 続いてサーキュレーションは、この中で一番新しい企 大企業では 60 歳 65 歳で定年退職となります。退職したシニア 業ですね、先ほどの技術紹介ででてきたのですが、今年創業し は働く場所がなかなかない。その一方で日本は 40 年間で急成 た会社で、高度人材を企業のニーズとマッチングするという手 長し、先進国の中でも飛び抜けて培われた経験、知見があるの 腕で注目されている企業です。よろしくお願いいたします。 にも関わらず、それを「シニア」と一括りにして世の中に排出 してしまっている。そのたった一部でも、世の中に循環するこ 久保田: 皆さん、こんばんは。株式会社サーキュレーション とができるのではないかという意志を込めて事業展開していま の久保田雅俊と申します。お 2 人のプレゼンで盛り上がったと す。今は設立して 1 年です。 ころ、いきなり暗い話で恐縮ですが、少し自己紹介をさせてい では今、何をやっているのかという事についてお話します。 ただきます。私は、父が 50 歳のときに生まれました。どんな 父親かというと、地方の中小企業の非常に怖い存在の父親でし シニアの経験知見にまずターゲットを絞っています。そしてそ た。その父親が、僕が 21 歳の時に倒れてしまって、父の会社 の中でもエグゼクティブシニア、つまりご自身が持っているス の清算に長男として携わったのが人生のターニングポイントで キルを活かして、法人企業に対し何かを解決したいというテー した。地方企業って、 非常に脆弱なんですね。IT システムは入っ マのはっきりしている方々、例えば大企業の取締役や、これま 40 営課題を摘出し、「案件化」します。「案件化」というのは、ど んな解決テーマなのか、その企業の誰をプロジェクトの責任者 におき、どの位の期間で、どのように進めるのかというところ を一つ一つ経営者と落とし込んでいきます。 そして、もう一方の個人側においては、シニアエグゼクティ ブ、要するにシニアのターゲットとなる方をカウンセリングす る専属チームを設けています。一般的な転職マーケットにおけ るカウンセリングと、かなり違います。とにかくその方の強み とか尖り、何ができるのかを洗い出し、明確にしていきます。 それぞれ 40 年間のキャリアがあるので、実は、最初にカウン セリングをしたとき一人の方で 4 時間もかかっていました。皆 さんすばらしい経験を有しているんですけれど、今の市場に出 たとき、その方がどのようにワークしていくのかというところ で海外進出をやっていた方々の知見は、中小企業に活用できる のではないかということで、この事業を設立しました。シニア の労働力と中小企業の経営課題のマッチングは引き続き進めて いきます。ですが今、企業が抱える大きな課題は人材採用なん です。これは生々しい話ですが、少子高齢化で特に新卒が採れ ない状況に加えて、プロフェッショナルの中途採用は非常に難 しい。だからこそ、顧問とノマドが活躍できるマーケットがあ ると考えています。 次に大きな枠でお話したいと思います。図における左の丸 3 つ と右の丸 3 つは、社会の成熟化の中で起きていることですが、 今日の高齢者クラウドは全て、この左側に当てはまる話だと思 います。少子高齢化、労働人口現象、働きたいシニアの増加。 どうにかしなければならない。ではシニア層の知見、経験の に特化してヒアリングします。つまり、その個人の強みを企業 の課題とマッチングさせるサービスを提供しています。 月に 1 回の稼働で 6 カ月のプロジェクト案件もあれば、週に 3 回、4 回と課題に合わせてフレキシブルに対応できます。実 際は、週に 1 回か 2 回で解決まで導くという案件が非常に多い です。期間としては通常、半年から 1 年のプロジェクトで進め ていきます。プロジェクトというのは一社に対して、一人の稼 働で進めるものもあれば、複数名で進めていくものもあります。 報酬額は、顧問のマーケットからすると比較的高いかと思いま すが、シニアが一日稼働すると大体 5 万円です。一部、かなり 高い方もいらっしゃいますが、それは非常に特殊なミッション を受けている方です。 活用をどうやっていくのか、われわれの事業は、ここにコミッ トしたいと思います。今の日本は終身雇用が崩壊して、例えば いい大学を出て、いい会社へ入っても、そのまま 40 年間その 会社でやっていくという人は少なくなっている。そして産業構 造も大きくシフトしてきていて、例えば製造業の優秀な人材が サービス業とか IT 産業などにシフトする。また、優秀層であれ ばあるほど海外へ出て行く、そんな中で個人に専門性が求めら れる社会が明確になってきました。 これは社会が、シニアの経験知見だけではなく、新しい働き 方をしているミドル層を求めているとわれわれは理解していま す。これによって、シニアやミドル層が 1 つの会社に属するの ではなく、新しいツールや新しい思考をもって、外部の経営支 援人材として企業に付加価値を与える事が必要な時代がきてい る。まさに、 「サーキュレーション」。循環する社会構造を作っ ていくということです。この市場は未開拓でして、これまでは エンジニアとかプログラマー、ないしはクリエーターに特化し たフリーランスのマーケットでした。外部の経営支援人材を活 用するノウハウを提供するサービスは未成熟ですので、弊社は ここにコミットしています。 ではここから、少子高齢化についてお話をさせていただきま す。具体的なビジネスモデルを簡単に説明します。法人側にお いては、顧客ポートフォリオの 7 割が中小企業、3 割は大企業 にニーズをいただいています。中小企業において、弊社のコン サルタントがお会いするのは、95% 経営者です。その企業の経 では、少し事業の背景をご説明したいと思います。まずわれ われが事業を始めた背景としては、少子高齢化によるシニアの 大幅な増加。シニアのご経験、知見は貴重な財産であるとわれ われは思っています。一方で、先生方のお話にもありました、 シニアの働く環境はこの国では、かなり未整備である。特に民 間企業でやっているところは非常に少ない。以前から課題視さ れてましたが、事業としてはスケールしていない状態です。 要するに、われわれは「40 年間培われた経験を社会に活用 しない手はない」ということをリアルのビジネスで展開したい と考えています。シニアエグゼクティブという定義の中で、今 パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 41 のステップを明示します。A という顧問の方であればどのよう に解決するのか、B という顧問だったらどこに強いのかという ように解決方法を明示して、解決までに必要な期間、稼働頻度 を経営者の方と擦り合わせながら進めています。一社一社、課 題点を見出して、ニーズを作り出していくことが最も重要だと 考えています。 そして先ほどのデータについてですが、絶対的に労働力が減 少するという内容と、あとはよくある正社員比率のマップに なっています。これは何をお伝えしたいかというと、グローバ ル社会、特に欧米で起きている事象でいうと、非正規雇用でも 非常に高年収の方がいるという事です。つまり、正社員でなけ メインでご登録いただいている方は 1,000 名ぐらいいらっしゃ います。大体 7 割ぐらいの方が、「とにかく社会に役立ちたい」 という思考を持っていらっしゃいます。興味深いのは、収入稼 ぎのため、小遣い稼ぎのためが 3 割ぐらいなんですね。こうい うアンケート等を行って、シニアの方々にとってちょうど良い れば駄目だということではないという事実です。弊社の登録顧 問で年間 1000 万円以上の報酬をお支払いしている方々もいま す。日本においては、プロフェッショナルとして外部人材を活 用するマーケットに、シニアの方々がはまりやすいのではない かと仮説を持っています。 報酬との整合性が取れていると思っています。 次に、これまでは上場企業の役員クラスの方だけが、その企 業の子会社や、顧問ないしは外部役員になるという市場だとす ると、われわれは、活躍できるシニアの裾を広げていきたい。 専門性の高いシニア、そしてやる気があり、自分のスキル、能 力を経営に役立てたいという方々と課題の多い中小企業とを M&A マッチングしていくというところにコミットしていきます。 これは実話なんですが、5 年ぐらい親しくお付き合いのある IPO 大手商社の役員の方、彼にとって私は孫にあたる位の年齢です。 もともとは社員 3,000 人ぐらいをご自身で見ていらっしゃって、 年収も 3,000 万円 4000 万円もらっていた。その方が退任された とき、人材紹介会社とかハローワーク、ないしはシルバー人材 センターにいったところ、45 歳以上の紹介案件はビル管理の仕 事だとか、ほとんどボランティアに近いものを紹介されるんで すね。ボランティアは、もちろん意義があることですので、否 定するつもりはありません。ただ、非常にすばらしい経験を有 した方が、別の選択肢を得るという意味で、弊社を使っていた だければと思っております。 そして法人側にニーズがあるのかというところを少しお話し したいと思います。当たり前ですが、少子高齢化に伴う労働力 の確保が重要課題です。少子化で新卒も採れない。今は大企業 もいろいろな施策に取り組んでいるものの、まさしく今直視す べきテーマです。われわれの営業資料の最後には、今後の人材 マーケットの変化に関するデータを付けてあって、新卒採用は さらに難しくなるという話から、外部人材の活用について啓蒙 しています。 そして企業の成長フェーズに合わせてシニアの専門性を 1 日 から活用できる、最もフレキシブルなサービスだとご説明しま す。一番のポイントは、その企業の案件を具体化することです。 その業界が抱える課題から、今、その企業において重要なテー マは、人事なのか、そして人事の中でも特に制度なのか、とお 客さまと擦り合わせながら案件を作っていきます。次に、解決 42 企業にとっての大きな魅力は、短期的に使える、そして課題 ポイント型だということです。創業期の課題と成熟期の課題は 大きく違い、それぞれのフェーズにおいて、正社員の方だけで は解決できない課題が発生します。この表は、業界毎のニーズ の高いテーマのランキングです。製造業は新規事業開発、生産 管理、トヨタ式導入など、いろいろな事例が生まれています。 地方企業からも高いニーズをいただいています。IT 業界でも新 規事業のニーズは高く、「オンラインサービスからオフライン サービスに進出したい」など様々です。例えばシリコンバレー でもガレージベンチャーといわれていた当時は、バックオフィ スの仕事はシニアの方がやっていたんですね。つまりアーリー・ シードベンチャーにも、シニアを使うチャンスがあるのではな いかと考えています。 金融は面白いです。例えばターンアラウンドマネージャーは シニアがすごく合っています。M&Aなど、様々な事例が生ま れてきています。どのテーマと、どの経験がマッチングするの かという事が重要で、われわれは日々、社内で IT とデータベー スを駆使して、事例をためてメソッド作りに取り組んでいます。 要だと考えています。展開しながらニーズを発見していくマー ケットでもあると認識しています。例えば、一部のエグゼクティ ブにだけ案件が集中するのではなく、多数のシニアの方々が活 躍できるよう、精度の高いマッチングの仕組みづくりを早期に 確立していきたい。これは難易度が高いことですが、特に注力 していきたい部分です。そして、ご自身の能力で活躍されてい くと、起業したいという方が増えてきて、まさにシニア起業サ ポートへの取り組みが進んできています。今は税理士さんと連 携して、一番効率的なシニア起業のサポート体制を考えていま す。 今日のコンセプトでもあると思うのですが、ウェブサービス 化については、来年サービスをリリースする予定です。実は東 現在の弊社の状況についてご紹介します。社員 20 名、1 年間で 一気に雇用しました。人材系のメンバー、戦略系のコンサルファ ンド出身、経営ファンド出身と、弊社が掲げるビジョンで集まっ たメンバーで構成されています。 最後になりますが、一部リアルでサービスを展開しているか らこその理屈をお話ししたいと思います。1 つ目は、稼働案件 の中で、最初は外部人材として入っていても、企業側が「やっ ぱりこの方は常務として欲しい」とか、 「経営部長として欲しい」 という形で、直接雇用に切りかえたいというお話が全体の 12% ぐらい起きているということです。 2 つ目に、複数稼働により年収 1000 万円以上のシニアが出て くる状況になっています。既に 4、5 名いらっしゃいます。 コンサルファーム、ファンドや金融機関において、マイクロ リサーチというニーズがあります。例えば、とてもニッチは産 業のニッチな経験をしている方から業界の情報を得たいんで す。でも、その方を長期間の顧問にする必要はないので、電話 やスカイプ等を活用して、一種のコンサルタントヒヤリングと して、専門性の高いシニアに活躍していただいています。弊社 自身も、現在 20 名のシニアの方々と一緒に事業を作ってきて おりまして、人事も総務もいろいろアドバイスをしていただき ながら、ある意味、弊社自身が社名の通り<サーキュレーショ ン>を体現しているかなと思っています。 今後の展望なんですけれども、サービスの多様化、多角化が重 大さん、IBM さんと共同研究として、クラウドの実証実験をやっ ています。スキルマッチングの暗黙知といわれる「所作」、 「挙動」 を含めた詳細のマッチングをするツールを作っていければと考 えています。 最後になりますが、「世界中の経験、知見が循環する社会の 創造」という壮大なテーマでやっております。まだ一期目、こ れから新しいマーケットを創るために頑張っていきたいと思っ ています。ありがとうございました。 高木: 熱い語りに時間を超過しても全然大丈夫です。問題あ りません。何名か会場の中でも深くうなずいていらっしゃった 方がいらっしゃって、やっとこういう企業が出てきたという思 いでご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。ここから 今のプレゼンを受けて質問させていただきたいのですが、まず 山口さんから、ランサーズがでてきたころもしくは直後は、ク ラウドソーシングってみんな何だかわからなかった、と思うん ですけれど、そこからどうやってランサーズがここまで広く認 知されるまで変わってきたのでしょうか。 山口: 何しろもともとクラウドソーシングというもの、オン ラインの技術マッチングというものは、先ほどアメリカの例を 出したんですけれども、ほんとうは結構古くからあるものなん ですね、インターネットの概念が生まれたぐらいから、ウェブ 上で仕事をマッチングする考え方とかサービス自体はもともと あったんです。ただそこに対してランサーズが新しく提供した 付加価値は、先ほどお見せしたスキルの見える化をすること、 実績を開示できますとか、クライアントからの評価が双方向で たまっていく、個人の方々の見える化を計りました。 免許証・パスポートのコピーのデジタルデータと登録情報と を擦り合わせをして、この人はここに住んでいるナントカさん ですよというデータをわれわれは蓄積していって、ちゃんとエ ビデンスを得ている。もう 1 つは決済です。やはり企業さんは お金を払ってくれるかわからないとか、フリーランスに仕事を 頼んだけれど、納期が遅れたり納品が来なかったこともあるの で、そういったことのないように決済部分でわれわれが双方の つなぎ部分をやらせていただきました。やはり一回使ってもら えると、こういうふうに使ったら面白いなと気付いていただけ るのですが、まずは心理的ハードルが非常に高いツールなので、 パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 43 南: そう来ましたか。最初になぜ 500 円にしたかというと、 例えばロゴを作りますみたいなものは相場があるんです。例え ば代理店だったらいくらで作るだろうみたいなイメージがある し、そんな目に見えやすいとおかしな事にならないんですけれ ど、例えば経験を売るとなったとき、では恋愛相談に乗ります とか、では自分が小悪魔的なアドバイスができる、男性経験が 豊富な女性です、というサービスをいくらで売ろうかと思って もわからないですね。ある人は自分の仕事が時給 3,000 円だか ら 3,000 円で売ろうかという人もいるし、一方で、こんなこと で人さまからお金を取ったこともないから、気持ちでは 100 円 でいいよと、決められればいいのですが大体決められないから 出品できない。そして買う側も相談に乗ってもらうまでその人 ほんとうにいろいろなメディアの方もそうですし、リアルイベ ントなども開かせていただいて、怪しいサイトではないですよ、 ではないけれどほんとうに一つひとつ課題解決をしていったの のクオリティーはわからないので、100 円と 3,000 円が並んで いても、100 円はおちょくっているように見えるし、3,000 円は ぼったくりに見える、ではいくらが適性かよくわからないとい が今につながっていると思います。 うなかで、値段をこちらで決めてあげる必要があると思いまし 高木: あとは震災後に伸びたという話があったと思うのです もう 100 均の感覚です、ここに来たらよさそうな人、100 均 た。 が、どういう理由からでしょうか。 だと要はこちらが 300 円こちらが 3,000 円だから、値段とク 山口: こちらにおられる方々、震災後に働きが少し変わった 100 円だと好きなものを買えますよね。そういう感じで 3,000 と体感されていると思うのですが、例えば計画停電でその時間 は働けませんとか、会社に行きたいけれど会社から出社しなく ていいから家で仕事をしてくれといわれたとか、大きく個人で も法人の会社の中でも、働く環境だったり働く時間や場所とい うものが、少し指向が変わったタイミングがそのころあったと 思います。 もう 1 つは場所を移らなければならなかった人たちがいま した、関東から九州に移り住むとか、でも例えば都内では、仕 事が地方に流れているとありましたけれども、都内だとクリエ イティブなデザインの仕事がたくさんあったりするんですけれ ど、ではそれも地方の田舎に帰ったらありません。そういう方 はウェブ上でそういう仕事ができるものはないかと探しにラン サーズに来たり、企業さんとしても社内のメンバーに頼めない から、どうしようかとネットで探して、そういうかたちで企業 さんも個人さんもちょっとずつ働き方とか発注先を変えてきた オリティーでどうしようかなと考えなければいけないですが、 円で恋愛経験豊富そうな人と 100 円でそこそこの人、どちらに 頼むか迷うので、もうワンプライスにすると、こちらの人がよ さそうと、決めやすくしないと経験を売るという世の中にない ものが立ち上がらないだろう。僕らがやり始めたとき、似たよ うなサービスが立ち上げた会社はいっぱいありましたが、人前 でいうのもなんですが、結構消えていきました。僕らだけ何と かやらせていただいているのは何かというと、ワンプライスに したかしなかったかというのは、僕は最大の違いだと思ってい ます。自由にしたところは出品が進まない、購入が進まないよ うな状況でした、ここの 500 円は安いでしょうというところに 対して、500 円でやるという勇気がまず立ち上がり、そして起 業しました。ただ一方で人気のある人が出てきます。先ほど見 せた通り 500 円でちょっと普通やらないだろうというクオリ ティーの仕事をする人がいます。その人は最初に役立ったらう れしいという感じだったんですけれど、やっていくうちに人気 のは大きく影響していると思います。 が集まってくると、さすがに 500 円ではやり続けられないと 高木: 日本人の中で働き方が変わってきたのに従ってラン 思って、認定ユーザーだけ 500 円以上のものを出品できると、 あるタイミングになるんですね。ぼくらもそういう時期かなと サーズのフィールドも変わってきた。 値下げをしていくのではなく優秀な人はどんどん値上げをして 山口: そうですね、今は 140 を越えるカテゴリがありますけ なりつつあります。一部、定価が 1,000 円とか 3,000 円 5000 円 れど、もともとはロゴのコンペサイトから始まっていまして、 2008 年はロゴのマッチングから始めて、デザインであれば見て わかるんです。このロゴは好きだな、このタイプはかっこいい なと見て決められる、そこから入っているので、徐々に合わせ て進化してきています。 高木: 次にココナラの南さん。ここにいる全員の質問だと思 うのですが、500 円は安くないですか? 44 いくプロセスでやっていて、実はすべてのものが 500 円でなく というものを、経験豊富な人だけ開放している、そんなやり方 で下から上へ上げていきたいという戦略です。 高木: 今、利用が広がってきて人気のある方は 500 円以上の 仕事がとおっしゃったのですが、それはこの 1 年間でググッと 伸びてきた、やはりそういう効果も。 南: 先ほどいやらしい感じのグラフを見せましたけれども、 件数もずっと伸びていますけれど、平均単価が伸びているとい うのもあります。もちろん始めた当初は平均 500 円だったんで すけれど、僕らの特徴的な機能で、もらったものはすごいよかっ たらおひねりという形で、後払いで、購入者の好意で追加で払 えます。こうすると次のとき頑張ってくれるので、僕が 500 円 で買って満足したら、大体プラス 1,000 円とか 2000 円上げて しまうんですけれど、そうすると良好な関係が続けられるとい う意味でいうと、始めのころ平均単価 500 円ではなかったので すが、それが今はどうでしょう、平均でも 3 倍近くにはなって きた気がします。そして数も増えてきたので売上が増えている。 そんな感じです。 高木: ココナラのサービスの中で、先ほどいくつか高齢者の 方がされているとのがあったんですけれど、ワークショップで すごく印象的だった、皆さんないよと、そして南さんの語り にのせられるようにして皆さんアップされていったんですけれ ど、やはり実は眠っているのを掘り起こすのは、そんなに簡単 な事ではないですよね。何か秘訣はありますか。 南: 僕らがチャレンジしなければいけない難しいところなん で、まだ秘訣なんていうところは正直、引き出すという意味で はないですね。僕が一日中話していると引き出せるケースもあ るんですけれども、まだプロダクトとしては全然自分が何がで きるか気づけるプラットホームになっているわけではありませ ん。他人のを見たら、こんなものでよかったらおれもやろうか なと気づくことはあるんです。 ただご本人とお話しすると大抵何かはあるんです。例えばデ ザイナーの人がロゴを作るのはスキルですね、その方はもとも とデザイナーでなく最初は OL をやっていたけれども、どこか でデザインスクールへ行って一念発起して独立して今はデザイ ナーをやっていますという方かもしれません。そういった経験 を持っている人が、今は OL で今後はデザインと、ちょっと絵 が得意だからやってみたいけれども、食べられるかなどうしよ うかなと不安でしょうがない人であったら、相談に乗っても らった人もすごい頑張ってお話ししてあげるだろうし、お話を してもらった人はそんなアバイスが良い悪いではなくそういう 経験を持った人と出会えただけで勇気が出る、教えたほうも自 分の人生を肯定できた気になる、こういう経験をさせたいとい うのがそもそもココナラのコンセプトで、そういった経験は誰 でもあるんです、極端な話ココナラがオープンした日にこんな サービスがでました。自分は引き籠もりです、引き籠もりなの で知識やスキルが全然ない、ただし引き籠もりの気持ちはわか りますので、引き籠もりのお子さんを持って悩んでいる親御さ んの相談に乗りますというサービスがあったんです。 ニッチな経験というのはこういう話で、僕も 36 歳で、専業 主婦と子ども二人でいるのに、金融業界の年収を捨てていきな り 1 年間無給みたいな生活に飛び込んだんですけれども、同じ ぐらいニッチな人は日本中に 100 万人はいないけれど、探せば 100 人 200 人はいるんです、それをネットの力でくまなくマッ チングすると、みんなすごくハッピーになれるというのがコン セプトで、やっぱり自分が生きてきた証を、あなたの話を聞き たい人が日本中探せば 100 万人いないけど絶対 100 人はいて、 その 100 人は多分聞いたら泣いて喜んでくれるだろうと思うと、 つながってみたくなりませんかという話です。それを僕らとし て頑張ってみたいなと思っています。 高木: もう会場で登録したくなって来た人もいるかもしれま せん、ココナラで検索をしていただければと思います。久保田 さんにおうかがいします。久保田さんがシニアエグゼクティブ の方に会われるとき、面接という言葉ではなくカウンセリング とおっしゃられたのが印象的でした、やはりそこには思いが、 シニア就労とかエグゼクティブの難しさがあるのではないかと、 今までの経験に固執する方、結構頑固な方とかいるのではない かと想像があるんですけれど、そういうところはどうですか? 久保田: いろいろな苦労はありますね。例えばこのサービス を始めて、意外だと感じたのは、大企業の取締役、それこそメ ガバンクの役員ですら、中小企業の経営者との面談で緊張した りするんですね。すばらしい経験を有していても、それを自分 で言語化すること自体が難しかったり、例えば、事業会社で経 験を積み、人事のプロであると自覚を持たれている方でも、そ れを法人に対してサービス提案するとき、どう話したらいいか が案外分からない。先ほどのカウンセリングの定義は何か、と いうお話に近いと思いますが、われわれは外部人材を活用して 成果が出た事例やノウハウを社内に蓄積して、より精度の高い 提案につなげていくのが究極的なマッチングだと思っています。 今、注力している部分でいうと、あるシニアの方がアドバイザー として中に入ったとき、その方のスキルをどんな企業のどの課 題に活かせるのかを言語化するところに対しては、かなりこだ わってやっています。 ような事をやろうとしている人は、僕とあったらすごいありが たがるはずなんです、逆の立場だったら僕がそうだから。これ パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 45 高木: やはりシニアにフォーカスを当てて、シニアエグゼク ティブに紹介する事業を立ち上げられるビジネスプランは、そ う簡単ではなかったと思うのですが、この 1 年間の成果にも驚 いたんですけれども、非常にたくさんの案件が出ているので、 みたいに、さまざまな、例えば私は 30 代なんですけれども、 30 歳までいろいろな経験を積んできています、その経験、知 恵、スキルがどのように生かせるかというのはおっしゃるとお りマッチング先、どういう企業さんから求められるかという事 このあたりの手応えはいかがですか? に比例するので、やっぱり企業さんの態度が変わること、個人 久保田: サービスを立ち上げる前に、個人的にたくさんのシ るというのがキーだと思っています。SNS もそうですし、さま さん一人一人がある種自信を持ってそこにチャレンジしてくれ ニアエグゼクティブの方とお会いさせていただきました。非常 に能力値の高い方同士は、横で繋がっていらっしゃると実感 し、このビジネスを立ち上げるにあたり、とてもいい要素だと 感じました。ある時、とあるシニアの方が をついて待ち合わ せに来られました。アドバイザーという仕事は地方の案件も多 いので、少し「足腰が弱いと難しいかもしれない」と思ったん です。年齢的にも 70 歳弱ぐらいの方だったのですが、部屋に 入ってキャリアをお伺いしていたとき、おもむろに を置いて、 から iPad を出し、iPhone を出し、カウンセリング途中で息 子さんと連絡したいといって、英語で息子と会話して…。その 方はガジェットやヴィジェットにものすごく興味を持っていま した。そんな方々とお会いしていく中で、この事業はいけるん じゃないかな、という感触がありました。あとは企業の支援に 入ってみて、シニアのスキルが明確にマッチングするポイント があったときに手応えを感じました。プロがいない中小企業は 沢山あるので、結果を積み重ねていく中で、大きな可能性が見 ざまなソフトやハードによってわれわれのようなサービスが存 在して、5 年後、例えば IoT とか、もののインターネットとか、 いろいろなハードも変わって、ソフトウエアも変わってくると 思うので、断定はできないのですけれど、こうなったらいいな という未来は、やっぱり皆さんが、例えば学校で英語の勉強を して英文科を出て英語が好きコミュニケーションが好きという 方が、まさに学んだ好きなことをビジネスに変えられる環境が 作れたらいいなと思っていて、われわれランサーズという会社 でいうと、最近だとオープンフラットホームというビジョンを 掲げて、いろいろな企業さんとコラボレーションさせていただ くことを始めていたりとか、今日もちょうど会ってきたんです けれど KDDI さんとか多くの企業さんからの資金を預からせて いただいて、よりダイナミックにわれわれランサーズはただの 小さい 100 人いない会社なので、僕らだけだと働き方を変える のは不可能なので、さまざまな企業さんの強みであるドメイン とクロスしながら個人個人の生活スタイルを変えたいと思って えてきたなと感じています。 います、例えば正社員であり、パートアルバイトであり、契約 高木: 最初にお話をうかがうとき、所作とか人柄について仰っ いう働き方を世の中に定着させたいと思っています。 ていましたが、そういう普通の履歴書には見えないところは、 社員というのと同じようにクラウドソーシングのランサーズと 重要ですか? 高木: 世の中でやはりこういう個人のスキルデータを持って 久保田: 顧客先での面談時に重要なポイントです。われわれ それを使って連携していくという感じですか? のサービスは、法人の課題を聞いてきたあと、まず登録されて いるシニアの方々に相談します。そして、その課題の解決に対 して最も適任の方と一緒に法人へお伺いするんです。実は、弊 社の社員も一種のアドバイザーとして一緒に入りながらプロ ジェクトを進めるケースもあるのですが、そういう大きな流れ いて見える化できるのは、非常に大きな強みになると思います。 山口: そうですね。今会社に勤めていると何年から何年にデ ジタルの数字だけで、平成 10 年から平成 20 年まで○○株式 会社の何々にいましたみたいな、その一文で書かれる文章の中 にはさまざまな経験や知恵とか、クライアントからの評価がた の中で、所作、人柄は非常に重要だと分かってきました。 くさん詰まっているはずなんです。クラウドソーシングのラン 高木: 今までの実績についておうかがいしてきましたので、 評価であり、その人の作品でありでその人を見える化するとい 今度は今後の方向性についておうかがいしたいのですが、ラン サーズの山口さん、このまま 10 年間ランサーズが成長すると 一体どういう事になるか、あのグラフを見ると恐ろしくなるの ですが、ランサーズの姿はどうなっているのでしょうか。 山口: 結構リアルな話をして大丈夫ですか。例えばすごい昔、 江戸時代にどういう働き方をしていたのかと妄想すると、今の ような大企業がボコボコあってというよりは長屋でそれこそ桶 を作る人がいたり、着物を直してくれる人がいたりとある種、 助け合いみたいな環境で、それぞれの方がそれぞれの強みに特 化したビジネスをやっていた。 われわれのサービスは、先ほどココナラさんがおっしゃった 46 サーズがやっている事は、一つひとつの仕事をクライアントの うか、表現するようになっていますので、まさに個人が会社の 枠内で見えなかった、そういう活躍を見える化するのが僕らの ミッションだと思っています。 高木: 南さんに同じ質問をしたいのですが、南さんの場合は、 もっと違うサービスを言い出しそうな感じが、ココナラの将来 を含めて? 南: 大学 1 年生向けの授業でこんな話をしたなと思いまして、 それをお見せします。これは何のグラフかというと概念図です。 人間の人口を分布した、右に職務能力を置いたとき、ほんとう かどうかは知らないですよ、でも世の中のことがこうやって正 規分布をするということになっていますね。頭の中がこうなっ ているからこうしましょうという事なんですけれど、これで皆 さんはどこにいるでしょうと、国立の大学 1 年生に敢えて聞い てみたんです。3 つに分けた真ん中、右側にいる人といったら 誰も手を挙げなくてびっくりしました。そのとき3百人いて誰 も手を挙げなくて、真ん中という人が 8 割、左側が 2 人いまし た。結構有名な国立大学なんですけれども、そんなふうに見て いるのほんとかよ思ったのですが、そのときに何の話をしたか というと、当時 18 歳 19 歳の子たちと話をしたんです、内容は 割愛しますけれど、一番大きな変化は機械との競争で、自動車 も自動運転になっていくのは実用化される直前です。人間の仕 事は信じられないスピードでテクノロジーに置き換えられてい て、残るのは創造的な仕事、テクノロジーができない何かを生 み出す仕事、あるいはテクノロジーがちょっとの苦手な肉体労 働しか残らない、要はこの場にいるわれわれが考えている一般 的なホワイトカラーの仕事は未来になくなると思っているんで す。 どういう事かというと真ん中がなくなるんです、そのときは ほとんど真ん中で手を挙げた学生たちと会うたびに、君たちが 20 年後 30 年後に社会で活躍するころは、今想像しているホワ イトカラーの仕事は全部なくなるんだよという中で、それを見 据えて大学 4 年間をどう過ごすんだいという授業だったんです。 では真ん中がなくなったらふたコブになるかといったら、そう いうことではなく、右側が生み出す側の仕事で、左側が肉体労 働です、何かというと他のプレゼンターもいますけれども、労 働力の人口はすごく足りなくて建設だとか介護で人手はすごく があって稼げるしというところと、一部のクリエーターとかビ ジネスを生み出す、ビジネスリーダー。こんなところが人間の 営みとして残っていくのかなと思っていて、最後にココナラは どうするのというところでいくと、結局ビジネスユニットがど んどん小さくなって自分で独立して何かをやりたいのだけど、 1 人で何をしていいかわからないというとき、ココナラ的なも のがあって、自分をサポートしてくれる人とマッチングをして、 こうやって仕事を作ったらいいじゃないと言える場にしたいわ けです。 また一方で、テクノロジーがもう 1 つ苦手なのはメンタル ケアです。人間の心理的ケアをテクノロジーでするのは、とて つもなく難しいという中で、ココナラへいったら誰かが相談に 乗ってくれる、慰めてくれる話を聞いてくれるというメンタル 足りなくなっていくわけです。 ケアを提供したい。この潮流の中でキーワードは誰かに助けて この前渋谷で最低賃金を上げろというデモをやっていまし ながりで、相談に乗ってもらいながら自分は生きていけるんだ た。そんなものは上がりますよね、確実に、普通にやっていっ たら外食で牛丼を作るのに 1,500 円とかになっていくのが見え ている世界。そこに労働力が足りない、テクノロジーに置き換 えられる仕事、ホワイトカラーの人が一方でなくなっていきま す、というと左に寄るんだろうなと、みんなは右側に行きたい だろうなと思っていて、では生み出す側の君たちが創造してい る仕事は何という話をしたら、例えば弁護士会計士みたいな仕 事も大半なくなるよと、だってこれはテクノロジーが得意なと ころだから。例えば僕らのベンチャーの仲間内で、例えばフリー とかマネーフォワードといった会社があるんですけど、銀行口 座とつないでおくと、勝手に仕分けをしてくれて、税理士が やってくれている仕事の大半をやってくれるんです。法律もコ ンピュータはテクノロジーが得意なので、これをやれば正しい と知っているものはテクノロジーに置き換えられると思ってい くと、こういう情報の非対称性で勝負するものは全部なくなっ ていくんです。とある弁護士事務所が自動的に契約書を作れる サービスを始めたんですけれども、簡単なやりとりだったら、 弁護士事務所が自ら自動化ツールを出したら、弁護士の 9 割は 仕事がなくなる、そういう戦い方だと思っています。 この中で残るのは左側の肉体労働的なもの、やりたいかやり たくないかはわからないけれどもやらなければいけない、需要 もらえる、そこに単にお仕事をやりますを越えた人と人とのつ と、どの領域に対してもつながりを通じて小さなビジネスに人 が生きていく世界をイメージしながらココナラを 10 年 20 年発 展させていけばいいのかと考えています。これは 10 年前に車 が自動的に走れるなんて誰も思ってなかったと思うんです。こ れができる世の中になってきたのは結構すごいことだなと思っ ています。 高木: まじめな返答をすると多分、コンピュータは人間に置 き換わるのではなくて、人間をアシストする仕事をするという のが私たちのビジョンになっているので、ただ人間のスキル、 ダイバーシティになっていて自分たちが自分自身で見出してい くものになっていくというのは、確かにそのとおりで、ココナ ラ的なものが… 南: 昔の産業革命的な発想でいったら、よく機械ができたら 仕事がなくなる。馬の世話をしていた人は車ができたら仕事が なくなるから失業者が増えると当時の理論があって、でも結局 失業者は出なかったのはなぜかというと、新しい仕事が産み出 されたからなんですね。というとこういう変化をしないのでは ないかと思われる人が多いかもしれませんが、産業革命のラッ タイド運動みたいなころと何が違うかというと、変化のスピー ドが異常に早い、アジャストするまでの間にゆがみがでるだろ パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 47 うと思っていて、この恐ろしいほどの変化のスピードでゆがみ 廣瀬: 久保田さんにうかがいます。未来に向けてというとこ がでるのがこの 2、30 年間ではないかなと、さらにその先は未 ろで、言い足りないかなという感じがするんですけれど、差し 来に即したテクノロジーと人間が調和した世界が訪れるのでは 支えない範囲で結構なんですが、久保田さんが相手にされてい ないかと思っているんです。ひょっとすると失業はでないかも るシニアのエグゼクティブ、そういう話がある一方、先ほどの しれません。ただゆがみは出るのではないかという前提で会社 長島さんの話でないけれども、これからの問題は結構凡庸な人 の未来を考えています。 たちの市場という、非常に大きい市場が生まれてくると思うん ですね。いま、山口さん南さんにも同じような質問をしたいと 高木: 久保田さんにも同じ質問をさせていただきたいんです。 思います。高齢者といったとき知識があってという話を僕もし 特に新しい技術、テレプレゼンスの技術とか新しいものが出て ましたけれども、そういうイメージは、変わってくるかもしれ きていると思うのですが、そういうものを生かしてビジネスが ません。凡庸な人たちはマーケットとしてはものすごく大きい どう変わっていくのか、あるいはそれ自体の働き方がどう変 という話が出てきますので、そういうことに関してお考えかど わっていくと思われているのか、少し話をお願いします。 うかおうかがいしたいと思います。 久保田: 未来の展望を含めての話で言うと、超少子高齢化と 久保田: 弊社に登録していただいているシニア、平均年齢で 取り沙汰されている日本ですが、実はあっという間にアジア圏 いうと 59 から 60 歳の方々なんですが、ものすごく幸せそうな にも欧米にも、少子高齢化の波がやってきます。法人の課題を 方が多いんです。年齢が上にいくほど、70 歳ぐらいの方々まで、 個人のアドバイザーが解決するマーケットという大きな枠組み そんなお金に困っている方はいらっしゃらないですし、ある一 で捕らえると、今展開しているサービスの幅を広げながら、他 定、「これまでの人生やり切ってきた」感がある方が多いです。 の国のシニアの方々がどう働いていくのかという未来の働き方 若い世代の方々、弊社のサービスでいうと、ノマドサービスは についても考えていきたいと思っています。そして、IBM さん 30 代 40 代が中心で展開していますが、やはり恵まれている方 や東大の先生方と、IT を活用してスキルマッチングする研究も が多いと思います。 進めていますが、非常に難しいことではありますが、実例とし フリーランスでビジネスアドバイザーとしてやりたいとか、 ていい事例が多数起きている中、弊社としては徹底的にマッチ 今まで事業会社で人事としてやってきたから、人事のアドバイ ングの技術を高める取り組みをしていかなければならないと ザーをやりたいとしてやりたいという方は十分に複数の企業で 思っています。 活かせる実力をもっています。 現状でいうと、僕らがシニアの方々が活躍出来る場を広げな 高木: マッチング技術をどう変えていくのか、まさにそこを がら、一方で 30 代 40 代の方のプロフェッショナルワーカーの するため手を組ませていただきたいと思います。よろしくお願 マーケットを創って広げていくことが重要です。年代を問わず、 いします。 独立してプロで活躍する方はいらっしゃるので、それを実例を 繰り替えしながら、事業の幅を広げ、新しいマーケットを創っ 久保田: ありがとうございます。 ていかなければならないというのが今の正直な気持ちです。 高木: ここでフロアからご質問があるかと思いますので、サー 廣瀬: 山口さん、南さんもお話しを聞かせてください。 ビス内容も含め、質問がありましたら挙手をお願いしたいと思 います。いかがでしょうか。廣瀬先生は質問したくてウズウズ 山口: 私はいろいろな人にお会いさせていただいたり、いろ しているのではないでしょうか。 いろな人のお声をいただくので、結構信じているというのがあ ります。さまざまな個人の人たちが持っているスキル、経験を 48 信頼していて、みんな実はすごい力を持っている、そのすごい の人と話していても、自分はすごいいい経験をしてきた、でも 力を持っている前提において何かしらの活躍の場があると思っ それを 20 歳 30 歳下の人にリアルに語れるかというと、環境が ています。先ほどの事例の方ではないのですが、営業だったり、 違うから無理だよね、あのころとは違うからちょっと躊躇しま どういうビジネスが世の中に転がっていて、それにどうアジャ す。それよりもさらに抽象化した本質的な話をできるまで人間 ストしていくのかというのが実は一番の課題です。 は哲学者ではないので、やっぱりリアルに役立つ話は、近い世 例えば私の実家は岡山なんですけれども、岡山に会社を辞め 代ではないかというのがすごくあります。一番最初にこの会に たあと 1 年間ぐらいフラフラしていて、そこそこ経験があるだ 来させていただくきっかけでもある檜山先生に会ったとき話し ろう、それこそ今お話しがあったビジネスアドバイザーみたい ていたのは、コンセプトとして少子高齢化です、逆三角形になっ なものができたらいいな、かっこいいしみたいに思っていたん ています、これを少ない人数の若い人が高齢者を支えるのでは ですけれど、岡山には仕事がないんです。それから東京に出て なくて、むしろ三角形を逆転させて、たくさんいる高齢者を若 きて、ある IT ベンチャーの方のお手伝いをさせていただいたり い人をサポートするみたいな事は出来ないか、そういう発想が すると、ちょっとビジネスっぽい感じになる。どちらかという あるんですよというのを聞いて、素晴らしい発想だなと思った とロケーションにすごい左右される、どんなに仕事があったと んですけれど、では世代を離れた人たちのアドバイスを聞ける して、その仕事に出会わなければそれは仕事にならないので、 かというと、案外そうでもないんです、皆さんもふり返ってみ 僕らのサービスがやろうとしていることは、インターネットの て思うんですけれど、アドバイスがありがたかったときは、大 力を使ってオープンにし、それによってアジャストする人につ 体ちょっと上の先輩くらいなんです。今自分が経験しようとし なげるというインフォメーションテクノロジー、まさに IT なん ている難しさを一歩早く半歩早く経験した人のアドバイスはと ですけれど、それが考え方を変える可能性を持っていると思っ てつもなくうれしいことが多くて、というところで行くと、70 ています。 歳の人がアドバイザーとして価値が提供できるのは 60 歳に対 してなんじゃないか、60 歳の方が提供できるのは 50 歳の方に 対してではないか、つい最近まで自分がそうだったから、これ から起きることに関して割とリアル感を持って話せるんじゃな いのというのがあるんです。 なのでマーケットが大きいから活用しよう、でもここは若い 人向けに世代を越えてやろうとするといろいろ無理がでてくる ので、同世代同士あるいは 1 つ下の世代がシームレスにつな がっていく、本当にプロであれば一般化されたスキルがあるの で世代を飛び越えるんです。でもみんながみんなそうではない。 けれども自分がしてきた経験をちょっとこれからする人につ ながっていくという関係性をうまくインターネットの力であっ たりあるいはリアルなコミュニティの力であったり、新たなコ ミュニティというのをこれから作っていかなければいけないと 思うんですけれども、そういったネットなりコミュニティなり 廣瀬: 南さんはご自分で答えを出しているのかもしれないと の中でマッチングして、サポートしていくような方向にいかに 思っているんです。今までシニアは非常にエグゼクティブでわ もっていけるかという事かなと、自分としては考えています。 れわれの知らないことをすごく知っているというイメージで見 ていますけれども、これから大量に増えてくるシニアの人たち 廣瀬: 世代間というよりはむしろ世代の中でもしかすると非 は、普通の人たちが大量にガッといますね、だからちょっと難 常に大きいビジネスの可能性もあると思います。 しくなる。難しくなるんだけれども、企業としてみたときマー ケットとしては大きい。少数の人たち、今はまさにサーキュレー 高木: ここで先ほどのセッションで活動をご報告いただきま ションがやっているのは少人数の人をどうやってマッチングす した高齢者ロールモデルの方々に、これらのサービスについて、 るかですが、マーケットとしてみたときすごく大きくなってい 自分が使ってみたらどうか、もしくは自分の会員が使ってみる く可能性があるわけで、その辺のところをどうお考えになるの とか、少しご感想をうかがってみたいと思います。牧さんいか かなと思います。 がですか? 南: 頭に浮かんだのは、マーケットが大きいあるいはそこに 牧: すばらしい話をありがとうございます。僕はリタイアし いる人の数が多いので何かできるのではないかというと、大き て 15 年になるんですけれど、リタイアしたときあなた方に巡 そうみたいな感じなんですけれども、僕らはココナラ的な比較 り合えていたらハッピーだったなとちょっと残念に思っていま 的、経験みたいなところでいくと正直なところ世代が離れると す。皆さんそうなんですけどリタイアすると自由時間が増えた 無理だなというのがいろいろあって、何かというと実際に高齢 喜びたいという事と、社会と接点は何とかして残したい。2 つ パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 49 生部: 私は定年退職したのが 2001 年です。そのころは不景 気で 60 歳になったら、はいさようなら。それから 14 年たっ ています。リタイア後は NPO に参加して 14 年間の半分ぐらい 理事長をやってきています。先ほど「シニア情報生活アドバイ ザー」というお話をしましたが、アドバイザー講座を受講した いといってみえる方は、10 年前と変わっています。 10 年前は 60 歳を過ぎた頃の人が見えましたが、今では 65 歳を過ぎています。という事は、今日では 60 歳から 65 歳まで の仕事や雇用の状況が変わってきているように思います。です から 60 歳から 65 歳までの生き様として、やっぱり仕事をして 収入を得たいという事を感じます。 そういう意味で、早期退職をする人および 60 歳から 65 歳ぐ のギャップがあるんです。私の場合はもう、すぐ海外へ飛んで いきました。結局 13 年間、マレーシアで過ごしました、そこ でインターネットで結局仕事をしていました。日本にこだわり ませんでした。いったときには向こうには日本から進出した企 業が 130 社あってまず聞かれたことは、おまえはどこの会社だ と、もう会社はないんだといったら、ニュートラルな人畜無害 なところが、意外に受けまして、そこで国際的な仕事の芽が出 ました。今南さんが年代のギャップは一代下といいました、私 は今友達が増えているのは、もっともっと若い人です。一代ぐ らいじゃだめなんです、我が強くて、競ってしまうんです、年 とるとみんな頑固なんです。 私が 20 歳の時 30 歳の時、どういう失敗をしたか、こんな感 動があったとか、こういうふうに考えて上司とけんかしたとか、 これが皆さんの何かに役立つように、それができるのはやっぱ りネットなんですね、ネットで今までと違う時空間の人と接す る、ただしリアルを大事にします。コミュニケーションはネッ トでできますけれども、飲ミニケーションはできないものです から、そこをカバーしています。ですから、そういうことがで きればほんとうに日本は世界に冠たる力を持っています、今そ れが失われつつある事が私は非常にもったいない。失われる前 に横社会とコネクトして、いい接着剤になっていただきたいと いうのが、このお 3 人の方に求める希望です。よろしくお願い らいの人は、ビジネスを考えられている側のシーズとして、い いお話しがあれば受けたい人がたくさんいると思います。 ニーズとシーズのマッチングを考える時に、ニーズをどう探 してくるかというのが非常に大変で、シーズがたくさんあるけ れども、ニーズが少ない状況が多いと思います。皆さんのビジ ネスモデルとして、シーズとニーズのバランス、マッチングを 取るとき、どちらが難しいでしょうか、きっとニーズを探して くるのが大変と思いますがそうでしょうか? 高木: これは山口さん。 山口: はい、そうです。なのでいろいろな会社さんとご一緒 させていただくことが、まさにそこにつながるという事ですね。 KDDI さんであれば中小企業さんとつながっていらっしゃいま すし、インテリジェンスさんであれば人材業界の中でお悩みが あったりとか、グリーさんであれば製作サイドのニーズがある とか、さまざまな企業さんとご一緒させていただくことによっ て、われわれの会社はそのニーズの部分を捕らえていくという かたちです。 高木: 皆さんの意識が変わると同時にいい仕組みができて、 企業側も変わっていくということだと思います。時間になりま いたします。 したので、最後に一言、超高齢社会において皆さまの活動を通 高木: 力強いお言葉でした。ぜひこれからもリタイアした直 いと思います。 後といわずにこれからもサービスをご活用いただきたいと思い ます。では、高木さん。 高木 ( 治夫 ): 京都ではぜひとも使いたいと思います。日本 語しかできない人が多いので、それをすぐ英語にトランスレー ションして、そういう今リアルタイムサービスをするような話、 その辺がクラウドサービスとして面白いと思って聞いていまし た。 高木: 具体的に既に使うということで、ありがとうございま す。最後に生部さま。 50 して何々な社会にしていきたいというメッセージをうかがいた 山口: 時間と場所にとらわれない新しい働き方を作るのが僕 久保田: 我々はシニアとノマドという2つの働き方を広げてい らのミッションなので、多分年齢は人それぞれだと思うんです。 く事で、社会に価値を生み出していきます。実は、欧米ではすで 60 歳でお元気な方もおられれば、先ほどのプレゼンで出てきた にインデペンデントコントラクターという新しい働き方が存在し 船さんとか実はキョンキョンと同じだという話がありましたけ ています。最初にお話をさせていただいたとおり、経験、知見が れども、やっぱりそれは自分で定義しているものではないかと 好循環していくような社会構造は、皆さんが目指しているところ 思っているんですね。年齢というより思いというか、やりたい だと思います。それが今、我々の横で、シニアの方がプロジェク という意思があれば、いくらでもクラウドソーシングで働く場 トに関わって成果に繋がっている実例が多数起きてきています。 所があるので、ぜひ時間と場所にとらわれない働き方を、みん この事業をスケールしながら「経験・知見が循環する社会の創造」 な一緒にできたらいいなと思っています。 という我々のビジョンの実現に近づいていきたいと思っています。 高木: 年齢を自分で定義する。南さん、いかがでしょうか? 高木: まさに社名のとおりです。本日はどうもありがとうござ います。ご登壇いただいた、山口さん、南さん、久保田さん、拍 南: ココナラのビジョンとして掲げているのは、一人一人が 手をもって終わりたいと思います。 自分のストーリーを生きていく社会を作る、簡単に言ってしま えば自分らしくということであるんですけれど、今日の働く延 長線でいくと、就職にとらわれない、就職がない社会も面白い のかなと思っています。これは引退がないというのにもいえる し、若い人にとって会社に雇われるのがすべてではなくて、働 くってもっと自由で、家事をするのも働くだし、家業をするの も働くだし、もっと自分が世の中にどういう価値を出していく のかという中に、自由になれたらいいですね。一方で世の中が 許さないというところもあると思うので、われわれここにいるよ うな人間がもっと自由な働き方を提供できるような場作りをして いきたい、大きな会社は必要だけれども、そこにずっと雇われる 必要はなくて、週 3 日は大企業にいるけれど、2 日は飲食店をや るみたいな世界もくるかもしれない。そういった自分の興味は 1 つだけではないので、たくさんの興味とかこういうふうに生きた いといったものに合わせて、世の中で一緒に働いていけるような 社会になっていったらいいなと思いました。 高木: 就職も引退もない社会。久保田さん。 パネルディスカッション・超高齢社会を変える新世代企業 51 本冊子はランサーズ株式会社のご協力で 50 歳以上のシニアランサーを対象としたテープ起こし作業と、 表紙デザインのコンペによる 98 件もの応募の中から選定されたデザインにて作成いたしました。 表紙デザイン design studio Be / 磯部 為夫(53 歳) 大阪出身・大阪にてデザイン業 33 年 作品コンセプト: 年齢にとらわれず 若い感性に学び、経験と知識を生かしてさらに上を目指す 新しきモノを、常にチャレンジャー精神を 今もデザインが出来るの喜びをそのままカタチにしました。 2015.3 テープ起こし ランサー名:mirura(50 代前半) 私も若い頃は即戦力になる 20 ∼ 50 代の方が 社会の中心になって動くのは理にかなっていると考えていました。 しかし年を経るごとに即戦力だけでは 立ち向かうのが難しい物事に出会うたびに、 年上の方の言葉に助けられました。 上司や先輩方あるいは書物などの言葉はもちろんですが 何より驚いたのは身近にいるお年寄りにも同じ事がいえる ということです。 恥ずかしながら私の周りにいる同年代では そのように感じる方はごく少数、 ですから年上の方に教えていただきたいことは 山ほどありますが、 なかなか言葉に出しておっしゃるのは難しいご様子。 けれども 都市鉱脈 のレアアースのように ご年配の方々の中には無尽蔵な暗黙知という鉱脈が 眠っています。 その暗黙知を形式知にするべく知識を発掘していただきたい! と切に思う限りです。 高齢者の経験・知識・技能を社会の推進力とするための I C T 基盤「 高齢者クラウド 」の 研究開発 Senior Cloud ICT Platform for Advancing Society by Circulating the Experience, Knowledge, and Skills of the Elderl 本研究は ( 独 ) 科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業【戦略的イノベーション創出推進プログラム】 ( S - イノベ)の支援の下、平成 22 年度より、東京大学を中心に実施しているものである . Members 東京大学 プロジェクト・マネージャ / 研究リーダー 廣瀬 通孝 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授 檜山 敦 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 特任講師 三浦 貴大 高齢社会総合研究機構 特任助教 徳田 雄嵩 工学系研究科 先端学際工学専攻 大学院生 泉 雅彦 有田 祥馬 小嶋 泰平 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 大学院生 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 大学院生 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 大学院生 山田 浩史 学際情報学府 学際情報学専攻 大学院生 鈴木 啓太 工学部 機械情報工学科 学部生 木下 由貴 工学部 機械情報工学科 学部生 日本アイ・ビー・エム株式会社 開発リーダー 小林 正朋 東京基礎研究所 リサーチ・スタッフ・メンバー 浅川 智恵子 東京基礎研究所 IBM フェロー 高木 啓伸 井床 利生 東京基礎研究所 シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー 第4回高齢者クラウドシンポジウム記録集 2015 年 3 月 31 日発行 発行者 高齢者クラウド・プロジェクト WEB http://sc.cyber.t.u-tokyo.jp/ E-mail [email protected] 編集 檜山 敦 本文デザイン 勝村 富貴 東京基礎研究所 スタッフ・リサーチャー 小杉 晋央 東京基礎研究所 スタッフ・ソフトウェアエンジニア 福田 健太郎 東京基礎研究所 リサーチ・スタッフ・メンバー ©Senior Cloud Project Printed In Japan All Rights Reserved 禁・無断転載