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国民健康保険事業

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国民健康保険事業
事業分析報告
国民健康保険事業
2006年10月
市政改革本部
健 康 福 祉 局
はじめに(本報告書の位置付け)
国民健康保険制度は、「国民皆保険制度」の基盤として住民の健康の保持増進に重要な役割を担ってきた。しか
し、高齢化の進展や医療技術の高度化等による医療費の増大のため、近年の医療保険制度はその事業運営にお
いて厳しさを増しており、特に国民健康保険制度は、保険料と国庫支出金等でそれぞれ2分の1ずつを賄うことが
制度の原則となっているが、構造上高齢者や低所得者が多く、その財政基盤が脆弱であることから、より一層厳し
いものとなっている。
こうした状況を踏まえ、本市としても制度の健全化に向けて、国に対して医療保険制度の一本化など抜本的な改
善について引き続き要望していくこととし、本調査報告では国民健康保険の保険者として努力すべき事業項目に係
る事業分析として、同事業の現状に関して可能な限り定量的なデータによる把握と客観的評価を行い、そこから明
らかになった課題に対する改善策を提案している。
今後この分析結果を踏まえた具体的検討を進め、事業の安定的運営に向けて早期の改革を目指す。
1
目 次
第Ⅰ章 事業の現況 ‥‥‥ 3
第Ⅱ章 事業の現状分析と課題
Ⅱ −(1) 現状分析の全体像 ‥‥‥ 23
Ⅱ −(2) 加入資格の適正化 ‥‥‥ 25
Ⅱ −(3) 保険料の徴収 ‥‥‥ 32
Ⅱ −(4) レセプト点検 ‥‥‥ 55
第Ⅲ章 改革に向けた方向性
Ⅲ−(1) 改革に向けた全体像 ‥‥‥ 67
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善 ‥‥‥ 68
Ⅲ−(3) 中長期的に検討すべきオプション ‥‥‥ 79
参考資料 ‥‥‥ 82
2
第Ⅰ章 事業の現況
3
国民健康保険事業の現況のまとめ
■事業の概要
−国民健康保険事業は、被保険者が負担する保険料や国庫支出金などを財源に医療費を負担する制度であり、大阪市を 保険者として運営している。
−被保険者は市民全体の概ね42%、約110万人に上り、65歳以上の高齢者が被保険者全体の約36%を占めるなど高齢者
の加入が多い。また加入者に低所得者が多く、全体の約65%が市民税非課税世帯となっている。
■財政状況
−前年度繰上充用金を除く事業費2839億円(2005年度見込)のうち、約96%は医療給付費等になっている。財源は国庫負 担金約1038億円や保険料約718億円などの他に、保険料の軽減等のために市費が約488億円繰入れられている。
−歳出に関しては、加入者の高齢化など構造的問題に加えて、医療の高度化などにより医療給付費等は2100億円あまり (2005年度見込)と増加傾向にある。
−単年度の事業収支は経年的に20∼40億円程度の赤字であり、累積赤字も約360億円(2005年度見込)に上っている。
■事業推進体制
−担当局である健康福祉局等に50名(うち保険員6名)、24区役所に447名(うち保険員140名)、合計497名の職員、及び保 険料徴収業務のための徴収嘱託員126名により事業が運営されている(2006年9月現在)。
■保険料の状況
−保険料は、軽減前は比較的高いものの軽減後は比較的低い。
−また、保険料収納率は年々低下して2005年度には政令市で最低の83.6%程度まで落ち込んでおり、保険料自体の徴収額
の減額に加えて、収納率の低下によるペナルティとして国庫補助金も25億円あまりの減額を受けている。
■制度的課題と国への要望
−国民健康保険の加入者は低所得者や高齢者が多いなど、事業自体の財政的基盤は脆弱であり、また長期的には医療費
は増嵩する見通しであるなど構造的な課題を有しており、この解決に向けて国への要望が行われている。
4
Ⅰ 事業の現況
国民健康保険のしくみ
被保険者証の交付
被保険者*1
保険者(大阪市)
加入手続き・保険料納付
一部負担金
の支払
診療報酬
の支払
診療サービス
の提供
審査結果
の報告
診療報酬の支払い
国民健康保険団体連合会*2
医療機関等
診療報酬の請求
<被保険者の一部負担金の割合>
3歳未満の乳幼児
2割
3歳以上70歳未満
3割
70歳以上
1割又は3割(所得による)
75歳以上(老人保健)
1割又は3割(所得による)
被保険者の負担額が限度額(年齢
や所得による)を超えたときは、超
過分は保険者が負担
参考:医療費以外の保険給付として、入院時食事療養費の支給、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等がある
*1 職場の健康保険などへの加入者及びその家族などを除いた全ての人に、世帯ごとで国民健康保険への加入が義務づけられている
<主な加入者> ①自営業・農業・漁業従事者とその家族 ③退職などにより職場の健康保険をやめた方とその家族
②パートなど職場の健康保険に加入していない方 ④外国人登録を行っていて日本に1年以上滞在する方 など
*2 国民健康保険法に基づき、保険者(当該の都道府県内の市町村)を会員として設立された公益法人
5
Ⅰ 事業の現況
被保険者の加入状況
大阪市における国民健康保険への加入者は人口の4割あまりに上り政令市中最も高い。
<被保険者数、加入率の推移>
42.0%
41.6%
41.9%
41.4%
加入率 40.9%
108.8
被保険者数
(万人)
110.0
109.7
106.6
108.7
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度(見込)
<政令市における被保険者数、加入率の状況 (2005年度見込)>
41.4%
37.8%
37.0% 36.4% 35.9% 35.4%
34.5%
109
37
31
26
54
79
32
33.5%
49
33.0% 33.0%
32.7%
32.4%
32.2% 31.4% 31.3%
117
44
45
38
37
32
59
札 幌 市
仙 台 市
さ い た ま市
広 島 市
横 浜 市
福 岡 市
川 崎 市
京 都 市
千 葉 市
神 戸 市
名 古 屋 市
静 岡 市
堺 市
北 九 州 市
大 阪 市
6
Ⅰ 事業の現況
国保会計の収支状況
国民健康保険事業の財政規模は年3000億円弱であり、そのうち加入者の支払う保険料は約25%の718億円、市費繰入
は全体の約17%の488億円となっている。
<市費繰入額の内訳 <国民健康保険事業の収支の状況 (2005年度見込 単位:億円) >
収 入 718
363
124
老人保健拠出金
共同事業拠出金
介護納付金
2,839
100%=488億円
3.4%
保険料
軽減分(任意)
22.7%
一般減免
(市独自軽減)
13.0%
その他
義務的繰入
10.5%
人件費
(職員給与等)
13.7%
保険料
軽減分
義務的繰入
1,821
40
その他
任意繰入
>
任意繰入
医療給付費*1
68
単年度赤字
488
*3
その他
収入
市
費
保険料
府支出金
国庫支出金
その他支出
事業費
保険給付費
等
*2
療養給付費
交付金
支 出 (2005年度見込)
36.7%
670
1,038
65
163
2,719
42
78
市費繰入の多くは保険料軽減の
補填である
*1:このうち一般分は1,444億円 *2:退職被保険者にかかる医療給付費等に対する交付金 *3:高額医療費共同事業交付金、返還金、手数料等
7
Ⅰ 事業の現況
医療給付費等の状況
医療給付費(一般分)は増加傾向にあり、老人保健医療費拠出金は制度改正に伴い一時的に減少している。
<一般被保険者にかかる医療給付費等の推移 (単位:億円)>
2,136
2,149
935
853
1,998
老人保健医療
費拠出金
医療給付費
(一般分)
779
2,082
2,114
712
670
1,219
1,201
1,296
1,370
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
1,444
医療給付費等は2,100
億円程度であり、増加
傾向にある
2005年度(見込)
*医療給付費・・・75歳未満の一般被保険者にかかる医療給付費(医療費−患者負担)
上記以外の医療給付費として退職者医療拠出金等(377億円)がある
老人保健医療費拠出金・・・75歳以上の老人保健医療事業会計に支出する拠出金
8
Ⅰ 事業の現況
国保会計の財政状況
2005年度決算(見込)で約360億円もの多額の累積赤字を抱え、非常に厳しい財政状況となっている。
<財政収支の推移 (単位:億円)>
17.7*
累積
赤字
▲ 248.7
▲ 284.6
▲ 310.1
▲ 320.1
▲ 320.1
▲320.1
▲ 40.5
約360億円の累積赤字
については次年度予算
より繰上充用している
▲ 35.9
単年度
赤字
▲284.6
▲ 25.5
▲310.1
▲ 27.7
▲337.8
2001年度
2002年度
2003年度
▲360.6
2004年度
2005年度 (見込)
*2004年度は国庫負担金の前年度受入不足分の追加交付等があったため形式上黒字を計上している
9
Ⅰ 事業の現況
一般会計からの繰入金の状況
一般会計繰入額は年500億円弱で推移しており、加入者1人あたり繰入額も政令市中で高い。
<会計規模*および一般会計繰入金の推移 (単位:億円)>
18.5%
18.0%
繰入額
の割合
2,567
2,766
2,572
17.2%
18.2%
17.7%
2,748
繰入額は事業費の17∼
18%、500億円弱となっ
ている
2,839
会計規模
繰入額
462
477
489
499
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
488
2005年度(見込)
<政令市における一般会計繰入金の状況 (2005年度見込)>
4.52
4.46
4.15 4.06
3.51
488
加入者1人あたり
繰入額(万円)
3.18 3.12 2.92
279
266
155
183
140
繰入額
(億円)
2.76
343
2.54 2.53 2.36
2.13
1.91 1.89
164
154
95
82
76
67
50
静岡市
さ いた ま 市
堺市
千葉市
広島市
仙台市
神戸市
横浜市
京都市
川崎市
名古屋市
福岡市
北九州市
大阪市
札幌市
*前年度繰上充用金を除く
73
大阪市の1人あたり
の繰入額は政令市
中2番目に大きい
10
Ⅰ 事業の現況
組織と業務運営体制 (2006年9月現在)
健康福祉局等50名(うち保険員6名)、24区役所に447名(うち保険員140名) 、合計497名の職員、および保険料
徴収業務のための嘱託員126名により事業が運営されている。
健康福祉局:保険年金課 職員43名(うち保険員6名)
管理担当
8名
国民健康保険事業会計の予算・決算に関すること
収納担当
18名
保険料の収入整理に関すること
(うち保険員6名)
各種関係団体との連絡調整 など
区役所(24区):保険年金課 職員447名(うち保険員140名)、徴収嘱託員126名
保険料の徴収
管理担当
305名
(うち保険員
140名)
保険料の滞納整理に関すること など
短期被保険者証の交付
保険料の徴収 など
被保険者の資格の取得に関すること
被保険者の資格の得喪に係る届書等の受付、審査
保険料の算定・減免に関すること など
被保険者証の交付
保険担当
142名
給付担当
12名
保険料の減免
資格証明書の交付 など
徴収嘱託員
126名
保険担当
5名
滞納保険料の督促・滞納処分
保険料の賦課
保険給付費の審査及び支払に関すること
被保険者の所得調査
保険給付事務の指導に関すること など
療養費等の支給
総務局: IT化担当 職員7名
システム担当 国保等システムの運用・保守
7名
電子計算機処理業務 など
*国民健康保険事業会計で人件費を負担する職員等について記載
なお、レセプト点検業務は、(財)大阪市民共済会に委託している
11
Ⅰ 事業の現況
区における職種別の職務内容
事務職員は区役所内部での事務業務が中心であるのに対し、保険員は納付相談等の窓口業務も行っているが、主
には未納者への督促などの外勤が中心となっている。また徴収嘱託員は未納者への督促に業務が特化している。
職 務
事務職員
滞納保険料の督促・滞納処分、被保険者
資格に係る各種届出の受理・審査、保険料
の賦課及び療養費の支給等
(管理及び
保険担当)
保険員
(管理担当)
報酬体系
・窓口における納付相談や保険料徴収等業務
・未収期間が7期以上の世帯に対する納付督
励及び徴収事務
・徴収嘱託員の指導・監督
徴収嘱託員
(管理担当)
・納期内集金業務
・未収期間が6期までの世帯に対する訪問に
よる納付督励及び徴収業務
地 位
・大阪市職員の報酬体系
・年間平均給与:734.5万円*1
地方公務員
(大阪市職員)
(地方公務員法第25条及び大阪市
「職員の給与に関する条例」に基
づく)
(地方公務員
法に基づく)
・基本報酬月額9万円+成績報酬
・年間平均報酬:267.4万円*2
(「健康福祉局国民健康保険徴収
非常勤嘱託職員要綱」に基づく)
*1 2006年度当初予算における公営企業会計(交通局・水道局)を除く全会計における一般職の職員の年間給与、職員手当、期末・勤勉手当の合計
*2 2006年度当初予算における報酬額
12
Ⅰ 事業の現況
職員数の推移
職員数はほぼ横這いで推移してきたが、2005年度からの徴収嘱託員の配置や事務の見直しにより、2006年度には
保険員を中心に前年度比約13%の減少となっている。
<職員数の推移>
583
577
568
568
497
事務職員数
(人)
370
364
356
360
351
保険員数
(人)
128
213
213
0
212
0
208
0
嘱託の活用等により
職員数が減少してい
る
126
146
徴収嘱託
員数(人)
2002年度 03年度 04年度 05年度 06年度*
○各年度末現在、ただし2006年度のみ9月末現在
13
Ⅰ 事業の現況
他の政令市との職員数の比較
被保険者数に対する職員数は3番目に多く、人員数に対する徴収嘱託員の比率がやや低い。
<他の政令市と比較した人員数*の状況>
被保険者1万人
あたりの人員数
(2006年9月現在)
7.44
(職員+徴収嘱託員)
6.46
5.72
5.40
被保険者1万人
あたりの職員数
5.38
4.81
4.84
4.76
徴収嘱託員数 128
4.37
4.22
3.55
3.82
3.32
3.19
381
2.96
2.95
100
289
84
202
78
281
3.21
3.06
2.74
2.14
2.69
380
178
205
60
72
139
315
122
114
38
84
30
84
2.35
101
15
86
静岡市
堺市
さ いた ま 市
横浜市
120
千葉市
101
川崎市
45
68
仙台市
113
福岡市
65
133
名古屋市
広島市
神戸市
2.26
65
185
38
233
118
北九州市
大阪市
札幌市
京都市
2.21
2.76
140
205
124
3.25
3.18
373
497
職員数 238
4.56
4.56
623
126
366
4.72
* 職員と徴収嘱託員の合計で、職員には事務職員と保険員を含んでいる
14
Ⅰ 事業の現況
被保険者の属性
被保険者は高齢者が多く、また加入世帯は低所得世帯が多い。
<被保険者の高齢者割合の推移 (単位:万人)>
106.6
108.8
110.0
109.7
108.7
72.5
73.2
73.2
71.8
69.6
65歳以上 34.1
35.6
65歳未満
(32.0%)
2001年度
37.9
39.1
(32.7%)
(33.4%)
36.8
(34.5%)
(36.0%)
2002年度
2003年度
2004年度
1/3以上が65歳以上の高齢者で
あり、その比率は増加している
2005年度 (見込)
<加入世帯のうち市民税非課税世帯数の推移 (単位:万世帯)>
課税世帯
非課税世帯
57.6
59.2
60.5
61.0
61.5
22.7
22.6
22.3
22.1
21.9
34.9
36.6
38.2
38.9
39.6
(60.6%)
(61.9%)
(63.1%)
(63.8%)
(64.5%)
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
6割以上が非課税世帯であり、
その比率は増加している
2005年度(見込)
15
Ⅰ 事業の現況
世帯あたりの保険料と納付方法
加入世帯が負担する保険料は、世帯ごと、被保険者ごと、及び所得に応じて大阪市が決定・通知し、被保険者は口
座振替や納付書などにより納付している。
<保険料の計算方法>
平等割保険料
所得割保険料
均等割保険料
保険料の軽減
+(被保険者数ごとに負担) + (所得に応じて負担) −(所得に応じた減額など) =
(世帯ごとに負担)
(総所得金額等−基礎控除)
×12.6%
(第2号被保険者*数 (第2号被保険者*の総所得金額等
被保険者数
×24,463円
1世帯あたり
42,708円
()は介護保険料
2006年度実績
(8,340円)
×6,509円)
(基礎控除を除)×2.3%)
所得に応じて「平等割
+均等割」保険料を2
∼7割減額 など
年間保険料
(世帯負担)
最高限度額53万円
(9万円)
*:被保険者のうち40歳以上65歳未満の方
<保険料の納付手続き>
被保険者
保険料通知
保険者(大阪市)
毎月末までに年間保険料の1/10を納付
今年度の保険料を市が決定
(毎年6月)
( 6月∼翌3月(10ヵ月=10期) )
保険料納付
納付方法*
1.口座振替により納付(市の奨励する方法)
2.納付書により金融機関等や区役所で納付
*:未収世帯などへは訪問徴収等を行っている
16
Ⅰ 事業の現況
1人あたりの保険料の状況
大阪市の保険料は軽減前は比較的高いが、被保険者の所得等に応じた軽減後の実際の保険料は比較的低い。
<1人あたりの年間平均保険料の比較 (2005年度見込 単位:万円) >
22.3
20.9
21.9
20.8
参考:1人あたりの年間
医療給付費等 (2004年度 一般分)
20.7
19.1
19.1
18.6
17.0
16.0
17.0
17.5
16.1
軽減前保険料*
9.1
8.0
2.0
1.3
9.0
8.1
0.9
8.1
0.7
7.8
10.2
9.4
1.4
1.8
9.2
0.9
1.5
8.8
1.0
8.6
0.4
8.6
8.9
0.6
0.5
7.2
7.3
7.4
7.6
7.6
7.7
7.8
7.8
8.0
軽減分
北九州市
大阪市
名古屋市
広島市
千葉市
福岡市
京都市
神戸市
札幌市
仙台市
横浜市
川崎市
8.8 軽減後保険料
さ いた ま 市
7.1
8.4
6.7
1.4
保険料の全体水準を抑える
任意軽減に差があるため、 医療給付費等と保険料は 必ずしも相関していない
*保険料の全体水準を抑えるための任意軽減は含んでいるが、低所得世帯などを対象に行っている保険料減免は含まない平均保険料
17
Ⅰ 事業の現況
保険料の減免状況
法定あるいは市独自の施策により、低所得者等を対象に年間約36万世帯で約219億円の保険料が減免されている
<保険料の減免内訳* (2005年度見込)>
100%=61.4万世帯
<参考 保険料の減免基準>
100%=219.5億円
市独自減免
27.5%
27.4%
減免なし
①低所得者への軽減
40.5%
前年中の世帯所得が基準以下の世帯は、平等割・均等割の
保険料を2∼7割減額している。
1.4%
〔軽減基準所得額 (単位:万円/年) 〕
2.6%
6.8%
7.6%
人員
4.0%
4.2%
3.7%
1人
法定軽減
その他減免
3割軽減
2割軽減
5割軽減
法定軽減
61.8%
7割軽減
7割軽減
2人
33.0
3人
4人
市独自軽減
法定軽減
5割軽減
3割軽減
2割軽減
−
61.0
68.0
57.5
89.0
103.0
82.0
117.0
138.0
106.5
145.0
173.0
40.0%
②その他の減免(市独自の減免)
本年中の見込み所得が前年比7/10以下となるとき、また
は被災したときなどはその程度により保険料が減免されて
いる。
金 額
世帯数
6割の世帯が何らかの減免を受け、減免額の約7割
は法定軽減である
18
*数字は一般被保険者分
Ⅰ 事業の現況
保険料収納率の状況
保険料の最近の収納率は平均年0.8%程度の長期低下傾向にあり、全政令市の中でも最低レベルとなっている。
<保険料収納率の推移>
87.8%
86.9%
86.1%
85.0%
83.9%
83.6%
最近5年間で約4.2%
低下している
2000年度
対前年度
(▲0.99%)
(▲0.76%)
(▲1.12%)
(▲1.06%)
(▲0.33%)
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度見込
<政令市における保険料収納率 2005年度(見込)>
88.8% 88.8% 90.6% 91.7% 91.8% 92.4% 93.0%
83.6% 84.1% 86.0% 86.6% 87.1% 87.4% 88.4% 88.6%
他14都市
平均89.0%
最高の北九州市と比べ
て約10%の差がある
北九州市
京都市
名古屋市
静岡市
神戸市
千葉市
横浜市
川崎市
堺市
広島市
さ いた ま 市
福岡市
仙台市
札幌市
大阪市
19
Ⅰ 事業の現況
保険料収納率の低下による収入への影響
保険料収納率が90%であった場合と比べ、年間80億円あまりの収入を逸失している。
<収納率の低下による普通調整交付金の減額状況 (単位:億円)>
( )は減額率
19.2
<参考 普通調整交付金について>
27.0
20.3
25.4
22.1
○保険者間の財政力格差を調整することを目的
として交付される国庫補助金である
(7%)
(7%)
(7%)
(9%)
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
○前年度の一般被保険者にかかる収納率の実
(9%)
2005年度 (見込)
績によって、ペナルティとして減額される制度 が設けられている
(普通調整交付金の減額基準)
<収納率が仮に90%であった場合の保険料増収額 (単位:億円) >
56
57
46
36
28
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
収納率
減額率
収納率
減額率
90%∼
0%
79∼82%
11%
88∼90%
5%
76∼79%
13%
85∼88%
7%
75∼76%
15%
82∼85%
9%
∼75%
20%
2005年度(見込)
20
Ⅰ 事業の現況
国等への制度要望の内容
医療保険制度全般にわたる抜本的改善に向けて、国に対して要望活動を実施している。
<医療制度全般の社会的課題>
<国民健康保険独自の構造的課題>
加入者の高齢化率が高い
医療費の増嵩
加入者は
低所得者が多い
高齢化の進行
保険料負担能力が低い
医療技術の高度化
(医療費の増嵩)
【国への要望内容】
(抜本的要望)
(当面の要望)
・医療保険制度の一本化など抜本的な改善
∼国が保険者となったすべての国民を対象とする
・保険料収納率により普通調整交付金を減額する
現行基準の早期撤廃
医療制度保険への一本化
・中間所得者層の過重な保険料負担の緩和
21
第Ⅱ章 事業の現状分析と課題
22
Ⅱ−(1) 現状分析の全体像
本章では、事業収支改善に寄与する業務を3つの分野に大別して、それぞれの現状分析と問題点を抽出し、その
改善により期待される効果の概数について定量化を行った。
<全体像のまとめ (1/2)>
分 野
加入資格の適正化
目指すべき
・収納率の向上による普通調整 交付金の確保
方 向 性
何が問題か
・退職者医療制度適用による療 養給付費交付金の確保
・市外転出や他保険加入などによる 国保加入資格の喪失を保険者が把
握しきれず、調定額のみが加算され
て収納率低下の一因となっている。
・届出がないため退職被保険者の扶
養家族へ退職者医療制度が適用で
きないケースがあり、制度適用によ
る交付金を逸失している。
保険料の徴収
・保険料の確保
・収納率の向上による普通調整 交付金の確保
保険料収納率は年々低下し、2005
年度では政令市で最低の状況となっ
ている。また区別の収納率の格差が
拡大し、不振区の落ち込みが目立っ
ている。
レセプト点検
・事業支出の大半を占める 医療給付費等の抑制
医療費削減効果が政令市の中
で比較的高く、費用対効果も高い
が、内容点検等については拡充
の余地がある。
23
<全体像のまとめ (2/2)>
分 野
現在の対策
と課題
加入資格の適正化
・現地への訪問などの実態調査によ
り把握が図られているが、取組み状
況は区によりばらつきがある。
・該当者への届出勧奨が行われて いるが十分とは言えない。
保険料の徴収
レセプト点検
保険料の徴収体制の見直しや口座
振替の勧奨、長期未納者への行政処
分などの各種対策を実施しているが、
その効果検証が必ずしも十分でなく、
また区により取組み状況に差が生じ
ている。
・業務は全面的に委託されている が、委託にあたって市場原理が 働いていない。
・今後導入が予定される電子レセプ
トに対応し得る体制を検討する必
要がある
○不現住・資格確認調査の強化
○保険料の徴収の強化
○レセプト点検の拡充
個別の課題
仮に1,000世帯の資格喪失を発 見し処理した場合
仮に収納率が1%上昇した場合
レセプト点検の拡充等を行った場合
とその改善
→約7.5億円の徴収額が増加
→1.4億円程度の調定額が減少
効果見込*
→収納率が0.2%程度の上昇
→拡充に伴い300万円程度の委託費
が必要となるものの、年1,000万円 程度の医療費が削減
○退職被保険者への届出勧奨強化
仮に収納率90%を達成した場合
→年82億円程度の増収
(うち国庫補助増額は約25億円)
(他に間接的な抑止効果も期待される)
仮に3万人が新たに届出して退 職者医療制度を適用した場合
→1.7億円程度の交付金が増収
*効果見込は、各課題の大まかな改善ポテンシャルを示すために、2005年度実績などをもとに推計したもので、数値は概数である
24
Ⅱ−(2) 加入資格の適正化
<加入資格の適正化の全体の整理 (1/2)>
本節では、被保険者が本市国民健康保険への加入資格を新たに喪失、取得するにあたって、特に事業運営に大きな影響を
及ぼしていると考えられる、資格喪失(不現住、他保険加入)と退職被保険者の資格取得についての現状分析を行った。
①資格喪失の把握
−被保険者資格の正確な把握は、「国民皆保険制度」の基盤である国民健康保険事業の適切な運営に不可欠であることは
もとより、保険料収納率などの指標にも直接影響を及ぼすため、事業運営上極めて重要な要素である。
−国保への加入資格は被保険者の申請により把握されるが、転出や他保険への加入による資格喪失の際には被保険者の
相当数が届出をしないまま加入者として取扱われ、その調定額が収納率低下の一因となっていると想定される。
②退職者医療制度の適用
−また退職被保険者などへの退職者医療制度の適用による交付金確保も、収支改善に向けた課題となっている。
<新たな加入資格取得・喪失>
資格取得
転 入
住民基本台帳・転入により、確認
資格喪失
転 出
住民基本台帳・転出により、確認
(転出届出のない場合、確認できない)
社会保険
離脱
本人届出により、確認
社会保険
加入
本人届出により、確認
生活保護
廃止
生活保護担当より連絡あり、届出指導できる
生活保護
適用
生活保護担当より連絡あり、届出指導できる
出生
住民基本台帳により、確認できる
死亡
住民基本台帳により、確認できる
(年金受給権のある被保険者とその扶養家族に は退職者医療制度の対象となるが、対象者の 扶養家族へは届出がなければ適用できない)
(国保喪失申請がなければ確認できない)
25
<加入資格の適正化の全体の整理 (1/2)>
転出や他保険加入による加入資格の喪失、および退職による被保険者の新規加入に関するそれぞれの問題点等
は以下のように整理される。
問題点
加入者の
不現住
何がデメリットか
加入者が未届のまま市外に転
出した場合、保険者はその把
握ができない
加入者の 加入者が国保喪失申請をせ
他保険へ ずに他保険に加入した場合、
の加入
保険者はその把握ができない
・退職被保険者の扶養家族に対
退職被保険
しては、届出がなければ制度
者への退職
の適用ができない
者医療制度
・制度の対象者にとって届出の
の未適用
インセンティブがない
現在の対策
・郵送返戻から疑義のある世
帯を現地調査等により確認
・実質的な「もと加入者」の調定 ・不現住登録後、住民情報課
へ回付
額相当分だけ収納率が低下
し、普通調整交付金の逸失を
招いている
・現地調査などの現在の対策に ・所得状況等から資格に疑義
のある世帯に対し、証更新
相応のコストを要している
時に資格確認
・適切な国保喪失の申請を呼
びかけ
・制度適用による他保険からの
療養給付費交付金を逸失し
ている
・届出勧奨事務に相応のコスト
を要している
・対象者の退職時に、郵便物に
より届出勧奨を行っている
・制度適用のための届出を呼
びかけ
26
Ⅱ−(2) 加入資格の適正化
① 資格喪失 : 不現住調査の状況
調査により不現住であることが確認されたのは全体の7割程度に上っている。
<不現住調査実施状況 (単位:件)>
6,508
5,352
1,785
6,807
6,412
6,371
1,823
1,483
1,601
居住確認等
2,003
3,390
3,458
2,613
3,562
不現住登録*1
1,326
不現住登録後
資格喪失*2
(職権喪失)
2,868
481
2001年度
1265
02年度
1,816
1,976
03年度
04年度
・不現住が確認されても 資格喪失に至っていな
いケースが多い
・調査件数は年間6千件
前後であり、十分でない
可能性がある。
05年度(見込)
*1 不現住が確認されたものの住民基本台帳への反映が行われずに資格喪失に至っていない世帯
(ただしこの段階で、収納率算出の際には対象外とされている)
*2 不現住が確認され、住民基本台帳にも反映されて被保険者から外れた世帯
<調査概要>
対象世帯 : 郵送文書が3か月に3通以上の返戻の世帯
調査方法 : 訪問調査、公簿等の確認→不現住確認(不現住登録)→住民票の職権消除依頼→住民情報課にて調査→住民票職権消除→資格喪失(職権喪失)
27
Ⅱ−(2) 加入資格の適正化
① 資格喪失 : 資格確認調査の状況
調査により、未届出のまま社会保険等に新たに加入したことで資格喪失が判明したのは、調査件数の5∼9%にと
どまっている。一方、調査によれば未収世帯の20%が資格喪失になっており、現状の調査は十分とはいえない。
<資格確認調査実施状況 (単位:件)>
32,079
31,707
31,166
32,135
1,982
1,847
2,257
2,759
資格喪失
件数*
完
納
1,859
一部未収
36,380
全部未収
他保険加入
︵
資格喪失︶
<参考:調査対象世帯の加入・納付状況の全体内訳*>
20.1%
34,521
30,097
29,860
29,376
28,909
資格適正
件数
35.8%
100%=
1,104世帯
27.2%
2001年度
02年度
03年度
04年度
16.9%
05年度(見込)
* 無作為抽出した昼間不在の未収発生世帯を対象に約1年後 の加入・納付状況を調査したもの(本資料P48参照)
* 「資格喪失」は調査の結果、他保加入等により資格喪失した件数。
<資格確認調査概要>
対象世帯 : 世帯員が社会保険等に加入している可能性のある世帯・近畿地区外の病院での受診記録の多い世帯など 調査方法 : 住所確認 ・ 生計維持関係等の調査 → 被保険者への照会 ・ 訪問調査
→ 資格なしの場合 → 資格喪失届出 → 居所の確認なし → 「不現住世帯」へ 28
Ⅱ−(2) 加入資格の適正化
① 資格喪失 : 区別の資格確認の実施状況
不現住調査、資格確認調査とも区により調査件数や調査の内容に相当大きな差が生じており、統一的な取組みに
よる適正化の余地は大きい。
<不現住調査実施状況 (2005年度 単位:件)>
<資格確認調査実施状況 (2005年度 単位:件)>
︵
資格喪失件数︶
︵
不現住登録件数︶
600
500
400
700
600
500
400
300
平均:203.7
200
300
200
平均:115.0
100
100
0
0
0
200
400
600
*2005年度の区別の調査実績についてプロットしている
800
1,000
(調査実施件数)
0
1,000
2,000
3,000
4,000
*2005年度の区別の調査実績についてプロットしている
5,000
(調査実施件数)
<改善による効果試算 (数字はすべて推計値で概数) >
2005年度実績では1区平均300件あまり、全市で約7,600世帯の資格喪失を実態調査等により発見しているが、仮に更に1,000世帯の
資格喪失が発見し処理できれば、約1.4億円の調定額が減少し、収納率が0.2%程度上昇すると試算される。
14万円(一般世帯あたりの年間平均調定額等) × 1,000(世帯) = 1.4億円 ⇒ 年間調定額は約1.4億円減少
一般分の年間調定額は約687.3億円(2005年度実績)から約685.9億円に減少 ⇒ 収納率(一般分)は概ね0.2%向上
29
Ⅱ−(2) 加入資格の適正化
② 退職者医療制度 : 制度適用の概要
退職被保険者が届出するメリットがない状況であり、保険者の届出勧奨が重要となっている。
<退職者医療制度について>
○本制度による保険者(大阪市)のメリット
①制度の概要
医療給付費等の一部が他保険の負担となり、国保
会計の健全化に加えて、間接的には国保加入者の 負担抑制が見込まれる。
医療保険制度相互の負担の均衡化を図ることを目 的に、年金受給権のある被保険者*の医療費を保険 料と他の健康保険の拠出金で賄う制度。
②制度の適用
被保険者からの届出が基本(年金受給者本人は 2003年度より届出がなくても職権で適用)となっている。
○本制度の対象者(退職被保険者)のメリット
③制度の実績
退職被保険者の窓口負担割合が2割であったため、
制度適用により窓口負担が軽減されていた。
(∼2003年3月)
2005年度(見込)には保険給付費等の約13%に相当
する約363億円が交付されている。
(2003年4月∼)
〔退職被保険者などの医療費負担イメージ〕
(一般被保険者)
(退職被保険者)
医療費
被保険者窓口負担(3割)
国民健康保険負担分
退職被保険者の窓口負担割合が3割に引き上げ
られ、制度適用を受けるインセンティブがない状況 となっている。
被保険者窓口負担(3割)
他の健康保険
からの交付金
保険料
保険者が退職被保険者へ届出勧奨する必要が
生じている
* 厚生年金、共済年金などに20年以上加入(又は40歳以降に10年
以上加入)した方およびその扶養家族
30
Ⅱ−(2) 加入資格の適正化
② 退職者医療制度 :制度適用の現状
被保険者への制度適用のメリットがなくなったため、勧奨活動にも関わらず新規該当者は減少している。団塊の世代
の大量退職を前に働きかけを強める必要がある。
<全被保険者数に占める退職被保険者の割合 (2005年度(見込)) >
<届出勧奨件数と新規該当者数の推移>
17,673
20.1%
18.5% 18.7% 18.8%
17.7% 17.7% 18.2% 18.4%
18,680
12,939
退職該当者数(新規)
14.4%
15.2%
15.9% 16.1%
12.2% 12.6%
10,326
12,002
9.2%
勧奨件数
3,599
5,381
6,376
5,571
3,841
堺市
千葉市
広島市
北九州市
札幌市
神戸市
さ いた ま 市
2005年度(見込)
横浜市
静岡市
名古屋市
仙台市
2004年度
京都市
2003年度
川崎市
2002年度
福岡市
大阪市
2001年度
<改善による効果試算 (数字はすべて推計値で概数) >
適用強化により退職被保険者の割合が川崎市と同程度(12.2%)、すなわち約3%上昇すると仮定した場合*、適用者は新たに約3.3万人
増加し、約1.7億円の交付金の増収が見込まれる。
108.7万人(国保加入者) × 〔12.2%(川崎市の退職被保険者割合) − 9.2% (大阪市の退職被保険者割合)〕 = 3.3万人 ⇒ 適用者は約3.3万人増加
3.3万人(新規の制度適用者) × 9万円(1人あたりの平均保険料) = 29.7億円 ⇒ 退職賦課額は約29.7億円増加
〔29.7億円(賦課額の増加分)−3.9億円(新規の軽減・減免増加分)〕×〔100% − 93.25%(退職被保険者の平均収納率)〕=1.7億円 ⇒ 交付金は約1.7億円増加
*大阪市は国保加入率が政令市で最高のため退職被保険者割合は他政令市より低くなるが、ここでは大阪市に次いで割合の低い川崎市の割合を目標値と仮定している。
31
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
本節では保険料の徴収業務について、業務の流れや経過、および収納にかかる要素を4つ(加入者属性や他都市と比較した全市的
な状況、区別の状況、未収世帯の状況、および未収世帯へのペナルティの状況)に大別し、それぞれに関する現状の把握を行った。
①概要と経過
−所得等に応じた保険料を、口座振替または納付書により区単位で徴収しているが、納付がなければ訪問徴収などを行っている。
−未収世帯への督励は、区役所の保険員や徴収嘱託員が未収期間などに応じて分担して訪問や電話により行っている。また未収が
続くと、その期間に応じて保険証の有効期間の短縮や資格証の交付などの行政処分による措置を講じている。
−徴収強化を目指してこれまでさまざまな施策が実施されてきたが、その実施状況や効果分析は必ずしも十分ではない。
②全体収納率
−大阪市の収納率は83.6%(2005年度見込)と政令市中で最低かつ長期低下傾向にある。被保険者の属性別に見ると、高齢・高所得
で口座振替を行っている世帯ほど収納率が高い。
−他の政令市と比べると、大阪市は総じて被保険者の高齢化率が低く、低所得者が多いなど、高い収納率の確保には不利な状況が
ある。また口座振替率が6割程度(金額ベース)と比較的低く、徴収方法にも収納率の低い原因が見られる。
③区別比較
−地域特性を考慮しても区別の収納率のばらつきは大きく、不振区の底上げによる改善効果は大きいと推測される。
④未収世帯
−未収金額は中間所得世帯から多く発生しているが、本年度の保険料算定変更により、この所得層の負担が緩和された。
−未収世帯は1年後も約8割の世帯に滞納が生じていると推測される。
⑤ペナルティ
−未収により短期証の交付を受けた世帯は、約1年後には1/4が通常証に戻るが、資格証の場合はこの割合が約1割となっている。ま
た滞納処分では、差押よりもむしろ催告書送付による効果のほうが大きい。
32
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
全体の整理と目指すべき効果
収納率向上に向けた取組み状況や収納率の特性を把握し、マニフェストに掲げる公約の達成を目指す。
本節の整理
収納率の達成目標
○徴収強化に向けた取組み
○収納率の特性把握
目標収納率
・他の政令市との比較した特性
・区別ごとに比較した特性
・未収世帯の特性
・未収世帯への対応状況
⇒調整交付金のカットを受けない
90%
(「健康福祉局長改革マニフェスト」より)
<改善(マニフェスト達成)による効果試算 (数字はすべて推計値で概数) >
毎年約1.5%ずつ収納率が向上した場合、2011年度には約82億円の増収*が見込まれる。
82
(徴収強化による増収効果見込み)
68
50
39
23
34
57
57
45
調整交付金の増収
11
11
23
2006年度
2007年度
5
2008年度
5
2009年度
2010年度
85.5%
87.0%
88.5%
90.0%
83.9%
保険料の増収
11
25
2011年度
90.0%
(交付金カットは前年度収納
率に応じて実施されるため、
改善効果は1年遅れとなる)
←想定収納率
↑
マニュフェスト目標年次
* マニュフェスト目標年次である2010年度の収納率が90%として各年度の収納率を逆算し、各収納率に応じた調整交付金のカット分を加味して算出。
なお、ここでの収納率向上では徴収強化のみの影響を考慮しており、資格適正化等の改善による影響は考慮していない。
○ ここではペナルティの対象となる一般分収納率(2005年度=82.4%)をベースにしている。
33
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
① 概要と経過 : 保険料徴収事務の概要 (その1)
区役所単位で保険員と徴収嘱託員が分担して徴収が行われている。
<保険料徴収事務の流れ(未収カード発生まで)>
区役所
翌月末
︵
︵
毎月10日頃
納付書
発送等
毎月末
【徴収嘱託員】
督促状
発送等
収
納
情
報
︶
収
納
情
報
口座振替
未
収
の
場
合
毎月20日頃から
7
期
以
上
未
納
の
場
合
【保険員】
7ヵ月後
未収カード
7期以上未収の電話督励・
訪問徴収及び来庁納付相談
収納
情報
納期内集金
(徴収台帳)
【徴収嘱託員】
翌月15日頃
1∼6期未収の訪問徴収
未収徴収(徴収台帳)
34
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
① 概要と経過 : 保険料徴収事務の概要 (その2)
未収が続く加入者へは短期証や資格証を交付するなどの措置が取られ、最終的には滞納処分が行われている。
<保険料徴収事務の流れ(未収者への対応)>
区役所
【保険員】
【事務職員】
・
【保険員】
財
産
調
査
差
押
え
︶
収納情報
納付相談
収
納
情
報
滞
納
処
分
︵
計
画
短期証*3
資格証*4交付
︵
未収の場合︶
*2
納
付
誓
約
・
収納情報
未
収
の 場
合
︶
*1
未収
カード
【事務職員】
︵
7ヵ月後
【事務職員】
・
【保険員】
催告書送付
7期以上未収の電話督励・
訪問徴収及び来庁納付相談
*1 保険料を一括して納付することは困難であるが、年度内に完納する旨の申出があり、保険者がやむを得ないと認めたもの
*2 保険料を年度内に完納することが困難であり、計画的に未収分を納付する旨の申出があり、保険者がやむを得ないと認めたもの
*3 前年度6期以上の未収世帯等にペナルティとして交付しているもので、有効期限が通常(1年)より短い3ヶ月間とし、3ヶ月ごとに証更新手続きが必要である
*4 前年度9期以上かつ当年度6期以上の未収世帯にペナルティとして交付しているもので、被保険者は医療費を一旦医療機関に全額支払った後に区に申請し
て一部負担金等の差額を受給する
35
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
① 概要と経過 : 施策の変遷
さまざまな施策が実施されてきたが、各施策の実施状況やそれらの効果分析・評価は必ずしも十分でないと考えられる。
<近年の施策の変遷>
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
滞納世帯への電話・訪問等の督励
新規未収世帯への早期電話・訪問督励
督励の強化
局管理職による電話督励
発行(1994年より実施)
短期証の発行
資格証の発行
発行基準強化
発行基準強化
発行
発行基準強化
実 施
滞納処分の実施
(2006年10月末
廃止予定)
新規未収世帯等への督励
(平日夜間、土・日曜)
2001年2月より設置
保険料業務セン (昼間不在世帯への督励)
ター
配置(短期未収世帯への督励)
徴収嘱託員の
雇用
保険料の算出・
納付方法
所得比例方式・
10期納付
住民税方式・12期納付
36
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
② 全体収納率 : 加入者属性別の収納率の特性 (2004年度)
収納率は高齢者、高所得者および口座振替の加入者ほど高い傾向にある。
69.5%
79.9%
59.1%
収納率
世帯調定額占有率
12.2%
4.6%
20.5%
26.1%
23.6%
13.1%
90.4%
16.2%
81.9%
収納率
世帯調定額占有率
25.9%
13.2%
19.1%
7.5%
11.8%
15.7%
6.8%
∼50 50∼100 100∼200 200∼300 300∼400 400∼500 500万円∼
*収納率は金額ベース、世帯占有率は世帯数ベースで算出
10.8%
6.5%
d.納付方法別収納率
97.2%
収納率
世帯調定額
占有率
66.7%
54.7%
45.3%
口座振替が極めて高い
79.2%
86.1%
高所得は高く中間所得がやや低い
93.6%
81.0%
33.5%
33.0%
1人 2人 3人 4人 5人以上
c.世帯所得別収納率
83.0%
82.6%
82.5%
世帯調定額占有率
収納率
∼20歳台 30歳台 40歳台 50歳台 60歳台 70歳台∼
82.2%
85.5%
75.7%
単身世帯は低いがそれ以外は特徴がない
97.5%
89.0%
73.6%
b.世帯構成人数別収納率
世帯主が高齢なほど高い
a.世帯主年齢別収納率
口座振替 口座以外
37
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
② 全体収納率 : 他の政令市との比較(その1)
収納率の比較的高い政令市*に比べ、大阪市は被保険者の年齢や所得などの外的条件において不利な状況にある。
<被保険者の年齢階層別加入割合 (2004年度末現在) >
100% = 37.3万人 53.7万人 49.2万人 79.0万人 33.8%
70歳∼
30.8%
29.3%
27.9%
125.2
19.0%
20.0%
19.8%
17.8%
19.0%
19.4%
21.4%
14.1%
10.5%
10.2%
10.7%
11.0%
12.8%
18.4%
20∼
39歳
∼19歳
114.2
5都市平均
144.9
105.2
19.6%
21.8%
40∼
59歳
185.1
24.2%
21.0%
23.2%
(単位:万円/年)
195.0
109.7万人
22.1%
60∼
69歳
<被保険者の世帯あたり平均所得額>
22.0%
北九州市 神戸市 京都市 名古屋市 大阪市
名古屋市
神戸市
京都市
大阪市
北九州市
○京都市は2005年5月、名古屋・北九州市は6月、大阪市は7月、神戸市は
8月現在
大阪市は一般に収納率の高い高齢者の割合が低い
大阪市は北九州市に次いで平均所得が低い
*2004年度実績において収納率90%を達成した政令市は北九州市(93.0%)、名古屋市(91.5%) 、京都市(90.6%) 、神戸市(90.3%)の4市であり、大阪市(83.9%)は
札幌市(82.4%)に次いでワースト2位である。
38
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
② 全体収納率 :他の政令市との比較(その2)
大阪市は口座振替率が低く、若年層の収納率が特に低い。
<納付方法別収納割合 (2004年度末現在 金額ベース) >
訪問徴収
等
納付書等
19.4%
10.7%
14.0%
18.4%
0.3%
0.8%
33.8%
38.5%
<被保険者の年齢別の収納率 (2004年度) >
3.2%
38.8%
100%
95%
90%
85%
名古屋市
80%
75%
口座振替 70.0%
67.7%
70%
65.9%
60.7%
58.0%
神戸市
大阪市
65%
60%
55%
50%
北九州市
名古屋市
神戸市
大阪市
京都市
大阪市は高い収納率が期待できる口座振替の率が低い
∼20歳 21歳∼ 26歳∼ 31歳∼ 36歳∼ 41歳∼ 46歳∼ 51歳∼ 56歳∼ 61歳∼ 66歳∼ 71歳∼
25歳 30歳 35歳 40歳 45歳 50歳 55歳 60歳 65歳 70歳
大阪市は各年代とも低いが、特に20歳代の差が顕著である
39
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
③ 区別比較 : 保険料収納率の推移
全市平均を下回る区の収納率の低下が大きく、区ごとの収納率の格差は拡大傾向にある。
<保険料収納率の推移 (単位:%)>
91.6
91.4
91.3
90.9
90.9
91.3
90
上端:収納率最高区の収納率の推移
87.8
86.9
86.1
85
83.6
85.0
標準偏差*
83.9
82.8
81.9
81.5
80
中点:全市平均収納率の推移
77.5
75
下端:収納率最低区の収納率の推移
72.1
71.1
70
2000年度
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度(見込)
*データの散らばりの度合いを示す数値で大きいほど散らばっていることを示す。各資料の値と平均値との差の2乗を平均し、その正の平方根をいう。
40
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
③ 区別比較 : 区別の保険料収納率
最近5年間はすべての区で収納率が低下しており、90%以上の収納率を維持しているのは1区のみとなっている。
<区別保険料収納率>
(単位:%)
2000年度収納率
6.4
4.0
5.8
6.0
4.8
4.5
5.9
90.0 89.9 89.8
89.0 89.6
85.9 3.8
4.1
86.2
4.5
3.8
1.4
83.1 83.9
84.5
85.2
85.5
85.7
西
4.7
7.2
86.5 86.4 86.6 86.9
東住吉
4.7
85.3
89.8
87.7
城
85.6
88.6
港
82.8
85.2
87.2
4.1
3.9
3.5
90.4
91.6 91.4
3.1
3.9
2.7
87.4
87.7
88.5
天王寺
87.6
91.3
0.5
2000-05年度の
収納率低下
0.6
11.7
80.9
81.2
浪
淀
生
西
速
川
野
81.3 81.4
81.5
81.7
81.7
81.9
82.1
東淀川
80.4
85.8 86.0
86.4
90.9
収納率
2005年度(見込)
71.1
住
福
鶴
成
吉
島
見
阿倍野
東
旭
野
成
平
正
東
大
島
西淀川
都
央
北
中
花
住之江
此
0
41
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
③ 区別比較 : 区別収納率の要因分析
徴収方法や体制などの改善により、低業績区も改善の余地は残されていると考えられる。
<被保険者の口座加入率と収納率>
<被保険者の高齢化率と収納率>
45
高齢化率︵
%︶
口座加入率︵
%︶
75
40
65
35
55
30
45
25
R2=0.70
R2=0.51
35
20
70
75
80
85
90
95
70
75
80
85
90
95
収納率(%)
収納率(%)
* R2 :決定係数、2変数の互いの相関の高さを0∼1の範囲で示すもので、値が大きいほど相関が高いことを表す
42
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
③ 区別比較 : 口座加入率の特性
高所得・高齢の被保険者ほど口座加入率が高いが、区ごとにばらつきがあり改善の余地がある。
<平均世帯所得と口座加入率>
<被保険者の高齢化率と口座加入率>
高齢化率︵
%︶
平均世帯所得︵
万円/年︶
45
150
40
130
35
110
30
90
25
R2=0.69
R2=0.41
20
70
35
45
55
65
75
口座加入率(%)
35
45
55
65
75
口座加入率(%)
43
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
③ 区別比較 : 新規加入者への口座勧奨の効果
昨年度より新規加入者への口座加入の勧奨を強化したことで、一定の成果は上がっている。しかし区ごとの新規加
入者の口座加入率は、ばらつきが大きく改善の余地がある。
<新規加入者の口座加入率と収納率>
<新規加入世帯における口座加入世帯数>
2005年3月末
新規加入者
口座未加入世帯
2,186
5,770
(27.5%)
(72.5%)
2006年3月末
新規加入者
7,956
3,568
4,381
(44.9%)
(55.1%)
口座加入率︵
%︶
口座加入世帯
50
7,949
40
30
<大阪市全体の口座加入率の推移 (各年度4月分 単位:%)>
58
57
57.7
57.5
56.9
56.8
56.0
56
R2=0.60
20
70
55.7
75
80
85
90
55.0
55
95
収納率(%)
54.4
54
0
1999年度 00年度 01年度 02年度 03年度 04年度 05年度 06年度
44
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
③ 区別比較 : 区別の人員配置の検証
徴収嘱託員の配置には、更なる検討の余地があると考えられる。
<徴収嘱託員1人あたりの未収世帯数と収納率>
<職員1人あたりの未収世帯数と収納率>
職員1人あたりの未収世帯数
嘱託徴収員1人あたりの未収世帯数
700
600
500
400
1600
1300
1000
300
R2=0.62
R2=0.41
700
200
70
75
80
85
90
95
収納率(%)
職員に対する未収世帯数が多くなると収納率は低くなる
70
75
80
85
90
95
収納率(%)
徴収嘱託員に対する未収世帯が多くなると収納率は
低くなるが、その相関は必ずしも高くない
45
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
④ 未収世帯 : 未収世帯の属性
未収金額は、現役の中間所得世帯が多く、この階層への働きかけを強化する必要がある。
<所得階層別の未収比率 (2005年度 単位:%)>
100%=15.5万世帯
100%=137.3億円
2.1%
5.0%
2.1%
<年齢階層別の未収比率 (2005年度 単位:%) >
11.1%
100%=15.5万世帯
6.0%
5.7%
∼500万円
12.8%
∼400万円
23.9%
∼300万円
500万円∼
100%=137.3億円
70歳台∼
3.6%
5.9%
16.0%
17.3%
60歳台
21.8%
24.8%
50歳台
20.8%
40歳台
22.3%
30歳台
15.8%
11.3%
∼20歳台
世帯数ベース
金額ベース
21.3%
10.2%
18.1%
∼200万円
29.7%
22.5%
48.3%
世帯数ベース
7.6%
∼100万円
14.2%
∼50万円
金額ベース
中間所得者層は世帯数に比べ未収金額が多い
中高年層は世帯数に比べて未収金額が多い
46
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
④ 未収世帯 : 保険料算定方法の変更に伴う影響
2006年度から保険料を所得額(従前は住民税額)に応じた算定方式に変更したことにより、特に現役世代の中間所
得層の負担が緩和されることが見込まれている。
<算定方式の変更による保険料の変化>
① 65歳未満単身世帯
② 65歳未満2人世帯
52.4
53.0
53.0
53.0
05年度の
保険料
46.4
46.7
41.7
53.0
49.1
42.8
40.4
37.4
32.7
34.1
23.8
27.8
06年度の
保険料
06年度の
保険料
30.2
23.9
36.5
28.5
21.5
15.2
14.3
14.8
7.5
2.0
1.8
7.0
∼33 ∼50 ∼100 ∼150 ∼200 ∼250 ∼300 ∼350 ∼400万円
(年間所得)
中間所得層は負担減が見込まれる
6.7
2.8
19.5
05年度の
保険料
9.7
4.7
∼33 ∼50 ∼100 ∼150 ∼200 ∼250 ∼300 ∼350 ∼400万円
(年間所得)
低所得層が負担増となる一方で中間所得層は
負担減が見込まれる
47
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
④ 未収世帯 : 未収世帯のプロファイル調査の結果(加入資格)
保険料未収世帯の約2割は、1年足らずの間に他保険加入により国保加入資格を喪失していると推測される。
<調査対象世帯の加入・納付状況の全体内訳*>
完
納
対象:2004年7∼9月に保険料未収かつ昼間不在世 一部未納
を検討する基礎資料の集約を目指す
未
納
︵
資格喪失︶
目的:未収世帯の特徴を把握し、効率的な徴収方法 他保険加入
<保険料未収世帯のプロファイル調査の概要>
20.1%
帯のうち無作為に抽出した1,104世帯
方法:対象世帯について、未収発生から翌年5月末 35.8%
までの収納や督励状況を把握
100%=
1,104世帯
項目:調査対象世帯の属性、保険料と納付方法、未 27.2%
収期間と未収額、大阪市の対応(督励)状況、 他保険への加入状況などを調査
16.9%
48
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
④ 未収世帯 : 未収世帯のプロファイル調査(納付状況)
未収世帯の8割以上が概ね1年後も未収のままとなっている。
<未収世帯のプロファイル (調定額ベース)>
<未収世帯のプロファイル (世帯数ベース)>
100%=286
完納世帯数* 12.6%
未収世帯数*
(一部未収含) 87.4%
295
18.3%
81.7%
185
16.2%
83.8%
186
19.4%
80.6%
61
29.5%
70.5%
91
19.8%
80.2%
20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代
1,104世帯
17.4%
82.6%
合計
100%= 1,201
完納世帯の
年間保険料
8.7%
未収世帯の
年間保険料 91.2%
(一部未収含)
1,405
990
14.8%
12.0%
85.2%
1,169
25.7%
331
5,536万円
16.2%
16.8%
83.8%
83.2%
37.7%
88.0%
74.3%
441
62.3%
20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代
合計
・未収が生じた世帯の8割あまりは、その後も未収が生じ続けている
・年齢別では若年層の方が1年後の完納率がやや低い
* 2005年5月時点で他保険加入により資格喪失していることが判明した222世帯の納付状況を含む
49
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
④ 未収世帯 : 未収世帯のプロファイル調査(督励の効果)
未収世帯に対する督励の効果は低い。これは未収世帯への働きかけのスキルが確立していないためと考えられる。
<未収世帯における初回督励時期別の納付状況*2>
<未収世帯における督励回数別の納付状況*1>
46.7%
31.3%
26.4%
29.1%
19.8%
16.8%
15.4%
11.0%
9.1%
5.0%
なし 1∼4 5∼9 10∼14 15∼19 20∼
∼3ヶ月 3∼4ヶ月 4∼5ヶ月 5ヶ月∼
督励回数(回)
初回接触時期
督励回数が増えるほど完納率が低くなっており、一定
の回数以上は督励以外の対策が必要と考えられる
初回督励時期が未収後3ヶ月以降になると接触時期の
遅速よりも接触できるか否かが影響すると推測される
*1 調査対象の1,104世帯について、督励を行った回数と、2005年5月時点で完納した世帯の割合を示したもの
*2 調査対象の1,104世帯について、未収発生から初回督励までの期間と、2005年5月時点で完納した世帯の割合を示したもの
○調査対象の中で完納は192世帯とサンプルが少ないため、上記は異常値の影響があるなど統計的な信頼性が必ずしも高くないことに留意する必要がある
50
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
⑤ ペナルティ : 未収世帯への対応
保険料の未収が続いた世帯に対しては、その期間や世帯の財産状況等に応じた行政処分を行っている。
<未収世帯へのペナルティ>
長期未収世帯
短 期 証 の 交 付
対象:前年度6期以上の未
収累積世帯
内容:有効期間が通常の保
険証(1年)より短
い3ヶ月で、3ヶ 月ごとに証更新手続
きが必要な保険証を
交付
目的:接触機会を増やすこ
とによる滞納原因の
把握と未収の解消
資 格 証 の 交 付
滞納処分の実施
対象:前年度9期以上かつ
当年度6期以上の未
収累積世帯
対象:納付意志のない未収
内容:医療費を一旦全額負
担した後で、区に申
請して一部負担金の
差額を受給する保険
証を交付
と判断されたもの
累積世帯のうち、財
産調査等で処分可能
内容:・差押予告(催告書)
・財産の差押の実施
目的:接触機会を増やすこ
とによる滞納原因の
把握と未収の解消
○なお、被災や盗難、病気・負傷などの事情のある世帯等は、上記の行政処分の対象外としている
51
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
⑤ ペナルティ : 短期証交付の状況と効果
短期証を交付された世帯は、1年後も過半の世帯が短期証の交付を受けている。
<短期証交付世帯の収納状況*2>
<短期証交付世帯の状況*1>
100%=27,829世帯
短期証
100.0%
2004年4月
15.4%
その他*3
4.2%
資格証
56.3%
短期証
24.0%
通常証
収入総額
17.3億円
(41.8%)
調定総額
41.4億円
未収総額 24.1億円
(58.2%)
2005年5月
1年後も過半の世帯が短期証を交付されており、
通常証に戻った世帯は全体の約1/4となっている
短期証交付世帯の当該年度の平均収納率は約42%
*1 2004年4月時点で短期証が交付されている世帯を対象に13ヵ月後の交付状況
*2 2004年4月時点で短期証が交付された世帯を対象にした1年間の納付額
*3 転出などによる資格喪失など
52
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
⑤ ペナルティ : 資格証交付の状況と効果
資格証を交付された世帯は、1年後も過半の世帯が資格証の交付を受けている。
<資格証交付世帯の状況>
<資格証交付世帯の収納状況>
100%=9,033世帯
資格証
16.6%
その他
53.5%
資格証
100%
2004年4月
収入総額
1.7億円
(13%)
調定総額
12.6億円
未収総額 10.9億円
(87%)
21.0%
短期証
8.9%
通常証
2005年5月
資格証交付世帯の当該年度の平均収納率は約13%
1年後も過半の世帯が資格証を交付されており、
通常証に戻った世帯は全体の1割足らずである
53
Ⅱ−(3) 保険料の徴収
⑤ ペナルティ : 滞納処分の状況と効果
保険料未収世帯に対して最終的には差押を行っているが、実際の効果は差押で得る収入よりも、催告書の送付により
加入資格の喪失(対象外)が判明することや、催告書を受けて自主的に納付する効果の方が大きくなっている。
<滞納処分による結果と収入の内訳 (2005年度 金額ベース)>
100%=12.85億円
100%=0.52億円
対象外*1
16.2%
収入
4.0%
催告書段階での
自主納付*2
55.7%
・効果の大部分は、差押手続きの段階での加入資 格喪失の判明分や自主納付によるものである
未 収
・全体の約8割(10億円あまり)が未収のままである
79.8%
交付要求*3
・他保険への加入状況を把握できる体制を構築する
ことが急務であると考えられる。
25.9%
差押・参加差押
18.4%
滞納処分による結果
収入の内訳
*1 主に他保険への加入などの判明により、国保加入資格の喪失が確認されたもの
*2 保険料を納付する意志のない世帯に対して行う差押を前提とした予告通知(催告書)を受けて自主的に納付したもの
*3 他の執行機関の行う強制換価手続きに参加して、滞納する保険料に対する配当を受ける手続き
54
Ⅱ−(4) レセプト点検
①概要と経過
−診療報酬明細書(レセプト)について、資格等の点検および内容の点検が行われ、保険給付費の適正化が図られている。
−内容点検について、他の多くの政令市が直営で実施しているのに対し、大阪市では(財)大阪市民共済会への委託により 実施している。
−業務委託は1983年に開始され、現在では医科(調剤含む)は100%、歯科は16.7%の点検が行われている。
− (財)大阪市民共済会では55名の職員により月55∼60万枚のレセプトの点検を実施しており、業務体制、点検数および再
審査請求件数などの成果などは、国民健康保険の保険者としては全国最大規模である。
②点検効果
−レセプト点検による直接的効果である、療養の給付等にかかる保険者負担額に占める効果額の割合は政令市で最高レ ベルである。これは医科の全件を内容点検するなど他都市より点検数が多いことが一因と考えられる。
−効果額は増加傾向にあり、また点検に要する費用は効果額の14%程度にとどまっており、費用対効果が高い。
−大阪市における医療費は全国平均に近づいており、レセプト点検による間接的な効果が見られる。
③その他
−国において、2011年度からレセプト請求のオンライン化が予定されており、点検の効率化が期待される反面で経過時期に
は初期投資などのデメリットも予想される。
−診療報酬請求に疑義が生じた際には、医療機関への指導・監察権限を有する大阪府へ調査依頼が行われている。
55
Ⅱ−(4) レセプト点検
① 概要と経過 : レセプト点検の概要
資格点検等は全保険者が一律的に実施し、内容点検等は保険者(市)の判断によりその対象や内容が異なっている。
<医療費の支払の流れ>
レセプト点検
レセプト*1の作成
請求内容の審査
診療報酬*2の支払
診療などの実施
診療報酬
*2
の請求
医療機関が実施
請求内容の点検
保険者への連絡
国保連合会が実施
保険者(大阪市)が実施
*1 医療機関が診察を行ったときの医療費(診療報酬)を請求するための明細書(診療報酬明細書)の通称で患者ごとに毎月1枚作成される
*2 被保険者(患者)の窓口負担(概ね3割)を除く
<レセプト点検の内容>
①資格点検等(大阪市及び国保連合会による点検)
資格点検
請求されたレセプトが本市
国民健康保険の有資格者
であるかの点検
②内容点検等(大阪市による点検((財)大阪市民共済会に委託))
給付点検
重複請求及び請求点数の
算定誤りの点検
すべての保険者が全レセプトについて電算処理にて点検を実施
内容点検
医科入院レセプトの請求点数
の算定方法及びその内容につ
いてのより専門的な点検
縦覧点検
同一人の同一医療機関の外来レ
セプトなどを3か月分まとめて縦覧
する重複請求等にかかる点検
保険者により対象とするレセプトや点検内容が異なる
56
Ⅱ−(4) レセプト点検
① 概要と経過: 内容点検等の業務体制
大阪市は国民健康保険の保険者としては、最大規模の内容点検等の体制を有している。
<レセプト点検の実施体制 (2005年度)>
全面的
に委託
一部を
委託
大阪市 神戸市
<点検体制の比較>
○大阪市(2006年7月現在)
・医科・調剤の全件および歯科の16.7%のレセプト点検業務を (財)大阪市民共済会に全面的に委託
札幌市 さいたま市
千葉市 名古屋市
・(財)大阪市民共済会は合計55名(点検員39名、補助員16名) の体制で、月50∼60万枚のレセプト点検を実施
堺市 福岡市
○A市(2005年度)
嘱託職員20名により直営で高額レセプトを対象に実施
全面的
に直営
仙台市 川崎市
○B市(2005年度)
横浜市 静岡市
京都市 広島市
嘱託職員10名等により入院レセプトの全件点検及び入院外の
一部を実施、また歯科レセプトの一部を委託により実施
北九州市
○C社会保険(2005年度)
大阪市は全面的に委託しているが、他
の多くの政令市は直営で実施
職員、非常勤職員およびアルバイト計112名により入院全件、 入院外60%、調剤・歯科50%の点検(月約220万枚のレセプト点
検)を実施
57
Ⅱ−(4) レセプト点検
① 概要と経過 : 内容点検等の経過
概ね23年前からレセプト点検を実施し、医科・調剤の全て及び歯科の一部のレセプトについて点検を行っている。
<レセプト点検(内容点検等)拡充の経過>
100%
<大阪市国民健康保険のレセプトの枚数>
入院レセプト
(2005年度)
医科(入院)
1.6%
調剤
レセプト
62.5%
医科・
調剤レセプト
全件点検実施
37.5%
25%
外来レセプト
調剤
22.2%
100%=
約1,040万枚
歯科
13.5%
歯科
レセプト
16.7%
医科
(入院外)
62.7%
12.5%
1983
87
88
入院レセプト
点検開始
外来レセプト
点検開始
97 98 99 00
外来レセプト
縦覧点検開始
外来レセプト
点検拡充
調剤レセプト
点検開始
04年
歯科レセプト
点検開始
* 調剤レセプトは2000点未満は再審査の対象外
58
Ⅱ−(4) レセプト点検
① 概要と経過: 大阪市の特徴
大阪市は点検により医療機関にレセプトの再チェックを求める比率が高く、減額単価も平均的であることから、比較的
効率よく医療給付費等の抑制が行われていると考えられる。
<政令市における再審査請求の状況 (2005年度)>
6,000円
5,000円
4,000円
大阪市
3,000円
2,000円
大阪市以外の14市平均
2298円/件
1,000円
0円
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
*レセプト点検の結果、再審査請求を行った件数をすべてのレセプト枚数で除したもの
2.0%
2.5%
3.0%
大阪市は申出率が高いが、1件あたりの減額
効果は他都市の平均水準を確保している
再審査請求1件あた
りの減額効果(円/件)
(申出率*)
59
Ⅱ−(4) レセプト点検
② 点検効果 : 他都市比較
医科・調剤レセプトについて全件点検を実施している大阪市*は医療費削減効果が政令市の中で高い。
<レセプト点検効果額と保険者負担額に占める効果額の割合 (2005年度)> 1.60%
効果額の割合
1.55%
1.53%
1.46%
1.25%
24.2
19.9
1.02%
1.01%
0.98%
0.96%
0.90%
0.87%
0.85%
0.83%
0.67%
9.8
9.4
8.7
7.5
効果額(億円)
0.62%
6.0
5.9
4.3
3.5
4.0
5.3
6.8
6.6
3.1
名古屋市
さ いた ま 市
神戸市
北九州市
京都市
札幌市
広島市
千葉市
静岡市
仙台市
横浜市
福岡市
大阪市
川崎市
堺市
効果額は保険者負担額の1.5%程度で、政令市中では効果額、比率とも最高レベル
*大阪市では医科および調剤レセプトは全件、歯科レセプトは16.7%の点検を実施しているが、他都市では高額なレセプトなどに対象を絞って点検を行って いるケースが多い。
60
Ⅱ−(4) レセプト点検
② 点検効果 : 費用対効果
直接的な効果額(年間約24億円)は点検に要した費用を上回っており、投資以上の効果が見込まれる。
<レセプト実績に関する費用対効果 (2005年度 単位:億円)>
<レセプト点検による減額効果 (単位:億円)>
資格
点検
等
返還
金*2
21.09
21.57
3.77
4.14
過誤
返戻*1 10.27
23.50
23.89
4.12
4.19
11.74
11.71
24.19
4.70
①資格点検等
②内容点検等
(国保連合会)
((財)大阪市民共済会)
返還
金*2
4.70
11.88
15.60
11.19
過誤
返戻*1
差額
11.88
5.25
差額
2.37
委託料
7.62
内容点検等
7.05
6.24
7.65
7.99
7.62
0.98
2001 02 03 04 05年度
減額効果は増加傾向にある
効果額
コスト
電算処
理費用
効果額
コスト
・いずれの実績とも効果額が費用を大きく上回っている
・上記以外に、間接的に相当の抑止効果があると推測
される
*1:医療機関等に返還させるもの *2:被保険者に返還させるもの
61
Ⅱ−(4) レセプト点検
② 点検効果 : 種別比較
特に入院レセプトの内容点検等による効果額の単価が大きく、内容点検の方法について検討が必要と考えられる。
<診療区分別の1件あたりの内容点検等効果額>
<レセプトの種類別の点検実施状況> (2005年度 単位:円)
(2005年度現在)
8,929
内容
種別
4,494
資格点検等
内容点検等
資格点検 給付点検 内容点検 縦覧点検
入院
○
○
○
×
調剤
○
○
○
○
外来
○
○
○
○
歯科
○
○
△
△
平均3,934
1,719
入院
調剤
外来
1,577
歯科
○:全件実施 △:一部実施 ×:実施していない
((財)大阪市民共済会調)
<レセプト点検を拡大した場合の効果試算 (数字はすべて推計値で概数) >
・入院レセプトの縦覧点検を実施した場合:年間効果額は約850万円
年間効果額は計1,000万円程度と見込まれる
・歯科レセプトの点検率を16.7%→25%に拡大した場合:年間効果額は約125万円
(新たに必要な委託費は約300万円程度と見込まれる)
・なお、上記の直接的な効果額のほか、相当の間接的な抑止効果が期待できる
入院レセプト:31,527件(2005年度の内容点検効果件数)×3%(縦覧点検による目標とする効果件数割合)×8,929円(1件あたり効果額)=850万円(年間効果額見込)
歯科レセプト:点検率16.7%で年間効果額250万円(2005年度実績)⇒点検率を25%に拡大した場合の年間効果額は375万円と推計
62
Ⅱ−(4) レセプト点検
② 点検効果 : 間接的効果
レセプト点検の間接的効果である医療費の低下が認められる。
<大阪市の地域差指数*の推移>
1.18
1.16
1.160
1.152
1.141
1.14
1.136
1.129
1.128
05
06年度
1.12
医療費の全国平均との差が年々縮まっ
ており、レセプト点検効果が間接的に寄
与していると推測される
1.10
2001
02
03
04
*地域差指数=実績給付費/基準給付費 (2年前の実績に基づく)
なお基準給付費とは、年齢階層ごとの全国平均1人当たり医療給付費を当該保険者の年齢階層別の被保険者数に乗じて得た額
63
Ⅱ−(4) レセプト点検
③ その他 : レセプト請求のオンライン化の見通し
国において、2011年度からレセプト請求の完全オンライン化の方針が示されており、点検の効率化が期待される反
面で経過時期には初期投資などのデメリットも予想される。
<オンライン化により見込まれる影響>
(現 状)
(2011年度以降)
(予想される影響)
一部電子化 (その他は紙)
レセプト請求
完全オンライン化
○以下の点検の効率化が見込める
・レセプトの並べ替え・突合せ作業
レセプト点検
(内容点検等)
・ルーチンチェック など
電子化されたレセプトは
紙に出力し通常の紙レ
セプトと合わせて点検
電子化されたレセプトを
モニターで点検
○レセプトの保管や検索など効率的
な管理が可能
○点検員と同数のモニターの設置な
ど初期投資と保守に費用を要する
レセプトの保管
原則は紙で保管
○複数枚のレセプトは紙の方が短時
間で点検し得る場合がある
電子化データで保管
メリット・デメリットともに予想される
64
Ⅱ−(4) レセプト点検
③ その他 : 診療報酬の疑義に対する対応
医療機関からの不正不当な診療報酬請求の疑義が生じたときは、医療機関への指導監督権限を有する大阪府が調
査を行い、処置がとられている。
<不正請求が行われた際の対応>
被保険者
保険者(大阪市)
医療費通知等による
疑義発見
通報など
診療報酬の不正不当
請求の疑義確認
調査依頼
大 阪 府*1
指導・監査*2
医療機関
調査実施
*1 国民健康保険法に基づく指導・監督権限は国から権限委任された都道府県知事が有している
*2 不正請求などが明らかになった場合に、その悪質度により保険医療機関に「注意指導」または「戒告」または「取消し」の措置を行う
100%=80件
<大阪市から府への調査依頼件数>
6.4%
4.8%
100%=21件
41.7%
41.7%
61.3%
44.4%
2002年度
2003年度
2004年度
71.4%
2001年度
56.3%
歯科
37.5%
医科
11.2%
44.4%
100%=12件
調剤
100%=36件
32.3%
23.8%
16.6%
100%=31件
6.2%
*上記以外に柔道整復施術療養費(整骨院などで受けた施術にかかる療養費)についても調査依頼を行っている
2005年度
65
第Ⅲ章 改革に向けた方向性
66
Ⅲ−(1) 改革に向けた全体像
本章では、事業の改革プロセスを4段階に大別し、それぞれにおける施策と改革のねらいを整理した。
<本分析による改革の方向性とねらい>
(第1段階)
年度内に取組む施策
(第2段階)
早期に実行する施策
(第3段階)
検討を進める施策
(第4段階)
中長期的なオプション
主な施策
・収納率など数値目標の公表
・業務執行サイクルの確立
・徴収・滞納処分業務体制の整備 ・徴収業務形態の最適化に向
・局・区の連携強化
・目標体系の構築
・資格喪失情報の体系的把握
けた検証
・未収者対策の強化
・区の業務改善・活性化
・口座勧奨の拡充
・徴収エリアの最適化に向けた
・資格喪失者の確認強化
・管理部門への民間人材の活用 ・保険料納付環境の拡充
・退職被保険者への届出再勧奨 ・退職者医療制度の適用者拡大 ・レセプト点検の充実
改革のねらい
総合的な事業収支改善
(収納率向上)
不振区の底上
(収納率向上)
全市的な向上
徴収業務の最適化
○
検証
・他徴収業務との一元化の検証
○
○
○
67
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
加入者の年齢構成などの外的要因である収納難易度に配慮した上で、まず業務運営の改善による不振区の底上げ
を図り、続いて各種施策の実施により全体のレベルアップを目指す。
(収納率改善のイメージ)
<業務運営の改善による不振区の底上げ>
<収納率向上のための諸施策の実施>
収納率
︵高︶
︵高︶
収納率
︵低︶
︵低︶
(難)
(易)
収納難易度
(難)
(易)
収納難易度
68
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
① 第1段階 : 年度内に取組む施策
比較的容易に実施できるものについては、事業運営の改善を加速させる意味からも今年度中の実施を目指す。
今年度中に取り組むべき改善策
(数値目標等の公表)
○ 次年度の局経営方針への収納率等の数値目標の記載
○ 区ごとの収納対策年間計画の策定とそれらの概要版の公表
(個別施策)
○ 国保業務の単独目的での局長・区長からなる連絡会議を設置
○ 徴収嘱託員への定期的な研修会の実施
○ 未収者へのペナルティの厳格化と全市統一した基準による実施
○加入資格の適正化に関する実態調査の実施の徹底
○退職者医療制度の過去の未届者への再勧奨を実施
69
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 徴収業務執行サイクルの確立
局による全市的な方針に基づき、区は目標設定および実行計画を策定・実施し、また収納実績を自己分析・自己評
価して局に報告・協議するという、局と区が一層の連携を強化する業務執行サイクルの確立を図る。
<業務執行サイクル イメージ>
目標設定
(局の業務)
(区の業務)
「収納対策運営方針」
の策定
(未収分析)
↓
区ごとの重点
目標の設定
実 行
実行計画
評 価
集約版を公表
指導報告書を作成
最終収納
率を公表
収納状況
の分析
(局・区間で合意)
(報告) (指導)
(報告)
(協議)
徴収対策の実施
「収納対策年間計画」の策定
(区保険年金課に収納率向上
対策会議を設置)
・取組強化
(特別対策期間)
・状況により目標修正
・収納状況のとりまとめ
・収納結果の要因分析
収納状況の確認・分析
(区の対策会議)
70
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 収納率向上に向けた目標体系の構築
従来は区の業績指標として収納率そのものが重要視されてきたが、今後は収納率につながる各種の指標なども定
期的に局で検証する必要がある。また区の収納難易度も踏まえて、収納率の向上を目指す。
(業績指標)
〔 従 来 〕
〔 今 後 〕
収納率
収納率
(加入資格関係)
口座振替利用率
資格確認(資格確認・不現住調査)実施状況
退職医療制度の届出勧奨状況*
(徴収関係)
口座振替利用率、新規口座振替利用率
納付誓約・納付計画の提出率、進捗の履行監視
短期証・資格証の交付件数、滞納処分の実施件数
−高齢化率
−世帯増加率、異動率
−社会保険離脱割合
(区の特性分析)
−限度額・応益割・軽減世帯割合
−平均調定額、平均所得額
−年代別・所得別の未収金額
*収納率に直接的には関係しないが、収支改善に直結する指標として検証する必要がある
71
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 区における業務の活性化
実際に徴収業務を実施している区における業務の活性化、区間における情報共有や競争意識の啓発、あるいは区
における事業の中での重要性を高めるような環境づくりを目指す。
区長のコミットメント
全区的な情報共有・競争意識啓発
・区長マニフェストや経営方針へ目
標収納率を記載
・局と区の実務管理者、担当者が 集まる全体会議を定例的に開催
・従来の区長会とは別に、国保業 務の単独目的での局長・区長か らなる連絡会議を設置
・会議において、収納実績、および
その要因分析等を報告する
・また担当者で収納の取組み状況
や、成功・失敗事例等を発表する
イベントを設ける
・区保険年金課に設置の「収納率 向上対策会議」に区長が参画
区における徴収
業務の活性化
未収世帯への行政処分の厳格化
徴収員のスキル向上
・短期証・資格証の交付方針の統 一と厳格な運用
・保険員および徴収嘱託員への徴
収に特化した研修会の実施
・滞納処分の統一的な運用に向け
た検討
・区の業績等に応じた柔軟な配置 換えなどの流動化
72
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 区の業務プロセスの改善
業務によっては、その遂行過程において担当が入り組んだ状況が生じており、その連携強化を図る。
<担当の輻輳した主な業務>
例2:納付相談
例1:新規加入
(管理担当)
(保険担当)
(管理担当)
加入届出
納付相談
例3:不現住調査
(保険担当)
(管理担当)
(保険担当)
文書返戻
資格確認
資格異動
状況把握
訪問調査
証交付
喪失届出
公簿調査
証回収・訂正
不現住確認
・管理担当と保険担当の
連携強化が必要
所得調査
保険料賦課
口座勧奨
保険料確定
賦課内容説明
住民票消除依頼
納付相談
納付相談
賦課内容
再説明
減免適用
・業務分担のあり方に
ついて検討が必要
減免適用
73
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 民間等からの人材活用
徴収管理や滞納処分などの業務については民間など専門機関にノウハウが豊富に存在している。このためこうした
業務経験を有する民間人など外部人材の活用により、ノウハウの吸収や徴収業務全般の効率的な進捗管理などの直
接的効果に加えて、業務執行体制の引き締め効果などが期待できる。
<徴収管理部門に民間人材の活用した場合に期待される効果>
(直接的効果)
・徴収ノウハウの伝達・マニュアル化
・滞納処分の指導
執行体制の引き締め
・年間計画の進捗管理
局レベル
区レベル
・区の業績指標の設定のあり方
・徴収嘱託員の管理方法
・区担当者の動機づけ
・未収世帯への督励手法
・保険員・徴収嘱託員への研修
(間接的効果)
・収納対策年間計画の進行管理
・民間人登用による職場の
活性化
・局や区への巡回指導に
よる監査的機能効果
・収納対策運営方針の進行管理
74
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 体系的な実態調査による加入資格の確認
より効果的な全市共通の実態調査の実施により、資格喪失者の効率的な把握に努める。
現状と課題
取り組みの目標
具体的なアクション
各区が加入資格の実態調査
を実施しているが、これまでの
実績やノウハウの蓄積が体系
化されていない
資格確認調査・不現住調査の
効果的な実施を可能にする全
市共通の調査マニュアルの作
成
これまでの実績をもとに、費用
対効果を見極めた調査対象
世帯の絞込みや調査方法の
精査を行い、マニュアル化を
行う
期待される効果 :資格喪失世帯の効率的な把握とその調定額の排除による収納率向上
75
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 退職者医療制度の適用者の拡大
事業収支の改善のために、適切な制度の適用による財源の確保を図る。
現状と課題
取り組みの目標
具体的なアクション
制度対象者本人への職権適
用は2003年度より認められて
いるが、その扶養家族へは扶
養関係の個別認定が必要な
ため認められていない
・国保加入者の未適用者の可
能な限りの適用
・過去の未届者への再勧奨を
実施
・すべての新規対象者の適用
を可能とする扶養家族への
適用の推進
・扶養認定にかかる届出の簡
素化の実施
期待される効果 :制度適用者の拡大による他保険からの交付金の確保
76
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
② 第2段階 : 今後のスケジュール
時 期 項目・改善策
業務執行サイクルの確立
収納率向上に向けた目標
体系の構築
業
務
運
営
の
改
善
区における徴収業務の活
性化
徴収管理部門への民間
からの人材活用
体系的な実態調査による
加入資格の確認
退職者医療制度の適用
者の拡大
2007年度
2006年度
1∼3月
4∼6月
7∼9月
一部の体系的整理
未届者への再勧奨
1∼3月
4∼6月
本 格 的 整 理
収納率等の目標値の設定
徴収嘱託員への研修会の実施
調査実施方針の策定
10∼12月
本格実施
試行的実施
内部検討
2008年度
本 格 実 施
実 施
調査実施
未届者への再勧奨と扶養認定の簡素化
77
Ⅲ−(2) 総合的な事業収支の改善
③ 第3段階 : 検討を進めるべき施策
第1、第2段階では、主に収納実績が不振な区の底上げを目的に、概ね1年以内に実施を図るべき業務運営の改善策の提
示を行った。本節では前節に続く第3段階として、収納率の更なる向上など事業収支改善に向けた各種施策を列挙している。
これらの施策の実施にあたっては整理すべき課題等も想定されるが、いずれも一定の効果が期待されるものであり、早けれ
ば来年度からの実施も含めてその実現に向けて早急な検討を進める。
(業務体制の整備)
・保険員と徴収嘱託員の役割分担の整理
・業務に応じた能力給や歩合制の拡大など、徴収嘱託員への管理・報酬体系の見直し
・各区において実施されている滞納処分業務などの集約化による効率的な業務執行
(加入資格の適正化等)
・社会保険加入による資格喪失情報を把握するための社会保険事務所との連携強化に向けた協議
・退職者医療制度の適用者拡大のためのインセンティブの付与に向けた検討
(保険料納付における口座振替勧奨の拡充)
・新規加入者および徴収現場での勧奨の継続とともに、口座振替利用者へのインセンティブの付与に向けた検討
(保険料納付環境の拡充)
・コンビニエンスストアを窓口とする収納やインターネットを活用したマルチペイメント収納の実施
・上記に加えて、クレジットカードによる収納の実現に向けた検討
(レセプト点検の充実)
・レセプトの点検対象の拡充や点検方法の改善、および点検業務への市場競争原理の導入
・今後の電子レセプトに対応した点検体制の見直し
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Ⅲ−(3) 中長期的に検討すべきオプション
−前節までは、基本的には現行組織での業務執行をベースに改善等について検討を行ってきた。しかしながら、 これら改善策の効果は未定であり、また2008年度から国による大幅な医療制度改革が予定されるなど、今後の 国保事業収支の健全化に向けた見通しはなお不透明である。
−また国における「官から民へ」の方針はもとより、本市のマニフェストにおいても業務プロセス・形態の見直しや アウトソーシングは基本的な方針の1つとして掲げられており、国保事業においても改めて直営による適正な運営
範囲について検証を行う必要がある。
−以上の状況を踏まえて、ここでは第4段階として、特に収支改善の中心である保険料徴収業務に関して、業務執
行組織の改編も含めたオプションとその課題等の検討を行った。現在の制度のもとでは実行不可能なものもある
が、安定した事業運営が図れない場合の中長期的なオプションとして、今後、幅広い観点からより詳細な検討を 進める。
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Ⅲ−(3) 中長期的に検討すべきオプション
徴収業務形態のオプション
直営以外の形態では効率的な執行が期待されるが、公共性の極めて高い事業の執行という行政責任の整理や、
行政処分など公権力の執行業務との連携などの課題も多く想定される。
業務形態の選択肢
直 営
(現状の運営)
業務委託
(市場化テスト)
市職員や徴収嘱
託員による徴収
徴収業務を民間
事業者へ委託
メリット
デメリット
・全市的な方針が徴収員に直接伝 わり、一律的運営が行いやすい
・職員へ徴収インセンティブが付与し にくく、徴収効率が低い可能性がある
・行政処分など公権力の行使がスム
ーズに実施できる
・民間業者に比べ、徴収ノウハウが伝
達しにくい
・民間ノウハウを活用した効率的な 徴収業務が期待できる
・行政事務の軽減
・市としての方針が業務に反映されにくい
・行政処分などの公権力行使の際の整理
が必要
・職員の雇用の確保が課題となる
・現行制度では認められていない
独立行政
法人化
市が設立する法
人による事業運
営(地方独立行
政法人法)
・業務運営の効率化が期待できる (組織・人事・予算)
・行政事務の軽減
・市の主体性が薄れ、加入者・議会等と の信頼関係が損なわれる可能性がある
・行政処分などの公権力行使の際の整理
が必要
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Ⅲ−(3) 中長期的に検討すべきオプション
中長期的に検討すべきオプション : 徴収業務単位のオプション
業務エリアの集約や他業務との連携により一定の効率化が期待されるが、加入者へのサービス低下が課題となる。
業務単位の選択肢
行政区
区ごとの徴収
業務エリア
(ブロック制)
業務種別
未収対策業
務の一元化
・保険料の賦課、保険証の交付など
他業務との連携が取りやすい
デメリット
・職員数が多くなり業務効率が低い
・区が多く局の管理が行き届きにくい
・未納者への訪問徴収が効率的
(現状の運営)
区の集約化
メリット
市域を数ブロック
に分割して徴収
市税など他事業
の未収対策との
連携
・職員数の削減など業務効率の向上
が見込まれる
・保険料の賦課、保険証の交付など他業
務との連携が取りにくい
・局直轄の組織のため、全市一律的
な業務執行が取りやすい
・未納者への訪問徴収が非効率になる
・徴収業務の集約により職員数の削
減など業務効率の向上が見込ま れる
・保険料の賦課、保険証の交付など未収
対策以外の業務運営に支障が生じる可
能性がある
・滞納処分などのノウハウを持った 専門家を集約できる
・複数の債務のうち一部を収納した場合 の優先順位による問題がある
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参 考 資 料
(国保事業への影響が予想される今後の医療制度改革について)
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参考資料
国における医療制度改革の概要
2008年4月より新たな高齢者医療制度の創設など大幅な制度改革が予定されている。
(1) 医療費適正化の総合的な推進
① 医療費適正化計画の策定
○ 国が示す基本方針に即し、国及び都道府県が計画(計画期間5年)を策定 【2008年4月】
② 保険者に対する一定の予防健診等の義務付け
○ 医療保険者に対し、生活習慣病に着目した、健診及び保健指導の実施を義務付け 【2008年4月】
③ 保険給付の内容・範囲の見直し等
○ 現役並みの所得がある高齢者の患者負担 2割⇒3割 【2006年10月】
○ 70歳から74歳までの高齢者の患者負担 1割⇒2割 【2008年4月】
○ 乳幼児に対する患者負担軽減(2割負担)の対象年齢 3歳未満⇒義務教育就学前 【2008年4月】 など
(2) 新たな高齢者医療制度の創設
① 後期高齢者医療制度の創設 【2008年4月】
○ 75歳以上の後期高齢者の保険料(1割)、現役世代からの支援(約4割)及び公費(約5割)を財源とする新たな 医療制度を創設
○ 保険料徴収は市町村が行い、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が実施
○ 国・都道府県による財政安定化措置を実施
② 前期高齢者の医療費に係る財政調整制度の創設 【2008年4月】 など
(3) 保険者の再編・統合(国保の財政基盤強化)
○ 国保財政基盤強化策(高額医療費共同事業等)の継続 【2006年4月】
○ 保険財政共同安定化事業の創設 【2006年10月】 など
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参考資料
医療制度改革による影響 (2008年4月)
2008年4月に予定されている後期高齢者医療制度の創設や乳幼児の患者負担軽減などの医療制度改革により、
事業会計上の負担増あるいは負担減の影響が予想される。
<後期高齢者医療制度イメージ>
医療制度改革が国保財政に与える影響
<負担減の要素>
○ 後期高齢者医療制度の創設に伴い、老人保健医療費拠出金(5割負担)が後期高齢者支援金(4割負担)とな ることによる給付費等の減
○ 65歳∼74歳の被保険者にかかる給付費に対し、医療保険制度間における不均衡調整が行われることによる
給付費負担額の減
<負担増の要素>
○ 乳幼児に対する患者負担軽減(2割負担)の対象年齢を3歳未満から義務教育就学前(6歳未満)に拡充される
ことによる給付費の増 等
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