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電界放出形走査電子顕微鏡の活用
電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)の活用 金属材料、高分子材料の研究開発、 品質保証(改善)に関する調査事例紹介 芝浦セムテック株式会社 環境測定部 材料分析課 古味 秀人 1 内容 FE-SEMの原理・特徴 観察事例 イオンミリング法の原理・特徴 イオンミリング法を適用した断面試料の観察事例 SEM-EDXの原理・特徴 SEM-EDXの適用事例 2 材料分析課の業務内容 形状・色・内部組織 硬度・粗さ・寸法 ビデオマイクロスコープ 金属顕微鏡 走査電子顕微鏡(FE-SEM) 他 ブリネル硬度計 ロックウェル硬度計 マイクロビッカース硬度計 荒さ計 他 受託分析・立会分析 東芝機械グループ 一般企業・官公庁様 材料強度 引張・曲げ試験 疲労試験 試験片の作成 元素組成・化合状態 測定結 果 検索結果 材質:ポリエチレンテレフタ レート(PET) 固体発光分光分析 エネルギー分散形X線分析(SEM-EDX) 波長分散形X線分析(EPMA) フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR) 他 3 ショットキー走査電子顕微鏡の特徴 FE-SEM: Field Emission Scanning Electron Microscope 特徴・用途 電界放出形走査電子顕微鏡 高分解能 ~300,000倍 ・冷陰極型 (最高分解能 1.2nm) ・ショットキー型 低加速電圧観察:極表面凹凸 汎用SEMとFE-SEMのちがい 汎用型 日立 SU5000 熱に弱い材料 絶縁物 電界放出型 低真空観察(10~300Pa):軟質材、絶縁物 フィラメント形状 反射電子像による組成差の観察 電子源の大きさ 20~30μm 数~数10nm 輝度(A/cm3・sr) ~106 ~108 特徴 装置が低価格 低ランニングコスト 光源が小さく、明るい →高分解能 エネルギー分散形X線分析(元素組成分析) 最大試料サイズ:200mmφ×80mmH 重量500g以下 S/Nがよい 大電流時、高分解能 低加速電圧時、高分解能 4 高分解能観察(二次電子像) 金の微粒子 ステンレスの王水腐食 ステンレスの硝酸腐食 50μm 10nm ×500 ×500 粒子径を計測 100nm 2μm ×200,000 ×10,000 ×10,000 表面の微細凹凸を観察 100nm ×100,000 300nm ×50,000 300nm ×50,000 5 低加速電圧観察(二次電子像) 硫酸銅 500μm ×70 グラニュー糖 加速電圧 1kV 結晶の極表面形状を観察 ×10,000 1μm ×70 ×50 加速電圧 0.5kV ×10,000 熱に弱い材料を観察(有機物、高分子など) 1μm アルミナ系 セラミックス 塩化カリウム 500μm 500μm 加速電圧 1kV 結晶のステップ形状を観察 ×10,000 1μm 10μm ×2,000 加速電圧 0.8kV 絶縁物を観察 ×10,000 1μm 6 低真空観察 軟質材のそのまま観察 樹脂材上に付着したグリス 絶縁物のそのまま観察 グリス中の分散粒子分布 アルミナ系セラミックス 半固体、流動物を観察 アルミナ 亜硝酸ナトリウム ケイ酸塩系ガラス 分散粒子を観察 ×40 二次電子像 樹脂材 反射電子組成像 1μm グリスA 反射電子組成像 ×10,000 ×500 複合材を観察 グリスA 50μm 10μm グリスB 分散粒子が見られない 組成差で識別 反射電子組成像 500μm 150Pa ×40 加速電圧 15kV 反射電子組成像 ×500 反射電子組成像 ×2,000 二次電子像: 表面凹凸 反射電子組成像: 組成分布 70Pa 加速電圧 5kV 7 イオンミリング法による試料加工 機械研磨法とのちがい 脱落・変形等がない 空孔の閉塞・欠けがない 日立 IM4000 エッジダレがない 断面ミリングの原理 硬度差による段差ができない 加工後の試料断面 Arイオン 破砕層を生じない 1mm マスク 試料構成元素 試料 1mm ナノオーダーの薄膜断面の観察 加工範囲: 1×1mm前後 加工時間: 1~4時間 空孔形状・分布の観察 ※あらかじめ試料切断、樹脂包埋、機械研磨が必要です 樹脂とセラミックスなど複合材境界部の観察 結晶方位の観察 表面ミリング=試料面エッチング → 材料の組織観察 8 断面イオンミリング法による観察 銅表面の自然酸化膜 高速度鋼の内部組織 クロメート処理膜 W-Cr相 10nm V相 55nm クロメート層 75nm 銅母材 金保護膜 膜厚を計測 反射電子組成像 Znめっき 微細組織を観察 ×100,000 反射電子組成像 反射電子組成像 ×50,000 300nm 1μm 100nm 窒化ケイ素の内部組織 ×10,000 膜厚を計測 銅線の内部組織、介在物と空隙 引き伸ばし方向 窒化ケイ素 介在物(銅酸化物) イットリア 空隙 微細組織を観察 反射電子組成像 結晶の大きさ、形状を計測 ×30,000 300nm 反射電子組成像 ×2,000 10μm 介在物量、空隙率を計測 二次電子像 ×5,000 3μm 9 表面イオンミリング法による組織観察 球状黒鉛鋳鉄の内部組織 機械研磨後、Arイオンで表面をエッチング 黒鉛 1μm 反射電子組成像 ×10,000 パーライト部 フェライト セメンタイト 30μm 反射電子組成像 ×400 微細組織を観察 ミクロ組織を観察 500nm 反射電子組成像 ×30,000 10 SEM-EDXの原理 SEM-EDX: Scanning Electron Microscope -Energy Dispersive X-ray spectrometer 特性X線の発生領域(空間分解能) 走査電子顕微鏡-エネルギー分散形X線分析装置 材料組成と加速電圧に依存します e- 測定原理 0.005μm 0.5μm EDXスペクトル 3μm パルス高ごとに分別 0.9μm 3.3μm 入射電子 C Kα Fe Au C 15kV 0.007μm 15kV Au Mα 1kV Fe Lα 分析深さ~電子線の拡散深さ 半導体検出器 特性X線 K殻 L殻 分析領域の横の広がり:電子線径+電子線の拡散 特性X線の検出強度 共存元素による影響を補正 二次電子 (光電子) 散乱電子(反射電子) 蛍光収率=特性X線/(特性X線+オージェ電子) 重量濃度(wt%) SEM-EDX~ 微小部の重量濃度を測定 11 SEM-EDXの特徴 特徴 ・平面、均一固溶試料: 化学分析に近い定量値 ・凹凸試料、複合材(超硬合金など): 概略濃度が得られます ・検出元素: B~U ・検出限界: ~0.1[wt%] ・定性分析・定量分析 定性・定量分析 ・電子顕微鏡像と同一視野で元素マッピングが可能 ・微量検出(0.1wt%~数10ppm) ・微量元素の濃度マッピング(最大80×80mm) ・近接ピークの分離検出(Na-Zn, S-Mo, Zr-Ptなど) 元素マッピング → 電子線マイクロアナライザ(波長分散形X線分析装置:EPMA) 12 SEM-EDX 分析事例(表面処理膜) コネクタ端子めっき部断面の分析 イオンミリング法による断面試料作成 A B SEM-EDXによる定性分析結果 C D 3.3μm 外観 A Sn Lシリーズ 100.0 100.00 純Sn B E 母材 元素 ラインタイプ 質量% 原子数濃度% 元素 ラインタイプ 質量% 原子数濃度% Cu Kシリーズ 40.99 56.48 Sn Lシリーズ 59.01 43.52 Cu:Sn~4:3 元素 ラインタイプ 質量% 原子数濃度% Cu 反射電子組成像 C Cu Kシリーズ 60.71 74.27 Sn Lシリーズ 39.29 25.73 Cu:Sn~3:1 元素 ラインタイプ 質量% 原子数濃度% D Cu Kシリーズ 2.77 8.07 Sn Lシリーズ 7.53 11.75 Pb Mシリーズ 89.70 80.18 Pb rich 反射電子組成像 (端子断面全体) E 表面処理膜の構造を観察、計測 元素 ラインタイプ 質量% 原子数濃度% Cu Kシリーズ 97.91 98.87 Sn Lシリーズ 2.09 1.13 リン青銅 Pb Sn ×5,000 5μm 13 SEM-EDX 分析事例(やわらかい材料) 普通紙断面の分析 イオンミリング法による断面試料作成 ハサミによる切断 低真空観察 30μm やわらかい材料を断面から観察 二次電子像 ×500 二次電子像 ×500 反射電子組成像 試料が潰れているため 正確な断面観察が困難 10μm ×1,000 反射電子組成像 Ca 14 SEM-EDX 分析事例(高倍率マッピング) 高速度鋼の内部組織の分析 ×30,000 W相 Fe相 250nm W Fe 反射電子組成像 微細構造を元素で観察 ジルコニアセラミックスの内部組織の分析 ×30,000 Al O アルミナ ジルコニア 170nm 反射電子組成像 500nm 15 SEM-EDX 分析事例(表面変色) 金属材料表面の変色 SEM-EDXによる定性分析結果 変色部 正常部 加速電圧 15kV 下地元素も検出 1mm 外観 元素 C O Fe Zn 変色部 ラインタイプ 質量% 原子数濃度% Kシリーズ 23.51 42.25 Kシリーズ 30.06 40.55 Kシリーズ 16.96 6.55 Kシリーズ 26.29 8.68 他の検出元素 Si,S,Cl,V,Cr 元素 C O Fe Zn ラインタイプ 質量% 原子数濃度% Kシリーズ 18.41 45.19 Kシリーズ 12.04 22.18 Kシリーズ 0.00 0.00 Kシリーズ 66.08 29.80 他の検出元素 Si,S,Cl,V,Cr 加速電圧 2kV 正常部 X線発生深さ ~0.05μm ×30 二次電子像 反射電子組成像 元素 C O Fe Zn SEM-EDXによるマッピング分析 ラインタイプ Kシリーズ Kシリーズ Lシリーズ Lシリーズ オキシ水酸化鉄 質量% 12.89 26.15 52.28 8.68 原子数濃度% 28.42 43.28 24.79 3.51 元素 C O Fe Zn ラインタイプ Kシリーズ Kシリーズ Lシリーズ Lシリーズ 質量% 10.12 29.12 0.85 59.91 水酸化亜鉛 原子数濃度% 23.44 50.64 0.42 25.50 極表面を元素分析 二次電子像 Fe O 加速電圧 1kV Zn 複数画像つなぎ合わせによる低倍率マッピング分析 結晶物が見られる ×20,000 1μm 16 SEM-EDXによる異物解析 金属異物 SEM-EDXによる定性分析結果 分析個所 A 0.7mm 外観 反射電子組成像 二次電子像 ×70 元素 Si Mn Fe ラインタイプ Kシリーズ Kシリーズ Kシリーズ 質量% 0.10 0.28 99.62 低合金鋼 SEM-EDXによるマッピング分析 分析個所 B B A 亜鉛めっき Fe Zn Cr マッピング分析の結果、 Feが多く検出される個所とZnが多く検出される個所が見られた それぞれの個所でスポット分析を実施 元素 Si Cr Fe Zn ラインタイプ Kシリーズ Kシリーズ Kシリーズ Kシリーズ 質量% 0.35 0.33 2.98 96.34 +クロメート層 異物を多方向から元素分析 クロメート処理された亜鉛めっき鋼板片 試料の裏側を分析・確認 (分析個所Aと類似結果) 17 電子線マイクロアナライザ(EPMA)の活用 EDX・EPMAで可能 異物分析 EPMAで可能 銅合金の定量分析 球状黒鉛鋳鉄の濃度マッピング分析 反射電子組成像 外観 3mm 定性分析 定性分析 銅合金 低合金鋼 検量線定量分析 元素 C Si Mn P S wt% 0.12 0.28 0.45 0.03 0.02 EPMAで可能 JIS規格:S12C 0.10~0.15 0.15~0.35 0.30~0.60 0.030以下 0.035以下 元素 Cu Sn Ni P C Si 反射電子組成像 Mn ZAF定量分析 JIS規格:C5071 wt% 97.9 - 1.9 1.7~2.3 0.21 0.10~0.40 0.06 0.15以下 微量元素の定量分析 S10C・S12C・S15Cなど相当材 (ミクロ偏析を考慮) りん青銅 C5071相当材 微量元素の濃度マッピング分析 18 材料にかかわるさまざまな調査をおこないます ・破損解析、不具合解析(破面解析、組織、硬さ、引張強度などから破損原因を調査) ・異物解析(金属、セラミックス、高分子系物質など) ・材質調査(JIS規格との照合、内部組織観察など) ・表面処理膜の評価(めっき、クロマイト、リン酸亜鉛、黒染、CVD、窒化など) ・機械試験(引張・曲げ試験、疲労試験など テストピースの作成) 弊社設置の装置だけでなく、さまざまな解析方法・装置を使い、 弊社提携先と協力し、可能な限り対応させていただきます。 お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。迅速に対応いたします。 芝浦セムテック株式会社 環境営業部 担当:池谷(いけたに) 東芝機械㈱ 沼津工場内 TEL:055-926-5170 E-Mail:[email protected] 19