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日本溶射協会「2007年度論文賞」の受賞 「Best Poster Award (最優秀
エンジニアとしての女性の役割を探求しつつ この度、機械工学に魅了されたふたりの女性エンジニアの受賞が決定した。学部時代の彼女たちは多く の男子学生の中で、火花の散る溶接、 どろどろとした油を使用した油圧実習など、 「危険・汚い・きつい」 いわゆる「3K」イメージの強い授業も全て男性と同じようにこなし、無事卒業。さらに、 「材料力学・破壊 力学」という研究分野を究めるため、大学院へ進学。 個人を尊重してくれる教育を受けて 広島工業大学には、近郊の大学では類を見ない高度な実験装置が完備されている。 この装置をふんだ んに利用し、高度な開発技術と研究を自由にさせてもらえることは、一人ひとりの学生を真の学びへと 導く尊い環境と感謝している。 また、時として、大学の授業は「黒板と授業している」と感じるのに対し、木戸先生の授業は、学生の「理 解」や「学び」を中心とした「学生と向き合う授業」だった。高度な技術を身近な事例で取り上げ、 「今、 学んでいること」と結びつける授業は、学生の興味をかき立てる。そんな先生の授業に惹かれて、木戸 研究室を選んだ。 彼女たちの思いは、 「男に負けたくない」 この言葉だけを聞くと「気の強い女性」というイメージだ。 しかし、彼女たちの真意は、 「学部時代、 日々、男性と女性の違いを痛感した!」その結果だ。 つまり、体格、骨格などが女性と全く異なる男性は「体力」や「力」では比較にならないくらい優れてい る。 この特性を生かして、 男性は社会に貢献している。 しかしながら、女性の特性を生かしたエンジニアとしての活躍は未開の部分と感じる。 これからは、 この 未開の部分を開拓することを社会が求めていると感じる。だから、 「女性エンジニア」として社会に貢 献することが彼女たちの夢なのだ。 日本溶射協会「2007年度論文賞」の受賞 大学院 工学研究科 博士前期課程 機械システム工学専攻 修了(2005年) 知能材料・機器研究センター(第2ハイテクリサーチセンター)非常勤研究補助員 新原 美子 「セラミックス溶射材の静荷重下および 繰返し荷重下での表面ひずみとはく離生成」 ◆研究の概要 材料の表面部の特性を変える、 あるいは皮膜をつくるなどによって、材料の高性能・高機 能化をはかり新しい材料を創製する、 いわゆる表面改質法の一つとして、 「溶射」というの がある。 これは、材料の表面に改質したい機能を持った溶射材料を熱源で溶かして噴きつ けることによって皮膜をつくる方法である。この方法を用いて、千数百度という高温下で 使用される計測器等に熱を遮蔽する目的で金属の上に熱に強いセラミックスを溶射した ものが汎用されている。 しかしこのセラミックコーティングは高温などの厳しい環境下で 使用されるため、外部からの熱や力などによって表面のコーティングが剥がれる、 これを 「はく離」と呼ぶが、 これにより熱の遮蔽効果が損なわれる問題がある。このはく離はコー 新原 美子さん 木戸教授 佐竹 優さん ティング層と母材との間で生じるため、表面から観察することが難しいなどのため、稼動中 にそれを観察することができないという問題がある。そこで私たちは、 はく離を定義づけ、 それを稼動中に非破壊的に検出する方法を提案した。 ◆研究効果 高温環境下で使用される機械機器等が実際に稼動中に生じるはく離を、非破壊的にし かもその場で検出することによって、機器全体の損傷事故を未然に防ぐために有益だ。 ICEC (International Corrosion Engineering Conference)2007 「Best Poster Award (最優秀ポスター論文発表賞)」の受賞 ◆最後に 大学院 工学研究科 機械システム工学専攻 2年 木戸研究室 本学の7号館にはプラズマ溶射装置があり、実際に材料を自分の手で作って、それを 佐竹 優 引っ張ったり加熱したりして試験を行っている。良い材料を作るのにたくさんの失敗を経 験したが、そういった装置があるお陰で、 自分の手で触ることができ研究のイメージが湧き やすい。また現場の生きた知識が得られた。さらに、手で触れて感じることが理解力を高 め、苦労して悩んで解決することが自分の財産になると思った。 賞をいただくにあたって、木戸先生には毎晩遅くまで議論をし論文に赤ペンを入れてい ただき、多くの助言をいただいた。私は先生のような指導熱心で心の温かい先生に出会え て本当に感謝しています。ありがとうございました。 この賞は実験に協力してくれたゼミの 仲間と、先生の力添えがあったからこそ貰えたのだと思っています。賞をいただいたから には、 この先中途半端なことはできないので、 これまで以上に精進してがんばっていきた いと思っています。 ◆研究の概要 材料の表面のみの性質を変えて、新しい特性を持たせる方法のひとつに溶射がある。部 材を摩耗しにくくしたり、腐食から守るためなどに溶射は施されますが、そのような溶射材 に実機稼動による振動が加わると、疲労破壊を起こしてしまいます。また、それが水溶液中 だとさらに強度が低下し、 腐食疲労破壊を起こしてしまうことがあります。 溶射を施した部材の安全運転のためには腐食疲労破壊しにくいことが求められます。そ のため、そのような破壊を起こしにくい溶射材を作るにはどのようにすればよいのか研究 を行っています。 ◆この度の受賞にあたり 英語によるポスターの作製だったので大変だった。 それ以外にも、ただ単に実験結果を並べるだけでなくポスターを見ただけで研究の概要 が分かってもらえるように作るのが大変難しかったです。 今回、ベストポスター賞を頂けたのは、木戸先生の指導をはじめ先輩方やゼミ生の皆さ んのアドバイスやご協力のおかげと思っています。今回のことに満足することなく、今後と も地道に研究し、努力していこうと思っています。 4 日本機械学会フェロー賞 (若手優秀講演)受賞 大学院工学研究科機械システム工学専攻2年 岡部研究室 林 晃 さん 2007年3月7日、徳島大学にて『中国四国支部第45期総会・講演会』が開催され、 林 晃さんが、 日本機械学会フェロー 賞(若手優秀講演) を受賞いたしました。 土木学会中国支部 若手優秀発表者賞 受賞 『Ni−Al−Siメカニカルアロイング 粉末のダクタイル鋳鉄基板上への低温加熱固化』 ◆研究概要 メカ ニ カ ル ア ロ イン グ( M A )の メカノケ ミカ ル 活 性 効 果 を 利 用し 、N i 74.9mol%A1-3.1mo1%Si組成のMA粉末を、真空ホットプレスにより比較的低温 加熱下(773∼873K) で、 ダクタイル鋳鉄(JIS-FCD450)基板上に固化成形を試み た。その結果、 このような低温加熱下でも緻密で高硬度(1000HV程度)の表面被覆 層が形成されることがわかった。 「ものづくり」のはじまり 重工業に勤務していた祖父は、家でも何か作っていたし、その姿を目にして自分で 「ものをつくる」ことの楽しさを知りました。幼稚園の時、 おもちゃを分解して壊したり、 小学校に入ったらプラモデルばっかり作っていた。ちょっとでも手を抜くと上手くでき ず、悔しい思いもしたな。でもやっぱり「ものづくり」が好きだったから、説明書のわから ない漢字を辞書を引きながらでも読んでいましたよ。 文武両道を志す 小学校の高学年、別に興味もなかったのですが、両親に連れられて初めて広島市民 球場へ野球観戦に行きました。そこで、 カープの野村謙二郎選手のプレイに感動しまし た。それから、野球にはまり、中学からは野球部に入部して、 6年間ずっと野球を続けま した。野球は、 自己中心的な考えから協調性を重視した考え (チームワーク) を教えてく れます。だから、 自分の中では「文武両道」を目指そうと決めていたので、大学は野球と 勉強の両立できる大学、広島工業大学と決めていました。そして、 「ものづくり=機械」 と想って、学内推薦で第一希望の機械システム工学科に進学しました。 縁の下の力持ち 「ものづくり」の課程は「コンセプト→材料選択→設計→製造」と考えれば、 「材料」は 「ものづくり」のスタート地点、機械分野の基盤と感じました。そこで、 この分野での研究 を希望し、 じっくりと研究成果を出したいと思い、すでに学部3年で大学院進学を決意し ました。今回の受賞は、全く予期しないものでしたが、学部では2回、院生では4回、計6 回目の学会発表だったから、緊張することなくプレゼンテーションできましたね。あと、 駄目もとで、三菱重工業 広島製作所を受けたりして、 とにかく集中していた気がしま す。それが、功を奏したのか、三菱重工業 広島製作所で風力機械の分野に就職が内定 しました。就職の面接では、今までの研究成果、会社の入社動機としては重工への興味、 環境への配慮、社会貢献についてなど、 さらに三菱重工の1社しか受けていないこと、落 ちたら塾の講師でもするつもり (笑) ・ ・など最善の自己アピールはできたと思います。 風力機械の分野は自分の研究分野とは全く異なるけれど、石油プラントの心臓部 タービンなどの設計もあり、 「材料」分野と同じで、見えない部分だけどなくてはならな い物、 目立たずとも役に立つ、そんな「縁の下の力持ち」という分野です。すごく期待し ています。 祖父の意を継ぐ 今年2007年、 「フェロー賞(若手優秀講演)」の受賞また、三菱重工業への就職と吉 報が相次ぐ中、 「ものづくり」の楽しさを教えてくれた祖父が他界しました。同じ重工と いう職種に就き、 これから多くのことを同志として語り合えたのではないかと思うと惜 しまれてなりません。 今度は祖父が歩んだ「ものづくり」の道を引き続き、歩んで行きたいと思っている。 大学院工学研究科建設工学専攻2年 島研究室 胡 隆之さん 2007年6月2日、 山口大学にて土木学会中国支部研究発表会が開催され、 第Ⅲ部門 (土質基礎、地盤工学) で胡 隆之さんが、若手優秀発表者賞を受賞いたしました。 『衛星データを用いた 山地斜面の堆積土砂量の予測』 ◆研究概要 日本は、急峻な地形や脆弱な地質・地盤に覆われ、毎年多くの自然災害に見舞われてい ます。自然災害のなかで特に、気象災害による山地崩壊や土石流などが多発し、人的・物 的損失を被っています。 このような、災害の多発に伴い、防災事業は国・県・町・村をあげて対策が講じられてい ますが、少子高齢化に伴い投資余力の減少が予測されるなか、防災基盤の整備、安全な 土地利用の誘導など、ハード面とソフト面を一体的に整備し、効率化を図る必要性があり ます。そこで、瞬時に広い範囲を観測することができる人工衛星データを用いた地盤情 報を得ることで、効率的な防災事業につながると考えられます。 なお、本研究は中国山地の大山山腹斜面の沢部を対象に、人工衛星データより得られ た地盤情報を用い、崩壊の「規模」についての予測を試みたものです。 野球ができればいい 「恥ずかしいながらも受験に失敗し、浪人、 また失敗・ ・、滑り止めで受験した広島工業大 学に入学しました。」 本当は、教育学部にいきたかったんですけど、失敗しちゃって・ ・ ・工大に来ました。 滑り止めで工大を受験した理由は、広島六大学野球連盟に加盟していて、家からも近 かったからです。だから、入学してからずっと野球をしていました。別に、土木に興味が あった訳ではないけど、ただ平成11年6月に発生した『廿日市の土砂災害など未然に防 止できないのだろうか』という思いから、 「斜面災害の研究」に少しずつ興味が湧くよう になりました。 「野球」 と 「勉強」の両立 自分の中には、 「野球」でも「勉強」でも結果を出したいと思う気持ちがあり、大学3年 の夏に、広島六大学の選抜選手に選ばれ、ハワイ遠征に出場できたので、本当に嬉しかっ たです。 「勉強」の方は、当時は全く出せていなかったので、 「大学院に進学しよう」と決 めていました。ただし、大学院に進学するなら、 「特待生」を狙うつもりだったので、勉強 をして、希望をかなえました。 島研究室に入ったのは「野球ができるから! !」と言ったら怒られるかもしれませんが、 正直に言うと本当です。だから、 「卒業研究をしながら、野球ができますか?」と島先生 に尋ねたら、 「野球がしたい時には、野球をしろ!」と言われて、島ゼミに決めました。 (先 生には内緒です) もちろん、 「斜面災害の研究」を希望していたこともあります。 今後、島先生の研究の成果によって、斜面災害による被害の軽減に繋がるはずです。 防災知識を役立てて 学部の時から、国家公務員を 希望しており、今その準備をして います。もちろん、土砂災害の防 災などの関連職種に就くためで す。今は、まるで大学受験と同じ ように、物理など一から勉強しな おしています。社会人になって も、もちろん野球を続けていき たいと思います。 衛星写真 5