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大学生の政治不信に及ぼす政治的自己効力感の影響
SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) Citation Issue Date URL Version 大学生の政治不信に及ぼす政治的自己効力感の影響 原田, 唯司 静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会科学篇. 56, p. 203214 2006-03 http://doi.org/10.14945/00001017 publisher Rights This document is downloaded at: 2017-03-28T14:08:34Z 静岡大学教育学部研究報告 (人 文 。社会科学篇)第 56号 (2006.3)"3∼ 214 203 大学生 の政治不信に及 ぼす政治的自己効力感 の影響 Efect of the Political Ser‐ Πicacy On tte Sense of Poll饉 cal Dismst arnOng Universiけ Students 原 田 唯 司 Tadashi HARADA (平 成 17年 9月 30日 受 理 ) Abstract ¶℃ present study aimed at developing the scale br the Sense of political Self‐ emcacy and investigating its relationship to the sense of political distrust h undergraduates.Varimax rotated factor analySs for me Sense of Poldcal Self‐ emcacy revealed lve separate factors narned‖ ‖ "Knowledge",‖ 1ぼ luencial AbШ け and‖ Legitimacy‖ Powedessness‖ ,'り udgemental Abiliwit respectively。 Multiple variate regression analysis indicated signincant causal erects between■ e Sense of Political Distrust as a criterion varlable and the sense of political self‐ emcacy as explanatory Ⅵrhbles. ‖ :positively explained signiflcantly both factors of the sense of poldcal dismsto HOweve島 Powerlessnё sゞ ‖ Legitinacプ !SOlely had signincant positive erect on the sense of‖ effectiveness of the sense ofpolitical動 膿mcacy opacity of political proces」 L¶ he as an explanatory varlable on tt sense ofpolitical dism飢 ls discussed. 原田 (2001,2004)は ,大 学生 の政治不信 が “ 政治過程 の不透明性"と “ 担 い手 の反役割行動"と 命名可 能な 2つ の因子 か ら成 り立 っている ことを明 らかにし,さ らに ,こ れら 2つ の政治不信 の構成要素 と政治 的関心 との間にそれぞれ異なった関連性が認 め られることを報告 している (原 田 ,2003).す なわち ,政 治 不信 の うちで “ 政治過程 の不透明性"を 内容 とす る不信感 は政治的関心 との間に有意 な正 の ,他 方 ,“ 担 い 手 の反役割行動 "は 政治的関心 との間に有意 な負 の因果的連関を示 していた . この結果 は ,一 口に大学生 の政治不信 とい つて も,ど の側面・ 内容に視点を当てた不信感情 であるのか によって機能 の仕方が異 なるとともに ,政 治不信 を感ず る対象 や領域が個人間で相違 してい る可能性 を 示唆 している.“ 政治過程 の不透明性"に 関わる不信感情 を多 く抱えてい る者 は i“ 担 い手 の反役割行動 "に 目を向けた不信感情 を持 つ者 に比べ て政治に対す る関心 が高 い傾向がある とい う結果 は ,政 治的関心 の 低 さが単純 に政治不信 の強さと結 びついてい るわけではない ことを示 している . “ 政治過程 の不透明性"に 起因する政治不信 は ,政 策決定 や予算 の配分 と執行 ,税 金の使 い道な どの政治 的な意志決定 と遂行過程 に関す る情報開示が十分 では な く,ど の ような政策が どの ような根拠 で決定 さ れてい るのか ,た とえば税金が果た して本来的 に必要な目的のため に有効 に活用 されてい るのかなどに ついての十分な説明が政府当局 か らなされていない とい う認識 に関わつてい る.こ のことは ,情報開示 の 204 原 田 唯 司 不十分 さが政治一般の信頼感 を失 わせ る重要な要因であ ることを示唆 してい る.同 時 に ,情 報開示 や説明 が十分 ではない ことが大学生 の政治不信 の一角 を構成す るとい うこ とは ,そ の前提 として政治に関する 重要な動 きであ るとか ,政府の政策の 方向性 といつた大 まかな流 れについて ,あ る水準以上の興味や関心 を持 つ こと,言 い換 えれば政治の動 きを一定以上の 自我関与対象 として認識 してい ることが必要 となる . 大学生 において政治 に対す る関心 と “ 政治過程 の不透明性"を 内容 とす る政治不信 とが正の因果的連関を 示 した ことは ,政 治不信 を強 く持つ者 の中 には ,必 ず しも政治か ら撤退 してぃるわけではな く,ま た無関 心 であ るわけで もな く,む しろある水準 を超 えた興味・関心 を持 つ者が多 く含 まれてい ることを示 してい る . また ,原 田 (2003)は ,政 治不信 の うちで “ 政治過程 の不透明性"は ,社 会か らの撤退志向が弱い者 ほど 強 まる一方で ,“ 担 い手の反役割行動"の 側面 に関わつた政治不信 は ,自 己およびその周辺 のことが らに関 心 を限定 した私生活中心主義傾向が強 くなるにつ れて強 くなる傾向 を見出 した。社会か らの撤退志向 と は ,“ 社会一般 のことか ら身 を引 いていたい"“ 自分か ら進 んで社会に参加 しようとい う気持 ちはない"や “自ら進 んで社会のことに関心 を持 つ必要 はない"な どの項 目か ら構成 され ,社 会 と自己 との心理的距離 を遠 くしてお きたい とす る心性 を表 している . 以上か ら,政 治的関心 の高 さと社会か らの撤退志向の弱 さ,す なわ ち社会 との関係維持志向 とはともに 政治不信 の うちで “ 政治過程 の不透明性"と 正 の関連があることが うかがわれる.こ のことは ,政 治的関 心 の高 さと社会 との関係維持志向 を示す心理的背景 として ,個 人が内面 に社会や政治のことが らに対 し てよ り積極的 に関与 しようとす る意欲や動機 を保持 していると仮定す ることがで きることを示 してい る . 政治過程 の不透明性"に 注 目 した政治不信感情 換言すれば ,政 治領域 に関す る 自己効力感が高いこ とが “ の生起に影響 を与 えている可能性があ る.す なわち ,“ 政治過程 の不透明性"と い う視点 に立 った政治不信 が生ず る心理的背景 には ,政 治的関心 の高 さや社会 との関係維持志向で代表 されるような政治 に対す る 「とが 可能であ る 積極的な行為傾向や信念が存在 してい ると仮定す るこ . このような政治 に対す る積極的な構 えを生 み 出す個人内部 の動機的要因のことを本稿 では政治的 自己 効力感 (Sense of Political Self‐ EEcacy)と 呼ぶ こ ととす る.政 治的 自己効力感 は新 しい概念 であ り,そ の 厳密 な定義 や構造 に関 しては今後 の検討 に委 ねざるを得 ないが ,現 在の ところは ,政 治 に関与 しようとす る意志 の基盤 を構成す る個人の能力 に関す る評価的感情 と考 えてお くこととす る.端 的 に言えば ,政 治 に 関与 しようとする意志や行動 に関す る個人の 自己評価的感情 のことでああ る.政 治的 自己効力感 とい う 概念 は ,当 然 の ことなが ら社 会的認知理論 の 中核 をなす概念 の一 つ で あ る 自己効力感 (Sense of Self‐ Erlcacy)と 密接 に関連 している.自 己効力感 とは ,個 人がある状況において必要な行動 を効果的 に遂行 で きる可能性 の認知 のことである (成 田他 ,1995).政 治的 自己効力感 は ,政 治 とい う領域 に関 して個人が 持 つている効力感 を表 し,政 治への関心 を持 った り,社 会 との関わ りを保ち続ける といった行動 を遂行 で きる とい う個人の信念や感情 のことを指 している考 えることができる . ところで ,政 治心理学 の領域では ,政 治的 自己効力感 に類似 した概念 として政治的有効性感覚 (Sense of Political E題cacy)と い う概念 が用 い られてきた。政治的有効性感覚 とは ,政府 の決定 に市民が影響 を与 え ることが可能であるとみ なす信念 (CaFnpbell et J。 ,1960)の ことを指す。政治的有効性感覚 は政治的態度 や行動 に影響 を与 える重要な要因であ る ことが指摘 されてきた (Hess&Tomey,・ 1967な ど)が ,1970年 代半 ば頃から “内的政治的有効性感覚"と “ 外的政治的有効性感覚"と の 2元 的構造を持 つこ とが指摘 さ れるようになった (Balch9 1974).内 的政治的有効性感覚 とは ,“ 政治システムの中で何 が生 じているのか を理解 した り,政 治 システムに対 して意見 を述 べ た り,影 響 力 を行使 す る能力 に 関す る 自己認知" (Smetko&Valkenburg,1998)の ことを指 し,他 方 ,外 的有効性 感覚 とは ,“ 市民 の要求が政治 システム に 大学生 の政治不信 に及 ぼす政治的自己効力感 の影響 205 対 して影響 を与 えることがで きる とい う個人の信念"を 意味す る (McPhernOn et al。 ,1977).内 的一外的政 治的有効性感覚 の相違 は ,端 的 に言 えば個人の認知対象 が どこに向か っているのかにあ るといえる.内 的 政治的有効性感覚 は ,政 治 システムや政治過程 に対 して 自分 自身が関与す る ことがで きるだけの能力 や 資格 を持つ と個人が考 える程度 と表現す る ことがで きる ことか ら,個 人の認知対象 は 自分 自身の内面 に 向け られてい るといってよい。他方 。外的政治的有効性感覚 は ,市 民 としての意見や要望 を政治の担 い手 (政 府 や政治家 ,政 党 ,官 僚 な ど)や 現行 の政治 システムが どの程度受容的であ るととらえるかに関連 して い ることか ら,個 人の認知対象 は政治の担 い手 や システム とい う外部対象 となる。本稿 で用 い ようとす る 政治的自己効力感概念 は ,こ こでい う内的政治的有効性感覚 にきわめて類似 した内容 を持 ってい る 原田 (2005)は ,従 来使用 されてきた内的政治的有効性感覚 を測定する尺度項 目をベースに ,特 性的 自 . 己効力感尺度 (成 田他 ,1995)な どを手がか りとして ,政 治 に対す る関わ りを引 き出す ことに寄与す ると 無力 考 えられる項 目をい くつか加えて政治的 自己効力感尺度 の開発 を行 ってい る.作 成 された尺度 は “ 一般的有効感"お よび “ 正 当性"と 命名 された 5つ の下位尺度か ら構成 されてい 感",“ 判断力",“ 知識",“ ― る.政 治的自己効力感 の どの側面 が政治不信 の どの側面 と関 わ りを持 ってい るのかについ て検討す る こ とは ,政 治不信 が生ず る心理 的背景や規程因の一端 を明 らかにすることにつ ながるであ ろ う.そ こで本研 究 においては ,政 治的自己効力感および政治不信 の測定尺度 を整備するとともに ,政 治的 自己効力感 の ど の要素が政治不信 の どの側面 に因果的連関 を示 してい るのかを明 らかにするこ とを目的 とす る . 法 方 1.被 調査者 と調査 日時 静岡県内の国立大学お よび私立大学 の 2∼ 3年 生 197名 (男 性 57名 ,女 子 140名 )に 対 して ,2005年 1月 に質問紙調査 を実施 した . 2.質 問紙の構成 (1)政 治不信 :原 田 (2003)が 作成 した尺度 に若干 の加除修正 を行 った 27項 目か らなる尺度 である。 “ 政治過程 の不透明性"お よび“ 担 い手の役割違反行動"因 子 の 2因 子 か ら成 り立つ ことが仮定 されてい る。 ″ て “そう思 わない"か ら “そ う思 う"ま での 4段 階評定 を求め ,順 に 1∼ 4点 を与 えて得点 各項 目に対 し 化 した . (2)政 治的 自己効力感 :こ れまでの 自己効力感 に関す る測定尺度 や既存 の政治的有効性感覚尺度 を手が 判断力", か りとして ,18項 目に整理 した.因 子分析 の結果 ,“ 一般的有効感",“ 政治的無力感"お よび “ “ 知識",“ 正 当性"の 5つ の因子 か ら成 り立 ってい る。回答 は “まった くあてはまらない"か ら “とて もよ くあてはまる"ま での 4段 階評定 によつて求め ,順 に 1か ら 4点 を与 えて得点化 した . :原 田 (2003)が 作成 した lo項 目か らなる尺度 であ り,主 因子法 を用 いた因子分析 の 政治 との間の主観的距離感"と 命名 される 2因 子構造 を持つ ことが 結果 ,“ 政治に対す る興味 0関 心"と “ (3)政 治的関心 選挙 で 今 の国の政治動向 に対 して関心 が強 い"や “ "と い った一般的 な関心・興味 と,“ で きるだけテ レビやラジオの 各党の議席が どうなるのか興味 がある 確 かめ られてい る.“ 政治 に対す る興味・関心"は ,“ 政治 ニ ユース を見 た り聞 いた りしてい る"や “ 身の回 りの人 と国の政治問題 について話 し合 う機会があ る"の ような政治 に関す る情報 に対す る接近行動 を表す 7つ の項 目か ら構成 されている。また 。“ 政治に対 206 する主観的距離感"は 原 ,“ 田 唯 司 どの政党が政権 を担 お うとも自分 には関係ない と思 つている",“ 政治的な問題 に は関わ りを持 たない ように している"お よび “ 友人 との会話 で政治の話題が出ることはない"の 3項 目か ら構成 されてい る.“ 政治に対す る興味・関心 "お よび “ 政治に対する主観的距離感"と もに ,そ れぞれの 因子得点 を分析 に使用 した . (4)簡 易版特性的 自己効力感尺度 :成 田他 (1995)が 開発 した特性的自己効力感尺度 の うちで因子負荷 量の上位 7項 目を使用 した.“ 何 かを終 える前 にあ きらめて しまう で きる自信 がある",“ (― )",“ 自分が立てた計画 は ,う ま く は じめは うまく行 かない仕事 で も,で きるまでや り続ける"な どであ る.主 因子法 に よる因子分析 の結果 ,一 因子性が確認 されている.因 子得点 を特性的 自己効力感 の指標 とした . 結 果 1.政 治的自己効力感の構造 と諸変数 との関係 Table lは ,政 治的 自己効力感尺度 18項 目に対す る評定結果 に基づいて ,主 因子法 による因子分析 を行 い ,さ らに varimax回 転 した結果` を示す.固 有値 の減少傾向か ら 5因 子解が適切 であ ると判断 し,負 荷量 の大 きさと方向 に基づいて各因子 の解釈 と命名 を行 つた。なお ,こ こでは ,原 田 (2005)の デー タを再分 析 した結果 に基づ くこととす る . 第 1因 子 は “自分 のよ うな若者が積極的 に政治 と関 わつた として も,政 治のあ り方が変 わることは な い"な ど 5項 目の負荷量が高 く,政 治 に対す る意見や要望 の反映が見込 め ないこ とを表す内容 の項 目か ら 構成 されているので ,“ 無力感"因 子 と命名 した。内容的 には政治に関す る自己効力感 を欠いた状態 を表 し てい ると考 えられる.ま た ,第 2因 子 は “ 必要 とあれば ,自 分 の政治に対する考 え方 をはっ きりと表明す ることがで きる"な ど 3項 目の負荷量が高 く,自 らの政治的判断能力や見解表明 に対す る自信 を示す内容 か ら構成 されているので “ 判断力"因 子 と命名 した。第 3因 子 は “各政党の考 え方や理念の違 い をあ る程 度説明で きる"な ど 2項 目の負荷量が高 く,主 観的ではあ るが政治に関す る知識が一定 レベ ル以上あるこ とを自認 してい る内容 の項 目から成 り立 っているので ,“ 知識"因 子 と命名 した.第 4因 子 は “ 選挙 で有権 一 "な 者が投票す る 票 は ,国 の政治を動 かす もっとも大 きな力 であ ると思 う ど,既 存 の政治的有効性感覚 尺度 に含 まれる項 目で構成 され ,ま た ,自 分 を含めた市民個 々が政治 に影響 を与 えることがで きるとの確 信 に基づ く考 え方 であ ることか ら,“ 影響力"因 子 と命名 した.さ らに第 5因 子 は ,“ 自分 には国政選挙 で投 票す る資格が十分 にあ ると思 う"な ど 3項 目の負荷量が高 く,政 治 を比較的身近 なもの としてとらえ ,政 治 に参加す る資格 が 自分 には備 わつてい るとい う考 え方 を代表 してい ると考 え られる こ とか ら,“ 正 当 性"因 子 と命名 した。なお ,各 因子 に負荷量が高い項 目の合計値 と個 々の項 目得点 との相関は ,性 別・学 年 を問 わずすべ ての因子で 1%水 準 で有意 であ つた.こ のことは ,各 因子 とそれに含 まれる項 目とが互 い に整合 した関係 にあ ることを示 し,尺 度 と しての信頼性 の傍証 となる . 以上か ら,本 研究で用 いた政治的 自己効力感尺度 は ,“ 無力感",“ 判断力",“ 知識",“ 影響力"お よび “ 正 当性"と 命名可能 な因子 か ら構成 され ,そ れぞれ満足 で きる信頼性 を備えた下位尺度か ら成 り立 っている こ とが示 された。 これ らの うちで第 2,3及 び第 5因 子 は政治に関わる際の個人の能力 に対す る 自信 を表 し,他 方 ,第 1因 子や第 4因 子 は項 目の内容 か ら見 て ,政 治 シ ステムに対す る評価が含 まれてい ることか ら,こ れらの間 に は若干 の意味的な相違が認 め られるように思 われる.前 者の方が よ り限定 された意味 での政治的自己効 力感 を表 し,後 者 は 自己効力感 を発揮す る領域 であ る政治 システムそれ自体が個人的影響力 を受け付 け 大学生の政治不信に及ぼす政治的自己効力感の影響 Table I 207 Factor analysis for the Sense of Political Self-Efficacy Scale No 項目 18 。809-。 018-。 006-.166-。 158。 708 自分 の よ うな若者 が積極的 に政治 と関 わ つ た として も,政 治 の あ り方 は変 わ る ことはな い 。695-。 045 。011-。 145-.082.512 自分 の よ うな若者 の要望 が政治 に反映 され る 見込み はない 。667-.084-。 141 .069-。 148.498 世 の 中 は少 数 の権力者 によつ て動 か され て い て ,若 者 の声 を政治 に活 か す こ とは難 しい 政府や行政機 関 には何 を言 つて もむ だだ と思 .553-。 023-。 226-。 159 。037.384 う 16 20 12 Fl 14 政治 とい うもの♯ 個人の力ではどうすること F2 F3 F4 F5 hi2 。 514 .049 .013 .019-.035.269 もで きない と感 じる 17 13 15 25 27 22 21 24 19 26 11 28 自分 の政治 に対す る考 えをは っ き り表 明 で き ―.019 .857 る 。093 .540 国を三 分す るよ うな政治問題 に対 して 自分 な の り 判 断 を下す 自身 が ある 必要 と思 つた ら,権 力 を持 つ 人 に対 して も ど ―.065 。445 ん どん意見 を述 べ る こ とができ る 各党 の考 え方や理 念 の違 い をあ る程度説 明 で ―。196 きる 自分 と同 じくらいの年齢 の人 と比 べ て 自分 は 一.057 政治 に 関す る知識 が豊 富 であ る .167 .134 。2151828 .199 .158 .389.515 .039 .H8-.032.219 .238 。 876-.152 .234.941 .205 。490 。071 .397.448 。090-.078 .166-.542-.060.339 外交 の よ うな身近 に感 じられ な い 政治 問題 を い が 真貪1に 考 えるこ とは意 味 な 有権者 の一 票 は,国 の政治 を動 か す最 も大 き ―.186 .039 。305 。466-.115。 360 な力 で ある と思 う 政治 の こ とはそ の道 のプ ロに任 せ てお けば よ ―.013-.196 .104-。 408 。004。 217 い と考 えて い る 世 の 中の仕組み は複雑 だが ,み ん なが積極 的 ―.240-.045 j020 .400 。085。 227 に意見 を出せ ば暮 らしよい 世 の 中 にな る 自分 の よ うな人 間 には政治 の こ とは遠 くの世 界 の で き ごとの よ うに見 える 自分 には 国政選挙 で投票す る資格 が十分 ある と思 う どんなに努力 して も自分 には政治 の あるべ き 姿 を考 える力が不足 してい る Eigenvalue Contributi on(%) Fl:「 無 力感 J,F2:「 .252 .026-.187-.011-.445.297 .020 .259 。182 .397 .413.429 。104-.082-。 010-。 080-.395。 180 2.38 1.47 1.35 1.22 13.24 8.17 7.49 6。 1。 76 判断力」,F3:「 知識 」,F4:「 影響 力」,F5:「 正 当性 」 5。 03 73 208 原 田 唯 司 るような可変性 を持 った柔軟 な対象 であ ると認識 してい るか どうかに関わつてい る。その点か ら言 えば , 第 1因 子 として “ 無力感"と 命名 可能な測定項 目の グループが まとまったことは ,大学生における政治的 自己効力感 を考 える場合 に ,現今 の政治 システムが個人の力 では どうす る こともで きないほ どの巨大 な パ ワー を持 ち ,個 人が無為無力な存在 で しかないこ とを強 く認識 してい るとい う面 を考慮 に入れる必要 がある ことを示唆 している.ま た ,狭義 の政治的 自己効力感 を構成 してい るのは ,政 治 に関す る意志決定 を主体的 に遂行 した り,一 定 レベ ル以上の政治に関す る知識 を所有 した り,政 治 に参加す る資格が十分 あ ることを認識 した りとい うような積極的 な行動 を導 き出す 自己信頼感情 であ ることが推測 される.そ の 意味 で 。個人がある状 況 にお いて必要な行動 を効果的 に遂行 で きる可能性 の認知 を指す 自己効力感概念 が想定す る内容 に対応 した要素 をと くに第 2.3及 び第 5因 子は表現 してい ると考 えられ ,内 容的 には内的 政治的有効性感覚 と同等 であ ると言 えよう . 次 に ,政 治的 自己効力感の各下位尺度 と政治に対す る興味 。関心 ,政 治 に対す る主観的距離感および特 性的 自己効力感 との間の相関を算 出 した結果 を Table 2に 示す . Table 2 Pearsonis correlations between the Sellse of Political Self‐ lntere飢 , Erlcacy and the Political the Suttective Sense ofDistance toward Politics and the Generalized SeliErlcacy 政治 に対す る興 味・ 関心 政治 との主観 的距離感 特性 的 自己効力感 (簡 易版 ) “ 政治 に対す る興味・ 関心"は ,“ 無力感 判断力 。011 .337** 。214** ―.164* ―.017 .394** 知 識 .256** ―。107 .212** 影響力 正 当性 .313** .480** -.257** ―。341** .036 .249** 無力感"以 外 のすべ ての政治的 自己効力感の下位尺度 と有意 な正の相 関 を示 してい る。逆 に ,“ 政治 に対す る主観的距離感"は ,政 治的自己効力感の うちで “ 無力感"と は正の “ 判断力"な ど 3つ の下位尺度 とは負 め ,そ れぞれ有意な相関 を示 している。また ,簡 易版特性的自己効力 , 感との間には ,“ 無力感"と “ 影響力"を 除 く政治的自己効力感の下位尺度 と有意 な正の相関が得 られている。 政治的自己効力感 を構成す る因子 の うちで “ 無力感"を 除 く4因 子 で政治的関心 との間に正の有意 な相 関が示 された ことは ,広 い意味 での政治的行動 に取 り組 もうとす る個人の能力 に関す る肯定的な評価的 感情 は政治 に対す る関心 の高 さと結 びついている こ とを意味 してい る.政 治的 自己効 力感 を構成するほ とんどの因子 が ,政 治 に対す る主観的距離感 と期待 された方向での有意な相関 を示 した ことと合わせて , 本研究で作成 した政治的 自己効力感尺度 には妥当性があると見な しても差 し支 えないこ とが示 された と い える。なお ,政 治的 自己効力感を構成す る因子 の うちで “ 無力感"因 子が政治的関心 と無相関であ つた ことは ,大 学生においては双方の間の関係が独 立 している ことを示 し,無 力感 は政治的関心 の レベ ルの如 何 に関係 な く存在 してい ることを示 してい る。さらに ,簡 易版特性的自己効力感 と狭義 の意味 での政治的 自己効力感因子 との間 に有意 な正の相関が認 め られた ことは ,政 治的 自己効力感が内容的 に特性的 自己 効力感 と同質の心理学的傾向を測定可能であ ることを表 してい る。 大学生の政治不信 に及 ぼす政治的自己効力感 の影響 209 次 に政 治的 自己効力感 の各因子得点 の性差 と学年差 を調べ るために t検 定 を行 った結果 を Table 3に 示す . 3 Table Sex and the grade diflerences in the Sense of Political Self-Effrcacy 無力感 男性 (N=57) 女性 (N=140) t値 2年 二.012 .。 005 -。 115 (N=135) ―.013 34「 (N= 62) .104 -.819 t値 判断力 知 識 正 当性 影響力 .273 .176 .148 .268 -。 109 -。 071 -.059 二.107 1.684 1.679 3.421** 014 .004 ―.149 -.098 .191 -2.963** 2。 578* .011 050 .400 -。 .105 -。 -。 203 2.095* ・pく *・・ .05, **・・・p〈 .ol Table 3か ら,“ 判断力"と “ 正 当性│に 関 しては男性 の方が有意 に因子得点が大 きく,政 治的 な意志 決 定 を行 う際 に 自分が持 つ判断力 に 自信 を示す とともに ,政 治 に参加 す る正 当性 をより強 く自覚 してい る と言 える.ま た ,2年 生 の方 が 3年 生 よ りも “ 正 当性"得 点 は 3年 生 の方が高 知識"得 点 が高 く,逆 に “ かった . 2.政 治不信 の構造 政治過程 の不透明性"と “ 政治不信尺度 についてはす でに原田 (2003,2004)な どで “ 担 い手 の反役割 行動"と 命名可能 な 2つ の因子 か ら成 り立 っていることが指摘 されてい るが ,今 回の被験者 に関 して も同 様 の構造が確認 されるか どうかを確 かめるために ,政 治不信尺度 27項 目へ の評定結果 に基づいて主 因子 法 による因子分析 (varimax回 転)を 行 った。固有値 が 1.00を 超えることを基準 として因子 を抽出 したと ころ ,2つ の因子 が見出された (Table 4). 第 1因 子 は “国民 の要求や願 い を真剣 に くみ取 ろ うとす る政党 はない",“ 選挙 の公約 を真剣 に果 たそう とす る政党 はない",“ 政治家 とは言い訳 ばか りが上手 で 自分の非 を認 めない人のことを言 う1,“ 立場 を悪 用 して汚職など不 正な行為 をす る政治家 ばか りであ る"な どの項 目で負荷量が高 く,政 党や政治家 など政 治 の担 い手 が期待 された役割 に違反す る行為 をとっているとい う認識 に基づいた不信感情 を表 してい る と解釈可能であ るので ,“ 担 い手 の役割期待違反行動 "と 命名 した.第 2因 子 は ,“ 国の政治 に関わる重要事 項 が非公開の名 の下 に国民 に隠されている",“「カラ出張」や「官官接待」など,政府 のえ らい人は税金 を 好 きな ように使 つてい る",“ 政府 は実際 にどの よ うに政策 を具体化 してい るのかを国民 に伝 えようとし ていない"な どの項 目で負荷量 が高 く,政 治の進行過程 に関す る情報が開示 されていない ことに起因す る 不信感情 を表現 してい ると考 えられるので ,“ 政治過程 の不透明性"と 命名 した.こ れ らの 2因 子 は原 田 (2003,2004)な どで見出された因子 にほぼ対応 してい る なお ,政 治不信 の各因子得点 には性別・学年 とも有意な差 は見出されなかった . . 210 原 Table No項 20 23 28 4 田 唯 司 Factor analysis for the Sense of Political Distrust Scale Fl 目 国民 の要求や願 い を真剣 にくみ取 ろ うとす る政党 はない 選挙 の公約 を真剣 に果 たそ うとす る政党はない 政治家 とは言い訳 ばか りが上手で 自分 の非 を認めない人 のこ とを 言う 立場 を悪用 して汚職 な ど不正な行為をす る政治家 ばか りである 国会議員 には国民の代表 とい う自覚を欠 いた人 しかい ない 選挙 の公約 を守ろ うとす る政治家 は必ず存在す る 議員 の海外視察などは公費 のムダ使 い にすぎない F2 hi2 .667 .281 .524 .653 。368 .562 .630 .257 .463 _ 30 25 17 22 21 09 国 の政治 に関 わ る重要事項 が非 公 開 の名 の も とに 国民 に隠 され て いる 「カ ラ出張」や 「官官接待 」 な ど,政 府 の え らい 人は税金 を好 き なよ うに使 つてい る 19 自分 の言動に責任 を持たない政治家 が多い 12 政府 は実際にどの よ うに政策 を具体化 してい るのか を国民に伝 え よ うとしていない 06 政府 は 自分 の失敗 のツケを国民 に押 しつ けてばか りい る 13 政治家は立派な ことを言 つて も公約 を実行 しよ うとしない 11 政党は選挙に勝つ ことだ けが政治だ と思 つてい る 15 国民 の 日の届 かない ところで税金 が使われ てい る 04 名誉や 地位 のためだ けを考えて政治家になろ うとす る人物が多い 18 官僚 は政治家や大企 業 のこ とばか り考えてい る 。610 .335 .484 .578 .324 .439 -。 516 -.050 .269 .503 .268 .326 。217 。602 .410 .354 .591 .474 .395 .101 .520 .426 。496 .256 .336 .493 .384 。478 .342 .475 .153 .472 .363 .452 .343 .247 .336 .362 .314 .428 .356 。376 26 29 。390 。269 。225 今 あ る どの政党 も世 の 中を よい方 向に変 えることはで きない -.315 。107 .111 がな て に た は与野 わず る 学歴 く も優れ 政治家 党問 存在す ない 10 政治家 は国民 の願 い をかなえる どころか ,裏 切 るよ うな行為 ばか .493 .561 .558 りして い る .443 .466 .413 01 政治家 は 自分 の金儲 けのた めに 自分勝手 な ことばか りしてい る 03「 諫早湾干拓事業」問題 でわか るよ うに,国 は 自分 の責任 を認 め .369 .374 .276 よ うとしない ものだ -。 067 08 与党 にな りさえすれ ば よい とい う政党は信用 で きない .344 。123 02 どの政党 も似通 つていて大 した違 い はない .064 .312 .101 一 05 党 の基本政策 を曲げてまで他 の政党 と 緒 になろ うとす る態度 は 。085 。293 .093 14 16 問題 だ 信念 もな しに ころ ころ と名 前 を変 える政党 は信 頼 で きない 芸能人や ス ポー ツ選手 を候補者 に仕 立て人気 を上 げ よ うとす る政 党 は厳 しく批半Jさ れ るべ きであ る .177 .152 .257 .237 7.78 0。 91 Eigenvalue Contribution(%) 28.81 3.35 Fl:「 担 い手の役割逸脱行動」 ,F2:「 政治過程の不透 明性 」 .098 .079 大学生 の政治不信 に及 ぼす政治的自己効力感 の影響 211 3.政 治的自己効力感 と政治不信 との関連性 政治的 自己効力感 の各要素が政治不信 の 2つ の側面 にどの ような影響 を与 えてい るのかを明 らかにす るために ,政 治不信 の 2つ の因子得点 を基準変数 ,政 治的自己効力感の 5つ の因子得点 を説明変数 として ステップワイズ方式 による重回帰分析 を行 った (Table 5). Table 5か らは ,ま ず第 1に ,“ 無力感"が いずれの政治不信 の要素 とも有意 な正 の因果的連関を示 して い ることが分かる.こ のことは ,政 治 に対す る無力感 を強 く感 じてい ることが政治不信 を全体 に強 くす る Table 5 The results of the multi-variate regression analysis ( B ) 担 い 手 の役割期待違反 無力感 判断力 ` 知 識 影響力 正 当性 調整済 R2 政治過程 の不透 明性 .466** .056 .459** .106 .073 -。 232** ―.002 -。 025 。023 。235** .320** 。208** ・・p〈 .05, **・・・pく 。01 *・ 方向 に働 い て い ることを意味す る.す なわち ,大 学 生 にお い ては ,無 力感 を感 じて い る こ とが 政治不信 の 重要 な原 因 となって い る と考 え られる.ま た第 2に は ,政 治的 自己効力感 を構成す る因子 の うちで “ 正当 政治過程 の不透明性 "に 対 して正の有意 な効果 を示す 一 方 で ,“ 影響力 "が “ 性 "が “ 担 い手 の役割期待違 反行動 "に 負 の有意 な効 果 を示 してい る こ とで あ る。この ことは ,部 分的 では あ るが政治不信 の 内容 に応 じて政治的自己効力感が寄与 してい る役割が質的 に異なっていることをうかがわせ る。すなわち ,政 治 に 関 して個人的 に影響力 を行使す ることが とて も困難 であ るとして悲観的な見方 をす ることが ,政 治家 や 政党な ど政治 の担 い手が期待 された役割 を十分 に果 た してい ないこ とか ら生ず る不信感 を部分的 に説明 してい る。また ,政 治 に参加す る資格が十分備わ ってい るとす る正 当性 の感覚 を持つ こ とは ,“ 担 い手 の役 割期待違反行動"を 起因 とす る政治不信 にはまった く影響 してい ないが ,政 治の実行 プロセス に関す る情 報開示が不足 してい ることに視点 を当てた政治不信 に対 して統計的 に有意 な寄与 をな している . 以上か ら,本研究 で作成 した政治的 自己効力感尺度 が政治 システム に対す る無力感 をも含 んだ尺度 で あ ることを前提 として考 えた場合 ,“ 無力感"が 大学生 の政治不信 を十分 に説明 し,政 治不信 の重要な原因 とな っていることが示唆 される。また ,狭義 の政治的 自己効力感 に関 しては ,必 ず しも一貫 した結果 は示 され なか つたが ,“ 担 い手 の役割期待違反"に は 自己の影響力 に関す る否定的な認識が影響 を与 え ,他 方 , “ 政治過程 の不透明性"に は 自分 自身 を政治 に参加す る資格があると肯定的 にとらえてい る傾向が影響 を 与 えていて ,政 治不信 の質的 な相違 に応 じて異なった形 で寄与 してい る可能性が示唆 されたとい えよう . 原 212 田 考 唯 司 察 1.政 治的自己効力感の構造 について 本研究 においては ,ま ず ,政 治的関心 の高 さが政治不信 のあ る側面 と正の因果的連関 を示す とい う先行 研究 (原 田 ,2004な ど)の 結果 を手がか りとして ,ま た ,政 治心理学 における内的政治的有効性感覚へ の 着 日 とい う流 れを受けて ,新 たに政治的 自己効力感 とい う概念 を設定 し,測 定尺度 の作成 を第 1の 目的 に さらに ,政 治的 自己効力感 と政治不信 のそれぞれの要素間の 因果的連関の様相 を明 らかにす る ことを 目 , 指 して来た。 正 当性"と 命名可能な 政治的 自己効力感 に関 しては ,“ 無力感",“ 判断力",“ 知識",“ 影響力"お よび “ 因子 か らなる測定尺度が開発 された.各 因子 に含 まれる項 目内容 を検討 した ところ ,本 研究で見出 された 正 当性"の 3つ の因子 は ,内 的政治的有効性感覚 に対応す る内 因子 の うちで '判 断力",“ 知識"お よび “ 容 であ り,こ れらの集合体が政治的 自己効力感の本来的 な内容 を形作 つてい ると見なす ことがで きる.残 る因子 の うちで “ 影響力"に は外的政治的有効性感覚 に近 い内容 の項 目が含 まれていて ,そ の点では狭義 の政治的自己効力感 とは相対的 に区別す る ことが可能である.ま た ,“ 無力感"は 内容的 には政治的自己効 力感 の対概念 としての働 きを持 ち,適 切 な政治的 自己効力感 を保持す る ことを妨げる役割 を果 たす ので はないか と考 えられる.こ のように考 えて見 るならば ,本研 究で作成 した政治的 自己効力感尺度 は ,本 来 の意味 での効力感 を測定す る部分 とやや異質な意味 を持 つ部分 とに分離す ることがで きるように思われ る.こ のことは ,政 治的自己効力感の定義 とともに尺度構成 についてさらなる検討が必要であ ることを示 唆す る . また ,“ 無力感"以 外 の因子得点が政治 に対す る興味・関心 との間 に正 の相関 を示 していた ことか らう かがえるように ,政 治的 自己効力感尺度 は概ね内容的 に妥当な尺度 であ ると見 なす ことがで きようが ,同 時 に 自己効力感 とい う概念 か ら見 て適切 であ るとは言 い切 れない要素 をも含 んでい ると考 えることがで きる.し たがつて ,政 治的 自己効力感 の定義 を一層明確 にす るとともに ,よ り妥当性 の高い尺度 として新 たに整備す ることが 今後 の研究の展開にとつて緊急 の課題であ ると考 えられる . 2.政 治的自己効力感 と政治不信 との連関 について 示 したように ,政 治的 自己効力感 を構 成す る因子 は ,政 治不信 の内容・領域 に応 じてそれぞ れ異なる働 きをしてい ることが明 らかにされた.す なわち ,“ 無力感"は いずれの政治不信 に対 しても最 も Tablё 5に 政治過程 の不透 担 い手の役割期待違反"に のみ ,“ 正当性"は “ 有力 な説明因であ り,他 方 ,“ 影響力"は “ 明性"に のみ ,し か もそれぞれが異なる方向で有意 な効 果 を示 していた。 これらのことか ら,“ 無力感"が 大学生の政治不信 を説明す る重要な規定因であ ると考 えられることや , 政治不信 の質的 な相違 に応 じて政治的 自己効力感が異なつた効果 を与 えてい る可能性 を指摘す ることが で きる.こ の うち :先 述 したように ,“ 無力感"は 厳密 な意味 では政治的 自己効力感 とは質的 に相違す る概 正当性"が 正負異 なった形 で政 影響力"と “ 念 であ る可能性が高いことを考 えるならば ,注 目すべ きは “ 治不信 に影響 を与 えてい る点 であ る.“ 影響力"に は外的政治的有効性感覚 に準ず る内容 の項 目が含 まれ てい ることか ら,必 ず しも明確 な形で述べ る ことはで きないが ,政 治的自己効力感 を構 成する要素の うち あ るものは政治不信 の異なった側面 にそれぞれ反対方向の寄与 をな してい ることは興味深 い . 以上か ら,一 日に政治不信 と呼 ばれている感情 であ つて も,情 報開示の不足 に視点 を当てた場合 に発生 す る不信感情 や ,担 い手 が期待 に反 した行動 しか とらない と認知す る ことによつて生 ず る不信感情 とい うように ,内 部的 には異なる意味 を持 った下位構造 に分離す ることが可能であ り,そ の上でそれぞれ異な る意味 を持 つ政治不信感情 の各要素 に対 して政治的 自己効力感 の構成要素が部分的 にではあるが異 なつ 大学生 の政治不信 に及 ぼす政治的自己効力感 の影響 213 た方向の因果的連関 を示 してい ることが明 らかにされた.こ のことは ,政 治不信形成の過程 では ,政 治的 自己効力感が高 いことが契機 となって政治不信 を強 く感ず るよ うになる場合 と,逆 に政治的 自己効力感 が低 いことが政治不信 を感 じることを促進す る場合 とが混在 してい るとい うことを意味す る . 本研究 で作成 された政治的 自己効力感尺度 は政治的関心 の高 さお よび政治 との主観的距離 の短 さと結 合 してい ることか ら,高 得点者 は政治 に対す る興味・関心が豊富 で ,政 治 と自己の世界 とが 一体 になって い るとの実感 を持 つ者 たちであることが推測 される.彼 らの感ず る政治不信 は ,政 治の進行過程 に関す る 情報開示が十分 ではな く,不 透明さを感ず ることに由来す る政治不信 であ る.政 治への関わ りを当然視す る態度 を持 ってい る場合 に ,政 治の担 い手 の側が意図的か無意図的 かであるにかかわらず重要 な情報 を 隠蔽 してい るかのような印象 を持 た されて しまうときに ,政治不信感情が容易 に発生す ることになる.近 年政治の世界 では ,“ 参加"と “ 分権"が 唱道 されるようにな り,こ のいず れもが個人の政治に対する関与 とそれに伴 う自己責任 を強調す る方向 に作用 しつつあ る.ま た ,政 治の世界 ばか りではな くさまざまな社 会的セクターの活動状況 に関す る情報開示 と説明責任 が次第 に浸透 しつつあ る.こ う した中 にあ って ,か りに政治 に関す る情報 の公開や説明が と りわけ政治家や政党 ,政府 ,官僚機構 といらた政治の担 い手 の間 で十分 に意識化 され ,実 際 にさまざまなメデ イアを通 して国民全般 に情報 として提供 される よ うになる とすれば ,“ 政治過程 の不透明性"に 由来す る政治不信 は ,と くに政治的自己効力感が高 い者 にとつては政 治不信感情 を払拭す る方向 に結 びつ くことが期待 される。刻 々 と移 り変わる政治状況にあ って ,今現在 と い う時点での大学生 の政治不信 に関す る動向 を政治的 自己効力感 とい う観点 か ら精査す る ことが必要 で あ ろう . 他方 ,“ 担 い手 の役割逸脱行動"に 端 を発す る政治不信 は ,政 治的 自己効力感 の うちで “ 無力感"と は正 の ,“ 影響力"と は負 の有意 な因果的連関 を示 していた.一 部 についての結果ではあ るが ,“ 無力感"や “ 影 響力"と いった外的政治的有効性感覚 に関連す る政治的自己効力感の要素が ,認 知 された政治の担 い手 の 行為 に対す る否定的評価 に起因す る政治不信 と結 びついてい る こ とは興味深 い.外 的政治的有効性感 覚 は政治 システムが個人の要求 を受け付 け るような柔軟 な組織 であ るとい ったシステムに対す る信頼感 を ベース として成立 してい る ことを考 えるならば ,政 治家や政党 など政治の担 い手 が期待 に反す る行為 を とる存在 であ るとい う不信感情 がシステム に対す る不信 とい う形 をとって表 れてい ることは十分 に説明 可能であ る . 以上 の考察 を踏 まえて大学生 の政治不信 に政治的 自己効力感 が どの ように関 わつてい るかについての 仮説的な構図 を描 くとす れば ,政 治過程 の不透明性 に由来す る政治不信 は内的な意味 での政治的 自己効 力感が高 いことと結 びつ き,他 方 ,担 い手の役割逸脱 に向か う政治不信 は外的 な意味での政治的自己効力 感 が低 いこ とと結 びつ い てい ると言 えるであ ろ う。政治不信が単体 とい うよ りは不信感情 が向け られる 対象 や領域 に応 じて異 な った要素 に相対的 に分離可能 であ り,こ のことが政治的 自己効力感 の下位構造 との 因果的連関の相違 とい う形 で間接的 に証明 された と考 える ことがで きる.政 治不信 の形成 に関与す る有力 な心理的要因として政治的 自己効力感 とい う概念 の有効性 が確認 された ところに本研究 の意義が 存在 してい るといえよう . rffi Balch,G。 1974 Multiple indicators in survey research: 'The concept 'sense of political efficacyr. 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