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地下水及び湧水の保全 ・ 利用に係る計画
地下水及び湧水の保全 ・ 利用に係る計画 緑と並ぶ小金井らしさとして多くの市民があげるのは「水」です。野川、玉川上水や国分 寺崖線(はけ)沿いの湧水は、小金井市民にとって大切な水辺です。また、市の水道水の半 分以上は、市内の深層から汲み上げる地下水が占めています。そもそも小金井という地名の 由来は、黄金に値する豊富な水が出ることから「黄金の井戸」にあると言われています。 玉川上水をはじめとする用水路網はもとより、野川も、暮らしの営みに合わせて、先 人が手をかけ作り上げてきたものですが、現代の急速な都市化は、水の循環に大きな障 害を生じさせ、その姿が大きく変容しています。湧水量の減少と下水道の普及があいまっ て、河川の水量が減少しています。また、かつて市内にはりめぐらされた用水路は、都 市化のもとでその機能が低下し、通水が停止されています。河川は高度成長期に雑排水 路化しましたが、下水道の整備などによって水質はきれいになりました。しかし、一定 量以上の降雨時に下水の越流水が排出され河川を汚すという問題が残されています。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 水循環の仕組みを理解し、小金井の水辺のあり方や、水利用のあるべき姿を考えながら、 水循環の回復・実現に向けて市民と連携して取り組みます。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画とは? 「地下水及び湧水の保全・利用に係る計画」は、「小金井市の地下水及び湧水を保全する 条例」第17条で、環境基本計画の中に策定することが規定されているものです。そのため、 「小金井市地下水及び湧水に係る専門家会議」(現在の「小金井市地下水保全会議」)の提言 を反映しながら、他のテーマと比べて、取組の方向をより具体的に示しています。 なお、第2次環境基本計画との整合を図るため、一部のデータの年次更新や参照表現等 の更新、デザイン・レイアウトの変更を行いましたが、それら以外の本計画の内容は第1 次環境基本計画から原文を転載したものです。 地下水・湧水保全計画策定のねらい ①市内の地下水・湧水は、野川、玉川上水と深く関係し、これらは小金井市 におけるビオトープネットワークの重要な自然生態系を形成しています。 水循環システムの保全を、生態系の保全や水文化を創造する視点から総合 的・計画的に進めます。 ②私たちは、地下水を飲料水、災害用水、防火用水、環境用水などとして利 用しています。利用においては、水量の回復が大きな課題となっている他、 水質の保全も大切です。地下水の涵養や、水質の保全を進めます。 ③地下水・湧水を保全するためには、地下水の仕組みや現況を十分理解して 取組を進める必要があります。そのために必要な調査を明らかにし、実施 します。 ④市民等の地下水に対する関心や理解を深め、地下水の調査や保全の活動を 市民等の参加・協働により進めます。 84 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 地下水湧水専門家会議の提言 「小金井市の地下水及び湧水を保全する条例」の第17 条に基づき「地下水及び湧水の 保全・利用に係る計画」を「小金井市環境基本計画」の中に定めるため、平成17 年に 学識経験者4 名で構成する「小金井市地下水及び湧水に係る専門家会議」を設置し、同 年6月8日、市長に次のような提言を行いました。 1.小金井の地下水・湧水の特徴・課題 ~水収支の推定~ 小金井市の水環境に係る課題を把握するために、現段階で得られる基礎的なデータを 収集し、市域における水収支を推定しました。 小金井市域における水収支 平成 15 年 降雨 推定(単位 mm/年) 1,770 揚 水 50 浸 透 (ローム層) 20 (れき層) 緑地・農地 からの浸透 430 浅井戸 (不透水層) 1,120 雨 水 530 浸透ます 水道から 浸 透 の漏水 ? 50 浸 透 110 汚 水 1,100 下水処理場 1,630 湧 水 50 揚 水 810 深井戸 野 川 上記は、現段階で得られるデータから推定した水収支であり、今後さらにモニタリン グやデータの収集・分析により精度を高めたり経年変動をみていく必要がありますが、 今回の推定から主に次のようなことがわかりました。 ◎水収支の概要 年間に降った雨の約3 割が蒸発散します。緑地・農地や浸透施設から地中にしみ込む 雨量も、降雨の約3割です。さらに3割が、下水に流れ込み下水処理場に送られています。 ◎浸透ますの設置効果 雨水浸透ますの設置が進み、浸透ますからの浸透量は、降雨量の約1割弱を占め、水 循環の回復に重要な役割を果たしていると考えられます。 ◎緑地・農地などの浸透域 一方、宅地開発等によって緑地・農地が減っています。緑地や農地の浸透能力は高い ため、その減少により地下浸透量が年々減少しています。 ◎下水に流れ込む雨の量 地中に浸透せずに下水に流れてしまう雨水が3 割あります。ただし、この数値は推定 で、浸透ますの設置により減少している可能性もあります。 85 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 市外からの 蒸発散 受水(水道) 510 360 2.小金井の地下水・湧水を保全するための提言 上記のような結果からまとめた提言の主な内容は次の通りです。 ■総合的・計画的な保全の取組の必要性 ○野川及び玉川上水は、市内の地下水・湧水と深く関係し、これらは小金井市における ビオトープネットワークの重要な自然生態系を形成しているものの一つです。水循環 システムの保全は生態系の保全や水文化を創造する視点から総合的・計画的に進める 必要があります。 ○災害用水、防火用水、環境用水としての地下水の保全・利用の観点も必要です。利用 においては水量の回復が大きな課題となっており、その方策としては、雨水の地下浸 透促進が重要です。水量の回復は、生態系の回復、水質保全、ヒートアイランド現象 の緩和にもつながります。平常時及び災害時の飲料水としての利用では、水質の保全 が重要です。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ○地下水、湧水の保全施策は、地下水の仕組みや現況を十分理解したうえで検討・実施 することが必要ですが、現状では明らかになっていないことが多いため、地下水の観 察やモニタリングを行う必要があります。 ○地下水、 湧水のモニタリングや保全活動には、市民の参加・協働が不可欠であり、市 民の地下水に対する関心や理解を深めながら、保全活動を広げていくことが大切です。 ■市民参加によるモニタリングなど ○地下水・湧水の定期的・継続的な観察やモニタリングを行う必要があります。国や都 の定めるモニタリング項目にとどまらず、市独自のモニタリングも必要です。地下水 位、地下水の流れの方向、地下水脈、湧水量・水質、野川水量、井戸の分布地点、水 位、水質、水脈、使用状況などを調査する必要があります。 ○調査は市民参加で行います。市民や大学研究機関などと協働することにより、行政の みで行うより広範で多様なモニタリングが可能になるからです。また調査やモニタリ ングへの参加には大きな啓発効果があり、多くの市民に地下水に対する関心を持って もらうことにもつながります。 ○啓発においては、市民が「地下水」を実感できる工夫や、明確な保全目標を示すこと が大切です。 ○例えば:市で地下水位計を設置し、地下水位を「本日の地下水位」として、毎日、市 役所等の公共施設で広報・掲示し、市民の地下水に対する意識を高めることも大切で す。また、市民参加で井戸の分布調査を行って井戸台帳を作成し、分布を把握した後 は、「身近な井戸の一斉調査」などを企画し、定期的に市民参加による水位や水質等 の一斉調査を行うことも必要です。 86 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ■雨水浸透の促進 ○湧水の保全や野川の水量を回復し、地下水・湧水を利用し続けるためには、降った雨 をできるだけ地下に浸透させ地下水を涵養しなくてはなりません。その具体的な方法 として大切なのは、 ①市域における浸透ます等の設置を今後も積極的に進めること、 ②浸透能力の高い緑地・農地等を保全・拡大すること、 ③下水に流れ込む雨水量を減らすこと-雨水浸透施設は、処理場の負担を軽減する効 果もあるので、小金井市域より下水に流入する雨量を把握し、設置効果を検証する こと、 ④地下水の涵養域にあたる上流地域に対して、浸透施設の設置を働きかけていくこと、 です。 ○災害時に地下水を利用するためには、日常から井戸台帳を整備し、水質を管理したり、 井戸等を使い続けてみずみちを確保しておいたりすることが必要です。そのためにも、 地下水の重要性を、井戸の所有者や市民に認識してもらうことが大切です。 震災対策用井戸 貫井神社の湧水 87 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ■災害時にも利用できる体制づくり 現状と課題 ■地下水・湧水・河川などのつながり 市内の地下水・湧水は、野川、玉川上水と深く関係しており、ビオトープネットワー クの重要な自然生態系を形成しています。 空から降った雨は、地中に浸透し地下水となってから、湧水として地表に湧き出し、 野川に流れ込みます。野川は下流で多摩川に合流し、やがて海に注ぎ、蒸発して再び雨 になります。水が循環するおかげで、水が浄化され、湧水の水量が維持されて、気候が 緩和されたり、多様な生物が保全されたりするのです。また、私たちの水利用も可能に なり、水や水辺、そこに育つ生きものとのふれあいから、水の文化が生まれてきました。 しかし近年、この循環系が損なわれることにより、湧水の枯渇や河川流量の不安定化、 生態系の劣化など様々な問題が起きています。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 降 雨 市外からの 受水(水道) 蒸発散 玉川上水 揚 水 汚 水 浸透ます (ローム層) 浸 透 (れき層) 水道から の漏水 緑地・農地 からの浸透 (不透水層) 浅井戸 浸 透 湧 水 雨 水 揚 水 深井戸 下水処理場 野 川 ■姿を変えてきた水辺 昭和30 年代までは玉川上水からの分水や、湧水、野川の分水を源とする農業用水路 が市内にはりめぐらされていましたが、高度経済成長期になると水田が減少・消失し、 砂川用水への通水もなくなりました。一方、野川は、都市化の影響で生活排水の流れ込 みが増加して水質悪化が進みました。その後、都市洪水対策の目的で改修されて川幅が 広くなり、今日のような姿になっています。併せて下水道の整備により水質は改善され ましたが、今では湧水を源とする流れがわずかに残るだけとなり、水量が減って渇水時 には流れが涸れてしまうほどになっています。 88 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 国分寺崖線(はけ)の南側には湧水が点在し、この湧水が集まって野川に流れ込んで いますが、その数は減っており(平成20 年度に東京都環境局が実施した調査によれば6 箇所) 、湧水量も、貫井神社の湧水の水をひいてプールが開かれていた頃に比べて半分 程になっていると言われており、近年は水量の少ない状態が続いています(注:貫井プー ルの開設は大正12年~昭和52年)。 いつも水があって川遊びなどができる野川や、豊かに水の湧き出る湧水を、多くの市 民が望んでいます。 野川の水量の歴史的変遷 都市化に伴う 家庭排水の増加 玉川上水通水 (1654 年) 下水道普及 90%以上の現在 用水路の使命終了 水田の拡大 年代(時間) 出典:土屋十圀「都市中小河川の水文環境(その1)」『水利科学』No235(1997 年 6 月)を もとに地下水・湧水専門家会議で作成 湧水の流量 (貫井神社・滄浪泉園・美術の森緑地、夏及び冬の年2回調査の平均値) 流量(L/分) 700 600 平成 22 年は冬(11、12月) に降水量が多かった年 500 滄浪泉園 400 300 美術の森緑地 200 100 0 流量(ℓ/分) 貫井神社 H21 H22 H23 H24 H25 資料:小金井市環境政策課 89 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 浸透施設の設置 (1983 年雨水浸透 ます設置開始) 湧水由来の自流量 地下水揚水量(平成 24 年) 工場 3.5% 指定作業場 3.0% ■水道水の半分以上を地下水(深層地下 水)に求めている 小金井市では、水道水の半分以上(平成 24 年度は総配水量の約51%)を深層地下 水から汲み上げています。市内の深井戸か 地下水 揚水量 14,381 ㎥/日 らの地下水揚水量では、上水道利用が9割 以上を占めています。 上水道等 93.5% 資料:小金井市環境政策課 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ■都市化による地下水位低下と、回復策としての雨水浸透ます設置 都市化によりコンクリートやアスファルトで覆われた地面は、雨が降っても地中に浸 透せず下水管に集められてしまうため、 地下水位が低下する大きな要因です。このことが、 湧水地点の減少や水量低下、また野川等の水量減少をもたらしていると考えられます。 雨水の地下浸透を促進し、地下水を涵養することが大きな課題です。市では雨水浸透 施設の設置助成制度を設け、市民と水道工事店などの事業者の協力によって、雨水浸透 ますの設置率(設置数/設置可能家屋件数)は世界一となっており、雨水浸透ますから 地下に浸透する雨量も年々大きくなっています。しかし、地下水は広域的につながって いるため、市域での湧水や河川の水量はまだまだ目立った回復はなく、水の循環を回復 するためには、一層の取組や、野川流域の自治体が連携して雨水浸透を進める努力が必 要です。 ■水量回復と切り離せない水質の問題 野川の水質の問題は、水量低下によって起きているほか、一定以上の降雨時などに汚 れた下水が越流することにより起きています。 玉川上水は、小平監視所下流では清流復活事業により下水処理場からの高度処理水が 放流され、流れは回復しています。しかし、高度処理水は、窒素濃度が高いため、浸透 して地下水の窒素濃度が高くなっていると推定されます。 市内14箇所で浅層地下水の水質を測定しており、平成10年以降、3箇所でテトラクロ ロエチレンについて環境基準を超過しています。 また、湧水の水質は昭和63 年度の調査時点で大腸菌群は調査を行った全湧水で、一 般細菌は一部の湧水で水道法の水質基準を満たさず、飲用として不適となっています。 90 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 取組の方向 1 地下水・湧水に関する現況把握 地下水・湧水の保全は、水循環の仕組みや水環境の現況を十分把握したうえで、必要 な取組を進めていくことが必要ですが、現状では、明らかになっていないことがたくさ んあります。このため、必要な調査を行います。 1.1 地下水・湧水の現況を把握する 地下水、湧水、河川などの観察を行います。定期的・継続的なモニタリングを可能に するため、予算確保や市民・研究機関等との連携など必要な仕組みを整えます。 ■定期的・継続的なモニタリング 地下水・湧水に関する取組を総合的・計画的に進めていくためには、次のよう ・深層及び浅層の地下水位 ・地下水の流れの方向 ・地下水脈 ・湧水の湧出量及び水質 ・野川の水量及び水質 ・井戸の分布、水位、水質、使用状況 ・市における降雨量 ■観測井の設置 地下水涵養のためには、地下水の流れを把握することが必要です。市域の地下 では、概ね北西方向から南東方向に流れ、また季節等によって流れが変化してい るため、複数の井戸を組み合わせて観察することが必要です。 ・既存の井戸をネットワーク化したモニタリング ・新たな観測井の設置 91 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 なことを明らかにし、継続的にモニタリングしていくことが必要です。 1.2 地下水・湧水についての情報を整理・分析・提供する 収集したデータは、整理して、市の施策や市民等による保全活動に積極的に活用でき るようにします。 ■水収支の把握と分析 地下水・湧水や河川に関わるデータをもとに、市域を中心とした水収支を明ら かにします。水収支を経年的に分析することで、地下水位の低下や湧水量・河川 水量の減少などの問題の発生要因の把握や対策の検討が可能になります。 ・水収支の把握 ■モニタリングデータの公開と活用 市あるいは市と市民等が協働で行ったモニタリングのデータは、わかりやすい 形で公開し、多くの主体が、水環境についての理解や保全活動を進める上で活用 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 できるようにします。また、国・都や近隣自治体、研究者等が行った調査結果等 についても、収集・整理し、活用できるようにしていきます。 ・モニタリングデータの公開 ・情報収集・提供 2 地下水・湧水の保全 小金井では深層地下水を水道に利用しており、また浅層地下水は湧き出して野川に流 れ、市民の憩いの場や子どもの遊び場、生きものの生息環境となっていることから、地 下水の保全は重要な課題です。 地下水位の確保は、水循環を自然に近い状態に回復させ、地盤沈下の防止はもちろん、 湧水の保全・復活や、河川流量の増大など水辺環境の改善につながります。また、水道 用に地下水を揚水している小金井では、市域の水収支の観点から、地下水涵養を積極的 に進めます。 92 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 2.1 地下水位を確保する 地下水を涵養して地下水位を確保するために、雨をできるだけ地下に浸透させます。 ■浸透施設の設置 雨水浸透施設を設置して、雨水の地下浸透を促進します。 これまでに設置した浸透施設により降雨量の約1割弱が地下に浸透して、地下水 涵養に重要な役割を果たしています。また、浸透施設は、下水道に流れ込む雨水の 量を減らすことから、下水処理場の負荷や処理コストの軽減にも役立っています。 このような多面的な効果を検証しながら、市域内での浸透施設の設置促進や、 流域で連携した地下水涵養の取組を進めます。 ・雨水浸透施設の設置効果の検証 ・市域における雨水浸透施設の設置促進 ・下水に流れ込む雨水量の把握、下水処理場の負荷軽減の効果の把握 ■緑地や農地の保全 緑地や農地は雨水浸透能力が高いことから、積極的に保全します。また、舗装 等を見直して、雨水が浸透しやすい地表面の回復を進めます。 ・緑地や農地の保全 ・歩道や道路、駐車場の舗装の見直し ■雨水貯留 公共施設や集合住宅など大規模施設に雨水貯留施設を整備し、雑用水として有 効に利用します。 ・公共施設や集合住宅など大規模施設での雨水貯留施設の整備 ・貯留した雨水の有効利用 ■下水道の見直し 下水道に流れ込む雨水の量が大きいため、できるだけこれを地下浸透させます。 ・下水に流れ込む雨水量の把握 ・下水に流れ込む雨水の削減 (部分分流式やオンサイト方式による浸透型下水道等の検討) ■用水路の復活 かつては用水路があったため、地下水が涵養され、結果的に野川の水量も多く なっていました。地下水位の上昇に加えてヒートアイランド対策としても効果が 期待できる用水路の復活に取り組みます。 ・玉川上水から砂川分水や小金井分水などへの導水 93 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ・上流域への雨水浸透施設設置の働きかけ 2.2 地下水脈の分断を防止する 大規模な地下構造物を設置し、地下水の流れが妨げられて地下水位の変化、湧水や井 戸の枯渇などを起こすおそれのある工事については、「小金井市の地下水及び湧水を保 全する条例」に基づき、必要な措置を講じて、影響の未然防止に努めます。 ■地下水の流れの確保 法律や条例の遵守や事前の影響評価により、地下構造物の建築によって地下水 の流れが妨げられることがないようにします。 ・関係法令の遵守 ・ 「小金井市地下水及び湧水を保全する条例」に基づく、地下水影響工事に係る 書類提出の仕組みの整備と運用 ■湧水の保全 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 湧水の涵養域を明らかにし、湧水を守るための規制について検討します。 ・湧水涵養域の解明 ・湧水保全施策の検討 2.3 地下水質を保全する 地下水は汚染されるとその影響が長期間継続するため、地下水汚染を未然に防止して いくことが重要です。 ■地下水質の定期的・継続的な調査・監視 地下水質の定期的・継続的な調査・監視を行い、その情報を市民に公開します。 ・深層地下水の水質の調査・監視 ・浅層地下水の水質の調査・監視 ・地下水質に関する情報の公開 ■地下水質に影響を与えるおそれのある事業活動の監視・規制 地下水質に影響を与えるおそれのある事業活動については、有害物質の地下浸 透の監視・規制を徹底します。 ・ 「小金井市地下水及び湧水を保全する条例」に基づく適正管理化学物質の使用 実績等の報告 ・農業や市民農園活動などにおける農薬・化学肥料の適正使用の指導 ■汚染回復措置 汚染が発生してしまった場合は、国や都等の関係機関と連携して、できるだけ 速やかに回復措置をとります。 ・汚染が発生した場合の関係機関と連携した迅速な措置 94 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 3 河川環境の保全 野川、仙川、玉川上水など市内の河川や用水は、いずれも、流量が減少したり水が涸 れたりしています。親水性を高め、また生きものの生息環境を保全するためには、安定 した流量と水質が必要です。流量の確保は、水質の保全にもつながります。合流式下水 道は、雨水の多くを処理場に送ってしまうため、地下水涵養や河川の流量確保の妨げと なっていると同時に、越流水が水質を悪化させるという問題も引き起こしており、河川 環境の改善には、その見直しが不可欠です。 3.1 河川流量を安定的に確保する 河川流量を年間を通じて確保するための方策を検討・実施します。市民・行政・専門 家など様々な主体が連携し、都や流域自治体にも働きかけながら、それぞれの河川の望 ましい姿を考え、実現に向けて取り組みます。 ■雨水の地下浸透促進 現状では、野川の水は湧水によるものであることから、雨水の地下浸透を促進 し、野川に流れ込む湧水量を増やします。 ・(具体的な取組は、「2.1 地下水位を確保する」に同じ) ■雨水や用水の導水検討 河川に雨水を直接流入させたり、玉川上水から砂川分水や小金井分水に用水を 導入するなどして、河川水量を増やすことを検討します。 ・雨水や用水の導入等、河川水量を増やす方策の検討 ・市民による雨水浸透や節水の取組促進 95 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 また、市民が地道な雨水浸透や節水に取り組むことも必要です。 3.2 河川水質を保全・回復する 野川の水質の保全・確保のためには、流量の確保(⇒3.1 参照)に取り組むとともに、 下水道の合流改善により、一定以上の降雨時に越流水が川を汚す問題に取り組んでいき ます。 (⇒環境基本計画 第4章の「基本施策5.1 公害対策」の取組方針2参照) 玉川上水は、水量確保のため、下水処理場からの高度処理水を流しています。国や都、 近隣自治体と協力しながら、水質の改善や、将来の河川水等の利用の可能性について検 討していきます。 河川のもつ自然浄化能力を維持・回復させることも大切です。 ■河川流量の確保 野川の水質の保全・確保のために、流量を確保します。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ・(具体的な取組は、3.1「河川流量を安定的に確保する」に同じ) ■下水道の合流改善 越流水が野川を汚す問題を解決します。 ・下水道の合流改善 ■玉川上水の水質の改善 国や都、近隣自治体と協力しながら、下水処理場からの高度処理水の水質の改 善や、将来の河川水利用の可能性について検討していきます。 ・高度処理水の水質の改善 ・河川水等の利用の可能性検討 ■自然浄化能力の維持・回復 水量、水生生物、水辺などを保全し、河川の自然浄化能力を維持・回復します。 ・河川水量の回復 ・水辺の生態系の保全 96 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 4 地下水・湧水生態系の保全 小金井の湧水は、国分寺崖線(はけ)に沿って分布しています。崖線の地形・地質や緑は、 湧水が湧き出すために不可欠な条件です。崖線から湧き出す水は水質が良好で、一年を 通して安定した水温を保つため、湧水生態系独特の生きものが生息しています。このよ うな湧水をとりまく自然を保全します。 4.1 崖線緑地を保全する 雨は、崖線の緑に蓄えられ、徐々に地下に浸透してから、湧水となって湧き出します。 湧水の水量を確保するために重要な働きをしている崖線緑地を保全します。 ■崖線の緑地を保全する 崖線の緑地を重点的に保全し、湧水の水量を安定的に確保します。 ■崖線の地下水の流れを確保する 湧水にいたる地下水の流れが妨げられないよう、 「小金井市の地下水及び湧水を 保全する条例」の運用により、崖線における湧水の保全策を検討します。 ・(具体的な取組は、2.2「地下水脈の分断を防止する」に同じ) 4.2 湧水生態系の生きものを保全する 湧水や野川には、湧水特有の種として、絶滅が危惧されているカワモズク類などの植 物、きれいな水を好むサワガニ、ナミウズムシなどの動物が生息しています。これらの 生きものが生息できる環境を保全・創造します。 ■湧水生態系の生きものを保全する 湧水生態系の生きものの生息空間である、崖線の緑と湧水や野川などを、一体 的に保全します。また、野川等の自然再生を進めます。湧水生態系の生きものの 実態を明らかにするために、市民の参加で、調査を実施します。 ・(具体的な取組は、環境基本計画 第4章の「基本施策4.2 生物の多様性の保 全」に同じ) 97 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ・ (具体的な取組は、環境基本計画 第4章の「基本施策2.1 緑の保全」に同じ) 5 水の循環的利用 地下水や河川水は貴重な資源です。家庭や事業所等で節水に取り組み、また中水を利 用する仕組みを導入するなど、循環的・効率的な水利用を進めて、自然の水循環にかけ る負荷を減らします。 5.1 節水を進める 市・市民・事業者のそれぞれが、節水に努めます。そのためには、市民や事業者の節水 行動を促進することも必要です。 ■普及啓発 市民による節水の取組を進めるためには、地下水の仕組みや重要性を理解する ことが不可欠であり、そのための普及啓発を進めます。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ・水資源の大切さや水循環の仕組みについての普及啓発の推進 ■節水行動の促進 市、市民、事業者それぞれが節水を進めます。 ・節水行動の促進 ・節水型機器や製品の利用促進 5.2 中水などの効率的な水利用を進める 散水や消火用水、トイレ用水、冷却塔補給水、洗車用水など、上水を利用する必要が ない用途については、中水を利用し、上水利用をできるだけ抑えます。 ■施設における中水利用の促進 公共施設や大規模施設では、特に積極的に中水の利用を促進します。 ・公共施設における中水利用の促進 ・大規模施設における中水利用の促進 ■市民のアイデアを活かした雨水利用等の促進 市民がバケツや雨水タンクなどに雨水をためて利用するような、自宅や地域で 取り組めるアイデアを生かして、雨水利用を実践します。 ・市民のアイデアを生かして自宅や地域での雨水利用を促進する仕組みづくり ・雨水を利用した打ち水によるヒートアイランド現象の緩和 98 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 5.3 地下水の適正利用を進める 地下水の利用については、保全を図りながら、安全性、使い易さ、おいしさなどの特 性を生かした水道水としての利用や、災害時水源としての利用が可能であり続けるよう、 適切な利用の枠組みを検討します。 ■地下水涵養の促進 良好な飲料水として積極的に利用する一方で、利用した分を補うだけの水を地 下に戻していきます。 ・地下水の涵養(具体的な取組は、2.1「地下水位を確保する」に同じ) ■災害時利用のための井戸の管理 災害時に飲料水等として地下水を利用するために、日常から井戸を適正に管理 します。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ・防災井戸の登録 ・防災井戸の維持・管理 ・防災井戸に対する市民の関心・理解の促進 雨水貯留タンク 雨水浸透ます 99 6 市民等の啓発と連携 地下水や湧水の保全には、市民の参加・協働が不可欠です。情報公開や啓発活動を進め、 市民の地下水に対する関心や理解を高めながら、保全活動を広げていきます。目にしにく い地下水を実感できる工夫、データやわかりやすい保全目標を示すことなどが大切です。 6.1 情報収集や保全活動を連携して進める 地下水や湧水に関する情報をわかりやすい形で市民等に提供します。モニタリングや 学習活動、保全活動を市や市民等が協働して進めます。 ■情報提供、普及啓発活動の推進 市民等の地下水に対する関心や理解を深めるために、情報提供やわかりやすい 保全目標の提示などを行います。 地下水及び湧水の保全・利用に係る計画 ・地下水に関するデータや情報の公開・提供 ・保全目標の提示 ・普及啓発活動の促進 ■市民団体等と連携した地下水保全活動の推進 市民参加による調査やモニタリングには大きな啓発効果があります。学習会を 開催するなど、調査の質を高めながら、市民団体等と連携して調査やモニタリン グ、さらに保全活動を効果的に進めます。 ・市民や市民団体等と連携した調査やモニタリングの実施 ・調査活動に取り組む市民等を対象とする学習会等の実施 ・専門家等との連携 ・市民団体等と連携した保全活動の推進 100