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猪瀬直樹委員提出資料
猪瀬直樹委員提出資料 平成15年9月1日 異業種組合の生態分析 猪瀬直樹 2003年9月1日 営利企業顔負けの熾烈な組合員引き抜き競争を展開 ● 異業種組合は軽減税率22%の適用を受けているが、これは事業協同組合は株式会社とは異なり営利が目的の法人ではないと いう前提にもとづいているからだ。しかし、異業種組合の活動実態をみてみると、営利企業も顔負けの熾烈な顧客争奪合戦を繰 り広げているのである。組合資料には、明らかに本来の趣旨を逸脱しているとしか思えない記述がいくつも並んでいる。 • 他組合からの組合員引き抜き攻勢に神経を尖らせる 「平成高速事業協同組合が山口県下の歯科医師会に攻勢をかけている動き」 協同組合ふべっくの理事会議事録(2003年3月5日)では、こんなふうに競合他社の脅威が報告されている。組合員の増減は売 上に直結する。危機感を募らせた理事からは、 「現行定款において組合員の資格が細分類されているため勧誘活動に不都合を生じている」 との発言も飛び出した。さらなる組合員拡大のために知恵を絞っている様子が窺える。 • 引き抜き対策には、優遇措置を 「他組合からの引き抜きへの対応策として・・・・・・優遇制度を適用することにより、16%から21%への優遇」 「規定割引率は19%となるが、東京の別組合より割引率23%、預託金無しとの条件提示があったため、同じ条件で優遇」 広島市が本拠地の協同組合ビジネス交流センターの理事会議事録(2003年6月3日)ではこんな露骨な提案がごろごろしている。 客を奪われないように必死で防衛策を講じている。 • 引き抜き合戦をめぐるトラブルに、ヤクザまで登場? 「近畿ハイウェイ(協)理事長高井利夫氏は、以前、私が他の組合で理事長であったとき、高井氏関連の組合からの引き抜きがあ り、(別納)カードをすぐに返さずにいたところ、やくざ風の男2名来て凄んだことがある」 協同組合岡山県高速道路利用センターの理事会議事録で紹介された引き抜きトラブルのエピソード。 2 利用約款違反をなぜ取り締まらないのか こうした別納利用目的での組合員勧誘活動は、公団の別納利用約款に違反する行為である。 < 公団と組合は利用約款にもとづいて契約する。約款には「利用の承諾の取消し等」につ いての規定(第3条第4項)がある。そこに組合が別納割引を「主な目的として、事業協同組合へ の加入を勧誘していると認められるとき」と明記されている。別納割引だけを目的にした組 合は認められないのだ。ところが異業種組合の場合、実態はほとんどすべて別納割引を目 的としている。 全国で十位の利用額にランクされている岡山県高速道路利用センターは事業計画書に 「全国で初めて高速道路利用事業を扱う異業種組合として、昭和五十八年に創立され、今 年度は満二十周年の記念すべき年」と自慢するが、理事会議事録に「新規加入件数百五 十件、利用額二千万円」と営業ノルマを示し、「目標達成に向け鋭意努力する旨決意を披 瀝」などと記録されている。こうした「加入を勧誘」する行為は約款違反である> (『ニュースの考古学』2003年9月4日号より) 3 「資料提出に不同意」ならば 別納許可を取り消すべきではないか • 民営化委員会への資料提出要求に対して、公団から提出された「 資料徴収状況」(机上配布資料 には、 整理番号141) 「提出不同意」の文字がいくつも並んでいる。 • 公団が異業種組合に対して「委員会への資料について・ ・ ・ 提出・公開の同意を求め」たので組合からの回 答が「 同意」 だったり「不同意」 だったりとなった。そもそも異業種組合の「同意」を尋ねる公団の姿勢が間 違っている。 • 情報公開は、別納利用という特典を認める最低条件であるはずだ。一般利用者の料金負担を原資にした 割引特典の許可を与えているのだから、資料提出は「同意」事項ではなく「義務」 だろう。 • いまだに「提出不同意」の組合を明記しておく。(一部不同意を含む) 協同組合エスケイハイウェーセンター、協同組合企業情報センター、情報通信システム協同組合、 情報ハイウェイ協同組合、ベンチャービジネス協同組合、 4 別納割引1100億円の蜜の吸い方 ∼組合私物化のケーススタディ∼ • 異業種組合はどのように利益を享受しているのか。利用額上位五十組 合にみる、典型的な組合私物化のパターンを示そう。 1、 同族で組合運営を独占 2、 組合役員は世襲制 3、 グループ経営 4、第二、第三の組合をつぎつぎ設立 5 ■ケース1 親族等が組合役員を承継 安川ファミリー (協)双助会 (東京) (協)東京産業振興会 (協)愛知事務計算センター (愛知) 1985年 設立 (東京) 1989年 設立 1988年 設立 1992年 安川俊雄 代表理事に就任 [1999年8月 安川俊雄死去] (?年 ?年 1999年 安川俊雄代表理事 [1999年8月 安川俊雄死去] 代替わり) 2000年 安川和雄代表理事 安川慶一専務理事 1998年 安川俊雄代表理事 山本鉄甲副理事長 [1999年8月 安川俊雄死去] (代替わり) 同年 安川慶一理事 山本鉄甲代表理事就任 2000年 安川秀男理事就任 2003年 山本鉄甲理事就任 現在に至る 現在に至る 利用額30.8億円(15位) 利用額37.6億円(8位) 組合員数4683 組合員数2909 現在に至る 利用額32.8億円(12位) 組合員数3347 6 ■ケース2 同一企業の複数の役員が組合役員を兼務 し、全役員の過半数を占めている。 さつき工業( 協)(東京) <役員名簿(2003年)> 代表理事 正木三男 ㈱マルエム 代表取締役 理事 谷道幸 ㈱マルエム 取締役 理事 ○○○○ 理事 ○○○○ 監事 正木理恵 ㈱マルエム 取締役 さつき工業( 協) の6人の役員中3人が ㈱マルエムの役員 (協)総合情報サービス(福岡) <役員名簿(2003)> 代表理事 中原敏雅 中原工業㈱ 代表取締役 理事 丸山勝幸 ㈱JDR 代表取締役 (元中原工業㈱ 顧問) 理事 中原敏彦 中原工業㈱ 取締役 理事 中原啓雅 中原工業㈱ 取締役 理事 ○○○○ 理事 ○○○○ 理事 ○○○○ 理事 ○○○○ 監事 ○○○○ (協)総合情報サービスの8人の役員中 4人が中原工業㈱の役員や顧問 7 ■ケース2’ 役員のほぼ全員を親族で固めた組合もある 姉妹夫婦4人で経営 ︵ 夫︶ 赤金華津男︵ 理事︶ ○ ︵ 姉︶ 赤金和代︵ 専務理事︶ 2002年度別納利用額30.5億円(16位) 組合員数1282 ︵ 夫︶ 松浦徹︵ 理事︶ 【役員名簿(2002年)】 代表理事 松浦八重子 専務理事 赤金和代 理事 松浦徹 理事 赤金華津男 監事 暮部清俊 ○ ︵ 妹︶ 松浦八重子︵ 代表理事︶ 協同組合大阪共同計算センター 8 ■ケース3 複数の組合が所属する企業グループ パレアナビル (横浜市港北区新横浜) ㈱ワイ・ エス・ ティ 代表取締役山田智信 9階 (協)トーニチ共栄会 (別納利用額11位) 【役員名簿】 代表理事 山田敏隆 理事 山田智信 理事 理事 監事 ㈱ワイ・エス・ティ取締役 ㈱ワイ・エス・ティ代表取締役 →少なくとも97年から99年には代表理事 山田篤志 ㈱サンタコンサルティング取締役 酒井孝 ㈱サンタコンサルティング代表取締役 渡辺開志 ㈱福山運送代表者 【役員名簿】 理事長 坂本廣士 理事 山田安子 理事 山田智信 理事 竹内建 理事 嵯峨春平 監事 酒井孝 2階 員外 ㈲山田 代表取締役 ㈱ワイ・エス・ティ代表取締役 ㈱サンタプランニング代表取締役 ㈱北陸東通 代表取締役 ㈱イスト監査役 YSTグループ ㈱サンタコンサルティング 別納利用額 34.5億円(11位) 組合員数 1477 合計してみると… 別納利用額 55.4億円 →利用額トップの情報 通信システム(協)を抜 いて1位に。 別納利用額 20.9億円(48位) 組合員数 1042 (協)ビジネスネット二十一 (別納利用額48位) 9 ■ケース4 別納ビジネスの味をしめて、第二、第三の 異業種組合をつぎつぎ設立 1991年3月 創立総会 議長(発起人)佐藤義一 ベルファックス㈱ 代表取締役 ⇒専務理事に就任(∼?年) 出席発起人 出席発起人 出席発起人 出席発起人 出席発起人 ○○○○(設立発起人代表)⇒代表理事に就任 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○ 名称変更 1996年 協同組合石川県企業振興センター 名称変更、事業地区拡大 1997年 協同組合アイコック企業振興センター 名称変更、事業地区全国化 2003年 協同組合全国企業振興センター 2002年度別納利用額25.7億円(30位) 佐藤は石川での別納ノウハウを福井で活用 協同組合石川県協同事務センター 福井県ベンチャービジネス事業協同組合 1995年2月 創立総会 議長(発起人)○○○○ 出席発起人 佐藤義一 ベルファックス㈱代表取締役 ⇒代表理事に就任(∼2001年∼?年) 出席発起人 ○○○○ 出席発起人 ○○○○ 名称変更、事業地区拡大 ⇒2001年事務所を東京・ 西浅草に移転 ?年 ベンチャービジネス事業協同組合 2002年度29.2億円(20位) 北陸地方で隣接する2県から発祥した二つの組合の 設立に佐藤義一は携わってきた。地方から全国に展 開していく2組合の発展の系譜は似通っている。 (※ベンチャービジネス協同組合は役員名簿の提出を拒んでいるため、 現在の役員として佐藤が残っているかどうかは未確認である。) 10 トラブルは「政治力」 でもみ消す • 別納カードの又貸しなど不正使用が見つかると、公団から別納割引の利用停止処分を受けることになる。 異業種組合にとって利用停止処分は深刻な問題だ。公団に利用停止処分の期間軽減など、お目溢しをし てもらえるよう根回しが重要になる。ここに「政治力」が介在する隙間ができる。異業種組合の理事会議事 録から、そうした「 政治力」の影が見え隠れしている。 • 「カード不正使用(二度がけ)報告書4件の現状説明と違反行為の対策及び改善案を審議検討した。今後、 組合運営上政治力の必要性が検討された」(協同組合四国ハイウェイシステム 1999年度第2回理事会議事録より) • 岡山県高速道路利用センターではトラブル解決のために、「今回の事犯について日本道路公団本社関係 者との非公式な席での会見」をもち、その内容を理事会で報告している。 「・・・日本道路公団関西支社長に対する陳情書及び当該組合員の誓約書並びにこれまでの組合の実績を 勘案し、(利用停止期間)3カ月を1カ月に考慮したとのこと。・・・今回の処分軽減について、代議士を介して これを実施するとの声もあるが、公団としては一切突っぱねる方針を明らかにしている」 11 異業種組合の利用額だけは突出した伸び率 直近5年で4割近く異業種の利用額が激増 億円 加入形態別にみる年間利用額の推移 4500 4000 異業種組合 3500 運送業組合 3000 2500 路線バス会社 2000 観光バス会社 1500 貨 物 トラック会 社 1000 その他 500 0 12 1998 1999 2000 2001 2002 異業種組合が享受する割引額は 直近5年で37%も増加 加入形態別にみる割引額の推移 億円 1200 1000 異業種組合 800 運送業組合 路線バス会社 600 観光バス会社 400 貨 物 トラック会社 200 その他 0 1998 1999 2000 2001 2002 13 値上げを嫌い、利用者は現金払いから 別納やハイカでの割引利用に流れた 2 ハイカ 年目 6%増 6% 値上げ 1988 創設 1989年の値上げの場合 21.7円/km 632% 増 23% 増 23.0円/km 現金 1989 1988 1989 1989 1988 1989 29% 増 13% 増 4%増 7% 値上げ 1988 ハイカ ハイカ 万円券 創設 1995年の値上げの場合 別納 5 23.0円/km 24.6円/km 現金 別納 ハイカ 14 1994 1995 1994 1995 1994 1995 1994 1995 不公正・不公平な別納割引制度を廃止し、 公平に基本料金の値下げを • 全国七百六十の異業種組合が毎年およそ一千百億円を高速道路通行料金収入からかすめとっ ている。別納割引では公団から組合が受ける割引率はほぼ30%、ここから実際の利用者である 組合員へ還元されるのは平均15%に過ぎない。残り半分の15%に相当するおよそ500億円は、 組合がまるまる中間搾取しているお金である。組合、といっても実態はすでに述べているように同 族や仲間同士が十人を超えない程度の少人数で運営しているケースがほとんどだ。わずか数人 の仲間内で利益を山分けしているのが内実なのである。 • 彼らに中抜きされている500億円は、その分余計に現金払いの一般利用者が支払わされている 料金であり、本来の利用者へ還元すべきものである。別納割引を廃止して基本料金を15%程度 値下げすれば、実際の利用者の負担は変わらずに、別納事業で儲けている組合の利益だけをな くすことができる。 • 運送事業者の協同組合や大口利用の法人など、利用者が直接に30%の割引を受けているケー スもある。これについては、普通車に対して大型車は一・六五倍、特大車は二・七五倍となってい る料金格差を15%程度縮小することで、基本料金値下げ分の15%程度と合わせて30%の値下 げとなり、現状と負担を同水準にしておくことができる。 • また利用者利便のため、別納割引を廃止しても、料金後払い制度は存続させることが望ましい。 15