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1.平成22年度 事業報告書 事業の状況 §事 業 を お こ な う た め の 演 奏 団 体 の 指 名 に つ い て ・ 指名の基準は、振興会の創立準備期に策定された次の4項目を 満たすことが条件となっており、今年度もこれを踏襲した。 (イ)職業専門家で編成される混声合唱団であること。 (ロ)定期演奏会を年間5回以上実施することが可能なこと。 (ハ)演奏の水準が常に高いこと。 (ニ)合唱団員の契約関係が整っていること。 ・ 東京混声合唱団は創立以来満55年の歴史を持ち、定期公演 は年間5回を数え、演奏姿勢に一貫性があり、安定度も高く 評価も定まったものとなっている。また契約の諸条件も整備 されている。 ・ 4項目を満たす演奏団体のリスト・アップについては公平原 則の視点から常時取材を行い、指名についてのフリー・ハン ドを保有するものであるが、現況では適格団体は東京混声合 唱団ただ一つにとどまっている。 ・ これにより指名は東京混声合唱団に決着を見ている。 1 §事 業 の 概 要 Ⅰ)合唱音楽の演奏会の開催 (1)定期演奏会 4回、 特別定期演奏会 1回、 計5回 ★定期演奏会は第222回から第224回および特別演奏会(八月のまつ り)。地方(大阪)での定期演奏会(1回)をあわせて5回 ★内容 ●平成22年8月9日(月)林光・東混 八月のまつり No.3 1 林 光 さ ん の 指 揮 、寺 嶋 陸 也 さ ん の ピ ア ノ に よ り 、「 原 爆 小 景 」完 結 版 、 林さんの新作「花靫」の初演、「鳥の歌」と抒情歌5曲。照明は古賀 満平さん。「“夏の風物詩”ともなった林光と東京混声合唱団の「八 月のまつり」も31回目となった。すべて林の作品で、定番の《原爆 小景》から開始された。いずれも名唱。(國土潤一・音楽の友)」 ● 平 成 2 2 年 9 月 3 日 ( 金 ) ( 大 阪 ) い ず み ホ ー ル 定 期 演 奏 会 No.1 5 15年目を迎えた大阪定期は、前回に引き続き常任の松原千振さんと、指揮 者の大谷研二さんによる指揮。松原さんは、シェーファーによる昨年度委嘱 作再演とラウタヴァーラ作品、大谷さんは西村朗さんの近作と若手のホープ 上田真樹さんの委嘱作再演。ピアノは斎木ユリさん。 ●平成22年10月8日(金) 第222回定期演奏会 フィンランド楽旅記念と題して常任の松原千振さんの指揮。生誕200年のシュ ーマン、間宮芳生さんの作品、フィンランドの3人の作曲家、ハーパネンによる 委嘱新作「クレッルボ・クラスターズ」の初演とパルムグレンとクーラの作品。 「 高 度 な 合 唱 技 術 、表 現 を 要 求 さ れ る 曲 た ち だ が 、東 混 の 演 奏 は 、常 任 松原千振の指揮もあって硬軟自在に聴かせた。(小山晃・音楽の友)」 ●平成22年12月17日(金) 第223回定期演奏会 イタリアを中心に広くヨーロッパで指揮者・作曲家として活動する杉山洋一さん を指揮者として初めてお迎えした。2006年に氏に委嘱した「ひかりの子」の 自作自演、生誕150年のマーラーの「アダージオ」をペッソンが編曲した「い かなるドイツの空」、そしてプーランクの大作「人間の顔」。「合唱団のメンバ ーたちはフランス語の発音にも配慮しつつ、この曲の劇的な側面も引き出す歌唱 を聴かせた。杉山による丁寧な指揮の貢献度が大きかった。最近は指揮活動にや や軸足を移したかにも見える杉山だが、今後もぜひ創作・演奏両面での活動を期 2 待したい。(伊藤制子・音楽の友)」 ●平成23年3月18日(金) 第224回定期演奏会 音楽監督の田中信昭さんの指揮。「合唱への新しい道」と題し、篠田昌伸さんへ の委嘱初演、野平一郎さんと西村朗さんの最新作。ピアノは中嶋香さん。震災一 週間後の開催。「聴 衆 は 厳 し い 日 常 を ひ と 時 離 れ 、「 う た 」の 魅 力 に 酔 い 痴れた。このような時こそ音楽をする意義を示した一夜。(國土潤一・ 音 楽 の 友 ) 」 「 田中の指揮も中嶋香のピアノも水を得た魚。(西耕一・音楽現 代)」 ★曲目紹介 〔東混特別演奏会 林光・東混 2010年8月9日(月) 指揮 林 光 ピアノ 八月のまつり 31〕 第一生命ホール 寺嶋陸也 照明 古賀満平 ●林光作曲・原民喜詩 原爆小景 ●林光作曲・木島始詩 混声合唱と一対の笛のための 鳥のうた ●林光作曲 花靱-閑吟集によるコンチェルト-新作初演- ●林光編曲 日本抒情歌曲集より からたちの花、シャボン玉、もう直き春になるだろう、カチューシャの唄 〔いずみホール定期演奏会 No.1 5 〕 2010年9月3日(金) 指揮 いずみホール 松原千振、大谷研二 ●ラウタヴァーラ作曲 ピアノ 斎木ユリ マリアの賛歌 ●上田真樹作曲・林望詩 混声合唱とピアノのための組曲 夢の意味(2007年委嘱作品) ●マリー・シェーファー作曲 ナルキッソスとエコーの神話 オウディウス「変身物語」より(2009年委嘱作品) ●西村朗作曲・佐々木幹郎詩 同声合唱とピアノのための組曲 夏の庭 〔 第 2 2 2 回 定 期 演 奏 会 〕 フィンランド楽旅記念 2010年10月8日(金) 指揮 東京文化会館小ホール 松原千振 ●ロベルト・シューマン作曲 4つの混声合唱曲 ●間宮芳生作曲・大久保景造詩 混声合唱のための 3 五つのピエタ ●ペルットゥ・ハーパネン作曲 クッレルボ・クラスターズ-委嘱初演- ●セリム・パルムグレン作曲 ポプラ、悲しみ ●トイヴォ・クーラ作曲 海の讃歌 〔第223回定期演奏会〕 2010年12月17日(金) 指揮 東京文化会館小ホール 杉山洋一 ●杉山洋一作曲・ミゲル・エルナンデス詩 ひかりの子 (2006年委嘱作品) ●ジェラール・ペッソン作曲・アウグスト・フォン・プラーテン詩 いかなるドイツの空も ●フランシス・プーランク作曲・ポール・エリュアール詩 カンタータ「人間の顔」 〔第224回定期演奏会〕 2011年3月18日(金) 指揮 田中信昭 ●野平一郎作曲 ピアノ 東京文化会館小ホール 中嶋香 同声合唱とピアノのための 進化論 ●篠田昌伸作曲・渡辺玄英詩 混声合唱とピアノのための ●西村朗作曲・佐々木幹郎詩 火曜日になったら戦争に行く-委嘱初演- 混声合唱とピアノのための組曲 夏の庭 (2)海外公演 常任指揮者、松原千振氏の尽力により10年振り2度目のフィンランドでの公演 が実現した。文 化 庁 国 際 芸 術 交 流 支 援 事 業 。 民間からの助成も公益財団法人野 村財団、公益財団法人三菱 UFJ 信託芸術文化財団、公益財団法人 ローム ミュージッ ク ファンデーションからいただいた。ヴィータサーリ現代音楽祭「音楽の時」への 出演をはじめ4公演を開催。間宮芳生さん、湯浅譲二さん、池辺晋一郎さん、武満徹 さん、三善晃さんの作品をはじめ、シェーファーによる昨年度委嘱新作を披露、大き な話題となった。 ヴィータサーリ現代音楽祭「音楽の時」 2010年7月10日(土)ヴィータサーリ教会 指揮 松原千振 ●間宮芳生作曲 合唱のためのコンポジション 第16番(2004年委嘱作品) ●湯浅譲二作曲 芭蕉の俳句によるプロジェクション(1974年委嘱作品)より ●マリー・シェーファー作曲 ナルキッソスとエコーによる神話(2009年委嘱作品) 4 ●間宮芳生作曲 12のインヴェンションより ●武満徹編曲 さくら 2010年7月12日(月) アシッカラ教会 指揮 松原千振 ●間宮芳生作曲 合唱のためのコンポジション 第16番 ●池辺晋一郎作曲 東洋民謡集 I より、東洋民謡集 II より ●マリー・シェーファー作曲 ナルキッソスとエコーによる神話 ●間宮芳生作曲 12のインヴェンションより ●シベリウス作曲 愛する人 オルガンの夕べとアリアの祭典 2010年7月15日(木) エスポー・タピオラ教会 指揮 松原千振 ●間宮芳生作曲 合唱のためのコンポジション 第16番 ●池辺晋一郎作曲 東洋民謡集 I より、東洋民謡集 II より ●マリー・シェーファー作曲 ナルキッソスとエコーによる神話 ●間宮芳生作曲 12のインヴェンションより ●武満徹編曲 さくら ●三善晃作曲 ソーラン節 ユバスキラの夏音楽祭 2010年7月16日(金) ユバスキラ・タウルマキ教会 指揮 松原千振 ●間宮芳生作曲 合唱のためのコンポジション 第16番 ●池辺晋一郎作曲 東洋民謡集 I より、東洋民謡集 II より ●マリー・シェーファー作曲 ナルキッソスとエコーによる神話 ●間宮芳生作曲 12のインヴェンションより ●シベリウス作曲 愛する人 Ⅱ)合唱作品の委嘱 今年度は次の2人の作曲家への委嘱作が誕生した。 ・ ペルットゥ・ハーパネン作曲 (第222回定期 クッレルボ・クラスターズ 2 0 1 0 .1 0 . 8 ) 1972年生まれのフィンランドの作曲家、ハーパネンへの委嘱が実現。 「 フィンランドに伝わるカレワラの詩による混声合唱曲で、作曲家書き下ろしの 5 曲の演奏時間十数分の中篇だが、音楽的にも技術的にも相当に高度な作品である。 しかし東混の演奏はハーモニーも声部のバランスもいたって精緻であり、醸し出す 詩情も大変豊潤だった。初演は成功だったと思える。(小山晃・音楽の友)」 ・ 篠田昌伸作曲・渡辺玄英詩 混声合唱とピアノのための (第224回定期 火曜日になったら戦争に行く 2 0 1 1 .3 . 1 8 ) 1976年生まれの篠田昌伸さんへは2作目の委嘱初演。「渡辺玄英の 散文詩は長文で同時代的題材の佳作。しかし、既に演奏した野平曲と同 種の方法論で物語のある長文を聴くには順番も悪かったか。濁りのない 音配置はセンスあり。(西耕一・音楽現代)」 Ⅲ)アマチュア合唱団への指導者派遣 大谷研二を東工大コールクライネス、学習院女子大合唱団などの育成 指 揮 、ほ か に 全 日 本 合 唱 連 盟 各 支 部 の 合 唱 講 座 の 講 師・地 区 大 会 ・全 国 審査などに派遣した。 Ⅳ)合唱音楽に関する調査研究 諸外国に於ける混声合唱団のレパートリー調査を引き続き実施した。 Ⅴ)合唱歌手の育成 検討中 Ⅵ)音楽に関する出版物の刊行 「合唱音楽」第30号 B5 版 5 2 ペ ー ジ 3 月 31 日 発 行 6 1,500 部