Comments
Description
Transcript
北方圏の自然社会環境と人々の健康増進および安全確保に関する研究
北大を特徴づける研究分野および研究テーマ (1.世界レベルで見て北大に優位性のある研究分野) 番 号 11G-11 提案部局等 大学院獣医学研究科 苅和 連絡先 担当者 1.研究分野 宏明 5212 (適当なものがあれば記入,空白でも構わない) 人獣共通感染症 2.研究テーマ (必須で 50 字以内程度:対象となる範囲がある程度広いものでも可) 北方圏の自然社会環境と人々の健康増進および安全確保に関する研究 3.簡単な説明 (80 字以内程度) 北方圏の国々では、野生動物や媒介動物などの自然環境と密接に関連して、重篤な人獣共 通感染症が多発している。これらの感染症の発生要因とその予防対策に関する研究を実施す る。 4.エビデンスの概要 (箇条書きで 5 項目以内,1 項目 40 字以内程度) 1)海外において野外調査などの国際的な共同研究を活発に実施している。 2)野外調査の成績を基にした主要誌への論文発表が国際的に高く評価されている。 3)野生動物における人獣共通感染症の病原体の検索や存続様式の解明を行っている。 5.関係する部局や組織など(複数記載可) 大学院獣医学研究科、大学院医学研究科 6.主たる研究者 10 名以内 (関係部局等が明確で,且つ対象者が多いなどの理由で記入困難な場合は空白でも可) 氏 名 苅和 宏明 好井 健太朗 今内 覚 寸田 祐嗣 有川 二郎 吉松 組子 清水 健太 五十棲 理恵 所 属 大学院獣医学研究科 大学院獣医学研究科 大学院獣医学研究科 大学院獣医学研究科 大学院医学研究科 大学院医学研究科 大学院医学研究科 大学院医学研究科 役 准教授 助教 准教授 助教 教授 准教授 助教 助教 職 7.状況説明 (現在のスタッフの活動に重点を置いて:1,000 字以内) わが国では野生鳥獣によって媒介される重篤な人獣共通感染症の発生は幸い稀である。し かし、隣国であるロシア、韓国、中国などのユーラシア大陸東部の国々をはじめ、東南アジ ア、アフリカなど世界各国で重篤な人獣共通感染症が多発している。これまで我々は人獣共 通感染症の発生国に赴き、現地の研究者と共同で野外調査を実施して、人獣共通感染症の発 生要因を解明しようと試みてきた。 ロシアとメキシコにおける人獣共通感染症の疫学的研究(苅和) 10 年以上におよぶロシアとの共同研究で、ロシア各地におけるダニ媒介性脳炎やげっ歯 類媒介性のハンタウイルス感染症の流行状況を解明した。また、メキシコにおいても継続 的な疫学調査を実施して、新型のハンタウイルスがメキシコに存在することを発見した。 人獣共通感染症の診断法の開発と疫学的研究(好井) ダニ媒介性脳炎ウイルスやウエストナイルウイルス等のフラビウイルス感染症の特異 的な診断法を開発し、ロシアなどでの疫学調査に活用して流行状況や日本への浸入の可能 性を解析してきた。 ザンビア、ケニアおよびフィリピンにおける家畜伝染病の疫学調査とダニ媒介性感染症の 研究(今内) 流行国の研究機関と共に家畜の伝染病および在来種家畜の疾患感受性について共同研 究を行なってきた。最近、ヒトに感染するダニ媒介性のアナプラズマ症の研究を開始した。 人獣共通感染症の病理組織学的解析(寸田) 狂犬病ウイルス、ダニ病原性脳炎ウイルスおよび高病原性鳥インフルエンザウイルスな どの病原性解析ならびに病理組織学的研究を行っている。 中国、ベトナムおよびアルゼンチンにおける共同疫学調査(有川) これまで多くの国々の研究者と国際共同研究を行ってきた。2010 年 5 月に開催されたハ ン タウ イル ス国 際会 議に おい て、 優れ たハ ンタ ウイ ルス 研究 者に 授与 され る Joel Dalrymple 賞を受賞した。 インド、ベトナムおよびインドネシアにおける疫学調査とハンタウイルスの持続感染機構 の解析(吉松) 東南アジアの諸国において共同研究を実施している他、ハンタウイルスのげっ歯類にお ける持続感染機構について解析を行っている。 インドネシアとベトナムにおけるハンタウイルスの分子疫学的研究(清水) 東南アジアにおいてげっ歯類におけるハンタウイルスの分子疫学的研究を進めている。 マラリアや肺炎球菌の薬剤耐性に関する研究と国際医学調査(五十棲) これまでに、マラリア原虫や肺炎球菌の薬剤耐性に関する研究を行ってきた。また、ケニ アとベトナムに長期滞在して、各国の医師と共に感染症の現地調査に参加した。 このように野外調査を主体として人獣共通感染症の流行状況を詳細に継続調査している 研究グループは国際的にみても極めて稀である。 8.エビデンスの概要に挙げた項目の説明 (1,000 字以内で具体的に記載)(グローバル COE,共同研究拠点としての採択は説明しなくてもよい) 1) 海外における野外調査 ロシアにおける疫学調査(苅和、好井) ○ 1998 年 5 月:ハバロフスクとサハリンにおけるげっ歯類の捕獲 ○ 1998 年 7 月、1999 年 9 月~10 月、2002 年 8 月~9 月: ハバロフスクにおけるげっ歯類の捕獲 ○ 2000 年 8 月~9 月:イルクーツクにおけるげっ歯類の捕獲 ○ 2004 年 10 月:モスクワとハバロフスクにおける研究打合せとげっ歯類の捕獲 ○ 2005 年 8 月:ウラジオストックにおける野鳥の捕獲 ○ 2005 年 8 月:サマラとハバロフスクにおけるげっ歯類の捕獲 ○ 2006 年 8 月:ウラジオストックとハバロフスクにおける野鳥の捕獲 ○ 2010 年 10 月:サマラにおけるげっ歯類の捕獲 メキシコにおける疫学調査(苅和) ○ 2006 年 5 月、2007 年 5 月:ゲレーロ州におけるげっ歯類の捕獲 ○ 2009 年 10 月:ゲレーロ州におけるげっ歯類と翼手類の捕獲 ザンビア共和国における疫学調査(今内) ○ 2005 年、2006 年:タイレリア症の疫学調査 フィリピンにおける疫学調査(今内) ○ 2006 年(2 回)、2007 年:水牛の耐病性に関する調査 ○ 2008 年:水牛のサイトカイン発現に関する調査 ベトナム、インドネシアにおける疫学調査(有川、吉松、清水) ○ 2008 年と 2009 年:ベトナムにおけるげっ歯類の捕獲 ○ 2009 年(2 回) :インドネシアにおけるげっ歯類の捕獲 2) 野外学術調査の成績を基にした主要国際誌への論文発表数 苅和:22 報、好井:7 報、今内:18 報、有川:21 報、吉松:19 報、清水:2 報 3) 野生動物における人獣共通感染症の病原体の検索や存続様式の解明 我々はロシアや東南アジアにおいて、げっ歯類とヒトにおけるハンタウイルス感染の 疫学調査を実施し、地域ごとに病原巣となるげっ歯類とウイルスの種類が異なることを 明らかにしてきた。また、極東ロシアの鳥類がウエストナイルウイルスに感染している ことから、本ウイルスの日本への侵入の危険性が高いことを示してきた。 人獣共通感染症の発生要因の解明 このように、人獣共通感染症の予防にはその地域ごとに感染源となる動物(病原巣動 物)を特定し、病原体を分離して、その危険度を予想することが重要である。本研究で は北方圏の人獣共通感染症の流行地において野生動物とヒトにおける感染状況を調べ るとともに病原体の性状を詳細に解析して、人獣共通感染症の発生要因を様々な面から 明らかにすることが目的である。