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J-33 - 日本大学理工学部

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J-33 - 日本大学理工学部
平成 22 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集
J-33
海浜砂の紅斑紫外線反射率分布
Ultraviolet Reflection on Surface Distribution
○前田直樹 1,川西利昌 2
*Naoki Maeda1, Toshimasa Kawanishi2
Abstract: The human skin may be damaged by ultraviolet radiation on beach. There is UV reflection from coastal sand. The
UV reflectances of the sand in two places of beaches are measured. Also, luminosity and the diameter of the sand are
measured. The reflectances are 4% from 2%.
1. はじめに
皮膚ガンや,過度の紫外線被曝が人体に悪影響を与
えることは一般的に広く知られるようになってきた.
海浜では周囲に遮るものが無いため夏季に強い紫外線
を浴び,皮膚が損傷する.Fig 1 に示すように紫外線は
Fig 3.お台場海浜公
上空から入射するのみでなく砂からも反射する.砂か
Fig 4.白里海岸
らの反射はビーチパラソルなどでは防ぎ難く,紫外線
園
測定器は
Fig 5 に示紅斑紫外線測定器 DAVIS 社
という目に見えない存在から,気づかぬうちに被曝す
UVsensor6490 と UV-B 帯域紫外線測定器英光精機社
る.被曝量は海浜砂の反射率の関数であり,反射率は
MS-211-I を併用した.両者とも正面を中心とした余
場所により異なる.この分野の研究には高層気象研伊
弦特性の指向性を持つ.UVsensor6490 は波長に対す
[1]
藤による紫外線分光地面反射 ,魚による海浜砂の分
る相対感度が CIE 紅斑作用曲線[4]に近似しており,
光反射率[2],末田の海浜砂の紅斑紫外線反射率[3]など
太陽紫外線指数 UV Index(以下 UVI と略)[5]を測定で
があるが,海浜断面での紫外線反射率について論じた
きる.紅斑作用とは過度の紫外線を浴びたとき皮膚
ものは無い.本研究は紫外線測定器を用いて,砂から
が赤化することを云う.MS-211-I の測定波長は 280
の紫外線反射量と全天紫外線量を測定し,その比から
から 315nm である.MS-211-I の測定結果は竹下の式
紫外線反射率を算出したものである.汀線付近から陸
[6]
域までの紫外線反射率分布を明らかにした.
を全天 UVI で除した値を UVI 反射率と定義する.
を用いて UVI に換算した.ここでは砂の反射 UVI
2. 測定概要
UVsensor6490 は Figure 5 のように全天 UVI を
測定場所は Fig 2,3,4 に示す東京都お台場海浜公園
sensor-A,海浜砂の反射 UVI を sensor-B で測定する.
及び千葉県白里海岸である.測定年月日時は,お台
MS-211-I は手持ちで上下に方向を変えて測定した.
場海浜公園 2010 年 6 月 2 日太陽南中時,白里海岸
測定高さは顔面の被曝を想定し,座位の顔面高さ
2009 年 8 月 9 日太陽南中時である.汀線付近の濡れ
70cm とした.Table 2 及び Fig 7 にお台場海浜公園の海
た砂と汀線から 40m 付近の砂を採取した.砂の明度
浜の UVI 反射率分布を示す.汀線付近の砂は濡れて
はミノルタ色彩色差計 CS-100 で,粒径はふるいで測
いる上,Figure 6(a)の上部のように 20%程度の汀線付
定した.砂の明度と中央粒径を Table 1 に記す.お台
近の砕けた海面の反射が含まれるため低くなり,UVI
場の砂が白里に比較して,明度 35 と高く,中央粒径
反射率は 2%程度である.汀線から離れるに従って砂
0.45mm と大きい.汀線付近では濡れて明度は低くな
の明度は高くなり,また Fig 6(b)のように海面の影響
る.
が無く全て砂からの反射になるため 40m では 4%に達
Table 1 海浜砂の明度と中央粒径
お台場
海浜公園
天空 太 陽 直
射
天空紫外放射
白里海岸
場所
採取位置(表面)
明度
中央粒径
測定器
mm
太陽紫外放射
東京都
地物反射紫外放射
千葉県
反射
50km
お台場海 汀線から40m
浜公園 汀線付近
35
0.45
14
0.5
汀線から40m
21
0.23
19
0.19
N
白里海岸
汀線付近
する.
Fig 1.海浜の紫外線反射
Fig 2.対象海浜
1:日本理工・学部・海建 2:日本理工・学部・教員
695
センサーA
センサーB
Fig 5 紫外線測定器
平成 22 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集
Fig 8 は白里海岸の UVI 反射率分布を示す.汀線付
[2]魚再善,川西利昌,1998:海浜砂の紫外分光反射率に関する
近で 1%程度,汀線から 50m 程度では 2%弱である.
研究,日本建築学会構造系論文集
3. 海浜砂の明度・粒径と紫外線反射率
[3]末田優子,川西利昌,2010:建築材料と海砂の紅斑作用紫外放
Fig 9 反射率と砂の明度の関係を示す.明度が増すと
第 511 号,pp.157-162
射透過率・反射率及び紫外線防御指標 UPF に関する研究,日本建
UVI 反射率も大きくなる.すなわち汀線付近の海水に
築学会環境系論文集
濡れて黒ずんだ砂は UVI 反射率が低く,乾いた砂は高
[4]CIE,1993:Reference Action Spectra for Ultraviolet Induced
い.明度が倍になると UVI 反射率も倍になった.Fig 10
Erythema and Pigmentation of Different Human Skin Types, CIE
は UVI 反射率と砂の粒径の関係を示す.UVI 反射率は
Technical Report Technical Collection 1993 103/3
粒径と関係しないことが判る.海浜の砂の場合,中央
[5]宮内厚,2007:太陽 UV 環境と UV Index, 日本照明委員会第 16 回
粒径が 0.35 から 0.6mm の間にあり,紫外線波長から見
JICE セミナー資料,pp.21-26
ると粗さの変化は無視できる.
[6]塩原みゆき,竹下秀,佐々木政子,齋藤昌子,2007:ポリエステ
4. 海浜砂の UVI 反射率が鉛直 UVI に及ぼす影響
ルおよび綿白布の太陽紫外線放射機能,第 16 回 JCIE セミナー資料
第 75 巻 650 号,pp.397-403
UVI 反射率の大小が顔面など鉛直面の紫外線量にど
ρは UVI 反射率である.UV の鉛直面 UVI は(1)式のよ
うになる.
U v 1  1
1

 

U
2  tan hs
2 
5
UVI反射率(%)
のような影響を与えるかを試算する. hs は太陽高度,
4
3
2
1
0
(1)
50
40
30
20
10
0
汀線からの距離(m)
汀線
UVI 反射率ρをパラータとして,太陽高度 70 度の鉛
直面 UVI と全天 UVI の比を計算した結果,水平面全天
10m
10m
10m
10m
Fig7.お台場海浜公園の UVI 反射率分布
UVI を 100%とすると,反射が 0 の時,鉛直 UVI は 43%
5
である。
今回の海浜で測定した UVI 反射率の最大値 4%
UVI反射率(%)
4
では 45%となるので数%しか紫外線量は上昇しないこ
とが判る.したがって,お台場や白里海岸の砂の場合,
紫外線反射を考慮しなくても良いと云える.
3
2
1
0
5. まとめ
50
40
30
20
10
0
汀線からの距離(m)
(1)汀線付近の砂は濡れて明度が低い上,海面の反射が
含まれるため反射は少なくなり,UVI 反射率は 2%程度
である.汀線から離れるに従って砂は乾き今回の海浜
40m
では 4%に達した.(2)明度が増すと UVI 反射率も大き
1m
Fig 8.白里海岸の UVI 反射率分布
UVI反射率(%)
くなる.すなわち汀線付近の海水に濡れて黒ずんだ砂
は明度が低く UVI 反射率が低い.乾いた砂は明度が高
く,反射率も高い. (3) 太陽高度 70 度の鉛直面 UVI
と全天 UVI の比を計算した結果,反射により数%しか
鉛直 UVI は上昇しないことが判った.したがってお台
5
4
3
2
1
0
0
場や白里海岸の砂の場合,紫外線反射を無視できる.
参考文献
10
20
30
明度
40
50
0.8
1
Fig 9.UVI 反射率と明度
UVI反射率(%)
[1]伊藤真人,2005:ブリューワー分光光度計による地面反射波長別紫
外域日射の精密定常観測結果,高層気象台彙報第 65 号,pp.37-44
Table2 お台場海浜公園の UVI 反射率
汀線から
全天UVI
の距離(m)
10
4.6
20
3.9
30
3.5
Fig 6. 汀線付近の
40
3.1
UVI反射率
反射UVI
(%)
0.1
1.9
0.1
2.2
0.1
3.7
0.1
4.1
5
4
3
2
1
0
0
0.2
0.4
0.6
粒径
Fig 10.UVI 反射率と粒径
魚眼写真
696
海
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