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アプリケーションラボ(APL)

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アプリケーションラボ(APL)
予測情報は、
世界中の
さまざまな分野で
使われています。
研究と社会との相互的啓発及び持続的連携により
イノベーションの実現を目指す
気候変動予測システム
気候の異常を予測
情報産業
アプリケーションラボ
Innovations from Earth Science
情報提供
スーパーコンピュータ[地球シミュレータ]
世界最大のベクトル型スーパーコンピュータ
です。特に大気や海洋など流体の計算に優れた
能力を発揮します
農業(米、小麦)
水管理
感染症(マラリア、デング熱等)
商品生産管理(ワイン等)
気候予測データのさまざまな分野への応用可能性
オーストラリアの農業
2006 年、正のインド洋ダイポールモード現象
とエルニーニョ現象が同時に発生したことによ
りオーストラリアは大干ばつとなり、農業に大
きな被害が出ました。私たちは、この干ばつを
予測していました。これをきっかけに、私たち
の予測の精度の高さを知って、現在ではオース
トラリアの多くの農家が APL の季節予測とイン
ド洋のダイポールモードに関する情報を用いて
農作物や牧畜の
管理を行ってい
ます。APL には、
予測の素晴らし
さを讃えるコメ
ントが農家から
続々と届いてい
ます。
南アフリカの農業
南アフリカの農家のほとんどはダムや灌漑設
備を持たない零細農家で、降雨に頼ってトマ
トなどを育てています。降雨が不足すると、
農作物の収穫量と品質は低下してしまいます。
季節予測の結果に基づいて干ばつを予測し、
貯水施設をつくって備えることができれば、
リスクを軽減できます。農家の皆さんは、季
節予測の成果が南アフリカで配信される日を
心待ちにしています。
インドの新聞社
インドの新聞社も APL のインドモンスーンの
降雨予測に大きな興味を寄せています。彼ら
は毎年夏のモンスーンの季節になると APL の
予測を掲載し、私たちの予測の的中率の高さ
を讃えています。2014 年も Behera リーダー
が取材を受け、インドでは今後一変し少雨を
もたらすエルニーニョ現象と負のダイポール
モード現象の発生予測記事が掲載されました。
ニンガルニーニョ
カリフォルニアニーニャ
南アフリカの感染症
南アフリカでは蚊を媒介とする感染症流行
( マラリア、肺炎、コレラ等の下痢症など ) に
より、たくさんの人が甚大な被害を被ってい
ます。媒介となる蚊の発生には、気温や降水
量 な ど が 大 き く 影 響 し て い ま す。そ こ で、
APL で開発した SINTEX-F 季節予測システム
をベースに、長崎大学熱
帯医学研究所と協力し
て、南部アフリカにおけ
る気候予測ベースの感染
症早期警戒システムを開
発しています。
タンザニア沖の資源開発
英国に拠点を置く石油と天然ガスの調査会社
Ophir Energy は、タンザニア沖の掘削に際し
てJAMSTEC のベンチャー 1 号である㈱フォー
キ ャ ス ト・オ ー シ ャ ン・プ ラ ス(FOP 社、
http://forecastocean.com/j/index.html)の 海
流予測の結果を利用しました。FOP 社の海流
予測がとても正確で、作業を記録的な短時間
で終わらせるのに役立った、との報告があり
ました。
日本近海の漁業
㈱フォーキャスト・オーシャン・プラス(FOP
社)の予測情報は、日本近海の漁業でも利用さ
れています。FOP 社が提供する海面下の水温
や水温前線の位置の情報は漁業にとても重要
であり、レーダーや衛星観測による海面水温
だけを用いた場合と比べて漁獲量をさらに増
やすことができるそうです。
インド洋ダイポールモード現象
アプリケーションラボ
エルニーニョもどき
http://www.jamstec.go.jp/apl/
海洋研究開発機構
横浜研究所
〒236-0001
神奈川県横浜市金沢区昭和町 3173 番 25
T E L :045-778-3811(代表) FAX:045-778-5497
2014.08
アプリケーションラボ(APL)は、
JAMSTEC の研究や技術を
社会に役立てるための基盤となる研究組織です。
海の天気予報(JCOPE)
私たちを取り巻く地球環境はこの一万年ほど極めて安定した状況にあり、人類の文明が花開き
ました。しかし、産業革命以来、急激に活発化した社会経済活動は地球環境を急速に劣化させ、
人類や生物の存続さえも危うくしています。特に、温室効果気体の濃度増大は、深刻な地球温
暖化を招くに至りました。地球温暖化は気候変化(Climate Change)の代表的なものです。気
候変化は自然変動である気候変動 (Climate Variability) にも影響を与え始めています。気候変動
の代表的な現象がエルニーニョ現象やダイポールモード現象であり、私たちの生活に直接的に
影響する猛暑、厳冬、洪水、干ばつなどの異常気象や極端現象の原因になっています。
APL では、気候変化と気候変動の相互関係や気候変動現象とそれを構成する大気や海洋の変動
を解明する研究とともに、社会活動や産業活動に貢献すべく、気候変動予測システムや大気・
海洋環境変動予測システムの実用化をめざして世界のフロンティアで研究を進めています。
ラボ所長 山形
気候変動予測応用グループ
APLは
社会に貢献する予測情報を
世界に発信しています
人工衛星や船舶、海洋フロート等の地球規模の海洋観測デー
タをスーパーコンピュータ上に取り込むことで、海表面から
海底に至るまでの海流予測を実現しました。この予測データ
は、すでに民間会社を通じて、石油タンカーや遠洋漁業の漁
船などに利用されています。
APL のホームページからご覧いただけます
http://www.jamstec.go.jp/apl/
俊男
グループリーダー
Swadhin K. Behera
季節予報
大気と海洋の変動を同時にシミュレーションする大気海洋結合モデル「SINTEX-F」を用い
大気と海洋の変動を結合させ同時に計算することによって、
エルニーニョ、ラニーニャ、インド洋ダイポールモードなど
の短期の気候変動の予測を行っています。またこのような変
動によって予想される暖冬・冷夏などの情報も併せて季節予
報として公開しています。
て、数ヶ月∼最長 2 年先までのエルニーニョ現象等の気候変動予測を行っています。この
予測の精度は世界トップクラスで、予測結果はウェブページで広く公開しています(季節
予報)。また、この予測データをアフリカ域での伝染病被害の軽減や東南アジア域での農
業や水資源管理等に役立てるための応用研究にも取り組んでいます。今後、1 ヶ月程度か
ら10年程度までの気候変動現象の予測を可能にすること、また、高解像度シミュレーショ
ンを活用し、熱帯域だけではなく、予測が難しいとされている日本を含む中緯度域での気
候変動予測も可能にすることを目指して研究を進めています。
海洋・大気環境変動予測応用グループ
グループリーダー
宮澤 泰正
海洋については、黒潮や親潮の流路変動などの理解を深め、その予測精度の向上に向けて、
日々の海流予測とその検証を行っています(海の天気予報)。大気については、予測が最も
難しいとされる雲の出来方や雨の降り方を決める対流過程の理解を深め、これを高精度か
つ効率的に予測するための研究開発を行っています。また、大気と海洋の間で海上風、日
射、降雨、蒸発などの現象を通した運動量、熱、物質のやりとりに影響を与える波浪につ
いても、その予測精度の向上とともに、海洋と大気の全体に関わる現象の理解につなげる
研究を行っています(右図)
。さらに、海洋や大気の変動予測の成果を利用して、大気中の
汚染物質の輸送予測(化学天気予報)
、海洋中のプランクトンの挙動やそれを餌とする魚の
生態系の変動を解明する研究も進めています。
海洋科学情報応用研究グループ
グループリーダー
山形 俊男
先端海洋科学に基づく海洋・地球情報の新たな展開に係る研究を行っています。国際科学
会議 (ICSU) が Future Earth* 計画の一環として「Sustainability Initiative for Marginal Seas
in East Asia (SIMSEA)」の検討を進めており、同構想に向けた第一歩となる研究会を、国
内外関係者出席のもと横浜研究所で実施しました(右写真)。SIMSEA は、持続可能性を脅
かすさまざまな問題が集中している東アジアの縁辺海とその沿岸域の抱える問題を学術面
から総合的に捉えるプログラムです。
*Future Earth:ICSU(国際科学会議)が ISSC(国際社会科学評議会)などと連携して、提唱している 10 年計画の研究プログ
ラム。深刻化する地球環境問題に対処するために、これまでの人類活動と地球環境変動を総合的にとらえて現代社会を見直
すことにより、持続可能な地球の未来への手掛かりをつかもうという分野横断的な試み。
海洋、大気、波浪の変動を結合
させ同時に計算して、台風の進
路を予測した時の、その通過に
伴う海面水温の変化(赤が暖か
く青が冷たい)と海流の流跡(黒
の曲線)
。左は波浪を入れない
で予測した結果。右は波浪を入
れて予測した結果。右の波浪を
入れた方が、海面近くがかき混
ぜられて水温が低下し、より現
実に近い結果となっている。
化学天気予報
光化学オキシダントなどの大気汚染物質の運ばれ方を予測す
る「化学天気予報」システムを開発し、2006年から運用を行っ
ています。毎日の予報結果はホームページで公開しています。
近年話題になっている越境汚染の影響も考慮しています。
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