Comments
Description
Transcript
スライド - 北村達也
情動に伴う声道の変形について ー発話時/不発話時における観測ー 甲南大学知能情報学部 北村達也 t‐kitamu@konan‐u.ac.jp 1 はじめに • 情動と密接に関連する脳部位は大脳辺縁系 – 扁桃体,視床下部,中脳中心灰白質,島皮質… • 発話運動に関する神経経路(哺乳類) – 前部帯状回 Æ 中脳中心灰白質 Æ 網様体,延髄 Æ 発話運動神経核 – 運動皮質 Æ 網様体 Æ発話運動神経核 • 情動により発話運動が影響を受けうる • 本研究では,この知見を背景にして,情動を 伴う音声の生成に関する仮説を提案 2 「感情」の分類 情動 (emotion) 感情 (affection) 高等感情 (feeling) 原始情動 (primitive emotion) 基本情動 (basic emotion) 社会的感情 (social feeling) 進化の過程で獲得 福田(2008)の感情階層説による感情の分類 知的感情 (intellectual feeling) 3 情動発話の副作用仮説 発話内容想起 情動 制御不能 発話運動計画 身体に変化 発話運動 副作用的な声質変化 音声 情動音声は「出す」ものではなく 「出る」もの 4 間接的な仮説検証 • 発話時および不発話時における情動による 発話期間の変化をMRI観測 • 情動よって不発話時も発話時と同様な発話 器官の変形が生じれば,仮説を間接的に証 明したことになるのでは? 5 方法 • 被験者:俳優2名(40代男性,30代女性) – MRI装置内,仰臥位という特殊な状況で感情表現をしても らう必要があるため • 情動:「平静」,「激怒」,「喜び」,「悲しみ」 • 対話例中の一方の話者の気持ちになるよう依頼 – 発話なし(1回) – 発話あり(2回):「ええ」 • その他の指示 – 情動を表情でも表現する – 撮像中(15s)発話を持続させる必要はない – 息が切れたら声道形状を維持しできるだけ呼吸をしない 6 対話例 • 激怒 – A:「あの話は全部ウソだったんです」 – B:(殴りかからんばかりの怒りで)「ええ!許せない!」 ( 驚きではなく怒りを表現) • 喜び – A:「内定が出たんだって?」 – B:「ええ,そうなんです」(ほっとしたというのではなく喜び を表現) • 悲しみ – A:「あの皿(高価な皿)を割っちゃったんだって?」 – B:「ええ,そうなんです」 7 撮像条件 • MRI装置:島津Marconi社製MAGNEX ECLIPSE 1.5 T Power Drive 250 • 撮像パラメータ – 被験者が一息で発話する間に撮像するために調整 (約15 sで撮像) – シーケンス:Gradient Echo法 – TE=3.36 ms,TR=10.0 ms,FA=10度,撮像領域256x256(分 解能512x512 pixels),スライス矢状方向,厚み2.5 mm, 加算回数1回 • 光マイクロフォンによる音声モニタ・収録 8 結果1:女性話者(平静,激怒) 発話あり 発話なし 平静(neutral) 発話あり 咽頭腔および喉 頭腔が狭窄 発話なし 喉頭の位置が 平静より高い 激怒(hot anger) 9 結果2:女性話者(喜び,悲しみ) 発話あり 発話なし 咽頭腔および喉 頭腔が開大 喉頭の位置が 平静より低い 喜び(joy) 発話あり 発話なし ぶれ(撮像中の 動き) 悲しみ(sad) 10 結果のまとめと考察 • 発話の有無にかかわらず発話器官は情動に より影響を受ける • 発話時と不発話時の発話器官の変化には同 様の傾向がある Æ 仮説を支持 • 情動が発話器官に与える影響には個人差が ある 11 おわりに • 情動発話の副作用仮説を提案し,MRI観測で検証 – 情動が発話器官におよぼす影響は,発話時と不発話時に 同様の傾向あり – 間接的な検証ができた • 情動が発話器官に与える影響には個人差がある • 硬性側視鏡を用いた観測(実時間) Æ 本研究と同様 の傾向 • 課題 – 定量的な評価 – この仮説で何が変わるのか? 謝辞:本研究の一部は,2009年度総務省SCOPE (071705001) の支援によ り行われた 12 アナウンス • 11月音声研究会でぜひご発表ください – 日程:11月26日(木),27日(金) – 会場:静岡大学浜松キャンパス – テーマ:言語獲得・学習, 合成,生成,韻律,一般 – 招待講演 • 竹林洋一先生(静岡大学):幼児の言語獲得・学習 • 山下洋一先生(立命館大学):基本周波数モデルとそ の利用 13 結果3:男性話者(平静,激怒) 発話あり 発話なし 平静(neutral) 発話あり 舌を前方に押し 出している 発話なし 喉頭が下降, 喉頭腔が狭窄 激怒(hot anger) 14 結果4:男性話者(喜び,悲しみ) 発話あり 発話なし 下顎の上昇, 狭めの狭窄 喜び(joy) 発話あり 咽頭腔および喉 頭腔が開大 発話なし 悲しみ(sad) 15 撮像時の音声 • 女性話者 – 平静 – 激怒 – 悲しみ – 喜び • 男性話者 – 平静 – 激怒 – 悲しみ – 喜び