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(12)漢方診療の実際 ~証の変化と方剤の運用

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(12)漢方診療の実際 ~証の変化と方剤の運用
平成21年(2009)2月12日
「日常診療に役立つ漢方講座」
第175回 筑豊漢方研究会
入門講座 『はじめての漢方診療』
(12) 漢方診療の実際
~証の変化と方剤の運用
飯塚病院 東洋医学センター
漢方診療科 三潴 忠道
1
漢方医学における診断
N8
「病態を診断する」
漢方医学的病態
生体の防御能と病因との戦いの状況
漢方医学的診断=証(しょう)
病人の表している自他覚症状のすべて (診察所見)を
漢方的なものさしで整理し総括することによって得られる
その時点での漢方的診断であり 同時に治療の指示である
(藤平 健)
漢方医学における診断とは、病態つまり証を診断することである。証と
は、生体の防御能と病因との戦いの状況であり、言い方を変えれば、生
体が病因にどう反応しているか、反応のパターンのことである。藤平先
生はこのようにおっしゃっている。漢方医学的診断とは、病人の表して
いる自他覚的症状のすべてを漢方的なものさしで整理し総括することに
よって得られる、その時点での漢方的診断であり、同時に治療の指示で
ある。
証の建て方・方剤の選択法
N138
■ 陰陽を中心に
1.寒熱に注目
寒が主体→陰証の可能性
温熱刺激(入浴やカイロ)で好転
寒冷刺激で悪化
足首が冷たい
熱が主体(寒が少ない) → 陽証の可能性
2.虚実も大切
極虚→ 陰証 強実→ 陽証
3.表裏
“さむけ” と “冷え” を分ける
■ 気血水の変調としてみると?
■ 症候・病名・口訣を手がかりに
詳細は
レジュメ
付録3
参照
証の建て方、方剤の選択法を私はこう考える。まずは陰陽を中心に診断
する。次に気血水の変調としてとらえる。最後に症候、病名、口訣を手
がかりにする。病名としては、例えば首がこっている時には葛根湯が使
えることが多い。これらを総合して判断する。もう少し詳しいものが、
新しい版のはじめての漢方診療ノート138ページに載っている。
証の建て方・方剤の選択法
N138
■
ν 陰陽を中心に
1.寒熱に注目
寒が主体→陰証の可能性
温熱刺激(入浴やカイロ)で好転
寒冷刺激で悪化
足首が冷たい
熱が主体(寒が少ない) → 陽証の可能性
2.虚実も大切
極虚→ 陰証 強実→ 陽証
3.表裏
“さむけ” と “冷え” を分ける
■ 気血水の変調としてみると?
■ 症候・病名・口訣を手がかりに
陰陽、気血水、症候のなかで、一番大事なのが陰陽である。陰陽には寒
熱、虚実、表裏が含まれている。
陰 陽:自然界の相対概念
<陽>
<陰>
自然
天
夏
昼
日向
食物
体を暖める
地
冬
夜
日陰
体を冷やす
薬物
温(熱)薬
涼(寒)薬
病気
「熱」が主
「寒」が主
N8
陰陽は自然界の相対概念であり、自然界もこのように陰陽に分けられる
。食べ物も体を暖める陽性食品と体を冷やす陰性食品に分けられる。口
から入る薬も、体を温める温薬と、熱を冷ます薬、寒薬に別けられる。
病気も熱が主体の陽証と寒が主体の陰証にわけられる。
薬
温(熱)
(微温)
平
服用すると体を温める
附子
乾姜
蜀椒
桂皮
N14
性
(微寒)
寒(涼)
服用すると体の熱をとる
甘草
黄連
大黄
芒硝
石膏
*薬味:五行説により臓腑と相関
酸(肝)、苦(心)、甘(脾)、辛(肺)、鹹(腎)
温める薬は、附子、乾姜、蜀椒、桂皮、冷ます薬としては、黄連、大黄
、芒硝、石膏などがある。温めもせず冷やしもしない真中のところは平
と呼ばれ、薬としては甘草がある。
しょう
漢方医学的な病態(証)の二大別
陽証
陰性の病態 : 体力が劣勢
陰証
病気の進行方向
陽性の病態 : 体力が優勢
活動性
発揚性
熱が主体
N8
非活動性
沈降性
寒が主体
証も陰証と陽証に別けられる。陽証では生体が活発に反応し高熱を出す
。陰証は生体が反応できないので、熱産生が十分できず寒が主体になる
。病気の進行に伴い体力が落ちてくるので、一般的には陽証から陰証へ
移行する。
N10
表裏の概念
表 皮膚 関節 神経
口腔~上気道
半表半裏
胸膈内臓器
横隔膜周辺
裏
消化管
表裏と言う考え方がある。体の上の方、或いは皮膚の方、或いは外肺葉
由来の、皮膚、関節の病気が主体の時は、病は表にあることが多い。消
化管に病気の主体がある場合は、裏であることが多い。ちょうどその中
間を半表半裏と呼ぶ。
陰陽と体力と病毒との量的消長の関係
傷寒論における病態概念
N8-11
時 間
陽証病期 熱
陰証病期 寒
表
裏
裏
裏
裏
死
厥陰病期
少陰病期
太陰病期
病気は陰証と陽証に別けられる。陽証は熱が主体。陰証は寒が主体の病
態。病気は通常陽証から陰証へ進む。陽証を更に3つに分けて、太陽病
、少陽病、陽明病としている。陰証も3つにわけて、太陰病、少陰病、
厥陰病と呼ぶ。これを六病位と言う。病気は表から裏へ進む。病気は太
陽病では表にあり、陽明病では裏、少陽病では半表半裏にある。しかし
、実際にみていると、裏にいく病気は表から直接裏に行くことが多いよ
うに思う。治る時には、陰証から行く場合でも、裏から半表半裏を経過
していく。藤平先生は、陽明病の病気も少陽病を経過して治っていくの
で、少陽病期は陽明病期の後ろにあるのではないかとおっしゃっていた
。陰証では病気はすべて裏にある。体力がだんだんなくなるので寒が主
体となる。陰証の典型では裏寒があると思われる。
六病位
病 毒
陽明病期
太陽病期
初 発
半表半裏 少陽病期
体 力
六病位のまとめ(1)
病位
(表裏)
六病位 病位
(表裏)
太陽病
少陽病
表
N72
傷寒論における条文
太陽之為病、脈浮、頭項強痛、而悪寒
半表
少陽之為病、口苦、咽乾、目眩也
半裏
陽明病
裏
陽明之為病、胃家実是也
太陰病
裏
太陰之為病、腹満而吐、食不下、自利益甚、
時腹自痛。若下之、必胸下結鞕
少陰病
裏
少陰之為病、脈微細、但欲寐也。
厥陰病
裏
厥陰病之為病、気上撞心、心中疼熱、
飢而不欲食、食則吐、下之、利不止。
六病位のまとめである。太陽病では、脈が浮いていたり、頭が痛かった
り、首の後ろが凝ったり、悪寒がしたりする。この悪寒はその後熱がで
るので、熱が起おこってくることによる寒気である。少陽病では、病位
が半表半裏に移り、横隔膜前後の症状、例えば胃が悪くなる、といった
症状が出る。陽明病は裏まで病気がいって、お腹が張ったり、便秘にな
ったりする。陽の極めつけである。その後は一転して負け戦になり、太
陰病は、お腹が張って食べられない、あるいは下痢をする。これは虚満
といって、腹の中がからっぽである。陽明病では実満である。虚満では
、からっぽであるので下剤をかけるとかえって具合が悪くなる。本格的
な陰証は少陰病で、脈も弱くなり、すぐ疲れてしまい横になりたがる。
厥陰病は陰証の極めつけで、症状はめちゃくちゃで、無くなる前にポッ
と熱っぽくなったり、お腹がすいていると思うが食べると吐いてしまっ
たり、下剤をかけると止まらなくなったりする。体の中心が虚脱した状
態である。急性疾患が進んでくると、このようになるということである
と思う。
疾病経過の立体模型図
N69
(藤平健:漢方概論より改変)
体力
病毒
厥陰病
少陰病
太陰病
陽明病
少陽病
太陽病
初発
死
時間
藤平先生の書かれた図である。体力が落ち、病気の勢いが出てきて死に
至る。典型的には時間の経過とともに太陽病から厥陰病に進む。
陰陽と虚実
N11
実
大柴胡湯
小柴胡湯
桂枝加芍薬大黄湯
陰
(寒)
桂枝加芍薬湯
人参湯
柴胡桂枝湯
陽
(熱)
補中益気湯
四逆湯
虚
虚実は漢方では重要視されている。陰陽は寒熱と関係が深いが、全く同
一ではない。虚実も陰陽と相関が深いが、虚実は、体力の量ではなく、
体力の充実度に関係する。しかし、体力がないと強く反応が出来ないの
で、うんと実の場合は陽証である事が多いし、すごく虚している場合は
、陰証のことが多い。陰陽と虚実はこのように緩い相関関係があるが、
別のものである。
N11
陰陽 と 虚実
陰陽:体力の優劣
病態
陽証
陰証
病に対し
体力が優勢
体力が劣勢
寒・熱
熱が主
寒が主
虚実:生体反応の緊張度
病態
実証
虚証
病に対し
反応が充実
反応が虚弱
脈・腹壁
緊張あり
軟弱
陽証は、病に対して体力が優勢で熱が主体。陰証は体力が劣勢で寒が主
体。虚実は生体反応の緊張度で、実証は反応が充実した状態で、虚証は
反応が虚弱な病態である。
六病位のまとめ(2)
六病位
代表
脈候
太陽病
浮
少陽病
弦
陽明病
沈実
太陰病
沈弱
少陰病 沈細微
厥陰病
無力
軟弱
N72
条文以外の主要症候
舌:無苔虚証:自汗 実証:無汗・咳嗽
関節痛 筋肉痛 上気道炎症状
舌苔:白(~黄)色、往来寒熱、嘔・吐、
心下痞鞕、胸脇苦満
舌苔:暑い・白~黄~褐色、持続熱(裏熱)
熱臭有る発汗、腹満便秘(燥屎)、口渇
虚性腹満、腹痛、舌:白苔、
陽証から陰証への入り際
四肢厥冷、水様下痢、全身倦怠感
虚熱
極度の虚・寒、無気力、不消化水様下痢
6病位のまとめの図を示す。陽証から陰証に向かうにつれて、典型的に
は脈の力も弱くなっていく。太陽病の実証では無汗で咳とか、咽頭痛と
かがでやすい。虚証では自然発汗の傾向がある。その他、関節痛、筋肉
痛、このような症状は実証ででやすい。少陽病では、舌に苔がでてきて
、熱性疾患であれば、往来寒熱を来たす。胃が悪くなり、上腹部に症状
がでる。陽明病では腹全体が張ってきて熱がこもる。舌の苔の色も濃く
なり、急性熱性疾患であれば高熱が続く。腹が張って便秘する。これを
燥屎(そうし)と呼んでいる。燥屎では、一般的には便秘だが下利をす
ることがある。だから、コレラで下痢をしているときに大承気湯を使う
ときがある。熱がこもるので喉が渇く。太陰病になると熱がないので舌
の苔が白っぽくなってくる。少陰病では舌苔がなくなることもあり、冷
えてだるくて、下利っぽくなる。厥陰病になると不消化水様下痢となる
。傷寒論では急性疾患をモデルとして述べられているが、これを慢性疾
患に応用していく。
N15
漢方医学の陰陽
証(病態)
全体 構成成分
陽
陽
証
表 熱 実
陰
陰
証
裏 寒 虚
体内
薬性
循環要素
気
血
(血+水)
温
(熱)
涼
(寒)
漢方医学の陰陽では、陽証と陰証が基本で、下部概念として、表裏、寒
熱、虚実がある。この中の特に寒熱に対応して、薬性も、熱と寒に分け
る。このように、陰陽の相対的な考え方が、いろんな切り口で生かされ
ている。
N15
漢方医学の陰陽
証(病態)
全体 構成成分
陽
陽
証
表 熱 実
陰
陰
証
裏 寒 虚
体内
薬性
循環要素
気
血
(血+水)
温
(熱)
涼
(寒)
体内の循環要素として陽性成分として気があり、陰性成分として血があ
る。
証の建て方・方剤の選択法
■ 陰陽を中心に
1.寒熱に注目
寒が主体→陰証の可能性
温熱刺激(入浴やカイロ)で好転
寒冷刺激で悪化
足首が冷たい
熱が主体(寒が少ない) → 陽証の可能性
2.虚実も大切
極虚→ 陰証 強実→ 陽証
3.表裏
“さむけ” と “冷え” を分ける
■
ν 気血水の変調としてみると?
■ 症候・病名・口訣を手がかりに
では気血水とはなんであろうか。
N138
生体を維持する三要素
N49
生命活動を営む根源的エネルギー
失調病態:気逆(上衝)、気鬱、気虚
気
血
生体を物質的に支える
赤色の液体
失調病態:瘀血、血虚
水
(広義の血)
生体を物質的に支える
無色の液体
失調病態:水毒(水滞)
気は、生命活動を営む根源的なエネルギーである。形は見えないがパワ
ーがある。現実的な生体内の循環要素は広義の血である。気は眼に見え
ない。手で触れない。とても大事だが、眼に見えないのでこれを中心に
話をすると、まやかしとの区別がつかない。危ない。目に見えないもの
は、実際に見えるもので推し量るしかないと思っている。
生体を維持する三要素
N50
生命活動を営む根源的エネルギー
失調病態:気逆(上衝)、気鬱、気虚
気
血
生体を物質的に支える
赤色の液体
失調病態:瘀血、血虚
水
(広義の血)
生体を物質的に支える
無色の液体
失調病態:水毒(水滞)
気とは生命活動を営む根源的なエネルギーで、失調状態としては、気逆
、気うつ、気虚などがある。
N50
「気」の変調の分類と主な症状・治療薬
分類/病態
主要な症状
治療法:生薬例
気虚
量的不足
倦怠感 易疲労
食欲不振 意欲減退
補気:人参 黄耆 甘草
大棗 白朮 茯苓
気鬱(気滞)
循環異常・停滞
抑鬱 閉塞 異物感
重圧感 腹満 四肢疼痛
順気:厚朴 枳実 木香
紫蘇葉 香附子
気逆(上衝)
循環異常・逆流
のぼせ・頭痛・動悸
不安・焦燥 四(下)肢冷
順気:桂枝 呉茱萸
黄連 竜骨 牡蛎
気の変調の分類を示す。まず、気の量的不足。気が足りない。だるい、
疲れる。食べたくても食べられない。意欲がない。有名なものは参耆剤
。また、人参と甘草と朮と茯苓で四君子湯という補気剤がある。気欝は
気の循環異常。詰まってしまう。喉につまればヒステリーや喉頭神経症
。胸につまれば肺気腫。あるいはうつ。腹に詰まれば腹満。治療法とし
順気といって気を巡らす。香りがある生薬が多い。気逆も気の流れの異
常だが、これは上に上がってしまう。のぼせ、頭痛、動悸、焦ったり、
時には手足が冷えていまう。之も順気薬。桂枝、呉茱萸、黄連、竜骨、
牡蛎、こういったものが使われる。
これは気虚のとき。元気がない。
気虚の舌所見
斑状の白苔
鏡面舌
気虚の時の典型的な舌の所見。舌苔がまだらになっている。左の写真は
鏡面舌といって虚状が強くて、テカテカして苔が生えてこない。
補中益気湯投与前後の舌候変化
投与前
投与4週間後
リウマチでかかっている患者さん。去年の夏、ひどく疲れていたようで
舌がまだらになっていた。補中益気湯を処方した。4週間後に診察した
ときは、乾燥した苔が一様に生えていて、大分元気になりました、との
ことであった。
問診
N136
病歴・自覚症状の聴取
出入りに注意
入:食欲 口渇
出:尿 便 汗 月経
寒熱の判定は重要
寺澤捷年
「症例から学ぶ和漢診療学」
(医学書院)より 一部改変
問診表で気の異常を表しているものをあげる。気虚の場合、疲れやすい
。体が重い。気逆では、物事に驚きやすい。その他気に関する事は、怒
りっぽい、食欲がない。食後すぐ眠くなる。寝起きが悪い。目が疲れる
。鼻がつまる。香蘇散でよくなることがある。動悸がする。腹から突き
上げてくる。之は奔豚である。気逆の時はこのような症状がでる。
腹診(6)
N90
腹動(悸)
心下悸
臍上悸
臍傍悸
臍下悸
〔臨床応用〕
精神不安(気逆)
竜骨・牡蛎・茯苓
(虚状)
気逆の時には動悸が触れる。竜骨、牡蛎、茯苓。あるいは桂枝、甘草の
組み合わせが、病態に対応する。
腹診(8)
N92
小腹不仁
下腹部の知覚鈍麻⇒腹力低下
〔臨床応用〕
腎虚
(八味地黄丸)
(臍下不仁)
少し特殊なものとしては、腎虚。小腹不仁、臍下不仁が現れる。八味地
黄丸が有名である。
生体を維持する三要素
N56
生命活動を営む根源的エネルギー
失調病態:気逆(上衝)、気鬱、気虚
気
血
水
生体を物質的に支える (広義の血)
赤色の液体
失調病態:瘀血、血虚
生体を物質的に支える
無色の液体
失調病態:水毒(水滞)
液体の中でも赤い液体を狭義の血といって、この失調状態の最も有名な
ものは瘀血である。
N56
瘀血診断基準(瘀血スコア)
眼輪部の色素沈着
顔面の色素沈着
皮膚の甲錯
口唇の暗赤化
歯肉の暗赤化
舌の暗赤化
細絡
皮下溢血
手掌紅斑
判定
20点以下:非瘀血
男
10
2
2
2
10
10
5
2
2
女
10
2
5
2
5
10
5
10
5
男 女
臍傍圧痛抵抗 左 10 10
右 10 15
正中 5 5
回盲部圧痛抵抗
5 2
S状部圧痛抵抗
5 5
季肋部圧痛抵抗
5 5
痔疾
月経障害
21点以上:軽度瘀血
10
5
5
40点以上:重度瘀血病態
(科学技術庁研究班)
瘀血の場合は、皮膚や顔面の色素沈着、暗赤色の舌、毛細血管が拡張と
いった症状がでる。また下腹部の圧痛点。胸脇苦満もある意味では、上
腹部の瘀血と考えていい。柴胡剤も広い意味では駆瘀血剤であり、その
ため、柴胡剤と駆瘀血剤はよく合方され、上腹部と下腹部の瘀血をさば
くのでうまくいくことが多い。痔や月経障害も瘀血の症状である。
望診 舌診
陰証・虚証・水毒?
陽証・実証・瘀血?
舌質 淡白紅 腫大(-) 歯痕(+)
舌苔 やや湿潤 白苔 厚さ中等度
舌質 暗赤色 腫大(-) 歯痕(±)
舌苔 乾燥 白苔 厚い
わかりにくい写真であるが、右の写真では、舌の色が赤紫で、赤い点々
があり、陽実証ともとれるが、強い瘀血が存在すると思われる。
問診
N136
病歴・自覚症状の聴取
出入りに注意
入:食欲 口渇
出:尿 便 汗 月経
寒熱の判定は重要
寺澤捷年
「症例から学ぶ和漢診療学」
(医学書院)より 一部改変
瘀血の時は、皮膚に色素沈着があったり、皮膚がかさついたりする。こ
のようなときはしばしば瘀血がある場合が多い。虚証の瘀血は血虚と呼
んでもよい。血虚の代表的処方は四物湯である。しかし四物湯を単独で
使う事は少ない。皮膚がカサカサして痒いときは、当帰飲子が代表的な
処方だと思う。月経の関わるような異常は瘀血にかかわる事が多い。
腹診(7)
N60
瘀血の圧痛点
右臍傍
当帰芍薬散
小腹腫痞
(回盲部)
大黄牡丹皮湯
腸癰湯
薏苡附子敗醤散
左臍傍
桂枝茯苓丸
(加味逍遙散)
(疎経活血湯)
左臍傍一横指下
芎帰膠艾湯
臍下(小腹)
小腹急結
抵当丸
大黄しゃ虫丸
(S状結腸部)
桃核承気湯
瘀血の圧痛点としては、臍の斜め下の圧痛点が有名である。左が優位で
あれば桂枝茯苓丸である事が多い。右が優位で虚証あれば当帰芍薬散で
あることが多い。臍と左腰骨の間に圧痛点があれば、桃核承気湯の事が
多い。右側にあり、実証なら大黄牡丹皮湯、やや実証なら腸癰湯、陰虚
証なんら薏苡附子敗醤散であることが多い。臍下は抵当丸とか大黄しゃ
虫丸が有名である。これは動物生薬が入るので、なかなか手に入らない
し、一般的ではない。
生体を維持する三要素
N62
生命活動を営む根源的エネルギー
失調病態:気逆(上衝)、気鬱、気虚
気
血
生体を物質的に支える
赤色の液体
失調病態:瘀血、血虚
水
(広義の血) 生体を物質的に支える
無色の液体
失調病態:水毒(水滞)
無色の液体成分を水という。また津液ともいう。この異常を水毒とか水
滞という。
水の異常
N62
水毒(水滞) ・・・ 水分分布の異常(過剰・偏在)
四 飲(金匱要略)
痰 飲:胃内停水
溢 飲:四肢皮下浮腫
懸 飲:胸下-咳嗽
支 飲:心窩-咳嗽
体動時痛
呼吸困難
水毒の症候
分泌異常:水様の鼻汁・喀痰・帯下・浸出液・下痢 尿利異常
停
滞:浮腫 胸・腹水 関節水腫 腫脹 胃内停水 腹中雷鳴
自覚症状:(内耳関連)回転性眩暈 動揺感 起立性眩暈 耳鳴
動悸 頭冒 口渇 嘔吐 咳嗽 喘鳴
水毒の治療 ・・・ 駆水剤 利水剤
駆 水 薬:茯苓 朮 沢瀉 猪苓 防已 黄耆 細辛 麻黄 杏仁
半夏 生姜 木通
水の異常として以下のようなものがある。まずは分泌の異常。症状とし
て水様性鼻汁とか痰とかおりものとか下痢。普通は過多の事が多い。停
滞としては、むくみ、胸水や腹水。炎症性の腫脹も一種の水毒である。
お腹がゴロゴロ言うのも、腹に水が溜まるので水毒と言える。自覚的な
ものとして、眩暈、ふらつき。動悸。このような、めまいとか耳鳴とか
内耳関連の症状。また、動悸は気の異常でもでるが、水の異常としての
も出現する。また、水の片在により喉が渇く。咳や痰も水毒の異常と考
えられる。水毒の治療としては駆水剤、利水剤。駆水薬として、茯苓、
朮。沢瀉など。咳止めとして用いる麻黄もある意味駆水剤である。附子
もどこかに入れるとすれば駆水剤であると言われている。沢瀉はオモダ
カの根っこ。瀉(しゃ)というのは強く何かをすること。そのため強い
水毒には沢瀉が入った薬を使う。沢瀉湯は目がぐるぐるまわって、吐気
があるようなときに使う。沢瀉が入っている方剤は喉が渇く。
水毒の舌所見
歯痕
腫大
厚白苔
水毒の舌の所見である。歯型がついたり、腫大したり、ぬめっとしたよ
う苔がついたりする。
振水音の診察法
チャポチャポ
スナッツプを効かせて
上腹部を軽く叩く
問診
お水を飲んだ後、胃の辺りが
チャポチャポと鳴ることはないか?
おなかがちゃぷちゃぷいう。これを振水音と呼ぶが水毒で現れる。
N12
診察方法(四診について)
望診:視覚による情報収集(顔色や舌診)
聞診:聴覚(グル音や振水音)と嗅覚(便臭)
問診:病歴と自覚症状(問診表)
切診:触診(寒熱)、脈診、腹診
診察方法として、以上のように4つある。特に漢方医学に特徴的なこと
は、望診の中の舌診と、切診の中の脈診と腹診である。
望診
視覚による診察
N12
舌診
項目
動 作
体 型
顔 色
皮 膚
証判定の参考例
緩慢:虚 敏捷:実
筋肉質・堅肥り:実
痩身・水肥り:虚
赤:熱 陽証 気逆
白:寒 陰証
乾燥:血虚 浮腫:水毒
皮下出血:瘀血
粘 膜 暗赤:瘀血 真紅:熱
血 管 拡張(細絡・静脈瘤):瘀血
分泌物 膿性:熱 陽証
水性:寒 水毒
舌質
色
淡白:寒 虚
暗赤~紫:瘀血
真紅:熱
菲薄 虚
胖大・歯痕 水毒 気虚
舌苔
色
白:少陽病(乾燥)
陰証
黄:熱
乾湿 乾:陽証
湿:陰証
厚さ 厚:水毒 熱
斑状:気虚
鏡面舌(萎縮・乾燥・無苔):極虚
まずは望診。動作とか体型とか顔色とかそういったものは全て所見にな
る。動作が緩慢だったら虚証か気うつ。敏捷だったら実証か。体ががっ
ちりしていれば実証になりやすい。急性疾患の場合は必ずしも当てはま
らないが。顔色が赤ければ、陽証か気逆。粘膜、血管、分泌物の性質も
所見になる。分泌物が濃ければ、陽証あるいは熱証。水っぽかったら寒
あるいは水毒。舌質と舌苔をみるのは漢方で特徴的である。舌色が赤黒
ければ瘀血があり、強い赤色であれば熱がある。舌が薄っぺらだったら
虚証。腫れていれば水毒がある。一般的には舌苔の色が黄色くて乾燥し
てぱさぱさしているものは陽証であることが多い。ヌメッとしていたり
、薄っぺらで色も薄い苔であったりする場合陰虚証の事が多い。苔がな
い鏡面舌は極虚とか気虚のときに出現する事が多い。
望診
視覚による診察
陰証・虚証のイメージ
陰証のイメージ、実証のイメージである。
陽証・実証のイメージ
聞診
聴覚(音)と嗅覚(匂い)による診察
聴覚
嗅覚
声
咳
(呼吸)
腹鳴
張りがある:実
元気がない:虚
ためらい勝ち:気うつ
強い咳嗽:実
湿性咳嗽:水毒
乾性で咳き込む
麦門冬湯
滋陰降火湯 など
分泌物 便・ガスの臭い
強い:熱 陽証
弱い:寒 陰証
半夏瀉心湯
附子粳米湯 など
聞診を示す。聴覚では、声に張りがあれば実証か、ためらいがちに話す
場合は、気うつか。強い咳がでるときは実証か。乾燥した咳は潤してあ
げればいい。お腹がひどくゴロゴロするなら附子瀉心湯。軽ければ半夏
瀉心湯。聞診の一つとしての臭い。強いにおいは熱をもっていて陽証の
ことが多い。あまり臭いがしない時は陰証の時が多い。
診察風景である。
40
問診
N12
N136
病歴・自覚症状の聴取
出入りに注意
入:食欲 口渇
出:尿 便 汗 月経
寒熱の判定は重要
寺澤捷年
「症例から学ぶ和漢診療学」
(医学書院)より 一部改変
問診で一番大事なのは寒熱を訊くところである。体を温めていいのか、
冷やしていいのか。逆にいえば、寒が強いのか熱があるのか、あるいは
寒が弱いのか。同じ冷えでも、体全体が冷えているのか。この場合は寒
のことが多い。冷えのぼせで足だけが冷えているときは、気とか血とか
が上にのぼっているので巡らせる薬を使わなければならないことがある
。手足の先だけが冷えている場合は血を巡らせてあげなければいけない
。
切診
直接 手を下す(触れる)診察
触診
脈診
腹診
体温 下腿下部:寒 熱
皮膚
乾燥:血虚 浮腫:水毒(水滞)
軟弱:黄耆剤の適応
局所
腫脹:水毒
寒熱
舌診とともに漢方独特の代表的な診察方法
直接手を触れてする診察を切診という。体温、皮膚、局所を診ていく。
触る事は大事である。例えばリウマチの患者さん。関節に直接触って、
関節の熱が前回より軽くなっていれば、CRPが下がっていなくても下が
る可能性があり、経過観察できることがある。脈とか腹とかも大事であ
る。
切診
直接 手を下す
(触れる)診察
N12-13
脈診
相手の向かい合った手の
橈側より橈骨茎状突起の高さで
中指を橈骨動脈に触れ
示指と薬指を添える
3指で均等に脈を触知し
指で血管を強く押したり
力を抜き指を浮かす
寸 関 尺
口 上 中
寸口
浮 指を浮かせると明らか 表在性・・・・表証
沈 指で深く抑えると明らか 深在性・・・裏証
虚(弱) 緊張が軟弱・・・虚証 数 頻脈・・・熱
実(強) 力強い・・・・・・・実証
遅 徐脈・・・寒 陰証 虚証
脈は指三本で触る。血管を強く押したり、指を浮かせたりしながら、浮
なのか沈なのか。一番大事なのは、力があるのかないのか、虚実が一番
大事である。これを見誤るのが一番まずい。
切診
N82
腹診の順序
(全体→局所 上→下)
1)腹力
2)腹直筋の攣急
3)心下痞鞕
4)胸脇苦満
5)心下振水音
6)腹動(臍上悸)
7)臍傍抵抗圧痛
(瘀血の圧痛)
8)小腹不仁
3
5
4
6
2
7
1
8
腹診は、全体から局所、上から下へ診ていくと見誤りが少ない。
N70
症候・病名と証
荒れ肌 黄色帯下 生理痛
実脈
子宮筋腫 臍傍圧痛
各種症候
生体環境
病態(証)
桂枝茯苓丸証 (少陽 実 瘀血病態)
このような四診を通して、陰陽、虚実、気血水等どのような異常がある
のか診ていく。たとえば、少陽で、実証で瘀血の病態があり、桂枝茯苓
丸証と診断した。逆にいえば、この患者の生体アンバランスは桂枝茯苓
丸が治してくれると判断した。このアンバランスが、性別や年齢といっ
た生体環境を通して、荒れ肌やおりもの、生理痛といった症候を示して
くる。ここまでは推測である。次に実際に薬を投薬して、生理痛がなく
なった、おりものがなくなった、ということがあれば、桂枝茯苓丸証で
あったという確定診断が下る。これが漢方の治療と診断である。
証のとらえ方
六病位
陰・陽
四診(望聞問切)
患者の様々な愁訴や症候
臨床検査
病人の証
薬方の証
方証相対
鍵と錠前
寒熱・虚実
表裏
証
方剤
症状が改善してはじめて
その証が正しかったか否
かがわかる
気血水
漢方医学的なものさし
寺澤捷年:入門漢方医学より一部改定
証の捉え方を示す。患者の様々な愁訴や症候から四診によって、陰陽を
捉える。陰陽には、六病位や気血水などが含まれる。そして証を探って
いく。次に薬方の証、すなわち薬方の適応病態と突き合わせていく。こ
れが方証相対という考え方である。症状が改善した時に、その証が正し
かった事が分かる。これが一つの考え方である。
46
実地臨床における証と治療原則(Ⅰ)
N70
合病と併病
合病
病位は一つ 病勢が他の病位に及ぶ
太陽と陽明 葛根湯 (太陽病の方剤)
太陽と少陽 黄芩湯 (黄芩加半夏生姜湯)
白虎湯 (白虎加桂枝湯 白虎加人参湯)
三陽
併病
二薬方証または複数の薬方証の並存であって
その症状が互いに相関連しあっており
その治にあたっては先後などの法則に従うもの
藤平 健:日本東洋医学雑誌43(2),241-253,1992
(潜証)小倉重成
注意してもなかなか見落としやすい虚寒証・・・狭義
よく注意すればわかる虚寒証・・・・・・・・・・・・・・・・広義
実地臨床における証と治療原則を示す。
証が一つであることを前提として話しをしてきたが、実際には証が複数
見えることがある。急に風邪を引いた時は、証が一つである事が多いが
、慢性疾患では証が一つであることはむしろ少ない。その時どうするか
。合病や併病という考え方がある。合病では、病位は一つであるが、病
勢が他の病位におよぶ。たとえば、太陽と陽明の合病は、必ず下痢す、
葛根湯これを主る、という条文がある。 葛根湯は太陽病の主要方剤で
あるから、太陽病にいながら、下痢という裏の方の症状を呈しているの
である。本体は太陽病である。そのため、太陽病にある本体をたたく葛
根湯を投与すれば、うまくいけば効く事がある。子供の感冒性下痢など
のときはこのことが多い。太陽病と陽明の合病も自下利する。黄芩湯こ
れを主る。三陽の合病は、白虎湯これを主る、と言われている。他にも
合病は出てくるが、代表的なものはこの3つである。少陽と陽明は大承
気湯という条文もあるが、あれは正文かどうかわからないし、実際に私
は見たことがない。私が藤平先生から教わった合病はこの3つである。
47
症 例
主
訴
33才 看護師
下痢 嘔気 頭痛
現病歴
平成4年6月7日朝より頭痛出現 寝冷えと思い
放置していた
翌8日には下痢と嘔気も出現してきたため
朝食をとらずに出勤したが腹痛と腹鳴を
伴う下痢が午前中だけで5回を数えたため
同日昼当科受診
家族歴
特記すべき事なし
既往歴
特記すべき事なし
これは陽証の下痢の症例である。当時33であった看護師さん。主訴は
下痢、嘔吐、頭痛である。昨日から頭痛がでてきたが寝冷えだと思って
ほっておいた。今日になって下痢と吐気がしてきた。仕事が休めないか
ら、朝ご飯を食べずに出勤してきた。しかしお腹が痛いし、 お腹がご
ろごろして下痢する。午前中だけでも5回も下痢をした。そのため10
時になって受診した。
初診時現症
身長:155cm 体重:45kg 血圧:94 / 60mmHg 脈拍:76 / 分 整
眼球・眼瞼結膜:黄疸・貧血なし 心肺:異常なし
腹部:肝脾腫大なし 圧痛や筋性防御なし 腸管グル音亢進あり
漢方医学的所見
自覚症状 下痢は裏急後重(+) 便臭(+)
頭痛と体熱感あり
他覚所見
脈候:やや浮・細
舌候:腫大歯痕なし
薄い白苔あり
腹候:腹力中等度
両側腹直筋の緊張あり
下利は裏急後重、便臭の臭いが強い。陽証の下利である。しかし、頭痛
もあり、熱感もある。脈も浮いている。これは太陽病の初期である。し
かし、陽証の下痢もある。お腹は腹力中等度で腹直筋がはっていて、ご
ろごろいっている。
臨床経過
裏急後重と便臭を伴う下痢:陽証の下痢
発病後間もない体熱感を伴う頭痛:表証 (太陽病)
食欲低下と嘔気:半表半裏 (少陽病)
太陽病と少陽病の二証の並存(合病)と考え黄芩湯処方
内服後一時間で頭痛が楽になり、以後2回内服し同日中に
嘔気と下痢が治癒
黄芩湯 : 黄芩 大棗 芍薬 甘草
裏急後重を伴う下痢なので陽証の下利だろう。発病後まもなくで、熱感
を伴う頭痛がある、ことから太陽病であろう。しかし食欲低下と吐き気
もある、これは半表半裏の症状。大陽と少陽の合病、自下痢す、である
。黄芩湯と考えれば、太陽病らしい所見がありながら、少陽陽証の下痢
らしいところがありぴったりである。黄湯を飲ましたところ、1時間
で頭痛がよくなり嘔吐と下痢もよくなった。黄湯証であったことがわ
かった。黄湯は、熱をさます黄を中心として大棗、芍薬、甘草が入
っており、陽証の下痢によく処方する。
黄芩湯
黄芩三両 芍薬二両
甘草二両 大棗十二枚
太陽與少陽合病 自下利者
與黄芩湯
若嘔者
黄芩加半夏生姜湯主之
(
傷寒論太陽病下篇)
太陽病と少陽病の合病で、自下痢する者は、黄湯これを与える。もし
吐き気があれば黄芩加半夏生姜湯を与える。この人は、吐気はあったの
だけど下痢がひどかったので黄湯を与えた。吐き気が強ければ、エキ
スでは黄湯に小半夏加茯苓湯を混ぜればよい。ノロウイルス感染症に
この黄湯がよく効く。
51
実地臨床における証と治療原則(Ⅰ)
N70
合病と併病
合病
病位は一つ 病勢が他の病位に及ぶ
太陽と陽明 葛根湯 (太陽病の方剤)
太陽と少陽 黄芩湯 (黄芩加半夏生姜湯)
白虎湯 (白虎加桂枝湯 白虎加人参湯)
三陽
併病
二薬方証または複数の薬方証の並存であって
その症状が互いに相関連しあっており
その治にあたっては先後などの法則に従うもの
藤平 健:日本東洋医学雑誌43(2),241-253,1992
(潜証)小倉重成
注意してもなかなか見落としやすい虚寒証・・・狭義
よく注意すればわかる虚寒証・・・・・・・・・・・・・・・・広義
合病の話をした。その他に併病というものがある。併病では、二薬方証
または複数の薬方証の並存がある。証は一個ではなくて複数ある。本来
の併病は、その症状が互いに相関連しあっており、その治にあたっては
色々な法則がある、というのが藤平先生が東洋医学雑誌にお書きになっ
ている。小倉重成先生は、陽証とみえながらも陰証が併存している場合
、潜証と呼んだ。
52
実地臨床における証と治療原則(Ⅱ)
N70-71
併病の治法
先後
藤平 健:日本東洋医学雑誌43(2),241-253,1992
先表後裏 先外後内 先急後緩
先補後瀉 陰証・虚証が先
併治
合方 病位が近い方剤 柴胡剤と駆瘀血剤
重なる生薬は多い方の量を採る
併用 慢性疾患に多い
持重と逐機
持重
逐機
細かな症状の動きを 証の変化と見誤らない
証の変化に随い 速やかに転方
併病の治療であるが、まず、先表後裏という治療法がある。表証を先に
治療しなさい、裏証は後に治療しなさい。これが原則である。先急後緩
というのがある。例えば、風邪で寒気がでてもお腹がはって苦しいとき
は、まず先に出してあげなければいけない。これは先急後緩でまず急迫
症状を治療しなければいけない。小倉先生が鍼灸の言葉からもってきた
ものだと思うが、先補後瀉。まず補ってしかる後に瀉しなさい。裏の方
に病がある場合、普通陰証である。裏寒が中心である。傷寒論でも、こ
の時にはみな陰証を先に治療する。説明は先急後緩と書いていあるが、
必ずしも急性の症状でない場合も見受けられる。しかしこれは先補後瀉
ではないか。先表後裏とか先急後緩というのは陽証のなかでだけでのこ
とではないかと私は思う。治療方法として、合方がある。病位が近い場
合、例えば柴胡剤と駆瘀血剤の場合は薬を合わせてしまう。合方では、
重なる生薬の多いほうの分量をとる。また、併用する時もある。持重と
逐機という言葉がある。気候、気分などで症状が変わって見えることが
ある。脈もすぐ変化する。このときに、病態を良くみながら、場合によ
りあまりどたばたしないで同じ方剤で押し切る。これを持重と言う。い
つも茯苓四逆湯証の人が、寒気がして、脈も強い。これはすぐ対応しな
ければならない。これは逐機と言う。臨床の臨機応変を述べた言葉であ
る。
53
もう一つ条文がある。2陽の併病。これも太陽と陽明の併病である。太陽病の証が
止んだ時は、体の隅々まで行き渡るような熱、潮熱を発する。これは陽明病の熱型
である。手足、ちゅうちゅうとして汗が出る。ちゅうちゅうという汗の出方は普通
は太陽病の汗の出方であるが、潮熱になって、太陽病が消えて、陽明病に入ってき
ている。そのような時は、汗がでて、大便が硬くてうわごとをいったり、見当識障
害がでたりする。陽明病の典型である。燥屎があって神経症状がある。この場合、
まずこれを下しなさい。そうすれば治癒する。大承気湯がよい。傷寒論では大承気
湯の条文がひどく多い。これは何を物語っているのか。私が思うに、急性疾患の初
期にも、陽明病の合病がいっぱいあったのではないか。つまり通常は先表後裏が原
則だが、先急後緩で下したほうがいい症例がいっぱいあったのではないか。しかし
原則違反であるため、すっきり治らない。このようなことがたくさんあったので条
文が多いのではないかと思っている。
傷寒論条文における併病
二陽併病.太陽初得病時.發其汗.汗先
出不徹.因轉屬陽明 .太(陽と陽明の併病 )
續自微汗出.不惡寒.若太陽病證不罷
者.不可下.下之爲逆.如此可小發汗.
先(表 『
)設面色縁縁正赤者.陽氣怫鬱在
表.當解之.熏之.若發汗不徹.不足言.
陽氣怫鬱不得越.當汗不汗.其人躁煩.
不知痛處.乍在腹中.乍在四肢.按之不
可得.其人短氣.但坐.以汗出不徹故
也.更發汗則愈.何以知汗出不徹.以脉
(
太陽病 中篇)
濇故知也.』
二陽併病.太陽證罷.但發潮熱.
手足漐漐 汗出.大便難而讝 語者.
下之則愈.後(裏 宜
) 大承氣湯.
(
陽明病篇)
傷寒論の条文では、併病は2つしかない。2病の併病、太陽の初め病を得るのとき
その汗を発し、汗出でて徹せず。よって陽明に転属する。太陽病で熱性悪寒が始ま
って発汗させたけれど、十分薬が効かなかったか、養生が悪かったか、太陽病が残
っているが、陽明病の症状がでてきてしまった。自然発汗し、微し汗が出で、これ
は太陽病の症状である。しかし寒気がしない。これは陽明病の症状である。そこで
どのように考えるか。もし太陽病の証が残っていれば、これを下してはいけない。
陽明病は下すのが治療法だが。これを下すと逆と言う。この場合はまず汗を発しな
さい。まず表の治療を先にしなさい、つまり太陽病のを先に治療しなさい。
傷寒論 太陽病 上篇
傷寒脉浮.自汗出.小便數.心煩.
微惡寒.脚攣急.桂(枝加附子湯 ? )
反與桂枝.欲攻其表.此誤也.
得之便厥.咽中乾.煩躁吐逆者.
作甘草乾薑湯與之.以復其陽.先(急 )
)
若厥愈足温者.更作芍藥甘草湯
與之.其脚即伸. 後(緩
若胃氣不和.讝 語者.少與調胃承氣湯.
若重發汗.復加燒鍼者.四逆湯主之.
傷寒論太陽病上篇の最後の方に出てくる条文であるが、傷寒、脈浮で自汗出て、こ
こまでは太陽病の症状。ところが、小便が数で、尿の出が多い、胸がなんとなくわ
ずらわしい。すこし冷えがある。そして足がつる。微しく悪寒は太陽病でもいいか
もしれないが、その他は少陰辺りの症状である。これらは桂枝加附子湯ではないか
と奥田先生は言っている。太陽病だと思って桂枝湯を飲ませて表を攻めてしまった
。これは誤治である。そうしたら、手足が冷たくなって、喉が乾燥して、苦しがっ
たり吐いたりする。このような場合、甘草乾姜湯を与えなさい。裏を温めなさい。
そして元気をつけなさい。そして、手足の温かくなってきたら、芍薬甘草湯を与え
なさい。足もつっているのだけど、冷えてしまった。これは実は、甘草乾姜湯と芍
薬甘草湯との併病である。その時には、陰証の治療が先、あるいは、煩躁と書いて
あるから、煩躁を先に治して元気をつけなさい。ところで、誤治で桂枝湯を与えた
ら、陽証で強くなってくる場合がある。この場合は調胃承気湯を与えなさい。調胃
承気湯は少陽病の実証である。陽明病ととってもよいが、少陽病と陽明病の間ぐら
いである。調胃承気湯は甘草が入っており、大黄甘草湯類である。すなわち、食べ
て暫くする吐く。便が出ないときに使う。桂枝湯を飲ませて、更に重ねて発汗させ
た。その場合、甘草乾姜湯だけではだめで、附子が入った四逆湯である。これらは
、誤治であるから、壊病であるが、見方によっては併病である。
症例1
M.S.
5歳2ヶ月 男児
現病歴
1990年9月(4歳)
某病院にてNSと診断
顔面浮腫出現
PSL40mg/日 にて治療開始し漸減
1991年2月17日
PSL中止
6月30日
7月 4日
12日
10月23日
11月28日
既往歴
家族歴
1.5ヶ月早産
再燃
PSL30mgにて再治療開始
目がかすみ緑内障と診断
PSL中止
漢方治療を求めて受診
組織型は不明
生下時体重2080g
特記すべきことなし
5歳2ヶ月の男児の症例である。2年前から発症したネフローゼ症
候群である。プレドニンを中止すると悪化。プレドニンを再開す
ると副作用が出てしまい、漢方治療を希望して当科を受診した。
56
初診時身体所見
(症例1 M.S. 5歳2ヶ月 男児)
身長 116.5 cm 体重 21.5 kg 血圧 90/50 mmHg
脈拍 95 /分・整
口腔・喉頭: 所見無し
胸腹部: 異常なし
浮腫なし
漢方医学的所見
自覚症状
自汗 盗汗 頭汗
食欲良好
二便異常なし
風呂は熱めを好む
やや熱がり・寒がり
他覚所見
顔色
脈候
舌候
腹候
正やや白
やや浮 やや弱
暗赤色 薄い湿白苔
腹力中程度
漢方医学的な証を示す。
57
58
症例1 M.S. 5歳2ヶ月 男 (罹病1年2ヶ月 組織不明)
柴胡桂枝湯
帰耆建中湯
桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸
当帰芍薬散
PSL
CPM
上気道炎
尿蛋白
12 1
1992 ‘93
7
1
‘94
7
1
‘94
1
‘96
7
月
年
最初、柴胡桂枝湯を処方した。しかし、すぐ再燃してしまい、免疫抑制
剤とプレドニンを投与し寛解した。その後また私のところを受診した。
その時は落ち着いていたので、柴胡桂枝湯と桂枝茯苓丸を合方した。こ
れは慢性疾患における証の併存である。その後桂枝茯苓丸を当帰芍薬散
に替えた。その後再び風邪を引いてネフローゼが再燃。免疫抑制剤を投
与された。その際、私は桂枝茯苓丸を中止した。急性熱性疾患の回復期
は駆瘀血剤をあまり使わないからである。その後、尿蛋白がすこし出て
、再び桂枝茯苓丸を合方した。その後は寛解した。
59
症例1
Y.K
25歳
黄連解毒湯
合四物湯
黄連解毒湯
男性
幼少時発症
桂枝二越婢一湯
加黄耆
黄連解毒湯
茯苓四逆湯
倦怠感 冷え
電気温鍼 5番30分
潜証(?)
皮疹
掻痒感
Eos
(個/μl)
LDH
(U/l)
1230
1221
736
758
356
378
354
304
302
252
10
20
30
40
(day)
アトピー性皮膚炎の症例である。冷えもないし元気もあったので、黄
連解毒湯を処方し、するすると良くなった。次に皮膚のかさつきが少
し出たので四物湯を合方した。温清飲の加減である。しかし、あると
き急に皮疹が悪くなって、だるがって冷えてしまった。電気温鍼をし
たところ5番で30分。かなり温めたが、気持ちがいいという。潜証とま
では言わないが、陰証が併存したと思い、茯苓四逆湯と黄連解毒湯合
四物湯を併用した。茯苓飲は陰虚証の薬で、黄連解毒湯合四物湯は陽
証の薬、この2つを併用したのである。その後、するするするとすっ
かり良くなった。経過をみると、陽証は続いているが、陰証が発症し
た症例であった。その両方を治療してうまくいった。
60
入院時
(H12.7.3)
入院中(H12.7.25)
症例の写真である。左の写真は入院時で右は入院治療中の写真であり、
約3週間で皮疹が改善しているのが分かる。陽実証と陰虚証の並存の例
である。
61
虚寒証の顕在と潜在(潜証)
・ 虚寒証の顕在
誰にでも容易に認識できる虚寒証
温補
共存する証
陽証 補而後瀉
陰証 補而後補
・ 広義の潜証
注意深い四診により認識できる虚寒証
・ 狭義の潜証
相当に注意深く四診を行っても見出せない
小倉重成:虚寒証の顕在と潜在.日本東洋医学雑誌 37(4) 1997
小倉重成先生の虚寒証の顕在と潜在という論文である。虚寒証の顕在、つ
まり誰にでも容易に認識できる虚寒証は、普通に治療すればいい。広義の
潜証とは、注意深い四診により認識できる虚寒証である。先ほどのアトピ
ーの症例はこれに当てはまる。狭義の潜証は良く診ても全く冷えを見出せ
ない。以前経験した症例だが、真っ赤な顔をした比較的高齢の男性であり
、全く冷えがない。風呂で温まると頭が痛くなる。黄連解毒湯を処方した
が、全く効かない。色々処方したが全く効かない。それで電気温鍼を施行
した。どんどん温めたら、少し頭痛がよくなったと言う。潜証だと気づき
、通脈四逆湯を処方した。これで頭痛がすっと軽くなった。驚いた症例で
ある。普通の診察では全く気づかない。陽実証の薬が全く効かなくて、鍼
で温めてみて初めてわかった。
62
漢方薬処方時の注意
初心者の心得
合方 併用 去加は極力避ける
功をあせってはいけない 腕を磨くことが大切
Simpleなほど切れ味が良い
古方(傷寒論、金匱要略の方剤)にこだわる
少ない方剤に習熟し 証の空間の会得を目指す
後世方は薬味が多く証の幅が広い
安全だが切れ味が鈍い
服用後の体調変化
副作用を我慢して服用することはない
好ましくない作用は 証があっていないと考える
新病が出現したら 証の変化を考慮して服薬中止
風邪など発熱性疾患→熱薬は中止
漢方薬処方時の注意を示す。初心者は、合方、併用はさけ、シンプルな処方でいっ
た方がいい。できるだけ一つの証で捉え、一つの薬の効能と限界をみたほうがいい
。どうしてもうまくいかないとき、はじめてもう一つの薬を処方する。思いがけな
いものが治ることがある。40歳台の女性。皮膚ががさがさしている。脈は遅くてピ
ンと張っており、フラツキがある。茯苓沢瀉湯を処方し、皮膚がきれいになってし
まった。茯苓沢瀉湯で皮膚のかさつきが取れるとは思わなかったが、所見が茯苓沢
瀉湯であったので、処方しうまくいった症例である。もう一つの症例。口内炎があ
って胸まで痛い。当帰芍薬散証としか見えなくて、当帰芍薬散を処方しよくなって
しまった。このように、この症状にはこっち、あの症状にはあっち、と考えないで
、一つの処方で勝負した方がよい。これは私の立場なので、反論がいっぱいあると
思うが、古方にこだわっている。後世方も勿論使うが、古方の方が証の空間が分か
りやすい。構成生薬が少なくて、気血水や陰虚証がはっきりしているものが多い。
これを身につけていくことにより、証の空間を理解する事ができる。そうすれば、
知らない薬を使ったときに、この薬はこの位置だと位置付けができるような気がす
る。後世方派は違ってもあまり悪くしないことがある。例えば人参湯証の人に六君
子湯を間違ってあげてもあまり悪さはしない。このようなことをやっていると上達
しない。しかし、逆をすると胸焼けがしてしまって大変である。これは私の毒舌で
ある。西洋薬と違うところは、服用後の体調の変化である。服用後、好ましくない
作用があれば、証があっていないと考える。だから、この立場だと本当は副作用が
ない。しかし、そうは言っても、処方したらよくなるけど、肝機能障害がきたり熱
が出たりすることがあって、これは副作用と言わざるおえない。また、危険を考え
たら、副作用があると考えた方がよい。新病が出現したら、証の変化を考慮して服
薬を中止する。新しい病態がでてくると、証が変化するので迅速に対応しなければ
ならない。
63
漢方薬の
好ましからざる作用
N16
1.注意すべき漢方薬
甘草 附子 大黄 芒硝
2.副作用
黄芩 黄耆 桂枝(桂皮)
漢方薬の好ましからざる副作用として、注意が必要な処方を示す。
64
N16
漢方薬の好ましからざる作用
1.注意すべき漢方薬
甘草→偽アルドステロン症
初期症状に注意!
浮腫 高血圧 低カリウム血症
1日量 2.5gで能書記載 5gで高頻度
女性 成人 に多い傾向だが個人差が大
甘草の偽アルドステロン症には注意が必要である。面白い事に、喘息発
作が出現していて、その時は通脈四逆湯がよくて、発作が治まって、そ
のまま処方を継続すると、次ぎ受診したときは浮腫んでいる事があった
。証があっている場合は偽アルドステロン症は起こし難いと思う。1日
量2.5gで注意と能書には記載している。5gで高頻度に出現する。個人
差が大きいが女性の成人に多いと言われている。
65
N16
漢方薬の好ましからざる作用
1.注意すべき漢方薬
附子→トリカブト中毒
初期症状に注意!
舌口唇のシビレ 動悸 悪心 眩暈 ほてり
出現しやすい条件
生煮え 気温の上昇 処方変更
附子やトリカブト中毒。気温が上昇する初春に特に注意しなければいけ
ない。しびれませんか、吐き気しませんか、ほてりませんかとよく聞く
必要がある。
66
N16
漢方薬の好ましからざる作用
1.注意すべき漢方薬
大黄→瀉下作用
芒硝→瀉下作用
(薬性が寒)
大黄 桂枝茯苓丸・八味地黄丸は相性が良い
大黄非含有方剤への加法は2g以内(?)
大黄や芒硝は瀉下活性がある。両方とも薬性が寒であるが、芒硝は特に
冷やす。大黄はそれ程冷やさない。小倉先生の勉強会で教わったが、桂
枝茯苓丸や八味地黄丸は大黄との相性がよい。しかし、一般的には大黄
が入っていない処方では、せんじ薬の場合、生薬で大黄が2gを超えると
胃にこたえることが多い。これは未確認情報であるが。
67
漢方薬の
好ましからざる作用
N16
1.注意すべき漢方薬
甘草 附子 大黄 芒硝
2.副作用
黄芩 黄耆 桂枝(桂皮)
黄芩 肝機能障害 間質性肺炎 悪寒・発熱 下痢
副作用としては黄が一番有名である。肝機能障害、間質性肺炎、熱発
、下痢。
68
漢方薬の副反応
N16
甘草 偽アルドステロン症
1日量 2.5gで能書記載 5gで高頻度
女性 成人 に多い傾向だが個人差が大
附子 服用後30分前後に出現
口唇シビレ 悪心 動悸めまい ホテリ 蟻走感
増量 気温の上昇 方剤の変更(生煮え 酸性方剤)
大黄 瀉下作用 桂枝茯苓丸・八味地黄丸は相性が良い
大黄非含有方剤への加法は2g以内(?)
黄芩 肝機能障害 間質性肺炎 悪寒・発熱 下痢
皮疹の出やすい漢方薬
桂枝茯苓丸 八味地黄丸
黄芩 桂皮 黄耆 (地黄)
皮疹がでやすい漢方薬は桂枝茯苓丸や八味地黄丸。これを飲んで皮疹が
でるというより、皮疹がある人がこれを飲んで悪化することがある。黄
は皮疹が出やすい。桂皮。黄耆も出やすい。地黄は出そうで出ないと
思う。
69
漢方薬の
好ましからざる作用
N16
1.注意すべき漢方薬
甘草 附子 大黄 芒硝
2.副作用
黄芩 黄耆 桂枝(桂皮)
オマケ 漢方製剤は賦型剤に乳糖が多い
幼小児の附子 高齢者の麻黄
おまけである。エキス製剤は賦型剤に乳糖が多い。乳糖不耐症の場合に
は、乳糖分解酵素を併用するかあきらめるか。子どもの附子、高齢者の
麻黄には注意が必要である。しかし、最近には子供の陰虚証で附子を使
わなければいけない症例に出会う。
70
証の建て方・方剤の選択法
N138
■ 陰陽を中心に
1.寒熱に注目
寒が主体→陰証の可能性
温熱刺激(入浴やカイロ)で好転
寒冷刺激で悪化
足首が冷たい
熱が主体(寒が少ない) → 陽証の可能性
2.虚実も大切
極虚→ 陰証 強実→ 陽証
3.表裏
“さむけ” と “冷え” を分ける
■ 気血水の変調としてみると?
■ 症候・病名・口訣を手がかりに
詳細は
レジュメ
付録
参照
陰陽中心に考え、気血水の変調としてみて、症候、病名、口訣を手がか
りに方剤を決定するが、陰陽は一番大事であり最終的にもう一度チャッ
クした方がよい。
ご清聴
ありがとう
ございました
これは富山平野である。富山平野は。雪も降れば雨も降る。炎天下もあ
る。病気もこのように変化するのである。
一年間後ご精聴ありがとうございました。
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