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都市照明環境と夜間景観体験分析にもとづく都市夜景に関する研究

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都市照明環境と夜間景観体験分析にもとづく都市夜景に関する研究
学
位
論
文
都市照明環境と夜間景観体験分析にもとづく都市夜景に関する研究
A Study on Urban Nightscape Through an Analysis of Illumination
and Scenic Experience
2006年7月
早稲田大学院 理工学研究科
建設工学専攻 建築学専門分野 都市計画研究
李
永
桓
LEE Young-hwan
論・文・目・次
論
文
目
次
第1章
研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・001
1-1
研究の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・003
1-1-1
研究の背景
1-1-2
研究の目的
1-2
研究の用語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・007
1-3
研究の枠組と対象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・009
1-4
1-3-1
研究の枠組
1-3-2
研究の対象
研究の構成と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・013
1-4-1
研究の構成
1-4-2
研究の方法
第2章
既往研究の整理と研究の着眼点・・・・・・・・・・・・・・・・019
2-1
事例から見る夜間景観形成手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・021
2-2
2-1-1
夜間景観の歩み
2-1-2
夜間景観の事例
既往研究の整理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・025
2-2-1
夜間景観研究の分類
2-2-2
夜間街路景観に関する研究
2-2-3
夜間眺望景観に関する研究
2-2-4
その他の夜間景観に関する試み
2-3
研究の着眼点と位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・033
第3章
都市照明における色温度に関する考察・・・・・・・・・・・・・035
3-1
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・037
3-1-1
本章の目的
3-1-2
本章で用いる照明用語
I
論・文・目・次
3-1-3
対象地の選定
3-1-4
調査範囲
3-1-5
測定距離の設定と分析の方法
3-2
歌舞伎町の物理的環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・045
3-3
歌舞伎町の都市照明環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・054
3-3-1
照度の現況
3-3-2
色温度の現況
3-3-3
照度と色温度の分散具合
3-4
小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・063
第4章
界隈夜景における1次照明と2次照明の関係・・・・・・・・・・・067
4-1
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・069
4-2
4-3
II
4-1-1
本章の目的
4-1-2
本章で用いる用語
4-1-3
対象地の選定
4-1-4
分析の方法
歌舞伎町の1次照明(街灯)環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・071
4-2-1
調査概要
4-2-2
1次照明(街灯)の現況
4-2-3
全体的な傾向
4-2-4
街路ごとの1次照明(街灯)の照度と色温度
4-2-5
光の属性による1次照明(街灯)の分類
歌舞伎町の2次照明(店舗)環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・077
4-3-1
調査概要
4-3-2
1階の業種構成
4-3-3
全体的な傾向
4-3-4
街路ごとの2次照明(店舗)の照度と色温度
4-4
都市照明における1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・081
4-5
2次照明(店舗)における業種と入口照明の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・084
4-5-1
業種ごとの照明の照度と色温度
4-5-2
業種ごとの広告照明と2次照明(店舗)との関係
4-5-3
入口照明と2次照明(店舗)との関係
論・文・目・次
4-6
照度と色温度の印象評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・088
4-7
小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・094
第5章
車窓夜景における注視対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・097
5-1
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・099
5-2
5-1-1
本章の目的
5-1-2
対象地の選定
5-1-3
ゆりかもめ線の概要
5-1-4
調査範囲
5-1-5
分析の方法
ゆりかもめ沿線地域における昼・夜間の注視対象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・104
5-2-1
全体的な傾向
5-2-2
シオサイトエリア
5-2-3
レインボーエリア
5-2-4
お台場エリア
5-3
夜間の注視対象の中で光源の割合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118
5-4
小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119
第6章
注視特性から見た車窓夜景・・・・・・・・・・・・・・・・・・123
6-1
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125
6-2
6-3
6-1-1
本章の目的
6-1-2
本章で用いる用語
6-1-3
対象地の選定
6-1-4
分析の方法
お台場エリア商業地域における昼・夜間注視方向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128
6-2-1
注視点の垂直分布
6-2-2
注視点の水平分布
お台場エリア商業地域における昼・夜間注視動き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130
6-3-1
被験者ごとの注視動き
III
論・文・目・次
6-4
6-3-2
昼間の注視動き
6-3-3
夜間の注視動き
6-3-4
昼・夜間シークエンス景観の注視範囲による特性
注視動きのグラフから見る昼・夜間の車窓景観 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142
6-4-1
台場区間
6-4-2
青海区間
6-4-3
昼・夜間シークエンス景観の視距離による特性
6-5
小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・145
第7章
俯瞰夜景から形成される都市のイメージ・・・・・・・・・・・・149
7-1
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・151
7-2
7-3
7-1-1
本章の目的
7-1-2
本章で用いる用語
7-1-3
対象地の選定
7-1-4
分析の方法
俯瞰夜景イメージ要素の抽出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156
7-2-1
実験の概要
7-2-2
イメージスケッチによる実験
7-2-3
エレメント想起法による実験
7-2-4
8つの夜間景観イメージ要素
俯瞰夜景イメージ要素による景観の類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・165
7-3-1
商業系土地利用地域
7-3-2
住居系土地利用地域
7-3-3
工業系土地利用地域
7-4
小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・174
第8章
印象評価による俯瞰夜景の類型・・・・・・・・・・・・・・・・177
8-1
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・179
IV
8-1-1
本章の目的
8-1-2
分析の方法
論・文・目・次
8-2
印象による景観の分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・181
8-2-1
因子要素の抽出
8-2-2
4つの印象群
8-3
俯瞰夜景イメージ要素と印象の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・188
8-3-1
重回帰分析を行う上での前提条件
8-3-2
NIEと印象の関係
8-4
小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・190
第9章
空間スケールにもとづく夜間景観の特性・・・・・・・・・・・・193
9-1
界隈夜景と都市照明の色温度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・195
9-2
車窓夜景と視覚情報系景観要素 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・197
9-3
俯瞰夜景と都市のイメージ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・199
9-4
空間スケールにもとづく夜間景観の特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・201
第10章
研究の総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・205
参考文献・参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・213
図表リスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219
研究業績一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・225
謝辞
V
第1章
1-1
研究の背景と目的••••••••••••••••••••••••••••••••••••003
1-1-1
研究の背景
1-1-2
研究の目的
1-2
研究の用語••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••007
1-3
研究の枠組と対象••••••••••••••••••••••••••••••••••••009
1-4
1-3-1
研究の枠組
1-3-2
研究の対象
研究の構成と方法••••••••••••••••••••••••••••••••••••013
1-4-1
研究の構成
1-4-2
研究の方法
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
研・究・の・意・義・・・第1章
1-1
研究の背景と目的
1-1-1 研究の背景
戦後急速な都市化による経済性、効率性、機能性中心の考え方は日本において社会資本
の量的成長は促したが、都市の質的評価基準となる都市景観は相対的に足踏みの状態であ
ったり、あるいは発展の速度が量的成長について行くことができなかった。しかし、都市
化が安定期に入り、現在の環境に対する質的満足を要求されるようになり、価値観の転換
期を迎えた現在、景観に対する関心が高まっている。この様な潮流を代弁しているのが
2004年の景観法注1-1)の制定である。景観法は良好な景観を「国民共通の資産」注1-2)として
規定している。そして、最近の国立マンション紛争の裁判においても市街地景観が良好な
場合はそれを客観的な価値として認めるという判決注1-3)が出るなど、今日我々の日常生活
像を反映している都市景観は単なる都市形成過程の副産物ではなく独立した都市資産とし
て取り扱われている。
都市景観はこれまで主に昼間景観を中心に考えられてきたのが事実である。しかし、今
日の都市は昼・夜という時間的な制約がなくなり、24時間活動をつづけている。この傾向
は産業や物流のみならず、日常の生活にも広がっている。このような流れを考えると、昼
間景観とともに都市景観をつくりだしている都市のもう1つの顔である夜間景観も昼間景
観と同様の対象として捉えられる必要があり、昼間景観とともに重要な都市資産として夜
間景観は位置付けられるべきである。
様々な機能、用途、建物、交通機関、そして人が混在してつくりだしている都市の夜間
景観は、都市ならではの魅力を感じることができる最も都市らしい景観である。この夜間
景観の可能性と価値を認識し、計画的に夜間景観をコントロールして都市のアイデンティ
ティーを高めたり、都市のイメージを向上したりする動きは夜間景観の出発点であると呼
ばれているパリのような大都市を含め、小さい都市に至るまでヨーロッパの多くの都市で
見られる。このように夜間景観は都市の価値を高めて都市ブランド形成にも大きな役割を
果していることは周知の事実である。
そもそも夜間景観は安全の確保を目的とした都市照明から始まった。初めは夜の闇に対
する明るさの確保を目的とし、設置された照明が自然と夜間景観をつくってきたように、
現在においてもやはり安全や防犯などを考慮した照射面の明るさの確保が夜間景観の重要
な基準とされている。しかしながら、人の生活水準の向上に伴いこれからは安全性の確保
3
第1章・・・研・究・の・意・義
を目的とした照明から快適性の確保を目的とした照明の時代になり、一部では夜間景観を
計画的に形成する事例が現れている。これからは単体の明るさを追求する量的な夜間景観
のみならず、都市全体を考慮した明さと暗闇のバランスを求める質的な夜間景観の形成に
向かって行くべきである。このような観点から考えてみると夜間景観に関する研究は多く
の可能性を持っている研究分野であると言える。
図 1-1.照射面の明るさと個々の光源の1対1の関
係から考えてきたこれまでの夜間景観
図 1-2.多様な光源と景観要素の集合から成り立
っている実際の都市の夜間景観
前述したようにこれまでの夜間景観は照射面、すなわち、視対象がどの程度見えるかが
ポイントになってきた。しかし、今日の都市の夜間景観は、図1-2のように様々な光源や
景観要素から成り立ち、以前より豊かな夜間景観になっている。このように変化を続けて
いる都市の夜間景観に関する様々な研究が求められる。
そこで、視対象の視認性のために重要視されてきた照明の照度とともに多角的な面から
の都市照明環境の定量的な分析が1つの研究テーマにあげられる。そして、もう1つが景観
の主体である人の景観に対する見方である。我々が実際に都市を見る際には、美術館で絵
を観賞するように立ち止って固定された視対象を見る1つのシーン景観的なケースはほと
んどない。大部分が視点場の移動、視線の移動、視対象の移動に伴う多様な視覚的体験を
通じて都市を見ている。その際に人に影響を与える要因を解明することも都市全体を考慮
した夜間景観の計画において重要である。
このような都市照明環境に対する新たなアプローチ、現象的な視覚体験に基づいた夜間
景観の分析データの蓄積により、広域的な夜間景観を無駄なく整備し、また夜間景観のコ
ントロールの効果を得ることにもつながると考えられる。
4
研・究・の・意・義・・・第1章
1-1-2 研究の目的
都市の夜間景観には様々な景観要素の組合せや見方により多様な景観が存在するが、本
研究では、人が日常的に見ることができる夜間景観の中で、一定の範囲を歩く際に見える
景観(以下、界隈夜景)、乗り物から見える景観(以下、車窓夜景)、高所から見える景観
(以下、俯瞰夜景)を選び出した。
この3つの夜間景観に対し、前述したように「都市照明環境」と夜間景観に対する視覚
体験を「夜間景観体験」として捉え、この2つの観点から分析を行い、それぞれの固有な
夜間景観の特性を明らかにし、広域的な夜間景観の質の向上に寄与する知見を導くことを
目的とする。
対象地は上記の3つの夜間景観の典型的なタ
俯瞰夜景
イプが存在する東京を選び、それぞれの夜間
景観との関係性を考慮した上で、都市照明環
車窓夜景
境の分析結果にもとづいて界隈夜景の特性を
明らかにする。そして、夜間景観体験の分析
結果にもとづいて車窓夜景と俯瞰夜景の特性
界隈夜景
を明らかにする。
図 1-3.本研究で扱う3つの夜間景観
ここで述べた「夜間景観体験」と3つの夜間景観である「界隈夜景」「車窓夜景」「俯
瞰夜景」は1-2の研究の用語で詳細に説明している。
具体的には、以下が細目的としてあげられる。
都市照明環境の分析にもとづく界隈夜景においては以下の2点を目的とする。
①空間の雰囲気に影響が大きいと既往研究で報告されている光源の色温度に着目し、現
在の界隈夜景における照度と色温度の関係を明らかにする。
②界隈夜景の照度と色温度の関係を公共の照明と民間の照明に分け、両者の関係を明ら
かにする。さらに、照度と色温度に対する人の印象を把握する。
5
第1章・・・研・究・の・意・義
夜間景観体験の分析にもとづく車窓夜景においては以下の2点を目的とする。
③電車の中から眺めるシークエンス景観に着目し、昼・夜間景観の比較・分析を行い、
車窓夜景においての景観要素を明らかにする。
④人の注視特性を注視方向と注視動きから分析し、昼間とは異なる車窓夜景における人
の注視特性を明らかにする。
夜間景観体験の分析にもとづく俯瞰夜景においては以下の2点を目的とする。
⑤高層ビルから見える俯瞰夜景を構成するイメージ要素を把握し、このイメージ要素の
配分による夜間景観の類型を明らかにする。
⑥俯瞰夜景に対する人の印象を把握し、印象とイメージ要素との関係を明らかにする。
6
研・究・の・意・義・・・第1章
1-2
研究の用語
本論文の全体を通して用いる用語を定義する。そして、各章において用いる用語は各章
で再び説明する。
①夜間景観体験
自己をとりまく環境を眺めるという視覚的体験についてその主体の行動に注目しなが
ら論じる際、その体験を「景観体験」と呼び、特に、主体の行動の中で視点の移動や視
線の角度の変化に着目している。
本研究では夜間景観を対象にするために「夜間景観体験」とする。
②界隈夜景
一定の範囲を歩行する際に見える夜間景観
で、本研究では、各種の都市照明がつくりだ
す光環境が多く見られる都心の繁華街の夜間
景観を扱う。
図 1-4.界隈夜景のイメージ
③車窓夜景
都市空間で乗り物を利用する際に見える夜
間景観で、本研究では、様々な乗り物の内、
大衆交通機関として幅広く利用されている電
車の中から見られる夜間景観を扱う。
図 1-5.車窓夜景のイメージ
7
第1章・・・研・究・の・意・義
④俯瞰夜景
都市の中の高所から都市を眺める際に見え
る夜間景観で、本研究では一般に公開されて
いる高層ビルの展望台、展望ロビーから見え
る夜間景観を扱う。
図 1-6.俯瞰夜景のイメージ
8
研・究・の・意・義・・・第1章
1-3
研究の枠組と対象
1-3-1 研究の枠組
夜間景観を論じる際に、大きく分けて2つの見方がある。まず第一に、視対象としての
都市照明の性能や機能に主眼を置き、路面照度、照射面の明るさ、照明の輝度などの分析
を通じ、都市照明環境を論じるものである。第二に、景観を認識する主体である人の認知
や認識に主眼を置き、印象やイメージなどの分析を通じ、夜間景観自体を論じるものであ
る。しかし、景観とはは視対象と主体の関係から成り立つものであることから、これら一
方のみの視点では不十分であると言える。
そのため、景観を論じる際には、これら2つの見方を独立したもとして扱うのではなく、
いずれかに主眼を置きつつ、必要に応じて双方の分析手法を用いながら進められている。
また、これまでの研究蓄積では安全や防犯といった指標を用いた研究が多く、その多くは
都市照明の性能や機能に主眼を置くものであった。
しかし、今日の都市照明環境はほぼそれらを満たしており、都市イメージの向上や都市
アイデンティティの形成に夜間景観を利用することが求められており、夜間景観総体を扱
う研究が求められている。本研究はそうした観点に立ち、都市照明環境と夜間景観体験を
基に、夜間景観の特性を解明することを目指すモノである。
1-3-2 研究の対象
東京はアジアのみならず世界的にも都市機能の密集度や複雑度が高い大都市である。し
かし、東京と同程度の西洋の都市に比べ、東京の夜は派手すぎて秩序がないと評価されて
いるが、逆にこのような東京の夜間景観を見た西洋人は自分が接したことがなかった新し
い景観に興奮する。これが東京という都市がこれまで蓄積してきた夜間景観のあるがまま
の姿であると同時にアジア都市の典型的な夜間景観であると考えられる。
そこで、本研究は西洋の夜間景観とは異なる夜間景観を形成している東京を対象にし、
日常の夜間景観を形成している界隈夜景、車窓夜景、俯瞰夜景を分析する対象として以下
の地域を取り上げた。
9
第1章・・・研・究・の・意・義
①界隈夜景:新宿区歌舞伎町1丁目の夜間景観
伊藤は「界隈」を
activity space
と説明している注1-4)。このように界隈とは空間
の特徴や境界によって範囲が規定されるエリアではなく、人のアクティビティによって
想起されるイメージの広がりとしてのエリアの認識である注1-5)。
都市空間で行われる人の主なアクティビティとして歩く行為が挙げられる。そのため、
本研究は歩行者が多い地域に加え、様々な照明や光が多数集まって夜間景観を形成して
いる地域という2つの条件から対象を選定した。
上記の条件から本研究では都心部の繁華街が適切である判断し、歌舞伎町を選定した。
歌舞伎町は1日約200万人が利用するJR新宿駅の東口駅前に面的に広がっているエリアで、
歩行のみならず様々なアクティビティが集積している場所であると同時に日本を代表す
る繁華街として数え切れない店舗が密集しており、その店舗の広告照明や街灯などがつ
くりだす都市照明環境は界隈夜景の対象として適当である。
写真 1-1.歌舞伎町1丁目の界隈夜景 (2003年著者撮影)
②車窓夜景:ゆりかもめ沿線地域の夜間景観
モータリゼーションの発達により、今日の都市は面的な広がりが大きくなっている。
10
研・究・の・意・義・・・第1章
このように広くなった都市を移動する際に、様々な交通機関を利用することは当然なこ
とである。特に、鉄道が発達している東京においてはほとんどの人が毎日電車を利用し、
通勤・通学などを行っている。その際に見える都市の夜間シークエンス景観、すなわち、
車窓夜景は我々が親しんでいる都市の日常の景観の1つである。
本研究ではこの車窓夜景を分析対象として、以下の3つの条件から対象を選定した。
まず、景観の連続性の確保が重要なことから、1.電車の路線が地下に入ったり、トンネ
ルを通ったりしない路線、2.電車が通る沿線地域が多様に利用され、様々な景観とその
景観を形成している要素が見えること、3.被験者実験などを勘案した場合、電車の運行
時間が長くなるとデータの測定や分析にも支障を及ぼす恐れがあるため、短時間に様々
な景観と景観要素が凝縮されていることを選定の条件とした。
上記の条件から本研究では、全路線が高架に設けられている東京臨海新交通臨海線
「ゆりかもめ」の沿線地域が最も適切であると判断した。ゆりかもめの運行時間は片道
が約24分程度で、その間に沿線地域には商業系の景観から業務系、工業系、自然系まで
至る景観が形成されており、様々な景観要素を見ることができる場所である。
写真 1-2.「ゆりかもめ」からの車窓夜景 (出展:http://tokyoyakei.cool.ne.jp)
11
第1章・・・研・究・の・意・義
③俯瞰夜景:東京都心部の高層ビルから見える夜間景観
高所から景観を見る行為は、過去にはあまり日常的なものではなかった。以前は山の
ように自然につくられた場所しかなかったが、現在では事情が変わった。2004年度の東
京都建築統計年報を見ると、2004年3月末までに建築確認済みの100mを超える建築物が
都内に249棟あり、そのうち竣工が2004年現在で170棟である。このように、今日の都市
では過去にわざわざ山まで行って眺めた俯瞰という行為が、数多い超高層ビルやタワー
のため、身近な都市景観になった。さらに、最近都心再開発に伴う超高層マンションの
数も増え、これらのマンションの宣伝を見る限り、夜景を売りにしていることも事実で
ある。俯瞰夜景は都市であるからこそ体験できる日常の景観である。
このように都市独特の夜景である都心俯瞰夜景を分析する場合においても、高層ビル
の数が最も多い東京というフィールドは最適である。本研究では東京都心で一般に公開
されている高層ビルの展望台などから見られる様々な地域の景観を取り扱う。
写真 1-3.サンシャイン60からの俯瞰夜景 (出展:http://tokyoyakei.cool.ne.jp)
それぞれについての詳細は分析を行う各章で再び説明する。
12
研・究・の・意・義・・・第1章
1-4
研究の構成と方法
1-4-1 研究の構成
本研究は、大きく序論、本論、結論で構成されている。
序論は、第1章、第2章から成り、本研究を進めるにあたっての基礎的な事項を整理し、
本論で取り上げる対象事例と分析方法を的確に提示している。
本論は、第3章、第4章、第5章、第6章、第7章、第8章から成り、研究の着眼点に基づき、
第3章、第4章は都市照明環境の定量的な分析を、第5章、第6章、第7章、第8章は夜間景観
体験という新しい観点から夜間景観の特性を分析している。
簡単に説明すると、
第3章、第4章では、東京を代表する繁華街として新宿区歌舞伎町の界隈夜景を取り上げ、
夜間景観を分析している。
第5章、第6章では、東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」の車窓夜景を取り上げ、夜間
景観を分析している。
第7章、第8章では、タワーや超高層ビルの上層階から都市を見下ろす俯瞰夜景を取り上
げ、夜間景観を分析する。
結論は、第9章、終章から成り、3つの夜間景観の定量的な記述と分析とともにこれらを
都市空間スケールに反映し、こらからの夜間景観形成の知見を総括している。そして、各
章の要約を記している。
研究のフローを図1-7に示す。
13
第1章・・・研・究・の・意・義
図 1-7.研究のフロー
14
研・究・の・意・義・・・第1章
1-4-2 研究の方法
本研究の各章ごとの方法を以下に示す。
第1章は、研究の背景と目的、研究の枠組と対象、研究の構成と方法、研究の用語につ
いて述べる。
第2章は、都市照明や夜間景観に関する海外の事例を取り上げ、これらから都市におけ
る夜間景観の意味を整理する。次に建築・都市分野における既往研究の整理を行い、本研
究の位置づけと研究の着眼点を導き出す。
第3章「都市照明における色温度に関する考察」では、
界隈夜景分析の第1段階で、新宿区歌舞伎町1丁目の夜間景観を取り上げ、現地調査の結
果を基に照度の現況を把握する。次に色温度から都市照明環境を評価し、都市照明環境に
おいて照度と色温度の関係を明らかにする。
第4章「界隈夜景における1次照明と2次照明の関係」では、
界隈夜景分析の第2段階で、都市照明の各種照明を公共の照明と民間の照明に分け、6段
階の照度レベルと色温度の感覚量に基づいた分析から、都市照明における両者の関係を明
らかにする。そして、界隈夜景において照度と色温度が与える印象を明らかにする。
第5章「車窓夜景における注視対象の特性」では、
車窓夜景分析の第1段階で、電車から見えるシークエンス景観として「ゆりかもめ」沿
線地域の景観を取り上げ、アイマークレコーダを用いた被験者実験を通じて得られた昼・
夜間の車窓景観の注視対象の分析から車窓夜景に影響が大きい景観要素を明らかにする。
第6章「注視方向と注視動きから見た車窓夜景」では、
車窓夜景分析の第2段階で、第5章の対象の中で車窓夜景のバリエーションが豊富な東京
都港区お台場地区を取り上げ、注視点の方向と変化の昼・夜間の比較分析を行い、人の車
窓夜景に対する注視特性を明らかにする。
15
第1章・・・研・究・の・意・義
第7章「俯瞰夜景から形成される都市のイメージ」では、
俯瞰夜景分析の第1段階で、東京タワーからの景観をイメージスケッチやエレメント想
起法を用いて俯瞰夜景のイメージに影響を与えるイメージ要素を抽出し、このイメージ要
素の配分から東京の俯瞰夜景の類型を明らかにする。
第8章「印象評価による俯瞰夜景の類型」では、
俯瞰夜景分析の第2段階で、俯瞰夜景に対する印象評価実験分析から、人が俯瞰夜景を
見る際に持つ印象を明らかにする。そして、第7章で明らかになった俯瞰夜景イメージ要
素と印象との関係を明らかにする。
第9章「空間スケールにもとづく夜間景観の特性」では、
本研究で対象とした界隈夜景、車窓夜景、俯瞰夜景の空間スケールに着目し、界隈夜景
を小規模スケール(街路・街区)の都市空間、車窓夜景を中規模スケール(地域)の都市空間、
俯瞰夜景を大規模スケール(都市)の都市空間として把え、3つの夜間景観の特性を整理し、
夜間景観形成の知見を導き出す。
終章「研究の総括」では、
本研究における分析内容、分析結果について整理し、各章の要約を記する。
16
研・究・の・意・義・・・第1章
<注釈>
注1-1)2003年7月に国土交通省が発表した「美しい国づくり政策大網」の中に書かれていた景観
に関する基本法制の制定という内容が形になって2004年6月18日に公布されたのが景観法で
ある。
注1-2)景観法第2条1項には、良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな
生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ、「国民共通の資産」として、現在
及び将来の国民がその恵沢を享受するよう、その整備及び保全が図れなければならないと
書かれて、景観として資産として規定している。
注1-3)東京都国立市の高層マンション(14階建て、高さ約44m)を巡り、周辺住民49人などが、
建築主の明和地所などを相手に「並木道の景観が破壊された」として建物の一部撤去を求
めた訴訟の上告審判決が2006年3月30日に出た。裁判長(甲斐中辰夫)は「良好な風景として
歴史的・文化的環境を形成している都市景観は客観的な価値があり、住民がその景観を日
常的に享受する利益(景観利益)は法的保護に値する」との初判断を示した。最高裁が景観
利益を認めたことで、各地で景観侵害を訴える住民が、司法に救済を求める道が開かれた。
判決は、景観利益が違法に侵害されたと言えるのは、①刑罰法規や行政法規に違反して
いる、②公序良俗違反に当たるなど、社会的に許されない侵害行為があった場合に限ると
いう基準も示した。その上で、問題のマンションについては、「建設当時の行政法規などに
違反しておらず、容積と高さを除けば景観の調和を乱すような点は認められないから、社
会的に許されないとまでは言えない」とし、違法性を否定した。
注1-4)伊藤は参考文献12の中(pp.176-179)で、室内空間、建築空間、都市空間のような物理的
空間とは別種の空間として運動によって想定される空間があり、それを界隈空間と呼んで
いる。英語で表現すれば、これは運動(activity)で定義されることから、アクティビテ
ィ・スペースとして呼んでいる。
注1-5)参考文献2のp.150に書かれている小浦久子の界隈の定義から引用。
17
第1章・・・研・究・の・意・義
<参考文献・資料>
文1)社団法人日本建築学会:景観法と景観まちづくり、学芸出版社、2005
文2)日本建築学会:空間学事典 改訂版、井上書院、2005
文3)国土交通省都市・地域整備局都市計画課、景観法制研究会:逐条解説
景観法、ぎょうせ
い、2004
文4)東京都:東京都建築統計年報 2004年度版、2004
文5)樋口忠彦、面出薫他6人:都市のデザイン<きわだつ>から<おさまる>へ、学芸出版社、2002
文6)篠原修、景観デザイン研究会:景観用語事典、彰国社、1988
文7)国土交通省:美しい国づくり政策大網、2003
文8)社団法人 日本造園学会:ランドスケープデザイン、技報堂出版、1998
文9)新村出:広辞苑 第5版、岩波書店、1998
文10)面出薫、LPA:照明探偵団、SD別冊No.23、1993
文11)中島龍興、近田玲子、面出薫:照明デザイン入門、彰国社、1995
文12)伊藤ていじ:日本デザイン論、鹿島出版会、1966
文13)読売新聞(インタネット版)、2006年3月30日
文14)丸々もとお:東京夜景1、七賢出版、1997
文15)丸々もとお:東京夜景2、七賢出版、1995
文16)丸々もとお:東京夜景3、七賢出版、1996
文17)丸々もとお:東京夜景4、七賢出版、1997
文18)東京の夜景ホームページ: http://tokyoyakei.cool.ne.jp
文19)社団法人 照明学会:景観照明の手引き、コロナ社、1995
文20)樋口忠彦:景観の構造、枝報道出版、1975
18
第2章
2-1
2-2
2-3
事例から見る夜間景観形成手法•••••••••••••••••••••••••021
2-1-1
夜間景観の歩み
2-1-2
夜間景観の事例
既往研究の整理•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••025
2-2-1
夜間景観研究の分類
2-2-2
夜間街路景観に関する研究
2-2-3
夜間眺望景観に関する研究
2-2-4
その他の夜間景観に関する試み
研究の着眼点と位置づけ•••••••••••••••••••••••••••••••033
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
2-1
事例から見る夜間景観形成手法
都市照明を利用して夜間景観を形成している様々な都市の事例を文献から取り上げ、都
市の夜間景観の歩み、夜間景観形成手法などを分析し、都市における夜間景観の価値と意
味を確かめる。
2-1-1 夜間景観の歩み
夜間景観において重要な要素である都市照明は、初期にはまだ、景観よりも夜間の安全
確保が最大の課題であった。この考え方をもとに世界で最初に本格的な都市照明が行われ
たのが16世紀(1677年)のフランスのルイ14世時代である。当時の警察が命令を出し、夜9
時以後は一晩中街路に面した窓に灯を点けさせた。当時の暗い街では、これだけでも明る
く安全で画期的なものであった。その数年後に街灯による都市照明がなされ、当時のパリ
市の照明はヨーロッパの文化と繁栄の象徴であった。当時作られた案内書には照明の効果
として、①都市の美観、②生活時間・空間の拡大、③安全をあげているが、これは、今も
変わらない夜間景観を考える際の基礎になっている。
その後、街灯は燃料と照明方法の発展を経て、石油ランプ 、ガス灯に変化していくが、
都市全体の照明は、電気エネルギーが一般に普及された20世紀から本格的に始まったもの
で、電灯による夜間景観の歴史はそれほど長くはない。
2-1-2 夜間景観の事例
日本においてもいくつかの都市では夜間景観計画が樹立・運用され、実現されたことも
ある。しかし、本研究の対象とする東京都では都市全体を考慮した夜間景観計画は未だに
ない状況である。そこで、世界中の大都市の夜間景観計画や特色ある都市の事例を整理し、
都市の夜間景観の活用手法を把握する。
①パリ市(Paris、フランス)
パリ市は1954年にイギリスのエリザベス2世のパリ訪問にあわせてパリの重要建築物に
景観照明を行うなど、夜間景観に対する関心は1950年代半ばまでさかのぼる。特にパリ市
21
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
の夜間景観計画の主な目的は歴史的な建造物のライトアップを中心にした都市のイメージ
の向上である。1980年代前半に、パリ市内の114ヶ所に9500台の投光器を用いた都市照明
によって夜間景観が形成されていた。さらに、1980年代後半に入って政府主導の大規模の
開発事業をきっかけに照明の実用的な用途とともに照明の潜在力を試みる様々な事業が行
われてきた。
パリ市の夜間景観に関する考えは凱旋門の照明からよく分かる。凱旋門は足下から最上
部まで4段階に区分して照明されている。すべてが白熱電球による照明であるが、経済性
よりもパリのランドマークとしてより美しく見せることを大事にしている。パリ市はこの
ように美しく照明されている歴史的な建造物を利用し、モニュマン・イルミネ・ア・パリ
注2-1)
という夜間観光に繋げている。パリ市の夜間景観に対するスタンスは後で説明するリ
ヨン市のように積極的ではないが、祝祭日、外国の賓客の来訪、国際会議などの開催日に
は照明時間を通常より長くするなど弾力的な運営方法注2-2)が特徴である。
②リヨン市(Lyon、フランス)
リヨン市は都市の夜間景観の歴史において重要な意味を持つ。その理由は、夜間景観の
問題が都市計画の中で規定され、夜間景観開発が都市開発において重要な一部として位置
づけられている点である。1989年から始まった夜間景観開発事業以来、リヨン市の夜間景
観開発は2つの時期に分けられる。
第1期は1989年から1998年まで10年間で、夜間景観基本計画の策定、既存市街地の夜間
景観の改善が主な目的であった。当時の基本概念は都市全体の調和と統一性、都市の可読
性、建築物の価値の向上であった。これを実現するために機能照明の改善、景観照明を通
じた文化財の価値向上、都市開発への夜間景観計画の導入、街路設置物の統一による都市
アイデンティティ確保のような具体的な案がつくられ、リヨン市の公共照明局を中心に実
行された。
第2期は1999年以降で、新しく行われる都市開発及び再開発プロジェクトの中に夜間景
観開発事業を取り入れ、夜間景観を持続的に開発、維持することと同時に10年間蓄積して
きた夜間景観を活かした観光商品化が行われた。
③ロンドン市(London、イギリス)
ロンドン市の都市照明および夜間景観を述べる際に欠かせないことが、「ライト・アッ
プ・テームズ」という名で1970年代に行われたテームズ河畔の約8kmに至る地域に対する
22
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
景観照明による夜間景観の演出である。この計画の出発は、都市の拡大による郊外化が原
因で離れた市民の関心をもう一度テームズ川に向けさせたいという市の意図があった。
そして、2つのグループが組織された。1つは市の都市計画局長を中心に建築家、都市計
画家などが中心になったデザイン・グループと、このデザイン・グループが作った案を実
際に施工していくグループであった。すなわち計画と実行が常に関係を持ちながら進んで
いくシステムが構築されたことがロンドンのテームズ川の夜間景観において見られる重要
な特徴の1つである。そして、もう1つ重要なことはこのテームズ川計画の最中である1973
年に第1次石油ショックがあったが、この計画の成果を確信した市民と担当者の信念によ
って中断することもなく、変更することもなく遂行されたことである。
④グラスゴー市(Glasgow、イギリス)
産業革命期に大英帝国の工場と呼ばれて1980年代まで様々な産業が盛んだったイギリス
のグラスゴー市は、近年に入って人口の減少や都市の基盤となってきた工場の外部への移
転に伴う都市の空洞化が問題になった。この空洞化を止めて活気を取り戻すための手段と
して、「知識」という無形の資源を利用した新たな都市再生を試みた。この成果が工場の
移転で空洞化した都心に大学や研究開発センターなどが集まってできた「デジタル・メデ
ィア・キャンパス」である。ここでは大学と連携した産学共同研究などが行われている。
それとともにグラスゴー市が行ったもう1つの都市再生の手段が夜間景観の計画と管理
である。市は2002年3月から「照明戦略チーム」を独立した組織として運用している。独
特なデザインや光色の景観照明を都市の所々へ適切に配置し、民間の建物でも立地的に重
要な場所にあるものは照明ガイドラインを設定して都市全体を品格ある芸術品のように管
理している。さらに、クリスマスの時期には都市の様々な場所で立てられる大型ツリーの
光や店舗に貼り付けられる小さなバナー広告までこの照明戦略チームが係わる。グラスゴ
ー市の都市照明の特徴は公共照明に紫色、ピンク色、薄緑色など大胆な色を使い、大都市
や歴史都市とは差別した実験精神が溢れる照明を用いた「モダンヨーロッパ」としてアイ
デンティティを構築していることである。
⑤ニューヨーク市(New York、アメリカ)
ここではニューヨークの中で、特にタイムズ・スクエア地区の夜間景観について説明す
る。タイムズ・スクエアの景観形成において特徴的な点は、一般的に景観を阻害させる要
素として認識されている商業看板を、タイムズ・スクエアをキャラクター付ける重要な要
23
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
素として規定し、商業看板を利用した昼・夜間景観を計画・管理して地区のイメージを作
り上げている点である。
ニューヨーク市のUDG(アーバンデザイン・グルー
プ)からロバート・ベンチューリに依頼され、1970
年に提出された調査結果は、タイムズ・スクエアは
空間的特性より商業看板、光などの2次的な装飾、
広告にその本質があると記述している。ベンチュー
リによるこの調査は、タイムズ・スクエアの景観構
造を分析し看板を基調景観要素として取り上げた点、
そして、看板の設置をタイムズ・スクエアの独自の
写真2-1.商業看板を積極的に活用した
デザインガイドラインとして導入し地区景観の保全 タイムズ・スクエアの夜間景観(2003年)
を試みた点に特徴がある。
さらに1992年に設立されたTSBID(タイムズ・スクエア・ビジネス・インプルーブメン
ト・ディストリクト)はタイムズ・スクエアの「24時間明るい場所」というイメージづく
りを目的にし、商業看板のみならず、街灯の整備や様々なイベントの企画などを行い、
昼・夜間人で賑わう場所を作っている。
⑥ソウル市(Seoul、韓国)
ソウル市はASEM総会、ワールドカップ競技大会、メトロポリス総会などの開催をきっか
けに暗いソウル市の夜景を総合的・体系的に管理するために1997年から夜間景観改善事業
を始めた。
夜間景観改善計画策定(1998.12)、ソウル市建築賞夜間景観部門授賞及び展示会開催
(1999.5)、夜間景観照明諮問委員会(1999.1∼現在)などを通じ、夜間景観活性化に力を入
れている。また、民の大型建築物に対する夜間景観照明設置推奨と公共施設に対する規範
を設置し、2002年6月現在ソウル市の144ヶ所の建造物に設置が完了されている。2002年度
にはソウル市夜間景観基本計画研究が行われ、市全体の分析から4大門地区・汝矣島(ヨイ
ド)地区・江南(ガンナム)地区・漢江(ハンガン)地区という4つ核心地区を選び、各地区ご
とにテーマを設定し、集中的に事業が行われている。特に、ソウルの中心を流れている漢
江(ハンガン)地区の多数の橋のライトアップは、夜間に都市の暗い場所の1つであった河
辺空間を都市の名所へと変えた。
24
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
2-2
既往研究の整理
2-2-1 夜間景観研究の分類
夜間景観に関する既往研究は、視点場の位置から夜間街路景観、夜間眺望景観のように
大きく2つに分けられる。しかし、主な研究は街路夜間景観を対象に行われている(表22,2-3参照)。夜間街路景観に関する研究は都市照明環境、景観イメージ、人間行動の分析
などを通じて様々な研究が行われてきた。それに対し、夜間の眺望景観においては景観イ
メージに関する研究が主になっている。
上記の分類外の夜間景観に関する研究としては、ウォーターフロントの夜景を取り上げ
て分析を行った研究(表2-1の論文番号K10)、単体の建造物のライトアップに着目して分析
を行った研究(表2-2の論文番号T8)、語彙や浮世絵から夜景を分析した研究(表2-2の論文
番号T5)などがある。
2-2-2 夜間街路景観に関する研究
①都市照明環境
夜間街路景観に大きな影響を与える都市照明環境から分析した研究として、柳瀬らは都
市照明の中で住宅地の街灯に着目し、どんな場所でも画一的な対応ではなく場所に適した
光環境を検討するために住宅地において主な照明環境をつくりだしている街灯の間隔を調
節しながら分析を行い、歩行者の不安要素が改善できる間隔を解明した(表2-1の論文番号
K1)。 宇於崎らは東京都内の商業地域を対象とし、照度と1階営業施設用途との関係や場
所の認知において手がかりになる要素について明らかにした(表2-2の論文番号T4)。しか
し、都市照明環境を扱った既往研究は主に照度を中心に研究が行われ、光のほかの評価基
準である輝度や色温度などを用いた研究は数少ない。
②景観イメージ
夜間街路景観に対する印象やイメージを分析した研究として、吉沢らは繁華街、オフィ
ス街などの都市公共空間の照明に着目し、要素、特徴、印象という景観構成要素と評価尺
25
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
度を明らかにすることを目的とし、印象評価実験をもとに都市の夜間景観を評価する因子
として秩序、親近性、個性という3つを明らかにし、その因子と景観構成要素との相関関
係を明らかにした(表2-1の論文番号K7)。小林らは駅前商店街から住宅地街路まで至る街
路空間を対象とし、画像を用いた実験を通じ、照明要素が人に与える視覚的効果と心理的
影響について明らかにした(表2-1の論文番号K9)。井上らは写真を用いたシーンの昼・夜
間景観の分析を行い、夜間が昼間より30-40%ぐらい認知が減少するなど、夜間景観の特
徴を明らかにした(表2-1の論文番号K13)。樋口らはケビン・リンチの「都市のイメージ」
の成果を受けて、夜間景観の持つ重要な役割がオリエンテーションにあるとし、「都市の
識別しやすさ」という観点から夜景計画に対して各地域のランドマークを照明すべきだと
結論付けている(表2-1の論文番号K17)。館林らは西欧におけるライトアップの実例の調査
を通じてその景観的効果を支える諸条件を観光パンプレットや写真から分析し、夜間景観
の見え方を整理した。そして、横浜市を事例として夜間景観の改善策を提示した(表2-2の
論文番号T6)。このように夜間街路景観の印象やイメージを解明する研究は夜間景観研究
の中では研究の蓄積がある分野である。
③人間行動
夜間の都市空間の中で行われる人の行動分析や不安という観点から様々な都市照明環境
の下で生じる人の行動分析を中心としている。小林らは店舗のファサードの開口部や都市
のオープンテラス空間に着目し、昼夜において人の注視行動や会話行動の特徴を明らかに
した(表2-1の論文番号K3,K4)。そして、夜間街路において一般歩行者が見知らぬ他者とす
れ違う状況を取り上げ、歩行者が他者を回避する行動がどのような条件に左右されやすい
のかについて明らかにすることを目的とし、性別ごとの特性や照明点灯数、点灯位置、照
度と回避行動との関係を明らかにした(表2-1の論文番号K5,K6)。これらは夜間景観を防
犯・安全的な面で主眼を置いて分析している研究と言える。
26
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
表 2-1.夜間景観に関する既往研究 1-2 (日本建築学会論文集
年度 番号
2006
K1
2005
K2
2004
K3
論文名
および日本建築学会近畿支部研究報告書)
著者
街路灯間隔と夜間街路の印象および認知距離の関係
柳瀬亮太,酒井史紀
繁華街の各種照明が夜間景観に与える影響に関する研究
李永桓,後藤春彦,李 日本建築学会計画
:新宿区歌舞伎町1丁目を事例として
彰浩,福武洋之
昼夜の遊歩道における店舗開口部の特徴と歩行者の注視行
動との関係
小林茂雄
:原宿キャットストリートを対象にしたケーススタディ
昼夜のオープンテラスでとられる会話行動の属性別特徴
K4
:夏期の新宿アイランドパティオを対象にしたケーススデ
小林茂雄,吉崎圭介
ィ
2003
不均一な夜間街路照明が対向者への回避行動に与える影響
K5
:同一線上を真正面から接近する他者への回避行動の起点
小林茂雄,安部貴浩
に関する検討
2002
K6
夜間街路上の他者に対する歩行者の回避行動に関する研究
2001
K7
夜間における都市公共空間の景観印象評価に関する研究
2000
K8
住宅地街路の夜間光環境評価と住宅外構照明の関係
K10
K13
1990
K14
1989 K15
系論文集
日本建築学会環境
系論文集
日本建築学会計画
系論文集
系論文集
吉沢望,石原従道,平
日本建築学会計画
手小太郎
系論文集
中島政太郎,小林茂
日本建築学会計画
系論文集
夜間商店街の利用目的を考慮した照明構成要素の心理的効
小林茂雄,海野広樹,
日本建築学会計画
用
中村芳樹
系論文集
ウォーターフロントの夜間景観に関する研究-対岸景の評
安藤安也,横内憲久, 日本建築学会計画
価と光の量との関連性について
桜井慎一
「地」の考察
大影佳史,宗元順三
:山並みを持つ京都の都市景観を事例として
1993 K12
日本建築学会計画
日本建築学会計画
景観画像の特徴の時刻変化と昼・夕・夜景の「図」と
K11
系論文集
吉崎圭介
雄
1999
系論文集
小林茂雄,安部貴浩,
村松陸雄,中村芳樹,
K9
発行・掲載誌
日本建築学会計画
系論文集
日本建築学会計画
系論文集
時刻変化に伴う心理量の変化-都市景観評価における変動
大井尚行,平手小太 日本建築学会計画
要素の影響に関する研究その1
郎,安岡正人
系論文報告集
井上雅祐,奥俊信,
日本建築学会近畿
紙野桂人
支部研究報告書
都市夜景に関する一試論
都市における夜景の物的構成と心理評価に関する研究
:神戸市の都心街路の夜景調査を通じて
嶋田勝次,安田丑作,
三輪康一,木山正典,
上田渉
都市における「夜の景観」に関する研究
K16
昼夜の条件変化の下での都市景観に関する研究
K17
都市景観の識別度に関する昼と夜の比較研究
1988
日本建築学会近畿
支部研究報告書
大和正典,鳴海邦碩
日本建築学会近畿
外1名
支部研究報告書
井上雅祐,紙野桂人
日本建築学会近畿
支部研究報告書
樋口忠彦,玉川英則, 日本建築学会計画
明間寛治
系論文報告集
NO・分冊・ページ
601号,pp.139-144
598号,pp.101-108
575号,pp.77-83
571号,pp.69-74
564号,pp.71-77
556号,pp.69-75
550号,pp.15-22
528号,pp.23-28
524号,pp.15-20
516号,pp.295-301
515号,pp.179-185
453号,pp.45-51
pp.469-472
pp.473-476
pp.617-620
pp.621-624
388号,pp.79-85
※番号欄:灰色(夜間街路景観)・黄色(夜間眺望景観)・白色(その他)
※K16は街路景観、眺望景観、演出景観の3つ夜間景観を扱っている
27
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
2-2-3 夜間眺望景観に関する研究
夜間眺望景観の研究は照明環境の計測難しさや主体である人との直接な関わりが弱いた
め、夜間の景観構図やイメージの分析が主となっている。大影らは都市景観を図と地の構
造として考え、京都を対象にし、時間の流れによる一日の景観を山、空、建物中心に図と
地の視覚構造の変化の分析を行った。その結果として時刻変化に伴い、空と山並みの明
暗・色彩は類似な変化を見せたことに対し、建物が異なること、図と地分化の主な要因と
して市街地、山並み、空の領域の明るさの分布の変化に起因することを明らかにした(表
2-1の論文番号K12)。天谷らは雑誌の俯瞰夜景写真を用い、眺望景観の構図的要素と人の
心理的嗜好の関連をSD法を通じで明らかにした。その結果として光の線、光の面と闇の面
の配置、光の輪郭線の形状のような構図的要素が印象評価に影響を与えていることを明ら
かにした。(表2-2の論文番号T2)。羽生らは光の構図的尺度と質的尺度を自ら設定するこ
とにより夜景の物理的枠組みを始めて提示した(表2-2の論文番号T7)。しかし、これから
はこのような印象やイメージに影響を与える要素に対するより定量的な解明や、イメージ
と要素の関係に対する客観的な分析などが必要であると言える。
表 2-2.夜間景観に関する既往研究 2-2 (日本都市計画学会都市計画論文集)
年度 番号
論文名・題目
著者
渋谷敬一,小林隆史, 日本都市計画学会
:函館市を対象として
大澤義明
2004
T1
2000
T2
夜間眺望景観の構図論的考察
天谷華子,山崎正史
1992
T3
商業地区における昼夜間景観変化に関する考察
鈴木ひろ枝,土肥博至
1991
T4
商業地域における夜間景観に関する基礎的研究
:繁華地区における夜間の活動と夜景構成要素の実態分析
を中心として
1990
T5
語彙および浮世絵にみる「夜景」の認知特性に関する研究
T6
都市におけるライトアップ事業の景観的効果に関する考察
T7
夜景の構図とイメージに関する基礎的研究
1989
T8
1988
T9
発行・掲載誌
都市夜景の俯瞰景に関する計量分析
都市空間における橋のライトアップに関する研究:長岡市
長生橋をケーススタディとして
夜間公共空間の快適性評価実験について
都市計画論文集
日本都市計画学会
都市計画論文集
日本都市計画学会
都市計画論文集
宇於崎勝也,小島勝衛 日本都市計画学会
,根上彰生
都市計画論文集
小柳武和,笹谷康之,
日本都市計画学会
瀧原敏, 山形耕一
都市計画論文集
館林史子,仲間浩一
日本都市計画学会
都市計画論文集
羽生冬佳,渡辺貴介,
日本都市計画学会
天野光一
都市計画論文集
藤田誠,宮腰和弘
山下葉
日本都市計画学会
都市計画論文集
日本都市計画学会
都市計画論文集
NO・分冊・ページ
pp.187-192
pp.751-755
pp.781-786
pp.445-450
pp.649-654
pp.655-660
pp.661-666
pp.439-444
pp.445-450
※番号欄:灰色(夜間街路景観)・黄色(夜間眺望景観)・白色(その他)
28
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
2-2-4 その他の夜間景観に関する試み
上記の日本建築学会論文集と日本都市計画学会都市計画論文集などに掲載された夜間景
観と関連する審査論文は全部で27篇しかない。夜間景観の歴史が短いことも原因であるが、
視覚的な制限が多い夜間景観に対する客観的な分析の難しさを端的に表す部分である。し
かし、審査付き論文までではないが、建築学会大会に発表された梗概のレベルには夜間景
観に関する様々な試みが行われている。これををまとめたのが表2-3から表2-6である。
表 2-3.日本建築学会学術講演概要集の掲載されている夜間景観に関する研究(1-4)
年度 番号
論文名・題目
著者
雑誌・書籍
NO・分冊・ページ
シークェンス景観における昼・夜間の注視特性に関する基礎
Kg1
的考察
李永桓,後藤春彦,
:アイマークレコーダを用いたゆりかもめ沿線地域の景観 李彰浩,関口信行
日本建築学会学術講演
概要集
F-1,pp.243-244
分析
2005
Kg2
都市における夜間眺望景観の景観認識に関する研究 その1鍵鍵野壮広,乙部暢宏,後 日本建築学会学術講演
:景観を解く手がかりの抽出
都市における夜間眺望景観の景観認識に関する研究 その2
Kg3 :夜間エレメントによる景観の類型化
藤春彦,李永桓 他3名 概要集
乙部暢宏,鍵野壮広,後 日本建築学会学術講演
藤春彦,李永桓 他3名 概要集
F-1,pp.1267-1268
F-1,pp.1269-1270
都市景観における街区の色彩構成と環境認知及び行動特性
Kg4
との関係性III
柳瀬英江,田胡智子,
:昼夜間の銀座・渋谷地域における環境認知と行動特性の 大内宏友
日本建築学会学術講演
概要集
F-1,pp.1021-1022
相関
都市景観における街区の色彩構成と環境認知及び行動特性
2004 Kg5
との関係性IV
田胡智子,柳瀬英江,
:昼夜間の銀座・渋谷地域における色彩認知3Dモデルの構 大内宏友
日本建築学会学術講演
概要集
F-1,pp.1023-1024
築
Kg6
Kg7
業種に着目した色温度が夜間の街路景観の印象に与える影 福武洋之,後藤春彦,
日本建築学会学術講演
響に関する研究
概要集
東京都新宿における街路空間のサラウンド夜景に関する研
究
Kg8 街路空間における夜景の光構成-街路夜景の多様な表情
Kg9
照度からみた夜の街並研究-JR新宿駅東口、歌舞伎町、JR渋
谷駅ハチ公口、銀座を事例として
安藤直見 他2名
鵜沢隆,村岡桃子
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
角館政英
概要集
武居知裕,宗方淳
日本建築学会学術講演
外2名
概要集
堀江正浩,関口克明,
日本建築学会学術講演
角館政英 外1名
概要集
夜間街路評価の構成要素について その1
田中龍介,黒図謙人,
日本建築学会学術講演
:要素と印象の抽出
古賀靖子
概要集
夜間街路評価の構成要素について その2
黒図謙人,田中龍介,
日本建築学会学術講演
:要素と印象の分析
古賀靖子
概要集
2003 Kg11 超高層住宅からの夜間眺望評価に関する研究
Kg12 認知行動から見た夜間の都市空間構成要素の評価
Kg14
飯田康寛,安藤直見
本村洋,関口克明,
Kg10 開口部による夜間街路空間の評価に関する研究
Kg13
李永桓 他2名
F-1,pp.1031-1032
F-1,pp.1143-1144
F-1,pp.305-306
F-1,pp.363-364
D-1,pp.373-374
D-1,pp.375-376
D-1,pp.377-378
D-1,pp.381-382
D-1,pp.383-384
29
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
表 2-4. 日本建築学会学術講演概要集の掲載されている夜間景観に関する研究 (2-4)
年度 番号
Kg15
2003 Kg16
論文名・題目
Kg20
日本建築学会学術講演
:元町の街路照明計画に向けた一考察
角館政英 外3名
概要集
周辺部の空間を考慮した夜間街路の光環境に関する研究
角館政英,川島勇,
日本建築学会学術講演
:岩手県大野村まちづくり整備
関口克明 外5名
概要集
永井俊介,関口克明,
日本建築学会学術講演
角館政英 外1名
概要集
岩手県大野村の中心地区まちづくりにおける光環境整備の 野中太郎,関口克明,
日本建築学会学術講演
実践
概要集
角館政英 外5名
照明方式と照度・色温度の組合せ条件が心理反応に及ぼす 武田紀子,堀越哲美,
日本建築学会学術講演
複合影響
石船淳一 外2名
概要集
石船淳一,堀越哲美,
日本建築学会学術講演
宇野勇治 外1名
概要集
相沢夕季,堀越哲美,
日本建築学会学術講演
宇野勇治
概要集
堀江正浩,関口克明,
日本建築学会学術講演
角館政英 外1名
概要集
小林憲治,関口克明,
日本建築学会学術講演
角館政英 外3名
概要集
照度・色温度、気温、周囲色彩が人間心理に及ぼす複合影
Kg21 響 その2
:季節差と性差
2002
Kg22 都市の街路空間における昼夜の光環境の実能
Kg23 ランドマークと場所の認知から見た光環境に関する研究
Kg24 街路照明における空間認知に関する基礎的検討
Kg25
夜間街路の評価実験における呈示方法について
:写真評価と現場評価の比較
Kg28
2001 Kg29
Kg30
Kg31
Kg35
Kg36
Kg37
30
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
高層ビルから見た都市中心部の夜景に関する研究 その1
安藤直見,金成鎮,
日本建築学会学術講演
:画角変化と時間変化による空間評価…
大塚弘子,小林響子
概要集
高層ビルから見た都市中心部の夜景に関する研究 その2
金成鎮,安藤直見,
日本建築学会学術講演
:夜景写真の画像特性
大塚弘子,小林響子
概要集
街路空間の光環境の在り方
に関する研究 その4
:あんどん設置による光環境の変化について
街路空間の光環境の在り方
に関する研究 その5
:ボイドの空間的要素と街路評価
夜間街路の評価構造に関する実態調査
:福岡市天神地区の場合
小林憲治,関口克明,角 日本建築学会学術講演
館政英 外1名
概要集
鈴木清久,関口克明,
日本建築学会学術講演
角館政英 外1名
概要集
柴田大吾,古賀靖子
金成鎮,安藤直見
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
長澤夏子,木村謙,
日本建築学会学術講演
渡辺仁史
概要集
夜間街路空間の照明環境評価に関する研究 その1
下山秀行,岡本誠司,
日本建築学会学術講演
:評価視点の抽出
乾正雄 外4名
概要集
夜間街路空間の照明環境評価に関する研究 その2
若狭直毅,岡本誠司,
日本建築学会学術講演
:評価構造の把握
中村芳樹 外4名
概要集
夜間街路空間の照明環境評価に関する研究 その3
沢田敏実,山崎恵司,
日本建築学会学術講演
:照度・輝度の影響
中村芳樹 外4名
概要集
鈴木清久,関口克明,
日本建築学会学術講演
角館政英 外2名
概要集
Kg33 夜間における光源情報に基づく都市空間分析
2000
日本建築学会学術講演
田村明弘
Kg32 幕張ベイタウンの夜景の光特性に関する研究
Kg34
田中龍介,古賀靖子
内田拓朗,福多佳子,
Kg26 夜間住宅街路におけるサイン照明の心理的影響
Kg27
雑誌・書籍
川島勇,関口克明,
Kg17 危険予測からみた交差点の光環境と夜間景観に関する研究
Kg19
著者
夜間街路歩行時の光環境評価
街路空間の光環境の在り方
に関する研究 その1
:現状の考察及び街路空間における歩行者のストレス
NO・分冊・ページ
D-1,pp.385-386
D-1,pp.387-388
D-1,pp.389-390
F-1,pp.37-38
D-1,pp.421-422
D-1,pp.423-424
D-1,pp.427-428
D-1,pp.429-430
D-1,pp.431-432
D-1,pp.433-434
D-1,pp.435-436
F-1,pp.907-908
F-1,pp.909-910
D-1,pp.423-424
D-1,pp.425-426
D-1,pp.427-428
E-1,pp.789-790
E-1,pp.791-792
D-1,pp.413-414
D-1,pp.415-416
D-1,pp.417-418
D-1,pp.419-420
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
表 2-5.夜間景観に関する日本建築学会学術講演概要リスト(3-4)
年度 番号
Kg38
Kg39
論文名・題目
街路空間の光環境の在り方
に関する研究 その2
:認知によるボイドの特性
街路空間の光環境の在り方
に関する研究 その3
:まちづくりとしての光環境設備の提言
2000 Kg41 街路灯のある夜の街の雰囲気に関しての研究
Kg42 光害(ひかりがい)に対する意識に関する研究 その1
Kg43 光害(ひかりがい)に対する意識に関する研究 その2
著者
日本建築学会学術講演
角館政英 外2名
概要集
角館政英,関口克明,
日本建築学会学術講演
鈴木清久 外2名
概要集
平井友也,永田忠彦
日本建築学会学術講演
概要集
高野雅彦,中村芳樹,
日本建築学会学術講演
乾正雄 外1名
概要集
増山正明
Kg45 時刻変化から見た夜間景観の記述-照明効果の明度分析
横木真理子 外4名
天谷華子,山崎正史
東京都心部住宅地における夜間景観に関する研究 その1
Kg47 :中井・落合地区における夜間景観の現況と住民イメージの 賀茂賢一 外10名
関係について
Kg48
Kg49
東京都心部住宅地における夜間景観に関する研究 その2
:中井・落合地区における住民による夜間景観形成の可能性
東京都心部住宅地における夜間景観に関する研究 その3
:行政の夜間景観への対応
Kg50 都市街路夜間景観における情報構造に関する研究
1995
Kg51 時間帯による街路景観の評価について
Kg52 都市景観の昼夜連続性についての研究
繁華街地区における夜間の街路景観の整備に関する基礎的
1990
Kg53 研究その6
:商業地域における都市照明に関する歴史的考察
Kg54
都市における夜景の物的構成と心理評価に関する研究
:神戸市の都心街路の夜景調査を通じて
Kg55 都市における「夜の景観」に関する研究
繁華街地区における夜間の街路景観の整備に関する基礎的
1989
Kg56 研究その4
:近景要素と街路照度
繁華街地区における夜間の街路景観の整備に関する基礎的
Kg57 研究その5
:中景要素と地点認知度
概要集
乾正雄 外1名
1998
1996
日本建築学会学術講演
村松陸雄,中村芳樹,
Kg44 ライトアップされた建築物の景観評価構造に関する研究
1997 Kg46 絵画描写による夜間景観の見方に関する考察
雑誌・書籍
下平裕之,関口克明,
徳田賢太郎 外10名
灰谷香奈子 外10名
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
石田真,志水英樹,
日本建築学会学術講演
鈴木信弘
概要集
萩原慶一,八木幸二,
日本建築学会学術講演
安藤直見
概要集
上坂脩
日本建築学会学術講演
概要集
宇於崎勝也,小島勝衛, 日本建築学会学術講演
根上彰生
上田 渉,嶋田勝次,
安田丑作,三輪康一,
木山正典
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
大和正典,鳴海邦碩
日本建築学会学術講演
外1名
概要集
梶川和滋,小島勝衛,
日本建築学会学術講演
根上彰生,宇於崎勝也 概要集
宇於崎勝也,小島勝衛, 日本建築学会学術講演
根上彰生,梶川和滋
概要集
NO・分冊・ページ
D-1,pp.421-422
D-1,pp.423-424
D-1,pp.425-426
D-1,pp.427-428
D-1,pp.429-430
F-1,pp.741-742
E-1,pp.919-920
F-1,pp.137-138
F-1,pp.793-794
F-1,pp.795-796
F-1,pp.797-798
E-1,pp.877-878
F-1,pp.111-112
F,pp.167-168
F,pp.169-170
F,pp.171-172
F,pp.41-42
F,pp.79-80
F,pp.81-82
31
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
表 2-6.夜間景観に関する日本建築学会学術講演概要リスト(4-4)
年度 番号
論文名・題目
著者
繁華街地区における夜間の街路景観の整備に関する基礎的 小島勝衛,根上彰生,
Kg58 研究その1
:施設用途と営業活動実態
中村寛代,宇於崎勝也,
梶川和滋
繁華街地区における夜間の街路景観の整備に関する基礎的 小島勝衛,根上彰生,
Kg59 研究その2
1988
:街路歩行者交通量と街路照度
中村寛代,宇於崎勝也,
梶川和滋
繁華街地区における夜間の街路景観の整備に関する基礎的 小島勝衛,根上彰生,
Kg60 研究その3
:街路レベルにみる立面構成
Kg61 昼夜の条件変化の下での都市景観に関する研究
1978 Kg62
32
中村寛代,宇於崎勝也,
梶川和滋
井上雅祐,紙野桂人
雑誌・書籍
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
日本建築学会学術講演
概要集
建築外観の視覚構造II
芦原義信,寒竹伸一,
日本建築学会学術講演
:夜における建築の見え方、図と地の逆転
宇田左近
概要集
NO・分冊・ページ
F,pp.135-136
F,pp.137-138
F,pp.139-140
F,pp.141-142
F,pp.661-662
既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点・・・第2章
2-3
研究の着眼点と位置づけ
1980年半ば頃から見られる建築・都市計画の観点から都市照明環境と夜間景観について
論じた研究をみると、シーン景観を中心にしたイメージや印象評価による分析が多い。
本研究の分析軸としている都市照明環境と夜間景観体験から見ると、都市照明環境に関
する研究は、照明の照度が重要な分析指標になってきた。しかし、この照度基準も1979年
に策定されて約30年が経ったもので、今日の多様な都市照明環境にどの程度相応しいか疑
問がある。さらに照明環境の評価には照度以外にも、様々な評価指標があるが、都市のス
ケールおいては照度以外にはまだ見えない状況である。さらに、夜間景観の見方に関する
研究においては固定したシーン景観にもとづいた街路景観と眺望景観という2つの観点か
ら行われいるが、実際の都市空間においては視線の角度や視点の移動速度の変化による多
様な夜間景観体験が存在している。したがって、これからはシーン景観のみならず、景観
体験分析にもとづいたの夜間景観に関する研究が求められる。
本研究はこれまでの夜間景観に関する既往研究の成果と問題点を踏まえた上で、以下の
ような着眼点を導きだし、それらに沿って研究を進めていくこととする。
①夜間景観を都市照明の色温度の分析から評価する。
②夜間景観をシークエンス景観の分析から解明する。
③夜間景観を景観イメージ要素の分析から分類する。
表 2-7.夜間景観の既往研究の分類と本研究の位置
既往研究
視点場
夜間街路景観
夜間眺望景観
分析方法
成果・現状
都市照明環境
照度中心
景観イメージ
人間行動
多様な試み
行動パタン・安全
景観イメージ
印象・イメージ中心
上記の2つの夜間景観はシーン景観中心の分析が多数
本研究
問題点
照度以外の多様な照明指標
による分析が必要
−
印象やイメージに影響を与
える景観要素に対する定量
的な分析が必要
視線や視点の変化を考慮し
た分析が必要
着眼点
色温度
対象夜景
界隈夜景
色温度と印象との関係
景 観 イメ ージ 要素 の 定
量 的 な分 析、 印象 と の
関係
視線の移動
俯瞰夜景
視線・視点の移動
車窓夜景
そこで、本研究は既往研究の成果と上記の着眼点をもとに、都市照明環境と夜間景観体
験という観点から都市全体を考慮した総体的な環境として夜間景観を取り扱う研究として
位置付けられる。
33
第2章・・・既・往・研・究・の・整・理・と・研・究・の・着・眼・点
注2-1)パリ市のナイト・ツアー・コースは、オペラ座→バンドーム広場→コンコルド広場→セ
ーヌ川→アンバリッド→エコール・ミリテール→エッフェル塔→セーヌ川→シャイヨー宮
→ビクトル・ユーゴー広場→凱旋門→シャンゼリゼ→シテ島→ノートルダム→セーヌ河畔
→オペラ座のようにパリ市内を一回りする形式である。
注2-2)パリ市の弾力的な運営方法のもう1つとして、電気代を負担すれば、個人でも望みの場所
に希望する時間だけ照明を点灯してくれる仕組みもある。
<参考文献・資料>
文1)キム・ジョンア:フランスのパリ市とリヨン市の夜間景観における開発方式に関する比較
研究、大韓建築学会論文集計画系、pp.125-136、2003.11
文2)ベ・ヒョンミ:都市照明の変遷特性に関する研究、大韓建築学会論文集計画系 第173号、
pp.161-168、2003.03
文3)面出薫、LPA:都市と建築の照明デザイン、六耀社、2005
文4)都市美研究会:都市のデザイン<きわだつ>から<おさまる>へ、学芸出版社、2002
文5)石井幹子:環境照明のデザイン、鹿島出版会、1984
文6)面出薫:世界照明探偵団、鹿島出版会、2004
文7)都市観光でまちづくり編集委員会:都市観光でまちづくり、学芸出版社、2003
文8)ジョン・ヒョンア:都市、未来へ未来へ、東亜日報(韓)、2006.02.17
文9)ソウル市夜間景観基本計画研究、ソウル特別市、2000
文10)北沢猛:都市のデザインマネジメント、学芸出版社、2002
文11)金沢市:夜間景観形成計画(骨子案)、2005
文12)神戸市:神戸市夜間景観形成基本計画、2004
文13)福岡市:福岡市都市環境照明ガイドライン、1992
文14)ソウル特別市ホームページ:http://www.seoul.go.kr
34
第3章
3-1
はじめに••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••037
3-1-1
本章の目的
3-1-2
本章で用いる照明用語
3-1-3
対象地の選定
3-1-4
調査範囲
3-1-5
測定距離の設定と分析の方法
3-2
歌舞伎町の物理的環境••••••••••••••••••••••••••••••••045
3-3
歌舞伎町の都市照明環境••••••••••••••••••••••••••••••054
3-4
3-3-1
照度の現況
3-3-2
色温度の現況
3-3-3
照度と色温度の分散具合
小結••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••063
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
3-1
はじめに
3-1-1 本章の目的
照明技術の発展や種類の増加に伴い、夜間景観は従来の安全・防犯優先の照明計画のみ
ならず、80年代からランドマークのライトアップ手法などを用いた美的演出がこころみら
れるようになった。しかしながら、それらは建物単体スケールに留まっており、都市空間
のスケールにおける計画・整備はまだ不十分である。さらに、近年では過度な照明が都市
景観上問題になっている。
第3章は界隈夜景から夜間景観の特性を解明する第1段階で、人が夜間の街路を歩行する
際に強い影響を受けていると考えられる都市照明に着目した。勿論、この照明によって見
られる視対象も重要であるが、夜間に視対象がどのように見えるかは照明の様々な属性と
関係がある。そこで、本章ではこれまで都市照明環境を示す際、重要な評価基準になって
きた照度の実態の把握とともに、都市照明に対する新たな観点として空間の雰囲気の演出
に影響を与える色温度の分析も行い、界隈夜景における照度と色温度の関係を把握する。
特に、様々な照明や光源から成り立っている繁華街注3-1)を対象とし、都市照明環境を照
度とともに色温度から分析し、それらの評価および界隈夜景の特性を明らかにする。
37
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
図 3-1.歌舞伎町の調査範囲と現況 (調査日時:2004年12月2日,14:00-18:00)
38
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
39
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
3-1-2 本章で用いる照明用語
①照度
一般的な明るさは照度(単位:lxルクス)で表す。
しかし、照度が高ければ明るいかというと、必ずしもそうではない場合がある。室内
が反射率の低い黒い系の素材で仕上げられる場合には、光の量は与えられていて照度も
高いが明るく感じないことが多い。つまり、人が感じる明るさと光の量とは正比例な関
係にある。
外部空間の照度としては路面照度と鉛直面照度があるが、本論では空間の明るさ感
に大きな影響を及ぼす鉛直面照度を本研究では照度として扱う。
②色温度
光源から発せられる光の色を色温度(単位:Kケルビン)で表す。
色温度の高い光源は青く見え、色温度が低い光源は赤く見える(図3-2参照)。人の心
理はこの色温度に深く関わっている。青から白にかけての色温度の高い光のものは緊張
感を増加させ、黄から赤にかけての色温度の低い光のものは気持ちを鎮静させ安らいだ
気分にさせることができる。
図 3-2. 色温度値と色との関係
3-1-3 対象地の選定
本研究の対象地の選定にあたり、東京を代表する繁華街で、歩行系を主とする街路で構
成されるとともに、面的なひろがりをもつ特徴的な地区である歌舞伎町1丁目(以下、歌舞
伎町)を調査範囲とした。調査範囲は歩行者の通行が主となっている街路に限定した。そ
の理由として自動車の通行が主となっている道路は歩車道が分離されることにより、街路
の両側を一体的に感じることが難しいこと、信号や走行中の自動車のヘッドライト等の光
が調査に影響を及ぼすことなどが挙げられる。
40
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
3-1-4 調査範囲
具体的には、南北の東急文化会館前の通り、歌舞伎町1番街、セントラルロード、歌舞
伎町さくら通り、あずま通りとそれらを東西に結ぶ街路、総延長約1,970mの街路空間を対
象とした(図3-1参照)。
3-1-5 測定距離の設定と分析の方法
日本工業標準調査会(以下、JIS)の街路の照度測定距離は5m
である注3-2)。この距離が実際に本研究の調査範囲である歌舞伎
町においても妥当性を持つかを把握するために予備調査を行っ
た注3-3)(図1の左側楕円部分、延長:120m)。そこで、120mを1m間
隔で刻んだ120ポイントから3m(40ポイント)、5m(24ポイント)、
10m(12ポイント)、20m(6ポイント)、30m(4ポイント)の6段階に
分け、各々の照度と色温度を測定した(表3-1参照)。
写真 3-1.予備調査対象地
(歌舞伎町一番街)
表 3-1.距離別の平均照度・色温度、標準偏差
測定距離(m)
平均照度(lx)
照度の標準偏差
平均色温度(K)
色温度の標準偏差
1m
115.46
38.93
3718
301.89
3m
116.11
40.23
3712
295.47
5m
115.18
39.32
3714
304.57
10m
113.96
36.79
3717
289.04
20m
120.38
34.07
3677
156.14
30m
113.75
45.65
3640
380.97
その結果、照度の場合は1-5mまでの平均照度の差が1lx未満であり、 標準偏差も5mまで
は差が小さく、10mから差が大きくなる傾向が見られた。色温度の場合は平均色温度は10m
までは似通った値を見せている。しかし、その標準偏差をみると1-5mまでの互いの差は10
未満であるが、10m以上になると差が10を超える結果が得られた。以上よりJISの照度測定
距離が5mであることの妥当性が検証できたともに、本研究では照度および色温度の測定距
離を5mとすることにした。
41
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-2.測定距離ごとの照度データと標準偏差
1m
3m
測定距離ごとの照度(lx)
5m
10m
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
57.4
50.7
58.5
75.3
106
138.2
175.4
126.7
83.7
88.5
109.6
162.9
40.9
66.1
106
169.9
104.2
88.5
148.2
115.8
60.3
110.6
152.9
67
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
148.5
106.3
60.3
74.8
113.5
173.3
98.6
67
69.9
70.7
69.9
70.6
102.3
127.2
140.6
172.7
194.3
170.2
141.8
132.9
103.9
121.6
134.4
129.5
153
178.4
155.8
129.3
69.7
69.1
102.3
134.3
171.7
170.2
133.8
106
134.4
140.7
172.3
129.3
120ヶ所
測定
20m
30m
66.1
169.9
88.5
115.8
110.6
67
69.1
134.3
170.2
106
140.7
129.3
169.9
115.8
67
134.3
106
129.3
34.07
88.5
67
170.2
129.3
平均照度
115.46
116.11
115.18
113.96
120.38
113.75
標準偏差
38.93
40.23
39.32
36.79
34.07
45.65
42
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-3.測定距離ごとの色温度データと標準偏差
1m
3m
測定距離ごとの照度(lx)
5m
10m
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
3774
3846
4149
4269
4165
3710
3260
2981
2810
3072
3429
3632
3779
4273
4165
3438
2823
3072
3578
3656
3806
3858
4046
3771
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
3679
3915
3806
3790
3871
4053
3995
3771
3770
3925
3957
3832
3772
3748
3730
3694
3859
3841
3728
3583
3549
3464
3544
3657
3594
3666
3721
3875
3920
3862
3772
3751
3708
3841
3690
3573
3544
3638
3694
3875
120ヶ所
測定
20m
30m
4273
3438
3072
3656
3858
3771
3862
3751
3841
3573
3638
3875
3438
3656
3771
3751
3573
3875
3438
3072
3771
3841
3875
平均色温度
3718
3712
3713
3717
3677
3639
標準偏差
301.89
295.47
304.57
289.04
156.14
380.97
43
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
調査時間は夜間の商業活動が最も活発な時間帯として想定される18:00-22:00とした。
測定箇所は調査範囲である17街路における測定距離5mごとの403箇所である。また、測定
高さは鉛直面照度(以下、照度)の測定方法を用い、街路の中心線上で路面上から1.5mの高
さ注3-4)を本研究の基準高さとして扱った(図3-3参照)。
図 3-3.測定方法の概念図
44
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
3-2.歌舞伎町の物理的環境
夜間の歌舞伎町の照明環境を調査する前に、建物の階数、店舗数、業種の物理的環境を
把握した注3-5)。調査範囲には223棟の建築、646店舗注3-6)があった。建築は4階建が最も多く、
全体の26%を占めていた(表3-4参照)。そして、1-4階建の低・中層建物が全体の6割を占
め、調査範囲の全域に渡って多く分布していた。6階建以上は南北に延びる通りに主に分
布している傾向が見られた(図3-1参照)。
表 3-4.階数別建物数
階
数
階
数
1F
1
6F
17
2F
33
7F
13
3F
41
8F
15
4F
57
9F
12
5F
33
10F
1
業種は日本標準産業分類と風俗営業法をもとに、一般飲食店、遊興飲食店、娯楽業、風
俗業、小売業、サービス業、宿泊業、不動産業、医療・福祉業、その他という10個のカテ
ゴリーに分類した注3-7)。
その結果、最も多い業種は遊興飲食店で33.6%を占めていた。次が娯楽業(18.5%)、一般
飲食店(17.4%)、風俗業(12.4%)、サービス業(6.5%)などの順である(表3-5参照)。
表 3-5.業種別店舗の分布現況(2005年1月9日現在)
1F
2F
3F
4F
5F
6F
7F
8F
9F
10F
計
遊興飲食
18
66
54
28
24
14
7
娯楽
50
21
22
11
6
6
2
5
1
−
217
2
−
−
120
一般飲食
82
13
4
6
5
−
1
1
1
−
113
風俗
16
18
23
8
5
1
4
2
2
1
80
サービス
32
1
1
5
1
−
−
2
−
−
42
小売
30
−
−
−
−
−
1
−
−
−
31
宿泊
5
2
1
1
−
−
1
−
−
−
10
不動産
3
−
−
−
2
1
−
−
−
−
6
医療・福祉
−
−
3
1
−
−
−
−
−
−
4
その他
2
−
4
5
4
5
3
−
−
−
23
計
238
121
112
65
47
27
19
12
4
1
646
45
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-6.各建物の階ごとの業種分布現況 1-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
番号
業
1F
2F
一般飲食
種
3F
4F
5F
6F
7F
8F
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
宿泊
宿泊
娯楽
娯楽
・
一般飲食
遊興飲食
事務所
宿泊
その他生活関
連サービス
娯楽
1
遊興飲食
風俗
遊興飲食
一般飲食
一般飲食
娯楽
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
一般飲食
一般飲食
自動証明
写真機
プロミス申込機
飲食料品小売
2
その他生活関
連サービス
娯楽
洗濯・理容・ 洗濯・理容・
美容・浴場
美容・浴場
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
4
娯楽
遊興飲食
娯楽
一般飲食
5
飲食料品小売
風俗
風俗
遊興飲食
娯楽
一般飲食
娯楽
3
6
娯楽
その他生活関
連サービス
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
7
娯楽
娯楽
一般飲食
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
8
娯楽
娯楽
・
9
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
・
・
10
一般飲食
・
一般飲食
・
一般飲食
11
一般飲食
遊興飲食
12
一般飲食
一般飲食
一般飲食
・
・
13
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
14
一般飲食
一般飲食
一般飲食
15
娯楽
風俗
風俗
16
一般飲食
一般飲食
一般飲食
17
一般飲食
娯楽
・
広告
娯楽
18
19
風俗
娯楽
娯楽
20
風俗
・
21
一般飲食
一般飲食
22
娯楽
娯楽
23
風俗
風俗
・
24
風俗
風俗
・
46
一般飲食
9F
10F
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-7.各建物の階ごとの業種分布現況 2-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
業
番号
1F
2F
3F
25
娯楽
娯楽
娯楽
26
娯楽
娯楽
・
27
広告
娯楽
28
一般飲食
29
4F
5F
娯楽
娯楽
娯楽
一般飲食
娯楽
娯楽
広告
・
・
30
一般飲食
一般飲食
一般飲食
31
娯楽
・
・
・
32
一般飲食
一般飲食
娯楽
娯楽
33
娯楽
娯楽
・
34
娯楽
娯楽
35
一般飲食
娯楽
36
風俗
風俗
37
風俗
・
38
一般飲食
39
一般飲食
40
その他生活関
連サービス
宿泊
・
一般飲食
風俗
一般飲食
一般飲食
・
種
6F
7F
美容・浴場
美容・浴場
宿泊
宿泊
娯楽
美容・浴場
事務所
娯楽
42
一般飲食
一般飲食
・
43
一般飲食
一般飲食
一般飲食
風俗
・
・
・
44
娯楽
娯楽
45
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
・
・
・
・
・
事務所
・
娯楽
46
広告
・
・
風俗
・
47
一般飲食
風俗
・
宿泊
宿泊
48
広告
娯楽
風俗
・
娯楽
49
・
娯楽
風俗
娯楽
遊興飲食
50
一般飲食
遊興飲食
娯楽
遊興飲食
娯楽
・
娯楽
一般飲食
一般飲食
遊興飲食
風俗
・
53
54
55
56
10F
洗濯・理容・ 洗濯・理容・ 洗濯・理容・
娯楽
52
9F
・
41
51
8F
・
風俗
一般飲食
一般飲食
一般飲食
医療
一般飲食
・
・
遊興飲食
・
遊興飲食
一般飲食
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
風俗
一般飲食
貸金、投資(非預
飲食料品小売
金信用機関)
一般飲食
一般飲食
娯楽
娯楽
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
一般飲食
娯楽
遊興飲食
一般飲食
風俗
風俗
・
・
・
風俗
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
・
その他生活関
連サービス
57
広告
・
風俗
・
58
娯楽
遊興飲食
娯楽
一般飲食
59
一般飲食
・
・
・
・
60
一般飲食
遊興飲食
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
娯楽
・
61
一般飲食
遊興飲食
スタジオ17
・
62
娯楽
・
風俗
風俗
・
・
遊興飲食
47
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-8.各建物の階ごとの業種分布現況 3-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
業
種
番号
1F
2F
3F
4F
5F
6F
7F
8F
63
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
・
64
一般飲食
・
娯楽
風俗
風俗
・
・
65
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
娯楽
・
66
娯楽
娯楽
娯楽
67
広告
・
・
・
・
娯楽
その他の小売
68
娯楽
9F
10F
一般飲食
69
娯楽
娯楽
娯楽
・
・
70
一般飲食
・
風俗
風俗
風俗
・
71
一般飲食
一般飲食
72
娯楽
娯楽
風俗
・
・
・
・
・
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
一般飲食
一般飲食
事務所
・
・
・
遊興飲食
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
・
娯楽
一般飲食
73
74
75 飲食料品小売
76
一般飲食
77 その他の小売
78
娯楽
79
・
・
娯楽
一般飲食
・
・
・
・
・
80
広告
遊興飲食
・
・
・
・
風俗
・
・
81 その他の小売
娯楽
・
82
娯楽
娯楽
・
娯楽
・
・
風俗
・
娯楽
・
娯楽
・
遊興飲食
娯楽
風俗
風俗
娯楽
83 飲食料品小売
84 飲食料品小売
・
遊興飲食
風俗
遊興飲食
貸金、投資(非預
金信用機関)
85
娯楽
風俗
・
事務所
86
一般飲食
一般飲食
風俗
娯楽
87
一般飲食
一般飲食
・
・
88
広告
風俗
・
・
・
89
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
90
風俗
風俗
・
・
91
風俗
・
92
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
娯楽
その他の小売
一般飲食
風俗
娯楽
不動産賃貸・管理
広告
・
93
94
娯楽
その他の小売
95 その他の小売
洗濯・理容・
美容・浴場
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
・
・
娯楽
その他の教
その他の事
96
一般飲食
・
97
一般飲食
・
98 その他の小売
・
99
一般飲食
一般飲食
100
広告
遊興飲食
遊興飲食
・
101
広告
・
娯楽
娯楽
48
遊興飲食
育、学習支援 業サービス
娯楽
風俗
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-9.各建物の階ごとの業種分布現況 4-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
番号
102
業
1F
2F
飲食料品小売
・
4F
一般飲食
娯楽
・
娯楽
風俗
種
5F
6F
7F
8F
・
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
9F
10F
広告
一般飲食
103
3F
その他生活関
連サービス
一般飲食
104
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
・
105
娯楽
宿泊
宿泊
宿泊
宿泊
106
一般飲食
遊興飲食
・
・
107
一般飲食
・
108
一般飲食
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
109 飲食料品小売
娯楽
事務所
事務所
110
・
風俗
風俗
・
風俗
・
・
風俗
111
・
遊興飲食
洗濯・理容・ 洗濯・理容・
美容・浴場
美容・浴場
・
112
113
114
一般飲食
・
・
・
・
・
遊興飲食
遊興飲食
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
不動産賃貸・管理
115
116
117
118
一般飲食
その他生活関
連サービス
一般飲食
・
・
・
娯楽
一般飲食
風俗
娯楽
・
遊興飲食
・
119 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売 各種商品小売
風俗
風俗
風俗
風俗
風俗
風俗
121
宿泊
宿泊
宿泊
122
風俗
・
・
120
123
124
洗濯・理容・ 洗濯・理容・ 洗濯・理容・
美容・浴場
美容・浴場
美容・浴場
・
宿泊
宿泊
宿泊
・
125
娯楽
・
・
・
・
126
一般飲食
遊興飲食
医療
・
・
127 飲食料品小売
遊興飲食
遊興飲食
128
一般飲食
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
129
貸金、投資(非預
娯楽
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
ギャラリー
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
ギャラリー
金信用機関)
一般飲食
事務所
一般飲食
130
情報
情報
娯楽
娯楽
娯楽
131
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
一般飲食
132
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
133
・
・
遊興飲食
一般飲食
遊興飲食
Silk Road
娯楽
医療
医療
・
49
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-10.各建物の階ごとの業種分布現況 5-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
業
種
番号
1F
2F
3F
4F
5F
6F
134
娯楽
娯楽
娯楽
・
・
・
135
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
136
娯楽
・
遊興飲食
・
一般飲食
娯楽
遊興飲食
その他の小売
遊興飲食
医療
・
地方公務
地方公務
地方公務
137
7F
8F
映像・音声・文
字情報制作
その他の洗濯・理
容・美容・浴場
風俗
138
139
140
娯楽
織物・衣服・身
の回り品小売
・
・
遊興飲食
・
141
広告
遊興飲食
遊興飲食
142
地方公務
地方公務
地方公務
・
地方公務
洗濯・理容・
143
娯楽
一般飲食
娯楽
144
広告
・
風俗
風俗
145
一般飲食
一般飲食
・
・
遊興飲食
風俗
風俗
・
風俗
遊興飲食
・
146
147
148
149
150
美容・浴場
広告
一般飲食
医療
飲食料品小売
153
娯楽
・
遊興飲食
・
遊興飲食
遊興飲食
娯楽
広告
遊興飲食
151
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
152
153
一般飲食
飲食料品小売
148
遊興飲食
・
一般飲食
一般飲食
一般飲食
154
娯楽
風俗
娯楽
155
一般飲食
一般飲食
一般飲食
一般飲食
156
一般飲食
一般飲食
一般飲食
一般飲食
157 その他の小売
遊興飲食
遊興飲食
・
158
一般飲食
一般飲食
・
・
一般飲食
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
159
遊興飲食
遊興飲食
風俗
160
50
一般飲食
一般飲食
一般飲食
地方公務
9F
10F
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-11.各建物の階ごとの業種分布現況 6-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
業
番号
1F
2F
161
一般飲食
一般飲食
3F
4F
娯楽
・
6F
7F
風俗
事務所
遊興飲食
事務所
162
娯楽
娯楽
163
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
・
・
・
・
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
・
・
遊興飲食
事務所
164
8F
9F
10F
娯楽
一般飲食
165
種
5F
娯楽
遊興飲食
不動産賃貸・管理 遊興飲食
166
物品賃貸
一般飲食
167
168
169
一般飲食
・
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
遊興飲食
風俗
工事中
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
広告
遊興飲食
遊興飲食
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
不動産賃貸・管理 遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
170
その他の洗濯・理
容・美容・浴場
事務所
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
171
宿泊
宿泊
172
風俗
一般飲食
173
宿泊
宿泊
風俗
事務所
174
175
176
177
宿泊
宿泊
宿泊
遊興飲食
・
宿泊
・
・
・
遊興飲食
風俗
洗濯・理容・
一般飲食
一般飲食
一般飲食
一般飲食
一般飲食
一般飲食
その他の小売
一般飲食
娯楽
遊興飲食
一般飲食
遊興飲食
美容・浴場
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
178 飲食料品小売
179
一般飲食
180 飲食料品小売
181
一般飲食
・
・
風俗
風俗
・
・
遊興飲食
・
事務所
・
遊興飲食
51
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-12.各建物の階ごとの業種分布現況 7-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
業
番号
182
1F
家具・じゅう器・
機械器具小売
2F
3F
4F
5F
種
6F
7F
遊興飲食
遊興飲食
事務所
・
・
・
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
・
183
184
185
広告
娯楽
186
一般飲食
一般飲食
187
・
・
医療
・
188
娯楽
・
・
・
189
・
風俗
・
190
風俗
・
・
191
広告
風俗
遊興飲食
・
192
広告
遊興飲食
遊興飲食
・
193
娯楽
・
・
・
194
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
195
一般飲食
一般飲食
一般飲食
196
一般飲食
・
197
一般飲食
一般飲食
・
198
風俗
・
・
・
娯楽
風俗
・
遊興飲食
遊興飲食
娯楽
遊興飲食
・
専門サービス
・
199
200
201
202
203
遊興飲食
204
遊興飲食
・
205
・
・
・
遊興飲食
206
娯楽
207
娯楽
娯楽
娯楽
一般飲食
一般飲食
遊興飲食
飲食料品小売
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
不動産賃貸・管理 遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
不動産賃貸・管理
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
事務所
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
208 飲食料品小売
遊興飲食
209
52
風俗
遊興飲食
風俗
・
遊興飲食
事務所
・
8F
9F
10F
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-13.各建物の階ごとの業種分布現況 8-8(2005年1月9日現在、建物番号は図3-1の建物番号と一致)
建物
番号
業
2F
3F
4F
5F
6F
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
事務所
遊興飲食
事務所
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
一般飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
遊興飲食
織物・衣服・身
の回り品小売
210
種
1F
7F
8F
9F
10F
遊興飲食
遊興飲食
211
織物・衣服・身 織物・衣服・身
の回り品小売 の回り品小売
212
娯楽
・
213
遊興飲食
遊興飲食
214
一般飲食
・
・
・
・
・
・
215 その他の小売
娯楽
遊興飲食
遊興飲食
風俗
遊興飲食
216 その他の小売
風俗
風俗
風俗
・
遊興飲食
風俗
風俗
娯楽
娯楽
遊興飲食
217
一般飲食
一般飲食
・
・
218
広告
風俗
・
・
遊興飲食
219
・
風俗
娯楽
娯楽
娯楽
・
・
一般飲食
遊興飲食
一般飲食
220
一般飲食
その他の小売
その他生活関
連サービス
221
222
娯楽
娯楽
一般飲食
一般飲食
娯楽
・
遊興飲食
遊興飲食
ATM
娯楽
娯楽
・
・
娯楽
娯楽
娯楽
・
遊興飲食
一般飲食
一般飲食
223
娯楽
・
53
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
3-3
歌舞伎町の都市照明環境
3-3-1 照度の現況
17街路全体の平均照度は259.6lxで、JISが定めている繁華街の照度範囲注3-8)を2.5倍強上
回っていることが分かった。しかし、最高照度を表したNS-2街路を除いた平均照度は
175.1lxとなり、1つの街路による平均照度への影響が大きかった。街路ごとの平均照度は、
JISの繁華街の照度範囲内にある街路が6街路で、セントラルロード(NS-4)、コマスタジア
ム前の街路(EW-4)など、主にコマスタジアム周辺街路(NS-5,6,9、EW-5)であった。範囲を
上回る街路が10箇所で(表3-14,3-15参照)、特に東西につながる街路の中、幅が狭くて距
離が100m以内の街路の場合はすべてが上回っていた。範囲を下回る街路は1箇所(NS-7)の
みであったが、NS-7街路も一般商店街の照度範囲注3-9)は満たしており、歌舞伎町では必要
な照度が確保されていると判断される(図3-4参照)。
54
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
図 3-4.歌舞伎町の照度分布(調査日時:2004年12月26日,18:00-21:30)
55
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-14.歌舞伎町1丁目の照度の現況 1-2 (2004年12月26日)
測定
距離
(m)
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100
105
110
115
120
125
130
135
140
145
150
155
160
165
170
175
180
185
190
195
200
205
210
215
220
225
230
235
240
平均
照度
56
南北方向(図3のNS街路)の街路ごとの照度
(測定方向:南→北、単位:lx)
NS-1
NS-2
NS-3
NS-4
NS-5
NS-6
NS-7
NS-8
NS-9
NS-10
1152
218
80.2
102.3
130.8
154.5
357.8
1103
1430
1097
550.2
137.6
84.8
106.6
76.1
53.5
65.5
109.9
131.8
150.1
144.9
114.3
106.2
111.7
120.9
140.4
210.5
566.8
216.7
122.6
396.8
1533
2658
1745
1275
1219
1760
1165
1751
1721
1896
2177
1792
1582
283.6
279
49.2
62.3
99.3
177.4
142.7
101.9
105.8
177.5
113.5
70.3
135.2
166
83.8
105.4
100.7
167.6
185.3
181.3
141.1
128.8
127.7
197.2
168.5
152.6
144.8
145.9
164.4
293.6
427.4
403.5
371.3
245.9
118.8
61.7
80.8
124.3
149.6
169.8
173.2
163.3
165
115.7
99.9
102.9
60.9
28.1
39.6
102
127.4
86.1
117.5
86.4
98.7
86.1
126.7
114.9
127.5
77.8
81.2
114.4
80.1
89.9
70.8
105.1
80.6
133.6
106.4
79.7
68.7
51.5
45.7
49.9
61.9
44.4
43.8
35.1
45
38.3
67.8
67.1
47.1
95.9
145.6
123.1
138.4
93.7
88.1
115.6
167.7
77.7
68
59.2
83.7
39
53.8
79
73.9
46.1
59.9
48
77.9
106.2
120
38.2
22.5
7.6
5.9
14.5
55.3
34.9
35.1
24
14.6
15.2
5.4
37.1
8
12.5
54.8
533.1
171.2
49.4
69.9
109.1
112.7
219.8
213.5
259.1
121.8
90.8
113.1
194.5
163.8
92.9
75.9
144.7
156
143.7
74.4
110.3
126.7
169.6
166.4
156.6
154.6
188
100.7
82.1
84
39.5
57.6
70.3
107.6
63.7
128.2
57.8
51.9
41.8
69.6
66
10.3
64.1
51
160.6
129.5
69.1
21
117
79.2
70.7
16
141
52.3
12.1
15.1
100.3
10
3.3
3.8
16.1
87.5
17.6
326.2
231.3
93.4
82.1
28.2
26.3
59.7
152.7
134.2
116.1
106
83
120.2
61.6
50.3
120.4
98.5
90.8
88.6
65
43.8
45.4
114.9
24.3
44
117.6
151.8
122.8
187.4
96.5
115.5
80.9
112.1
170.6
126
166.7
52.8
138.9
80.8
307.9
1611.3
151.5
91.2
82.2
71.6
24.1
129.9
57.6
105.8
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-15.歌舞伎町1丁目の照度の現況 2-2 (2004年12月26日)
測定
距離
(m)
東西方向(図3のEW街路)の街路ごとの照度
EW-1a
EW-1b
EW-2
(測定方向:西→東、単位:lx)
EW-3
EW-4
EW-5
EW-6
5
84.7
106.3
1940
1309
171.3
102.5
112.8
10
63.8
65.4
1551
769.4
119.7
44.5
73.7
15
57.8
156.6
824.4
1936
118.4
36.8
67.6
20
62
94.2
334.3
263.4
107.8
29.3
45.3
25
69.6
61.1
142.8
1062
91.5
65.4
41.8
30
76.7
277.3
219.4
493.2
63.3
101.1
135.7
35
105.4
919.9
224.8
1196
77.3
77.8
161.7
40
137
224.3
208.1
544.4
106.8
76.7
152.9
45
157.9
73.4
207
215.5
83.6
108.1
199.2
50
170.2
67.5
192
258.7
69.7
75.9
148.6
55
166.8
60.2
174.3
116.8
39
102
94.2
60
188.4
81.1
153.4
179.6
28.5
90.9
71.2
30.4
92.9
47.9
70
35
56.5
107.3
75
40.3
43.1
77.2
80
66.5
43.2
199.7
85
117.3
64
90
107.8
75.2
65
95
89.7
37.5
100
88
66.4
105
43.6
120.4
110
27.6
191.6
115
35.4
200
120
81.2
85.8
125
40.8
92.1
130
66.3
55.7
135
115.1
171.1
140
236.4
47.8
145
87.6
20.8
150
113.1
36.3
155
118.5
140.2
160
153.7
108.3
165
88.3
91
170
71.5
86.7
175
50.6
103.2
180
53
64.3
84.3
83.5
平均
照度
111.7
182.2
514.3
695.3
108.6
57
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
3-3-2 色温度の現況
照度とともに色温度を計測した。17街路全体の平均色温度は4170Kで、この数値は一般
白色蛍光灯注3-10)の色温度とほぼ一致する値である。街路ごとの平均色温度は、最低値を表
したあずま通り(NS-10、3132K)を除く16街路が白色系の光を発する範囲である3000半ばか
ら5000K代に分布している(表3-16参照)。
表 3-16. 各街路ごとの平均照度と平均色温度
南北
東西
平均照度(lx)
平均色温度(K)
EW-1a
111.7
4647
EW-1b
182.2
4643
4249
EW-2
514.3
4102
91.2
3943
EW-3
695.3
4126
82.2
4381
EW-4
84.3
4118
NS-6
71.6
4334
EW-5
83.5
4057
NS-7
24.1
4220
EW-6
108.6
4162
NS-8
129.9
4843
−
−
−
NS-9
57.6
4176
−
−
−
NS-10
105.8
3132
−
−
−
平均照度(lx)
平均色温度(K)
NS-1
307.9
3417
NS-2
1611.3
4344
NS-3
151.5
NS-4
NS-5
街路
街路
一般的に色温度は3500Kを境にこれ以下になるとイメージに対する色温度の影響が高く
なるとされている注3-11)。この観点からみると、調査範囲の1,970m中、1,780mにあたる街路
が白色系の光を発する色温度を表し、昼間の景観とほぼ同様に認知できる照明環境である。
しかしながら色温度は人の心理や空間の雰囲気に影響与える注3-12)ため、多様な色温度から
なる照明環境は、昼間とは異なる界隈夜景の創出の可能性を有していると考えられる(図
3-5参照)。
58
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
図 3-5.歌舞伎町の色温度分布 (調査日時:2004年12月26日,18:00-21:30)
59
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
表 3-17.歌舞伎町1丁目の色温度の現況 1-2 (2004年12月26日)
測定
距離
(m)
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100
105
110
115
120
125
130
135
140
145
150
155
160
165
170
175
180
185
190
195
200
205
210
215
220
225
230
235
240
平均
色温度
60
南北方向(図3のNS街路)の街路ごとの色温度
(測定方向:南→北、単位:K)
NS-1
NS-2
NS-3
NS-4
NS-5
NS-6
NS-7
NS-8
NS-9
NS-10
4356
3992
3582
3563
3269
3733
3338
4246
4226
4122
4025
3893
4032
4100
4303
3251
2809
2947
2835
3074
2898
2722
2728
2587
2422
2578
2873
3378
3014
2981
4049
4371
4581
4100
4311
4404
3921
4389
4111
4151
4209
4442
4760
4737
4335
4340
3794
4162
4407
3598
3089
3003
3399
3739
3914
3682
3795
3832
3635
3753
3796
3591
3581
3882
3692
3674
3762
3742
3873
4140
4081
4072
4381
5013
5467
5598
5655
5395
5219
5124
5149
5141
5168
5297
5388
5330
5197
4550
3992
3555
3419
3897
3967
3829
3900
3641
3860
4039
3986
4013
4086
4048
3932
3645
3641
3862
3956
4182
3970
3919
3881
4261
3987
3641
3897
3985
4135
4180
4007
3973
3950
3787
3747
3764
4251
4691
4450
4558
4323
4233
4274
4542
4757
4918
4929
4881
4532
4682
4563
3618
3886
3107
3011
4482
5318
5102
4915
5205
4465
5259
5247
5102
4650
2605
3992
4051
3924
3862
2852
3198
4294
3983
4598
5060
4843
4269
4449
4581
5264
4995
4775
5078
4698
5054
4411
5076
5292
4937
5079
5020
4743
5051
4528
4855
4583
4747
5017
5393
5003
4995
4785
5237
4547
4622
4487
3974
4507
4928
5292
5192
5275
4492
4887
4757
3173
2379
2742
5417
5393
2666
2331
3292
2695
3057
2348
2694
2395
2336
4167
5093
3718
4641
4056
2680
3011
4019
4996
5503
5315
5143
5363
5236
4613
4401
2346
2495
2408
2583
2469
2883
2498
2562
2331
3417
4344
4249
3943
4381
4334
4220
4843
4176
4278
3857
3678
2378
3329
2706
3842
4440
3190
2744
2915
2356
2765
3596
3114
4350
4061
4628
4604
4522
3132
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
表 3-18.歌舞伎町1丁目の色温度の現況 2-2 (2004年12月26日)
測定
距離
(m)
東西方向(図3のEW街路)の街路ごとの色温度
(測定方向:西→東、単位:K)
EW-1a
EW-1b
EW-2
EW-3
EW-4
EW-5
EW-6
5
3237
2935
4362
4795
4138
3811
3944
10
3952
3751
4315
4388
4067
4015
3647
15
4378
3806
4293
4521
4015
4485
3565
20
4768
3920
4193
3997
3788
4381
3962
25
4907
4306
3568
4701
3485
4989
3961
30
4903
5089
4306
4114
3466
5199
4183
35
4751
5870
4649
3720
3800
4406
4812
40
4715
5468
4259
3678
4066
4015
4763
45
4822
5338
3778
4313
4205
4238
4573
50
4858
5089
3769
4038
3912
4106
4704
55
5129
4987
3576
3697
2888
3938
3859
60
5345
5158
4157
3547
3408
3074
3984
65
3764
2802
3777
70
3771
3051
3935
75
4006
3833
4229
80
4038
3623
4700
85
4040
3982
90
4433
4564
95
5193
4012
100
5511
3431
105
5616
4214
110
5297
3722
115
4017
3847
120
4746
4325
125
4175
3746
130
4236
4219
135
4773
5256
140
4765
4384
145
4884
4463
150
4549
4557
155
3736
4700
160
3130
4273
165
3769
2821
170
3844
3972
175
3266
4367
180
3441
3237
4118
4057
平均
色温度
4647
4643
4102
4126
4162
61
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
3-3-3 照度と色温度の分散具合
街路照明の照度と色温度の平均と標準偏差を用い、それぞれの分散具合を変化率注3-13)か
ら分析した。
平均照度に対する各街路の標準偏差は390.5であった。これを基に平均照度259.6lxに対
する街路照度の変化率を求めてみると150%になる。照度と同様に平均色温度4170Kに対す
る街路色温度の変化率を求めてみると10%になり、色温度が照度より平均値に対する分散
具合が少ないことが分かった。
62
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
3-4
小結
界隈夜景の分析として歌舞伎町の照明環境を調査した結果、照度はJISの繁華街基準を
2.5倍強上回り、充分な明るさが確保されていることが分かった。そして、照度と色温度
それぞれの平均値に対する変化率をみると、照度より色温度が平均値に対して変化率が少
なく、一般白色蛍光灯の色温度(4200K)とほぼ一致する値に収まっていることが分かった。
この色温度の値は昼間の景観をそのまま認知できるイメージの忠実性には良いが、照明を
活かした界隈夜景の演出のためには色温度のバリエーションを考えた照明手法を使うこと
が効果的であると言える。
そして、これまで夜間照明の均一化の要因として照度が問題化されてきたが、本研究の
結果からみると、すこし異なると考えられる。住宅街のような、公共照明である街灯が都
市照明の主な役割を果しているところは照度によるコントロールがまだ有効であると考え
れる。
一方で、多くの人が多様なアクティビティのもとに空間を共有し、様々な照明の集積が
見られる都心部の繁華街のような界隈夜景においては、一定の面積にあまりにも多い数の
照明が集まっているため、基本的には前述したように明るさ自体は充分である。しかし、
照明器具の集積の状態による照度の変化は見られるものの、分析結果からも分かるように
照明器具が似通った色温度値の照明を使っているため、色温度による均一化が都心部の繁
華街において起きていることが分かった。
63
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
<注釈>
注3-1)商業地域は大きく2つに分けられる。業務施設が集中しているオフィス街、商業施設が集
中している繁華街である。しかし、オフィス街は同種のビル群が集まっているからある程
度一律な雰囲気を持ち、利用者も限定されていると判断し、本研究では繁華街を扱った。
注3-2)参考文献11のp9には「道路照明施設などでは道路の長さ方向において測定距離は5m前後
の間隔で測定する」と書かれている。
注3-3)測定距離把握の予備調査は2004年11月13日、19:00-20:30(土)に行った。
注3-4)参考文献15のp311によると鉛直面照度は空間の明るさ感に大きな影響を及ぼすので、本
研究では人間の目の高さと似通った鉛直面照度の高さ1.5mにしたがって測定を行なった。
注3-5)現地調査は基本的に昼間に行われたが、業種を把握する際には夜の営業有無の確認のた
め、5回目は夜間に照明環境調査と伴い、確認調査を行った(注表3-1参照)。
注表 3-1. 現況調査日時のデータ
建物階数の調査日
建物の業種の調査日
1
04.12.02,14:00-17:00
―
2
―
04.12.03,14:00-18:00
3
―
04.12.05,13:30-15:30
4
―
04.12.10,12:00-15:30
5
―
05.1.9,18:00-22:00
注3-6)本研究の対象地にある建築には合計693店舗があるが、角地にある建物で一部が調査範囲
外のもの、建築の裏が調査範囲に面しているもの(図1の建物番号:1,38,127,128,129,130,
175,208)の中で調査範囲外の店舗47箇所を除いた646店舗を調査範囲にした。また、店舗の
数え方は同じ店舗が連続しいくつかの階を占める場合、1つの店舗として捉え扱った。
注3-7)本研究で使った業種分類の基準は以下のようである。
①2002年10月から適用されている統計局の日本標準産業分類の中分類を主な基準とする。
(一般飲食店、遊興飲食店、娯楽業)
②同一業種の数が4-20未満の業種はまとめて、大分類に従う(注表3-2参照)。
③数が3以下の業種(貸金、投資(非預金信用機関)、情報、映像・音声・文字情報制作、その
他の教育、学習支援、地方公務)、事務所などはその他に分類する。
④風俗業は日本標準産業分類の遊興飲食店・娯楽業の定義や種類に定められていない店で、
アルコールを含まず遊興サービスを提供する店を本研究では風俗業として扱った。
64
都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察・・・第3章
注表 3-2.大分類された中分類の業種
大分類
小売業
サービス業
宿泊業
不動産業
医療・福祉業
中分類
各種商品小売、飲食料品小売、家具・じゅう器・機械器具小売、織物・衣服・
身の回り品小売、その他の小売
広告、専門サービス、洗濯・理容・美容・浴場、その他の洗濯・理容・美
容・浴場、物品賃貸、その他生活関連サービス、その他の事業サービス
宿泊
不動産賃貸・管理
医療
注3-8)地上商店街(繁華)の照度範囲は30-100lxである。
注3-9)地上商店街(一般)の照度範囲は10-50lxである。
注3-10)一般白色蛍光灯の色温度は4200Kで、現在最もよく使われてランプで、われわれが日常
生活の中よく見る長い棒あるいは円形蛍光灯である。
注3-11)参考文献14のp41には「色温度イメージが忠実性と和やかさの交差現像の起こるおよそ
3500Kを境に、それ以上になると・・・自然光で見る色に似て忠実性が高く、3500K以下の光源
は・・・自然光による色の見え方とは異なる」と書かれている。
注3-12)光源の発する光が青から白にかけて色温度が高かくなると緊張感が、色温度が低くなる
と安らいだ気分が増加する(参考文献12のp188)。そして、照明効果の心理実験の1つの例と
して、一般白色蛍光灯のみで照明された空間に白熱灯を1つ加えることで空間のイメージが
良くなるといった結果が得られている(参考文献14のpp34-35)。
注3-13)ここで扱った変化率は標準偏差値を平均値で割ったもので、式で表すと「変化率=(標
準偏差値/平均値)X100」になる。
65
第3章・・・都・市・照・明・に・お・け・る・色・温・度・に・関・す・る・考・察
<参考文献・資料>
文1)李永桓、後藤春彦、李彰浩、福武洋之: 繁華街の各種照明が夜間景観に与える影響に関す
る研-新宿区歌舞伎町1丁目を事例として、 日本建築学会計画系論文集 No598、 pp.101108、2005.12
文2)吉沢望、石原従道、平手小太郎:夜間における都市公共空間の景観印象評価に関する研究、
日本建築学会計画系論文集 No550、pp.15-22、2001.12
文3)小林茂雄、海野宏樹、中村芳樹:夜間商店街の利用目的を考慮した照明構成要素の心理的
効果、日本建築学会計画系論文集 No524、pp.15-20、1999.10
文4)安藤泰也、横内憲久、桜井慎一:ウォーターフロントの夜間景観に関する研究-対岸景の評
価と光の量との関連性について、日本建築学会計画系論文集 No516、pp.295-301、1999.02
文5)藤田誠、宮腰和弘:都市空間における橋のライトアップに関する研究-長岡市長生橋をケー
ススタディとして、日本都市計画学会学術研究論文集、pp.439-444、1989
文6)統計局ホームページ:http://www.stat.go.jp
文7)社団法人 照明学会:照明ハンドブック第2版、オーム社、2003
文8)日本規格協会:JIS Z 9111 道路照明基準、1988
文9)日本規格協会:JIS C 7612 照度測定方法、1985
文10)日本規格協会:JIS Z 9110 照明基準、1979
文11)社団法人 照明学会 照明用語事典、オーム社、1990
文12)社団法人 日本道路協会:道路照明施設設置基準、丸善、1981
66
第4章
4-1
はじめに••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••069
4-1-1
4-1-2
4-1-3
4-1-4
4-2
歌舞伎町の1次照明(街灯)環境•••••••••••••••••••••••••071
4-2-1
4-2-2
4-2-3
4-2-4
4-2-5
4-3
本章の目的
本章で用いる用語
対象地の選定
分析の方法
調査概要
1次照明(街灯)の現況
全体的な傾向
街路ごとの1次照明(街灯)の照度と色温度
光の属性による1次照明(街灯)の分類
歌舞伎町の2次照明(店舗)環境•••••••••••••••••••••••••077
4-3-1
4-3-2
4-3-3
4-3-4
調査概要
1階の業種構成
全体的な傾向
街路ごとの2次照明(店舗)の照度と色温度
4-4
都市照明の対する1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の影響••081
4-5
2次照明(店舗)における業種と入口照明•••••••••••••••••084
4-5-1
4-5-2
4-5-3
業種ごとの照明の照度と色温度
業種ごとの広告照明と2次照明(店舗)との関係
入口照明と2次照明(店舗)との関係
4-6
照度と色温度の印象評価••••••••••••••••••••••••••••••088
4-7
小結••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••094
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
4-1
はじめに
4-1-1 本章の目的
第4章は界隈夜景から夜間景観の特性を解明する第2段階として、様々な照明の集合によ
り形成されている歌舞伎町の照明環境をより詳細に分析する。界隈夜景の様々な照明の種
類を本章では大きく2つの属性に分ける。1つは街灯のような公共の照明、もう1つが店舗
照明のような民間の照明である。本章では公共の照明を1次照明と民間の照明を2次照明と
して定義する。
この1、2次照明の照度・色温度の分析から街路照明に対する1次照明と2次照明の影響を
明らかにする。その後、民間の照明である2次照明においては業種ごとの照度と色温度の
分布及び、広告照明と入口照明が2次照明に与える影響を明らかにする。
そして、最後にこの1次照明と2次照明、照度と色温度の様々な関係から形成されている
界隈夜景に対して人はどんな印象を持っているかを明らかにする。そこで、界隈夜景にお
いて重要なキーワードであった照明の色温度が人の印象に与える影響を把握する。
4-1-2 本章で用いる用語
本章では夜間の繁華街の照明環境を以下の5つの種類に区分し、研究を進める。
①1次照明
街路空間を照らすことを主たる目的とする照明を意味する。本章では公共の照明であ
る街灯を指す。
②2次照明
主目的とは異なるが結果的に街路空間に影響を与えている照明を意味する。本章では
民間の照明の中、店舗照明にあたる広告照明と入口照明を指す。
③広告照明
1階の店舗のショーウィンドウや店舗内部から漏れる光、店舗に付設されている看板
の照明を指す。
69
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
④入口照明
広告照明ではなく、2階以上の階や地階につながる階段室の1階入口から漏れる光を指
す。
⑤都市照明
上記の1次照明と2次照明を総括した全ての照明を指す。
4-1-3 対象地の選定
1次照明、2次照明に関する分析においては3章と同様に歌舞伎町1丁目を対象とする。そ
して、人の印象評価実験は歌舞伎町1丁目も含め、JR新宿駅東口周辺地域を対象に行う。
4-1-4 分析の方法
1次照明(街灯)の照度、色温度について調査・分析し、人間の認知と関係がある照度レ
ベル、色温度の感覚量を用い、1次照明(街灯)の特性を把握する(4-2)。同様に2次照明(店
舗)の特性を把握する(4-3、4-4、4-5)。
都市照明に対して1次照明(街灯)と2次照明(店舗)が与える影響要因は個々の照明光の照
射範囲、それぞれの測定ポイント、街路幅員など様々なものがあげられるが、全体的な照
明計画がないまま形成されてきた歌舞伎町の場合は光源の個々のデータ収集は難しく、調
査の限界がある。
そこで、本研究では個々の光源の分析よりも光源が作り出している全体の照明環境を照
度と色温度という尺度を用い、都市照明と1次照明(街灯)、2次照明(店舗)との関係を明ら
かにする。
70
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
4-2
歌舞伎町の1次照明(街灯)環境
4-2-1 調査概要
歌舞伎町には様々な照明が混在しているため、1次照明(街灯)のみの照度と色温度を測
ることは現実的に不可能である。そこで、本章では1次照明(街灯)の光源の直下に立ち、3
章と同様に高さ1.5mの地点で測定したデータを1次照明(街灯)の照度と色温度として扱う
ものとする。
4-2-2 1次照明(街灯)の現況
調査範囲内には123個の1次照明(街灯)が分布している。これを形態ごとに分類すると11
タイプとその他注4-1)に分けられる(写真4-1参照)。また、光源の種類はタイプ2の1ヶ所をの
ぞき、同じタイプの1次照明(街灯)ごとに同じものが使用されていた。この11タイプの1次
照明(街灯)の配置間隔は一定ではなく、建築と建築の間、ある程度の間隔を保ちながら設
置されている。
タイプ1(11)
タイプ2(7)
タイプ3(2)
タイプ4(16)
タイプ5(2)
タイプ6(18)
タイプ7(10)
NS-1・2,EW-3
NS-1,EW-2
EW-1a,b
NS-3
EW-4
NS-4
EW-6
タイプ8(7)
タイプ9(20)
タイプ10(10)
タイプ11(14)
NS-5,NS-7
NS-8,EW-4
NS-9,EW-4・5
NS-10
その他1(2)・2(3)・3(1)、左→右
歌舞伎町公園
区役所
建物164
写真 4-1.歌舞伎町に分布している1次照明(街灯)の類型(( )は数を示す)
※写真の右下にあるマークが下の図に表示されている各1次照明(街灯)の記号を表す。
※グレー背景の上に書かれたのが1次照明(街灯)が分布している街路や場所である。
71
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
さらに、設置主体の違いから1つの街路に複数の異なるタイプが存在している場合も多
い。17街路中、11街路でこうした傾向が見られる。連続する配置によって景観上の統一感
をつくる可能性を有するはずの1次照明(街灯)が、逆に街路景観を混乱しているように見
せる要因となっていると考えられる。
4-2-3 全体的な傾向
123個の1次照明(街灯)すべてに対する平均照度と平均色温度を求めてみると、照度は
278.9lx、色温度は4247Kであった。これは3章の都市照明の結果(平均照度:259.6lx、平均
色温度:4170K)に近い値を表している。
4-2-4 街路ごとの1次照明(街灯)の照度と色温度
1次照明(街灯)による街路ごとの照度、色温度を3章の都市照明の結果と比較する。
その際に照度に関しては、6段階の照度レベル(以下、照度レベル)を用いて分析を行っ
た(表4-1参照)。
表 4-1. 6段階の照度レベル
照度レベル
72
照度範囲
注4-2)
特性
①
1lx以上-5lx未満
動きが識別できる
②
5lx以上-20lx未満
人の存在が確認できる
③
20lx以上-75lx未満
視覚情報が確かになる
④
75lx以上-150lx未満
安心して行動できる
⑤
150lx以上-300lx未満
手元まで明るい
⑥
300lx以上-
精密に観察できる
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
また、色温度に関しては、感覚量を用いて分析を行った。
色温度の感覚量は下の式のようにMK-1で表すことが望ましいとされている。
1,000,000/色温度(K)=MK-1
一般的に5MK-1以内の差なら光色の違いはそれほど意識されないが、40-50MK-1以上の差が
あると、かなり明確にその違いを認識することができる注4-3)。
上記の設定に従い都市照明と1次照明(街灯)の関係を見てみると、 照度は3章の都市照
明の照度データと同照度レベルにある街路が9街路(NS-1,2,3,5,7,10、EW-1a,2,3)存在し
ていた(表4-2参照)。
表 4-2. 街路ごとの都市照明と1次照明(街灯)の平均照度、平均色温度、感覚量
街路全体の
街路
平均照度
(lx)
1次照明(街灯)のみの
平均照度(lx)
街路全体の
平均色温度(K)
[感覚量(MK-1)]
1次照明(街灯)のみの平均色温度(K)
[感覚量(MK-1)]
NS-1
307.9
512.9
3417 [292.7]
4147 [241.1]
NS-2
1611.3
1324.5
4344 [230.2]
4458 [224.3]
NS-3
151.5
152.3
4249 [235.3]
3824 [261.5]
NS-4
91.2
201.6
3943 [253.6]
4120 [242.7]
NS-5
82.2
127.4
4381 [228.3]
4259 [234.8]
NS-6
71.6
129.1
4334 [230.7]
4574 [218.6]
NS-7
24.1
47.1
4220 [237]
4326 [231.2]
NS-8
129.9
228
4843 [206.5]
5006 [199.8]
NS-9
57.6
86
4176 [239.5]
4357 [229.5]
NS-10
105.8
120.6
3132 [320.4]
2849 [351]
EW-1a
111.7
EW-1b
182.2
EW-2
514.3
387.6
4102 [243.8]
4026 [248.4]
EW-3
695.3
492.6
4126 [242.4]
4061 [246.2]
EW-4
84.3
165.9
4118 [242.8]
4664 [214.4]
EW-5
83.5
160.4
4057 [246.5]
4015 [249.1]
EW-6
108.6
183.2
4162 [240.3]
4134 [241.9]
144.4
4647 [215.2]
4643 [215.4]
5137 [194.7]
73
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
そのうちレベル⑥にあたる街路が4街路(NS-1,2、EW-2,3)で最も多く、次がレベル④(3
街路)、②⑤(各1街路)の順である。感覚量を用いた色温度では人が明確に差を感じられる
40MK-1以上の差を表した街路はNS-1街路しかなかった。それ以外の16街路はその差を感じ
にくい40MK-1未満に分布しでおり、特に距離が短いEW方向の街路の中では感覚量の差が5MK1
以内の街路が4街路存在していた(EW-2,3,5,6、表4-3参照)。
表 4-3. 都市照明と1次照明(街灯)の色温度の感覚量の差
街路
感覚量の差
街路
感覚量の差
NS街路
1
2
3
4
5
51.6
5.9
26.2
10.9
6.5
6
7
8
9
10
12.1
5.8
6.7
10
30.6
EW街路
1a
1b
2
3
4
5
6
−
−
−
20.5
20.7
4.6
3.8
28.4
2.6
1.6
−
−
−
4-2-5 光の属性による1次照明(街灯)の分類
1次照明(街灯)を照度と色温度から分類し、4-4の照度レベルを用い、1次照明(街灯)を
分類してみると歌舞伎町の1次照明(街灯)は照度によって4つのタイプに分けられる(図4-1
参照)。また、色温度は3章で扱ったイメージの忠実性と和やかさの境である3500Kを基準
に分類すると2つに分けられるが、タイプ11の1次照明(街灯)以外のすべての1次照明(街
灯)が3000半ば-5000K代の値を表し、同じ色味の光であることが分かった。前述したよう
に歌舞伎町には1つの街路に複数のタイプの1次照明(街灯)が存在し、様々な商業施設と共
に街路景観を統一感のないものとしている。
表 4-4. 1次照明(街灯)ごとの平均照度と平均色温度
タイプ
74
平均照度
平均色温度
タイプ
平均照度
平均色温度
(lx)
(K)
(lx)
(K)
1
849.1
4218
8
70
4307
2
542.1
4100
9
224
4996
3
144.4
5137
10
123
4928
4
150.9
3750
11
102.2
2651
5
104.6
4229
etc1
55
3533
6
212.4
4108
etc2
166
測定不能
7
104.8
4061
etc3
167.3
3965
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
図 4-1. 光の属性による1次照明(街灯)の類型
※タイプBの中、太い線に囲まれたタイプ11のみが色温度3500K未満(2651K)。
しかし、光の属性による分析をみると、タイプごとにある程度まとまりがあることが分
かった。タイプBの場合は人が集まる場所であるヤングスポット、コマスタジアム前など
に主に分布し、タイプCの場合は歌舞伎町を南北に繋ぐメイン街路の歌舞伎町1番街、セン
トラルロード、歌舞伎町さくら通りに分布している(図4-2参照)。
75
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
図 4-2. 1次照明(街灯)分布状況と照度・色温度(調査日時:2005年1月5日,20:30-22:00)
※破線の円は色温度測定不可能エリア
76
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
4-3
歌舞伎町の2次照明(店舗)環境
4-3-1 調査概要
前章の業種分類をもとに、実際に測定が可能な範囲であり、歩行者に主な影響を与える
と考えられる建築の1階にある2次照明(店舗)の照度と色温度について分析を行う。本章で
は、各店舗のファサードから0.5mの距離注4-4)、高さ1.5m、照度計の方向は店舗に向かって
水平にし、店舗間口の中心と他の階への移動のための入口が街路に面したファサードにあ
る場合は入口からの漏れる光も入口の中心から測定したデータを2次照明(店舗)の照度と
色温度として扱う。
4-3-2
1階の業種構成
1階には総238店舗、9種類の業種がある。2章の全業種では数の多いものから遊興飲食店、
娯楽業、一般飲食店、風俗業などの順であったが、1階のみで見てみると、一般飲食店、
娯楽業、サービス業、小売業などの順になっている(表4-5参照)。業種の分布状況をみる
と、調査範囲の中心にあたるセントラルロード(NS-4)を基準とし、左側は一般飲食店と娯
楽業が主となっており、右側は業種の混在がみられる(図4-3参照)。
表 4-5.1階の業種構成
業種
数
一般飲食
82
娯楽
50
サービス
32
小売
30
遊興飲食
18
風俗
16
宿泊
5
不動産
3
その他
2
77
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
図 4-3.建築1階の業種分布(調査日時:2005年1月9日,18:00-22:00)
78
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
4-3-3 全体的な傾向
4-3-3と4-3-4で扱う2次照明(店舗)は1階部分において地下や2階以上へ行くために設置
されている入口から漏れる光も含めたものである。1階の238店舗に対する平均照度と色温
度を求めてみると照度は452lx、色温度は3835Kであった。照度は街路照明と1次照明(街
灯)の照度の値よりも1.5倍以上高い値で、照度レベル⑥にあたる高照度であった。色温度
は街路照明と1次照明(街灯)より若干低いが、感覚量40MK-1未満であった。
表 4-6. 街路ごとの街路照明と2次照明(店舗)の平均照度、平均色温度、感覚量
街路全体の
街路
平均照度
(lx)
2次照明(店舗)のみの
平均照度(lx)
街路全体の
平均色温度(K)
[感覚量(MK-1)]
2次照明(店舗)のみの平均色温度(K)
[感覚量(MK-1)]
NS-1
307.9
420.1
3417 [292.7]
3332 [300.1]
NS-2
1611.3
1432
4344 [230.2]
4036 [247.8]
NS-3
151.5
251.5
4249 [235.3]
3669 [272.6]
NS-4
91.2
261.4
3943 [253.6]
3794 [263.6]
NS-5
82.2
154.6
4381 [228.3]
4073 [245.5]
NS-6
71.6
150
4334 [230.7]
3847 [259.9]
NS-7
24.1
56.3
4220 [237]
4096 [244.1]
NS-8
129.9
290
4843 [206.5]
4309 [232.1]
NS-9
57.6
111.7
4176 [239.5]
3663 [273]
NS-10
105.8
128.8
3132 [320.4]
3045 [328.4]
EW-1a
111.7
298.7
4647 [215.2]
4591 [217.8]
EW-1b
182.2
2222.9
4643 [215.4]
3694 [270.7]
EW-2
514.3
531.4
4102 [243.8]
3905 [256.1]
EW-3
695.3
765.9
4126 [242.4]
3764 [265.7]
EW-4
84.3
241.3
4118 [242.8]
3784 [264.3]
EW-5
83.5
182.4
4057 [246.5]
3554 [281.4]
EW-6
108.6
185.5
4162 [240.3]
4035 [247.8]
79
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
4-3-4 街路ごとの2次照明(店舗)の照度と色温度
2次照明(店舗)も1次照明(街灯)と同じ指標(照度レベル、感覚量)を用い、分析を行った。
照度は街路照明と同レベルに属する街路が7街路(NS-1,2,3,7,10、EW-2,3)で、1次照明(街
灯)が街路照明と同レベルにある街路とすべてが一致しており、照度レベル⑥にあたる街
路が最も多かった(NS-1,2、EW-2,3)。 色温度は2次照明(店舗)も1次照明(街灯)と同じく
感覚量が40MK-1を越える街路は1街路(EW-1b)しかなく、16街路が40MK-1未満であった(表4-7
参照)。
表 4-7. 街路照明と2次照明(店舗)の色温度の感覚量の差
街路
差
街路
差
80
NS街路
1
2
3
4
5
7.4
17.6
37.4
10
17.2
6
7
8
9
10
29.2
7.1
25.6
33.5
8
EW街路
1a
1b
2
3
4
5
6
−
−
−
2.6
55.3
12.3
22.9
21.5
34.9
7.5
−
−
−
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
4-4
都市照明に対する1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の影響
1次照明(街灯)と2次照明(店舗)が都市照明とどのような関係をもっているかを照明の照
度と色温度から分析を行った。分析の対象とする街路は、まず、4-2と4-3の分析から街路
照明の照度レベルと感覚量の結果と同じ範囲に属している街路を選定した後、同じ街路幅
員に1次照明(街灯)と2次照明(店舗)が両方ともに存在する街路に限定した。
照度については街路照明に対する1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の差とその平均値を求
めた。その結果、街路照明に対して1次照明(街灯)は122.8lx、2次照明(店舗)は76.4lxの
差が出た。これにより照度は2次照明(店舗)の影響がより大きいと判断される(表4-8参照)。
表 4-8.同じ照度レベルの街路の中で1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の関係(絶対値)
南北
街路
街路照明−1次
街路照明−2次
照明(街
照明(店
東西
街路
街路照明−1次
街路照明−2次
照明(街
照明(店
灯)(lx)
舗)(lx)
灯)(lx)
舗)(lx)
NS-1
205
112.2
EW-2
126.7
17.1
NS-2
286.8
179.3
EW-3
202.7
70.6
NS-3
0.8
100
−
−
−
NS-7
23
32.3
−
−
−
NS-10
14.8
23
平均
122.8
76.4
81
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
色温度については街路照明に対する1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の感覚量の差を合計
し、その平均値を求めた。その結果、1次照明(街灯)の11.7MK-1に比べ、2次照明(店舗)は
19.2MK-1 であった。これにより色温度は1次照明(街灯)の影響がより大きいと判断される
(表4-9参照)。
表 4-9.感覚量40MK-1未満である街路の中で1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の関係
南北
1次照明(街灯)の
2次照明(店舗)の
-1
東西
1次照明(街灯)の
-1
2次照明(店舗)の
街路
感覚量(MK )
感覚量(MK )
街路
感覚量(MK )
感覚量(MK-1)
NS-2
5.9
17.6
EW-1a
20.5
2.6
NS-3
26.2
37.4
EW-2
4.6
12.3
NS-4
10.9
10
EW-3
3.8
22.9
NS-5
6.5
17.2
EW-4
28.4
21.5
NS-6
12.1
29.2
EW-5
2.6
34.9
NS-7
5.8
7.1
EW-6
1.6
7.5
NS-8
6.7
25.6
−
−
−
NS-9
10
33.5
−
−
−
NS-10
30.6
8
平均
11.7
19.2
82
-1
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
図 4-4.2次照明(店舗)の照度・色温度(調査日時:2005年1月9日,18:00-22:00)
83
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
4-5
2次照明(店舗)における業種と入口照明との関係
4-5-1 業種ごとの照明の照度と色温度
本節では4-3で扱った2次照明(店舗)のうち、入口の中心から測定した入口照明のデータ
を除いた店舗間口の中心から測定した広告照明のデータのみを用い、広告照明の特性を明
らかにする注4-5)。照度から見ると広告照明は照度レベル④にあたる遊興飲食店・不動産業、
レベル⑤にあたる一般飲食店・小売業・風俗業・宿泊業、レベル⑥にあたる娯楽業・サー
ビス業のように3つに分けられる。色温度はイメージの忠実性と和やかさの境である3500K
前後の値と近い一般飲食店の色温度(3578K)を中心に感覚量の差を用い、分類を行った。
その結果、色温度によって広告照明は遊興飲食店、一般飲食店・不動産業・サービス業・
小売業・娯楽業のグループ、風俗業・宿泊業のグループの3つに分けられ、業種ごとに特
定の照明環境が形成されていることが分かった。(図4-5参照)。
84
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
図 4-5.照度、色温度による業種の分布
4-5-2 業種ごとの広告照明と2次照明(店舗)との関係
業種ごとの広告照明の照度と色温度を用い、2次照明(店舗)との関係を分析を行った。
業種ごとの広告照明による各街路の平均照度と平均色温度は「式 4-1」にしたがい、算出
した(表4-10参照)。このデータに基づいた広告照明による街路全体の平均照明は365lx、
平均色温度は3766Kであった。両方共に2次照明(店舗)より低い傾向が見られたが、照度は
同じレベル⑥で、色温度の感覚量は4.9MK-1の値を示した。
85
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
業種ごとの広告照明
=
による街路照明
(A×n)+(B×n)+…
na
※A,B,C…:各業種の照度または色温度
※n:各店舗の数
※na:全店舗の数
式 4-1.各街路の平均照度と平均色温度を算出する公式
表 4-10. 業種ごとの広告照明による各街路の平均照度(lx)と平均色温度(K)
南北
街路
NS-1
NS-2
NS-3
NS-4
NS-5
NS-6
NS-7
NS-8
NS-9
NS-10
2次照明(店舗)
広告照明
420.1
460
3332
3719
1432
416
4036
3843
251.5
354
3669
3665
261.4
466.3
3794
3771
154.6
245.8
4073
3713
150
334.1
3847
3948
56.3
253.9
4096
3583
290
350.7
4309
3712
111.7
255.1
3663
3872
128.8
304.4
3045
3537
東西
街路
EW-1a
2次照明(店舗)
広告照明
298.7
522.2
4591
3801
2222.9
410.5
3694
4037
531.4
442.9
3905
3677
765.9
412.8
3764
3853
241.3
301.7
3784
3712
182.4
319.8
3554
3624
185.5
354.1
4035
3949
−
−
−
−
−
−
−
−
−
EW-1b
EW-2
EW-3
EW-4
EW-5
EW-6
※上の数字が照度を示す。下の数字が色温度を示す。
86
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
4-5-3 入口照明と2次照明(店舗)との関係
建築の入口照明は個々の面積は店舗のショーウィンドウより小さくても、その数は1階
業種の中で最も多い 一般飲食店より2倍に近い148箇所であり、無視できない光源である。
この入口照明がどのように2次照明(店舗)に影響を与えるかを分析した。148箇所の入口照
明の平均照度は546.7lx(照度レベル⑥)で、本研究で扱った平均照度の中で最も高い値で
ある(表4-11参照)。これは300lx代の広告照明を入口照明が引き上げ、400lx代の2次照明
(店舗)をつくっていると考えられる。平均色温度は3872Kで2次照明(店舗)に対する感覚量
は1.8MK-1で、広告照明より2次照明(店舗)に近い結果を見せた。
表 4-11. 入口照明および各項目の平均照度と平均色温度
街路照明
平均照度
(lx)
平均色温度
(K)
感覚量
(MK-1)
1次照明(街灯)
2次照明(店舗)
259.6
278.9
4170
239.8
広告照明
入口照明
452
365
546.7
4247
3835
3766
3872
235.5
260.1
265.5
258.3
87
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
4-6
照度と色温度の印象評価
4-6-1 分析方法と街路の選定
ここでは歌舞伎町1丁目を含め、JR新宿駅東口周辺エリアの夜間街路写真を用い、印象
調査を行うことで界隈夜景における都市照明の色温度が人の印象に与える影響を明らかに
する。
印象調査の界隈夜景の写真は次の2つのケースを用意した。
①照度値は近いが、色温度値が異なる街路の2枚が1セットの夜景写真(図4-7参照)。
②色温度値は近いが、照度値が異なる街路の2枚が1セットの夜景写真(図4-8参照)。
①の場合は、照度の条件を変えるにあたって、6段階の照度レベル(表4-1参照)を参考に
同じレベルの照度がある程度連続している街路を選定した。各照度レベルにつき、色温度
の異なる2街路を選定し、全部で10街路を選定する。このとき色温度については感覚量を
基準とした。
②の場合は、色温度が3500K境にそれ以上になると、自然昼光による色の見え方と類似
するが、3500K以下にの光源では自然昼光による色の見え方とは異なることから、3500Kを
基準にし 注 4-6) 、500刻みで、2500K以下、2500-3000K、 3000-3500K、3500-4000K、 40004500K、4500K以上前後3段階ずつ設定した。そして、同じ範囲の色温度が連続している街
路の中から照度値の異なる街路を2街路を選定し、全部で10街路を選定した。
88
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
図 4-6.印象調査に用いた写真の撮影場所
89
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
1組
1-a
照度:769.9lx
色温度:3002K
2組
1-b
2-a
照度:770.3lx
照度:202.8lx
色温度:4134K
色温度:2703K
3組
3-a
2-b
照度:217.7lx
色温度:4129K
4組
3-b
4-a
4-b
照度:126.3lx
照度:124.8lx
照度:44.1lx
照度:44.1lx
色温度:4610K
色温度:2462K
色温度:4054K
色温度:2897K
5組
5-a
5-b
照度:11.5lx
照度:12.9lx
色温度:3471K
色温度:5033K
90
図4-7. 照度値が近い、色温度値が異なる写真
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
6組
6-a
照度:299.3lx
色温度:4225K
7組
6-b
7-a
7-b
照度:139.1lx
照度:93.4lx
照度:267.8x
色温度:4225K
色温度:3850K
8組
色温度:3877K
9組
8-a
8-b
9-a
9-b
照度:95.3lx
照度:223.5x
照度:37.8lx
照度:115x
色温度:3390K
色温度:3423K
色温度:2809K
色温度:2899K
10組
10-a
10-b
照度:47.9lx
照度:117.8lx
色温度:2430K
色温度:2323K
図4-8. 色温度値が近い、照度値が異なる写真
91
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
4-6-2 印象調査
界隈夜景における人の印象調査は、被験者5人に対して照度と色温度がそれぞれ異なる1
∼10組の街路の写真を2枚ずつ被験者に見せ、2枚の写真のそれぞれの印象を記してもらう
方法で行った。
最も現実の界隈夜景に近いデータを得る方法は、対象地である歌舞伎町の現地で行うこ
とであるが、複数の被験者に対して同じ環境を繰り返し提供することが可能な方法として
は、既往研究でよく使われている写真を用いた実験方法を採択した。しかし、今後現地へ
の調査も行い、本研究の結果との類似性の検討が望まれる。
印象評価の形容詞対は、色温度が与える影響を示す形容詞としてJIS、既往研究などを
参考にし、以下の7つを抽出した。
①明るい−暗い
②暖かい−冷たい
③快適−不快
④落ち着きがない−落ち着きがある
⑤殺伐とした感じ−雰囲気がある感じ
⑥自然な感じ−不自然な感じ
⑦活気がある−沈滞した
この7つの形容詞対について7段階評価の印象のアンケートを行い、2枚の写真における
印象の違いの差を求め、整理したものが表4-12と表4-13である。
表 4-12. 色温度が異なる場合の印象の違い
1-a(3002K)
2-a(2703K)
3-a(4610K)
4-a(4054K)
5-a(3471K)
1-b(4134K)
2-b(4129K)
3-b(2462K)
4-b(2897K)
5-b(5033K)
明るい−暗い
2.2
0.8
0
1.4
0.4
0.96
暖かい−冷たい
1
0.2
1.4
1.2
1
0.96
0.4
1.6
0.8
1
0.6
0.88
1.6
1
0.8
0.8
0.6
0.96
0.8
1
0.6
0.4
0.2
0.6
2
1
0.4
1
0
0.88
1.2
0
0.8
0.4
1.2
0.72
落ち着きがない
−落ち着きがある
殺伐とした感じ
−雰囲気がある感じ
自然な感じ
−不自然な感じ
活気がある
−沈滞した
快適−不快
92
平均
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
表 4-13. 照度が異なる場合の印象の違い
6-a(299.3lx)
7-a(93.4lx)
8-a(95.3lx)
9-a(37.8lx)
10-a(47.9lx)
6-b(139.1lx)
7-b(267.8lx)
8-b(223.5lx)
9-b(115lx)
10-b(117.8lx)
明るい−暗い
1.8
2.2
2.4
0.4
1.4
1.64
暖かい−冷たい
1
1.4
0.2
1.6
0.8
1
0.4
1.4
1.4
1
1.8
1.2
1
0
1
1.8
1.2
1
0
0
0
1
1.2
0.44
1.4
1.2
0.8
0.8
1.4
1.12
1.2
0
0
1.2
0.8
0.64
落ち着きがない
−落ち着きがある
殺伐とした感じ
−雰囲気がある感じ
自然な感じ
−不自然な感じ
活気がある
−沈滞した
快適−不快
平均
4-6-3 照度、色温度と印象との関係
表4-12と表4-13からそれぞれ印象の違いが大きい形容詞を見ると、色温度は「暖かい−
冷たい」「殺伐とした感じ−雰囲気がある感じ」という印象に特に影響を与えており、照
度は「活気がある−沈滞した」「落ち着きがない−落ち着きがある」という印象に特に影
響を与えていることが明らかになった。そして、「明るい−暗い」という印象について照
度、色温度がともに影響を与えていることが分かった。これらから従来の室内空間の雰囲
気に影響を与えていると知られている照明の色温度の差が屋外、すなわち都市空間におい
ても影響を与えていることが解明できた。
特に、照度が100lx以下の場合、色温度が高ければ高いほど、人の雰囲気に対する印象
が悪くなり、室内の照明環境の結果が都市空間においても適用されることが分かった。本
研究で雰囲気に対する評価が最も低かった街路は5組の5-bのポイントであった。このポイ
ントの照明環境は照度が12.9lx、色温度が5033Kであった。
この結果から見ると、第3章で扱った歌舞伎町の対象街路の中で雰囲気がよくない街路
はいくつかの路地のみならず、歌舞伎町のランドマークであるコマスタジアムの前の街路
も含まれることが分かった。しかし、現状で照度には問題がないため、これを解決するた
めには照明の色温度からの検討が望ましいと考えられる。
93
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
4-7
小結
1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の照度レベルと色温度の感覚量を用い、分析した結果、
照度は2次照明(店舗)が、色温度は1次照明(街灯)が都市照明に大きな影響を与えているこ
とが明らかになった。
歌舞伎町の1次照明(街灯)は外形上11タイプに分けられ、1つの街路に複数のタイプが存
在し、様々な商業施設と共に街路景観を統一感のないものとしている。しかし、光の属性
による分類では、街路や場所ごとにまとまりがあり、11タイプの1次照明(街灯)が4タイプ
に類型化できる。歌舞伎町の2次照明(店舗)を広告照明の照度と色温度からみると、業種
ごとに特定の照度と色温度が存在していることが明らかになった。さらに、2次照明(店
舗)を広告照明と入口照明に分けて分析した結果、入口照明が2次照明(店舗)の照度を引き
上げており、色温度も広告照明より入口照明の方が2次照明(店舗)により近いことが分か
り、2次照明(店舗)に影響を与えているのは広告照明より入口照明の方であることが明ら
かになった。
さらに、このような関係を有している都市照明の照度と色温度がつくりだす界隈夜景の
全体に対する印象調査の結果は、照度と色温度が独立した印象群を形成していることが明
らかになった。特に、色温度は室内の照明環境と同様に空間の雰囲気に影響を与えている
ことが明らかになり、都市照明環境の形成において照度とともに活用できる指標と考えら
れる。
94
界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係・・・第4章
<注釈>
注4-1)本章で街灯として扱ったものは基本的に街路に沿って配置されているものである。そこ
で、歌舞伎町公園の中にあるもの(その他1)、区役所の敷地中にあるもの(その他2)、建物
に付設されているもの(その他3)は街灯ではなく、その他として扱った。
注4-2)参考文献5では照度レベルを7区分しているが、照度が750lx以上になると、照度差がなく
なり、賑やかさや華やかさのような光の演出が難しくなる点が示されており、本研究の5,6
章の分析においては参考文献5の照度段階6(300-750lx)と7(750-20,000lx)を1つにまとめて
「300lx以上-」とし、6段階の照度レベルとして設定した。
注4-3)参考文献6のp39から引用。
注4-4)第3章の「図 3-1.歌舞伎町の調査範囲と現況」の建物番号108にある一般飲食店のみ店
舗の前面に販売のための設備があったため1mの距離で測定した。
注4-5)2次照明である広告照明と入口照明の測定位置を図解したものが注図2である。
注図2. 広告照明と入口照明の測定方法(平面図)
95
第4章・・・界・隈・夜・景・に・お・け・る・1・次・照・明・と・2・次・照・明・の・関・係
<参考文献・資料>
文1)宇於崎勝也、小島勝衛、根上彰生:商業地域における夜間景観に関する基礎的研究-繁華地
区における夜間の活動と夜景構成要素の実態分析を中心として、日本都市計画学会学術研
究論文集、pp.445-450、1991
文2)李永桓、後藤春彦、李彰浩、福武洋之: 繁華街の各種照明が夜間景観に与える影響に関す
る研-新宿区歌舞伎町1丁目を事例として、 日本建築学会計画系論文集 No598、 pp.101108、2005.12
文3)福武洋之、後藤春彦、李彰浩、関口信行、李永桓:業種に着目した色温度が夜間の街路景
観の印象に与える影響に関する研究、日本建築学会学術講演梗概集 F-1、pp.1031-1032、
2004
文4)樋口忠彦、面出薫他6人:都市のデザイン<きわだつ>から<おさまる>へ、学芸出版社、2002
文5)日本建築学会:光と色の環境デザイン、オーム社、2001
文6)中島龍興、近田玲子、面出薫:照明デザイン入門、彰国社、1995
文7)都市の夜間景観研究会:都市の夜間景観の演出-光と影のハーモニー、大成出版社、1990
文8)日本規格協会:JIS Z 9110 照明基準、1979
文9)中村肇、唐沢宜典:照度・色温度と雰囲気の好ましさの関係、照明学会誌 No81-8A、1997
96
第5章
5-1
5-2
はじめに••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••099
5-1-1
本章の目的
5-1-2
対象地の選定
5-1-3
ゆりかもめ線の概要
5-1-4
調査範囲
5-1-4
分析の方法
ゆりかもめ沿線地域における昼・夜間の注視対象••••••••104
5-2-1
全体的な傾向
5-2-2
シオサイトエリア
5-2-3
レインボーエリア
5-2-4
お台場エリア
5-3
夜間の注視対象の中で光源の役割••••••••••••••••••••••118
5-4
小結••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••119
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
5-1
はじめに
5-1-1 本章の目的
照明技術の発展による都市機能の時間的拡張と都心再開発による都市居住者の増加注5-1)
は、夜間の都市空間における人の活動を誘発・創出している。このような夜間の都市空間
の姿である夜間景観は都市資産の1つに位置づけられる。一方、モータリゼーションの発
達による都市空間の面的な拡大は、静止景観であるシーン景観とともに移動景観であるシ
ークエンス景観も重要な都市景観としてあげることを可能とした。特に、鉄道網が発達し
ている日本では、鉄道からの車窓景観は不特定多数の人間が共有する景観であり、公共性
が高い都市景観である。そこで、今後の都市景観研究では昼間のみならず、夜間も視野に
入れたシークエンス景観の分析が新たな課題の1つにあげられる。この問題意識をもとに、
シークエンス景観としての車窓景観を対象に昼・夜間景観を分析することは、夜間景観の
特性の解明のための新たな試みと言える。
そこで、第5章は車窓夜景から夜間景観の特性を解明する第1段階で、夜間景観体験とい
う概念にもとづき、電車の中から見えるシークエンス景観、すなわち車窓景観に着目した。
この昼・夜間の車窓景観の比較を通じて車窓夜景において注視対象となる景観要素を明ら
かにする。
5-1-2 対象地の選定
本章は東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」の沿線地域を研究対象地として取り上げた。
その理由としては以下の3点が挙げられる。
①全路線が地上に設置されているため、トンネルなどによって地上の景観が断絶するこ
となく、連続性が確保されている。
②沿線地域には様々な土地利用や自然要素である海などがあり、多様な景観を見ること
ができる。
③夜間景観を考慮した照明計画や基本ガイドライン注5-2)が策定された汐留シオサイトや
お台場地区など、夜間景観の演出が見られる場所が存在している。
99
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
図 5-1.ゆりかもめ沿線地域の3つの調査範囲
(シオサイトエリア、レインボーエリア、お台場エリア)
100
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
101
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
5-1-3 ゆりかもめ線の概要
1995年11月1日に無人運転する公共交通機関として開業したゆりかもめ線は東京都心と
エンターテインメント施設やウォータフロントなどの資源があるお台場を結ぶ重要な路線
である。レインボーブリッジを渡る区間である芝浦ふ頭からお台場海浜公園までの区間注53)
を除き、約1分-1分30秒の時間で運行・停車をしている。利用客数は2000年を境に減少傾
向が見られるが、2004年度にも1日平均88,781名が利用している注5-4)。さらに、2006年に有
明駅から東京メトロの豊洲駅までゆりかもめ線が延伸されると、都心からのアクセスが向
上し、利用者数が再び増加すると予想されている。
5-1-4 調査範囲
ゆりかもめ沿線地域を3つのエリアに区分する(図5-1参照)。
①シオサイトエリア。汐留にシオサイトのような大規模の業務地区もでき、業務施設を
中心にした景観が形成されている。
②レインボーエリア。レインボーブリッジを渡る際に東京湾を中心にした開放的なウォ
ータフロント景観が形成されている。
③お台場エリア。エンターテインメント施設、商業施設を中心にした景観が形成されて
いる。
102
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
5-1-5 分析の方法
①研究対象地においてビデオカメラにて昼・夜間両方の車窓景観を撮影する。撮影の際、
乗客が車内から車窓景観を見ている状態に近づけるため、カメラ水平画角は車内から
進行方向に対して30°振る注5-5)。
②研究対象地における昼・夜間両方の車窓景観の動画像に対するアイマークレコーダー
を用いて被験者実験注5-6)を行う(写真5-1参照)。
その結果より昼・夜それぞれの景観における被験者の注視特性を含めた動画像(以下、
注視特性動画像)を得る。
③ゆりかもめ沿線地域の全エリアを対象にし、被験者1人当たりに得られる計約48分の
注視特性動画像を停車の間を除いた動画像注5-8)として編集する注5-9)。
その注視特性動画像を10秒おきに静止画像としてキャプチャリングする注5-10)(以下、
10秒静止画像)、総1,365枚(1人195枚)の10秒静止画像に対する注視対象を分析する注511)注5-12)注5-13)
。
写真 5-1.被験者実験の様子注5-7)
103
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
5-2
ゆりかもめ沿線地域における昼・夜間の注視対象
5-2-1.全体的な傾向
昼・夜間に同じ場所を移動する際、人が何を(注視対象)見て景観を認知しているかを知
るために、本章ではゆりかもめ沿線地域の全エリアを対象にし、注視対象を把握した。
5-1-5の②、③で得られた注視特性動画像と1,365枚の10秒静止画像にある注視点注5-14)を
1枚ずつ確認し、個々の注視点が何を示しているかを分析した。
写真 5-2.被験者Aの10秒静止画像の例 (竹芝駅-芝浦ふ頭駅区間,上:昼/下:夜)
10秒静止画像の注視点が示している注視対象になる景観要素を昼・夜ともに建物系、視
覚情報系、インフラストラクチャー系(以下、IS系)、自然系、その他という5つのカテゴ
リ注5-15)に分けて分類を行った(表5-1、5-2参照)。
104
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
表 5-1. 被験者ごとの昼間の全エリアに対する注視点数
被験者
注視点数
建物系
視覚情報系
IS系
自然系
その他
計
A
45
2
20
18
6
91
B
43
0
17
11
11
82
C
43
3
31
12
8
97
D
40
1
27
12
10
90
E
40
3
24
10
16
93
F
43
3
26
8
13
93
G
36
3
24
13
10
86
計
290
15
169
84
74
632
表 5-2. 被験者ごとの夜間の全エリアに対する注視点数
被験者
注視点数
建物系
視覚情報系
IS系
自然系
その他
計
A
35
7
24
7
17
90
B
42
6
31
1
14
94
C
52
5
22
6
10
95
D
47
3
24
7
12
93
E
37
6
33
7
11
94
F
37
6
29
8
7
87
G
45
5
23
5
10
88
計
295
38
186
41
81
641
105
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
5つのカテゴリの中で建物系、IS系の景観要素はほぼ同じ割合で昼(建物系:46%,IS
系:27%)・夜間(建物系:46%,IS系:29%)とともに注視対象になっていることが分かった。
この全体データの集計から人は昼・夜間の異なる時間帯においても同じ景観を眺める際に
は同一の注視対象を約75%以上見ながら景観を認知していると考えられる。
しかし、視覚情報系と自然系の景観要素の場合は時間の変化に伴う反転現像が現われた。
昼は視覚情報系が15ヶ所、自然系が84ヶ所であったが、夜になると視覚情報系が38ヶ所に
増加する反面、自然系が41ヶ所に減少していた。この結果を単に数の増減から考えると全
体の割合の中では小さいが、各景観要素の昼・夜間における割合の変化率から考察してみ
ると視覚情報系は見落とせない要素であることが分かった。
昼・夜間ともに大半を占めている建物系、IS系の景観要素の昼から夜への時間変化に伴
う割合の変化率は建物系が100%、IS系が107%の小さな変化しか見られなかったが、視覚
情報系は夜になると300%という大きな増加を見せていた。
これは視覚情報系の景観要素が昼間より夜間に人の視線を集めることに効果がある景観
要素であり、都市の夜間景観を考える際に昼間とは異なる効果を得るためには、視覚情報
系の配置、計画などが重要なポイントになると考えられる 。
106
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
5-2-2 シオサイトエリア
3つのエリアの中でゆりかもめ沿線周辺から建物系の景観要素が多く見られるシオサイ
トエリアの分析には、378枚の10秒静止画像(昼:189枚,夜:189枚)を用いた。分析の結果、
昼・夜間ともに数的に多い建物系が注視対象として多数(昼:62%,夜:56%)を占めていた。
昼から夜への時間変化に伴う5つの景観要素の割合の変化率は建物系が90%、視覚情報系
が250%、IS系が105%、自然系が75%、その他が113%になり、5-2の全体傾向に得られた
情報系の大幅の増加がこのエリアでも確認できた。
分析に使用したシオサイトエリアの1人当りの10秒静止画像を見ると54枚の中で沿線周
辺の近距離に建物が位置し建物の部分が画像の大半を占めている10秒静止画像が32枚があ
り(写真5-3参照)、このエリアの景観の約60%が近景で形成されており、建物のディテー
ルや建物の内外部に付属されている看板のような視覚情報系の景観要素に注視点が移動す
る傾向が見られた。
表 5-3. シオサイトエリアの注視点数
注視対象
注視点数
昼間
夜間
建物系
112
97
視覚情報系
7
17
IS系
33
33
自然系
14
11
その他
14
16
計
180
174
写真 5-3.近景中心のシオサイトエリアの
昼・夜間景観の例
107
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
写真5-4.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 1 (新橋駅−汐留駅)
写真5-5.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 2 (汐留駅-竹芝駅)
写真5-6.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 3 (竹芝駅-日の出駅)
写真5-7.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 4 (日の出駅-芝浦ふ頭駅)
108
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
写真5-8.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 1 (新橋駅−汐留駅)
写真5-9.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 2 (汐留駅-竹芝駅)
写真5-10.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 3 (竹芝駅-日の出駅)
写真5-11.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 4 (日の出駅-芝浦ふ頭駅)
109
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
5-2-3 レインボーエリア
レインボーエリアはシオサイトエリアより長い距離(3.9km)を持っている点と、シオサ
イトエリアとお台場エリアのような建物系の景観要素中心の景観とは異なる自然系の景観
要素である海がある点と、さらには遠景まで視線の広がりがあるエリアである。
レインボーエリアの分析には、427枚の10秒静止画像(昼:210枚,夜:217枚)を用いた。最
も多い注視点がマークされた景観要素は昼(56%)・夜間(55%)ともにIS系であった。昼か
ら夜への時間変化に伴う5つの景観要素の割合の変化率は建物系が113%、視覚情報系が
150%、IS系が98%、自然系が75%、その他が100%になり、5つの景観要素の割合の変化
が他の2つエリアより小さいことが分かった。
分析に使用した1人当たりの10秒静止画像でも昼・夜間61枚の中で28枚がレインボーブ
リッジの中を走行しているゆりかもめから見える景観であるが、写真4のように様々な橋
脚の関連設備や安全のため設置されている高いフェンス、ガードレールなどが連続する単
調な景観が5分3秒間の走行時間の間2分32秒間続いている。そこで、その2分32秒間の人の
注視点は車のような動く物体が現われる際以外にはフェンスやガードレールのような単調
に連続する線を無意識的に見続けていた。
表 5-4. レインボーエリアの注視点数
注視対象
注視点数
昼間
夜間
建物系
30
37
視覚情報系
4
7
IS系
107
113
自然系
15
13
その他
35
37
計
191
207
写真 5-12.レインボーエリアの変化がない
連続する昼・夜間景観の例
110
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
写真5-13.レインボーエリアの昼間の10秒静止画像 (芝浦ふ頭駅-お台場海浜公園)
111
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
写真5-14.レインボーエリアの夜間の10秒静止画像 (芝浦ふ頭駅-お台場海浜公園)
112
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
5-2-4 お台場エリア
お台場エリアは前述した2つのエリアに比べて路線が曲がる箇所(5ヵ所、図5-1参照)が
多いエリアで、それに伴って景観の変化も多い。そして、お台場海浜公園駅から有明駅ま
で至る間の各駅周辺にはランドマーク的な性格を持つ大規模な建物が点在している。さら
に、夜間景観の基本ガイドの策定によるIS系の景観要素が整備されているエリアである。
お台場エリアの分析には、560枚の10秒静止画像(昼:280枚,夜:280枚)を用いた。昼から
夜への時間変化に伴う5つの景観要素の割合の変化率は建物系が110%、視覚情報系が
250%、IS系が136%、自然系が33%、その他が110%になり、自然系以外のすべての景観
要素が夜間により注視対象として占める割合が高くなることが分かった。特に夜間におけ
るIS系の景観要素の割合の増加が他の2つのエリアより高いことから、お台場を計画する
際に策定された夜間景観のガイドラインに基づいた街灯などの整備の効果があると言える。
お台場エリアは他の2つエリアのようにエリアを代表する典型的な景観の画像が見られ
なかった。これは景観が単調ではなく、バリエーションを持っていくことを意味する。実
際、沿線周辺の景観(近景)と沿線向うの景観(遠景)が調和し、560枚の10秒静止画像の中、
似通った景観の静止画像が2枚連続に現れるところが5ヵ所しかなかった。
表 5-5. お台場エリアの注視点数
注視対象
注視点数
昼間
夜間
148
161
視覚情報系
4
14
IS系
29
40
自然系
55
17
その他
25
28
計
261
260
建物系
写真5-15.お台場エリアのフジテレビ本社ビ
ルの昼・夜間景観
113
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
写真5-16.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 1 (お台場海浜公園-台場)
写真5-17.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 2 (台場-船の科学館)
写真5-18.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 3 (船の科学館-テレコムセンター)
写真5-19.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 4 (テレコムセンター-青海)
114
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
写真5-20.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 5 (青海-国際展示場正門)
写真5-21.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 6 (国際展示場正門-有明)
115
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
写真5-22.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 1 (お台場海浜公園-台場)
写真5-23.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 2 (台場-船の科学館)
写真5-24.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 3 (船の科学館-テレコムセンター)
写真5-25.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 4 (テレコムセンター-青海)
116
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
写真5-26.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 5 (青海-国際展示場正門)
写真5-27.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 6 (国際展示場正門-有明)
117
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
5-3
夜間の注視対象の中で光源の割合
シークエンス景観における昼・夜間の注視対象の把握を目的とするため、5つのカテゴ
リという基準で分析を行った。さらに、本節では上記の5つの景観要素の結果をもとに夜
間景観の重要な景観要素として考えられる光源が各景観要素の中でどのぐらいの割合を占
めているかを把握した。
夜間の計641の注視対象の内、光源が注視対象であったものは354であった。これを5つ
の景観要素ごとに見ると建物系は66%、視覚情報系は89%、IS系は34%、自然系は7%、
その他は73%において、光源が注視対象となっており、夜間の全注視対象の中で光源の割
合は55%となっていた(表5-6参照)。特に、視覚情報系は注視対象の約9割が光源になって
おり、光源が夜間の視覚情報系への注視割合を高くしていた。一方、自然系の場合、全体
の中、光源の割合が1割にも未たないことが分かった。
表 5-6. エリアごとの夜間の注視対象の中で光の数
エリア
シオサイト
118
光
建物系
視覚情報系
IS系
自然系
その他
計
51
14
19
0
16
100
レインボー
26
6
27
0
18
77
お台場
117
14
18
3
25
177
計
194
34
64
3
59
354
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
5-4
小結
ゆりかもめ沿線地域の注視特性動画像と1,365サンプルの10秒静止画像を用いた車窓景
観の分析から、シークエンス景観における昼・夜間景観の注視対象の相違や特性は以下の
ように整理できた。
車窓景観において注視対象になる景観要素は、昼・夜間ともに5つのカテゴリの中、建
物系、IS系が約7割以上を占めていた。これはこの2つの景観要素が数的な面から見て、他
の景観要素より圧倒的に多いこともあったが、昼・夜間にほぼ同じ割合を見せていること
は東京の夜がそれほど暗くないことを意味している。すなわち、都市の所々に各種照明器
具が設置され、夜間にも事物の存在や輪郭がある程度把握できる程度の明るさが基本的に
は存在していることである。
このような状況の中で、昼間から夜間への時間変化に伴い、変化の割合が大きかったの
は都市の表情を豊かにする要素である自然系と視覚情報系の景観要素であった。夜になる
と自然系の景観要素の注視割合が減ることに対して視覚情報系の景観要素の注視割合が昼
間に比べ2.5倍増加し、車窓夜景において視覚情報系の景観要素が注視対象として重要な
役割を果していることが明らかになった。
119
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
<注釈>
注5-1)東京都総務局のデータから都心4区(千代田、中央、港、新宿)の1995年10月1日から2004
年5月1日までの10年間の人口推計を調査してみると、総人口は75,327人増加している。こ
れは1世代を4人家族として想定しても、10年間に約18,830世代が都心に移住してきたとい
う結果である。
注5-2)お台場の夜間景観のガイドラインの基本的な3原則は「暖かい色の光を基調にする」、「色
の再現性の高い光を採用する」、「光源位置の低い光を大切に扱う」である。参考文献14)の
pp.194-202。
注5-3)レインボーブリッジがある芝浦ふ頭駅-お台場海浜公園駅までの区間の運行時間は約5分
である。
注5-4)この部分は参考文献・資料9)であるゆりかもめホームページから抜粋・整理したもので
ある(年度別利用者数は注表5-1を参照)。
注表 5-1.開業から2004年までのゆりかもめ線利用者数
年度
年間利用者(人)
1日平均利用者(人)
1995
4,131,782
27,183
1996
23,530,815
64,468
1997
26,117,137
71,554
1998
28,541.356
78,195
1999
35,347,400
96,577
2000
38,062,278
104,280
2001
37,810,785
103,591
2002
36,756,460
100,703
2003
34,549,622
94,398
2004
32,404,984
88,781
注5-5)研究の方法①を図化すると右の注図5-1になる。この方法は参考文献2)に使われた撮影方
法で、進行方向から水平角度30°が最も車窓景観を見やすい角度と定義しており、これを
踏襲した。
注図 5-1.景観撮影図
注5-6)被験者実験はアイマークレコーダーの性能上、被験者の条件として裸眼あるいはソフト
コンタクトレンズ使用者とし、20代の大学・大学院生9人(男8、女1)を対象に行った。その
120
車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象・・・第5章
中でデータとして利用可能な7人のデータを本研究では扱った。
注5-7)被験者実験の様子を図化したものが注図2である。
注図2.被験者実験の簡略図と使用機器
注5-8)本研究で、除いた停車動画像は2つの基準を持ち設定した。まず、駅舎は本研究の分析外
とし、画面に駅舎が入ってから駅舎が見えない時点までの画像を停車動画像として扱った。
また、駅舎が画面上に見えない場合は、電車が完全に止まった時点から動き始めた時点ま
での画像も停車動画像として扱った。
注5-9)本研究の注視特性動画像の編集はBoilsoft社の「AVI-MPEG-ASF-WMV Splitter 2.31」を用
いた。
注5-10)本研究の注視特性動画像のキャプチャリングはApollo tech社の「#1 Video Converter
3.1.4」を用いた。
注5-11)注視特性動画像をキャプチャする際、場合によって、1区間の前後1-3枚程度の誤差があ
り、本研究ではこれを除いて、全被験者に共通に見られた10秒静止画像を扱った。
注5-12)研究の方法③では単に10秒静止画像に表示されている注視点のみを用いての分析ではな
く、各静止画像の注視点の前後の状況を把握するために、分析には注視特性動画像をとも
に用いながら、分析を行った。
注5-13)注5-11、5-12の方法は第6章の1秒静止画像にも同じく適用される。
注5-14)被験者によってキャプチャリングする際に生理的な現像で目をちらつく場合は注視点が
静止画像には表示されない為、被験者によって注視点の数はそれぞれ異なる。これは、1秒
静止画像の注視点の場合も同様である。
注5-15)注視対象の5つのカテゴリを分類する際に扱った細項目のリストを整理したものが注表
5-2である。
注表 5-2.注視対象カテゴリごとの細項目
建物系
オフィス、マンション、倉庫、工場、駅舎など
情報系
看板、屋上広告物、道路標示版、各種警告灯など
IS系
道路、線路、歩道、橋、歩行者用デッキ、街灯など
自然系
空、海、川、樹木、芝生など
その他
自動車、観覧車、船、駐車場、工事現場、イベント場など
121
第5章・・・車・窓・夜・景・に・お・け・る・注・視・対・象
<参考文献・資料>
文1)李永桓、後藤春彦、李彰浩、福武洋之:繁華街の各種照明が夜間景観に与える影響に関す
る研究−新宿区歌舞伎町1丁目を事例として、日本建築学会計画系論文集
第598号、
pp.101-108、2005.12
文2)古田五波、後藤春彦、三宅諭:車窓シークェンス景観における注視特性に関する研究−都
電荒川線の車窓景観によるケーススタディー、日本建築学会計画系論文集
第540号、
pp.213-220、2001.02
文3)大影佳史、宗元順三:景観画像の特徴の時刻変化と昼・夕・夜景の「図」と「地」の考察−山
並みを持つ京都の都市景観を事例として、日本建築学会計画系論文集
第515号、pp.179-
185、1999.01
文4)石井幹子:環境照明のデザイン、鹿島出版会、1984
文5)東京都総務局ホームページ:http://www.soumu.metro.tokyo.jp/index.htm
文6)ゆりかもめホームページ:http://www.yurikamome.co.jp/
122
第6章
6-1
6-2
6-3
6-4
6-5
はじめに••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••125
6-1-1
本章の目的
6-1-2
本章で用いる用語
6-1-3
対象地の選定
6-1-4
分析の方法
お台場エリア商業地域における昼・夜間注視方向••••••••128
6-2-1
注視点の垂直分布
6-2-2
注視点の水平分布
お台場エリア商業地域における昼・夜間注視動き••••••••130
6-3-1
被験者ごとの注視動き
6-3-2
夜間の注視動き
6-3-3
昼間の注視動き
6-3-4
昼・夜間シークエンス景観の注視範囲による特性
注視動きグラフから見る昼・夜間の車窓景観••••••••••••142
6-4-1
台場区間
6-4-2
青海区間
6-4-3
昼・夜間シークエンス景観の視距離による特性
小結••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••145
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
6-1
はじめに
6-1-1 本章の目的
第6章は車窓夜景から夜間景観の特性を解明する第2段階で、第5章の昼・夜間の車窓景
観の分析は車窓夜景の視対象である「景」にあたる注視対象の解明が目的であったが、第
6章では「観」にあたる人の注視特性に着目して分析を行う。すなわち、昼・夜間の車窓
景観を比較分析し、夜間における人の注視特性を明らかにする。
注視特性は注視方向、注視動きという2つの側面から分析を行う。注視方向の分析から
車窓夜景における人の注視範囲と影響を与える要因を明らかにし、注視動きの分析から車
窓夜景における視距離による特性を明らかにする。
6-1-2 本章で用いる用語
①注視方向
人がどこを見ているのかを把握するために、本章では5章で用いた注視特性動画像を
キャプチャリングした10秒静止画像と1秒静止画像に現れる被験者の注視点の上下左
右の位置を意味する。
②注視動き
注視方向の把握に用いた注視点の変化を時間の流れに合わせて線状に繋ぎ、グラフ化
したものを意味する(図6-1から図6-7まで参照)。
6-1-3 対象地の選定
昼・夜間シークエンス景観における人の注視特性をより詳細に分析するために、ゆりか
もめ沿線地域の3つのエリアの中、夜間景観の基本ガイドラインが策定されており注6-1)、3
章の分析から分かった夜間景観に対する効果と、夜間景観のバリエーションが多いお台場
エリアを対象に分析を進める。特に、エンターテインメント施設や商業施設が集まってお
125
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
り、様々な種類の照明が設置され、夜間にも人の利用が多い場所であると判断されるお台
場海浜公園駅から台場駅まで(以下、台場区間:0.8km)、そして、テレコムセンター駅から
青海駅まで(以下、青海区間:1.0km)の2つの区間、1.8kmの沿線地域の車窓景観を分析対象
として取り扱った。
6-1-4 分析の方法
①分析データの抽出
基本的には第5章と同様に注視特性動画像をキャプチャリングする。しかし、第6章
ではお台場エリアに限定し、注視特性動画像を1秒おきに静止画像としてキャプチャ
リングする(以下、1秒静止画像)。その中、様々な照明が見られるエンターテインメ
ント施設、商業施設が集まっている地域を中心に注視方向と注視動きを分析する注6-2)。
②注視方向
昼・夜間シークエンス景観において人の注視方向を注視特性動画像と「1秒静止画
像」の注視点の位置から把握する。分析データとしては5,306サンプルの「1秒静止画
像」の中、台場区間と青海区間2つの区間の1,904サンプルの「1秒静止画像」注6-2)を用
いる。
▪ 昼・夜間の1秒静止画像の中央(写真6-1の左写真の0ポイント)を中心に、上下左右5
等分したグリッドマップを作成する。
▪ 100個のグリッドの内、どこに注視点が位置しているかを把握する注6-3)。
写真 6-1.分析に使用されたグリッド静止画像の例注6-4)
126
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
▪ 上下左右の関係が把握できた1753(昼:863,夜:890)の注視点をグリッドの垂直方向の
3つのゾーンに分け(写真6-1の太線で分けられた部分)、注視点の垂直分布傾向を明
らかにする。水平分布傾向も同様に3つのゾーンに分けて分布傾向を明らかにする。
③注視動き
各被験者の注視方向を把握する際に用いた100個のグリッドデータをもとに時間の
流れに合わせて注視点をプロットし、被験者の連続的な注視点の動きが把握できる被
験者ごとの注視動きのグラフを作成した後、昼・夜間の台場区間と青海区間における
平均注視動きのグラフを作成する。それをもとに昼・夜間の各区間で見られる特徴的
な注視動きを分析する。
127
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
6-2
お台場エリア商業地域における昼・夜間注視方向
6-2-1 注視点の垂直分布
注視点の垂直分布傾向は、画像の中央部に位置している注視点が最も多かった。その数
は昼・夜間の差異が認められず(昼:698,夜:699)、両方ともに約80%が中央部に集中して
いる。この中央部を除き、昼・夜間の上下部に分布している注視点を見ると昼間には上下
部の割合の差が3%(上部:8%,下部:11%)で下部が若干高いが、中央部を中心に注視方向
が上下部に似通った頻度で分布していた(表6-1参照)。
しかし、夜になると上下部の差が10%(上部:6%,下部:16%)になり、中央部と下部(近
景)の景観要素を見ていることが分かった。これは、昼には見える自然系の景観要素の1つ
である空を眺める割合が夜になると低くなる反面、下部から見える車のライト、街灯のよ
うな光源に注視点が移ることが原因と考えられる。
表 6-1.注視点の垂直分布
昼
区分
5
上
下
128
台場
青海
2
1
夜
小計
3
67
台場
青海
1
0
1
4
1
5
6
5
3
8
3
14
44
58
17
26
43
2
31
91
122
37
68
105
1
81
177
258
71
143
214
1
101
109
210
99
127
226
2
82
26
108
65
89
154
3
46
12
58
53
34
87
4
20
6
26
33
6
39
5
11
3
14
12
1
13
698
98
計
小計
52
119
699
1397
139
237
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
6-2-2 注視点の水平分布
注視点の水平分布傾向は、昼・夜間すべてのデータから見ると電車の進行方向である画
像の右部が注視点の48%を占め、40%の中央部より高い傾向を見せていた。昼間も割合の
差(中央部:30%,右部:56%)はあるが、全体の傾向と同様に電車の進行方向である画像の
右部に注視方向が向いていた。さらに、中央部を中心にし、左右部の割合を見ると56%の
右部に比べ左部は11%と少なく昼間には右部の割合が圧倒的であった(表6-2参照)。
しかし、夜になるとこの右部に集中する注視方向に変化が見られる。夜間の注視点の水
平分布傾向を見ると、左部が13%、中央部が46%、右部が41%になっており、昼間の右部
中心の注視方向が中央部に移ることが分かった。これは、夜になると周辺が暗くなり遠近
感が低下することにより垂直分布傾向と同様に画像の中央部、即ち、近景の景観要素と光
源に注視点が移ることが原因と考えられる。
表 6-2.注視点の水平分布
区間
昼
右
4
3
2
1
1
2
3
4
5
台場
6
14
17
18
20
35
53
85
85
56
青海
16
19
20
38
39
33
48
79
96
86
22
33
37
56
59
68
101
164
181
142
小計
夜
左
5
284
92
487
台場
6
22
21
35
39
50
61
77
55
27
青海
12
33
25
41
42
70
69
69
86
50
18
55
46
76
81
120
130
146
141
77
小計
計
119
407
364
211
691
851
129
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
6-3
台場エリア商業地域における昼・夜間の注視動き
6-3-1 被験者ごとの注視動き
注視方向の把握の際に抽出された被験者ごとの注視点を、分析方法で説明したように
「ゆりかもめ」の運行時間に合わせてプロットし、折れ線グラフの形で注視動きを表した
ものが図6-1から図6-7までのグラフである。このグラフをもとに各時間においての平均注
視点と標準偏差の算出し(表6-3参照)、昼・夜間の注視動きの特性を把握する。
130
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
図 6-1.被験者Aの昼・夜間注視動きのグラフ
131
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
図 6-2.被験者Bの昼・夜間注視動きのグラフ
132
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
図 6-3.被験者Cの昼・夜間注視動きのグラフ
133
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
図 6-4.被験者Dの昼・夜間注視動きのグラフ
134
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
図 6-5.被験者Eの昼・夜間注視動きのグラフ
135
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
図 6-6.被験者Fの昼・夜間注視動きのグラフ
136
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
図 6-7.被験者Gの昼・夜間注視動きのグラフ
137
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
表 6-3. 各区間ごとの昼・夜間の平均注視点の位置と標準偏差
台場区間
時
間
(秒)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
平均
青海区間
昼間
上下
平均注視
標準偏
点
差
-1.33
1.63
-0.33
1.51
0
1.55
-1
2
-0.2
2.95
-0.83
2.04
0
1.29
-0.83
1.6
-0.86
1.86
0.25
2.99
0.29
3.09
0.83
2.4
-0.71
1.8
-0.86
1.86
0.86
1.46
-1.57
1.39
-1.43
1.72
-1.71
1.6
-0.4
3.05
-0.43
2.37
0
1.55
-1.14
1.68
-0.14
1.46
-0.86
1.77
-2
1.89
-1.57
1.62
-1.29
1.6
-1.17
2.04
-0.71
2.06
-0.17
2.23
-0.86
2.91
0
1.55
1
1.1
1.6
1.67
1.57
1.4
1.83
2.04
0.67
2.58
-1.17
1.33
-1.67
1.97
-1.29
2.36
-1.67
2.66
-1.8
2.59
-0.71
2.63
-0.14
2.19
-1.14
2.12
-1.2
2.17
-1.29
1.89
-1.71
1.8
-1.8
1.92
-1.67
2.5
-2.33
1.21
-1.5
2.07
-0.17
1.72
-0.8
1.79
-1.57
2.15
-1.43
1.51
-0.29
2.29
-0.67
2.07
-1.75
2.06
-1.17
2.32
-1
1.67
-0.14
1.86
1.97
138
夜間
左右
平均注視
標準偏
点
差
1.67
3.72
4
1.1
1.67
3.33
3
4
3.2
1.48
4
0.9
4.43
1.51
3.67
1.37
3.43
1.13
3.25
2.06
1.86
1.21
1.67
1.03
2.43
2.44
2.14
2.27
0.57
3.74
0.29
3.25
1.71
4.19
2.86
3.63
3.6
1.34
3.29
0.76
3.67
0.82
2.86
1.21
0.86
2.04
-2.43
2.07
1.33
3.08
3.43
0.79
3.86
0.9
2.17
1.94
3.71
1.38
4
0.63
4.71
0.49
3.67
1.21
2.67
2.16
4
1.22
4
0.82
3.67
1.21
2.83
1.17
2
2.1
2.5
2.07
1
3.21
-1
3.35
1.4
3.06
0.57
3.26
1.43
2.82
1.86
2.67
2
0
1.57
1.27
2.29
1.98
-0.8
2.39
0.17
2.86
1.33
2.42
-0.17
2.23
-0.17
1.83
1.2
1.48
1.71
3.15
0.86
3.53
1.43
3.51
0.67
4.03
2.5
0.58
3.17
1.6
0.5
2.61
1.71
2.29
2.06
上下
平均注視
標準偏
点
差
-1
2.38
0
2.68
-0.5
2.81
-0.57
2.64
-3.29
0.76
-3
1.29
-1.17
2.7
-1.14
2.97
-1.14
3.58
-3.29
1.5
-2.86
2.12
-2
2.24
-1.43
1.4
-0.5
1.64
-1.43
1.51
0.67
1.37
-1.5
2.55
-0.67
2.58
-0.57
2.76
0.14
2.27
-0.17
2.14
-0.5
1.97
0.5
1.22
-0.86
1.95
-2.5
2.17
0
1.63
0.43
1.72
0.57
1.51
0.57
1.9
0.14
1.86
0.83
2.14
0.5
1.64
-0.17
1.83
1.67
1.63
1.29
2.5
0.17
3.49
-1
1
-1.43
1.27
-0.67
1.37
0.6
2.61
0.2
2.05
0.29
1.6
-0.29
1.98
-1.86
1.07
-2
1.63
-2
2.45
-1
1.22
-1.5
2.35
-2.14
0.9
-0.5
1.64
-2.14
0.9
-1.67
1.75
0.43
1.99
-1.43
2.23
-1.43
2.07
-1.14
1.77
0.29
2.36
-1.86
1.46
-2.33
1.51
-1.57
2.23
1.94
昼間
左右
平均注視
標準偏
点
差
3
2.31
0.33
4.27
1.5
2.35
2
1.91
2.71
1.7
3
0.82
2.83
2.4
3.14
1.35
1.14
2.27
2.43
0.79
3.14
1.77
1.57
1.51
-0.86
0.9
-2.5
1.05
-1.29
3.45
3.5
1.38
1.5
2.74
1.67
3.5
2.57
2.3
2.71
2.06
1.17
1.72
-0.33
2.07
-1.67
1.75
-1.71
2.5
1.33
2.8
1
2.65
1.14
3.24
2.57
2.64
1.57
2.7
0.43
1.99
1.33
2.42
2.5
0.84
3
2.1
3.33
1.03
3.14
1.21
2.33
2.66
0.71
1.98
2.57
0.79
2
0.63
1.6
2.19
0.8
3.55
-2
2
1.43
3.69
1.57
2.94
-0.86
2.91
1.14
2.54
-1.8
3.11
2.17
2.64
1.86
2.79
0.83
3.82
2.29
0.76
1.33
2.25
-0.57
1.9
1.14
2.79
-0.29
2.93
-1.14
3.58
-1.14
3.02
1.43
2.51
-0.17
2.86
0
2.77
2.27
上下
平均注視
標準偏
点
差
0.29
1.7
0.71
1.2
0
2.52
1
2.31
1.67
2.8
2.33
1.75
2.29
0.95
2.17
0.98
2
0.82
1.71
2.14
1.14
2.79
1
2
2
0.58
1.17
1.72
0.29
1.25
0.71
1.6
0.6
2.07
0.29
2.06
0.43
1.72
0.57
1.62
0.57
1.99
0.67
1.37
-0.75
3.1
0.5
1.22
0.71
1.98
0.43
2.64
1
1.1
1.33
0.52
1.17
1.33
1.29
0.76
0.43
1.81
-1.17
0.4
0
1.29
-0.17
1.83
-0.29
1.25
-0.5
1.22
-0.33
1.63
-0.29
1.6
0.29
1.6
0.71
1.38
0.29
2.21
0.6
1.67
0
1.29
-1
1.1
-0.14
1.46
-1
1.53
-2.33
2.31
-1
1.9
0.71
1.7
0.5
1.76
0.17
2.14
0.5
1.22
-0.14
1.5
0.86
0.9
0.29
1.6
0.67
0.82
-0.33
1.97
0.43
1.4
-0.17
1.33
0.43
0.98
0.29
1.25
1.17
1.33
1.17
0.41
2.2
2.59
1
1.41
1.33
1.63
0.17
1.33
0.86
1.35
1.29
1.11
1.29
0.49
1.43
1.62
1
1.53
1
1.1
1.14
1.86
1.55
夜間
左右
平均注視
標準偏
点
差
-0.86
2.79
0.14
4.6
-1
4.62
-1.71
2.98
-3
1.55
-1.67
3.56
-1.14
2.73
-0.83
3.54
-0.25
3.3
-0.86
2.19
0.14
2.04
0.71
2.75
-1.57
3.21
0
2.68
-1.43
4.08
0.29
2.63
-1.4
3.05
1
3.79
1.14
3.13
2.86
1.07
3.29
1.25
1
3.52
3.75
1.5
1.67
2.66
2.43
2.7
3
2.16
2.33
1.97
2.5
2.07
0.33
2.5
3
1.41
2.43
2
-0.67
2.94
2.14
2.12
2.5
1.05
0.57
1.9
-0.83
2.93
0.83
2.14
1
2.94
2.29
3.04
3.14
2.41
2.43
2.7
2.2
3.11
2.14
1.68
1.67
2.5
1.14
2.73
1.43
3.64
1.67
4.16
3.17
2.79
2
3.87
3
3.46
3.33
3.2
4
1.1
2.43
3.15
3.86
1.07
3.71
1.5
3.5
2.74
4
1.55
4.57
0.53
4.5
0.55
4.14
1.21
4.43
0.79
4
1.1
4
0
4
1.22
3.2
0.45
3.17
1.33
3
1.26
3.57
1.13
3.71
1.38
1.29
2.36
3.14
1.95
3.29
2.06
2.67
2.34
3.29
1.25
2.32
上下
平均注視
標準偏
点
差
-1.5
2.07
-2
1.67
-0.83
1.94
-0.43
2.07
0
2
1
2.23
1.57
1.27
1.17
0.41
1.67
0.52
0.43
2.15
0.14
1.86
1.33
1.86
1.29
1.25
1
1.53
0.83
2.23
1.5
1.97
1.83
0.75
1.33
0.52
0.71
1.25
0.83
0.98
1
1.15
-0.5
1.76
0.14
1.86
-0.5
1.22
0.17
1.72
-0.29
1.25
-1
1.53
-1
1
-0.86
1.46
-0.83
1.6
-0.86
0.9
-0.14
1.86
-0.4
1.34
-1.14
1.57
-1.57
1.4
-0.29
1.89
-0.43
2.07
0.2
1.64
-0.5
2.07
-0.71
1.98
-0.57
1.9
-0.71
1.38
0.14
1.46
-0.14
1.46
0
1.73
-0.14
1.46
-0.14
1.46
0.17
1.72
-0.5
1.64
0.5
2.07
0
2
-0.43
2.51
-0.17
1.33
-1
2.76
0.86
1.46
0.57
1.62
-0.14
1.46
-0.43
0.98
0
1.29
-0.71
2.69
-0.57
1.62
-2.17
0.75
-2.71
0.95
-2.4
0.55
-1.57
1.27
-1
1.41
-2
1.1
-0.43
1.81
0
2
-0.57
1.13
0
1.29
0
1.29
0.14
1.46
1.17
2.14
1.71
1.8
0.33
2.16
1.56
左右
平均注視
標準偏
点
差
1
2.68
0
2.28
0.17
2.14
-1.14
2.48
-1.71
0.76
-1.57
3.78
-1.29
3.73
-1
3.9
-2.67
0.52
-1.29
2.06
-0.43
1.81
0.43
2.82
-0.86
2.04
-0.29
2.49
-0.67
3.08
-0.83
1.83
-2.83
1.72
-3.33
2.16
-1.57
2.91
-2.67
2.5
-0.71
1.89
-0.17
3.06
0.14
2.19
2.33
1.97
3.5
1.38
3.86
1.07
3.57
1.13
3.14
0.69
3.43
1.27
2.33
1.97
0.71
3.35
2.86
1.77
3
1.41
2.14
1.86
1.29
2.63
2.29
2.14
2.43
2.15
-0.4
1.82
0.5
1.22
-0.43
2.57
-0.14
3.29
0.29
2.29
1.29
3.35
1
2.45
2.57
2.3
1.43
1.9
1.14
2.34
0
2.37
3.67
1.51
3
0.89
3
1.26
1.86
2.54
2.17
3.31
2.17
2.79
1.86
2.91
2.57
2.76
1.29
3.4
2.57
2.44
0.57
3.69
0.14
3.34
3
0.82
3.83
0.98
3.71
1.38
4.2
0.84
4.29
0.95
4
0
3.33
1.21
3.14
1.57
3.2
1.3
1.43
2.91
2
1.63
1.14
2.04
1.43
3.31
3.33
3.2
3.57
1.27
4.5
0.55
2.11
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
6-3-2 昼間の注視動き
①台場区間の上下動き (図6-8の上、■の破線グラフ)
平均注視動きのグラフから見ると図6-8のA4の注視点(-2.3)が若干外れているが、そ
れ以外のすべての平均注視点が6-1-4で定義した中央部(上2-下2)に収まっている(標準
偏差:1.97)。その中でも3ヶ所(A1,A2,A3、図6-8参照)を除いた他のところは注視動きが
0より下に見られた。長時間連続的に注視点が上にあるA3のケースは5章のシオサイトで
よく見られた沿線周辺の建物が壁のように続いている近景であった。
②台場区間の左右動き (図6-8の上、□の破線グラフ)
上下動きに比べ、平均注視動きのグラフ(標準偏差:2.06)の波が激しくなっているが、
グラフは持続的に右を中心に動いている。しかし、動きが急に左へ向かうところが図68で示したB1,B2,B3のように3ヶ所ある。このケースは近景中心の景観が多く見られる台
場区間の中、建物の隙間から空や遠景が見える景観であった。
③青海区間の上下動き (図6-8の下、■の破線グラフ)
昼・夜間の平均注視動きのグラフの中、最も小さい標準偏差(1.55)を見せた。注視動
きは下1-上3の範囲に収まっており、74秒の走行時間の間58秒間の動きが0-上2の範囲で
見られ、下が多かった台場区間とは反対の動きが見られた。図6-8のC1では8秒間注視点
の上下位置が頻繁に3回変化する動きが見られた。このケースは景観が遠景から近景に
変化するところであった。
④青海区間の左右動き (図6-8の下、□の破線グラフ)
昼・夜間の平均注視動きのグラフ中、最も大きい標準偏差(2.32)を見せ、最も被験者
によるバラつきのある結果が得られた。注視動きの中、図6-8のD1で見られる3回の位置
関係が変化するところと後半に行く程徐々に右に向かうところの2つのケースを見ると
前半は遠景の連続であるが、線路が曲がり景観の変化が激しいところ、後半は景観が遠
景から近景に変わるところであった。
139
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
図 6-8.台場区間、青海区間の平均注視動きのグラフ (縦軸:グリッド位置・横軸:時間の流れ注6-5))
6-3-3 夜間の注視動き
①台場区間の上下動き (図6-8の上、■の実線グラフ)
平均注視動きのグラフ(標準偏差:1.94)から見ると図6-8のa1、a2、a3以外は昼間の台
場区間より1段下に下がった範囲の上1-下3の範囲に動きが収まっていた。そして、動き
の高さの差異はあったが、夜間でも昼間の似通ったところ(26-36秒の間)で似通った注
視動きが見られ、近景が主に見られる景観構造なら夜間にも昼間と似通った注視動きが
表われることが分かった。
②台場区間の左右動き (図6-8の上、□の実線グラフ)
平均注視動きのグラフ(標準偏差:2.27)は昼間のように右で動いていたが、昼間より
左を見る回数が多かった。図6-8のb1では左右の位置関係の変化が激しく表われた。こ
のケースは続いてきた近景が遠景に変化するところであったが、景観の変化により近景
の建物の窓の単調な光源の配列に慣れた視線が様々な種類の照明が見える遠景になじむ
ために表われる現像である。
140
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
③青海区間の上下動き (図6-8の下、■の実線グラフ)
上下の平均注視動きのグラフ(標準偏差:1.56)を見ると、図6-8のc1で変化がほとんど
ない直線的な動きが見られた。このケースは遠景に似通った規模の建物が連続に建ち並
び、照明されている場合の景観であった。
④青海区間の左右動き (図6-8の下、□の実線グラフ)
左右の連続動き(標準偏差:2.11)は全体的に昼間の青海区間と似通った形をしている
が、昼間の前半にあった注視点の位置が急激に変化する現像は見られなかった。これは
夜間には昼間より周辺の景観の変化に対し、人の視線が鈍感になるためであると考えら
れる。後半は昼間と同様右に向かっていた。
6-3-4 昼・夜間シークエンス景観の注視範囲による特性
注視動きの全体的な傾向は、上下の動きより左右の動きが激しいことが分かったが、景
観の奥行きが分かりにくくなる夜間の方が昼間より注視動きが収まっている傾向が見えた。
視距離から見ると近景の台場区間が遠景の青海区間より注視動きのバラつきのある傾向が
見られた。注視動きは近景は遠景より右への動きが強いことが分かった。
そして、短時間に注視動きの変化に影響を与える要因としては昼間には視距離の変化
(近景⇔遠景)、夜間には光源の量の変化があげられる。
図 6-9.注視方向と範囲の昼間と夜間の差異
141
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
6-4
注視動きのグラフから見る昼・夜間の車窓景観
本章では6-3で得られた台場区間と青海区間の車窓景観の平均注視動きのグラフを用い、
各区間ごとに昼・夜間グラフを重ね合わせる(図6-8参照)。その後、重ね合わせたグラフ
から昼・夜間において最も近接しているところと最も離れているところを1ヶ所ずつ計8ヶ
所を選ぶ。この8ヶ所の1秒静止画像からグラフの幅が狭い景観(注視動きが収まっている
景観)とグラフの幅が広い景観(注視動きがばらついている景観)の特性を明らかにする。
6-4-1 台場区間
昼間の上下の注視動きのグラフの幅が広いところは図6-8の①(昼・夜:10-12秒区間)、上
下の注視動きグラフの幅が狭いところは図6-8の②(昼:36-39秒区間、夜:35-38秒区間)で
あった。
左右の注視動きのグラフの幅が広いところは図6-8の③(昼・夜:13-15秒区間)、上下の注
視動きのグラフの幅が狭いところは図6-8の④(昼:36-38秒区間、夜:35-38秒区間)であっ
た。近景が中心になっている台場区間の場合は、上下と左右の注視動きのグラフの幅が広
いところと狭いところがほぼ一致する区間で存在していることが分かった。
写真 6-2.台場区間の注視動きの幅が広い画像(左の2枚)と狭い画像(右の2枚)
142
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
上下の幅が広いところを「1秒静止画像」より確認すると近景の間に遠景が見える景観
であった。昼には近景の建物の隙間から空や遠景が見えるが、夜になると隙間から見える
遠景が見づらくなり、近景の情報系の景観要素や建物の照明が注視対象としての主な役割
を果している。幅が狭いところは、近景が絶えず連続する景観で、大規模な建物が壁のよ
うに続く景観などがそれに相当する。この場合は建物のディテールが注視動きに影響を与
える。たとえば、建物に付属されている階段が昼・夜間ともに主な注視対象になっていた。
左右の幅が広いところも上下の幅の場合と似通った景観で近景の間から遠景が見える景
観であり、幅が狭いところは上下と同様な景観であった(写真6-2参照)。
6-4-2 青海区間
昼間の上下の注視動きのグラフの幅が広いところは図6-8の⑤(昼:60-66秒区間、夜:6167秒区間)、上下の注視動きのグラフの幅が狭いところは図6-8の⑥(昼:18-24秒区間、
夜:19-25秒区間)であった。
左右の注視動きは上下の注視動きと反対で、グラフの幅が広いところは図6-8の⑦
(昼:18-21秒区間、夜:18-22秒区間)、グラフの幅が狭いところは図6-8の⑧(昼:62-67秒区
間、夜:64-69秒区間)であった。
写真 6-3.青海区間の注視動きの幅が広い画像(左の2枚)と狭い画像(右の2枚)
143
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
上下の幅が広いところを「1秒静止画像」により確認すると近景の建物が続いてるが、
台場区間の注視動きの幅が広いところと同様に空が画像の上部に見える景観であった。そ
して、幅が狭いところは、遠景のランドマーク的な建物が建ち並んだ景観で、夜間でも照
明が照らされ昼間の景観構造と同様に見える景観であった。
左右の場合は上下と反対で、幅が広いところは上下の幅が狭いところ、幅が狭いところ
は上下の幅が広いところであった(写真6-3参照)。
6-4-3 昼・夜間シークエンス景観の視距離による特性
注視動きを重ね合わせたグラフの幅の差に着目した車窓景観の分析から以下のような
昼・夜間シークエンス景観の視距離による特性が把握できた。
近景のシークエンス景観では、昼・夜間にかかわらず、上下と左右の注視動きが同じ傾
向にある。近景でも空が見え、景観の奥行きがある場合は注視動きの幅の差が大きくなる。
しかし、同様な景観要素が連続して続く近景の場合は注視動きの幅が小さくなる傾向があ
る。遠景のシークエンス景観では上下の動きより左右の動きより激しいことが分かった。
144
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
6-5
小結
昼・夜間の車窓景観における人の注視特性を注視方向と注視動きの観点から分析した結
果、以下のことが明らかになった。
注視方向の上下、左右の関係は、昼間には視点の進行方向とともに、上下に幅広く注視
点が分布している。一方、夜間には注視範囲が限定的になり、近景の光源を眺める割合が
大きくなることが明らかになった。
シークエンス景観の重要な特性である注視動きは、全体的な傾向としては視点移動によ
る左右の動きが大きいことが分かった。そして、近景中心のシークエンス景観には昼・夜
間ともに類似の注視動きが見られるが、景観の奥行きが分かりにくくなる夜間には収束す
る傾向があることが明らかになった。
145
第6章・・・注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景
<注釈>
注6-1)汐留シオサイト地区においても夜間に対する照明計画が立てられているが、本研究の目
的が移動する電車から見たシークェンス景観の分析であるため、新橋駅から汐留駅までの
区間は距離的に短く(400m)、また高層ビルに囲まれた部分が多く視線の広がりが少ないと
いう理由から、本研究ではお台場エリアを選択した。
注6-2)注視方向と注視動きの分析には、研究の方法③で得られた10秒おきの静止画像はその間
の時間の幅が広くて信頼度が低いと判断し、秒単位の中で最も短い1秒おきの静止画像を用
い、分析を行った。
注6-3)1秒静止画像の各区間ごとの詳細は、昼間のお台場海浜公園駅-台場駅が434枚、テレコム
センター駅-青海駅が518枚で、夜間のお台場海浜公園駅-台場駅が420枚、テレコムセンタ
ー駅-青海駅が532枚である。
注6-4)写真6-1の中の注視点の上下左右位置は注表6-3の基準にもとづいて注視方向を把握し、
垂直・水平分布表(表6-1,6-2)を作成した。
注表 6-3.注視点のグリッドの位置関係表
注視点の位置
表7,8の区分範囲
上4超過-上5以下
上5
上3超過-上4以下
上4
上2超過-上3以下
上3
上1超過-上2以下
上2
0超過-上1以下
上1
0未満-下1以上
下1
下1未満-下2以上
下2
下2未満-下3以上
下3
下3未満-下4以上
下4
下4未満-下5以上
下5
注6-5)右のグリッド写真の括弧付き数字(数字)は5章の注視動きのグラフを作成する際のデータ
として用いられた。
注6-6)昼・夜間における各区間の実際の走行時間が異なったが(台場区間:昼62秒,夜60秒、青
海区間:昼74秒,夜76秒)、その差が小さかったため、本研究では各区間の短い時間軸に昼
夜平均注視動きグラフを載せて分析を行った。
146
注・視・特・性・か・ら・見・た・車・窓・夜・景・・・第6章
<参考文献・資料>
文1)渡辺聡、後藤春彦、三宅諭、李彰浩:商業地街路における歩行者の看板注視傾向に関する
研究−銀座中央通りにおける歩行実験の分析、日本建築学会計画系論文集
第574号、
pp.113-120、2003.12
文2)渡辺聡、後藤春彦、三宅諭、中村隆:商業地街路における歩行注視特性に関する研究、日
本都市計画学会学術研究論文集 No.36、pp.769-774、2001
文3)知花弘吉:歩行者の注視傾向からみた空間把握に関する研究、日本建築学会計画系論文集
第520号、pp.159-164、1999.06
文4)速水研太、後藤春彦:街路シークェンス景観の定量記述手法に関する研究、日本建築学会
計画系論文集 第502号、pp.155-162、1997.12
文5)李永桓、後藤春彦、李彰浩、関口信行:シークェンス景観における昼・夜間の注視特性の
相違に関する基礎的考察、日本建築学会大会(近畿)学術講演概要集 F-1、pp.243-244、
2005
文6)面出薫、LPA:都市と建築の照明デザイン、六耀社、2005
文7)都市美研究会:都市のデザイン<きわだつ>から<おさまる>へ、学芸出版社、2002
147
第7章
7-1
7-2
7-3
7-4
はじめに••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••151
7-1-1
本章の目的
7-1-2
本章で用いる用語
7-1-3
対象地の選定
7-1-4
分析の方法
俯瞰夜景イメージ要素の抽出••••••••••••••••••••••••••156
7-2-1
実験の概要
7-2-2
イメージスケッチによる実験
7-2-3
エレメント想起法による実験
7-2-4
8つの夜間景観イメージ要素
俯瞰夜景イメージ要素による景観の類型••••••••••••••••165
7-3-1
商業系土地利用地域
7-3-2
住居系土地利用地域
7-3-3
工業系土地利用地域
小結••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••174
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
7-1
はじめに
7-1-1 本章の目的
今日、超高層建築が増え、国内でも100mを超えるビルが500棟にのぼっている。さらに
商業・業務施設のみならず居住施設も高層化が進み、眺望点・眺望人口の増加から「都市
を俯瞰する」という体験が都市の中で身近なものになってきた。
また、景観法において、景観は国民共通の資産として位置づけられたが、景観の議論は
昼間景観が主であり、夜間景観は防犯上の安全面から議論されることが多く、夜間景観を
都市資産として計画対象にとりあげている事例は数少ない。こうした背景のもと、都市全
体のイメージや構造の把握に大きく関与している俯瞰夜景の価値向上を追求し、今後、総
合的に管理・計画していく必要があると考えられる。
そこで、第7章は俯瞰夜景から夜間景観の特性を解明する第1段階として、人が都心の俯
瞰夜景を見て把握する際に、手がかりになる俯瞰夜景を構成するイメージ要素を明らかに
する。その後、この俯瞰夜景イメージ要素をもとに現在の東京における俯瞰夜景の類型を
明らかにする。
7-1-2 本章で用いる用語
①俯瞰夜景
俯瞰型夜間眺望景観。本章においては高所から眺望(俯瞰)される夜間景観のことを言う。
単に夜景や景観と言う場合もこれを指す。
②俯瞰夜景イメージ要素(NIE)
都市の俯瞰夜景を見る上で重要な手がかりとなる景観イメージを構成する要素のことで、
具体的には7-2で抽出していく。「俯瞰夜景イメージ要素」の英語表現であるNight view
Image Elementを略してNIEとする。
151
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
7-1-3 対象地の選定
①NIEの抽出
東京タワーの展望台をNIEを抽出するための視点場として設定し、4方向の映像注7-1)を実
験映像とした(図7-1参照)。
視点場の選定理由を以下に示す。
▪ 様々な都市要素が含まれていることが望ましいので、住居系・商業系・工業系土地利
用に近接した視点場である。
▪ 多くの人が訪れ、公共性の高い視点場である。
映像1
実験映像説明
映像2
西方向の夜景
北方向の夜景
映像中央には大きなビル(六本木ヒルズ)が
あり、縦に太い道路、ビルの手前横方向に
高速道路が走っている。手前から奥にかけ
て住宅地域が広がっており、奥には商業地
(渋谷∼恵比寿)が広がっている。
映像上方に皇居があり、その周りを商業地域
(主に霞ヶ関∼神田の業務地)が囲んでいる、
中央左にやや大きいビルがライトアップされ
ている。
実験映像
映像3
実験映像説明
映像4
北東方向の夜景
南東方向の夜景
全体に商業地域が広がっており、その中を
グリッド状に引かれた道路が走っている。
手前には2つの超高層ビルが並んでおり、右
上には銀座の繁華街が広がっている。
映像中央には東京湾が広がり、その周りを工
業地域が囲んでいる。左上から右下にかけて
高速道路が走っており、手前には商業地域・
橋でつながれている。奥には臨海副都心が広
がる。
実験映像
図 7-1.NIEの抽出を行う際に扱った4方向の映像
152
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
②NIEによる俯瞰夜景の類型
現在都内に170棟ある100m以上のビルの中から、本研究では一般に開放されている展望
台、展望ロビー(表7-1参照)を視点場に設定し(20ヶ所)、そこからの俯瞰夜景を取り上げ
た。
図 7-2.20ヶ所の視点場と眺望対象地域
153
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
no
施設名
1
東京タワー
2
新宿
センタービル
3
新宿住友ビル
4
新宿NSビル
5
新宿野村ビル
6
7
8
9
10
東京都庁
第1本庁舎
恵比寿ガーデンプ
レイスタワー
六本木ヒルズ
森タワー
世界貿易
センタービル
文京シビック
センター
11
練馬区役所庁舎
12
サンシャイン60
13
丸の内ビル
14
15
16
17
18
聖路加国際病院
セントルークスタワー
キャロット
タワー
江戸川区総合区民施設
タワーホール船堀
汐留電通
本社ビル
フジテレビジョン
本社ビル
19
テレコムセンター
20
天王洲
シーフォートスクエア
154
表 7-1.20ヶ所の視点場注7-2)注7-3)注7-4)
高さ(m)
眺望
眺望可能地域
タイプ
範囲
(展望室高さ)
333
360°
銀座、汐留、羽田
展望台
(250)
展望
223
120°
新宿、渋谷
ロビー
(200)
展望
210
120°
杉並区
ロビー
(200)
展望
133
120°
新宿、渋谷
ロビー
(100)
展望
209
120°
杉並区、中野区
ロビー
(200)
243
360°
展望台
新宿、杉並区、世田谷区
(200)
展望
167
240°
新宿、渋谷、世田谷区
ロビー
(150)
238
新宿、渋谷、銀座、汐留、羽
360°
展望台
(200)
田、品川、世田谷区
158
銀座、汐留、霞ヶ関、東品
360°
展望台
(150)
川
展望
142
300°
後楽園、日本橋、文京区
ロビー
(100)
展望
115
300°
新宿、中野区、練馬区
ロビー
(100)
240
新宿、池袋、中野区、北
360°
展望台
(200)
区、板橋区
展望
179
銀座、汐留、霞ヶ関、八重
120°
ロビー
(150)
洲
展望
220
240°
汐留、月島、東品川
ロビー
(200)
展望
124
240°
世田谷区
ロビー
(100)
115
360°
葛西、江戸川区
展望台
(100)
展望
210
120°
東品川、豊洲
ロビー
(200)
展望
123
270°
東品川、羽田、大井埠頭
ロビー
(100)
99
360°
展望台
東品川、羽田、有明、青海
(100)
展望
99
120°
東品川、大井埠頭
(100)
レストラン
商・工
商
住
商
住
住・商
住・商
住・商・工
商・工
住・商
住・商
住・商
商
住・商・工
住
住
工
工
工
工
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
7-1-4 分析の方法
①NIEの抽出注7-5)
被験者に予め用意したスケッチサンプルを見せた後、俯瞰夜景の映像を90秒間注7-6)見せ
る。次に映像を見せた後、部屋を明るくし、なるべく多くの要素を描かせるため時間は無
制限にし、記憶をたよりにそれを描き起こさせる。光や闇という夜景独特の条件を絵に描
きやすいように、また分析のため白色(物体の輪郭)、黄色(光)、緑色(闇)の3色の色鉛筆
を自由に使い、黒紙に表現させた。1人4方向(4枚)の回答を得る。
イメージスケッチの実験を終えた後に、被験者の印象に残っているものを言語によって
自由に書かせる。回答の挙がった全要素をまとめ、それぞれに対して想起率を求める。
②NIEによる俯瞰夜景の類型化
抽出されたNIEをもとに様々な俯瞰夜景の類型は以下の方法で行う。
▪ 都内において20の視点場を設定する。
▪ 各視点場から撮影可能な範囲を不足なく撮影する。
▪ 被験者実験により各映像に現れるNIEを数値化し、クラスター分析を通じて類型化する。
撮影した全133映像を土地利用パターンごとにトリミングし(図7-9の写真参照)、特徴的
な60映像を選定する。
実験に先立って被験者10人に各NIEについて詳細に説明・質疑応答をし、よく理解が得
られた上で映像を見せながらそれぞれの映像に対して○(目立つ)、×(目立たない)とその
中間として△(やや目立つ)の3段階に各NIEを評価させるアンケート実験を行った。○=+
2・△=+1・×=0の得点を付けて集計し、10人の合計点を持ってその映像の得点とし、8つ
のNIEの得点の割合を考察する。
▪ 実験から得られた8つのNIEに対する得点をもとに、土地利用ごとに映像間の8軸ユーク
リッド空間内のクラスターを分析(ウオード法)し、得られたデンドログラムから2段階
に分類したクラスター(以下、NIEの類型)ごとに考察する。
▪ 類型化された映像から各クラスターに名前をつけ、含まれる全映像の平均得点から8軸
のレーダーグラフ(以下、レーダー)を作成する。それぞれの類型の特性をNIEの得点よ
り考察する。
155
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
7-2
俯瞰夜景イメージ要素(NIE)の抽出
7-2-1 実験の概要
俯瞰夜景の景観構造を探るため、ビデオ映像注7-7)を用いたイメージスケッチによる認知
マップ作成を行った注7-8)。次にイメージスケッチの結果を補完する注7-9)ために言語による
エレメント想起法の調査を行い、2つの実験の結果からNIEを抽出した。イメージ要素を抽
出する際にNIEの特性を出来る限り詳細に把握する必要かあるので、光・物体・暗闇の3要
素に分け、実験・分析を行った。
7-2-2 イメージスケッチによる実験
被験者のスケッチ(図7-3∼図7-6のイメージスケッチ参照)から、同じ箇所を表現するの
にも、被験者によって白色と黄色の異なる色を使用しているため、光として認識した者、
または輪郭線の強い物体として認識した者がいることが分かった。それらを考慮した結果、
被験者のスケッチから10種類の共通する図形が抽出できた。4つの映像ごとに共通項目だ
けをまとめた画像をつくり(図7-3∼図7-6の共通項目の抽象画像参照)、その映像と元の実
験映像を見比べ、10種類の共通項目に名称を与えた(表7-2参照)。
156
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
映像1
イメージスケッチの例
実験映像と共通項目との対応
共通項目の抽象画像
図 7-3.映像1のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
157
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
映像2
イメージスケッチの例
実験映像と共通項目との対応
共通項目の抽象画像
図 7-4.映像2のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
158
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
映像3
イメージスケッチの例
実験映像と共通項目との対応
共通項目の抽象画像
図 7-5.映像3のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
159
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
映像4
イメージスケッチの例
実験映像と共通項目との対応
共通項目の抽象画像
図 7-6.映像4のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
160
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
表 7-2.共通項目とその抽出判断基準
アイコン
1
イメージスケッチに現れた共通図形
・白色を使って物体の輪郭線を描いてあるも
の。
(複数(3つ以上)の同様の形態がまとまりを持っ
て描かれている場合は一様な面状光とする。)
・黄色を使って光として物の形態を描いてある
もの。
共通項目の名称
ランドマーク(物)
・黄色で集中的に描かれた点として感じるも
の。
3
・黄色の線または白/黄色の線を重ねて 描いて
あるもの。
・線的なものではなくても、それが全体として
まとまりを持って方向性を感じるもの。
・2本の白色のほぼ平行な線で描かれ、その間の
部分を黄色を使って描いてあるもの。
4
・画面の中に白色で1本の線として描いてあるも
の。
境界線
・一定の範囲の中に黄色または黄/緑色で同じよ
うな形態や密度で描いてあるもの。
一様な光の領域
・白色または黄色で同様の形態のものを、まと
まりとして複数(3つ以上)を描いてあるもの。
6
・黄色で横あるいは横方向に破線や直線をほぼ
平行に何本も配列して描いてあるもの。
7
・緑色で一定の範囲を塗りつぶしてあるもの。
ランドマーク
ランドマーク(光)
2
5
NIE
異質な光
異質光
連続する光の線
道路
同様の建築群
線状光
境界線
面状光
からなる領域
配列された光
配列光
暗闇
暗闇
161
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
7-2-3 エレメント想起法による実験
イメージスケッチでは被験者の技量により、個人差が生じると考えられるので、言語に
よるエレメント想起法を用いてそれを補うこととした。同時に、エレメント想起法は被験
者の描いた内容をより正確に理解するための役割も果たした。
被験者より得られた回答(言語)から映像ごとに各言語が示すものをスケッチを基に判断
し、同じ箇所を指している言語、同じ意味合いの言語を1つのグループとして分類した(表
2)。それら言語で表現された要素群はイメージスケッチから得られた共通項目と全て対応
したが、「連続する光の線」「異質な光」において、イメージスケッチでは表現できなか
った光の動きを示す言語が多く見られた(表7-3)。
表 7-3.エレメント想起法の分析例 (映像1:想起数2以上のものを示す)
想起数
想起率(%)
中央の大きなビル
想起された言語
ランドマーク
27
77.1
車の流れ
異質な光
10
28.6
道路
9
25.7
道路の光の筋
9
25.7
車
映
像
1
連続する光の線
6
17.1
車の光
4
11.4
渋滞した道路
3
8.6
異質な光
7
20.0
森(墓地)の闇
暗闇
6
17.1
全体の光の形
一様な光の域
5
14.3
異質な光
3
8.6
一様な光の域
2
5.7
連続する光の線
2
5.7
ビルの光の層
配列された光
2
5.7
動くものの光
異質な光
2
5.7
道路沿いの看板
(の光)
真ん中右側で光が
点灯
小さな光のかたま
り
中央上にある光の
帯
162
共通項目との関係
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
7-2-4
8つの夜間景観イメージ要素
イメージスケッチから10の共通項目が抽出でき、エレメント想起法から光の動きを表す
項目として「動光」が抽出された。さらに、この11の共通項目の中で、同じ箇所を示して
いる場合をまとめ8項目とした。すなわち、ランドマーク(光)とランドマーク(物体)を
「ランドマーク」、連続する光の線と道路を「線状光」、一様な光の域と同様の建築群か
らなる領域を「面状光」としてまとめた。
これら8項目を俯瞰夜景を認識する上で重要な手掛かりとなるNIEとした。それぞれNIE
は性格上点・線・面の要素に大別できる(図7-7参照)。以下にNIEの名称と定義を記した。
また実験から得られた実際の都市要素との対応例も括弧内に載せた注7-10)。
①ランドマーク
光または物体として捉えられる単体の建造物や施設。
(高層建築、観覧車、橋など)
②異質光
輝度が高い、巨大である、色の違うなどの理由で目につく光。
(屋外看板、ネオン、投光照明など)
③動光
点滅する光、動きのある光。
(航空障害灯、看板、車・電車・船の交通機関など)
④線状光
連続する、または連続していると認識される線状の光や物体。
(高速道路、道路、街灯の連続など)
⑤境界線
物体の輪郭線、明暗の領域を分ける境界となる線。
(地平線、海岸線、建物の輪郭線など)
163
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
⑥面状光
面状に光や物体が分布し、ある一定のまとまりとして捉えられる領域。
(看板群、ビル群、まばらな住宅の光など)
⑦配列光
面状光と同様に面的なNIE。しかし、面状光と違い整然と規則正しく配列された様に感
じる光の集合。
(ビル窓、マンションの廊下灯、グリッド状に広がる街灯など)
⑧暗闇
まとまって一定な範囲を持つ暗い領域。
(森、海、空など)
図 7-7.NIEの各項目の位置づけ
164
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
7-3
俯瞰夜景イメージ要素による景観の類型
7-3-1 商業系土地利用地域
①1次クラスター分析から商業系土地利用地域の俯瞰夜景は大きく2つに分けられた(図
7-8参照)。
A.看板で溢れる繁華街
映像の中に多くの看板・ネオンサインが映り、商業系土地利用の中でも様々な店舗、
販売施設が密集する景観。
B.ビルが林立するオフィス街
ビルが立ち並び、商業系土地利用中でもオフィスビル、業務施設を中心とした景観。
②2次クラスター分析からAはA1・A2の2つに、BはB1・B2・B3・B4の4つの景観に分類で
きた(図7-8、7-9参照)。
③NIEレーダー(図7-9参照)からそれぞれの類型化された映像を評価すると、Aでは「異
質光」の配分が大きく、Bでは「ランドマーク」「配列光」が大きく、それぞれ繁華
街とオフィス街の性質を分けた要因が分かった。
次にAの中でA1・A2のレーダーを比較してみると、個々の看板・ネオンサインが大きく
目立つA2の方が「異質光」「動光」が大きかった。
B1-B4はどれも上記の「ランドマーク」「配列光」以外に「動光」が大きく、主な要因
として航行灯の点滅が考えられる。B1は「ランドマーク」「異質光」が小さく、均一化さ
れたビル群の性質を、B2は逆に「ランドマーク」「異質光」が大きく、ビル群の中にも看
板が存在している景観で表した。B3は特に「配列光」の配分が大きく、個々のビルが認識
され、ビル窓など細部が目立つ景観であった。B4は「境界線」「面状光」が大きく、都市
の遠景から光のまとまりが認識され、スカイラインや周囲との境界が明瞭であることが分
かった。
165
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
図 7-8.商業系土地利用地域の俯瞰夜景のクラスター分析
166
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
図 7-9.NIEレーダーによる類型(商業系土地利用地域)
167
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
7-3-2 住居系土地利用地域
①1次クラスター分析から住居系土地利用地域の俯瞰夜景は大きく2つに分けられた(図
7-10参照)。
C.光が分散された低層住宅群
主に一戸建てなどの、低層住宅地が広がる景観。
D. 光が配列された団地・マンション群
マンションや団地など、中・高層の集合住宅が建ち並ぶ景観。
②2次クラスター分析から、CはC1・C2に、DはD1・D2の景観に分類できた(図7-10、7-11
参照)。
③Cに比べ、Dは「配列光」の配分が大きく、マンションや団地などの整頓された光が多
い景観であることを表していた。
C1・C2のレーダーは似た形をしていたが、C2が「線状光」が大きく、連続した街灯が目
立つ景観であることが分かった。
D1・D2は「動光」「面状光」に差が見られ、映像に移動中の車が見られたD1には「動
光」が大きく、マンションに混じって低層住宅が見られたD2には「面状光」が大きい結果
が得られた。
168
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
図 7-10.住居系土地利用地域の俯瞰夜景のクラスター分析
169
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
図 7-11.NIEレーダーによる類型(住居系土地利用地域)
170
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
7-3-3 工業系土地利用地域
①1次クラスター分析から工業系土地利用地域の俯瞰夜景は大きく2つに分けられた(図
7-12参照)。
E.一様なオレンジ色の工業地
工業地域全体に一様なオレンジ色の光が均一に広がる景観。
F.強力な光源が目立つ工業地
屋外を照らす極端に明るい光源が目立って見える景観。
②2次クラスター分析から、EのみE1・E2の2つの景観に分類できた(図7-12、7-13参照)。
③E、F両方ともに「面状光」が大きく、工業地が1つの光のまとまりとして見られてい
ることが分かった。Fでは「異質光」が特に大きな値を示し、これは工業地全体を照
らす非常に明るい光源を表していると考えられる。
E1には羽田空港の映像が、E2には埠頭の映像が集まり、それぞれ飛行機や空港の誘導灯
の点滅、船の往来が「動光」の要因になっていると考えられる。また、工業系土地利用は
近景遠景の違いよりも場所の性質がNIEの配分に反映されることが分かった。
図 7-12.工業系土地利用地域の俯瞰夜景のクラスター分析
171
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
図 7-13.NIE類型のクラスターのレーダー(工業系土地利用地域)
172
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
類型化された景観について、8つのNIEの特性が明らかになった。商業系土地利用地域は
「異質光」「動光」「面状光」が大きく、さらにオフィス街は「ランドマーク」「配列
光」が加わり、全体に面積の大きいレーダーとなった。これは景観の中でNIEをつくる
様々な都市要素が多く存在していることを表していた。
住居系土地利用地域は「異質光」「線状光」「面状光」「暗闇」の配分が大きく、団
地・マンション群に分かれると「配列光」が目立った。これら2つのことから「配列光」
の存在は俯瞰夜景を分類する大きな要因であった。
工業地系土地利用地域は、全体に面積の小さいレーダーであったが、「面状光」が大き
く、空港以外の場所では「異質光」の配分も大きかった。さらに、住居系と工業系では
「暗闇」が占める割合が大きく、「ランドマーク」がないのも特性として明らかになった。
173
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
7-4
小結
人が都市の俯瞰夜景を把握するための重要な手掛かりとなるNIEとして「ランドマー
ク」「異質光」「動光」「線状光」「境界線」「面状光」「配列光」「暗闇」の8つに整
理できた。
これらNIEをもとに、商業・住居・工業系3つの土地利用の俯瞰夜景を大きく類型化する
と、商業系土地利用地域は「看板で溢れる繁華街」「ビルが林立するオフィス街」、住居
系土地利用地域は「光が分散された低層住宅群」「光が配列された団地・マンション群」、
工業系土地利用地域は「一様なオレンジ色の工業地」「強力な光源が目立つ工業地」のよ
うにそれぞれの土地利用地域ごとに2つずつ分けられ、同様な土地利用地域でもNIEの配分
によって異なる景観が存在していることが明らかになった。そこで、今日の都市の俯瞰夜
景はこれら6つの景観から成り立っていることが明らかになった。
さらに、この6つの俯瞰夜景の類型を細かく分けると、下の表7-4のように13種類として
分類でき、NIEの配分が俯瞰夜景の類型に影響を与えていることが明らかになった。
表 7-4.NIE配分による東京の俯瞰夜景の13種類
土地利用
NIEの配分による1次分類
看板で溢れる繁華街
NIEの配分による2次分類
① 均一化された看板の密集
② 個々の目立つ看板の密集
③ 均一化されたビル群
商業系土地利用
ビルが林立するオフィス街
④ 看板を含むビル群
⑤ 個々が浮き立つビル群
⑥ 遠景の繁華街を含む超高層ビル群
光が分散された低層住宅群
住居系土地利用
工業系土地利用
⑧ 不均一に光が分散された低層住宅群
光が配列された団地・
⑨ 団地・マンション群
マンション群
⑩ 団地・マンション群と低層住宅群混在
一様なオレンジ色の工業地
⑬ 強力な光源の目立つ工業地
174
⑦ 均一密度に光が分散された低層住宅群
⑪ 空港としての工業地
⑫ コンテナヤードとしての工業地
俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ・・・第7章
<注釈>
注7-1)各方向の映像における眺望の俯角を一定にし、画面上部4分の1に地平線が入るようにし
た。
注7-2)360°展望のためのフロアがあるものを「展望台」、一方向の窓など階を部分的に展望室
として利用しているものを「展望ロビー」と分類した。
注7-3)眺望範囲は概算で30°ごとに表した。
注7-4)工業系土地利用地域を眺望可能な視点場が極端に少なく、例外的に100m以下の建物を含
めた(表7-1の建物19(高さ:99m),建物20(高さ:99m))。
注7-5)本研究での4種類の被験者実験は、全て様々な学部の大学生・大学院生(スケッチに必要
な描写能力があり、かつ調査協力が得やすい)を対象として、映像を暗室にてプロジェクタ
ー投影(90インチの画面)して行った
注7-6)映像を見る時間を何段階か変えて同様に実験した結果、30秒より60秒、60秒より90秒の
方がスケッチに描かれるものが多かったため時間が長い方が被験者の記憶に残ると考えら
れる。しかし90秒以上に関してはあまり変化が見られなかったため、本研究では90秒間の
投影を採用した。
注7-7)夜間景観の印象実験をするにあたって、その再現性と実験の効率を得るために本研究で
はビデオによる映像を使用した。映像は定点撮影による動画で、あらかじめ決められた範
囲を撮影した。音声情報は使用しない。
映像を選んだ理由は以下のとおりである。
①写真による静止画面に比べ、時間の経過を光やものの動きとともに再現することができ
る。
②同じフレームを1つのシーン景観として被験者に見せることができる。
後者に関しては展望室内の現場で同様に行った実験結果からみると、それぞれの被験者
の可視領域や対象が定まらず景観分析のデータとして扱いづらいという問題点が挙げられ
る。
以上から7章、8章の実験・分析にあたって全てビデオ映像を用いた。
注7-8)通常の景観調査に用いられるアイマークレコーダやあらかじめ言葉を用意した印象評価
などの実験も考えられるが、主に光で構成される俯瞰夜景という特殊な性質から、本研究
では景観映像を最初に見てもらい、あとでそれをスケッチに書き起こしてもらうというオ
リジナルの認知マップ調査を行った。この方法は被験者の中で景観の再構築が行われる際
に映像の中で印象に残ったもの、あるいは景観把握・認識に必要な要素が描かれることに
なり、目的のために有効と考えられる。
注7-9)ここで言う補完とは本文後述の①スケッチの技術的な問題の補完、②スケッチに描かれ
たものに対する説明という意味での補完の他に、③絵画という静止した平面表現の欠元と
言語という次元の、2つの別々の次元媒体による調査から結果を抽出することで、1つの次
175
第7章・・・俯・瞰・夜・景・か・ら・形・成・さ・れ・る・都・市・の・イ・メ・ー・ジ
元に偏った解が出ないようにしたという意味の補完を含めた3つの指す。
注7-10)NIEはあくまで個人の認識によるものであるため、個々の都市要素との関係は可変的で
ある。
<参考文献・資料>
文1)天谷華子、山崎正史:夜間眺望景観の構図的考察、日本都市計画学会学術研究論文集、
pp.751-756、2000
文2)宇於崎勝也、小島勝衛、根上彰生:商業地域における夜間景観に関する基礎的研究-繁華地
区における夜間の活動と夜景構成要素の実態分析を中心として、日本都市計画学会学術研
究論文集、pp.445-450、1991
文3)羽生冬佳、渡辺貴介、天野光一:夜景の構図とイメージに関する基礎的研究、日本都市計
画学会学術研究論文集、pp.661-666、1990
文4)鍵野壮宏、後藤春彦、李彰浩、関口信行、李永桓、王越非、乙部暢宏:都市における夜間
眺望景観の景観認識に関する研究 その1、日本建築学会大会(近畿)学術講演概要集 F-1、
pp.1267-1268、2005
文5)東京都:東京都建築統計年報 2004年度版、2004
文6)ケビン・リンチ著、丹下健三・富田玲子訳:都市のイメージ、岩波書店、1968
文7)深津
正、中島龍興、面出
薫、近田玲子:あかりと照明の科学、彰国社サイエンス、
1988
文8)丸々もとお:東京夜景BEST、河出書房新社、2002
176
第8章
8-1
8-2
8-3
8-4
はじめに••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••179
8-1-1
本章の目的
8-1-2
分析の方法
印象による俯瞰夜景の分類••••••••••••••••••••••••••••181
8-2-1
因子要素の抽出
8-2-2
4つの印象群
俯瞰夜景イメージ要素と印象の関係••••••••••••••••••••188
8-3-1
重回帰分析を行う上での前提条件
8-3-2
NIEと印象の関係
小結••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••190
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
8-1
はじめに
8-1-1 本章の目的
第8章は俯瞰夜景から夜間景観の特性を解明する第2段階で、人が俯瞰夜景を見る際に、
どんな印象を持つかを検討する。そこで、印象評価実験を行い、その結果から印象による
俯瞰夜景の類型化を行い、その特性を明らかにする。
さらに、この印象評価実験から得られた印象と第7章で明らかになったNIEとの関係を明
らかにする。
8-1-2 分析の方法
印象評価より俯瞰夜景の類型化は、第7章と同じ60映像に対して印象評価、因子分析を
行い、それぞれの景観の印象を分析する。さらに、印象因子軸によるクラスター分類で、
因子軸と俯瞰夜景の関係を把握する。
60映像の印象について、各映像を見せながら被験者10人にSD法評価アンケートを行う。
評価尺度は24種類の形容詞対(表8-1参照)を用意し、それぞれに対して「やや」「非常
に」「どちらでもない」の5段階にする。
形容詞の選定にあたっては、従来より夜景の調査・研究に用いられてきた形容詞と、7
章のイメージスケッチの実験の際に行ったアンケート注8-1)の結果を考え合わせ、選定した。
そして、第7章で明らかになったNIEと印象評価による因子軸との関係を重回帰分析を通
じて明らかにする。
179
第8章・・・印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型
表 8-1.因子負荷表と因子の命名
形容詞
(−)
−
(+)
第I因子
第II因子
第III因子
第IV因子
共通性
刺激的な−平静な
0.959
-0.018
-0.073
0.094
0.935
華やかな−地味な
0.958
-0.042
-0.080
0.040
0.928
賑やかな−寂しい
0.943
-0.161
-0.055
0.117
0.931
楽しげな−悲しげな
0.926
-0.274
-0.002
0.065
0.938
陽気な−陰気な
0.905
-0.336
-0.023
0.047
0.934
動的な−静的な
0.902
-0.269
0.074
0.151
0.913
豪快な−繊細な
0.889
0.299
0.045
0.203
0.923
都会的な−田舎的な
0.857
0.393
0.049
0.139
0.911
現代的な−古風な
0.841
0.442
0.104
0.053
0.916
変化のある−単調な
0.830
-0.198
-0.076
0.032
0.736
個性的な−平凡な
0.803
-0.083
-0.499
0.051
0.903
ごてごてした−すっきりした
0.794
-0.252
0.101
0.307
0.797
人工的な−自然な
0.732
0.527
0.066
0.310
0.913
くっきりした−ぼんやりした
0.726
0.552
0.170
0.033
0.861
非日常的な−日常的な
0.712
-0.060
-0.560
0.278
0.902
硬い−柔らかい
0.373
0.869
0.204
0.096
0.945
重々しい−軽快な
-0.083
0.767
-0.005
0.280
0.673
寒々しい−暖かい
-0.311
0.701
0.479
-0.107
0.829
よそよそしい−親しみのある
-0.256
0.684
0.069
0.337
0.651
整然とした−雑然とした
-0.486
0.668
-0.212
-0.014
0.729
通俗的な−神秘的な
0.224
-0.082
0.920
0.019
0.903
現実的な−幻想的な
-0.127
0.476
0.741
-0.015
0.791
閉鎖的な−開放的な
0.243
0.366
-0.038
0.833
0.888
広がりがない−広がりがある
0.598
0.301
-0.115
0.616
0.841
180
固有値
12.571
5.359
2.320
1.013
寄与率
50.033
19.289
9.908
6.982
累積寄与率
50.033
69.322
79.230
86.211
因子軸の命名
繁華−寂寥
疎遠−親和
現実−幻想
閉鎖−開放
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
8-2
印象による俯瞰夜景の分類
8-2-1 因子要素の抽出
実験の回答に対し「どちらでもない(0点)」を中心として「やや(±1点)」「非常に(±2
点)」を得点化した。60映像に対して各々形容詞軸ごとに被験者全員の平均点を算出し、
その結果を因子分析をした(主因子法、バリマックス回転)。各形容詞軸の相関行列を求め
固有値1以上の4つの因子が抽出された(表8-1参照)。各因子は、第I因子:繁華−寂寥、第
II因子:疎遠−親和、第III因子:現実−幻想、第IV因子:閉鎖−開放と解釈された。
8-2-2
4つの印象群
印象による俯瞰夜景を類型化するために、前項の4軸について各映像の因子得点を計算
した。60映像を4次元のユークリッド空間に位置し、各地点間の距離を求め、クラスター
分類した(ウォード法)。これによって得られたデンドログラムを図8-1に示した。2段階に
類型化を行い、これらの群を分けた因子軸の相違を把握し、印象が同じグループにまとま
った映像から共通の景観を考察した。
4つの群を1次クラスターα・β・γ・δとし、それぞれ「繁華性印象群」「幻想性印象
群」「疎遠性印象群」「開放性印象群」の印象群として分類できた(図8-1、表8-1参照)。
さらに、細分化すると2次クラスターα1-4、β、γ1-6、δ1-2として13の印象群に分類で
きた(図8-1、8-2参照)。それらの群の構成映像を見るとα3、γ1を除いたすべて単一の土
地利用から成り立っていることから、印象による類型は土地利用ごとに分かれると考えら
れる。
181
第8章・・・印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型
図 8-1.印象による映像の分類樹形図(クラスター分析)
182
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
印象評価実験とその結果から印象因子軸により景観をクラスター分析することで、以下
の2点が明らかになった。
① 地域ごとの俯瞰夜景の印象評価は「繁華−寂寥」「疎遠−親和」「現実−幻想」
「閉鎖−開放」の4軸にまとめることができる。
② 印象によって俯瞰夜景を分けると大きく「繁華性印象群」「幻想性印象群」「疎遠
性印象群」「開放性印象群」4つの印象群、さらに細分化すると13の印象評価の群に分け
ることができる。
表 8-2.印象による1次クラスターの特徴
印象群
クラスターの特徴
I繁華−寂寥軸が負方向に大きく、形容詞としては「刺激的な・華やかな・
α
繁華性
印象群
賑やかな」などが実験回答に強く現れている。映像を見ると共通項目とし
てどの映像も看板や明るい投光照明を含むことから繁華街的な印象特性を
持った景観群と言える。また、いくつかの工業系の映像もここに含まれて
いる。
β
幻想性
印象群
I∼III軸が正方向に揃っており、特にIII現実−幻想軸が突出していて、
「幻想的な・神秘的な」印象が強い。全映像が工業系のものであり、全体
として工業系的な印象特性を持った景観群と言える。
II疎遠−親和軸が負方向に大きく偏っており、全体として「硬い・重々し
γ
疎遠性
い・よそよそしい」印象が特徴である。A,BとDからなり共通点としてオフ
印象群
ィスビル、マンションなどの中高層建築を含むことからビル街的な印象特
性を持った景観群と言える。
IV閉鎖−開放軸が負方向にまとまっていて、全体的に「開放的な・広がり
δ
開放性
がある」印象が強く現れている。また「平静な・地味な・寂しい」などの
印象群
寂寥性も高い値を示している。全映像が住居系のもので、住居系的な印象
特性を持った景観群と言える。
183
第8章・・・印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型
図 8-2.印象による類型(繁華性印象群)
184
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
図 8-3.印象による類型(幻想性印象群)
185
第8章・・・印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型
図 8-4.印象による類型(疎遠性印象群)
186
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
図 8-5.印象による類型(開放性印象群)
187
第8章・・・印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型
8-3
俯瞰夜景イメージ要素と印象の関係
8-3-1 重回帰分析を行う上での前提条件
NIEと因子軸について重回帰分析を行う前提として、NIEと印象に相関関係があるかを把
握しておく必要がある。4章で類型化された2次クラスターは、それぞれ同じ土地利用の映
像から成り立つ印象群であることが分かった。α3とγ1においては、例外注8-2)として異な
る土地利用の映像を含んでいた。その例外となった映像が属する7章のNIEのレーダー(図
7-5、7-7、7-9参照)を比較する注8-3)とそれぞれのレーダーは、類似した形状を示している
ことが分かった。すなわち、このことは土地利用の枠を超えてNIEの配分の近い景観が同
じ印象になることを示している。
8-3-2
NIEと印象の関係
印象が同じ映像はNIEレーダーも同様の形状を示すことから、NIEが印象に影響を与えて
いることが分かる。8つのNIEが個々の因子軸にどのように影響を与えているかを把握する
ために7章で扱った全60映像に対して、ここでは、目的変量に印象因子軸、説明変量にNIE
とし、重回帰分析を行った。
第I因子に最も影響力のあるNIEは「面状光」であり、「面状光」の増加は繁華性を増加
させる。第II因子には「配列光」、第III因子には「境界線」、第IV因子には「線状光」
がより際立つことで、順に疎遠性、現実性、開放性は増加することが分かった(表8-3,8-4
参照)。
188
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
表 8-3.重回帰係数表
Y
X
Y1
Y2
Y3
Y4
第I因子軸
第II因子軸
第III因子軸
第IV因子軸
繁華−寂寥
疎遠−親和
現実−幻想
閉鎖−開放
X1
ランドマーク
-0.0389
X2
異質光
-0.0864
X3
動光
-0.0643
X4
線状光
X5
境界線
X6
面状光
X7
配列光
X8
暗闇
0.0367
0.0787
0.1243
-0.1006
-0.0659
0.0846
-0.1070
-0.0376
0.0364
重相関係数
0.89090
0.82378
0.52600
0.43369
表 8-4.因子軸に及ぼすNIEの影響
1
影
響
力
の
大
き
い
2
3
4
順
5
第I因子軸
第II因子軸
第III因子軸
第IV因子軸
繁華−寂寥
疎遠−親和
現実−幻想
閉鎖−開放
面状光
配列光
境界線
線状光
(繁華性増加)
(疎遠性増加)
(幻想性増加)
(開放性増加)
異質光
面状光
配列光
境界線
(繁華性増加)
(親和性増加)
(現実性増加)
(閉鎖性増加)
動光
異質光
(繁華性増加)
(親和性増加)
ランドマーク
(繁華性増加)
暗闇
(寂寥性増加)
表中の括弧内は各NIEの増加が因子軸に及ぼす正負の影響を示す。
189
第8章・・・印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型
8-4
小結
俯瞰夜景に対する印象評価実験から「繁華−寂寥」「疎遠−親和」「現実−幻想」「閉
鎖−開放」の4つの印象軸が俯瞰夜景を代表していることが明らかになった。また、印象
によって俯瞰夜景を類型化すると、「繁華性印象群」「幻想性印象群」「疎遠性印象群」
「開放性印象群」に分けられ、これら4つの印象群から都市の俯瞰夜景を捉えることがで
きることが明らかになった。
さらに、NIEが土地利用形態以上に印象との関係性が強いことが明らかとなり、重回帰
分析から第I−IV因子に対して最も影響力を持つNIEは、順に「面状光」「配列光」「境界
線」「線状光」であり、これらのNIEがより際立つことによって順に繁華性、疎遠性、現
実性、開放性が増加することが明らかになった。これにより、8つのNIEの組み合わせによ
って都市の俯瞰夜景が形成され、その印象が左右されることが明らかになった。
190
印・象・評・価・に・よ・る・俯・瞰・夜・景・の・類・型・・・第8章
<注釈>
注8-1)7章の実験に際して、それぞれの映像に対してスケッチが終わった後に被験者に「どんな
夜景だったか?」という感想を形容詞などで表してもらった。
注8-2)例外となった2次クラスターはα3(商業系土地利用8,10・工業系土地利用1,9)とγ1(商業
系土地利用2,3・住居系土地利用2,4,7,19)であり、扱った全60映像の中14.2%が例外となっ
た。
注8-3)α3では工業系土地利用1(E1),9(E1)、商業系土地利用8(A1),10(A2)の映像からなり、そ
れぞれE1とAのクラスターに代表され、これらのレーダーを比較する(図7-5,7-7,7-9)。同
様にγ1では4つの住居系土地利用と2つの商業系土地利用の映像からなり、それぞれDとB1
に代表され、これらのレーダーを比較する(図7-5,7-7,7-9)。
<参考文献・資料>
文1)内田重美:屋外装飾照明と光害、照明学会誌 第86卷 第4号、pp253-257、2002
文2)嶋田勝次、安田丑作、上田 渉:都市における夜景の物的要素と心理評価に関する研究-神
戸市の都心街路の夜景調査を通じて、日本建築学会近畿支部研究報告書 7003、pp79-85、
1990
文3)成定康平:これからの都市夜景照明を考える、照明学会誌 第74卷 第3号、pp124-129、
1990
文4)樋口忠彦、玉川英則、明間寛治:都市景観の識別度に関する昼と夜の比較研究、日本建築
学会計画系論文報告集 No388、pp79-85、1988.06
文5)乙部暢宏、後藤春彦、李彰浩、関口信行、李永桓、王越非、鍵野壮宏:都市における夜間
眺望景観の景観認識に関する研究 その2、日本建築学会学術講演概要集 F-1、pp1269-1270、
2005
191
第9章
9-1
界隈夜景と都市照明の色温度••••••••••••••••••••••••••195
9-2
車窓夜景と視覚情報系景観要素••••••••••••••••••••••••197
9-3
俯瞰夜景と都市のイメージ••••••••••••••••••••••••••••199
9-4
空間スケールにもとづく夜間景観の特性••••••••••••••••201
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性・・・第9章
9-1
界隈夜景と都市照明の色温度
都市照明の影響が強い界隈夜景の分析において、本研究では東京を代表する繁華街であ
る新宿区歌舞伎町の界隈夜景を対象として取り上げた。そして、都市照明環境分析の新た
なこころみとして照明の色温度に着目し、都市の界隈夜景の分析を行った。本研究で明ら
かになった界隈夜景と都市照明環境との関係は以下のように整理できる。
歌舞伎町という繁華街の界隈夜景を形成している約2kmに至る17街路に分布しているす
べての都市照明環境の照度の平均値はJISの繁華街基準を2.5倍上回り、安全や防犯上の明
るさは充分確保されていることが明らかになった。そして、平均値に対する街路ごとの照
度 と 色 温 度 の 変 化 率 を み る と 、 照 度 が 150% に な る こ と に 対 し 、 色 温 度 ( 平 均 色 温 度
値:4170K)は平均値に対する変化率が10%にしかならないことが分かった。これは設置さ
れている大部分の照明の色温度値が平均値に集中していることで、都市照明の色温度が都
市照明環境を画一的につくっていることを意味する。この色温度値は昼間と同様な都市景
観として見ることには良いが、照明を活かした夜間景観ならではの個性を創出するために
は都市照明の色温度のバリエーションを考慮した照明計画を立てる必要がある。
都市照明を照明の目的ごとに1次照明(街灯)と2次照明(店舗)とに分け、照度レベルと色
温度の感覚量を用いて対象地のすべての都市照明環境の分析を行った。その結果、「1次
照明(街灯)が色温度」に、「2次照明(店舗)が照度」により大きな影響を与えていること
が明らかになった。1次照明(街灯)は外形のみならず、照明の照度と色温度からも分類で
きることが分かった。そして、2次照明(店舗)の照度と色温度の分析から業種ごとに特定
の照明環境が形成されていることも分かった。さらに、2次照明(店舗)を「広告照明」と
「入口照明」に分けて分析した結果、入口照明が2次照明(店舗)の照度を引き上げており、
色温度も広告照明より入口照明の方が2次照明(店舗)に近いことが分かり、景観上目立つ
広告照明より入口照明の方が、実際の2次照明(店舗)に影響を与えていることが明らかに
なった。
次に、繁華街における界隈夜景の都市照明の照度と色温度が人にどのような印象を与え
ているかを知るために写真を用いた検証を行い、照度の変化は「活気・落ち着き」に影響
を与える反面、色温度の変化は「暖かみ、雰囲気」に影響与えていることが明らかになり、
195
第9章・・・空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性
照度と色温度が室内空間のみならず、都市空間においても人に異なる印象を与えているこ
とが分かった。
人の心理や空間の雰囲気に影響を与えるとされる照明の色温度の側面から都市照明環境
をベースにした界隈夜景の分析結果から、照明の色温度を夜間景観のコントロール指標に
加えることは有用であると考えられるが、色温度を尺度とする夜間景観の計画的な演出に
ついては研究の途上にあると言わざるを得ない。しかし、都市照明の色温度の分析により、
新たな夜間景観の評価が可能であることを示した。そのため、都市照明を1次照明(街灯)
と2次照明(店舗)に分けて考える方法も都市照明の整備や計画を立てる際に有用であると
考えられる。
196
空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性・・・第9章
9-2
車窓夜景と視覚情報系景観要素
景観の主体である人と視対象である夜間景観との間にある程度の距離を保つ車窓夜景を
夜間景観体験という観点から分析を進めた。界隈夜景よりは広いエリアである車窓夜景の
対象として東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」電車の中から見える昼・夜間シークエン
ス景観(車窓景観)を取り上げた。その結果として、本研究で明らかになった車窓夜景の特
性は以下のように整理できる。
照明のインフラの充実により、各種照明が多数存在している東京のような都市において
は、真っ暗の闇はあまりない。このような状況の中で車窓景観において注視対象となる景
観要素は、昼・夜間ともに建物系、インフラストラクチャー(IS)系の景観要素が全体の約
7割以上を占めている。しかし、アイマークレコーダーに記録された注視対象の分析結果
を見ると、この2つの景観要素は意識的に見られることもあるが、その数が多いため人の
意志とは関係なく見られる傾向があることが分かった。そして、夜間に急激な注視の変化
を見せたのは屋外広告物やネオンサインのような「視覚情報系の景観要素」で、昼間に比
べ注視対象としての割合が2.5倍増加し、車窓夜景において注視対象として重要な役割を
果していることが明らかになった。
そして、人に見られる注視対象の把握とともに、人が車窓夜景を見る際に上記の注視対
象をどのように見ているかを解明するために昼・夜間の注視特性を「注視方向」と「注視
動き」という2つの観点から分析を行った。その結果、注視点の上下、左右の位置関係で
ある注視方向は、昼間には視点の進行方向に伴い、上下に幅広く注視点が分布しているこ
とが明らかになった。一方、夜間には注視範囲が限定的になり、近景の光源を眺める割合
が大きくなることが明らかになった。
注視点の変化を時間の流れに合わせて繋がった注視動きの分析から、昼・夜間共通する
傾向として視点移動による左右の動きが大きいことが分かった。そして、近景中心のシー
クエンス景観には昼・夜間ともに類似の注視動きが見られるが、景観の奥行きが分かりに
くくなる夜間にはそれが収束する傾向があることが明らかになった。
昼・夜間の車窓景観の分析から、車窓夜景は注視対象が近景の視覚情報系の景観要素や
光源に集まる傾向があり、その際の人の注視特性は昼間より夜間の方が注視方向や注視動
197
第9章・・・空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性
きが限定的になることが分かった。このことから、線路や道路の沿線地域の景観の整備や
コントロールを行う際に、すべてが明確に見える昼間景観の場合はその範囲を決めること
が難しいが、夜間の場合は視覚情報系の景観要素を中心に整備を行うことで効果を得るこ
とができる。特に今日景観の阻害要素として問題になっている屋外広告物のような視覚情
報系の景観要素は昼間景観のみならず夜間景観においても重要な位置を占めていることか
ら昼・夜間を両方の景観を考慮した計画や整備が必要である。
198
空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性・・・第9章
9-3
俯瞰夜景と都市のイメージ
本研究で扱った3つの夜間景観の中、最も広い範囲の景観で夜間の都市全体像を把握す
ることができる俯瞰夜景の分析においては、東京都心のタワーや超高層ビルから見える俯
瞰夜景を取り扱った。この俯瞰夜景も夜間景観体験の観点から分析を行い、その結果とし
て本研究で明らかになった俯瞰夜景の特性は以下のように整理できる。
俯瞰夜景を把握するにあたって重要な手掛かりとなる夜間景観イメージ要素(NIE)とし
て「ランドマーク」「異質光」「動光」「線状光」「境界線」「面状光」「配列光」「暗
闇」の8つが抽出され、人の俯瞰夜景把握を8つの要素から整理できた。
これらNIEをもとに、商業・住居・工業系3つの土地利用の俯瞰夜景を大きく類型化する
と「看板で溢れる繁華街」「ビルが林立するオフィス街」「光が分散された低層住宅群」
「光が配列された団地・マンション群」「一様なオレンジ色の工業地」「強力な光源が目
立つ工業地」の6つの景観から成り立っていることが明らかになった。さらに、細かく分
けると13に分類でき、それぞれのグループのNIE特性が明らかになった。
俯瞰夜景に対する印象評価実験から「繁華−寂寥」「疎遠−親和」「現実−幻想」「閉
鎖−開放」の4軸が俯瞰夜景の印象を代表することが明らかになった。また、印象によっ
て俯瞰夜景を類型化すると、「繁華性印象群」「幻想性印象群」「疎遠性印象群」「開放
性印象群」に分けることができる。さらに、NIEの配分が印象にどのような影響を与えて
いるかを明らかにするために、重回帰分析を行った結果、4つの印象因子に対して最も影
響力を持つNIEは、順に「面状光」「配列光」「境界線」「線状光」であり、これらのNIE
がより際立つことによって順に繁華性、疎遠性、現実性、開放性が増加することが明らか
になった。
本研究では、都市の俯瞰夜景を整備すべく NIE という新たな評価軸を提示した。夜間景
観はひとつひとつが独立した目的のもとに灯された光源やそれらの反射光の集積からなる
が、そうした光の疎密や配置などによって都市のイメージが喚起されていることが明らか
になった。このことは都市景観をより豊かなものとする可能性を夜間景観が有しているこ
とを示している。今後、8 つの NIE をもとに昼間景観と夜間景観の構造を整合させていく
199
第9章・・・空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性
研究蓄積により、都市観光や都市アイデンティティにも繋がる都市資産としての夜間景観
の価値向上が期待される。
200
空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性・・・第9章
9-4
空間スケールにもとづく夜間景観の特性
昼間景観においては視対象とそれを見る人との距離によって近景、中景、遠景に分ける
ことができるが、昼間に比べて遠近感が弱くなる夜間においては距離による景観の明確な
区分が難しい。そこで、本研究では視線の角度や視点の移動速度の変化による景観の見方
である景観体験と都市照明環境の観点から都市の夜間景観を界隈夜景、車窓夜景、俯瞰夜
景という3つ景観として提示した。
本研究で扱ったこの3つの都市の夜間景観を
都市のスケール的な面で置き換えて考える。
界隈夜景は小規模スケール(街路・街区)の都
市空間、車窓夜景は中規模スケール(地域)の
都市空間、俯瞰夜景は大規模スケール(都市)
の都市空間といて分けることができる(写真91参照)。
写真 9-1.3つの夜景と空間スケールとの関係
この観点から見ると、夜間の都市を景観を中心に分析した本研究の結果は、都市空間に
対するデザインにもつながる。
街路・街区単位の小規模スケールの都市空間においては、都市照明環境が空間に影響を
与える重要な要因として作用しているので、本研究で明らかにした照明の色温度のような
従来とは異なる評価指標やコントロール指針を確立することで、より豊かな都市空間の演
出が可能となると期待される。
特に、色温度が照度とは異なる印象群を形成していることが明らかになり、各種の照明
が混在している都市照明の中でも街灯のような1次照明、すなわち公共の照明がより強い
影響力を持っていることが分かった。したがって繁華街のように多数の人が集まり、基本
的な照明環境が整えられている場所では、1次照明の色温度に対する検討がこれから行わ
れる必要があると考えられる。
さらに、繁華街に設置されている1次照明は光に対するコントロールのみならず、外形
デザインに対する計画も事前に明確にする必要がある。本研究で扱った歌舞伎町の界隈空
間には、外形上あまりにも多くの街灯が分布しており、溢れだしている店舗の広告照明の
201
第9章・・・空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性
ような2次照明とともに街路を煩雑にしている1つの原因になっている。界隈夜景において
は昼間景観のコントロール手法としてよく使われている色彩計画の基調色の役割を1次照
明が担うことも夜間景観計画による街路・街区デザインの手法の1つである。
そして、近年、民間の照明においても宣伝や広告のための照明のみならず、従来の公共
の照明の主たる目的であった街路空間を照らすという役割を果している照明が現れている
ことから、このような1次照明的な2次照明の有用な活用も考慮するべきである。
図 9-1.既存の満遍ない配置と高い色温度中心に形成された界隈夜景の街路空間のイメージ
図 9-2.異なる色温度の1次照明を用い、メイン街路と路地を区分した照明計画の例
次に街路・街区の連続として成り立つ地域の夜間景観である車窓夜景においては、界隈
夜景の2次照明に該当する視覚情報系の景観要素が重要な役割を果たしていることが分か
った。このようにスピードが常に内在している車窓夜景は界隈夜景のように空間の全体像
を考えたデザインより、流れ去る夜間景観の中でポイントになる場所の視覚情報系の景観
要素の位置、デザインが重要である。
看板、屋外広告物のような視覚情報系の景観要素に対する規制や条例が様々な都市で作
成されているが、これらは主に昼間景観に関するもので、実際看板、屋外広告物のような
視覚情報系の景観要素がより目立つ夜間に対する考慮は未だに見られない状況である。そ
202
空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性・・・第9章
こで、地域のデザインにおいては夜間の視覚情報系の景観要素のコントロールが重要なキ
ーとなることを理解しておく必要がある。
最後に地域の集合である都市全体が把握できる俯瞰夜景は、界隈夜景の街路・街区と車
窓夜景の地域の全てが混じり合って作り出されるその都市固有のイメージである。
都市のイメージと深い関係がある俯瞰夜景においては、前述した小規模、中規模スケー
ルの空間デザインに対する考え方をもとに都市全体を明るくすることではなく、いずれか
の光や照明を抑え、明るさと暗闇が共存するようにコントロールすることが重要である。
我々が良い夜間景観として評価している神戸や函館の俯瞰夜景は、都市の明るさと海とい
う自然な暗闇と共存し、この暗闇によって光による都市構造がより明確に想起されること
に留意する必要がある。
しかし、俯瞰夜景から直接都市をデザインすることは難しい。しかしながら上記の3つ
の都市空間スケールはそれぞれが独立して存在するのではなく、実際には互いに緊密な関
係を持っている。街路・街区が集まって地域になり、地域が集まって1つの都市を形成し
ているから、界隈夜景や車窓夜景の整備や計画が都市全体のイメージにつながることを理
解するべきである。
現代は全世界が1つのネットワークとしてより強くつながり、経済活動を中心にした
様々な活動が都市の中で24時間行われている。このような時代の流れから考えると、これ
からの都市の夜間人口はますます増えることが予想され、その際に人が共有する都市の姿
である夜間景観は都市の共有資産としても重要であり、この夜間景観をより価値があるも
のとするためには、
①都市照明の管理主体による分類と色温度を考慮した実践的な計画指針
②視覚情報系の景観要素に視認性を考慮した昼・夜間総合的な景観計画
③無駄な光を抑え明るさと暗闇のバランスを考慮した都市マスタープラン
が都市全体を考慮した夜間景観の形成に重要な項目として考えられる。
最後に、本研究で提示したこれから都市全体を考慮した夜間景観を形成し、管理してい
くためには現段階では先に行政側の積極的な行動が必要である。
本研究で述べた夜間景観の整備と計画の核心は全体的なイメージの向上と不必要な光の
203
第9章・・・空・間・ス・ケ・ー・ル・に・も・と・づ・く・夜・間・景・観・の・特・性
除去である。しかし、民間側が行う個別的な建物まで管理することは無理が多く、長期的
な計画が必要である。その前の段階として、行政側の介入が可能な部分である公共の照明
に対する計画、そして屋外広告物のような視覚情報系の景観要素の管理を通じて広域的な
夜間景観のベースを一段階レベルアップさせることが望まれる。
204
終章
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
研・究・の・総・括・・・第10章
まとめ
2004年に制定された景観法によって、景観は「国民共通の資産」と位置づけられた。こ
れを受けて全国で良好な景観形成をめざす積極的な取り組みがはじまったが、その多くは
昼間の景観を対象としたものにとどまっている。一方、地球規模に拡大した経済のもとで
東京をはじめとする世界都市は昼夜問わず活動をつづけ、昼間景観とともに夜間景観を重
要な都市資産として位置づけることは時代の要請となっている。
本論文ではこのような都市資産としての価値を有する夜間景観を広域的、総合的な視覚
的環境としてとらえ、評価・分析した。研究を進めるにあたっては以下の2つの観点を定
めた。まず、室内における空間の雰囲気に影響を与える色温度が都市の夜間景観の評価指
標として有用であること明らかにするために「都市照明環境」という観点と、次に自己を
とりまく環境を眺めるという視覚的体験についてその主体の行動に注目しながら論じる際、
その体験を「景観体験」と定義し、「夜間景観体験」という観点の2つを取り上げた。こ
れらより夜間景観の特性を明らかにすることを研究の目的とする。都市空間における代表
的な夜間景観として、歩行系を中心にした一定の範囲の界隈景観(以下、界隈夜景)、道路
や線路を走る乗り物からの車窓景観(以下、車窓夜景)、都心の展望台や超高層ビルの上層
階からの俯瞰景観(以下、俯瞰夜景)という3つの都市夜景を選定した。対象地はこの3つの
夜間景観の典型的なタイプが存在する東京とし、研究を行った。
本論文は、序論(1∼2章)、本論(3∼8章)、結論(9章∼終章)で構成されている。
第1章「研究の意義」では、研究の背景と目的、研究の枠組と対象、研究の構成と方法、
研究の用語などの研究の前提となる事項を整理し、本論で取り上げる対象事例と分析方法
を的確に示している。
第2章「既往研究の整理と研究の着眼点」では、建築学および都市計画学分野の既存研
究における夜間景観の評価と分析方法をレビューし、本論の位置づけと研究の着眼点を導
き出している。
第3章と第4章では東京を代表する繁華街として新宿区歌舞伎町の界隈夜景を対象として
取り上げ、「都市照明環境」の定量的な分析を行っている。
207
第10章・・・研・究・の・総・括
第3章「都市照明における色温度に関する考察」では、一般的に都市照明の指標に採用
される照度のみならず、人の心理や空間の雰囲気に影響を与えるとされる色温度に着目し
て界隈夜景の分析を行った。その結果、対象地はJISで定められた繁華街の基準を2.5倍上
回っていることから安全や防犯上は充分な照度が確保されているが、雰囲気の演出に有効
な色温度は、平均値に対する色温度の変化率の分析からみると対象街路の9割において一
般的な白色蛍光灯とほぼ一致する値に収まっており、界隈夜景の照明環境が画一的で変化
に乏しいことを明らかにした。そのため、照明を活かした夜間景観ならではの個性を創出
するためには都市照明の色温度のバリエーションを考慮した照明計画を立てる必要がある
ことを示している。
第4章「界隈夜景における1次照明と2次照明の関係」では、街灯をはじめとする公共の
照明を1次照明、店舗照明をはじめとする民間の照明を2次照明、さらに、2次照明を広告
照明と入口照明に区分して分析をすすめた。1次照明と2次照明を6段階の照度レベルと色
温度の感覚量という評価基準にもとづいて分析した結果、1次照明と2次照明がそれぞれ色
温度と照度に影響を与えていること、景観上目立つ広告照明より入口照明が2次照明の照
度と色温度に影響を与えていることを明らかにした。
また、界隈夜景全体に対する印象評価から、色温度は照度とは異なる「雰囲気」「暖か
み」という印象群を形成していることを明らかにし、人の心理や空間の雰囲気に影響を与
えるとされる色温度は室内の照明環境のみならず、界隈夜景においても有用な指標となる
ことを示している。
第5章から第8章では、夜間景観を眺める主体の行動の中、視点の移動や視線の角度に着
目した「夜間景観体験」の観点から夜間景観の特性の解明をこころみている。
第5章と第6章では、車窓夜景は不特定多数の人が共有する公共性が高い景観であり、そ
の中で東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」は高架を走る新交通システムとして都市的で
シークエンシャルな景観体験を提供していることから、車窓夜景を対象として取り上げた。
第5章「車窓夜景における注視対象」では、アイマークレコーダーを用いた注視実験を
行い、車窓の景観変化に対する注視特性の昼・夜間の比較分析を行った。その結果、車窓
景観においての注視対象となる景観要素は、昼・夜間共通して建物系、インフラストラク
208
研・究・の・総・括・・・第10章
チャー系の景観要素で全体の約7割を占めていることが分かった。しかし、この2つの景観
要素は意識的に見られることもあるが、その数が多いため人の意志とは関係なく見られる
傾向があることも明らかになった。夜間においては、屋外広告物やネオンサインなどの視
覚情報系の景観要素への注視の割合が高くなり、車窓夜景においてこれらが重要な役割を
果していることを明らかにした。
第6章「注視特性から見た車窓夜景」では、多様な車窓夜景が体験できる東京都港区お
台場地区における、注視方向、注視動きの昼・夜間の比較分析を行った。その結果、注視
点の上下左右の位置関係である注視方向は、夜間には景観画像の中下部である近景に注視
方向が集中すること、また、夜間には注視範囲が収束する傾向にあり、近景の光源への注
視の割合が大きくなることを明らかにした。
そして、注視点の変化を連続的な流れとして示した注視動きは、近景中心のシークエン
ス景観には昼・夜間とともに類似な注視動きを見せていたが、景観の奥行きが分かりにく
くなる夜間の方が昼間より注視動きが弱くなることを明らかにした。さらに、注視動きの
変化に影響を与える要因については昼間は景観構造の変化があげられるが、夜間は光源の
量の変化であることを明らかにした。
第7章と第8章では、近年、商業・業務施設のみならず居住施設の高層化が進み、日常生
活において都市を俯瞰し展望するという景観体験の機会が多くなっていることから、タワ
ーや超高層ビルの上層階から都市を見下ろす俯瞰夜景を対象として取り上げた。
第7章「俯瞰夜景から形成される都市のイメージ」では、東京タワーの展望台からの俯
瞰夜景を対象に、イメージスケッチとエレメント想起法を用いた被験者実験分析を行った。
その結果、俯瞰夜景を構成する8つのイメージ要素(ランドマーク、異質光、動光、線状
光、境界線、面状光、配列光、暗闇)の存在を明らかにした。
次に、東京都内の100m以上の超高層ビルで一般開放されている展望台、展望ロビー20
ヶ所から見える俯瞰夜景を8つのイメージ要素の配分にもとづいて分類を行い、それらが
看板で溢れる繁華街、ビルが林立するオフィス街、光が分散された低層住宅群、光が配列
された団地・マンション群、一様なオレンジ色の工業地、強力な光源が目立つ工業地のよ
うに6種類として分類されることを示している。
209
第10章・・・研・究・の・総・括
第8章「印象評価による俯瞰夜景の類型」では、7章と同様の俯瞰夜景に対する印象評価
実験分析から、俯瞰夜景に影響を与える「繁華性印象群」「幻想性印象群」「疎遠性印象
群」「開放性印象群」の4つの印象群が存在することを明らかにした。
さらに、印象因子とイメージ要素との相関関係の把握から、印象因子に対して影響力を
持つイメージ要素は「面状光」「配列光」「境界線」「線状光」であり、これらが際立つ
ことによって「繁華性」「疎遠性」「現実性」「開放性」が増加することを明らかにし、
8つのイメージ要素の組み合わせによって俯瞰夜景のイメージが構築されることを論じて
いる。
第9章「空間スケールにもとづく夜間景観の特性」では、本研究で対象とした界隈夜景、
車窓夜景、俯瞰夜景の空間スケールに着目し、界隈夜景を小規模スケール(街路・街区)の
都市空間、車窓夜景を中規模スケール(地域)の都市空間、俯瞰夜景を大規模スケール(都
市)の都市空間として把え、3つの夜間景観の特性を整理した。
そして、これからの都市全体を考慮した広域的な夜間景観の土台を形成するためには、
1.都市照明においては管理主体による分類と色温度を考慮した実践的な計画指針、2.視覚
情報系の景観要素の視認性を考慮した昼・夜間の総合的な景観計画、3.無駄な光を抑え明
るさと暗闇のバランスを考慮した都市マスタープランの必要性を示している。
終章「研究の総括」では、各章の要約を記している。
210
都市照明環境と
都市夜景
に関する研究
夜間景観体験
分析にもとづく
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
参考文献・参考資料
第1章
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第3章
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第4章
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第5章
文1)李永桓、後藤春彦、李彰浩、福武洋之:繁華街の各種照明が夜間景観に与える影響に
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参考文献・参考資料
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第8章
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文5)乙部暢宏、後藤春彦、李彰浩、関口信行、李永桓、王越非、鍵野壮宏:都市における
夜間眺望景観の景観認識に関する研究 その2、日本建築学会大会(近畿)学術講演概要
217
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
集 F-1、pp.1269-1270、2005
218
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
図表リスト
第1章
図 1-1.照射面の明るさと個々の光源の1対1の関係から考えてきたこれまでの夜間景観
図 1-2.光源のみならず様々な景観要素の集合として成り立ている実際の都市の夜間景観
図 1-3.本研究で扱う3つの景観体験
図 1-4.界隈夜景のイメージ
図 1-5.車窓夜景のイメージ
図 1-6.俯瞰夜景のイメージ
写真 1-1.歌舞伎町1丁目の俯瞰夜景
写真 1-2.「ゆりかもめ」からの車窓夜景
写真 1-3.サンシャイン60からの俯瞰夜景
図 1-7.研究のフロー
第2章
表 2-1.夜間景観に関する既往研究 1-2
表 2-2.夜間景観に関する既往研究 2-2
表 2-3.日本建築学会学術講演概要集の掲載されている夜間景観に関する研究(1-4)
表 2-4.日本建築学会学術講演概要集の掲載されている夜間景観に関する研究(2-4)
表 2-5.日本建築学会学術講演概要集の掲載されている夜間景観に関する研究(3-4)
表 2-6.日本建築学会学術講演概要集の掲載されている夜間景観に関する研究(4-4)
表 2-7.夜間景観の既往研究の分類と本研究の位置
第3章
図 3-1.歌舞伎町の調査範囲と現況(調査日時:2004年12月2日,14:00-18:00)
図 3-2.色温度値と色との関係
写真 3-1.予備調査対象地(歌舞伎町一番街)
表 3-1.距離別の平均照度・色温度、標準偏差
表 3-2.測定距離ごとの照度データと標準偏差
219
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
図表リスト
表 3-3.測定距離ごとの色温度データと標準偏差
図 3-3.測定方法の概念図
表 3-4.階数別建物数
表 3-5.業種別店舗の分布現況
表 3-6.各建物の階ごとの業種分布現況 1-8
表 3-7.各建物の階ごとの業種分布現況 2-8
表 3-8.各建物の階ごとの業種分布現況 3-8
表 3-9.各建物の階ごとの業種分布現況 4-8
表 3-10.各建物の階ごとの業種分布現況 5-8
表 3-11.各建物の階ごとの業種分布現況 6-8
表 3-12.各建物の階ごとの業種分布現況 7-8
表 3-13.各建物の階ごとの業種分布現況 8-8
図 3-4.歌舞伎町の照度分布(調査日時:2004年12月26日,18:00-21:30)
表 3-14.歌舞伎町1丁目の照度の現況 1-2
表 3-15.歌舞伎町1丁目の照度の現況 2-2
表 3-16.各街路ごとの平均照度と平均色温度
図 3-5.歌舞伎町の色温度分布 (調査日時:2004年12月26日,18:00-21:30)
表 3-17.歌舞伎町1丁目の色温度の現況 1-2
表 3-18.歌舞伎町1丁目の色温度の現況 2-2
第4章
写真 4-1.歌舞伎町に分布している1次照明(街灯)の類型
表 4-1.6段階の照度レベル
表 4-2.街路ごとの街路照明と1次照明(街灯)の平均照度、平均色温度、感覚量
表 4-3.街路照明と1次照明(街灯)の色温度の感覚量の差
表 4-4.1次照明(街灯)ごとの平均照度と平均色温度
図 4-1.光の属性による1次照明(街灯)の類型
図 4-2.1次照明(街灯)分布状況と照度・色温度(調査日時:2005年1月5日,20:30-22:00)
220
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
図表リスト
表 4-5.1階の業種構成
図 4-3.建築1階の業種分布(調査日時:2005年1月9日,18:00-22:00)
表 4-6.街路ごとの街路照明と2次照明(店舗)の平均照度、平均色温度、感覚量
表 4-7.街路照明と2次照明(店舗)の色温度の感覚量の差
表 4-8.同じ照度レベルの街路の中で1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の関係(絶対値)
表 4-9.感覚量40MK-1未満である街路の中で1次照明(街灯)と2次照明(店舗)の関係
図 4-4.2次照明(店舗)の照度・色温度(調査日時:2005年1月9日,18:00-22:00)
図 4-5.照度、色温度による業種の分布
式 4-1.各街路の平均照度と平均色温度を算出する公式
表 4-10.業種ごとの広告照明による各街路の平均照度(lx)と平均色温度(K)
表 4-11.入口照明および各項目の平均照度と平均色温度
図 4-6.印象調査に用いた写真の撮影場所
図 4-7.照度値が近い、色温度値が異なる写真
図 4-8.色温度値が近い、照度値が異なる写真
第5章
図 5-1.ゆりかもめ沿線地域の3つの調査範囲(シオサイトエリア、レインボーエリア、お台場エリア)
写真 5-1.被験者実験の様子
写真 5-2.被験者Aの10秒静止画像の例 (竹芝駅-芝浦ふ頭駅区間,上:昼/下:夜)
表 5-1.被験者ごとの昼間の全エリアに対する注視点数
表 5-2.被験者ごとの夜間の全エリアに対する注視点数
表 5-3.シオサイトエリアの注視点数
写真 5-3.近景中心のシオサイトエリアの昼・夜間景観の例
写真 5-4.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 1 (新橋駅−汐留駅)
写真 5-5.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 2 (汐留駅-竹芝駅)
写真 5-6.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 3 (竹芝駅-日の出駅)
写真 5-7.シオサイトエリアの昼間の10秒静止画像 4 (日の出駅-芝浦ふ頭駅)
写真 5-8.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 1 (新橋駅−汐留駅)
221
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
図表リスト
写真 5-9.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 2 (汐留駅-竹芝駅)
写真 5-10.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 3 (竹芝駅-日の出駅)
写真 5-11.シオサイトエリアの夜間の10秒静止画像 4 (日の出駅-芝浦ふ頭駅)
表 5-4.レインボーエリアの注視点数
写真 5-12.レインボーエリアの変化がない連続する昼・夜間景観の例
写真 5-13.レインボーエリアの昼間の10秒静止画像 (芝浦ふ頭駅-お台場海浜公園)
写真 5-14.レインボーエリアの夜間の10秒静止画像 (芝浦ふ頭駅-お台場海浜公園)
表 5-5.お台場エリアの注視点数
写真 5-15.お台場エリアのフジテレビ本社ビルの昼・夜間景観
写真 5-16.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 1 (お台場海浜公園-台場)
写真 5-17.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 2 (台場-船の科学館)
写真 5-18.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 3 (船の科学館-テレコムセンター)
写真 5-19.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 4 (テレコムセンター-青海)
写真 5-20.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 5 (青海-国際展示場正門)
写真 5-21.お台場エリアの昼間の10秒静止画像 6 (国際展示場正門-有明)
写真 5-22.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 1 (お台場海浜公園-台場)
写真 5-23.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 2 (台場-船の科学館)
写真 5-24.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 3 (船の科学館-テレコムセンター)
写真 5-25.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 4 (テレコムセンター-青海)
写真 5-26.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 5 (青海-国際展示場正門)
写真 5-27.お台場エリアの夜間の10秒静止画像 6 (国際展示場正門-有明)
第6章
写真 6-1.分析に使用されたグリッド静止画像の例
表 6-1. 注視点の垂直分布
表 6-2. 注視点の水平分布
図 6-1.被験者Aの昼・夜間注視動きのグラフ
図 6-2.被験者Bの昼・夜間注視動きのグラフ
222
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
図表リスト
図 6-3.被験者Cの昼・夜間注視動きのグラフ
図 6-4.被験者Dの昼・夜間注視動きのグラフ
図 6-5.被験者Eの昼・夜間注視動きのグラフ
図 6-6.被験者Fの昼・夜間注視動きのグラフ
図 6-7.被験者Gの昼・夜間注視動きのグラフ
表 6-3.各区間ごとの昼・夜間の平均注視点の位置と標準偏差
図 6-8.台場区間、青海区間の平均動きのグラフ(縦軸:グリッド位置・横軸:時間の流れ)
図 6-9.注視方向と範囲の昼間と夜間の差異
写真 6-2.台場区間の注視動きの幅が広い画像(左の2枚)と狭い画像(右の2枚)
写真 6-3.青海区間の注視動きの幅が広い画像(左の2枚)と狭い画像(右の2枚)
第7章
図 7-1.NIEの抽出を行う際に扱った4方向の映像
図 7-2.20ヶ所の視点場と眺望対象地域
表 7-1.20ヶ所の視点場
図 7-3.映像1のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
図 7-4.映像2のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
図 7-5.映像3のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
図 7-6.映像4のイメージスケッチによるNIEの抽出過程
表 7-2.共通項目とその抽出判断基準
表 7-3.エレメント想起法の分析例 (映像1:想起数2以上のものを示す)
図 7-7.NIEの各項目の位置づけ
図 7-8.商業系土地利用地域の俯瞰夜景のクラスター分析
図 7-9.NIEレーダーによる類型(商業系土地利用地域)
図 7-10.住居系土地利用地域の俯瞰夜景のクラスター分析
図 7-11.NIEレーダーによる類型(住居系土地利用地域)
図 7-12.工業系土地利用地域の俯瞰夜景のクラスター分析
図 7-13.NIE類型のクラスターのレーダー(工業系土地利用地域)
223
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
図表リスト
表 7-4.NIE配分による東京の俯瞰夜景の13種類
第8章
表 8-1.因子負荷表と因子の命名
図 8-1.印象による映像の分類樹形図(クラスター分析)
表 8-2.印象による1次クラスターの特徴
図 8-2.印象による類型(繁華性印象群)
図 8-3.印象による類型(幻想性印象群)
図 8-4.印象による類型(疎遠性印象群)
図 8-5.印象による類型(開放性印象群)
表 8-3.重回帰係数表
表 8-4.因子軸に及ぼすNIEの影響
第9章
写真 9-1.3つの夜景と空間スケールとの関係
図 9-1.既存の満遍ない配置と高い色温度中心に形成された界隈夜景の街路空間のイメージ
図 9-2.異なる色温度の1次照明を用い、メイン街路と路地を区分した照明計画の例
224
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
研究業績一覧
発表・
発表・発
発行掲載誌名
行年月
都市における俯瞰夜景の景観認識に
日本建築学会計画
2006.08
乙部暢宏
関する基礎的研究
系論文集(No606)
掲載決定
鍵野壮広
種類別
題名
論文
後藤春彦
東京都心を対象として
論文
連名者
2005.12
李
永桓
李
彰浩
李
永桓
繁華街の各種照明が夜間景観に与え
日本建築学会計画
る影響に関する研究
系論文集(No598)
後藤春彦
新宿区歌舞伎町1丁目を事例として
pp101-108
李
彰浩
福武洋之
論文
論文
2003.11
韓国地方都市における看板建築の発
日本都市計画論文
生経緯と今日的評価
集(No38)
後藤春彦
慶州市の路東洞商業地域を事例として
pp703-708
李
彰浩
慶州旧市街地における街路景観の特
大韓建築学会論文
李
永桓
性に関する研究
集(16巻9号)
韓
三健
李
永桓
2000.11
李
永桓
pp127-134
講演
2005.09
シークェンス景観における昼・夜間
日本建築学会大会
の注視特性に関する基礎的考察
学術講演概要集
後藤春彦
アイマークレコーダを用いたゆりかもめ
(F1)pp243-244
李
関口信行
沿線地域の景観分析
講演
彰浩
2005.09
都市における夜間眺望の景観認識に
日本建築学会大会
鍵野壮広
関する研究 その1
学術講演概要集
乙部暢宏
景観を解く手がかりの抽出
(F1)pp1267-1268
後藤春彦
李
永桓
他3名
225
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
研究業績一覧
発表・
発表・発
発行掲載誌名
行年月
都市における夜間眺望の景観認識に
日本建築学会大会
2005.09
関する研究 その2
学術講演概要集
鍵野壮広
夜間エレメントによる景観の類型化
(F1)1269-1270
後藤春彦
種類別
題名
講演
連名者
乙部暢宏
李
永桓
他3名
講演
2004.08
業種に着目した色温度が夜間の街路
日本建築学会大会
福武洋之
景観の印象に与える影響に関する研
学術講演概要集
後藤春彦
究
(F1)pp1031-1032
李
彰浩
関口信行
李
講演
2004.08
永桓
超高層建築のファサードの構成要素
日本建築学会大会
堀江誠司
がもつ視覚的効果に関する研究
学術講演概要集
後藤春彦
(F1)pp899-900
李
彰浩
関口信行
李
講演
2004.08
永桓
街路シーン景観における色彩の面積
日本建築学会大会
植田竜司
率の特性に関する研究
学術講演概要集
後藤春彦
ヨコハマポートサイド地区を対象として
(F1)pp1107-1108
李
彰浩
関口信行
講演
永桓
李
永桓
地方都市の商業地域の形成史から見
日本建築学会大会
た街路景観に関する研究
学術講演概要集
後藤春彦
韓国の慶州市における旧市街地の路東洞
(F1)pp191-192
李
彰浩
韓
三健
商業地域を事例として
226
2003.09
李
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
研究業績一覧
発表・
発表・発
発行掲載誌名
行年月
慶州旧市街地における街路景観の特
大韓建築学会学術
1999
性に関する研究
発表論文集
種類別
題名
講演
連名者
李
永桓
韓
三健
Pp745-750
その他
早稲田大学所沢キャンパス整備指針
早稲田大学総合企
第1版
画部施設課
2006.03
古谷誠章
後藤春彦
李
永桓
他19名
その他
第6回早稲田大・全北大都市デザイ
早稲田大学後藤春
ンワークショップ
彦研究室
2005.06
後藤春彦
李
永桓
他24名
その他
早稲田大学西早稲田キャンパス周辺
早稲田大学総合企
地域整備指針 第1版
画部施設課
2005.03
古谷誠章
後藤春彦
李
永桓
他20名
その他
早稲田大学西早稲田キャンパス整備
早稲田大学総合企
指針 第4版
画部施設課
2005.03
古谷誠章
後藤春彦
李
永桓
他20名
その他
車窓景観のシークエンス変化に関す
早稲田大学後藤春
る研究
彦研究室
2004.05
後藤春彦
三宅
諭
(平成13-15年度科学研究費補助金 基盤研
関口信行
究(B))
李
永桓
227
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
研究業績一覧
発表・
発表・発
発行掲載誌名
行年月
早稲田大学戸山キャンパス整備指針
早稲田大学総合企
2004.03
第2版
画部施設課
種類別
題名
その他
連名者
古谷誠章
後藤春彦
李
永桓
他12名
その他
早稲田大学西早稲田キャンパス「東
早稲田大学総合企
地区」整備指針 第1版
画部施設課
2004.03
古谷誠章
後藤春彦
李
永桓
他12名
その他
第5回早稲田大・全北大都市デザイ
早稲田大学後藤春
ンワークショップ
彦研究室
2004.03
後藤春彦
李
永桓
他23名
その他
MIT・早稲田デザインワークショッ
早稲田大学後藤春
プ
彦研究室
2003.06
後藤春彦
李
永桓
他22名
その他
早稲田大学戸山キャンパス整備指針
早稲田大学総合企
第1版
画部施設課
2003.03
古谷誠章
後藤春彦
李
永桓
他11名
その他
土地有効利用事業に係る新宿6丁目
日本都市基盤整備
27番地区景観検討シミュレーション
公団
調査
228
2003.02
後藤春彦
李
永桓
他5名
参・考・文・献・参・考・資・料・・・図・表・リ・ス・ト・・・研・究・業・績・一・覧
研究業績一覧
発表・
発表・発
発行掲載誌名
行年月
第4回早稲田大・全北大都市デザイ
早稲田大学後藤春
2003.02
ンワークショップ
彦研究室
種類別
題名
その他
連名者
後藤春彦
李
永桓
他22名
その他
早稲田・大学まちグラウンドデザイ
早稲田大学芸術学
ン
校 AARR
2002
後藤春彦
李
永桓
他6名
その他
蔚山都市景観総合基本計画
韓国蔚山市
2002
韓
三健
李
永桓
他5名
その他
兵營城総合整備計画
韓国蔚山市
1997
韓 三健
李
永桓
他10名
229
謝辞
本論文は、早稲田大学大学院において後藤春彦教授のご指導のもとで取り組んできた一
連の研究をとりまとめたものです。後藤春彦教授は、研究のテーマ設定や進め方、取りま
とめに至るまで並々ならぬ多大なご支援、ご指導を賜りました。4年間にわたる私の留学
生活において公私問わず支えてくださり、私と私の家族は安心して過すことができました。
また、研究室での生活のなかでも、都市や建築に関する貴重な知識を学ばせてくださった
ことは、これから研究者としての道を歩むにあたり、忘れられない体験でした。ここに深
く感謝致します。
また、佐藤滋教授、有賀隆教授、佐々木葉教授にも多くのご指導を頂きました。佐藤滋
教授からは、論文の位置づけや用語の定義などについてご教示を賜りました。有賀隆教授
からは、論文の構成や進め方に至るまでご教示を賜りました。佐々木葉教授からは、論の
展開やまとめ方に至るまで貴重なご教示を賜りました。ここに記して謝意を表します。
そして、誰よりも私の身近なところで応援と助けを惜しまず与えてくれた後藤春彦研究
室の助手および博士課程の方々には本当に心から感謝致します。関口信行助手、田口太郎
助手、佐藤宏亮氏からは、論文の初めから終わりまで隅々に至るまで多くの助言を頂きま
した。また、私が後藤春彦研究室に入室してこれまで所属してきた景域ゼミのメンバーの
方や研究室の皆様にも感謝致します。特に、同じ夜間景観をテーマとし、研究の調査や分
析に至るまで共同研究者として多くの協力を頂いた福武洋之氏、乙部暢宏氏、鍵野壮宏氏
のお陰でこの論文が完成できたと思います。この場を借りて御礼申し上げます。
今は韓国にいらっしゃいますが、至らない点の多かった私を常にかばってくださった研
究室の先輩である大韓住宅公社住宅都市研究所の李彰浩氏、そして、佐藤滋研究室の朴喜
潤先輩、閔勝炫先輩の激励も大きな力となりました。ここに感謝を致します。
大学在学時から今日に至るまで私を激励と勇気をくださった韓国の蔚山大学校の指導教
授であり、私の都市計画への道の最初の歩みを支えてくださった韓三健教授、建築デザイ
ンの楽しさを教えてくださった申載億教授、韓国建築の大切さを悟らせてくださった韓国
総合芸術学校の金奉烈教授にもここに記して謝意を表します。
最後に、日本での研究生活を何ら心配なく進むことを陰で支えてくれた両親、妹夫婦、
弟、そして、知人の誰もいない日本に私だけを信じて来て、日々隣で私を励ましてくれた
妻と元気に育ってくれた娘に深く感謝致します。
2006年7月
李 永 桓
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