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マルチステークホルダー・ パートナーシップを通じた 開発における企業の
マルチステークホルダー・ パートナーシップを通じた 開発における企業の役割 ジョルデジャ・ペトコフスキー 世界銀行研究所 企業・競争力・開発担当チーフ 1 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 1 アウトライン I. II. III. IV. V. VI. 背景:世界の全体像と世界的な課題 開発における企業の役割 新たな概念:マルチステークホルダー・パートナーシップ 能力開発 現状:ベストプラクティス リーダーシップの重要性 2 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 2 背景: 世界の全体像と世界的な課題 3 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 3 我々の世界は … … 不均衡。 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 4 4 世界的な問題 今日の貧困状態と発展途上国: 30億人が1日2ドル以下(で生活している) 12億人が1日1ドル以下(で生活している) 世界の国内総生産(GDP) 2000年: 30兆ドル – 50億人 –世界のGDPの20% 2050年: 140兆ドル – 80億人 –世界のGDPの40% (3.5%の増加と想定) 2000年 人口増加 2025年 2050年 発展途上国 50億人 70億人 80億人 先進国 10億人 10億人 10億人 5 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 5 これが我々の世界? 世界中のすべての人々に基本的な健康と栄養をもたらすために必要な金額は 130億ドル。 毎日16,000人を超える子供たちが飢餓 – に関連する原因 – によって死亡。5秒 間に1人。 ヨーロッパや米国で香水に費やされている金額:120億ドル。 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 6 6 これが我々の世界? 2000年までにすべての子供たちを学校に行かせるためには9,500億ドルが必要であっ たが、実現されなかった。この金額は世界が毎年、武器に費やしている金額の1パーセ ントに満たない。 7 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute これが我々の世界? 毎日8,500人が死んで行き、13,000人が新たにHIVに感染している。2010年にはエイズに よって2,500万人を超える子供たちが世界中で孤児になる。 アフリカの一部の地域では妊娠女性全体の3分の1がHIV/エイズをもっている。例えばスワ ジランドでは妊娠女性のほぼ40%がHIVポジティブである。 8 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 地球の変化:これが我々の世界? 先進国の人口の20%で世界の商品の86%を消費している。 世界の人口の最貧層である20%は1.3%を消費している。 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 9 II. 持続可能性のためのアクション すべての人々がアメリカ人やイギリス人、あるいは フランス人のような快適な生活を送るとすれば、世 界の人口を維持するためにどれくらいの土地と海が 必要になるか、科学者が惑星の数で計算している。 答えは … 10 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute II. 持続可能性のためのアクション … 惑星3個分!!! 11 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 地球の変化:これが我々の世界? 世界銀行では鳥インフルエンザの軽い流行によって世界的な経済ダメージは少なくとも 8,000億ドルになると見積もっている。経済がこのようなショックから回復するためには約 3年を必要とするだろう。 12 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 開発における 企業の役割 13 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 開発における企業の役割 誰の問題か? 誰が責任を負うのか? お金だけの問題か? コストは? いつ支払うことになるのか? どのように支払うのか? いつまで放っておくのか? いつまでこのような生活に耐えられるのか? 14 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 発展途上国への金融の流れ $ billions 350 資本流入実額:総額 300 250 200 資本流入実額:民間企業 150 100 資本流入実額:公的機関 50 0 1990 1992 1994 Source: Global Development Finance Report, 2005 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 1996 1998 2000 2002 15 2004 なぜ民間セクターか? 国/企業 GDP/売上高 (単位100万ドル) 国/企業 GDP/売上高 (単位100万ドル) 1 米国 11,667,510.00 37 中国、香港 163,004.70 2 日本 4,623,398.00 40 ゼネラルエレクトリック 134,187.00 3 ドイツ 2,714,418.00 41 マレーシア 117,775.80 4 英国 2,140,898.00 42 イスラエル 117,548.40 5 フランス 2,002,582.00 43 シェブロンテキサコ 112,937.00 7 中国 1,649,329.00 49 コノコフィリップス 99,468.00 9 カナダ 979,764.20 50 コロンビア 97,383.93 10 インド 691,876.30 51 パキスタン 96,114.84 20 トルコ 301,949.80 52 シティグループ 94,713.00 21 オーストリア 290,109.50 53 チリ 94,104.94 22 ウォルマートストア 258,681.00 54 IBM 89,131.00 23 インドネシア 257,641.50 57 アメリカンインターナショナルグループ 81,300.00 24 サウジアラビア 250,557.30 60 ヒューレットパッカード 73,061.00 27 ポーランド 241,832.50 62 ペルー 68,394.96 28 エクソンモービル 213,199.00 63 ベライゾン・コミュニケーションズ 67,752.00 29 南アフリカ 212,777.30 64 ウクライナ 65,149.34 30 ギリシャ 203,401.00 65 ホームデポ 64,816.00 31 ゼネラルモーターズ 195,645.20 66 バークシャーハサウエイ 63,859.00 32 フィンランド 186,597.00 67 アルトリアグループ 60,704.00 35 フォードモーター 164,496.00 69 バングラデシュ 56,844.4916 資料:企業収益データに基づくランキングはフォーチュン誌、2005年10月1日号;GDPデータは世界銀行の2005年度世界開発指標(WDI)レポートより。 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute • 世界の100大経済のうち、51は企業であり、国家はわずか49である (企業売上高と各国GDPの比較に基づく) • 上位200社の総売上高は世界の全人口の24%の収入全体の18倍で ある。 • 多国籍企業(MNC)は世界全体の経済活動の4分の1を占めている が、世界の労働力の1%未満しか雇用しておらず、いっぽう世界では 17 働く意欲のある人口のうち3分の1が失業している。 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 信用の重要性の証拠 信用の重要性の証拠 * 2005年度企業の責任とリスク管理、持続可能性 株式市場 価格 正味 帳簿価額 ブランド 価値 1,130億ドル 70億ドル 1,060億ドル 75% 3,800億ドル 410億ドル 3,390億ドル 89% 1,990億ドル 210億ドル 1,780億ドル 90% 4,990億ドル 230億ドル 4,760億ドル 95% 1,040億ドル 80億ドル 960億ドル 92% 2,020億ドル 310億ドル 1,710億ドル 85% 600億ドル 80億ドル 520億ドル 87% 460億ドル 190億ドル 270億ドル 59% 350億ドル 80億ドル 280億ドル 78% 1,490億ドル 720億ドル 770億ドル 52% 資料:インターブランド/シティバンク2001年ランク表 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute % 18 ステークホルダーの反応 ステークホルダーは企業のリーダーに何を期待しているか? * WEF、2005年度国際世論調査「世界の人々の声」 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 19 ウォルマートの例 ウォルマートは責任を果たしてい る! もう1つの側面: - 9月21日の発表では、同社は保険 加入の有無を問わず、すべての顧客 に対して月わずか4ドルで約300種類 のジェネリック医薬品を販売するとい う。2004年のジェネリック医薬品の平 均価格は月28.71ドルであった。 - ウォルマートは米国最大の民間雇 用主であり、従業員は120万人を超 えるが、従業員の半数以上は健康保 険に加入させていない。 - このプログラムは家族や退職者、 特にメディケア加入者を対象に、医 薬品を購入しやすくすることを狙いと している。 - 莫大な利益をあげているにもかか わらず、ウォルマートの従業員は公 的医療保険の援助を最も多く受けて いる。 20 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 企業の役割の再考 • 社会における企業の役割に対する共通の認識がない。 フリードマンのアプローチ:「企業の社会 的責任はその利潤を増大させることであ る。」言い換えれば、「企業のやるべきこ とはビジネスである」。 「企業はグローバル・アジェンダの形成支 援において主導的役割を果たすことので きるユニークな立場にあり、政府やシビル ソサエティに適応のための手段や能力を 提供することができる。」 ジョナサン・シュミット、世界経済フォーラム グローバル・アジェンダ担当ディレクター、 2006年1月WEF年次総会にて 21 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 開発問題 ビジネスリーダーにとっての 重要開発課題ランキング 1. 優れたガバナンス・取り組み 2. 不正 3. 貧困軽減・教育 4. 持続的経済成長 5. 平和・安全保障 6. エネルギー 7. HIV/エイズ 8. 水 9. 人権 10. 国際貿易規定 11. 国際金融構造 * 2005年度WEF GCCI調査 22 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 「毎年1兆ドル以上が賄賂として支払われている」 23 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 民間セクターにとって大きな制約となる不正(地域別) 24 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 企業の課題 • さらに高いレベルを目指す: 一般論や単純なメッセージ、 「コンプライアンスゲーム」やPR、 緊張感のない焦点のぼやけたCSRプログラムではいけない • 社会的影響・責任と環境的影響・責任の境界線の明確化 • CSRと企業戦略との関連付け • CSRと慈善活動に対する需要の優先 • 「活動家団体」と手を結び彼らをソリューションの中に取り込む 25 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 反応型から戦略的アプローチへ • 反応的行動から戦略的方策へ • ステークホルダーの関与を始めとする新たな戦略的機会の創出 • 競争力という面での改善 – 経済的成功の前提条件としての健全 な社会 26 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 新たな概念: マルチステークホルダー パートナーシップ 27 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 多面的アプローチ 「多面的アプローチ...が [開発] 問題への取り組みにおいて は必要であり...民間セクターは開発の最も重要な原動力であ るが、民間セクターだけでやり遂げるのは不可能であること もはっきりしている。公共セクターによってやらなければなら ない重要なことがあり、世界銀行が協力している主な分野で ある... 政府とドナーは政策決定においてビジネスコミュニティ を取り込み、良好なビジネス環境のための正しい政策選択 において [彼らの] 専門知識や経験を利用する必要がある」。 ポール・ウォルフォウィッツ世界銀行総裁、 アフリカ・コーポレート・カウンシルでのスピーチ 2005年6月23日 28 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute セクター横断的パートナーシップの必要性 • 経済、環境、社会問題は非常に複雑になりつつあり、問題に 取り組むために必要な資源や能力は非常に分散しているた め、1つのセクターだけであらゆる解決法を用意することはで きない。 • 民間セクターは環境衛生面における課題への取り組み支援 において役割を果たすことができ、またそうするであろうとい う期待が高まっている。 • 企業、そして公共セクターのリーダーにとっての重要な問題 は、この役割についての適切かつ現実的な境界線を定める こと。 • 共通の利益と価値。 29 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 民間セクターにとってのインセンティブ • 安定した安全なビジネス環境への投資は、健全で有能な労 働力、富裕な消費者、いっそう魅力的な投資環境、そして競 争力の強化をもたらす。 • 環境劣化、気候変動、病気、民族紛争などといった、ビジネ スを行う上での直接費用やリスクを管理することで、コストを 削減し、リスク・信用管理を強化し、資源の効率を高め、生産 性を向上させることができる。 • 持続可能な開発に貢献し、責任をもつことによって、イノベー ション、価値創造、競争力を通じて新たなビジネスチャンスへ とつながる。 30 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 共通性はあるか? 競争力は役立つか? - 競争力は常に企業戦略にとって重要である。 - ますます重要になりつつある: - 競争の焦点は安上がりの材料から優れた生産性へと移っている。 - グローバリゼーションのせいで競争はもはや国内市場だけの問題では なくなった。 - 多数の市場で競争。 なぜ競争力という枠組みを設けるのか? 企業は - CSRを競争戦略や競争状況と効果的に関連付けられる。 - 政府やシビルソサエティとのコミュニケーションの向上、協力体制 の強化。 31 Djordjija Petkoski Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness& &Development Development; Head of Business, Competitiveness, World Bank Institute World Bank Institute ステークホルダーの役割 ステークホルダー 役割 民間セクター 資源提供 経営・組織に関する専門知識 大規模なサプライチェーン・チャネルを活用して情報や知識を 提供 イノベーション 否定的な見方を抑えて信頼を構築する実例を自ら提示して 主導 政府 CSRを促進する環境の育成 - 政策、法規、インセンティブ、基盤 積極的対話 知識や資本資源の交換に対する意欲 自ら実例を示して主導 32 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute ステークホルダーの役割 ステークホルダー シビルソサエティ 役割 政府や企業と生産的に関与。 現地の知識、ベストプラクティスを共有。 ネットワーク構築 社会事業・開発プログラム提供のための重要なチャネル と企業や政府のキーパートナーとの結び付け。 メディア パブリックオピニオンの形成 IFI/ DA 民間セクター、公共セクター、シビルソサエティを取り持つ積 極的な仲介役。 政治的に中立のテリトリーを提供することにより、ビジネス活 動を成功させる適切な環境を提供。 ステークホルダーと構成員との関係を円滑に進める。 他の地域や商品システムでもモデルを複製(相乗効果)。 33 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 個人の役割 今日、個人による慈善活動はかなり増えている。 -ビル・ゲイツ:世界最高の富豪であるだけでなく、世界でトップクラスの慈 善家の1人でもある。 -ウォーレン・バフェット:この有名なアメリカ人投資家は世界第2位の富豪 である。彼は440億ドルの資産の大半を慈善活動に寄付している。 -ビル・クリントンとクリントン・グローバル・イニシアティブ:クリントンはそ の政治的影響力とコネクションを生かしてイニシアティブを立ち上げ、 HIV/エイズ撲滅のためにリーダーたちや資源を育成している。 34 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 世界銀行の役割 • 世界銀行は有意義な対話のための政治的に中立のテリト リーを提供することにより、官民のパートナーシップを成功さ せるための適切な環境を提供する可能性をもっている。 35 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 中立の触媒 • 世界銀行は4つのレベルで関与している – 政治的レベル:民間セクター関与の重要性に関する政治 的対話の主導 – 戦略的レベル:民間セクターを参加させやすくするために 必要な枠組み(法規制)制定の支援 – 実現レベル:企画、予算編成、実現プロセスの橋渡し – 実務レベル:技術サポートの支援 36 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 世界銀行研究所 • 各国を支援する世界銀行のキャパシティ・ビルディング部門 では、開発課題に取り組むためのグローバルな知識やロー カルな知識を提供、応用している • WBIの能力開発プログラムは、任務遂行に携わる人々の集 団におけるスキル構築だけでなく、彼らが働いている組織、 そして彼らが活動する社会政治学的環境の強化も目的とし ている • 各国、世界銀行スタッフ、クライアント、そして貧困削減と持 続可能な開発に取り組んでいる人々のための学習機会を設 けている 37 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 赤道原則 • プロジェクト・ファイナンス融資において環境社会問題を管理 するための自主的ガイドライン • 主要金融機関によって開発 • IFC環境社会基準に基づく • 資本コスト5,000万ドル以上のあらゆる産業セクターの開発プ ロジェクトに対して世界的規模で適用 38 Djordjija DjordjijaPetkoski, Petkoski Head Competitiveness, & Development Head of ofBusiness, Private Sector Development World Bank Institute and Corporate Governance, World Bank Institute 赤道原則 赤道原則の採用は金融機関にとって どのような意味があるか? • 金融機関、その顧客、その他のステークホルダーに大きなメ リットをもたらす。 • プロジェクト・ファイナンスにおける環境社会リスク・エクス ポージャーを文書化し、管理する能力を強化する。 • 新興成長市場への投資に関する環境社会政策問題の管理 において顧客と協力できる。 39 Djordjija DjordjijaPetkoski, Petkoski Head Competitiveness, & Development Head of ofBusiness, Private Sector Development World Bank Institute and Corporate Governance, World Bank Institute 世界銀行におけるマルチステークホルダー・パートナーシップ例 • WBIのマルチステークホルダー・パートナーシップ・プログラ ム例: – ブラジルの砂糖キビ産業協会であるUNICAはWBIと提携 – WBIはドイツ商工会議所と協力している – 栄養失調およびビタミン・ミネラル欠乏症に関するGAINビ ジネス・アライアンス – エチオピアにおけるHIV/エイズ撲滅のためのビジネス・ パートナーシップ これらのプログラムは民間セクターの競争力とCSR問題に取り 組む能力を強化している。 40 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute マルチステークホルダー・パートナーシップ ブラジルのUNICA • ブラジルの砂糖キビ産業協会であるUNICAは、労働慣行や 環境への影響といった基本的なCSR問題に取り組むことに よってサンパウロの砂糖キビ企業の競争力を強化することを 目的に、WBIと提携している。 • 現在の研修プログラム、持続可能な競争力のための官民 パートナーシップは、UNICAとインヴェントとの提携によって 現在ブラジルで提供されている。このプログラムは民間セク ターが開発において果たすことのできる重要な役割と生産的 な官民パートナーシップの意義に重点を置いている。民間セ クターからの参加者は500人に達した。 41 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute マルチステークホルダー・パートナーシップ ブラジルおよび南アフリカでのドイツ商工会議所 • WBIはここ数年、サンパウロにおいてドイツ商工会議所と協 力して、ブラジル企業の競争力と社会的影響を高めるために 企業の社会的責任(CSR)に関する能力を強化している。こ のための活動として、AHKの加盟企業向けのCSRに関する ブレンディッド・トレーニング・プログラムがある。南アフリカに もこのようなパートナーシップを拡大するチャンスがある。 42 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute マルチステークホルダー・パートナーシップ 栄養失調および ビタミン・ミネラル 欠乏症に関する 専門知識 民間セクター開発 および企業の 社会的責任に 関する専門知識 GAINビジネス・アライアンス 43 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute マルチステークホルダー・パートナーシップ エチオピアHIV/エイズ対策企業連合 (EBC) ACTafrica IFCエイズへの挑戦 HIV/エイズ対策企業連合 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 世界銀行研究所(WBI) ドナー(GTZ、DFID) 44 課題 • マルチステークホルダー・パートナーシップの効果と有効性 のモニタリング • 成功したマルチステークホルダー・パートナーシップ・イニシ アティブのスケールアップ • マルチステークホルダー・パートナーシップのガバナンス効 果の判定および査定 • 複雑なグローバル開発課題に効果的に取り組むための、マ ルチステークホルダー・パートナーシップを成功させ、強化す ることの重要性と緊急性への取り組み 45 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 能力開発 46 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute パートナーシップの課題 • 既存認識の打破 • マルチステークホルダー・パートナーシップや共同行動は簡 単ではない。 – 共通の基盤を定めることが必要。 – 共通の言語をもつことが必要。 – 明確な目標、責任、行動計画を定めることが必要。 – 関わり続けることが必要。 – 柔軟であることが必要。 47 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 能力開発において求められること – – – – – – – ステークホルダーの協力能力の強化 各ステークホルダーの役割と責任の再考 セクターを超えた献身的リーダーシップの構築 共通言語の決定 安全なスペースを設けてタブーを破る さらなるリサーチに対するニーズの充足 実行可能な戦略と拡大可能なソリューションの開発 社会における企業の役割について共通の理解を見出す 48 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 能力について • 必ずしもすべてのステークホルダーがパートナーシップ形成 /持続能力をもっているわけではない。 – アクセスの問題 • 法的、政治的、地理的障害 – 資源の問題 • 人的、資本的、知識的資源 – 認識の問題 • 不信感、共通言語の不在、妥当性ないし関連性の不 一致 49 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 現状: ベストプラクティス 50 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute ベストプラクティスの例 • 現状を知るための世界的なベストプラクティスの例: – – – – – – – – – – – ラテンアメリカにおけるBASFケミカルの「エコ効率センター」 ブラジルにおけるナチュラの「エコス・チャレンジ」 メキシコにおけるCEMEX住宅プログラム「Patrimonio Hoy」 バークレイズ銀行の世界的な社会プログラム 米国におけるシティバンクのメキシコ移民向けプログラム インドにおけるSHG「バンク・リンケージ」プログラム インドネシアにおけるインドネシア庶民銀行のマイクロファイナンス・ プログラム ケニアにおけるK-Repバンクのマイクロファイナンス・プログラム ブラジルにおけるBanco Real/ ABN AMROのCSRプログラム 中国のおけるエイサーのCSRプログラム インドにおけるNirmaのプログラム「貧しい人たちに手頃な粉末洗剤 を」 51 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 日本の現状 • 日本企業や他のOECDおよびEDC諸国企業のベストプラク ティスへのアクセスは限定的 • 日本の状況を十分に理解し、日本の企業を関わらせることに より: – 企業が最も効果的に開発に貢献できる方法の構造を改 善することにより、グローバルCSRアジェンダを新たに形 成できる – 実用的なソリューションとスケールアップの可能性をもっ た新たなベストプラクティスを見出すことができる 52 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute ベストプラクティスの例 ラテンアメリカにおける「エコ効率センター」 • BASFは大手化学薬品会社である。同社は2005年6月にブラジルのサンベルナル ド・ド・カンポにラテンアメリカで初めてのエコ効率センターを立ち上げた。このセン ターを通じてBASFは、ドイツ技術協力公社(GTZ)や現地パートナーとの協力によ り、南米全域の企業や公共機関にエコ効率、環境教育、森林再生分野における 専門知識や技術を提供している。センターの専門家が企業でエコ効率分析を行 い、持続可能な製品やプロセスのための戦略実現に関して助言している。 ブラジルにおけるナチュラの「エコス・チャレンジ」 • ナチュラは化粧品会社である。ナチュラはステークホルダーとの関係構築や持続 可能な開発を企業概念の中心に据える企業戦略の確立に基づいて、その責任 ある社会・環境管理を強化している。 • ナチュラの倫理原則は同社のあらゆる野のイニシアティブで貫かれており、その 結果: – 技術的基盤としてブラジルの多様な生物から生まれる原料の持続可能な使用を選択。 – 供給業者の社会的環境的評価プロセスの採用。 – 環境への影響の少ないパッケージの開発。 53 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute ベストプラクティスの例 メキシコにおける「Patrimonio Hoy」 世界第3位のセメント製造会社であるCEMEXは、世界で最も成功している住宅プログラ ム、「Patrimonio Hoy(今築こう、あなたの財産!)」プログラムを作った。このプログラム は自宅を一部屋ずつ徐々に建築していくために定期的に貯蓄をしているのは男性ではな く、女性であるという事実に基づいて策定された。「集団貸付」という概念から着想を得た CEMEX/Patrimonio Hoyでは、新しい屋根を付けたり新しい部屋を作るのに必要な建築 材料の資金を融資するために、毎週約10ドルを70週間にわたって顧客に貯蓄させるとい う提案を用意した。 メキシコにおける企業の社会的責任(CSR)とセクター横断的なパートナーシップ(MSP) WBIはCEMEXおよびモンテレー工科大学(ITESM)とパートナーシップを組んで総合的な トレーニング・プログラムを開発しており、1) WBIのCSRオンラインコース、2) CEMEXと ITESMのコーポレート・シティズンシップ・オンラインコース、3) WBIとITESMのMSPオン ラインコースがある。このプログラムは主として全ラテンアメリカの企業代表者向けのもの であり、2007年3月から2008年3月にかけてオンラインで提供される。プログラムの立ち 上げは3つの組織のCSR専門家との懇談会を通じて行われる。 54 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute ベストプラクティスの例 • イギリスのバークレイズ銀行 ソーシャルハウジング向けの融資によって金融サービスへの取り込みを 支援し、コミュニティ開発に投資、すなわち「バークレイズ・スペース・ フォー・スポーツ」プログラムを運営している。またこの銀行には、障害者 のためのプログラムや従業員の健康を改善して面倒を見るプログラム、 すなわちアフリカ支店向けのHIV/エイズプログラムもある。 • メキシコナショナル銀行Banamex(メキシコ)とシティバンク(米国) – パー トナーシップ この2つの銀行は、米国で働くメキシコ移民が問題なく、遅れることなく、 多額の手数料を支払うことなく、メキシコにいる家族に送金できる機会を 提供するためにパートナーシップを組み、また顧客のための金融教育も 無償で行っている。 55 Djordjija DjordjijaPetkoski, Petkoski Head Competitiveness, & Development Head of ofBusiness, Private Sector Development World Bank Institute and Corporate Governance, World Bank Institute ベストプラクティスの例 • インドのSHGバンク・リンケージ 非政府組織が開発した革新的なマイクロファイナンス・イニシアティブに よって、商業銀行、NGO、非公式地域団体の間に連係が生まれた。 「SHGバンク・リンケージ」と呼ばれることの多いこのモデルは、実質的に 農村住民の貧困層に的を絞っており、彼らの脆弱性軽減を支援している。 • インドネシア庶民銀行(BRI) BRIは政府やドナーからの補助金や資金に頼ることなく地元で動員され た貯蓄をベースにして、マイクロファイナンスに対する採算性の高い持続 可能なアプローチを大規模に展開している。 56 Djordjija DjordjijaPetkoski, Petkoski Head Competitiveness, & Development Head of ofBusiness, Private Sector Development World Bank Institute and Corporate Governance, World Bank Institute ベストプラクティスの例 • ケニアのK-Repバンク K-Repはドナー出資プロジェクトから商業マイクロファイナンス銀行へと転換 を図り、社会的使命と営利追求という任務とのバランスをとりながら貧しい 人々に金融サービスへのアクセスを提供することを目指している。 • ブラジルのBanco Real /ABN AMRO 70か国以上に支店を置く、古くからのブラジルの金融機関。この銀行は環境 的・社会的に責任あるプラクティスに全力を注いでいる。 – 顧客の完全な満足 - マイクロクレジット – 倫理的投資 - 多様性 – 社会環境融資 - 供給業者 – 社会文化投資 – エコ効率 57 Djordjija DjordjijaPetkoski, Petkoski Head Competitiveness, & Development Head of ofBusiness, Private Sector Development World Bank Institute and Corporate Governance, World Bank Institute ベストプラクティスの例 電子機器およびコンピュータ エイサー(中国、香港) - 同社は世界中に12工場と39の組立工場をもっており、 1998年には750万台のパーソナ ルコンピュータを出荷した。 - 環境的に責任あるプラクティス: - 産業廃棄物削減のためのグリーンデザイン、グリーン生産、グリーンパッケージ、グ リーン再利用、オフィスでの環境イニシアティブ - 社会的課題への取り組み: - 労働法と人材管理、コミュニティ開発、地元経済成長、例えば新規事業への低コス トITハードウェアや技術サービスの提供を通じて IFC、SustainAbility、Ethos Institute(2003年):開発の価値:新興成長市場における持続可能性のビジネスケー スより。 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 58 ベストプラクティスの例 Nirma:貧しい人たちに手頃な粉末洗剤を • • • • • • インドの会社であるNirmaは貧しい人たちが手軽に購入できる粉末洗 剤を作った 単純な技術と低コスト製造法を採用 まったく新しい採算のとれるマーケットセグメントを生み出せたことを証 明 貧しい人々のニーズに的を絞ることにより、不動の地位にある業者か らマーケットシェアを奪い取る ユニリーバの子会社であるヒンダスタン・リーバに競合低コスト製品の 発売を余儀なくさせ、貧しい人々を相手にしても利益は得られないとい う考えを見直させた 農村地域への商品流通に重点を置き、僻地への流通網を強化させ、 市場経済への参加を促進した 59 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute ベストプラクティスの例 ダイムラークライスラーとのパートナーシップによる「ココナッツ ファイバー・プロジェクト」 非営利組織のPOEMARは、ブラジルでダイムラークライスラーと提携して自動車 の車内用部品向けに天然繊維を提供している。このパートナーシップは1992年 から始まり、ダイムラークライスラーは実現可能な天然繊維製品とこうした製品の 供給者として地元コミュニティが果たすことのできる役割の研究に対して、140万 ドルの初期投資を行うことに同意した。 • 現在、工場は月間8万トンの生産能力を有している。生産のうち合計25%はダイム ラークライスラーの自動車車内用部品の需要にもっぱら充てられている。 • このパートナーシップはPOEMATECにココナッツ繊維を供給している農村コミュニ ティ組織にも利益をもたらしている。現在パラ州の8地区でPOEMATECにココナッ ツ繊維を供給しており、約4,000の新規雇用創出へとつながっている。 • プロジェクトはダイムラークライスラーのビジネスにとっても利益となる。同社は現 地調達要件を満たすことができ、自動車製造において本国のドイツで定められて いる高い環境基準を確実に満たすことができる。そして、こうした部品の調達は 経済的にも採算性がある。 60 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute リーダーシップの 重要性 61 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 結論に代えて • 適切な質問であるか? • 環境が異なっても相変わらずの古い質問 • 新しい質問はまだ明確な形になっていない • できる限り具体的にすることが必要 • 答えについては? • 限定的あるいは一般的すぎる答えに過剰に焦点を絞らない こと • 質問に継続的に取り組むダイナミックなプロセス • 政府、企業、シビルソサエティ組織、国際金融機関、開発機 関どうしのパートナーシップを通じて質問に取り組むための 能力を構築(キャパシティ・ビルディング) Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 62 リーダーとしての役割 「リーダーたちがここ10年間決定を下すときに用い てきた前提、手段そして枠組みは不十分であるよう だ。あらゆる階層のリーダーたちにとって、成功と妥 当性の維持を期待するのであれば新たな能力を開 発することが急務である。」 クラウス・シュワブ教授、世界経済フォーラム設立者兼理事長、 2006年1月WEF年次総会にて 63 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 現在および将来のビジネス/公共セクターリーダーにとっての 新たな課題:グローバル開発課題への取り組みによって持 続可能性を確保しながらビジネスチャンスをどのように利用 するか? 64 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute 未来は、 今、我々が何をなすか、にかかっている。 –マハトマ・ガンジー 65 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute Djordjija Petkoski, [email protected] 世界銀行研究所 企業・競争力・開発 プログラムリーダー www.developmentandbusiness.org 66 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute Djordjija Petkoski, 世界銀行研究所 企業・競争力・開発担当チーフ 67 Djordjija Petkoski, Head of Business, Competitiveness, & Development World Bank Institute