Comments
Description
Transcript
淡路さん インタビュー
弁護士 淡路さん インタビュー 司法の現場での男女差別について、子育てと仕事の両立に つ ついて、男女共同参画の未来像についてお聞きしました。 仕事上で、女性だから困ったことや差別されているという状況はありましたか? 仕 “差別”か“区別”かは、非常に難しい問題ではありますが、最高裁判所の女 性の裁判官が現在(平成21年11月)でも1人のみであることや、検事正・日本 性の 弁護士連合会会長・高等裁判所裁判官の各男女比を見る限り、やはり巷で言う“見 弁護 えないガラスの壁”は厳然と存在しているように思われます。 えな 子育てと仕事との両立がよく言われますが、その点はどのようにお考えですか? 子育ては最大の社会貢献です。ちゃんと子どもを育てれば、その子が将来、税金も払い、社会貢献してくれ るのですから、その意味では“主婦”以上の立派な職業はないとすらいえます。 しかし、他方でそのような育児の重要さや社会貢献度をわかってもらえないという社会の厳しい現実があります。 また、仕事をしながら子育てをするためには、肉親など支えてくれる人が近くにいてくれることも必要不可 欠です。しかし、今の核家族化社会でどれだけの女性がこのような恵まれた環境にあるでしょうか。おそらく ほんの少数でしょう。環境が整わず、出産後、仕事を続けることをあきらめる人も多いはずです。だからこ そ、子育て中の人や子育てを終えた人が再チャレンジしやすい社会体制を作ることは非常に重要です。 今、弁護士人口の増加に伴い、パートの女性弁護士も出てきています。結婚、出産、育児を理由に退官した 女性裁判官をパートで再雇用することができれば、もっと社会は変わると思います。 男女共同参画のめざす像については、どう思われますか? 今の日本社会は、非常に残念なことに、“女性が子どもを産まなくなった”という“不幸”を原因として、 逆に社会の労働人口減少を補うために女性の労働力を活用しようという、いわば、非常に悲しい“パラドック ス”に陥っています。このようなパラドックスをなかなか克服できないでいる要因としては、先に述べたよう に、今の日本社会では、まだまだ女性が政策等に重要な決定権限を持つ立場にほとんどついていないという現 実もあると思います。 まずは、女性が産休や育児休暇をとっても普通に仕事を続けることができるという環境作りをすべきだと思 います。女性の労働力をあてにしないといけない現状では、先に指摘したように、無理せず共働きできる社会体制 作りが必要だと考えます。 また、日本でも、北欧型のクォータ制(※)などの導入を真剣に考えるべき時がきていると思います。 最後に、このように男女共同参画を推進していくことは、結果として今まで“大黒柱”としてたった一人で 家計の屋台骨を背負い、出世のための飲み会やサービス残業でかわいい子どもの顔を見る時間すらろくにとれ なかった男性諸氏の肩の荷を下ろしてあげることにもつながると思います。 (※)クォータ制:ノルウェー・デンマークなどの北欧諸国から始まった制度。政策決定の場で性差別による弊害を なくすために、男女間の格差を積極的に是正し、男女の比率に偏りのないようにする仕組みのこと。 編 集 委 員 か ら ひ と こ と 弁護士など司法の世界は特別な世界だと思います。その中で女性が女性のために闘うことは心強く素晴らしいこと です。働く母の影にはそれを支える女性の姿がありました。「子育ては最大の社会貢献」という言葉が印象的でし た。ワークシェアリングや再雇用が当たり前になり、子育てをしている女性が活躍できる社会が本当の男女共同参画 社会だと考えます。 本 の 紹 介 女性弁護士の歩み 3人から3000人へ 日本弁護士連合会 両性の平等に関する委員会 編 明石書店 平成18年、3人から始まった女性弁護士の数が3,000人を大きく超えました。その歴史が書き綴ら れています。民事、刑事、公害や医療過誤訴訟、消費者問題、企業、政治など、さまざまな分野で活 躍する現役女性弁護士の執筆によるものです。 「女性弁護士が法学教育の過程で受けてきた、男性中心のものの見方をまず捨て去る努力が必要」 など、女性弁護士の生の声をきくことができます。「弁護士」を理解し身近に感じることができる 一冊です。 5