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レポート問題5の解答
物理学基礎論 B (電磁気学) レポート問題 5 略解 (この講義に関するホームページ http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/˜nakajima/lecture/electromagnetism.html) 問1 半径 R の球中に一様に分布する電荷(総電荷量 Q)によるポテンシャルを求めよ。 解答 球の内外における電場 E(r) はそれぞれ、 Q 2 4πε 0r E(r) = Qr 4πε0 R3 (r ≥ R) (r < R) と表されるので(ただし r は球の中心からの距離を表す)、ポテンシャルはこれを積分して Q 4πε 0r φ(r) = 2 Qr − +C 8πε0 R3 (r ≥ R) (r < R) となる(ただし C は積分定数、r → ∞ で φ(r) = 0 とした) 。C は r = R でポテンシャルが連続であること(境界条 件)から求まる。 Q Q =− +C 4πε0 R 8πε0 R 3Q C= 8πε0 R 以上より、求めるポテンシャルは Q 4πε 0r φ(r) = ( 2 ) Q 3R − r2 3 8πε0 R (r ≥ R) (r < R) となる。 問2 半径が a の無限に長い円柱がある。この円柱は電荷密度 ρ で一様に電荷が分布している。この時、中心軸方向単位長 さ当たりに蓄えられる静電エネルギーを求めよ。ただし、円柱表面の電位を 0 とする。(注:電位=静電ポテンシャル) 解答 円柱の中心軸からの距離が r となる円を底面とする円柱の閉曲面を考えて、ガウスの法則を用いて電場を求める。 r < a の時、軸対称であることを考慮し、適当に軸方向の円柱の長さを l とすると、電場 E(r) は πr2 lρ ε0 ρr E(r) = 2ε0 E(r) · 2πrl = となるので、静電ポテンシャル φ(r) は ∫ r φ(r) = − E(r)dr = a ρ 2 (a − r2 ) 4ε0 である。r ≥ a の時は、先と同様にして、電場は πa2 lρ ε0 ρa2 E(r) = 2ε0 r E(r) · 2πrl = となり、ポテンシャルは ∫ r E(r)dr = − φ(r) = − a となる。 1 (r) ρa2 log 2ε0 a この問題の解き方は何通りかあるが、まず、微小電荷を無限遠から次々に運んできて円柱を形取り、その際に要した 仕事を静電エネルギーとみなす方法を考える。 帯電している円柱の半径が a0 の時、r = a を基準とした r = a0 の電位は φ(a0 ) = − ∫ a0 a ρa0 ρa0 =− log 2ε0 r 2ε0 2 2 ( a0 a ) となる。円柱の半径を a0 から a0 + da0 にする時、その際運んでこなければならない微小電荷 dq は、円柱の高さをと りあえず l として dq = 2πa0 lda0 · ρ であるので、この微小電荷 dq を無限遠から運んでくる際に要する仕事 dW は dW = dq · φ(a0 ) で得られる。したがって、最後に a0 を 0 から a まで積分することで求める静電エネルギー(の総量)を得ることがで きる。中心軸単位長さ当たりにするためにはこれを l で割ればよい。以上から、中心軸単位長さ当たりの静電エネル ギーは 1 l ∫ a 0 1 dW = l ∫ a φ(a0 )dq ( 0) ∫ a πρ2 a 0 3 da0 =− a log ε0 0 a ([ ( 0 )]a ∫ a 0 3 ) 4 πρ2 a0 a a =− log − da0 ε0 4 a 4 0 0 0 πρ2 a4 = 16ε0 となる。 別解 1 :電荷密度 ρ(r) が連続的に分布している場合の静電エネルギーの式 1 U= 2 ∫ ρ(r)φ(r)dV を用いて求めることもできる。 ∫ U 1 a ρ 2 = ρ (a − r2 ) · 2πrdr l 2 0 4ε0 [ ]a πρ2 a2 2 r4 = r − 4ε0 2 4 0 = πρ2 a4 16ε0 別解 2 :場が存在すると、場がエネルギーを持つと考えることもできる。(この概念はそのうち講義で学ぶと思いま す。 )静電場 E(r) が存在するとき、この静電場が持つエネルギーは ∫ 1 ε0 |E(r)|2 dV 2 で与えられるので、これを用いて静電エネルギーを求めることもできる。 問3 点 A(a, 0, 0) 及び点 B(−a, 0, 0) にそれぞれ +q, −q の点電荷が置かれていて、電気双極子モーメント p とみなせる 時、距離 r に位置する点 P(x, y, z) における電位 φ(x, y, z) を p = |p| を用いて表せ。また電位を求めた後に、電場 E(x, y, z) も p 及び r を用いて表せ。 解答 点 P での電位は 1 φ(x, y, z) = 4πε0 { q q − ((x − a)2 + y 2 + z 2 )1/2 ((x + a)2 + y 2 + z 2 )1/2 2 } となる。ここで a が点 P までの距離に比べて十分小さいことから、a2 の項を落とす近似を用いると、 ( )−1/2 2ax ((x ∓ a)2 + y 2 + z 2 )−1/2 ∼ = (x2 + y 2 + z 2 )−1/2 1 ∓ 2 x + y2 + z2 ) ( ax ∼ = (x2 + y 2 + z 2 )−1/2 1 ± 2 x + y2 + z2 となり、r = √ x2 + y 2 + z 2 とすると、 q 2ax 4πε0 (x2 + y 2 + z 2 )3/2 p x = 4πε0 r3 φ(r) ∼ = となる(p = (2qa, 0, 0) なので p = 2qa である)。E(x, y, z) = −∇φ(x, y, z) なので、 2 (3x − r2 )/r5 p 3xy/r5 E(x, y, z) = 4πε0 3xz/r5 ( ) 1 3(p · r) =− p − r 4πε0 r3 r2 を得る。 問4 電気双極子モーメント p を電場 E の中に置いたとき、p はどのような力を受けるか。また、p の静電エネルギーを求 めよ。 解答 r ± d にそれぞれ位置する 1 対の点電荷 ±q によって電気双極子 p が作られるとみなす(複号同順、以下も同じく同 順)。電場 E(r) から点電荷 ±q が受ける力 F ± は F ± = ±qE(r ± d) である。p = 2qd なので、電気双極子が受け る力 F は ( ) F = F + + F − = q E(r + d) − E(r − d) = 2q(d · ∇)E(r) = (p · ∇)E(r) である。また、力のモーメント N は ( ) N = d × (F + − F − ) = qd × E(r + d) + E(r − d) = 2qd × E(r) = p × E(r) となる。さらに、電場 E(r) によって生じる電位を φ(r) とすると、E(r) = −∇φ(r) により、電気双極子の静電エネ ルギー U は ( ) U = q φ(r + d) − φ(r − d) = 2q(d · ∇)φ(r) = −p · E となる。 3