チューリップ切り花の日持ち性向上技術（PDF：296KB）

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チューリップ切り花の日持ち性向上技術
新潟県農業総合研究所園芸研究センター
花き研究チーム
渡邉 祐輔
（１）ねらい
花き業界では切り花の消費を拡大するために、
「 日 持 ち 保 証 販 売 」の
取り組みを進めています。チューリップ切り花は、花弁の老化が早い
ほか、花茎の伸長や葉の黄化など草姿の変化により、日持ちの短い品
目とされています。そこで、チューリップ切り花に対して、出荷時と
観賞時に品質保持剤を使用して、日持ちを延長させる技術を確立しま
した。
（２）研究内容
ア 生産者段階における前処理
切 り 花 を 通 常 の 切 り 前 で 収 穫 し 、調 整 ・結 束 後 、5℃ 程 度 の 作 業 場
ま た は 冷 蔵 庫 内 で 、 200 倍 に 希 釈 し た 市 販 の チ ュ ー リ ッ プ 用 前 処 理
剤 を 3 時 間 水 あ げ し ま す（ 図 １ ）。前 処 理 剤 の 処 理 に よ り 、花 茎 の 伸
長や葉の黄化を抑制し、草姿の観賞期間を 3 日程度延長することが
で き ま す （ 図 ２ 、 図 ４ ‐ A）。
イ
消費者段階における後処理
切り花を観賞する際に、市販の切り花用後処理剤を使用基準に従
っ て 生 け 水 に 添 加 し ま す（ 図 １ ）。後 処 理 剤 の 処 理 に よ り 、花 弁 の 老
化を抑え、花の観賞期間を 3 日程度延長することができます。市販
されている数種の後処理剤の効果はほぼ同等です。
（ 図 ３ 、図 ４ ‐ B）。
ウ
前処理剤と後処理剤の併用処理による品質保持技術
前処理剤と後処理剤を併用すると、花茎の曲がりや葉の黄化を抑
制 す る と と も に 、 花 弁 の 老 化 を 抑 え 、 10 日 程 度 の 花 持 ち が 期 待 で き
ま す 。（ 図 ４ ‐ C）。
（３）今後に向けて（普及利用上の留意点）
本試験は「イルデフランス」および「クリスマスドリーム」を用い
た結果であり、前処理剤および後処理剤の効果には品種間差がみられ
ま す 。品 質 保 持 剤 の 資 材 コ ス ト は 、前 処 理 剤 が 1 本 当 た り 1～ 3 円 程 度 、
後 処 理 剤 が 標 準 的 な 花 瓶 （ 約 500 m L） あ た り 20 円 程 度 と 試 算 さ れ ま
す 。チ ュ ー リ ッ プ 用 と し て 販 売 さ れ て い る 前 処 理 剤 は C 社 の 製 品 で す 。
前処理剤を用いると、花の大きさや花弁の展開程度が無処理の花と異
なることがあります。室温が高い場合など、観賞条件によっては葉等
に障害が発生することがあります。
7
10
5
生
産
者
水あげ
前処理剤
C社のチューリップ用前処理剤
を水揚げの水に添加し、
冷蔵庫や作業場で処理
0
-5
5
花茎・処理なし
-10
処理あり
葉色・処理なし
-15
葉色の変化値（SPAD値）
調整・結束
花茎の伸長量 (cm)
収穫
処理あり
0
-20
梱包・出荷
収穫時
4日後
8日後
図２　前処理剤が切り花の花茎長および葉色に及ぼす影響（ｸﾘｽﾏｽﾄﾞﾘｰﾑ）
ｲﾙﾃﾞﾌﾗﾝｽ
蒸留水
販売
ｸﾘｽﾏｽﾄﾞﾘｰﾑ
後処理剤A
購入
後処理剤B
消
費
者
切り戻し
後処理剤C
観賞
後処理剤
0
市販の切り花用後処理剤を
生け水に添加
図１　品質保持剤の処理体系
3
6
9
12
15
図３　後処理剤が花の日持ちに及ぼす影響
横軸は日数、後処理剤A～Cは市販の後処理剤（切り花長持ち剤等と表記）
後処理剤A～Cは市販の後処理剤（切り花長持ち剤等と表記）
処理あり（8日目）
処理あり
処理なし
処理なし（5日目）
A 前処理剤の効果 （ｲﾙﾃﾞﾌﾗﾝｽ）
B 後処理剤の効果 （8日目：ｲﾙﾃﾞﾌﾗﾝｽ）
処理なし
処理あり
処理あり
処理なし
C 前処理剤と後処理剤の併用効果 （10日目 左：ｲﾙﾃﾞﾌﾗﾝｽ、右：ｸﾘｽﾏｽﾄﾞﾘｰﾑ）
図４　品質保持剤がﾁｭｰﾘｯﾌﾟ切り花の花持ちに及ぼす影響
【試験条件】　花蕾着色ｽﾃｰｼﾞで収穫し、調整後、5℃の冷蔵庫内で3時間水揚げ。出荷箱に梱包して5℃の冷蔵庫内で2日間保管（流通ｼﾐｭﾚｰ
ｼｮﾝ）。その後、10℃の冷蔵庫内で2日間湿式保管（販売ｼﾐｭﾚｰｼｮﾝ）。出庫後、切り戻しを行い、室温20℃、湿度60％、12時間明条件（1000 lx
； 8：00～20：00）の条件下で花持ち調査。花弁が老化するまでの期間は、花弁の1/3が萎凋、退色または落弁するまでとした。
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