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技術資料 1. ケーブルの取り扱い・布設について

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技術資料 1. ケーブルの取り扱い・布設について
技術資料
1. ケーブルの取り扱い・布設について
ケーブルは使用する場合の環境、或いは使用時の取扱い等の条件により特性を充分発揮出来なくなる事があります。
1-1 ケーブルの許容張力
ケーブル布設においてはケーブルにかかる張力はできるだけ小さい方が望ましく、支持線等のないケーブルの導体に
張力を負担させる場合は目安として次の値を超えないように慎重に作業する必要があります。
銅導体ケーブルの場合
種類(例)
AWG22× 5P
AWG22×10P
AWG20× 5P
AWG20×10P
AWG18× 5C
AWG18× 8C
2 ㎏f
7×(ケーブル心線数)×(
導体断面積mm)
ケーブル外径(㎜) 概算許容張力(㎏f) 概算許容張力(N)
8.7
24
225
11.9
48
470
9.7
38
372
13.4
76
745
7.1
30
294
8.4
48
470
1-2 ケーブルの許容曲げ半径
ケーブルはその内部構造上又はシース構造上、一定の限界を超えた屈曲を行うとその性能を劣化させることがありま
す。下記の屈曲の限界に対する基準を参照して下さい。繰り返しの曲げは使用条件での確認が必要です。
許容曲げ半径の考え方は次の通りです。
(1)接続及び支持する場合の曲げ半径・・・・ケーブルを固定して長時間にわたって特性が保証できる曲げ半径
(2)布設中の曲げ半径・・・・・・・・・・・・・・・・・・・布設中許容できる曲げ半径。
ケーブルの分類
一般PVCシース
平衡型PVCシース
接続及び支持する
布設中の曲げ半径
場合の曲げ半径
6D以上
10D以上
4D以上
10D以上
D:ケーブル外径
(備考) 一般的にしゃへいテープは縦添えより横巻き(重ね巻き)にする方が許容屈曲半径を若干小さくできます。
1-3 各種シースの一般的特性
シース材料
比 重
引張強さ
伸 び
加熱後の残率
(100℃,48h)
耐油性
(100℃,48h)
軟化温度
分解温度
引火温度
発火温度
脆化温度
硬 さ (※)
耐電圧
(g/cm 3)
(MPa)
(%)
引張強さ (%)
伸び
(%)
引張強さ (%)
伸び
(%)
(℃)
(℃)
(℃)
(℃)
(℃)
(kV/㎜)
PVC
1.25∼1.45
15∼20
100∼400
85以 上
80以 上
80以 上
60以 上
120
200∼300
530以 上
530以 上
-20∼-45
HDA75∼90
30以 上
PE
0.91∼0.93
7∼22
500∼700
80 以 上
80 以 上
105
335∼450
340
350
-60以 下
HDD75∼85
35∼50
※ デュロメータ(
硬度計)
の圧子にタイプAとタイプDの種類があり、硬さ算定式により求めます。(100∼40h)
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技術資料
2. ケーブルの許容電流について
絶縁電線やケーブルの許容電流は裸線の場合と異なり、被覆物の耐熱性を考慮しなければなりません。 たとえ布設条件
が同一であっても、その電線に使用される被覆物・
絶縁物によって流しうる電流値に大きな相違があり、裸線の場合に比
べてかなり複雑な計算を必要とします。しかしながら、それぞれの電線について許容電流を知り、システムに必要な適切
なサイズを選定することは、経済的にも、保守・メンテ上からも極めて大切です。
通電により電線は温度上昇します。この通電電流は温度上昇によって被覆物・
絶縁物を熱劣化させ、電線の寿命を短く
することの無いような値に押さえなければなりません。このことから、絶縁体材質の許容使用温度を決めることによって許
容電流が決められ、電気用品等を安全で一定の信頼性のある状態に保つ事が出来ます。許容電流は導体のジュール
発生熱が絶縁体・保護被覆を通して外部へ拡散されるバランスの関係で決まります。また、ケーブルが屋内露出配線か、
架空線か、あるいは地下埋設か等の布設方法によって、ケーブルの熱拡散効果が違うため、同じケーブルでも許容電流
は違ってきます。
一般的な許容電流は次の式で計算します。
ここに、T1:電線(被覆材料)の最高許容温度(
℃)
1−T
I=k T
アンペア)
r×R (
T :電線の周囲温度(℃)
r :電線のT℃における導体実効抵抗(
Ω/ ㎝)(最大値)
R :電線の全熱抵抗[R1+ R2](℃㎝/ W)
R1:絶縁体固有の熱抵抗(℃㎝/ W)
R2:絶縁体表面の熱抵抗(℃㎝/ W)
d1:導体外径(㎜)
d2:絶縁体外径(
㎜)
k :多心ケーブルの減少係数
線心数(心)
減少係数k
線心数(心)
減少係数k
2
3
4
5
6
7
8
10
12
0.82
0.72
0.65
0.59
0.55
0.52
0.49
0.45
0.42
14
16
20
24
30
36
40
50
0.40
0.38
0.35
0.33
0.31
0.28
0.27
0.25
ビニル絶縁電線を空中1条布設の場合は
d2
R=9
1
5.5loge ( d1)
2
R2= 10(500+10×d)
×d2
π
ポリエチレン絶縁電線を空中1条布設の場合は
d2
R=7
1
1.6loge ( d1)
10(500+10×d)
2
R2=
×d2
π
電線(被覆材料)の最高許容温度
一般ビニル:60℃
耐熱ビニル:80℃、105℃
ポリエチレン:75℃
架橋ポリエチレン:90℃
通電時のケーブル表面温度(
例)
試
料:TKVVBS15P-02T
投入電流:1A, 2A, 3A, 4A (全線心)
140
4A(15分にて短絡)
120
3A
100
80
2A
60
1A
40
0
10
20
30
40
50
60
時間(分)
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技術資料
3.ケーブル耐屈曲性試験
3-1 屈曲試験
屈曲半径・・・・R20㎜(
治具交換により変更可)
屈曲角度・・・・左右45゜、60゜、90゜
屈曲速度・・・・最大約55回 / 分
3-2 U字移動屈曲試験①
屈曲半径・・・・R80㎜のケーブルベア使用
移動距離・・・・約700㎜
速度 ・・・・・・・・約50回/ 分
3-3 U字移動屈曲試験②
屈曲半径・・・・R38㎜のケーブルベア使用
移動距離・・・・約500㎜
速度・・・・・・・・約50回/ 分
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技術資料
4. ケーブルの耐油性について
ケーブルシース材質(
一般ビニルと耐油性ビニル)
の耐油性について長期間オイルバスに浸漬後シースの伸び率と硬度
変化を測定しました。
4-1 一般シースと耐油性シース
JIS2号絶縁油硬度変化(25℃)
JIS2号絶縁油伸び残率(25℃)
+50
100
90
耐油性ビニル
+40
80
一般ビニル
+30
70
+20
60
+10
50
0
2
4
6
10
8
12
0
0
一般ビニル
耐油性ビニル
2
4
浸油期間(ヶ月)
6
ユシロンオイルCL伸び残率(25℃)
12
ユシロンオイルCL硬度変化(25℃)
+50
100
耐油性ビニル
一般ビニル
+40
90
+30
一般ビニル
80
70
+20
60
+10
500
10
8
浸油期間(ヶ月)
2
4
6
8
10
12
00
耐油性ビニル
2
4
浸油期間(ヶ月)
6
8
10
12
浸油期間(ヶ月)
4-2 各種マシン油での耐油性
耐油試験シース伸び残率(25℃)
耐油試験シース硬度変化(25℃)
110
75
100
70
90
65
80
60
700
1
3
6
12
浸油期間(ヶ月)
55
0
1
3
6
12
浸油期間(ヶ月)
ユシロンオイルCE
ユシロンカットDS50
ユシローケンEZ70
ユシローケンシンセティック870
ネオクールS4457
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技術資料
5. 電気特性(electric properties)について
電線・
ケーブルは電気エネルギーを伝えるのが目的で、電子の流れとしての電流を伝える場合と、波動としての電磁波を
伝える場合の2種類あり、これらは少し性格の違ったものになります。電子の流れの場合は抵抗あるいは流れ易さが問題
になるのに対して、波の場合は反射や速度が問題になります。
電気特性について言えば、流れに対しては導体抵抗、静電容量、インダクタンス等が重要であり、これらを1次定数と呼ん
でいます。波に対しては特性インピーダンス、減衰定数、位相定数が基本的なファクターで、これらは2次定数と呼ばれ
ています。 1次定数と2次定数は独立なものではなく、見方が違うだけです。これらは温度、周波数等によって一定の
変化を生ずるので注意が必要です。
<1次定数(
primary parameters)>
導体抵抗(resistance)
c・L
R= 58S
ここに、 R: 20℃における導体抵抗(
Ω)
L: 導体の長さ(m)
S: 導体断面積(㎜2 )
c: 導体の導電率
この導電率は物理学で使われる定義とは少し違い、万国標準軟銅という標準的な軟銅線を基準にしたもので
す。電線・
ケーブルの導体の ほとんどは軟銅線なので、業界では、標準的な軟銅線の導電率を1.0として考え
ます。いくつかの材料の導電率を以下に示します。
材料
軟銅
硬銅
錫
銀
鉛
アルミニウム
鉄
導電率
1
0.97
0.15
1.05
0.078
0.61
0.17
抵抗は高周波になると表皮効果(
skin effect)等の渦電流によって、直流よりはるかに大きな値になります。
表皮効果とは、電流が導体の表面に集中する現象で、これは電磁誘導による反作用ということができます。
交流抵抗の厳密な計算は、かなり面倒なものですが、高周波ケーブルの場合はこれを減衰定数として評価す
ることになります。 (後述)
静電容量(capacitance)
1次定数としての静電容量(
capasitance)について最も基本的な2つのタイプを示します。
ツイストペアケーブル(
twist-pair cable)
1ε
ここに、C:キャパシタンス(
pF/ m)
C= 12.
2s
log10( kd)
ε:比誘電率
s: 導体間隔(導体中心の距離)(㎜)
d: 導体外径(㎜)
k: 導体撚線係数(単線k= 1)
同軸ケーブル(coaxial cable)
1ε
C= 24.
log10( D
kd)
ここに、C: キャパシタンス(pF / m)
ε:比誘電率
D: 外部導体内径(㎜)
d: 内部導体外径(㎜)
k: 導体撚線係数(単線k= 1)
通常よく使われる絶縁材料の比誘電率は、次のとおりです。実際の電線・ケーブルでは複数の材料が混合して
使われたり、空隙と混在したりして、その取り扱いを数値計算によらなければならないことがあります。また、比誘
電率が温度や周波数によって変化することが多いので注意しなければなりません。
材料
空気
比誘電率
1
ポリエチレン 発泡ポリエチレン 塩化ビニル ポリプロピレン
テフロン
ポリエステル
2.2∼2.4
2.0∼2.2
3∼4
1.6∼2.0
5∼8
2.2∼2.3
上記以外の形状については、かなり複雑な計算になり、解析的な計算を必要としますが一般の場合については
数値解析で求めるのが普通です。
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技術資料
絶縁抵抗(insulation resistance)
絶縁抵抗は使い方によって違ってきますが、1芯の状態として使う場合が最悪になるので、電線・ケーブルの絶
縁抵抗と言えば、普通はこの場合を指します。
G=
3.665
D
-6
L ×ρ×log10 d ×10
ここに、G: 絶縁抵抗(MΩ)
ρ: 絶縁体の体積固有抵抗(Ω・㎝)
D: 絶縁体外径(㎜)
d: 導体外径(㎜)
L:電線の長さ(㎝)
体積固有抵抗は室温で下記の程度ですが、温度が上がると大幅に低下します。またバラツキも大きいため、こ
の値から1e-5程度低い値を最低と考えるのが安全です。
材 料
塩化ビニル(絶縁用)
塩化ビニル(ジャケット用)
ポリエチレン
ナイロン
シリコーン・ゴム
体積固有抵抗
1×1012
1×1010
1×1014
1×108
1×1012
以上
以上(※)
以上
以上
以上
(※) 保証されない場合もあります。
<2次定数(
secondary parameters)>
電線・ケーブルの長さが電磁波の波長に比べて無視できない場合は、2次定数が問題になります。これは電線・
ケ
ーブルの導体を電流が流れているのではなくて、導体表面の誘電体のなかを電磁波が伝わってゆく状態です。
表皮効果による導体内部の電流はほとんど存在しなくなって、導体は電磁波の伝わる方向を決める案内役として
機能します。つまり、電線・ケーブルに沿って伝わるのは波ですから波動としての性質、すなわち反射という現象が
現れてきます。このような現象が現れるのは、電線・
ケーブルの長さが電磁波の波長の1/ 10を越えたあたりと考え
るのが妥当です。波長の1/ 4、1/ 2あるいはその整数倍の長さになると、分布定数線路固有の性質が現れます。
特性インピーダンス(
characteristic impedance)
電線・ケーブルの特性インピーダンスと電線・ケーブルの両端に接続する回路の入力インピーダンスが一致しな
いと、電磁波の反射が起きます。反射は歪の発生原因になり、エネルギーの無駄にもなりますから、伝送回路
のインピーダンスはすべて同じ値にすべきで、これをインピーダンス・マッチング(impedancemaching)と呼んでい
ます。
特性インピーダンスの値は、基本的な構造について、次のようになります。
ツイストペアケーブル(
twist-pair cable)
2
7
6
Z0 =
log10 2s
ε
kd
同軸ケーブル(coaxial cable)
138
D
Z0 = ε log10 kd
ここに、Z0 :特性インピーダンス(Ω)
ε:比誘電率
s:導体間隔(導体中心の距離)(㎜)
d:導体外径(㎜)
k: 導体撚線係数(
単線k= 1)
ここに、Z0 :特性インピーダンス(Ω)
ε:比誘電率
D:導外部導体内径(㎜)
d:内部導体外径(㎜)
k: 導体撚線係数(単線k= 1)
これらの式はいずれも周波数が高い場合で、導体の比透磁率は1.0を仮定しています。
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技術資料
減衰定数(attenuation constant)
電磁波が電線・ケーブルに沿って伝搬すると、導体抵抗や誘電体損失によるエネルギーの損失を生じますが、
この損失の程度を表す指標が減衰定数(attenuation constant)
です。高周波では、導体中の損失は周波数の
平方根に比例し、誘電体中の損失は周波数に比例するのが普通で、ケーブル全体としの減衰率は、ほぼ下記
の式になります。
同軸ケーブル(coaxial cable)
1 1
7ε・f・( + )
d D +90ε・tanδ・f
α=
D
log d
ここに、α:減衰率 (dB/km)
d:内部導体外径(㎜)
D:外部導体内径(㎜)
k: 導体撚線係数(単線k= 1)
ε:比誘電率
tanδ:絶縁体力率
f:周波数(Hz)
シールド(shield)
電気的結合としては、導電結合、静電結合、電磁結合、電磁波による結合の4種類があります。導電結合は直
接電流が流れるもので、回路的には電気抵抗による結合です。電線・ケーブルの場合は導体による接続がこれ
になります。絶縁体の目的がこの導電結合を防ぐことです。静電結合は静電誘導によって電荷の移動を生ず
るもので、回路的にはキャパシタンスによる結合です。これを防ぐ方法としては、静電シールドとキャンセリング
(
打ち消し)
があり、導電材料による静電シールドと線心のツイストがこれになります。電磁結合は電磁誘導によ
って起電力を生ずるもので、回路的には相互インダクタンスによる結合になります。これを防ぐ方法としては磁
気シールド、キャンセリングがありますが、実際に使われるのはキャンセリングがほとんどです。電磁波による結
合は、電線・ケーブルがアンテナとして機能するもので、電磁シールド、つまり電磁波の反射を利用する対策が
あります。
静電シールド(
electrostatic shield)
静電結合は静電シールド(electrostatic shield)によって容易に防ぐことができます。これは、電線・
ケーブルの
周囲にシールドと呼ばれる別な導体をかぶせ、それを接地することにより、他の導体とのキャパシタンスによる結
合電流をシールドだけに流すようにする方法です。つまりバイパスを作ることで、外部からの誘導電流を導体か
ら遮断します。
この方法によるシールド効果は、* シールドの被覆率(coverage)
* シールド材料の導電率
* 接地の方法
の3つの要素で決まります。シールドに隙間があると、その隙間を通る電界による結合ができますし、シールドの
導電率が低いと、シールドとシールドすべき導体のキャパシタンスの影響が無視できなくなります。また、接地の
方法は狙いとする効果の盲点になることが多く、例えば静電シールドの両端を別の場所で接地したため、シール
ドを含むループができ、そのループに錯交する磁束による起電力による干渉が発生してしまうといったことは、珍
しいことではありません。この場合は片端接地が有効な対策になります。
静電シールドの具体的な方法としては、次のようなものが有ります。
*
*
*
*
*
編組シールド(
braided shield)
横巻きシールド(served shield)
テープ・
シールド(tape shield)
導電性プラスチック・
シールド(conductive-plastic shield)
金属チューブ・シールド(metaric-tube shield)
編組シールド(
braided shield)
編組シールドは銅線の編組によってシールドを構成したもので、適度に柔軟性(
被覆率が大きいと硬くなる)と折
り曲げ強さ、機械的強度を持っているためよく使用されます。欠点としては一般的にはコストが高いこと、端末加
工に手がかかること、などですが被覆率については、計装の周波数で75∼85%、より高周波では85∼95%
程度が一般的です。素線径は普通0.12∼ 0.16mmですが、特に細い電線では、0.04∼0.10mm程度のサ
イズも使われます。細い素線で編組を構成した方がケーブル全体の柔軟性を保つことができます。
横巻きシールド(served shield)
横巻きシールドは銅線を斜め整列に巻き付けたもので、編組シールドより柔軟でコストも低く、端末加工も容易で
す。被覆率は95%以上になるため、比較的低い周波数に於ける効果は極めて優れていますが、高周波ではコ
イル状のシールド形状による問題として遮蔽効果が期待値に満たない場合があります。
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技術資料
導電性プラスティック・シールド(conductive plastic shield)
半導体である導電性プラスチックの押し出しチューブと銅線の添え線(drain wire)
を組み合わせたもので、コスト
の低いのが利点ですが、シールド材料の導電率が低いため、高周波ではシールド効果が極端に低下します。
テープ・シールド(tape shield)
導電性のテープを絶縁線心の周囲に巻き付ける方法です。この材料は、アルミニウム箔とポリエステルのラミネ
ートテープがよく使われます。安価で軽量、100%の被覆率、端末加工が容易、といった優れた利点がある反
面、ケーブル全体の柔軟性や繰り返し曲げに弱いといった欠点があります。
テープシールドには平らなテープを使用するフラット・テープ・
シールド(flat tape shield)の他、波付けしたテー
プを縦添えするコルゲート・
テープ・シールド(corrugated tape shield)があり、こちらは通信ケーブルなどの太
いケーブルに使われます。
磁気シールド(magnetic shield)
磁気シールド(
magnetic shield)はケーブルを透磁率の高い磁性体で包むもので、磁界を磁性体でバイパスさせ
てしまおうというものです。ただ、このような構造 は高価で大型になり、柔軟性も悪くなるため、実際に使用される
ことは希で、現実に はキャンセリング(
打ち消し)
の手法が使用されます。
なお、磁気シールドが有効なのは、直流から低周波まてで、高周波になると、電磁シールドのほうが効果的で
す。
電磁シールド(electromagnetic shield)
電磁シールド(
electromagnetic shield)はシールドに生ずる渦電流によって電磁界を打ち消すもので、高周波で
はとても効果的です。電磁波の電線・ケーブルへの浸入を防ぐ方法として、あるいは音声周波数以上の磁界を
浸入防ぐ方法としてよく使用されています。
キャンセレイション(
cancellation)
各シールドの場合は結合しては困るものとの間にバイパス回路等をもうけて、外部からの影響を防ぐ方法です
が、キャンセレイション(
cansellation)
は、結合そのものは放置して、受けた影響と同じ大きさで逆向きの信号を加
えることにより、影響をなくすという考え方になります。つまり、ベクトル的に反対のものを加えることです。
電磁結合のキャンセレイションと静電結合のキャンセレイションがありますが、前者は極めて効果的な手法で、電
線・
ケーブルの設計ではよく使われています。
電磁結合のキャンセレイション(electromagnatic cancellation)
電磁結合のキャンセレイションとして最も基本的なのがツイステッド・
ペア(
twisted pair)
で、これは2本の電線(
線
心)
をより合わせたものです。より合わせのピッチが錯交磁束の空間的変化に比べて充分小さければ時間的に
変化する磁束の電磁誘導によて発生する起電力が隣同士で逆になるため、お互いに打ち消(
キャンセル)されま
す。回路的には、大局的な相互インダクタンスをゼロにすることになります。
また、カッド(
quad)、つまり4芯のより線の対角線上にある2組の導体を両端でそれぞれシートした構造でも、錯
交磁束による起電力がキャンセルされます。この手法は、照明装置等の大電流ノイズ源の近くで使われる、マイ
クロホンコードで良く採用されることがあります。
静電結合のキャンセレイション(electrostatic cancellation)
不平衡回路で静電結合のキャンセレイションを利用するのは難しいのですが、平衡回路では極めて簡単で、平
衡回路そのものがこの手法を基盤にしています。例えばLANケーブルのEI
A568(商用通信配線規格)、EIA
422(平衡デジタルインターフェイス回路の規格)とか、電話回線のカッド等がこの手法を利用しています。
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