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環境リスク研究センター
独立行政法人 独 人 国立環境研究所 環境リスク研究センター 第2期中期計画(2006-2010 年度) 環境リスク研究プログラム 環境リスク研究プログラム 環境リスクに関するデータベースによる基盤情報の整備 「環境リスク研究プログラム」の使命は、化学物質をはじめとした環境因子が人 1 の健康や生態系に有害な影響を及ぼすプロセスとメカニズムを、実態に即した調 化学物質の環境リスクに関するコミュニケーションの推進 査と実証的研究に基づいて解明して、その知見を基に環境リスクを体系的に評価 に向けた情報基盤として、 約1万物質の化学物質の一般情報、 する手法を見いだし、人の健康と生態系に及ぼす環境からの悪影響の未然防止に 曝露情報、 生態毒性、 リスク情報、 法規制情報等を収録した化 貢献していくことです。この使命を達成するために、 (1)リスク要因の解明、 (http://w-chemdb.nies.go.jp) 学物質データベース「Webkis-plus」 (3)評価の実施、 (4)知的研究基盤の整備 を並列的 (2)リスク評価手法の開発、 を大幅に更新し、 絞り込み検索機能、 集計機能、 簡易検索機能、 に取り組み、化学物質の著しい悪影響の最小化、生物多様性の保全とその構成要 全情報の表示、 印刷機能の追加、 データセットへの説明、 最終 素の持続的利用を可能にすることを目指して、健康および生態リスクなどの環境 リスク評価の精緻化と効率化に貢献してきました。また、環境施策への活用など 化学物質データベースの構築と提供 学物 物質デ デ タベ スの構築と提供 ナノ粒子健康影響実験棟 3 階 4 基の環境ナノ粒子吸入曝露装置 確認日の登録、 データベースの統合などにより利便性と信頼 性の向上に努めました。 安定運用のためのデータベースシス 実践的な課題に対応するために必要な様々な環境リスク評価手法を提示してきま テム基盤の整備や身近にある化学物質のわかりやすい解説を した。同時に、リスク評価に必要な情報基盤、ツール、解説情報を社会に向け積 試みました。 環境リスク研究センターが管理している分析法 極的に公開しています。 利便性の向上 Webkis-Plus やさしい解説 EnvMethod ~Meiのひろば~ ば CASや媒体をキーとして環境測定法 データベースと統合を行った 表示 との物質情報の関連付けに加え、 環境省などが作成する外部 クトを実施しました。また同時に、環境施策への活用を視野に入れた基盤的な調 データベースとのデータ共有による連携を進めました。 査研究を推進し、さらに、知的基盤としての環境リスクに関するデータベースを 情報に加え、検索機能なども提供 KATE K 簡易検索 連携 和名 英名 CAS番号 分子式 CAS番号 物質の選択 物 物質リスト ー分類 カテゴリー分類 情報提供 法規制 リスク評価・有害性 生態毒性 曝露 データベース「EnvMethod」、生態毒性予測システム「KATE」 人の健康と生態リスクにかかわる 4 つの中核研究プロジェ 第 2 期中期計画では、 統合 一般 曝露 健康影響 全情報表示 生態毒性 (印刷機能) リスク 関連 の追加 全情報 (印刷) 検索の充実 カテゴリ間の集計 詳細な絞り込み検索機能、カテゴリ 間の集計機能、簡易検索機能、 カテゴリ分類の見直しを行った 農薬分類 農薬名 農薬成分名 出荷量 ※日本で登録された農薬 他機関 他機 データベース 環境省、経済産業省の データベースと連携 進行中 データ構築 ・9000物質以上を収録(平成23年2月現在) ・Webkis-Plus公表以外の構築データ例 環境省等が実施する生態毒性試験結果、 環境省モニタリングデータ(初期環境調査、詳 細環境調査、モニタリング調査の個別データ) 整備し、情報を提供しています。 2 「中核研究プロジェクト 1:化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析による 曝露評価」 流域から地球規模までの環境動態を予測する数理モデルと、排出推定 河川や湖沼などの淡水生態系は、熱帯林についで生物多 手法などを開発し、その成果を活用して、多様な化学物質の曝露を評価する手法 環境リスク研究棟 1 階 流水式魚類曝露試験装置 の確立を進めました。 生態系評価 態系 系評価 価・管理のための流域詳細情報の整備 ため池の生物多様性の現状と評価手法の公開サイトの開設 様性の損失が著しく進行していると指摘されています。そ 免 「中核研究プロジェクト 2:感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価」 うした中で、ため池は、人が造った二次的自然として、絶 ●ため池の生物多様性評価 手法の解説 ●ため池GISの解説 疫過敏を決定する遺伝形質と感受性との関連や、発達段階の違いによる化学物質 滅危惧種がまだ多く生育・生息しており、淡水域の生物多 ●ため池の生物多様性にか かる研究成果の紹介 の脳・神経系への影響と免疫系や神経系などの高次機能をかく乱するメカニズム 様性の保全を戦略的に検討すべき水域として期待されてい ため池の生物多様性評価にかかる情報提供のページ を解明し、さらに、メカニズムの知見に基づく新しい健康影響評価手法の確立を ます。そこで、 日本一ため池密度の高い兵庫県南部を対象に、 進めました。 今後、優先的に保全すべき地区や池の選定および生物多様 「中核研究プロジェクト 3:環境中におけるナノ粒子等の体内動態と健康影響評 性評価のために必要とされる、自然環境(地形、植生、土 価」 大気環境中に存在する超微小粒子、これから生産量の増大が見込まれている 壌など) 、社会環境(市街化区域、耕作放棄域) 、ならびに ナノマテリアル、廃棄処理が問題となっているアスベストなど超微小粒子の呼吸 空中写真、衛星画像、地形図などを GIS データとして整備 器毒性のメカニズムの解明を進めました。さらに、OECD におけるナノ粒子安全性 しました。さらに、調査で得た生物情報(水生植物)や水 質 情 報 を 整 理 し ま し た。こ れ ら の 情 報 を 共 有 で き る テストガイドラインの作成に貢献する研究を進めました。 「中核研究プロジェクト 4:生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評 東京湾試験底曳き調査(東京湾 20 定点調査) WEBGIS サイトを作成し、公開の準備を進めています。 価手法の開発」 多くの人々が避けたい事象である生態系機能の劣化による「生態 系サービスの低下」や、種の絶滅などの「不可逆的な自然の喪失」を引き起こす 原因である外来生物、過栄養化、貧酸素など様々な環境ストレスのリスクを定量 3 化しました。 人間活動によって本来の生息地以外の地域に移動した 侵入生物データベースの管理 入生 生物デ デ タベ スの管理 生物種を外来種といい、さらに定着・分布拡大し、在来生 侵入生物データベースの管理 ○侵入生物データベースの改良 ・外見部分の改良 表示項目の整理、検索機能、更新情報配信、英語版 物に対して影響を及ぼす外来種を侵入生物(侵略的外来 種)といいます。どの生物が侵入生物なのか、それはど んな性質をしていてどこに生息しているのかが一目でわ かるように、侵入生物に関する生態学的情報を体系的に 整理し、侵入生物データベースとして公開しています (http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/index.html)。このデー タベースでは、種名が分からなくても、特徴などのキー ワードで侵入生物を検索することも出来ます。外国産ク ワガタムシや両生類の感染症カエルツボカビがもたらす 生態リスクなど、研究所における侵入生物研究の成果も 環境リスク研究棟 わかりやすく解説しています。 ・内部構造の改良 入力項目の整理・再検討、入力形式の変更 ○情報収集と発信 ・既存データの見直しと新情報の収集 ・研究成果の発信 ・カエルツボカビ全国調査ネットワークの構築 環境リスク研究プログラムのめざすもの 環境リスク評価・管理手法に関する研究を行なうとともに、 科学的知見を集積し、さらにリスク評価などの政策課題に対応することで、 人および自然生態系に及ぼす有害影響の未然防止に貢献する 化学物質の地球規模から 流域規模に至る曝露評価 モデル構築とリスク管理 への応用 人間活動がもたらす人の健康や生態系への影響はますます複雑化、多様化しています。2002 年の持続可能な開発に関す る世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)では、科学的根拠に基づくリスク評価と管理により「化学物質の影響を最小 化する方法での使用・生産」を 2020 年までに実現することが、国際的な目標として宣言されました。また、わが国では「生 化学物質に対する感受性 の要因のメカニズム解明 とそれに基づいた予防の ためのリスク管理方策 の提言 物多様性国家戦略 2010」において、生態系と生物多様性の保全が重要な国家的課題として挙げられました。これらの課題 を解決し目標を達成するためには、リスク評価を適切に行い、さらに評価結果を活用して、リスク削減のために社会に過 化学物質 大なコストをかけることなく、しかも、感受性の高い集団への健康影響や、影響を受けやすい生物や生態系の機能が切り 捨てられたりすることのない効果的なリスク管理を実現する必要があります。環境リスク評価には、さまざまな環境要因 VOC とそれらによる悪影響を考慮する必要がありますが、第 2 期中期計画では、 遺伝子導入生物 及ぼすリスクを中心に以下の重点研究プロジェクトを実施しました。 曝露評価 先導的な研究 アプローチ 中核研究プロジェクト1:化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析による曝露評価 中核研究プロジェクト2:感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価 中核研究プロジェクト4:生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評価手法の開発 応用的な研究 アプローチ 知的基盤の整備 生 物 の 多様 視 性 点 環境政策における活 環境政策における活用を 環 活用を 視野に入れた基盤的な 視野に 盤的な 調査研究の推進 環境リスクに係る データベース等の作成 小 児 環 境 保 健 の 視 点 個体群、生物多様性、 生態系機能などを エンドポイントとした 環境リスク評価モデル の提示 中核研究プロジェクト4 生物多様性と生態系機能 の視点に基づく 環境影響評価手法の開発 多様な化学物質 の曝露評価 課題への対応を進めました。 中核 中核研究プロジェクト2 感受性要因に注目した 感受 化学物質の健康影響評価 化学 生態影響 評価手法の高度化に関する研究並びに環境リスク関連情報の蓄積 及び提供を行うとともに、環境リスク評価の実施等の実践的な 健康 康影響 健康影響 中核研究プロジェクト1 化学物質曝露に関する 関する 複合的要因の の 総合解析による曝露評価 総合解析による曝露 露評価 侵入生物 中核研究プロジェクト3:環境中におけるナノ粒子等の体内動態と健康影響評価 これらと併せて、環境施策における活用を視野に入れて、環境リスク ナノ粒子 子 ノ粒 ナ 評価 の 化学物質、ナノ粒子、侵入生物、遺伝子組換え生物などの人の健康と生態系へ 実践的な 取り組み 化学物質 環境リスク評価 政策ニーズへの対応 中 中核研究プロジェクト3 中核 環境中におけるナノ粒子等 環境 境中 の体内動態と 健康影響評価 ディーゼル排ガス中のナノ 粒子成分、ナノマテリアル、 処理アスベストのリスク評価 と物質形状と毒性 中核研究プロジェクト 1 中核研究プロジェクト 2 PJ1 化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析に よる曝露評価 PJ2 感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価 化学物質は、物質により揮発性や水への溶解度、環境中で (1)の環境動態モデルの研究として、GIS (地理情報シス 人の化学物質に対する感受性は、 遺伝的背景の違いや胎児、 型核:SDN-POA)を選定し、SDN-POA のマーカーであるカ の分解のしやすさなど特性が大きく異なります。例えば大気 テム)に基づく多媒体動態モデルに関する研究を行い、流域、 小児、大人といった発達段階の違いなどによってさまざまに ルビンディンの発現領域を計測しました。その結果、50 ppm 中に到達した化学物質は大気中でガスと粒子に分配されたり、 地域、地球の 3 階層でさまざまな空間をカバーする 3 階層 異なることが知られています。 のトルエンを曝露した雄個体の SDN-POA の体積は対照群 光やオキシダントなどと反応して消失したり、雨に洗われて GIS 多媒体モデルを検討しました。地域までのスケールでは 本プロジェクトは、 (1)低濃度のトルエン曝露により免疫 よりも小さくなっていました。一方、雌個体の SDN-POA の 地面に落ちたり、あるいは数千キロ以上のかなたまで輸送さ 1-5km の分解能で河川・流域等をカバーする GIS に基づく 過敏を誘導するメカニズムの研究、 (2)化学物質が脳の性分 体積に対するトルエン曝露の影響はみとめられませんでし れたり、さらに水環境に媒体を超えて移動して河川や海流に モデル(G-CIEMS モデル)を、地球規模スケールでは高解 化、血管形成、神経行動に及ぼす影響の発達段階による差異 た。以上の結果から、発達期のトルエン曝露が脳の性分化に 乗って移動したりしますが、このような環境中での化学物質 像度海洋輸送モデルを全球多媒体モデルに組み込んだ新たな についての研究、 (3)自然免疫系の成立過程のモデルを用い 及ぼす影響には性差があり、その影響は成熟期に至っても顕 の動態は主に物質の特性によって変わってきます。化学物質 モデル(FATE モデル)を構築しました。 た感染関連因子と化学物質曝露との複合的な影響の評価、の 在すること、即ち、発達期のトルエン曝露が雄個体の脳の はまた、製造過程で使われるもの、製品に含まれる成分とし (2)の排出推定に関する検討として、農薬(除草剤)を主 3 課題から構成されています。これにより、免疫過敏を決定 性分化に対して負の影響を与えることが示されました。また、 て流通するもの、あるいは廃棄物となるものや農薬のように な対象として、日変動までを再現する新たな排出推定手法の する遺伝形質と感受性との関連や、発達段階の違いによる トルエン曝露による発達期の雄個体のテストステロンレベ 環境に直接散布するものなど様々な使われ方をします。化学 構築に取り組みました。農薬は一年の中の限られた時期にの 化学物質の脳・神経系への影響の差異とそのメカニズムを ルの低下がその影響を引き起こす一原因であると推察され 物質の環境への排出の様子は、このような物質の用途や使わ み散布されるため、日変動の考慮が重要となります。この検 解明し、さらに、化学物質と感染関連因子が免疫系に及ぼす ました。さらにその後の検証で、トルエン曝露による雄個体 れ方によって大きく異なってきます。これら多種多様な化学 討では、日本全国の除草剤の排出量を日単位で地域ごとに推 影響を評価する手法の確立を目指しています。 の SDN-POA の体積減少の直接的な原因は、発達期のアポ 物質の特性と様々な環境要因に対応して、特定の地点から地 定 す る 新 た な 手 法 を 開 発 し ま し た。開 発 し た 手 法 は 成果の一例を示します。脳の性分化とは、男女(雌雄)間 トーシス細胞数の増加にあることが明らかになりました。 球規模など広域までのさまざまな空間規模の中で、また、時 G-CIEMS モデルとあわせて検証調査を行い、新たな排出推 で構造的あるいは機能的に異なる脳が形成されることであ その一方、同一条件でトルエンを曝露した母親ラットの 間や日から数十年以上までの時間スケールの中で、時間的空 定手法が正しく排出量を推定していることを確認しました。 り、発達期に精巣から分泌されるテストステロンの作用が脳 SDN-POA にはアポトーシス細胞が観察されませんでした。 間的変動を考慮した曝露評価が必要になります。このために これらの諸検討とあわせて、複数のバイオアッセイと化 の男性(雄性)化において重要と考えられています。そこで、 このことから、アポトーシス細胞死を誘導するトルエン曝露 は、化学物質が環境中に排出する過程を明らかにする排出推 学物質の網羅的測定による河川水と大気の環境モニタリン ラットの脳の性分化の臨界期にあたる周生期にトルエンを の影響には時期特異性があり、未成熟な発達個体は成熟個体 定の手法と、環境中での輸送や媒体間の輸送などの過程を推 グ、水生生物を用いた全排水毒性試験(WET)の基礎の構築、 曝露した雌雄個体の脳への影響を検証しました。胎生 17 日 に比べてトルエン曝露に対する感受性がより高いことが示 定するための環境動態モデルの手法の 2つが重要になります。 曝露評価にかかわる小児や生物移行過程などのサブモデル から出生 6 日にかけてトルエン(0、10、50 ppm)をラットに 唆されました。 本プロジェクトでは、 (1)流域、地域から地球規模までさま の検討、一般化学物質の排出推定手法などのいくつかの開 全身曝露しました。性成熟後、性分化した脳にみとめられる 本研究により、発達期における脳内のアポトーシス細胞の ざまな空間をカバーする環境動態モデルの構築と、 (2)時間変 発や検討を行い、多様な化学物質の曝露を時空間変動を考 構造上の性差を組織学的に定量解析するため、成熟雄ラット 検出は、化学物質の発達神経毒性の評価指標として有効であ 動を考慮した新たな排出推定手法を中心に研究を行いました。 慮しつつ評価する手法を確立しました。 脳において成熟雌ラット脳よりも体積が大きな領域(性的二 ることが示唆されました。 脳の性分化に及ぼす周生期トルエン曝露の影響 POPs の地球規模モデルを用いて計算した PCB153 の環境中濃度の一例 (1970年 ) (a) 大気(地表面付近),(b ) 海洋(表層),(c) 海洋(深海),(d) 植物プランクトン(7月) (a) 60° 60° (b) トルエン曝露が脳の性分化 に及ぼす影響を調べた 30° 30° 0° 0° -30° -30° -60° -60° -90° -180° -135° -90° -6 60° 周生期のトルエン曝露は、オスラットの脳の性分化に影響を及ぼし、その影響は成熟期にまで持続する -45° 0° 45° -5 -4 -3 concentration log(ng/m3) 90° 135° 農薬類の時間変動を持つ排出推定 モデルと動態予測 -180° 180° -135° -90° -45° -4 -2 0° -3 45° -2 -1 90° 135° 60° 30° 30° 0° 0° -30° -30° -180° -7 -45° -6 0° -5 45° -4 90° -3 3 concentration log(ng/m ) 135° 180° -180° -135° 小脳 0.01 <ハザード比<0.1 -60° -90° 4 ハザード比<0.01 (d) -90° -45° -6 0° -5 45° -4 90° 対照群 トルエン曝露群 10 ppm トルエン曝露群 50 ppm 脳梁 視床下部 1 <ハザード比 -135° オスラット 0 0.1 <ハザード比< 1 -60° 対照群 トルエン曝露群 50 ppm ・ハザード比の地理的分布の 予測結果を得た。 concentration log(ng/m3) (c) 周生期:胎生期から新生仔期 トルエン曝露群 10 ppm 周生期にトルエンを曝露した 成熟ラットの脳・視床下部の SDN-POA(性的二型核)領域 の体積を計測 オス:SDN-POAの体積減少 メス:影響なし 135° メスラット SDN-POA 体積 (mm3 x 10-3/brain weight g) 90° 2 0 オス -3 concentration log(ng/m2) ハザード比= 河川中最大濃度 セレナストラム72時間EC50 プレクラチロールのリスクマップ 発達期曝露の影響には性差 と持続性がある トルエン曝露によりアポトーシスが亢進し、 雄個体のSDN-POA領域の細胞数が減少 メス 中核研究プロジェクト 3 中核研究プロジェクト 4 PJ3 環境中におけるナノ粒子等の体内動態と健康影響 評価 PJ4 生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影 響評価手法の開発 ナノサイズの吸入性粒子は組織透過性が高いことが知ら 標、ならびに曝露後の気管支肺胞洗浄液や肺組織の生化学 本プロジェクトでは、自然生態系を対象とし(1)東京湾 を解明しました。その結果、富栄養化、コンクリート護岸、 れています。そのため、大気環境中に存在する超微小粒子、 的変化について解析したところ、肺に軽い炎症が見られ、 やため池などの野外調査や室内実験により、様々な環境ス ブルーギル(特定外来生物)の侵入が、大きなリスク要因 これから生産量の増大が見込まれているナノマテリアル、 また心電図の異常も見られることを報告しました。急性吸 トレス要因が自然生態系に及ぼす影響の解析、 (2)侵略的 であることを示しました。 廃棄処理が問題となっているアスベストなど超微小粒子の 、高濃度曝露群 入影響実験に続いて、低濃度(30 μg/m ) 外来種となりうる野生生物やそれに寄生する生物による在 (2)カエルツボカビとは真菌の一種で両生類特有の感染 呼吸器毒性の機序の解明を中心としたナノ粒子に関する総 (100 μg/m3)と高濃度除粒子曝露群のマウスを用いて慢 来生物へのリスク評価、 (3)数理解析手法を用いた野外への 症病原体で、現在、世界各地で野生両生類を絶滅の危機に 合的な実験的研究を進めてきました。本プロジェクトは、 性吸入曝露(最長 1 年 8 ヶ月)を行い、呼吸器免疫系への リスク分析手法の適用、についての研究を実施しました。 追いやっているとされます。日本国内および世界各地より (1)ディーゼルエンジンから排出される環境ナノ粒子の生 影響を中心に、心臓血管系、中枢神経系への影響について (1)資源量が低水準で回復しない東京湾にて、シャコの生 菌を採集して遺伝子を分析した結果、カエルツボカビの多 体影響に関する研究、 (2)カーボンナノチューブなどのナ 調べました。ディーゼル排ガス由来環境ナノ粒子に慢性曝 活史と増殖阻害要因を調べました。東京湾のシャコは、春 様性が最も高い地域は日本であり、さらに日本の両生類は ノマテリアルの健康リスク評価に関する研究、 (3)溶融処 露した肺腺腫高発症のマウスにおいて、腫瘍発生率がさら 産まれと夏産まれがおり、性成熟についてはともに異常は 本菌に対して抵抗性を有していることから本菌が日本起源 理されたアスベストの呼吸器内動態と毒性に関する研究の に上昇することを認めました。 認められませんでした。しかし、初期生活史を調べた結果、 であることが示唆されました。また、外来種であるウシガ 3 課題から構成されており、化学物質としてだけでなく、 (2)のナノマテリアルの健康リスク評価に関する研究で 春産まれの幼生については海底への着底がみられず、シャ エルの国際的な移送がこのカビを世界中に蔓延させたので これらのナノ粒子の物理的形状効果も含めた健康影響手法 は、カーボンナノチューブが細胞に対して細胞障害性があ コの個体群は夏産まれの幼生の加入により維持されている はないかと推察されています。本研究の結果から、生物の を確立し、OECD におけるナノ粒子安全性テストガイドラ ることを明らかにしたほか、図に示しましたように、カー ことがわかりました。その原因として、貧酸素水塊(水棲 移送は思いもよらない「目に見えない侵入者」をもたらす インの作成に貢献することを目的として研究を進めまし ボンナノチューブが細胞膜と強く反応することを見いだし 生物が生きていけないほど溶存酸素濃度(DO)が低下した ことが示されました。 た。 ました。さらに、繊維状粒子の分散性を高めたエアロゾル 海水の塊:DO ≦ 2 ml/L)が稚シャコの着底を阻害している (3)生態系の機能として生態系内の物質循環に着目して、 3 (1)のディーゼルエンジンから排出される環境ナノ粒子 化に成功し、鼻部吸入チャンバー作製してカーボンナノ 可能性が高いことを示しました。 これを左右する生物の特性が何であるかを生態系モデルに の生体影響に関する研究では、アイドリング時、あるいは チューブの in vivo 毒性を評価しました。 ため池は、淡水域の中では絶滅危惧種が多く生育・生息 よって研究し、さらに、モデルから明らかになった生態系機 モード走行時におけるディーゼルエンジンから排出する環 (3)の溶融処理されたアスベストの呼吸器内動態と毒性 している水域ですが、農業の衰退・高齢化などの社会的変 能と生物特性との関係を、アクアリウム実験生態系によって 境ナノ粒子の粒径分布特性、ならびに成分(有機物、元素 に関する研究では、溶融アスベストの表面活性と in vitro 化により、その環境は大きく変化し、それに伴い多くの希 検証しました。また、得られた知見を霞ヶ浦のプランクトン 状炭素、イオン、重金属類)を明らかにしてきました。図 毒性に関してマクロファージ、中皮細胞を用いて研究を行 少な生物種が消失しています。そこで、日本一ため池密度 群集の長期モニタリングデータに適用し、生態系機能を左右 に示しましたように、粒径が 20-30 nm に個数濃度のピー いました。細胞を用いた実験と動物実験の結果より、アス の高い兵庫県南部をモデル地域として、ため池の環境と生 する生物特性の年次変動と環境因子との関係を解析しまし クが見られる環境ナノ粒子をラットやマウスに急性吸入曝 ベストの加熱温度と毒性との関係を調べ、溶融温度により き物についての調査を行ない、ため池の生物多様性の指標 た。その結果、水温の長期的変動と栄養塩類濃度の変動が、 露させ、心電図解析及び心拍変動などの循環器系の生体指 毒性を大きく低下させうること明らかにしています。 を開発するとともに、生物多様性の損失を引き起こす主因 湖の生態系機能に影響を与えていることがわかりました。 ディーゼル排気ナノ粒子の慢性曝露 cyclone2 マウスホールダ- 2005年から休漁継続. 回復の兆しみられず 0 0-10 10-25 25-10 50-100 100-300 300 DEC (10 5 eggsm-2) (ind m-3) 幼生密度 産卵量指数 ≤1mLL-1 ≤2mLL-1 NOV 稚シャコ個体数密度 (10 -3 ind m-2) シリケンイモリ 1 0.2 排気部 HEPA filter exhaust 5 6 7 8 9 10 11 12 月 j =地点 Nose-exposure chamber カーボンナノチューブを吸入曝露したマウスの肺胞 マクロファージにおける線維状粒子の局在 1200 hp:捕食耐性 800 (生物特性 hpの 大きい種は魚に (頭/L) 400 0 食べられにくい) マルミジンコ hp中間 オナガミジンコ hp大きい カブトミジンコ hp小さい 3 3 タマミジンコ hp大きい ミジンコの捕食 耐性が高いと、 メダカに渡され る栄養が多くな り、メダカの体 重が重くなる 1100 栄養転換効率: 物質循環の指標 1000 900 800 (mg) 3 4 5 6 7 4 5 6 7 4 5 6 7 3 4 5 6 7 実験開始後の経過時間(週) 実験開始後3週目に4頭のメダカを水槽に導入 メダカ体重の増加量(栄養転換効率) 200 blower Sieve shaker ウシガエルから 検出されたハプロタイプ 17タイプ ●アクアリウム実験生態系(クロレラ-ミジンコ類-メダカ)による検証 0 統合指標 j = -0.46 [ クロロフィルa量 ] j-0.24 [ 護岸率 ] j-0.30 [ ブルーギル捕獲数 ] j Dust monitor カエルツボカビの 多様性が最も高い 宿主は沖縄島の シリケンイモリ ウシガエル シリケンイモリから 検出されたハプロタイプ 28タイプ 0 0.4 (indm-2) OCT 底層DO濃度 稚シャコ密度 2006 2004 2002 2000 1996 1994 1992 1998 SEP 日本には古くから カエルツボカビが 生息している 2 ●ため池の生物多様性評価 生物多様性を説明する統合指標 cyclone1 粒子発生部 0 0 メダカ4頭 の合計体重 Air 10L min-1 100 春産まれの幼生の着底がみられない 夏産まれの加入により個体群維持 貧酸素水塊が稚シャコの着底阻害要因 0.2 個体数 Toxicol. Appl. Pharmacol. 232:244-251(2008) Mass flow meter Mass flow meter HEPA filter 休漁 資源量 HEPA filter Sampling or SMPS or APS 200 オオサンショウウオは 起源の古い特異的な 系統に感染している 2007年 3週目から7週目まで の合計体重の増加量 (D) In vitro で曝露したカー ボンナノチューブとに 障害されるマウスマクロ ファージの細胞膜 (A) 対照マクロファージ、 (B)カーボンナノチューブ に沿ってマクロファージ の細胞膜が伸展してい る様子、(C)カーボンナノ チューブと反応した細胞 膜。 囲み部分を強拡大 したものが(D) Air 20L min-1 300 初期生活史 オオサンショウウオ 0.4 リスク因子 (C) (B) 非 曝 露 カーボンナノチューブの鼻部曝露実験 カーボンナノチューブの細胞毒性 (A) 成長速度の個体差大きい 概ね2~3歳で漁獲対象サイズ 寿命4歳 CPUE (ind tow -1 hr -1) ディーゼル排気ナノ粒子排出特性 度 50 濃 10 20 30 40 NOx concentration [ppm] 度 4000 除 粒 子 0 1000 2000 3000 Revolution [rpm] 気 0 成長 0 高 DP[nm] 1000 20 ●カエルツボカビの生息適地モデリング BL ≧ 10cm 7 ≦ BL < 10cm 精子 40 濃 100 高齢個体:春(5~6月) 若齢個体:夏(7~9月) 受精嚢 輸精管 卵巣 空 10 交尾・産卵期 ♂:当歳着底後(周年) ♀:1歳以降(4~9月) 60 浄 1 肺腫瘍発生率(%) 5.0×105 東京湾シャコの生活史特性・増殖阻害要因 成熟開始年齢(成熟期) 80 清 dN/dlogDP[cm-3] 1.0×106 0.0×100 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 -200 Torque [Nm] 動物棟 ナノ棟 低 1.5×106 ●東京湾底棲魚介類の個体群動態の解明と生態影響評価 肺腫瘍の発生は 100μg/m3 曝露群で有意に上昇。 急性心臓疾患マーカーの心筋型クレアチニンキナーゼ ( CK -MB )はディーゼル曝露により増加。 1990 環境ナノ粒子曝露装置の改良と粒子性状の把握 150 アオコ コンクリート護岸 ブルーギル 100 ため池の生物多様性を脅かしているのは、アオコの発生などによる クロロフィルa量の増加やコンクリート護岸、ブルーギルの侵入であることが示された (mg) ANCOVA: P = 0.034 マル オナガ カブト タマ 捕食耐性は、生態系の物質循環 (栄養転換効率)を左右する 環境政策における活用を視野に入れた基盤的な調査研究の推進 2 化学物質の環境調査による 3 生態影響試験法の開発及び動向把握 4 構造活性相関等による生態毒性予測手 化学物質の環境リスクの解析には、環境調査等から得ら エストロゲン受容体(ER)など複数の核内受容体導入酵 化学物質の内分泌かく乱化作用等が検出できる試験系の 部分構造フラグメントの取扱方法、分類ルールについて れた測定データや動態モデル解析の結果、および排出量情 母アッセイは化学物質の生理活性を高感度かつ迅速に測定 開発を大学や環境省と共同で進め、新しく作られた試験法 検討をすすめ水オクタノール分配係数を記述子とした構造 報などさまざまな情報が用いられます。測定データやモデ する方法です。この方法の環境調査への適用を試みていま を OECD(経済協力開発機構)に登録することによって、 活性相関式を構築し、魚類急性毒性試験の半数致死濃度及 ル解析の結果の空間分布は場所ごとに異なるため、これら すが、一例として、自動車バッテリーのリサイクル工場排 国際標準化を進めています。また、他の国から提案された びミジンコ遊泳阻害試験の半数影響濃度を予測する生態毒 のデータの活用には空間分布の解析を支援するシステムが 水から強いメダカ ER 結合活性を検出し、これまでの化学分 試験法については、積極的にリングテスト(各国一斉に行 性予測システム「KATE」としてインターネット上で一般に 必要になります。この課題で開発した化学物質環境リスク 析では見落としてしまう未知の結合活性物質をもっとも強 う試験)に参加し、日本を代表して国際標準化に協力して 公開しました。予測モデルの透明性と利用者の利便性を高 の空間的分布の解析システムでは、環境調査等の測定デー い活性物質として特定しました。高感度で迅速なバイオ い ま す。最 近、私 た ち が 開 発 に 関 与 し た 魚 類 試 験 法 めるため、大分大学と共同で開発した化学構造の部分構造 タや G-CIEMS モデルの予測結果、農薬使用量、人口などの諸 アッセイ手法の構築は、多成分一斉分析法など機器分析手 (TG229、 TG230)、甲殻類試験法(TG211 annex7)と両生類 フラグメントの取扱のための解析技術を導入し、2009 年 3 データを GIS 上に効率的に表示することが出来るので、化学 法とともに化学物質の曝露を評価する手法として、化学物 試験法(TG231)が OECD に登録されました。さらに幾つか 月にインターネット版を 「KATE on NET」、スタンドアロン 物質環境リスクの解析に有効に活用することが出来ます。 質の環境調査においても有効であることが示されました。 の新たな試験についても、登録に向けて開発を進行中です。 版を 「KATE on PAS」という名称で公開・配布しました。 開発 外部GISシステム: Google Earth 他 外部データ: 国勢調査、事業所 統計など PJ1成果: G-CIEMSモデル 総合解析基盤システムの開発 酵母ツーハイブリッドシステムによる 受容体導入酵母模式図 内分泌かく乱物質 (環境ホルモン) ホルモンレセプター TIF2 各種核内受容体 各種核内受容体 コアクティベーター コアクティベーター 曝露評価システムの構 曝 露評価システムの構 構 築総合解析基盤システム G-CIEMS入出力 ツール 酵母 酵母 基本転写因子 基本転写因子 レセプター応答配列 プロモーター レセプター応答配列 プロモーター ガラクトシダーゼ遺伝子 ガラクトシダーゼ遺伝子 DNA DNA Web公開 排出推定ツール ● ヒト・エストロゲン 受容体(hER)酵母アッセイ法 ● メダカ・エストロゲン 受容体(medER)酵母アッセイ法 ● レチノイン酸 受容体(RAR)酵母アッセイ法 解析基盤システム 構築 MuSEMモデル 改正化審法での リスク評価など MNSEM2モデル BisAやフタル酸エステル、 ノニルフェノールではない! ● 甲状腺ホルモン 受容体(TR)酵母アッセイ 未知のER結合活性物質 の存在を示唆 ● アリルハイドカーボン 受容体(AhR)酵母アッセイ法 ● 発光umu試験法 化学分析では 見落としてしまう 試料も バイオアッセイで は検知可能 In vitro のバイオ アッセイ系は 簡易・迅速。 原因物質の同定 作業にも有効 活性物質の同定 生物活性による環境調査の 必要性を提示 http://kate.nies.go.jp/ メダカ多世代試験の開発 国立環境研究所 が共同で OECD に試験法を提案。検討継続中 EPA と 環境省 自動車バッテリーのリサイクル 工場(排水口) 機器分析により既知の ER結合活性物質を定量 法の開発 スタンドアロン版およびWeb版KATEを開発・現在公開中 魚の試験法に関する国際協力 構築した酵母 (例)ER活性環境調査 アッセイ法は迅速 (4時間)であり、 一日に100検体 の測定が可能 工場排水の流入河川から 強いメダカER結合活性を検出 ガラクトシダーゼ ガラクトシダーゼ GIS可視化ツール データ構造の設計 とデータ収集 曝露評価の高度化に関する研究 CH2 CH2 CH2 OH 4-(3-phenylpropyl)phenol week 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 複数世代を 通した影響 を調べる 確定試験 MultiF0 Generati F1 on Test F2 OECD の試験法開発 試験法作成に関与、検討継続中 既に化審法で採用 既に化審法で採用 試験法を提案、検討継続中 Z-FET(簡単なスクリーニング試験) OECD TG203 (急性毒性) OECD TG210 (孵化成長) FishSexualDevelopmentTest (孵化成長と2次性徴) (交尾と産卵数) 関与、H20年にガイドライン化 OECD TG230 (メス化・オス化、内分泌かく乱) 提案、H20年にガイドライン化 OECD TG229 KATEE KATE スタンドアロン版画面 中環審に提供開始 毒性予測の活用 2007 Web試用版公開 一般公開開始 2008 スタンドアロン版・ Web改良版公開 2009 Web版画面 (今後の課題)QSAR式 等見直、細胞膜透過性の 考慮、システムの透明化 ∬ 1 化学物質リスク総合解析手法と基盤の 2010 WSSD 2020 2020年目標 5 発がん性評価と予測のための手法の 6 インフォマティックス手法を活用した 7 化学物質の環境リスク評価のための 8 化学物質の定量的環境リスク評価と 環境中には多種多様な化学物質が存在し、その一部は DNA 限られた情報から効果的に化学物質の健康影響を評価す 生物多様性の宝庫として科学的知見が蓄積されつつある 化学物質の生態リスクを定量的に評価するために、存続 に傷害を起こし遺伝子の機能を異なるものに変え(突然変異 るために、動物や細胞実験による化学物質の毒性影響や遺 里地里山のため池を事例に、環境リスクとしての認知度が 可能性分析などの生態学・保全生物学の解析方法を化学物 といいます) 、発がん性を示すことが多くの研究により明ら 伝子発現に関するデータ等を利用して推定した作用メカニ 低い生物多様性について、一般市民を対象とした社会調査 質の生態毒性や環境中濃度のデータに適用する手法を研究 かにされています。化学物質による突然変異はこれまで細菌 ズムから、化学物質を類型化する手法を開発しました。類 を実施しました。ため池に対する人々の価値観を「環境価 しています。野生生物が被る化学物質のリスクを推定する を用いて検出されてきましたが、大気や水から摂取した化学 型化システム pCEC では、個々の化学物質の遺伝子発現プ 値」と「農業価値」に分類して心理的側面からの測定を行 ために、化学物質耐性の集団間変異と耐性の繁殖に対する 物質が生体内で発生する突然変異を検出して、その発がん性 ロファイルや作用メカニズムをベイズ推定を利用したマル い、市民のため池に対する認知と保全行動との関連を定量 コストから生態リスクを推定する手法を開発し、ミジンコ を予測することが今後の重要な課題です。私たちは突然変異 チプロファイリング技術により分類して、化学物質群の分 的に検討しています。研究結果を地域資源管理のための情 のフェンバレレート(殺虫剤)に対する耐性の集団間変異 検出用の遺伝子導入マウスやゼブラフィッシュのデータか 類像を示し、毒性影響の予測に活用することが可能となり 報として調査地のワークショップに提供するなど、行政や の解析に適用しました。さらに、動的最適化などのオペレ ら生体内での突然変異の発生頻度と化学物質や環境汚染物 ました。4 種の毒性影響に関与する化学物質の分類情報を 住民・農家などの地域における複数のアクター間と連携し ーションズリサーチの解析手法を取り入れて、費用便益分 質の発がん性には良い相関性があることを見出しました。 掲載しています。 たコミュニケーションの実践を目指しています。 析に基づく化学物質の最適な管理手法を研究しています。 開発 化学物質の影響評価と類型化手法の開発 pCECシステム マウス ゼブラフィッシュ 環境資源に対する住民の意思決定過程を 調べるため社会心理学の手法を援用した アンケート調査を実施 費用便益分析 野外生物による化学物質汚染の集団遺伝学的モニタリング 意思決定 プロセス 農業価値 ~農業のために大切~ O 環境価値 行動意図 ~参加しようと思う~ ~環境のために大切~ 社会規範 【アウトリーチ】 対象生物: カブトミジンコ(Daphnia galeata) 化学物質: フェンバレレート(ピレスロイド系) フェンバレレート耐性の適応度コスト 0.4 環境中からの化学物質曝露による 発がんの予測・リスク評価 ラットへの114化学物質の 単回曝露による肝細胞の 遺伝子発現の変化のデー タを可視化し、発現パター ンや作用メカニズムによる 化学物質のグループ分け を実施 ため池 県・地元水利組合・ 自治会と連携 採集地点(霞ヶ浦) 0.3 0.25 国土画像情報(カラー空中写真:1985年) 国土交通省 個体群名 EC50 (mg/L) 恋瀬川1(霞ヶ浦) 1.74 恋瀬川2(霞ヶ浦) 1.18 湖心(霞ヶ浦) 3.13 大膳池(レファレンス集団) 0.29 0.2 0.15 兵庫県の市街地にあるため池 都市域での大規模な社会調査 湖心 c = 0.045(回帰係数) 0.35 生体内運命・ ・ 感受性・発達段階に及ぼす影響 を反映した変異原性の評価 y = -0.042x + 0.278 0.1 0.05 地元ワークショップに参加 調査結果を資源管理の議論の場で提供 大膳池 恋瀬川 N ~他の人がやるから~ (生物としての普遍性と多様性・特異性) フェンバレレート急性毒性値の 個体群間変異 O O Cl 宅地化 無曝露条件下における 内的自然増加率 r 遺伝子導入動物(マウス・ゼブラフィッシュ)体内 で化学物質が示す変異原性のデータ 4種の毒性影響(肝、初期 胚、神経細胞、生殖器細 胞)に関与する化学物質 の分類情報を掲載中 基盤整備 0 1.6 1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8 3 耐性値 z (log[T+1]; T g/L) 3.2 霞ヶ浦個体群の耐性値はレファ レンス個体群の数倍から10倍 沿 革 1974 年 国立公害研究所発足 1990 年 国立環境研究所に改組 地域環境研究グループにリスク関連プロジェクトを担当する 上席研究官を設置 2001 年 独立行政法人国立環境研究所に改組、第1期中期計画 (2001~2005 年度)策定 化学物質環境リスク研究センター、内分泌攪乱化学物質・ ダイオキシン研究プロジェクト、生物多様性研究プロジェクト 等を設置 2006 年 研究所第2期中期計画(2006~2010 年度)策定 常 磐 自 動 車 道 環境リスク研究センター発足 つくばエクスプレス つくば駅 通り 西大 学園 常磐 線 気象研究所 桜土浦 I.C. 国立環境研究所 霞ヶ浦 6 354 生態系研究 フィールドⅡ JR 408 つくば中央 I.C. 土浦駅 学 園 東 大 通 り つくば JCT つくば牛久 I.C. 125 荒川沖駅 谷田部 I.C. N ひたち野うしく駅 牛久阿見 I.C. 独立行政法人 住 所 URL TEL FAX 交 通 0 1 2 3 4 5km 国立環境研究所 環境リスク研究センター 〒305-8506 茨城県つくば市小野川 16-2 http://www.nies.go.jp/risk/index.html 029-850-2593 029-850-2920 : : : : JR 常磐線 (約 1 時間) 上 野 駅 高速バス 東 京 駅 (約 1 時間 10 分) (八重洲南口) 秋葉原駅 圏 央 道 つくばエクスプレス (快速・約 45 分) バス(約 13 分) 環境研究所 「筑波大学中央」 または 「つくばセンター」 行き バス(約 10 分) つくばセンター 環境研究所 「ひたち野うしく駅」 行き ひたち野うしく駅 つ く ば 駅 バス(約 10 分) 環境研究所 「ひたち野うしく駅」 行き リサイクル適性の表示:紙へリサイクル可 本冊子は、グリーン購入法に基づく基本方針における「印刷」に係る判断の基準にしたがい、印刷用の 紙へのリサイクルに適した材料[Aランク]のみを用いて作製しています。 環境リスク研究センター 2011.03