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ディスカッション・ペーパー:16-J-052 [PDF:760KB] - RIETI
DP RIETI Discussion Paper Series 16-J-052 収入と暮らしに関する将来予測と幸福度・メンタルヘルスの関係: 消費者態度指数の質問を使った検証 関沢 洋一 経済産業研究所 後藤 康雄 経済産業研究所 宗 未来 慶應義塾大学 野口 玲美 千葉大学 清水 栄司 千葉大学 独立行政法人経済産業研究所 http://www.rieti.go.jp/jp/ RIETI Discussion Paper Series16-J-052 2016 年 9 月 収入と暮らしに関する将来予測と幸福度・メンタルヘルスの関係 :消費者態度指数の質問を使った検証 1 関沢洋一(経済産業研究所) 後藤康雄(経済産業研究所) 宗未来(慶應義塾大学) 野口玲美(千葉大学) 清水栄司(千葉大学) 要 旨 将来の収入が増えると予測する人々は幸福度が高くなるなど、暮らしや収入に関する将来 予測が、現在の幸福感やメンタルヘルスに影響を及ぼすことが複数の経済学の研究で主張さ れている。一方、逆の因果関係として、不安や憂うつなどメンタルヘルスと関係を有する感 情が悲観的な将来見通しに結びつくなど、幸福感やメンタルヘルスが将来見通しに影響を及 ぼすことを示唆する研究が心理学などで登場している。本研究では、内閣府が作成する消費 者態度指数に使われる 4 つの質問(その中には、半年後の暮らしや収入の見通しに関するも のが含まれる)を使って上記の関係について検証した。 2 つの介入研究と 1 つの観察研究のデータを利用して、消費者態度指数等と、幸福度やメ ンタルヘルスに関連する指標(抑うつ度、不安度)との相関関係について、パネルデータを 活用した固定効果モデルによって検証したところ、消費者態度指数等が改善(悪化)するほ どメンタルヘルスは改善(悪化)し、幸福度が高まる(低下する)ことが確認された。2 つ の介入研究において、メンタルヘルスの改善を目指す介入が消費者態度指数等の改善につな がるかという因果関係を検証したところ、うつ症状の軽減を目的とした諸介入(認知行動療 法やマインドフルネス)を行った群は、統制群(何もしない群)と比べて消費者態度指数等 を向上させる効果を有しなかった。 キーワード:消費者態度指数、幸福、うつ、不安、メンタルヘルス、期待 JEL classification: I10, I31 RIETI ディスカッション・ペーパーは、専門論文の形式でまとめられた研究成果を公開し、活 発な議論を喚起することを目的としています。論文に述べられている見解は執筆者個人の責任で 発表するものであり、所属する組織及び(独)経済産業研究所としての見解を示すものではあり ません。 1 本稿は、独立行政法人経済産業研究所におけるプロジェクト「人的資本という観点から見たメンタルヘルスについ ての研究2」の成果の一部である。本稿の分析では、RIETI で実施した平成 26 年度「インターネットを使った心の 健康法の効果を検証するための WEB 調査」 、平成 27 年度「インターネットを使った心の健康法の効果を検証するた めの Web 調査」 、平成 27 年度「音声感情認識技術と心理指標・消費マインドの関係を検証するための Web 調査」の データを用いた。 1.はじめに 1-1.消費者態度指数の経済的位置付け 消費者態度指数は内閣府が消費者へのアンケート調査に基づいて毎月作成する消費 マインドに関する指数であり、いくつかの研究によって、GDP や個人消費に先行する ことが明らかになっている(Utaka, 2003, 2014; 佐野, 2004; 内閣府, 2005; 安部, 2012)。消費者態度(consumer confidence)は、消費者の購買態度(consumer’s confidence or willingness to buy)を示す概念として、カトナによって提唱され、裁量 的支出が所得のみならず消費者態度にも影響されると主張されている(Katona, 1974)。各国で作られた消費者態度に関する指数は、消費支出(Adrangi & Macri, 2011; Dees & Soares Brinca, 2013; Eppright, Arguea, & Huth, 1998; Ludvigson, 2004)や、株式への収益(Hsu, Lin, & Wu, 2011)、失業率(Mandal & McCollum, 2013) といった経済指標への先行性があることが既存の研究で示されている。 消費者態度指数の先行性は、わが国の直近までのデータについてもかなり明瞭に確認 することができる。図1は SNA ベースの実質家計消費額(実線)と消費者態度指数(点 線)の長期的な推移を示したものだが、こうしたごく大まかなビジュアル・チェックだ けでも消費者態度指数が先行気味である状況が窺われる。 図 1 実質家計消費額と消費者態度指数の推移 兆円 15 2010=100 60 10 50 5 40 0 30 ‐5 20 10 ‐10 実質消費(SNAベース) 消費者態度指数:右目盛 0 ‐15 1982 1987 1992 1997 2002 2007 2012 注:実質消費は HP フィルターによる循環成分。 出所:内閣府「消費動向調査」「国民所得統計」より作成。 さらに多くの指標を用いて統計的な先行性を検証した結果が図 2 である。ここでは消 費者態度指数と①景気全体を表すマクロ指標、②個人消費に関する指標の関係を、グレ ンジャー因果性テストによって確認した。マクロ景気指標(①)には実質 GDP と景気 動向指数(CI・一致指数)の 2 つを、個人消費指標(②)に SNA ベースの実質消費額、 内閣府作成の消費総合指数、日本銀行作成の消費活動指数(中村・河田・田中・植前, 1 2016)の 3 つを用いた。この結果をみると、まず個人消費については、3 つの指標のい ずれに対しても消費者態度指数はグレンジャーの意味で有意に先行している一方、逆の 関係は有意ではない。景気全体を表す指標に関しては、GDP との間では有意に双方向 の関係にあるものの、景気動向指数との間ではやはり消費者態度指数が先行することを 示している。総じてみれば、消費者態度指数は少なくとも個人消費に対しては明確な先 行関係にあり、景気全体に対しても先行する傾向にあることが示唆される結果となって いる。 図 2 消費者態度と景気・消費指標のグレンジャー因果性テストの結果 因果関係の方向 消費者態度指数 → ← → ← → ← → ← → ← ラグ期数 実質GDP 1 景気動向指数 (CI・一致) 実質消費 (SNA) 内閣府・ 消費総合指数 日銀・ 消費活動指数 2 1 1 1 F値 19.4269 24.9362 7.8454 1.3880 11.1413 0.6223 12.1984 0.9018 10.6043 0.2413 p値 0.0000 0.0000 0.0006 0.2536 0.0011 0.4316 0.0008 0.3450 0.0021 0.6254 データ期間 *** 1982.2Q~2016.1Q *** *** 1985.1Q~2016.1Q *** *** *** 1982.2Q~2016.1Q 1994.1Q~2016.1Q 2003.1Q~2016.1Q 注 1:いずれも四半期データの季節調整値による。実質消費、消費総合指数、消費活動指数は HP フィルターによる循環成分を抽出。ラグ期数の選択にはシュワルツ情報量基準を用い た。 注 2:有意性における***は 1%有意を示す。 出所:内閣府「消費動向調査」「国民所得統計」より作成。 1-2.消費者態度指数の心理的位置付け 消費者態度についてのパイオニアである Katona は、経済に対する心理的な影響を 表わす概念として消費者態度を考えていたが(Katona, 1974)、消費者態度を示す指数 と、うつや不安など心理学で使われる様々な心理指標との関係を検証した研究はほと んど見つからない。しかし、日本の消費者態度指数を形成する 4 つの質問のうちの 2 つは、暮らし向きと収入の増え方についての半年後の期待(英語では expectation で、願望よりも予測に近い概念)を尋ねており、同種の質問と幸福度・主観的健康・ メンタルヘルスとの関係への関心が経済学において高まっている。後述するとおり、 Senik(2008)をきっかけとして、暮らしや収入に対する将来期待が現在の幸福度等に影 響を及ぼすことが数カ国のデータで確認されており、消費者態度指数の質問を活用す ることによって、日本でもこれが当てはまるかの検証が可能である。 内閣府自体が計測している消費者態度指数と心理指標の関係は、心理指標のデータ を取得していないことから容易に検証できないものの、消費者態度指数の算出は、暮 らしや収入など半年後についての将来予測に関する 4 つの質問によるアンケート調査 による回答から行われるため、アンケート調査を作って、その中に消費者態度指数の 2 算出に使われる 4 つの質問と、様々な心理指標を構成する質問に同時に回答してもら うことによって、両者の関係を明らかにすることは可能である。このようなやり方に よって、関沢・桑原(2012)は、大学生に回答してもらったクロスセクションのアンケ ート調査で、ふだんの不安の傾向を示す特性不安と消費者態度指数の間に相関関係が あることを明らかにした。関沢・吉武・後藤(2013)では、約 500 人の 1 ヶ月おきの 3 時点パネルを作って、消費者態度指数と種々の心理指標の関係を検証したところ、 生活満足度が高いほど、楽観度が高いほど、人を信じる程度が強いほど、肯定的感情 が強いほど、否定的感情が弱いほど、抑うつ度が低いほど、消費者態度指数が改善す ることがわかった。 1-3.本研究で取り組むこと 本研究では、この結果を踏まえ、次の 2 つについて検証することにした。 (i) 消費者態度指数(この中に含まれる暮らしと収入の予測に関する質問への回答 も含む)と種々の心理指標(抑うつ度、不安度、肯定的感情、否定的感情、幸 福度)の間に相関関係は見られるか。 (ii) メンタルヘルス(抑うつ度や不安度)が改善すると消費者態度指数が改善する か。 (i)については、1 か月おきの 3 時点のデータであった関沢・吉武・後藤(2013)の 結果について、規模が大きく間隔も長くなった複数のデータで同等の結果が見られる か確認するものである。加えて、後述するように、最近の経済学の研究において、将 来の暮らしや収入に対する見通しが現在の幸福度やメンタルヘルスに影響を及ぼすと いう研究がでていることから、消費者態度指数の質問を使って、同様の結果がこれら のデータでも確認できるかを検証することにした。 以上に加えて、新たな研究として、(ii)の仮説について、認知行動療法などのメンタ ルヘルスを改善する精神医学的な介入を行うことによって、メンタルヘルスの改善に 伴って消費者態度指数が改善するかどうかを検証した。先行研究を踏まえた仮説とし ては、①消費者態度指数の改善がメンタルヘルスの改善につながる、②メンタルヘル スの改善が消費者態度指数の改善につながる、のいずれの因果関係もあり得ることか ら、メンタルヘルスの改善を目指したランダム化比較試験の機会を利用して、このう ちの②について検証し、また、メンタルヘルスの改善が将来の暮らしや収入に対する 見通しに影響を及ぼすかという問いにも答えることにした 本稿の構成は以下のとおりである。はじめに、第 2 節で、消費者態度指数(及び、 その中に含まれる暮らしと収入の将来見通しに関する質問)と心理指標の関係につい て、将来に対する人々の予測と感情(メンタルヘルス)の関係という観点から、心理 学と経済学の先行研究を概観する。次に、第 3 節で、本研究におけるデータ取得の方 3 法と分析手法を示す。次に、第 4 節で、分析結果を明らかにする。次に、第 5 節で、 分析結果を踏まえた考察を行うとともに、今後の研究についての展望を示す。 2.先行研究のサーベイ 2-1.経済学におけるアプローチ 消費者態度指数は、4 つの質問への回答から算出され、第 1 問が「あなたの世帯の 暮らし向きは、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、悪くなると思います か。」 、第 2 問が「あなたの世帯の収入の増え方は、今後半年間に今よりも大きくなる と思いますか、小さくなると思いますか。 」、第 3 問が「職の安定性、みつけやすさな どの雇用環境は、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、悪くなると思います か。」 、第 4 問が「耐久消費財の買い時としては、今後半年間に今よりも良くなると思 いますか、悪くなると思いますか。 」となっている。これらの問いの全てが将来に対す る人々の予測(expectation)を尋ねるものとなっている。 消費者態度指数を使ったものではないが、暮らしや収入に対する将来についての予 測が幸福度やメンタルヘルスに影響を及ぼすかという観点から、消費者態度指数と類 似の質問を使って、将来予測と心理指標の関係を検証した研究がいくつかでている。 最初の研究はロシアのパネルデータを用いた Senik(2008)で、将来の暮らしが良くな ると予想していると現在の幸福度や主観的健康が向上することを明らかにした。ここ で使われている質問は、Do you think that in the next 12 months you and your family will live better than today or worse?であり、消費者態度指数の問 1 と問 2 に 似たものになっている。 Knight and Gunatilaka(2010)は、中国のクロスセクションのデータを使って、5 年 後に収入が増加することを予想している人は収入が変わらないと予想している人々に 比べて幸福度が高いことを指摘した。Frijters, Liu, and Meng (2012)は、Knight らと 同じデータを使って Knight らの結論を再確認すると共に、将来の収入への期待が幸 福度に及ぼす影響は現実的に起き得る絶対的な所得の向上を大きく上回っていること を示した。また、中国の都市在住の人々が地方在住に比べて所得が大きいにも関わら ず幸福度が低いことの 1 つの説明として、地方在住者が都市在住者に比べて将来の収 入増加への期待(予測)が大きいことを挙げた。将来の収入や暮らしについての期待 (予測)が現在の幸福度と関係していることは、トルコのクロスセクションのデータ や、イギリスのパネルデータにおいても確認されており(Barazzetta, 2015; Caner, 2015; Ekici & Koydemir, 2014)、Ekici らは収入予測とメンタルヘルスの間にも関係 があることを確認している。 収入予測と現在の幸福度(メンタルヘルス)との関係についての上記の発見を踏ま え、幸福や効用についての見方を見直すべきとの考えもでている。第 1 に、イースタ リンの逆説として、一国内における所得水準の上昇が幸福度の増加につながらないこ 4 とが明らかにされているが(Easterlin, 1974, 1995)、この逆説についての 1 つの説明と して、将来の所得向上の期待が高いほど幸福度は上がり、現在の所得水準が高くても 将来見通しが悪ければ幸福度は下がり、所得の高さの影響が相殺されるという見方が 提唱されている(Senik, 2008)。第 2 に、人々の現在の効用を測る上で、現在の消費だ けを見ることは正しくなく、期待も消費財の 1 つとして考慮に入れるべきだと指摘さ れている(Foster & Frijters, 2014; Frijters, et al., 2012) 。 2-2.心理学におけるアプローチ 幸福度やメンタルヘルスというよりは、これらを含めた感情一般についてだが2、将 来に対する人々の予測と感情の関係について、心理学を中心に 2 つのアプローチがあ る。1 つめは評価理論(appraisal theories)と呼ばれるもので、現実に対する評価が 感情を引き起こすというものであり、暮らしや収入に対する将来予測が人々の幸福度 やメンタルヘルスに影響するという上記の経済学の最近の研究に対する 1 つの説明と なっている。2 つめは、その反対に、感情が現実に対する評価に影響を及ぼすという ものであり、こちらは、上記の経済学の研究とは反対の因果関係に関するものであ る。 2-2-1.評価理論 現実に対する評価が感情を引き起こすという理論は、アーノルドとラザラスによっ て唱えられ(Arnold, 1960; Lazarus, 1966)、認知行動療法などの精神療法でも取り入 れられている(Beck, 1979)。評価理論は、英語で複数形になっていることから示唆さ れるとおり様々なバリエーションがあるが、主な主張は以下のとおりである (Ellsworth & Scherer, 2003; I. Roseman & Kaiser, 2001)。第 1 に、外部の出来事は 直接的に感情を引き起こすのではなく、現実に対する何らかの評価によって生じる感 情が決まってくる。第 2 に、評価が異なる場合、同じ外部の出来事であっても、異な る感情が生じる。第 3 に、評価が正しいとは限らない。現実とは乖離した評価を行う こともある。この場合、感情は現実ではなく評価を反映したものになる。第 4 に、感 情を生み出す一連の評価や解釈は、本人が気づかなくても生じうる。第 5 に、現実の 出来事に変化が生じなくても、それに対する評価が変われば、感情は変化する。 評価のあり方としてはいろいろなバリエーションがあるが、例えば、Roseman and Kaiser (2001)によると、次のようなものが指摘されている。評価の 1 つめの次元とし て、自己の目的との対比、よりわかりやすく言うと、起きる出来事が自分にとって望 ましいことか望ましくないかという次元がある。2 つめに、その出来事が確実に起こ るものか不確かなものなのかという次元がある。3 つめに、その出来事が自分でコン 2 本稿では幸福度は感情の一種として捉えている(Layard, 2011)。 5 トロールできる潜在性があるかかどうかという次元がある。4 つめに、その出来事が 自分によって引き起こされたのか、外部の事情によって引き起こされたのかという次 元がある。 例えば、悲しみと恐怖のいずれもが、自分にとって望ましくなく、自分でコントロ ールできる潜在性がないという評価に起因することが共通しているが、悲しみの場 合、その出来事が起きることが確実であると評価されているのに対して、恐怖の場合 には、その出来事が起きることが不確かであると評価されている。確実性に対する評 価の違いが、悲しみと恐怖という形で感情を区分することになる。怒りは、自分にと って望ましくないことが起きるという評価があり、それを自分でコントロールできる 潜在性があるという評価があり、かつ、その原因が自分の外部にあると評価されると 生じるとされる。ちなみに、うつは主たる感情として悲しみを伴い、不安は主たる感 情として恐怖を伴うとされる(Beck, 1979; I. Roseman & Kaiser, 2001)。 評価理論によって、暮らしや収入の予測が現在の幸福度やメンタルヘルス(代表的 なものは悲しみと関係の深いうつと、恐怖と関係の深い不安障害)に影響を及ぼすこ とを説明しようとすれば、以下のものが考えられる。1 つ目の次元として、自分の暮 らしや収入が将来的に良くなること(増えること)が自分にとって望ましいことだと 認識され、更に、それに反することが起きるという評価が起これば、何らかのネガテ ィブ感情につながるし、逆に、それに沿った出来事が起きるという評価が起これば、 幸福感などのポジティブな感情につながる。次に、望ましくないこと(暮らしや収入 の悪化)が不確かかどうかという次元があり(certainty)、このような悪化が起きる ことが不確かだと評価されれば、恐怖(不安)が生じることになり、確実だと評価さ れていれば、悲しみ(うつ)が生じることになる。また、この暮らしの悪化が他者に よって起こされると評価され、それがコントロールできる潜在性があると評価される と、その他者に対する怒りを感じることになる(例えば、暮らしの悪化が政府の失政 によるものと評価されれば、政府への怒りが生じるなど) 。 2-2-2.感情が評価に影響を及ぼすという主張 以上の評価理論では、現実に対する評価が感情に先行するというモデルを説明し た。これとは反対に、感情が現実に対する評価に影響を及ぼすことが多くの研究によ って明らかになってきた(Jennifer S. Lerner, Li, Valdesolo, & Kassam, 2015)。これ によると、人々が何らかの感情を形成すると、その感情を形成する原因となった出来 事とは関係ないことに対しても、それに対する評価が変わってくる。例えば、恐怖映 画を見て不安感を感じた人々は、リスクを高く見積もる傾向が高まり、株式のような リスク資産を保有する傾向が低下し、反対に、幸福感が高まる映画を見れば、リスク を低く見積もるようになって、リスク資産を保持することへの抵抗感が下がるといっ た話である。 6 感情が人々の物事の見方に影響を及ぼすことについて、Loewenstein らは、risk as feelings と呼び(Loewenstein, Weber, Hsee, & Welch, 2001)、Slovic は affect heuristic と呼んでいる(Slovic, Finucane, Peters, & MacGregor, 2004)。感情が物事の 評価に影響を及ぼすパターンの 1 つめは、ある瞬間にたまたま抱いている感情が、そ の感情の生じた原因とは直接関係ない物事への評価に影響を及ぼすことである。例え ば、悲劇的な出来事を記載した新聞記事を読んだ被験者は、その出来事との関係性の 有無に関わらず、望ましくない出来事が生じる見通しを高く見積もる傾向がある (Johnson & Tversky, 1983)。不安のようなネガティブな感情へと誘導された人々は、 株式投資と債券投資に類似した実験において、株式購入を控えてリスクを回避する傾 向が高まった(Kuhnen & Knutson, 2011)。これらの事例では、悲しみや不安といった ネガティブな感情が人々のリスク評価を悲観的なものとすることを示している。最近 の研究では、twitter で示された感情が株価の動きを予測できるとするものまで出てき ている(Bollen, Mao, & Zeng, 2011)。 また、心配性や怒りっぽさなど、特定の感情を感じる傾向(感情特性)によって、 人々のリスク評価が左右されることも知られている。感情特性としての不安(特性不 安)の程度が高い人々は,物事を悲観的に解釈する傾向があり、反対に、感情特性と しての怒りの程度が高い人々と、幸福感の程度が高い人々は、物事を楽観的に解釈す る傾向がある(Jennifer S Lerner & Keltner, 2001)。また、質問票による調査では、感 情特性としての不安の程度が高い人々は、株式投資よりも貯蓄を志向するなど、資産 運用に関してリスク回避的な態度が見られるのに対して、怒りの程度が高い人々は、 その反対の傾向がある(Gambetti & Giusberti, 2012)。 2-3.本研究における仮説 ここまでの先行研究の結果を踏まえると、次の仮説が生まれる。 (i) 収入や暮らしの将来見通しが高い(低い)ほど人々の幸福度は高まり(低下 し) 、メンタルヘルス(うつや不安の程度で示されるもの)は改善(悪化)す る。 (ii) 何らかの介入によって、収入や暮らしの将来見通しを改善(悪化)させれ ば、人々の幸福度やメンタルヘルスは改善(悪化)する。 (iii) 何らかの介入によって、人々の幸福度やメンタルヘルスを改善(悪化)させ れば、収入や暮らしの将来見通しが改善(悪化)する。 本研究では、これらのうち、(i)と(iii)を検証することにした。 3.本研究の方法 3-1. 研究の概要 7 本研究は、以下のとおり、1 つの観察研究(研究 1)と2つの介入研究(研究 2、 3)から構成されている。 3-1-1.研究 1 研究 1 は、調査会社のモニターとして登録している人々を対象として行われた。筆 者(関沢・後藤)が勤務する(独)経済産業研究所が調査会社と委託契約を締結するこ とによって、本研究は遂行された。 調査会社が自社のモニターに電子メールを送ることによって調査参加者を募集し、 属性に関する質問、心理指標に関する質問、消費者態度指数の質問に回答してもらっ た。回答は、同じ人々に、時点 0(2015 年 9 月 24 日~10 月 1 日) 、時点 1(2015 年 11 月 24 日~30 日) 、時点 2(2016 年 1 月 25 日~31 日)の 2 か月おきに同じアンケ ート調査に回答してもらい、パネルデータを得た。観察研究であり、介入行為は行っ ていない。但し、本研究では、音声が感情やうつ状態と関連を有しているかどうかの 検証も行っているため、音声の録音を承諾した人々に参加者は限定されている。本研 究の参加は、参加についての本人の同意を経た者についてのみ行っている。本研究は 特定医療法人社団慈藻会平松記念病院倫理委員会の承認を受けて行われた。 3-1-2.研究 2 研究 2 は、シンプルなインターネット認知行動療法と、感情を受け入れるだけのマ インドフルネスを、待機群(何もしない群)と比較したランダム化比較試験である。 メンタルヘルス上の代表的な問題であるうつ症状を軽減するための取り組みとして、 認知行動療法と呼ばれる自分で行えるセラピーがあり、本研究では、1 日 5 分間でイ ンターネット上で行える認知行動療法(5 分間認知行動療法)の効果を検証した。ま た、これに合わせて、感情を受け入れるだけのマインドフルネス・エクササイズの効 果を検証した。マインドフルネスは、瞬間瞬間に起きる出来事に対して判断を加える ことなく注意を向けることとされ(Kabat-Zinn, 1990)、そのエクササイズの多くで は、呼吸や身体感覚に注意を向けることになっているが、本研究では、ネガティブな 感情に意識を向けて、感情を認めて受け入れるエクササイズにした。974 名を 5 分間 認知行動療法群、マインドフルネス群、待機群にランダムに割り振り、5 分間認知行 動療法群とマインドフルネス群は 5 週間にわたってそれぞれのエクササイズを行って もらった。最初に、うつの計測指標の得点が一定水準を超えるもの(PHQ-9(後述)が 5 点以上、かつ、CES-D(後述)が 16 点以上)の者だけを選抜した後に、ベースラインで の心理指標の計測の後で(時点 0)、5 週間のエクササイズ期間の後に改めて心理指標を 計測し(時点 1) 、更に、その 6 週間後(時点 2)、12 週間後(時点 3)に同じ心理指 標を計測した。時点 0 は 2015 年 6 月 4 日~10 日、時点 1 は 7 月 23 日~29 日、時点 2 は 9 月 3 日~9 日、時点 3 は 10 月 15 日~21 日となっている。本研究は千葉大学大 8 学院医学研究院倫理審査委員会の承認を受けて行われた。本研究の詳細は、野口・関 沢・宗・山口・清水(2016)で報告されている。 3-1-3.研究 3 研究 3 は、通常のインターネット認知行動療法(通常認知行動療法)と、人工知能 を使ったインターネット認知行動療法(AI 認知行動療法)を、待機群と比較したラン ダム化比較試験であり、研究 2 と同様に、これらの認知行動療法による介入は、うつ 症状の軽減を主たる目的としている。研究参加に同意した人々を通常認知行動療法 群、AI 認知行動療法群、何も行わない群(待機群)にランダムに割り振り、2 つの介 入群は、認知行動療法に関する心理教育的な音声視聴教材を終了後に、自然言語処理 フィードバック機能付きの認知行動療法のエクササイズ(AI 認知行動療法群) 、この 機能のない認知行動療法のエクササイズ(通常認知行動療法群)をそれぞれ施行し た。この介入は週に 1 回、7 週間にわたって行われた。最初に、PHQ-9 の得点が 5 点 以上の者だけを選抜した後に、ベースラインでの心理指標の計測の後で(時点 0)、7 週間のエクササイズ期間の後に改めて心理指標を計測し(時点 1)、更に、その 3 ヶ月 後に同じ心理指標を計測した(時点 2) 。時点 0 は 2015 年 9 月 16 日~28 日、時点 1 は 11 月 23 日~29 日、時点 2 は 2016 年 2 月 22 日~2 月 28 日となっている。本研究 は特定医療法人社団慈藻会平松記念病院倫理委員会の承認を受けて行われた。本研究 の詳細は、宗・関沢・竹林(2015)で報告されている。 3-2.評価指標 ①消費者態度指数の計測に使われる質問 消費者態度指数は、4 つの質問に対する回答を指数化することによって作成され、 景気判断に使われる消費マインドを示すものとして、内閣府経済社会総合研究所の消 費動向調査で毎月発表されている。消費者態度指数は、内閣府の景気動向指数の先行 系列の指標の 1 つとして採用されており、公的に景気転換点の予測に用いられてい る。消費者態度指数と経済の関係についての既存の研究では、消費者態度指数が GDP の短期的な変動に影響し(Utaka, 2003, 2014)、同指数は総務省「家計調査」の勤労者 世帯の実質選択的消費支出に先行し(佐野,2004)、同指数は国民経済計算ベースの 消費支出に対してグレンジャーの因果性を持つとされる(内閣府, 2005)。また、消費 者態度指数は、日銀が開発した消費活動指数と相関がある(中村・河田・田中・植前, 2016)。 消費者態度指数は、4 つの質問への回答から算出され、第 1 問が「あなたの世帯の 暮らし向きは、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、悪くなると思います か。」 、第 2 問が「あなたの世帯の収入の増え方は、今後半年間に今よりも大きくなる と思いますか、小さくなると思いますか。 」、第 3 問が「職の安定性、みつけやすさな 9 どの雇用環境は、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、悪くなると思います か。」 、第 4 問が「耐久消費財の買い時としては、今後半年間に今よりも良くなると思 いますか、悪くなると思いますか。 」となっている。回答は 5 件法(1:良くなる- 5:悪くなる)である(第 2 問は回答が若干異なり、5 件法(1:大きくなる-小さく なる)である) 。本調査では、消費者態度指数を算出するために調査対象者に回答して もらう質問をそのまま用いた3。 消費者態度指数は内閣府が発表するものでは指数化されており、上記の回答の 1 が 100、2 が 75、3 が 50、4 が 25、5 が 0 と換算されている。また、4 つの質問全体の 指数を出す場合には、4 つの質問の指数化された数値を平均化する。従って、最小値 が 0、最大値が 100 で、数値が大きいほど、消費者マインドは改善されると判断され る。本研究では、5 件法の順番を逆転させて、 (1:悪くなる-5:良くなる)として、 この得点をそのまま用いた数値と、指数化された数値を併用して記載している。 ②抑うつ状態を測る尺度(CES-D と PHQ-9) 抑うつ度を測る質問票として、本調査では 2 つの指標が用いられている。CES-D (The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale) は、アメリカの国立精神 保健研究所が開発したうつ病の自己評価尺度で、20 問の質問で構成されている (Radloff, 1977)。日本語版は島らが作成している(島・鹿野・北村・浅井, 1985)。質 問文が表わす気分や身体の状態が過去 1 週間にどの程度持続したかについて「0:ま ったくない」から「3:3 日以上」のうち 1 つを選択する。CES-D は、 「普段気にか からないことが気になった」といったネガティブな項目に関する質問が 16 問ある一 方で、「人並みのことはできると感じた」「さきゆき明るいと感じた」 「うれしいと感じ た」 「楽しいと感じた」というポジティブな質問が 4 問あり、ポジティブな質問につ いては回答を反転させたのち、ネガティブな質問と合わせて抑うつ得点を計算する。 抑うつ得点は 0 から 60 点の範囲をとり、得点が高いほど抑うつ度が高い。CES-D は 研究 3 では計測されていない。本研究では、CES-D の全体の得点に加えて、ポジティ ブな項目についての合計点数(0~12 点) )、ネガティブな項目についての合計点数(0 ~48 点)も示した。 PHQ-9 は、大うつ病性障害等の診断のために開発された質問票で(Kroenke, Spitzer, & Williams, 2001)、日本語版は村松らが作成している(村松, 2014) 。PHQ-9 はうつの症状を示す 9 個の質問から構成されており、過去 2 週間について、 「全くな い=0 点」「数日=1 点」 「半分以上=2 点」 「ほとんど毎日=3 点」となっている。 2013 年 4 月より、消費者態度指数の質問が若干変わっており、研究 1 と研究 3 では変 更以降のもの、研究 2 では変更以前のものが用いられている。 3 10 合計点は 0~27 点で、0~4 点はうつ状態でない、5~9 点は軽度のうつ、10~14 点 は中等度のうつ、15~19 点は中等度~重度のうつ、20~27 点は重度のうつとなる。 ③不安度を測る尺度(GAD-7) GAD-7 は、全般性不安障害を簡易に評価するための質問票として開発されたもの で(Spitzer, Kroenke, Williams, & Löwe, 2006)、日本語版は村松らが作成している (村松, 2014)。GAD-7 は不安の症状を示す 7 つの質問から構成されており、過去 2 週間について、 「全くない=0 点」「数日=1 点」 「半分以上=2 点」 「ほとんど毎日= 3 点」となっている。合計点は 0~21 点で、0~4 点は全般性不安障害がなく、5~9 点は軽度、10~14 点は中等度、15~21 点は重度と評価される。 ④肯定的感情・否定的感情(研究 1 のみで使用) 調査時点の被験者の感情を尋ねる質問として、研究 1 において、Thomas & Diener(1990)における感情についての質問を和訳した簡易気分調査票日本語版(田中, 2008)を用いた(以下では「簡易気分調査票」と呼ぶ) 。簡易気分調査票は、 「うれし い」 「心地よい」 「幸福である」「楽しい/面白い」という 4 つの肯定的感情と、 「イラ イラしている」 「不愉快だ」 「怒り/敵意を感じる」 「気持ちが沈んでいる/憂うつであ る」 「何となく心配だ/不安だ」という 5 つの否定的感情について、それぞれ現在の気 持ちを 7 件法(1:全くあてはまらない-7:非常によくあてはまる)で回答する。本 稿では、肯定的感情と否定的感情のそれぞれについて合算して用いている。肯定的感 情については、点数が高いほど肯定的感情が強まり(得点の範囲は 4~28 点) 、否定 的感情については、点数が高いほど否定的感情が強まる(得点の範囲は 5~35 点) 。 本研究では、先行研究が幸福に焦点を当てていることを踏まえて、これについては 肯定的感情・否定的感情に加えて、幸福感も単独の変数として取り上げることにし た。 ⑤属性に関する質問 属性に関する質問として、いずれの研究においても、年齢・居住地・就業状況・学 歴・婚姻状況に回答してもらった。また、所得については、研究 1 においてのみ、3 時点における総収入と自己収入を 8 段階で記入してもらった。研究 1 では、就業状況 と所得について 3 回のアンケートの全てで質問しているが、年齢・居住地・婚姻状況 は数か月間で変化しにくいとの判断から第 1 回目のみ質問している。学歴は手違いに より第 1 回調査で質問しなかったために第 2 回目で質問している。 3-3.分析手法 11 本研究では、研究 1 は観察研究となっている。分析手法としては固定効果モデルが 使われている。研究 2 と研究 3 は固定効果モデルによる分析に加えて、認知行動療法 等による介入効果を検証した。 3-3-1.固定効果モデルによる分析 分析手法として、本研究では固定効果モデルを用いた。これによって、時点によっ て変化しない個人毎の差異はコントロールされることになる。変数は 5 件法だが、連 続変数として扱っても問題ないとする先行研究(Ferrer-i-Carbonell & Frijters, 2004) を踏まえて連続変数として扱った。分析は以下の 3 つのパターンで行った。 第一に、各心理指標を従属変数として、消費者態度指数及びその各質問を主たる独 立変数とする固定効果モデルによる回帰分析を行った。独立変数は、消費者態度指数 及びその各質問のいずれかと時点ダミーとした。研究 1 では 3 時点の所得と就業状況 を尋ねているが、3 研究間の比較を可能にするため、独立変数に含めなかった4。 第二に、主たる独立変数と従属変数を入れ替えて、消費者態度指数及びその各質問 を従属変数として、各心理指標と時点ダミーを独立変数とする回帰分析も行った。 研究 1~3 のいずれでも、住所、学歴、婚姻状況は 1 回しか確認していないため、 これらの数値は各時点で変化しないため、固定効果モデルでは除去されることになる ため、使われていない。 3-3-2.介入効果についての分析 研究 2 と研究 3 は、認知行動療法等によるうつ症状に対する介入効果を検証した研 究であるため、うつと消費者態度指数(及びその各質問)の間に因果関係が本当にあ るのであれば、うつ症状の軽減と共に消費者態度指数等も改善する可能性がある。そ こで、介入研究で使われる一般線形混合モデルによって介入効果を検証することにし た。消費者態度指数(及びその各質問)が従属変数となった。独立変数は、時点、 群、時点と群の交差項、年齢、性別、ベースラインの従属変数の値である。 4.結果 4-1. 基本統計量 表 1-1、1-2 に各研究の基本統計量を示した。3 つの研究によって属性は異なるが、 いずれにおいても、4 大卒・既婚者・勤労者が中心になっている。男女比は各研究毎 に異なっており、研究 1 と研究 3 では男性の割合が高くなっているが、研究 2 ではほ ぼ同数となっている(表 1-1) 。消費者態度指数の数値(指数化後)は、時点 0 におい 研究 1 について、所得と就業状況を独立変数に加えた分析も行ったが、心理指標の係数 や有意性について大きな違いがなかったので、省略した。 4 12 て、研究 1 が 46.4、研究 2 が 40.0、研究 3 が 37.9 となっている(表 1-2)。心理指標 については、研究 1 と研究 2 はうつ症状の減少を目的としており、抑うつ度の得点で 最初にスクリーニングを行っているため、観察研究である研究 1 に比べて、うつ症状 を示す得点が高い(時点 0 の PHQ-9 の平均値は、研究 1 が 4.2、研究 2 が 9.7、研究 4 が 8.7 となっている) 。不安度(GAD-7)についても同様の傾向があり、研究 1 が 2.8、研究 2 が 7.0、研究 3 が 6.0 となっている。概ね、研究 2 が最もメンタルヘルス の状態が悪く、研究 1 が最も良く、研究 3 は研究 1 と研究 2 の間だが研究 2 に近い。 図 3-1~図 5-3 では、3 つの研究のそれぞれについて、消費者態度指数、及び、 質問 1(暮らしの予測)と質問 2(収入の予測)について、それぞれの得点(消費者態 度指数は指数化したもの、2 つの質問は回答の得点をそのまま使用)とそれぞれの得 点の者毎の PHQ-9、GAD-7、幸福感の平均値を図示した。これによると、消費者態度 指数、及び、2 つの質問において、将来見通しが良いほど、抑うつ度や不安度は低下 し、幸福感は改善する傾向が見られる。 4-2. 分析結果 4-2-1. 従属変数が心理指標(表 2-1、2-2) 心理指標を従属変数とし、消費態度指数を独立変数とした場合の結果を表 2-1(研 究 1) 、表 2-2(研究 2、3)で示した。いずれの心理指標も消費態度指数と 5%水準で 有意な関係があった。つまり、消費者態度指数が改善すると、肯定的感情が強まり、 否定的感情が弱まり、抑うつ度が低下し、不安度が低下する。符号と有意性は、研究 1、研究 2、研究 3 の間で違いはなかった。ただ、係数の大きさは各研究ごとにばらつ きがある。たとえば、PHQ-9 が従属変数だと、係数(標準誤差)が、研究 1 では0.07(0.03)、研究 2 では-0.31(0.04)、研究 3 では-0.19(0.04)となる。GAD-7 だと、0.12(0.02)、-0.31(0.03)、-0.15(0.04)となっている。 第 1 問の暮らしについての問いと、第 2 問の収入についての問いと心理指標の関係 についても、問 1 の PHQ-9 の得点が有意でないことを除くと、暮らし・収入につい ての半年後の予測が全ての心理指標との間で有意な関係となっており、符号も一致し ている。2-1 で紹介した Senik らの研究と整合的である。 4-2-2. 独立変数が心理指標の場合(表 3-1、3-2、3-3) 各心理指標を独立変数として消費者態度指数(及び、その問 1、問 2)を従属変数に した場合の固定効果モデルによる回帰分析の結果を示した。係数で見ると、PHQ-9 の 1 点の変化が、消費者態度指数の全質問を素点ベースで合計したものについて、研究 1 で-0.03 点(指数化すると-0.19) 、研究 2 で-0.09 点(指数化すると-0.55)、研究 3 で0.06 点(指数化すると-0.40)の変化に対応するという結果になっている。不安度につ いては、GAD-7 の 1 点の変化が、研究 1 で-0.07 点(指数化すると-0.42)、研究 2 で13 0.11 点(指数化すると-0.70)、研究 3 で-0.07 点(指数化すると-0.44)の変化と対応し ている。実際には、消費者態度指数の質問は連続変数ではないため、1 点ずつしか変 化しないため、抑うつ度も不安度も、仮に因果関係があったとしても、相当大きな変 化がないと、消費者態度指数の変化につながらない。 以上の結果は、問 1(暮らしの予測) 、問 2(収入の予測)についても同様であり、 問 1 の場合、PHQ-9 の 1 点の変化が、消費者態度指数の全質問を素点ベースで合計し たものについて、研究 1 で-0.005 点(非有意) 、研究 2 で-0.033 点、研究 3 で-0.021 点の変化に対応し、加えて、研究 1 では、肯定的感情、否定的感情、GAD-7 を制御す ると、PHQ-9 の符号はプラスとなっている(抑うつ度が高いほど暮らしの予測は改善 する)。 4-2-3. 介入研究の効果(表 4-1、4-2) 研究 2 と研究 3 では、介入を行っているため、その効果を見た。研究 1 では、うつ 症状の軽減効果は両群とも小さいながらも概ね見られている(野口 他, 2015) 。研究 2 では通常認知行動療法群は効果が見られたが AI 認知行動療法群では明瞭でなかった (宗 他, 2016)。 消費者態度指数については、研究 1 では、認知行動療法とマインドフルネスのいず れについても、消費者態度指数及びその各質問を改善する効果が見られなかった(表 4-1)。研究 2 では、問 1(暮らし向きの見通し)の質問において、通常認知行動療法 群がエクササイズ終了直後(時点 1)に待機群と比較して数値が悪化する傾向が見ら れ(p=0.06)、問 2(収入見通し)については、エクササイズ終了から 3 か月後(時点 2)に待機群と比較して数値が有意に悪化している。通常認知行動療法群は AI 認知行 動療法群に比べても得点 1 の得点が時点 1、時点 2 に比べて悪化する傾向があった (表 4-2) 。 研究 1 と研究 2 のいずれでも、スクリーニング時では PHQ-9 の得点が 5 点以上を 超えていたが時点 1 では 5 点未満となった人々が含まれ、これらの人々を除いたサン プルでも分析を行ったが結果に大きな違いは存在せず、本研究の介入行為が消費者態 度指数や暮らしや収入の期待を改善させるという結果は得られなかった。 5.考察 本研究によると、3 つのデータにおいて、消費者態度指数と幸福度やメンタルヘル ス(抑うつ度・不安度)の間に相関関係があることがパネルデータによって示され た。また、消費者態度指数を構成する個別の質問である暮らしと収入の見通しについ て、これらを通じた将来への期待(予測)が現在の幸福度やメンタルヘルスと相関関 係を有することが明らかになった。これらの相関関係から導かれる仮説として、幸福 度やメンタルヘルスが消費者態度指数に影響するという仮説を、メンタルヘルスの改 14 善手法である認知行動療法やマインドフルネス・エクササイズによる介入試験によっ て検証したが、効果は見られないという結果になった。以上の結果は、暮らしや収入 への将来への予測(期待)が現在の幸福度やメンタルヘルスに影響を及ぼすとする Senik や Frijters らの指摘と整合的な結果となっている。 5-1. 介入効果の欠如について 本研究の結果によると、認知行動療法や、感情を受け入れるだけのシンプルなマイ ンドフルネス・エクササイズのいずれについても、暮らしや収入への期待も含めて、 消費者態度指数を改善させる効果は認められなかった。2-2-2 で述べたとおり、理 論上は、感情の好転によって将来見通しが好転する可能性があるが、今回の研究では そうならなかった。これについてはいくつかの可能性がある。1 つ目には、感情が将 来期待に及ぼす影響は収入と暮らしについての期待に関しては存在しない可能性であ る。2 つ目は、今回の介入の効果が小さすぎた可能性がある。今回の介入研究の効果 は PHQ-9 の得点で 1 点前後であり、不安についてはもっと小さかったので、介入効 果が小さかったために消費者態度指数に有意でポジティブな変化をもたらすに至らな かった可能性がある。但し、ベースラインのうつの程度が高かった人々など、比較的 効果が強く見られた人々に対象を絞っても効果が見られなかった。表 1-2 でわかるよ うに、一般的な人々の PHQ-9 の得点をより反映していると思われる研究 1 と、うつ 症状のある人々を中心とした研究 2、3 では、時点 0 の PHQ-9 の得点差が 4~5 点あ るので、この差を埋めるような強力な介入効果がないと、仮に介入行為に消費者態度 指数への影響が本当はあるとしても検出するのは難しいかもしれない。3 つ目に、消 費者態度指数の各質問は 5 件法であり、連続変数ではないので、微妙な変化を捉える ことが難しい可能性がある。 感情が人々の判断に及ぼす影響を示した研究は、短期的に一定の感情に誘導する研 究が多く、今回のような長期的なアプローチは少ない。実験室における短期的な研究 によって、一時的に恐怖や悲しみや幸福感に誘導した人々の消費者態度や暮らしや所 得への期待の変化が起きるかどうかを検証する必要があるかもしれない。 5-2. 今後の方向性 本研究では、因果関係の検証は行ってはいないものの、暮らしや収入についての将 来予測(期待)が現在の幸福度やメンタルヘルスに影響を及ぼすとする Senik や Frijters らの指摘と整合的な結果となっている。2-2-1 で見たように、この結果は心理 学で示された評価理論によって説明することも可能であり、暮らしや収入の将来期待 が現在の幸福度等に影響を及ぼすことが示唆される。 15 今後の取り組みとして考えられるものとしては、認知の再評価(Cognitive Reappraisal)によって(Gross, 1998)、暮らしや収入が悪い方向に向かうという期待 (予測)の再検証を促すことによって評価を修正し、それによる期待の改善を通じて 感情の好転を促すというアプローチがあるかもしれない。ここでいう認知の再評価と は、悲観的な将来見通しに対して別の見方がないか中立的に検証し直すという比較的 シンプルなものである。感情が関係するような物事の判断について、認知の再評価に よって修正が効く可能性は既に知られており(Jennifer S. Lerner, et al., 2015)、行動 経済学で知られているフレーミング効果(Miu & Crişan, 2011)や損失回避(SokolHessner, Camerer, & Phelps, 2012)の低減につながることが明らかになっている。し かし、いずれも実験による一時的な結果に過ぎず、多数の人々の将来期待を持続的に 変えられるかどうかまではまだわからない。認知の再評価の技法は、認知行動療法に おいても用いられているので、収入や暮らしに焦点を当てた認知行動療法のエクササ イズを被験者に行ってもらって、その将来期待と感情への効果を検証することも一案 かもしれない。 今回の研究では、将来予測と感情の関係だけを見たが、感情に関する研究者の多く は、感情を単なる快不快として見ておらず、状況に応じた適切な対処行動を促すため の一連のシステムとして捉えている(I. J. Roseman, 2013; Zeelenberg & Pieters, 2006)。例えば、恐怖は、単なる不快感ではなく、危険を察知させ、危険回避に必要な エネルギーを生み出し、危険回避のための行動を促すための一連のメカニズムと考え られる。この点を踏まえると、例えば、暮らしや収入へのネガティブな将来予測に伴 って生じた悲しみが行動レベルの低下につながったり、不安が何らかのリスク回避行 為につながっている可能性がある。マクロ的に見ると、消費者態度指数が消費などの 経済活動に先行していることが既に示されているので(1-1 参照)、個人レベルの将 来期待と感情、消費や投資を追いかけていくと、将来期待の低下が不安を生んで消費 や投資を減らすといった評価理論から導かれる行動が観察でき、マクロ的な現象を説 明できるようになるかもしれない。幸福度やメンタルヘルスが消費者の行動に及ぼす 影響についての研究は、Guven(2012)が幸福度が高いと消費が減って貯蓄が増えると 指摘する一方で、その逆の結果を示唆する研究もあり(Bogan & Fertig, 2012; Dahal & Fertig, 2013)、実証的な決着が付いていないことから、今後の重要な研究課題であ る。 5-3. 本研究の限界 本研究の限界は以下のとおりである。第一に、被験者がインターネット調査で募集 した人々であり、かつ、主たる目的が音声の収集だったり(研究 1) 、メンタルヘルス 改善のための取り組みだったりしているために抑うつ度の高い人々が多い(研究 2、 研究 3) 、高学歴の人々が多いなど、サンプルが国民一般を代表しておらず、また、介 16 入や音声収集によるバイアスがかかってしまった可能性はある。ただ、固定効果モデ ルによる検証なので、時間によって変化しない要素は除去されたことにはなってい る。 第二に、既存のパネル研究と異なって、各時点間の期間が 2~3 か月と短く、長期的 な変化を見ることができなかった。また、用いた 3 研究の計測間隔が異なっているた め、3 研究間の厳密な比較は不可能になっている。 第三に、本研究の設計からは、暮らしや収入への将来期待や消費マインドが現在の 幸福度やメンタルヘルスに影響を及ぼすと結論付けることはできず、既存の研究と整 合的だったとまでしか言えない。因果関係については何らかの実験の実施などを通じ て更に検証する必要がある。 第四に、本研究では、未知の変数で時間によって変化するものを十分に統制できて いないため、実際には、時間によって変化する要因に、将来期待と幸福度(メンタル ヘルス)の双方が影響を受けている可能性を否定できない。 17 引用文献 安部勝 (2012). 我が国における消費者心理と消費行動の関係. 生活経済学研究, 36, 59-72. 佐野美智子 (2004). 心が消費を変える:消費者心理の変化と消費増減の関係を探る. 多賀出版. 島悟・鹿野達男・北村俊則・浅井昌弘(1985). 新しい抑うつ性自己評価尺度について. 精神医学, 27, 717-723. 関沢洋一・桑原進 (2012). 感情が消費者態度に及ぼす影響についての予備的研究. 行 動経済学, 5, 118-136. 関沢洋一・吉武尚美・後藤康雄 (2013). 心理指標と消費者マインドはどのように関係 しているか? 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Mahwah, NJ: Erlbaum. 21 性別 年齢 婚姻状況 男性 女性 平均(標準偏差) 表1-1 研究参加者の属性 研究1 1,478 (65.0%) 795 (35.0%) 45.5 (10.9) 研究2 486 (49.9%) 488 (50.1%) 43.7 (11.3) 研究3 698 (58.8%) 489 (41.2%) 43.5 (9.8) 既婚 離婚 死別 未婚 1,379 112 15 767 (60.7%) (4.9%) (0.7%) (33.7%) 525 73 3 373 (53.9%) (7.5%) (0.3%) (38.3%) 665 76 7 439 (56.0%) (6.4%) (0.6%) (37.0%) 中学校その他 高校 短大・高専・専門学校 大学・大学院 31 410 356 1,183 (1.6%) (20.7%) (18.0%) (59.8%) 7 204 187 576 (0.7%) (20.9%) (19.2%) (59.1%) 7 239 216 725 (0.6%) (20.1%) (18.2%) (61.1%) 最終学歴 就労状況 働いている 無職(求職中) 無職(求職中でない) 年間の世帯収入 全くない(0円) 1円以上100万円未満 100万円以上~200万円未満 200万円以上~300万円未満 300万円以上~500万円未満 500万円以上~700万円未満 700万円以上~1,000万円未満 1,000万円以上 (月額83.3万円以上) 答えたくない 1,701 (77.2%) 125 (5.7%) 378 (17.2%) 22 67 103 200 501 493 398 267 222 (1.0%) (3.0%) (4.5%) (8.8%) (22.0%) (21.7%) (17.5%) (11.8%) (9.8%) 22 711 (73.0%) 68 (7.0%) 195 (20.0%) 972 (81.9%) 79 (6.7%) 136 (11.5%) 消費者態度指数 問1 問2 PHQ-9 GAD-7 CES-D CES-D(ポジティブ) CES-D(ネガティブ) ポジティブ感情 ネガティブ感情 時点 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 時点0 時点1 時点2 時点3 表1-2 研究参加者の心理指標の得点の推移 研究1 研究2 単純合計 指数化後 単純合計 指数化後 平均 (sd) 平均 (sd) 平均 (sd) 平均 (sd) 11.4 (2.8) 46.4 (17.3) 10.4 (2.9) 40.0 (18.1) 11.5 (2.8) 47.1 (17.4) 10.4 (3.1) 39.9 (19.5) 11.5 (2.9) 47.1 (18.2) 10.1 (3.0) 38.1 (18.9) 10.3 (3.1) 39.2 (19.7) 2.9 (0.9) 47.9 (22.5) 2.7 (0.9) 41.6 (21.7) 2.9 (0.9) 48.4 (22.2) 2.7 (0.9) 41.8 (22.8) 2.9 (0.9) 48.5 (23.0) 2.6 (0.9) 39.5 (22.6) 2.6 (0.9) 40.6 (23.4) 2.9 (0.8) 46.5 (20.8) 2.6 (0.9) 40.8 (22.1) 2.9 (0.8) 47.0 (21.2) 2.6 (0.9) 39.8 (22.5) 2.9 (0.9) 46.8 (21.8) 2.5 (0.9) 37.8 (22.4) 2.6 (0.9) 39.7 (23.3) 4.2 (4.9) 9.7 (4.9) 4.5 (5.2) 9.2 (5.2) 4.3 (5.1) 9.5 (5.4) 9.0 (5.4) 2.8 (3.9) 7.0 (4.6) 3.1 (4.2) 6.6 (4.7) 3.0 (4.2) 7.0 (5.0) 6.7 (4.9) 12.9 (9.3) 24.4 (8.6) 13.6 (9.8) 23.5 (9.6) 13.1 (9.7) 23.7 (9.7) 22.6 (9.9) 6.4 (3.3) 8.2 (2.5) 6.5 (3.3) 8.0 (2.6) 6.4 (3.3) 8.1 (2.6) 7.8 (2.7) 6.5 (7.7) 16.2 (7.9) 7.1 (8.2) 15.4 (8.6) 6.8 (8.0) 15.6 (8.8) 14.8 (9.0) 18.2 (4.9) 17.8 (5.0) 18.0 (5.0) 研究3 単純合計 指数化後 平均 (sd) 平均 (sd) 10.1 (3.1) 37.9 (19.7) 10.4 (3.3) 39.8 (20.4) 10.3 (3.2) 39.4 (20.0) 2.5 (0.9) 2.6 (1.0) 2.6 (1.0) 38.6 (23.3) 40.1 (24.3) 40.2 (24.1) 2.6 (0.9) 2.6 (1.0) 2.6 (0.9) 38.8 (23.5) 40.0 (24.1) 40.2 (23.5) 8.7 (5.2) 8.0 (5.5) 7.6 (5.4) 6.0 (4.6) 5.4 (4.4) 5.2 (4.5) 16.4 (6.4) 16.3 (6.5) 16.1 (6.7) 研究1では、時点0が2015年9月24日~10月1日、時点1が2015年11月24日~30日、時点2が2016年1月25日~ 31日。研究2では、時点0が2015年6月4日~10日、時点1は7月23日~29日、時点2は9月3日~9日、時点3は10 月15日~21日。研究3では、時点0が2015年9月16日~28日、時点1は11月23日~29日、時点2は2016年2月22 日~28日。研究参加者数は、研究1が時点0が2273名、時点1が1980名、時点2が1847名。研究2が時点0が 974名、時点1が781名、時点2が738名、時点3が684名。研究3が時点0が1187名、時点1が805名、時点2が819 名。 23 図3-1 消費者態度指数、幸福度、メンタルヘルス(研究1) 14 2500 人数(右目盛) 12 抑うつ度(PHQ-9) 10 不安度(GAD-7) 8 2000 1500 幸福感 6 1000 4 500 2 0 0 図3-2 消費者態度指数とメンタルヘルス(研究2) 1000 14 人数(右目盛) 12 抑うつ度(PHQ-9) 800 不安度(GAD-7) 10 600 8 6 400 4 200 2 0 0 6.25 12.5 18.75 25 31.25 37.5 43.75 50 56.25 62.5 68.75 75 81.25 87.5 93.75 100 0 図3-3 消費者態度指数とメンタルヘルス(研究3) 14 900 12 10 人数(右目盛) 800 抑うつ度(PHQ-9) 700 不安度(GAD-7) 600 8 500 6 400 300 4 200 2 100 0 0 24 図4-1 暮らしの予想と幸福感、メンタルヘルス(研究1) 14 4000 人数(右目盛) 12 抑うつ度(PHQ-9) 10 3500 不安度(GAD-7) 3000 幸福感 2500 8 2000 6 1500 4 1000 2 500 0 0 悪くなる やや悪くなる 変わらない やや良くなる 良くなる 図4-2 暮らしの予想とメンタルヘルス(研究2) 14 1800 人数(右目盛) 12 1600 抑うつ度(PHQ-9) 1400 10 不安度(GAD-7) 1200 8 1000 6 800 600 4 400 2 200 0 0 悪くなる やや悪くなる 変わらない やや良くなる 良くなる 図4-3 暮らしの予想とメンタルヘルス(研究3) 14 1600 12 10 人数(右目盛) 1400 抑うつ度(PHQ-9) 1200 不安度(GAD-7) 1000 8 800 6 600 4 400 2 200 0 0 悪くなる やや悪くなる 変わらない やや良くなる 25 良くなる 図5-1 収入の増え方の予想と幸福感、メンタルヘルス(研究1) 14 人数(右目盛) 12 抑うつ度(PHQ-9) 不安度(GAD-7) 10 幸福感(右目盛) 8 4000 3500 3000 2500 2000 6 1500 4 1000 2 500 0 0 小さくなる 14 やや小さくなる 変わらない やや大きくなる 大きくなる 図5-2 収入の増え方の予想とメンタルヘルス(研究2) 人数(右目盛) 12 1800 1600 抑うつ度(PHQ-9) 不安度(GAD-7) 10 1400 1200 8 1000 6 800 600 4 400 2 200 0 0 小さくなる やや小さくなる 変わらない やや大きくなる 大きくなる 図5-3 収入の増え方の予想とメンタルヘルス(研究3) 14 1600 12 10 人数(右目盛) 1400 抑うつ度(PHQ-9) 1200 不安度(GAD-7) 1000 8 800 6 600 4 400 2 200 0 0 小さくなる やや小さくなる 変わらない やや大きくなる 26 大きくなる 表 2-1 消費者態度指数(及び、その各質問)と心理指標の関係(研究1) 従属変数 CES-D CES-D 肯定的感情 否定的感情 CES-D PHQ-9 GAD-7 幸福度 (ポジティブ項目) (ネガティブ項目) 消費態度指数 0.19** -0.24** -0.24** -0.07** -0.17** -0.07** -0.12** 0.05** (指数化以前) (0.03) (0.04) (0.04) (0.02) (0.04) (0.03) (0.02) (0.01) 問1 0.48** -0.60** -0.72** -0.28** -0.43** -0.11 -0.26** 0.13** (0.08) (0.12) (0.13) (0.06) (0.11) (0.07) (0.06) (0.02) 問2 0.48** -0.60** -0.62** -0.18** -0.44** -0.28** -0.31** 0.13** (0.08) (0.12) (0.13) (0.06) (0.11) (0.07) (0.06) (0.02) 問3 0.29** -0.43** -0.36** -0.09 -0.27* -0.12+ -0.17** 0.09** (0.08) (0.12) (0.12) (0.06) (0.11) (0.07) (0.06) (0.02) 問4 0.24** -0.26* -0.27* -0.03 -0.24* -0.07 -0.18** 0.07** (0.07) (0.10) (0.11) (0.05) (0.10) (0.06) (0.05) (0.02) (注)それぞれのセルごとに、消費者態度指数、または、各問いのいずれか1つを主たる独立変数としており、共変量として、時点ダミー(時点 0、時点 1、時点 2。 それぞれの時点は表 1-2 に記載。)がモデルに含まれている。いずれも固定効果モデルによって推計した。N=6100(グループ数は 2273)。+ p < 0.1; * p < 0.05; ** p < 0.01. 表 2-2 消費者態度指数(及び、その各質問)と心理指標の関係(研究2、研究3) 従属変数 CES-D CES-D CES-D PHQ-9 PHQ-9 GAD-7 GAD-7 (ポジティブ項目) (ネガティブ項目) 研究2か研究3か 研究2 研究2 研究2 研究2 研究3 研究2 研究3 消費態度指数(指数化以前) -0.69** -0.12** -0.58** -0.31** -0.19** -0.31** -0.15** (0.07) (0.02) (0.06) (0.04) (0.04) (0.03) (0.04) 消費態度指数問1 -2.17** -0.31** -1.87** -1.12** -0.56** -0.95** -0.47** (0.21) (0.07) (0.20) (0.12) (0.13) (0.11) (0.11) 消費態度指数問2 -1.48** -0.24** -1.24** -0.73** -0.28* -0.77** -0.25* (0.21) (0.07) (0.20) (0.12) (0.13) (0.11) (0.11) 消費態度指数問3 -1.25** -0.20** -1.05** -0.50** -0.44** -0.50** -0.28* (0.19) (0.06) (0.18) (0.11) (0.13) (0.10) (0.11) 消費態度指数問4 -0.96** -0.22** -0.73** -0.35** -0.37** -0.42** -0.32** (0.19) (0.06) (0.18) (0.11) (0.12) (0.10) (0.10) (注)それぞれのセルごとに、消費者態度指数、または、各問いのいずれか1つを主たる独立変数としており、共変量として、時点ダミー(研究 2 では時点 0~3、研 究 3 では時点 0~2。それぞれの時点は表 1-2 に記載。)が各モデルに含まれている。いずれも固定効果モデルによって推計した。研究 2 は、N=3177(グループ 数は 974)。研究 3 は、N=2811(グループ数は 1187)。+ p < 0.1; * p < 0.05; ** p < 0.01. 27 表 3-1 各心理指標を独立変数として消費者態度指数を従属変数した場合の両者の関係 研究1 研究1 研究2 研究2 研究3 研究3 肯定的感情 0.06** (0.01) 0.04** (0.01) 否定的感情 -0.04** (0.01) -0.02** (0.01) CES-D -0.03** (0.01) -0.06** (0.01) CES-D(ポジティブ項目) -0.04** (0.01) -0.11** (0.02) CES-D(ネガティブ項目) -0.03** (0.01) -0.06** (0.01) PHQ-9 -0.03** (0.01) 0.03+ (0.01) -0.09** (0.01) -0.04** (0.01) -0.06** (0.01) -0.04* (0.02) GAD-7 -0.07** (0.01) -0.05** (0.02) -0.11** (0.01) -0.07** (0.02) -0.07** (0.02) -0.03 (0.02) -0.07** (0.02) N 6100 6100 3177 3177 2811 2811 グループ数 2273 2273 974 974 1187 1187 心理指標間の調整 なし あり なし あり なし あり (注)心理指標間の調整がない場合、それぞれのセルごとに、1つの心理指標を主たる独立変数としており、共変量として、時点ダミ ー(研究 1 と 3 では時点 0~2、研究 2 では時点 0~3。それぞれの時点は表 1-2 に記載。)が各モデルに含まれている。心理指標間 の調整がある場合、表に列挙した心理指標を独立変数としており、共変量として、時点ダミーが各モデルに含まれている。いずれも 固定効果モデルによって推計した。+ p < 0.1; * p < 0.05; ** p < 0.01. 消費者態度指数は指数化していない。 28 表 3-2 各心理指標を独立変数として消費者態度指数問1(暮らしの予測)を従属変数した場合の両者の関係 研究1 研究1 研究2 研究2 研究3 研究3 肯定的感情 0.020** (0.003) 0.014** (0.003) 否定的感情 -0.011** (0.002) -0.006** (0.002) CES-D -0.012** (0.002) -0.021** (0.002) CES-D(ポジティブ項目) -0.019** (0.004) -0.030** (0.007) CES-D(ネガティブ項目) -0.009** (0.002) -0.021** (0.002) PHQ-9 -0.005 (0.004) 0.011* (0.005) -0.033** (0.004) -0.020** (0.005) -0.021** (0.005) -0.013* (0.006) GAD-7 -0.018** (0.004) -0.015** (0.006) -0.037** (0.004) -0.019** (0.005) -0.024** (0.006) -0.013+ (0.007) -0.018** (0.007) 6100 6100 3177 3177 2811 2811 N グループ数 2273 2273 974 974 1187 1187 心理指標間の調整 なし あり なし あり なし あり (注)心理指標間の調整がない場合、それぞれのセルごとに、1つの心理指標を主たる独立変数としており、共変量として、時点ダミ ー(研究 1 と 3 では時点 0~2、研究 2 では時点 0~3。それぞれの時点は表 1-2 に記載。)が各モデルに含まれている。心理指標間 の調整がある場合、表に列挙した心理指標を独立変数としており、共変量として、時点ダミーが各モデルに含まれている。いずれも 固定効果モデルによって推計した。+ p < 0.1; * p < 0.05; ** p < 0.01. 消費者態度指数の問1は指数化していない。 29 表 3-3 各心理指標を独立変数として消費者態度指数問2(収入の予測)を従属変数した場合の両者の関係 研究1 研究1 研究2 研究2 研究3 研究3 肯定的感情 0.019** (0.003) 0.013** (0.003) 否定的感情 -0.010** (0.002) -0.006* (0.002) CES-D -0.010** (0.002) -0.015** (0.002) CES-D(ポジティブ項目) -0.012** (0.004) -0.025** (0.007) CES-D(ネガティブ項目) -0.009** (0.002) -0.014** (0.002) PHQ-9 -0.013** (0.004) 0.000 (0.005) -0.022** (0.004) -0.008+ (0.005) -0.011* (0.005) -0.006 (0.006) GAD-7 -0.020** (0.004) -0.012* (0.005) -0.031** (0.004) -0.023** (0.005) -0.013* (0.006) -0.007 (0.007) -0.015* (0.007) N 6100 6100 3177 3177 2811 2811 グループ数 2273 2273 974 974 1187 1187 心理指標間の調整 なし あり なし あり なし あり (注)心理指標間の調整がない場合、それぞれのセルごとに、1つの心理指標を主たる独立変数としており、共変量として、時点ダミ ー(研究 1 と 3 では時点 0~2、研究 2 では時点 0~3。それぞれの時点は表 1-2 に記載。)が各モデルに含まれている。心理指標間 の調整がある場合、表に列挙した心理指標を独立変数としており、共変量として、時点ダミーが各モデルに含まれている。いずれも 固定効果モデルによって推計した。+ p < 0.1; * p < 0.05; ** p < 0.01. 消費者態度指数の問2は指数化していない。 30 表4-1 各群の消費者態度指数の推移と介入効果(研究2) マインドフルネス群 待機群 介入効果 (95% 信頼区間); p 値 時点 5分間認知行動療法群 5分間認知行動療法群 マインドフルネス群 5分間認知行動療法群 n mean (sd) n mean (sd) n mean (sd) -待機群 -待機群 -マインドフルネス 0 326 10.27 (2.80) 323 10.27 (2.92) 325 10.65 (2.97) 消費者態度指数 1 254 10.26 (3.06) 252 10.29 (3.26) 275 10.61 (3.04) 0.03 (-0.36,0.42); 0.88 0.06 (-0.32,0.45); 0.74 -0.04 (-0.43,0.36); 0.86 (全体) 2 240 9.91 (2.87) 238 10.07 (3.21) 260 10.28 (2.97) -0.02 (-0.41,0.38); 0.93 0.17 (-0.23,0.57); 0.4 -0.19 (-0.59,0.21); 0.36 0 326 2.65 (0.84) 323 2.60 (0.91) 325 2.74 (0.85) 問1「お宅の暮らし向きは、今後半年間に 1 254 2.67 (0.94) 252 2.61 (0.96) 275 2.73 (0.85) 0.04 (-0.09,0.17); 0.55 0.03 (-0.10,0.16); 0.66 0.01 (-0.12,0.14); 0.88 今よりも良くなると思いますか。」 2 240 2.55 (0.87) 238 2.55 (0.99) 260 2.63 (0.86) 0.01 (-0.12,0.14); 0.93 0.08 (-0.04,0.21); 0.2 -0.08 (-0.21,0.05); 0.24 0 326 2.56 (0.86) 323 2.62 (0.89) 325 2.71 (0.89) 問2「お宅の収入の増え方は、今後半年 1 254 2.54 (0.87) 252 2.59 (0.96) 275 2.65 (0.87) 0.03 (-0.10,0.15); 0.68 0.03 (-0.10,0.16); 0.67 0 (-0.13,0.13); 0.98 間に今よりも大きくなると思いますか。」 2 240 2.47 (0.86) 238 2.53 (0.95) 260 2.53 (0.88) 0.06 (-0.07,0.19); 0.34 0.09 (-0.04,0.22); 0.2 -0.02 (-0.15,0.11); 0.74 問3「雇用環境(職の安定性、みつけやす 0 326 2.56 (0.89) 323 2.58 (0.91) 325 2.60 (0.91) さ)は、今後半年間に今よりも良くなると 1 254 2.52 (0.94) 252 2.52 (0.94) 275 2.61 (0.94) -0.05 (-0.19,0.10); 0.52 -0.05 (-0.19,0.09); 0.49 0 (-0.14,0.15); 0.97 思いますか。」 2 240 2.46 (0.95) 238 2.45 (0.91) 260 2.53 (0.90) -0.04 (-0.19,0.10); 0.55 -0.05 (-0.19,0.10); 0.52 0 (-0.14,0.15); 0.96 問4「耐久消費財の買い時としては、今後 0 326 2.49 (0.87) 323 2.48 (0.84) 325 2.59 (0.84) 半年間に今よりも良くなると思います 1 254 2.52 (0.87) 252 2.57 (0.88) 275 2.63 (0.87) 0.01 (-0.13,0.15); 0.9 0.06 (-0.09,0.20); 0.43 -0.05 (-0.19,0.10); 0.52 か。」 2 240 2.43 (0.87) 238 2.53 (0.88) 260 2.58 (0.89) -0.04 (-0.18,0.11); 0.6 0.05 (-0.10,0.19); 0.5 -0.09 (-0.23,0.06); 0.24 (注1)太字は5%水準で有意なもの。 (注2)時点0は2015年6月4日~10日、時点1は7月23日~29日、時点2は9月3日~9日。 (注3)介入効果は各時点のダミー(時点0、時点1、時点2)、群(5分間認知行動療法群, マインドフルネス群, 待機群)、群と各時点の交差項、各変数の時点0 の数値、性別、年齢を独立変数にした混合効果 モデルによって推定した。消費者態度指数及びその各問いの得点は指数化していない。 31 時点 通常認知行動療法群 n 消費者態度指数 (全体) 0 1 2 0 1 2 0 1 2 0 1 2 0 1 2 397 223 241 397 223 241 397 223 241 397 223 241 397 223 241 mean (sd) 10.28 10.51 10.48 2.63 2.62 2.64 2.62 2.64 2.61 2.50 2.59 2.59 2.53 2.65 2.64 (3.11) (3.07) (3.21) (0.92) (0.91) (0.99) (0.92) (0.93) (0.94) (0.88) (0.89) (0.94) (0.85) (0.86) (0.83) 表4-2 各群の消費者態度指数の推移と介入効果(研究3) AI認知行動療法群 待機群 n 396 243 259 396 243 259 396 243 259 396 243 259 396 243 259 mean (sd) 10.01 10.23 10.28 2.53 2.60 2.64 2.52 2.56 2.60 2.46 2.50 2.48 2.50 2.58 2.56 (3.18) (3.34) (3.30) (0.93) (0.98) (0.98) (0.94) (0.97) (0.98) (0.93) (0.93) (0.95) (0.94) (0.90) (0.91) n mean (sd) 394 339 319 394 339 319 394 339 319 394 339 319 394 339 319 9.92 10.38 10.21 2.48 2.60 2.56 2.52 2.61 2.62 2.44 2.56 2.47 2.48 2.62 2.56 (3.15) (3.33) (3.13) (0.93) (1.00) (0.93) (0.96) (0.99) (0.91) (0.93) (0.90) (0.92) (0.89) (0.90) (0.90) 介入効果 (95% 信頼区間); p 値 通常認知行動療法群 -待機群 AI認知行動療法群 -待機群 通常認知行動療法群 -AI認知行動療法群 -0.25 (-0.64,0.14); 0.21 -0.13 (-0.52,0.26); 0.51 0.06 (-0.32,0.44); 0.76 0.09 (-0.30,0.47); 0.66 -0.31 (-0.72,0.10); 0.14 -0.22 (-0.62,0.18); 0.29 問1「あなたの世帯の暮らし向きは、今後 -0.12 (-0.25,0.01); 0.06 0.01 (-0.12,0.13); 0.93 -0.13 (-0.26,0.01); 0.06 半年間に今よりも良くなると思いますか、 -0.09 (-0.21,0.04); 0.19 0.03 (-0.09,0.16); 0.61 -0.12 (-0.25,0.01); 0.08 悪くなると思いますか。」 問2「あなたの世帯の収入の増え方は、 -0.08 (-0.21,0.05); 0.24 0.01 (-0.12,0.14); 0.86 -0.09 (-0.23,0.05); 0.2 今後半年間に今よりも大きくなると思いま -0.13 (-0.26,-0.00); 0.05 -0.03 (-0.16,0.10); 0.63 -0.1 (-0.23,0.03); 0.14 すか、小さくなると思いますか。」 問3「職の安定性、みつけやすさなどの雇 -0.05 (-0.18,0.08); 0.48 0.01 (-0.11,0.14); 0.85 -0.06 (-0.19,0.08); 0.39 用環境は、今後半年間に今よりも良くな 0.05 (-0.08,0.18); 0.45 0.03 (-0.09,0.16); 0.59 0.01 (-0.12,0.15); 0.83 ると思いますか、悪くなると思いますか。」 問4「耐久消費財の買い時としては、今後 0 (-0.13,0.14); 0.97 0.01 (-0.13,0.14); 0.91 0 (-0.15,0.14); 0.95 半年間に今よりも良くなると思いますか、 0.04 (-0.09,0.18); 0.54 0.04 (-0.10,0.17); 0.6 0.01 (-0.13,0.15); 0.93 悪くなると思いますか。」 (注1)太字は5%水準で有意なもの。 (注2)時点0は2015年9月16日~28日、時点1は11月23日~29日、時点2は2016年2月22日~28日。 (注3)介入効果は各時点のダミー(時点0、時点1、時点2)、群(通常認知行動療法群, AI認知行動療法群, 待機群)、群と各時点の交差項、各変数の時点0 の数値、性別、年齢を独立変数にした混合効果モ デルによって推定した。消費者態度指数及びその各問いの得点は指数化していない。 32