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IP-based RANの実現に向けて

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IP-based RANの実現に向けて
NEC 技報 Vol. 57 No. 2/2004
〈フォーラム論文〉
IP-based RAN の実現に向けて
Migrating to IP-based Radio Access: Why, When, How ?
*
*
Lindsay Frost Heinrich Stütgen
リンゼイ フロスト
永田 淳
Jun Nagata
**
ハインリヒ シュツットゲン
武次將徳
**
Masanori Taketsugu
要 旨
鬼頭英二
**
Eiji Kito
べきなのでしょうか?
現行のネットワークは,実績のある GSM のアーキテクチ
移動通信では今後マルチメディアなどのデータトラヒッ
ャをもとに,回線交換による音声通話を主な用途として設
クが大幅に増加すると予想されます。このため標準化団体
計されています。しかし,近年ではデータトラヒックが音
ではデータ通信と親和性の高い IP-RAN の検討が行われて
声トラヒックを上回る勢いで増加し,ほとんどのモバイル
おり,NEC も柔軟性,経済性に優れた分離アーキテクチャ
アプリケーションがインターネットとの接続を要求するよ
の提案を行っています。IP-RAN の実現に関しては VoIP の
うになってきています。また,多くの企業がギガビットイ
伝送効率が問題とされますが,シミュレーションを用いた
ーサネットを採用し,MAN(Metro Area Network)は
考察により,IP-RAN は現在のATM 網上に構築されたRAN
ATM 専用線より 30 ∼ 50 %も安く,固定電話でさえも IP を
よりも優れた構成にできることを示します。IP-RAN は2006
利用するようになってきています。このようななかで,ATM
∼ 08 年頃,ネットワークを新規構築するためか,もしくは
と IP のネットワークコストや管理の容易さなどを比較する
特定のエリアを改善したいと考えるオペレータによって,
と,IP 技術による新しいネットワークの構築が非常に魅力
既存のネットワークを補完する技術として導入されていく
的な選択肢になってきています。
と考えられます。
ではモバイルネットワークのインフラが IP へと置き換わ
ることは可能なのでしょうか?また,そのためにはどのよ
This paper gives an analysis of the technical and commercial advantages of IP-based RAN(IP-RAN), which
うな問題があるのでしょうか?それはいつ頃のことになる
のでしょうか?
improved delivery of multimedia services to the user.
本稿ではモバイルネットワークのインフラとして,IP 技
NEC proposes a distributed RNC architecture, which
術 に よ り UTRAN( UMTS Terrestrial Radio Access
provides easier deployment, better scalability and higher
Network)を構成した IP-RAN についての考察を行います。
availability, to the standardization bodies.
2.IP-RAN の実現
There are some questions about the transmission efficiency of VoIP over IP-RAN. By the simulation, we show
最初に IP-RAN によって意味されるものを明確にする必
the optimized IP-RAN can be configured to be more effi-
要があります。3G 携帯電話の標準化団体である 3GPP にお
cient than today’
s ATM transport network.
いては,少なくとも 3 つのバージョン(R’
99,Rel4,Rel5)
The operators would introduce such new technology
が議論されています。またよく一括りにされますが,それ
to build the mobile network newly, or to upgrading their
ぞれ独立した 3 つの技術として VoIP(Voice Over IP),IP
network for higher lodes in particular areas, in the 2006-
トランスポート(伝送路)
,そしてDistributed Architecture
(分離アーキテクチャ)があります。
08 timeframe.
1.まえがき
2.1
VoIP
現在の 3GPP-R’
99 ネットワークは,回線交換(Circuit
第 3 世代(3G)携帯電話のユーザを獲得し始めたばかりの
Switch : CS)を用いた音声通話で効率が良くなるように無
モバイルオペレータは,なぜネットワークの改良を考える
線プロトコルとトランスポートが設計されています。しか
*
NEC ヨーロッパ
NEC Europe Ltd.
**
モバイルネットワーク開発本部
Mobile Network Development Division
71
NEC 技報 Vol. 57 No. 2/2004
しそのようなネットワークでは CS トラヒックとマルチメデ
ィアアプリケーション(テレビ電話,音声付ホワイトボー
ド,マルチプレーヤーゲーム,Push-to-Talk など)を同期
させたり,統合的に扱うことは容易ではありません。した
がって,パケット交換(Packet Switch: PS)ドメインで音
声 通 話 を 行 う た め の VoIP は , IMS( IP Multimedia
Subsystem)が導入される Rel-5 以降の 3GPP アーキテクチ
ャで重要な役割を担うと考えられます。
もし VoIP を利用した音声通話が,伝送効率などの面か
らも魅力的であるならば,より多くの音声トラヒックが CS
ドメインから PS ドメインに移行し,それによって IP トラ
ンスポートへの需要が高まるでしょう。
VoIP の伝送効率については第 3 章で詳細に述べます。
2.2
図 1 RNC の機能分離案
Fig.1 Possible separation of RNC functionality into UPS and RCS.
IP トランスポート
IP トランスポートは,すでに Rel4 のオプションとしてあ
るアイディアです。管理され,信頼できる IP ネットワーク
が安価に利用可能な地域では魅力的な選択肢となりますが,
これまでのところ誰も採用していません。オペレータが実
績のある ATM インフラの使用を好んでいるからだと思わ
れます。これは IP ネットワークがさらに安く,より一般的
になることにより必然的に変わるでしょう。
2.3
Distributed Architecture
ATM はスイッチ型,IP はルーティング型のネットワー
クです。すなわち ATM はあらかじめ設定された帯域幅と
プライオリティを保証するのに対して,IP はある個所の障
害に対して耐性を提供することができる,という違いがあ
ります。さらに重要なことは,IP 技術を使用することによ
って RNC(Radio Network Controller)をモジュール化す
るための再設計が非常に容易になるという点です。このこ
Fig.2
図 2 IP-RAN のネットワーク構成
Backward-compatible IP-RAN architecture.
とは IP-RAN に関する議論の中心となっています。
RNC のモジュール化としては,シグナリングを扱う RCS
(Radio Control Server)と,トラヒックを扱う UPS(User
できるという長所もあります。UPS を Node-B の近くに配
Plane Server)という装置に分離することが考えられてい
置することにより,無線プロトコルによって多くのオーバ
ます。このような装置分離案,およびその長所は IP 技術を
ヘッドが付加された無線パケットをわざわざ遠く離れた「集
用いたメディアゲートウェイとゲートウェイコントローラ
中管理」の RNC に送る必要がなくなります。さらにソフト
の例としてよく知られています。各装置に機能をどのよう
ハンドオーバのためにマクロダイバーシティ状態にある UE
に配分するかについては現在 3GPP において議論の途中で
との間で送受信される冗長トラヒック(一般に全トラヒック
すが,現行の RNC よりも柔軟性が必要とされることでは合
の約 30 %とされています)も近くの UPS で処理することが
意されています。
できます。これらの効果により,バックホールネットワー
図 1 に現在考えられている機能分離の 2 つの案を示しま
す。このうち NEC は曲線で表される分離案を推奨していま
クのなかで UPS を通過したトラヒック量は約半分にまで減
少すると考えられます。
す。この案では,RCS はページングや無線チャネルの切り
また各装置が小規模で安価であるため,特別に負荷の高
替えなどの無線リソース管理を扱い,UPS はセルごとの無
いエリアの改善がより経済的に行えるようになります。さ
線インタフェースの終端を行います。このように機能を配
らに RCS の複数配置によってシグナリングも分散すること
置することで,各セルの独立性が保たれ,さらにシグナリ
が可能になれば,接続処理の遅延が減少するとともに,致
ングの分離により制御系と伝送系をおのおの個別に最適化
命的な障害のリスクも回避することができます。これらの
することができます。
要因も総合すると,都市間バックホールネットワークは 2
Distributed Architecture には,ユーザトラヒックを扱う
倍以上も効率的に活用できるようになると考えられます。
装置(UPS)を図 2 のように地理的に柔軟に配置することが
さらに進んだ IP-RAN の構成として UPS の機能すべてを
72
IP-based RAN の実現に向けて
Node-B に統合してしまい,ネットワークをシンプルにする
IP ヘッダー圧縮技術(Robust Header Compression:
という提案もあります。今はまだ何千もある Node-B のすべ
RoHC)を使用しない場合,約 52,000bps の帯域幅が必要に
てをそのような複雑な装置にすることは現実的ではありま
なります(3GPP-TR34.128 準拠の PS RAB の設定で,IPv6,
せん。しかし将来的にはワイヤレス LAN のアクセスポイン
RTP/RTCP 使用)。これは ATM の支持者が,「VoIP は使
トのような「インテリジェント Node-B」が登場するかもし
い物にならない」と結論を下す理由でもあります。
れません。
しかし Iub 上では現状のままで RoHC を使用することが
図 2 では現在のネットワークからのより現実的なマイグ
でき,それにより帯域を約 38,000bps に減らすことができま
レーションとして UPS が R’
99 ネットワークと互換性を持つ
す。さらにモバイル端末に RoHC を実装し,無線インタフ
ことを示しています。ただし,この図はどのノードをどこ
ェース上でも適用可能になると,約 17,000bps まで帯域を
に配置しても良い一般的な IP ネットワークとは多少異なり
縮小させることができます。ただしこの値は RTP の制御部
ます。なぜならば 3G ネットワークのページングの制約によ
分である RTCP が不用意に生成されると,著しく増加して
り,Node-B はあらかじめ設定された 1 つの UPS によって制
しまいます。そのためオペレータはネットワークのなかで
御されなければならないため,関係が決められてしまうか
RTCP がどのように生成されるか注意する必要があります。
らです(Node-B : UPS = n : 1)。これは現行のネットワ
さらに話はこれで終わりではありません。多数のユーザ
ークでの Node-B と RNC の関係も同様です。しかし今後,
からのランダムな到着間隔の音声パケットを多重する場合,
複数の UPS で分散して 1 つの Node-B を制御することが可
すべての帯域幅が常に使用されているわけではないからで
能となれば(Node-B : UPS = n : m)
,RNC がすべてを集
す。多くの ATM ネットワークでは正しい設定が分からな
中管理している現在のネットワークよりも,耐障害性や負
いか,もしくは容易ではないため,AAL2 に統計多重化が
荷分散にすぐれた構成にすることもできます。
許可されていません。しかし IP ネットワークでは統計多重
このようなネットワークには特別なトポロジーは仮定さ
化は生来の基本的なものです。したがって,現在の ATM
れていません。「スター型」や「バス型」だけでなく,「マル
ネットワークの設定で E1 リンクの使用率が「飽和する」の
チリング型」の MAN や「メッシュ」トポロジーなども容易
はほぼ 138 ユーザ(=2048×1024/15200)と考えられますが,
に利用することができます。
IP ネットワークでは 200 以上のユーザを受け入れることが
ではユーザは IP-RAN によってどのような恩恵を受ける
できます(図 3 参照)。
でしょうか?オペレータが現在のネットワークに過度の負
図 3 に VoIP のユーザ数と E1 リンクの使用率の関係を示
担をかけていないかぎり,初めのうちはほとんど変化を感
します。ここでは各ユーザの有音率を 50 %と仮定していま
じないでしょう。
す。また Node-B と UPS の間の IP ネットワークでは最大
しかし建物内のカバレージを改善するためにオペレータ
20ms までの遅延を許容することを仮定していますので,そ
がこの新しい技術を使用したときに,ユーザは明らか良く
れより遅れたパケットはバッファあふれなどにより廃棄さ
なった通信能力や呼損の少なさなどを感じることができる
れることになります。このようにして失われたパケットの
ようになります。そして,ATM トランスポートでの回線
割合を図 3 の右側の図に示します。この割合は図のように
交換によって音声通話を提供し続けるオペレータでは,マ
E1 リンクの使用率が 90 %以上になると急激に増加します。
ルチメディア通信において不十分なパフォーマンスしか得
また RoHC が完全に実装された場合は,劇的な効果がある
られないことに気付くでしょう。
ことが分かります。
3.IP-RAN の伝送効率
この結果を ATM ネットワークの結果と比較する場合,
有音率は半分以下であるにもかかわらず ATM では常に完
将来的にはマルチメディア通信が主流になりますが,今
全な帯域幅を確保してしまいますが,IP では未使用の帯域
後しばらくは音声通信が収入の多数を占めると考えられま
を他のパケットが使用できる,ということも考慮しなけれ
す。したがって音声を扱う場合においても,IP-RAN の伝
ばなりません。したがってこれでは「同一条件での比較で
送効率が ATM トランスポートよりも著しく悪くはならな
はない」と思われるかもしれません。しかし AAL2 に統計
いように考慮されなければなりません。
ここでは PS(IP)での VoIP を,CS(ATM)での音声トラ
ヒックと比較してみます。結論から先に言えば,最適化さ
れた VoIP は,現在の ATM よりも効率的となります。
多重化が行われていない以上,この結果が,各システムが
「実際に」運ぶことのできる能力の比較となります。
当然ですが,E1 リンクへ 230 人近い VoIP ユーザを受け
入れれば,ある程度のパケットロスが発生します(図 3 では
現在,3G 携帯電話では音声に 12.2kbps の AMR コーデッ
約 1 %)。しかし VoIP アプリケーションのテストでは,数
クを使用しており,端末で有音時に 244 ビット(Octet align
パーセントのランダムなパケット損失はユーザに影響を与
後,31 バイト),無音時には 39 ビット(同 5 バイト)のパケ
えないことが示されています。なぜなら,この程度の損失
ットが 20ms ごとに生成されます。
では,すべての IP ヘッダーを再送する必要がある非常に重
VoIP で同じ 31 バイトの音声ペイロードを運ぶためには,
要な RoHC パケットが失われる可能性は 0.01 %未満にしか
73
100
10
80
8
Packet Loss (%)
E1 link utilization (%)
NEC 技報 Vol. 57 No. 2/2004
60
40
Full Header, OPNET
Full Header, analytical
RoHC Header, OPNET
RoHC Header, analytical
20
0
50
Fig.3
100
150
200
Number of UEs
250
Full Header, OPNET
Full Header, analytica
RoHC Header, OPNET
RoHC, analytica
6
4
2
300
0
50
100
150
200
Number of UEs
250
300
図 3 VoIP のユーザ数と E1 リンクの利用率およびパケット損失の割合
Filling of E1 2048 kbps IP link by increasing number of VoIP users (UE), assuming (a) worst-case header lengths
and (b) full RoHC. Simulated using OPNET (symbols) and analytical expression (lines).
などのネットワークが安価に利用可能なある程度発展した
国が最適です。これは一般的に現在ライセンスを持ってい
ないヨーロッパ諸国の多くに当てはまります。これらの国々
ではすでにユーザはマルチメディアやデータ通信を使用す
る準備ができています。
これと対極にあるのが,たった今 R’
99 のネットワークを
整備したばかりの既存の 3G オペレータです。彼らはデータ
図 4 E1 リンクで許容可能な VoIP チャネル数の比較
Fig.4 Approximate number of voice channels in E1 link,
for different technologies.
通信のトラヒックが大幅に増加しないかぎり,現在のネッ
トワークを効率的に利用したいと考えるはずです。おそら
く彼らが最初に新しい技術を使用するのは,空港,ショッ
ピングセンター,オフィスビル,ホテル,あるいは駅など
ならないからです(このパケットが失われると,あきらか
のような狭い範囲に人が集中するエリアとなるでしょう。
にユーザが知覚できる120ms 以上の中断が生じます)
。RoHC
このような場所では既存の IP インフラが整備されている可
がなければ E1 リンクでは 74 ユーザ程度しか許容できませ
能性が高く,また小規模な装置である RCS/UPS はコスト
ん。したがって VoIP に RoHC が不可欠のものであることは
的にも有利であるため非常に魅力的だからです。
明らかです。
以上をまとめて,図 4 に E1 リンクで受け入れることので
きるユーザ数の比較を示します。
このように IP-RAN は大規模な既存のネットワークのな
かに小さな「スポット」として組み込まれ,統合されていく
形で発展していくものと予想されます。
ATM はまだ改善することができます。しかし結論とし
では既存の R’
99 インフラが IP-Node-B(R’
99Node-B+
て,私達の提案する IP-RAN は,データ通信だけでなく音
UPS)や IP-RAN に置換わるのはいつ頃になるでしょうか?
声通話においても,少なくとも現在の ATM ネットワーク
より効率の良い構成にできると考えます。
4.IP-RAN へのマイグレーションシナリオ
オペレータにとってはどのような IP-RAN へのマイグレ
ーションが最適なのでしょうか?それは以下のようなオペ
レータの分類によって異なります。
それは R’
99 の Node-B の寿命が尽きたときや,修理と比
較して置換のほうが経済的であるとき,あるいは現在の
Node-B の設計上の限界を超えるような改良が必要となった
ときだと考えられます。特に 1 つの UPS で制御可能なエリ
アのNode-B すべてを同時に交換可能となったときが有力で
す。
ただし,新しい UPS のエリア内部から,それを囲む既存
(a)現在 R’
99 ネットワークを保有しているオペレータ
の Node-B へのハンドオーバは,現行ネットワークの RNC-
(b)これから新たにネットワークを構築しようとしてい
RNC 間と同様のシグナリングオーバヘッドが必要になるか
るオペレータ
(c)建物内などの特別なエリアにサービスを提供,また
は改善をしようとしているオペレータ
これまでに述べた利点を考えれば,IP-RAN を導入する
もしれません。したがってユーザがほとんど「境界」にいな
いようにエリアを設計することが重要です。
まとめると,IP-RAN へのマイグレーションは,建物内
などの人々が集中する場所や,既存のネットワークが設置
ために適しているのは ATM インフラなどの既存のネット
されていない特定のエリアなどを「スポット」的にカバーす
ワークを持たない「新規参入オペレータ」です。とくにMAN
ることから始まると考えられます。
74
IP-based RAN の実現に向けて
5.今後の課題
筆者紹介
標準化団体において IP-RAN に関するオペレータやベン
ダーの合意が得られるまでには,まだかなり長い道のりが
あります。たとえば,図 1 に示された RNC の分離に関する
いくつかのアイディアの間にも数多くのトレードオフがあ
リ ン ゼ イ
フロスト
Lindsay Frost
1999 年,NEC 入社。現在,
NEC Europe Network Laboratories Heidelberg Laboratories, 3G Technologies group,マネージャー。
ります。したがって 3GPP では辛抱強く標準化を進める必
要があります。オペレータが関心を示すのは,おそらく彼
らが R’
99 ネットワークのキャパシティを心配し始めたとき
だと思います。しかし彼らの興味を引かなければこれらの
努力は無駄に終わってしまうでしょう。
VoIP のための重要な要素である IMS は Rel-5 で部分的に
ハ イ ン リ ヒ
シュツットゲン
Heinrich St ü ttgen
1997 年,NEC Europe
Network Laboratories Heidelberg Laboratories 設
立。現在,NEC Europe Network Laboratories Heidelberg Laboratories,ジェネラルマネージャー。
導入されるでしょうが,ユーザがその魅力に対価を払って
も良いと気づくまでには多少の時間がかかるかもしれませ
Jun Nagata
ん。不幸にも,その機能が「凍結」された Rel-5 のなかでさ
永田
え,SIP のシグナリングの最適化についていまだに議論が
行われています。このことが SIP 対応のモバイル端末の導
なが た
じゅん
淳 2002 年,NEC 入社。現在,モバ
イルネットワーク事業本部モバイルネットワーク
開発本部勤務。
入を遅らせてしまうかもしれません。
さらに,最終的な問題はワイヤレス LAN との相互接続に
関するものです。建物内部や都市部などの IP-RAN を導入
するために最適なエリアは,ワイヤレス LAN のホットスポ
ットにとっても最適な場所です。したがって相互接続の必
Masanori Taketsugu
たけつぐ
まさのり
武次
將徳
1988 年,NEC 入社。現在,モバイ
ルネットワーク事業本部モバイルネットワーク開発
本部技術マネージャー。
要性は非常に重要です。しかしこれを達成するためには
3GPP においてまだ多くの仕事が必要となります。
6.むすび
IP-RAN はネットワークの導入・維持のコストを低減す
Eiji Kito
き とう
えい じ
鬼頭
英二 1987 年,NEC 入社。現在,モバイ
ルネットワーク事業本部モバイルネットワーク開発
本部本部長代理。
るために非常に有効です。しかしすでに ATM ネットワー
クを保有しているオペレータは,既存の設備を最大限に活
用したいと考えるでしょう。そのため IP-RAN の導入を急
ぐことはしないと思います。
IP-RAN の導入に対する要求は,都市部で人が集中する
ようなデータ通信量の多い場所から高まっていきます。し
かしIMS を使用するモバイル端末の普及の遅れが,IP-RAN
の導入を促す圧力を減少させてしまうことを考慮しておか
なければなりません。
筆者らは,IP-RAN の商業的な利点は 2006 ∼ 08 年の間に
顕著になり始めると考えています。したがってオペレータは
事前に試験を行っておく必要があります。またベンダーはそ
れまでに準備をしておかなければならないと考えています。
謝 辞
図 3 および図 4 は X.Perez,J.Noguera,A.Banchs 各氏の
研究成果をもとに作成されました。また各氏には本稿の執
筆にあたっての助言もいただきました。ここに感謝いたし
ます。
*
この論文は,ITU TELECOM WORLD 2003 に投稿された論文を基に作成
したものです。
75
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