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アニメと著作権 ~アニメビジネスの核心構造を探る

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アニメと著作権 ~アニメビジネスの核心構造を探る
アニメを教える教員とアニメを学ぶ学生のためのアニメ人材養成セミナー
「日本のアニメを学び尽くす」~歴史からビジネスまで
講演記録テキストシリーズ ビジネス編④
アニメと著作権
~アニメビジネスの核心構造を探る〜
宮下 令文(株式会社小学館集英社プロダクション 総務部長)
平成 25 年 3 月
文部科学省 平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」
アニメ・マンガ人材養成産官学連携事業/アニメ・マンガ人材養成産官学連携コンソーシアム
アニメ分野職域学習システム実証プロジェクト/カリキュラム検討委員会産業論部会
はじめに:この講演記録テキストシリーズについて
平成24年度、日本の産業・文化として成長を期待されるアニメ・マンガを担う人材の養成事業が、
文部科学省の「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」の一つとして実施
されることになりました。この事業は、日本工学院専門学校・日本工学院八王子専門学校・東京工
科大学が代表校となり、産・学の参加協力を得て、「アニメ・マンガ人材養成産官学連携事業」とし
て、「アニメ・マンガ人材養成産官学連携コンソーシアム」により進められました。アニメ分野では、
コンソーシアムにアニメを担う人材の養成推進策の検討のためのアニメ分科会を置き、この分科会
での検討と連動して、アニメ分野職域学習システム実証プロジェクト事業では、カリキュラム検討委
員会で学習すべき要素の抽出・検討やセミナーの試行などを進めました。この中でカリキュラム検
討委員会産業論部会歴史ビジネス・ワーキングでは、アニメの歴史からビジネスまで、アニメ産業
を理解し、アニメ産業で働くために最低限知っておいてほしい知識を学べるセミナーを企画・実施
しました。この講演記録テキストシリーズは、このセミナーをもとに講演内容をテキストとして編集し
たものです。アニメを教える教員や、アニメを学ぶ学生のために活用いただければ幸いです。
シリーズ
テーマ
講演者(筆者)
歴史編①
『なぜアニメ産業は今の形になったのか
~アニメ産業史における東映動画の位置付け~』
山口 康男
歴史編②
『アニメの3大源流とその系譜~東映・虫プロ・タツノコ~』
原口 正宏
歴史編③
『アニメはなぜ面白いのか~アニメリテラシーを考える~』
氷川 竜介
歴史編④
『コンピュータグラフィック史の把握~CGの過去と未来~』
上原 弘子
歴史編⑤
『アニメーションの心理分析
~深層意識に潜む作り手の意図~』
横田 正夫
ビジネス編①
『アニメと産業とメディア戦略 アニメとメディアの共進化』
森 祐治
ビジネス編②
『アニメと産業とメディア戦略
~アニメ作品の海外契約状況~』
森 祐治
ビジネス編③
『アニメにおけるキャラクタービジネス戦略
~キャラクター志向の時代~』
陸川 和男
ビジネス編④(本書)
『アニメと著作権~アニメビジネスの核心構造を探る~』
宮下 令文
ビジネス編⑤
『数字から読み解く日本のアニメ産業』
増田 弘道
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目次
B-④ 映像制作の上で必要な権利処理
B-④-1 タイトル
B-④-2 原著作物の権利処理(著作権法第 27 条、28 条)※制作では 21 条も
B-④-2-ア 原著作物
B-④-2-イ 脚本の権利処理(著作権法第 27 条、28 条)
B-④-3 監督
B-④-4 実演家(俳優、声優、ダンサー)
B-④-5 音響
B-④-6 音楽原盤
B-④-7 音楽著作権
B-④-8 その他のチェック事項
B-④-9 製作委員会契約についての注意事項
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B-④ 映像制作の上で必要な権利処理
アニメーションの制作で、どんな権利処理が必要なのか、製作するアニメーショ
ン映像の種類は劇場公開用、テレビ放映用、DVD 用(OVA 用)、インタラクティ
ブ送信用等があります。
B-④-1 タイトル
映像作品のタイトルは、著作物にも商標にも該当しません。しかし、二次利用で
商品化した場合、海外(特に米国)では、タイトル訴訟がおこることもあります。
タイトルのリサーチを怠らない事が重要です。
日本においては例えばマンガ。アニメーションにするところまでは原作のタイト
ルでも問題ありません。しかしアニメーション作品を商品化した場合、タイトルが
そのまま商標になってしまいます。原作のマンガ家がそこまで考えてタイトルを付
けていることはまずないのでそのまま商品化すると、商標権者はどんなことを訴え
てくるかわかりません。アメリカでは調査会社に依頼してトレードマークのサーチ
とタイトルサーチの両方をやっておく。日本国内でも最初からタイトルをアニメ化
する時から安全なものに変えてしまうのが大事です。例えば『メジャー』(’04-10)
の場合は『MAJOR DREAM』というタイトルに一連表記にした。『MÄR - Märchen
Awakens Romance』(メル)という作品はタイトルが短く商標をお持ちの方がた
くさんいた。タイトルそのものを変えて『MÄR-メルヘヴン-』(’05-07)にして、
アニメーション化し、それに基づいて商品化した。『名探偵コナン』(’96-)の場
合、アメリカ人は「コナン」というと、ほとんどの人がアーノルド・シュワルツェ
ネッガーの「コナン・ザ・グレート」を連想します。タイトル訴訟の可能性がある
ので、『CASE CLOSED』というタイトルになりました。
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B-④-2 原著作物の権利処理(著作権法第 27 条、28 条)※制作では 21 条も
B-④-2-ア 原著作物
原著作物は何になるか。マンガ,小説、ゲーム(テレビゲーム、カードゲーム)
キャラクターデザイン,玩具。監督が原著作者や脚本家である場合もある。それぞ
れ注意するところが違ってきます。
どこの部分にあたるか? 例えばマンガや小説を原作とする場合。コミックなら
何巻から何巻を元にアニメーションを起こすか。小説なら何章から何章かなどとい
う原作の範囲もあります。例えば『メジャー』という作品はテレビ用アニメーショ
ン、劇場用アニメーションと OVA の 3 つある。それぞれ原作の該当する巻数が違
います。
ゲームやキャラクターの場合はどうするか? ゲームは、キャラクターや原画、
ストーリーにあたるもの世界観まで許諾を得ておく事が重要です。またストーリー
に当たるものが、インタラクティブに変わっていかないものもあります。それも必
ず許諾の対象としてライセンスをしてもらう。例えば、これは単なるアイディアだ
から原作使用契約の中に入れなくていいという発想をしないで、創作性が少しでも
あるものに関しては原作使用契約の中に入れてしまう。これがトラブルを避ける一
番の早道です。またキャラクター原画の場合。ゲーム会社さんの方で原画を起こし
ているケースとアニメーション制作サイドで原画を起こすケースと 2 通ります。制
作会社の立場からなら、原画をゲーム会社の方で起こしたのであれば必ず原作使用
契約の中に入れておく。外部委託してキャラクター原画を描いてもらう場合、使用
許諾を得るか、著作権譲渡という形で必ず権利を確保しておくことが重要です。日
本の場合は原作使用契約というと、著作権では許諾契約が普通です。著作物を利用
する時は著作者から許諾を受けるか、あるいは権利そのものを譲渡してもらうか、
このどちらかになります。日本の場合ほぼ 90%以上は著作権の権利許諾です。アメ
リカの場合は原作権については権利そのものを買ってしまい譲渡してしまうという
ケースが多い。脚本も同様です。
・複製権(著作権法第 21 条)、翻案権(著作権法第 27 条)、著作権法第 28 条の
許諾について
著作権法には色んな権利があります。代表的なのは著作権法第 21 条の複製権で
す。英語のコピーライトの語源になっている権利です。それから著作権法第 27 条
の翻案権。著作権法第 28 条の二次的著作物の利用権です。
・一次利用と二次利用の条件(著作権法第 28 条)
一次利用とは、例えばテレビ放送用でしたら日本国内なのか海外なのか、最初に
どこの放送局にかけるのか、その系列局はどこなのか、BS まで入れてしまうのか、
ということまで全部書きます。それで一次利用の範囲を決めて、それに対する対価
はいくらか決めていきます。放送回数、放送期間、放送形態の種類(本局、局の系
列局、それからローカル局が入るかどうか、地上波、それから衛星放送とかどこま
でやるか、これからは同時再放送(サイマル放送)で有線放送もされるので含める。
IP マルチキャスト放送(総務省が推進しているインターネット網を使ってサイマル
で放送するもの。設置費用がかからず、安価でできる)というのは著作権法上の権
利で、自動公衆送信権に当たります。放送権とは別の権利になります。平成 9 年改
正により放送権、有線放送権、自動公衆送信権の 3 つの権利に分かれています。必
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ずこれらも許諾を得ておきます。
それから制作をするというのも許諾の対象となります。この中で言うと複製権や
翻案権です。原著作物、マンガの著作物を翻案してアニメーションという別の二次
的著作物を作り上げていく場合です。最近は例えば 1 年以内に制作しない場合は契
約は解除されることもあるので、注意していただきたいと思います。
独占許諾。単なる許諾になりますと基本的には非独占になりますので、非独占だ
と他の会社でも同じ原著作物のマンガを使ってアニメーションを作ることができて
しまいます。独占許諾の期間などにも注意しなければならないです。
二次利用について。これは著作権法第 28 条の権利で、二次的著作物の利用権と
いうものを原著作者が持っています。つまり、出来上がったアニメーションを利用
することについては原著作者の許諾が無いとできない、ということです。ここは非
常に想像力の要るところです。できたらあらゆる利用、マルチユースができるよう
にしておき、その時の条件を必ず入れておく。私が勧めるのは、制作する前にこの
辺の条件を全部クリアしておく。ある程度結果が出てからでは遅いこともあります。
宣伝で注意する事。宣伝は大体使用料なしで、という形で契約書に書くケースが
多いです。番宣(番組宣伝)する場合は番組宣伝用素材を作ります。例えば宣伝用
素材を作ることと放送することに使用料はかからない、ということを必ず書いてお
く。ビジネス側で言うと、そんな宣伝のために使用料かからないというのを考える
のは普通だと言いますけれども、著作権法上はひとつの著作物という作品になりま
す。その利用も必ず書いておく。それによってトラブルを防止しておくということ
になります。その際の使用料の決め方の参考が日本文芸家協会のネットで公開され
ています。ちなみに日本文芸家協会にはほとんどマンガ家は入っておりません。こ
の協会は小説家の方とかが多く、マンガ家の方は直接契約するか、出版社を通して
契約する形になるのではと思います。
※参考➡日本文芸家協会の条件
http://www.bungeika.or.jp/procedur.htm
二次利用の種類について。テレビ用だったら「DVD 化」や「動画配信」「上映」
ですね。最近はなくなってきたのが航空機内上映。また、小さい子向けのアニメー
ションは夏休みにホテルで上映会があります。それからホテルの館内放送、こうい
うものはいったいどれに当たるのか、放送という概念ではないと思うので、多くの
場合に「上映」という概念に入ると思います。珍しい例だとカラオケ映像のライセ
ンスというのもあります。オープニングの映像、エンディングの映像をカラオケ会
社さんにライセンスする。これは恐らく上映という形でやっているのではないかと
思います。人によってこれは商品化じゃないの、という方もいますので、具体例を
出して、例示して書いてしまうのがひとつの手です。
「商品化」について。多くの場合は原作使用契約のいちばん範囲が広いのが商品
化です。商品化っていう概念がなかなか固まってなく定義がしづらいから難しい。
例えばケータイの待ち受け画面。あるいはスクリーンセーバーとかネットゲーム、
色んなものが出てきています。逆にいうと非常に想像力の要るところということで
す。
「海外販売」。テリトリーをどこにするか。細かいところでいうと、航空機内の
上映において国際線はどうするのだというのがあります。海外利用に当たるのか、
国内利用に当たるのか?こういう場合には、例えば航空会社の国籍で分ける。海外
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国籍の航空会社であれば海外利用の扱いにする等、どこに属するのかわからないと
いう状態は避ける。
劇場用の場合は逆に、最初に行われるのは「DVD 化」です。大体6ヶ月くらい経
ったら映画配給会社さんから OK が出ますので DVD を出します。放送は大体 1 年
後ですとか。これは映画配給会社との間で契約をして、その期間はちょっと影響が
あるのでやめて下さいと、そういうことを契約しておくということです。英語でホ
ールドバックと言います。
「配信」だったら上映開始から1年後とか、そういう決め方をしていきます。
「商品化」というのが行われますが、注意しなくてはいけないのが、テレビ用のア
ニメーションをやった後、別の製作委員会で劇場用のアニメーションを作った場合
に商品化で分配する対象の方が変わったりします。商品化の場合はっきり区切りが
できませんので、テレビ用アニメーションの商品化なのか劇場用アニメーションの
商品化なのかよくわからないというケースが出てきます。劇場版でも「海外販売」
は出てきますので、テリトリーや条件を詰める、二次利用の方も「独占条件」「契
約期間」というのを入れておく。
原著作者というのは英語では Classical Author という言い方をします。Author
というのは著作者です。それに対して Modern Author がいます。代表的なのは監
督です。
B-④-2-イ 脚本の権利処理(著作権法第 27 条、28 条)
脚本というのは非常に重要なパートになります。位置づけ的に言うと、原著作者
と脚本家というのは同じ位置づけになります。同じ Classical Author です。という
ことは脚本家の許諾がないと二次利用ができないということです。ここを制作スタ
ッフの人たちは軽んじているケースが多いので注意して下さい。脚本の場合は、著
作権等管理事業法に基づく団体として日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、こ
の2つが脚本家の団体としては有名です。著作権管理団体と言います。脚本の権利
処理の特色ですが、一次利用に関しては、脚本家個人と契約を結びます。ところが
二次利用の支払いは連盟になります。日本脚本家連盟あるいはシナリオ作家協会に
支払う。権利者が一次利用と二次利用とで変わってしまうのです。一次利用の範囲
を明確にしておく。多くの場合は制作と放送までになると思います。それ以上は日
脚連の方に支払っていきます。日本脚本家連盟とかシナリオ作家協会の方で脚本を
回していく場合に良い点は強制許諾をして使用料規定に基づいて使用料を払ってい
る限りは必ず許諾が出ます。使用料規定に基づいて使用料を払ったのに許諾が出な
いことはあり得ないです。注意が必要なのはフリーの脚本家の方です。ほとんど原
作者と同じような細かい契約になります。二次利用の条件を何も詰めないままです
と、ある日突然クレームがつく可能性があります。
日本脚本家連盟の場合ですが、管理の約款があります。会員の脚本家の方と脚本
家連盟との取り決めがあります。これは公表されています。その中に「上演」と「出
版」が信託の二次利用の権利譲渡の対象から外れていまので要注意です。例えば、
アニメーションを元にしたアニメフィルムコミックという出版物があります。アニ
メを元にした本です。アニメのストーリーは脚本家が書いたものです。それに基づ
いて出版物ができている。この場合、この脚本の使用料を日脚連に払おうとすると、
信託の二次利用の権利譲渡の対象から外れているので直接ご本人に払うしかない、
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ということです。ということは二次利用に関しても、条件を決めてこういう項目に
関しては必ず契約の中に入れておくということが大事です。それから最近はごく稀
ですが、アニメーションを起こしてから小説ができたりします。脚本が小説になっ
ているような商品ですから、主になるのは脚本家の方ということになります。
脚本家の名前を出す場合は人格権に注意すること。著作者人格権というのは3つ
あります。公表権、氏名表示権、それから同一性保持権という権利です。我々は必
ず脚本家の名前を表示します。表示する場合どのような名前を使うか。ペンネーム
なのか、本名なのかを契約書で決めてしまう。そうすると後々非常に楽だというこ
とです。
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B-④-3 監督
監督は所属のスタイルによって違います。元請け制作会社所属なのか下請け制作
会社所属なのか、フリーなのか等です。日本映画監督協会のホームページに二次利
用の追加報酬一覧表というのが掲載されています。使用料の参考して下さい。
著作権法第 16 条映画の著作物の著作者の規定(例外:著作権法第 15 条 職務著
作)。映画の著作物の著作者というのは著作権法第 16 条に書いてあります。作品
全般に創作的に寄与した人と書いてありますので、全般的に寄与した人というと、
監督かプロデューサーになります。ところが映画製作に参加したところで映画製作
者に著作権が移転します。これが今の著作権法の決まりになっています。
著作権法条第 29 条第1項。映画の著作物の著作者から映画製作者に著作権は帰
属。人格権のみ著作者に残る。同一性保持権、氏名表示権については要注意する。
例外は著作権法第 15 条「職務著作」である。これらのことで注意していただき
たいのは人格権です。人格権とは、公表権とか氏名表示権、同一性保持権などです。
会社が人格権を持つというケースはあります。その代表例が著作権法第 15 条の「職
務著作」です。サラリーマン監督だった場合、従業員であった場合は著作権法第 15
条の対象なります。人格権だからといって法律上の自然人に帰属しなければいけな
いということはないです。
映画製作者とは著作憲法第2条第1項第 10 号 映画の著作物の制作に発意と責
任を有する者をいいます。著作権法第2条第1項第 10 号で映画製作者というのは
誰か、というのが書いてあります。「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者
をいう」。私見ですが簡単に言ってしまいますと、リスクマネー(前払い)を誰が
出しているのか、これが一番の大きなポイントです。そこが「発意と責任を有する」、
最終的なリスクを負っているということではないかというのが私の考えです。アニ
メーションの制作会社になることが非常に多いです。
先ほど Modern Author と書きましたけど、ここまでがいわゆる Author、著作者
になります。
※ 参考➡日本映画監督協会
http://www.dgj.or.jp
※ 参考➡二次利用別追加報酬一覧表
http://www.dgj.or.jp/director_copyright_g/index_4.html
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B-④-4 実演家(俳優、声優、ダンサー)
実演家の著作隣接権についてです。これは法律上の言葉になります。アニメーシ
ョンの話なので、主に声優です。声優の権利はどういう権利があるかは今の著作権
法上では、「ワンチャンス主義」というのが採られています。何がワンチャンス主
義かというと、出演してギャラが決まったところで、二次利用の時は権利行使がで
きない、一回しか交渉のチャンスがないという意味でワンチャンス主義と言われて
います。権利としては少し狭められています。実演家の場合は著作権ではなくて著
作隣接権になります。声優は出来上がったシナリオを元にそれを実行してくる人た
ちですので著作隣接権という権利になります。
声優にはランクがあります。アニメーションの場合は、音響制作会社さんが肩代わ
りして契約してくれますので、非常にやりやすい環境になっていて、二次利用もし
やすいのが特色です。声優の手配、権利処理もやっている音響制作会社と契約する
ことによって、ワンチャンス主義を修正している、補っているというのが現状では
ないかと思います。ちなみに音響制作というのは 3 つあります。効果音の録音。そ
れから声優の録音。それから音楽の録音です。この中で声優については、権利のこ
とまで踏み込んでやってくれている。
ゲスト声優で一般の俳優を起用するケース。この場合は音響制作会社ではなく俳
優の事務所と直接契約する。あと変わった例で言うと、アニメキャラクターに振付
をするというものです。振付師というと普通ダンサーに振付を考案してやっていま
す。振付も舞踊の著作物です。振付師に著作権が発生します。ダンサーに著作権が
発生するわけではない。色んな利用にマルチユースに対応できるようにしておく。
できたら一次金でお支払いして、二次利用については払わないという形がいいと思
います。実演家は著作隣接権ですが実演家人格権というものがあります。氏名表示
権、同一性保持権というのがあります。同一性保持権はあまり問題になるようなこ
とはないと思います。例えば録音した声優さんの声が修正されて1オクターヴ高く
なっていたとか、セリフを切り刻んで使用するようなことには注意して下さい。
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B-④-5 音響
効果音、レコード製作者の著作隣接権について。見落としがちなのは、効果音。
効果音とは爆発する音、波の音、SE です。これは権利的にいうとレコード製作者
の著作隣接権に該当します。レコード製作者の著作隣接権というのは音楽に限った
ことではない。「音」を最初に固定した人に権利が発生しますので、契約する時に
権利譲渡してもらう。もう一つ重要なのは音響監督です。シナリオをもらって録音
について指揮を取る時に尺の問題で台本を書き換える人がいます。音響監督は大体
音響制作会社に所属していますので、著作権を譲渡して下さいと入れておく。音響
に著作権って無い、と不正利用するひとへの対応や、シナリオが書き換えられる場
合でも権利そのものは制作会社にある、ということを明記しておくということです。
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B-④-6 音楽原盤
レコード製作者の著作隣接権(音楽原盤)について。音楽は、アニメーションと
は完全に独立した著作物です。注意しなくてはいけないのは、「音楽著作権」と「音
楽原盤権」です。この2つは必ず区別できるようにしておくこと。音楽原盤の原盤
という名称は著作権法をいくら読んでも出てきません。レコード製作者の著作隣接
権(音楽+音楽実演家の著作隣接権=原盤権)です。例えば、昔、鳥の声とかを録
音してレコードにして出している会社がありました。鳥の声とか波の音に著作権は
発生しません。著作物ではないです。だけどもレコード会社に原盤権は発生します。
それからもう一つわかりやすい例があるのは、クラシック音楽です。ベートーヴェ
ンは亡くなってもう 50 年以上経ちますので、著作権切れです。だからといってそ
こらに売られているベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の CD を著作権が切れて
いるから、ネットに流すのはレコード製作者の著作隣接権に触れてしまうというこ
とです。ここは著作権とちょっと違うところです。必ずしもレコード会社が持って
いるとは限らないので注意して下さい。
製作委員会で出資を募る場合、これが製作費に入っているのか、否かを記載する
必要がある。CD が出たとき、製作委員会のお金で作っている原盤であれば製作委
員会に原盤使用料が入ってくる。これは当然のことです。けれどもタイアップで他
のところからということであれば、原盤使用料は CD を出した会社に入ってくる。
なぜなら原盤制作費は製作委員会が負担していないからです。タイアップでも必ず、
原盤権者との間で契約書を作成する。無償提供されていたとしても、どこまで利用
できるのかをちゃんと契約しておく事。DVD なら複製権、譲渡権も働きます。
音楽原盤使用許諾契約上は動画配信では、原盤権者の送信可能化権が働きます。
放送権はないが、送信可能化権はあります。だから放送用に作ったアニメーション
が今たいへんなのは、配信時に原盤権が働くから許諾を取らなくてはいけないこと
です。
音楽実演家の権利がどうなっているかも注意して下さい。大体これはレコード制
作会社に譲渡されているケースが多いです。
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B-④-7 音楽著作権
・共同出版契約(楽曲のプロモーション貢献度で分配比率を決める)
音楽著作権。これは JASRAC などが権利者になります。だいたいルールが決ま
っています。強制許諾ですから使用料規定に従って払っている限りは止められる
ことはないので著作権管理団体の管理する楽曲をなるべく使用するほうが安全
です。JASRAC 楽曲の場合でも外国楽曲を使用する場合の注意として、JASRAC
管理楽曲であったとしても外国曲については、シンクロ権に関しては JASRAC
が権利主体にならないケースがあります。シンクロ権が範囲外になっていると、
外国の音楽出版社さんと交渉しなくてはならなくなり、私は個人的には薦めませ
ん。非常に複雑になので、迷ったら JASRAC に聞くのが一番です。また正確な
ミュージックキューシートを作らないと音楽出版社にお金が入らなくなってし
まいますので注意です。
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B-④-8 その他のチェック事項
・アニメの中の肖像権。似顔絵にも肖像権というのは入ってきますので、アニメー
ション化してその人とすぐわかるということであれば肖像権の対象になります
から注意。
・セリフの中のブランド名、有名人の名前について。ブランド名をセリフの中に入
れるのは特に大丈夫です。有名人も同じです。ところがどちらも蔑むような利用
をしてしまいますと、トラブルになりますので、注意が必要です。
・建物の著作権はどうなっているか? 実写ではないので外します。
・パロディ。日本の著作権はイコール著作権侵害です。つまりパロディだったらい
いじゃないかという理論は、全く日本の場合成り立たない。
・写り込みについて(改訂著作権法を参照)。アニメなので割愛します。
※アニメーション制作会社に制作を委託する場合の注意事項
・著作権譲渡を行う場合➡著作権譲渡権(第 27 条及び第 28 条の権利に注意)著作
権譲渡は、アニメの素材だけでなく、宣伝素材、原画、キャラクター設定画も入
れる
・納入素材の所有権、危険負担、瑕疵担保責任
・下請法(情報成果物)。資本金を調べて、下請法が適用されるか? 適用される
場合は発注書、請負代金の支払い期日(60 日以内)に注意する
・監督の著作人格権。氏名表示はどのようにするか。下請制作会社に監督さんが帰
属する場合があります。
※放送局、DVD メーカー、ISP との契約での注意事項
・どの権利処理をどちらの負担でおこなうか(役割分担)をしっかり書いておく。
いい契約書というのは役割がきちんと全部書いてあります。多くの場合音楽著作
権はメーカーさんがやるというケースが多いです。脚本の場合は両方とも OK に
なりますが、両方とも OK なのが危ないです。どっちがやるのかをちゃんと決め
ないといけません。
・利用の範囲を常に明記する
・素材作成にかかるコスト(エンコード等)をどちらの負担でおこなうか。
・ライセンシー側が HD 化した場合ライセンサーが利用出来るのかどうか? 例え
ば制作会社の立場に立った場合、重要なのは HD 化された素材は制作会社側でも
利用できるようにしておくとかです。
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B-④-9 製作委員会契約についての注意事項
・「製作」「制作」の違い。衣付きの製作はリスクマネーを負担している人たちと
いうことです。それに対して、前払いしていただいた費用で制作する、クリエイ
ティブ性を重要視される方が衣なしの制作です。
・以前は劇場版アニメに多かったが、最近は TV 放送の深夜帯を中心に増えて来て
いる。一説によると 70%くらいが製作委員会方式です。
・民法上の組合 民放 667 条〜688 条を読んでおく。金融商品取引法にも注意。こ
うなったら金融商品取引法上の有価証券になりませんよということが書いてあ
ります。なお、製作委員会の契約書に書かれないことは。民法の組合の規定で解
釈される可能性大です。
例)「決裁の仕方」「民放 670 条」
・「業務執行組合員」金融商品取引法に注意。出資する人と業務を執行する人がは
っきり別れてしまうと、金融商品取引法上問題がある。
・権利は共有(合有)出資者であれば、何が共有(合有)の対象になっているか注
意する
・音楽原盤製作費まで製作費にいれるかどうか? 共有の対象になっているのか、
制作費になっているのか。
・脱退の時はどうするか? 例えば会社が違うグループに買収されましたと等のケ
ースのことも書いておく。
・二次利用の窓口会社について
揉めるのは二次利用の窓口会社です。窓口はどこにするのか、手数料はいくらに
するのか、権利処理は、窓口会社、ライセンシー、製作委員会のうち誰がやるの
か、きちっと最初から決めておく。じゃないと後で揉めます。興行が終わってあ
る程度結果が出てからでは結構揉めたりしますので、そうならないようにしてい
く。
・窓口会社とライセンシーは必ず分ける。例えばビデオ発売元をやる会社が出資し
てきます。でもその会社が窓口をやるというのは、そうなると製作委員会に入れ
る使用料を勝手に決めることができます。これはよくない。その場合はビデオの
窓口会社はどこどこですと、それはビデオの発売元ではないという形をとってお
くのが一番いいです。
・制作委託契約と印紙。製作委員会の契約に制作契約の文章の中に入れてしまいま
すと契約書全部が請負契約の対象になりますので、請負契約になると印紙がかか
ってきます。制作条項は別にしておいた方がいいかなと思います。そうやって印
紙代を節約するとよいです。
・どの権利処理は誰がやるか、はっきり書いておく。
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文部科学省
平成24年度「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」
アニメ・マンガ人材養成産官学連携事業
アニメ・マンガ人材養成産官学連携コンソーシアム
アニメ分野職域学習システム実証プロジェクト
カリキュラム検討委員会産業論部会
【お問い合せ先】
アニメ・マンガ人材養成産官学連携事業・推進事務局(日本工学院内)
〒144-8655 東京都大田区西蒲田 5-23-22
☎ 03-3732-1398(直)
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