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富山県のスギ挿し木品種解説シリーズNo.1
富山県のスギ挿レ木品種解説シリーズ N O . 1 挿レ木晶種の見分け方と増やじ方 1.挿レ木と実生の遣い スギは我が国の林業において非常に重要な位置を占めており、木材生産はもとより、囲 内の様々な環境に生育できる特性を備えています。 このため、各地に広く分布するスギの 中から、地域の気候 ・風土に適した多数の品種が育成されました 。富山県ではボカスギや タテヤマスギが全国的によく知られています。 これらの品種は苗木の増殖方法によって、枝を土に挿して増やす「挿し木」と、種子を 土に播いて増やす「実生」に区分されます。例えばボカスギは挿し木、タテヤマスギの場 合はそのほとんどが実生です。挿し木と実生の集団を比較すると、増殖方法の違いを反映 して異なった傾向が見られます。 挿し木は親木から切り離された木の体の一部が複製されて成長するため、遺伝的には親 木と全く同 一な集団 (クロ ーン)です。一方、実生は母親と父親のそれぞれから遺伝子を受 け継いで、いるため、その性質は母親ゆずりであったり父親ゆずりであったりとばらばらで す。植栽された環境が等しければ、その傾向は成長した後も変わらず、性質のばらつきは 挿し木では小さく、実生では大きくなります。 挿し木のばらつきが小さいことを、 具体例を挙げて説明しましょう 。図 1は、①ある 2つの挿し木品種、 ②それぞれの品種を両親にもつ実生について、樹高のばらつきを年齢 ・ 植栽地が等しい条件下で比較したものです。調査した本数を相対値に換算した頻度のばら つきは、挿し木では頂きが高くすそ野が狭い山型を、実生では低くなだらかな山型を示し ています。すなわち、挿し木では l本 1本の樹高がそろって平均値前後に集中し、実生で は樹高が大きな木と小さな木との差がはっきりしています。 挿し木品種には木々のばらつきが小さいゆえの長所と短所があります。木材製品に均質 さが求められることを考慮すると、ぱらつきは小さい方が明らかに有利ですが、環境によ って、例えば雪が多く幹に折れや曲がりが生じやすい地域では、同じようなサイズの個体 が被害を集 中的に 受けるか もしれません。気象災害が起こる危険性が低く、良質の木材を 供給することが可能な生産性の高い造林地では、挿し木品種の長所を十分に生かすことが できます。 季 争 ① . 挿レ木品種 A ② . 挿レ木品種~ [ ・ ・ A(♀)xB(♂) 50 50 40 40 武 30 訳 30 幽 20 摂 幽 20 聴 1 0 1 0 O O 〆 、、 ' 、 -' <2 <4 <6 <8 <1 0 B(山 ( ♂) <2 <4 <6 <8 <1 0 樹高 (m) 樹高 (m) 図 -1 遺伝的なばらつきが樹高のばらつきに及ぼす影響 2 . 挿し木品種を見分ける 富 山県西北部は雪が少なく、古くから挿し木造林が盛んに行われてきました 。 この地域 からは 、 ボカスギ、マスヤマスギ、 ミオスギ、リョウワスギとい った在来の挿し木品種が 育成されています。 また、近年になると、カワイダ ニスギが石川県から導入され ま した 。 ボカスギやカワイダニスギには氷見市や小 矢部市を中心 としてまとまった面積の造林地が あります。 その他 の品種の造林地 は限られており 、マスヤマスギが砺波市増山に 、 ミオス ギが氷見市三尾に、リョウワスギが小矢部市 了輸に植栽されている以外にはほとんど見ら れません。 品種には様々な性質があり、よく見ればその外観も異な っていることがわかり ます。針 葉 の形を品種ごとに比較してみましょう (写真一 1) 。見分けやすいのはボカスギで、針 葉 y が外側 に聞いて触 れると痛く感じま す。 カワイダニス ギやミオスギの針 葉は逆に閉じて、 ノ 細かく 柔ら かな感 触です。マスヤマ スギの針葉は短 く、芽の先端が丸 くなっています。 また 、枝葉の付き 方を 比較すると 、 ボカスギは針葉が ボ力スギ 力ワイダ二スギ マスヤマスギ 三オスギ 写翼 -1 主要芯挿レ木品種の針葉の形 リヨウワスギ ι , 、 密生してこんもりとしており 、 マ ス ヤ マ ス ギ は枝と枝の聞がすいてギザギザした印象を 受 けます(写 真 一 2) 。 中には外観の判別が困難 な品種もありますが、林業試験場では遺伝子 ( D NA) の違いを分析することによって正確な同 定が可能になりました 。 なお、当場では、在来の挿し木品種以外にも、 タテヤマスギの中からとりわけ成長がよく 雪 害や病虫害を受けていない個体を選抜しており、 写真一 2 挿レ木品種の桔葉の付き方 合わせて 3 00 種類を越えるクローンが保存され ています。 │ よって異おる 3 . 挿レ木の発根能力│手品種 ζ 100 挿し穂から根が発 生する割合、すなわ . 在来品種 ち発根率 は、高けれ 田 タテヤマスギ系統 80 ば高いほど挿し木苗 を効率よく育てるこ とができます。スギ ~ 0、 60 は挿し木による増殖 が容易な樹種です が、発根する 能力は 時 議40 品干重によ って同じな のでしょうか。 20 在 来 品種では、ボ カスギやカワイダニ ﹁ 主朴 引 Tkpphh 引 込H M川九vhkh札m h中 引 hh引 比 阿川九v h ド 九 κvp mm 。込刊ば円九ドム仏 mm引 h 民社 出 社 dnphドはmm中 dnphドHmh引 引廿阿川九ドム Hmh引 。引廿 υ TMハ九v hh ド m引 h引 ∞ 引 τd円九vド ト h dnp 込HMハ 九 ド ム 引 T κ トCm一 ﹁ 、 川大 川 い年月の中で、発根 弘HM が育成に費やした長 小 2)。 当 時 の 林 業 家 込HMHNHR が発根します (図- 込刊ば川門hv ↑h マスギでも半数以上 d n川 h引 ﹂、b R の 80 ~ 90% 、マスヤ ︿川 O 込刊 スギが挿し付け本数 図 -2 在来品種およびタテヤマスギ系統 クローンの挿じ穂の発根率 がよく増殖しやすい ものを選りすぐ った結果といえるでしょう 。先に述べたように、幾つかの在来品種はほと んど植栽されていない現状にありますが、発根率が高く増殖しやすいことから、それぞれ の性質 を生かした木材生産への利用が期待されます。 一方、近年にな って選抜されたタテヤマスギ系統のクローンは相対的に発根率が低く、 中には数%というものも認められます。 これらを在来の挿し木品種と 同 じように取り扱う ことは困難ですが、成長がよく被害が少ないとい った有利な性質をもっ系統は、品種改良 を行うための貴重な材料であり 、種子を採取する親木として利用されています。 、 、 J 4. 挿レ木苗をつくる 大きな個体 から挿し穂を採取することは 難しいため、挿し木苗を効率よく増やす目 的から採穂園がつくられ ま した。採穂園では、 幹や太い枝を勇定し、手が届く低い位置に 、 挿し穂に適した細い枝がより多く発生する よう 、樹形を誘導してい ます ( 写 真 一 3) 。 挿 し 付 け 時 期 に は 春 と 秋 が あ り ますが、 県内では春挿しが一般的です。春挿しならば、 新芽が成長を始めた直後の 、 写 真一 3 探穂園の概況 3 月 下 旬 ~4 月上旬が採取・挿し付けに適 しています。 挿し穂を採取するための枝 選びには 、① 新 芽の発生がよ いこと、 ② 芯が明らかで枯れ や変色がないこと 、③ 曲がり が少 ないことがポイン トです。 このとき、木の上部に現れる 写 真 -4 挿レ穂 の仕立 て 方 成長枝(芯が長く 伸 び て 針 葉 の付 きが少ないもの )は、発根が不良とされているのでさけて下さい 。大 き な 個 体 か ら 挿 し穂を採取 する場合は 、版芽(枝の付 け根から 伸 びるもの)を 利用する方法も あ ります。挿 し穂の長さは 30 c m前後が適当で、すが、発根が良好なものは苗木の成長量をかせぐため lO cm ほど長く 、発根が不良なものは針葉からの水分の蒸散を防ぐため lOcmほど短く仕立てる と よいで しょう。 挿 し 穂 は 土 中 に挿し付ける 、切断面から穂の長さのおよそ1/3 に当たる部分の針葉を 切 り落とします。 また 、根 は 切 断面 から発生しますから 、斜めに 切 り欠き断面積を大きくす るこ とによって発根を促します ( 写 真 一 4)。 こうして仕 立てた挿し穂は 、乾燥しないよう 水に漬けておき、その後 2 ~3 日以 内 に挿し付 けます 。 挿し穂は 切 断面が土に 触 れるよう 、 確実に挿し付 けて 下 さい 。 ただし 、その際に力を入れ過 ぎると、根が発生する切断面を傷 めてしまうので注意が必要です。県 内では 、 くわを入れて溝を掘ってから挿し穂を置き 、 土を寄せて固める方法(溝挿し)が行われて い ます。 挿し付け後も挿し穂が乾燥することを防ぐため 、 日差しの強い 8月下旬まで苗床を遮光 します。 その他 の管理方法は実生苗と特に 変わりません。翌年には床替えし 、 平成 17年 11月 30日発 行 十分な 施 肥 と除草 、消 毒、根切りな 編集発行 と守の処理を行って下さい 。挿し 木苗 は一般に、挿し付けからおよそ 2年 担 当 森林政策課 林 業普及指導 班 林業技術セ ンタ 一林業試験場 松浦崇遠 m a t su u r a @ f e s . p r e f .t oyama. j p 間 (2年 生)で 山出しとなります。 -4-