...

PETフィルムの光学特性に関する新たな知見(その2)

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

PETフィルムの光学特性に関する新たな知見(その2)
2011.05
王子計測機器株式会社
PETフィルムの光学特性に関する新たな知見(その2)
●はじめに
既に弊社ホームページに「PETフィルムの光学特性に関する新たな知見」として、PET
フィルムにP偏光を入射したときの透過率の特異現象の測定例を掲載している。今回はその続
報として、この特異現象を示すときの透過光がどのようになっており、それを評価するために
どのような測定を行い、その特徴をどのような数値で表現するのが良いかを検討した結果を報
告する。
● 実験に使用した装置とソフトウェア
・装置
楕円偏光測定装置
KOBRA−WPR
・ソフトウェア
楕円偏光測定ソフト
KOBRA−PR
メニユー3.テストモード
透過率測定ソフト
KOBRA−TR
メニユー4.偏光透過率測定
● 試料
各社の見本帳から採取したPETフィルム、A社(9点)、B社(6点)、C社(6点)
の合計21点を用いた。
● 結論
主に以下の各数値の入射角依存性を調べた結果、PETフィルムのP偏光透過率が特異
現象を示すときの透過光は図1のように、二重のポアンカレ球を考えたときの内側の球上
の点に相当し、非偏光と楕円偏光の合成であることが分かった。
①P偏光透過率
②左右円偏光透過率の差ΔT
③旋光角
④Hv透過率(直交ニコル配置の偏光板2枚の間で試料の入射角を変えたときの
透過率)
P偏光透過率の極小値、|ΔT|の最大値、Hv透過率の最大値に対応する入射角はす
べて同じで、光学軸Ωに対応する入射角であることが分かった。
1
図1
PETフィルムのP偏光透過率が特異現象を示すときの偏光状態
● 以前の実験結果の要点
これまでの実験で分かった内容をまとめると以下のようになる。
①PETフィルムのP偏光透過率測定で、特異現象が現れるのは図2のように試料
の遅相軸(Nx軸)を入射面と平行な状態、即ち傾斜中心軸を進相軸(Ny軸)
にして入射角を変化させたときであって、そのとき透過率が図3のようにある入
射角で急に小さくなる場合がある。
②図3をみると波長に関係なくこの現象が現れており、透過率の変化は入射角0°
に対してほぼ対称になっている。
③PETフィルム以外ではPIフィルムでも同様の現象を確認したが、その他の材
料ではこの現象は現れない。
④PETフィルムであっても傾斜中心軸をNx軸にして同様の測定をした場合に
は、このような現象は現れない。
⑤この特異現象は3次元屈折率測定で得られる光軸角Ω(図4)に相当する入射角
で現れると考えられる。
2
図2 P偏光透過率の測定系
図3 PETフィルムのP偏光透過率の測定例(試料:A社_t125)
Ω
円
光学軸
Nz
Nx
Ny
Nx>Ny>Nzのとき
図4 屈折率楕円体の光軸角Ω
3
実際に直交ニコルに配置した偏光板2枚の間に、PETフィルムの遅相軸と1枚の偏光
透過軸とが平行になるようにフィルムを置いて、干渉色を観察すると図5のようになり、
特異現象が現れる条件では目視でも光が透過することを確認できる。
図5 直交ニコル干渉色(試料:A社_t125)
● 測定方法
PETフィルムが特に光学活性物質という訳ではないが、今回の実験は一般的に光学活
性物質を評価する場合に着目する旋光性と円二色性(円偏光二色性とも言う)にヒントを
得て、次のような手順で測定することにした。なお測定はすべて波長590nmで行った。
1)P偏光透過率の入射角依存性の測定(TRソフト)
図2の測定系で、入射角θを0°∼50°(または−50°∼50°)範囲を
1°刻みで変えながら透過率を測定し、透過率が極小になる入射角θpを求める。
2)円二色性の入射角依存性の測定(TRソフト)
図2の測定系で固定試料台上にλ/4板(図6)を、その遅相軸が45°と1
35°(裏返し)になるように置き、1)と同様の条件で右円偏光透過率TRと
左円偏光透過率TLを測定し、ΔT=TL−TRを求める。
遅相軸45°
図6
T型試料ホルダーに置いたλ/4板
4
3)旋光角の入射角依存性の測定(PRソフト)
図2と同様の測定系と試料の置き方で検光子のみを回転し、入射角θpを中心
に10°範囲を1°刻みで変化させたときの、透過光の楕円率a/bと楕円方位
Ψ
を測定し、Ψ
が0°になるときの入射角θc を求める。
4)入射角θc のときの透過光の偏光状態の測定(PRソフト)
図2と同様の測定系と試料の置き方で入射角をθc にし、固定試料台にλ/4
板を遅相軸方位45°、135°に置いたときの、透過光の偏光状態を回転検光
子法で測定する。
5)入射角θc のときの透過光の解析
3)、4)で得られた試料単体および試料+λ/4板のときの楕円率と楕円方
位の値を計算シートに入力して、試料単体の透過光の偏光度と楕円率を求める。
※
計算シートではλ/4板への入射光を部分偏光として扱って解析
6)入射角がθc 前後のときの透過光の解析
5)と同じ方法で計算シートを用いて解析する。
7)光の散乱現象としての評価(TRソフト)
図2の測定系に似ているが、偏光子、検光子の透過軸をそれぞれ0°、90°
に固定した状態で、入射角θを0°∼50°範囲を1°刻みで変えながら透過率
(以下Hv透過率)を測定し、透過率が極大になる入射角を求める。
● 実験結果の詳細
1)P偏光透過率の入射角依存性の測定
A社の試料7点の測定結果をまとめると図7のようになり、試料によって透過率の極小
値Tmin やそのときの入射角θpは異なり、概ね試料が厚いほどTmin が小さくなる傾向
があるが、θpの大小については規則性があるとは言えない。B社とC社の試料について
も測定したが、ほぼ同様の傾向であり、試料ごとのθpの値をまとめると図8のようにな
る。
5
100
90
P偏光透過率 (%)
80
70
60
50
t25
t38
t50
t75
t100
t125
t188
40
30
20
10
0
0
図7
10
20
30
入射角θ (°)
40
50
PETフィルムのP偏光透過率の入射角依存性の測定結果
図8
P偏光透過率が極小になる入射角θp
2)円二色性の入射角依存性の測定
本来の円二色性(Circular
Dichroism、CD)は、左右の円偏光に対する物質の吸光
度の差によって現れる現象で、主に溶液を対象にして図9のようにスペクトルを測定する。
∆ε = ε L − ε R =
( AL − AR )
ml
ここで、Δεはモル円二色度
εL、εRは左と右の円偏光に対する分子吸光係数
AL、ARは左と右の円偏光に対する吸光度
mは溶液のモル濃度
lはセル長さ
6
図9
光学活性物質の旋光分散(ORD)と円二色性(CD)のスペクトル
出典 熊本大学薬学部 http://iac.kuma-u.jp/equipment/details/pdf/23.pdf
図6のλ/4板を図2の測定系の固定試料台に置き、偏光方位0°の平行ニコルの状態
で試料を傾斜させながら透過率を測定すると、λ/4板と検光子が円偏光素子の役割をす
るので円偏光透過率を測定したことになる。λ/4板の遅相軸を45°と135°にした
ときの透過率を、それぞれTR、TLとし、ΔT=TL−TRとすると円二色性を反映した
値になる。ただし、この測定は図9のような波長依存性ではなく入射角依存性を調べる点
が大きく異なる。
図10、図11は上記の方法で円偏光透過率TR、TLを測定した例で、入射角に対す
るTR、TLの変化は逆になっており、2つの値を合計すると水色の曲線になって特異な
変化はなく、明らかに1)の方法で実測したP偏光透過率(青色)の曲線とは異なること
が分かる。
90
80
70
透過率 (%)
60
50
40
30
P偏光
TR
TL
TR+TL
20
10
0
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
入射角 (°)
図10 A社_t50の円偏光透過率測定結果
7
40
50
90
80
70
透過率 (%)
60
50
40
30
P偏光
TR
TL
TR+TL
20
10
0
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
入射角 (°)
図11 A社_t125の円偏光透過率測定結果
次にΔTをグラフにすると図12のようになり、1)の測定で得た入射角θpでΔTの
値はほぼ極大あるいは極小になっている。
25
A社_t50
A社_t100
A社_t125
20
15
ΔT (%)
10
5
0
-50
-40
-30
-20
-10
-5
0
10
20
30
40
50
-10
-15
-20
入射角 (°)
図12
ΔTの入射角依存性
3)旋光角の入射角依存性の測定
本来の旋光角(Optical Rotatory
Dispersion、ORD)は、左右の円偏光に対する
物質の屈折率の差によって現れる現象で、主に溶液を対象にして図9のようにスペクトル
を測定する。
ここでは、方位0°の直線偏光を入射し、試料を傾斜しながら回転検光子法によって測
定した楕円方位Ψ
が旋光角に相当すると考えて、特に1)の測定で得た入射角θpを中
心にして±5°範囲を1°刻みで測定し結果をポアンカレ球赤道面に表示すると、図13、
図14のようになる。
8
図13 A社_t50の入射角46°前後の透過光の偏光状態
図14 A社_t125の入射角29°前後の透過光の偏光状態
旋光角Ψ
と2)の測定で得たΔTをグラフにすると図15、図16のようになり、ほ
ぼ旋光角が0°のときにΔTが極小または極大になっていることが分かる。これらのグラ
フと図9とを比較すると、横軸が入射角と波長の違いがあるものの、ΔTとCD、旋光角
Ψ
とORDそれぞれの挙動が似ていることが分かる。
9
10
8
6
4
2
0
-2
30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
-4
-6
-8
旋光角 Ψ' (°)
ΔT (%)
-10
-12
入射角 (°)
図15 A社_t50の旋光角Ψ とΔTの入射角依存性
25
20
15
10
5
0
-5
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40
-10
-15
-20
旋光角 Ψ' (°)
ΔT (%)
-25
-30
入射角 (°)
図16 A社_t125の旋光角Ψ とΔTの入射角依存性
図13、図14のようにΨ
=0°に対応する入射角θc を求め、別に測定した光軸角
Ωに対応する入射角との関係をグラフにすると、図17のようになる。したがって、予想
通り|ΔT|が最大、即ち円二色性が最も強く表れる入射角θcはΩに対応するする入射
角と考えてよい。
10
Ψ'=0°のときの入射角θc (°)
50
45
40
35
y = 1.1128x - 3.5657
R2 = 0.9575
30
25
25
30
35
40
45
50
光軸角Ωに対応する入射角 (°)
図17
光軸角Ωに対応する入射角とθcの関係
4)入射角θcのときの透過光の偏光状態の測定
図2の測定系と試料の置き方で、試料を3)の測定で得た入射角θcに固定し、検光子
を1回転して透過光の偏光状態を調べた。例として、試料単体およびλ/4板を置いたと
きの測定値をポアンカレ球赤道面に表示すると図18のようになり、試料単体の点の位置
だけでなくλ/4板を重ねたときの点の移動方向や移動量は試料によって異なる。
0°
0°
試料単体
試料+λ/4板(135°)
試料+λ/4板(45°)
試料単体
試料+λ/4板(135°)
試料+λ/4板(45°)
A社_t50(θ=46°)
図18
A社_t100(θ=40°)
試料単体および試料+λ/4板のときの透過光の偏光状態
入射角θcで試料単体の透過光を回転検光子法で測定した楕円率をまとめると、図19
のようになる。
11
0.9
0.8
0.7
楕円率
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
t25
t50
t75
t100
t125
A社
t50
t100
t125
B社
試料名
図19
入射角θc のときの試料単体透過光の楕円率
5)入射角θcのときの透過光の解析
入射角θcで試料単体を透過した光は部分偏光になっていると解釈する。そこで、試料
単体およびλ/4板を重ねたときの透過光の偏光状態の測定値(楕円率、楕円方位)を、
部分偏光評価のための計算シートに入力して、内側のポアンカレ球の半径So(偏光度)
や楕円率(tanχ
)等を求めた。このとき図20のように二重のポアンカレ球を思い
浮かべ、内側のポアンカレ球上の点M1
図20
がλ/4板によって移動すると考える。
試料単体の透過光を部分偏光と解釈したときのポアンカレ球による表現
12
計算シートでは、図21のように回転検光子法で観測される透過光強度図形を完全偏光
分と非偏光分に分けることができ、さらに外側および内側のポアンカレ球に相当する楕円
率にはプラス・マイナス(ポアンカレ球の北半球と南半球)の区別をする。計算結果をま
とめると図22のようになり、前述の円二色性を反映したΔTは内側のポアンカレ球で見
た楕円率と関係付けることができ、両者の相関は図23のようになる。今回の測定ではソ
フトウェアの関係から、入射角を1°刻みでしか制御できなかったが、細かい角度分解能
で測定すれば図23の相関係数はさらに高くなるであろう。
図21 計算シートの考え方(試料:A社_t100)
1
外側のポアンカレ球
0.8
内側のポアンカレ球
0.6
楕円率
0.4
0.2
0
t25
t50
t7 5
t10 0
t1 25
t50
t1 00
-0.2
-0.4
-0.6
A社
B社
-0.8
試料名
図22
入射角θc のときの偏光解析結果の楕円率
13
t1 25
25.0
y = 41.05x - 2.97
R2 = 0.9124
20.0
円二色性 ΔT (%)
15.0
10.0
5.0
0.0
-0.4
-0.2
0.0
0.2
0.4
0.6
-5.0
-10.0
-15.0
内側のポアンカレ球の楕円率 a/b
図23
内側のポアンカレ球の楕円率とΔTの関係
6)入射角がθc前後のときの透過光の解析
5)は入射角がθcのときの試料透過光についての解析であるが、入射角がθc前後の
ときの透過光は図13、図14のように楕円率だけでなく楕円偏光方位も連続的に変化す
る。θc≒−29°のA社_t125を例にして、試料単体および試料+λ/4板(45°)
の2つの偏光状態を測定すると図24のようになり、これを5)と同じ方法で解析すると
図25のような結果になる。
図24 試料単体および試料+λ/4板の透過光の偏光状態(試料:A社_t125)
14
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-34
-33
-32
-31
-30
-29
-28
-27
-26
-25
-24
-23
-22
-0.2
外側のポアンカレ球の楕円率
So
内側のポアンカレ球の楕円率
-0.4
-0.6
-0.8
入射角 (°)
図25 入射角θc前後の試料透過光の解析結果(試料:A社_t125)
図25を見ると、入射角が−29°のときにSoが最小になると共に、内側のポアンカ
レ球の楕円率もゼロからずれて最小(試料によっては最大)になることが分かる。即ち、
入射角θcでは光は旋光しないが、その他の入射角のときよりも非偏光の割合が多くなり、
かつ楕円偏光となっており、それらの合成が観測される光である。このときの楕円偏光が
円二色性の原因であるため、図23のような相関が得られると言える。
7)光の散乱現象としての評価
5)の方法で、入射角θcでの試料単体の透過光の偏光状態を解析し、求まったSoか
ら非偏光度(1−So)をグラフにすると図26のようになり、全光の5∼75%は非偏
光であることが分かる。
0.8
0.7
非偏光度 (1-So)
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
t25
t50
t75
A社
図26
t100
t125
試料名
t50
t100
B社
入射角θcの試料透過光の非偏光度解析結果
15
t125
これまでの測定は主にP偏光透過率や円偏光透過率に着目したが、直線偏光を入射して
透過光に非偏光成分が発生する場合、光の散乱現象として扱うことがある。即ち、図27
のような光学系で偏光子と検光子が直交のときは偏光解消散乱法(Hv散乱)と呼び、試
料内の密度や濃度の空間分布の違いや、プラスチック材料の結晶化の違い等の評価に用い
られ、スクリーン上の散乱象を利用する。一方、偏光子と検光子を平行に配置したときは
偏光保存散乱法(Vv散乱)と呼ばれ、これまで行ったP偏光透過率測定はこの配置と同
じである。
図27 Hv光散乱法の光学系
出典 東京農工大学 斉藤研究室
http://www.tuat.ac.jp/ hsaitou/images/kenkyuugaiyou/9.hishousei.pdf
念のため、微小面積位相差測定装置KOBRA−CCDを利用して、A社_t125を
入射角が30°になるようにNy軸を中心に傾斜した状態で、画像を取り込むと図28の
ように多孔質膜のような微細構造の像が観察される。このような試料に直線偏光が入射す
ると光が散乱して非偏光成分ができる可能性も考えられる。
図28 KOBRA−CCDで観察した像(試料:A社_125S、θ≒30°)
そこで、各試料についてHv散乱法の光学系で透過率(Hv透過率と呼ぶ)の入射角依
存性を調べた。この測定も、TRソフトを利用すれば容易に行え、入射角0°∼50°範
囲を1°刻みで変えたときの各試料の測定値は図29のようになる。−50°∼50°範
囲の測定値は、入射角0°に対して対称になり、かつ透過率の極大値に対応する入射角は
前述のθc とほぼ等しい。
16
40
A社_t25
A社_t50
A社_t75
A社_t100
A社_t125
B社_t50
B社_t100
B社_t125
35
Hv透過率 (%)
30
25
20
15
10
5
0
0
10
20
30
40
50
入射角 (°)
図29
Hv透過率の入射角依存性の測定結果
次に図26の非偏光度(1−So)の値と、図29のHv透過率の最大値との相関を調
べると、図30のように高い相関係数が得られた。これは、回転検光子法で得られる透過
光強度図形を思い浮かべれば当然のことと言える。
0.9
y = 0.022x + 0.015
R2 = 0.9791
0.8
非偏光度 (1-So)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0
5
10
15
20
25
30
35
Hv透過率の最大値 (%)
図30
Hv透過率の最大値と非偏光度との関係
17
40
● おわりに
以上長々と説明してきたが、以前に疑問を抱いたPETフィルムのP偏光透過率の特異
現象の解釈は、そのときの透過光は非偏光と楕円偏光の合成であるという結論に至る。
今回の現象の解釈には今までと違って、図31のような旋光性や円二色性あるいは光の
散乱の考え方を取り入れた。本来の旋光性や円二色性は比較的小さい変化量として検出さ
れるが、PETフィルムの場合、入射角に対して検出されるそれらの変化量は十分に大き
く、簡単な装置で容易に測定できる。しかし、測定に際しては試料のNx軸を正確に0°
方向に合わせることが重要である。KOBRA用の最新のソフトウェアには、今回実験に
利用した測定メニューでも角度制御を0.1°刻みでできる機能を備える予定であり、さ
らに精度よく容易に測定できるようになる。
図31
ORDとCDの説明
ここで得られた知見はすぐにPETフィルムの新しい評価につながるとは思えないが、
最近はPETフィルムもディスプレイ関係で多く使用されており、偏光と関わりあう機会
が多い。今後、光学的に何か不可思議な現象に出くわしたときに、ここでの考え方が問題
解決の糸口になるかも知れない。
以上
18
Fly UP