Comments
Description
Transcript
本文PDF - J
B1-14, P2-51 第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月) バイオマス由来ポリエチレンテレフタレートの LCA LCA of polyethylene terephthalate from biomass ○八木橋聡美*1)、柴田あゆみ 2)、大島寛 3)、伊坪徳宏 1) Satomi Yagihashi, Ayumi Shibata,Hiroshi Oshima,Norihiro Itsubo 1) 東京都市大学, 2) 大日本印刷, 3) 岩谷産業 *[email protected] 1. 2. はじめに 研究目的 植物資源を原料とするプラスチックは、化石資源を原 バイオマスはアジアなどの気象条件や土地面積など、 料としているプラスチックと比較して化石資源消費量の 生産に有利な土地で生産される。精度を高めるためには 削減、地球温暖化防止などの環境負荷の削減効果が期待 フォアグラウンドデータを用いることが重要となる。本 されている。バイオマスを原料とした場合、CO2 排出量 研究ではサトウキビの栽培からエチレングリコールの製 の削減という観点では優れているが、原料となる作物の 造、PET 重合までのプロセスにおいて、生産国における 種類によっては穀物価格上昇の引き金になるなど、食糧 調査を実施し、フォアグラウンドデータを用いてライフ との競合が問題として挙げられていた。これに対してサ サイクル全体で石油由来 PET との比較を行う。 トウキビを原料にした場合、砂糖の副産物として出るモ ラセスを原料としているので、食糧との競合の影響は低 3. いとものと考えられる。 3.1 評価対象と評価範囲 方法 本研究では PET 樹脂 1kg を評価対象とした。 バイオマス由来のプラスチックとして、ポリ乳酸 (PLA)やポリエチレン(PE) 、ポリエチレンテレフタレ バイオマスPET のシステム境界(図3.1-1)には海外でのサ ート(PET)などがある。乳酸発酵を経由して製造される トウキビ栽培から PET 重合、日本での廃棄処理までを含 PLA は、生分解性(使用後は微生物の働きによって、水 めた。また、サトウキビの栽培で廃糖蜜の副産物である や二酸化炭素に分解される)という利点があるが、わが 砂糖とバガス、バイオモノエチレングリコール(MEG) 国においては、コンポスト化のインフラが整っていない の副産物であるジエチレングリコール(DEG) 、トリエチ ため本利点が活かされない。また、石油由来プラスチッ レングリコール(TEG) 、へキシレングリコール(HG) クと比べ、物性面でやや劣るという側面もある。それに は配分の対象とした。ISO14044 の方針に沿って MEG 等 比べてバイオ由来の PE や PET は生分解性はないものの、 は重量基準で、モラセス等は経済基準で配分した。 石油由来プラスチックと同等の物性が得られることから 石油PET のシステム境界(図3.1-2)には海外での原油採 掘から PET 重合、日本での廃棄処理を含めた。バイオマ 更なる利用促進が期待される。 バイオマス PLA、PE の LCA は見られるものの、バイ ス PET と同様、MEG 製造段階の DEG、TEG、HG は評 オマス PET については未だ行われていない。また材料に 価の範囲外とした。 バイオマスを用いる場合、水の消費が相対的に高いが既 3.2 評価物質 存の評価の多くは CO2 に注目しており水を評価項目に含 評価対象物質はCO2、CH4、N2O、水とする。影響評価で めたものはない。 は地球温暖化(以下、GHG)と水消費を対象とした。 図 3.1-2 石油 PET のシステム境界 図 3.1-1 バイオマス PET のシステム境界 - 44 - 第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月) 3.3 データの収集方法 した。 バイオ MEG の生産ではエネルギーとして使用され 3.3.1 バイオマス PET ている蒸気製造に、別工程で出たバイオガスを利用する サトウキビ栽培から MEG の製造までのデータは、 生産 拠点のあるインドに調査に行きフォアグラウンドデータ ことで、生産工程における追加的なエネルギー消費を大 きく低減することができる。 を得た。テレフタル酸については MiLCA 内の数値を引用 廃棄段階では、サトウキビ栽培における CO2 吸収によ した。PET 重合段階のデータは生産メーカーへのヒアリ り、PET 焼却時の CO2 を排出量の削減に大きく寄与して ング結果を基に算定した。 いることが分かる。 3.3.2 石油 PET 4.2 水算定結果 MEG 製造段階までは MiLCA 内の数値を引用し、テレ PET 製造段階まででバイオマス由来は 690ℓ/kg、石油由 フタル酸、PET 重合段階のデータはバイオマス PET と同 来は 173ℓ/kg の水が消費される。バイオマス PET の内訳 様に算定を行った。 (図 4-1)によれば、サトウキビの栽培段階が全体の 6 割を 3.4 算定方法 占めた。植物を原料としているため水の評価ではバイオ インベントリ分析と影響評価のいずれも MiLCA を使 マス由来の負荷が高くなった。 用して算定を行った。PET の廃棄に関しては日本におけ る単純焼却を想定しており、バイオマス PET の CO2 排出 量については原料のバイオマス分はカーボンニュートラ ルとし、CO2 はサトウキビ栽培時の吸収量と等しいと仮 定した。 4. 結果 4.1 GHG 算定結果 原料製造から樹脂製造段階までと廃棄段階での GHG 図 4-1 バイオマス PET 製造までの水消費量と構成 排出結果を図 4.1-1 に示した。 5. まとめ バイオマスPET と石油PET の製造段階と廃棄に関する 評価を行った。製造段階でエネルギーにバイオガスを使 用すること、廃棄段階でのカーボンニュートラルにより、 石油 PET と比較して GHG 排出量を全体で 27%削減でき ることが分かった。 水については植物を原料としているため水の評価では バイオマス由来の負荷が高くなった。 今回のバイオマス PET では原料のテレフタル酸がバイ オマスではないため、今後テレフタル酸もバイオマス由 来に転換することが可能になれば、GHG 排出量に関して はより大きな削減効果が期待できる。一方、水に関して は植物原料が増えるため負荷が高くなる。 参考文献 1) Comparative LCA of MEG from Molasses with MEG from Petro Route Final report (2010) 2) 社)産業環境管理協会:MiLCA ver1.0.4.9 図 4.1-1 バイオマス PET と石油 PET の ライフサイクル GHG 排出量と構成 3)麻喜皓人 インドにおけるサトウキビ栽培の環境影響 評価(2010) バイオマス PET は 4.67 kg-CO2e/kg で、石油 PET に比 べて 27%程度小さかった。特に廃棄段階での削減効果が 認められた。製造では MEG の削減が CO2 の低減に寄与 - 45 -