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(3)-③ 液状化対策 1 1.東日本大震災での被災状況と背景 2.長崎県地域防災計画での位置づけ と現状 3.当面の対応方針(案) 2 1.東日本大震災での被災状況と背景 (1)被災状況 ○ 千葉県浦安市等において、地盤の液状化現象が広範囲に発生し、 ①歩道等でのマンホールの浮き上がり、②戸建住宅等の沈下・ 傾斜、③ライフラインの切断などが生じたが、車道部分は舗装 が厚いため大きな被害は無く、緊急車両は通行可能であった。 ○ 大型マンションや中高層ビル等は、杭基礎により建物の沈下や 傾斜等は生じていない。 ・対策工事を行っていない建物では、敷地や歩道の沈下等により ライフラインが切断したものもある。 ・一方、対策工事を行っていたことにより液状化現象が発生しな かった施設もある。(例:浦安市の埋立地にある東京ディズ ニーランド) ○ 戸建住宅の被害は広範囲に渡っており、復旧には一戸当たり数 百万円を要するが、災害給付金の適用要件の緩和が行われたも のの、個人負担の問題があり、今後の復旧がどのように進むか 3 は未確定。 ○浦安市における液状化現象 <住宅地の道路>(浦安市HPより) <歩道の被害>(浦安市HPより) <傾斜した住宅> <車道は通行に支障なし> 4 ○液状化対策工事の効果例 東京ディズニーランド®/東京ディズニーシー®の建物、施設について (3月28日現在) (株)オリエンタルランドホームページより 東京ディズニーランド/東京ディズニーシーにおける液状化対策 液状化対策を講じていたことで、東京ディズニーランド/東京ディズニーシー では、平面駐車場の一部区画を除き、液状化現象は発生しませんでした。 これは、東京ディズニーランド/東京ディズニーシーは建設時に液状化対策と して、敷地全体を約10∼15メートルの深さまで地盤改良を行っていたことによる ものです。 地盤改良は主にサンドコンパクションパイル工法と呼ばれる工法でおこなって おり、締め固めた砂の柱を一定間隔で地中に造成することで地中の密度を高めて います。 これにより、地中の密度が高まり、液状化に対抗することができます。 H/2 支持層 砂 杭 基礎杭 ◇ 液状化対策工事のイメージ図 ディズニーランドでは、周辺で液状化 現象が発生したが、対策工事により 園内では被害はなかった。 液状化現象は、適切な対策工事によ り抑えることができ、地震時の安全 性は十分確保できる。 5 (2)背景(その1) ○ 地盤の液状化現象は、新潟地震(昭和39年=1964年)で 大きな被害を生じて以来、研究や対策が講じられてきており、 建築関係者の間では常識となっているが、一般には必ずしも 知られていない状況。 1964年の新潟地震(傾斜した県営アパート) 新潟地震対策総合連絡会HPより 6 <液状化現象の仕組み> 液状化現象とは、地震の振動により、地下水を多く含んだ砂の層で、 砂が水の中に浮いた状態となり、地盤が液体のようになってしまう現象。 〔地盤が緩き締まった状態〕 〔振動により水と砂が分離〕 〔砂が沈下し固まった状態〕 7 (2)背景(その2) ○ 戸建住宅等の敷地内の液状化対策については、建築基準法 等において具体的な技術基準が示されておらず、地盤調査や 対策工事の実施は、費用とのバランスを踏まえた建主の自己 責任において判断される仕組み。 <建築基準法における液状化現象の位置づけ> 建築基準法は、生命・健康・財産を守る「最低限」の基準であり、 地震等の非常時には、建物は被害を受けて使用不可能となるが、生 命・健康は守られるレベルの基準。 液状化現象は、戸建住宅等が沈下・傾斜し使用不可能となる場合 もあるが、生命・健康に直結する直接被害は想定されないことから、 費用バランスを含めた建主の判断に属する事項とされている。 8 (2)背景(その3) ○ 関係学会によると、今回の液状化現象は、従来から知られていた メカニズムであり、対策の有無が被害を左右したものとの理解。 ○地震による地盤災害の課題と対策 ∼2011年東日本大震災の教訓と提言∼ 2011年6月 公益社団法人 地盤工学会(平成23年度 学会提言の検証と評価 に関する委員会)【抜粋】 (1)地盤の液状化による被害(特に戸建て住宅) 地盤の液状化による被害および対策効果【抜粋】 ・震央から最も遠い地盤液状化発生地点は横浜市金沢区(震央距離は422km ) であり、国内外の過去の地震と比較して特に遠くない。 ・道路・鉄道の高架建造物・橋梁、中・高層ビル、共同溝などの構造物の支持地 盤の液状化による被害はほとんど無かった。これは、1964年新潟地震以降、 建設技術者の間では地盤の液状化は広く認識されて、これら公共機関が整備・ 管理する社会基盤施設に対する地盤の液状化の予測と対策に関する技術基準が 整備されてきて、それに従って設計・施工されていたからである。また、大き な民間組織の中・高層ビル(UR等の住宅を含む)や産業施設でも、同様であ る。 ・従来から地盤の液状化の対策を行ってきた公共構造物と中・高層ビル等の従来 から地盤液状化の対策を行ってきた場合と異なり、戸建て住宅は地盤の液状化 を考慮して設計・建築されて来ていない。 9 2.長崎県地域防災計画での位置づけと現状 (1)防災計画での位置づけ(概要) ○ 液状化の可能性のある地域を調査し、液状化に関する知識の 普及、地盤改良等による液状化防止策を指導。 ○ 大規模開発での液状化対策、埋立地や干拓地での地盤災害対 策を推進。 ○長崎県地域防災計画<震災対策編>(関係部分の抜粋) 第2章 地震災害予防計画 第5節 防災都市・地域づくり計画(危機管理防災課:漁港漁場課: 農村整備課:森林整備室:都市計画課:港湾課:砂防課:河川課) 4 液状化対策 (1)県内の液状化の可能性のある地域を調査し、可能性のある地区にお いては、液状化に関する知識の普及に努め、地盤改良等の実施による 液状化発生防止策を講じるように指導する。 (2)大規模な開発を行う地区においては、液状化対策に有効な措置を講 じる。 (3)埋立地、干拓地における地盤災害対策の推進を図る。 10 (2)現状 ○ 「長崎県地震等防災アセスメント報告書(平成18年3月)」に おいて、想定される地震ごとに、地質等に応じて250メートル メッシュで液状化の危険度(5段階)を示している。 ○ 知識の普及については、東日本大震災を踏まえて広報誌等で紹 介を始めた。 ○長崎県における液状化の危険度 (長崎県地震等防災アセスメント報告書(平成18年3月)より抜粋) <橘湾西部断層帯による地震の場合> <大村−諫早北西付近断層帯による地震の場合> 11 (3)課題等 ○ 現在の地震等防災アセスメント報告書の危険度マップにより 各地域の傾向を示しており、これに基づき、個別の建設活動に あたって地盤調査や対策工事の必要性を判断いただくことが想 定されるが、この危険度マップの周知は進んでいない。 ○ 個別の宅地の具体的な危険度を示す精度の危険度マップを作 成・公表することも考えられるが、次のような課題がある。 ① 膨大な地点でのボーリング調査等が必要であり、莫大な費用 を要する。 ② 各宅地についてのいわゆる「ネガティブ情報」の積極的な公 表となり、地価の下落等の影響も懸念される。 ○ なお、液状化対策に関して、国土交通省において、 ① 道路・下水道などの公共施設や民間宅地を対象に、専門家 等による技術的検討 ② 開発許可等の技術基準への液状化対策の追加の検討 ③ 住宅性能評価制度の評価項目への液状化対策の追加の検討 などを行っている。 12 <国土交通省の動き> ①H23.05.31 日刊建設工業新聞【抜粋】 国交省は、既に道路や下水道などの公共施設を対象にした液状化対策を 検討する有識者会議「液状化対策技術検討会」を設け、今月11日に初会 合を開いている。民間の造成宅地についても被害の再発防止に向けた取り 組みを強化する必要があると判断した。 民間宅地については、宅地造成等規制法施行令に「宅地造成に関する工 事の技術的基準」が定められており、宅地造成で盛り土や切り土の工事を 行う場合に、地盤の安全性を高めるために講じる措置(締め固めなど)を 明記している。この基準の中に、新たに液状化対策を加える方向で検討を 進める。液状化対策を行う場合の助成金などの公的支援制度のあり方や、 都道府県知事などが行う開発許可制度の見直しも合わせて検討する。 ②H23.7.8 毎日新聞【抜粋】 大畠国交相は「住宅の安全性表示により、住宅を建設・購入される場合 にそれをしっかり周知させる」とも表明。国交省によると、第三者機関が 住宅性能を評価する「住宅性能表示制度」の中で、従来の耐震性や火災時 の安全性などの評価に加え、液状化対策が行われているかも盛り込む方向 で検討するという。 13 3.当面の対応方針(案) ○ 災害危険性に関する正確な情報の開示が求められるが、 調査経費や地価への影響など様々な課題があることから、 詳細調査や液状化マップのあり方について、県と市町によ り検討を進める。 ○ 液状化現象についての知識について、県は、市町および 関係団体の協力のもと、建築関係者および一般県民への知 識の普及を図るため取り組みを進める。(例:建築関係者 への講習会、住宅フェア等におけるパネル展示) ○ 道路・下水道等の公共施設の液状化対策については、国 土交通省での検討を踏まえて、対応を検討する。 ○ なお、地震時の宅地の安全性に関しては、液状化現象以 外に、大規模な盛土造成地での地すべりや、斜面地の古い 石垣の崩壊など、安全性が懸念される地域があることから、 これら事項についても、調査や対策のあり方について、県 14 と市町により検討を進める。