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ロッテルダム港の概況とユーロマックス・ターミナルの供用
OCDI QUARTERLY 77 <国際物流事情> ロッテルダム港の概況とユーロマックス・ ターミナルの供用 成川 和也 1. 沿革と概要 ⑴ コンテナターミナルの配置 ロッテルダム港におけるコンテナターミナルは、当 ロッテルダム市は欧州大陸における EU 諸国のほぼ 初ロッテルダム市中心部に近い Eemhaven 地区に建 中心に位置し、人口約 60 万人、オランダ国内第二の 設された。Home Terminal 及び Hanno Terminal が現 都市である。欧州最大の港湾ユーロポートを有し、港 在でも稼動している。コンテナリゼーションの発展、 湾地域は 1,000 社を越える企業が立地する一大物流拠 コンテナ船の巨大化と共にコンテナターミナルの中 点となっている。 心は次第に大水深の河口 Maasvlakte 地区に移動し、 巨大ターミナルが建設され現在に至っている。 ロッテルダム港は国際河川マース河口部に位置し、 約 40 ㎞におよぶ欧州最大の港湾として、欧州一のコ ンテナ取扱量を誇っている。 同港は、以前はロッテルダム市港湾局(RMPM: Rotterdam Municipal Port Management) が 港 湾 管 理者として、港湾管理行政を一元的に担っていたが、 2004 年度から港湾の運営管理を市の管理から独立さ ロッテルダム港おける港湾区域の機能ごとの配置 状況を次図に示す。 ユーロマックス完成までは、コンテナターミナルは 8 箇所あったが、そのうち主要なものはマースフラク テ地区に立地する ECT Delta Terminal dedicated East、 West、North 及び APM Delta Terminal の 4 ターミナ せ株式会社に移行している。 表 ロッテルダム港の主要施設 (2007 年現在 ) 2. コンテナターミナル ロッテルダム港における主要施設を下表に示す。水 域を含む港域面積は 10,500 ㏊、そのうち 5,040 ㏊が 産業用地、1,960 ㏊が社会基盤用地である。我が国の 港湾で最も広い名古屋港の臨海地区が 4,155 ㏊と比較 しても、この港湾の規模が想定できる。また、岸壁 総延長は 77 ㎞、タンク貯蔵容量は 33.3 百万キロリッ トルである。 ロッテルダム港はマース川河口から市中央に至ま で 40 ㎞にわたって延長し、河口区域の最大水深は 24 mを確保している。この港湾は単に北西ヨーロッパ の物流の玄関口としての機能のみならず、石油精製 基地、合成化学工場、コンテナプロセッシング、輸 入果実のパッキング等 25,000 万人の人口を抱える背 後圏へのディストリビューションセンターとしての 多機能を有している。 港湾全体面積(㏊) 産業用地(㏊) 水域(㏊) 社会基盤用地(㏊) パイプライン全長(㎞) 岸壁全長(㎞) タンク貯蔵容量(百万㎥) 原油 鉱油製品 化学製品 植物油脂 クレーン(基) コンテナ岸壁クレーン 多目的クレーン バルク荷役用岸壁クレーン その他 ターミナル コンテナターミナル(箇所) 多目的ターミナル(箇所) 全天候型ターミナル(箇所) Ro/Ro ターミナル(箇所) 自動車ターミナル(箇所) 果実・ジュースターミナル(箇所) バルクターミナル(箇所) オイル桟橋(基) ブイバース(基) 10,500 5,040 3,500 1,960 1,500 77 33.3 13.0 17.3 2.1 0.9 93 147 58 35 8 17 1 7 1 5 20 122 9 出典 :Port of Rotterdam Authority 17 APM Delta Terminal ECT Hannno Terminal ECT Home Terminal ECT Delta Terminal Old and chemicals Containers Distriparks Planned container terminal Coal and ores Fruit Other activities Urban area 図 ロッテルダム港平面図及びコンテナターミナル現配置状況 Distribution of throughput 2004 Dry Bulk Distribution of throughput 2004 Liquid Bulk Distribution of throughput 2004 General Cargo 図 ロッテルダム港コンテナターミナル配置の変遷 18 OCDI QUARTERLY 77 APM ECT Delta Hannno ECT Delta Terminal APM Home 図 コンテナターミナル位置図 ル、並びにロッテルダム中心地に近く立地する ECT Hone, ECT Hanno Terminal の 2 ターミナルである。 3. ユーロマックス・コンテナターミナル ECT Delta Terminal EURMAX Terminal ロッテルダム港では、ここ数年着実にコンテナ取扱 量が増加しており、ターミナル容量も限界近くであ り、今後ますますの貨物量の増大が見込まれていた。 (ただし、昨今の世界的な経済不況により、貨物需要 も大きく落ち込んでいる。経済の先行きは不透明で あり、今後の貨物需要動向への影響についても、不 透明な状況である。この点については、今後注視し ていく必要があるが、ここではこれらについては見 ユーロマックス ターミナル位置図 込んだものとなっていない。) こうした旺盛な貨物需要へ対応するため、2008 年 9 月ユーロマックス・ターミナルが、川崎汽船・コスコ・ 陽明海運・韓進海運・ECT(ヨーロッパコンテナター ミナルズ)の 5 社合弁ターミナル運営会社により供用 開始した。現在の規格は、バース延長 1,550 m(4 バー ス) 、年間コンテナ処理能力 230 万 TEU であり、将来 計画は全長 4,200 m、 処理能力 560 万 TEU となっている。 ユーロマックス・ターミナルは、ロッテルダム港 内のマースフラクテ・フェーズ 1 地区に位置し、ヤー ド荷役作業にかかる人員を最大限効率化を図り、加 えて、荷役機器のハイブリッド化によって環境対応 ユーロマックスターミナルの施設 にも優れた世界最新鋭のコンテナターミナルである。 19 ユーロマックターミナルでは、自動化による荷役が行われているが、その機器調整のためのデモンストレーションの様子 (手前に見える車がコンテナを乗せて運ぶ。自動で決まったルートを運ぶ。) 実際の自動荷役の状況 背後圏輸送の手段として、直背後まで鉄道が引かれている 20 OCDI QUARTERLY 77 荷役のコントロールは、コンピューターにより行われている 4. 将来の計画マースフラクテ (Maasvlakte)2 計画 マースフラクテ 2 計画は、現在のデルタター ミナルのあるマースフラクテ地区の沖合に新た な埋立地を造成し港湾施設及び関連施設を整備 するもので、開発規模は 1,000ha である。 開発計画は、2004 ~ 2005 年にマスタープラ ン及び環境アセスメント等を実施し、2006 年 図 マースフラクテ 2 計画位置図 に第 2 コンテナターミナルについて APM ター ミナルと、2007 年に DP World(DPW)、New World Alliance (( TNWA ): APL 、 Hyundai Merchant、Marine(HMM)、Mitsui O.S.K. Lines Ltd(MOL))、及び CMA CGM のコンソー シアムとのコンセッション契約が締結されてい る。 1,000ha. net Industrial land Short-cut adjustments MV1 Broadening of Yangtzehaven - start constr. 2006 - operational 2011 (なるかわ かずや 国際港湾政策研究所 欧州分室上席研究員) 図 マースフラクテ 2 計画概要 21