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源氏物語における 形容詞+接尾語ゲについて
源氏物語における まず源氏物語の中に見られる形容詞+接尾語ゲ、接頭語モノ+形 * 形容詞+接尾語ゲについて 源氏物語では、たとえばウラメシという形容詞を基本にして、モ 容詞、接頭語モノ+形容詞+接尾語ゲの用例を比較してみる。︵資 紀 ノウラメシ、ウラメシゲナリ、モノウラメシゲナリという四層を区別 松 注1 し、情況に応じてそれを使い分けたということを大野晋先生が﹁日 ・徒然草・宇津保物語・落窪物語の一五作品の用例と比較したとき 和歌集・蜻蛉日記・枕草子・紫式部日記・更級日記・大鏡・方丈記 ︵本稿では万葉集・竹取物語・伊勢物語・古今集・土佐日記・後撰 料参照︶各用例の総数・異なり語数・紫式部の作品にしかない語 用例の傾向や特色などの考察を試みた。 に源氏物語だけ、あるいは源氏物語と紫式部日記だけに見られる語 のことを紫式部の作品にしかない語と呼ぶことにする︶各グループ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ へ ごとの用例数・使用範囲等を調べ整理したのが表1である。 グル!プに分けた場合、各グループごとに用例数の差があまりな が、異なり語数三三のうち一四と多く見られる。源氏物語全体を四 接頭語モノ+形容詞の用例は、紫式部の作品にしか見られない語 た﹁たのもしげなし﹂等の形も用例として引いた。 作品全体に用例が平均してあるようだが、形容詞+接尾語ゲの形に く、使用範囲が三グループ以上のものが半分を占めているように、 が複雑なので、従来言い慣わされているように、それぞれの系統の 語数はそれ程多くない。 比べると、接頭語モノ+形容詞は三〇〇例三三種と用例数、異なり 接頭語モノ+形容詞+接尾語ゲの形は、接頭語モノだけ、あるい 中で、最も重要な女主人公の呼び名による紫上系と玉覧系に分け 一部は執筆順序の問題があり、二系統の物語が組み合わさり、構成 また便宜上、源氏物語を第一部、第二部、第三部に分けたが、第 ﹁さ﹂を伴って名詞化された﹁かなしげさ﹂等や、 ﹁なし﹂を伴っ 尾語ゲがついて形容動詞になっているもののほかに、さらに接尾語 篇﹂に出ている形に倣った。なお形容詞+接尾語ゲに関しては、接 ・源氏物語﹂ω∼㈲を使用し、池田亀鑑氏の﹁源氏物語大成・索引 用例を引くにあたって、テキストは小学館の﹁日本古典文学全集 容詞に接頭語モノや接尾語ゲがついた形に興味を覚え、自分なりに 本語をさかのぼる﹂の中で指摘しておられる。それを読んで私は形 子 た。以後、紫上系をAグループ、玉量系をBグループ、第二部をC グループ第三部をDグループと呼ぶことにする。 39 一 藤 表1 P3 (17. 6%) 68 (22.7%) 106 (8.9%) 32 (10.7%) 10 (0.8%) 5 (1.7%) 1 (0.1%) 1 (0.3%) 用例を含む文 210 (12,1%) ・103語 (56.9%) 11語 (33.3%) 18語 →Aグループ 18語 Bグループ 20語 Cグループ 47語 Dグループ は接尾語ゲだけがついた形に比べて、用例数も か見られない語や使用範囲の狭いものが多いよ 異なり語数もずっと少なく、紫式部の作品にし うである。 ︵あなづりにくげ・あらましげ・いうめかしげ・ 詞の形も、紫式部の作品にしかない語は一五語 しかない語の中で、接尾語ゲを取り除いた形容 が狭いものが多くなっている。紫式部の作品に ち九六語とかなり多いが、㈲のように使用範囲 部の作品にしか見られない語は、一八一語のう の用例の占める割合が少なくなっている。紫式 比較するとωのように、Dグループでは地の文 °形容詞+接尾語ゲは表1からわかるように地 の文に用例が多いけれども、各グループごとに 理したのが表2である。 形容詞+接尾語ゲについてもう少し細かく整 くもあるなど、使用範囲の片寄りが見られる。 語ゲは一グループにしか用例のない語が六割近 こちらに使われているのに対し、形容詞+接尾 上もあり、源氏物語において片寄りなく、あちら 詞が三グループ以上に見られるものが五〇%以 と多い。使用範囲を見ると、接頭語モノ+形容 また紫式部の作品にしか見られない語も九六語 形容詞+接尾語ゲは用例数一一九二例、異な 4語 り語数一八一語と用例数も異なり語数も多く、 (16.6%) 語語語語 30語 1 4 2 7・ (14.3%) (18.2%) 使 用 範 囲 40 [ (50.0%) (36.4%) 6語 (2.1%) 地の文 (28.6%) 12語 (12,7%) (4.・2%) 77語 90例 23語 8例 215例 82語 56例 26語 15例 7語 242例 66語 61例 16語 8例 4語 446例 114語 93例 20語 17例 9語 Q10 32 (7.1%) (13.8%) 23語 7語 289例 Aグループ Bグループ Cグループ Dグループ (64. 7%) 会話文 心内語文 消息文 歌 25語 4グループ 3グループ 2グループ 1グループ (27.1%) 194 (66.7%) (72.6%) 865 9語 14語 96語 紫式部の作品にし かない語 1192例 300例 48例 181−m 口口 33i五 ロロ 14語 異なり語数 接頭語モノ+形容詞 +接尾語ゲ 用例総数 接頭語モノ+形容詞 形容詞+接尾語ゲ 表2 (1)用例のある文の種類 Bグループ Cグループ Dグループ 237 (82.0%) 153 (71.2%) 185 (76.4%) 290 (65.0%) 31 (10,7%) 51 (23.7%) 43 (17.8%) 85 (19.1%) 10 (4.7%) 12 (5.0%) 66 (14.8%) (0.4%) (0.8%) 5 (1.1%) 地の文 会話文 Aグループ 18 (6.2%) 心内語文 心内語文 42819 T0 (3) 紫式部の作品にしかない語 計 109 (66.5%) 使用範囲 異なり語数 かがやかしげ、かけかけしげ、かよわげ、こころ あさげ、すぐしがたげ、そしらはしげ、そぞろさ めしげ、なまにくげ、にくみがたげ︶と少なく、 むげ、ただよはしげ、なぐさめがたげ、なまうら かない語になっていものが多い。 接尾語ゲがつくことによって、紫式部の作品にし 各グループごとに用例を見ると、Dグループに い語も多い。Dグル!プは、用例数も一番多い 多く、使用範囲の狭い語や紫式部の作品にしかな のグループにない語や紫式部の作品にしかない語 が、単に用例が多いだけでなく、異なり語数や他 41 も多いのには注目したい。 * も他の作品よりもかなり種類が多い。 語ゲのついた形の用例も一番多く、作品独自の語 源氏物語は本文が一番長いので、形容詞に接尾 うなことである。 他の作品の用例と比較してわかることは次のよ の対象について整理したのが表3である。 語数・用例がある文の種類・作品独自の語・描写 紫式部日記の五つで、それぞれの用例数・異なり 注6 は、竹取物語・宇津保物語・落窪物語・枕草子・ 注2 注3 注4 注5 について、他の作品と比較してみる。比較した作品 も含め、形容詞に接尾語ゲのついた形=一四〇例 05167 5ここでは接頭語モノ+形容詞+接尾語ゲの用例 (72.8%) 103 (50. 6%) P7 (53.3%) 30 (15.9%) 83 Q0 (21.7%) 23 (14. 0%) 26 1 1 0 0 (1.2%) 計 消息文・歌 50114 2 (12.2%) (19.5%) 23 22 ( 0%) 25 4グループ 3グループ 2グループ 1グループ 20 (20,1%) 164 33 32 Aグループ Bグループ Cグループ Dグループ (1.0%) 消息文・歌 会話文 地の文 2 1 3 (2)紫式部の作品にしかない語 表3 11 0 52 38 57 22 195 作品独自の語 0 2 3 6 0 105 128 103 177 47 897 101 48 3 4 3 0 17 9 0 3 0 0 4 0 0 4 180 123 891 46 990 (57.1%) (70%) (75,5%) (49.4%) R0000 1 7 QU 3 0 1 0 0 108 異なり語数 用例を含む文 223 7 (92%) (79.8%) 3 77 40 250 (30%) (24.5%) 91 (50.6%) 4 (42.9%) (8%) (20.2%) 会話文 心内語文 消息文 歌 その他 人物以外の描 写 描写の対象 人物描写 1801 2571 163 は竹取物語・宇津保物語・落窪物語に比べると会話文中の用例の割 物語は日記や随筆に比べて、会話文中の用例が多いが、源氏物語 合が少なく、地の文中の用例の占める割合が高い。描写の対象とし ては、人物描写に使われている用例が多い。 ない割には異なり語数が二二と多い。他の作品の用例の巾には、源 源氏物語と同作者の作品である紫式部日記は、用例が五〇例と少 氏物語の中に見られない語があるけれども︵竹取物語一・宇津保物 語六・落窪物語八・枕草子一一︶、紫式部日記にある用例はすべて るが、前述の一四作品には用例がないという語が四語あるなど、形 源氏物語の中に見出されるし、紫式部日記と源氏物語には用例があ の類似性が伺える。 容詞に接尾語ゲがついた形の使い方を見ただけでも、同作者として * 等も合わせて考察していくことにする。 今までは用例の数の上からだけ見てきたが、これからは話の内容 かを見てみたい。ある一つの場面を考えた場合に、形容詞+接尾語 まず形容詞+接尾語ゲの用例がどういう場面に使用されているの ゲのことばによって描写されているものと、それを見て描写してい るものがあるが、ここではその両者の位置から場面というものを考 えてみることにする。たとえば、 ︵軒端荻の︶髪はいとふさやかにて、長くはあらねど下り端、肩の と︵源氏には︶見えたり。︵﹁空蝉﹂一九四ページ︶ ほどきよげに、すべていとねぢけたる所なく、をかしげなる人 あり、光源氏の目を通して軒端荻が描かれているが、こういう場 という文章では、﹁きよげ﹂﹁をかしげ﹂は軒端荻についての描写で 42 50i 1240 用例総数 地の文 枕草子1紫式部日記1源氏物語 竹取物語1宇津保物語1落窪物語 *作品独自の語は異なり語数を記してある。 表4 (1)地の文 330 Q2 44 112 3 8 0 0 81 229 303 897 190 a lD C d e イ ロ ー ウ臼 161 Q073 X1035 Q040 107 R7 243 54 105 193 20 58 7 22 161 343 計・ lAグル_プlBグル_プlCグル_プlDグル_プ 合、軒端荻を〃描写対象物”、光源氏を“視点となっている人 物〃と呼ぶことにする。 く分類してみる。 場面を次のように大きくイと口の二つに分け、イをさらに細か `写対象物と視点となっている人物が同場面に位置している イ 視点となっている人物が登場人物である例 の文に見出せるもの く﹂等が形容詞に接尾語ゲがついた形と同文、あるいは前後 a、視覚をあらわす動詞﹁見る﹂等や、聴覚をあらわす動詞﹁聞 例 一、 1 2 a lD C d e 地の文では、a、bのように描写対象物と視点となつている人物が 述の項目に分類してみたのが表4である。 地の文と地の峡以外の文のニグループに分けそれぞれの用例を前 ロ 視点となっている人物が登場人物には見あたらない例 ているもの e、描写対象物を視点となっている人物の推量によって描写し 描写しているもの 3727142 d、描写対象物を視点となっている人物の過去の体験によって るもの c、描写対象物と視点となっている人物が、空間的に離れてい 31229196 れた場面に位置している例 二、描写対象物と視点となっている人物が、空間的、時間的に離 わかるもの 点となっている人物と描写対象物が同場面に位置していると 3133257 b、﹁見る﹂﹁聞く﹂等の動詞が伴わないが前後の関係から、視 60 16 22 イ 一43一 218 W1 計 69 68 U6 7 53 45 40 V6 65 計 Aグルーフ゜ P・グ・レープcグ・レープ1・グループ (2)会話文・心内語文等 ● れに対して心内語文、会話文等では、視点となっている人物と描写対 している場合に、形容詞+接尾語ゲが使われていることが多い。こ 同場面に位置していて、直接、描写対象物を目にしたり、耳にしたり のは、やはり物語で重要な役割を果たしている人物で、用例数が二 に至るまでさまざまな階級の人物が挙げられる。しかし用例が多い べてみると、描写の対象となっている人物は、帝から随身や下仕え まず描写対象物となっている人物に片寄りが見られるかどうか調 〇以上の人物を抜き出してみると 象物が空間的、時間的に離れている場面の用例が多くなっている。 具体的に語をあげてみると、﹁らうたげ﹂﹁うつくしげ﹂﹁をかし ︵三九例︶ .女三の宮︵三三例︶ 浮舟︵二九例︶ 玉璽︵二 六例︶ 夕霧︵二一例︶ 大君︵二一例︶ 葵上︵二〇例︶ 紫上︵四四例︶ 薫︵四三例︶ 光源氏︵四一例︶ 中の君 というように物語の中心人物が出揃ってしまう。 げ﹂の語は、地の文のに多く見られるが、会話文・心内語文では用 げ﹂﹁うつくしげ﹂などと言うことはない。また会話文・心内語文 源氏物語の主要な人物︵定義がむずかしいので、テキストとして 例が少なく、特に会話文では相手を前にして、その人物を﹁らうた 等には﹁うとましげ﹂﹁おそろしげ﹂﹁なやましげ﹂﹁たのもしげな ついた形が多く見られる。 し﹂などのように、あまり好ましくない意味の形容詞に接尾語ゲの ている入物五八名をここでは主要人物とした︶について整理する と、取り上げられている人物が、女性の方が多いこともあるけれど 一44一 使用した源氏物語⑥の巻末にある源氏物語主要人物解説に名前が出 も、男性一七六例、女性三五七例と男性の倍ちかく女性が形容詞+ 接尾語ゲが地の文で使われる場合は、外から見える様子を単にあ らわしているにすぎない例がほとんどであるが、主観が入る会話文 接尾語ゲによる描写の対象になっている。︵表5参照︶ いる人物と同様、帝から供人まで、さまざまな人物が挙げられる。 次に視点となっている人物を調べてみたが、描写の対象となって るが、本質はそうではないのではないかという裏の意味あいが強く なり、接尾語ゲのついていない形容詞より一段低い感じを表わした ・心内語文中で接尾語ゲが使われる場合、外からはそのように見え り、好ましくない意味を弱めるために接尾語ゲが使われることが多 このことから、源氏物語はいろいろな人物の視点で物を見て描いて いる人物は人物のバラエティーがなく、用例数に片寄りが見られ いることがわかる。 る。試みに用例数の多い順に一〇人挙げてみると、 いようである。 文と会話文・心内語文などでは、ことばのニュアンスが多少異なる 語り手︵二二九例︶ 光源氏︵二二一例︶ 薫︵八一例︶ 夕 しかし、描写の対象となっている人物に比べると、視点となって ことがあるということがわかる。 接尾語ゲの使われている場面に差があり、同じ語であっても、地の * ︵一二例︶ 明石の君︵一二例︶ 霧︵四〇例︶ 匂宮︵三七例︶ 頭中将︵一四例︶ 中将の君 こうして分類してみると、地の文とそれ以外の文では、形容詞+ る人物についてもう少し述べてみたい。 地の文における形容詞+接尾語ゲの描写対象物と視点となってい ’ 総 数 四三 一〇 二 B C 三八 D 葵の上 明石の君 明石の尼君 明石の中宮 朝顔の姫君 秋好中宮 一条御息所 浮舟 近江の君 空蝉 大君︵玉髭の子︶ 大宮 大君゜ 落葉宮 朧月夜の君 小野の妹尼 女一の宮 女三の宮 総 数 ・一・一・ 一〇 =二 三 二九 D 表5 主要な人物描写の対象 明石入道 宇治の阿閣梨 右大臣 桐壷院 柏木 紅梅 今上帝 左近少将 左大臣 一一 A 二四 雲居雁 源典侍 一三 . 45 一 式部卿宮 朱雀院 頭中将 中将 時方 匂宮 八の宮 光源氏 髪黒 弘徽殿女御 弘徽殿大后 末摘花 待従の君 三 五 二 一 一 二 三 二 nt @ .」一 一 二二/\一 四 五 ≡ 一 一 三 六四 一 三 三 一四五三一九 四 五 三 二 九五 二 三 四 三 六九 一 一四 常陸介 蛍宮 夕霧 横川僧都 冷泉院 六二六三二六五五五一三六四九四一四一四〇三〇 二 三 二 一 一五 九二 一 ⊥ ノ\ ≡≡ 三 二 二 二 二 五 山 ノ\ 三 三 三 四 二 二 四 四一 二 四一一ニー四一六二 薫 一七六 四九 表 6 主要な視点となっている人物 明石入道 二五 三六 一六 六六 八一 玉量. 三九 二 二六 三 中将の君 七 中の君 花散里 紫の上 四 四四 九六 二 六 藤壺中宮 弁の尼 夕顔 三五七 二 一七 六条御息所 二五 六五 四一 } 真木柱 計 明石の尼君 葵の上 明石の君 明石の中宮 秋好中宮 朝顔の姫君 一条御息所 空蝉 浮舟 二六 八二 九ニー 一一四 一〇 46 計 宇治の阿閣梨 右大臣 桐壺院 柏木 今上帝 紅梅 近江の君 大君︵玉量の子︶ 大君 大宮 五二 二 二 二 七六 ⊥ ノ\ 八一 左近少将 一八 七三 八一一 一 五一一一 〇二 一八一 左大臣 式部卿宮 中将 朱雀院 三 二 二 七 一 一 薫 二 頭中将 時方 匂宮 八の宮 髪黒 光源氏 常陸介 蛍宮 夕霧 横川僧都 冷泉院 計 る。 一四 九二 一二〇 八五 二五 一四 一= =二三 落葉宮 朧月夜の君 小野の妹尼 女一の宮 女三の宮 雲居雁 弘徽殿大后 源典侍 弘徽殿女御 待従の君 玉難 末摘花 中将の君 花散里 中の君 一 藤壷中宮 弁の尼 一一 一 紫の上 真木柱 夕顔 六条御息所 ム= 二二 一 一八 =一 六一 いてだけしか考察していないので、はっきりしたことは言えないが、 に、男性の方が多くなっている。接尾語ゲが使われている箇所につ 一五 四 紫式部という女性の作者が、光源氏や薫といった男性の目を通して 47 一 八 一 一 一 一 一 ⊥ ノ、 一 五三 一 二 二 一 一 三 四 二 一八四 二 八二七三一 四 二 二 六 というように、語り手、光源氏、薫の用例が圧倒的に多くなってい ノ\ 四七 三 二四 七 六 七五 一」_ 男性と女性を比べると、描写の対象となっている人物とは反対 計 七 五 五 三八一四七 四 五二〇 プごとに比べてみると、 れども、主な視点となっている人物の用例数︵表6参照︶をグルー 視点となっている人物が女性である例は、男性に比べて少ないけ 女性を描写していることが多いのは興味深い。 三部にしか使われていない語が多いことなどから、形容詞+接尾語 また形容詞+接尾語ゲは源氏物語にしかない語が多いが、それら だろうか。 関係にあって、第三部では語の種類も豊富になっているのではない と作者の成長の過程が伺えるが、ことばの用法も話の筋と密接した ゲという形は、作品が執筆されている最中に、必要に応じて新しい は使用範囲が狭く、一グループにしか見られない語が多い。特に第 形が生まれていったのではないかと思われる。 Aグループ 男性=一〇例 女性二一例 Cグループ 男性一一一例 女性二二例 Bグループ 男性 八五例 女性一五例 Dグループ 男性=壬二例 女性六一例 紫上系と玉塁系では、さぼど違いが見られないのに、第一部、第 である。 二部、第三部と分けてみると、相違が見られることは興味深いこと というように、Aグループでは、男性と女性の用例の比が大体六対 一であるが、Dグループでは大体二対一と、視点となっている人物 山田忠雄﹁竹取物語総索引﹂武蔵野書院 宇津保物語研究会﹁宇津保物語・本文と索引・索引編﹂ ﹁落窪物語﹂︵日本古典文学大系︶岩波書店 笠間書院 ﹁枕草子﹂︵日本古典文学大系︶岩波書店 ﹁紫式部日記﹂︵日本古典文学大系︶岩波書店 *印←一六作品の中で源氏物語だけに見られる語 48 が女性である用例の占める割合が増えてきている。これは、最初は 単に人形のような存在でしかなかった女性登場人物が、次第に男性 ま眠らせておかないで、草子地や人物論等の問題を考える時に、活 今回は資料の羅列で終わってしまったが、これらの資料をこのま 大野晋﹁日本語をさかのぼる﹂岩波新書 用していきたいと思う。 登場人物と同様に物を見、描写する視点を持つ存在へ変わっていっ たことのあらわれではないだろうか。 * なった。第一部の紫上系と玉婁系では、ほとんど相違がなく、接頭 以上考察は前述のように、源氏物語を四つのグループに分けて行 語モノ+形容詞や形容詞+接尾語ゲの用例数が、玉髪系は紫上系よ 資料 321 654 りも少ないのに異なり語数は多く、玉塁系は紫上系よりも多少語彙 が豊富なのではないかという程度の違いしか見出されなかった。 第一部、第二部、第三部での用例を比較してみると、第三部は異 なり語数が多く、他のグループに用例のない語や紫式部の作品にし っているという特色が見られる。源氏物語を内容の上から見ると、 か見られない語が多いこと、視点となっている女性の用例が多くな 第三部は非常に近代小説的な面を持っていて、第一部などと比べる 注注注 注注注 総数 語心 内 ひ内 D第三部 会話 竹取 落窪 て、会話の用例と区別した。 C第二部 会話 日記 B玉叢系 会話 の A紫上系 会話 文地 巽印←︸六作品の中で源氏物語と紫式部日記だけに見られる語 * 語心 内 消息文・歌の中の用例は、会話の項に入れ、︵ ︶によっ あうなげ あいぎゃうなげ あさましげ 211121362116112111211 a、形容詞+接尾語ゲ 使用範囲 A D * * 紫式部 1 あしげ あつげ あたらしげ あなづらはしげ あなづりにくげ あやしげ あわただしげ * * * 【 49 一 B D D AB D あやふげ あらあらしげ あらましげ あらまほしげ いざとげ 3 枕草子 1 1 1 11 1 3 1 宇津保 1 1 1 語 1 1 1 D D D CD いそがしげ 語心 内 1 文地 の 1 1 1 112211 11 1 4 A CD ありがたげ D いできがたげ いたげ B D B ABCDいとほしげ 11 1 1 11 4 1 3 1 2 文地 の 1 1 1 1 D D C 文地 の 1 4 2 21 ** * B C B A B BBBBBAAAAA A BBB C C C C C CCC CCC A A A A A B D DD DD いはけなげ いまめかしげ いふかひなげ * * * いみじげ いうめかしげ ** * * * **** うけはしげ うしろめたげ うつくしげ うとましげ ーさ うひうひしげ うらがなしげ うるさげ うらめしげ うるはしげ うれしげ おほげ おそろしげ おもだたしげ およびがたげ かけかけしげ かがやかしげ かごとがましげ かしこげ かたげ かたくなしげ ーもなし DD DDD D D DDD D A ** * 632111131101211712142641421 3112 2 1 1 1 7 1 1 225 111 1 1 1 1 2 1 10 1(1) 1 1 1 1 2 131 ω 11 111 1 1 1 2 11 2 1 3 2 2 153 5 2 1 1 7 3 2 2 1 40 1 9 4 4 2 31 [ 11 5 1 2 1 50 1 1 1 1 1 [ AA AA AA AA BB B B B B BBB BB B B C C C CC C かたらひがたげ かたはらいたげ かなしげ かどかどしげ かよわげ かへりなまほしげ かろげ ききすぐしがたげ きこえつたえにくげ * ***** **** **** きたなげ きよげ くしいたげ くちおもげ くちをしげ くまなげ ーなし DDDD DDD D くやしげ くるしげ けうとげ ここちなげ けどほげ こころぐるしげ こころあさげ こころすごげ こころせばげ こころづきなげ ーさ DD D DDDDD ** 1 1 1 21 1 1 1 2 1 45 2 1 1 1 1 65 4 3 1 1 2 1 1 6 1 1 1 19 111 6 1 ︵1︶ 1 1 1 1 1 1 21 4 1 1 112 1 21 2 11 1 1 2 2 1 1 7 12 1 1 4 111 13 1 1 4 1 26 1 1 1 5 4 11 2 1 11 1 7 12 1 2 8 4714 7 45 5 37 1 4 51 、 6 4 1 1 こころつよげ こころはつかしげ こころなげ BCD こころふかげ こころもとなげ * * * 1① 1 こころとげ CD A D こころやましげ こころやすげ ABCDこころぽそげ AB D こころよわげ ごとごとしげ こころよげ C D こちなげ こころをさなげ BC CD このましげ さぶらひにくげ しのびがたげ 52 一 D A D さがなげ さかしげ さうざうしげ A P CD B D ABCDさびしげ さわがしげ AB D さむげ しふねげ A CD しどけなげ B D A D B すぐしがたげ しぶげ D 1 1 1 1 14 11 1 1 1 1 1 1 2 1 8 2 23 11 1 1 1 1 1 (1)2 1 1 1 1 447 2 1 321 311 1 1 1 2 1 1 5 1 1 1 1 1 1 2 ω 2 21 11 3 219 31 1 1 11 ** **** ** ***** C B A A A 11124291513264121135225611111 1 1 C ABC C C D D C すくなげ すごげ ーさ すさまじげ すずしげ ーさ せばげ すてがたげ そぞろさむげ そしらはしげ ただよはしげ たづきなげ たちどまりがたげ たどたどしげ たのみがたげ * * *亀 ** 一 53 [ BCD たへがたげ たふとげ ABCDたのもしげ ーなし ABCD D ABC たゆげ つきなげ つきづきしげ * 2 1 1 1 1 12 3 21 2 1 7 1 121 5 1 1 1 1 1 2 1 61 43 1 1 1 1 3 1 1 1 1 31 11 8)・ 1 1 1 D B つゆけげ ABCDつつましげ ところせげ つらげ とどめがたげ D CD B D 2 11 61 21 1 1 2 132 8 11 1 1 5221 1 1 1 1 32 1 11 1 7 12 11 3 1 32 1 2 3 1 17 1 1 4 4 1 36 14 2 4 1 1 2 1 3 1 1 7 1 5 6 1 121 D DD D C * *** ** AAA BB A A 1 3 1 2 3吻 2ω 3 1 1 とほげ 81 なぐさめがたげ なさけなげ ーさ はしたなげ ーさ 1 とめがたげ A CD なげかしげ B ABCDなげ なまにくげ なまうらめしげ AB D なつかしげ D B C ABCDなめげ にぎははしげ なれなれしげ ABCDなやましげ A D BCD にくげ ABCD ーなし につかはしげ にくみがたげ のこりなげ ねぶたげ AB D ねたげ D B D AB D ABCDはかなげ B ABCDはつかしげ はべりがたげ 2 141 54 1 1 3 1 1 2 3 16 212 3 1 1 2 1 1 1 11 812 14 11 3 28 1 21 3 1 14 3 1 1 18161 3 3 1 1 1 4 21 11 5 10 1 61 61 1 1 1 1 1 3 1 2 1 1 2 1 3 12 14 21 11 1 1210 1 1 1 2 1 3 1 1 D C BCD ーなし 326551725121171612291101191263111 14 2 24 116 611 1 *** ** ** ** * A A A A はらあしげ はらだたしげ ひとわろげ 1 1 はればれしげ ほこらしげ ふかげ ほしげ ほれぼれしげ 32 まぎらはしげ 1 まじらひにくげ 2 まばゆげ * * * 一 55 みじかげ やんごとなげ 1 2 みぐるしげ みすぐしがたげ みわきがたげ みだりがはしげ やすげ ものしげ めでたげ ーなし めづらしげ めざましげ むつましげ ABCDむつかしげ D CD D ーなし ABCD AB D ゆかしげ 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 12 1 1 1 12 1 1 1 12 32 1 1 1 1 1 1 3 1 1 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 241 3 *** ** 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1121 3622 3314 9 D C **** *** ** D DD D C D C D B C B A A B A A AAAA DDDD A ABCD AA AAAAAA B B @B B B B aC C ABC C b C 1奮1鷲r誌磐1舗赫器なげさながさししらさたげし げま げげは し し げ げ 1しな b C @DDD@ DD D cDDDD し ものうとし ものうひうひし ものうるはし b、接頭語モノ+形容詞 使用範囲 ABCDものうし B B B A CD ものうらめし AA ゆゑげし げ げ * 総数 141137 10 会話 4ω 文地 の A紫上系 1 5 5 1 3 @ * 122 31131 5 29714 3291 4 3 1 26 1 1 1 語心 内 2 B玉童系 1 文地 の 会話 14 1 2 1 1 1 1 124 1 1 語心 会話 文地 の C第二部 3 語心 3 6 6 1 1 4ω 語心 内 1 3 23 234 4 4 3 2 1 1 1 1 D第三部 ω 2 文地 の 会話 6 1 14 3 1 内 1 7 3 内 1 2 21 2 9 3 232 2 212 1 4 2 3 1 1 1 1 2 1 1 2 4 1 3 3 1 1 竹取 1 8 363 1 2 宇津保 1 落窪 2 枕草子 3 紫式部 33 1 225 11 日記 一 56 5 11 3 2 1 4 5 2 1 3 3 1 1 ものおそろし ものおもしろし ものかなし ものおもはし ものきたなし ものきらきらし ものきよし ものくるほし ものこころぽそし ものこはし ものこのまし ものさわがし ものさびし ものしどけなし ものすさまじ ものちかし ものとほし ものつつまし ものなげかし ものはかなし ものはつかし ものふかし ものへだてがまし ものむつかし ものゆかし ものわびし ものものし A AA AAAAAAAA AAA AA AAAAA BBBBBBBBBBBBBBB BBB BB B CC C CCC C CC CC CCC DD DDD DDDD D DD D DDDDD 1 * * * * *** *** * 3129151203338533513131123101221418217 2 2 11 1172 11 52422112 811 1 1531 113 11 11 1 1 1 1 5 21 41 641 1 2111 2 11 1 1 3 1 211 1 2 31 52 4 4311 2 1 5 1 4 18 41 1 3 7 31 1 1 5 41 1 1 2 22 12 11 5 6 2 5 2 1 8 1 1 1② 3 2 1 3 1 61 11 91 11 ω 64 1 1 57 「 1 126 5 1 4 1 1 21 1 内 B玉璽系 会話 C第二部 D第三部 会話 紫式部 一 会話 落窪 [ 竹取 = A紫上系 会話 日記 土・ 総数 語心 ものをかし ものうげ ものうらめしげ 213411226171314 C、接頭語モノ+形容詞+接尾語ゲ 使用範囲 D * * 語心 内 1 ABC BCD ものおもはしげ ものがなしげ 2 宇津保 1 ABCDものきよげ ものさびしげ , ものつよげ ものさわがしげ ものなげかしげ 「 58 A CD ものこころぽそげ AB AB D D ものむつかしげ ものふかげ AB D ものはかなげ ものものしげ 枕草子 1 1 D D B 語心 1 1 1 1 1 文地 の 8 文地 の 1 5 221 1 1 1 文地 の 1 1 12 2 1 (1) 1 1 1 文地 の 1211 1 ** *** * B A 語心 内 内