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- 5 - 3 イメージと「音楽を形づくっている要素」を関連付け表現に生かす
3 イメージと「音楽を形づくっている要素」を関連付け表現に生かす学習活動の工夫 (1) 曲の感じを表す言葉の一覧について 音楽科の学習の中で,子どもたちは,楽曲と出会った時にイメージしたことを,曲の感じを 表す言葉を基にして,書き表したり発表したりして言語化する。その感じたことが基となって, 表現したい音楽の追究活動が始まると考える。 曲の感じを表す言葉は,自分の思いや意図を明確にし,表現活動に生かすための手がかりと なるものであると考える。子どもの曲の感じを表す言葉が質的にも量的にも豊かであれば,感 じたことを自在に表現することができる。しかし,本校の子どもは,感じたことを言語化する ことがなかなか難しく,書くことに時間がかかったり,進んで発表できなかったりということ が多かった。これまでに感じたことを言語化する際に,図8の「曲の感じを表す言葉」(音楽 ノートを参考に作成:鹿児島県音楽教育研究会)を参考とさせてきた。これにより,感じたこ とをある程度,言語化できるよう になった。しかし,似たような表 現やパターン化された表現が多く なり,逆にこれらの言葉にとらわ れてしまい,自分らしい感じ方や 表現に行きづまってしまう傾向が 見られた。そこで,さらに自分な りの思いをもつことができるよう に,曲の感じを表す言葉の語彙を 増やすことが必要と考え,新しい 図8 「曲の感じを表す言葉」 「曲の感じを表す言葉の一覧」を 作成することにした(図9)。 (2) 新しい「 曲 の 感 じ を 表 す 言 葉 の 一 覧 」 の作成について ア 曲の感じを表す言葉の精選について 新しい「曲の感じを表す言葉の一覧」の作成に当たって,まず,国語科で自分の思いや考 え,感じたことを整理したり,他者へ伝えたりする言葉にどのようなものがあるか調べる必 要があった。参考としたのは井上一郎氏(2005)の「感想・評価の基本語彙八〇〇語」(以下 「基本八〇〇語彙」とする)である。基本八〇〇語彙は,国語科の読書指導において,子ど もが使えるようにしたい語彙を学年ごとに分類したものである。音楽科と国語科の教科の特 質の違いはあるが,子どもは国語科で習得した語彙を日常生活の中で使用し,様々な言語活 動を展開していることを考えると,音楽科でも十分に活用できると考えた。 また,子どもの発達の段階や,実態を考慮する必要があった。基本八〇〇語彙の中には, 子どもが普段から使っていない,使い慣れていない語彙もあり,それらの言葉を使用するこ とで逆に言語による表現の幅が制限されたり,誤った表現になったりしてしまう可能性が心 配されたからである。さらに,音楽科の教科の特質を踏まえた語彙の精選も必要であった。 例えば,「表現力豊かである」や「標準的である」などは,感想を表す言葉ではあるが,批 評的意味合いが強く,曲の感じを表す言葉としては適切ではないと判断した。 これらの条件を踏まえ,曲 の 感 じ を 表 す 言 葉 の 抽 出 を 行 っ た 。し か し ,最 初 の 段 階 で 選 択 し た 語 彙 は 約 180 語 に な り , 授 業 で 黒 板 に 掲 示 す る に は 多 す ぎ る 数 で あ っ た 。 そ こ で , K J 法 (川 喜 多 二 郎 : 1967)を 用 い て 言 葉 の 類 型 化 を 行 い , 最 終 的 に 39 の 言 葉の精選に至った。 - 5 -