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第 4 回紛争解決手続代理業務試験解答指針

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第 4 回紛争解決手続代理業務試験解答指針
4 第 4 回紛争解決手続代理業務試験解答指針
第1問
別紙記載の X 及び Y 社の「言い分」に基づき、以下の(1)から(5)までに答
えなさい。
事件の概要
A 企業グループが不動産不況のため、ビル清掃委託契約が順次解約されてい
るビル管理会社の Y 社では、雇用の継続を図るため、ワークシェアリングを
導入するとともに賃金の切り下げ等の措置を従業員に求めた。しかし X との
労働条件が折り合わないため、契約更新が成立せず契約期間満了に伴って雇止
めとなった。
【考え方】
本件では、雇止めが主体、未払いの割増賃金は従となります。複数の問題要素があるの
であれば、いったん分けて考えるとよいでしょう。
・契約更新不成立により雇用の終了となった場合に、実質期間の定めのない雇用契約状
態にある X を雇止めできるか否か。
(解雇権濫用法理の類推適用ができるか否か)
・X に、未払いの割増賃金があるか否か。
(Y 社は、残業手当として特別手当名目で 3 万円を払っている)
・定額残業代の適法性
(注)改正労働契約法施行前の事件なので労働契約法第 19 条の適用はありません。
〔X の言い分〕
別紙 1
私は、平成 10 年 7 月 1 日に、ビルメンテナンス業を営む Y 社の本社に、経理事務の臨
時員の募集に応じ、当初は 2 ヵ月間の労働契約による臨時員として雇用されました。その
後同契約を 1 回更新した後の同年 11 月 1 日からは労働契約期間を 1 年とする嘱託契約に変
更しました。その際現在の Y 社の会長で当時の社長からは、できるだけ長く勤務して下さ
いといわれ、業務の必要上独学で簿記も勉強しました。
その後 Y 社と雇用期間を 1 年とする労働契約の更新手続を繰り返し、今まで同社の経理
関係業務を正社員と同じように担当してきました。今まで勤務上問題を起こしたことはなく、
更新手続にあたっても労働条件について協議したことはなく、ただ形式的に契約書に印鑑を
押すだけでした。また、今年の会社創立記念日には正社員と同じように勤続 10 年の表彰を
1
受け、勤務精励の感謝状と金一封をもらいました。
ところが、このたび、Y 社の言い分にありますような事情で平成 20 年 10 月末日の期間
満了に際し、11 月 1 日からの更新契約にあたっては、従前の所定労働日数を週 5 日から 4
日に減らし、賃金も従前の時間給 1400 円から 1200 円に引き下げて更新する旨の通知を直
前の 10 月 20 日の給料締切日に受けました。会社は受注先が減少して仕事がなくなったか
らといっていますが、実は 2 年前に社長の親族の娘さんが大学を卒業して Y 社に正社員と
して就職し、当初は経理事務を全く知らないものですから私が教えてあげ、本人も簿記学校
に行ったりして今では十分経理事務ができるようになったので、私が人員的に余剰になり邪
魔になってきたため退職させようというのが本当の目的ではないかと思います。Y 社からは、
大口のビルメンテナンス契約が解除されて仕事が少なくなったので、整理解雇を回避するた
めのワークシェアリングで対応することにした、この条件を承認しないのなら更新しない、
と言われました。しかし、ビルの清掃や管理人については確かに余剰になるのは分かります
が、経理事務は管理ビルが減っても大きな影響はありません。現在私の給料は時間給で
1400 円、勤務時間は 1 日実働 7 時間(午前 9 時~午後 5 時、休憩 1 時間)で、特別手当と
して月額 3 万円が支払われ、他に通勤手当として月額 4000 円、夏・冬にはその時に応じて
若干のボーナスも支払われてきています。ボーナスを除く 1 年間の平均月額は特別手当、
通勤手当を含め 24 万 6000 円となっており、賃金は、前月 21 日~当月 20 日締切りで、25
日の支払となっています。
私は、主人が早く亡くなり、一人息子は今大学の 2 年生であり、そこで、現在の時給を
下げられ、働く日数も少なくされると生活はできません。
そのため、何とかあと 2 年間は、現在の労働条件のまま雇用の更新をしていただきたい
とお願いしましたが、Y 社では、9 月 1 日以降は雇用契約期間の到来した現場の清掃や管理
の人も嘱託契約の更新にあたってはみな今回の事情を理解し、引下げた労働条件で更新して
いるのに、事務のあなただけを特別扱いはできない、更新条件に同意してくれないのならば、
更新契約が成立しないので 10 月末日の期間満了をもって雇用は終了することになる、と言
われました。
私は、それなら今まで請求しなかったが、毎日 1 時間位は残業しており、記録はつけて
いないが確かに仕事はしているので、過去 2 年間に遡って残業手当を請求すると申し出ま
した。その時間数は少なく見積もっても月 20 時間として 2 年分ですから 480 時間位にはな
るはずで、就業規則によると確か所定労働時間を超えて残業した場合には、2 割 5 分の割増
賃金が支払われることになっていますので、合計 84 万円程度にはなります。しかし、私の
希望どおり契約を更新してくれるのであれば、残業手当の件は撤回してもよいと思っており
ます。
会社との話し合いは、結局まとまらないまま 10 月 31 日になり、会社からは新しい契約
条件に不同意なら、更新契約が不成立なので、本日で雇用契約は終了し、明日から出勤でき
ませんと通知され、10 月 31 日をもって雇用期間満了となりました。
私は、会社の事情も分かりますので、賃金の 5%程度の引き下げなら仕方がないと思って
いますし、労働日数も週 4 日になってもやむを得ないと思いますが、更新は当然行われる
べきで、会社のやり方は不当な解雇になると思います。
2
〔Y 社の言い分〕
別紙 2
当社は、ビルの管理・清掃等のビルメンテナンス業務を行っている会社です。
特に、当社の主な得意先は、不動産業でビルの賃貸等で有力な A 企業グループです。こ
れは当社の社長の父親である会長が A グループ創立者と幼なじみのためです。当社は、同
グループ所有の関連ビルの清掃、管理等の業務を請負い相当数(当社受注ビル中の 4 分の 1)
を担当していました。ところが折からの不動産不況で A 企業グループが経営不振となり、
このたび某ファンドの出資を受けて再建を図ることになり、同社の経営陣が交替しました。
同ファンドの出資する B ビル管理会社が A 企業グループ所有のビルのメンテナンス業務等
を行うことになり、当社との清掃等のビルメンテナンス委託契約も順次解約され、平成 20
年 12 月末日をもってすべてが解約されることになりました。
当社の従業員の大部分(約 60 人)は清掃作業者、ビル管理人等の期間雇用者で、各ビル
の現場に配置されており、本社は営業担当と併せて 10 人程度です。本社での期間雇用者は
X さんと他にもう一人います。当社では現在新規受注の努力をしていますが、不動産業界の
不況で新規受注は困難で、見通しがたちません。そこでやむなく余剰となる従業員には退職
してもらうことも考えました。しかし会長は恩情的な人なので従業員の整理解雇という方針
はとらず、上記解約通知を受けた 9 月 1 日以降雇用期間が満了となる従業員に対しては、
「雇
止め」はしないで、更新希望者には時間給をその人の時間給の高低に応じて低い人は 10%、
高い人は 15%程度引き下げ、かつ、所定労働日数又は勤務時間を少なくして、全員の雇用
を維持するためにワークシェアリングの方法で対応することとしました。
現在まで期間が到来した十数名の従業員には、そのような形で労働条件を引下げて雇用契
約を更新しました。それでは困るといって契約を更新しなかった人は 1 名だけでした。そ
の人は B ビル管理会社の方に就職したとのことです。
10 月末日で契約期間が満了する X さんにもそのことを話し、時間給は 1400 円から 15%
弱減額し 1200 円とし、勤務日数を週 5 日から 4 日にすると伝え、この条件でよければ更新
すると言いました。ところが X さんは時間給を減額され所定労働日数も短くされたのでは
生活できないと納得されず、そのうち過去 2 年分のサービス残業があるといってそれを支
払えと言いだしました。所定終業時刻の午後 5 時(本社は午前 9 時~午後 5 時で実働 7 時間)
を超えてほぼ毎日 6 時すぎまでは残業したということで、1 日 1 時間とし算定して月 20 時
間で 2 年分の 480 時間分の残業手当の請求をするといっています。現場の作業者は交替制
で実働 8 時間としていますので、会社の就業規則では所定労働時間をこえた場合に 2 割 5
分増の残業手当を支払う旨定めていますが、それは法定労働時間を超えた意味で取り扱って
います。X さんには残業も命じていませんし、その時間もはっきりしません。多少は残業し
てくれたとしても、相当する特別手当を支払っています。X さんに支払っている特別手当は、
会社は特に残業は命じてはいませんが、日々の業務の事情で残業することもあるだろうとい
うので、その手当代わり(1400 円 ×1 箇月当たり 20 時間程度)という意味で月額 3 万円
としています。したがって、X さんに追加払いの必要はないと考えます。現場作業の人には
法定どおり残業手当はきちんと支払っています。
当社としては、今回の事態に遭遇して X さんだけ契約更新について特別扱いできません
ので、その旨話しましたが、結局本人が、新労働条件による更新に応じてくれなかったため、
更新契約が成立せず 10 月末日の期間満了で雇用が終了しました。雇用が終了となるなら多
少の功労金はお支払いしようとは思っていましたが、サービス残業などと会社が命じてもい
ない労働時間について一方的に請求されるのでは支払えません。
社長の妹の娘を 2 年前に採用し、経理事務を担当させているのは事実ですが、本件更新
条件の引下げは受注ビルの 25%もの減少とそれに伴う収益の相当な低下という経営事情に
よるもので、業務量の大幅な減少等に伴うものであって、X さんが邪魔になったわけではあ
りません。当社は期間雇用の人には兼業は禁止していませんので、解雇回避のためのワーク
シェアリングで少なくなった労働日や労働時間について、他でアルバイトなどで埋めあわせ
られます。Xさんには、受注が回復するまで従業員みんなと同じく痛みを分けあい我慢して
もらいたいと配慮しているのに、更新に応じてくれませんので雇用の終了は仕方がありませ
ん。
小問(1)
本件について、X の主張に基づいて本件雇止めを争い特定社会保険労務士と
して X を代理して都道府県労働局長にあっせん申請をするとして、当事者間
の権利関係を踏まえて記載するとした場合の「求めるあっせんの内容」はどの
ようになりますか。解答用紙第 1 欄に箇条書きで記載しなさい。ただし、残
業手当及び遅延損害金の請求は書かないでよいこと。
【考え方】
ただし書により、残業手当については書かなくてよいという指示が
ありますから、雇止めを主として考えることになります。
解答指針
第5回試験
第1問小問(1)
解答指針・注記
① X は Y 社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの
確認を求める。
② X は Y 社に対し、時間給 1,200 円で就労する義務のないことの
確認を求める。
③ X は Y 社に対し、平成 20 年 11 月 1 日以後、本件解決の日まで、
毎月 25 日限り、金 24 万 6,000 円の支払いを求める。
なお、この特別手当について、「何時間分」とか「残業手当相当」とかは、規定上明記し
てはいませんが、本人はその趣旨は分かっていると思います。
3
4
リンク
参照項目
遅延損害金
【参考】設問にただし書がなければ、次の請求項目も追加されます。
④ X は Y 社に対し、未払賃金として金 84 万円の金員の支払い、並
びに当該金員における各月の債権発生の翌日より支払済みまで、年
理解
雇止め法理
有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるもの
であって、その契約期間の満了時に有期労働契約を更新しな
5%(6%)割合での遅延損害金の支払いを求める。
いことにより有期労働契約を終了させることが、期間の定め
のない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をす
ることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させるこ
小問(2)
とと社会通念上同視できると認められること(労働契約法第
19 条第 1 号)。
X の立場に立って、X の代理人として Y 社に対する主張として、本件契約
が「実質的には雇用期間の定めのない契約」であるとの主張を基礎づける具体
的主張事実(4 項目)を解答用紙第 2 欄に箇条書き(例えば、「①定年まで雇
用を保障する特約があったこと。
」等の要領)で記載しなさい。
解答指針
【小問(2)
】
① 平成 10 年 11 月に、それまでの臨時員から嘱託契約に変更され、
そのときに、社長から「できるだけ長く勤務してください」と雇用
小問(3)
Y 社の立場に立って、Y 社の代理人として、本件が期間満了による雇用の終
了として相当であると主張する場合、その主張を基礎づける具体的主張事実の
要旨(4 項目)を解答用紙第 3 欄に箇条書き(例えば「①能力が著しく劣悪で
あること。
」等の要領)で記載しなさい。
継続を期待させる言葉があったこと
② 経理業務につき、正社員と同様に職務を遂行していたこと(X の
業務は、経理事務であり管理ビルが減っても業務の内容および量に
ついては変化がないこと)
③ 更新契約につき、労働条件について協議することもなく形式的に
契約書に印鑑を押すだけであり、更新管理は形骸化されていたこと
リンク
参照項目
雇止め
労働契約
法第19 条
に該当す
る場 合 で
も、 主 張
立 証は 必
要です。
【考え方】
小問(2)
(3)は、原処分「雇止め」という事実に基づき、処分相
④ 勤続 10 年の表彰を受け、勤務精勤の感謝状並びに金一封を受け
たこと
当であるのか否かを争います。したがって、X の代理人としては、
「当
該雇用契約は実質期間の定めのない契約であり、解雇権濫用法理を類
推することにより無効である」ということを基礎づける内容を、Y 社
の代理人としては「期間満了による、
客観的な雇用契約の終了である」
ということを基礎づける内容を、当事者の言い分より引用して箇条書
きにします。
本件では、X は実質期間の定めのない雇用契約とみなせるか否か、
もし、みなせるのであれば、契約期間満了に伴い雇止めとすることは
できず、従前の労働条件となるため、労働条件の切下げ(雇用の維持
を図るため)の合理的理由も争点になります。
【小問(3)
】
① X は嘱託社員であり、その業務における責任は正社員とおのずと
異なること
② 整理解雇を回避する(雇用の継続)ため全員の雇用の維持を前提
に労働条件の切り下げを提案したこと
③ 前項により、労働条件切り下げの合意を求めたところ、更新を希
望しなかった 1 名を除き全員が合意したこと
④ X が、新労働条件に応じなかったため、更新契約が成立しなかっ
たこと
・通達:厚生労働省基発第 1001016 号(パートタイム労働法)
5
6
小問(4)
小問(5)
Y 社の代理人の立場に立って、本件事案について個別労働紛争解決手続の
X の代理人の立場に立って、都道府県労働局長の「あっせん手続」において
「あっせん手続」において、本件紛争の争点を踏まえて、どのような解決が妥
Y 社と「労働契約を更新する」との合意が成立し、追加条項として X の同意
当と考えられますか。その理由と解決方法を解答用紙第 4 欄に 250 字以内で
を得て「X と Y 社間においてその余の債権・債務のないことを確認する」と
記載しなさい。
の合意書を作成した場合、X の主張する過去 2 年分の残業手当についてはど
うなりますか。法的見解を含め解答用紙第 5 欄に 250 字以内で記載しなさい。
【考え方】
この事件では、X は、一人親家庭であり子供が大学 2 年生ですから、
後 2 年間は現状維持してほしいというのが X の本音だと考えられま
す。おきらく社労士が Y 社の代理人になったとして、原職復帰させ
るとしたときの労働条件は次のようなものを考えました。
・X を原職復帰、ただし、賃金については 1,300 円程度の時間給
⇒子供が大学を出るまでの期間限定特約、その後はその時の会社
の経営状況によるが、他の従業員と同等に扱う。
・週 4 ~ 5 日勤務
⇒期間雇用者のほとんどがビルの清掃等の仕事で、X と同じく事
務方の仕事をしている者は他に 1 人しかいないこと
この条件だと、賃金額には遜色もなく、他の従業員との整合性も図
【考え方】
「和解する」ということは、どういうことかの理解を問う問題です。
・民法第 695 条【和解】
・民法第 696 条【和解の効力】
リンク
参照項目
和解
解答指針
当該あっせんによる和解契約文書で、X が合意すれば X は後日未払
いの残業手当を請求できなくなる。X に 2 年分の未払いの残業手当と
いう賃金債権があったとしても、合意が成立した後に X が当該債権
を請求すると、新たな紛争が発生することになり、結果和解をした意
味がなくなる。これを防ぐため債権債務不存在の確認がなされた場合
れると考えた結果です。
この段階で合意に向けて応じないのであれば、
には、民法の規定により X の有するその他の債権は、Y 社に移転した
最後の金銭解決に向けて方針を変更させることになります。
ものとして取り扱われる、あるいは、消滅することになる。
(211 字)
解答指針
X は、実質期間の定めのない労働契約とみなされるため、今回の雇止
第2問
めは権利濫用と判断される可能性が極めて高い。また、契約更新をす
特定社会保険労務士甲は、B 社の従業員であった A より依頼を受け、代理人と
るなら残業代は不問にすると言っていることも考慮すれば、2 年間の
して B 社に対し退職金の支払いを求めて民間紛争解決機関にあっせんを申立て、
期間限定で、X の事情を配慮した雇用条件で契約を更新することで折
同事件は B 社が A に対し金 30 万円を支払うことで和解が成立した。
り合える部分を模索したい。もし雇用条件で合意が得られないなら、
以下の(1)及び(2)に答えなさい。
Y 社は慰労金を考慮していたこと、この条件では働けないと更新を拒
んだ者もいることから、金銭解決を目指すことになる。(211 字)
7
8
小問(1)
解答指針
B 社は前記和解に基づき A に 30 万円を
依頼を受けられる。社会保険労務士法第 22 条第 2 項第 3 号の制限は、
支払った。その支払後 6 ヵ月ほどして、B
社は甲に対し、C より残業手当を請求した
A
いとして、所轄の都道府県労働局長に個別
労働関係紛争の解決の促進に関する法律に
基づくあっせんが申請されたので、B 社の
あっせん=和解
ことができますか。
結論と理由を解答用紙第 6 欄に 200 字
あっせん終了後
Cの事件の依頼
のであるので、A とのあっせんについては、和解契約が締結され、か
当該 B 社の依頼については、
社会保険労務士法上の制限はない。また、
A は退職しており、将来における利益相反も考えられない。
B社
あっせん
受任している期間中に限って相手方の他の事件の取扱いを禁止するも
つ、退職金も支払われており、完全に終結している。このことから、
代理
代理人となって手続を行って欲しいと依頼
してきた。甲は B 社のこの依頼を受ける
特定社労士甲
依頼
C
以内で記載しなさい。
(184 字)
小問(2)
前記和解は 30 万円を 3 ヵ月に分割して
毎月 10 万円ずつ支払うという内容であっ
た。B 社が A に対するこの分割金の支払
【考え方】
本件では、あっせん事件が完全に終結しているのか、まだ終結して
いないのかの理解を確認する問題です。
A と B 社の紛争について
B 社は、和解契約を履行した後なので、A との個別労働関係紛争は
完全に終結しています。したがって、社会保険労務士法第 22 条第 2
A
依頼
が完了する前に甲に対し、B 社の賃金体系
や労務管理のあり方について相談を依頼し
代理
あっせん=和解
あっせん終了後
3号業務の依頼
てきた場合、甲はこの依頼を受けることが
できますか。
結論と理由を解答用紙第 7 欄に 200 字
特定社労士甲
B社
和解金分割払い中
以内で記載しなさい。
項の制限は解除されています。
・権利義務関係:A と B 社の関係、個別労働関係(紛争は終結し、退職している)
B 社と C の紛争について
個別労働関係紛争が完全に終結していることから、法律上の制限が
【考え方】
A と B 社の紛争について
和解契約が調ったので、通達によれば本件紛争は終結しており、B
なく、また、当事者 A も退職していることから、将来における A と
社の依頼を受けることは可能です。しかし、B 社は和解契約を履行中
B 社の紛争は起こり得ないので、B 社の依頼を断る理由が見つかりま
なので、A との個別労働関係紛争は完全に終結したと考えないほうが
せん。
よいでしょう。将来、和解契約が履行されなかった場合は、
「和解契
・権利義務関係:B 社と C の関係、個別労働紛争
・依頼内容:社会保険労務士法第 2 条第 1 項第 1 号の 4
・制限法律:なし
【通達】厚生労働省基発第 0326009 号
約の不履行に基づく新たな紛争」
が起こることも予想できます。もし、
紛争が完全に終結していないと考えるのであれば、このような中、そ
の相手方より依頼を受け報酬を得るということは、将来における、利
益相反の可能性も否定できません。
・権利義務関係:A と B 社の関係、個別労働関係(紛争は終結していないを前提に
しています)
9
10
B 社の依頼について
B 社の依頼は、和解契約締結後(紛争解決手続終了後)の依頼で、
かついわゆる 3 号業務ですから、特定社会保険労務士甲は依頼を受
けることはできます。しかし、前述のように新たな紛争に発展するこ
とも考えられるわけですから、このような状況の中で B 社の依頼を
受けるということは、社会保険労務士の公正誠実義務に反することに
なります。よって、
社会保険労務士としての品位を害しないためにも、
依頼は断ることになります。
・依頼内容:社会保険労務士法第 2 条第 1 項第 3 号
・制限法律:社会保険労務士法第 1 条の 2、第 16 条
解答指針
依頼は受けられない。仮に B 社が和解金を支払わなかった場合には、
和解契約が債務不履行となり、新たな紛争が発生することになる。し
たがって分割支払期間中は受任している期間と考えるべきである。そ
のため、この状況で紛争の相手方の依頼を引き受けることは、A に対
する信義則違反となり、債務が履行されないときは利益が相反するこ
とになる。よって、社会保険労務士としての公正誠実義務に反するこ
とになる。
(191 字)
【受任可能としたときの考え方】
厚生労働省基発第 0326009 号では第 22 条第 2 項の制限に
アドバイス
ついて、「事件が終了すれば相手方の別の事件を取り扱える」
としています。ならば、本件 B 社の依頼である、いわゆる 3
号業務等にも倫理上の制限がなくなるわけですから、事件が
完全に終結したことを説明できれば、当該通達を根拠に「依
頼を受けられる」ことになります。
11
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