...

論 文 内 容 要 旨 論文題目 機能的矯正装置を用いた下顎頭再生機序の

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

論 文 内 容 要 旨 論文題目 機能的矯正装置を用いた下顎頭再生機序の
別紙様式2
論
論文題目
文
内
容
要
旨
機能的矯正装置を用いた下顎頭再生機序の解明
学位申請者
林
英貴
下顎頭は下顎骨の成長中心と言われており、下顎骨の軟骨性成長をコントロールしてい
る。これらを実証すべく、下顎頭の骨折や成長発育障害により顎変形症が引き起こされる
ことや、成長期ラットに実験的な下顎頭骨折を施すことにより左右下顎頭の高さの非対称、
下顎骨の変形、劣成長などが引き起こされることが報告されている。このことから、成長
期における下顎頭の傷害は、下顎骨の正常な成長発育を妨げると考えられる。
成長期における下顎頭損傷後の下顎頭修復および下顎骨の形態変化については、成長期
下顎骨の成長発育に対する下顎頭切除の影響が様々な動物実験より報告されている。また、
下顎頭を切除した成長期ラットに下顎骨前方誘導装置を装着することによって、下顎骨の
形態的な回復が起こったとの報告が見られる。これらの結果から、下顎頭損傷後の下顎頭
の成長発育に筋機能力が大きく影響していることが示唆されており、機能的矯正装置装着
によって下顎頭が修復され、下顎骨が正常に成長する可能性があると考えられる。しかし、
下顎頭切除部の下顎骨の詳細な三次元的形態変化、切除直後の下顎頭の詳細な再生機序、
筋機能と下顎頭再生の関連性については未だ十分に明らかにされておらず、不明な点が多
い。本研究では、下顎頭の再生機序と下顎骨の成長および筋機能の関係性の解明を目的と
した。
実験には成長期(4 週齢)の雄性 Wistar 系ラットを用い、片側下顎頭切除術を行ったもの
を切除群、下顎頭切除後に下顎骨前方牽引装置を装着したものを切除+装置群とした。また、
これらの実験群と同週齢の無処置ラットを対照群とした。
実験群、対照群ともに実験開始後 1,2,4,6,8 週で屠殺し、ホルマリン固定した頭部をマイ
クロ CT 撮影し、経時的に顎顔面形態の観察および下顎頭部の計測を行った。その後、試
料の脱灰、組織切片の作製後、H-E 染色下において下顎頭の組織学的変化を観察した。ま
た、装置除去後に形態的な回復の評価に加えて、機能的な回復を評価すべく、実験開始 8
週のラットにテレメトリー長時間自動計測システムをラット体内に埋入し、回復期を 1 週
間設けた後、両側咬筋および切除側側頭筋の終日の筋活動を測定した。
その結果、以下の所見が得られた。
1. 本実験で作製した装置を用いて、成長期を含む 12 週齢時まで下顎骨の前方位を継続さ
れることが可能であった。また、実験期間中の体重変化は、装置装着群において装置装
着直後に対照群と比べてわずかな減少を示したが、その後は対照群とほぼ同等であった。
2. 形態計測学的検討から、切除群切除側において対照群と比較して下顎骨の有意な劣成長
を認めたが、切除+装置群の下顎骨は対照群と同程度の成長を示した。
別紙様式2
3. 下顎頭部の経時的なマイクロ CT 像より、切除群と比較し、切除+装置群において術後
4,6,8 週において良好な形態の下顎頭再生が認められた。また、下顎頭の形態計測を行
った結果、切除群では形態の回復がほとんど見られなかったのに対し、切除+装置群で
は経時的に良好な形態の回復が確認された。
4. 組織学的観察より、切除群の術後 1 週では下顎頭欠損部は間葉性組織で満たされていた。
術後 2 週では下顎頭切断面の一部に増殖軟骨層や肥大軟骨層が認められ、著しく肥厚し
た関節円板と間葉性組織が、下顎頭切除によって生じた広い関節腔を満していた。その
後の経過においても、部分的に軟骨層を欠く不規則な軟骨層構造が認められた。一方、
切除+装置群では術後 1 週では、下顎頭欠損部において下顎頭様形態に凝集した間葉性
組織が認められ、術後 2 週では欠損部を埋めるように骨・軟骨組織再生が認められ、術
後 4 週では肥大軟骨層の著しい肥厚が見られたが、一般的な軟骨層構造を示していた。
その後の経過においても正常な下顎頭様の形態を示し、術後 8 週では対照群に近い形態
と組織構造を示した。
5. 筋電図の計測により、対照群では咬筋の 5%活動レベルにおいて duty time の有意な左
右差は認められなかった。これに対し、切除群の咬筋では対照群と比較し大きな左右差
を示した。一方、切除+装置群では測定した両側咬筋、切除側側頭筋のいずれにおいて
も 5%活動レベルで対照群と比較して有意に大きな値を示し、両側咬筋の間には有意な
差も認めなかった。
以上のことから、下顎頭切除術後に下顎骨の前方誘導を図ることにより、損傷した下顎
頭の良好な修復再生反応が起こり、患側下顎骨の成長を補償可能なことが明らかとなった。
また、下顎頭の再生に伴い咀嚼筋活動の左右非対称性が消失し、機能的回復が起ることが
示された。
Fly UP