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日本における路面電車の現状分析及び発展可能性についての研究 環境

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日本における路面電車の現状分析及び発展可能性についての研究 環境
日本における
日本における路面電車
現状分析及び発展可能性についての
発展可能性についての研究
における路面電車の
路面電車の現状分析及び
についての研究
環境システム工学専攻
都市交通研究室
繁田慶一
指導教員
松本昌二
佐野可寸志
1.
はじめに
現在、我が国の交通問題として渋滞、渋滞による
表国 -1 対象路線一覧
運行都市
事業者
日本
大気汚染・騒音、モータリゼーションの進展による
公共交通機関の衰退と、これに伴う交通弱者の増加、
自動車利用施設の増加による中心街の衰退等、様々
な問題が指摘されている。京都議定書では明確な
CO2 の削減目標が義務づけられているため、燃料消
費効率の良い公共交通機関としてバス・路面電車
(LRT)等の利活用施策等、効率的な運用が望まれ
ている。
国
フランス
近年、諸外国では路面電車が見直され、LRT の名
称の下、新たな交通機関としての役目を担うように
なってきている。日本においても、路面電車の再評
価や、低床車両などの新型車両導入などが行われて
いるが、実際は、新たな路線が作られているわけで
はなく、多くの都市では乗客が減少し、不採算のた
めに路線が縮小されるケースも見受けられる。
そこで本研究では、平成 18 年現在日本の 19 都市
アイルランド
イギリス
都市データ
データ、運行データ、路線データを取得し、現状の
路面電車についての問題点を把握する。また、欧米
いる LRT についてもデータを取得し、日本の路面電
車との比較を行い、日本の路面電車と英仏の LRT の
違いについて検討することを目的とする。
路線データ
運行データ
2.研究対象
研究対象路線
対象路線と
路線とデータ
本研究は路面電車、LRT(Light Rail Transit)
を対象として調査を行った。日本の路線としては現
在運行されている 19 路線、及び 2005 年 3 月 31 日
業務成績
に廃線となった岐阜市内軌道線、美濃町軌道線、欧
米の路線としてフランス 14 路線、アイルランド 2
路線、イギリス 5 路線を対象として調査、研究を行
った。表-1 に対象路線、表-2 に対象データを示す。
路線名
一条・山鼻軌道線
市内軌道線
世田谷軌道線
三の輪早稲田軌道線
東田本線
市内軌道線
美濃町軌道線
市内軌道線
万葉線
福武線
大津軌道線
嵐山軌道線
阪堺線・上町線
東山線・清輝橋線
市内軌道線
宮島線
土佐電気鉄道
伊予鉄道
市内軌道線
長崎電気軌道
市内軌道線
熊本市交通局
市内軌道線
鹿児島市交通局
市内軌道線
運行都市
路線名
LineA
グルノーブル
LineB
LineT1
イル=ド=フランス
LineT2
LineT1
リヨン
LineT2
モンペリエ
Line1
Line1
ナント
Line2
Line3
オルレアン
Line1
ルーアン
Line1
LineA
ストラスブール
LineB
LineA
ダブリン
LineB
ウェスト・ミッドランド
クロイドン
シェフィールド
マンチェスター
ノッティンガム
札幌市交通局
函館市交通局
東急電鉄
東京都交通局
豊橋鉄道
名古屋鉄道
富山地方鉄道
万葉線株式会社
福井鉄道
京阪電鉄
京福電鉄
阪堺電気軌道
岡山電気軌道
広島電鉄
表-2 使用データ一覧
データ
日本 一覧
で運行されている路面電車 21 路線について、沿線
(フランス、イギリス、アイルランド)で運行して
札幌市
函館市
東京都
豊橋市
岐阜市
富山市
高岡市
福井市
大津市
京都市
大阪市・堺市
岡山市
広島市
高知市
松山市
長崎市
熊本市
鹿児島市
経費
都市人口
都市データ
都市面積
可住地面積
人口密度
DID人口密度
DID面積
路線データ
内部重点率
産業別人口構成
中間人口比率
通勤時間
乗用車保有台数
乗用車保有率
就業者数
運行データ
高等学校数
病院数
世帯数
路線距離
開業年月日
車両軌間
路線系統数
停留所数
車両数
走行キロ
ピーク時運行間隔
ピーク時運行本数
業務成績
平均運行回数
平均運行間隔
経費
表定速度
初乗り運賃
平均運賃
運賃収受方式
職員数
1㎞当り路面電車数
乗車人数
通勤乗車人数
通学乗車人数
定期外乗車人数 旅客人キロ
平均通過数量
平均輸送キロ
運賃収入
営業収入
事故件数
営業費
運送費
人件費
経費
修繕費
鉄軌道営業損益
欧米都市人口
都市面積
就業者数
圏域人口
圏域人口密度
路線距離
停留所数
車両数
開業年
分離路線割合
専用路線割合
平均駅間距離
平均運賃
初乗り運賃
1日乗車券料金
週の定期券料金
月の定期券料金
料金制度
割引制度
1㎞当り路面電車数
ピーク時運行間隔
オフピーク時運行間隔
走行キロ
表定速度
利用者数
平日1日当り利用者数
1㎞当り路面電車数
利用者当りのコスト
だ
考えられる。また広島市内軌道線、
荒川線が特に運行間隔に対しての乗車人数が多い
日本の路線の現状を把握するため、年推移で分析
傾向がみられたが、路線規模の多さ、人口密度の多
を行った。
図-1 には走行キロと乗車人数の関係を平成 2~14 さがそれぞれ効いていると考えられる。
走行キロ
営業キロと乗車人数の関係
年まで 4 年おきで示す。グラフの傾きの傾向から、
y = 6.3916x - 404.72
広島市内軌道
全国の路線において、走行キロが乗車人数に与える
R = 0.6819
広島市内軌道
y = 6.7387x - 666.36
R = 0.7122
影響が年推移で減少していることがうかがえる。ま
大津市内軌道
)人
y = 5.7841x - 360.55
R = 0.6995
た、広島市内軌道線においては他の全国の路線の傾
千
(数
y = 4.489x + 576.66
長崎市内軌道
人
R
= 0.7523
車
向よりも走行キロ数に対する乗車人数が多くなっ
乗
宮島線
ている。大津市内軌道線においては乗車人数が年推
平成2年
平成6年
平成10年
移で減少していることが分かる。
平成14年
3.現状分析
線 ということが
50,000
2
45,000
40,000
2
35,000
30,000
2
25,000
2
20,000
15,000
10,000
5,000
0
0
存
含
む)を評価するため、乗車人数、旅客人キロ、営業
収入、営業費についてそれぞれ沿線、路線、運行デ
ータとの比較を行い、乗車人数、旅客人キロに与え
る要因について分析を行った。
(1)日本の路線に関する分析
日本の路面電車の乗車人数に影響する要因を探
るため、走行キロ、平均往復運行間隔、路線系統数
と乗車人数の関係を図-2、図-3、図-4 に表す。
図-2 のグラフをみると走行キロが乗車人数に影
響を与えていることがわかる。全路線の傾向よりも
広島市内軌道線、長崎市内軌道線、都電荒川線、世
田谷軌道線が走行キロに対しての乗車人数が多い
傾向が見られる。広島市内軌道線においては日本最
大の規模を持つ路面電車であり、沿線には観光施設、
生活に必要な様々な施設が多くなっており、利便性
が非常に高く、広島市の主流名交通手段として利用
されている。他の路線の走行キロ数に対する乗車人
数の傾向よりも乗車人数が多いのはこのためだと
考えられる。長崎市内軌道線においては市内の主な
観光手段として利用されており、均一制料金で 100
円と大変安価なために利用者が多いと考えられる。
図-3 のグラフを見ると運行間隔が短いほど乗車
人数が多い傾向が見られ短ければ短いほどに乗車
人数の増加傾向は強いことがわかる。万葉線、岐阜
市内線の 2 路線の運行間隔が長くなっている。この
2 路線は共に走行キロ数の減少により営業損益の赤
字を減らしている路線である。走行キロ数の要素と
して運行間隔、路線距離などがあるが、その中で運
行間隔を減らすことにより赤字の減少を行った路
4.旅客需要の
旅客需要の計量分析
現 の路面電車(岐阜市内線、美濃町軌道線を
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
走行キロ
営業キロ(㎞)
6,000
7,000
図-1 走行
走行キロ
キロと
キロと乗車人数の
乗車人数の関係
(平成 2~14 年)
乗車人数と走行キロ
走行キロと乗車人数
乗車 45000
+ 1644.4
40000 y = 4.R9181x
=
0.
5
891
人数)人千35000
30000
長崎市内
(千(数人25000
20000
世田谷 荒川
人)車乗15000
広島市内軌道線
2
10000
5000
0
0
宮島線
大津
土佐
福武
1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000
走行キロ(㎞)
走行キロ(千㎞)
図-2 走行キロ
走行キロと
キロと乗車人数の
乗車人数の関係
乗車人数と平均往復運行間隔
平均往復運行間隔と乗車人数
乗車 45,40,000000
人数)人35,30,000000
(千千(数人25,20,000000
人)車乗15,000
10,000
5,000
0
広島市内線
荒川線
岐阜市内線
万葉線
0
2
4
6
8
10
平均往復運行間隔(分)
平均往復運行間隔(分)
12
図-3 平均往復運行間隔と
平均往復運行間隔と乗車人数の
乗車人数の関係
乗車人数と系統数
系統数と乗車人数
乗 45,40,000000
車) 35,000
人人30,000
数千( 25,000
(千数人20,000
人車乗15,000
) 10,000
5,000
0
荒川線
宮島線
世田谷線 大津線
0
2
広島市内
長崎市
土佐 松山市
4
系統数
系統数
6
図-4 路線系統数と
路線系統数と乗車人数の
乗車人数の関係
8
図-4 のグラフを見ると全国の路線は主に 1~2 系統
が多いものの、路線系統数が多い路線ほど乗車人数
が多い傾向が見られることがわかる。広島市軌道線
においては 7 系統と多く、乗車人数においても多い
傾向が見られる。
表-3 には従属変数を日本の路面電車の乗車人数
とした重回帰分析の出力結果を示す。説明変数を路
線距離(㎞)、平均運行間隔(分)、路線系統数、DID
人口密度(人/㎞ )、ダミー変数を東京都の 2 路線
(都電荒川線、東急世田谷軌道線)、広島市内軌道
線、宮島線、長崎市内軌道線とし、R =0.843、自由
度調整済 R =0.776 の重回帰式を得た。
変数の符号を見ると、平均運行間隔がマイナスと
なっており、運行間隔が長くなるほど乗車人数は少
なくなるということがわかる。路線距離、系統数、
DID 人口密度の符号はプラスとなっており、変数の
中で系統数のt値が2.183と高く1.96以上なため、
5%有意となっている。この重回帰式から路面電車に
おいては路線を長くするよりも、路線網を多くする
ことにより、利用者数の増加が見込めるということ
が考えられる。
日本の路面電車の旅客人キロに影響する要因を
探るため、平均運賃、DID 人口密度、平均運行間隔
と旅客人キロの関係を図-5、図-6、図-7 に示す。グ
ラフを見ると各変数が旅客人キロに影響を与えて
いることがわかる。ここでも乗車人数の要因と同様
に広島市内軌道線が他の路線よりも大きい傾向が
見られた。
表-4 には従属変数を旅客人キロ、説明変数を路線
距離、平均運行間隔、DID 人口密度、平均運賃、ダ
ミー変数を東京都の 2 路線、広島、長崎の路線とし
た重回帰分析の出力結果を示す。R =0.870、調整済
R =0.814 の重回帰式が得られた。変数の符号を見る
と、平均往復運行間隔、平均運賃がマイナスとなっ
ており、運行間隔が長くなるほど乗車人数は少なく
なるということがわかる。運賃について
2
2
2
2
2
表-3モデル1乗車人数の
(日本)
乗車人数の重回帰分析出力結果(
重回帰分析出力結果
日本)
乗車人数(千人/年)
説明変数
n = 21
路線距離(㎞)
R2 = 0.843 平均運行間隔(分)
調整済R2 = 0.776系統数
DID人口密度(人/㎞ )
(定数)
ダミー変数
東京ダミー
広島、長崎ダミー
2
係数
標準化係数 t値
188.929
0.113 0.979
-551.395 -0.138 1.093
1800.506
0.284 2.183
0.810
0.170 1.073
-2936.199
-0.469
係数
標準化係数 t値
11392.734
0.360 2.270
14724.623
0.555 4.360
も高ければ旅客人キロの減少につながるが、運行間
隔ほどの影響が与えられていないことが分かった。
路線距離、DID 人口密度の符号はプラスとなってお
り、変数の中で路線距離のt値が高く有意となって
いる。この重回帰式から路面電車においては路線が
長く、運行間隔が短いほど旅客人キロの増加につな
がるということがいえる。
旅客人キロと平均運賃
平均運賃と旅客人キロ
旅客 120,000
人キ)㎞100,000
人 80,000
(千ロ(千ロ 60,000
人㎞キ人 40,000
) 客旅 20,000
0
宮島線
広島市内
大津線
長崎
福井
0.0
美濃町線
20.0
都電荒川線
万葉線
40.0
平均運賃(円/㎞)
平均運賃(円
/日㎞)
60.0
80.0
図-5 平均運賃と
平均運賃と旅客人キロ
旅客人キロ
人口密度と旅客人キロ
旅客人キロとDID人口密度
DID
旅客 120,000
人キ)㎞100,000
ロ(人千( 80,000
千人ロキ 60,000
㎞)人客 40,000
旅 20,000
0
広島市内
宮島線
大津市内
0.0
図-6
2,000.0 4,000.0 6,000.0 8,000.0 10,000.0 12,000.0
DID人口密度(人/㎞
DID
人口密度(人/㎞) 2)
2
DID
人口密度と
人口密度と旅客人キロ
旅客人キロの
キロの関係
旅客人キロと平均運行間隔
平均運行間隔と旅客人キロ
旅客120,000
人キ)㎞人100,80,000000
千
(千ロ(ロキ 60,000
人㎞人客 40,000
)旅 20,000
0
長崎市内
広島市内
宮島線
長崎 大津
岐阜市内
0
2
4
6
8
平均運行間隔(分)
平均運行間隔(分)
10
図-7 平均運行間隔と
平均運行間隔と旅客人キロ
旅客人キロの
キロの関係
表-4モデル1
旅客人キロ
(日本)
旅客人キロの
キロの重回帰分析出力結果(
重回帰分析出力結果
日本)
旅客人キロ(千人km)
説明変数
n = 21
路線距離(㎞)
R2 = 0.870 平均運行間隔(分)
調整済R2 = 0.814 DID人口密度(人/㎞ )
平均運賃(円/人㎞)
(定数)
ダミー変数
東京ダミー
広島、長崎ダミー
2
12
係数
標準化係数 t値
1754.456
0.321 2.784
-2949.355 -0.224 -1.985
2.454
0.157 1.082
-41.807 -0.167 -0.167
-686.184
-0.031
係数
標準化係数 t値
16510.008
0.159 1.107
56078.834
0.643 5.597
10
9
8
り)㎞
乗
/人
車
千(
人
数
数
(千人車乗
人り当㎞
日
㎞
)
R2 = 0.5943
7
6
5
4
3
2
1
0
0
5
10
15
20
0
1
1
1.5
㎞当り路面電車数(台/㎞)
2
2.5
1㎞当り路面電車数(台/㎞)
図-8 1 ㎞当り路面電車数
路面電車数と
車数と 1 日当り
日当り乗車人数(
乗車人数(英仏)
英仏)
ことがわかる。イギリス、フランスの路線では運行
30
図-9 ピーク時運行本数
ピーク時運行本数と
時運行本数と 1 ㎞当り乗車人数(
乗車人数(英仏)
英仏)
駅間距離と1㎞当り乗車人数
1日1㎞当り乗車人数と駅間距離の関係
㎞当
り乗
車人
(千数
人
日㎞
)
1
10
) y = -0.0079x + 9.0405
2
IDF T1
㎞
R = 0.4451
/ 8
人
(
IDF T2
数6
人
車
乗4
り
当2
㎞
1
0
Sheffield
0
200
400
600
800
駅間距離(m)
1000
1200
駅間距離(m)
図-10 駅間距離と
駅間距離と 1 ㎞当り乗車人数(
乗車人数(英仏)
英仏)
40.0
35.0
30.0
h)/ 25.0
(㎞度20.0
速定
表15.0
10.0
5.0
0.0
表定速度と駅間距離(日本、イギリス、フランス)
駅間距離と表定速度(日本、英仏)
日本
イギリス、フランス
表
定
速
度
(㎞
)
㎞
当
り乗
車
人
数
(千
人
日
㎞
)
R = 0.8582
2
英仏
日本
0
200
400
大津線
宮島線
岐阜市内
嵐山線
阪堺線
600
福武線
800
1000
駅間距離(m)m)
駅間距離(
図-11 駅間距離と
駅間距離と表定速度の
表定速度の関係
1200
ピーク時運行間隔と1㎞当り乗車人数(日本、英仏)
1日1㎞当り乗車人数とピーク時運行間隔(日本、イギリス、フランス)
英仏
1 8.00
7.00
)
㎞
日6.00
/
人
( 5.00
数
人4.00
車
乗
り3.00
当
㎞
1 2.00
日
1
1.00
0.5
25
ピーク時運行本数(本/h)/h)
ピーク時運行本数(本
日本
イギリス、フランス
2
R = 0.7361
日本
R2 = 0.4519
/
90
)
80
日
/
人 70
千
( 60
数
人 50
車 40
乗
り 30
当
20
日
1
10
0
R2 = 0.2103
1日1㎞当り乗車人数とピーク時運行本数
/h
100
ピーク時運行本数と1㎞当り乗車人数
㎞
当
1
/
/
1
日
当
り乗
車
人
数
(千
人
日
)
1㎞当り路面電車数と1日当り乗車人数の関係
間隔による乗車人数が日本の路線に比べ多い傾向
が見られた。
/
(2)イギリス、フランスの路線についての分析
イギリス、フランスの路線の乗車人数に有効な変
数について検討を行うために、それぞれの変数につ
いて比較を行った。現在あるデータについて相関の
高い変数についてグラフに示した。
図-8 は 1 ㎞当り路面電車数と 1 日当り乗車人数、
図-9にはピーク時運行本数と1日1㎞当り乗車人数、
図-10 には駅間距離と 1 日 1 ㎞当り乗車人数のグラ
フを示した。グラフを見ると各変数が 1 日当り乗車
人数、1 日 1 ㎞当り乗車人数に影響を与えているこ
とがわかる。また欧米全体の路線よりも IDF の 2 路
線については各変数による乗車人数が多い傾向が
見られた。
(3)日本とイギリス、フランスの路線
取得したデータの中で日本の路線全てとフラン
ス、イギリスの路線を LRT として路面電車と LRT の
比較を行った。
図-11 には駅間距離と表定速度の関係について、
日本とラフを見るとイギリス、フランスでは駅間距
離が長いほど表定速度が速いという相関が強く見
られた。日本では専用軌道を走行する路線(宮島線、
大津市内軌道線)においては表定速度が速くなって
いるが、多くの路線では駅間距離が表定速度にあま
り影響しておらず、駅間距離 400m 前後、表定速度
が 15 ㎞/h 前後に分布している。またフランスの路
線の多くは専用、併用に関わらず、表定速度が 20
㎞/h 前後と速くなっている。
図-12 にはピーク時運行間隔と 1 日 1 ㎞当り乗車人
数の関係を日本とイギリス、フランスの路線につい
てグラフに示した。グラフを見るとピーク時運行間
隔が短いほど乗車人数が多い傾向となっている
1㎞当り路面電車数と1 日当り乗車人数
0.00
0.0
5.0
10.0
15.0
ピーク時運行間隔(分)
20.0
ピーク時運行間隔(分)
図-12 ピーク時運行間隔
ピーク時運行間隔と
時運行間隔と 1km 当り乗車人数の
乗車人数の関係
表-5には従属変数を1日当り乗車人数とした重回
2
2
日本とイギリス、フランスの路線において運行頻
度を変化させた場合の乗車人数の増加傾向を弾性
値分析により比較する。
5.弾性値による
弾性値による比較分析
による比較分析
㎞当り路面電車数と弾性値
㎞当り路面電車数増加による弾性値の変化(LRT、路面電車)
1
1.00 イギリス、フランス
0.95 日本
0.90
値0.85
性
弾
0.80
0.75
0.70
0
1
2
3
4
5
1 ㎞当り路面電車数(台/㎞) /
英仏
弾
性
値
日本
㎞当り路面電車数(台 ㎞)
図-15 1km 当り路面電車数増加による
路面電車数増加による弾性値
による弾性値
ピーク時運行本数増加による1日1㎞当り乗車人数の変化(日本、英仏)
ピーク時運行本数と
1㎞当り乗車人数
1 10.00
㎞
英仏
当
り乗 9.008.00 日本
英仏
7.00
車
6.00
日本
人
5.00
数
4.00
(千 3.00
人 2.00
1.00
㎞
) 0.00 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
)
㎞
日
/
人
千
(
数
人
車
乗
り
当
㎞
1
日
1
荒川線
英仏
0.90
0.80
弾
性
値値性弾
0.70
0.60
2.00
0.50
日本
0.40
0.00
5
45.0
ピーク時運行本数と弾性値
1.00
宮島線
0
6
図-16 ピーク時運行本数
ピーク時運行本数と
時運行本数と乗車人数
広島市内
長崎
図-14 1km 当り路面電車数と
路面電車数と乗車人数
ピーク時運行本数(本/h) /h)
ピーク時運行本数(本
世田谷
)10.00
㎞
/人
8.00
千
(数
6.00
人
車
乗
り当4.00
㎞
)
日
/
人
千
(
数
人
車
乗
り
当
日
1
/
1日1㎞当り乗車人数とピーク時運行間隔
12.00
㎞当り路面電車数増加による1日当り乗車人数の変化(LRT、路面電車)
1
1
㎞当り路面電車数と1日当り乗車人数
日
当
180.00 イギリス、フランス
り乗 160.00 日本
英仏
140.00
車
120.00
人
100.00
数
(千 80.60.40.000000
人 20.00
日本
日
0.00
) 0 1 2 3 4 5 6
㎞当り路面電車数(台/㎞) /㎞)
1㎞当り路面電車数(台
/
帰分析の出力結果を示す。説明変数を 1 ㎞当り路面
電車数、駅間時間、400m 圏域人口、ダミー変数を
IDF、イギリスの郊外路線(クロイドン、シェフィ
ールド、マンチェスター、ノッティンガム)、スト
ラスブールとし、R =0.871、調整済 R =0.781 の重回
帰式を得た。変数を見ると、1 ㎞当りの路面電車数
はt値が 3.590 と高く、平日 1 日当りの乗車人数の
要因として強い影響を与えているといえる。
表-6には従属変数を1日1㎞当り乗車人数とした重
回帰分析の出力結果を示す。説明変数をピーク時運
行本数、駅間距離、ダミー変数を IDF、イギリスの
郊外路線、ストラスブールとし、R2=0.928、調整済
R2=0.898 の重回帰式が得られた。変数の中でピーク
時運行本数のt値が 4.256 と高く、1 日 1km 当り乗
車人数の要因として強い影響を与えているといえ
る。
10
ピーク時運行間隔(分)
15
20
図-13 ピーク時運行間隔
ピーク時運行間隔と
時運行間隔と 1km 当り乗車人数(
乗車人数(日本)
日本)
表-5モデル1
1 日当り
の重回帰分析出力結果(
日当り乗車人数の
乗車人数
重回帰分析出力結果(英仏)
英仏)
フランス、イギリス 平日1日当り乗車人数(千人/日)
説明変数
係数
n = 6
1㎞当り路面電車数(台/㎞)
駅間時間(分)
R2 = 0.871
調整済R2 = 0.761 400m圏域人口(千人)
(定数)
ダミー変数
係数
IDFダミー
UKダミー
Strasbougダミー
28.033
30.860
0.467
-76.435
-70.720
40.621
21.888
標準化係数t値
2.103 3.581
0.264 0.187
0.626 2.132
-1.677
標準化係数t値
-1.338 -2.526
0.901 3.093
0.414 2.817
0.30
0.20
0.10
0.00
0.0
5.0
10.0
ピーク時運行本数(本/h)
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
40.0
45.0
ピーク時運行本数(本/h)
図-17 ピーク時運行本数
ピーク時運行本数増加
時運行本数増加による
増加による弾性値
による弾性値
表-7モデル1
1 日当り
(日本)
日当り乗車人数の
乗車人数の重回帰分析出力結果(
重回帰分析出力結果
日本)
1日当り乗車人数(千人/日)
説明変数
係数
標準化係数 t値
n = 21
1㎞当り路面電車数(台/ 8.113
0.523 3.933
9.170
0.527 3.900
R2 = 0.746 系統数
-25.195
-2.195
調整済R2 = 0.683 (定数)
ダミー変数
係数
標準化係数 t値
東京ダミー
38.952
0.449 3.131
広島、長崎i以外ダミー -2.831 -0.055 -0.390
表-6モデル1
1 日 1 ㎞当り乗車人数の
乗車人数の重回帰分析出力結果(
重回帰分析出力結果(英仏)
英仏) 表-8 1 日 1 ㎞当り乗車人数の
乗車人数の重回帰分析出力結果(
重回帰分析出力結果(日本)
日本)
フランス、イギリス 1日1㎞当り乗車人数(人/日km)
説明変数
係数
標準化係数t値
n = 5
ピーク時運行本数(本/h)
0.204 0.438 4.256
R2 = 0.926
駅間距離(m)
-0.006 -0.504 -5.318
調整済R2 = 0.898 (定数)
0.455
4.238
ダミー変数
係数
標準化係数t値
IDFダミー
3.455 0.476 5.902
UKダミー
-0.015 -0.003 -0.027
Strasbougダミー
0.692 0.095 1.118
1日1㎞当り乗車人数(千人/日㎞)広島、長崎
モデル1
説明変数
係数
標準化係数 t値
n = 21
ピーク時運行間隔(分) -0.347 -0.557 -2.977
0.087
0.057 0.344
R2 = 0.741 系統数
4.997
3.155
調整済R2 = 0.676 (定数)
ダミー変数
係数
標準化係数 t値
東京ダミー
3.975
0.524 3.106
広島、長崎以外ダミー -1.800 -0.400 -2.210
図-13 には日本の路面電車のピーク時運行間隔と
1 日 1 ㎞当り乗車人数の関係をグラフで表す。乗車
人数の重回帰式では東京の2路線、広島市内軌道線、
長崎市内軌道線、宮島線をダミー変数とした式を算
出し、青枠の路線(運行間隔は短いが、乗車人数が
比較的少ない路線)についての重回帰式(青線)を
算出していたが、青枠内にある路線にダミー変数を
投入し、重回帰分析を行うことで、赤線のような広
島、長崎の路線についての重回帰式を算出し、フラ
ンス、イギリスの路線と弾性値の比較を行う。
表-7、表-8 には広島、長崎の路線についての重回
帰式の算出結果を示す。この際、表-5、表-6 のイギ
リス、フランスの重回帰式と従属変数を合わせるた
め、日本の路線の乗車人数を表-7では365日で割り、
表-8ではさらに路線距離で割った1日当り乗車人数、
1 日 1 ㎞当り乗車人数を従属変数とした重回帰式を
算出した。
図-14、図-15 には表-5(英仏)と表-7(日本)の
重回帰式による1㎞当り路面電車数増加による乗車
人数の増加傾向、弾性値変化の傾向をグラフで示す。
グラフを見ると1㎞当り路面電車数増加による乗車
人数の増加傾向はイギリス、フランスが高くなって
いることがわかる。弾性値においては大きな差は見
られないものの、わずかながら日本が小さい値とな
っていた。図-16 にはピーク時運行本数増加による
1 日 1 ㎞当り乗車人数の増加傾向を、図-19 には弾
性値変化を示す。図-16 を見るとピーク時の運行本
数が増加することで乗車人数は増加しているが、イ
ギリス、フランスの増加傾向が運行本数 20 本から
日本の増加傾向に比べ大きくなっている。弾性値を
見ると日本の路線においては弾性値が減少してい
る傾向が見られる。
日本の主に併用軌道を通る路線においては表定
速度が遅くなっているが、主に専用軌道を走行する
路線においては路線距離にもよるが、表定速度が速
くなっている。イギリス、フランスの路線において
は併用軌道であっても表定速度が 20 ㎞/h 前後と速
くなっている。この状況においては運行頻度をあげ
ることによる弾性値の増加が 1 日当り乗車人数、1
日 1 ㎞当り乗車人数において見られた。日本とイギ
リス、フランスの路線の比較において 1 日当り乗車
人数では共に運行頻度の増加による弾性値の増加
はみられたが、1 ㎞当り乗車人数ではイギリス、フ
ランスの路線のみ弾性値が増加している傾向が見
られた。1 日 1 ㎞当り乗車人数において、弾性値が
増加するということは単に乗車人数が多くなると
いうだけでなくトリップ長が長いということがい
えるため、イギリス、フランスにおいては全線での
利用数が増加するということがわかった。
5.まとめ
参考文献
1)国土交通省鉄道局監修;平成 2~14 年度 鉄道
統計年報
2)総務省統計局;我が国の人口集中地区、人口集
中地区別人口・境界図
3)South Yorkshire Passenger Transport Executive. ;
Comparative performance data from French tramways
systems, Final report. December 2003. SEMALY &
FaberMaunsell.
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