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混載輸送ネットワーク設計問題に対するLagrange緩和法
混載輸送ネットワーク設計問題に対する Lagrange 緩和法 A Lagrange Relaxation Method for the Less-Than-Truckload Network Design Problem 片山 直登* By Naoto KATAYAMA 1. 路設計を扱い,路線の最低便数,木条件および積換え はじめに 近年,物流の小口輸送化・多頻度輸送化が進み,小 口輸送・多頻度輸送を効率的に処理するための混載・ 共同化輸送の取り組みが行われている.これらを効率 回数を制約とし,混載輸送費用と積替えターミナルに おける費用の和を最小化する混載輸送ネットワークを 設計する問題に対する定式化および Lagrange 緩和問 題を示し,この緩和問題に対する解法を提案する. 混載輸送ネットワークは問題は,Less-Than- Truck- 的に実施するためには,混載輸送ネットワークの設計・ 構築が重要な課題の一つとなっている. 混載輸送ネットワーク設計問題では,対象をどこま でとするかによって様々なモデルを構築することがで きる.一般的に,混載輸送ネットワーク設計問題 6) は, 1) 混載輸送路線設計,2) 貨物輸送経路設計,3) 空ト ラック回送路線設計などの問題から構成されている. 考慮すべき費用としては,1) 混載輸送費用,2) ターミ ナル費用,3) 空トラック回送費用などが挙げられる. また,制約条件として,1) 混載輸送路線の最低便数制 約,2) 同一着地貨物の木制約,3) 積替えターミナルの load (LTL) 問題として数多くの研究が行われている. Powell-Sheffi6) ,Powell4) はアド・ドロップ型のヒュー リスティック解法,Crainic–Roy1) は集合被覆問題を 用いた定式化と解法を示している.Roy-Delorme7) は NETPLAN と事例分析を示し,Powell–Koskosidis5) は勾配を用いたローカルサーチ法と最低便数制約に対 する Lagrange 緩和法を提案している.また,Hoppe– Klample–McZeal–Rich2) は,ラベリング法とアド・ド ロップ解法を組合わせた解法を提案している. 2. 定式化 処理能力制約,4) 発地・着地ターミナル間の積替え回 数や輸送時間制約,5) トラックの均衡制約などが挙げ られる. これらの組合せである混載輸送ネットワーク設計問 題は大規模で複雑な混合整数計画問題となり,すべて 輸送貨物の発地・着地ターミナルや積替えターミナ ルを表すターミナル集合を N ,ターミナル間の混載輸 送路線の候補集合を A,ターミナル i に入る路線候補 の終点をもつターミナルの集合を Ni− ,ターミナル i か の問題や条件を同時に考慮することは困難である.一 ら出る路線候補の始点をもつターミナルの集合を Ni+ 方,一般的に組合せ最適化問題の最適解を求めるため とする.路線 (i, j) の輸送費用を zij ,(i, j) を混載輸送 には分枝限定法などの解法が用いられ,そのために良 路線とするか否かを表す 0-1 変数を yij ,発地 o(∈ N )・ い下界値が必要となる.また,近似解法を用いる場合 着地 d(∈ N ) 間の貨物を路線 (i, j) で輸送するか否か には,下界値を用いることによって,近似値と最適値 との差の上限を定めることができる.この下界値は, を表す 0-1 変数を xod ij とし,着地 d の貨物に対して路 d とする. 線 (i, j) で輸送するか否かを表す 0-1 変数を yij 緩和問題を最適に解くことによって求めることができ ターミナル n が発地 o・着地 d 間の貨物の発地 o であ る.一方,Lagrange 緩和解を初期解として実行可能解 れば-1,着地 d であれば 1,それ以外であれば 0 であ を探索する Lagrange ヒューリスティック法を用いる と,近似解を効率的に探索することが可能となる. そこで,本研究では混載輸送路線設計と貨物輸送経 る定数を δnod とおく.ターミナル i における発地 o・着 地 d 間の貨物の単位当たりの積替え費用を hod i ,路線 (i, j) の輸送車 1 便当りの費用を aij とする.路線 (i, j) の輸送車 1 便当りの積載量を eij ,単位期間当りの最 キーワーズ:物流計画, ターミナル計画, 経路選択 *正員,工修, 流通経済大学流通情報学部 (竜ヶ崎市平畑 120,Tel0297-64-0001,[email protected]) 低便数を fij とする.また,発地 o・着地 d 間の貨物量 を q od ,貨物の積換え回数の上限を pod とする. このとき,本研究で対象とする混載輸送ネットワー ク設計問題 LT L は,次のように表すことができる. (LT L) min + i∈N st i∈Nn− xod in − j∈Ni+ d∈N j∈Nn+ xod nj = od od od o∈N hi q xij (1) d yij ≤ yij + min (i,j)∈A zij yij j∈Ni+ i∈N (i,j)∈A + δnod n ∈ N, o ∈ N, d ∈ N d xod ij ≤ yij (LG) + (i,j)∈A zij yij tod ≥ 0(o ∈ N, d ∈ N ) である. d∈N { d∈N [ d∈N od o∈N (vi od o∈N {vd o∈N od od hod i q xij d d − vjod + tod )xod ij + wi yij } − vood − (pod − 1)tod } − (2) i∈N \{d} wid ] (12) (i, j) ∈ A, o ∈ N, d ∈ N (3) st (3)∼(4), (8)∼(11) (i, j) ∈ A, d ∈ N (4) v ,w および t が与えられたときに目的関数の第 4 (5) 項は定数項となるので,LG は路線 (i, j) ごとの独立し (6) た問題 LGij に分割できる. d j∈N yij ≤ 1 i ∈ N \{d}, d ∈ N d j∈N ydj =0 od (i,j)∈A xij d∈N ≤ pod − 1 o ∈ N, d ∈ N od od aij /eij d∈N o∈N q xij od od zij = if d∈N o∈N q xij ≥ fij eij aij fij xod ij ∈ {0, 1} otherwise (7) d st xod ij ≤ yij (9) d ∈ {0, 1} yij (i, j) ∈ A, d ∈ N (10) yij ∈ {0, 1} (i, j) ∈ A (11) (1) 式の第 1 項は混載輸送便にかかる費用の合計,第 d∈N { od od o∈N (hi q d d +viod − vjod + tod )xod ij + wi yij } (13) (8) (i, j) ∈ A (i, j) ∈ A, o ∈ N, d ∈ N (LGij ) min zij yij + d ≤y yij ij o ∈ N, d ∈ N (14) d∈N od od o∈N q xij aij /eij d∈N od od zij = if d∈N o∈N q xij ≥ fij eij (15) aij fij xod ij ∈ {0, 1} otherwise o ∈ N, d ∈ N (16) d∈N (17) 2 項はターミナルにおける積替え費用の合計であり,こ d ∈ {0, 1} yij れらの合計の最小化する.(2) 式はフロー保存条件で yij ∈ {0, 1} あり,与えられた貨物を発地・着地間に輸送すること LGij は yij = 0 と yij = 1 の場合の 2 つの問題 LG0ij を表す.(3) 式は,路線 (i, j) に着地 d 宛ての経路が開 設されないと発地 o,着地 d 間の貨物を路線 (i, j) で 輸送できないことを表す.(4) 式は,路線 (i, j) が開設 されないと着地 d 宛ての経路を路線 (i, j) に開設でき ないことを表す.(5) 式と (6) 式は木制約であり,着地 以外のターミナルでは着地が同一である貨物が同一の と LG1ij に分離でき,最適値は 2 つの問題の最適値の小 d = 0(d ∈ N ), さい方となる.LG0ij では,明らかに yij xod ij = 0(o ∈ N, d ∈ N ) が最適となり,最適値は 0 と なる.一方,LG1ij は次のように表される. (LG1ij ) min zij + 路線 (i, j) の輸送量が最低便数の輸送量以上であれば 輸送量に比例した便数に設定し,未満であれば最低便 数に設定することを表す.(9),(10) および (11) 式は 変数の 0-1 条件を表す. 3. Lagrange 緩和問題 フロー保存式 (2) に対する Lagrange 乗数v ,木制約 d∈N { od od o∈N (hi q d d +viod − vjod + tod )xod ij + wi yij } ターミナル宛てに輸送されることを表す.(7) 式は,積 換え回数の制限を表す.(8) 式は最低便数制約であり, st (14)∼(17) (15) 式に注目すると,LG1ij は輸送量が最低便数以 1L 上と未満の場合の 2 つの問題 LG1U ij ,LGij に分離す ることができ,最適値は 2 つの問題の最適値の小さい 1L 方となる.LG1U ij および LGij は,次のように表すこ とができる. (LG1U ij ) min 式 (5),(6) に対する乗数w,積換え回数制約式 (7) に 対する乗数tを用いて,LT L を Lagrange 緩和した問題 st LG を作成する.ここで,wid ≥ 0(i ∈ N \{d}, d ∈ N ), (14), (16), (17) d∈N o∈N d∈N { o∈N (aij q od /e ij + q od hod i d d +viod − vjod + tod )xod ij + wi yij } q od xod ij ≥ fij eij (18) (LG1L ij ) min st d∈N { o∈N (q d = 0 の場合,xod = 0(o ∈ N ) が最適となり,最 yij ij od hod i d d +viod − vjod + tod )xod ij + wi yij } d∈N aij fij + o∈N q od xod ij < fij eij (19) さらに,LG1U ij において,Lagrange 乗数 uij (≥ 0) を 1U を作 用いて (18) 式を Lagrange 緩和した問題 LGRij od 成する.ここで,Uijod = aij q od /eij + q od hod i + vi − + − tod q od uij φ1U ij = d∈N ( Uijod xod ij o∈N おいて,Lagrange 乗数 sij (≥ 0) を用 1L を作成 いて,(19) 式を Lagrange 緩和した問題 LGRij od od od od od od する.ここで,Lod ij = q hi + vi − vj + t + q sij とおく. d∈N ( o∈N od Lod ij xij d +wid yij ) − fij eij sij (21) となり,最適値は min{0, Uijod } となる. U 1d の最適値が 0 であることを考慮すると,次 の LGRij U 1d をまとめることができる. のように LGRij U 1d (LGRij ) min { o∈N d min(0, Uijod ) + wid }yij LGij の下界値は 解くことができ,最適解は 1U LG0ij ,LGRij および 1U LGRij d yij − vood − U 1d の最適値は となり,LGRij min{0, o∈N min(0, Uijod ) + wid } となる. の最適値 φ̂1U ij は次のような変数を含まない式として表 1U 1L (i,j)∈A min(0, φ̂ij , φ̂ij ) od o∈N {vd od d 1 if o∈N min{0, Uij } + wi ≤ 0 0 otherwise 1U さらに,この最適値を (20) 式に代入すると,LGRij 値 LB は次のように表すことができる. = の 1U の最適値を 最適値の中の最小値となるため,LGRij 1L 1L φ̂1U ij ,LGRij の最適値を φ̂ij と置けば,LT L の下界 d∈N [ d の最小化問題であるので容易に この問題は 1 変数 yij st (14), (16), (17) + 1 if Uijod ≤ 0 0 otherwise d st yij ∈ {0, 1} 1L (LGRij ) min φ1L ij = aij fij + = d = 0 の場合 この最適値を (23) 式に代入し,かつ yij st (14), (16), (17) LB = 解くことができ,その最適解は xod ij ∈ {0, 1} st この問題は 1 変数 xod ij の最小化問題であるので容易に xod ij d +wid yij ) + fij eij uij (20) min Uijod xod ij とおく. 1U (LGRij ) min 同様に,LG1L ij U 1d はさらに発地 o ごとの は定数項となるため,LGRij 独立した問題に分割できる. (14), (16), (17) vjod d = 1 の場合,目的関数の第 2 項 適値は 0 になる.yij 現することができる. (pod − − 1)tod } d i∈N \{d} wi ] (22) φ̂1U ij = d∈N min{0, o∈N min(0, Uijod ) + wid } +fij eij uij 4. Lagrange 緩和問題の解法 1L の最適値 φ̂1L は次のように表すこ 同様に,LGRij ij 1U v ,w,t,u および s が与えられたときに,LGRij 1L を最適に解くことができれば,LT L の および LGRij 下界値 LB を求めることができる. とができる. φ̂1L ij = aij fij + U 1d した問題 LGRij U 1d (LGRij ) min d st xod ij ≤ yij d ∈ {0, 1} yij に分割できる. o∈N o∈N d d Uijod xod ij + wi yij xod ij ∈ {0, 1} d∈N min{0, o∈N min(0, Lod ij ) +wid } − fij eij sij 1U の目的関数の第 2 uij が与えられたときに,LGRij 1U は着地 d ごとの独立 項は定数項となるので,LGRij 1L LT L の下界値 LB は,最適値 φ̂1U ij および φ̂ij を (22) 式に代入することによって求めることができる.なお, (23) o∈N 緩和問題の最適解 yij は次のようになる. yij = 1L 1 if φ̂1U ij ≤ 0 or φ̂ij ≤ 0 0 otherwise 5. Lagrange 乗数の設定 以上のように,LG の解から劣勾法によって La- 問題 LT L の良い下界値を求めるためには,緩和問 題の目的関数 (12),(20) および (21) 式の値を最大に するように Lagrange 乗数を設定する必要がある.ま ず,v ,w および t が与えられたときの u および s の 1U を u に関する問題と 設定法を示す.ここで,LGRij ij grange 乗数 v ,w および t を更新し,u および s を 求め,LG を解いて y および x を求め直すという手順 を繰り返すことによって,LT L の下界値を改善してい くことができる. 6. おわりに して整理しておく. maxuij ≥0 + d∈N { (fij eij − od o∈N (aij q /eij +viod − 本研究では,混載輸送路線設計と貨物輸送経路設計 d∈N vjod o∈N + q od xod ij )uij q od hod i +t od )xod ij を扱い,路線の最低便数,木条件および積換え回数を 制約とし,混載輸送費用と積替え費用の和を最小にす d + wid yij } この問題は 1 変数 uij に関する最大化問題であるが, uij の値によって最適解 y および x が離散的に変化す るので,微分不可能な目的関数をもつ問題となる.し かし,uij に関する凸問題となるため,目的関数値を 最大にする uij は 2 分探索を用いて設定することがで きる.uij の探索の範囲は,uij に関する劣勾配によっ て限定することができる.sij の場合も同様である. る混載輸送ネットワーク設計を対象とした.この問題 に対して定式化を行い,フロー保存式,木条件および 積換え回数制約を Lagrange 緩和した問題を示した.こ の Lagrange 緩和問題は路線ごと,着地ごと,発地ご との問題に分割することができ,分割した問題が 0 と 係数値との比較によって容易に解くことができること を示した.また,Lagrange 乗数が 2 分探索法および劣 勾配法によって設定できることを示した. 一方,v ,w および t を設定する方法として,標準 緩和問題の解法を提案したが,最適解や良い近似解 的な劣勾配法 3) を利用する.v ,w と t に対する劣勾 を求めることが本来の目的であり,劣勾配法を行うた 配をそれぞれ次のように定義する.ここで,ノード i が発地 o・着地 d 間の貨物の着地 d であれば 0,それ 以外であれば 1 である定数を ∆di とおく. od pod n = δn − i∈Nn− xod in + j∈Nn+ xod nj n ∈ N, d ∈ N, o ∈ N めには良い上界値が必要である.したがって,今後, 効率的な Lagrange ヒューリスティック解法やタブー サーチ法などのメタ解法を開発する必要がある. 参考文献 1) Crainic, T. G. and Roy, J.: Design of Regular Intercity Driver Routes for the LTL Motor Carrier Industry, d i ∈ N, d ∈ N rid = −∆di + j∈N yij Transportation Science, Vol. 26.pp280–295,1992. 2) Hoppe, B., Klampfl, E. Z., McZeal, C. and Rich, J.: d ∈ N, o ∈ N q od = −pod + 1 + (i,j)∈A xod ij Strategic Load-Planning for Less-Than-Truckload Trucking, Technical Report CRPC-TR99812-S, Cenv,w と t が与えられたとき,y ,x,p,r および q が ter for Research on Parallel Computation, Rice University, 1999. 求められたとする.このとき,次の v ,w,t として, 3) 久保幹雄, 田村明久, 松井知己:応用数理計画ハンドブッ ク, 朝倉書店, 2002. vnod := vnod + θ k pod n ∈ N, o ∈ N, d ∈ N n 4) Powell, W. B.: A local Improvement Heuristic for the wid + θ k rid if i = d, d ∈ N Design of Less-Than-Truckload Motor Carrier Netwid := max(0, wid + θ k rid ) otherwise works, Transportation Science, Vol. 20, pp246–257, 1986. od od k od t := max(0, t + θ q ) o ∈ N, d ∈ N 5) Powell, W. B. and Koskosidis, I. A.: Shipment Routing Algorithms with Tree Constraints, Transportation を採用する.ここで,θ k は,k 回目の繰り返しにおけ Science, Vol. 26, pp230–245, 1992. るステップサイズであり,次のように定義される. 6) Powell, W. B. and Sheffi, Y.: Design and Implementation of an Interactive Optimization System for Netρ(上界値 − 下界値) (24) θ k := work design in the Motor Carrier industry, Operations od 2 d 2 od 2 d∈N o∈N { n∈N (pn ) + (ro ) + (q ) } Research, Vol. 37, pp12–29, 1989. k limk→∞ θ k → 0 and ∞ 7) Roy, J. and Delorme, L.: NETPLAN: A Netk=0 θ → ∞ work Optimization Model for Tactical Planning in ここで,ρ は (0, 2) のパラメータ,下界値は (k − 1) 回 the Less-Than-Truckload Motor-Carrier Industry, INFOR, Vol. 27, pp22–35, 1989. 目の下界値 LB である.ただし,上界値は別途求める 必要がある.