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会報を見る - 冷凍食品技術研究会

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会報を見る - 冷凍食品技術研究会
冷凍食品技術研究
N0.103
2014年6月
発 行
(Frozen Foods Technical Research)
目
次
頁
〈講 演 要 旨〉
東京都消費生活条例
調理冷凍食品の品質表示について
東京都
福祉保健局
品質表示係長
健康安全部
佐久間
名内
〈講 演 要 旨〉
食品監視課
由紀………………
1
俊信
クロネコヤマトが考える冷凍食品回収の対応について(抜粋)
ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ株式会社
課長
〈食 品 コ ラ ム 〉
茂木
孝夫……………
10
章魚(タコ)のお話~タコは心して食べよ!?
一般財団法人日本冷凍食品検査協会
検査部
〈食 品 安 全〉
西澤
伸満……………
14
2020年東京オリンピック招致時の選手村セキュリティ管理試案
(その2)
サービス調理衛生研究所
増子
〈文 献 紹 介〉
『ここがポイントかな?
忠恕……………………… 16
食品冷凍技術』
公益社団法人日本冷凍空調学会
東京海洋大学
食品冷凍学研究室
白石
〈編 集 後 記〉
参与
真人
… 34
……………………………………………………………………… 44
冷凍食品技術研究会
<講演要旨>
東京都消費生活条例 調理冷凍食品の品質表示について
東京都 福祉保健局 健康安全部 食品監視課
品質表示係長 佐久間由紀
名内 俊信
本日の内容








東京都消費生活条例
調理冷凍食品の品質表示について
平成26年3月5日(水) 14:00~ 15:00
冷凍食品技術研究会
東京都福祉保健局 健康安全部 食品監視課
食品監視課品質表示係の業務内容
東京都消費生活条例の概要
調理冷凍食品の品質表示基準
条例の実施要領改正のポイント
調理冷凍食品 原材料配合割合の表示
調理冷凍食品 原料原産地名の表示
調理冷凍食品の表示相違点について
質疑応答
食品監視課品質表示係の業務
担当法令:JAS法、米トレーサビリティ法、
東京都消費生活条例(食品4品目)
 表示方法等の相談対応
 講習会の開催(適正表示推進者育成講習会な
ど。)
 食品表示の科学的検証
 調査業務
など。
 指導業務
東京都消費生活条例の概要
東京都消費生活条例の体系
表示・包装、計量の適正化(都条例)
目的:都民の消費生活の安定と向上を図る
適正な表示を行わせる権利
生命・健康を侵されない権利
危害の防止
商品又はサービスを適切に選択し、適正に使用又は
利用するため、適正な表示を行わせる権利
適正な表示を行わせる権利
消費者の権利の確立
表示・包装、計量の適正化
不当な取引条件を強制されず、不適正な取引行為を行わせない権利
価格の不適正な事業行為の是正、不適正な取引行為の防止
表示・包装、計量の適正化(15条~20条)
不当に受けた被害から、公正・速やかに救済される権利
・表示等の調査
・品質等の表示
・品質等の保証表示 ・単価価格及び販売価格の表示
・適正包装の確保
・計量の適正化
消費者の被害の救済
必要な情報を速やかに提供される権利
消費者教育を受ける権利
情報提供の推進
消費者教育の推進
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表示、包装及び計量の適正化(都条例)
〔食品4品目 *〕 〔家庭用品〕
・ラップ
・調理冷凍食品
・歯みがき
・かまぼこ類
・使い捨てカイロ
・はちみつ類
・カット野菜及び ・防虫剤 など
カットフルーツ
単位価格等の表示
・弁当類
・ハンバーガー
・めん類 など
表示事項が定められている品目
所管:生活文化局
品質等の表示
自動販売機
食品表示の規定(都条例)
・ベーコン
・たらこ
・しらす干し
など
サービス
品
・有料老人ホーム
・外国語教育サービス
など
目
1
調理冷凍食品(アイスクリーム
2
かまぼこ類
類、菓子類は除く。)
・蒸しかまぼこ類
・焼抜きかまぼこ類
品質等の保証表示
・電気冷蔵庫
・ガスストーブ
・テレビ など
適正包装の確保
表示事項
・原材料配合割合
・原料原産地名
・でん粉含有率
・原材料配合割合
3
はちみつ類
4
カット野菜及びカットフルーツ ・加工年月日
・品名
・原材料の割合又は重量
過剰包装とならないよう、包装基準を定める。
* 食品4品目の実施主体:福祉保健局
全国の食品表示条例の状況
都条例の適用範囲
出典:インターネット版食品表示マニュアル/中央法規出版
1
品目と表示内容
調理冷凍食品
・原材料配合割合
2 かまぼこ類
・原材料配合割合
3 はちみつ類
→
自治体名
東京都、神奈川県、川崎市、名古
屋市、京都市、大阪市、神戸市
都内で消費者向けに販売される商品
商品がインターネット販売や
通信販売で販売される場合は?
東京都、神奈川県、川崎市、名古
屋市、京都府、大阪市
東京都
・品名、原材料の割合又は重量
4 カット野菜及びカットフ
ルーツ
・加工年月日
東京都、大阪市(カットフルーツ) 、神
戸市(カット野菜及びカットフルーツ)
対象となります。
 その他に、つくだ煮類、煮豆、焼肉のたれ類、カレールウなどに表示
事項を定めている自治体もあります。
 不特定多数の消費者が購入できる形態での販売は、都
内で消費者が購入することが可能
 調理冷凍食品の原料原産地表示は、東京都のみ
〔JAS法〕調理冷凍食品品質表示基準
平成12年12月19日制定
 対象となる10品目
冷凍フライ類、冷凍しゅうまい、冷凍ぎょうざ、冷凍春巻、冷凍
ハンバーグステーキ、冷凍ミートボール、冷凍フィッシュハン
バーグ、冷凍フィッシュボール、冷凍米飯類、冷凍めん類
調理冷凍食品の品質表示
 義務表示事項
加工食品品質表示基準で定める「名称」「原材料名」「内容
量」等項目の他に
冷凍フライ類の「衣の率」、冷凍しゅうまい等の「皮の率」、冷
凍フィッシュボール等の「食肉又は魚肉含有率」、「使用方法」
などの表示が必要。
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〔都条例〕調理冷凍食品の品質表示(告示)
〔都条例〕調理冷凍食品の品質表示(告示)
原材料配合割合
平成12年12月19日制定
 調理冷凍食品の定義
農林畜水産物に、選別、洗浄、不可食部分の除去。整形
等の前処理及び調味、成形、加熱等の調理を行ったのも
を凍結し、包装し、及び凍結したまま保持したものであって、
簡便な調理をし、又はしないで食用に供されるもの。
 対象外品目
JAS法の調理冷凍食品品質表示基準に定める品目
(冷凍フライ類等10品目)は対象外
冷凍グラタン、冷凍そうざい、冷凍スープ等が対象
 対象外品目
 表示事項
商品名に原材料の一部が付された場合、その原材料の
仕込み時の標準配合比を%表示する。
日本標準商品分類における畜産加工食品の酪農製品のアイ
スクリーム類、農産加工食品の菓子類に該当する冷凍食品
〔都条例〕調理冷凍食品の品質表示(告示)
都条例実施要領の改正点(平成13→25年度)
原料原産地名
・平成13年以降のJAS法及び都条例の告示改正に合った内
容に修正。
・解釈を整理し、分かりやすい文言に修正
 対象外品目
JAS法に基づく品質表示基準により原料原産地表示
が定めれている品目(加工食品品質表示基準で定め
る22食品群や野菜冷凍食品など)
原材料配合割合の修正1
告示の( )内除外品目が変更されている。
冷凍米飯類、冷凍めん類、冷凍そうざい等調理冷凍食
品の多くが対象
 表示事項
・ 重量の割合が上位3位まで、かつ5%以上の原材料の原
産地名を表示。
・ 商品名に名称が付された原材料の原産地名を表示。
調理冷凍食品のうち、JAS法で調理冷凍食品品質表示基準の定められた品目
(えびフライ、コロッケ、しゅうまい…)を除く商品に適用
調理冷凍食品のうち、JAS法で調理冷凍食品品質表示基準の定められた品目
(冷凍フライ類、冷凍しゅうまい…)を除く商品に適用
都条例実施要領の改正点(平成13→25年度)
配合割合の解釈の整理
原材料配合割合の修正2
「当該原材料の表示が、当該原材料を使用したことを強調する
ものではない」の判断基準について
運用上、対象外としていた料理名、調味料、香辛料についても、
原則表示対象とする。
【例:酢豚】
一般的な料理名で、原材料の「酢」「豚」を強調したものではない。
・・・原材料の配合割合を誤認するおそれがないと思われる
ものには適用しない。(例:酢豚→「酢」「豚」表示不要)
→
「酢」「豚」の配合割合
省略可能。
【例:黒酢入り酢豚】
・・・当該原材料の表示が、当該原材料を使用したことを強
調するものではない場合には、配合割合の表示を省略す
ることができる。(例:酢豚→「酢」「豚」省略可)
「黒酢」を使用したことを強調している。
→
※香辛料等1%未満の場合、省略可能とする規定も別途設
けています。
※
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「黒酢」の配合割合
省略不可。
1%未満であれば省略可能。
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〔原材料配合割合〕変遷
 都条例が昭和50年に施行後、東京都消費生活対策審議会
での審議を経て、順次消費生活に密着した生活物資の「品
質等の表示」が定めれた。
原材料配合割合の表示
昭和52年7月
原材料名、内容量、原材料配合割合、使用上
の注意(調理上の注意事項等)等を表示事項として
定めた。
平成12年3月
〔JAS法〕加工食品品質表示基準制定
〔JAS法〕調理冷凍食品品質表示基準制定
JAS法に定めのない原材料配合割合の表
示事項のみを定めた。( JAS法調理冷凍食品
平成12年12月
平成13年4月
品質表示基準の品目を除く。)
平成25年4月
〔原材料配合割合〕対象食品の判断について
実施要領の改正(平成13年以降のJAS法
改正内容を反映し、解釈を整理)
〔原材料配合割合〕 (※)対象外となるJAS法の品目
いいえ
対象外
都内で消費者向けに販売(ネット販売・通信販売及び輸入品含む)
調理冷凍食品品質表示規準に定められた品目
はい
冷凍フライ類、冷凍しゅうまい、冷凍ぎょうざ、冷凍春巻、
冷凍ハンバーグステーキ、冷凍ミートボール、冷凍フィッ
シュハンバーグ、冷凍フィッシュボール、冷凍米飯類、冷
凍めん類
いいえ
対象外
アイスクリーム類、菓子類に該当しない
はい
JAS法の調理冷凍食品品質表示基準の品目に該当しない
いいえ
対象外
はい
いいえ
 任意で配合割合を表示することは可能。
 その際は告示・実施要領に基づく基準で表示を。
対象
外
商品名に原材料の一部の名称を付している
はい
冷凍グラタン、冷凍そうざい、
冷凍スープ等に表示が必要!
〔原材料配合割合〕商品名に原材料の一部の名称
〔原材料配合割合〕えびグラタンの表示例
を付している場合Ⅰ
「水」を含めた製品全体に占める仕込み時の配合比をいず
れかの方法で容器包装の見やすい箇所に%で表示する。
・商品名に原材料が含まれている。
「えび」の原材料配合割合
が必要
① 一括表示(*)内に「原材料配合割合」の項目を設ける。
名称
えびグラタン
原材料名
牛乳、マカロニ、たまねぎ…
原材料配合割合 えび○%(仕込み時)
:
・商品名と同一面に使用している原材料の説明がある。
② 一括表示(*)枠外の近接した場所に記載する。
「牛肉」の原材
料配合割合が
必要
名称
原材料名
:
えびグラタン
牛乳、マカロニ、たまねぎ…
※文字は8ポイ
ント以上。背面
と対照的な色。
原材料配合割合 えび○%(仕込み時)
* JAS法加工食品品質表示基準で規定する表示事項
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〔原材料配合割合〕商品名に原材料の一部の名称
〔原材料配合割合〕きのこ入りピザの表示例
を付している場合Ⅱ
商品名:きのこ入りピザ(ねぎと獅子唐の和風仕立て)
きのこは、えりんぎ、しいたけ、まいたけを使用。
・商品名:きのこ入りピザ(ねぎと獅子唐の和風仕立て)/きのこは、えりんぎ、
しいたけ、まいたけを使用。
※「きのこ」「ねぎ」「獅子唐」の表示が必要。
「きのこ」「ねぎ」「獅子唐」の
原材料配合割合が必要。
重量順
【表示例1】きのこまとめて表示する。
・商品名:シーフードピザ
きのこ(えりんぎ、しいたけ、まいたけ)○%、ねぎ○%、獅子唐○%(仕
込み時)
【表示例2】きのこをそれぞれ表示する。
「シーフード」として使用して
いる魚介類の原材料配合
割合が必要
重量順
きのこ(えりんぎ○%、しいたけ○%、まいたけ○%)、ねぎ○%、獅子
唐○%(仕込み時)
※いずれも文字は8ポイント以上。背面と対照的な色。
アソート品の原材料配合割合の表示は?
〔原材料配合割合〕表示が省略できるケースⅠ
重量の画一化が困難なもの
商品名:4種のカップグラタン(えびグラタン、チキング
ラタン、マカロニグラタン、かにグラタン)
* 個別に食することを想定した詰合わせ商品
※各種グラタンごとの原材料配合割合が必要。
【表示例1】
原材料配合割合 〔えびグラタン〕えび ○%(仕込み時)
〔チキングラタン〕チキン(鶏肉) ○%(仕込み時)
〔マカロニグラタン〕マカロニ ○%(仕込み時)
〔かにグラタン〕かに ○%(仕込み時)
【表示例2】
内臓を取り除いただけで、ほ
ぼ原型に近い形で調理してい
るもの。
原材料配合割合(各種中の仕込み時) えび ○%、チキン(鶏肉) ○
%、マカロニ ○%、かに○%
骨付き肉を使用している場
合、可食部分の重さの画一
化が困難なもの。
〔原材料配合割合〕表示が省略できるケースⅡ
 1%未満の配合割合の場合、省略することができる。
 原則として、切捨てた整数値によりパーセントの表示を
することから省略することができる。
 自主的に表示する場合は、小数点以下を表示すること
ができる。
原料原産地名表示
省略する場合も、表示する場合も、
消費者の優良誤認を招かないよう
ご注意を!
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〔原料原産地名〕変遷
〔原料原産地表示〕対象食品の判断について
いいえ
 平成20年1月の中国産冷凍餃子を原因とする健康被害の発
生報道を受け、同年2月に原料原産地表示の検討を開始
対象外
都内で消費者向けに販売(ネット販売・通信販売を含む)
はい
平成20年
3月27日
知事から東京都消費生活対策審議会に「食品の原
料原産地表示のあり方について」諮問
平成20年
4月30日
第19次東京都消費生活対策審議会から答申
いいえ
アイスクリーム類、菓子類に該当しない
対象外
はい
いいえ
輸入品ではない
平成20年6月 都民へのパブリックコメント
13日~26日
対象外
はい
平成20年
8月25日
告示
平成21年
5月31日
9ヶ月の経過措置期間を経て、完全施行
① 商品名にその名称が付された原材料(※)
② 原材料の重量に占める割合が上位3位以上かつ5%以上の原材料(※)
※ ①・②いずれか、若しくは両方に該当するもので
「生鮮食品」・「22食品群」・「個別4品目」の原材料を使用している。
はい
いいえ
対象外
原料原産地表示が必要!
〔原料原産地表示〕
商品名にその名称が付された原材料
〔原料原産地表示〕
原料原産地表示を求める対象原材料の範囲
 ①商品名 ⇒ 「ひじき煮」の「ひじき」
 ②商品名と同一面に使用している原材料 ⇒「にんじん」
が原料原産地表示の対象です。
●生鮮食品(JAS法)
●22食品群(JAS法)
+
原材料の重量に占める
上位3位かつ5%以上の
対象原材料
主な原材料:50%以上の生鮮食品
●個別4品目(JAS法)
かつお
削りぶし
商品名
うなぎ
加工品
野菜
冷凍食品
農産物漬物
主な原材料:各品質表示基準参照
〔原料原産地表示〕
〔原料原産地表示〕
原料原産地名の表示方法
原料原産地表示を求める対象原材料の範囲
原料原産地名表示が必要な主な原材料
都条例
(原料原
産地)
【 ○・・・対象
生鮮
食品
22食品 かつお削
群
りぶし
×・・・対象外 】
野菜冷
凍食品
農産物
漬物
うなぎ
加工品
国産
(国内製造)
○
○
○
○
○
○
輸入品
○
×
×
×
×
×
主な原材料の原産地を
国産品にあっては、「国産」と、
輸入品にあっては、「原産国名」を
表示します。
〈表示例〉
・原材料名 鶏肉(国産)、たまねぎ(国産)、えび(ベトナム)
・原料原産地名 国産(鶏肉、たまねぎ)、ベトナム(えび)
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〔原料原産地表示〕
商品パッケージの判断事例 その1
〔原料原産地表示〕
商品パッケージの判断事例 その2
「シーフード」だけであれ
ば原材料を特定していな
いので、不要
「五目」、「野菜」は原材料
を特定していないため、
不要
「えび」、「いか」、「あさり」入
りと併記した場合は、商品名
に名称が付されていると考え
るので、生鮮食品、22食品
群、個別4品目のいずれか
を使用している場合、必要。
使用した原材料を商品名と
同一面に表示しているため、
生鮮食品、22食品群、個別4
品目のいずれかを使用してい
る場合、必要。
〔原料原産地表示〕
商品パッケージの判断事例 その3
〔原料原産地表示〕表示すべき原材料
① 商品名にその名称が付された原材料(※)
② 原材料の重量に占める割合が上位3位以上かつ5%以上の原材料(※)
※ ①・②いずれか、若しくは両方に該当するもので
「生鮮食品」・「22食品群」・「個別4品目」の原材料を使用している。
生鮮食品、22食品群、
個別4品目でもないため、
いずれも不要
畜種を特定していないため
不要
〔原料原産地表示〕表示方法・表示箇所
〔原料原産地表示〕表示方法・表示箇所
【原則】容器包装の見やすい箇所に表示 1
【原則】容器包装の見やすい箇所に表示 2
① 一括表示(*)内の「原材料名」に(
名称
原材料名
:
)を付して表示。
③ 一括表示(*)の枠外の近接した箇所に表示。
えびグラタン
牛乳、マカロニ、たまねぎ(中国)、えび(ベトナム)
名称
原材料名
:
原材原産地名 たまねぎ(中国)、えび(ベトナム)
② 一括表示(*)内に「原料原産地名」の項目を設けて表示。
名称
原材料名
原料原産地名
えびグラタン 中国(たまねぎ)、ベトナム(えび)も可
牛乳、マカロニ、たまねぎ、えび…
※いずれも文字は8ポイント以上。背面と対照的な色。
中国(たまねぎ)、ベトナム(えび)も可
えびグラタン
牛乳、マカロニ、たまねぎ、えび…
たまねぎ(中国)、えび(ベトナム)
* JAS法加工食品品質表示基準で規定する表示事項
※いずれも文字は8ポイント以上。背面と対照的な色。
* JAS法加工食品品質表示基準で規定する表示事項
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〔原料原産地表示〕
容器包装表示が極めて困難な場合
〔原料原産地表示〕
容器包装表示が極めて困難な場合
容器包装への表示が極めて困難な場合
・原材料の原産地を頻繁に変更せざるを得ない場合
・原産地の異なる原材料の配合割合が頻繁に変更する
場合等
容器包装への表示
が極めて困難な
場合とは?
電話、インターネット、2次元バーコードなどで
情報提供することも可能です。
(注意)
ただし、容器包装に原料原産地についての情報を入手できる
問い合わせ先を明記し、適正な情報提供を行うことが必要です。
〔原料原産地表示〕
容器包装表示が極めて困難な場合
〔原料原産地表示〕
容器包装表示が極めて困難な場合
容器包装での原料原産地情報の問い合わせ表示例
ホームページでの情報提供の例示
(認められる例)
【例1】
商品及び原料原産地については、下記までお問合せください。
○
ロット番号○○○の原料原産地情報
商品名 えびグラタン
原料原産地名 たまねぎ(中国)、えび(ベトナム)
電話番号 : 0120-0000-0000
ホームページアドレス : http://www.○○○○
【例2】
(認められない例)
理由
×
商品については、下記までお問合せください。
《原料原産地情報》
商品名 えびグラタン
賞味期限が2014.○.○~2014.○.○まで
原料原産地名 たまねぎ(中国)、えび(ベトナム)
電話番号 : 0120-0000-0000
ホームページアドレス : http://www.○○○○
原料原産地の情報がどこで提供されているのか明確ではないため
〔原料原産地表示〕
容器包装表示が極めて困難な場合
〔原材料配合割合と原料原産地の相違点まとめ〕
ホームページでの情報提供での注意
固定されている産地だけ容器包装に表示することは可能です
が、ホームページなどで情報提供する際には、容器包装表示し
た産地についても情報提供する必要があります。
【容器包装表示】
原材料名 米、たまねぎ、にんじん、えび(ベトナム産)・・・
原料原産地については、下記のホームページで掲載しています。
ホームページアドレス : http://www.○○○○
【ホームページ表示】
《原料原産地情報》
商品名 えびピラフ
賞味期限が2014.○.○~2014.○.○まで
原料原産地名 米(国産)、たまねぎ(米国産)、
にんじん(中国産)、えび(ベトナム産)
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参考ホームページ及び問い合わせ先
〔原材料配合割合と原料原産地の相違点まとめ〕
○東京都福祉保健局「食品衛生の窓」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/index.html
○東京都福祉保健局「食品衛生の窓」
東京都消費生活条例に基づく食品の品質表示
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouji/jorei.html
○東京都生活文化局「東京くらしWEB」
東京都消費生活条例に基づく品質等の表示
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/hyoji/jorei/
○食品の品質表示に関すること
東京都 福祉保健局 健康安全部 食品監視課 品質表示係
電話 03-5320-4408
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<講演要旨>
クロネコヤマトが考える冷凍食品回収の対応について(抜粋)
ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ株式会社
課長 茂木 孝夫
クロネコヤマトが考える
冷凍食品回収の対応について
ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ(YMM)について
(抜粋)
2014年 3月 5日
リスクマネジメントカンパニー
2
1.ヤマトマルチメンテナンスソリューションズの紹介
3.リコールサポートコンダクターの意義
リコール対応の専門家 リコールサポートコンダクター が最適なスキームを提案
製品の 日常 (修理・保守) ~ 万が一 (リコール) までをサポートします
(2006年に死亡や重傷事故が相次いだことを受けて)
2007年 改正消費生活用製品安全法(消安法)が施行
修理・保証
リコール・自主回収
保守
メンテナンスソリューション事業部
リスクマネジメントカンパニー
サービスパーツロジスティクス事業部
・ メンテナンスサポートサービス
・ クロネコ延長保証サービス
・ 返品・交換サポートサービス
・ リコールサポートサービス
・ 回収先特定支援サービス
製品事故~リコール実施に関する法令・指針が示される
リコールサポートコンダクターに
必要とされるもの
サポート
サポート
サポート
消費者様
製造事業者様
流通事業者様
法令知識
知識
・緊急パーツロジ2hサービス
ノウハウ
【会社概要】
会社名 : ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ株式会社
住所 : 〒135-0063 東京都江東区有明4丁目2番3号
社員数 : 417名 (2013年3月31日現在)
/
拠点数 : 国内13事業所 (2013年3月31日現在)
代表取締役社長 : 佐々木 勉
/
リスクマネジメントカンパニー プレジデント : 清水 淳二
ヤマトグループ
商品知識
リコール対応実績
リコール関連法令に精通し、リコール対応実績が豊富なコンダクターが
製品特性に合わせたリコール対応方法をプランニングし、適切な手順で実施
3
5
4.リコール・自主回収を取り巻く法制度
近年リコール関連の制度・法令が整備され リコール発生のリスクが高まっています
2007年 改正消安法の施行で 法令・指針が整備される
・ 製品事故情報の報告公表制度 (法令)
・ リコールハンドブック (リコール実施の指針)
2009年
リコール・自主回収を取り巻く近年の動向
2012年
【背景】
既存の法律では取り扱えない
重大事故(すきま事案)が増加
検定違反や品質が悪い消防
用機器が市場に出回り問題に
食品表示に関する法令が
複数あり混乱を招いていた
「消防法」改正
「食品表示法」成立
「消費者庁」発足
消費者の声の影響力が増し
リコール実施の判断が早期化
6
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2013年
【背景】
【背景】
(リコール制度創設)
(食品表示の一元化)
新分野でのリコール制度が
開始されリコール増加の可能性
表示の切り替え当初は、記載
ミス等で回収が発生する可能性
リコール発生のリスクが高まっている
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5.増加傾向にある食品回収
食品の回収は年々増加しており、約半分が「表示不適切」での回収です
(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)集計
年々増加する食品回収
食品自主回収に対する備えの必要性
回収の約半分が「表示不適切」によるもの
⇒ 「アレルギー」などの健康被害の懸念があるため 回収実施へ
8
8.食品回収のそれぞれのシーンでなすべきこと
11
10.迅速な回収開始が求められる食品回収
食品回収は 迅速な回収開始が求められ、充分な回収体制の構築ができません
万が一のリコール発生の際 迅速に回収開始できるよう 事前の体制の構築が重要です
ビフォア
クライシス
アフター
リコール発生前
リコール発生最中
リコール発生後
[被害の拡大可能性]
[消費者の厳しい目線]
【回収プランの事前策定】
【迅速なリコール立ち上げ】
【迅速なユーザー対応完了】
・ 回収の受付~集配の
具体的プランの事前策定
・ 早期のリコール実施判断
過去の食品事故や不祥事から
回収対応遅れ=企業信用失墜につながる
・ 迅速なリコール実施体制構築
・ 返金等のユーザー完了を
迅速化させる
健康被害発生が懸念がある場合
再発事故防止のためすぐに回収の必要
【回収マニュアルの作成】
【製品特性に合わせた回収実施】
【リコールのモニタリング】
・ 回収マニュアル作成
・ リコール施策の分析と追加告知
・ 回収規模想定・コスト試算
・ 冷凍食品の特性に合わせて
消費者目線の回収の実施
体制の事前構築
迅速かつ確実な回収
早期の信頼回復
【食品の回収】
一刻も早い 回収の開始を迫られる
・ 事故再発の防止
回収業務構築のための時間が無く 回収実施時に問題が発生
12
14
12.回収プランの事前策定の重要性
多くの食品回収のマニュアルには 回収の具体的方法について記載されていません
【回収実施決定までのプロセス】
食品回収
マニュアル
【第一報】 … 一次対応方法・社内情報伝達ルート
【原因究明】 … 回収対象か否かの判断基準
【回収決定】 … 対策本部による意思決定のプロセス
多くのメーカーで整備済み
迅速に対応できる体制
冷凍食品の回収実施時のポイント
【届出/告知】 … 回収届出先、連絡・告知先の確認
【具体的な回収方法のプラン】
食品回収
マニュアル
【受付】 … コールセンターでの対応方法は?
【回収】 … 製品回収の物流体制は?
回収プランは未整備で
実際の回収時に適当な
体制構築が出来ない
【検品】 … 検品の体制・ルールは?
【お客様対応】 … 返金・良品交換の実施方法は?
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14.【回収実施時の問題点 ①】
受付 : 問合せ~回収受付の体制の問題点
16.【回収実施時の問題点 ②】
回収 : 着払い返送による回収の問題点
回収実施時 コールセンターには発送方法についての問合せが殺到します
冷凍食品の着払い返送では お客様の手間や輸送上の問題が発生します
お客様自身が着払いで発送するパターン
【リコール社告】
発送方法の詳細がわからないなぁ
どうやって集荷依頼や梱包をすれば
回収対象品を
着払いで○○に
送り返して下さい
【問題①】 お客様に発送準備の手間が発生してしまう
回収品
1.伝票起票の手間
[ 発送方法について問合せが殺到します ]
24
冷凍
【問題③】 営業所持ち込み または 回収依頼の手間が発生
【 緊急性の高いお客様対応を 取りこぼしてしまいます 】
対象製品の
確認方法が不明
健康被害
発生!
3.梱包の手間
【問題②】 クール便はコンビニで取り扱えない
ニュースで回収を
知ったのですが
送付先を教えて
ください
・伝票の書き方
・集荷依頼の仕方が
わかりません
2.資材準備の手間
または
回収依頼
持ち込み
19
18.【回収実施時の問題点 ③】
検品 : お客様発送の回収の検品業務の問題点
22
20.真摯な消費者対応による 信頼の回復
消費者目線に立った回収を実施することが 早期の信頼回復につながります
お客様による着払い発送の場合 検品業務に大きな負担がかかることがあります
お客様による着払い発送の場合 思い思いの方法で製品が送り返されてくる
ワンストップの回収物流構築
B社
告知
A社
メーカー様 回収拠点
電話受付
システム
連携
製品回収
保管・検品
返金等
消費者
対応の
迅速化
C社
【 リコールサポートサービス 】
【問題①】
手書き伝票
様々な宅配会社の
手書き伝票で返送されるため
検品業務に時間がかかる
【問題②】
返金対応等のための
お客様情報のエントリー業務に
時間がかかる
お客様の住所・
電話番号が判読できない
リコールサポートコンダクターが回収物流のプランニングを支援
メーカー様
確認業務が発生してしまう
本来の業務である 消費者対応にご注力頂くことができます
お客様対応が遅延
消費者目線の対応
お客様対応完了の遅れで
2次クレームに発展
消費者
消費者の早期信頼回復につながります
24
27
22.返品・交換サポートサービスについて
「返品・交換サービスサービス」は 日常シーンで発生する返品・交換業務をサポートします
まとめ
お客様の手間を解消
速い回収・高い回収率を実現
伝票記入不要
配達時同時交換
事務コスト削減
伝票を持参しお客様の都合に合せて集荷に伺います
代替品配達時に対象品を回収することができます
Web上での一括依頼で無駄を削減します
引き取り依頼を簡単かつ安価に
梱包準備不要
回収率向上
通信費削減
ドライバーが梱包資材をお持ちして伺います
データ処理による確実な回収で回収率を向上します
電話やFAXでの依頼は必要ありません
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【まとめ】
[ 冷凍食品回収の3つのポイント ]
【ポイント ①】 事前の回収プランの策定
食品の回収体制の構築には充分な時間が取れないため
事前の回収プラン策定が重要になります
【ポイント ②】 消費者目線の回収方法の実施
迅速かつ確実な回収を実施するためは 冷凍食品の特性を考慮し
消費者目線の回収を実施する必要があります
【ポイント ③】 回収物流・システムの事前構築
回収実施の際の具体的な物流体制・システムを事前に構築する
ことにより、万が一の回収の際に迅速に対応することができます
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<食品コラム>
章魚(タコ)のお話~タコは心して食べよ!?
一般財団法人日本冷凍食品検査協会
検査部 西澤 伸満
タコは欧米ではその姿からデビルフィッシュと云われ嫌われていますが、日本やスペイン・
南ヨーロッパでは古くから食べられています。近年では、資源量が枯渇しており、タコの値段
が高騰しています。タコの漁は蛸壺漁が有名です。日本の国内だけではタコの需要に対応しき
れず、かなり以前は日本の漁船が北アフリカ沖などでトロール漁法にて漁獲していました。当
時は海底で網を安定させる為にオッターボードと云う厚い鉄板を網の先に付けて海の底をガラ
ガラと引いていました。お陰で日本のオッターボードトロール船の漁をした後は海底が荒らさ
れて海の生物が住めない状態になり、世界中から批判され現在ではオッターボードを使うトロ
ール漁法は規制を受けています。更に世界各国の200海里規制の影響で現在ではタコの7割程
度が輸入に頼っています。北アフリカのモロッコ沖で漁獲されるタコの皮は柔らかく人気があ
りましたが、2003年に資源保護の目的で長期の漁業規制がモロッコで行われました。その影響
で日本でのタコの高騰が続いています。たこ焼き用のタコはベトナムや中国産に移行していま
す。日本でタコと云えば「明石のタコ」に代表されるように、マダコがタコの代表格ですが、
水ダコ、ヤナギダコ(通称北海マダコ)、イイダコなども食用としています。最近タコは生食
で食べていますが、古くからタコは加工品として日本人に馴染まれてきました。冷凍・冷蔵技
術が発達していなかった時代に保存性を高める手段として茹でタコの製法は確立していきまし
た。その中でも関東と関西とでは微妙な違いが出てきたようです。関東ではタコの中心まで完
全に熱を加える、関東炊きで食感が硬くなるのが特徴です。その反面、関西炊きはやわらかい
食感を保つ為に、タコの表面のみを加熱し、中心部は半生の状態になっています。半生の状態
にて茹で上げるのは職人技を要し、一歩間違えると食中毒を起こしかねません。未熟な職人が
作ったタコで食中りした話は数多くあります。最近はタコの値段が上がり海外での漁獲時の扱
いは丁寧になっているので現在では殆どありませんが、現地ではタコを食べる習慣はなく日本
からしっかりした指導を受けていない原料メーカーから輸入したタコは加熱条件を間違うと食
中毒の原因になっていたようです。
「タコの足先には毒がある」とか「手長ダコには毒がある」と云う話があります。確かにマ
ダコなどは餌である甲殻類を襲う際に噛み付いてエビなどをシビレさせます。これはタコの唾
液腺にチラミンと云う物質を含んでいるからです。しかし、人間に対して、影響するほどの毒
力はありません。実際タコには人間に影響するような毒素は確認されておらず、むしろ低温流
通が整備されていない当時の時代に加工技術の未熟な職人は作った茹でダコによる食中毒が原
因であると思われます。更に手長ダコの足先は見かけが悪く、いかにも毒があるように思えた
のかも知れません。因みにヒョウモンダコは観賞用のタコでフグ毒と同じテトロドトキシンと
云う猛毒を持っているタコです。通常熱帯地方の暖かい海に生息していますが、最近の温暖化
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の影響か、日本でも希に捕獲されるようですが、このタコだけは絶対に食べないで下さい。
タコやイカなどの頭足類にはタウリンが含まれており、遊離アミノ酸の50%以上がタウリン
であると云われています。タウリンは栄養ドリンクに含まれていますが、体の細胞を正常状態
に保つ作用があります。例えば血圧上昇に対して効果があり、肝臓に機能する働きがあります。
通常タコを蒸しやボイルなどの加熱処理をする前にヌメリ取りや加熱後の白化防止、発色を
鮮やかにする為に硫酸アルミニウムアンモニウム(焼ミョウバン)、エリソリビン酸、アスコ
ルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸製剤を含む複合製剤が使われます。この中で亜
硫酸製剤は使用基準のある食品添加物で、管理の悪い製造施設では時々基準超過(茹でダコの
場合30ppm)で食品衛生法違反になっています。
タコやイカは危険が迫ると墨を吐くことが知られています。イカは粘着力のある墨を吐き擬
態にして敵の目を墨に向けさせて、その間に逃げると云われています。タコの墨は粘着力が無
いので煙幕の様に墨を広げて逃げると云う説でしたが、最近の説ではタコの墨には敵をシビレ
させる成分が含まれており、敵がシビレている間に逃げるようです。この様にタコとイカでは
墨の成分が違います。墨の成分はセピオメラニンという成分が95%含まれていますが、残り5%
に違いがあります。イカはセピオメラニンにカリウムやマグネシウムの塩化物からなっており、
脂質を多く含む為に墨に粘り気があります。更にアミノ酸を多く含む為に旨みがありますので、
イカの墨は料理に使われています。タコの墨は旨み成分が少なく、サラサラで絡みにくい、熱
を加えると分解する、墨袋が破けやすい、取れる墨の量が少ないという点で料理には向いてい
ません。
タコは非常に賢いと言われています。タコは住みかの入口を掃除し、寝る時にはご丁寧に石
を入口に並べて塞ぐそうです。つまりタコは道具を使う事ができるのです。又、タコは人間を
認識する事が出来、好きな飼い主には近づいていくそうです。確かにサッカーの試合を予想す
るタコがいた事も記憶にある処です。
この賢いタコの子育ては次の様な話があります。タコは岩穴で産卵すると卵を抱えてろうと
で新鮮な海水をかけて他の魚から卵を守ります。これは数ヶ月続きますが、この間母タコは餌
を取らずに卵の面倒を見続けます。やっと卵から孵化する頃には母タコは力尽きて他の魚の餌
食になってしまいます。通常タコは一度に10万個以上卵を産みますが、無事に育つのはほんの
数匹と云われています。母タコは10万分の数匹の為に命をかける訳です。母タコが命をかけて
守ったタコを味わう時は心して食べなくてはいけませんね。
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<食の安全>
2020年東京オリンピック招致時の選手村セキュリティ管理試案
(その2)
サービス調理衛生研究所
増子 忠恕
前号では、選手村におけるセキュリティ管理について検討を行った結果、管理が必要な事
項(Ⅲ.E)までを掲載し、今号では、ユニバーシアード国際大会で具体的に運営実践した内
容(Ⅲ.F)を引き続き、掲載しております。
〔内容〕
Ⅰ.プロローグ
Ⅱ.第13回ユニバーシアード国際大会神戸大会開催に当たり、1985年に聴取した過去のセキュ
リティ事件と管理の概要
Ⅲ.国内での国際大会選手村のセキュリティ管理の検討と実践
A.選手村外部周辺のセキュリティ対策
1.テロ・ゲリラ活動の脅威評価分析と適正な対策
2.バイオテロ・細菌汚染のシーン分析と適正な予防対策
B.選手村入口手前での車両と人物確認と荷物確認
C.選手村入口手前での車両と人と荷物の一次除菌と殺菌及び室温管理
D.選手村レストラン入口玄関と荷物搬入の荷受け口の検査と安全衛生管理
E.選手村レストラン内のハザードのリスク管理と安全衛生リスク対策
F.ユニバーシアード大会選手村の運営実践 細菌危害危機管理の実践記録
Ⅲ.国内での国際大会選手村のセキュリティ管理の検討と実践
F.ユニバーシアード大会選手村の運営実践 細菌危害危機管理の実践記録
1995年福岡ユニバーシアード国際スポーツ大会選手村の食事提供は1985年神戸大会に続き二
度目のホスピタリティサービスの機会となった。サニテ―ションでは無菌化をテーマとし、危
害シーン分析による多重バックアップによる危機管理の実践により約3週間、142カ国・約
6000人の選手役員に対し危害発生が皆無で、無事国際イベントを終了する事が出来た。選手村
におけるホスピタリティサービスが如何に研究実践されたか、更に外食産業への提案について、
第一部はサービスについて【フードサービスにおけるホスピタリティサービスの実践理論
(2000年報報告)】1)主にホスピタリティシーン分析によるサービスの瑕疵・危害の防止、バ
リアーフリー化等の個人と施設全体のサービスを論じた。第二部は食事環境と食事の快適性と
飽きについて【フードサービスの快適性と“飽き現象”に関する実践研究考察(2001年年報報
告)】2)主に生理学・心理学から食事と環境の快適性や飽き防止のサービスを研究報告・提案
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した。本研究論文は第三部【危機管理の実践研究】として、食事提供上の基本となる全てのサ
ービスに共通する細菌危害に対する危機管理を如何に実践し、全てのサービスを安全に実施出
来たかの要約を述べ、この実践研究の結果から得られたフードサービス産業全般に対する細菌
危害危機管理について述べたい。
1.研究実践の報告の要約
キーワード:危機管理の多重バックアップシステム、パーソナルホスピタリテイ*、シンセシックホスピ
タリテイ*、サービスの瑕疵*、サービス品質*、サービスの快適性と飽き、ゲストの返報性心理、サ
ニテ-ション*、ホスピタリテイシーン分析と危害シーン分析、食品の保存許容時間、ドライシステム、
汚染区域・清潔区域、調理の外部加工化、
(*印は参考資料)
1-1 危機管理手法と由来
過去二回の日本開催ユニバーシアード大会選手村での世界各国ゲストへのホスピタリティサ
ービス(参考資料1)の危害防止に“巨大レストラン・工場の危機管理・無菌化”をテーマと
して実践した危害シーン分析(不具合危機シーンの想定)バックアップ手法は1983年ロサンゼ
ルス・オリンピック選手村での最悪シナリオを想定した危機管理手法である多重シュミレーシ
ョン手法・検証を参考にしたホスピタリティサービス・シーン分析手法1)の一つで想定され
る危害危機リストの列挙と解決手段の検証を重ねた細菌危害防除の三重バックアップ手法であ
る。この手法のオリジナルは米国軍隊の危機管理手法と言われ、日本人初の宇宙飛行士・毛利
衛氏の“宇宙の危機管理”講話からNASAスペースシャトル訓練の危機管理シュミレーショ
ン・多重バックアップ手法3)とも考え方が共通している。
選手村の危害シーン分析による細菌危害危機管理サービスの重点施策は二つに大別した。
① 施設全体のサニテ-ションの基本設計に関する研究立案と実践
② 組織・運営上の食事サービス行為の全てに関する危機管理の研究実践
1-2 危機管理手法1:選手村の基本となる安全なサービス施設の研究立案
1-2-1 施設全体のサニテ-ションの基本設計に関する研究立案と実践
【食品衛生三原則 ①細菌を持ち込まない②細菌を付けない・殖やさない③細菌を殺す】を組
織運営組織上からは施設やシステムの観点で、各部署ではオペレーション毎に、食品衛生三原
則の危害シーン分析を実施した(表1)
。
表1 施設運営上のサニテーション・シーン分析と要点
(1995ユニバーシアードレストラン施設全般の例)
食品衛生三原則
外環境・施設設備
ゲスト由来細菌
生鮮品食材由来細菌
細菌を持ち込まない
持ち込んだ細菌を除菌殺菌する
細菌を付けない・殖やさない
外気・細菌吸入:室風圧(+) 除菌空調、深夜殺菌灯
25℃ 60%の空調
出口ドアー・エヤ―カーテン
アルコールジェット噴霧
除菌空調、空調吹出口の洗浄殺
菌
手・靴・服由来:手洗い設備
殺菌モップの床殺菌
除菌・殺菌ナプキンのサービス
エアーシャワー室、除菌靴マット
殺菌ダスターの触手個所殺菌
卓上30分殺菌、持帰り禁止
ゲストアルコールナプキンの使用
共用トング類の殺菌と交換
付着菌の厨房汚染:外部処理
野菜・果物類の除菌・再殺菌
取り扱いの衛生、
野菜・果物の外部洗浄殺菌品
コンテナの殺菌
5℃冷蔵野菜庫保管
細菌規格品の調理品
外包装のアルコール・殺菌ダスター殺菌 5℃冷蔵調理品庫
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マテハン由来細菌
厨房・調理由来細菌
細菌規格品の冷凍生鮮品
殺菌ダスター殺菌
-18℃以下冷凍庫区分け保管
外包装の付着菌による汚染
外包装アルコール殺菌、殺菌ダスター
コンテナ毎日洗浄、直置禁止
運搬車搬入の厨房床汚染
殺菌液吸着マット上移動
運搬車の積替え搬入(室専用)
開梱室の設置
殺菌灯、アルコールジェット
衛生コンテナ積替え
野菜二次洗浄室隔壁区分
次亜塩素酸ソーダ100ppm5分間
冷菜保管は10℃以下4時間以内
加工調理食品・半調理品
Haccpによる完全加熱調理
温菜保管は65℃以上4時間以内
細菌規格合格冷凍生鮮品
調理品の芯温70℃以上加熱
エヤ―シャワーのパス窓口搬入
厨房全体汚染由来菌
スタッフ由来細菌
厨房内クリーン化
個人衛生の徹底、手指清潔
厨房室全体の全洗浄殺菌
一日3回全調理中止し全洗浄、
床、調理台・器具の常時殺菌
クイック調理長、時間調理禁止
入室時、手指・靴底洗浄殺菌
手指の常時殺菌、衛生手袋交換
1-2-2 施設全体のサニテーション基本コンセプトとスローガンの集約
危害シーン分析結果により“無菌化”をスローガンとした(表2)
。
表2 レストランの無菌化コンセプト(1995年ユニバ-シアード国際大会)
未殺菌外気吸入の遮断、人・食材外装、生鮮食材由来細菌搬入の遮断、長時間調理を避け短時間調理、
食品料理と機器・器具等厨房全体の細菌汚染増殖防止、料理の許容時間短縮、加熱調理温度の確実化
①排気バランスで室内(+)風圧化し汚染外気吸引による汚染防止と除菌空気の循環
②常時、30分毎の卓上と床の殺菌実施(殺菌剤液とアルコールスプレー殺菌使用)
③ゲストの不衛生行為があっても、ゲストの安全・危害防止を計るシステムを作る
④生野菜・果物の外部での一次洗浄・殺菌処理で厨房汚染を防止し、二次殺菌を効果的にする
⑤品質保証済調理済食品による食材由来菌の排除、汚染個所の減少に繋がり室内無菌化に近づく
⑥高速再加熱器調理で、調理済食品の短時間調理。同時に調理設備は軽装備化できる。
⑦料理の大量保存が不要となりリードタイムの短縮が可能――65℃の温蔵庫能力を減少可能。
⑧調理済食品使用による短時間調理で、1日三回の厨房全洗浄殺菌、器具類の洗浄・殺菌、着装物交換
を実施で厨房の無菌化を行う。
以上を骨子とした無菌化調理スケジュールを立案し実践した。
1-3 危機管理法2:選手村施設全般サービスの危機管理研究施策と結果の総括
1-3-1 実践した危機管理の細菌危害シーン分析手法
施設の細菌危害シーン分析をもとにスタッフ全員にサニテーション意識付けをし、次に部門
毎にサービスシーン、調理シーン毎に危害シーンを徹底分析する細菌危害シーン分析手法で
ある1)。(担当部署毎による最悪危害シーンの摘出と分析・防除対策の立案と実践)
危害シーン分析と調理の危害分析手法(HACCP)とPPの関係はHACCP(危害分析重要
管理点方式)をより確実に導入する為に、CCP(重要管理点)のバックアップの検討、又予
め実施しておくべき措置-衛生管理手法(Prerequisite Program)の実践リストと対策立案・
検証に想定される危害シーン分析を実施した。
1-3-2 全体危機管理の無菌化コンセプトの主な研究施策と成果の要約
施設内の細菌危害事故と言う最悪シナリオを想定し、部署毎に、危害シーン分析による三重
の無菌化バックアップ対策を実施した。その対策と効果の要約を選手村無菌化総括図(図1)
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に示した。これらサービスの結果、極めて良好な衛生状態に管理され、限りなく無菌化に近く、
危機管理の効果を確認した4)。
図1 1995年ユニバーシアード国際大会選手村レストラン無菌化の危機管理対策
1-3-3 選手村レストランの危機管理の具体的実践事項
ゲスト由来の危害シーン分析、ゲストの自被害行為シーン分析、サーバー起因の危害シーン
分析、組織・個人の総合された衛生サービスによって細菌危害を未然に防いだ。
(表3)
表3 選手村レストランの衛生危害発生の未然防止事項
①自己の健康管理のため、食中毒菌保菌者防止と菌を持込まない為に、刺身・生すし、生野菜などの喫
食を避け、品質保証済の冷凍調理食品を約1ヵ月間喫食した
②ゲストの靴底の除塵と室内循環空気の除菌や夜間の空気殺菌による室内細菌の浄化。
手洗いせずに入場したゲストの為に、手殺菌ナプキンの手渡し支給。
③ゲストの手指が触れる個所を30~60毎にアルコール・スプレーと殺菌液吸着ダスターで殺菌した。
ホールサーバーの手指も殺菌ダスターで同時に殺菌できた。
(既述の手指細菌検査表)
④室内ドライ化と無菌化を図る為、水流しを避け、洗浄殺菌液モップで30分毎、床を拭く殺菌の実施。
⑤床は、落下食品の喫食があっても安全を保証する為、床殺菌を30分毎徹底し,細菌検査で検証した。
⑥食卓テーブルの空席時に30~60毎のアルコール・スプレーと殺菌液吸着ダスターで殺菌した。
⑦セルフサービスで使用するトング類は30分毎交換し、その間にもアルコールと殺菌ダスターによる拭
きとり殺菌を実施した。
⑧セルフサービスのソースポット、ソース瓶の取っ手や握り部と注ぎ口のアルコールと殺菌ダスターに
よる拭取り殺菌を実施した。
⑨各種(水・ドリンク類)のデイスペンサー・ノズルの30分毎のアルコールと殺菌ダスターによる拭取
り殺菌を実施した。
⑩フォーク・スプーンを使用せず素手で食べる国のゲストもいるのでアルコール吸着ナプキンを使用した。
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⑪HACCPにより加熱調理の温度管理は自動芯温設定管理システムと自動調理解凍庫の活用とそのバック
アップ温度チェック、バックアップ殺菌として70℃・30分保持により、確実化した。
⑫生鮮食品の中で、魚貝類・肉類は冷凍食品細菌規格合格品の使用、生野菜・果物は外部加工所による
一次殺菌済品を選手村レストラン厨房プレップ室にて二次殺菌を実施した後に使用した。
⑬厨房内の長時間一次調理を避け、調理食品化によるクイック調理、ファーストフード化調理を計った。
⑭厨房でメニューに使用する全ての食品は細菌検査済の保証品のみを使用した。
(生鮮品は迅速検査)
⑮料理・食品の調理・セット後の許容時間は個別料理個々の保存細菌検査結果から、サラダバー
(15℃)のラインアップした野菜・果物、食品類及びフードバーのチーズ・ケーキ類などは、許容時
間を2時間、温料理(65℃以上)は温蔵庫(70℃設定)で2時間、コールドガルニ・冷料理は;冷蔵
庫4時間と決め、廃棄基準とした。
⑯ホールと厨房のドライオペレーションにより食中毒環境を避け25℃・60%の快適環境に近づけられた。
⑰厨房の機器・器具、テーブル、取っ手、手指の殺菌用区分した殺菌ダスターの30分毎交換使用
ドライオペレーション用語解説(参考資料2)
1-3-4 危害シーン分析による危機管理のバックアップ事例
HACCPの重要管理点(CCP)について、万一の不具合シーンを想定した危害シーン分析により、
殺菌の確実化の多重バックアップ施策事例をあげる。
【切り身魚・ステーキのグリル】芯温と殺菌確認の三重バックアップ(70℃・15分相当以上)
① 3点芯温センサー連動オーブンレンジの一次調理――センサーの事故・誤差はないか?
② 別個の3点自動記録芯温測定機設置による芯温ダブルチェック――温度計の故障は?
③ 調理後料理を70℃・30分温蔵庫に保管によるダブル殺菌――レンジの途中故障は?
1-3-5 危機管理実践の細菌検査による検証結果の要約(福岡市衛生局と調理衛生研究所)
ホール、厨房、料理、食材個々の細菌検査結果は良好で危害発生はなかった4)(表4)
。
表4 ユニバーシアード選手村レストランの細菌管理状況
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1-4 細菌危害危機管理サービスの評価
1-4-1 ゲストによる評価(サニテ-ション評価のみ抜粋1))
①個人へのアンケート(床細菌検査時、世界各国選手インタービューの纏めから)
雰囲気・環境で何か感じたことは?
清潔に気配りしている(26人/30人)。全てベリークリーン。床の細菌まで調べて安全
に注意している事に感動した。オリンピック選手村でも床の細菌まで検査したのを見た事
が無い。
②選手村内発刊の英字新聞から(ホスピタリティの評価として)
第一に清潔である。清潔にしている事を肌で感じる。
③選手村の閉村時には、多くの国の選手からベリークリーンの賛辞を戴いた
2.研究実践結果から得られた外食・食品産業全般に対する提案
2-1 食事提供・調理・食品の危機管理の現状
病原大腸菌O-157による食中毒以来、泥付有機野菜類、水耕栽培野菜類からは上記食中毒菌
の検出頻度が高く、これら野菜類の厨房への持込みにより、調理環境を汚染し更に食品への二
次汚染発生を研究誌に発表した5)6)。食品では大手食品メーカー製品の細菌食中毒事故が多
発し、最悪のシナリオを想定していない危機管理意識の欠如を曝け出している。最近の牛海綿
状脳症(狂牛病)の感染性蛋白質・異常プリオン(BSE)汚染牛肉問題も最悪シナリオを想
定しない事に由来する国政上の危機管理ミスである。集客施設の国際テロによる細菌危害等の
社会不安の危機管理にもオリンピックや国際大会選手村と同等の施設全体の感染症対策・細菌
危害防止の厳重な衛生管理が必要とされる。
2-2 危機管理意識欠如とHACCPシステムの問題点
米国食品医薬局がHACCP規準を導入以来、国際基準化機構(ISO)の品質管理及び品質
保証規格(ISO9000シリーズ)の認証取得サービス施設や食品工場も多い。保証された工場で
の製品こそが安全保障製品である筈なのに、雪印乳業を始めとする食中毒事故は、HACCP
システムの殺菌条件さえ守ればよいと言う品質管理・危機管理意識欠如の食中毒事故である。
フードサービスでは、対面サービス提供と言うサービス兼現物取引の商取引であり、真心の細
心な注意を払っているのに反して、食品販売は流通を介しての情報取引の商取引であり、従業
員の一人一人が消費者に直接の接触がなく、食品による食中毒事故は会社のアイデンティティ
であるべき商品がゲストの健康を損う事は犯罪であると言う人間の尊厳尊重の企業理念欠如に
よる危害事故である。斯様な危機管理には、企業自身の社内風土・モラルを含めた危機管理シ
ュミレーション分析と商品の危害シーン分析による危害リストアップとサニテーション意識の
啓蒙教育こそが最も重要である。
2-3 サニテ―ションサービス品質とゲストの快適性及び返報性(参考資料3)
サービスの快適性と飽きはサービスの品質評価結果であり、サービスと料理、清潔な雰囲
気を通じてサービス期待値以上の感動を与えることをサービスの快適性(快適性サービス)
とした2)。サニテ-ションサービス品質はゲストに対し、清潔感からの快適心理による再来店
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冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
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と不衛生からの不快心理による厭な敬遠店と言う(+)と(-)の二面性を持つ返報性心理
が反映される。更にサニテ―ションサービスの瑕疵は細菌による負(-)の返報性という危
害犠牲も伴う。
ホスピタリテイサービス(飽きない-好き感情)の清潔感のあるホール・什器・セルフサービス設備等
の施設サニテ-ションサービスがゲストの快適性に大きく影響する。ゲストにはサービスに対する返報
性心理があり不潔感や不衛生は嫌悪の返報性から嫌われ敬遠され、清潔感は好意の返報性から再来店に
繋がる。
2-4 危機管理意識・サニテーション意識の啓蒙教育
食事提供ではサービス側とゲスト自身による汚染行動がある。床落下の料理を万一、食べて
中毒を起こしてもその責任は施設側の瑕疵となる。サービスの実行は人間であり、スタッフの
ホスピタリテイとサニテーション意識の徹底が重要である。
サニテーション規律6)(参考資料4)は米国の連邦衛生基準(NSF)として食事による消
費者危害保護を目的とし、外食のサービスから調理場等までの衛生基準を科学的に規定し、
確立された。サニテーション意識の啓蒙には、『食中毒菌は人間と同様、蛋白質を好み経時的
に増殖して食中毒の原因となる。一方、食物の美味しさは、調理後の放置経過時間と共には
劣化してくると同時に細菌品質も劣化する。』目に見えない蛋白質成分と細菌を除くシステム、
増殖させないシステムこそがサニテーション・システムである。レストラン運営はQSCが基
本とされクレンリネスは重要な要素であるがより科学的な清潔性が求められる。サニテーショ
ンは単なるクレンリネスとは異なる。ここにサニテーションの意識付けが必要となる。WH
O(世界保健機関)の安全な調理の黄金律7)では有害細菌に汚染された食品による疾病発生
を減少するため、調理の遵守すべき、基本10原則の黄金律を定めて,実施を推進している。
(参
考資料5)
2-5 企業全体の危機管理法:企業理念に係る危害シーン分析手法(表6)
表6 企業理念に係る細菌危害危機管理シーン分析
①商品を通じて顧客消費者に喜びと感動をお届けする感謝の心が企業全体に欠如し、売ってやる企業体質
②原料・製品の品質基準の改悪と棚上げ・妥協――殺菌さえすれば規格以下の原料でも良い。技術の過信
③品質犠牲によるコスト低減――品質規格不在・規格無視など品質聖域を侵犯した技術者層の堕落
④現場でのサニテ-ションの管理と意識教育不足――人材の最小限配置、教育・訓練時間のカット、
⑤PP(危害防止衛生管理)の不徹底――衛生管理実施のチェック確認要員と時間のカット、検証者不在
⑥原食材の微生物品質特質と経時変化の知識不足――原料食材処理の外部化による食材知識の無知
⑦企業の無生産部門のコスト、無生産コスト・品質管理投資・経費の低減――品質不在の企業体質
⑧ISO認証やHACCP認定を取リさえすれば消費者信頼が黙って居ても得られると言う傲慢な社内風潮。
――HACCP認定後には配置人員・監視業務・工程管理・品質管理を削減する怠惰な企業体質
⑨常に正論が“出ない・生かされない・通らない”の社内3ない風土と顔色伺いのごま擂り社風。
細菌危害事故と言う最悪のシナリオを想定しバックアップ対策を考え実行する経営者層・従業員がいな
い。
フードサービスにおける細菌危害防除サービスは、HACCPに係る食品・調理の安全保障のみでなく、危
機管理の全て即ち、サービス店施設内一切の危害を防止する義務がある。
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2-6 フードサービスの細菌危害シーン分析手法と防除バックアップによる危機管理
2-6-1 サービス部門の細菌危害シーン分析と危害防除の実践(表7-1~4)
表7-1 ゲスト側とサービス側の不衛生シーン分析との事例
ゲスト側の不衛生危害シーン分析
サービス側の不衛生危害シーン分析
*シューズが埃だらけ、泥だらけのゲストもいる
*自然なウェイトルームがない。庭園風や垣根
*手洗い後に靴紐を結びなおす人もいる
など浄化空気による塵埃の除去がない。
*ゲストが食中毒・伝染病等の保菌者か患者がい
*エヤーカーテンや防虫設備の不備。昆虫が人
る
と共に侵入する
*入室時手洗いが不実施或は丁寧に洗われていな
*外気・細菌が吸引される
い
施設内風圧が
(-)圧
*爪が伸びて黒い爪垢のゲストもいる
*温湿度が快適状態ではない(25℃・60%)
*指にキズをしてガードテープをしている
*備品、配置品の不備――薬用石鹸や殺菌液の
*エントランスホールの床に口から吐出物を吐く
人
配置、
*器具・カラン殺菌のアルコールや殺菌ダスタ
*ホールでの待ち時間中におむつ換え赤ちゃんも
ーの配置がない。アルコールナプキンサービ
いる
スがない
*クリーンリネス不良個所がある。
――床や取っ手の汚れ、手洗いカランの汚れ、
*除塵マットの汚れ-吸引泥よけネットの目詰
まり
*個人衛生の不良――爪の手入れと手指の清潔
頭髪の手入れ、靴やユニフォームの汚れ等
*体調不良者や食中毒菌保菌者もいる
表7-2 ゲストの不衛生行為危害シーン分析とパーソナルサービスのバックアップ防除
危害シーン分析
危害防除の手段(サービスアクション)
手洗い不実施による汚染手指のまま入室
手洗い実施のエスコート、手殺菌ナプキン手渡し
手洗い器の不備、不潔、備品不足
支給、手洗い器の30分毎洗浄・殺菌(カラン)
手キズの人への手袋などの対応が無い
手指の自動殺菌・乾燥器の整備、ペーパーの補充
など
キズ・汚染手指や全ての人が触れる個所と器具
二次汚染される器具、設備の時間毎殺菌と器具の交換
レストラン・ホール :ドア取っ手
30分毎殺菌用ダスターとアルコールスプレー殺菌
ガイドポール・ロープ
カフェテリヤレーン、
セルフサービス
:各種セルフのバー
〃
〃
〃
〃
30分毎トング類の全交換、30分中に中間殺菌
セルフ用トング類
〃
サービスステーション:ソースポット
〃
30分毎スプーン交換、2時間毎ポット交換
各種ピッチャーの取っ手
30分毎アルコールスプレーと殺菌用ダスターで拭く
スパイス・ソースボトル
30分毎アルコールスプレーと殺菌ダスターで拭く
(注ぎ口、蓋、外側)
必要に応じ衛生手袋の使用
手洗いせず素手指で摘んで食べる食習慣のゲスト
アルコール・殺菌液吸着の手拭ナプキンと殺菌
手で摘んでたべる幼児
テープルマット・テーブルダスターのサービス
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表7-3 ホール全般の危害リストと多重バックアップ防除手段(1995年国際大会資料)
危害シーン分析の防除対象リスト
危害シーンに対応する防除手段
室内圧陰圧によるエントランス・入口から外気の
上室内空気(+)圧の空調、下吸引型エヤーカー
吸引
テン
入口から土埃、空中有害菌、食中毒菌の侵入
室内循環空気の除菌、床・テーブルの30分毎の殺菌
ゲストの靴・ウエアー、持込み品由来の食中毒
スチールマット、湿式殺菌マット、手触れ個所・
菌、のホール汚染
器具の15分間毎の殺菌
(アルコールと殺菌ダス
ター)
(床は殺菌液浸しモップによる拭き殺菌)
ホール全体のドライ化(温度25℃・湿度60%)の
管理
不衛生手指による食品や器具類の把握:食中毒菌
手触れ個所・器具の15分毎殺菌、器具の30分毎交換
潜在細菌感染症・保菌者ゲストとの共用による感染
〃
〃
食中毒・伝染病保菌者との共用トング類からの感染
〃
〃
衣類の接触する椅子・テーブルの殺菌ダスターの
殺菌
ホール運営上ピーク時の混雑による有害落下菌
循環空気の除菌、換気回数アップ、テーブル・床
殺菌セルフ・カフェテリヤのリードタイム短縮:
60分以内
昆虫・小動物による床やテーブルの食中毒菌汚染
夜間の駆除、夜間のアルコールジェット、殺菌灯
点灯、オープン前のテーブル・椅子と床の殺菌・
殺菌ダスターの配置、リードタイムの短縮:60分
以内
メニューブック共用による手指の有害菌感染
共用メニューブックの廃止、メニューブックの拭
き殺菌、サイクルメニュー表の配布、当日メニュ
ー表の配布
共用ボトルソース・スパイス注ぎ口の手指由来に
注ぎ口の30分毎、随時汚れの拭き殺菌とボトルの
よる有害菌・食中毒菌の二次汚染
交換、終了後冷蔵保管、
ゲスト・客の不衛生行為による有害菌食中毒菌
発生都度、床やテーブル・椅子の洗浄と殺菌、常
時殺菌
―テーブル上での嘔吐・吐き出し物の有害菌
ダスター配置と30分毎拭く、専任マネージャーの
配置
―床への嘔吐、痰・唾などの吐き出し物やガム
床殺菌用モップの配置と30分毎殺菌モップ拭きの
実施
―床の落下食品の喫食による有害菌・食中毒菌
落下物の処理、万一食べても安全な床の清潔・殺菌
―素手で摘んで食べる人の手指の有害菌、食中毒
殺菌テーブルマットと殺菌ナプキンの常用して手指とテーブル
菌
殺菌
レストランホール・キッチン全体の有害細菌汚染
夜間のオゾン殺菌とアルコールジェットスプレー
殺菌
ドライオペレーションの実行(参考資料2)ができているか?
*床の拭き殺菌方法:洗浄殺菌液(中性洗剤+逆性石鹸)の0.5~1.0%液を浸し軽く絞ったモップ=
床、入口のたたき
*拭き殺菌方法:塩素60~120ppm殺菌液吸着ダスター30分交換使用=トング類、注ぎ口、取っ手、テー
ブル・椅子
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表7-4 ホールサーバー個人衛生起因の危害シーン分析に対応する防除手段
個人の細菌加害シーン
防除対象
防除方法のサービス
検便による保菌者
手指・身体、衣類付着食中毒菌
体調異常者
鼻汁、糞の付着する手指、靴の
有害菌
身体・手指、衣類付着の食中毒菌
クシャミなどの由来有害感染菌
3日毎の連続検便、検便判定後
に勤務
二重手袋使用、手指殺菌、靴底
殺菌
家庭でのユニフォーム洗濯禁止
ユニフォームままのトイレ禁止
家族保菌者の人
内部使用靴の不潔
爪・毛髪、身嗜み不良
靴底や床の有害菌、食中毒菌
有害菌、食中毒菌
靴の履き替え、靴底の薬液殺菌
クリーンルーム、手洗いオート
ロック
ディープキャップ着用、ハード
スプレー
全員ドレスアップチェック入室
個人の食事管理
刺身、生野菜由来の食中毒菌
生鮮生食禁止、加熱食のみ、検
便受検
2-6-2 食材・食品部門の細菌危害シーン分析と危害防除手段の実践(表8‐1~4)
表8-1 食材・食品全般による細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
防除対象
食材・食品の中に細菌品質不良品が
ある
流通保管で細菌品質不良が発生する
土壌菌・腐敗菌
生産~流通の各段階で外装汚染があ
る
保管温度・収納ミスの細菌汚染・増
殖
食材のリードタイムが守られない
外装付着土壌菌と増殖
加工食品の期限切れの使用がある
細菌の増殖、品質不良
細菌類の増殖
保管汚染、付着菌増殖
細菌類の増殖
防除手段
使用食材の細菌品質検査、品質保証品
の購入
流通途中の温度管理遵守と徹底、温度
チェック
包装品の直置禁止、倉庫とコンテナ
室・床殺菌
食品毎の温度管理と記録、収納場所の
記録
収納品毎に期限表示、シグナル表示、
定時チェック
先入先出し、食品使用記録、期限切れ
廃棄徹底
表8-2 生鮮食肉・魚介類による細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
環境由来汚染 落下細菌の表面汚染
蝿・小動物の細菌汚染
原体の品質 鮮度不良・腐敗部がある
防除対象
室内浮遊細菌
食中毒菌・伝染病菌
食中毒菌、腐敗菌
手指・器具の不衛生取扱
細菌汚染、菌の増殖
狂牛病プリオン汚染がある
異常プリオン蛋白質
保管・管理
超過
規定外温度、保管期間
細菌類、カビ・酵母類
熟成期間中の付着汚染
腐敗菌、カビ・酵母
庫内の水滴、カビ付着
細菌類とカビ・酵母
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防除手段
外気吸入防止、床殺菌など清潔作業区
域化する
室風圧(+)、防虫と駆除、臭気発生
所の除去
受入品質基準の検査後受入、使用時チ
ェックと記録
殺菌の励行、スワブ検査と指導、器具
洗浄殺菌
検査済牛肉、手指への感染防止(手袋
使用など)
食材毎保管基準、温度帯毎管理、保管
期限表示
肉類保管場所指定と室・棚の殺菌、ド
リップ除去
庫内の壁面・天井・棚の殺菌(週1回)
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表8-3 生鮮食肉・魚介類による細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
防除対象
防除手段
冷凍前の鮮度不良がある。
食中毒菌、腐敗菌
冷凍食品協会品質保証品の使用、使用
流通時の部分解凍がある
付着・残存菌の増殖
受入時検品、流通昇温マーカー、流通径路
解凍後の許容時間オーバーがある
細菌の増殖
保管温度の不適切と許容期間超過が
細菌増殖、食味劣化
事前検査
時間短縮
食品毎許容時間明示・シグナル表示、
使用禁止
ある
品種毎の温度管理、食材毎許容時間の
明示
外包装の汚染で器器・手指の汚染が
土壌菌、床細菌
ある
直置禁止、外包装の殺菌、扱い者の手
指の殺菌
表8-4 生野菜・ミックスサラダ用加熱食材による細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
環境由来 蝿・昆虫・小動物の汚染
防除対象
食中毒菌・伝染病菌
防除手段
防虫・防鼠、機器・器具・床殺菌、
室ドライ化
外気の吸入がある
外気有害菌、
原野菜受入室区隔化、風圧(+)、
外気流入防止
原料由来 野菜付着土壌菌の搬入
土壌細菌・食中毒菌
外部・産地洗浄、保管庫内の清潔、
直置禁止
泥付有機野菜の厨房汚染
食中毒菌(0-157・SE)
産地洗浄、再洗浄、汚染区域区分、
室・床殺菌
用水由来
地下水の汚染、取水途中
土壌菌、汚染菌
定期細菌検査、殺菌液滴下、殺菌液
濃度測定
汚染
製造工程 殺菌前食材の室内放置増菌
食中毒菌・土壌菌
殺菌処理前の冷蔵保管管理(コール
ド温度帯)
機器類の洗浄不良からの
黄色ブドー球菌食中毒菌
手指由来の二次汚染
サニテーション意識教育、事後チエ
ック・記録
汚染
黄色ブドー球菌食中毒菌
手袋着想・30分毎殺菌、殺菌ダスタ
ー常時使用、
生野菜殺菌不良の残存菌
食中毒菌・土壌菌
殺菌水・水洗水の再使用
食中毒菌・土壌残存菌
殺菌液濃度と沈浸時間の適正化管
理、上下反転
換水殺菌・連続流水殺菌、自動濃度
調整装置
汚染
床の飛散水による汚染
床の汚染細菌類
水冷却不十分による増菌
殺菌後の残存菌
直置禁止、床上30cm架台、床の清潔
化と殺菌
チルド水使用、水洗後直に冷蔵、コ
ンテナ積段
殺菌後野菜の室内放置増菌
殺菌後の残存菌
野菜殺菌用ネット袋洗浄
土壌菌、汚染菌
収納コンテナの冷蔵庫保管、積段・
積方の管理
搬送保管 コンテナ洗浄不良による
食中毒菌・土壌菌
使用後洗浄殺菌と使用前殺菌、洗浄
殺菌の確認
汚染
冷蔵庫保管中の汚染と増菌
ネット袋の交換、洗浄殺菌のチエッ
クと徹底
不良
土壌菌残存菌・カビ
冷蔵庫内凝結水の落下防止、積段・
温度管理
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(ミックスサラダ用芋類・卵・パスタ等)
原料由来 洗浄・泥付芋、卵殻から
土壌菌・サルモネラ菌等
産地の一次洗浄、二次洗浄、卵殺
菌、室床殺菌
汚染
製造工程 生野菜製造工程に追加と
して
加熱不足による残存菌
土壌菌・セレウス菌等
加熱温度と時間の管理(食味との勘
案条件)
加熱後の冷却不足による
土壌菌・セレウス菌等
急速冷却・真空冷却、コンテナ収納
量の加減
増菌
冷凍野菜類不適切解凍の
加熱解凍条件、温度と時間、解凍の
残存菌
投入量
増菌
加熱後手指・器具による
黄色ブドー球菌食中毒菌
手袋着想、30分毎殺菌、殺菌ダスタ
ー常時使用、
汚染
搬送保管 コンテナ洗浄不良による
食中毒菌・土壌菌
使用後洗浄殺菌と使用前殺菌、洗浄
殺菌の確認
汚染
冷蔵庫保管中の汚染と増菌
土壌菌残存菌・カビ
冷蔵庫内凝結水の落下防止、積
段・温度管理
2-6-3 調理部門の細菌危害シーン分析と危害防除の実践(表9‐1~4)
HACCPとPP(予め実施されるべき衛生管理)の危害シーン分析と多重バックアップによる防
除手段を表に示した。
表9-1 厨房環境の細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
ハエ・ゴキブリ、鼠等の直接間接の
防除対象
食中毒菌・伝染病菌
汚染
防除手段
防虫鼠、夜間の駆除、清掃、殺菌モ
ップの床殺菌
殺菌液吸着ダスターで機器殺菌、夜
間殺菌灯使用
室内アルコールスプレー(機器・手
指)
厨房内圧が陰圧で外気吸入、高温高湿
食中毒菌の吸入と増殖
隅・床の水溜り汚れ、パテ状粘着物
床の汚染菌・食中毒菌
エヤコン・給排気管理、25℃60%、
室のドライ化
がある。
ドライとウエット床の仕切り区分、
床塗装平滑化
室のドライオペレーションの実施、
床ポリシャー
ホールサーバーや食材の出入り移動
手指・靴、箱底の細菌
がある
厨房の出入り口ドアーの開放がある
パスカウンター、エヤーカーテン、
除菌マット
昆虫・外気由来細菌類
風圧を陽圧に管理、自動・防虫・エ
ヤーカーテン、
ドライオペレーションが実行されて
(殺菌モップ・殺菌ダスターによる
いるか
拭取り殺菌)
細菌基準値は清潔作業区域基準値以
床の汚染菌・食中毒菌
下か?
空中落下菌(5以下)・床大腸菌群
数(10以下)
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表9-2 調理スタッフ個人起因の細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
防除対象
防除手段
手指・衣類の食中毒菌
勤務禁止
保菌者(検便対象外食中毒菌)の従
手指・鼻汁・衣類の食中
業務禁止
業員
毒菌
家族に伝染病・食中毒患者のいる者
手指・身体・衣類の食中
常態保菌者(検便対象食中毒菌)の
従業員
勤務停止
毒菌
下痢・嘔吐の体調異常者
手指・身体・衣類の食中
勤務停止
毒菌
風邪症状で吐出物のある人
鼻汁・咳・手指の食中毒
マスク、手袋、殺菌ダスター携行
菌
手指に傷・肌荒れの人
手指の黄色ブドウ球菌
手袋、マスク、殺菌ダスター携行
頭髪・口ひげの手入れ不良の人
フケ・よだれ由来の細菌類
整髪・ネットキャップ、スプレー
衣類、下着不潔の人
垢、下着・衣類の細菌類
衣類・下着交換 クロズ袖口
厨房靴の不潔な人(その場洗浄禁止)
床・靴付着の食中毒菌
靴交換、床掃除と殺菌・ドライ化
不潔爪・手指の人
手指由来の食中毒菌
爪切り、爪ブラシ洗浄・殺菌
汚染生ものの喫食(刺身類・肉刺し)
食中毒菌の保菌者
生もの喫食禁止、調理食品の喫食
表9-3 調理スタッフ不衛生行為の細菌危害シーン分析と防除対象、防除手段
危害シーン分析の危害シーン
床に落下食材や料理がそのまま使用
防除対象
床の食中毒菌・汚染菌
床の食中毒菌・汚染菌
再使用の基準を決める。廃棄、アル
コール殺菌等
使用
落下食材を拾った手指で調理や盛付
廃棄基準の明確化、水洗使用の基準
化、床の殺菌
される。
床落下のラッピング紙器、カップの
防除手段
床の食中毒菌・汚染菌
手指の洗浄基準・習慣化、殺菌ダス
ターの拭取り
をする
アルコール殺菌、殺菌モップによる
床の殺菌
調理器具の洗浄不良や床洗い汚水の
食中毒菌・汚染菌
洗剤の選択、洗浄基準の確認、床洗
浄殺菌剤使用
付着
床洗水の跳ね返り防止、使用前の濯
ぎ後使用
床落下器具の使用がある
床の食中毒菌・汚染菌
代替器具使用、落下器具の不使用の
習慣化
外装のみは殺菌ダスターとアルコー
ルの併用殺菌
カランや機器の取手に汚れ・カビが
食中毒菌・カビ類
ブラッシング洗浄、殺菌ダスターの
拭取り、
付着
アルコールスプレー、
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表9-4 調理時と料理の細菌汚染の危害シーン分析と防除対象と防除手段
危害シーン分析の危害シーン
生冷凍・なま物食材(魚・肉)を扱
防除対象
食中毒菌・伝染病菌
防除手段
下処理域区分・調理器具の仕分け使
った
用・エプロンの交換、手指殺菌(殺
手指で調理品や料理を扱う
菌ダスターとアルコール)
解凍檎のリードタイムオーバー品が
増殖した腐敗細菌
ある
食材毎に保存試験によりリードタイ
ムを表示、
食中毒菌
細菌品質と廃棄品質教育、サニテ‐ション
意識教育
解凍温度が高くドリップや変色の発生
増殖した細菌類
解凍した食材の再冷凍がある
増殖した細菌類
解凍温度の遵守と記録、解凍檎の品
質基準徹底
廃棄基準の徹底、加熱調理檎別用途
に利用
グリルではドリップのでる肉料理が
肉(魚)の残存細菌
ある
加熱料理(魚・肉・野菜)で芯部が
調理温度・芯温の徹底と温度チエッ
ク、自動化
素材の残存食中毒菌
サイズ毎の調理条件の設定(温度と
生の時がある。温度センサー故障も
時間)と調理技術の訓練、芯温測定
ある
の確認、芯温センサーの二重バック
アップ、料理の70℃・30分保持
加熱用素材と生食用素材が同じ器具
食中毒菌の汚染
使用
加熱食材と生食材用器具区分、30分
毎殺菌
(俎板と包丁等)(殺菌ダスターとア
ルコール)
調理機器・器具が1日中連続使用し
食中毒菌の増殖
ている
3時間毎の交換又は洗浄、30分毎殺
菌、
(殺菌ダスターとアルコール)
機器・器具の洗浄不良による汚染が
黄色ブドウ球菌・食中毒菌
ある
サニテーション意識教育、事後チエ
ック・記録
盛付場所の温湿度が高い
細菌の増殖
盛付後に長時間の放置がある
細菌の増殖
25℃・60%以下に空調、温風の
こない場所
リードタイム徹底温料理:65℃以
上4時間以内、
冷料理:10℃以下4時間以内
HACCPのCCP管理にバックアップなし
食中毒菌の残存・増殖
(殺菌不良・加熱不十分)
芯温センサー・加熱機器のバックア
ップ、
薬液洗浄殺菌の二重。・三重のバッ
クアップ
2-5 危機管理・サービス瑕疵防止の多重バックアップシステムの構築
サービス品質の維持向上のため危害シーン分析により、個人・施設のホスピタリティサービ
スの瑕疵を防止する二重・三重のバックアップシステムを構築する。万一、危害が発生したら
どうするかを危害シーン分析しリスクと防除手段のバックアップを積み重ねる。特に、HACCP
のCCP(重要管理点)に関しては加熱調理での殺菌処理には多重のバックアップ処理を検討す
る。(1-3-4項参照)
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-29-
2-6 細菌チェックによる危機管理の監視システム(1985年ユニバーシアード国際大会方式)
国際大会での細菌検査評価法:サニタリー・オペレーション・システム(SOS手法8)は
細菌危害シーン分析による防除サービスの検証・監視として室内環境、食材・料理等の細菌検
査基準値を決め、定例検査・不時検査をして評点換算し改善指針とする。
(参考資料6)
3.細菌危害危機管理の研究報告と食事提供産業への提言
サニテ-ションサービスはゲストに直接のインパクトサービスではないが、ゲストに対しあ
ってはならない細菌危害防止のために、HACCPシステムを含めたあらゆる最悪シナリオを想定
し対策をたてる危機管理の手法が危害シーン分析・サービス行動方式である。ゲストが手洗い
せず汚れた手で、泥だらけの靴で、汚れたウエアーでの入室であっても、床落下食品をたべる
人がいても、落下フォークを使用しても床・室内が無菌に近く、多重のバックアップサービス
により食中毒の危惧を少なくできる。一旦、サービスの瑕疵である不衛生・不潔・不快なアン
プリザントサービスや食中毒が発生したらどうするか、瑕疵となる最悪シナリオ想定シーン毎
に徹底した危害シーン分析により、検証を重ねて多重の除菌・殺菌のバックアップ対策と個別
オペレーションの徹底で、危害要因を無くし、清潔感の溢れるホスピタリテイサービスにより
ゲストに危害をもたらすことなく、感動してお帰り戴くことが当然の義務である。事故がなく
て当たり前の厳しい仕事であってもこの事がサービス側自らの喜びである。細菌危害の危機管
理には、宇宙飛行士、毛利衛氏の講話の如く現在、アメリカ軍隊・NASAでの実施が紹介さ
れた3)最悪シュミレーションのピックアップとその多重バックアップの検証や1983年ロサン
ゼルスオリンピック選手村の危機管理手法である最悪シナリオのシュミレーション分析手法
1)
こそが小職が2回のユニバーシアード国際大会運営で実践したゲスト側に立っての危害シ
ーン分析と防除に他ならない。この危害シーン分析により摘出した危害の防除検証の積み重ね
により国際大会の危機管理とサニテ―ションサービスを無事達成できた。本論文は大阪オリン
ピック招致委員会の支援に纏めた論文で、来るべき東京オリンピック招致委員会の支援に更に
追加した論文で、国際大会等のホスピタリテイーサービスに携わる青年達や、外食・食品産業
における細菌危害危機管理の一助に成りうれば幸いであります。
引用文献
1.フードサービス学会会報(2000年)増子忠恕
p50{フードサービスにおけるホスピタリ
テイサービスの実践理論}
2.フードサービス学会会報(2001年)増子忠恕
p40{フードサービスの快適性と飽き現象
に関する研究}
3.北大同窓会講話会:毛利衛氏(2001年12月)宇宙に於ける危機管理
4.雑誌:増子忠恕(1996)日本調理食品研究会誌 Vol2・No2
{国際大会レストラン調理食品によるメニュー化と衛生管理}p77~112
5.雑誌:増子忠恕(1999)日本調理食品研究会誌 Vol5・No2{サラダの品質管理}p57~83
6.単行本(共執筆)増子忠恕(1991)工業技術会
出版{食品製造における衛生管理の実
際}p171~238
:1985年ユニバーシアードの運営結果からの衛生管理の改善
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7.(社)日本フードサービス協会(1997){食品の安全な取り扱い方ダイジェスト}
8.雑誌:増子忠恕(1996)日本調理食品研究会誌 Vol4・No2O-157対策と衛生管理
{生野菜サラダミックスサラダの衛生管理}p39~62 HACCP方式と衛生オペレーションシステム
参考資料1 ホスピタリテイサービス分類とサニテ―ションサービスの解説
ホスピタリティサービスは
① 個人の真心サービスであるパーソナルホスピタリティサービス
② 食事提供施設・組織全体サービスであるシンセシックホスピタリティサービス
に分類できる1)(表)。何れも相手に心から感動を与え、それに感謝されて始めてサービスが
全うされる。ホスピタリテイサービスの行動は真心が如何に行動化されたかにより、サービス
品質が評価される。
サニテーションサービスは施設全体のシンセシックホスピタリティサービスに区分され、ゲ
ストの自被害行為、サービス側の非衛生行為、調理加工場・調理などの食事提供施設全体の細
菌危害防除及び衛生管理上のサービスとした1)。
ホスピタリテイサービス分類表
パーソナルホスピタリティサービス:
ゲストに対しその場で相手の状況(業務的、身体的)や環境状況(季節、気候等)
に応じ、感謝に満ちた最適のピッタリの挨拶と言葉を表情と態度と共に交わすこと
から始まる。国際大会サービスでは競技前と後、勝者と敗者、天候等により、ゲス
トへのピッタリの挨拶や交わす言葉は一人一人異なり、ゲストに感動されるサービ
スがホスピタリティの大事な一歩であり、瞬時に最適の言葉を選びうる努力と注意
力も必要になる。サーバー個人の表情、身だしなみ、態度、介助などの行動を通じ
相手に心から感動を与え、それに感謝されて初めてサービスが全うされる。これが
好意の返報性となり再来店に繋がる。
ゲストに直接サービスはしないが、掃除などの後方サービスもシャドーサービス
としてのパーソナルサービスがある。
瑕疵行動を排除する。①ゲストに対する不愉快好意(アンプリザント行為)
②なすべきサービスを能動的にしない(ノーサービス)
シンセシックホスピタリティサービス:
心休まる居住空間と思いやり溢れるクリーンな食事環境、待ち時間のない食事
サービスシステム、歩行不自由な人や杖の人、幼児・ベビーカーの人、子供・
老人へのバリアーフリー対応やメニュー、衛生などの施設全体が運営組織と共
に活動するサービスは総合的調和された意味からシンセシックホスピタリティ
とした。
食事提供サービス施設全体のサービス器具や設備、快適食事環境化(室内装
飾・照明・パネル・BGMなど)
、メニュー・調理、細菌危害防止のサニテーシ
ョンシステムなどの運営組織、基準等を作り活動する。サービス施設・組織全
体でゲストに感動をもたらす活動で個人とは別のホスピタリティサービスとな
る。
瑕疵事項を排除する。①不快環境(昆虫の介在、音・異臭、温湿度等)
不衛生銃器、QSCの不徹底、トイレの不潔等
②バリアーがある。
(アプローチ・エントランス・店内)
店内の通路・手摺、車椅子・ベビーカー客対応のシート
③対象ゲストに適応したメニューと美味しさの提供
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参考資料2 ドライ・オペレーション 用語の解説
① 用途別カラー区分した殺菌剤吸着ダスター(塩素120ppm液か70%アルコール)入りのボッ
クスを各所に配置して、テーブル・調理台・器具・手指・取っ手の水流し洗浄の代りに、常
時一作業の都度ね殺菌ダスターで拭き取る。殺菌ダスターは原則30分で交換使用した。
②
床の水流し洗浄は総洗い時(3回/日)とし、定例時と随時、洗浄兼殺菌剤吸着モップ
(洗浄殺菌液0.5~1.0%液)で拭き取る。ホール床は30分毎・厨房床は60分毎を原則とし、
汚れは随時拭き取り殺菌を実施した。
参考資料3 サニテ―ションサービス品質とゲスト心理・返報性に関する理論
サービス品質
ゲスト心理と返報性感情
細菌からの(-)返報性
アンプリザントサービス 不潔・不衛生=不快厭き―嫌い感情(再来店なし) 室内細菌増大・食中毒発生
(ゲストへの不快行為)
(サービス瑕疵)
(細菌危害発生)
ノーサービス
不潔感・即時清掃不良=厭き―嫌い感情( )
触手箇所・床から二次汚染
(すべきサービスしない)
(サービス瑕疵)
(細菌危害危機あり)
シンプルサービス
定例外クリ―ン化不良=飽き―積極来店なし
二次汚染箇所あり
(マニュアルのみ)
(ゲスト期待値以下)
(細菌危害の機会あり)
ホスピタリティサービス サニテーシヨンサービス=快適―好き(再来店)
(危機予見サービス)
施設内の無菌化、清潔化
(ゲスト期待値以上の清潔・交換・殺菌サービス) (清潔区域、細菌危害なし)
参考資料4 米国連邦衛生基準(NFS)によるサニテーション規律5) の解説
『人間に不可欠な栄養素である食物は、空気・水・手指・器具・食物などを介して、有害
微生物により、全ての場所で汚染され繁殖して腐敗し、食中毒と言う危害を人間に与える。微
生物の中で食中毒菌は、人間と同様、蛋白質を含む食品を好み、食品中で急速に増殖する。こ
の様な蛋白質を含む食品は法的に Potentially-hazardous-Food(潜在的危険食品)と位置付
け、これら食品の取り扱いの規則と機器、食器への付着を防止し、除去し、食中毒等の有害菌
』
を排除するシステムの全てを指す。
レストランでの事例では、食器洗浄後に流水ではなく、溜水で濯ぐ、或は一見きれいで長時
間使い古しの汚れているダスターによる食器やテーブルを拭くことは、一見きれいに見えるが、
水溶性蛋白質や微生物は残存している。
参考資料5 WHOの安全な調理の黄金律(ゴールデンルール)
安全調理10:原則
① 安全に前処理・加工処理された食品の使用(洗浄・薬液殺菌、加熱調理品)
① 食品の十分な加熱調理
② 調理された食品は放置なしで即座の喫食
③ 調理された食品の保管は60℃以上か10℃以下とし、積過ぎしないこと
④ 調理済食品は70℃以上に十分に加熱
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⑤ 生食の食品と調理済食品との接触を禁止 調理器具の兼用も避ける
⑥ 常に繰り返し手指の洗浄の実施(洗浄と殺菌)
⑦ キッチンの機器・器具・布巾・床など全て清潔に保つ(洗浄と殺菌)
⑧ 食品に昆虫・小動物が触れない保管管理の実施
⑩ 調理用の水は飲用水と同程度の安全な水の使用
参考資料6 食事サービス施設の細菌危害危機管理の評価手法
SOS手法:細菌検査結果を点数換算して評点とする。細菌検査配点方式例(減点累積法)を
示した8)。
SOS手法-②(ユニバーシアード方式)衛生検査配点方式(減点法)例
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<文献紹介>
『ここがポイントかな? 食品冷凍技術』
新着文献情報 その43:平成26年6月号(平成25年12月~平成26年2月)
公益社団法人日本冷凍空調学会 参与
東京海洋大学 食品冷凍学研究室
白石 真人
1.☆☆低温鶏胸肉ATPの変化☆☆
鶏肉のATP代謝の死後変化;ATPとリン酸化糖類の減少
Post-slaughter changes in ATP metabolites, reducing and phorylated sugars
in chicken meat
Michel Aliani, Linda J. Farmer, James T. Kennedy, Bruce W. Moss, Alan Gordon
Meat Science 94 (2013) 55–62
畜肉では筋肉から食肉への熟成で興味深い研究が多い。
鶏胸肉の筋肉から食肉へのチルド貯蔵中のATPとその分解産物の形成とその濃度変化について
長期間計測している。
グルコース6・リン酸濃度が直線的に減少する一方、グルコース濃度は一定に保たれた。グ
ルコースとグルコース6燐酸の濃度はチルド貯蔵中胸肉のpHuに逆相関している((pHu:死後
4‐5時間後の最終的なpH)
。急速な死後の解糖と高いpHu値はと畜時とその前のストレスがあっ
たことを示唆している。
ATP、ADP およびAMPは急速に分解される一方、IMPの濃度は急速に高まり高く維持される。
イノシン、リボース、ヒポキサンチンの濃度は死後徐々に増加したが、リボース燐酸の初期の
増加は持続しなかった。
鶏肉における潜在的なリボースはフレーバー形成のために重要と信じられており、イノシン
とIMPの形で結合し残る。リボースとリボース5燐酸に対する更なる分解経路が、これらの前
駆体濃度を低下させることが示されている。
図1、試料のと畜処理と分析用試料のサンプリング時間(まとめ)
図2、鶏胸肉の試料作成部位(A から Lまで、6検体使用)
表1、鶏胸肉の死後のリボヌクレオチドと糖類濃度(μmol/g)の時間変化(実験1)
表2、鶏胸肉の死後のチルド貯蔵中のリボヌクレオチドと糖類濃度(μmol/g)の時間変化(実
験2)
表3、グルコースとグルコース6燐酸のピアソン相関係数
図3、グルコースとグルコース6燐酸濃度に及ぼすpHu の効果
図4、チルド貯蔵(死後4~200時間)での 実験2の代謝産物の濃度に及ぼす時間の効果、a;塩
基を含む代謝産物、b;リボースを含む代謝産物、それぞれTBCMとTRCM(総塩基とリボースを
含む)の代謝産物
図5、チルド貯蔵(実験2)のヒポキサンチンとリボースとリボース6燐酸の濃度の変化
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図6、牛筋肉での異なった経路による IMP の分解の可能性(Lee and Newbold,1963)
2.☆☆冷凍野菜は耐凍性遺伝子の露払いの出番か?☆☆
植物の耐凍性(耐寒性)の代謝工学
Review: Metabolic engineering of cold tolerance in plants
SwatiMegha, UrmilaBasu, NatN.V.Kav n
Biocatalysis and Agricultural Biotechnology, 3 (2014) 88-95
経済的に重要な作物の生育と生産にとって低温ストレスは大きな脅威的な非生物的ストレス
の1つである。
寒冷と凍結温度の両者が植物の成長に厳しい影響を与え、穏和な植物(多年性のrye grass
や小麦のような)におきるこの損傷を避ける、あるいは最小にするためのメカニズムを進化さ
せている。
グリシン ベタイン、糖類(トレハロース、フルクトース)ポリアミンを含む浸透圧保護物
質の蓄積は脂質膜タンパク質に変化し、光合成による蓄積は分子レベルでの広範囲に及ぶ再プ
ログラミングと共に植物が低温への耐性を獲得するのを助ける。
この総説は種々の代謝経路に含まれる生合成遺伝子の紹介であり、主に植物の代謝工学に焦
点を絞っている。
ゲノムや転写産物の配列を活用することにより、遺伝子機能やエピジェネティックな制御を
含めた発現制御ネットワークを、植物の表現型とリンクさせられるようになってきている。
将来的にはこの新しい知識は種々のストレスへの耐性を調停する遺伝子操作による耐凍性遺
伝子型の開発へと導くであろう。
1.はじめに、2. 有望な保護物質、2.1.グリセリン、ベタイン、
2.2. プロリン、2.3. 可溶性糖類、2.3.1.トレハロース、2.3.2. フルクタン、2.4. ポリアミ
ン、3. 膜脂質、4. デハイドリン、
図1 低温ストレスと馴化における細胞生化学と分子レベルの変化
(低温ストレスによって)⇒①膜損傷、②細胞電解質の漏出、
③光合成阻害、④萎れる、chlorosis、低成長。
(馴化によって)⇒①浸透圧因子(可溶性糖類、ベタイン、ポリ
アミン)の蓄積、②活性化酸素種の蓄積、③膜脂質組成の変化、④遺伝子転写、ポスト転写変
化、⑤光合成的馴化
表1 低温耐性に関与する主要な代謝経路と転写因子
表2 異なった植物の種類およびその標的遺伝子における低温制御
miRNAsのまとめ(①A.thaliana、②A.thaliana、③Populus trichocarpa、
④Brachypodium distachyon、⑤O. sativa、⑥Prunus persica)
3 ☆☆冷凍野菜の抗酸化活性☆☆
生鮮および加工ハーブと野菜の抗酸化特性
Antioxidant properties of selected fresh and processed herbs
and vegetables
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Eric Wei Chiang Chan, Yuen Ping Tan, Sze Jia Chin, Li Yi Gan,Kor
Xian Kang, Chin Hong Fong, Hui Qi Chang, Yee Chern How
Free Radicals and Antioxidants 4(1),39-
2014.Jan-Jun
ハーブと野菜の抗酸化特性については既に良く知られているけれども、冷凍などの加工処理
の効果については殆ど研究されていない。
本報ではハーブと野菜の抗酸化特性に及ぼすブランチング、電子レンジ、冷凍、塩水漬け、
酢漬け等の処理効果について分析と評価をおこなっている。
分析、評価法:
【抗酸化特性】
フェノール含量(総フェノール含量、総フラボノイド含量、
caffeoylquinic acid)
【抗酸化活性】
フリ-ラジカルscavenging活性、
ferric reducing power、と
ferrous ion chelating ability
Folin-Ciocalteu,
aluminium chloride,
molybdate、
DPPH radical scavenging,
potassium ferricyanide,
ferrozine assays,
加工処理法: ①ブランチング、 ②電子レンジ、③冷凍、④塩水漬け、⑤酢漬け
主な結果と結論:
評価された10検体の生鮮ハーブの内、Anacardium occidentaleの葉は最も強い抗酸化特性を
示し、Polygonum minus と Cosmos caudatusが続いた。
野菜はフェノール含量が低く、一次抗酸化活性が弱いけれども二次抗酸化活性は強い。
ブランチング、電子レンジ、冷凍処理はハーブの抗酸化特性に大きな損失、増加、比較的無
変化など様々な影響を与え、塩水漬けと食酢漬けは、野菜の抗酸化特性を低下させた。ハーブ
は潜在的な一次抗酸化を有しているフェノールを多く含んでいる。野菜は二次抗酸化活性が強
い。抗酸化特性に及ぼす加工の効果はハーブ、野菜のそれぞれの種類に大きく依存している。
図1、実験に用いたハーブと野菜の写真
Anacardium occidentale (cashew)
Piper betle (betel)
Piper sarmentosum (wild pepper)
Zingiber officinale (ginger)
Capsicum annuum (chilli)
Allium sativum
表1、試料の新鮮ハーブ葉のフェノール含量と抗酸化活性値
表2、ブランチング処理、電子レンジ、凍結による試料のハーブ葉のフェノール含量と抗酸化
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活性の増減
表3、試料の新鮮野菜のフェノール含量と抗酸化活性値
表4、食塩、食酢浸漬処理、3週間による試料の野菜葉のフェノール含量と抗酸化活性の増減
成分と略号は次のとおりである:
AA Ascorbic acid
AEAC Ascorbic acid equivalent antioxidant capacity
AOP 抗酸化特性
BHA Butylhydroxyanisole
BHT Butylated hydroxytoluene
CEC Chelating efficiency concentration
CGAE Chlorogenic acid equivalent
CQAC Caffeoylquinic acid content
DPPH 2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl
FC Folin-Ciocalteu
FIC Ferrous ion chelating
FRP Ferric reducing power
FRS Free radical scavenging
GAE Gallic acid equivalent
QE Quercetin equivalent
TFC 総フラボノイド含量
TPC Total phenolic content
凍結処理による効果:
AOP;A. occidentale and P. minus (表 2)の葉
著しい減少(A. occidentale.):TPC (21%) とTFC (15%)
CQAC and AEACの減少、FRP の増加
減少(P. minus )TFC (25%)、CQAC (28%)とAEAC (50%)
TPC と FRP は殆ど変化なかった。
AOP は野菜で大きく減少することが報告されている。
とくに豆、ズッキーニ、エンドウ豆の緑色野菜では抗酸化活性が増加するが黄色や赤色の野
菜(ニンジン、トマト、唐辛子)では減少するという報告がある。
冷凍野菜の抗酸化値は市販の生鮮野菜とほぼ同じといる報告がある。抗酸化活性は缶詰や瓶
詰製品より多く含まれている。
新鮮な赤ラズベリーの冷凍効果の報告がある。
4°
C 3日間、その後18°
C 24時間貯蔵の果物ではアントシアニンは変化なくビタミンCは減少し、
フェノール酸とフラボノイドは増加した。概して冷凍果実の抗酸化能力に冷凍の効果は見られ
なかった。
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4.☆☆スペインでの鮮魚のコールドチェーン☆☆
サケとイワシ鮮魚に対する加工食品工場でのコールドチェーンの有効性の評価
Assessing the effectiveness of a cold chain for fresh fish salmon (Salmo
salar) and sardine (Sardina pilchardus) in a food processing plant
J. Calanche, S. Samayoa, V. Alonso, L. Provincial, P. Roncales, J.A. Beltran
Food Control 33 (2013) 126-135
近年高鮮度食品への消費者の関心が高まっている。そのため食品企業はこの分野での公的な
安全基準に適合するだけでなく、さらに安全で健康に良い製品を供給することで消費者を確保
しようとしている。
本研究ではスペインのZaragoza地区の鮮魚加工専門工場でのコールドチェーンの課題につい
て調査している。
工場のサケとイワシの生産工程における物理的測定(pHと表面温度など)化学分析、微生物
と官能検査による品質変化を客観的に測定した。
温度はいずれも原料より最終製品の方が髙かった。細菌数は規制値(Community Regulation
EC 2073/2005)内であった。
専門パネルによるサケとイワシの官能評価は高い鮮度(90%)で、魚皮の色彩についての評
価は最高値であった。
主成分分析(PCA)はこれらパラメーターのそれぞれがコールドチェーンへ影響を受けやすい
ことを示している。しかし品質と安全ともコールドチェーンの効果は大きい。
表1、本研究でのサケとイワシのTVB-N 値(mg/100 g 試料)
表2、新鮮な原料とサケ(Salmo salar)とイワシ(Sardina pilchardus) 加工製品ののpH値
表3、新鮮な原料とサケ(Salmo salar) 加工製品とイワシ(Sardina pilchardus)に対する異な
った方法による温度(F)
表4、サケとイワシに対して得られた細菌検査値と規制値の比較
図1、サケとイワシの一般生菌数(対数値)
表5、サケとイワシの官能検査の結果:Council regulation (EC) No2406/1996 の鮮度指標を
用いている。
図2、サケとイワシに対する専門パネルによる官能評価;
図 3 . サ ケ の 変 数 ( TVB-N 、 N2 non protein, 温 度 . internal temperature, MESO .
mesophiles
PSEUDO . pseudomonas Pseudomonas sp., ENTERO . enterobacteriaceae, PH .
pH SENS. EXP . 官能検査値)による主成分分析プロット
図 4 、 イ ワ シ の 変 数 ( NBVT 、 N2 non protein, 温 度 . internal temperature, MESO .
mesophiles、PSEUDO . Pseudomonas sp., ENTERO . enterobacteriaceae, PH . pH と官能検
査)による主成分分析プロット
5.微量のエチレンを低温で除去する触媒
~果物、野菜、花の鮮度を保つ技術~
原 賢二、福岡 淳
化学と生物、52(4) 208-209, 2014
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収穫後の果物、野菜などはごく微量ではあるがエチレンを放出している。果物類をおいしく
する熟成に必要であるが、果実類の品質を劣化させ、腐敗を促進する要因にもなっているため、
果実類のコールドチェーン、貯蔵では低温にするだけでなくエチレンに対する処置が重要な課
題になっている。活性炭、ゼオライト等の吸着材の利用、酸化力の強い金属成分によるエチレ
ンの分解、オゾンガスの発生法などが実用化されているが、復元再生の難しさや設備の大型化
等難点もあるという。ところでナノテクを応用した金属触媒(白金とシリカ等)でこの低温で
のエチレン除去問題が鮮やかに解決できるということを報告している。この方法で0℃の低温
で20ppmの微量のエチレンが完全除去できる。長期間使用後の劣化も原因の水の触媒表面への
吸着を取り除くことでエチレン除去の触媒能が回復できる。この触媒反応では一酸化炭素が反
応中間体になり二酸化炭酸ガスになる。
低温でのエチレンについては次の論文がある。
Effect of low temperature storage and ethylene removal on
ripening and gene expression changes in avocado fruit
Jos6 P. Zamorano, Berta Dopico, Alexandra L. Lowe,Ian D.
Wilson, Donald Grierson,Carmen Merodio
Postharvest Biology and Technology 4 (1994) 331-342
6.☆☆海水がジェット機燃料になる☆☆
(海水からジェット機燃料生産の実用化’米国海軍研究所)
Seawater into jet fuel
USA Today,2014年4月13日
www.usatoday.com/story/news/nation/...seawater-fuel/
洋上でも海水を原料にジェット燃料JP-5などと代替可能な燃料生産を可能にする戦略的に画
期的な実用化技術の開発に成功しているという。
これまでもバイオ燃料の研究の報告がある。
Short Communication
Preliminary ecotoxicity assessment of new generation alternative
fuels in seawater
Gunther Rosen, Renee E. Dolecal, Marienne A. Colvin, Robert D. George
Chemosphere 104 (2014) 265-270
この報告ではF76,HRD76, JP5,HRJ5などの毒性試験から化石燃料と比べ開発中の代替燃料が
環境にやさしく、海水の利用が可能であるという。
新しい方法は海水を直接利用するようで、第1段階として炭酸ガスを海水から抽出する:海
水 に は 空 気 中 の 約 140 倍 の 炭 酸 ガ ス が 含 ま れ て い る (2.35 billion gallon の 水 が 約 11.9
million gallonの炭酸ガスに相当する)。
第 2 段 階 で 海 水 か ら 逆 浸 透 で 真 水 を 集 め 、 水 素 を 生 産 す る ( Electrochemical
acidification cell, Carbon captu skid などのer 技術が使われている)。第3段階でこれら
炭酸ガスと水素が触媒反応で炭化水素が合成される。海軍研究所(NRL)が開発中であり、
Dr.heather Willauer が そ の 意 義 を 報 じ て い る ( 2012 年 10 月 1 日 の ENN(Enviomental News
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冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
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Network)。製造コストも試算されている。「空調・食品と生物・環境とエネルギー」となって
いる。いつかは空気と水から食糧(糖類)が化学合成される日が来るのかもしれない。
隼1
平成25 年(1~12 月)冷凍食品の生産・消費について(平成26 年4 月16 日)
一般社団法人日本冷凍食品協会
http://www.reishokukyo.or.jp/topics/public/2013statisticsofro zenfoodinjapan
平成25 年の国内生産:
冷凍食品数量:1,550,085トン(対前年比105.0%)
、金額(工場出荷額):6,774億円(対前年比
105.3%)
数量は平成22年から4年連続増加し、過去最大であった平成18年(数量 1,545,204トン)の数
量を上回った。金額は3年連続増加した。家庭用が大きく伸長し、業務用も堅調に推移した。
≪公開資料≫
1.冷凍食品の国内生産及び消費
2.品目別国内生産
3.品目別国内生産及び構成比率と1キログラム当り金額
4.国内生産量上位20品目(平成21~25年推移)
5.冷凍野菜品目別生産国別輸入
6.調理冷凍食品輸入
7.調理冷凍食品輸入(平成16~25 年推移)
8.調理冷凍食品輸入 品目別取扱社数・国別主要
隼2
一般社団法人日本冷凍食品協会(平成26 年4 月)
全国の25 歳以上の男女1250 人に聞く
“冷凍食品の利用状況”実態調査結果について
http://www.reishokukyo.or.jp/topics/public/cyousa25
冷凍食品の魅力のトップは、
「買い置きができる」こと
男女とも8割前後が1ヶ月以内に消費
<調査概要>
【調査方法】インターネット調査
【調査対象】冷凍食品を「月1 回以上」利用している25 歳以上
の男女各625 人
【調査期間】2014 年3 月1 日(土)~3 月3 日(月)
【有効回収】1250 人
隼3
植物の低温馴化および凍結耐性メカニズムに関する基礎研究~
学会賞受賞記念論文~
上村松生
低温生物工学会誌、60(1), 1-8, 2014
冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
2014.6月
-40-
隼4
不凍タンパク質の機能に学ぶ-氷の発生や成長を制御する技術
稲田孝明
低温生物工学会誌、60(1), 13-16, 2014
隼5
浸透圧脱水凍結法を用いたキュウリの保存
侭田直士、深津拓也、湊龍一、梶原一人
低温生物工学会誌、60(1), 43-46, 2014
隼6
緩慢凍結速度損傷による細胞死滅の数学的モデル化の提案;
(最低到達温度に対する生存曲線の反応速度論的モデルの展開)
石黒博、野澤正和
低温生物工学会誌、60(1), 47-52, 2014
隼7
凍結含侵法と高齢者向け加工食品
坂本宏司
明日の食品産業、2014.3,
48-53
隼8
低温流通食品の品質および安全性確保に関する基礎研究~学会奨励賞~
日本食品科学工学会誌、 61(3), 101-107
隼9
冷凍食品における加工でん粉の利用~特集:澱粉質食品の冷凍・加工技術~
土山守安、高石素行
冷凍、89(2),3-8
隼10
氷結晶性状に基づいた冷凍米飯の品質評価~特集:澱粉質食品の冷凍・加工技術~
河野晋治
冷凍、89(2),9-12
隼11
冷凍米飯(ピラフ)に適する米品種とその加工適性~特集:澱粉質食品の冷凍・加工技術~
木下雅文
冷凍、89(2),13-19
隼12
冷凍うどんの品質優位性と課題~特集:澱粉質食品の冷凍・加工技術~
古橋敏昭、島田浩基
冷凍、89(2), 20-27
隼13
冷凍めんの技術の進歩と冷凍めん業界の発展~特集:澱粉質食品の冷凍・加工技術~
田中康裕 28(2),28-31
2014.6月
冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
-41-
隼14
冷凍パスタの加工技術
祢宜 博
冷凍、89(2),32-36
隼15
冷凍パン生地の冷凍・解凍技術の最近の進歩~特集:澱粉質食品の冷凍・加工技術~
山田盛二
冷凍、89(2), 37-42
隼16
農産物流通における環境負荷に関するLCA 解析(2)、調理方法・冷蔵庫保存・エコクッキング
の視点から、~食品技術講座6 食品の安全・品質に関する技術講座、第24 回~
上野茂昭、西村孝則、中谷俊裕、麻生裕美、折笠貴寛
冷凍、89(4),44隼17
食品の冷却・冷凍装置を通して鮮度保持
~特集 冷凍・冷蔵・鮮度保持機器~
柳井 順(高橋工業)
食品機械装置、51(3),73-75
隼18
Post-slaughter changes in ATP metabolites, reducing and phosphorylated sugars in
chicken meat
Michel Aliani, Linda J. Farmer,b,., James T. Kennedy, Bruce W. Moss, Alan GordonMeat
Science 94 (2013) 55-62
隼19
Non-destructive evaluation of ATP content and plate count on pork meat surface by
fluorescence spectroscopy
N. Oto, S. Oshita, Y. Makino, Y. Kawagoe, J. Sugiyama, M. Yoshimura
Meat Science 93 (2013) 579-585
隼20
Pharmaceutical Nanotechnology
Freeze-drying ofovalbuminloadedmesoporoussilicananoparticle
vaccine formulationincreasesantigenstabilityunderambient
conditions
Karishma T.Modya, Donna Mahonya, Antonino S.Cavallaroa, Frances Stahrb,
Shi ZhangQiaob, Timothy J.Mahonya, Neena Mittera
International JournalofPharmaceutics465(2014)325-332
隼21
The physicochemical interactive mechanism between nanoparticles
and raffinose during freeze-drying
冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
2014.6月
-42-
Seitaro Kamiya, Hiroyuki Takamatsu, Takashi Sonobe, Kenichiro Nakashima
International Journal of Pharmaceutics 465 (2014) 97-101
隼22
Freeze.thaw behavior of air entrained cement paste saturated with
10 wt.% NaCl solution
Qiang Zeng, Le Li, Xiaoyun Pang, Qiang Gui, Kefei Li
Cold Regions Science and Technology 102 (2014) 21-31
隼23
Browning prevention in rehydrated freeze-dried non-blanched potato
slices by electrical treatment
R. Zvitov-Ya’ari, A. Nussinovitch*
LWT - Food Science and Technology 56 (2014) 194-199
隼24
Effect of sucrose fatty acid esters on pasting, rheological properties
and freezeethaw stability of rice flour
Yue-Cheng Meng, Ming-Hui Sun, Sheng Fang, Jie Chen, Yan-Hua Li
Food Hydrocolloids 40 (2014) 64-70
隼25
A process to concentrate coffee extract by the integration of falling film
and block freeze-concentration
F.L. Moreno, E. Hernandez, M. Raventos, C. Robles, Y. Ruiz
Journal of Food Engineering 128 (2014) 88-95
隼26
Effect of sucrose fatty acid esters on pasting, rheological properties
and freezeethaw stability of rice flour
Yue-Cheng Meng*, Ming-Hui Sun, Sheng Fang, Jie Chen, Yan-Hua Li
Food Hydrocolloids 40 (2014) 64e70
隼27
Short communication
A novel granulation technique using a freeze. thaw method
Kan-Sen Choua,n, Hsuan-LiangLiua, Li-HsingKaoa, Chi-MingYangb, Shu-HaoHuangb
Ceramics International 40 (2014) 8875-8878
隼29
Effect
of
rapid
freezing.thawing
techniques
on
the
sperm
parametersand
ultrastructure of Chinese Taihang black goat spermatozoaLiguang Shia,b, Youshe
Renb,1, Hanlin Zhoua, Guanyu Houa, Wenjuan Xuna,.,Wenbin Yueb, Chunxiang Zhangb,
Rujie YangcaTropical
Micron 57 (2014) 6-12
2014.6月
冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
-43-
<編集後記>
<韓国船沈没事故に思う>
韓国船沈没事故で、将来のある多数の高校生らが犠牲になったのは痛ましい限りである。
乗務員の「客室に留まれ」という無責任な指示を守ったばかりに大惨事となったことは、全
く理不尽であり、言葉もない。船長の責任の重さは、計り知れない。
今後事実確認、原因究明、対策、再発防止が図られ、リスク管理、危機管理の面から組織と
しての対応がされるであろう。
しかし、もし自分が生命の危機にさらされた乗客の立場にいたら、生き残るために何ができ
たであろうか。
マスコミの報道では、指示を無視して上の階に行き、助かった71才の女性がいたそうだ。ま
さに、他の乗客にもこの行動が必要であった。
ただ学校や組織に属している場合、
この行動は取りにくい状況がある。
引率する教師がおり、
組織では経験のあるリーダーがいるだろう。それらの人の指示を無視して先走り、結果として
何も被害がなかった場合には、非難されることにもなるかもしれない。
この問題を考えるのに人災と自然災害、海上と陸上の違いはあるが、東日本大震災で釜石の
奇跡と呼ばれた事例がある。この状況と考え方はウィキペディアに記載があるので、抜き出し
てみる。
「東日本大震災では、当日学校に登校していた生徒全員が生存し釜石の奇跡と呼ばれた。
『津波てんでんこ』を標語に防災訓練を受けていた小中学生は地震の直後から教師の指示を
待たずに避難を開始し、津波がくるぞ、逃げるぞと周囲に知らせながら保育園児のベビーカー
を押し、お年寄りの手を引いて高台に向かって走り続け、全員無事に避難することができた。
率先して逃げるということはできにくいことである。互いを探して共倒れすることを防ぐ約束
事でもある。
率先して逃げた者が臆病者とレッテルを張られやすいことも踏まえ、
『それでも最
初に逃げるものがあって他者も続き救われる命もある。
』」
結果論ではあるが、本沈没事故でも、「津波てんでんこ」が必要であったのだろう。
緊急時の情報管理で言われる、情報の収集、分析、判断を自分の置かれた状況の中で行い、
組織の指示にまずは従う。その後、おかしいと思ったら自己判断に切り替えるということが最
も大事なことではないだろうか。
石村
石 黒
寛(ニチレイフーズ)
中 井 良 和(明治)
発 行 所
編 集 委 員
石 村 和 男(極洋)
久保 哲也(テーブルマーク)
冷 凍 食 品 技 術 研 究 No.103
冷凍食品技術研究会
〒105-0012
東京都港区芝大門2-4-6
豊国ビル 3F
(一財) 日本冷凍食品検査協会内
(TEL)03-3438-1414 (FAX)1980
2014.6月
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