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全学年の指導案 - 川崎市総合教育センター

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全学年の指導案 - 川崎市総合教育センター
第1学年 国語科学習指導案
授業者
1.日 時
平成 24 年 12 月 12 日(水)第5校時 (13:40~14:25)
2.場 所
1年2組教室
3.単元名
きもちがわかるところを見つけて本をしょうかいしよう
「ずうっと、ずっと、大すきだよ」
白鳥 裕貴
4.単元について
(1)単元目標
◎物語の登場人物の気持ちがわかるところについて,
自分の体験や読書経験と結び付けて紹介することができる。
(2)評価規準
国語への関心・意欲・態度
読む能力
言語についての
知識・理解・技能
・選んだ本の特徴に気付き,選ん ○物語の登場人物の気持ちがわかると ・文末の表現に注意して,敬体で
だ作品に対する思いが伝わる
ころについて,自分の体験や読書経
書かれた文章に読みなれてい
ように,本の楽しさを共有しな
験と結び付けて紹介している。
る。
(1)イ(キ)
がら紹介しようとしている。
(1)オ
(3)児童の実態
~「伝える力・受け止める力」に関わりのある学習指導要領国語編(低学年)事項~
「読むこと」オ.文章の内容と自分の経験とを結び付けて,自分の思いや考えをまとめ,発表しあうこと。
これまで「文章の内容と自分との経験を結び付けて,自分の思いや考えをまとめ,発表しあうこと」に関して,
以下のような指導を行ってきた。
題材「ゆうだち」
(ウを中心に指導)
うさぎのことたぬきのこの気持ちを考えられるように,挿絵に吹き出しを付けワークシートを用意した。教科
書には書いていない2人の気持ちを想像し書き込んだ。また,なぜそう吹き出しに書いたのかを自分の体験をも
とに話し合った。その後,うさぎのことたぬきのこになりきって,動作化をし,2匹の気持ちを想像した。そし
て,最後には手をつないで走り出した2匹はどんなことを話したかを想像しまとめた。
題材「みいつけた」
(イを中心に指導)
初めて本文を読んだ時に,自分の経験や挿絵を見てわかることを出し合った。
「多摩川に行ったとき,石を持ち
上げたら,ダンゴムシがたくさんいたよ。
」など,自分の経験と本文とを重ね合わせて話す姿が見られた。最終的
に,自分でいきものカードを作るときには,経験や図鑑をもとに作成した。
題材「むかしばなしがいっぱい」
(オを中心に指導)
自分の好きな昔話(日本・外国)を選び,お話ごとにグループを組み,劇や指人形,ペープサートなどにして
発表した。友達の発表を聞き,読んでみたいと思った物語を読書計画に書き,今後の読書の時間で読むというこ
とにした。
このほかにも「くちばし」では,自分が知っている鳥に対する知識と文章の内容とを照らし合わせて,読んで
いく活動を行った。
上丸子小学校- 1
(4)言語活動
気持ちがわかる本を紹介する活動
本単元では,登場人物の気持ちがわかるところを自分の経験や読書体験を結びつけて話し,交流していく。交
流を通して,様々な意見があるのだということを理解できるようにしたい。また,そのことをいかし,自分が今
まで読んできた物語の中から,登場人物の気持ちがわかるおすすめの本を紹介する活動を行う。子どもたちは,
物語文で自分の経験や読書体験を結び付けて読んだ経験はあまり多くない。本単元では,そのような読み方をす
ることが楽しいと感じられるようにしていきたい。
1時間目では「ダメ!」を読み,印象に残ったところを出し合い,本文のどこに書いているのかを確認する。
その中で,特に気持ちがわかるところについて自分の経験や読書体験をもとに話し合い,物語の読む視点を明確
にしていく。2時間目からは,
「ずうっと、ずっと、大すきだよ」を読み,1時間目と同様に登場人物の気持ちが
わかるところを中心に読んでいく。
その際,
本文のどこの叙述と自分の経験や読書体験と重なるのかを明確にし,
読みを進めていきたい。気持ちがわかる叙述でも,自分と違う意見があるという事が理解できるようにしていき
たい。5時間目以降は,これまで読んできた本(読書記録)の中から特に登場人物の気持ちがわかるものを紹介
していく。その後,感想交流を行い,友達が紹介した本を読み,気持ちがわかると思ったところに感想を書いた
付箋を貼っていく。友達が付箋を貼ったところを見て,自分と同じ意見なのか,違う意見なのかを知ることによ
り,もっと深く本を読みたいと思ったりさらに読書を広げたりするきっかけにしていきたい。
5.研究テーマに迫るために
研究テーマ
自分を見つめ,共に学びあう子を目指して
~伝える力・受け止める力を育てる授業,具体的な児童の表れを求めて~
低学年ブロックテーマ
・順序立てて,自分の言葉で伝えることができる子
・あいづちをうちながら,大事なことを落とさずに受け止める子
重点①価値づけしたい「目的意識」
「相手意識」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【目的意識】
【相手意識】
○○さんの紹介し
た本を読んでみた
いな。
私は~のところの気持
ちがわかるな。みんな
に伝えたいな。
○○さんは,私と違うとこ
ろで,気持ちがわかると思
ったのか。もう一度読んで
みよう。
この本の主人公の
気持ち,すごくわか
るんだ。みんなはど
うかな。
○○さんは,どうして
そこの気持ちがわか
るのだろう。
A.相手意識をより高めるための,名前シールの使用
本単元では,気持ちがわかるところを紹介する活動を行う。
「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の中で,自分が
どこの部分の気持ちがわかるのか名前を書いたシールを貼り示すようしていく。そうすることによって,
「どうし
て,○○さんは,そこの気持ちがわかるのだろう。
」
「○○さんの意見を聞いてみたいな。
」
「○○さんと同じ意見
だ。
」などと相手意識を高めることにつながると考える。また,他の意見の友達に対して,どうして自分がここの
部分の気持ちがわかるのかを伝えたいという気持ちも湧いてくるだろう。話す目的意識や友達の意見を聞く意識
が高まることを期待したい。
上丸子小学校- 2
B.物語文の読み方の視点を示すための,
「ダメ!」を読む活動
「ずうっと,ずっと,大すきだよ」を読む前に,
「ダメ!」を読む活動を行う。この題材は,りすくんが嫌な事
を友達に言えずに葛藤する様子が書かれており,子どもたちにとって共感できる部分が多い文章になっている。
この文章を読むことを始まりとして,物語に自分の体験を照らし合わせて話すことが楽しいと子どもたちが思え
るようにしていきたい。そして,気持ちがわかる本を紹介するために,
「ずうっと,ずっと,大すきだよ」を自分
の体験や読書経験と結びつけて読むきっかけにしていきたい。
C.本文に返って話し合いができるようにするために,テキストを配布せずに読む活動
初めて題材にふれるときには,授業者の読み聞かせとし手元にテキストを持たない状態で話を聞くことにした
い。そうすることによって,次の活動で一番覚えているところ(印象に残っているところ)を出し合う際に,自
分の記憶が曖昧であることに気付き,もう一度本文をしっかりと読みたいという気持ちになることを期待してい
る。本文が配布され,もう一度読むときには,
「○ページの○行目に書いてあったよ。
」など叙述を意識し,話を
することができればよいと考える。また,それ以降の話し合いでも,ただ自分の考えを話すことにとどまらず,
本文のどの部分の気持ちが自分はわかるのかを明確にしてから,
意見を述べることができるようにしていきたい。
D.互いの思いを分かち合ったり感じ方や考え方を認め合ったりして,読みの世界を広げるための,本を紹介す
る活動
4時間目までの学習では,教材文を使って登場人物の行動に着目し,自分はその行動のどんな気持ちがわかる
のかを話し合っていく。その活動をいかし,5時間目以降は自分が今まで読んできた本の中から,特に登場人物
の気持ちがよくわかるおすすめの物語を紹介していく。友達に自分の思いを伝えるために,自分の体験や読書経
験を根拠にして紹介することにつながっていくと考える。また,この活動をきっかけとして,読むことが楽しい
と感じ,多くの物語を読むきっかけとしていきたい。
E.友達の考えを知るための,友達が紹介した本を読み感想を伝え合う活動
友達が本を紹介した後に,その本を読む時間を確保する。発表する前に,そのことについて事前に知らせてお
き,発表をすることによって,友達の発表をよく聞いたり友達の紹介した本をじっくり読んだりし,感想を伝え
られるようになると考える。また,本単元では,グループの友達の紹介を聞いたり,感想を伝えたりするが,終
了後は,教室内に紹介カードを掲示し休み時間などにも読めるようにしていく。そして,子どもたちが紹介した
本を教室内に置きグループ以外の子どもたちも読み,感想を伝えられる様にしていきたい。
重点②価値づけしたい「能力目標」の具体的な表れと引き出すための手立て
【表れ例】
「エルフのおなかをまくらにしてねるの
○ページ○行目のところの気持
がすきだった。
」の気持ちがわかるな。移
ちがよくわかるよ。どうしてかと
動動物園でウサギやモルモットを触った
いうと,僕も飼っていた虫が死ん
時,気持ちよかったよ。
じゃった時,悲しかったからで
す。
気持ちわかるな。僕の家で飼
私は,生き物をかった
っている犬もあったかくて気
ことはないけど,前に
持ちいいよ。
わたしもその気持ちがわ
○○っていう本を読ん
かるよ。飼っている動物が
で,主人公が死んじゃ
「エルフとぼくは、まい日いっしょ
死んじゃうって悲しいよ
った時すごく悲しい気
にあそんだ。
」っていう気持ちがわ
ね。私も犬が死んだとき,
持ちになったよ。
かるよ。私も弟のことが大好きでだ
すごく悲しかった。
から,毎日一緒に遊んでいるよ。
上丸子小学校- 3
A.読書経験を積むための,読書記録
夏休み明けから,自分が読んだ本を記録していく活動を行ってきた。本を読むのが苦手な児童もいるため,教
師が読み聞かせた本を記録してもよいとし,気軽に取り組めるようにしてきた。また,本の紹介をする時にたく
さんの中から選べるようにしていきたい。さらに,気持ちがわかる部分について話す際,
「前に同じようにペット
が死んでしまう話を読んで,すごく悲しい気持ちになったことがある。だから,この登場人物も悲しいと思う。
」
などこれまでの読書経験をもとに話ができるようにしていきたい。
B.気持ちがわかるところを読み取るための,サイドライン
「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の気持ちがわかる部分に線を引く活動を行う。線を引くことによって,自
分がなぜその部分の気持ちがわかるのかをしっかり考えられるようにし,
次時の活動で自分の意見を述べる際に,
自分はどこの部分の気持ちがわかるのかを再認識し,意見をしっかりと述べられるようにしていきたい。
C.適切な指名をするための,サイドラインの把握
重点②Bで述べたように,事前に児童は物語の気持ちが分かるところにサイドラインを引いておく。引いてい
る最中に,授業者がどこの叙述にどんな理由で線を引いているのかを把握しておき,授業に臨むことにより適切
な部分で意図的に指名をしたり,子どもたちの意見をつなげたりしていくこともできると考える。
D.考えを伝えたり受け止めたりし,自分の意見を整理するための,隣同士での話し合い。
授業の中で,特に話が盛り上がる場面で隣や前後での話し合いを入れていきたい。話したいと思っている児童
が多い場面では,全ての児童が全体の前で話すことは難しい。しかし,伝えたいという思いが十分満足し,授業
者もより多くの児童の意見を聞けるようにするために取り入れていきたい。話したい思いが十分満足し,次の活
動への意欲につながることを期待したい。
6.指導・評価計画(8時間扱い)
次
時
一
1
評価規準と
☆評価方法
主な学習活動と予想される児童の反応
○教師の支援
○読書体験をもとに話をし
たり気持ちがわかる本を
戸惑いなく見つけたりで
きるようにするために,
読書記録を実施し,子ど
もたちの読書経験を積ん
でおくようにする。
重点②A
○子どもたちの読書体験を
把握し,授業内で適切な
ところで意図的な指名を
するために,読書記録を
把握しておく。
物語を読んで,一番覚えているところや気持ちがわかるところについて話そう。
1. 「ダメ!」の読み聞かせを聞く。
・何がダメなのかな。
上丸子小学校- 4
○子どもたちが自分の経験
・どんなお話かな。
興味をもって物
語を読んだり話
し合ったりして
いる。
【関】
☆読み聞かせを
聞いたり,覚え
ているところや
気持ちがわかる
と こ ろ に つい
て,話し合った
りしている姿。
や読書体験をと本文の内
容とを重ね合わせて読む
ことが楽しいと感じられ
るようにするために,子
どもたちが共感できる叙
述が多い物語を選ぶ。
重点①B
2.一番覚えているところについて,話し合う。
・りすくんがゆっくり食べようと思っていたプリンをく
まくんが食べちゃったね。
・りすくんは,プリンが大好きだったのにね。
・プリンをくまくんに食べられて,ダメって言えなかっ
たよね。
・だって,くまくんは体も大きいし,声も大きいから言 ○話の内容に集中して聞け
るようにするために,本
えなかったって P6L1 に書いてあるよ。
文は子どもたちには配布
・りすくんは悲しくて,ないていたよね。
せずに,読む。
・悲しいんじゃなくて,くやしかったんじゃなかった?
重点①C
・P9L2 に「ものすごく、ものすごく、くやしかった。
」
って書いてあるよ。
・悔しいって思ったことをくまくんに言えなかったよ ○どんな話だったのかまず
はなにも見ずに話し合
ね。機嫌がいいときに言ったね。
い,覚えていることが曖
・P15L7 に書いてあるね。初めは声が小さかったけど,
昧であることに気づくよ
大きい声で言ったんだったね。
うにし,本文をもう一度
・くまくんは,悪いなと思って次の日のおやつのイチゴ
読みたいという必要感を
をくれたね。
もてるようにし,黒板に
・でも,くまくんはりすくんのイチゴをかわりに食べて
本文を掲示し,確認して
あげようかって言ったけど,今度は「ダメ!」って言
いく。
重点①C
えたんだったね。
・P21L5 に大きい声で「ダメ!」って言ったって書いて
○話している場面を明確に
あるよ。
するために,何ページの
何行目など気持ちがわか
3.主人公の気持ちがわかる部分について話し合う。
る部分について,本文に
・P5L4 の「だいすきなプリンやから、ゆっくりたべよ
返り話をするよう促す。
うとおもっていたのに…。
」っていう気持ちがわかる
な。だって,僕も好きなものは,ゆっくり味わって食
○自分が経験した事や読書
べるもん。
経験をもとに話をするよ
・私もその気持ちわかるな。ずっと食べていたいくらい
う伝える
。重点②A
だよね。
・P5L9 の「「ダメ!」ってよういわんかった。
」っていう
気持ちがわかるよ。友達に食べられちゃったら,なん ○意見が多く出るような場
面では,十分に意見のや
となく言えないことあるよ。
り取りができるように,
・しかも,くまくんは体も声も大きいしね。ちょっと恐
隣同士での話し合いを入
いかもね。
れる。
重点②D
・P9L2 の「ぼくは、ものすごく、ものすごく、ものす
ごくくやしかった。
」っていう気持ちわかるよ。だっ
て,自分の言いたいことが言えなくて,いやな気持ち
の時って,すごくくやしいなっていうこと僕もある
よ。友達とけんかしちゃったときとかね。
・私も弟に大好きなおやつを食べられちゃった時は悔し
かったな。でも,弟だから,しょうがないなって思う
上丸子小学校- 5
しね。
・ P15L7 の気持ちわかるな。言いにくいことを言う時
って,
なんだか緊張して,
大きい声では言えないよね。
4. 次時以降の活動について知る。
・明日は,なんの本を読むのかな。
・楽しみだな。
二
1
○次時の活動を伝え,見通
しがもてるようにしてい
く。
「ずうっと,ずっと,大すきだよ」を読んで一番覚えているところについて話
そう。
1. 「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の読み聞かせ ○話の内容に集中して聞け
を聞く。
るようにするために,本
・先生のお勧めの本って言っていてけど,どんなお話な
文は子どもたちには配布
んだろう。
せずに読む。
重点①C
・早く聞きたいな。
○授業者のお勧めの本をい
・もう一度聞きたいな。
うことで,聞きたいとい
・図書室にある本なのかな。
う気持ちが高まるように
・教科書に載っていたのを見たことがあるよ。
したい。
2. 一番覚えているところについて話す。
・
「ぼく」はエルフに「ずっと、大すきだよ。
」って言っ ○「一番」ということで,
覚えているところをただ
ていたところが一番覚えているよ。
・
「ずうっと、ずっと、大すきだよ。
」じゃなかったかな。 あげるということになら
ないようにする。
・P55 に「ずうっと、ずっと」って書いてあるよ。ずっ
とよりもっと好きってことかな。
○一番覚えているところを
・
「ぼく」はエルフのことがすごく好きなんだね。
あげたあとに,必ず本文
・エルフが死んじゃった話だったよ。
のどこにそのことが書い
・
「ぼく」はすごく悲しそうだったね。
てあるのかを確認する。
・でも,悲しいだけじゃないよ。
「ずうっと、ずっと、
重点①C
大好き」って言っているから,気が楽だったんだよ。
・エルフはいたずらが大好きだったよ。だって,ママの
花壇を掘り返していたって書いてあった。
・P48L3 に書いてあるよ。
・りすを追い回してもいたよ。
・家族に怒られちゃったんだね。
・P48L7 に「でも、エルフをしかっていながら、みんな
はエルフのこと、好きだった。
」って書いているよ。
・
「ぼく」はエルフのおなかを枕にして寝ていたところ
ところが一番覚えているよ。
・P47L4 に「ぼくは、エルフのあったかいおなかを、い
つもまくらにするのがすきだった。
」って書いてある
よ。
・気持ちよさそうだね。
・私もやってみたいな。
上丸子小学校- 6
登場人物の行
動から,気持ち
がわかるところ
をさがし,サイ
ドラインを引い
ている。
【読】
☆ 本 文 の 中か
ら,登場人物の
気持ちがわか
るところをさ
がし,サイドラ
インを引いて
いる姿。
3.持ちがわかるところに線を引こう。
・P47L4 の「ぼくは、あったかいおなかを、いつもまく
らにするのがすきだった。
」のところの気持ちがわか
るな。
・P48L1「エルフとぼくは、まい日いっしょにあそんだ。
」
っていうところの気持ちが分るよ。
・P49 の「エルフはとしをとって、ねていることがおお
くなり、さんぽをいやがるようになった。ぼくは、と
てもしんぱいした。
」っていう気持ちがわかるな。
・P50L「エルフは、ぼくのへやでねなくちゃいけないん
だ。
」っていうところの気持ちがよくわかるな。
・P54L1 の「となりの子が、子犬をくれるといった。も
らっても、エルフはきにしないってわかっていたけ
ど、ぼくはいらないっていった。
」のところの気持ち
がわかるよ。
・P55L1「いつか、ぼくも、ほかの犬をかうだろうし、
子ねこやきんぎょもかうだろう。なにをかっても、ま
いばん、きっといってやるんだ。ずうっと,ずっと、
大すきだよって。
」っていう気持ちがわかるな。
4,次時の活動について知る。
・みんなはどんなところに線を引いたのかな。
・私と同じところに線を引いた子はいるのかな。
○気持ちが分るところにサ
イドラインを引く。次時
の話し合いまでにどこに
どの子が線を引いている
のか,把握しておく。
重点②C
○自分の経験や読書体験な
どと重ね合わせて話せる
ものにしたい。
重点②A
○次時に多くの叙述で語れ
るように,複数ひいても
よいことにする。
重点②B
○見つけられない子がいる
場合には,級業者が寄り
添い,今まで読み聞かせ
た本や体験などをあげ,
ひとつ以上は書けるよう
にしたい。
○サイドラインは次時で公
開し,友達の意見を聞い
てみたいという意識が高
まるように,ここではま
だ友達がどこに線を引い
たのかは公開しない。
②
本
時
本時目標
気持ちがわか 「ずうっと,ずっと,大すきだよ」の登場人物の気持ちがわかるところについて,自
るところについ 分の体験や読書経験をもとに話し合うことができる。
て,経験や読書
体験をもとに話
登場人物の気持ちがわかる部分について理由を話し合おう。
し合っている。
【読】
1. 全文を通読する。
2. 気持ちがわかるところについて話し合う。
○どこに誰が貼ったのか,
☆気持ちがわか ・私は P46L2 の「エルフは,せかいでいちばんすばらし
誰と同じ意見なのかがわ
るところにつ
い犬です。
」という気持ちがわかります。どうしてか
かるようにするために,
いて,自分の経
というと,私もザリガニをかっていて,一番かっこよ
本文の拡大に名前シール
上丸子小学校- 7
3
験や読書体験
くて自慢のザリガニで,すばらしいと思うからです。
をもとに話し ・僕も金魚を飼っているけど,泳ぐのがすごく速くてす
合っている姿。
ばらしいって思うな。
・私は,P47L4 の「ぼくはエルフのあったかいおなかを,
いつもまくらにするのがすきだった。
」のところの気
持ちがわかります。どうしてかというと,前に生活科
で移動動物園が来たときに,犬じゃないけど,ウサギ
やモルモットに触ってすごく気持ちがよかったです。
枕にして寝たらすごく気持ち良さそうだなって思い
ました。
・私もその気持ちわかるな。ウサギとか触った時気持ち
良かったもんね。
エルフのおなかは気持ちいいだろう
な。
・僕は P48L1 の「エルフとぼくはまい日いっしょにあそ
んだ。
」っていうところの気持ちがわかります。どう
してかというと,僕もクワガタを飼っていて,いつも
一緒に遊んでいて,楽しいからです。
・僕も犬を飼っているんだけど,家に帰るといつも僕の
ところに寄ってきてすごくかわいいよ。だから,僕も
毎日一緒に遊んでいるよ。
・動物と一緒に遊ぶと楽しいよね。きっと「ぼく」と「エ
ルフ」も毎日楽しかったと思うな。
・僕は P53L2 の「みんなないてかたをだきあった。
」っ
ていうところの気持ちがわかります。
どうしてかとい
うと,僕も飼っていた虫が死んじゃったとき,すごく
悲しくてお母さんと一緒に庭に埋めたんだ。
・私も気持ちわかるな。この前おじいちゃんが死んじゃ
ったんだけど,お葬式の時は,みんな泣いていたし,
私もすごく悲しかった。私はおじいちゃんに最後に
「今まで優しくしてくれてありがとう。
」って言った
よ。
・家族とかペットとか死んじゃうと悲しいね。僕も「お
じいちゃんがおばけになったわけ」
っていう本を読ん
で,大好きなおじいちゃんが死んじゃったところで
は,すごく悲しかった。だから,
「ぼくや家族」はす
ごく悲しかったと思うよ。
・でも,悲しかったけど,P53L6 に僕はいくらか気持ち
が楽だったって書いてあるよ。エルフに毎日「ずうっ
と,ずっと,大すきだよ」っていってあげていたから
だね。僕もうちの犬に言ってあげたくなったな。
・私は P54L1 の「となりの子が子犬をくれるといった。
もらっても,エルフは気にしないって,わかっていた
けど,ぼくは,いらないっていった。
」っていうとこ
ろの気持ちがわかります。どうしてかというと,私も
す
大事に飼っていたカブトムシが死んじゃったとき,
上丸子小学校- 8
を貼る。
重点①A
○事前に児童がどこの叙述
にどんな理由でサイドラ
インを引いているのか把
握しておき,適切な場面
で意図的な指名をする。
重点②C
○自分の経験や読書体験と
を結び付けて話す事がで
きるように,できている
児童を認める。
重点②A
○多くの経験が話せるよう
に,動物を飼った経験だ
けでなく,子どもたちが
虫などを飼った経験や家
族との触れ合いや読書体
験からも気持ちを話せる
ようにする。
重点②A
○自分の経験を話した後
に,
「だからぼくも~な気
持ちだったと思う。
」と物
語に返れるようにする。
○意見が多く出るような場
面では,十分に意見のや
り取りができるように,
隣同士での話し合いを入
れる。
重点②D
ぐに違う虫を飼う気分にはなれなかったからです。
・僕も気持ちがわかるよ。今犬を飼っているんだけど,
違う犬を飼う気分にはなれないとおもうな。
もう少し
経ったら気持ちが変わるかもしれないけどね。
・本の内容と自分のことを重ねて読むと面白いな。
3. 振り返りをおこなう。
○ワークシートを用意し,
・友達の話を聞いて,私も同じようなことがあったなと
話し合いを通して,学ん
思いだしました。
だことや気付いたことを
・物語の気持ちがわかるところがたくさんあってびっく
書いていく。
りしました。
・同じところでも理由が違うんだなと思いました。
4.次時の活動について知る。
○本を準備できるように,
・どの本にしようかな。
次時の活動について予告
・どこを紹介しようかまような。
しておく。
・前に,
図書館で読んだ本はすごく気持ちがわかったな。
紹介したいな。
・先生が前に読んでくれた本は,登場人物が僕と似てい
てすごく気持ちがわかったな。
三
1
・
2
気持ちがわかる本の紹介カードをつくろう
1. 紹介カードの書き方を知る。
○例を提示し,書き方を確
・本物を見せると聞いているとき,わかりやすいね。
認する。
・題名は絶対書かなくちゃね。
・気持ちがわかる文章はそのまま書き抜きたいな。
○友達に読んでもらうとい
・字は丁寧に書くと,
同じ班以外の人はわかりやすいね。 うことで,書き方だけで
・どうして,そこの気持ちがわかるのか理由を入れたほ
なく,字の丁寧さなどに
うがいいね。
も意識を向けていく。
気持ちがわか
るところについ
て,自分の体験
や読書経験をも
とに紹介してい
る。
【読】
☆カードに自分
の体験や読書経
験 を 交 え なが
ら,紹介文を書
く姿。
2.物語の紹介文を書こう。
・ここはすごく気持ちがわかるな。
○どの本を選べない子に
・この文をそのまま紹介したいな。
は,読書記録や今まで読
・私も同じことがあったから,そのことも書くと友達も
み聞かせで読んだ本の中
わかりやすいね。
から,一緒に探していく
・何の本を紹介したらいいかわからないな。
ようにする。
重点②A
・僕が紹介するのは「どろんこハリー」という本です。
「おふろに おゆをいれるおとが きこえてくると ○そのまま発表できるよう
に,
「題名・気持ちがわか
ブラシをくわえてにげだして…」
っていうところの気
るところ・理由・一言」
持ちがわかります。どうしてかというと,僕も野菜が
が分かれているワークシ
嫌いで,野菜を切っている音が聞こえると,逃げ出し
ートを用意する。
たくなるからです。面白い本なので,みなさんも読ん
上丸子小学校- 9
でみてください。
・私が紹介する本は「おこだでませんように」です。
「ほ
んまはぼく,
「ええこやね。
」っていわれたいんや。
」
っていう気持ちがわかります。どうしてかというと,
私もいいことをしたと思って捨て猫を拾ってきたと
きに,逆に怒られてしまったことがあるからです。ほ
かにも,気持ちがわかるところがたくさんある本で
す。
2. 次時の学習について知る。
・早く紹介したいな。
・みんなの紹介を聞くのが楽しみだな。
3
本の紹介をしよう
1. 紹介の仕方について知る。
○話すこと・聞くことの指
・グループのみんなに聞こえる声の大きさで話すといい
導事項ウ・オに関するこ
ね。
とを確認する。話すとき
・伝えたい人のほうを向いて話すことは大事だよ。
「姿勢・口形・話す速さ」
・絵をみんなに見せながら話すといいね。
を意識すること,聞くと
・聞く人も紹介する人のほうを向いて話を聞いたほうが
き「話す人のほうを向
いいと思う。
く・頷きながら」などを
・紹介が始まる時と終わるときには,拍手をしたほうが
意識できるようにしてい
いいと思います。
く。
選んだ作品に
対する思いが伝
わるように,本
の楽しさを共有
しながら紹介し
よ う と し てい
る。
【関】
☆自分の本につ
いて紹介した
り,友達がどん
な本を紹介す
るのか楽しみ
に話を聞いた
りしている姿。
2. 本の紹介をする。
○紹介するのはグループ内
・僕が紹介するのは「どろんこハリー」という本です。 とし,単元終了後に紹介
「おふろに おゆをいれるおとが きこえてくると
カードを掲示し,グルー
ブラシをくわえてにげだして…」
っていうところの気
プ以外の子も読めるよう
持ちがわかります。どうしてかというと,僕も野菜が
にする。
重点①E
嫌いで,野菜を切っている音が聞こえると,逃げ出し
たくなるからです。面白い本なので,みなさんも読ん
○話すとき「姿勢・口形・
でみてください。
話す速さ」を意識するこ
・面白そうですね。読んでみたくなりました。
と,聞くとき「話す人の
・その本はどこにあるのかな。
ほうを向く・頷きながら」
・ハリーって人間なのかな?くわえてって言っていたか
などを意識できている児
ら,動物かな。
童を認める。
・私が紹介する本は「おこだでませんように」です。
「ほ
んまはぼく,
「ええこやね。
」っていわれたいんや。
」
っていう気持ちがわかります。どうしてかというと, ○発表を聞いて,質問した
いことなどがあれば,質
私もいいことをしたと思って捨て猫を拾ってきたと
問してもよいことを伝え
きに,逆に怒られてしまったことがあるからです。ほ
る。
かにも,気持ちがわかるところがたくさんある本で
す。
上丸子小学校- 10
・私も似たようなことがあったよ。気持ちがわかるな。
・他にはどんな出来事があるのか,読んでみたくなりま
した。
3. 次時の学習について知る。
○友達が紹介した本を次時
・○○さんが紹介した本が面白そうだな。読んでみたい
で読むことを伝える。
な。
・○○さんが紹介した本は読んだことがあったな。
でも,
紹介を聞いたら,もう一回読みたくなっちゃったな。
四
1
友達が紹介した本を読もう。
1. 本を読んで感想を伝えることを知る。
○感想は,面白いだけでな
・○○さんの紹介した本を早く読みたいな。
く,別のところで気持ち
・○○さんはすごく面白いって言っていたから,楽しみ
がわかったなどもあった
だな。
らそのことも伝えてよい
・先生やお母さんに怒られちゃう話って言っていたな。 ということを伝える。
重点①E
どんな話かな。
友達が紹介し
た本を読んで感
想を伝えようと
している。
【関】
☆友達が紹介し
た本を読み,感
想を伝え合って
いる姿。
○面白かったことや伝えた
2. 本を読む。
いことがメモしておける
・○○さんが気持ちがわかるって言っていた部分はここ
ようなワークシートを用
だな。
・○○さんの言っていたことがすごくよくわかったよ。 意しておく。
・○○さんが言ったように~のところはすごく気持ちが
わかったよ。
・○○さんが言っていた以外にも私はここで気持ちがわ
かるな。
○感想は口頭でも伝える
3. 感想を伝えあう。
が,気持ちがわかるとこ
・○○さんが紹介したみたいに,~のところが面白かっ
ろや面白かったところな
たです。
どには,付箋に感想を書
・○○さんが言っていたところも気持ちがわかったけ
き本に貼って渡すように
ど,別の~のところも僕は気持ちがわかったよ。
・○○さんの紹介を聞いて,
読んでみたいって思ったよ。 する。
重点①E
読んでみたら,○○さんが言ってきたみたいに,~の
ところの気持ちがすごくわかりました。
・紹介を聞いた時には,
「どうして?」って思ったけど,
本を全部読んだら,言っていたことが伝わったよ。
○多くの児童の紹介文が読
4.単元を振り返る。
めるように,紹介後カー
・物語と自分のことを重ねて読むと面白いな。
・友達の紹介した本を読んだら,すごく面白かったよ。 ドを掲示しておく。
もっと読みたくなったな。
上丸子小学校- 11
第2学年 国語科学習指導案
指導者 加藤 美幸
1.日 時
平成 24 年 12 月 12 日(水)第5校時 (13:40~14:25)
2.場 所
2年4組教室
3.単元名
大すきな本と自分とをつなげてしょうかいしよう
「大すきがとび出す,自分とつながる 本のしょうかい」
4.本単元について
(1)単元目標
◎本や文章の内容と自分の経験とを結び付けて自分の思いや考えをまとめて,発表し合うことができる。
○紹介したい大好きな本を選ぶことができる。
(2)評価規準
国語への
言語についての
読む能力
関心・意欲・態度
知識・理解・技能
・自分の大好きな本を友達に ・大好きな本を友達に紹介するために,本 ・主語と述語の関係に注意して,場
面の様子を読んでいる。
や文章の好きなところと自分の経験とを
紹介しようとする意欲を
(1)イ(カ)
結び付けて,思いや考えをまとめて,発
もち,本や文章の好きなと
表し合っている。 (1)オ
ころと自分の経験とを結
び付けて,思いや考えをま ・本を様々に読んだ上で,紹介したい自分
の大好きな本や文章を選んでいる。
(1)
とめようとしている。
カ
(3)児童の実態
~「伝える力・受け止める力」に関わりのある学習指導要領国語編(低学年)事項~
「読むこと」オ 文章の内容と自分の経験とを結び付けて,自分の思いや考えを発表し合うこと。
物語を読む場合,一番大切なことは「楽しむ」ことである。読むことの楽しさを実感するためには,読み終え
たときの自分にとっての面白さや楽しさは何であったのか,自分と比べたり読書経験と結び付けたりする中で,
自分はどう考えたのかを明らかにする学習,物語を主体的に読み進める読み方が重要になってくる。主たる評価
として「読むこと」オを取り上げることは2年生では初めてであるが,文章の内容とオに関わることとして,こ
れまでに登場人物に自分を重ね合わせたり,自分だったらどうするだろうかと比べたりして物語を読み取ってい
る児童の姿を価値付けしてきた。
教材「スイミー」
(ウを中心として指導)
ペープサートを使って登場人物の行動に着目しながら、場面の様子や気持ちや読み取った。その中で、叙述
をもとにして、スイミーの寂しい気持ちのときはゆっくりとした動きにするなどスイミーや登場人物に自分を
重ねて、自分なりに台詞や動きを付け足しながら読んでいる様子が見られた。グループで発表する際には、登
場人物の気持ちを考えながら、
「ここはこうした方がいいんじゃないかな。
」など、より登場人物の気持ちが表
れるように友達に伝え合う姿を価値付けした。
教材「お手紙」
(ウを中心として指導)
がまくんとかえるくんにお手紙を書くことを目的にしながら、場面の様子や気持ちや読み取っていく中で、
「かえるくんは、どうしてかたつむりくんに手紙を渡したのか」という問いを考えた。
「自分で渡してしまう
とお手紙をもらう楽しみがなくなってしまうからかたつむりくんなんだ。
」や自分だったらこうやって渡すの
になというような、自分に置き換えて考えを発表する児童の姿が見られた。
上丸子小学校- 12
日常的な活動の中での児童の実態
朝のスピーチ「友だちにおすすめの本」
朝のスピーチや授業などの感想交流で「私も○○したことがあります。その時は○○でした。
」
「私も似てい
て~でした。
」など自分と似ているところに着目したり、
「○○は、ぼくと違います。ぼくは~でした。
」や「私
は~だったので、~なのはいいなあと思います。
」と自分との違いに着目したりしてきた。自分の経験と結び付
けて発表している児童の姿が見られるようになってきた。特に、自分が体験、経験したことについての話では
感想交流が活発に行われている。
他にも,本単元では,選んだ本の内容と自分の経験を結び付けて発表し,共感的な感想や友達の経験に自分の
経験を重ねて感想交流する姿を望んでいる。
「読むこと」カ 楽しんだり知識を得たりするために,本や文章を選んで読むこと。
学習の中では並行読書という形で,単元の中で読書をする経験を重ねてきた。
教材「どうぶつ園のじゅうい」と並行読書
ちびっこ獣医になって、ある日の日記を書くという言語活動で、時間の順序や大まかな内容を読み取ること、
日記を書くために大事な言葉を書き抜くことを目標に授業を展開した。中原図書館や図書室から動物や動物園
で働く人に関係する本を集めて学年で読みあった。その単元の間の休み時間には
多くの児童が本を手に取って読んでいた。
教材「お手紙」と並行読書
単元が始まる前や学習のすき間の時間に「ふたりは・・・」シリーズの読み聞かせを行った。休み時間に読
む児童が増え、家からシリーズの本をもってくる児童もいた。教師が読み聞かせすることによってあまり自分
から読書をしない児童もシリーズの本に興味をもって手に取っていた。
日常的な活動の中での児童の実態 学級文庫にコーナーの設置「友だちにおすすめしたい本コーナー」
学級に5月ごろより「友だちにおすすめしたい本コーナー」をつくり、朝のスピーチで児童がお勧めした本
や、教師が読み聞かせをした本を置いた。児童が読書を主体的に行えるように取り組んできた。その成果があ
って、朝読書の時間だけではなく、授業のすき間の時間や朝学校にについて朝の支度が終わると、本を手に取
って読む児童がとても多くなっている。図鑑や絵だけを見ている児童もまだいるので、文章の内容に目を向け
ながら本を読んでほしいと願っている。
(4)言語活動
自分の思いを整理して自分の知識や経験と結び付けて発表するために,本や文章の好きなところを紹介するこ
と
低学年では,だた「おもしろい」や「楽しい」など,自分の思いや考えを言語化できることが大切と考える。
そのために,理由を明らかにしたり,自分の「大好き」
「すごい」を誰かに伝えたいという思いをもたせたりして,
自分の思いや考えをまとめられる力を育てていきたい。そのために本単元では,学習のゴールを自分の好きな本
を紹介するとした。
本単元の展開は,1次で,自分と結び付けながら大好きな本を紹介するという単元も見通す。ここでは,前期
の単元「お話の国の友だち」や朝のスピーチで,友達におすすめの本を紹介してきた児童が,
「今までの紹介の仕
方とは違っていてやってみたいな。
」と思う本の紹介は視覚的にわかるものとする。
2次では,自分と結び付けて好きな場面(登場人物)と好きなわけを紹介することを,既習の教材「お手紙」
で学ばせたい。
自分の好きな場面と自分が既にもっている知識や経験,
読書体験と結び付けて紹介するためには,
上丸子小学校- 13
どんな言葉を選んだらよいのか,どんな出だしで書きまとめればよいのかを知らせる。そして,実際に言葉を使
って,自分の思いや考えを書きまとめてみる。また,2次は並行読書をしながら進めていき,紹介する大好きな
本を選ぶ活動を行っていく。しかし,この時間から初めて紹介したい大好きな本を読んで探すというよりは,今
まで読んできた本から紹介する本を一冊選んでほしいと考えている。今まで読書しておすすめだった本を読書カ
ードで思い出す活動を入れていきたい。
3次では,自分の大好きな本を選び,じっくりと改めて読み,自分の思いや考えを書きまとめ,紹介する活動
へとつなげていく。これまでの経験や体験を思い出しながら感じたことや思ったことを,自分の言葉で表現する
ことを期待したい。また,読んだ本を紹介するということは,紹介することを通して,自らの読書生活を豊かに
し,紹介する相手と本を読みたいという気持ちを共有することで読書の輪をひろげていくことになると考える。
多くの児童が,友達が紹介した本を手に取り,読み合うことを願っている。
5.研究テーマに迫るために
研究テーマ
自分を見つめ、共に学び合う子をめざして
~伝える力・受け止める力を育てる授業、具体的な児童の表れを求めて~
低学年ブロックテーマ
・順序立てて、自分の言葉で伝えることができる子
・あいづちをうちながら、大事なことを落とさずに受け止める子
重点①価値付けしたい「目的意識」
「相手意識」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【目的意識の表れ例】
にているってことも
自分とつながるってこ
となんだ。
紹介する本は、ど
の本にしようかな。
ぼくも紹介カードで、好き
な本を紹介したいな。
【相手意識の表れ例】
友達に早く紹介した
いな。見せたいな。
ここはもっと、くわ
しく書いて紹介しよ
う。
大きな声でゆっくり
読んだほうが聞こえや
すいだろうな。
A.本と自分とを結び付けて大好きな本を紹介したいという関心を引き出すための,
「大すきがとび出す自分と
むすびつく本の紹介カード」
自分の好きな本の紹介は「朝のスピーチ」や前期の単元でも経験したことがある活動である。しかし,その時
点では,本を見せながら好きな場面(登場人物)
,好きな理由を口頭で紹介するものだった。以前の活動よりもさ
らにやってみたいという関心を引き出すために,今回は本の好きな場面の絵を描いてそれがとび出すように紹介
カードを作る。
「とびだすカード」は,教科書に作り方が出てくる「しかけカード」を応用したものであるので,
児童にとって作りやすく,カード作りに時間もかからないと考える。また,本を紹介する児童の思いや考えを書
きまとめたものが,視覚的に友達に見えるように貼り付けることで,児童同士で感想交流や質問をするときの手
助けとなるようにしたい。この単元で一番にねらいたい本と自分とを結び付けて書いたものは,裏に絵も添えて
描く。大好きな場面(登場人物)の絵カードと文字通り紐で結び付けて,視覚的にも大好きな本の場面(登場人物)
と自分とがつながっていることを強調して児童に示すようにする。
上丸子小学校- 14
B.何に着目にして,本を紹介したり感想交流したりするのかを確認するための,振り返り表
3次の交流では振り返り表を用意して,観点をとらえて交流や相互評価ができるようにする。振り返
り表は,最後まで相手の話を聞いてから記入してほしいので,その時間を設けることをあらかじめ伝え
ておく。
【振り返り表の観点】
○○さんのはっぴょうを聞いて,
・本のだい名や作者がわかった
・すきなばめん(とうじょう人ぶつ)がわかった
・すきなりゆうがわかった
・本と自分とをむすびつけてはっぴょうしていた
・読みたいと思った
C. 友達の紹介する本への意識を高めるための,ネームプレートの活用
「自分の好きな本を友達に伝えたい。
」という気持ちは児童の中でわきあがる自然な気持ちだと思うが,
「友達
の発表を聞きたい。
」という気持ちは,聞く必要感がなければ生まれにくいと考える。そこで,本時は「友達の紹
介を聞いて自分の読みたい本を見つける」という友達の紹介を聞く必要感を与えたい。そのことを可視化できる
ように,グループごとに「まあまあ読みたくなった」
「すごく読みたくなった」などと書いたミニホワイトボード
を渡し,
自分の気持ちは今どの程度か,
友達の発表が終わるごとにネームプレートをつけていこうと思っている。
読みたい本を見つけるために,たくさん質問する児童の姿を期待したい。また,紹介する方も自分の紹介は友達
にどう受け入れられたのかがわかるので,わかりやすく紹介しようする意欲につなげていきたい。
重点②価値付けしたい「能力目標」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【読むことオの表れ例】
私もお手紙が来る
のをまってみたいと
思いました。
ぼくと違って、失敗し
ても何度も挑戦している
ところがすごいです。
○○さんは自分も~した
いって言っていたな。
【振り返り】
【読むことカの表れ例】
紹介する本はこの本がい
いかな。同じシリーズのこの
本も読んでみよう。
私も○○さんと同じ
で、~したことがあっ
たなと思いました。
【感
想】
どんな本を読んでいたかな。
読書
カードを見てもう一回読んでみよ
う。
A.自分の思いにぴったり合う言葉で伝えるための,
「感想の言葉」の掲示
児童が思いにぴったり合う言葉を選べるように,今まで児童が見つけたり使ってきたりした感想の言葉をまと
めて掲示しておく。
【感想言葉の例】
○一ばん~だ
○かわいい
○さいこうだ
○わくわくする
○すばらしい
○大切だ
○気になる
○ぐっとくる
○すてきだ
○かんどうした
○はじめて知った ○やさしい
○親切だ
○きれい
○あたたかい
○わらえる
○明るい
○頭がいい
○どきどきする
○かわいそう
○じんとくる
○こわい
○おそろしい
○せつない
○ふしぎだ
上丸子小学校- 15
B.自分の経験,読書体験と結び付けて思いをまとめるための,書き出しの例の提示
児童が具体的に様子を思い浮かべて書きまとめられるように,児童から出た意見も取り入れながら以下の例を
提示する。
【書き出しの例】
○わたしも前に,~があって
○わたしの◇◇も,
○わたしとちがって
○もしわたしだったら,
○わたしが前に読んだ△△という本でも,○わたしも~できたらいい
○わたしとくらべてると,
○わたしと~のところがにていて,
○わたしも~やってみたい
○わたしが読んだ本の中で,
○わたしがもし○○だったら,
○わたしの家にも,
また,好きなところや理由を書くときの例も掲示しておき,それも自分でまとめるときの参考となるようにす
る。
【好きなところを書くための型の例】
○お話のこのばめんがすきだなあと思ったとき・・・・・・・ ○○が~するところがすきです。
○お話のとうじょう人ぶつがすきだなあと思ったとき・・・・ ~する○○がすきです。
【好きな理由を書くための型の例】
○なぜかというと,△△するのは(かんそうことば)からです。
○りゆうは,□□が(かんどうことば)からです。
C.感想交流をスムーズに行うための ,グループ編成
児童の実態を考えながら,教師側で意図的なグループ編成にしていく。また,選んだ本や経験したことが自分
と似ていると,
「○○さんと同じで私も~」
「ぼくも~したことがあります。
」と友達の紹介とつながる感想交流が
できる。そのために,今まで読んできた本の記録を読書カードで確認し,誰がどんな本を選んで,どんな経験を
書いているのかを把握してグループを編成したいと考えている。
また,いざ質問や感想を言おうと思ってもどんな言葉で言えばよいか戸惑ってしまう児童がいることを考え,
感想交流の手がかりになる言葉を掲示しておきたい。
D.自分の大好きな本を選ぶための,並行読書と読書カード
紹介する本を選ぶために並行読書を行い,読書カードで今まで読んできた本を再度読んだり,新たに読んだり
する。興味のある本を学級文庫や「おすすめの本コーナー」 図書室,学年の本棚から本を持ってきて読むこと
にする。読書カードは,簡単に書けて自分がおすすめする理由がある程度分かる内容にする。
【読書カードの内容】
○読んだ本の名前
○おすすめぐあい
○りゆう
○どこにある本か
上丸子小学校- 16
6.指導・評価計画(8時間扱い)
評価規準と
次 時
主な学習活動と予想される児童の反応
○教師の支援
☆評価方法
1.最近読んだ本の話題から,おすすめの本につ ○自分の好きな本を紹介する
一 1
ことに関心をもたせるため
いて発表し,もっと本を紹介したいという気持
に読書カードに書いておす
ちをもつ。
すめの本を思い出させる。
・最近は,かいけつゾロリシリーズの本を読んで
いるよ。
・シートン動物記はおすすめの本だよ。
・
「おじいちゃんのごくらくごくらく」という本は, ○自分と比べた発言している
児童には,
「どういうところ
心がじいんとするお話なんだ。
が似ていたか」
「それはどん
・
「かあさんになったあーちゃん」はとっても面白
な時か」など体験や経験を
いよ。理由は,お化粧をして自転車にのってい
引き出すように言葉かけを
くんだよ。
し,全体に広げていく。
・前に読んだ本でおすすめの本があるよ。
・本を読むことが大好きだからもっと本を紹介し
たい。
2.朝のスピーチでの本の紹介を思い出しながら, ○児童が「私も~したことが
ある」など普段から使って
自分とつなげて本の紹介をしていくことを知
いる言葉の中も自分とつな
る。
げていることだと知らせる
・やったあ。これから本の紹介をするんだな。
・
「自分とにている」ってつながるっていうことな
んだ。
・自分とつながるって,共通点があるかっていう
ことだな。
大すきな本と自分とをつなげて友だちにしょうかいしよう。
自分の大好き
な本を友達に紹
介しようとする
意欲をもってい
る。
【関】
☆どうやって作
るのかなどわか
らないことを質
問している姿。
☆積極的に発言
して計画を立て
ようとする姿。
3・教師が「大すきがとび出す,自分とむすびつ ○本と自分とを結び付けて大
好きな本を紹介したいとい
く本の紹介カード」で紹介する。
う関心を引き出すために,
・自分と結び付けて本を紹介するから,紹介カー
「大すきがとび出す,自分
ドに自分カードが紐で結んであるんだな。
とむすびつく本の紹介カー
・おもしろそうだな。
ド」で紹介をする。
・やってみたいな。
重点①A
4.学習計画を立てる。
・紹介する本を決める時間がほしいな。
・カードを作る時間がほしいな。
・本をよく読む時間が必要だな。
・紹介する練習が必要だな。
☆友達の発言に
あいづちをうっ
ていたり共感す
る発言したりし
ている姿。
上丸子小学校- 17
○児童のここが知りたい,こ
う進めていきたいという主体
的に取り組もうとする姿を価
値付けしていく。
重点①A
○単元の導入時から紹介した
い本がどれかを考えていけ
るように並行読書をしてい
くことを伝える。
重点②D
二
1
1.自分とつなげて紹介することをお手紙でやっ
てみることを知る。
「お手紙」の中で自分のすきなばめん(とうじょうじんぶつ)と自分
とつなげて考えよう。
2
2.文中の自分のすきな場面や登場人物の行動を ○児童の好きな場面や登場人
文章の好きな
物を見つけやすいように,
見つけて話し合う。
ところと自分の
内容を読み取っている既習
・ぼくは,がまくんとかえるくんがお手紙を待っ
経験とを結び付
の教材を扱う。
ているところが好きだな。
けて思いや考え
重点①A
・私は,友達思いのかえるくんが急いでがまくん
をまとめようと
にお手紙を書くところがいいな。
している。
【関】
○自分とつながる発言を板書
☆書きまとめた
し,他にもこんなつながる
ワークシートの
言葉があることを知らせ
記述。
る。
3.好きな理由を感想の言葉の中から自分の好き
重点②C
にぴったりくる言葉を選ぶなどして文を作る。
・ぼくは,二人が玄関で手紙を待っているところ
○自分の思いをわかりやすく
があったかい気持ちになるから好きだな
☆文章の好きな
伝えるために,感想の言葉
ところと自分の ・私は,かえるくんのがまくんのために一生懸命
の掲示をする。
経験とを結び付
重点②A
になっているところが,友達思いだと思うから
けて思いや考え
好きだな。
を発表する姿。
○自分の経験,読書体験と結
4.すきなところと自分とを結び付けて書きまと
び付けて思いをまとめるた
める。
めに,書き出しの例を提示
・私の家にもお手紙が届くといいなと思いました。 する。
・私も友達のために頑張るときがあるよ。
重点②C
・私がもしがまくんだったら,なかなか手紙が来
なかったら,自分で手紙を書いてしまうと思う ○友達の発言を聞いて自分の
経験を思い出してつぶやい
な。
たり,発表したりしている
5.書きまとめたものを紹介する。
児童を価値付けして話をつ
・ぼくが好きな場面は,がまくんとかえるくんが
なげていく。
二人でお手紙を待っている場面です。なぜ好き
重点②C
かというと,待っているかえるくんとがまくん
の顔が幸せそうだからです。ぼくが,もしがま
くんだったら,この時間が長く続けばいいのに
と言ったと思います。
上丸子小学校- 18
三
1
本を読んでしょうかいしたい大すきな本を選ぼう。
本を様々に読
んだ上で,
紹介し
たい自分の大好
きな本や文章を
選んでいる。
【読】カ
☆本を手にとっ
て読んでいる姿。
☆本を一冊決め
た姿。
2
1.読書カードで読んだ本を確認しながら読む。 ○紹介したい本を選びやすく
するために,読書カードを
・今までたくさん本を読んできたな。
見て,おすすめ度が高い本
・この本は図書室から借りてきた本だったな。
をもう一度読んでみるよう
・読書カードをもっとふやして,紹介したい本を
に促す。
決めたいな。
重点②D
○なかなか自分で本が選べな
・今日はこの本を読んでみたいな。
い児童には,教師が本を勧
・もう一度読んでみよう。
めて読むように促す。
・この本は自分が初めて自転車に乗れた時の気持
○興味のある本を学級文庫や
ちと同じだな。
「おすすめの本コーナー」
,
図書室,学年の本棚から本
を持ってきて新た
に読むように促す。
重点②D
2.紹介したい本を選ぶ。
○児童の体験や経験を思い出
・よし,この本にしよう。
したら書き留めておくよう
・読むために図書室から借りておこう。
に促す。
・早く紹介したいな。
重点②A
・この本に出てくる私は,おちょこちょいで自分
と同じなんだ。
3
「大すきがとび出す、自分とむすびつく 本のしょうかいカード」を作っ
て、しょうかいのじゅんびをしよう。
自分の大好き
○児童の体験や経験を思い出
な本と自分の経 1.紹介したい本の好きな場面(登場人物)
,好き
したら書き留めておくよう
験や体験とを結
な理由,自分と結び付けて,をそれぞれ書きま
に促す。
び付けて書きま
とめる。
とめている。
【読】オ ・私が紹介したいのはここのところだ。
・自分だったら,こんなときどうするんだろうな。 ○自分の思いをわかりやすく
☆ワークシート ・この本に出てくる○○は,大変だっただろうな。 伝えるために,感想の言葉
を確認する。
の自分の経験や
重点②A
体験と結び付け
た記述。
○書き方がわからない児童の
2.
「紹介カード」を作る。
ために,好きなところや好
・
「自分と結びつくカード」の絵は話すことにぴっ
きな理由を書く型の提示を
たりする絵を描こう。
する。
・大好きな場面の絵は,本を見て描こう。
重点②B
☆自分カードの
上丸子小学校- 19
7
④
本
時
絵を自分のの経
○書き方がわからない児童の
験を思い出しな 3.紹介の練習をする。
ために,自分の経験,読書
がら書くすがた。 ・紹介が楽しみだな。
体験と結び付けて思いをま
・ここの文章はわかりにくいかもな。もっと詳し
とめるために,書き出しの
く書こう。
☆紹介の練習を ・もう少し,カードを友達に見えるように持とう。 例を提示する。
する姿。
重点②B
【本時目標】
好きな本を紹介することを通して,本と自分,または友達と自分の経験とを結び付けて発
表し合うことができる。
大すきな本と自分とをつなげて友だちにしょうかいしよう。
友だちのはっぴょうを聞いて、読みたい本を見つけよう。
○なるべく多くの児童が紹介
1.本時の流れを確認する。
できるように初めはグルー
・○○さんは,どんな本をしょうかいするのか
プごとに紹介する。
な。
・緊張するな。
重点②C
・紹介は緊張するけど,この振り返り表の通り
○本時の紹介の観点を確認し
に紹介していけばいいんだな。
て,友達同士で相互評価を
・友達が話しているときは,振り返り表は書か
するために,振り返り表を
ないんだな
配って記入の仕方を説明す
・友達の紹介する本が読みたくなったか,ネーム
る。最後まで相手の話を聞
プレートをおくんだな。
いてから記入してほしいの
で,記入する時間を設ける
ことをあらかじめ伝えてお
く。
重点①B
○友達の紹介を聞く必要感を
与えるために,ネームプレ
ートをおくことを伝える。
重点①C
自分の好きな
本と自分の経験
とを結び付けて
発表し合ってい
る。
【読】オ
2.グループの友達に紹介をする。
○友達の紹介を聞いて,自分
・私が紹介したい本は「あさえとちいさいいもう
の体験や経験を思い出した
と」という本です。作者は,つついよりこさん
り,自分と比べたりしなが
です。好きな場面はあさえが妹がいなくなって, ら共感的に聞いている様子
探して,やっと公園で見つけて抱き合うところ
を価値付けしていく。
です。なぜかというと,妹が見つかってほっと
重点②C
するからです。私も妹がいて,とつぜんいなく
上丸子小学校- 20
なってびっくりしたことがありました。この本
は心があたたかくなるのでぜひ読んでくださ
い。何か質問や感想はありませんか。
・○○さんの妹がいなくなったときは,どこにい
たのですか。
☆友達の本の紹
介を聞いて,
本や ・家にいました。
本の内容と自分 ・ぼくもお兄ちゃんがまいごになって困ってしま
ったことがあります。
とを結び付けて
質問や感想を述
べる姿。
○自分は気付かなかったけ
☆振り返り表に 3.クラス全体に向けて紹介する。
ど,そういうこともあった
観点に沿って友 ・私もそういえば同じことがありました。
なという思いを友達の発表
達や自分の評価 ・○○さんに質問です。どうしてその文章がおか
を聞きあうことで気付いた
しいと思ったのですか。
をしている姿。
児童を価値付けしていく。
・それは,~だからです。
・ありがとうございます。わかりました。
・違うグループの△△さんの本の紹介が聞いてみ
たいです。
・私もそういえば同じことがあったな。
・○○さんはどうしてその文章が好きなのかな。
質問してみよう。
・その本を読んでみたいな。
☆自分と結び付
けて本を紹介し
ている姿。
☆振り返り表に
観点に沿って自
分の評価をして
いる姿。
4.本時の振り返りをする。
・ぼくも○○さんの本を読んでみたいな。
・友達とつながるところがあったよ。
・今日は質問できてよかったな。
・自分とつなげて本を紹介できてよかったな。
○友達の本を読んでみたいな
という児童の思いを価値付
けして,さらに読書をしよ
うする意欲につなげてい
く。
○友達の紹介した本で読んで
みたくなった本は,朝読書
などで読んでいくことを伝
える。
上丸子小学校- 21
第3学年 国語科学習指導案
授業者
1.日 時
平成 24 年 12 月 12 日(月)第5校時 (13:40~14:25)
2.場 所
3年2組教室
3.単元名
物語を読んで中心人物をしょうかいしよう「モチモチの木」
若狭 美加
4.本単元について
(1)単元目標
◎豆太など,斎藤隆介が著した7つの物語の中心人物について着目して読んだり人物について考えたことを伝え
合ったりして,中心人物の性格などについて一人一人の感じ方に違いがあることに気づくことができる。
(2)評価規準
国語への関心・意欲・態度
読む能力
言語についての知識・理解・技能
・中心人物に着目して,作 ・中心人物について考えたことを交 ・表現したり理解したりするために必要な
文字や語句について,辞書を利用して調
品を読むことを楽しもう
流し,一人一人の感じ方に違いが
としている。
あることに気づいている。
べる方法を理解し,必要に応じて調べて
(1)オ
いる。
(1)イ(カ)
(3)児童の実態
~「伝える力・受け止める力」に関わりのある学習指導要領国語編(中学年)事項~
「読むこと」オ.文章を読んで考えたことを発表し合い,一人一人の感じ方について違いがあることに気付くこと
本単元では,物語文を題材にしてのオの指導である。オの指導をするにあたっては「ア内容の中心や場面の様
子がよく分かるように音読すること。
」
「ウ.場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の気持ちの変化,情景
などについて,叙述を基に想像して読むこと。
」の能力の育ちが前提となる。
題材「きつつきの商売」
(アを中心に指導)
2つの場面を比べながら違いを見つけ,場面の様子や登場人物の様子を想像して,音読の工夫をした。各自
でそれぞれの場面の音読の工夫を叙述から様子を想像したり,グループで話し合ったりしながら考えた。それ
をもとに発表のグループを作って音読発表会を行った。
音読の工夫を考える段階での話し合いでは,
「
『うっとり聞いていました。
』だから,自分で思ったよりもいい
音が出たんだよ。
」
「だから,四分音符よりも長い時間がすぎたんだね。
」
「じゃ,
“コーン”は長めに“コーーー
ーン”て読もう。
」
「そこらじゅうのいろんな音がいちどに聞こえてくるってどんな感じかな。
」
「
“コーン”みた
いに作り出した音じゃなくて自然の音なんだよ。
」
「いろんな音が重なりあってるんだよね。
」
「だから,みんな
で重ねて言ってみようか。
」
「何回もくり返して読んでみようか。
」など,自分の意見と友達の意見を重ね合わせ
ながら話し合いを進めていた。
音読発表会では,自分たちが考えなかった音読の工夫を感想を交えて交流した。
題材「海をかっとばせ」
(ウを中心に指導)
中心人物の顔(表情)がどこで変わったのか,叙述から根拠を見つけながら気持ちの変化を考えた。
「
『すな
はまにかけ下りた。
』ってところは,やっぱりキリッとした顔のままかな。
」
「わたしは不安な顔にしたよ。理由
は,その前に『こわいのをがまんして』って書いてあるから,こわいものを見ないように逃げるようにかけ下
りと思うから。
」など,同じ場面でも違う顔を選んでいる友達と意見を交流しながら読みを深めた。
上丸子小学校- 22
題材「ちいちゃんのかげおくり」
(ウを中心に指導)
場面の移り変わりを色で表した。自分の考えを書き込んでいきながら,周りの友達ともどうしてその色にし
たのか,どうしてここで場面を変えたのかということを話し合いながら進めて。自分の考えの根拠は叙述にも
どるようにした。同じ場面を選んでも色が違うことや同じ色であってもその理由が違うことを話し合いの中で
感じた。友達の考えを聞くことにより,再度自分の場面分けを考え直していた。
(4)言語活動
中心人物を中心にした本紹介
この時期の児童は低学年の頃に比べて,周りの考えを聞くこと,そして自分の考えと比べることができるよう
になってくる。
その時期に多くの人の考えにふれる事はとても大事だと考える。
一人一人が自分の読み方をもち,
自分の感性で本を読んでいくことが楽しいと思えるようになる時期でもあるだろう。
ここまでの学習の中で児童は友達と話し合いながら自分の考えをより広げたり,深めたりしてきた。題材を読
みの視点をもって読み進めていくことにも少しずつ慣れてきているが,まだまだ自分自身の読みに自信がもてな
い子やどうやって読み進めていいか迷う児童がいる。
そこで,
友達と意見交換をしながら読み進めることにより,
様々な意見や考えにふれ,再度自分の読み方や考え方を考え直したり,深めたりしている。
反面,児童は友達の意見に対して感心し,納得すると自分の考えを友達の考えにかえてしまうことがある。
「海
をかっとばせ」では,このような場面が多く見られた。そこでそれ以降の学習においては,周りの友達と話し合
いをして,自分の考えが変わる事もあるだろうが,まず自分で考えた事はきちんと残すようにしてきた。
「ちいち
ゃんのかげおくり」では,場面の移り変わりを色で表したが,自分の考えを表す場と友達の考えで納得したもの
を表す場を用意したことにより,最後まで自分の感じた場面の色を意識しながら話し合うことができた。
本単元では,これまで培ってきた「登場人物の気持ちの変化や情景について叙述をもとに想像して読む力」を
基盤としながら,読みの交流を通して一人一人の感じ方に違いがあることに気づかせていきたい。
この単元では,
「中心人物の性格」に着目しながら読み進め,同じ作品について多くの人と考えを交流すること
を通し,中心人物に対して様々な感じ方があることを知ってほしいと考える。また,その理由としても「会話文」
「地の文」
「他の登場人物から見たもの」など,根拠とする叙述も人によって違ってくることを感じられるように
したい。今回は着目する人物を「中心人物」と限定する。限定することにより,児童が互いの考えの受け止め方
の違いやずれを知ることができると考える。同じ作者の他の本を紹介する活動を通し,本紹介のカードを見る時
も,自分の考えとの相違点に着目しながら交流していくことができると考えた。また,読み方の多様性や一人一
人の読み方のよさをクラス全体,学年全体に広げていきたい。
「モチモチの木」の学習と並行し,同じ作者の作品『八郎』
『かみなりむすめ』
『半日村』
『花さき山』
『三コ』
『ふき』の6作品を読書していく。同じ作者の物語を読み進めていく活動は今回が初めてである。児童の中には
シリーズ物は自分で図書室や図書館に行って読んでいる児童もいるが,同じ作者の作品を選んで読んでいる子は
あまりいないと思われる。今回の活動は今後の読書活動へもつながりをもつと考える。斎藤隆介の6作品は教科
書でも紹介されている。どれも出来事や中心人物の行動や心情の変化がわかりやすく,中心人物の性格をとらえ
やすい。また,児童一人一人が自分の選んだ物語の中心人物についてじっくり考え,同じ本を選んだ友達と意見
の交流を行いながら中心人物の紹介した本紹介文を考えるようにする。全員が読んでいる本について紹介文を書
くことにより,人によって中心人物に対する感じ方の違いがよく分かり,出来上がった本紹介のカードを楽しみ
ながら見合うことができると考える。本紹介のカードは,飛び出すカードを利用し,
「中心人物の絵(絵が苦手な
子には挿絵のコピー)
」
「中心人物の性格を中心にした本紹介」
「友達の考えでよかったこと」の3点を書けるよう
にする。また,児童が自由に本を手に取ることができるように中原図書館を通して,本を準備する。三次の活動
に入ったら,自分の感じたことを付箋に書き込み本に貼っていく。ワークシートと違い,図書室などの本には書
き込みをすることができない。そこで付箋を使って感じたことを残すことによって,自分の読み方を残したり,
確認したりすることができることを知り,今後の読書活動に生かしていけるものと考えた。
上丸子小学校- 23
5.研究テーマに迫るために
研究テーマ
自分を見つめ,共に学び合う子を目指して
~伝える力・受け止める力を育てる授業, 具体的な児童の表れを求めて~
中学年ブロックテーマ
・目的に応じ,受け止め手の反応を見ながら,理由や事例を挙げるなどして,筋道立てて伝える子
・話の中心に気をつけたり,互いの考えの共通点や相違点を考えたりしながら受け止める子
重点①価値付けしたい「目的意識」
「相手意識」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【目的意識の表れ例】
【相手意識の表れ例】
私とは考えの違う
○○さんの意見を
いろいろなとこ
中心人物は,お話
聞いてみたいな。
どうして初めは
ろから性格が分
の中で一番気持ち
臆病だったのに
かってくるね。そ
の変わった人と考
じさまが元気になっ
次では勇気があ
れをまとめてい
えると豆太だね。
たらもとの豆太に戻っ
るに変わってい
こう。
たのに,どうして勇気が
るのかな?
あると思うのかな。
A.読みの視点をはっきりさせるための,ブックトーク
導入で斎藤隆介の作品『ひさの星』を担任が読み聞かせする。その後でブックトークを行い,担任がどのよう
な視点で中心人物について読み進めていたのかを伝えていく。また,その場で子どもたちの感想を聞き,担任と
は違うとらえ方や感じ方があることを確認していきたい。そして,このブックトークで話し合ったことが,本紹
介カードのそれぞれの部分につながっていくことを「ひさの星」の紹介カードを見せて確認し,今後の活動の見
通しをとらえさせていきたい。
B.友達全員の意見・話し合いの論点を知るための,一覧表やボード(ネームプレート)の活用
「モチモチの木」を学習していく中で,今後の読書につながる自分の読み方を得ること,友達の読み方にふれ
ることを通して様々な読み方があることを知ることができる。そして三次では同じ作者の作品の中から自分が選
んだ物語を登場人物の性格を中心に紹介する本紹介を行っていく。
そこで小グループや全体で話し合う活動の際には,友達の考えを知るためにボードにネームプレートを貼って
いく。読んですぐに貼り,読み進めるごとに意見の変化をボードに示すようにする。また,毎時間の終わりに「豆
太は○○な子」という一文書きをし,クラス全員の意見を一覧にして配ったり,掲示したりする。これは全員の
意見が一目で分かるだけでなく,話し合いの論点が可視化できることでも有効であると考えている。
ネームプレートを貼るボードは,豆太の性格について「おくびょう」
「ゆう気がある」は,初めから示しておく。
一文書きを通して,それ以外の豆太の性格が出てくると予想されるので,臆病,勇気がある以外の豆太の性格を
記せるようにした。この図の周りに児童から出てきた性格をどんどん書き足していく。
おくびょう
ゆう気がある
上丸子小学校- 24
重点②価値付けしたい「能力目標」の具体的な表れと,引き出すための手立て
「やい,木ぃ,
モチモチの木
ぃ,実ぃ落とせ
ぇ。
」
と書いてあ
るから元気な子
じゃないかな。
でも,夜になると
モチモチの木が
怖いんだから弱
虫だと思うよ。
そうだね。いざと
なったら強い心
になるんだね。
【会話文からとらえている例】
じさまが「一人で医者
様よびに行けるほど,
勇気のある子どもだっ
たんだからな。
」と書
いてあるから,じさま
も豆太が勇気があると
認めたと思うな。
「豆太ほどお
くびょうなや
つはいない。
」
と書いてある
からきっと臆
病だと思うな。
「なきなきふも
との医者様へ走
った。
」と書いて
あるから,怖く
ても勇気を出し
たと思うな。
でも,じさまの病気
を通して,豆太は自
分の勇気に気づい
たんじゃないかな
【地の文からとらえている例】
そうだね。優しい
子でいてほしい
って書いてある
よね。
【他の登場人物からとらえている例】
A.友達と共感する箇所や捉え方の違いに気づくための,ペアや小グループでの意見交流
どの学習においても,友達の考えを聞いたり,自分の考えを話したりするのが好きな児童である。
「海をかっと
ばせ」の学習でも自然に友達と考えを交流することで,同じように共感した部分や,同じ場面でもワタルの表情
が違ったり,表情は同じでも気持ちが違ったりすることを伝え合った。そうする中で,自分の経験をもとに話を
したり,叙述に即して話をしたりする姿が見られた。
「ちいちゃんのかげおくり」では,友達と話していく中で,
自分が抱いた場面の色や登場人物の気持ちが変わっていく場面について,友達と話す中で「色は同じだが,理由
が違う。
」
「理由は同じでも色は違う。
」ことや,人によって「周りの様子」や「ちいちゃんの気持ち」または「自
分自身の気持ち」で読み進めて行っていることを知ることができた。
この単元においても,豆太の性格について人それぞれに感じ方が違うことを知ってほしい。
B.互いの感じ方を確かめるための,区切りのないワークシートの活用
「海をかっとばせ」
「ちいちゃんのかげおくり」の時と同様,じゃばらのワークシートを使う。ワークシートをじ
ゃばらにすることにより,本文全体のつながりが見えやすくなり,必要に応じてつながりのある箇所や比べて見
たい箇所を自由に折って見比べることができる。互いのワークシートを並べて見合う時にも,本文全体をとらえ
ながら,他の子がどこに着目して考えたのか,自分はどう考えていたのかを再度考えるためにも有効であると考
える。
今回は読み取る視点によって線の色を変えることにより,ワークシートを並べて見合うことにより自分と友達
の考えの相違点をはっきりさせることにも有効であると考える。
(会話文・・青,地の文・・赤,他の登場人物か
ら見たもの・・緑)
*中心人物の性格を様々な言葉で表すための,言葉集め
「海をかっとばせ」の学習では,表情カードについて児童がどのような言葉をイメージするのか話し合いを行
った。今回は「豆太の性格」について考えるが,児童の語彙の幅を考えるとたくさんの言葉が出てこない場合が
考えられる。そこでこの単元の前に,教科書上巻の巻末についている「気持ちを表す言葉」を利用しながら,人
柄をあらわす言葉集めやイメージマップ作りを行う。学習中も豆太の人柄について表す言葉に迷った時などに活
用できるように,掲示しておく。
上丸子小学校- 25
6.指導・評価計画(12 時間扱い)
次
一
時
評価規準と
☆評価方法
1
○教師の支援
学習のめあてを知り,学習計画を立てよう
中心人物に着
目して,作品を
読むことを楽し
もうとしてい
る。
【関】
☆ひさについて
感じたことを友
達の意見を交え
ながらの発言。
豆太に注目しな
がら読み進めて
いく態度。
理解したりす
るために必要な
文字や語句につ
いて,辞書を利
用して調べてい
る。
【言】
☆辞書を引きな
がら,本文と一
番合う意味を探
そうとしている
態度や発言,ノ
ートへの記録。
2
主な学習活動と予想される児童の反応
1.
「ひさの星」のブックトークを聞く。
・中心人物は ひさだね。
・最後は死んでしまって悲しいお話だね。
・いつも相手のことを考える人だと思ったよ。
・勇気のある人だね。
・斎藤さんは他にどんな本を書いたのかな?
○読み聞かせをした後
で,本紹介カードを提
示する。このカードは,
三次で児童が取り組む
カードと同じ形式と
し,学習の見通しをも
たせる。
重点①A
2.中心人物を中心にした本紹介をするというめあ
てを知る。
・中心人物はそのお話の中で一番気持ちが変わった
り,お話にたくさん出てくる人でいいよね。
・どんな人が出てくるのかな。
・中心人物が分からなかったらどうしようかな。
3 学習計画を立てる。
・初めにモチモチの木を読んで,豆太の性格を見つ
けるんだね。
・他の本も一緒に読んでいくんだね。
・どの本がおもしろそうかな。
・最後は先生が作ったみたいなカードを作るんだね。
4.中心人物の人柄を意識しながら「モチモチの木」 ○豆太に対する今のイメ
ージを一文書きした後
を読み,豆太がどんな男の子だと思うか今の意
でボードにシールを貼
見を一文書きにし,ボードにシールをはる。
・一人でトイレに行けないんだから臆病だと思うな。 る。今後の自分の考え
の変化と見比べられる
・臆病な気もするけど,まだ自信はないな。
ようにする。重点①B
・勇気が出てきたんじゃないのかな。
○一人で辞書を引くと時
5.分からない言葉を班ごとに調べる。
間がかかってしまう児
・とうげのりょうし小屋って何?
童もいるので,班ごと
・とうげを辞書で調べてみよう。
に辞書を引きながら,
・きもすけってなんだろう?
どの言葉の意味が一番
・
「きもを冷やすような岩から岩へのとびうつり」っ
よいか相談できるよう
て書いてあるから,怖いと思うような事もやるん
にする。
じゃないの。
・隣の班にも聞いてみよう。
・この意味が一番このお話には合っていると思うよ。
上丸子小学校- 26
二
1
2
豆太はどんな男の子なのだろう。
豆太の性格に
ついてポイント
に沿って読み進
め自分の考えを
もとうとしてい
る。
【読】
☆視点に沿った
ワークシートへ
の書き込み。
1.豆太の行動や会話から豆太の性格が分かる部分 ○会話文は青,地の文は
赤,他の登場人物から
に線を引き,どのような性格だと思うかを書き
見たものは緑の線を引
加えていく。
く。また,ワークシー
・P1L1に「豆太ほどおくびょうなやつはいない。
」
ってかいてあるからきっと臆病だと思うな。ここ
トを並べて見合い互い
は赤い線だな。
の考えの相違点に気づ
・P2に「やい,木ぃ,モチモチの木ぃ,実ぃ落とせ
くようにする。
重点②B
ぇ。
」って書いてあるから元気な子じゃないかな。
・P3 にちっちゃい声でなきそうに言った。ってある
から,勇気はないように感じるな。
・P5にじさまが「一人で医者様よびに行けるほど,
勇気のある子どもだったんだからな。
」って書いて
あるから,じさまも豆太が勇気があると認めたと
思うな。
2.豆太の性格について一文書きをする。
・やっぱり豆太は臆病な子だよ。
・豆太は勇気があると思ったから,勇気がある子に
変えよう。
・豆太は優しいと思うな。
・みんなはどんな事を書いたのかな。知りたいな。
豆太はおくびょうなのだろうか。
3
1.一覧表とボードを見て,みんなの考えを知る。
・臆病っていう人が多いね。
・はじめと意見が変わっている人もいるね。
・やさしいっていう人もいるんだね。
一人一人の感
じ方の違いに気
づき,自分の考
えを伝えてい
る。
【読】
☆叙述にもとづ
き豆太の性格に
ついての発言や
友達の意見を聞
きながら自分の
意見を伝えよう
とする態度。
○初めの自分の意見の場
所から考えがどのよう
に変化したかがわかる
ように,前時にはりか
えたネームプレートや
一文書きを互いに見合
う時間をとる。
重点①B
2.多かった意見をもとに,豆太が臆病だと感じた
理由について話し合う。
・一人でトイレに行けないから臆病と思ったよ。
・でも,P4L6になきなきふもとの医者様へ走った。 ○初めの考えから大きく
考えの変わった児童や
って書いてあるから,怖くても勇気を出したと思
自信をもてるようにな
うな。
った児童など着目児を
・私は,豆太はじさまが元気になったら,夜中にト
児童の意見の中から決
イレに行くのにじさまを起こしていたので,やっ
め,その意見から話し
ぱりおくびょうだと思いました。
合いを進めていく。
・○○さんの意見に賛成です。豆太は,やっぱり勇
重点①B
気がなくておくびょうだと思います。なぜならば,
上丸子小学校- 27
前時と本時の一
文書きの変化。
初めの方に書いてあるモチモチの木に対する気持
ちは変わっていないと思うからです。
・でも,いざというときは医者様を呼びにいけるの ○必要に応じて周りの友
達と話す時間をもう
だから,何か困ったことがあったら力が出せると
け,多くの児童の考え
思います。
が出せるようにしてい
・おくびょうな気持ちと勇気のある気持ちと両方も
く。
重点②A
っていると思います。いつもはおくびょうかもし
れないけど,いざという時は勇気が出せるのだと
思います。
3.豆太の性格について一文書きをする。
・この前と考えは変わらないな。
・臆病だと思っていたけど,話し合ったら勇気があ
ると思えたな。
・豆太は優しい子だと思えたな。
・もう少し違う性格はないか,読んでみようかな。
豆太はどんな男の子なのだろう。
4
1.一覧表とボードを見て,みんなの考えを知る。
・ずっと同じ意見の人もいるね。
・毎回新しい言葉が加わっている人がいるよ。
・豆太の性格はいろいろあるのかな。
友達の意見を
もとに豆太の性
格についてポイ
ントに沿って読
み進めている。
【読】
☆新たに気づい
た豆太の性格に
ついて根拠を明
らかにしたワー
クシートへの書
き込み。
臆病以外の性格
について友達に
意見を聞こうと
している態度。
2.臆病以外の豆太の性格が分かる部分に線を引き,
どのような性格だと思うかを書き加えていく。
・優しいというのは,じさまのために怖いのに走
って医者様を呼びに行ったからかな。
・じさまが元気になったら,また夜起こしているか
ら豆太は甘えん坊なのかもしれないな。
・
「はじめからあきらめる」って書いてあるから,弱
虫かな。
3.豆太の性格について一文書きをする。
・豆太は臆病で弱虫な子だな。
・豆太は優しくて甘えん坊な子だと思うよ。
・豆太の性格を一言であらわすのはだんだん難しく
なってきたな。
上丸子小学校- 28
○前時にはりかえたネー
ムプレートや一文書き
を互いに見合う時間を
とる。
重点①B
【本時目標】
豆太の性格について考えた意見を伝え合い,感じ方に違いがあることに気づくことができる。
豆太の性格について話し合おう。
⑤
本
時
1.一覧表とボードを見て,みんなの考えを知る。
・この前の時間よりも臆病が減っているね。
・勇気があるが増えているわけではないね。
・私も優しいと思ったけど同じ部分なのかな。
・あまったれって豆太のどんなことを言っているの
かな。
一人一人の感
じ方の違いに気
づき,友達の意
見を聞いたり自
分の考えを伝え
たりしている。
【読】
☆友達の発言か
ら自分の考えを
より詳しく伝え
ようとしている
発言。
前時と本時の一
文書きの変化。
○初めの考えから大きく
考えの変わった児童や
自信をもてるようにな
った児童など着目児を
児童の意見の中から決
め,その意見から話し
合いを進めていく。
重点①B
2.豆太の性格について話し合う。
・寒い中をじさまのために医者様をよびに行った豆
太はやさしい子だと思います。
・ぼくもそこの部分には豆太の優しさが出ていると
思いますが,最後にじさまが元気になったらやっ
ぱりじさまに甘えているので,甘ったれなんじゃ
ないかと思います。
・ぼくも同じ意見です。豆太はおくびょうなのでは
なくて,大すきなじさまに甘えているだけだと思
います。
・その考えには反対です。甘ったれだったら,勇気
は出せないんじゃないかと思うからです。やっぱ
りいつもは怖いと思う夜でも頑張って医者様を呼
びに行ったのだから勇気があると思います。
・前の時間にも話し合いましたが,豆太は臆病な部
分と勇気のある部分の両方があると思います。そ
れ以外の性格としては,じさまには甘えているか ○必要に応じて周りの友
達と話す時間をもう
もしれないけど,やっぱりじさま思いの優しい子
け,多くの児童の考え
だと思います。
が出せるようにしてい
・そうするとボードの真ん中に名札を貼りたくなっ
く。
重点②A
たな。
・豆太は○○な子の○○もとても長くなりそうだけ
どそれでいいのかな?
3.豆太の性格について一文書きをする。
・
「豆太は,優しくて勇気のある子。
」と書こう。
・私は甘ったれていると思ったけど,勇気もあると
思ったから,甘ったれだけどいざとなったら勇気
の出せる子にしよう。
・全部を書こうと思うとどの順番がいいかな。
上丸子小学校- 29
モチモチの木の本しょうかいカードを書こう。
6
三
一人一人の感 1.豆太の紹介文を書く。
じ方の違いに気 ・豆太は,昼間は元気に「やい,木ぃ,モチモチの ○どのようにまとめてよ
づき,友達の感
木ぃ,実ぃ落とせぇ。
」言えますが,夜になるとそ
いか迷っている子に
じ方のよかった
のモチモチの木が怖くなるほど臆病な子です。で
は,板書を参考にした
ところや自分の
も,大好きなじさまが病気になったら夜中にふも
り,ワークシートの線
考えを伝えてい
との村まで医者様を迎えに行けるほど勇気のある
を引いたところを再度
る。
【読】
子です。
読み直すように声をか
☆これまでの自 ・豆太は5才の男の子です。夜はじさまをおこさな
けたりして,豆太のこ
分の書き込みや
いとせっちんに行けません。そんな豆太をじさま
とで一番伝えたいこと
友達との話し合
は「自分で自分を弱虫と思うな。人間,やさしさ
を書くように支援す
いをもとに豆太
さえあれば,やんなきゃいけねえことは,きっと
る。
の性格を分かり
やるもんだ。
」とみとめています。なぜならば,豆
やすく伝えよう
太はじさまのために半里もはなれた村に夜一人で
としているワー
医者様をよびに行ったからです。豆太は弱虫だけ
クシートへの書
ど,いざとなったらとても勇気が出せる子です。
き込み。
2.友達のカードを見合おう。
・同じ性格に思っているけど,書く順番が違うと何
だか違う性格に感じるね。
・じさまが豆太をどう思っているかも入れると,豆
太とじさまの関係がよく伝わるね。
1
さいとうさんの作品を読んで,しょうかい文を書こう。
中心人物に着
目して,作品を
読むことを楽し
もうとしてい
る。
【関】
☆モチモチの木
の学習で学んだ
ことを生かしな
がら読み,性格
について書き込
んだ付箋。
1.紹介する本を選び,中心人物の性格が分かると ○どの本にしてよいか迷
ころに付箋を貼りながら読みすすめていく。
っている児童には,も
・モチモチの木と同じように「地の文」
「会話文」
「他
う一度気になる本を読
の登場人物から」というところを探してみよう。
んでみるように声をか
・
『八郎』は,
「わらしコないたればかわいそうでね
け,必要に応じてあら
が!」といいながら大きな山を動かそうとしまし
すじを一緒に確認して
た。とても心が優しく,強い人だと感じます。
いく。
・
『かみなりむすめ』のおシカは,
「雷の子はなんで
下界の子とあそべねんだ。
」とおっかあに聞いてい
るし,ダメだといわれても遊びに行ってしまった
から,やんちゃな子だと思うよ。
・
『半日村』は,一平が中心人物だね。
「でも,一平
はまたふくろをかついで山にのぼった。
」と書いて
あるから,一平は決めた事は一生懸命やる性格な ○必要に応じて周りの友
んだね。
達と話す時間をもう
・
『花さき村』のあやは,
「山ンばには会わなかった
け,多くの児童の考え
し,あの花にも見なかった」けど「あっ!いま花
が出せるようにしてい
く。
重点②A
さき山で,おらの花がさいているな」と思うのだ
上丸子小学校- 30
からとても素直な子だと思います。
・
『三コ』は「オイダラ山にかぶさった。
」と書いて
あるから,燃えている山の火を消すために自分の
命を投げ出す勇気があるし,みんなのことを考え
る優しい性格だと思う。
『ふき』は,「ひとりで雪の中にすわって,じっと大太郎
・
を待っていた。」みんなが声をかけてもふきはその場所
を動かなかったので,とても強い人だと思う。
・豆太と同じで性格を一言で表すのは難しいね。
2
3
4
一人一人の感
じ方の違いに気
づき,友達の感
じ方のよかった
ところや自分の
考えを伝えてい
る。
【読】
☆性格について
書き込まれた付
箋をもとに,自
分の感じた中心
人物の性格につ
いての発言や友
達の話を聞いて
の意見の交流。
紹介カードへの
書き込み。
2.同じ本を読んだ友達と中心人物について感じた
ことを話し合う。
・みんないろいろな性格を感じているな。
・『八郎』は,大きくなりたいといっていたからわがまま
なのかと思ったけれど,優しいところもあるよ。
・
『かみなりむすめ』が自分勝手なことをしていると
思っていたけど,さみしがり屋なんじゃないかな。
・
『半日村』は,一平のまじめな性格がみんなに伝わ
ったから,何年もかけてみんなが山の土を運んだ
と思うよ。
・
『花さき村』のあやは,優しい子だと思ったけど,
さみしかったり,自分に言い聞かせるために山ン
ばの話を信じたという考え方もあるよね。
・
『三コ』は,挿絵が怖かったけれど,とても勇気の
ある人の話だとわかりました。
・『ふき』は,強いだけでなくおっとうや大太郎のことを
思う優しい子という私の考えと同じ人がいました。
3.紹介カードを書く。
・どのようにまとめてよ
・いろいろな部分で性格がわかったけど,どれを一
いか迷っている児童に
番伝えたらいいかな。
は,付箋を再度読み直
・中心人物の行動から性格が分かることを伝えよう。 したり,友達の付箋へ
・この会話文は優しい性格の表れだから必ず入れよ
の書き込みも参考にす
う。
ように声をかけたりし
・友達の話を聞いて自分の考えが変わったところを
て,中心人物の一番伝
友達の意見のところに書こう。
えたいことを書くよう
に支援する。
4.友達の書いた紹介カードを見合う。
・話し合いをしたときよりも分かりやすい説明にな
っているな。
・私はこの物語を 1 回しか読んでいなかったから,中心人
物にこんな強い思いがあったとは感じなかった。
・みんなの紹介カードを読んだら,もう一度本が読
みたくなったよ。
上丸子小学校- 31
上丸子小学校- 32
第4学年 国語科学習指導案
授業者
菊地 忍
1.日 時
平成 24 年 12 月 12 日(水)第5校時(13:40~14:25)
2.場 所
4年3組教室
3.単元名
文章を読んで自分と友達の意見の似ている所とちがう所を考えながら話し合おう「ごんぎつね」
4.単元について
(1)単元目標
◎文章を読んで考えたことを発表し合い,互いの考えの共通点と相違点を考えながら話し合うとともに,一人一人の
感じ方の違いに気付くことができる。
○場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の気持ちの変化,情景などについて,叙述をもとに想像して読むこと
ができる。・叙述に着目して物語を読み,感じたことや考えたことを進んで話し合おうとしている。
(2)評価規準
国語への関心・意欲・態度
読む能力
言語についての
知識・理解・技能
・叙述に着目して物語を読み、 ・情景を表す文や語句に着目したり,会話や心情表現,行 ・言葉には,考えたこと
感じたことや考えたことを
動に着目したりしながら人物の気持ちを読み取っている。 や思ったことを表す
進んで話し合おうとして
(1)ウ 働きがあることに気
づいている。
いる。
・文章を読んで心に残ったことについて,自分の考え
をまとめ,互いの感じ方を比べたり重ねたりして交 (1)イ(ア)
流している。
(1)
(3)児童の実態
~「伝える力・受け止める力」に関わりのある学習指導要領国語編(中学年)事項~
「読むこと」ウ.場面の移り変わりに注意しながら,登場人物の性格や気持ちの変化,情景などについて,叙述をもとに想像し
て読むこと。
「白いぼうし」「一つの花」では,毎時間子どもたちから出てきた学習課題を設定し,叙述をもとに,行動や会話,表現
の工夫,場面ごとの人物の様子とその移り変わりなどに注目しながら中心人物の性格や気持ちの変化を読み進めてきた。
題材「白いぼうし」
4年ではじめて学習する物語の単元である。全文を音読した後の初発の感想から,学習課題を見つける活動を行った。
「女の子はチョウチョなのかみんなと話し合いたい。」「『よかったね。よかったよ。』は誰が言ったのか考えたい。」
などが課題として挙がった。「○ページの○行目に…って書いてあるから~だと思います。」と具体的な叙述に基づい
て想像を膨らませ意見を言う姿が多くなった。また,「前のところで~だったので,○○だとおもいます。」と,場面
と場面を比べたり,変化を読み取ったりして意見をいう子の姿も見られるようになってきた。
上丸子小学校- 33
題材「一つの花」
「『ひとつだけちょうだい』という言葉が多いのに,なんで『一つの花』という題名になったんだろう。」と疑問に
もつ子が現れ,題名に注目して,場面を読み比べることを行ってきた。会話に着目して場面の変化や登場人物の気持ち
に迫る子の姿が見られるようになってきた。「最後の場面だけお母さんのセリフがない。」ことに気付いた子は,「ゆ
み子が成長したことを表現しているんじゃない。」と少しずつ情景描写と人物の気持ちが関連していることに気付き,
意識して読み取る子が現れてきた。
題材「のはらうた」
同じのはらの住人の詩を3つ用意し,性格の違う住人の詩と読み比べることで,叙述をもとに様々な表現方法に着目して読
むことができた。1つの詩だけではわからない住人の魅力を読み取ることができた。
「読むこと」オ.文章を読んで考えたことを発表し合い,一人一人の感じ方について違いのあることに気付くこと。
いくつかの意見が出ることが予想される場面で話題を投げかけ意見交流の場を設定してきた。一人一人さまざまな感じ
方があるから,「たくさんの意見が聞くことができて面白いこと。」「正解は1つではなく,一人一人の感じ方でたくさ
んあること。」と伝え,感じたことをのびのびと表現できる雰囲気をつくってきた。その土壌作りに付け加え,「一人一
人違う考えがあるからこそ深まったり広がったりする楽しさがある」ことを伝えてきた。
自分の言いたいことを話すことで満足している子が多くみられ,「付け足し」と言いながらも話題がそれてしまい自分
の意見を話してしまう子もいた。また,友達の話を聞くと「納得。」とすぐに受け入れ話し合いが終わってしまうことも
多くあった。
題材「白いぼうし」
「ちょうちょうは女の子なのだろうか」学習を進めていく中で挙がった疑問を課題に設定し意見交流を行った。「ちょ
うちょは女の子だ」「ちょうちょはゆうれいだ」「ちょうちょは,夏ミカンじゃない」と叙述を基に理由を述べ合う姿が
見られた。「○○さんに少し似ていて…」とつながる姿が見られるようになったが,「おー」「なるほど」「納得」と話
し合いの深まりがあまり見られなかった。
題材「一つの花」
自分とは違う考え方の友達に対して,「なんで,そう思ったのですか。」という姿が見られるようになってきた。「家
のまわりのたくさんのコスモスはお父さんがくれたコスモスなのだろうか。」という課題に対して,「そう思う。」「違
う。」の意見に分かれ話し合いを進めていった。理科の学習を活かして,「お父さんのコスモスから種ができて増えてい
ったと思うけど,それはお父さんのコスモスではないと思う。」という意見に対して,「お父さんの思いが種から伝わっ
ていっていると思うから,お父さんのコスモスだと思う。」と理由は同じだが,とらえ方の違いによって意見が分かれる
場面があった。「○○さんに似てるけど…」「○○とちょっと違って…」「○○さんの意見に反対で…」「なんでそう思
ったんですか。」と,意見を聞いてすぐに「納得」と受け入れるのではなく,自分との違いを意識し話をつなげられるこ
の姿も少しずつ増えてきた。
題材「のはらうた」
からすえいぞうの「ひかるもの」の最後の1連を隠し,その部分の詩を考え,発表しあう活動を行った。同じ
ような気持ちを伝えていても表現の仕方の違っていたり,それまでの叙述をもとに想像してきた学習の中での住
人のとらえ方の違いから詩の内容が違っていたりすることに気づくことができた。
次なるステップとして,
「どのような話し方が相手に伝わりやすいのか」を意識しながら,話すよう声かけをしてきた。
以下の子どもの様子が出てきたときにも即時に価値づけし,全体へと広げていった。
上丸子小学校- 34
・結論や考えを初めにいう(頭括型) ・はじめとおわりに考えをいう(双括型) ・要するに…
・つまり… ・例えば… ・まず~次に~ ・○○さんの○○に付け足して…
・ここまでいいですか
しかし,この様な話し方ができる子はまだ少なく,意見を言う際,相手を意識し相手の反応を確かめながら話したり,
自分が何を一番伝えたいのか話の中心を意識して話を組み立てながら話したりする子もそれほど多くはない。
自分の伝えたいことを話すだけで満足するのではなく,友達の意見や考えに重ねていくことの楽しさや,自分の考えや
思いも深まっていくことを実感できるようにしていきたい。そこで話し手と聞き手が一体となって学習課題に迫れるよう
に話し手には,「伝えたいことの中心をはっきりさせて短く話すこと」(話の中心)を,聞き手には「自分の考えと照ら
し合わせて,どこが同じ(似ていて)で,どこは違うのかを意識すること」(共通点や相違点)を再度指導する。そこか
ら意見の重なりが生まれ,子どもたち自ら学習の流れを作り出し,学習の深まりを期待したい。
(4)言語活動
「新美南吉」の作品についてテーマを決めて紹介し合う
「読むこと」の言語活動例のア物語や詩を読み,感想を述べ合うことを設定した。
一冊の本だけでなく,読書範囲が広がるようにするため,同じ作家の作品であり,
「ごんぎつね」とは雰囲気の
違う,心温まる「手ぶくろを買いに」とおならを我慢しつつ,相手の気持ちを気遣う「がちょうのたんじょう日」
の読み聞かせをし,
簡単な感想交流から学習をスタートする。
この2作品とも新美南吉の作品であることを伝え,
「ごんぎつね」は,その新美南吉の代表作であることを伝え,読みの学習に入っていく。
「ごんぎつね」とは違い,
子どもたちからの直観的な感想が「やさしい」
「心温まる」
「相手を思う気持ち」などが予想される2作品と比べ
て読みを進めることで,結末の部分が子どもたちに強い印象を与えることを期待する。そして,結末を考えるこ
とで全体を丸ごと読み取る学習活動を展開していきたい。
また,
「手ぶくろを買いに」
「がちょうのたんじょう日」の読み聞かせの後に,下記の本を紹介する。
「花のき村
とぬすびとたち」
「おじいさんのランプ」は教科書でも紹介されている作品である。
「きつね」は,
「ごんぎつね」
をイメージして読み進めていくと,そのイメージとは違い,主な登場人物は人間であり,不安の中,母の愛情を
感じる子どもたちが多いことを予想して選んだ。そして,
「でんでんむしの悲しみ」
「二ひきのかえる」は短い話
で,
「一人じゃないんだ」
「一人一人違う良さがあるね。
」と感じる子が多くいることを予想し選んだ。紹介する本
以外にも,自ら図書室で新美南吉の本を探して読む姿を期待する。
【紹介する新美南吉の作品】
「手ぶくろを買いに」
「でんでんむしの悲しみ」
「二ひきのかえる」
「がちょうのたんじょう日」
「花のき村とぬすびとたち」
「おじいさんのランプ」
「きつね」
自分の感想を明確に表現するためには,文章を読んで感じたことの根拠が,どの叙述に基づいているのか,そ
して,自分の経験,普段考えていることや関心のあることと,どのように関連しているのかなどを説明すること
も必要となる。そこで,単元の入り口で読み聞かせをした「手ぶくろを買いに」
「がちょうのたんじょう日」をも
う一度取り上げ,2作品とも「つながり」をテーマにしたブックトークをし,学習の見通しが持てるようにした
い。感想を述べ合い,自分の感想が,友達の感想と比べてどのような特徴をもつのかを認識することができるよ
うに,単元の初めに紹介した新美南吉の作品を読み進めてきて心に残っていることと2次の最後に「ごんぎつね」
を一言で表した学習を生かして共通のテーマでブックトークをすることを伝える。テーマが設定しやすくなるよ
う「私が語る新美南吉の○○な世界」と題し,自分の考えをまず伝え,その根拠となる部分を伝え合い,一人一
人の感じ方の違いを知ることで,さらに本を読み楽しむことへつながることを期待する。
上丸子小学校- 35
5.研究テーマに迫るために
研究テーマ
自分を見つめ,共に学び合う子をめざして
~伝える力,受け止める力を育てる授業を求めて~
中学年ブロックテーマ
・目的に応じ,受け手の反応を見ながら,理由や事例を挙げるなどして,筋道を立てて伝える子
・話の中心に気をつけたり,互いの考えの共通点や相違点を考えたりしながら受け止める子
重点①価値付けしたい「目的意識」「相手意識」の具体的な表れと,引き出すための手立て
☆【目的意識の表れ例】
【相手意識の表れ例】
ぼくとは違う考
えだから,意見を
聞いてみたいな。
この文からごんの
気持ちは○○なの
かな
なんで,ごんは
「つまらない。
」
って思ったんだ
ろう。
「ごん,おまいだっ
たのか,…。
」ここ
までは,○○きつね
だったのに呼び方
が変わった。兵十の
気持ちに変化があ
ったんじゃないか
な。
○○さんと似て
いて,同じ文から
○○だと思いま
した。
○○さんはなんでそう
思ったんですか。もう
少し教えてください。
A.叙述を基に自分の考えの根拠を明らかにするための,ワークシート
「白いぼうし」や「一つの花」の学習であらわれはじめた『
「○ページの○行目の○○という言葉」から○○だ
と思います。
』という児童の姿を踏まえ,全文を載せたワークシートを使い,言葉や文章にラインを引いたり,感
じたことを書き加えたりしながら根拠を明らかにして,ごんや兵十の気持ちを考え,発言できるようにしていき
たい。気持ちが分かる部分は会話や行動だけではなく,景色や音などからも分かることを意識できるようにして
いていきたい。
また,ワークシートの「それぞれの思い」の部分には「ごんの兵十への思い」
「兵十のごんへの思い」を「怒っ
ているから赤だな。
」
「反省しているから水色かな。
」と子どもたちの感覚で色を塗った矢印で表現していく。結末
の場面を考えていくときに,物語全体を通して,ごんの矢印が多く,兵十がごんの行動に気付いていないことに
ついて視覚的にもとらえられればと考える。
上丸子小学校- 36
本文
気持ちのわかる文にサイド
ラインを引く
ごんの気持ち
情景描写
兵十の気持ち
ごん
ごんの
気持ち
それぞれ
の思い
兵十への
思い
兵十
ごんへの
思い
兵十の
気持ち
B.伝える内容を受け止めやすくするための,サイドラインによる色分け
ごんに関する叙述には赤,兵十に関するものには青,情景描写や心情把握のための伏線となる表現などには緑
など,サイドラインによる分けすることで視覚的に思考しやすくする。そこからキーワードを見つけ,深く読み
考えていく手立てとしたい。また場面による視点の変化についても気付きやすくする。
まずは,このような活動を通して,自分自身で考える時間を大切にしていく。その上で友達とのやり取りを行っ
ていく。友達の発言を視覚的にとらえやすくなっているので,受け止めやすく,さらに話の中心を意識して話し
合いを深めていけるのではないかと考えている。
「私も同じところに線を引いて○○と思いました。
」
「ぼくは同じところに線を引いたけど,○○だと思いまし
た。
」
「緑の線と赤の線,両方引きました。なぜかというとここでもごんの○○の気持ちが伝わってきたからです。
」
のような姿を期待したい。
C.登場人物の気持ちの変化や自分の考え,友達の考えを可視化するための,ネームプレート
ワークシートにごん・兵十の気持ちを感じ取り,まとめていく。
なっとくいく
「物語の結末をどう思ったか」を課題に話し合いを進める際に
「納得いく」
「納得いかない」にわけ,読み取った気持ちはどの位置
なのかを考えネームプレートを貼っていく。友達の考えを視覚的に
確認することで,違う場所の友達へ質問する状況も設定していきたい。
ネームプレートで感じ方の違いについて視覚的に気付くことで,
「○○さんは,ぼくと違う場所にネームプレートが貼ってある。
」
なっとくいかない
「なんで○○さんは○○と思ったんだろう。
」
「質問してみたいな。
」
という,相手意識の高まりを期待する。そして,自分の意見に自信をもって全体の意見交流にのぞめるように,
ネームプレートの位置で似た意見の友達を確認し,3~4人で集まって意見を伝え合う場を設けていく。全体で
の交流では,その小グループでの意見交流を通して,自信をもって発言したり,みんなに伝えたい友達の意見を
紹介したりしながら,より活発な意見交流を期待する。
上丸子小学校- 37
重点②価値付けしたい「能力目標」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【
(1)ウの表れ例】
【
(1)オの表れ例】
前半は会話文が
少ないな。
心の中で思って
いるのかな。
この「
」の
中の話し言葉か
ら,ごんの気持
ちが分かるよ。
行動や風景をあ
らわす文からも
気持ちが想像で
きるから,そう
いうところを探
していこう。
「かげぼうしをふみ
「目をつぶった
ふみ」ついて行った
まま,うなずきま
のは,ごんは兵十に
した。
」このとき,
自分がやっているこ
ごんはどう思っ
とを知ってほしいん
たのかな。みんな
じゃないかな。
の考えも聞きた
いな。
(意見の一覧表を見て)
○○さんは何でそう思ったんだ
ろう。理由を知りたいな。
A.一人一人の感じ方の違いに気付くための,児童の意見の付箋による掲示と一覧表の配布
場面ごとに全文を載せたワークシートを拡大コピーし,叙述を基に話し合いをするために,児童の意見を付箋
に書き入れ貼っていく。その際,同じ言葉に着目していても,意見が違うこと,感じ方が違うことに気付くこと
ができるよう貼る位置の工夫や矢印を書き加えるなどして,意見交流を進めていきたい。
「あの場面で,ごんがあ
の行動をとったから,この場面では…」と前の場面や後の場面での出来事を根拠として意見を言う姿を期待した
い。また,考え方が広がる場面では一覧にまとめ配布する。
「何でそう思ったんだろう。
」
「同じ意見だけど,理由
も同じかな。
」など,一人一人の感じ方の違いを知るとともに,相手意識の向上を期待する。子どもたちの意見や
根拠の広がりによっては,理由を途中まで記載することで,さらなる相手意識の向上や「聞きたい。
」
「話したい。
」
気持ちの高まりをねらっていきたい。
B.互いの感じ方を比べたり重ねたりするために,考えが分かれたりズレが生じたりする学習課題の設定
子どもたちが一人一人読みを進めていく中で「みんなの意見を聞きたいな。
」
「意見が違うな。
」という部分に焦
点を当て課題とし意見交流を進めていく。
また,これまで子どもたちは数多くのハッピーエンド物語に触れてきた。単元の入り口でも同じ作者のごんぎ
つねとは違う結末の物語を紹介する。これまでの経験にない「ズレ」に出会うことで個々人の違ったものの見方
が生じてくると考える。そこで,
「この結末に納得できるか。
」と学習課題を投げかけ,学習してきたことと叙述
を基に考えをもち,意見交流を行っていく。
「自分は○○なのに,なぜ△△と思ったのだろう。
」と「話し合いた
い」
「友達の意見を聞いてみたい」と思える学習環境を設定することで,自分の考えの根拠を明らかにして意見を
述べるとともに,違う考え方もあることに気づき,意見交流をすることで読書の楽しさを広げていくことを期待
する。
C.互いの考えが広がったり深まったりするための,小グループでの意見交流
子どもたちの考え方が広がる場面では,「○○さんと同じだけど,理由も同じかな。」「私と全然違う。何でそ
う思ったのかな。」「それはおかしいよ。」と疑問が生じたタイミングで,小グループでの意見交流を取り入れて
いく。
多くの子どもたちが共通の疑問を感じた時,1つの疑問に対して,少人数で意見交流をし,全体に広げていく。
考えが広がった時,同じ意見の友達が集まり,意見交流をすることで深め,自信をもって全体に広げていく。
違う意見の友達と少人数で意見交流をし,全体に投げかける疑問を明確にする。
のように,子どもたちの様子に応じて,人数や内容・課題を変えていきたい。
上丸子小学校- 38
6.指導・評価計画(11 時間扱い)
次
時
一
1
評価規準と
☆評価方法
主な学習活動と予想される児童の反応
○教師の支援
1. 「手ぶくろを買いに」
「がちょうの ○読み聞かせをした作品が2作品とも「新
美南吉」の作品であることを伝える。そ
たんじょう日」を読み聞かせ聞く。
の代表作である「ごんぎつね」を学習す
ることを知らせ期待を高める。
・
「手ぶくろを買いに」は知ってる。おじ
いさん優しいね。
・お母さんのきつねは人間をすごく信用 紹介する「新美南吉」の作品
「手ぶくろを買いに」
していないね。なんでだろう。
・
「がちょうのたんじょう日」は初めて聞 「でんでんむしの悲しみ」
「二ひきのかえる」
いたよ。面白い話だね。
・友達のことを考えて倒れるまで我慢す 「がちょうのたんじょう日」
「花のき村とぬすびとたち」
るのなんて,えらいな。
「おじいさんのランプ」
「きつね」
・ごんぎつねはどんな話かな。
・今日の話2つとも優しい場面があった
から優しい話じゃない。
ごんはどんなきつねなのかな。
言葉には,考
えたことや思
ったことを表
す働きがある
ことに気付い
ている。
【言】
☆発言,ごん
の気持ちが分
かる部分に引
いたサイドラ
インの箇所。
2
2.全文を読み,ごんの気持ちがわかる ○ごんの気持ちがわかるところには赤線を
引き,叙述から「ごんはどんなきつね」
部分に線を引く。
なのかを考えられるようにする。
重点①B
3.ごんはどんなきつねなのか,一文で ○一文で書き,なぜそう思ったのか叙述を
表す。
(
「○○きつね」にあてはめる) もとに根拠を示しながら説明するように
ワークシートに引いた線の確認をするよ
・いたずらきつね。
う促す。
重点①A
・いじわるきつね
・やさしいきつね
・いたずら好きだけど,本当はやさしい
きつね。
・さびしがり屋なきつね。
○全員の考えを,ごんに対して肯定的・否
・反省するきつね
定的・どちらにもあてはまらないに分類
・つぐなうきつね
しまとめておく。次時に配布する。
・やさしくない,意地悪でもないきつね
重点②A
4.なぜそう考えたのかを発表し合う。 ○自分の立場を明確にして,話し合うよう
にする。
重点①A
・③L41 から兵十につぐないをしている
から,優しいきつねだと思う。
・③L39 にもあるように,償いのために
上丸子小学校- 39
持ってきたいわしは,盗んだものだか
ら,ちゃんと償っていないと思うな。
叙述に着目し
だから,
ごんは悪いきつねだと思うな。
て読み,感じ ・○○さんが言っていたように,いわし
たことや考え
は盗んだものだったけど,
P8L4から,
たことを進ん
次の日もその次の日もごんはくりを拾
で話そうとし
って兵十のうちへ持ってきてやったっ
ている。
【関】
て書いてあるから,やっぱりいいきつ
☆ごんはどん
ねだと思うな。
なきつねなの
か根拠を明ら 5.本時の学習を振り返る。
かにして考え ・ぼくは,いたずらぎつねと思っていた
を伝えている
けど,友達の意見を聞いて,一人ぼっ
発言。
ちで寂しいきつねとも思った。
・なんで,優しいきつねと思ったのかも
う少し理由を聞いてみたいな。
・ごんは,場面によっていろいろな気持
ちがあるよ。
・ごんの気持ちは,兵十との関係で変わ
っていくんだよ。
・じゃあ,兵十との関係とごんの気持ち
の変化を考えていきたいな。
二
○話し合うときに大切なことを確認し,姿
に表れている子や意識している子を具体
的にほめ,広めていく。
・叙述にそって理由や事例を挙げながら筋
道立てて話す。
・話の中心に気をつけて話す聞く。
・共通点や相違点を考えながら話し合う。
○気持ちを考えるときに特に着目した単語
や助詞などに印を付ける。
重点①B
○ワークシートに自分の考えの変化を書
き,後で見直せるようにしておく。
○一人一人のごんに対する感じ方の違い
(ずれ)
を拡大した掲示に記録しておき,
2次からの話し合いの課題設定に生かし
ていく。
重点②B
1
ごんの気持ちが変化しているのか確認していこう
1.全文を読み,ごんや兵十の気持ちが ○ごんの気持ちがわかるところには赤,兵
十の気持ちがわかるところは青,その他
分かるところにサイドラインを引く。
は緑で色分けし,本文に線を引いて視覚
的に捉えやすくする。
重点①B
・ 私はごんの行動に線を引いたよ。
・ 私は兵十の会話文のところに線を引
○サイドラインを引いた部分から読み取れ
いたよ。
る気持ちをワークシートにまとめるよう
・ 僕はごんの会話文のところからもわ
にし,ごんと兵十の気持ちの変化や関係
かると思うけれども,景色からもご
性をとらえられるようにする。
んの気持ちが分るよ。
重点①A
2.ごんや兵十の気持ちがわかるところ
○自分はサイドラインを引かなかった箇所
を伝え合う。
からも,気持ちが読み取れることに気付
・前半のほとんどが赤線(ごんの気持ち
いた反応を取り上げ,全体に返す。
がわかる部分)だった。
ごんの気持ち
重点②A
の変化を叙述 ・兵十の気持ちが分かる青い線は,最後
○叙述をもとに意見を述べるようにワーク
の方に多いよ。
を基に想像し
シートに線を引いた部分を確認する。
・赤線と青線が近いところに?ポイント
て読んでい
重点①A
る。
【読】 があるね。
☆ごんや兵十
上丸子小学校- 40
の気持ちが分
かる部分に引
いたサイドラ
インの箇所,
ごんや兵十の
気持ちや互い
の関係につい
ての叙述を基
にした発言 。
2
ごんの気持ち
の変化を叙述
をもとに想像
して読んでい
る。
【読】
☆ごんや兵十
の気持ちが分
かる部分に引
いたサイドラ
インの箇所,
ごんや兵十の
気持ちや互い
の関係につい
ての叙述を基
にした発言,
ワークシート
の意見交流を
通して感じ取
った「今日の
ごん」の記述。
○自分の意見と違うところや同じところは
3.本時の学習を振り返る。
どこかを意識しながら,話したり聞いた
・何で,ごんは,他のいたずらには償い
りできるように,感想・疑問・話し合い
をしていないのに,うなぎの時だけ,
たいことの3観点に分けて掲示物に記録
償いをしたんだろう。
し,話し合いたい課題や疑問が視覚的に
・何でごんが兵十につぐないをし続けた
分かりやすいようにする。
のかな。
重点②B
・償うときも,最初は家の外から投げて
いたのに,なんで最後は家の中に入っ
ていったんだろう。
・ごんはなんで兵十と加助の後をついて
ぶつぶつ言っているんだろう。
・ごんは自分がくりや松たけを持って行
○意見交流の中で疑問に感じたり,意見の
っていることを言わないんだろう。
違いがあったりした個所から次時以降の
・最後うなずいたとき,ごんはどんな気
課題を設定していく。
重点②B
持ちだったのかな。
・まず,何でうなぎの時だけ償いをしたの
か話し合いたいな。
何で,ごんは,うなぎのときだけつぐないをしたのだろう。
○ごんの思い込みをどんどん膨らませている
・兵十のおっかあが死んだことに気付いた
様子に気づくことができるために,兵十の
からじゃない。
「おっかあは,・・」の会話文の接続詞(そ
・付け足しで③L23に「兵十のおっかあは…
れで,ところが,だから)に着目できるよう
うなぎが食べたいと言ったにちがいにな
子どもたちに問いかける。
い。」って書いてあるし,そのあとにも
「うなぎが食べたいと思いながら死んだ ○どうしてごんの気持ちが変わったのか投げ
んだろう。」ってあるから,いたずらで
かける。
大変なことになったと思っている。
・きっと反省したんだよ。
○友達の意見を聞いて,「考えが変わった」
・だから,くりや松たけを持って行ったん
ことや「考えが深まった」ことなどを自分
じゃない。
の中で確認できるようにするために,友達
・「次の日も」「また次の日も」「その明
の名前や言葉を書き入れながらワークシー
くる日も」って書いてあるよ。1日だけじ
トの「今日のごん」にまとめるよう声掛け
重点②B
ゃなくて,毎日続けたのはなんでだろう。 をする。
ごんはなんで,毎日くりや松たけを持って行き続けたのだろう。
3
ごんの気持ち
の変化を叙述
を基に想像し
て読んでい
る。
【読】
☆ごんや兵十
・兵十に許してもらいたかったからだ。
・兵十もごんと同じ一人ぼっちでさびし
いから,いたずらしちゃったんだよ。 ○どうしてごんが繰り返し償いをしに行くの
か投げかける。
・仲良くなりたかったのかな。
・兵十に気付いてほしかったからだと思 ○ごんの気持ちを想像するために,「まず一
つ」「次の日には」「次の日も,その次の
う。
上丸子小学校- 41
の気持ちが分
かる部分に引
いたサイドラ
インの箇所,
ごんや兵十の
気持ちや互い
の関係につい
ての叙述を基
にした発言,
ワークシート
の意見交流を
通して感じ取
った「今日の
ごん」の記述。
4
日も」「その次の日には」の繰り返しの表
・初めは,許してもらいたかったから,イ
ワシや栗を持って行ったけど,途中から, 現や,「走って」「投げこんで」「そっと」
「置いて」などの表現,また,持っていく
兵十と仲良くなりたいという気持ちもあ
ものの変化に着目できるよう声をかける。
ったと思う。
・でも,兵十は,ごんがやったこと気付い ○兵十の気持ちはごんに向いているのか意識
するためにワークシートの「それぞれの思
てないんじゃない。
い」の欄を確認するよう投げかける。
・前に,ごんがかくれて兵十の後をついて
重点①A
いく場面があるよ。
「考えが変わった」
・償うんだから,目の前に立って渡せばい ○友達の意見を聞いて,
ことや「考えが深まった」ことなどを自
いのに。
分の中で確認できるようにするために,
・かくれてついて行ってるよ。
・なんでかくれてついて行ってるんだろう。 友達の名前や言葉を書き入れながらワー
クシートの「今日のごん」にまとめるよ
う声掛けをする。
重点②B
ごんはなんで兵十と加助の後をこっそりついて行ったのだろう。
・吉兵衛のうちに行く時だけじゃなくて,
帰りも待っていたから,2人の話をすご
ごんの気持ち
く聞きたかったんだと思う。
の変化を叙述 ・兵十が本当に気付いてないのか知りた
を基に想像し
かったんじゃない。
て読んでい
・いわしのときは家の外から投げていた
る。
【読】 のに,だんだん家の中に入ってくりや
☆ごんや兵十
松たけを持って行ってるよ。気づいて
の気持ちが分
ほしかったんだよ。
かる部分に引 ・「おれは引き合わないな。」って書いて
いたサイドラ
あるから,くりや松たけを持って行って
インの箇所,
いるのは自分だってわかってほしいんだ
ごんや兵十の
よ。
気持ちや互い ・でも,兵十は全然気づいてないよ。
の関係につい ・それでも,ごんは,くりや松たけを持っ
ての叙述を基
ていくよ。なんでだろう。僕だったらも
うやめるな。
にした発言,
ワークシート ・最後には兵十は気付いてないから,ごん
を撃ってしまったんだよ。
の意見交流を
通して感じ取 ・ごんは,なんで撃たれてしまったのに目
をつぶったまま,うなずいたんだろう。
った「今日の
ごん」の記述。 みんなの意見が聞きたいな。
5
○どうして,ごんは2人に近づいて行ったの
か投げかける。
○ごんが2人の話を聞きたくてたまらない様
子や気持ちを想像できるように,ごんの行
動を表す「かくれて,じっと」「二人の後
をつけて・・」「しゃがんで」の言葉に着
目できるよう に,言葉のやり取りの中から
引き出す。
○「引き合わない」の言葉に着目させ,ごん
の気持ちに気付くように投げかける。
○兵十の気持ちはごんに向いているのか意識
するためにワークシートの「それぞれの思
い」の欄を確認するよう投げかける。
重点②B
○友達の意見を聞いて,「考えが変わった」
ことや「考えが深まった」ことなどを自分
の中で確認できるようにするために,友達
の名前や言葉を書き入れながらワークシー
トの「今日のごん」にまとめるよう声掛け
をする。
重点②B
ごんは,なぜ うなずいたのだろう。
ごんの気持ち
の変化を叙述 ・⑥L5に「うなぎをぬすみやがったあのご ○兵十の気持ちを考えることができるよう
にするため,まず,兵十の視線の動きや,
んぎつねめが,また,いたずらをしに来
をもとに想像
「取り落とした」などの行動に注目できる
たな。」から,気づいてないし,怒って
して読んでい
よう声掛けをする。
る。
【読】 いる。
☆ごんや兵十 ・⑥L14の「おや。」でやっと気付いた。 ○兵十の言動を順に追い,また,ごんの呼
上丸子小学校- 42
の気持ちが分
かる部分に引
いたサイドラ
インの箇所,
ごんや兵十の
気持ちや互い
の関係につい
ての叙述を基
にした発言,
ワークシート
の意見交流を
通して感じ取
った「今日の
ごん」の記述。
・同じ⑥L16「ごん,おまいだったのか, 称の変化からも兵十の心の変化をつかむ
ように助言する。
…」のところで,今までは,呼び方が
「いたずらぎつね」とか「ぬすっとぎ ○最後にうなずいたごんの表情を想像する
ことで,兵十とごんは心が通じ合ったか
つね」だったのに,
「おまい」になって
どうか読み深めさせたい。
いる。
・ごんが,うなずいたのは,
「おまいだっ
たのか,いつもくりをくれたのは。
」っ ○最後の一文に着目し,どのような効果が
て兵十が聞いているから「そうだよ。
」 あったのか問いかける。
って返事したんだと思う。
・ぼくは,兵十がわかってくれてうれし ○一人一人の感じ方の違いに気づくため
に,1時間ごとに,意見交流を通じて,
かったんだと思います。
互いの感じ方を比べたり重ねたりするこ
・わたしも同じで,兵十の後をついて行
とで,自分の意見に自信をもったり,意
ったときに気付いてくれなかったけ
見が変わったりしたことをワークシート
ど,やっと気付いてもらえてうれしい
の「今日のごん」に書くよう促す。
んだと思います。
重点②B
ごんぎつねの結末をどう思ったのか考えよう
・今まで学習してきたけど,最初,ごん ○結末の場面だけで考えている子に対し
て,今まで学習してきたことに戻りなが
はいたずらしていたけど,償い続けて
ら考えることができるよう,ワークシー
いたよ。なのに,最後にごんが撃たれ
トを振り替えるよう声をかける。
てしまったから,この結末に納得いか
ないよ。
・兵十はごんがくりや松たけを持ってき
○全員の「納得がいく」か「納得がいかな
ていたことに気づかなかったんだか
いか」の理由を途中まで記載した資料を
ら,しょうがないよ。だから少し納得
まとめて次時の意見交流に生かしてい
だな。
く。
重点②B
・最後にごんがうなずいた場面で2人の
心が通じ合ったのだから,結末に納得
だよ。
」
・次の時間,みんなの意見を聞くのが楽
しみだな。
⑥
本
時
【本時目標】
・「ごんぎつね」を読んで心に残ったことについて自分の考えをまとめ,互いの考えを比べたり重ねた
りして交流し, 感じ方に違いがあることに気付くことができる。
みんなの考えを聞き,
「ごんぎつね」の物語を一言で表そう。
1.結末について考えた自分の意見を発 ○結末について「納得がいく」
「納得がいか
表し合う。
ない」の立場でネームプレートを貼り,
友達の考えを視覚的に確認することで,
・ごんは,ずっとつぐない続けてきたの
違う場所の友達へ質問する状況も設定し
ていく。
重点①D
に最後に撃たれてしまうなんてかわ
上丸子小学校- 43
結末について
の自分の考え
をまとめ,互
いの感じ方を
比べたり重ね
たりして意見
交流してい
る。
【読】
☆結末につい
て叙述を基に
した自分の考
えの発言。互
いの共通点や
違いについて
を指摘した発
言や質問。
いそうだから,
「納得がいかない。
」
・でも,兵十はごんがくりや松たけを持
ってきていることを知らないんだか
ら,
「少し納得がいく。
」
・最後にごんがうなずいた場面で2人の
心が通じ合ったのだから「納得いく。
」
・どこから,心が通じ合ったと思ったん
ですか。
・最後の場面で,兵十の「ごん,おまい
だったのか,…。
」って言葉に対して,
ごんがうなずいたから。
・なるほど。今の意見を聞いて,気持ち
が通じ合ったんなら,
ぼくも納得だな。
・でも,気持ちが通じ合っても撃たれて
しまったから,やっぱり納得はいかな
いよ。
・そうだね。納得いかないね。
・気持ちが通じ合ったんだから,この終
わり方でいいんじゃない。ぼくは,納
得。
○友達の考えを視覚的に確認することで,
似ている友達への付け加えや違う場所の
友達へ質問することができるようにする
ために,納得いく,いかないだけではな
く,具体的な理由を板書する。
重点②A
○理由の根拠となった叙述はどこのなのか
明らかにするために,ワークシートのサ
イドラインを引いた部分を確認するよう
促す。
重点①A
○疑問や話したい点が生じた場合,考えを
広げたり,深めたりするために,小グル
ープでの意見交流をするよう促す。
重点②C
○「納得いかない」で話が終息しそうな場
合は,もう一つの結末を読み聞かせ,
「う
れしくなりました。
」の部分を紹介し,改
・それなら,
納得。
「うれしくなりました。
」 めて,学習したもとの文に戻って考える
よう促す。
って言ったんだから,心が通じたんだ
ね。
・でも,撃たれてしまったら,すっきり
○それぞれの感じ方に違いがあることを認
しないな。
め,次の活動へ移る。
2.
「ごんぎつね」の物語を一言で表す。
「ごんぎつ
・最後は心が通じ合ったから「心がつな ○学習してきたことを生かして,
ねは○○な話」と一言で表し,この物語
がる話」かな。
から自分が感じたテーマを見出すことが
・ごんが撃たれてしまったから「かなし
できるよう,掲示を活用して,ここまで
い話」
の学習を振り返る。
重点②A
・一人のごんが一生懸命つぐないをし続
けたので「がんばる話」
・ぼくは同じ理由で「相手のことを思う
話」だね。
・兵十にごんがくりやまつたけを持って
きていることが伝わらなくて撃たれて
しまったから「すれちがう話」
・私は反対で,最後にごんがうなずいた
場面で2人の心が通じ合ったのだから
「きずなの話」
上丸子小学校- 44
三
新美南吉の作品とごんぎつねについてテーマを決めて紹介し合おう
1
2
1.前時に「ごんぎつね」の物語を一言
叙述に着目し
で表した言葉を伝え合う。
て物語を読
2.ブックトークを聞き,学習の見通し
み,感じたこ
をもつ。
とや考えたこ ・
「○○な世界」っておもしろいね。
とを進んで話 ・前の時間にやった物語を一言で表して
し合おうとし
紹介するんだな。
ている。
【関】 ・一言にした言葉の理由も紹介するんだ
☆付箋を貼り
ね。
ながら読書を 3.紹介したい本のテーマを考え,ブッ
する姿。
クトークの準備をする。
・
「でんでんむしの悲しみ」が好きだな。
テーマを
「一人じゃないんだよな世界」
にして,最後の部分をみんなに聞いて
もらおう。
・
「二ひきのかえる」でブックトークしよ
う。テーマは「みんなちがってみんな
いいな世界」にして,金子みすずの詩
のようなことろが好きって言う気持ち
をみんなに伝えよう。
3
叙述に基づい
て感想を述べ
ている。
【読】
☆交流してい
るときの発
言,ワークシ
ートの記述。
○新美南吉の作品と前時に「ごんぎつね」
を一言で表した学習を生かして共通のテ
ーマでブックトークをすることを伝え
る。
○「手ぶくろを買いに」
「がちょうのたんじ
ょう日」とも「つながり」をテーマにブ
ックトークをし,学習の見通しが持てる
ようにする。
○テーマが設定しやすくなるよう前次に
「ごんぎつね」を一言で表した学習を生
かして,
「私がしょうかいする新美南吉の
○○な世界」と題し,その根拠となる部
分に付箋を貼り,理由を明確にできるよ
うにする。
○付箋を用意し,テーマの根拠となる部分
や伝えたい箇所に付箋を貼るようにす
る。
重点①B
4.
「私がしょうかいする新美南吉の○○
な世界」と題してブックトークを行
い,感想交流をする。
「でんでんむしの悲しみ」グループ
○ごんぎつねで学習してきたことを生か
・ぼくは「悲しい世界」にしました。な
し,テーマやテーマ設定の根拠,感じた
ぜかというと,最初の部分に「
「もう生
ことを伝え合い,一人ひとりの考え方の
きていられません。
」
「わたしのせなか
違いを感じ取り,読書の楽しさを味わう
のからの中には,悲しみがいっぱい,
ことができるよう,同じ作品を選んだ子
つまっているのです。
」
って書いてある
どもたちでグループを組み,感想交流を
行う。
重点②B
から,そうしました。
・○○さんとぜんぜん違うよ。ぼくは「一
人じゃないんだよ。な世界」について
話します。最後の会話の部分から,悩
みをもっているのは自分だけじゃない
んだって気づいて,
元気になったので,
「一人じゃないんだよ。な世界」にし
ました。
・わたしは,同じ部分で「元気な世界」
にしたよ。
・最初を中心に考えるのと,最後を中心
に考えるのとでは,○○な世界が全く
違ってきて面白いね。
上丸子小学校- 45
第5学年 国語科学習指導案
授業者
蟻生 寛郎
1.日 時
平成 24 年 12 月 12 日(水)第5校時 (13:40~14:25)
2.場 所
5年3組教室
3.単元名
様々な資料を読んで考えたことを,友達に伝えたり受け止め合ったりし,自分の考えを広げたり
深めたりしよう「自然遺産との人の関わり方」
4.本単元について
(1)単元目標
◎様々な資料を比べて読んで考えたことを発表し合い,自然遺産との人の関わり方についての自分の考えを広
げたり深めたりすることができる。
○文や文章にはいろいろな構成があり,書き手の立場や考え方に応じた構成がなされていることを理解する。
(2)評価規準
国語への関心・意欲・態度
読む能力
言語についての
知識・理解・技能
・自然遺産との人の関わり方につ ・自然遺産との人の関わり方について取り上げ ・文や文章にはいろいろ
いて考えるための,様々な資料
た様々な資料を,書き手の立場や考え方に注
な構成があり,書き手
を比べて読んだり友達と交流し
意しながら比べて読み,類似性や相違点を意
の立場や考え方に応
たりすることが,様々な違いを
識して,自分の考えを広げ,ついで自分の立
じた構成がなされて
発見する喜びがあることを感
場を除々に決めていき,さらに考えを深めて
いることを理解して
じ,進んで資料を読もうとした
いきながらまとめている。
(1)オ
いる。 (1)イ(キ)
り話し合ったりしようとしてい
る。
(3)児童の実態
~「伝える力・受け止める力」に関わりのある学習指導要領国語編(高学年)事項~
「読むこと」オ.本や文章を読んで考えたことを発表し合い,自分の考えを広げたり深めたりすること。
読むことオ.の「本や文章を読んで考えたことを発表し合い,自分の考えを広げたり,深めたり」とは,どの
ようなことであろうか。これには,次のような段階があると考える。
① 資料を読み,感想を“もつ”
・
「まず,~と思った。
」
② ①を頭に入れつつ,異なる視点の資料を読み,自分の考えが“ゆらぐ”
・
「おや?」
「どう判断しよう…」
③ さらに違う視点または具体度の高い資料を読んだり,友達の考えを聞いたりし,
自分の考えが“ゆらぎながら振り幅が大きくなる”
・
「あっそうか!」
「それもありか!」
④ その上に違う視点または具体度の高い資料を読んだり,友達の意見を聞いたりし,
折衷的にとらえ,立場が“ある程度決まってくる”
・
「△△はわかるけど,やはり○○の点が気にかかる。
」
(↓次頁へ)
上丸子小学校- 46
⑤ ある程度決まった目で,さらに他の資料を読んだり,友達の話を聞いたりすることで,
自分の考えに,
“自信をもつ部分が出てくる”
・
「だったら~。
」
「△△や,□□で自信が少しずつもててきた。
」
⑥ 自信をもてた部分をもとに,さらにいくつかの事柄について考え,
“固まる”
・
「やっぱり,これだ!」
「これでいこう!」
※さらに,新たな視点の資料に出合うことで③~⑥を繰り返す。
資料A
自分の
考え①
自分の 自分の
考え① 考え②
資料B
※左ベン図の∩(積集合) -自分の考え―
が広い児童,0の児童など,重なり方はそ
れぞれ。資料や友達の影響を受けて,徐々
に広まったり深まったりしていく。
資料C
自分の考え②
友達Aの資料の着眼点
その着眼点からの友達Aの考え
自分の考え③
友達Bの資料の着眼点
その着眼点からの友達Bの考え
自
分
の
考
え
の
深
ま
り
自分の考えの広がり
主として説明的な文章を用いて,このようなオ.の指導をするにあたっては,
「ウ.目的に応じて,文章の内容
を的確に押さえて要旨をとらえたり,事実と感想,意見などとの関係を押さえ,自分の考えを明確にしながら読
んだりすること」の能力の育ちが前提となる。
このウ.の能力に関し,今年度のこれまでの指導を通して,以下のような具体的な児童の表れを引き出してき
た。
上丸子小学校- 47
題材「見立てる」
「生き物は円柱形」
○4年生で扱った題材「大きな力を出す」
,
「動いて,考えて,また動く」
,
「アップとルーズで伝える」
,アユの
遡上に関する2社の新聞記事,
「ウナギのなぞを追って」を,以下の3観点から振り返った。
①文章の組み立てに関して
・
「動いて,考えて,また動く」は,始めと終わりで言いたいことが書いてあってわかりやすかった。
・多摩川のA社の新聞記事も,同じだった。
・4年生の時のクラスでは,双括型って名前を付けたよ。
・
「アップとルーズで伝える」は,例から始まって,最後の方だけでまとめていた。
・双括型と違って最後だけだから,尾括型って名前を付けていたよ。
・歌のビリーブと同じで,例から始まるからビリーブ型って名前だった。
・最後でテレビのアップとルーズの使い分けをまとめてから,動かない写真や,受け手のことに話が広がっ
て終わっているから,はばたき型って名前を付けたよ。
・最初だけで言いたいことを書いてあるのもあるかな。
・話すときは最初に言いたいことを言った方が伝わりやすいけど…。
・尾括型の反対で,頭括型って名前を付けていた。
・
「ウナギのなぞを追って」は,事実をだらだら書いているだけな感じだった。組み立てについては,評判が
悪かったね。単なる事実の報告って感じだった。ウナギ文って名前を付けていた。
②例の挙げ方に関して
・
「動いて,考えて,また動く」は,実際に体験できる例だから,説得力があった。
・
「アップとルーズで伝える」は,真逆のことを比べている例でわかりやすかった。対比って名前だった。
・真逆じゃないけど,付け足しみたいに比べている例もあったね。類比って名前だった。
・中のまとめがあったのもよかった。
・点字についての文章で,
「私にはこんな経験があります。
」って,中の始めがはっきりするようにしている
文章もあったよ。
・
「ウナギのなぞを追って」で,新月の頃,海山の近くって仮説を立てているのはよかった。
③注目するとよい言葉に関して
・多摩川の新聞記事では,題名と文章が一致しているかが大切だった。
・繰り返し出てくる言葉(似ている意味の言葉も含む)に気を付けることも大切だった。
・
「このように」
「しかし」などのつなぎ言葉も大切だったね。
○本題材を通しては,以下を価値付けした。
①文章全体の構成を考える際のポイントして
・くり返し出てくる言葉(似ている意味の言葉も含む)が大切。
・
「仮に」のような書き出し方や,問いかけの文章を探すこともヒントになる。
・最初や最後の段落や文が大切。
・筆者の言いたいことの中心が,どんな中の例と関係するか考えると,文章全体の組み立てがはっきりする。
★筆者は,読者が文章を区切りのないように読んでもらいたいための工夫をしている。繰り返しの言葉に注
目するか,
「問い→例→結論→この話を踏まえて言いたいこと」に注目するかなど,何に注目するかで意味
段落の分け方は変わる。
②筆者のが主張をよりよく伝えるための工夫について
・説得力を上げるためには,正反対の例や実際に確かめられる例を出すとよい。
・わかりやすくするためには,
「仮に」を使って立場を決めるとよい。
・読みやすくするためには,問いかけや,短い文の積み重ねを使うとよい。
上丸子小学校- 48
題材「天気を予想する」
○上記について,特に事実と意見の積み重ねや,繰り返し出てくる言葉に着目して文章の構成を学びつつ,新た
に図や表などの効果について,書くことエ.
「引用したり,図表やグラフなどを用いたりして,自分の考えが
伝わるように書くこと。
」と関連させた指導をした。文章だけで学習した後,資料だけを提示し,どの段落の
資料かを考える中で,以下のような具体的な表れを価値付けした。
・数字で表されていると説得力がある。
・表にしていると,他の部分と比べ易い。
・写真がないとイメージが湧かないが,写真があると伝わる。文字で書こうとすると,何十文字ぐらいかかるの
だろう。
・グラフを使うと変化の様子が一目でよくわかる。算数でやったけど,棒グラフは量の比較,折れ線グラフは変
化の様子を表す目的があった。
自分の考えの形成及び交流に関するオ.の指導は,活動自体はどの教科でも大切にしてきていることである。
国語「読むこと」の領域で,オ.を単元の中心とした指導してきてはいないが,文学的な文章について,複数の
文章を読んで自分の考えを広げたり深めたりすることに関わる単元としては,以下の単元がある。
題材「椋鳩十ワールド」 ~最後のワシ,ツルかえる,片耳の大シカ,かものゆうじょう,山の太郎熊,かものひっこし~
「エ.登場人物の相互関係や心情,場面についての描写をとらえ,優れた叙述について自分の考えをまとめる
こと」の指導をする際,同じ作者の題材を比べて読み,児童が自分で優れた叙述について気付いていくようにし
てきた。
その際,オ.の内容を意識し,話の展開の進め方や,山場での会話文・行動描写・情景描写および他の言葉に
置き換えて比べることでわかる表し方の工夫を探る中での優れた描写群から,
作者が何を伝えようとしているか
を考え,交流することも行ってきている。この際,
「□□に注目して考えた○○さんの意見に納得。
」
「同じよう
な意見だけど,◇◇に注目して考えた。
」
「□□に注目したのは同じだけど,自分は△△と考えた。
」など,叙述
をもとに,自分と友達との共通点や相違点を意識し,自分の椋鳩十の作品観をもつために,活発に話し合う姿が
見られた。
上丸子小学校- 49
(4)言語活動
自然遺産との人の関わり方についての自分の考えをまとめるために,様々な資料を読み比べたり,話し合ったり
すること
(3)児童の実態の図で示したような段階を経るには,まず,出発点として,児童が考えてみたくなる題材で
あることが必須である。5年生は,社会科や理科,総合的な学習の時間「チャレンジエコライフ」など,他教科・
領域で,自然環境について考える機会を重ねてきた。特に,総合的な学習の時間で多摩川を中心とした環境や自
分自身の生活の仕方について考えてきたことは,当事者意識につながっている。本単元の題材も児童が意欲的に
取り組むものと思われる。
自然遺産に関しては,正の効果と考えられるもの,負の効果と考えられるものがある。
自然遺産の正の効果と考えられるもの
自然遺産の負の効果と考えられるもの
○世間の人々の関心が増し,自然を守ろうとする人々 ○観光客による自然破壊。
が生まれる
・観光客が間接的に運ぶ,外来種の増加。
・そこに住んでいる住人の誇りとなる。郷土愛。
・トイレやごみ問題,交通渋滞の発生,また規制がか
・観光がさかんとなり,地域経済が潤う。
かり,暮らしが不便になる。地域住民の暮らしが落
・観光のために,インフラ整備が進む。特に交通。
ちつかなくなる面もある。
・お金がかかる。配当された予算ではたりない。
これらのことを全て扱うことは時間の面から難しい。全て扱うことで議論が焦点化されずに,情報交換だけで
終わってしまう恐れがある。経済活動の面などは,掘り下げることが難しいであろう。また,実体験に照らし合
わせたときに判断が難しいこともある。交通面を例にとると,
「小笠原諸島に飛行場ができると,そのための自然
破壊が起るが,観光客のみならず島民の緊急搬送の面では有益である」といった局面がある。このようなことか
ら,今回は自然遺産との人の関わり方(上記の表の中でも○の事項)に絞ることとした。また,事例地は,白神
山地,屋久島,知床,小笠原諸島の内,白神山地に絞ることとした。前述のように焦点化するためである。白神
を選んだ理由は,日本で最初に自然遺産に選ばれた場所であり,様々な資料が得やすいためである。実際に過去
20 年間の新聞の投書欄を検索(横浜市「新聞ライブラリー」にて)したところ,白神山地に関する内容が一番多
かった。
自然遺産との人の関わり方について,第1次では,
「自然に入れるようにするべき」という資料と,それに対す
る資料を取り扱うこととする。これにより,敢えて二項対立の形で立場をとらせることとする。注目する文章が
児童によって異なり,ずれが生じる。ずれを機に不安定な気持ちになり,さらに資料を読んで考えたくなったり
(視野を広げてみたくなる,拠り所を探してみたくなる)
,友達と話し合いたくなったり(友達の判断の根拠が知
りたくなる,自分の判断の根拠を伝えたくなる)する。様々な資料が必要であり,友達との交流が不可欠になる
のである。
この気持ちをもとに,第2次では,類似点や相違点など関連性を考えながら,資料同士,資料と自分の考え,
資料と友達の考え,友達Aの考えと友達Bの考え,友達の考えと自分の考えなどを比べることを行っていく。こ
のことによって,自分の考えが広がり,深まっていく。1つないし2つの資料ごとに読んで考えたことを交流す
ることを積み重ね,徐々に自分の考えを形成する過程を大切にしていく。このような過程を通して,何を重視す
るか判断し,条件付きの賛成ないし反対,または折衷案を自分の考えとしていくことを期待したい。
第3次では,各自の考えを文章にまとめ,書いたものを読み合う活動を行う。第2次での話し合いを重ねたこ
とをもとに,
互いの考えの違いを認め合いながら交流することになる。
さらに自分の考えに自信をもつとともに,
さらに考えを広げたり深めたりする姿を認めていく。
本単元では,映像,新聞やHPでの説明的な文章,新聞の投書,リーフレット,憲章など,様々な資料を扱う。
文章や文とそれ以外のものを結び付けて読む面白さや,
複数の文章を読むことが多面的に考えることにつながり,
自分の視野を広げたり考えを深めたりする楽しさを味わうきっかけの1つとしていきたい。進んで読書をしよう
とする気持ちを涵養することが願いである。
上丸子小学校- 50
5.研究テーマに迫るために
研究テーマ
自分を見つめ,共に学び合う子をめざして
~伝える力,受け止める力を育てる授業を求めて~
高学年ブロックテーマ
・目的や意図に応じて,豊かな語彙や表現で,相手へ的確に伝える子
・目的を意識し,伝え手の意図をつかみながら受け止め,比較・関連付けながら自分の考えをまとめられる子
重点①価値付けしたい「目的意識」「相手意識」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【目的意識の表れ例】
【相手意識の表れ例】
もっと資料がな
いと,自分の考
えがまとまらな
い。
もっと資料を読ま
ないと,友達にし
っかりとした根拠
をもって伝えられ
ない。
○○さんは,
どうして,~
と思ったの
だろう。
○○さんのいい
たいことは,~
ってことです
か。
○○については
わかります。し
かし,~につい
ては~。
A.目指す姿を授業者と児童および児童同士が共通理解するための,単元名について話し合う活動
「自分の考えを広げる,深める」の「広げる」や「深める」とは,どのような状態のことか漠然としているイ
メージがある。私自身のとらえは,4.言語活動の欄で述べてきたが,児童自身と共通理解が必要である。また,
自分の考えを広げたり深めたりするために,
「様々な資料を読むこと」や「友達に伝えたり受け止め合ったり」す
ることがどうして必要なのかについても共通理解が必要である。これまでの8か月余りの歳月で,児童と共に創
ってきた5年3組の授業の具体的場面をもとに,単元名について話し合い,目指す具体的な姿がイメージできる
ようにしていく。
B.関心を引き出すための,総合的な学習の時間での学習と結び付けた題材
5年生は,社会科や理科,総合的な学習の時間「チャレンジエコライフ」など,他教科・領域で,自然環境に
ついて考える機会を重ねてきた。特に,総合的な学習の時間で多摩川を中心とした環境や自分自身の生活の仕方
について考えてきたことは,当事者意識につながっている。このような理由から,本単元では自然環境に関連し
て世界遺産の中の自然遺産をテーマとした題材を扱うこととした。
C.児童の考えにずれを生じさせるための,評価がわかれる題材
「やってみたい」
「面白そう」という興味や関心を引き出すことは大切なことだが,その興味や関心の源が見た
目の活動のみに限定されたものであると,
その活動が途切れた途端にやる気を失ってしまうことはないだろうか。
児童が本気になって「読みたい」
「話し合いたい」
「書きたい」と内発的に思う動機付けの1つに,自分の考えと
資料の主張とのずれ,自分の考えと友達の考えのずれが挙げられる。これは,4.言語活動の欄で述べた内容と
関わることである。このずれを生じさせるために,本単元の一次で「自然に入れるようにするべき」という主旨
の資料と,それに対する資料を取り扱うこととした。
(資料の概要については,重点②Aで述べることとする。
)
D.相手意識をより高めるための,各自の考えの配布およびネームプレート使用,誰に影響を受けたかの振り返り
どの教科においても,わからないで困っている友達や,自分とは違う立場の友達など,特に伝えたい相手が誰
なのかを明確にして伝えられるよう,ネームプレートを用いてきた。本単元では,それぞれの時間に臨む各自の
立場をネームプレートで示すことと,それぞれの資料を読んでの各自の考えが特にどの資料を根拠にしているの
かを一覧にして配布する。自分とは異なる意見に関心をもつとともに,それが誰なのかが明確になり,
「○○さん
上丸子小学校- 51
自信あり
人
を
入
れ
な
い
人
を
入
れ
る
の意見を聞きたい。
」という気持ちが湧き上がってくると考えている。同時に,自
分とは異なる意見の持ち主に対して,
「○○さんを納得させたい。
」という気持ち
も湧いてくると考えている。また,授業の振り返りでは,各授業後の時点で自分
がどのような考えかに留まらず,どの資料に影響を受けたかや,誰の発言に影響
を受けたかも振り返るようにする。互いに意見を述べ合うことによって,互いの
考えが広がったり深まったりするよさを感じ取るようにしていく。
自信なし
重点②価値付けしたい「能力目標」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【表れ例】
私は○○の立場
です。資料□の△行
目の~と書かれて
いる所から…。
人を入れる,人を入れないの
どちらかではなくて,まずマナ
ーを守ることだと思う。これは,
資料●の~や資料■の~で…。
「~なら」
「~に
は」
って言うのは限
定するときに使う
から…。
資料◇の▽行
目の~は,資料
☆の 行目の~
が証拠になって
いて…
あっそうか! ~。
それもありかも! ~。
待てよ。だったら~。
やっぱり,▲▲だ! ~。
A.主として視野を広げるための,複数の資料を読み比べる活動の積み重ね
これまでに述べてきたように,1つの資料だけでは,自分の考えが十分にまとまらなかったり,自信がもてな
かったりする。書き手の立場や考え方が,文章に影響されるからである。そこで自然遺産との人の関わり方に関
して,人が入ることに肯定的な立場と見なされる資料,否定的な立場と見なされる資料,両方の立場を兼ね備え
ていると見なされる資料,人を入れるか入れないかという二面的なとらえでは収まらない資料を用意する。最初
の内は,資料を読む度に,児童の考えはゆらぎ,ふり幅も大きくなっていくであろう。その内に,自分の経験と
照らし合わせたり,
資料を関連付けて類似点や相違点に着目したりする中で,
ある程度の考えが形成されてくる。
そうして,ある程度の決まった目で資料を読むようになり,自分の考えもまとまってくるであろう。まずは児童
の考えのゆらぎを大きくすることを念頭に,その後に少しずつ考えが決まってくるよう,資料の提示の順序を吟
味して用いるようにする。以下,扱う資料の概要と,その資料を用いる意図について示す。
[資料1]日本の世界遺産
-「白神山地」約6分抜粋 DVD 株式会社PSG 2004.10.21 発売
・初夏のブナ林の映像。視覚情報から,白神山地の美しさを感じさせることが一番の目的。「行ってみたい。「こんなきれいなところに行ってみたい。」
という気持ちを掘り起こしていく。「ブナ林は利用価値がないとされ,伐採された時代があったが,日本の中である程度まとまって残されている数
少ないブナ林の1つで,日本最大の面積。青秋林道建設が行われたが核心地域手前でストップ。1993 年,そこに棲む貴重な生き物と共に世界遺産に
指定。」などのナレーションから,「自然を守ろう」という気持ちも掘り起こしていく。
[資料2]教えてデスク!世界遺産ってどんなもの
-毎日新聞東京版家庭面 2011 年 6 月 18 日付
・何もしないで放っておいたり人間が開発していくと,壊れてしまったりそこにすむ生き物が滅んでしまうこともある。「そうならないようにみんな
で守りましょう」という約束が,今から40 年ほど前に決められた。「私たち人類が守って,将来に受け継ぐべきだと大勢の人が思うもの」が,最大
の条件。激しく傷つくと登録取り消しに。開発をしないようにしたり,マナーを守った観光をしたりすることが求められる。
上丸子小学校- 52
・世界遺産とはどのように定義付けされたものなのかを知ることを主目的とした資料。マナーについては,他の資料を読み進める中で,クローズアッ
プしていく。
[資料2補足]世界自然遺産の条件
-小学生のための世界自然遺産プロジェクト ユネスコキッズ
http://www.unesco-kids.com/pc/ より抜粋
・世界自然遺産の条件①~④,その条件から保護する必要があることを知るための資料。
[資料3]だれでも入山可の世界遺産こそ
-毎日新聞東京版投書欄 1996 年 7 月 19 日付投書
・立ち入り禁止にして保存しておくだけのものなら,私たちには何の意味もない。「宝の持ち腐れ」だ。ブナ原生林との触れ合いができるようにする
ことこそ,遺産の有効な利用方法。近くに似たような自然博物館を造って入山禁止にするなら,そんな世界遺産なんかいらない。人力を尽くして保
全に努めつつ,人々にも入ってもらってこそ,それで破壊されたというなら仕方がない。
・人を自然に入れる立場の資料。一見,資料4と対をなすように読み取れる。自然に入ることを推奨し,破壊されても仕方がないととれるが,他の資
料を読み進める中で,「尽力を尽くして保全に努めつつ」に改めて注目するようにしていく。
[資料4]まず白神山地の価値を学んで
-毎日新聞東京版投書欄 1996 年 7 月 31 日付
・資料3の考えが,額面通りの考えなら,このような人には入山してほしくない。白神山地に入山うんぬんする前に,まず白神山地の何たるかを学ぶ
必要がある。青秋林道の建設。世界的遺産を後世に残すべく,最初に国家権力に立ち向かったかを。過去無名であったればこそ,白神山地は我々に
多くのものを与えてくれた。観光客がタクシーを連ねて行く所ではない。遺産とは残しておくものであり,娯楽主義,金もうけ主義に利用され,よ
ってたかって破壊し,それでも仕方ないという考えこそ,宝の持ち腐れ。
・「過去無名であったればこそ」から,自然に人が立ち入らない方がよいと考える児童が予想される。一見,資料3と対をなすようで,人を自然に入
らない立場に読み取れる。他の読み進める中で,「このような人には」の「には」や「このような」に注目するようにしていく。
[資料5]世界遺産白神山地ガイドマップ
-リーフレット 白神山地ビジターセンター発行
・白神山地の地図。そこに生きる動植物の写真と説明。「遺伝子の貴重な宝庫」の記述。
・動植物の写真から美しさを感じたり,絶滅危惧種や天然記念物の指定を受けている貴重な生き物がいることを知ったりすることが目的。だからこそ,
資料4のように人を入れずに,自然を守らなければならないと考えを深める児童がいると考えられる。
[資料6]白神の観光客運ぶ林道
-Web 東奥 とうおう写真館 あおもり110山 二ツ森
http://www.toonippo.co.jp/photo_studio/110mountains/shirakami/futatsu/index.html より抜粋
・青秋林道工事中止のため,途中で寸断された道路の写真。建設反対運動が起きたこと。途中まででも道路ができたことで,観光客が年間 300~500
人程度だったのが2万人を数えるまでに増えたこと。わが国の自然保護運動史に歴史的な1 ページ。
・資料4「青秋林道」,「観光客がタクシーを連ねて」を補足するもの。資料5の地図と青秋林道の位置を推測し,建設工事中にブナ林が分断されてい
ったことも捉えられる。人を自然に入れる立場の児童も考えがゆらぐのではと思われる。自然保護運動史の歴史的な1ページであることから,自然
を保護しなくてはと判断していくと考えられる。
[資料7]「自然」に触れ五感培いたい
-毎日新聞東京版投書欄 1997 年 7 月 23 日付
・白神山地の映像を見て,テレビは視覚と聴覚がすべてだとよく分かった。とても美しいこの景色を,遠い場所で見られるのが幸いなのか,五感で感
じられないことが不幸であるのか。身近なもの,自然なものに触れることで培われる五感を駆使する技術が,これからはもっと必要。
・視覚や聴覚だけでなく,においや温度など五感を働かせて自然を感じることの必要性に目を向ける資料。資料3「日本中の,そして世界中の人が,
ブナ原生林との触れ合いができるように」「近くに似たような自然博物館を造って入山禁止にするというのでは,そんな世界遺産なんかいらない」
を補足するもの。実際に,自分たちが白神山地の映像を見ただけの状態であることから,人を自然に入れない立場の児童も考えがゆらぐと思われる。
[資料8]世界遺産白神山地憲章
-青森県庁HP世界遺産白神山地 更新日:2012 年 7 月 23 日 自然保護課
http://www.pref.aomori.lg.jp/nature/nature/shirakami.html
より抜粋
・白神山地は地球上の至宝であり,これを保護して次の世代に伝えるのが人類の責務。白神山地を見つめ,ブナ天然林の静けさに浸り,私たちの新し
い体験を充たす感動を味わい,自分自身を深く考えるチャンスに。尊い遺産が伝えられたことに感謝し,一人ひとりがルールを守り,ブナ天然林の
美しさを残すため,ベストを尽くしましょう。
・「これを保護して伝えるのが人類の責務」の記述とあるのに,「白神山地を見つめ,ブナ天然林の静けさに浸り,私たちの新しい体験を充たす感動を
味わい」という記述に,人を入れる立場の児童は自分の考えに自信をもち,人を入れない立場の児童は考えが揺らぐと思われる。
[資料9]観光客にも白神山地を守る義務-毎日新聞東京版投書欄 2007 年 7 月 18 日付
・資料9補足の事実をがっかりと思う。守る義務を負ったのは地元の方たちだけでなく,私たち。最初はなかった有料ガイドも,ブナの木に落書きが
増え始めたために,導入。ガイドと実際に白神山地を歩き,何とも言えない,ほんわかした空気に包み込まれるような不思議な感覚を体験。いつま
上丸子小学校- 53
でも白神山地が,観光地化されないことを祈る。
[資料9補足] 青森県の白神山地で見つかった,傷つけられたブナ
-47NEWS > 共同ニュース 世界遺産,白神のブナに傷 刃物で20本に数字など
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008093001000321.html より抜粋・再構成
・ブナが約20 本,1文字10~20cm 四方の大きさで,2kmの範囲で傷つけられた事実を伝えるもの。
・実際に自然が破壊されている事実を読み,人を入れない立場の児童は自分の考えに自信をもち,人を入れる立場の児童は考えが揺らぐと思われる。
一方で,筆者は,実際に白神山地を歩いてこそ,感動体験し,観光地化されないことを願うようになったことから,資料8や資料2と合わせ,人を
入れる入れないではなく,マナーやルールが問題であることに注目すると考えられる。そのための方法の1つとして,ガイド付きでの自然ツアーに
目が向く児童もいると思われる。
これらの資料で用いられている漢字で未履修のものは,文字の直後に( )でルビを振ることとした。
また,
「マタギ(昔から伝わり続ける方法で狩猟を行う人々)の自然への考えや関わり方」
「緩衝地域と核心地域」
の資料も用意はしておくが,第2次第4時に話し合うことを通して,多くの児童は自然に入るか入らないかの二
極に分かれるのではなく,
「マタギ(昔から伝わり続ける方法で狩猟を行う人々)の自然への考えや関わり方」
「緩
衝地域と核心地域」で得られる視点を見いだすと考え,計画段階では用いないこととした。
(二極に分かれて固定
化するようであれば,用いることとする。
)
資料にいくつも投書を取り入れたのは,様々な立場があるという事実をつかむことを目的とするとともに,第
3次での読んで自分の考えを広げたり深めたりしたことを文章に書いて交流を踏まえたことも理由である。文章
の構成の仕方に迷う児童が予想される。
「書くこと」イ.
「自分の考えを明確に表現するため,文章全体の効果を
考えること」の指導と関連させ,これまでに用いた4つの投書から,文章の構成を確認して参考にするようにし
ていく。また,引用する際に「 」を用いそびれたり適切な長さになっていなかったりする児童も数名いると考
えられる。
「書くこと」エ.
「」引用したり,図表やグラフなどを用いたりして,自分の考えが伝わるように書く
こと」の指導と関連させ,資料4や7の投書での引用の仕方を参考にしていく。
今回は,書く能力を培うことをねらいとはしていないが,第3次を「自分の意見をまとめて,新聞社に投書し
てみよう」とし,書くに焦点を絞った展開も考えられる素材である。
B.自分の考えの拠り所がどこかを明確にしたり,友達の意見を取り入れて考えを広げたり深めたりするための,アンダーライン
これまでに,椋鳩十の作品群を題材とし,作品群からどのようなことを考えたかを意見交流する学習を行って
きた。そこでは,山場での会話文,行動描写,情景描写,他の言葉に置き換えて比べることでわかる表現の効果
および物語の展開など,着目した優れた描写にサイドラインを引き,自分の考えを形成していった。サイドライ
ンを引くことで,後から見ても何を根拠にしたかが自分自身はっきりするし,そのことをもとに根拠をはっきり
させて友達に伝えることにもつながっていった。本単元では,様々な資料を読むこととなる。賛成できるもの及
びその根拠となる事実と反対できるもの及びその根拠となる事実を色分けしたり,その中でも強く意識したもの
にマークを付けたりするなどして,意識化をはかれるようにする。このような活動は,新たな資料をこれまでの
資料と関連付けて読む際や,友達の意見を聞いて考えを広げたり深めたりする際にも有効に働くと考えている。
C.児童の反応をよりよくつなげるための,必要に応じた前時を各自思考で留める指導計画
1時間の授業の組み立ては,
「①問題意識をもつ ②各自思考する ③集団で話し合う ④振り返りをする」が
多いのではないだろうか。しかし,児童の話し合いをよりよくつなげるためには,この組み立てにとらわれずに,
各自思考で留める必要もあるのではないだろうか。各自思考で留めるよさは大きく2つあると考えている。1つ
目として,1人でじっくりと考える時間の保障が挙げられる。自分の主張あるいは疑問をもっていることは,話
し合いに臨むための必須条件である。
よさの2つ目として,授業者がじっくり児童の根拠やそれをもとにした考えをみとれることである。児童が各
自思考をしている際に,話し合いのある程度の組み立てを想起することはできるが,素晴らしい児童の反応を見
落としてしまうことがある。また,児童の相互指名による話し合いの場合,出番がないまま終わってしまう可能
上丸子小学校- 54
性もある。授業を区切ることで,全ての児童の反応を丁寧にみとることができる。児童の反応が集まっているの
はどの記述か,どの児童の発言をどのタイミングで取り上げれば転換が図れるか(または深まるか)をよく吟味
しながら本時を計画していく。
D.疑問が高まったときに自分が考えたことを即座に伝え合ったり,これまでの話し合いを整理してさらに全体で話し合う
ときの考える視点を個々がはっきりもったりするための,近くの席の児童とのやりとり
重点①の各自思考で留める手立てや,上記のネームプレートの手立てのように,近くの席の児童とのやりとり
も様々な教科で用いている手立てである。小グループの話し合いの効果は,単に停滞している雰囲気を改善した
りリラックスを図ったりするものから,相手意識の向上をねらうもの,本項プロットのような互いの考えを広げ
たり深めたりすることを目的とするものというように,様々な階層が考えられる。原則として,
「互いの考えを広
げたり深めたり」することを目的とした近くの席の児童とのやりとりを行っていく。
そのためには,
・何のために何を話し合うかを,児童が明確に意識していることが必要であり,
・やりとりに入る際のタイミングが重要であると考えている。
a.
「えっ。
」
「どうして。
」
「何で。
」
「それはおかしいと思う」などの?が多くの児童に生まれ始めた時
b.意見がいくつかに大きくわかれた時
c.
「あぁ!」
「それだったら!」などの!が多くの児童に生まれ始めた時
など,児童の反応から見極め,取り入れて行くようにする。
E.価値付けたい表れが見られた際に,より意識付けるための,必要に応じた問い返し発問や板書
本校の研究で用いている「価値付け」とは,国語の能力目標に沿った具体的な児童の表れを認めて意識付けす
ることである。児童の話し合いの中にちりばめられている宝石のような発言は,音声言語であり,意識しなけれ
ば通り過ぎて消え去ってしまうものである。原則,その場で即時,取り上げていかなければ,クラス全体の児童
に意識付けすることが難しい。児童の話し合いを妨げないよう,板書に残していくことを心がけていきたい。ま
た,必要に応じて,ある児童の価値付けしたい発言を捉え,
「今,○○さん,何て言ってた?」と問い返すことも
必要である。児童が繰り返すことで,より児童同士の意識に残るとともに,聞く意識も高まってくると考えてい
る。
特に本単元では,
・資料から根拠を明示
「どの資料のどの部分か根拠がはっきりしているね。
(それって,資料何の何行目?)
」
・着眼点のよさ
「そんなところ(助詞,副詞,形容詞など及び一見見落としがちな事実の記載)にも目を付けたんだ!」
・その着眼点からの考えの形成のよさ
「その文章から,□□のことまで考えたんだ。
」
・資料と資料を結び付けて考えを構築しているよさ
「資料と資料をつなげて考えたんだ。資料○の~の根拠を資料△の~の事実からもってきたんだね。
」
・二極化した内の一極のみの立場ではなく,全ての資料につながると考えられる立場を取り入れ,折衷案を
考えているよさ
「それぞれの立場の納得できるところを取り入れてられているね。
」
・
「あっそうか」
「それもありか」などと考えを広げたり,
「やっぱりこうだ」のように考えを深めたりしてい
るよさ
「納得できるところを友達の意見から吸収しようとして,
自分の考えを広げたり深めたりできているね。
」
などを,児童の話し合いの具合やこれらの能力の定着具合に応じて,価値付けていく。
上丸子小学校- 55
6.指導・評価計画(9時間扱い)
次
時
一
1
評価規準と
☆評価方法
主な学習活動と予想される児童の反応
○教師の支援
1.単元名から本単元の具体的なねらいについ ○「伝える」
「受け止める」
「広げる」
て考える。
「深める」について,これまでの
・
「椋鳩十ワールド」の学習では,椋鳩十さん
積み重ねを想起し,授業者と児童
のいろいろな物語を読んだから,たくさんの
および児童同士の共通理解を得
ことに気付くことができた。
て,目指す具体的な姿がイメージ
・算数みたいだけど,証拠(読むもの)がたく
できるようにするために,単元名
さんあると関係しているところ(類似点や相
について話し合う。
違点など)を比べたりして,より納得できた。
・
「伝え,受け止める」ってことは,言いっ放
しじゃ駄目だし,聞きっぱなしでも駄目。
・NさんとSさんの矢印が行ったり来たりして
いた図のような一回半の関係だよね。
・
「反対意見は聞いている証拠」って言葉もあ
ったね。
・
「椋鳩十ワールド」だけでなく,社会でも算
数でも,友達の意見を聞くと「あぁ!」って
思う瞬間がある。友達が,自分では気付かな
かった意見を言ってくれるときにそう思う。
意見を聞いて,自分の考えに自信がもてる時
もある。
・友達に影響を与えたり,影響を与えられたり
するのって大切だよね。
・1つの文章や友達の意見だけでなく,いくつ
も文章を見たり意見を聞いたりすると「それ
もありか。
」って,自分の考えが広がってい
き,だんだん深まっていくよさがあったよ。
自然遺産について知り,自然遺産との人の関わり方について,最初の自分の考
えをもとう。
1.白神山地の映像,世界遺産の目的および選 ○児童の関心を引き出すため,社会
や理科,総合的な学習の時間等で
考基準の資料を見て,自然の素晴らしさにつ
学んだ自然環境に関する題材を
いて感じたことを話し合う。
扱う。
重点①B
・こんなに自然が豊かな美しいところもあるん
○よりスムーズに単元の学習に取
だ。実際に行ってみたい。
り掛かれるよう,DVD 資料を用い
・世界も認めてくれた自然は無くしたら戻らな
る。世界遺産の目的や選考基準を
い。自然を守りたい。
補完する意味合いから資料2を
配布する。この資料2は,次時以
降の話し合いの拠り所としても
用いるようにする。 重点②A
[資料1]日本の世界遺産-DVD
上丸子小学校- 56
資料3およ
び,それをもと
にして資料4を
読み比べ,文章
には書き手の立
場や考え方に応
じた構成がなさ
れていることを
理解している。
【言】
☆資料3を読ん
でから資料4を
読んでいる時
の,
「逆のことを
言っている」等
のつぶやき,お
よび,その後の
話し合いでの要
旨の違いに着目
している発言。
[資料2]教えてデスク!世界遺産ってどんなもの
[資料2補足]世界自然遺産の条件
2.白神山地に関する2つの投書を読み,入山 ○児童の考えにずれを生じさせる
ため,意見が対立する2つの資料
禁止に反対する立場と肯定する立場がある
(投書)を扱う。資料4について
ことを知る。
は,入山に反対の立場というより
・資料3は,
「立ち入り禁止にして保存してお
は,自然を残そうとしない人には
くだけのものなら,私たちには何の意味がな
入山の立場という限定した内容
い」と言っている。
ととれるが,ここではふれず,次
・
「だれでも入山可の世界遺産こそ」って題名
時以降に他の資料と結びつけて
にもあるように,世界遺産に人が入るように
考える中で気付くのを待つため,
する立場だ。
「似たような自然博物館を造っ
重点①C
て~」とか,その立場での内容も書いてある。 深入りはしない。
・資料4は,
「入山してほしくない」
「観光客が [資料3]だれでも入山可の世界遺産こそ-投書
タクシーを連ねて行く所ではない」と書いて [資料4]まず白神山地の価値を学んで-投書
あるように,資料3と反対の立場だ。
3.資料3と資料4を読み直し,賛成できると ○自分の考えの拠り所がどこなの
かを明確にするために,2つの投
ころ,反対できるところにサイドラインを引
書の文章の中で,賛成箇所に赤ラ
き,
「自然遺産に人が入る」
「自然遺産に人が
イン,反対箇所に青ラインを引く
入らない」についての最初の自分の立場を決
ようにする。余裕がある児童は,
める。
自分の考えを書き込むようにす
る。
重点②B
○意味がわからない言葉が出てき
たときに,すぐに調べられるよ
う,国語辞典を用意しておく。
○「自然遺産に人が入る」
「自然遺
産に人が入らない」のいずれにど
のくらいよっているのか“数直
線”上に示すようにし,本時での
自分の立場を明らかにしておく。
さらに,その根拠がどの資料のど
の部分かがすぐに引用できるよ
う,付箋を貼るようにする。考え
の広がりや深まりを視覚的に振
り返られるように,この数直線は
写真に撮っておく。
重点①D
○児童の反応を授業者がよりよく
把握し,それらをよりよくつなげ
るため,各自思考で留め,話し合
いは次時とする。
重点②C
上丸子小学校- 57
2
自然遺産との人の関わり方について,資料をもとに自分の考えを伝え,受け止
め合い,自分の考えを広げよう。
互いの意見と
その根拠となる
資料3および,
それをもとにし
て資料4の相違
点に着目しなが
ら,自分の考え
を広げている。
【読】
☆最初に数直線
上に示された位
置と2次元座標
に示された位置
の動き。及び,
その根拠(資料
3と資料4の中
で,賛成箇所お
よび反対箇所と
してひかれたサ
イドラインや書
き込み。また,
どちらの資料の
どの部分が根拠
になっているか
を明らかにし
て,自分の考え
を述べている発
言や,それに関
しての発言やサ
イドラインおよ
び書き込み。
)
。
1.入山の可否について考えたことを話し合
い,自分の考えを揺らげる。
・人を入れることに賛成。
「管理者や研究者だ
けが身近に体験できるのでは『宝の持ち腐
れ』だ。
」に納得。
・私も人を入れることに賛成。
「日本中の,そ
して世界中の人々が,ブナ原生林と触れ合い
ができるようにすることこそ,遺産の有効な
利用方法だと思う。
」と書いてある。私も,
白神山地に行ってみたいし。
・ぼくは人を入れることに反対。資料4の一行
目にあるように「
『白神山地にだれでもが入
山でき,それで破壊されるのなら仕方がな
く,宝の持ち腐れよりましだ』とのご意見,
額面通りの考えなら,このような人には入山
してほしくないと思う。
」に賛成。
「破壊させ
るのなら仕方がない」は,間違っている。
・私も人を入れない立場。資料2で「激しく傷
つくと登録取り消しになってしまいます」と
書いてあるし,資料2補足で「絶めつのおそ
れのある貴重な生き物がいる」ってことから
も,人が入らない方がいいと思う。
・ぼくも資料4に賛成気味。
「遺産とは残して
おくものであり,娯楽主義,金もうけ主義に
利用され,よってたかって破壊し,
」って,
双括型になっていて印象に残った。でも,絶
対,資料4に賛成まではいかない。なぜなら,
「白神山地の何たるかを学ぶ必要があるだ
ろう。
」って書いてあることが自分にもあて
はまるし,もっと資料がないと判断できな
い。
・確かに。もっと資料を読んで判断したい。
2.本時の学習を振り返る
・○○さんが注目した「遺産とは残しておくも
のであり」にひかれた。資料4の「青秋林道
の建設で,全滅の運命にあった山地が,どの
ような経緯を経て,世界遺産に登録されたか
を。
」ってところはDVDで説明してあった
けど,あまり覚えていない。文章を読んで判
断したい。
上丸子小学校- 58
○自分と友達の感じ方に違いがあ
ることを意識付け,さらに読み深
めようとする意欲を引き出すた
めに,前時にそれぞれの立場を示
すのに用いた数直線を掲示して
示す。
重点①D
○友達の意見を聞いて納得したり
疑問に思ったりしたこと,および
新たに考えたことなど,サイドラ
インや書き込みを増やすように
する。
重点②B
○文章をもとに考えを形成するた
めに,どの文章に着目したか曖昧
な場合には,「資料何の,何行
目?」
と問い返す。
これによって,
聞き手も文章に戻りながら,友達
の話を聞き,自分の考えをゆらげ
ていけるようにする。重点②E
○一度に様々な場で自分の考えを
広めていけるように,発言に対し
て大きな疑問が生まれたり意見
が大きく分かれたりした際に小
グループでの話し合い活動を取
り入れる。
重点②D
○複数の資料を読む必要性を感じ
させるために,資料2まで戻って
意見を述べていることを認め,全
体に返す。
重点②A
○もっと資料を読みたい気持ちを
引き起こすために,ある程度話し
合ったところで,判断できないで
困っている児童の理由を問い,次
時以降の活動につなげる。
重点②A
○話し合いを終えての自分の立場
をワークシートの2次元座標に
記すようにする。考えの広がりや
深まりを視覚的に振り返られる
ように,この2次元座標は写真に
撮っておく。もっと読みたいこ
と,影響を受けた文章,影響を受
けた発言を振り返るようにする。
・△△さんが言ってた資料3「ブナ原生林(自
然)との触れ合い」って大切だと思う。その
資料がないかな。
重点①D
自然遺産との人の関わり方について,さらに資料を読んで自分の考えを広げた
り深めたりしよう。
二
1
自然遺産との人の関わり方について,さらに資料を読んで自分の考えを広げた
り深めたりしよう。
資料5~7で
掲げられている
事実や筆者の考
えを,資料3や
資料4と結びつ
けて捉え,自分
の考えを広げた
り深めたりして
いる。 【読】
☆前時に示され
た2次元座標か
ら本時末に示さ
れた位置の動
き。及び,その
根拠(資料5~
7に引かれたサ
イドラインや書
き込み。資料4
までの,新たな
サイドラインや
書き込み。
)
。
1.新たに2つの資料を読み,自分の考えを広
げたり深めたりする。
[資料5]について
・
「天然記念物」
「自然環境が良好な地域のみ生
息する」
「氷河期の生き残り」など,貴重な
生き物がたくさんいる。
「遺伝子の貯蔵庫」
なのだから,人が入って破壊されることがな
いようにしたい。
・
「森から恵みを受けて生活してきたマタギと
呼ばれる人々ってどんな人だろ。
」
[資料6]について
・
「それまでは道がほとんど無く,山頂まで3
時間半もかかった。
」
「本県からは果てしなく
遠く,アプローチが容易な秋田県側ですら登
る人がほとんどいなかった」とあって,人が
ほとんど入らなかったから自然が残されて
いた。やはり自然に入らないほうがいい。
・
「観光が主目的だったのはいうまでもない」
「85 年当時は年間の登山者数は 300-500 人
程度だったものが,~世界遺産に指定されて
からは2万人を数え,~」から,急激に人が
立ち入るようになったことがわかる。自然に
悪影響だったのではないか。
・道路が中途半端で終わっている写真があっ
た。
「強力な反対運動」があって,
「秋田県側
の青秋林道は県境から本県側に入ることは
なかった。
」のだから,人の手を入れず,自
然を守らなくてはいけない。資料6を読ん
で,資料4の人の気持ちがわかってきた。
・資料5の,二ツ森の西側の黄色い道路が青秋
林道なのかな。確かに核心地域のそばまで来
ている。人が自然を壊しているとも言える
し,人が自然を壊すのを人が守ったとも言え
るのでは。
上丸子小学校- 59
○自分の考えの広がり具合や深ま
り具合を学習の成果として意識
できるように,また友達がどのよ
うな立場なのかを意識できるよ
うに,前時のワークシートをもと
に2次元座標での自分の立場を
示し直す。
重点①D
○本時以降の目的を確かめるため
に,前時の学習を振り返ってから
新たな資料を配布する。
重点①C
[資料5]世界遺産白神山地ガイドマップ
[資料6]白神の観光客運ぶ林道
[資料7]「自然」に触れ五感培いたい-投書
○意味がわからない言葉が出てき
たときに,すぐに調べられるよ
う,
国語辞典を用意しておく。
「マ
タギ」のように辞典で調べても解
決しない言葉に着目している児
童には,インターネット等での検
索の仕方があることを告げ,休み
時間等に一緒にパソコンで検索
することとする。他の児童の深ま
り具合によっては,その資料を全
員に配布することとする。
○自分の考えの拠り所がどこなの
かを明確にするために,2つの投
書の文章の中で,人を入れること
のプラス面と考えられるものに
赤ライン(入れないべき派は青ラ
イン),人を入れることのマイナ
ス面と考えられるものに青ライ
ン(入れないべき派は赤ライン)
を引くようにする。さらに,自分
の考えを書き込むようにする。
重点②B
[資料7]について
・
「世界遺産の白神山地の映像を見た時,テレ ○迷っている児童には,特に印象に
残った資料や文章はどこかを問
ビは視覚と聴覚が全て」
「五感で感じられな
い,そこから考えたことをもと
いことが不幸」とあった。僕たちもDVDで
に,他の文章や資料についても考
しか見ていないけど,実際の自然はもっと素
えるようにする。
晴らしいのだろな。八ヶ岳自然教室やガサガ
サ探検で自然を感じた僕たちだからこそ,自 ○本時の資料をこれまでに配布し
た資料と関連づけて自分の考え
然を大切にしようとする気持ちがもててい
を広げるようにするために,これ
る。自然を知ることが自然を守ることにつな
までの資料を見返している児童
がるのではないか。
の姿を見いだして認め,全体に広
・資料3の人は「五感で感じられないことが不
める。
重点②A
幸」と言いたいことは同じだったのではない
「には」
か。資料4の人も「額面通りの考えなら」と ○「額面通りの考えなら」
「うんぬんする前に」など条件付
書いてあった。触れ合いを増やすことで,自
けした表現などにも着眼点を広
然への愛着を増そうということが,実は一番
げるために,接続後,語尾,副詞,
言いたかったことなのでは。
助詞などに着目している児童の
姿を見いだして認め,全体に返
[資料6・資料7]を重ねて
す。
重点②Bの前提
・自然を五感で感じてこそ,自然を守れると思
うが,観光客が急激したのは気になる。観光
客の実態は,どうなのだろう。
○読み終えての自分の立場をワー
2.本時の学習を各自で振り返る。
クシートの2次元座標に前時ま
・資料3の人が言いたかったことは,資料7の
「自然なものに触れることで培われる五感」 での位置と比べながら記すよう
にする。もっと読みたいこと,影
とつながる。自然に親しんで愛情をもってこ
響を受けた文章を振り返るよう
そ,自然が守れると思う。資料6に出てくる
にする。
重点①D
人も,そんな人たちだと思う。人が自然に入
った方がいいと思う気持ちが強くなった。
・資料4だけでなく,資料6を読んで,さらに, ○児童の反応を授業者がよりよく
把握し,それらをよりよくつなげ
人が自然に入らない方がいいと思う考えが
るため,各自思考で留め,話し合
強くなった。道路が中途半端で終わっている
写真があった。
「強力な反対運動」があって, いは第2次第4時とする。みとっ
たことをもとに,個々の児童の資
「秋田県側の青秋林道は県境から本県側に
料に次時に読み取る際に注目す
入ることはなかった。
」のだから,人の手を
る視点の示唆を与える。
入れず,自然を守らなくてはいけない。
重点②C
・資料6の「85 年当時は年間の登山者数は 300
-500 人程度だったものが,~世界遺産に指
定されてからは2万人を数え,~」の観光客
の人の様子によるのでは。それがわからない
と判断できない。
上丸子小学校- 60
2
資料8や資料
9で掲げられて
いる事実や筆者
の考えを,これ
までの資料と結
びつけて捉え,
自分の考えを広
げたり深めたり
している。
【読】
☆前時に示され
た2次元座標か
ら本時末に示さ
れた位置の動
き。及び,その
根拠(資料8~
9に引かれたサ
イドラインや書
き込み。資料4
までの,新たな
サイドラインや
書き込み)
。
1.続けて資料を読み,自分の考えを広げる。
[資料8]について
・世界遺産白神山地憲章には,
「白神山地を見
つめ,ブナ天然林の静けさに浸り,私たちの
新しい体験を充たす感動を味わい,自分自身
を深く見つめるチャンスにしましょう。
」と
ある。自然に触れ合ってこそ,自然を守る心
が高まると,世界遺産を保護している団体が
書いてあるから,自然に触れ合うべきだ。
・
「保護して次の世代に伝えるのが人類の責務」
だから,自然は自然のままにして保護した方
がいい。資料6や資料4とつながる。
・
「保護して次の世代に伝えるのが人類の責務」
だから,保護の気持ちが高まり,それを伝え
られるように,自然と触れ合った方がいい。
資料7とつなげられる。
・
「尊い遺産が伝えられたことに感謝し,一人
ひとりがルールを守り,ブナ天然林の美しさ
を残すため,ベストを尽くしましょう。
」だ
から,人が入るかどうかではなく,人の意識
が問題なのではないか。
[資料9]について
・
「確かにブナ林を歩いていると,ブナの実が
大好物のクマのつめ跡と一緒に,人間がナイ
フか何かで傷つけた名前や日付がありまし
た。
」から,クマが生活しているところまで,
人間が面白半分で自然を傷つけている。資料
6であった観光客が増えている影響だ。
「場
合によっては登録抹消される」って資料3の
人は知っているのかな。絶対,人が入るべき
ではない。
・
「確かにブナ林を歩いていると,ブナの実が
大好物のクマのつめ跡と一緒に,人間がナイ
フか何かで傷つけた名前や日付がありまし
た。
」は,自然に入ったからこそ,
「がっかり」
と思う気持ちは人一倍で,それだけ自然を守
ろうとする気持ちが強くなるのだと思う。
「雨が降っているのにブナ林が吸収してく
れてほとんどぬれません。何とも言えない,
ほんわかした空気に包み込まれるような不
思議な感覚を体験しました。
」っていうのも,
実際に体験して自然を好きになったから,大
切にしたいって思うんじゃないかな。
・人が入る,入らないの問題より,まずマナー
上丸子小学校- 61
○自分の考えの広がり具合や深ま
り具合を学習の成果として意識
できるように,また友達がどのよ
うな立場なのかを意識できるよ
うに,前時のワークシートをもと
に2次元座標での自分の立場を
示し直す。考えの広がりや深まり
を視覚的に振り返られるように,
この2次元座標は写真に撮って
おく。
重点①D
[資料8]世界遺産白神山地憲章
[資料9]観光客にも白神山地を守る義務-投書
[資料9補足]青森県の白神山地で見つかった,傷つけられたブナ
○意味がわからない言葉が出てき
たときに,すぐに調べられるよ
う,国語辞典を用意しておく。
○迷っている児童には,特に印象に
残った資料や文章はどこかを問
い,そこから考えたことをもと
に,他の文章や資料についても考
えるようにする。
の問題だと思う。
[資料8・資料9]を重ねて
・要はマナーの問題だと思う。
○「人が入る」
「人が入らない」の
・マナーを学んでからでないと,資料9「人間
二律背反でなく,マナーという観
がナイフか何かで傷つけ」てしまうから,マ
点を見いだした児童は,そのよさ
ナーを事前に学んだ人だけ,自然に入るよう
を認めるが,この段階では全体に
にすればよい。
返さない。また,マナーを学ぶこ
・資料9の「有料ガイド」のように,責任ある
とと人が入る段階,マナーを学ぶ
人と自然に触れ合うようにすれば,資料6の
ための方策等について,資料から
ように自然を五感で感じ,守ろうとすると思
考えるようにする。この段階で,
う。私たちが,賢さんからガサガサ探検を通
全体に返さないのは,第2次第4
して学んだことと同じだと思う。資料4の
時の話し合う活動で,観の転換を
「このような人には」の“には”は,このこ
全体の場で図りたいからである。
重点②C
とが入っていると思う。
2.本時の学習を各自で振り返る。
・資料8の「白神山地を見つめ,ブナ天然林の ○読み終えての自分の立場をワー
クシートの2次元座標に前時ま
静けさに浸り,私たちの新しい体験を充たす
での位置を比べながら記すよう
感動を味わい,自分自身を深く見つめるチャ
にする。マナーに着目し,どこに
ンスにしましょう。
」や資料9「人間がナイ
貼っていいか困っている児童に
フか何かで傷つけ」から,まず,ガイドのよ
は座標外または付箋を貼って条
うな責任のある方と一緒に自然の素晴らし
件付きにすることなどを認める
さを学び,自然に責任をもって入っていく人
が,詳しい事由は書かないように
になるという立場に決めた。
する。第2次第4時の話し合う活
・資料9の「雨が降っているのにブナ林が吸収
動で,観の転換を全体の場で図る
してくれてほとんどぬれません。何とも言え
ための布石とするためである。
ない,ほんわかした空気に包み込まれるよう
重点①D
な不思議な感覚を体験しました。
」や資料6
の立場も分かるけど,資料9の「人間がナイ ○第2次第4時に向けるために,そ
フか何かで傷つけ」るような人がいるから, ろそろみんなで話し合いたいと
いうつぶやきや振り返りの記述
どちらかと言うと,自然には人が立ち入れな
を見いだし,
全体に返す。
ついで,
い方がいい。
そのためには,自分の考えを整理
・資料9の「人間がナイフか何かで傷つけ」る
する必要を感じている児童の反
ような人がいるのは分かるけど,資料6の
応を取り上げ,次時の活動につな
「とても美しいこの景色を,遠い場所で見ら
げる。必要に応じて,個々の児童
れるのが幸いなのか,五感で感じられないこ
のテキストに,次時に読み返す際
とが不幸であるのか」とあるように実体験が
大切だと思う。自然に人を入れた方がいい。 に注目する視点の示唆を与える。
重点②C
友達は,何を根拠にして考えているのだろ
う。
・どっちの立場も納得できる。もう一度,資料
を読み直して決めたい。
上丸子小学校- 62
3
自然遺産との人の関わり方についての自分の立場を決め,これまでの資料を読
み直して,根拠となる部分をはっきりさせよう。
自然遺産との
人の関わり方に
ついて取り上げ
た様々な資料
を,書き手の立
場や考え方に注
意しながら比べ
て読み,関連性
や相違点を意識
しながら,自分
の考えを広げ,
さらに考えを深
め,現時点での
自分の立場を決
めている。
【読】
☆前時に示され
た2次元座標か
ら本時末に示さ
れた位置の動
き。及び,その
根拠(ワークシ
ートに書かれた
決め手となるい
くつかの資料箇
所とそこから考
えたことの記
述)
。
1.改めて資料を読み返し,自分の考えの拠り
所となった文章がどこなのかを確認したり,
さらに根拠となる部分がないかを考えたり
し,各自で整理する。
・資料8と資料9から,まず,ガイドのような
責任のある方と一緒に自然の素晴らしさを
学び,自然に責任をもって入っていく人にな
るという立場に決めたが,これは資料4の資
料4の「このような人“には”
」で,伝えた
かったことだと思う。資料2に「マナーを守
った観光」と書いてあるし,まず,マナーを
守って自然に入ることだ。
・資料9の「人間がナイフか何かで傷つけ」る
が印象に残って自然には人が立ち入れない
方がいいとしたけど,資料5で「遺伝子の貯
蔵庫」と書いてあった。これは資料6で林道
建設を止めたように,これからも守っていか
ねければいけない。資料4の「観光客がタク
シーを連ねて行く所ではない。遺産とは残し
ておくものであり,娯楽主義,金もうけ主義
に利用され,よってたかって破壊」されない
ようにすることが大切だと思う。
・資料7の実体験の大切さ,資料8で自然保護
をする立場の青森県が「白神山地を見つめ,
ブナ天然林の静けさに浸り,私たちの新しい
体験を充たす感動を味わい,自分自身を深く
考えるチャンスにしましょう。
」と書いてい
る事実もある。資料3の「宝の持ち腐れ」も
同じようなことが言いたかったのだと思う。
人々が自然を守る気持ちを高めるために,や
はり自然には入った方がいい。
・資料4を詳しくするのに資料5,6,9があ
ったように,資料3を詳しくするのに資料7
がある。資料2や8はどっちともとれる。ど
ちらかというと人を入れない(入れる)寄り
だけど,自分に気付いていないところがまだ
ありそうだから,自信がもてない。
○自分の考えの広がり具合や深ま
り具合を学習の成果として意識
できるように,また友達がどのよ
うな立場なのかを意識できるよ
うに,前時のワークシートをもと
に2次元座標での自分の立場を
示し直す。考えの広がりや深まり
を視覚的に振り返られるように,
この2次元座標は写真に撮って
おく。
重点①D
○次の話し合いの際に,すぐに根拠
となる文章が提示できるよう,特
に示したい文章の載っている資
料に付箋を貼るようにする。ま
た,ワークシートに決め手になる
いくつかの資料箇所と,そこから
考えたことを書き留めておくよ
うにする。
○資料を読み直しての自分の立場
をワークシートの2次元座標に
前時までの位置と比べながら記
すようにする。
重点①D
○迷っている児童には,どこで困っ
ているかを聞き出し,次時の話し
合いで何に着目すればよいかの
ポイントをはっきりさせる。
○児童の反応を授業者がよりよく
把握し,それらをよりよくつなげ
上丸子小学校- 63
るため,各自思考で留め,話し合
いは次時とする。みとったことを
もとに次時の授業を構成する。必
要に応じて,個々の児童のテキス
トに,話し合いへの示唆を与え
る。
重点②C
自然遺産に,人が入るべきか,入れないべきか,みんなで話し合って,自分の
考えを広げたり深めたりしよう考えよう。
④
本
時
【本時目標】
これまで様々な資料を読んできたことをもとに,どの資料のどの部分から考えたことかを明らかに
しながら(複数の資料を結びつけていることも含む),自分の意見を伝えたり相手の意見を受け止めた
りし,自然遺産との人の関わり方についての自分の考えを広げたり深めたりできる。
自然遺産との人の関わり方について,みんなで話し合って,自分の考えを広げ
たり深めたりしよう。
自然遺産との
人の関わり方に
ついて取り上げ
た様々な資料を
読んできたこと
をもとに,どの
資料のどの部分
から考えたこと
かを明らかにし
ながら(複数の
資料を結びつけ
ていることも含
む),自分の意見
を伝えたり相手
の意見を受け止
めたりし,自然
遺産との人の関
わり方について
の自分の考えを
広げたり深めた
りしている。
【読】
☆前時に示され
た2次元座標か
ら本時末に示さ
れた位置の動
き。及び,その
根拠(振り返り
1.これまで様々な資料を読んできたことをも
とに,どの資料のどの部分から考えたことを
明らかにしながら,自然遺産との人の関わり
方について話し合う。
・私は自然遺産に人が入ることに反対の立場で
す。理由はいくつかありますが,一番は資料
9,6行目の「人間がナイフか何かで傷つけ」
るです。さらに補足には,
「約2キロにわた
る範囲」であることや,
「文字の大きさは 10
-20 センチ4方」と書いてある。こんなこ
とをする人がいるなら,自然には入れられな
い。
・僕も○○さんと同じ立場です。資料6の2枚
目には「85 年当時は年間の登山者数が 300
-500 人程度だったものが,白神が森林生態
系保護地域に指定されてから 2000 人,世界
遺産に指定されてからは 2 万人を数え」とあ
ります。この2万人の中には,資料9のよう
なことをしない人ばかりと断言できないの
で,人を入れるべきではないと思います。
・私は資料6の別のところから,人を入れるべ
きではない理由を言います。写真を見て下さ
い。森の中で急に道路が止まっています。見
方を変えると,道路を造るために森林を壊し
たことがはっきりします。
「秋田側はぐんぐ
ん進み,1987 年にはついに県境まで達した。
しかし秋田県側の青秋林道は県境から本県
側に入ることはなかった。白神保護が決定し
上丸子小学校- 64
○自分の考えの広がり具合深まり
具合を学習の成果として意識で
きるように,また友達がどのよう
な立場なのかを意識できるよう
に,前時のワークシートをもとに
2次元座標での自分の立場を示
し直す。考えの広がりや深まりを
視覚的に振り返られるように,こ
の2次元座標は写真に撮ってお
く。
重点①D
○始めは意図的に指名していくが,
児童の気持ちが高まってきた辺
りで自然に相互指名に切り替え
ていく。ただし,視点を変えたり
より深めたりするつぶやきがあ
ったときや,観の転換を図りたい
ときは,前時までのみとりをもと
に授業者が発言者を指名する。
重点②C
○友達の意見を聞いて納得したり
疑問に思ったりしたこと,および
新たに考えたことなど,サイドラ
インや書き込みを増やすように
する。
重点②B
○必要に応じて,複数の資料を結び
でのワークシー
たからだ。
」とあるように,自然保護運動の
トに書かれた,
成果として人を入れないべきです。
決め手となるい ・資料6で造った道路が白神山地の中でも大切
くつかの資料箇
な所まで自然破壊してしまったことは,資料
所とそこから考
5の写真がある方の地図からでも分かりま
えたことの記
す。二ツ森は緑色の部分だけど,すぐそばま
述)
。
で,黄色の道が来ています。資料5の通りだ
と思います。
・同じ資料5では,いろいろな種類の天然記念
物がいることが分かります。右下の文章に
「遺伝子の貯蔵庫」と書かれているように大
切な所なので,資料9のように「ナイフか何
かで傷つけ」る人がいる以上,人は入れない
べきです。資料2の1枚目で,で「みなさん
も,宝ものや大事にしているものがあります
よね。それがなくなったらショックでしょ
う。
」と書いてあるのに同感です。
・私は,逆に人を入れる立場です。皆さんが注
目している資料9ですが,
「雨が降っている
のにブナ林が吸収してくれてほとんどぬれ
ません。何とも言えない,ほんわかした空気
に包み込まれるような不思議な感覚を体験
しました。世界遺産になっても場合によって
は登録抹消されることを初めて知りました。
いつまでも白神山地が,観光地化されないこ
とを祈ります。
」という文章も書いてありま
す。これは,実際に自然遺産の白神山地に行
った人だからこそ書ける文章です。自然を守
るには,自然に入って体感してもらう必要が
あると思います。
・僕も△△さんと同じ立場です。今の話は資料
6の「とても美しいこの景色を,遠い場所で
見られるのが幸いなのか,五感で感じられな
いことが不幸であるのか」
「身近なもの,自
然なものに触れることで培われる五感を」と
いう部分に関係します。実際に,自然にふれ
る経験が少なく,感動できていない人が,自
然を破壊するのだと思います。だからこそ,
自然に入ることが必要だと思います。
・資料3は最後の方の文章は言いすぎでよくな
いと思うけど,一番言いたいことは,
「立ち
入り禁止にして保存しておくだけのものな
ら,私たちには何の意味もない。管理人や研
究者だけが身近に体験するのでは『宝の持ち
腐れ』だ。日本中の,そして世界中の人が,
上丸子小学校- 65
つけて自分の考えを形成してい
る児童の表れを価値付け,資料と
資料を結びつけて話すようにす
る。
重点②E
ブナ原生林との触れ合い(ふれあい)ができ
るようにすることこそ,遺産の有効な利用方
法だと思う。
」の部分だと思う。これは資料
6や9の考えとつながっていると思う。
・私も△△さんと□□さんと同じ立場です。資
料8の「自然の不思議さに耳を傾けましょ
う。
」
「白神山地を見つめ,ブナ天然林の静け
さに浸り,私たちの新しい体験を充たす感動
を味わい,自分自身を深く考えるチャンスに
しましょう。
」という文章は,自然に入るこ
とを呼びかけている文章だと思います。文章
を出しているところは,
「自然保護課」とな
っていることから,自然保護に責任ある人も
呼びかけているのだから,自然に入った方が
自然を守る気持ちが高まっていい。
・でも,実際に資料9のように,自然を破壊す
る人もいるよ。
・僕は,自然に人を入れる入れないの前に,マ
ナーということが大切だと思う。同じ資料8
に「尊い遺産が伝えられたことに感謝し,一
人ひとりがルールを守り,ブナ天然林の美し
さを残すため,ベストを尽くしましょう」と
ある。
・確かに。資料2の2枚目にも「マナーを守っ
た観光が求められます」と書いてあった。
・資料4の「このような人には入山してほしく
ない」は「には」と限定されているし,
「こ
のような」の部分はマナーを守れない人を指
しているとも考えられるね。
・マナーを守るのが必要なことには納得。でも,
それって,マナーを守ってから自然に入れる
ってこと,それともまずは自然に入れてから
マナーを身につけるってこと?
・さっきの繰り返しになってしまうけど,資料
7にあるように,実際に体験することで自然
を大切にしよう,マナーを守ろうとする気持
ちが湧いてくるはずだ。
・いや,それでは,納得できない。
・資料9に「宿の方のガイド」
「有料ガイド」
と書いてあった責任ある自然に詳しい人と
一緒に自然に親しむことが大切なんだと思
う。
・資料4や資料6のような自然保護運動をした
人がガイドをするのもいいと思う。自然の大
切さを伝えながら,自然の素晴らしさを伝え
上丸子小学校- 66
○児童の読み取りの深さに応じて,
接続後,語尾,副詞,助詞などに
着目している児童の姿を価値付
けし,
「額面通りの考えなら」
「に
は」
「うんぬんする前に」など条
件付けした表現などにも着眼点
を広げることを改めて意識づけ
る。
重点②Bの前提
○まずは,入れる入れないの二項対
立で進めるが,こう着状態になっ
た辺りで,マナーに着目した児童
を意図的に指名する。重点②C
○文章をもとに考えを形成するた
めに,どの文章に着目したか曖昧
な場合には,「資料何の,何行
目?」
と問い返す。
これによって,
聞き手も文章に戻りながら,友達
の話を聞き,自分の考えを広げた
り深めたりしていけるようにす
る。
重点②E
○一度に様々な場で自分の考えを
広げたり深めたりできるように,
発言に対して大きな疑問が生ま
れたり意見が大きく分かれたり
した際,柔軟に短時間での小グル
れば,よいと思う。マナーを守るというより,
マナーを学びながら,自然に入るという立場
だ。
ープでの話し合い活動を取り入
れる。
重点②D
○話し合いを終えての自分の立場
2.本時の学習を振り返る。
をワークシートの2次元座標に
・今まで真ん中辺りの立場にいる人の考えの根
記すようにする。考えの広がりや
拠が分からなかったけど,マナーに着目して
深まりを視覚的に振り返られる
いることが分かり納得した。もともと自然に
ように,この2次元座標は写真に
入った方がよいと考えていたけど,責任ある
撮っておく。
重点①D
人とマナーを学びながらという◇◇さんの
意見に納得。今までは,◇◇さんの言った資
料9の部分をあまりよく考えていなかった。 ○「人が入れる部分と人を入れない
部分」
「責任ある人とマナーを学
・確かに資料4の「このような人には」の意味
びながら」の観点に関する資料を
は,▽▽さんの言うようにもとれる。
ただ「過
読んでから,また話し合いたいと
去無名であったればこそ,白神山地は我々に
いう声が上がれば,
「マタギ」や
多くのものを与えてくれた」と書いてあるこ
「緩衝地域と核心地域」に関する
とは,資料6の「85 年当時は年間の登山者
資料を用意し,さらに資料を読
数が 300-500 人程度」や資料5でのいろい
み,話し合う時間を設ける。
ろな種類の天然記念物がいることからも分
重点②A
かるから,やっぱり人を入れない立場だ。
・人を入れることに賛成の立ち場だったけど, ○考えたことを書いて,じっくり吟
味しながら伝え合いたいという
資料5の「遺伝子の貯蔵庫」という言葉には
気持ちを引き出すために,話し合
注目していなかった。人が入れる部分と人が
って新たに考えが広まったり深
入れない部分に分けるという方法もあるん
じゃないかな。もう一度,よく考えてみたい。 まったりしたことや,もう少し反
芻したい友達の意見について振
り返るようにする。
三
1
自然遺産への人の関わり方についての,自分の考えを文章にまとめよう。
1.自分の考えを短く表し,主張することの中 ○主張したいことの中心が定まら
心を意識する。
ない児童には,2次元座標で自分
・指導してくれる人のもと,マナーを学び,自
の位置を決めた根拠を問い,意識
然に入ることで愛着を湧かせ,自然を守る人
化できるようにする。
に。
・まずマナー。それから自然に入るべき。
・自然がありのままで残るよう,静かに見守る
べき。
2.主張したいことがよりよく伝わるような文 ○文章の構成の仕方に迷う児童が
章の構成の仕方を,投書の文章の構成から学
数名いることが予想される。
「書
ぶ。
くこと」イ.
「自分の考えを明確
・資料3のように,現状認識→それに対する自
に表現するため,文章全体の効果
分の考え,
「宝の持ち腐れ」のようなキーワ
を考えること」の指導と関連さ
ードを繰り返して印象深くする。
せ,これまでに用いた4つの投書
上丸子小学校- 67
・資料4のように,まず自分の立場を示してか
から,文章の構成を確認し,参考
ら事例を挙げ,最後に再び自分の立場を強く
にするようにする。
主張する構成にしよう。
○引用部分に「 」を用いていなか
・資料6のように,具体的な言葉を引用するの
ったり,適切な長さになっていな
も説得力が増す。
い児童には,
「書くこと」エ.
「」
・資料8のように,参考にした文章があること
引用したり,図表やグラフなどを
を示したり,自分の体験を入れたりするのも
用いたりして,自分の考えが伝わ
いい。
るように書くこと」の指導と関連
させ,資料4や7の投書での引用
の仕方を参考にするようにする。
2
自然遺産との 3.2次でワークシートに書いた影響を受けた ○これまで毎時間,資料を読んだり
人の関わり方に
文章,友達の発言をもとに,文章の構成を考
友達と話し合って資料を読み返
ついて,様々な
え,文章に表す。
したりしてワークシートにその
資料を比べて読
都度の考えを記述したことを参
んだり友達と交
考にして,書くようにする。
流したりして考
えを広め,深め
たことを,進ん
で文章に表わそ
うとしている。
【関】
☆様々な資料を
読み返し,進ん
で文章を書いて
いる姿。
3
自然遺産との人の関わり方について,一人一人が書いたものを読み合い,その
文章から考えたことを伝え合って,さらに自分の考えを広げたり深めたりしよ
う。
自然遺産との
人の関わり方に
ついて,様々な
資料を比べて読
んだり友達と交
流したりした結
果書かれた文章
を読むことが,
考え方の様々な
違いを見いだせ
る喜びがあるこ
とを感じ,進ん
で読もうとした
1.互いに書いた文章を読み合い,文章を読ん ○第2次終了後の2次元座標を掲
で考えたことを伝え合う。
示しておき,それぞれの立場をも
とに,読み合いたい相手を決める
ようにする。
重点①D
○友達の文章を読んで考えたこと
を付箋に書き込み,交換し合うよ
うにする。
2.本時の学習を振り返る。
・自分と似ている立場の人の文章でも,根拠に
している部分が全く同じではないので,文章
を読んで,考えがさらに深まった。
・みんなで話し合ったときも感じたけど,根拠
上丸子小学校- 68
り伝え合ったり
しようとしてい
る。
【関】
☆友達の書いた
文章をいくつも
読んでいる姿,
読んで感じたこ
とを伝え合って
いるときの前の
めりになってい
る姿など。
にしている資料が,皆,それぞれ。同じ資料
を根拠にしていたとしても,そこから考えた
ことが様々。違う立場の人の文章を読むとさ
らに考えが広がった。話し合いと違って,文
章に残っているから,自分のペースでじっく
り読める。
上丸子小学校- 69
第6学年 国語科学習指導案
授業者 笹川 新之助・篠崎 聡美
1.日 時
平成24年12月12日(水) 第5校時 (13:40~14:25)
2.場 所
6年1組教室 6年3組教室
3.単元名
自分×物語×友達⇒広がる・深まる ~そして新たな自分の発見へ~
「海の光」「黄色いボール」「海の命」
4.単元について
(1)単元目標
◎「海の光」
「黄色いボール」
「海の命」などの物語文を読み,主人公の生き方・それを支える周囲の人物や事物
の存在について考えたことや感じたことをまとめ,発表し合い,自分の物語に対する考えを広げたり,深めた
りできる。
○登場人物の相互関係や心情の変化,場面についての描写をとらえ,叙述(物語の展開から導き出される結末)に
ついて自分の考えをまとめることができる。
(2)評価規準
国語への関心・意欲・態度
読む能力
言語についての知
識・理解・技能
・登場人物の心情や情景描写を表 ・登場人物の相互関係や心情の変化,場面についての描 ・語感,言葉の使
す言葉に疑問をもったり心に残
写をとらえ,叙述(物語の展開から導き出される結末)
い方に対する感
したりするなど物語に興味をも
について自分の考えをまとめている。
(1)エ
覚などについて
って読もうとしている。
・「海の光」「黄色いボール」「海の命」などの物語文
意識して文章を
・物語の最終場面を創造するこ
を読み,主人公の生き方・それを支える周囲の人物や
読んでいる。
とで自分が学んだことを生か
事物の存在について考えたことや感じたことをまと
(1)イ(カ)
し,家族に最終場面を考えさ
め,発表し合い,自分の物語に対する考えを広げたり,
せるような,文章を書こうと
深めたりしている。
(1)オ
している。
(3)児童の実態
~「伝える力・受け止める力」に関わりのある学習指導要領国語編(高学年)事項~
「読むこと」オ.本や文章を読んで考えたことを発表し合い,自分の考えを広めたり深めたりすること。
「読むこと」エ.に関して,重松清の「カレーライス」,宮沢賢治の「やまなし」などの物語文を通して,物語を読む
ときの中心となる登場人物について,その周囲をとりまく環境をとらえ,それらに基づいて心情や場面の描写をとらえる
ことを学習してきた。場面の展開に即して,変化する気持ちをとらえるだけでなく,登場人物の相互関係から人物像やそ
の役割をとらえ,そのことによって内面にある心情をとらえていくように指導を行ってきた。さらに「読むこと」エ.の
能力をもとにして「読むこと」オ.の能力に関わることに対して以下のように積み重ねてきた。
5年生では
題材「大造じいさんとガン」
「この物語のクライマックス場面(山場)はどこになるのか。」という課題で,児童たちが自分の山場を明確にし,
今までの読みを生かし,物語の山場に対する考えとその根拠を話し合ってきた。この学習を通して,児童は物語の読み
を広げたり深めたりすることの喜びを少しずつ感じ取り,それぞれの解釈の違いを認められるようになってきた。
上丸子小学校- 70
題材「わら靴の中の神様」
「中心人物はだれか,クライマックス場面(山場)はどこになるのか。」という課題で,児童たちが今までの読みや
叙述を根拠に自分の考えをまとめ,交流した。この学習を通して,物語は着目する登場人物の行動や会話,相互関係,
情景描写などが違うと,中心人物やクライマックスという考えが人それぞれに違い,読みを広げる楽しみが感じられる
ようになってきた。
6年生では
題材「カレーライス」
作者の描く主人公の心情の変化を登場人物との関わりをもとに主人公の人物像をとらえてきた。その中で,自分の体
験と重ねながら読み,主人公のとる行動に共感したり,疑問を抱いたりする姿が見られた。さらに,立場を変えて読む
こと(父親に視点をあてる)で物語を多面的にとらえることが少しずつできるようになってきた。
題材「やまなし」
宮沢賢治の描く独特の世界を生み出す比喩表現や擬声語,擬態語,色彩語を味わったり,それを挿絵と重ねたりしな
がら読む姿が見られた。また,それぞれに想像できる情景やそこに書かれている文章表現が何を示しているのかを「イ
ーハトーブの夢」で読み取った賢治の生き方と重ねて児童が想像し,それを話し合うことで,児童が「やまなし」に対
しての読みを深めることができた。
(4)言語活動
自分の読みを広げたり深めたりするために,テーマ(葛藤・支え・成長・家族)に沿った様々な本や文章を読み比
べ,最終場面を創造する言語活動
本単元の言語活動は,学習した3つの物語の中から1つを選び,これまでの自分の読みを反映させ,保護者に最終場面
を創造させることを行う。(この項の第3次に関する記述参照)今まで自分が最終場面を描くために学んできたことを生か
した言語活動をしてほしい。そのためには自分がまず物語と向き合い,そして友達の考えから自分の考えを広げる・深め
ることが大切であると考える。
その力を育むために
第1次では,緒島英二作「海の光」〔小学校国語三年上 学校図書 ※平成22年度まで掲載〕の教材を扱う。児童には
最終場面を見せず,最終場面を児童が創造した上で作品と出合うようにする。この作品は,主人公である「ぼく(ふみや)」
が,家の環境が弟中心に変化していることや弟が生まれるまでおじいちゃんの家に預けられたことで両親に対して不信感
をもち,その思いが,生まれてくる弟へも転化する。おじいちゃんとの様々な会話や出来事を通してふみやの心は徐々に
解放され,お兄ちゃんになる自負心をもつ。読者の目に見える成長の姿が描かれた物語文である。児童は最終場面を今ま
での読みを生かし,叙述に基づきながらふみやの心の成長を描くだろう。そして作者の描いた結末にも納得することがで
きる児童が多いのではないか。今まで児童が出会った様々な物語やドラマと同様の展開が用意されているため「ふみやの
成長がわかりやすかったし,みんなの描いた結末や作者の描いた結末にも納得することができた」「キーワードに注目し
て最終場面を考えることが大切」という児童の声を価値付けしていきたい。
次に,立松和平作「黄色いボール」〔小学校国語四年下 東京書籍 ※平成11年度版〕の教材を扱う。この作品は「海
の命」と同じ作者である立松和平の作品である。分量も短く,また難しい言葉も少ないために6年生の児童であれば短時
間で大体の内容を把握できる。しかし,本文の終末を隠すことによって叙述から様々な想像ができ,他者とのずれが生じ
やすい作品である。この物語は,タロウ(犬)の行動から心情の移り変わりが読み取りやすい。さらに情景描写としての空,
風,街の様子などが多く書きこまれており,そこからもタロウの孤独感や喪失感がうかがえる。途中には,黄色いボール
を必死に守ろうとするタロウの姿も描かれている。しかし,終末に向かうにつれてペンキや芝生をはじめ,真新しい世界
がタロウを出迎える。児童は無意識のうちにその明るい世界に幸せやハッピーエンドを想像するだろう。
だが,作者の描く最終場面は児童が考えるハッピーエンドでは幕を閉じない。ここに児童の戸惑いや疑問が生まれる。
作者はなぜ黄色いボールを小屋の中にしまい,パパに返そうとするタロウを描いたのか。今までの読みをもう一度振り返
り,友達の考え(着目している叙述)など,1つ1つの言葉や文章に注目しながら自分の考えを形成してほしい。
上丸子小学校- 71
第2次で扱う「海の命」は,立松和平の「命」シリーズの一冊であり,長年教科書に掲載されている作品である。この
物語の最終場面を児童が描くために,主人公(太一)が,父に思いを寄せ,母の思いを背負い,与吉じいさに導かれ,父を
しのぐ「村一番の漁師」に成長するプロセスを読み取った上で,結末で人間としても「一人前」に成長する姿を読み取っ
ていく。その中で,クエを打つことが太一の成長につながるのか,打たないことが成長につながるのかを議論する場面が
出てくる。「海の命」での作者の描く結末は衝撃的な出来事(クエと出会いそのクエを打たない)を起こさないことによっ
て幕を閉じる。児童たちが作品をどのようにとらえるのか。様々な観点から作品をみてほしいと思う。「母に着目する児
童」,「クエの存在に着目する児童」,「与吉じいさに着目する児童」,「漁師にとって海とはどのような存在かに着目
する児童」,自分が着目しなかった言葉から考えを導いた友達を認め,その友達の考えを吸収できる力を育てていきたい。
また,作者の結末に対して自分たちの結末や文章中の表現を根拠にして考えを述べ合い,物語全体に対しての読みを深め
ていく。今までの学習を生かし,児童が自信をもって自分の読みを語れる姿を期待したい。
そして第3次では,
物語の最終場面を創造することで自分が学んだこと(最終場面を創造するためには物語全体
をとらえ,1つ1つの言葉に着目する力が必要となる)を生かし,家族に最終場面を考えさせるような,文章を書
く。なぜ,そのような結末を創造したのか。自分なりの根拠をはっきりさせた上で家族にプレゼンをする。自分
の学びを発信し,そして家族からの考えを受信することで,これまでの児童の受動的な読みから能動的な読みに
転化していってほしい。
本単元では,最終場面を児童が創造した上で作品と出合うようにする。それによって,これまでどのような物語文を読
み,どのように物語文と接してきたかを自覚し,物語に対する見方を広めることができる。正解がないことに対して不安
に思う児童ではなく,それを楽しめる児童になってくれればと願う。
5.研究テーマに迫るために
研究テーマ
自分を見つめ,共に学び合う子を目指して
~伝える力・受け止める力を育てる授業,具体的な児童の表れを求めて~
高学年ブロックテーマ
・目的や意図に応じて,豊かな語彙や表現で,相手へ的確に伝える子
・目的を意識し,伝え手の意図をつかみながら受け止め,比較・関連付けながら自分の考えをまとめられる子
重点①価値付けしたい「目的意識」「相手意識」の具体的な表れと,引き出すための手立て
【目的意識の表れ例】
【相手意識の表れ例】
こんな中途半
端な終わり方
ってあるのか
な。
どんな最
終場面に
なるのだ
ろう。
どうして○○さ
んはこのような
最終場面にした
のだろう。
上丸子小学校- 72
○○さんは違
う立場だから,
自分の考えを
伝えたい。
○○さんがどん
な考えをもって
いるのか聞きた
い。
A.児童のずれを生じさせ目的意識や相手意識を高めるための,最終場面を創造する活動
今回は,小学校最後の文学的な文章を読む単元で,児童に「1つ1つの叙述に着目し,根拠をもって自分なり
の考えをまとめる」
「まとめた考えを友達と交流することによって,
,
今まで気付かなかった読みや考えに気付き,
自分の考えを広げたり深めたりする」力を身に付けさせたいと考えている。そのためには,児童が本気になって
考えたり,友達の考えを聞きたくなったりする手立て(仕掛け)が必要である。そこで本単元では,3つの文学
的な文章を取り扱う。そして,その最終場面は児童が創造してから出合うようにする。最終場面を創造すること
で,着目する叙述や考えの根拠が児童によって異なり,ずれが生じる。それは,自分の根拠を伝えたくなったり,
相手の根拠を聞きたくなったりすることにつながると期待している。
(4)でも述べたが,この単元では物語の最終場面を創造することで自分が学んだこと(最終場面を創造するた
めには物語全体をとらえ,1つ1つの言葉に着目する力が必要となる)を生かし,家族に最終場面を考えさせるよ
うな文章を書くという言語活動を行う。しかし,文章の構成の仕方に迷う児童が予想される。
「書くこと」イ.
「自
分の考えを明確に表現するため,文章全体の効果を考えること」の指導と関連させ,自分が着目した言葉やそれ
を根拠として最終場面を描いたワークシートを振り返ったり,映画の宣伝や本のポップを提示し文章の構成を参
考にしたりする支援を考えている。
B.相手意識をより高めるための,各自の考えの配布・板書およびネームプレートの使用
友達がどのような考えをもっているのか,自分が深く考えれば考えるほど知りたくなる。本単元では,各自の
最終場面に対する考えに名前を入れて配布する。自分の考えと比べることで,共通点や相違点を見つけたり,自
分とは異なる考えに関心をもち
「聞きたい」
「根拠をもっと知りたい」
という気持ちになったりすると考えている。
また,同時に自分とは異なる意見の友達に「○○さんに自分の考えを伝えたい。
」という気持ちも湧いてくると考
える。
授業では,発言をした児童の名前とその意見を板書する。誰の考えとどこが似ていて,どこが違うのかをはっ
きりさせることで,児童が前の意見と比べながら自分の意見を述べるようになっている。また,振り返りをする
時に,誰の考えで自分の考えが変化したのかをはっきりさせることにもつなげていきたい。
重点②価値付けしたい「能力目標」の具体的な表れと,引き出すための手立て
本単元は,文学的な文章を題材にしての「オ.本や文章を読んで考えたことを発表し合い,自分の考えを広げたり深め
たりすること。」を最終的な能力目標とした指導である。この指導にあたっては,「エ.登場人物の相互関係や心情,場
面についての描写をとらえ,優れた叙述について自分の考えをまとめること。」の能力の育ちが前提となる。そこで,本
単元は3つの物語を取り扱い,最終場面を創造する意図的な手立て(仕掛け)により,1つ1つの叙述に目を向け自分の
考えをまとめ,それを友達との交流により広げたり深めたりする指導を繰り返すことで力を身に付けさせていく。
【表れ例】
最終場面には,こ
の人物やこの言
葉が関わってく
ると思う。
最終場面を創造して交流する
と,自分にはない友達の考えが
聞けた。私は違う考えだけど,
○○さんの見方で考えると,確
かにそうだなと納得できた。読
む観点を変えると色々感じるこ
とができた。
主人公の行動や会話には赤マ
ーカー,関わってきそうな人
物の行動や会話には青マーカ
ーを使おう。
最初は作者の描いた最終
場面に納得できなかった
けど,友達の考えを聞い
てもう一度読んでみた
ら,納得するところもあ
った。
上丸子小学校- 73
○○さんは同じ言葉に着目
したのに,最終場面が違う
のか。他にどんな言葉に着
目したのかな。
私の考え方以外にもいろ
んな考え方ができること
がわかり,みんなもすご
いと思ったけれど,作者
のこの物語自体もおもし
ろい。
A.自分の読みを広げたり深めたりするための,最終場面を創造し自分の考えをまとめたものの交流
重点①のAでも述べたが,本単元では,最終場面を児童が創造した上で作品と出合うようにする。この手立て
の効果は,大きく二つ期待している。
・最終場面を創造し自分の考えをまとめるために,1つ1つの優れた叙述に目をむけて何度も読む。
・最終場面に対する考え方,目を向けた叙述やその価値はいくつもあり,それが自分の読みを広げたり深めたり
することにつながる。
という効果である。
『海の光』や『黄色いボール』は,教科書に載っていない題材である。児童にとって初めて出合う物語であろ
う。それに対し,
『海の命』は教科書に載っている題材である。もう既に読んでいる児童もいるかもしれない。し
かし,そこには新しい発見が生まれる。もう既に読んでいる児童は,丸ごと読んだ上で,作者の最終場面に対し
て「なるほど,太一はクエを打たなかったのか」と【納得】する場合もあれば,
「なぜクエを打たなかったのかが
わからない」と【抵抗】する場合もあるだろう。読んでいない児童の「こうなるだろう」という【予想】や「こ
うなってほしい」という【願い】
,並びに,読んでいる児童の【納得】や【抵抗】を交流することによって,児童
は自分にない考えや価値観に出合う。それが自分の読みを広げたり深めたりするチャンスである。これまでどの
ような物語を読み,どのように接してきたかを自覚し,物語に対する見方を広げたり深めたりしてほしい。
B.物語の最終場面を創造し自分の考えをまとめ交流するための,マーカーペンの使用と本文への書き込み
交流するためには,まず自分の考えをまとめていることが前提となる。物語の最終場面を創造し自分の考えと
してまとめるためには,1つ1つの優れた叙述に目を向けることが重要である。そこで,まず会話文や行動描写,
情景描写などの優れた叙述に着目してマーカーペンでラインを引くようにする。そして登場人物の心情や情景,
人物相互の関係を捉え,本文へ感じたことや考えた事を書き込みながら自分の考えをまとめることにつなげてい
きたい。まず初めに『海の光』を読み取る。ここでは,マーカーペンでラインを引く観点をいくつか絞って,何
に着目したらよいのかが意識できるよう支援したい。次に,
『黄色いボール』では,観点を提示しながら,児童が
考えてもよいこととする。そして,
『海の命』では,マーカーペンでラインを引く観点は児童自身が決めるように
する。物語の最終場面を描くためのキーワード(行動・会話・情景描写など)になる言葉は何かを考え,能動的
に文章を読む力をはぐくみ,自分の考えをまとめた上で交流するようにしたい。
※各自思考で自分が着目した叙述にはマーカーペンを用いる。
C.自分の読みを広げたり深めたりするための,友達の意見を受けてのサイドラインや本文への書き込み
物語の最終場面を描くとき,様々な観点から物語を読み取る児童がいる。今までの自分になかった観点に出合
うことは,読みを広げたり深めたりするためのチャンスである。
「母に着目する児童」
「クエの存在に着目する児
童」
「与吉じいさに着目する児童」
「漁師にとっての海とはどんな存在かに着目する児童」など,自分が着目しな
かった言葉から考えを導き出した友達を認め,その考えを吸収できる力を育てていきたい。そのために,自分に
なかった観点で共感したり納得したものに対して,本文にサイドラインをひいたり,友達の意見をメモしたりす
る姿は積極的に価値付けしていきたい。
※友達との交流を通して,自分の考えの根拠となる叙述が増えた場合はサイドラインを用いる。
D.児童の反応をよりよくつなげるための,必要に応じた前時を各自思考で留める指導計画
国語の学習だけでなく他教科でも,まずは自分の考えを表出することを児童に伝えてきた。そのために,自分の考えた
こと,その理由がどこにあるかを書く活動と時間を保障し,自分の考えを明確にして話し合いを進めていくようにしたい。
また,この活動を前時で留めることによって,授業者がじっくり児童の考えや根拠をみとれるというよさがある。児童が
各自思考をしている際に,全ての児童の反応をみとることは難しい。また,相互指名による話し合いの場合,出番がなく
終わってしまう可能性もある。基本的には相互指名で話し合いを進めるが,児童の反応をよりよくつなげ出番を増やすた
めに,適宜意図的な指名を用いる。さらに,児童の反応が集まっているのはどの叙述か,どの児童の発言をどのタイミン
グで取り上げれば深まりがでるかなども吟味しながら本時を計画していく。
上丸子小学校- 74
次
時
一
1
評価規準と
☆評価方法
主な学習活動と予想される児童の反応
○教師の支援
海の光を読み,登場人物の関係や心情の変化をとらえるためにマーカーの使い方
や本文への書き込みを工夫して読み取ろう。
登場人物の
心情や情景
描写を表す
言葉に疑問
をもったり
心に残した
りするなど
物語に興味
をもって読
もうとして
いる。
【関】
☆物語を自分
がどのように
考えているの
か,結末に対
してどのよう
に考えている
のかのワーク
シートへの記
述や発言。
2
1.
「海の光」を読み,自分で最終場面を描くこと
を意識して物語を読み取っていく。
・なんか終わり方が,中途半端
・納得いかない。
・最後に主人公の心情が書かれていない。
・最後弟に対して何もしてないのはおかしい。
2.海の光を読み深め,最終場面を描くために注目し ○最終場面を描き,自分の考えを
た文やキーワードをワークシートにまとめる。
まとめるために,ふみやの心情
・キーワードは夜光虫やトマト。
を赤,おじいちゃんを青,情景
・海や天気,おじいちゃんの家の様子の表現の仕方
を黄色のマーカーでライン引
からも心情が読みとれる。
き,その理由やそこから読み取
・おじいちゃんの存在がひろしを支えている
れる登場人物の心情を本文に
・題名が「海の光」だから光は注目したほうがよい。
書き込むよう声をかける。
重点②B
「海の光」を読み深め最終場面を描くために,注目した文や言葉をクラス全体で
交流しよう。
登場人物
(ふみや・お
じいちゃん)
の相互関係
や心情の変
化,情景描写
をとらえ,物
語の展開か
ら導き出さ
れる結末に
ついて自分
の考えをも
っている。
【読】
1.それぞれが注目した文や言葉についてクラスで交 ○叙述を根拠として物語を読み
流をする。
深めたり最終場面に対する自
・はじめは弟が生まれることを喜んでいたけど,父
分の考えをまとめたりするた
や母が相手にしてくれず,さみしい気持ちになっ
めに,友達の考えを聞き,登場
ていることが,透明人間という表現や食欲のなさ
人物の心情や相互関係につい
から感じられる。
て発見した新しい根拠をマー
・おじいちゃんの家の様子「暗くてかびくさい」も
カーペンや本文の書き込みを
ふみやの暗い気持ちを表している。
通して読み取るよう支援する。
重点②C
・雨もその暗い気持ちを表している。
・夜光虫と出合うことによってふみやの気持ちが変化
してきている。
・トマトが嵐にも負けず,力強く育っている。
・そのトマトを見てふみやの気持ちが最初と変わって
いる。
上丸子小学校- 75
☆キーワー
ドをとらえ
たサイドラ
イン,サイド
ラインを引
いた場所へ
の理由の記
述。友達の考
えを聞いて
自分の根拠
を増やして
いる本文へ
の記述。
自分の考えを
まとめたワー
クシートの記
述。
3
・その出会いをさせてくれたのはおじいちゃんだ。お
じいちゃんの励ましの言葉がふみやを成長させてい
る。
・おじいちゃんのかかわりは大きい。
2.読み取った内容や表現をもとに,海の光の最終場
面を創造し書く。
・おじいちゃんが車で病院まで連れて行ってくれ ○次時の話し合いに臨むために
た。ぼくは病院に着くと急いで弟のもとへ向かっ
今まで読みとってきた内容を
た。弟はベットの上で,静かに眠っていた。おじ
再度読み直し,自分の根拠とす
いちゃんが言った。
「どうだ,ふみや。かわいい
る文や言葉をより多くもてる
ように投げかける。 重点①
な。
」この子もきっと夜光虫やトマトみたいに生
まれてこれたことがうれしくってうれしくって
今もずっと一生懸命生きているんだ。ぼくはおじ ○次時の話し合いをキーワード
や情景描写,登場人物などに着
いちゃんがそう言い終える前に自然と笑顔にな
目して考えられるようにする
っていた。お父さんが言った。
「一人にして悪か
ために,児童の創造した最終場
ったな。
」ぼくは答えた。
「そんなことないよ。お
面が書いてあるワークシート
じいちゃんがいたし,それに大切なことを教えて
を集め,児童の考えをみとり,
もらったから。
」お父さんもお母さんも何も言わ
次時を組み立てるようにする。
ずにうれしそうに笑っていた。そしてぼくは小さ
重点②D
な声でこういった。
「生まれてきてくれてありが
とう。
」その時の空は雲ひとつないきれいな青空
だった。
自分や友達の描いた「海の光」の結末を比べ,作者の描いた最終場面について考
えを述べよう。
作者や友達
の描いた最終
場面を読み,
ふみやの成長
やそれを支え
る周囲の人物
や事物につい
て考えたこと
や感じたこと
を発表し合
い,自分の考
えを広げた
り,深めたり
している。
【読】
1.友達と読みあったり,作者の結末と比べたりし,
読みを深める。
・みんなが描いた結末は,トマトや夜光虫などのキ
ーワードとなる言葉が使われている。
・作品独特の繰り返し表現を使って書いている。
・物語の流れに沿って書けている。
・感謝の気持ちが出ている表現がいい。最初のころ
のふみやの心情が変化しているのがわかる。
・言葉は違うけどみんな同じような展開になってい
る。
○作者の描いた結末に対して
・作者の描いた結末もみんなと同じような流れにな
自分の立場や友達との相違
っている。
がわかるよう,
「納得するか」
・ふみやの成長がよく伝わってくる内容なので納得
「納得しないか」を小黒板に
できた。
ネームプレートをはるよう
・ふみやの心情を表す言葉がストレートになってき
投げかける。
重点①B
ている。
上丸子小学校- 76
☆作者の描い
た最終場面に
対する自分の
考えを書いた
ワークシート
への記述や発
言。物語のと
らえ方に対す
るワークシー
トへの記述
4
登場人物
(タロウ,モ
モちゃん,ケ
ンちゃん,パ
パ)の相互関
係や心情の
変化,タロウ
の気持ちを
表す情景描
写をとらえ,
物語の展開
から導き出
される結末
について自
分の考えを
もっている。
【読】
☆キーワー
ドをとらえ
たサイドラ
イン,サイド
ラインを引
いた場所へ
の理由の記
述。友達の考
えを聞いて
・ふみやを支えていたおじいちゃんが出てこないの
はおかしい。
2.海の光の学習を通して「物語の展開」
「物語を
読むこと」について学んだことを書く。
・キーワードを見つけることは大切。
・キーワードが土台となって物語がつくられてい
る。
・1つ1つの表現や情景に着目して作者の伝えたい
ことを感じること。
・作者の使っている言葉には必ず意味があり,それ
が最終場面につながってくる。
・物語としてよい終わり方をしている。よくあるパ
ターン。
・題名が物語の中で大きな意味をもっている。
黄色いボールを読み,登場人物の関係や心情の変化,場面についての描写を読み
取り,文章中の表現を根拠に自分の創造する最終場面を描こう。
1.
「黄色いボール」を読んで,登場人物(タロウ・ ○最終場面を描き,自分の考えを
パパ・ケンちゃん・モモちゃん)の関係や心情, まとめるために,タロウの心情
場面についての描写をとらえる。
を赤,ケンちゃんの心情を青,
パパの心情を黄色のマーカー
・タロウの行動に注目すると心情の変化が読みとれそ
でラインを引き,情景に関する
う。
叙述は緑のマーカーで引き,そ
・黄色いボールを加え続けるタロウ。
こから読み取れる登場人物の
・情景描写がタロウの気持ちを表している。空,風,
心情を本文に書き込むよう声
月夜,騒音,人や車,野良犬や猫の存在
をかける。
重点②B
・モモちゃんはタロウを受け入れ迎えようとしている。
モモちゃんの存在は大きい。
2.読み取った内容や表現をもとに,黄色いボールの ○次時の話し合いに臨むために
今まで読みとってきた内容を
最終場面を創造し書く。
再度読み直し,自分の根拠とす
・モモちゃんと幸せに暮らすタロウの姿。
る文や言葉をより多くもてる
・モモちゃんと黄色いボールで遊ぶ様子。
ように投げかける。 重点①A
・パパやケンちゃんを思い出す様子。
・自分を助けてくれたモモちゃんやお母さんへの感
○友達との違いに気付きやすく
謝の様子。
するために,物語に対する今の
・黄色いボールをずっと大事にしている様子。
自分の理解度をネームプレー
トで表すようにする。また,
「自
分の考えをまとめる」「自分の
考えを広げる・深める」という
上丸子小学校- 77
自分の根拠
を増やして
最終場面を
描いたワー
クシート。
5
読みの力を高めるために再度
叙述に戻って考えられるよう
に促す。
重点①B
作者の描いた最終場面について,自分や友達の描いた最終場面と比べながら自
分の考えをもとう。
作者や友達
の描いた最終
場面を読み,
タロウやの心
情の変化や周
囲の人物や事
物について考
えたことや感
じたことを発
表し合い,自
分の考えを広
げたり,深め
たりしてい
る。
【読】
☆友達の最終
場面も読み,
情景描写やキ
ーワードをと
らえたサイド
ライン,サイ
ドラインを引
いた場所への
理由の記述。
友達の考えを
聞いて自分の
根拠を増や
し,作者の描
いた最終場面
に対しての自
分の考えを書
いたワークシ
ート。
1.自分と友達の描いた最終場面とその根拠を交流す
る。
・○○さんの最終場面は最後にケンちゃんと出合うパ
ターン。ケンちゃんと遊ぶ夢を見ているという文章
を根拠にしているのがいい。
○自分の考えた最終場面やその
・モモちゃんと楽しく暮らす最終場面は納得がいく。
理由がどこにあるかを明確に
だって,ケンちゃんの孤独を救ってくれたのはモモ
するために書く時間を保障し,
ちゃんだから。
自分の主張を明確にするよう
・ケンちゃんを待っているという結末が多く,自分も
投げかける。また,次時の話し
そうしたので,共感できたし,なるほどと思った。
合いを組み立てるために,児童
○○さんのケンちゃんに会えるハッピーエンドもい
の考えが書いてあるワークシ
いと思いました。
ートを集め,児童に配布する。
重点②D
・○○さんのタロウとモモちゃんが黄色いボールで遊
んでいる描き方もいいと思った。モモちゃんと幸せ
に暮らしながら,やはりケンちゃんとの思い出のボ
ールを大切にする考え方もある。
2.友達と交流したり,自分なりに読みとったりした, ○作者の描いた結末に対して
自分の立場や友達との相違
登場人物の気持ち,情景描写などを手がかりにし
がわかるよう,
「納得するか」
ながら,作者の最終場面について自分なりの考え
「納得しないか」を小黒板に
をもつ。
ネームプレートをはるよう
・最後のずいぶん汚れてしまったが,このボールはパ
投げかける。
パのものだ。という所は,ボールに思いがたくさん
重点①B
つまっているところはよいと思った。
・このボールはパパのものだという所は納得いかない。
ケンちゃんとの思い出がたくさん詰まっているし,
ケンちゃんが夢にまで出てきているからケンちゃん
のボールではないのか。
・小屋の中に黄色いボールがあってボールをパパとケ
ンちゃんに戻さなければならないのは納得がいく。
でも,黄色いボールが一度しか出てきてないのとモ
モちゃんが出てきていないのと,未来が見えないの
は納得いかない。
・「ずいぶん汚れてしまったボール」という所はタロ
ウが大変な思いをして守った様子が出ていてよいと
思った。でもそれならば,それほど大変な思いをし
上丸子小学校- 78
⑥一組本時
て守ったボールを返す相手がなぜパパなのか。パパ
はタロウを捨てた存在であるから,その部分は納得
がいかない。
・最初のページでボールはパパが投げているし,最後
もボールはパパが投げているからタロウはボールは
パパのものだと思っている。そう考えると作者の最
終場面に納得がいく。
【本時目標】
「黄色いボール」を読み,自分なりに読み取ったケンちゃんやタロウの気持ち,情景描写などの叙述を手
がかりにしながら,作者の描いた最終場面に対して自分の考えを発信し,話し合いを通して,自分の考えを
広げたり,深めたりすることができる。
作者の描いた「黄色いボール」の最終場面に対して,文章中の言葉を根拠にして
自分の考えを発表し合い,自分の考えを広げる・深めるよう。
1.単元を通しての学習のめあてと本時の課題を確認 ○作者の結末に対して「納得する
か」「納得しないか」自分の考
する。
えた理由を全員に配布し,自分
の考えと友達の考えの相違点
2.本文を読み返し,自分の考えの根拠(着目した言葉)
や共通点がどこにあるかを明
を明確にし,全体で確認をする。
確にするようにする。また,自
分にない根拠をその中からた
パパ
「ケンちゃんの頭をなでて」
くさん見つけるように投げか
ける。
重点②D
「ボールを力いっぱい投げた」
ケンちゃん
「大声を出した」
○根拠となる言葉が全文にちり
「目が,なみだで盛り上がった」
ばめられていることを実感す
ぼく(タロウ)
るために,それぞれが着目した
「このボールは必ずパパに戻さなければならない」
言葉表出させ,拡大した本文で
確認するようにする。重点①B
「たよりにするする相手がいないということは,な
重点②C
んとさみしいのだろう。
」
「ぼくはここで死ぬかもしれない」
「小さな手をいっしょうけんめいなめた」
情景
「木も土もしっとりぬれている」
「街はおそろしいものだらけ」
「黄色い
ボール」を読
み,作者の描
いた最終場
面に対して
自分の考え
3.自分なりに読みとった登場人物の気持ち,情景描 ○最初の子は意図的に指名して
写などを手がかりにしながら,作者の最終場面に
いくが,その後は相互指名でつ
ついて自分なりの考えを発表する。
なげていく。ただし,視点を変
・納得しない。黄色いボールを大切にしているという
えたり,より深めたりするつぶ
ことはそのボールをいつかパパやケンちゃんに戻そ
やきがあったときや,着目して
うと考えているから,その戻す場面があってもいい
ほしい言葉に話し合いの視点
と思う。
を変えたいときは前時までの
上丸子小学校- 79
たことをま
とめ,発表
し,話し合い
を通して,自
分の考えを
広げたり,深
めたりでき
ている。
【読】
☆登場人物の
心情(文章中に
表れているタ
ロウの心情・
それを表わす
情景描写)やそ
の相互関係(捨
てられる側と
捨てる側,拾
われる側と拾
う側)をもとに
作者の描いた
最終場面に対
する自分の考
えの表出。
話し合いを終
えての自分の
考えをまとめ
たワークシー
トへの記述。
・僕も○○さんと似ていて,「必ず返さなくてはなら
みとりをもとに,授業者が発言
ない」と書かれているのに返さずに終わってしまっ
者を指名する。
重点②D
ているからです。
・どちらかというとまだ中間あたりです。作者 の描
いた最終場面はパパとケンちゃんに向 ける強い思 ○作者の最終場面に対して肯定
的にとらえている子と納得で
いが出ているけど,自分はタロウ の孤独や悲しみ
きないと考えている子を取り
などの場面から,やっぱりケ ンちゃんと再会して
上げ,話し合いを進める視点を
ほしいと思ったからで す。
明確にさせる。
重点②D
・納得しない。パパがタロウを捨てて悲しくてつらい
めに合わせたパパを最後に印象に残るように書いて
いる。例えボールの持ち主がパパだったとしてもタ
ロウの事を一番思っていたのはケンちゃんだから,
ケンちゃんを最後に入れるべきだと思う。また,ケ ○友達の意見を聞いて納得した
り疑問に思ったりしたことを,
ンちゃんと別れたことの悲しさやモヤモヤが最後に
および新たに考えたことなど,
表れていなかったのはおかしい。
サイドラインや書き込みを増
・納得できる。ケンちゃんとパパはタロウの家族で,
やすようにする。 重点②C
今までの思い出を忘れられないけど,もう一人にな
るのは嫌だからモモちゃんとずっと一緒にいたいと
いう思いもわかる。
・最初はパパが出てきて納得できなったけど,もう一
度考えたら,最初のページでパパが黄色いボールを
投げていた。またパパのボールと書かれているから
納得はできる。
・題名である「黄色いボール」がでてきたり,その黄
色いボールが表わすものを考えたりすると,ケンち
ゃんとパパの思い出を大切にしながら今のモモちゃ
んとの幸せな生活をおくることに納得がいく。
4.話し合いを通して,作者の最終場面に対して自分 ○話し合いを終えて,友達との
が今どのように考えているのかを書き,発表する。 違いに気付いたり,自分をメ
タ認知したりするために,物
・やはり,パパに返さなければならないという所に
語に対する今の自分の理解
疑問を抱いたけど,この物語のテーマが家族とい
度の移動をする。また,作者
う所には納得できた。作者がわざわざ最後をこの
の描いた結末に対して自分
ような結末にしたのには意味があると思う。作者
の立場がどのように変わっ
はとても深い意味を込めているので,それを探る
たのかを視覚的にわかりや
ために,何度も読み返し,もっと深く読もうと思
すくするためにネームプレ
った。
ートを移動する時間を設け
・納得しないという立場だったけど,友達の考えを
るようにする。
重点①B
聞き,もう一度読み返してみると,みんなが文章
中の言葉を根拠にしていたから少し納得がいく
ところもあった。
・お互いの立場の話を聞き,根拠をたくさん増やす
ことができた。自分は今正直,真ん中の立場であ
る。
・話し合いを通して,作者が文章中にたくさん最終
上丸子小学校- 80
場面につながるキーワードをだしていることが
分かったから納得がいく。でも自分としてはタロ
ウの孤独感や辛さを考えるとハッピーエンド(モ
モちゃんと楽しく一緒に暮らす/タロウと再会す
る)終わり方がよかった。
・納得していたけど,納得していない人の考えを聞
くと,自分が注目できなかった表現がたくさんあ
り,
「確かに」と思う場面もたくさんあった。そ
れらをまとめて考えるとやはり納得できる方だ。
5.単元を通しての学習のめあてと本時の課題につい
て振り返りを書く。
・自分と違う考えの人の意見を聞くことで,
「そう
いう考え方もあるんだ」と思い,自分の考えが広
がった。
・逆の立場の人の考えも受け止められるけど,自分
と同じ立場の人の考えを聞き,さらに自分の考え
が深まった。
・ひとつ一つの文章に着目し,たくさんの根拠を増
やすことで,物語に対する読み方が広がった。
・海の光とは違いすんなり納得はできなかったけ
ど,文章を細かく見ていくと最終場面を考える言
葉がたくさんあることが分かった。
・海の光と同じように文章中からキーワードを探す
ことは大切だと思った。そのためには何度も読み
返すことが大切だと思った。
・文章の一部だけを見るのではなく,全体をとらえ
て読むことが大切。そうすればたくさんの根拠が
見つけられる。
二
1
「海の命」を読み,疑問点や印象に残った言葉など感想を交流しよう。
今までの
作品と比べ
たり,登場人
物の心情や
相互関係,情
景描写など
の言葉に着
目したりし
て,疑問点や
1.
「海の命」を読んで,登場人物の会話や行動, ○今まで出会った物語や,
「海
相互関係,情景描写などに着目し,疑問点や印
の光」
「黄色いボール」の最
象に残った言葉,人物,キーワードを感想に書
終場面を創造してきた学習
く。
を生かして「海の命」を読む
よう声をかける。 重点①A
・終わり方がいまいち。中途半端。
・
「海の命」も,この先の続きがあるだろうな。だ
って太一の成長がここまでではあまり見えない
もん。
・この後,太一はクエを打つのかな。
上丸子小学校- 81
印象に残っ
た言葉をあ
げるなど,物
語に興味を
もって読も
うとしてい
る。 【関】
☆今までの
作品と比べ
たり,登場人
物の心情や
相互関係,情
景描写など
の言葉に着
目したりし
て,疑問点や
印象に残っ
た言葉を書
いたワーク
シートや発
言。
・今まで読んだのと比べると,内容が深い感じがす
る。
2.疑問点や印象に残った言葉,人物,キーワード ○疑問点や印象に残った
を感想から交流する。
言葉,人物,キーワード
・
「海の光」とは違う感じがする。太一の成長が見
を書く際に,なぜその叙
えづらい。
述に着目したのかを聞
・
「海の光」と少し似ていて,命について書いてい
き取り,最終場面を意識
る。でも,海に対しての考えが違う。
したものは適宜価値付
・
「海の光」と比べると,
「海の光」は弟が生まれる
けし,全体へ紹介する。
重点②A
前の主人公の成長の話だけど,
「海の命」はおと
うや与吉じいさが死んだあとの主人公の成長が
○机間支援により,疑問点や印
描かれていると思う。
象に残った叙述などを把握
・
「黄色いボール」と同じ立松和平さんの作品だか
する。多くの考え方にふれら
ら,最終場面に納得いかないことがあるかもしれ
れるよう,着目した言葉が同
ない。
じでも,そこから読み取れる
・
「黄色いボール」では,思いがけない人物が最後
ことが違うので,児童の様子
に関わっていた。
「海の命」では,何が関わって
をみながらこちらから適宜
くるのだろう。
意図的な指名をする。
・
「黄色いボール」では,題名の黄色いボールが何
重点①C
を表しているのか,友達の意見を聞いて納得する
ところがあった。
「海の命」でも,題名が何かを
表していて,それが最終場面につながると思う。 ○今までの学習を生かし,マー
カーペンを用いて読みたい
・今までの物語と違って,主人公の太一の父親や,
という児童がいた場合,能動
与吉じいさの二人も死んでしまう。ハッピーエン
的な読みの表れとしてそれ
ドの終わり方じゃないから,この続きは太一が瀬
を認め価値付ける。これは叙
の主をつかまえて本当の一人前の漁師になって
述を根拠として物語を読み
終わるんじゃないかな。
深めたり最終場面に対する
・これは海に生きる人の話で,そこで生まれ育つ太
自分の考えをまとめたりす
一の成長が書いてあるんだと思った。
るための支援となる。一読し
・与吉じいさが言った「千匹に一匹でいいんだ」や
た後に登場人物や重要な存
おとうの「海のめぐみだからなあ」って言葉が印
在であるクエなどを全体で
象に残った。キーワードになりそう。
確認し,マーカーペンでライ
・父が言った「海のめぐみだからなぁ」はこの物語
ンを引く観点を整理する。
の大事なキーワードになると思う。題名の「海の
「太一」
「与吉じいさ」
「情景
命」は,海の魚はめぐみであり命であると思う。
描写」は全体で共通の色を用
・与吉じいさが死んだ場面で,
「父がそうであった
い,その他は自分で考えても
ように,与吉じいさも海に帰っていったのだ」と
よいと声をかけ,能動的な読
書いてある。この言葉の意味がまだわからないけ
みを促す。
ど,印象に残る。
重点②B
・追い求めていたはずのクエに会ったのに,なぜ太
一は迷っているのだろう。
・太一は,村一番のもぐり漁師だった父を破った主
かもしれないまぼろしの魚に,苦しみながらも立
ち向かおうとしている。
上丸子小学校- 82
・瀬の主と太一が出合うところは,太一が大きく成
長するはず。
・与吉じいさに「村一番の漁師だ」と言われたし,
太一の夢は叶ったのに,どうして瀬の主をとらな
ければ一人前になれないと思ったんだろう。
2
物語を読み深めたり,最終場面に対する自分の考えをまとめたりするため
の,根拠となる言葉や文をみつけよう。
1.登場人物の関係や心情の変化,登場人物の相互 ○今までの学習を生かし,マー
関係や人物像,場面の様子をとらえるために,マ
カーペンを用いて読みたい
ーカーの使い方を工夫してキーワードをとらえ
という児童がいた場合,能動
ながら読む。
的な読みの表れとしてそれ
・太一の行動や会話に赤色マーカーを使おう。太一
を認め価値付ける。これは叙
に関わる人物の与吉じいさやおとうには青マー
述を根拠として物語を読み
カーを使おう。
深めたり最終場面に対する
・海の様子があるな。情景には黄マーカーを使おう。 自分の考えをまとめたりす
・クエの様子がいくつか書かれている。緑マーカー
るための支援となる。登場人
を使おう。
物や重要な存在であるクエ
などを全体で確認し,マーカ
ーペンでラインを引く観点
を整理する。
「太一」
「与吉じ
いさ」
「情景描写」は全体で
共通の色を用い,その他は自
分で考えてもよいと声をか
け,能動的な読みを促す。
重点②B
登場人物
(太一・父・
与吉じい
さ・母)の相
互関係や心
情の変化,情
景描写をと
らえている。
【読】
☆登場人物
の行動や会
話,情景描写
などキーワ
ードをとら
えたマーカ
ーペンのラ
2.最終場面を考えるために自分が注目した文や言 ○物語を読み深めたり最終場
面を考えたりするために,叙
葉・キーワードをワークシートにまとめる。
述からキーワードになりそ
・
「父もその父も,その先ずっと顔も知らない父親
うな言葉をみいだしたり,読
たち」受け継ぐ・伝統。
み返したりしている児童に
・
「季節や時間の流れとともに変わる海のどんな表
対し,なぜその言葉に着目し
情でも,太一は好きだった。
」海が好き。
たのか,どうしてその場面を
・
「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出
読み返しているのかを問い,
るんだ。
」漁師への憧れ・夢。
・
「父はじまんすることもなく」父への憧れ・尊敬。 児童の考えが明確にできる
重点②A
・
「海のめぐみだからなあ。
」父が太一に残した言葉。 よう支援する。
・
「父はロープを体に巻いたまま,水中でこときれ
ていた。
」父の死。
・
「光る緑色のクエ」
「瀬の主は,何人がかりで引こ
うと全く動かない。
」瀬の主,クエの存在。
・
「太一の父が死んだ瀬で,毎日一本づりに行って
いる漁師」の与吉じいさを選んでいる。
上丸子小学校- 83
インと,ライ ・
「無理やり与吉じいさの弟子になったのだ。
」太一
ンを引いた
の漁師になるという思い,父の海に近づきたいと
場所に対す
いう思い・夢。
る理由の記 ・
「ぬれた金色の光をはね返して」太一が見る海の
述をしよう
描写。
とする姿や ・
「海のめぐみ」
「もう魚を自然に遊ばせたくなっと
ワークシー
る」
「千びきに一ぴきでいいんだ。
」
「ずっとこの
ト。
海で生きていけるよ」おとうや与吉じいさが太一
に伝えた,海での生き方。
・
「なかなかつり糸をにぎらせてもらえなかった。
」
「もう道具を片付けた。
」太一の未熟さ。
・
「弟子になって何年もたったある朝」
「おまえは村
一番の漁師だよ。
」
「おまえの海だ。
」太一の漁師
としての成長。
・
「海に帰りましたか。与吉じいさ,心から感謝し
ております。おかげさまでぼくも海で生きられま
す。
」
「父がそうであったように,与吉じいさも海
に帰っていったのだ。
」与吉じいさの死・海に帰
る・海で生きる。
・
「おまえが,おとうの死んだ瀬にもぐると,いつ
言い出すかと思うと,わたしはおそろしくて夜も
ねむれないよ。おまえの心の中が見えるようで。
」
母の悲しみ・心配。
・
「母の悲しみさえも背負おうとしていた」父や与
吉じいさの死,そして母の悲しみを背負う太一。
・
「母が毎日見ている海」
「太一にとっては自由な世
界」母の思いと太一の思いの対比。
・
「二十ぴきのイサキをはやばやととった」太一は
与吉じいさの教えを受け継いでいる。
・
「はだに水の感触がここちよい。
」
「海中に棒にな
って差し込んだ光が,波の動きにつれ,かがやき
ながら交差する。
」
「壮大な音楽を聞いているよ
う」太一が感じる海の描写。太一にとっての海は
自由な世界。
・
「父の海にやって来たのだ。
」与吉じいさに「おま
えの海」と言われているのに,自分で認めていな
い。
・
「瀬にもぐり続けて,ほぼ一年が過ぎた」
「二十キ
ロぐらいのクエも見かけた。だが,太一は興味を
もてなかった。
」太一は瀬の主だけを追い求めて
いる。
・
「激しい潮の流れに守られるようにして生きてい
る」海に守られている生き物。
・
「追い求めているうちに,不意に夢は実現するも
のだ。
」瀬の主と会えて,夢が実現する。
上丸子小学校- 84
・
「光る緑色の目」と言われていたクエに出会った
が,太一は「青い宝石の目」
「ひとみは黒いしん
じゅのよう」と感じている。海の宝物。
・
「魚がえらを動かすたび,水が動く」瀬の主のク
エは海そのもの。
・
「銀色にゆれる水面」
・
「興奮していながら,太一は冷静だった。
」
・
「自分の追い求めてきたまぼろしの魚」
「村一番の
もぐり漁師だった父を破った瀬の主」
「大魚」ク
エの呼称の違い。
○次時の交流で,キーワードや
・
「永遠にここにいられるような気さえした。
」
情景描写,登場人物などに着
・
「おだやかな目」
「大魚は自分に殺されたがってい
目した言葉をより多く交流
るのだと」クエが動かないことに対しての動揺,
するために,児童が着目した
太一の葛藤。
叙述が書いてあるワークシ
・
「本当の一人前の漁師」与吉じいさの言った「村
ートを集め,児童の考えをみ
一番の漁師。
「村一番のもぐり漁師だった父」
。
とり,次時を組み立てるよう
にする。
重点②D
・
「こんな感情になったのは初めてだ。
」
「泣きそう
になりながら思う。
」太一の葛藤
3
「海の命」を読み深めるために着目した文や言葉を交流し,最終場面に対する
自分の考えをまとめよう。
登場人物
(太一・父・
与吉じい
さ・母)の相
互関係や心
情の変化,情
景描写をと
らえ,物語の
展開から導
き出される
結末につい
て自分の考
えをもって
いる。
【読】
☆キーワー
ドをとらえ
たサイドラ
イン,サイド
ラインを引
いた場所へ
1.最終場面を考えるためにそれぞれが注目した文 ○友達の着目した言葉や,そこ
や言葉,人物について話し合う。
から感じたことを聞いて,本
・太一は海や父が好き。漁師に憧れている。父のよ
文に新たにマーカーペンで
うな漁師になることが,夢なんだと思う。漁師や
ラインを引いたり,友達の考
海への思いは,最終場面に関わってきそう。
えを書き込みし自分の根拠
・
「父もその父も,その先ずっと顔も知らない父親
を広げたり深めたりする姿
たちが住んでいた海」から,伝統や歴史を感じる。 が見られたら大いに褒め,価
値付けする。
重点②C
太一はそれを受け継ぐ。
・父は「潮の流れが速くて,だれにももぐれない瀬
に,たった一人でもぐっては」って書いてある。 ○前時にみとった児童のワー
クシートから,着目した言葉
6ページでクエとあったときにも,
「村一番のも
をより多く交流し自分の考
ぐり漁師だった父」と書いてあるから,父は村一
えの根拠を広げたり深めた
番の漁師で,そんな父を太一は憧れていた。
りするために,適宜意図的な
・
「父はじまんすることもなく言うのだった。
」や「不
指名をする。
漁の日が十日間続いても,父は少しも変わらなか
重点②D
った。
」というところからも,そんな父を太一は
尊敬していることがわかる。
・父のことは尊敬している。その父が言った「海の
めぐみだからなあ」は最終場面に関わると思う。
・
「海のめぐみだからなあ。
」から,おとうは海に生
きている生き物の命をありがたく思っていると
上丸子小学校- 85
の理由の記
述。友達の考
えを聞いて
自分の根拠
を増やして
いる本文へ
の記述。
自分の考え
をまとめた
ワークシー
トの記述。
いうことがわかる。
・
「海のめぐみ」はおとうが太一に言った唯一の言
葉。これはおとうが太一に伝えたいこと。
・与吉じいさの「千びきに一ぴき」や「もう魚を海
に自然に遊ばせて」も関わってくると思う。父の
言葉「海のめぐみ」と似ている。
・与吉じいさは太一が弟子にしてくれるようたのん
だとき,
「わしも年じゃ。
」と断っている。太一は
それでもお願いしていたから,弟子にしてほしい
という強い気持ちがあった。
・
「おとうといっしょに海に出るんだ。
」と太一は言
っていたけど,父が死んでしまったから,父の瀬
にもぐるために,父が死んだ瀬で一本づりをして
いる与吉じいさに弟子入りを頼んだんだと思う。
・
「父が死んだ瀬に,毎日一本づりに行っている漁
師」の与吉じいさの弟子に無理やりなったのは,
父が死んだ瀬にもぐってクエをうって,父の敵を
討ちたいんじゃないかな。
・与吉じいさは「千びきいるうち一ぴきをつれば,
ずっとこの海で生きていけるよ。
」と,海での生
き方を教えているように感じる。
・
「もう道具を片づけた。
」の「もう」から,太一は
もっと魚をとればいいのにと感じていることが
わかる。これは「千びきに一ぴき」と違うから,
太一の未熟さがわかる。
・
「なかなか糸をにぎらせてもらえなかった。
」
「も
う道具を」から,
「弟子になって何年もたったあ
る朝」
「作業はほとんど太一がやるようになって
いた。
」になって,太一は未熟だったけど,漁師
として成長してきたことがわかる。
・与吉じいさは「おまえは村一番の漁師だよ。太一,
ここはおまえの海だ」と言って,太一を漁師とし
て認めている。それぐらい太一は漁師として成長
したんだと思う。
・
「与吉じいさの家に,太一は漁から帰ると,毎日
魚を届けに行った。
」から,与吉じいさに対する
感謝がわかる。与吉じいさは太一を成長させてく
れた人。
・与吉じいさが死んで,太一は与吉じいさが海へ帰
ったと考えている。
「おかげさまでぼくも海で生
きられます。
」と,海で生きる決意をしている。
・
「海に帰りましたか」は,天国とかではなく,今
まで受け継いできた海に帰るという意味だと感
じた。お父さんや与吉じいさんとの関わりがこめ
られている。
上丸子小学校- 86
4
・死んだら空に帰るんじゃなくて「海に帰る」
。海
は自分たちの家であり故郷であるという意味だ
と感じた。
・
「あらしさえもはね返す屈強な若者に」からも,
太一の成長がわかる。
・母の存在って大きいんじゃないかな。
「母の悲し
みさえも背負おうとしていた」と書いてある。母
は,おとうが死んだことを悲しんでいて,それを
太一も繰り返すんじゃないかって心配している。
・
「母が毎日見ている海」ってところで,母は太一
までも海で死んでしまうんじゃないかと心配で
毎日見ているんだと思った。でもその心配を太一
はわかっていて,
「自由な世界」の海を求めてい
る。母の悲しみを「背負おうとしていた」だけで,
背負ってはいない。
・母が心配しているのに,父が死んだ辺りの瀬にも
ぐっている。やはり夢を追い求めている。
・
「いつもの一本づりで」というところで,太一は
与吉じいさの教えを受け継いでいることがわか
る。
「はやばや」というところから,太一の成長
もわかる。
・父の海は「はだに水の感触がここちよい。
」
「光が,
波の動きにつれ,かがやきながら交差する」
「壮
大な音楽を聴いているような気分」と,太一はそ
の海が夢の場所のように感じている。
「自由な世
界」そのものだと思う。
・与吉じいさは,
「ここはお前の海だ」と言ってい
たのに,太一は「とうとう,父の海にやって来た
のだ。
」と思っている。太一はこの海をまだ自分
の海と認めていなくて,父の存在を探しているよ
うな感じがする。
・
「激しい潮の流れに守られるように」から,海が
生き物たちを守っているように感じる。
・
「激しい潮の流れ」や「父を最後に」から,この
父の海は漁をするには大変なところで,そこで漁
をしていた父はやっぱり「村一番」だと思う。で
も,そこにたどり着いた太一もすごい。成長して
いる。
・
「追い求めているうちに,不意に夢は実現するも
のだ」というところから,太一はずっと瀬の主の
クエを探していたことがわかる。
「これが自分の
追い求めてきたまぼろしの魚,村一番の漁師だっ
た父を破った瀬の主なのかもしれない。
」と書い
てある。瀬の主を見つけて打つことは,太一の夢。
・
「二十キロぐらいのクエ」
「興味をもてなかった。
」
上丸子小学校- 87
というところからも,太一は瀬の主のクエだけを
追い求めてきたことがわかる。
・クエは「青い宝石の目」
「ひとみは黒いしんじゅ
のよう」と書かれていて,太一の夢への期待がわ
かる。でもその後,
「おだやかな目」と書いてあ
って,戦う雰囲気ではない。
・最初「光る緑色の目」と村の人から聞いている。
でも,実際に太一が見てみると「青い宝石の目」
「ひとみは黒いしんじゅのよう」と,宝石やしん
じゅは宝物を表していると思うから,太一はこの
クエを海の宝物ととらえているんじゃないかな。
・
「魚がえらを動かすたび,水が動く」や「岩その
ものが魚のよう」と書いてあって,太一はこのク
エを海そのものととらえているような感じがす
る。
・
「興奮していながら,太一は冷静だった。
」という
ところから,太一の「気持ちがごちゃまぜになっ
ているように感じる。
・
「この魚をとらなければ,本当の一人前の漁師に
はなれない」から,太一は与吉じいさに「村一番
の漁師」と認められているんだけど,それではな
く「本当の一人前の漁師」をめざしているんだと
思った。
・
「おまえの海」と言われているのに「父の海」を
求めているのと似ているね。太一はクエを打って
「本当の一人前の漁師」になって,父を越えたい
んじゃないかな。
・せっかく太一は夢が実現しそうなのに,
「泣きそ
うになりながら思う」と書いてある。クエを打つ
か打たないか迷っているのかもしれない。
・
「自分が追い求めてきたまぼろしの魚」
「村一番の
もぐり漁師だった父を破った瀬の主」なのに,
「泣
きそう」というのは,殺したくないと考えている
のではないかな。
・太一は葛藤している。
「本当の一人前」になるた
めには打たなければいけないけど,
「泣きそう」
というところからわかる。
「興奮していながら冷
静だった」というところからも,太一は感情が入
り混じっていることがわかる。
・太一の葛藤は,自分の欲との葛藤だと思う。与吉
じいさやおとうが言った海での生き方を守って
クエを打たないのか,本当の一人前を求めて父を
越えるために,海での生き方に背いてクエを打つ
のか。
上丸子小学校- 88
2.
「太一はクエを打つべきか」について,自分の ○クエを打つ,打たないという
考えをワークシートに書く。
意見が出た場合,その意見を
・太一はクエを打つべきだと思う。なぜなら,クエ
丁寧に取り上げ,どうしてそ
は太一がずっと追い求めていた夢で,瀬の主を打
う考えたのか問い,関連する
つことによって一人前の漁師になれるから。瀬の
叙述を振り返って整理する。
主は憧れていた父を破った相手だから,打つこと
どちらの立場の考えも少し
によって父を超えることができる。太一は母の悲
出した後,その違いに着目さ
しみを背負いながらも,自分の夢を追い求めてき
せ,自分ならどう考えるのか
た。その夢が実現し,ここに太一の成長があると
問いかける。そして,自分の
思う。だから打つべき。
立場や友達との相違がわか
・太一はクエを打たないべきだと思う。尊敬してい
るよう,
「太一はクエを打つ
た父は「海のめぐみ」
,弟子入りした与吉じいさ
べき」
「太一はクエを打たな
は「千びきに一ぴき」と言っている。これは,海
いべき」と書かれた小黒板に
での生き方を示しているのだと思う。海での生き
ネームプレートをはるよう
方は,題名にもある「海の命」を受け継いでいく
投げかける。
重点①B
こと。瀬の主は海そのものであるような描写があ
った。海の命であるクエ(瀬の主)を打たないで,
海での生き方受け継ぐことで,太一は本当の一人 ○「太一はクエを打つべきか」
について考えたこと,その考
前の漁師になれる。
えの理由や根拠がどこにあ
るかを書く時間を保障し,自
分の主張を明確にするよう
声かけをする。また,児童の
考えが書いてあるワークシ
ートを集め,児童の考えをみ
とり,次時の話し合いを組み
立てる。
重点②D
上丸子小学校- 89
⑤
三
組
本
時
【本時目標】
「太一はクエを打つべきか」という課題に対し,読み取ってきた登場人物の心情の変化や登場人物
の相互関係,人物像,情景描写をもとにして自分の考えを発表し,友達の考えを受けて自分の考えを
広げたり深めたりする。
「太一はクエを打つべきか」自分の考えを伝え,友達の考えを受けて,
「海の命」
や最終場面について自分の考えを広げたり深めたりしよう。
物語の最
終場面を考
えるために,
読み取って
きた登場人
物の心情の
変化や登場
人物の相互
関係,人物
像,情景描写
について考
えたことや
感じたこと
を発表し合
い,物語や最
終場面に対
して自分の
考えを広げ
たり深めた
りしている。
【読】
☆登場人物
の心情の変
化や登場人
物の相互関
係,人物像,
情景描写を
とらえた発
言や,再度叙
述に戻って
考えたり,友
達の考えを
受け止めた
りし,自分の
読みをもう
一度振り返
1.
「太一はクエを打つべきか」について,自分が ○基本は相互指名を用いるが,
考えた結末を,根拠をもとに述べる。
多くの考えにふれ自分の考
・太一はクエを打つべきだと思う。打つことで父を
えを広げたり深めたりする
越え,本当の一人前の漁師になれると太一は思っ
ために,同じ言葉に着目して
ている。
いたり,同じ観点で最終場面
・私もクエを打つべきだと思う。クエはずっと追い
を考えたりしている児童を
求めていた「夢」
。
「父を破った魚」
。太一は村一
適宜意図的に指名する。
重点②D
番の漁師だから,その魚に挑むと思う。
・僕も打つべきだと思う。夢というところで,夢は
叶えて終わるほうが物語として成り立つと思う。 ○友達の考えを聞いて,本文に
・ぼくもクエを打つべきだと思う。太一は「父の海」 新たにマーカーペンでライ
ンを引いたり,考えを書き込
に行って「父を破った瀬の主」を打つことで,本
みし自分の根拠を増やし考
当の成長を遂げる。
えを広げたり深めたりする
・私は打つべきではないと思う。夢なのはわかるけ
姿が見られたら価値付けす
ど,でも太一は「泣きそうになりながら」と,迷
る。
重点②C
っている。それは,与吉じいさやおとうの教えを
考えているからだと思う。だからこそ,太一は打
たないことで教えを受け継ぐと思う。
・僕も打つべきではないと思う。与吉じいさが言っ
た「千びきに一ぴきでいい」や,父が言った「海
のめぐみ」は,海での生き方を表している。太一
は,与吉じいさが死んだときに,
「おかげさまで
ぼくも海で生きられます。
」と海で生きる決意を
言っている。海で生きるということは,命をつな
ぐということ。だから,瀬の主は打たないべき。
・僕も打たないべきだと思う。さっき命をつなぐと
言っていたけど,この物語の題名は「海の命」
。
僕が考えるに,海の命とは,瀬の主であるクエ。
打たないで「海の命」を守り,受け継いでいくこ
とが「海で生きる」ことにつながると思う。
・題名から考えたのはわかるけど,やっぱり私はク
エを打つべきだと思う。太一は小さいときからず
っとおとうに憧れていた。太一がもぐっているの
は「父の瀬」で,そこにいたクエを太一は父と感
じているんじゃないかな。だから迷って泣きそう
になりながら,父の死を乗り越えるために打つの
上丸子小学校- 90
っている様
だと思う。
子。
・私もそう思う。太一は与吉じいさに「村一番の漁
師だよ」と認められたのに,
「本当の一人前の漁
師」になろうとしている。それは,やっぱり憧れ
の父を乗り越えたいから。だから,その「父を破
ったクエ」を打つべき。
・今の意見に似ていて,そもそも与吉じいさに弟子
入りしたのも,
「父が死んだ瀬に,毎日一本づり
に行っている漁師」だったから。つまり,太一は
中学を卒業する夏からずっと,父を破ったクエに
近づこうとしている。クエを打つことは,太一に
とって「本当の一人前」になるための条件なんだ
と思う。
・
「本当の一人前」を考えると,やっぱりクエを打
たないべきだと思う。確かに,太一は最初クエを
打とうと考えていた。でも,そんな太一に対して,
与吉じいさは「魚を海に自然に遊ばせてやりた
い」や「千びきに一ぴきでいい」と言ったり,な
かなか太一につり糸をにぎらせなかったりする
ことで,海での生き方を伝えていた。それを太一
はわかってきていると思う。
「本当の一人前」と
いうのは,この海での生き方を守り受け継いでい
くことだと太一は薄々気づいていて,
「泣きそう」
になって今までの自分の考えと葛藤している。そ
して,今までの自分の考えに勝って,打たないこ
とで本当の一人前になる。
・私もクエを打たないべきだと思う。海での生き方
というところで,太一は最初クエのことを「まぼ
ろしの魚」
「村一番のもぐり漁師だった父を破っ
た瀬の主」と考えているけど,最後のほうは「大
魚」そして「この魚」に変わっている。これは,
ただのクエではなく海全体の魚ととらえたから
だと思う。だから,海での生き方を受け継いで,
海全体の魚,つまり海の命であるクエを打たな
い。
・僕もクエの呼び方は気になっていた。でも違う考
えで,
「大魚」そして「この魚」というところか
ら,このクエを与吉じいさの言った「千びきに一
ぴき」の「一ぴき」ととらえたんだと思う。千び
きに一ぴきはとっていいのだから,クエは打つべ
き。
・僕は,みんなとは少し違う結末を描いていて,ク
エは打つけど太一も死ぬんだと考えた。与吉じい
さが死んだときに,
「おとうがそうであったよう
に,与吉じいさも海に帰っていったのだ」と書い
上丸子小学校- 91
てある。
「海の命」というのは,魚だけじゃなく
て,おとうや与吉じいさも含まれている。太一は
クエに挑んで,自分も海に帰ろうとするんじゃな
いかな。
・私はクエを打たないべきだと思う。
「母の悲しみ
を背負おうとしている」と書いてあるから,太一
は母のことも考えると思う。母の悲しみは,おと
うが海で死んだこと,それを太一が繰り返してし
まうことだと思う。だから不安で毎日海を見てい
る。そんな母を思うと,太一は打とうと思ってい
ただろうけど,打たない。
2.友達との交流を通して,改めて「太一はクエを ○自分の考えの広がりや深ま
打つべきか」考える。
りが意識できるよう,だれの
・○○さんの意見を聞いて,やっぱりクエを打つべ
どの意見を根拠に自分の考
きだと思った。太一の夢,ずっと追い求めていた
えが広がったり深まったり
父を破った魚で,それを打つことで父を乗り越
したのか,課題をもう一度振
え,本当の一人前になれるというのに納得した。
り返り自分の考えを表出で
・○○さんが海での生き方と言っていたことに共感
きるようワークシートを準
した。最初は太一が成長するためにはクエを打つ
備する。
重点②A
べきと考えていたけど,海の生き方を受け継ぐと
いう成長もあるんじゃないかと思ってきた。
・クエを打つべきか打つべきじゃないかで悩む。○ ○交流を通して,自分や友達の
考えがどのように変わった
○さんが言った父を乗り越え本当の一人前にな
のか,話し合う前との違いを
るという意見には納得して打つべきだと思った。
明確にするために,もう一度
でも,□□さんが言った与吉じいさやおとうの言
課題に対する今の自分の考
った海での生き方を受け継ぐということも納得
えにネームプレートを貼る。
して,打たないべきだと考えた。悩むけど,どち
重点①B
らかと言えばクエを打たないべきよりで,やっぱ
り題名が「海の命」だし,その海の命を受け継い
※時間によっては,ここで授業
で守るから打たないべきかな。
を終える可能性がある。今回
はより多くの考えにふれる
ことによって自分の考えが
広がったり深まったりする
ことがねらいのため,活動の
1及び2の時間を十分にと
りたい。そのため,3の活動
の時間がなくなる可能性も
ある。その場合は,3の活動
を次時に行うこととする。
3.作者が描いた最終場面を読み取り,納得のいく ○物語の理解や結末の納得に
ついて,自分の考えや友達と
点やいかない点,疑問点や印象に残った点を出し
の相違の気付くよう「納得度
合い,次時の活動につなげる。
上丸子小学校- 92
・クエを打たなかったのは,納得した。太一はクエ
グラフ」を用意し,ネームプ
をおとうや海の命と考えていたから。やっぱり太
レートを貼るよう促す。
重点①B
一は海の命を受け継いだ。作者の結末は納得でき
る。
・クエを打たなかったことには納得するけど,
「一 ○作者が描いた最終場面につ
いて考えたこと,その考えの
人前の漁師」ではなくて「村一番の漁師」と書い
理由や根拠がどこにあるか
てある。クエを打たないことで一人前になると思
を書く時間設け,自分の考え
っていたのに,納得いかない。
を明確にするよう声かけを
・母が「おだやかで満ち足りた美しいおばあさんに
する。また,児童の考えが書
なった」というところが印象に残った。あんなに
いてあるワークシートを集
心配していたのに,太一は生涯だれにも話してな
め,児童の考えをみとり,次
いけど,母はきっと太一の成長がわかったんだと
時の話し合いを組み立てる。
思う。
重点②D
・なんで太一は生涯だれにも話さなかったのかな。
6
作者の描いた最終場面に対して,文章中の言葉を根拠にして自分の考えをもち,
話し合おう。
「海の命」やこの単元を通して学んだことを振り返ろう。
海の命の
最終場面を
読み,登場人
物の相互関
係や人物像
などについ
て考えたこ
とや感じた
ことを発表
し合い,物語
に対して自
分の考えを
広げたり深
めたりして
いる。
【読】
☆作者の描
いた最終場
面に対する
自分の考え
を書いたワ
ークシート
や発言。
☆物語ワー
クシートら
1.作者の描いた最終場面を読み取り,それに対し ○作者の描いた最終場面に対し
て文章中の言葉を根拠に自分の考えをもち,納得
て「納得するか」「納得しない
のいく点やいかない点,疑問点や印象に残った点
か」自分の考えた理由を全員に
を話し合う。
配布し,自分の考えと友達の考
・クエを打たなかったのは,納得した。太一はクエ
えの相違点や共通点がどこに
をおとうや海の命と考えていたから。やっぱり太
あるかを明確にするようにす
一は海の命を受け継いだ。作者の最終場面は納得
る。また,自分にない根拠をそ
できる。
の中からたくさん見つけるよ
・クエを打たなかったけど,
「一人前の漁師」では
うに投げかける。
重点②D
なくて「村一番の漁師」と書いてある。クエを打
たないことで一人前になると思っていたのに,納
得いかない。
・太一はめざすものが変わったのだと思った。与吉
じいさに「村一番の漁師」と言われても,
「本当
の一人前」をめざしていた。だから,父の海へも
ぐってクエを打とうとしていた。でも,クエと会
って打たないことで,考え方が変わった。クエを
打って一人前になるのではなく,打たないで海の
命を受け継ぐ「村一番の漁師」であり続けたのだ
と思う。
・母が「おだやかで満ち足りた美しいおばあさんに
なった」というところが印象に残った。母の悲し
みが,最後のこの文につながっていると思った。
太一は生涯だれにも話してないけど,心配してい
た母は,きっと太一の成長がわかったんだと思
上丸子小学校- 93
え方に対す
う。
る 発 言 や ワ ・太一がいつかクエに挑んで死んでしまうと思って
ークシート
いたけど,その心配がなくなったから母は満ち足
の記述
りたのだと思う。
・児童が「男と女と二人ずつで」というところで,
太一もまた受け継ぐ側に変わったのだと感じた。
海の命は太一だけでなく,それから先の人達もず
っと受け継がれていくのだと思った。
・○○さんの言っていることがわかる。海の命の最
初には,
「父もその父も,その先ずっと顔も知ら
ない父親たちが住んでいた海」と書いてある。ず
っと気になっていたけど,最後の場面の児童たち
につながっていると感じた。太一は「父」となり,
海の命を受け継いでいるのだと思う。
・太一が生涯だれにも話さなかったのは,最初は納
得いかなかったけど,心が成長したからだと思っ
た。
「もちろん」というのは,当たり前という意
味。言わないのが当たり前だと考えると,前にお
とうもじまんすることがなかったと書いてある。
太一は憧れていたおとうのようになったから,話
さなかった。
2.
「海の命」やこの単元を通して学んだこと,物
語を読むことについて自分の考えをもち,交流す
る。
・今までの物語,例えば海の光みたいな展開と違っ
て,海の命はクエを打たないことによって太一の
成長がみられた。こういう物語もあるんだなと思
った。
・作者の立松和平を考えると,
「黄色いボール」や
「海の命」は,単純に思った通りの結末にならな
いところが似ていると感じた。また,情景描写,
色の描き方も似ていた。
・登場人物の複雑な心情を読み取るには,情景描写
やキーワードが大切だと学んだ。
・物語のとらえ方もいろいろあることがわかった。
着目する言葉が違ったり,言葉が同じでも考え方
が違うと最終場面が違ったりして,友達の考えを
聞くのがおもしろかった。
・一つにキーワードから,いろんなことが考えられ
ることがわかった。
「海の命」で例えると,
「成長」
をキーワードにしてクエを打つべきか打たない
べきかでいろんな考えが出た。その成長が本文の
どこを根拠にしているかで違うので,それを聞く
と自分の根拠が増えた。
上丸子小学校- 94
○交流をした上で物語の最終
場面の納得度について,自分の
考えや友達との相違を明確に
するよう,再度「納得度グラフ」
を用意し,ネームプレートを貼
るよう促す。
重点①B
・キーワードや題名について深く考えることが大事
だと思った。最初はキーワードを見つけるだけだ
ったけど,友達と交流することでキーワードに対
して深く考えるようになった。そうすると,物語
がよくわかったように感じた。
・題名になっていることが,文章の中でどういう意
味であるか,人物とどうからんでいるのかを考え
るようになった。
・題名もそうだし,人物同士がどう関わっているの
かを考えることも大切だと思った。
・○○さんとは違う考えだけど,その見方で考える
と,確かにそうだと納得した。立場が同じ人でも,
違う観点で考えている人もいて,共感できるとこ
ろがいくつもあった。物語を読む観点が広がった
り深まったりしたと思う。
三
1
今まで自分が最終場面を描くために学んできたことを生かして,三つの物語から
一つを選び,家族に創造させよう。
物語の最終
場面を創造
することで
自分が学ん
だことを生
かし,家族に
最終場面を
考えさせる
ような文章
を書こうと
している。
【関】
☆物語の最
終場面を創
造すること
で自分が着
目してきた
登場人物の
行動や会話,
相互関係,情
景描写など
を活用し,文
章を書こう
としている
ワークシー
1.今まで出会った本の中で,自分が最終場面を紹 ○家族に創造させるプレゼン
介したいものを一つ選び,その最終場面の紹介の
の仕方を考えるために,映画
しかたを考える。
の宣伝や本のポップを提示
する。
重点①A
・
「黄色いボール」の最終段落には驚いたから,こ
の本を紹介しよう。
・
「海の命」にしようかな。お父さんやお母さんは,
クエを打つべきと考えるかな。
・映画の宣伝って,うまくできている。大切な人物
やキーワードがしっかり入っている。
・本のポップは,この先が気になるような,興味を
ひく書き方をしている。
2.自分が選んだ作品をプレゼンする「冒頭」
「最 ○今まで学んできた物語の読
みを生かして,自分が着目し
終場面の前」の文を,自分が着目した人物や言葉
てきた登場人物の行動や会
などのキーワードをもとに書く。
話,相互関係,情景描写など
【冒頭】
を活用し文章を書くよう声
・
「透明人間になっちゃったのかな。
」両親が構って
をかける。
くれずおじいちゃん家に預けられ,弟が生まれる
重点②A
ことが嫌なふみや。しかし,おじいちゃんとの関
わりにより,
「命」について考え成長していく。
おじいちゃんの言葉や行動に「命」について考え ○どのように書いたらよいの
か思いつかない児童には,予
るキーワードがあります。ふみやの素直になれな
め準備した文章を提示する。
い葛藤にも着目して読んでください。
それをもとに,自分が着目し
・終わり方に納得できない!家族に捨てられた犬の
てきたものが何だったのか
タロウ。タロウの気持ちの変化や,出てくる人物
上丸子小学校- 95
ト。
2
に着目して読んでください。物語の最後,タロウ
が考えたことは…。
・太一は海に生きる。海に生きる太一が,おとうを
破った瀬の主,追い求めていた夢の魚と合ったと
き,とった行動は…。おとうや与吉じいさの言葉,
そして母の存在に注目して読んでください。
【最終場面の前】
・この物語の最終場面はどうなると思いますか?私
は,ふみやが弟に対する考えが変わって成長する
場面を描きました。おじいちゃんがしてくれたよ
うに弟を抱きとめたり,トマトのことを弟に話
し,いつまでも弟を大事にすると考えました。最
後にどんなふみやの成長が描かれ,どんなキーワ
ードが入ると思いますか?
・残りの一段落。6行。あなたなら,どんなタロウ
の言葉が入ると思いますか?私は,モモちゃんと
の幸せな生活を描きました。
「ぼくはモモちゃん
と,毎日一緒に遊んで家族になっていくんだ。黄
色いボールは,小屋の奥にそっとしまっておこ
う。
」です。モモちゃんは,死にそうなタロウを
助けてくれた存在なので書きました。でも,黄色
いボールを大切にしてきたタロウは,このボール
を心の奥にしまっておくと考えました。この6行
には,どんなキーワードが入ってくると思います
か?
・この先,太一はどんな行動をとると思いますか?
僕は,クエを打つべきと考えています。クエは,
太一がずっと追い求めてきた夢です。まぼろしの
魚です。そして,憧れていた父を破った魚です。
本当の一人前の漁師になるため,瀬の主に挑む。
あなたは,どんな最終場面を描きますか?
上丸子小学校- 96
ワークシートを振り返り,文
章を考えるよう声をかける。
重点②A
また,文章の構成を確認して
参考にするよう声をかける。
重点①A
※事後学習
朝の時間を用いて,家族からも
らった感想や,それに対する自
分の考えなどを交流し,振り返
る時間を設ける。
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