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Page 1 内外情報 圏 ITER工学設計活動の成果 日本原子力研究所那珂

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Page 1 内外情報 圏 ITER工学設計活動の成果 日本原子力研究所那珂
◎内外情報
国ITER工学設計活動の成果
日本原子力研究所那珂研究所
はじめに
EU,日本の四極が協定に調印し,6年間の予定で活動
ITER工学設計活動はこれまでに例のない四極の共同
が開始された.EDAはITERの建設を判断するにあた
作業として1992年7月から進められてきた.このほど,
って必要となるすべての設計や技術データを整備するこ
ウィーンのIAEA本部で開かれた第14回ITER理事会
とを目標とする.
までをもって当初予定の6年間が過ぎたので,ここにそ
1)1TER/EDA計画の規模
EDA計画の規模は1989年当時の見積りで総計約250
M$相当の設計作業と,750M$相当の工学R&Dを各極
の成果を報告する.
1.ITERの計画の端緒
国際熱核融合実験炉ITER(lntemationalThermo−
が分担して実施し,成果を共有しようとするものであっ
nuclear Experimental Reactor)計画の端緒は1985年,
た(Table l).さらに,装置設計の基本になっているプ
対話を模索していたレーガン,ゴルバチョフ米ソ両首脳
ラズマ特性については設計の信頼性を高め,装置の運転
が東西融和の象徴として核融合実験炉の共同計画を提案
領域を拡大するため,データベースの更なる整備を図り,
したことに始まる.その後EC,日本を加え,四極の国
設計に反映させる必要があった.このため各極の既存の
際協力として実施する運びとなった.ITER計画の特徴
核融合実験装置を用いた研究開発によって自発的貢献に
は,純粋に平和目的の核融合エネルギーの開発をめざし
よりデータなどを提供することとなった(ITER物理R&D).
た活動であること,四極がまったく対等の立場で貢献し,
2)組織
EDA計画のための組織として,ITER理事会(各極
その成果は平等に享受することを基本原則にしてきたこ
2人の代表から構成)が活動全体を監督した.また,理
とである.
ITER計画は,
事会には運営諮問委員会(MAC)と技術諮問委員会
・定常状態を究極の目標とするDTプラズマの制御
(TAC)の2つの委員会が設けられ,それぞれ運営およ
された自己点火と長時問燃焼を実証すること,
び技術面で理事会に助言した.活動実施のためには強い
・核融合炉に必要な技術を統合されたシステムにおい
権限が付与されたITER所長を中心とした組織がつくら
て実証すること,
れた(Fig.1).すなわち,国際混成メンバーによる共
・核融合の実用化に必要な高熱流束機器,核工学的機
同中央チーム(Joint Central Team)と,これを支援す
器の総合的な試験を実施すること,
る各極国内チームとが構成された.各極は共同中央チー
を目的としている.
計画の第1段階として1988年から2年8ヶ月をかけて
Table l ITER工学設計活動の規模
ITERの概念設計活動(CDA)を実施した.この活動
設計活動
は毎年約半年間ドイツのガルヒンクにあるマックスプラ
共同中央チーム1約840人・年
国内チーム:約500人・年
ンクプラズマ物理研究所に各極から集まった研究者,技
術者合計約40人による設計作業が中心となった.そして,
R&D活動
予定どおり1990年i2月,概念設計報告書を完成させて成
・工学
功裏に終了した[1].
2.ITER工学設計活動
概念設計活動に引き続く工学設計活動(EDA:
・物理
Engineering Design Activityの略,日本の詳細設計に
ほぼ該当する)については,1992年7月,米国,ロシア,
1344
総額750M$のR&D
超電導コイル、炉構造、遠隔保守、
ブランケットなど9分野
プラズマに関し各極の既存計画からの
自発的貢献
内外情報
Table2 1TERの詳細技術目標
運営諮問委員会
EDAの設計技術目標
項 目
技術諮問委員会
理事会
プラズマ性能
講斬.
共同中央チーム到内チーム
E U園
、1霧i
日本回
ロシア團
燃焼時問
工学試験
運転試験
米国聾
誘導運転で1,000秒
原子炉用ブランケットの試験(発電実証を含む)
基本性能段階(約10年間)自己点火,長時問燃焼,定常運転実験,累積数千時間の燃焼実験によるブランケット機能試験
高性能段階(約10年間)高積算中性子照射実験基本性能段階の結果のレビューを行い,本段階の詳細計画を立てる
Fig.1 1TERの組織図
ムヘ均等な人数の優れた人員の派遣を要請され,所長は
直接共同中央チームを指揮して設計を主導した.
共同中央チームはサンディエゴ(米),那珂(日),ガ
ルヒンク(EU)の3ヶ所のサイトに各極から集まった
R&Dの特徴であり,企業と一体となった開発が展開さ
研究者・技術者の国際混成設計チームが組織され,各サ
れた.
イトの役割を分担してITERの設計が進められた.各セ
他方,ITER活動全体について,原子力委員会は核融
ンターともほぼ同程度(当初20人程度,EDAの後半で
合会議のもとにITER/EDA技術部会を設けて適宜レビ
は60人程度)の人数規模となった.
ューを行った.
共同中央チームの那珂サイトでは超伝導コイル,電
4)ITERの詳細技術目標
源・制御,遠隔操作技術,トリチウムプラントなど真空
EDAの開始時点で理事会によって設けられた特別作
容器より外側の機器の設計を担当.EUのガルヒンクサ
イトでは真空容器と,ダイバータやブランケット等その
ITERの詳細技術目標を定めた.これは,ITERの設計
内蔵機器の設計を担当し,サンディエゴサイトではそれ
に対する要求,運転に対する要求,試験計画に対する要
らを統合しつつ,安全性やプラズマ物理設計,計測器設
求などを含むものである(Table2).例えば,誘導電流
計を含め,設計統合や計画管理を担当した.共同中央チー
ム「とは別に,各極に組織された国内チームに対しては,
駆動方式のみでプラズマ電流を維持する時問を1ρ00秒
とした.また,完成後の試験計画については,最初の約
所長はその代表者である国内チームリーダと作業取り決
10年問はプラズマの自己点火や長時間燃焼の実証,トリ
めを結んで共同中央チームだけでは実施できない設計の
チウム増殖ブランケットモジュールでの機能試験などを
支援や設計の成立性を確証するための工学R&Dの実施
実施する段階として,またその後の約IO年間は原型炉に
業グループ(SWG−1)は,各極の調整を行って
を要請した.
向けた増殖ブランケットなどの高い積算中性子束照射の
3)国内体制
材料試験などを行う高性能段階が計画された.
5)国内チームにおけるITERの作業分担
ITER活動の実施にあたっては日本原子力研究所が実
施機関として国の指定を受け,国内チームを形成したが,
設計に関しては,所長が支援を必要とするものについ
学界,産業界の力を結集するため,核融合科学研究所・
て各極国内チームと調整を図った上で実施し,共同中央
チームを支援した.
大学との関係においてはITER/EDA研究協力委員会が
文部省側に設けられ,この委員会を通して大学側からの
工学R&Dは,所長が主導する工学設計の成立性を十
研究協力が行われた.また,産業界からは原研への出向
分に保証し,建設段階に移行する技術基盤を確立するた
という形態での国内チームヘの参加,および共同中央
めのものである.この目的のために具体的R&D課題の
チームヘの参加による協力,さらに国内チームからの設
同定と実施計画が立案されたが,個々の課題(タスク)
計外注や工学R&D試作要素機器の製作という形での協
の各極への配分は,不必要な重複を避け,既存の施設を
力が行われた.とくに超伝導モデルコイルに代表される
最大限効果的に利用することを基本にして決められた.
ように製作法そのものがR&DであるのがITER工学
貢献の均等性をいかに確保するかについては,個々の
1345
プラズマ・核融合学会誌 第74巻第11号 1998年11月
タスクについてそれぞれ実施した場合の貢献度(クレジ
ット)があらかじめ決められ,次に各極ごとに実施した
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
西暦
タスクのクレジットの総計がほぼ均等となることを目標
延長期間
工学設計
活動
に分担を決め,実施した.各極から資金を1ヶ所に集め
i▲ i▲i ▲i l▲
概要 i中間i詳細 最終
て,それを使って実施したのではなく,各極は自国内で
設蹄墾計綱計騨弊
自国の資金により分担したタスクを実施し,クレジット
によって均等貢献をすることを責務とした.これらの国
i共i
:同l
l評l
i価i
準備協議/協議
内チームで実施する設計,工学R&Dとも各タスクごと
建設活動
▼i
に所長と国内チーム間に詳細な技術仕様が規定された作
建設
業取り決め(Task Agreement)を結んで実施した.
他方,物理R&DについてはJT−60など3大トカマク
Fig.2 1TERIEDAのスケジュール
に代表される各極のプラズマ実験装置を活用し,ITER
の炉心プラズマ設計に必要な7つの重要課題について系
Table3 1TERIEDA資源の各極別分担
統的なデータの取得と整理評価作業が行われた.これら
Party
はITER所長と各極代表者とから構成するEER物理委
Technobgy R&D (KIUA)
JCT&HT Design (PPY)
…
員会の調整のもとで各々の課題に対応して専門家グルー
圏 EU回 JA國 RF騒 US
418
プを組織して行ったもので,炉心プラズマのデータベー
i i i
スの確立に大きな貢献をなした[2].
186
l i
378
182
6)共同中央チーム作業サイトの支援
274i …
共同中央チームの作業サイトを持つホスト国は協定に
・83,F
よって共同中央チームの活動に必要な支援を行うことと
36§・
なっている.国の指定により原研は那珂作業サイトのホ
i i i
ストの役割を果たすため,ITER設計棟(2,300平方メー
114
i
トル,約80の研究員室,大中小会議室,CAD室)を提
供するとともに,約50棟の国際住宅,国際学校などイン
ンとなっていた中問設計報告書が,1995年12月の第9回
フラストラクチャも整備した.
ITER理事会で承認されたが,これにより,設計の骨格
ユゲ・サイト長以下約60名弱の共同中央チーム員と,
と,コスト見積や,安全評価,建設工程などプロジェク
常時数人の各極国内チームからの短期滞在者(VHTP),
トの大枠が定められた.さらに1996年12月には詳細設計
原研が提供した英語に堪能な秘書やCADデザイナー,
報告書が,また,1年後の1998年2月には最終設計報告
計算機支援員,技術タイピストなど約20名のホスト支援
書が所長から提出され,いずれも各極国内のレビューを
員を加えた計80名強の人が設計活動を展開した.また,
経てITER理事会の承認を得た.
これに加えて各分野の技術会合やワークショップなどが
2)投入された資源
Table3はEDAの6年間に投入された資源を各極別
頻繁に開かれた.
3.工学設計活動の進展と成果
にまとめたものである.このうち共同中央チーム欄には
1)主要マイルストーン
各極から派遣した人員の積算人工数を人×年の単位で,
EDA発足後の最初の段階で,理事会はレブー前
ITER所長に対してEDAの作業の基礎となる概要設計
また国内チームで実施した設計作業量と工学R&Dをそ
れぞれ専門技術者×年とIUA (1989年当時の米国1k
(Outline Design)を示すよう求めた.また,設計の進
$相当)で示した.この問1994年頃にはロシアの財政危
捗に合わせてレビューを行うため,6年間の中でいくつ
機が,また1995年より米国の核融合予算の削減を受けて
かの主要マイルストーンが設けられた(Fig.2).所長
ITER全体の予算,特に工学R&Dの予算は当初予定よ
は概要設計書をとりまとめ,1994年1月のITER理事会
り減少したが,所長を中心とする計画の見直し配分調整
に提出して承認され,ITERの主要諸元が決まった.そ
により,要素試験での性能確認と,実機の製作性の実証
の後94年7月に所長の交代があり,現在のエマール所長
に関するものを優先して実施した.
の下で設計検討が進められた.そして,次のマイルストー
1346
内外情報
3)設計の成果
に,膨大な中性子によるエネルギーを熱に変換すること
詳細な設計については別途報告されるのでここでは概
である.また,中性子放射から超伝導コイルなどを保護
要に触れるにとどめる。Fig.3にITERの鳥鰍図とその
したり,プラズマ中に不純物が蓄積されないよう粒子の
主要諸元を示す.主要プラズマパラメータは,各極の物
排気を行うことである.
理研究者の勧告に基づき,最新プラズマ物理に関する知
遮蔽ブランケットは運転期後半の高性能運転段階で燃
見から設定されたものである.ITERの全体構成は,ト
料のトリチウムを自己生産する増殖ブランケットに交換
カマク本体,加熱・電流駆動装置,計測系,トリチウム
できる設計になっている.内部機器および容器に流入す
循環系,冷却系,冷凍系,電力供給系などから構成され
る熱は冷却系によって環境に排出される.
る.トカマク本体の主要機器である超伝導磁場コイルは
超伝導コイルを極低温で機能させるため,トカマクは
トロイダルおよびポロイダル磁場コイルの2種類があ
直径高さ約40mのクライオスタット内に設置されてい
り,いずれも液体ヘリウムで極低温に冷却される.トロ
る.トロイダルコイルは熱膨張と電磁力による径方向の
イダル磁場コイルはNb3Snの超伝導体を使用し,パル
移動が可能なように板バネ積層柱により支持され,また
スコイルであるポロイダル磁場コイルはトカマク中心に
真空容器の脚部はトロイダルコイルからワイヤーロット
ある中心ソレノイドコイルはNb3Sn,外側のコイルは
によって釣り下げられる.
すべてNbTiである.トロイダルコイルと中心ソレノイ
トリチウム循環系では,トーラス排気ガスの中から核
ドコイルは相互に力を及ぼし合うバッキング方式が採用
融合反応生成物であるヘリウムを不純物として除去する
され,またトロイダルコイルの転倒力はコイル上下から
とともにトリチウムと重水素とを精製分離して燃料供給
はめ込まれたクラウンと呼ばれる支持構造物とコイル間
系に戻す.
支持構造物によって抑えられる.
プラズマ加熱・電流駆動システムはプラズマを加熱す
二重の壁の間をリブでつなぐ構造の真空容器内には,
るとともに電流の一部を駆動し,DT燃焼制御および定
第一壁,遮蔽ブランケットモジュール,ダイバータカセ
常状態の長時問化を可能にする.
ットなどが取り付けられるが,これらの機能は,プラズ
4)工学R&Dの進展と成果
マからの輻射および粒子損失による熱を吸収するととも
工学R&Dについては,1996年7月に,それまで個々
に進めてきた技術開発を,主要7項目,すなわち,超伝
導コイルの2項目,真空容器,ブランケット,高熱負荷.
ポロイダル磁場コイル
ダイバータ,および遠隔操作技術の2項目に整理・統合
した7大工学R&Dプロジェクトを定義し,それぞれに
レ鋪澆
ついて,幹事極が主体となり,他の三極が協力する形で
クライオスタッ1
㌧、i
開発を実施した.また,周辺機器技術としてトリチウム
ブランケット
モジュール
真空容器
燃料サイクル,加熱装置技術,計測技術,安全性などに
ついても工学R&Dが進められた.
ダイバータ
麟
トロイダル磁場
コイル
単位:mO
これらの活動の結果得られた主要な成果を,以下に列
挙する.
①超伝導コイル技術
中性子壁負荷
1MW/m2
核融合熱出カ
150万KW
・ITER用ポロイダル磁場モデルコイル開発とし
て,従来のものに比べ発熱を1/5に抑えた高性
能Nb3Snの素線の開発に成功するとともに,こ
プラズマ燃焼時間
1,000秒まで
の素線を用いた高強度コイル製作技術を開発.
非誘導電流駆動
10,000秒まで
・日本,および米国が製作を分担しているモデルコ
プラズマ主半径/副半径
8.1m/2.8m
プラズマ電流
21MA
イルのモジュールは,それぞれ約9割の製作が完
了,平成10年(1998)度に米国製作のモジュール
トロイダル磁場強度
補助加熱パワー
5.7T(フ。ラズマ)/12,5T(コイル)
100MW
Fig.3 1TERの鳥瞼図と主要諸元
の日本への輸送と日本製作のモジュールとの組み
合せと据え付け,11年(1999)度に冷凍・通電試
験が開始される予定.
1347
プラズマ・核融合学会誌 第74巻第11号 1998年11月
・このモデルコイルの性能試験を行うための試験施
理技術など核融合基礎技術を発展.
設は既に完成している.
(H)加熱装置技術
・直流磁場を扱うトロイダル磁場モデルコイルにつ
・粒子ビーム加熱装置技術として,大型イオン源を
いては,コイルの製作性に重点が置かれ,EUに
たシャーパネルを重ね合わせた構造のR&Dが進
独自に開発して大電流化技術を確立.また,1
MeVの負イオンを収束良く加速する高エネル
ギー静電加速技術を開発し,ITERに必要な粒子
み,11年度に試験開始の予定.
ビームの原理実証実施.
②真空容器
・高周波加熱装置技術として,170GHzという高い
・外径9m,断面高さ15mの真空容器を,±3mm
周波数でIMW級の高効率ジャイロトロンを開発
という高い精度で製作する技術を開発し,実機の
し,最重要な発振管について初期の目標達成.
成立性を実証した.
(皿)安全性確証試験
おいてパンケーキ状の溝に円形導体が埋め込まれ
③ブランケット
・熱水力安全性に関する実験などを行い,真空容器
・熱伝導に優れ,構造的にも強固なブランケットの
内冷却水漏洩など異常事象の安全性を評価する
筐体を開発するため,高温等方加圧接合法(HIP)
コードを検証.これらのコードはITERの安全評
を取り入れた製作技術を確立.
価解析書のツールとして使用.
・筐体に収納されるトリチウム増殖材と中性子増倍
5)最終設計報告書
材ペブルの製造法の開発を進めるとともに,小型
上記のような進展を踏え,最終設計報告書がまとめら
モデルによる中性子照射下の機能試験を世界に先
れた.最終設計報告書は物理R&Dおよび工学R&Dの
駆けて実施するなど,工学的なデータベースの蓄積.
結果に裏付けされ,コストレビュー,安全解析,建設工
④高熱負荷ダイバータ
程を含む,ITERのシステム全体にわたり整合性のある
・受熱面とヒートシンク材との異種材料接合技術な
統合化された工学設計となり,その構成と分量は,
どを開発し,原子炉の100倍もの熱負荷に耐える
最終設計報告書技術文書 650頁
高い耐熱性能を実証.
安全評価解析書 1,600頁
⑤遠隔保守技術
詳細技術資料類 35,000頁
・強いγ線環境下で,ブランケットなど炉内の重
各極分担の設計タスク最終報告書
量物(約4ton)を高い精度(±2mm)で取り扱
平均 約100頁×590件=約60,000頁
う遠隔操作機器を開発.
各極分担のR&Dタスク最終報告書
・炉内検視用ペリスコープなど耐放射線性機器の開
平均 約100頁×680件雲約70,000頁
発と,管内自走式ロボットによる配管などの溶
という膨大なものである.
接・切断・検査技術を開発し,ITER炉内機器の
そして,このような工学設計活動の成果について,
保守に確信を得た.
ITER理事会の諮問組織であるITER技術諮問委員会は,
「ITERの諸元と設計は,EDA技術目標を満足してお
⑥その他の工学R&D
(i)トリチウム燃料サイクル
り,炉本体,補機設備および関連施設を含む統合化さ
・同位体分離,不純物精製などの要素機器の技術開
発を実施するとともに,トリチウム安全技術開発
れたシステム設計となっていること,また,工学
R&Dの成果によれば,主要な設計の選択は適切であ
の一環として,気体分離膜を用いたトリチウム除
ると結論できると同時に,大型機器の製作可能性が実
去設備を開発し,従来方式の約1/10の小型化に
証されたこと,さらに物理R&Dの成果によって
成功.また,高精度,遠隔・実時間分析トリチウ
ITERのプラズマ性能の予測精度が格段に向上したこ
ム計量システムを開発し,実用化に見通しをつけた.
と,および安全解析および評価によりITERの持つ高
・燃料の給気・排気技術として,給気のための高速
い安全性と環境適合性が示されたとし,結論として,
ペレット入射装置(2.6K:m/s)を開発.また,
ITERの最終設計とR&Dの成果は,参加各極が
高圧力域(700Pa)で排気可能な大容量ヘリカル
ITERの建設判断をするとしても,それに必要な技術
溝真空ポンプを開発.
資料として十分である.」
と評価した.
・微量ガス分析技術の開発やセラミックスの表面処
1348
内外情報
そして,我が国では原子力委員会核融合会議において,
おわりに
r最終設計報告書は現時点におけるITER/EDAの成果
ITERは四極が均等の立場で進めてきた前例のない大
として適切なものである.」と評価した.また,他極の
型プロジェクトである.EDAを通して得られた統合化
国内においても同様の高い評価を得た.
された工学設計と工学R&Dの成果は実験炉実現の確実
4.建設に向けての協議
なmethodologyを提供したことを意味し,技術的には
ITERの建設計画については,1995年末に開催された
ITERの建設の見通しが立てられた.これらの成果は今
第9回ITER理事会で「サイト要件とサイト設計仮定」
後どのような枠組みになっても必ず実験炉の建設に生か
が承認され,建設地に要求される土地,地盤,電力,水,
されることになろう.他方,今後検討すべき課題ももち
輸送などの技術仕様や社会環境等が明らかとなった.ま
ろん残っている.例えば,実験炉建設資金の確保と,建
た,1996年初頭よりITER建設・運転のための諸問題を
設地選定,資金分担方法,運営方法などがあるが,その
検討していた特別作業グループ(SWG)が将来計画,
根底にはいかにして開発方法や製作方式,科学技術文化
利益とコスト負担,サイト選定と立地,事業体の機構と
や思考形式の異なる国が共同して一つの目標を達成し得
法的枠組みなどについて報告書を提出し,1996年7月の
るか,別の側面から見れば,環境とエネルギー,科学技
第10回ITER理事会にて承認されたことに伴い,各極は
術開発,社会受容性,国民的コンセンサス作り,外交,
ITER建設のための準備協議を開始する用意があること
国際情勢と国家間の力学,これらの側面をすべて含んだ
を確認し合い,EDAの枠組みの外で準備協議が開始さ
総合間題に対する世界的合意形成の探究である.それに
れた.しかし,日本の財政構造改革,EUの通貨統合な
は粘り強い対話,議論,協議により理解を深め,解決し
どにより各極の財政状況は厳しく,他方,建設実現性を
て行く必要がある.この過程で我が国が真に国際的イニ
高めるための低コスト化の検討が必要との認識ともあい
シアティブをとる立場に立つことができたとき,実験炉
まって,四極は3年間EDA協定を延長して活動を継続
建設が実現すると信じるものである.
する計画で準備が進められていた.しかし,日本,欧州,
(1998年9月24日受理)
ロシアは延長の協定に署名したものの,米国が期限内に
参考文献
署名を完了できず,米国の署名を待っている状態である.
[i]ITER概念設計報告書,(IAEA出版,IAEA/ITER/
DS/18,Feb.1991あ
[2]プラズマ・核融合学会誌74768(1998).
1349
◎内外情報
■会議報告
と評価する声も多かったように思われる.
プラズマ物理国際会議(ICPP98)兼第25回
なお発表件数は,レビュー22件,トピカルレクチャー
制御核融合とプラズマ物理に関するヨーロッ
57件,口頭発表(Oral Contribution)26件,ポスター
パ会議(EPS)
発表約800件,この内,日本からはレビュー3件,トピ
畠山力三(東北大工),天岸祥光(静岡大理),
カルレクチャー10件,口頭発表5件,ポスター発表約80
芳野隆治(原研那珂研),岡村昇一(核融合科学研),
件があった.また参加者は,総計約980名で,内訳は地
林 隆也(核融合科学研),西原功修(阪大レーザー),
元のチェコが78名,ヨーロッパからはロシア127,ドイ
佐藤浩之助(九大応力研)
ツ104,ウクライナおよびフランス57,イギリス54,イ
タリア44,オランダ28などであり,そのほかからは日本
105,米国80,ブラジル20名の参加者があった.以下に
1.はじめに
内容の概略を報告させていただく. (佐藤浩)
本年6月29日から7月3日までチェコのプラハにおい
て,1998年プラズマ物理国際会議(ICPP98)兼第25回
2.基礎実験・プラズマ物理一般
制御核融合とプラズマ物理に関するヨーロッパ会議
(EPS会議)が開催された.ご存知の方も多いことと思
基礎実験・プラズマ物理一般に関する講演・発表は次
うが,プラズマ物理国際会議は,1980年4月名古屋にお
の4項目に大別される:(a)ダストプラズマ,(b)電場形
いて“lntemational Congress on Waves and Instabili−
成,(c)新領域プラズマ,(d)プラズマ応用.(a)の強結合プ
tiesinPlasmas”と“KlievlnternationalConferenceon
ラズマのレビューにおいては,三次元クーロン結晶の観
PlasmaTheory”との“JointConference”として開かれ
測と渦励起,異常輸送,ダスト波動,電離クランプ,カ
たものが第一回となり,その後イエテボリ(1982),ロー
オス的運動を伴う乱れた液体と気体への相転移に関する
ザンヌ(1984),キエフ(1987),ニューデリー(1989),
実験結果が報告された.トピカル講演では,レーザービー
インスブルック(1992),イグアス(1994)と巡り,前
ムの輻射圧力によって平面波を励起して,相転移支配パ
回(1996)再び名古屋にて開催されたものである.ヨー
ラメータの遮蔽長を決定する方法が紹介された.また,
ロッパの立場からすると,ICPPをいわゆるEPS会議と
ダストの帯電,ダストーダスト相互作用に起因するプラ
独立に同じ年に開催することは難しく,今回はインスブ
ズマ集団運動の新しい側面が報告された.このほか,多
ルック会議(1992)に引き続き,第25回ヨーロッパ会議
数のポスター発表があり直流放電プラズマを用いた結果
との合同会議となった.
等が報告された.
さて会議の内容は,ダストプラズマ,ポテンシャル形
(b)磁力線方向電場形成機構のレビューにおいて,準静
成,波や波と粒子の相互作用等を初めとするプラズマの
的な電場に関連したデバイスケールのプラズマ構造の観
様々な基礎的現象に関するものや,プラズマにおける問
測結果が報告された.観測電場信号は,磁力線方向には
欠・突発現象,分岐現象,自己組織化現象などを含めた
両極性であり垂直方向には単極性で,時折,H+サイク
非線形現象,また天体・宇宙におけるプラズマ,磁場閉
ロトロン周波数近傍で孤立波的構造を示した.この三次
じ込めおよび慣性核融合プラズマ,さらにプロセスプラ
元電子構造がイオンと相互作用し抵抗を発生させ,これ
ズマを初めとするプラズマの応用と,非常に広範囲にわ
により沿磁力線電場が維持されるというシナリオが示唆
たるものであり,プラズマ物理をベースとしたそれぞれ
された.
(c)のトピカル講演では,中性子星等から生成される高
の領域・分野での最近の進展を,横断的にまた系統的に
聞くことができるものであった.内容の分布としては,
エネルギーのニュートリノと電子一イオンプラズマとの
EPS会議との合同のため,必然的に核融合プラズマに
相互作用による波動発生の非線形機構,ニュートリノの
比重が多くなる傾向がありそれについての批判も聞かれ
動重力による準定常磁場発生等が論じられた.非中性電
たが,また一方,その中でよく工夫をして構成してある
子プラズマに関しては,リング電極配置中フィールドエ
1350
内外情報
ミッタアレイ陰極を用いた実験が,負イオンプラズマに
tron−positronプラズマに関するSurkoやMo勉の講演
関しては,正イオンビーム存在下の孤立波伝播,巨大負
であった.
イオン生成による構造形成の研究等が報告された.
ところで,日本の「ようこう」でのコロナのリコネク
(d)のトピカル講演では,高周波プラズマ源を容量性結
ションを裏付けるX線撮影や,「Geotail」での世界に誇
合,誘導性結合,波動励起放電の3つの範疇に分け,各々
るべき数々の成果があるにもかかわらず,日本からのそ
の放電物理・機構と支配的となるパラメータ領域が示さ
れらの発表がまったくなかったのには,『少々考えさせら
れた.また,電池用アルゴン/水素混合の膨張熱プラズ
れた.IC:PPはプラズマ物理学分野の最高の国際会議で
マ源の開発と従来の100倍のアモルファスシリコン堆積
あるとの認識が日本のスペース関係者にはまったくない
率の達成が報告され,この高速成長の定量的モデルが提
のか,それともICPPはもはや核融合の会議だと思われ
案された.さらに,ポリマープロセス用の大気圧非平衡
ているからであろうか.そういえば,ヨーロッパの
プラズマに関する口頭発表があった. (畠山)
「Freja」関係の報告もなかったように思われる.
(天岸)
3.宇宙・天体プラズマ関連
4.核融合プラズマ(卜力マク)
太陽コロナに関係した講演はいくつかあったが,その
中でAmariはコロナの磁場構造の決定には,測定可能
今回のハイライトは,内部輸送障壁(ITB)であり,
な光球面上の磁場を境界条件にMHDモデルを構築する
極めて多くの発表があった.JT−60Uは,負磁気シア配
ことの必要性を強調していた.また最近観測されたコロ
位でITBを形成し,等価QDTとして1.25を達成した.
ナからの太陽風の問欠性を,VeltriはMHD乱流による
TFTRは,ITB形成の予兆現象,IBWによるポロイダ
二次元渦で解釈しようと試みていた.また,コロナ磁場
ル回転シアの制御を示した.JT−60UとJETは,ITBで
の非線形発展やKH不安定性,それとリコネクション
の内向きの速度ピンチを観測した.RTP(オランダ)は,
との関係の報告もあった(Einaudi).さらにこのような
安全係数が整数(または半分)の近傍での輸送障壁の形
コロナと関係した太陽フレアや磁気嵐ディスラプショ
成を,ECHの吸収位置をl mmごとに掃引したときの
ン等の大規模な爆発的事象を,ラインタイングのレイ
中心電子温度の段階的な変化より推察した.
リー・テイラー不安定性の非線形モデルで統一的に扱お
JETのDT実験では,核融合反応出力として16MW,
うというのがCowleyの提案であった.地球磁気圏で
の最も興味ある現象の一つに,オーロラと関係して,
α加熱パワー密度としてITERの計画値を超える0.55
MWm『3,さらに,準定常的な運転でQDT=0。2を4.5秒
magnetic−fie1(1−alignedcurrentがある.Ergunの講演
間得た.エネルギー閉じ込め時間の質量且(漏勉H+2物
はデバイ長サイズの孤立的構造が,無衝突プラズマ中で
+3nT〉/〈%H+πD+町>)に対する依存性を調べ,ELMy
の準静的平行電場の形成に重要な役目を果たしていると
H−modeでは依存性が非常に弱いことを示した.一方で,
いうものであったが,この分野の興味ある報告はポス
Hモード遷移の加熱パワーしきい値はA一1で低減する
ターに多かったように思われる.中でもBremingと
Falthammarの報告は,電離層への中性粒子打ち込み
とした.反射計・CO2散乱による密度揺動の計測が,多
くの装置より発表された.特に,JETは間欠的揺動と
の実験結果に基づくもので,重い少数イオンのバンチ
閉じ込め特性の関係を示し,Tore Supraは,周辺部・
ングとそのフィードバックにより沿磁力線電流がアルヴ
SOL層の密度揺動での上下非対称性を示した.JET,
ェン波によって運ばれるというもので,このバンチング
ASDEX−U,JT−60Uでのダイバータの改造による実験
は運動論的アルヴェン波のpolarization電流に代わるも
では,主プラズマ周辺の中性粒子圧力を低減したものの
のであると思われる.そのほか,BinghamやLeubner
とAssisのポスターも沿磁力線電流もしくは加速に関係
閉じ込めが改善されていない.しかし,SOL層・ダイ
バータ領域での粒子フローの測定が進み,ダイバータ領
したものであったが,いつ行っても説明者がいなくて話
域から主プラズマヘ向かう逆粒子フローの存在が
を聞くことはできなかった.Moralesの話は,電子の表
ASDEX−U,DH:1−D,Alcator CMod,JT−60Uで確認さ
皮厚さ程度のフィラメント構造がアルヴェン波によって
れた.今後,粒子フローの観点から,ダイバータ性能の
形成されるという興味ある話であったが,実際の実験と
最適化が進むものと予測される.ちなみに,ヘリウムの
の関係がよくわからなかった.そのほかで興味あったの
定常排気がJT−60Uで実証された.TEXTOR−94で発見
は,パルサーやブラックホールとの関係も深いelec一
されたRI(Radiation Improve(1)モードが,DIII−D,
1351
プラズマ・核融合学会誌 第74巻第11号 1998年11月
TFTR,Tore Supraにて再現された.Alcator C−Modは,
も行われている.さらに中型のヘリカル装置である
周辺リサイクリングと密度・MHD揺動が大きいが,高
TJ−II(スペイン)が実験を開始した.米国ではTFTRの
い閉じ込め性能をもつEDA(EnhancedD−Alpha)モー
実験を終了したプリンストンが,新しい概念に基づくヘ
ドを発表した.JT−60Uは負イオン源NBによる電流駆
リカル型装置をNSTXに次ぐ第二の実験プロジェクト
動実験を進め,TRIAM−IMは,LH波による2時問13
としてスタートさせようと目論んでいる.このように見
秒の電流駆動の達成とそこに至る重要な技術開発につい
るとヘリカル系磁場閉じ込め研究は今,一種の隆盛期,
て,また最近得られた高イオン温度モードの長時間維持
あるいは歴史的に見れば復活期にさしかかったといえる
の成功について講演した.
だろう.RFPは,磁場閉じ込め研究分野で少し以前流
低アスペクト比トカマクのSTARTは,l MWのNB
行ったselforganizationの話題を提供した経緯もあり,
加熱で,βr∼40%,βN=5.6を達成するとともに,ペレ
物理寄りの話題には比較的よくマッチする.今回も乱流
ット入射でグリーンワルド密度限界の1.6倍を得た.
現象に対する理解を系統的に調べた総合報告があり,研
MAST(英国)は秋に運転を開始し,GLOBUSM(ロシ
究の着実な進展を印象づけた.これまでどちらかという
ア)は来年初めより,NSTX(米国)は来年4月より運転
と,興味深くはあるが閉じ込め性能は今一つといった面
を開始する.一方で,ITER計画の経費削減の動向につ
もあったが,真空容器とプラズマとの関係などの地味で
いての説明があった. (芳野,佐藤浩)
はあるが閉じ込め装置としての基本的な面での改善が進
んできて,一人前の閉じ込め研究に歩みを進めつつある.
5,核融合プラズマ(ヘリカル・オルターナティ
ウィスコンシンのMSTに加えて,イタリアのパドバで
ブ関係)
のRFXの実験が進んでいる一方,電子技術総合研究所
核融合研究専門の国際会議と違い,本来プラズマ物理
で新しいTPE−RXが実験を開始しつつあり,閉じ込め
一般がテーマであるこの会議では,トカマク以外の磁場
装置らしい規模の装置がそろってきた.
閉じ込め研究の発表にもかなりの時問枠が振りむけられ
このようにオルターナティブの研究分野に限ってみる
ており,バランスのよいプログラムとの印象を持った.
と,明らかに研究の流れは今まさに発展期にあるといっ
発表の内容も,パラメータの達成よりも,閉じ込め研究
てよい様相を見せている.またトカマク研究自体も依然
における様々な物理現象に注目した研究成果や,総合的
として着実な進展があり,別に核融合研究自体が壁にぶ
な理解を目指した研究努力の成果の発表が多かったよう
つかったというようには見えない.しかし一方,会議で
に思える.このような傾向は,良くいえばじっくりと腰
のサマリーセッションにもあったが,核融合研究の全体
を落ち着けた研究の方向と評価できるが,悪くいえば,
としては先行きの不安を指摘する発言が聞かれるように
トカマクを先頭にして走ってきた磁場核融合の研究が,
なってきた.もちろん米国をはじめとする政治的な予算
ITERの切実な状況を初めとしてかなりブレーキのかか
っている状態にあることの反映という面と見えなくもな
措置での消極的な状況が,ITERを含めたトカマク分野
い.トカマク側からみれば幾分閉塞的ともいえる磁場核
な原因であるのは明らかであるが,装置の巨大化を一つ
でのきびしい研究環境をもたらしていることがその主要
融合の発展のなかで,ヘリカルを含めたいわゆるオル
の方向としてこれまで進んできた磁場核融合研究が,現
ターナティブ路線の研究は,今ちょうど一つの飛躍に差
実的な経済問題にぶつかりだしたという面も見逃せな
しかかったところである.新しい実験装置建設の話題は,
い.トカマク分野での幾分暗い状況と,オルターナティ
結局のところ閉じ込め研究の基礎であり,研究の勢いを
ブ分野での発展的な状況の対比を見るとき,今の時期,
もたらすものである.トカマクではこのところ話を聞か
オルターナティブ路線から現状を突破できるものが出て
ない新しい中型・大型装置の新設が,ヘリカル系と
RFPで実現されつつある.核融合科学研究所のLHDは,
れることができないのではないか. (岡村)
こないと,いつまでも次善の選択というレッテルから逃
建設完了とほとんど同時にプラズマ放電を達成し,プロ
ジェクト研究としての実行力をアピールした.またドイ
6.レーザープラズマ
ツのマックスプランク研究所では,LHDと対比される
本会議でのレーザープラズマに関する最大のトピック
規模のヘリカル装置である,ヴェンデルシュタイン7−X
スは,超高強度レーザーとプラズマとの相互作用であっ
装置が建設を開始していて,その閉じ込め磁場の設計の
た.すなわちCPA(ChirpedPulseAmplification)に代
表されるレーザー技術の進展により1018∼1020W/cm2
基本である先進的ステラレータ配位についての招待講演
1352
内外情報
の超高強度レーザーが出現し,レーザー核融合での高速
ぜか(S.Cowley),核融合プラズマ閉じ込めの安定性臨
点火,航跡場によるレーザー加速などを目指した実験,
界点付近で観測される間欠的・突発的粒子輸送現象の粒
理論シミュレーション研究の報告がなされた.実験で
子運動論的解釈(B.Breizman),亜臨界乱流状態にお
は,高速点火に関係したレーザードリリング,高エネル
けるスペクトル構造や問欠性,自己組織化臨界現象の解
ギー粒子(>MeV)加速と核反応中性子の検証が着目
釈(S.ltoh,J.A.Krommes)などの発表が行われた.非
された.理論については,直線偏向レーザーに対する相
線形現象理解のための概念を他の自然科学分野から輸入
対論的誘導散乱の解,相対論的二次元ソリトンの可能性
するばかりではなく,プラズマを非線形,非平衡,開放
などの報告があった.シミュレーションについては,レー
系の特質を持つ複雑性媒質と捉えることにより,プラズ
ザーフイラメンテーション,航跡場の自己変調,ホース
マ物理からむしろ新しい物理学を開拓していこうとする
不安定性などの解析に進展が見られた.しかし,まだま
研究に対する関心も強く感じられた.回転球殻ダイナモ
だ未解決の問題も多くあり,また実験との詳細な比較な
における双極磁場の生成と問欠的極性反転機構の解明な
どは今後の課題である.
ど,自己組織化現象解明における大規模計算機シミュ
強結合プラズマとの関連から,最近話題となっている
レーション研究の重要性が指摘された(林).そのほか,
ダストプラズマに関する実験,理論,シミュレーション
無衝突磁気リコネクション機構に関する研究の進展がみ
研究の報告が多く見られた.相転移,構造などの静的な
られた(J』F.Drake,堀内). (林)
性質にとどまらず,波動現象についても,線形の範囲で
8.おわりに
はじめに述べたように,今回のICPP98はいわゆる
EPS会議との合同会議であったため,参加者が約1,000
は詳細な検討がなされており,この分野の急激な進展が
印象的であった.基礎研究のみならず応用分野への発展
が期待される.
レーザープラズマについては,そのほか,高輝度X線
人,総発表件数約900件と,これまでのものと比較して
源,X線レーザーなどの報告や,流体不安定性の非線形
非常に規模の大きな会議となった.また地域を反映して
発展などの報告があったが,レビュー講演でのレーザー
か,通常のEPS会議とやや異なり旧ソ連からの約200人
プラズマを用いた実験室宇宙物理の可能性の話題が好評
の参加など,特色のある会議であった.なお,最終日に
を博した. (西原)
サマリーセッションが設けられ,プラズマ科学の将来に
ついてのコメントが10人ほどから提示されたが,セッシ
7、理論・シミュレーション
ョンの視点が明確ではなく,時問の経過がかなり遅く感
プラズマ理論研究の中心が,核融合,宇宙,基礎など
じられたのは私一人ではなさそうである.非常に広範囲
分野を問わず非線形現象理解の時代へと移りつつあるこ
にわたるプラズマ物理を対象としているこの会議の性格
とを感じさせる発表が多く行われた.間欠現象,突発現
を考える時,“まとめる”という意味でのサマリーセッ
象,分岐現象,自己組織化臨界現象など,他の広い分野
ションは極めて困難ではないかとも思われる.
の自然科学と共通した概念で,プラズマを動的な対象と
なお,会期中にICPP¢)IAC(lntemational Advisory
して捉え直そうとする姿勢が強く感じられた.これは
Committee)の会合が開かれ,日本からはIACの5人
ICPP会議が,分野ごとに細分化されてきたプラズマ研
のメンバーのうち,佐藤哲也教授(MFS)と佐藤浩之
究を,プラズマ物理研究の座標に位置付けて横断的に捉
助が出席した.かなりの議論の結果,次回のICPP2000
え直すきっかけをつくることを意図していることを反映
はケベックにて米国のAPS会議と合同で開催すること
しているものと考えられる.例えば,太陽フレア,磁気
(合同開催にともなう問題点については今後詰める.な
圏サブストームやトカマクディスラプションなど,配位
お,ICPP側の議長はR Decoste),次々回の開催地は
の時間変化は緩やかで強い線形不安定状態が実現される
オーストラリアとすることなどが決まった. (佐藤浩)
ことはほとんどないのに爆発的な現象が発生するのはな
(1998年9月22日受理)
1353
◎内タ欄
國会合案内
5)酸化割れを防止したインコロイ導体の熱処理技術
第3回超電導応用研究会シンポジウム
加藤 崇(原研)
集合場所 JR東海駅(常磐線)西口 13:30
第3回超電導応用研究会シンポジウムを「国際熱核融
(日本原子力研究所バスにて会場へ移動)
合実験炉(ITER)計画開発プロジェクト」というテーマ
オーガナイザー:高橋良和(原研),竹尾正勝(九大),
で下記により開催します.多数のご参加をお願いします.
雨宮尚之(横浜国大),福井聡(新潟大)
なお,シンポジウム終了後,日本原子力研究所那珂研
事前申し込み:12月7日(月)までに
究所の見学会も予定しています.
参加費(資料代):2,000円(どなたでも自由に参加できます)
氏 名
所 属
電話番号
メール・アドレス
見学会:14:00∼15:00日本原子力研究所 那珂研究所
をこの順序で,各項目毎に改行してお送り下さい.
日 時:i998年12月10日休)14:00∼17:30
場 所:日本原子力研究所 那珂研究所 多目的ホール
超電導試験施設(モデル・コイル及びその試験装置)
事前申し込みアドレス:
臨界プラズマ試験装置(JT−60)
sympo@scmLnakajaeri.gojp(申し込み専用)
シンポジウム:15:00∼17:30
予約なしの参加もできますが,会場及び送迎バス準備
1)ITER計画の現状と展望 Barry Green(JCT)
の都合上,事前申し込みにご協力ください.
2)原研における核融合用超電導磁石開発の概要
問合せ1高橋良和(日本原子力研究所・那珂研究所)
辻 博史(原研)
Tel:029−270−7542 Fax:029−270−7579
3)モデル・コイルの開発 大崎 治(東芝)
E−maiL takahasi@naka.jaerLgo.jP
4)46kAをつなぐ技術の製作 高橋良和(原研)
團会合案内
1/22
第9回プラズマエレクトロニクス講習会
「アモルファスシリコン微結晶シリコンの最近の話題」
「プラズマプロセシングQ&A」
松田彰久(電総研)
一ASETを見学しながら一
「新しいプラズマプロセスとその応用」
日時:1999年1月21日㈱,22日㈹
藤山 寛(長崎大)
「プラズマプロセシングQ&A」
会 場:KKR鎌倉わかみや
(鎌倉市由比ガ浜4−6−13TEL二〇467−25−4321)
見 学=ASET(技術研究組合超先端電子技術開発機構)
演題:1/21
横浜研究センター
参加費:(テキスト代含む)
「次世代デバイスのプラズマプロセスにおける課題」
(1)次世代デバイス用プラズマCVDプロセスの現状と
プラズマ分科会会員
課題 五昧秀樹(NEC)
(2)次世代デバイス用エッチングプロセスの課題
宮武 浩(三菱電機)
応物・協賛学会員
その他
一 般
30,000円
33,000円
36,000円
学 生
15,000円
20,000円
25,000円
「モデリング/シミュレーション」真壁利明(慶慮大)
定員=90名(先着順)
「プラズマ装置におけるダスト発生とピュリフィケーシ
参加締切:12月28日(月)
参加申し込み方法:以下の事項を記入した申込み用紙
ョン」 渡辺征夫(九大)
(様式自由)を下記間合せ先まで郵送,FaxまたはE−
「プラズマプロセシングQ&A」
mai1でお送り下さい.申込受付確認後,下記口座に
1354
内外情報
参加費の振り込みをして下さい.
①参加者氏名(ふりがな)②所属(学年)
参加費振込み先:さくら銀行 本店営業部
普通預金 3339808社団法人応用物理学会プラズマ
③連絡先住所・郵便番号
エレクトロニクス分科会
④Tel・Fax番号・E−mailアドレス
⑤所属学会名・会員番号(プラズマ分科会員はその
主催:応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会
旨明記)
〒852−8521長崎市文教町1−14
⑥宿泊予約の有無
長崎大学工学部電気電子工学科 藤山 寛
⑦昼食(各1,000円)予約の有無
Te1&Fax:095−847−6437
⑧懇親会(4,000円)参加の有無
E−mail:hiroshi@ec.nagasakトu.acjp
参加申込・問合せ先:
国人事公募
学歴(高校卒業以降),職歴,研究歴,所属学会,
北海道大学大学院工学研究科
学位,賞罰を記入)
(2)業績リスト(査読付き論文,その他の論文,著書,
1.公募人員
助教授1名
総説・解説,国際会議のプロシーディングス,特
2.所属分野
許に分類して記載)
量子エネルギー工学専攻プラズマ理工学講座
(3)主要論文の別刷(5編以内(各1部,写し可))
エネルギー変換工学分野
(4)研究業績の概要(2,000字程度)
3.研究内容
(5)研究・教育に対する抱負と展望(2,000字程度)
プラズマ・量子ビーム・電磁波相互エネルギー変換,
8.公募締切
プラズマ計測,量子ビーム計測,数値電磁界解析等
平成10年12月15日(必着)
4.担当講義
9.書類の送付先
研究科ではプラズマ計測,エネルギー変換等の講義,
〒060−8628 札幌市北区北13条西8丁目
学部では原子工学科の講義を担当
北海道大学工学部総務課人事係
5.応募資格
Tel:011−706−6156
博士の学位を有し,研究・教育に積極的であり,学
(封筒に教官公募一10−9と朱書,郵送の場合は
生の指導に熱意のある健康な方
書留とすること)
10.問合せ先
6.任用予定
平成11年4月1日
北海道大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻
プラズマ理工学講座 日野友明
7.提出書類
(1)履歴書(写真添付,現住所,連絡先,電話番号,
Tel:011−706−7195 Fax:011−709−6413
璽人事公募
(1)高温閉じ込めプラズマの強い乱流の解明を主眼と
核融合科学研究所教官
して,既存の摂動論を越える新しい方法論を切り
1.公募する職種及び人員
開いていくことに意欲のある者
助 手 1名(任期なし)
(2)博士の学位を取得又は取得見込みであることが望
2.所 属
ましい.’
理論・シミュレーション研究センター プラズマ
5.公募締切
基礎研究部門
平成10年12月24日㈲(必着)
3.研究内容
6.就任時期
特定の装置や現象にとらわれず,広くプラズマに
採用決定後なるべく早い時期
固有な現象,例えばプラズマの乱流などについての
7.選考方法
基礎研究を行う.
選考は,核融合科学研究所運営協議員会において
4.希望事項
行う.
次の条件を満たす活力のある方の応募を希望します.
選考は,書類審査により行い,必要に応じて,面
1355
プラズマ・核融合学会誌 第74巻第11号 1998年11月
接を行うこともある.ただし,適任者がいない場合
名程度)及び連絡先を記載した文書:いずれも,
は,採用しないこともある.
任意の様式による.
8.提出書類((2)∼(5)については4部必要.)
就任時期も明記すること.
上記の書類は,履歴書以外は原則としてA4判横
書きとし,それぞれ別葉とすること.また,各書類
のすべてのページの右肩上に応募者氏名を必ず記入
(2)研究歴:任意の様式による.
すること.
(3)就任後の抱負1任意の様式による.
なお,提出された書類は,返却しない.
(4)研究業績リスト:和文と英文は別葉とすること.
9.書類送付先
共著の論文については,共著者名をすべて記入す
〒509−5292 土岐市下石町322−6
ること.また,それぞれの論文について,レフリー
核融合科学研究所長 飯吉厚夫
による審査(査読)を経たものであるか,否かの
封筒の表に「理論・シミュレーション助手公募関
区別を明確にすること.
係書類」と朱書し,郵送の場合は書留とすること.
なお,リスト作成にあたっては,当研究所の「研
10.問合せ先
究業績リスト作成基準」(必要な場合は,下記10
(1〉研究内容等について
(2)宛連絡されたい)によること.
核融合科学研究所理論・シミュレーション
(5)論文別刷:主要な論文(学位論文及び投稿中又は
研究センター長 林 隆也
投稿予定を含む.)3編程度の別刷を添付すること
電話 (0572)58−2249(直通)
(別刷がない場合は,コピーでも可).
(2)提出書類について
(6)推薦書(推薦者がある場合)又は応募者について
核融合科学研究所管理部庶務課人事係
参考意見を述べ得る人がある場合は,その氏名(2
電話 (0572)58−2012∼2014
(1)履歴書1原則として市販の用紙を使用し,可能な
1356
繹本会記事
圏平成10年度プラズマ・核融合学会学会賞決定
開発したIMPMCコードを用いた解析により,X点
近傍に王価の炭素が存在する物理機構が,「プライベー
本誌74号第4巻で,学会賞(第6回論文賞,第3回技
ト領域の壁からの化学スパッタリング」であることを
術進歩賞,第3回学術奨励賞)候補の推薦をお願いしま
明らかにした.また,メタンを起原とする炭素不純物
したところ,論文賞2件,技術進歩賞3件,学術奨励賞
は,プライベート領域を通って主プラズマに混入しや
3件の推薦がありました.選考委員会を組織して慎重に
すく,MARFE抑制には,この化学スパッタリング
審査し,その推薦に基づいて理事会で以下の4件の論文
を抑制する必要があることを指摘した.この解析結果
および業績に各賞を贈呈することを決定しました.
は,JT−60におけるドーム付W型ダイバータ改造計
学会賞の授与式は,来る12月2日の本会年会2日目に
画の貴重な指針となった.改造後の実験で得られた最
行われます.受賞式に続いて,受賞記念講演会を開催す
近の分光測定の結果は,シミュレーションで初めて明
る予定です.
らかにされたW型形状効果を示唆するものである.
選考理由:
第6回論文賞
トカマクの不純物計測により知られる炭素不純物の
受賞者:清水勝宏(原研),滝塚知典(原研)
起源は未解決の課題であった.本論文は重要な発生機
論文名:モンテカルロによる不純物輸送のモデリング
構として,水素原子による化学スパッタリングに着目
(VoL71,No.11)
し,主プラズマヘの炭素不純物の混入過程を明らかに
論文の概要:
し,炭素不純物の計測データの説明に成功しており,
トカマクの不純物輸送を解析するのに,それまで流
国際的にも高い評価を得ている.
体モデルが多く用いられてきた.しかし,ダイバータ
領域での不純物の運動には,水素イオンとの衝突が重
受賞者:西田 靖(宇都宮大),湯上 登(宇都宮大)
要であり,これを流体近似することに間題があった.
論文名=Frequency Up−Shify in the lnteraction of
このため,モンテカルロ法で模擬する二次元不純物輸
High Power Microwave with Underdense In−
送コード(王MPMC)の開発を行った.ここで用いら
homogeneous Plasma(Vo1.72,No.1)
れた衝突過程のシミュレーション技法は,先行して開
論文の概要:
発されたモンテカルロコード(DIVIMP)にも取り入
大出力パルスマイクロ波(9GHz,250kW,1−3μs)
れられ,その優位性が示された.ダイバータ板と壁で
を磁化されていないアルゴンプラズマの共鳴領域に入
の不純物の精密なモデリングを行い,不純物の発生量
射することにより,その入射電磁波の周波数より高い
を測定されたプラズマパラメータとコンシステントに
周波数の電磁波を観測した.その周波数上昇は,3
決めた.特に,実平衡配位でのメタンの解離過程のモ
MHzから23MHzの間にあり,数本のスペクトル成
デリングは世界に先駆けて行われたものである.こう
分に分離している.この現象を説明するために,筆者
したモデリングにより,JT−60の分光測定データとの
らは,共鳴領域で反射された入射電磁波とその反射波
詳細な比較が初めて可能になり,これによって不純物
によって形成される定在波のポンデラモーティブカに
の発生と混入機構が明らかになった.
着目した.大電力電磁波によって形成されたポンデラ
炭素不純物の発生機構に関するこれまでの解析で
モーティブカによって,プラズマは密度変調を受け,
は,MARFE発生前にみられるX点近傍での1価の
プラズマの急速な流れを形成する.このプラズマ流と
炭素イオン(CII)の線スペクトルの発生量を説明す
ることができなかった.それは,炭素不純物が物理ス
電磁波の相互作用によって,電磁波の周波数は上昇す
パッタリングで発生したとすると,X点近くでは,炭
測し,その値と観測されている電磁波の周波数上昇値
素がほとんどすべて4価まで電離されるからである.
が理論とよく一致することを示した.この結果は,イ
1357
ると説明した.実験では,そのプラズマ流も詳細に計
プラズマ・核融合学会誌 第74巻第11号 1998年11月
し,その電子密度挙動を解明した.
オン化面だけでなく,不足密度プラズマ(underdense
(3)さらに信頼性の高い密度計測を目的として,2つの
plasma)の電磁波の相互作用によっても電磁波の周
波数上昇が起こりうることを示すものである.
炭酸ガスレーザー干渉計(波長1α6μmと9.27μm)
選考理由:
から構成される2波長炭酸ガスレーザー干渉計を初
強い電磁波とプラズマの相互作用による周波数変調
めて開発した.この干渉計により,従来困難であっ
はもっとも代表的なプラズマの非線形波動現象であ
たディスラプション時における電子密度計測に成功
り,非線形光学の重要な研究課題でもある.
しており,2波長炭酸ガスレーザー干渉計がITER
本論文は,短パルスの電磁波の周波数変調に関し,
に適用可能であることを実証した.
実験的,理論的な研究により短パルスに特有な周波数
(4)従来の百倍以上の位相分解能を有する高分解能位相
の青方偏移を明らかにしたものであり,大強度レー
検出器の開発を行い,これにより,2波長炭酸ガス
ザーやマイクロ波とプラズマの相互作用の研究分野に
レーザー干渉計の密度分解能を十倍程度まで向上で
大きな貢献をした.
きることを確認した.
一方,受賞者(河野ら)は,フリンジ跳びといった
第3回技術進歩賞
測定エラーの影響が少ない計測を目的として,赤外
受賞者:河野康則(原研),長島 章(原研),土屋勝彦
レーザー偏光計に関する開発研究を行い,ファラデー
(原研),千葉真一(原研),波多江仰紀(原研)
回転偏光測定に基づく電子密度計測法の有効性を初め
対象技術成果:大型卜力マクのための接線炭酸ガスレー
て実証した.
ザー干渉計の開発
以上のような研究成果は,ITERにおける電子密度
成果の概要1
計測法の確立に見通しを与えるものである.
国際熱核融合実験炉(ITER)などトカマク型核融
選考理由:
合炉において核融合反応を長時間安定に維持するため
本業績は,2波長炭酸ガスレーザー,あるいは,炭
には,燃料密度制御を的確に行うことが必要である.
酸ガスレーザーとヘリウムネオンレーザーの2波長を
そのためには,プラズマ電子密度を信頼性高く実時問
利用した高い精度のレーザー干渉計を開発し,実際に
で計測することが不可欠である.JT−60等,現存の大
JT−60Uプラズマ計測に適用して,ディスラプション
型トカマクでは,従来この目的で垂直視線の遠赤外
時の急速な密度変動などの重要な知見を得ている.
レーザー干渉計が用いられているが,ITERで検討さ
れているトロイダル接線視線干渉計では遠赤外レー
第3回学術奨励賞
ザー光の使用は困難である.そこで,受賞者(河野ら)
受賞者:篠原孝司(原研)
は,ITERに適用可能な電子密度計測用赤外レーザー
対象となる成果=マイクロ波反射計によるトカマクプラ
干渉計に関する開発研究を行い,以下の結果を得た.
ズマの密度揺動測定
(1)炭酸ガスレーザー光(波長10.6μm)を光源とする
成果の概要1
干渉計について検討を行い,トロイダル接線視線に
プラズマの異常輸送を解明するためには密度揺動を
おいても正常波モード伝搬する屈折率の適用が妥当
理解することが不可欠である.プラズマの密度揺動は
であることを示した.また,反射鏡の機械的振動に
起因した位相変化成分を補償する第二干渉計の光源
周波数にして1MHz程度まで広がっており,高い時
間分解能で測定する必要がある.H.modeなどの高
として,赤外ヘリウムネオンレーザー光(波長3.39
温・高密度プラズマでは,静電プローブをプラズマ内
μm)や異なる波長の炭酸ガスレーザー光が適して
部に挿入することができないため,密度揺動を高時間
いることを示した.
分解能で測定することが不可能である.このため,高
(2)上記に基づき,炭酸ガスレーザー光と赤外ヘリウム
温・高密度のプラズマ中でも密度揺動を高時間分解能
ネオンレーザー光を光源とする干渉計を開発し,
で測定できる手法が望まれていた.
JT−60に適用した.この干渉計はトロイダル接線視
この手法の候補としてマイクロ波反射計測法が有力
線での干渉計測を行うことを目的としている.この
である.通常,反射計の複素振幅の位相の変化を測定
干渉計を用いてJT−60の高ポロイダルベータモード
して行われているが,位相変化をそのまま反射層の動
プラズマにおける中心部電子密度計測に初めて成功
きと解釈することができないrunaway phase現象と
1358
本会記事
いう問題が生じるため,データの解析が困難となる.
(1)LH遷移時の密度揺動の減少は,密度勾配が急にな
これまで,JET,TFTRなどで行われてきた反射計
る場所で起こり,また,密度揺動の周波数は200
測法による従来の研究はこのrunaway phase現象を
MHlz未満であること.
(2)lMHz以上の高周波の揺動は,LH遷移で逆に増
適切に扱っておらず,密度揺動の情報を得るうえで信
えること.
頼性に欠けるものであった.このため,この分野の研
究成果がそれほどあげられていないという問題があった.
(3)JFT−2MのH−modeプラズマにてDαの信号強度が
この問題を解決するため,受賞者(篠原)は,これ
増加すると同時に閉じ込めが劣化する現象
まで小さいと仮定されていた反射層近傍での散乱波の
(H’一modeと命名)が発生するとき,周波数160
寄与を再評価し,これが無視できないことを新たに見
MHzのコヒーレントな密度揺動を観測し,本現象
い出した.さらに,runaway phase現象が反射層近
がAlcator C−ModのEDA H−modeと類似の特性を
傍の密度揺動による散乱波によって引き起こされてい
持っていること.
るという正確なモデルをたて,反射計のデータの新し
特に,(2)は世界で初めての知見である.これらの成
い解析法を提案した.この解析法では,普通の解析法
果は,受賞者(篠原)が新たに構築した解析法を駆使
のように位相変化のみを用いるのではなく,反射波の
することにより得られたものである.受賞者(篠原)
複素振幅をそのまま解析し,反射波と散乱波の成分を
の今後の研究が,異常輸送にかかわる物理機構の理解
分離できるという特徴がある.これにより,runaway
の発展に大きく貢献するものと期待される.
phase現象の効果を除去して,密度揺動の測定を行い,
選考理由:
かつ,数値計算によるローパスフィルタを用いて反射
受賞者は,マイクロ波反射計計測法において,反射
層の動きを測定することが可能になった.
波と散乱波を分離する新しい方法を開発し,LH遷移
受賞者(篠原)は,この新しい解析法をJFT−2M
時に見られる密度揺動を高い時間分解能で計測する成
のL−modeとH−modeプラズマでの密度揺動測定に世
果をあげた.この成果は,高温高密度プラズマの診断
界で初めて適用した.その結果,改善閉じ込めの物理
に新しい手段を供するものであり,高い意義を持つ.
機構を解明するうえでの鍵となる実験結果を得た.す
今後,異常輸送現象の機構解明に向けて,貢献が大い
なわち,
に期待される.
平成11(1999)年度分(1999年4月∼2000年3月)の会費払込みのお願い
本学会は会員の皆様の会費を基本的な財源として運営されています.今年も平成11(1999)年度分の会費
の払い込み時期がまいりました.下記の要領にてお早めにご納入ください.会員の皆様のご理解・ご協力
お願いいたします.
記
会費:正会員8,000円,学生会員3,600円
会費の前払い:会費は前納制です.
払込方法:すでに金融機関の自動引落手続きがお済みの方は,12月28日(月)に引き落とされます. 手続
きがまだの方は,本誌折り込みの郵便振替用紙をご利用下さい.
払込期限:平成11年3月12日働
平成12年度分以降の会費の自動引落を希望される方は,学会事務局まで金融機関の振替依頼書を提出願
います.用紙のない方はご請求ください.
問合せ先:㈹プラズマ・核融合学会事務局
Tel: 052−231−4535
Fax: 052−231−7557
Rmail:jspfmemb@nifs,acjp (仲村)
1359
韓本会記事
学会誌Vol.75,No.5(1999年5月号)CD−ROM特別企画
「動画を用いたプラズマダイナミックスの研究」論文公募のお知らせ
プラズマ・核融合学会 編集委員会
このたび編集委員会では,通常の学会誌にCD−ROMを添付して郵送し,会誌上のテキストとCD−ROM
を併用して動画(ムービー,アニメーション)を見ながら,解説や研究論文を“読む”という特別企画を
試行することにいたしました.
周知のように,最近のシミュレーション技術の発展や,計算機能力の増加,三次元CTイメージ観測技
術の発展などにより,さまざまな分野において計算機の動画手法を利用して表示,理解することができる
ようになってきています.本学会誌でもこのような技術の発展をいちはやく先取りし,動画そのものを論
文の図の一部として取り込み,議論や読者の理解を行える場を提供しようとこのような企画をいたしました.
初めてのまったく新しい試みであり,編集作業には困難も予想されますが,是非とも成功させて将来に
つなげたいと考えております.今回選びました企画のテーマは,動く絵が威力を発揮すると期待される「プ
ラズマダイナミックスの研究」としました.このテーマにそって,ひとつには解説論文を依頼する予定で
すが,さらに下記のとおり会員の皆さんからの研究論文を広く募りますのでふるってご応募くださいます
ようご案内申し上げます.
CD−ROM特別企画の論文公募案内
1)対象とする分野
プラズマのダイナミックスを動画手法を用いて研究した論文であれば,GeneralPlasmaPhysi億
Magnetic Co面nement,Inertial Co面nement,Fusion Engineering,Plasma Applicationなど,分野を問
いません.
2)論文の形態
論文中の図の一部または全部が動画であること.
3)論文の内容
プラズマダイナミックスの新しい物理を探った論文はもちろんですが,物理を解明するための動画手法
そのものについて新規性がある論文も歓迎します.単に実験のビデオ撮影などを紹介したものは対象外
とします.
4)応募方法
基本的には本学会誌の投稿規定に従いますが,後述の動画を含んだ論文投稿上の注意を参照してくださ
い.さらに詳細はインターネット上で公開されています「CD−ROM版のための投稿の手引き」
http://www.nifs、ac.jpllspf/cd/tebiki.htmlにしたがってください
5)問合せ先
担当編集委員(米田仁紀)e−maiL cd_plasma@ils,uec.acjp
学会事務局 e−mail:jsp乾pub@nifs.acjp Tel O52『231−4535Fax O52一231−7557
6)応募締切
タイトルとアブストラクト(日本語で可,10行程度以内)を1998年12月25日までに学会事務局宛,お送
1360
本会記事
りください.原稿そのものの締切は1999年1月25日とします.応募多数の場合は,編集委員会の方で論
文の一部を次号に回させていただくこともあります.
7)掲載予定
査読を通った論文は,本誌来年5月号に予定されているCD−ROM特別企画「動画を用いたプラズマダ
イナミックスの研究」に掲載されます.
動画を含んだ論文投稿上の注意
A.投稿される論文は以下の部分からなるようにお願いします、
1.表紙;タイトル,アブストラクト,キーワード,著者名,所属をそれぞれ和文,英文両方で記述
して下さい.
2.本文;プラズマ・核融合学会誌の投稿規定に準じたものをお願いします.図,動画,写真などの
挿入希望位置は同時に提出していただくハードコピーの右端余白にお願いします.
3.表,図,写真;本文とは切り離して提出してください.図,写真に関してはPICT,BMP,JPEG,
GIFなどの形式で投稿可能ですが,学会CD上ではJPEGなど圧縮形式になることをご注意ください.
4.動画;QuickTime,AVI,GIFなど一般のインターネットブラウザのプラグインで対応できるも
ので投稿をお願いします.また,各動画の開始画面,もしくは代表的なフレームの図は別途図のフ
ァイルとしてもご提出ください.
B.以上のうち1,2,3に関してはハードコピーもご提出ください.テキスト部に関しては一般のワープロ
ソフトで作成した原稿をそのままの形式で保存したものとテキスト形式で保存したものを用意してくだ
さい.
C.投稿メディアとしてはCD−R,光磁気ディスク(MO)のWindowsまたはMacintoshフォーマットで送
付してください.混乱を避けるためメールでの添付はご遠慮ください.
D.投稿していただいた論文は読者の読みやすさへの配慮から投稿後に編集委員会が論文の再構成をお願
いする,または,著者の了解をとった上で編集委員会が再構成を行うこともあります.また,一つの論
文に使用できるCD内での容量は50MBに制限させていただきます.
1361
灘
Plasma&Fusion
Calendar
一回
名 称 (開催地)
主催・問合せ先
開催月日
1998
12.1−12.4
本学会(第74巻6号参照)
第15回年会
(筑波大学)
URL:http://www。nifs。acjp/jspf/
一芦一『胃一一一一薗一 一一一曽薗『胃 一一ρ一一曽一一一 曹F一『需冒一
12.7−12.11
核融合科学研究所 冨田幸博
第9回国際土岐コンファレンス(ITC−9)
(セラトピア土岐,岐阜県土岐市)
Te10572−58−22610r2246,Fax O572−58−2626
E−maill itc9@nifs.acjp
URL:http://www。nifs.ac.jp/∼itc9/
胴隠一ロー一一一一F『一ローロー曽−陣『一冒一ロー一一一F『『冒層冒一一一一一幽 一一『胃冒
一酋一薗爾 冒一一曹口曽薗一一一一}騨 ロロー曽曽一曽一一一
12.10
超電導応用研究会シンポジウム「国際熱核融合実
日本原子力研究所那珂研究所 高橋良和
験炉(ITER)計画開発プロジェクト」
(日本原子力研究所那珂研究所,茨城県〉
Te1029−270−75420r6230,Fax O29−270−7579
第11回専門講習会
本学会(第74巻7号参照)
E−mail:takahasi@nakajae丘gojp
P騨一冒ロロ ー一一胃隠 薗甲需冒ロー 一曽一一−
12.璽0−12.11
「プラズマ応用の基礎」
(仙台市戦災復興記念館,仙台市)
URL:籍ttp:〃www、nifs.ac.jp/jspf/
一一P騨胃冒冒一一一一曽薗一輔一腎胃一冒ロー一一曹曹 ロロ曽曹曹冒
12.11
日本原子力研究所成果報告会一核融合研究の進展一
(東京国際フォーラム,東京都干代田区)
日本原子力研究所那珂研究所核融合工学部
Tel O29−270−7513,Fax O29−270−75i9
Emaill oobumaki@hemsjaeri.gojp
http://wwwjaeri.gojp/genken/in(iex.html
一 曽 璽 一 一 一 一 辱 禰 隔 一 一 胃 冒 冒 一 一 一 幽 薗 一 一 一 一 一 一 一
12.12
公開講座「科学と技術のプラズマヘの挑戦」
一実現が近づいてきた夢の核融合エネルギー開発一
1999
1.18−1.22
トロイダルプラズマ研究に関する第2回日中ワー
クショップ
1.21−1.22
第9回プラズマエレクトロニクス講習会
(筑波第一ホテル,茨城県つくば市)
本学会
筑波大学プラズマ研究センター 立松芳典
’『el O298−53−7473,鱒6230, Fax O298−53−6202
薗曹』 噂F 一口曽一一一一『”胃 一曹一一一 一一曹一一一薗一一曽−−一
日本原子力研究所 牛草健吉
E−mail:ushigusa@nakajaerLgojp
(西安物理研究所,成都,中国)
長崎大学工学部電気電子工学科 藤山 寛
「プラズマプロセシングQ&A∼ASETを見学し
ながら」
Tel&Fax O95−847−6437
E−mail:hiroshi@ec.nagasakレu.acjp
(KKR鎌倉わかみや,鎌倉市)
3.20−3.26
URL:httpl//www.apsαg/meet/meetcaLhtml
APS Centennial Meeting
(Atlant乱GA,USA)
3.22−3.24
Int.Sherwood Fusion Theory Conf。
(Atlanta,Georgia,US.AJ
3.22−3.24
日本原子力学会春の年会
E−mai1:stewart@peaches.ph。utexasedu
日本原子力学会
(広島大学,広島市)
3.28−3.31
3.28−3.31
Tel O3−3508−1261
応用物理学会第46回関係連合講演会
応用物理学会
(東京理科大学,野田市)
Te103−3238−1041
日本物理学会
日本物理学会第54回年会
(広島大学)
Tel O3−3434−2671
5.11
第37回原子力総合シンポジウム
5.24−5.28
2nd Int.CQn£Qn the Physics of Dusty Plasmas
愛媛大学理学部 横田俊昭
(ICPDP99)
Fax O89−927−9606
(東京大学山上会館,東京都文京区)
E−mail:yokota@gserv.g。ehime−u.acjp
(Hakone,Japan)
URL:http://www.nit.acjp/jcpdp/
臼 一 ” 『 胃 一 一 一 一 一 5.28−6.3
CERN Accelerator School,Vacuum Technology
CERN,
for Particle Accelerators
E−mai1:suzanne.von。wartburg@cem.ch
URL:http://www。cem.ch/Schools/CAS/
(Copenhagen,Denmark)
1362
r
Plasma & Fusion Calendar
1363
プラズマ・核融合学会誌 第74巻第11号 1998年11月
名 (開 催
開催月日
10.18−10.22
称地)
主催・問合せ先
AVS46th National Symp.
American Vacuum Society
(Seattle,WA,USA)
E−mail:avsnyc@vacuum∬rg
URL:http://www.vacuum.org/avscalendaLhtml#
symposia 膠冒騨一ロー 冒一曽曽一一一一−『需,,一冒層 ロロ冒冒冒冒
10.25−11.19
Autum College on Plasma Physics
ICTP,
(Trieste,Italy)
Email:smrll6王@ictp.trieste.it
URL:http://wwwictp。triesteit/cgi−bin/ICTPsmr
/mkhtml/smr2htmLpl?smrll61/Announcement
11.15−11.19
41st APS Division of Plasma Physics Annual
E−mail:meetings@aps.org
Meeting
URL:http://www.aps。org/meet/index.html
(Seatle,WA,USA) ” ” 胃 田 冒 一 一 一 一 一
一曽甲『『 一冒一一ロー曹曽曽富一一一一『 一曽−ー口 曹謄曽一一
2000
3.22−3.25
日本物理学会春の分科会
日本物理学会
Te103−3434−2671
(プラズマ・核融合含む物性関係)
(関西大学)日本原子力学会春の年会
3.28−3.30
(愛媛大学)
Tel O3−3508−1261
E−mail:atom@mtg.biglobe.ne。jp
URL:http://wwwsoc.nacsis,acjp/aesj/index上tm1
一一一一一 胃需一一ロロ曹曹曹曹曽一一一
3.30−4.2
日本物理学会春の分科会 (素粒子関係)
5.14−5.19
10thlntCong.oflntRadiationProtection
IRPA−10組織委員会事務局長 加藤正平
Association(IRPA−10)
Te1029−282−5876
日本物理学会
Te103−3434−2671
(近畿大学)
(広島国際会議場,広島市)
5.22−5.26
E−mail:shkato@popsvr。tokaLjaerLgojp
14th Int。Con£on Plasma Surface Interaction in
核融合科学研究所 野田信明
Controlled Fusion Devices(PSI)
Te10572−58−2152,Fax O572−58−2618
(Rosenheim,Germany)
一一一一一一一冒 一曽曽一曽一 F←謄
10.2−10.6
American Vacuum Society
Tel +1−212−248−0200,Fax + 1−212−248−0245
AVS47th National Symp.
(Boston,Massachusetts,USA)
E−mai1:avsnyc@vacuum.org
URL:http://www。vacuum∬rg/avscalendar.html#
symposia
10.6−10.9
日本物理学会第55回年会
日本物理学会
(新潟大学)
2001
75th Colloi(1and Surface Science Symp.
6.10−6.13
(PA,USA)
Te103−3434−2671
E−mai1:sg2e@andrew£mu.edu
㊧ プラズマ・核融合関連の国内・外の学術的会合の情報をご存知の方は事務局までお知らせください.その際に,
circularのコピーを添えていただけると幸いです.重複等は整理させていただきます.また,締切は特に設けてお
りませんので,随時お送りください.
⑱ 最新版の「Plasma&Fusion Calendar」を学会ホームページ(http://www,nifs.acjp/lspf/cldr.htm1)に掲載して
います.あわせてごらんください.
1364
黎灘二1
ここに掲載されている文献は,核融合科学研究所文献
資料室において最近収集されたものです.これらの文献
については,複写サービスを行っています.ご利用方法
については,リスト末尾をご覧下さい.
3117置
Pinches,S.D.,Appel,L.C.,Candy,J.,Sharapovl S.E.,Berk,H.L。,Borba,D。,Breizman,B.N.ct aL,
The HAGIS Sel卜ConsistentN’onlinear鴨ve−Particle Interaction Models,UKAEA FUS397,
Mad998,38p,
31172
Dlppe1,S,,
MicroscopicDynamicsofGranularMaterials,J田一3510,Feb」998,163p,
31173
B6ttcher,
A.,Konstruktion undBerechnungeines vorgespanntenDruckbehaltersmitintememCorecatcherfほr
Druckwasserreaktoren,J面1−3511,Feb.1998,239p。(in German)
31174
Bartolucci,E,
Negative Ionen−Resonanz von adsorbierten Molek繭len,J荘1−3512,Feb.1998,156p。(ln German)
31175
戦》hllebe,A.,
LaserkristalIisierung amorpher Sillziumschichten fUr photovohaische Anwendungen,Jm−3513,
Mad998,155p.(inGe㎜an)
31176
Goedeking,A.,
Phosphatretention in Helophyten−filtem(Sumpfpflanzenfiltem)Ein W¢g zur Oligotrophierung von
Obern6chengewassem,JU1−3514,Mad998,209p.(in German)
31177
von der Crone,U.,
Pulve㎜etallurgischeEntwicklungvonChrombasislegierungenundCe㎜etsalsMaterialienfUrden
InterkonnektoreinerFestoxid−Brenns重offzelle,」面1−3515,Mad998,117p.(in Ge㎝an)
31178
Y¢hia,A.,
Herstellung von Vbrbundmaterialien und ihr Verhalten unter relevanten Belastungen in
Fusionsreaktoren,JU1−3516,Ma菰1998,145p.(in Gemlan)
31179
Bujok,O.,
In−situ−Messung langlebiger Spurengase in deruntersten Stratosphare:Entwicklung und
Anwendung einer flugzeuggestutzten gasc㎞◎omato−graphischen Nachweismethode,測.3517,
Mad998,213p.(in Ge㎜an)
31180
Gruhn,H.,
Finlte Elemente Simulation gemessener Eigenspannungen in plasmagespritzten
Mehrsch董chtsystemen,JUI.3518,Ma監1998,141p.(inGe㎜an)
31181
Heitlinger,M.,Kley,D.,Mihelcic,D.,Musgen,p。Schultz,M,Volz−Thomas,A.,
Untersuchungen zurMessung von Peroxiradikalen mittels ChemischerV¢rstarkung,J削一3520,
M韻998,177p.(inGe㎜an)
31182
Hermann,1。,
Oxidationskatalysatoren zurMethanoト1Wasserstoffumsetzung in derProzessw㎜equelleeines
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く文献複写サービスについて〉
核融合科学研究所所員=
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Tel O572−58−2066,2067 Fax O572−58−2607
e−mailbunken@nifs,ac.jp
1368
■”■♂8’膳ず日ゴ『隅ぱ旧ピ『■ご『■『■r■『■ゴ『ロ『ロ♂翼r■r■ご■■ゴr■ず口ご■曜♂■r巳ず■r國ず■♂日ゴ『ロrロr冒r鷹r煽『鵬ず鳳r』b
指Ψ∼■∼罎∼■曳■∼■∼■∼■∼ロ∼口∼目∼■∼闘㌧ロ∼億∼ロ∼■∼・∼昌∼昌∼圃∼ロ∼・■』組轟∼騒∼■∼国∼■∼■∼が』■∼口∼略・円』』
’雪・ ■国』
ペロロ ヤセ
ロヂ ロノ
窪 ☆1998年11月の用語解説☆ 諺
澗∼ 、ロ』7
恥ぼ一雪一■憎舳一一陶一■一一一■一一一昌一一脚一噂一一一一_一聯一一一■一一弛一。一一顕一■一陶一爾一一一鵬一闘預一一一’6
、哩規∼望き型裡鵠醜∼蜷引脾∼望闇∼蜷哩脾脾腫∼艦脾馳∼裂鯉甥胴囲脾脾∼昏蜷盛望き蜷慰∼型r・ザ
仕事関数W・rk Functi・n
アークプラズマArcPlasma
金属または半導体中にある1個の電子を真空中に取り出すの
金属中には,自由に動きまわることのできる電子(自由電子)
電極間の放電でグロー放電よりも,さらに電流を増加させて
いくと端子電圧が急激に減少し,電流の増加とともに電圧が低
下していく負性抵抗特性を有するようになる.このときアーク
が満たされているが,それらの電子は金属の外に簡単に飛び出
放電となりアークプラズマが形成される.アークプラズマでは
すことはできない.それは,最も高いエネルギーの電子でも,
電子,イオン,中性気体原子・分子の温度がほぼ等しく,
5,000∼20,000K程度となっており,熱平衡の状態に近い熱プ
ラズマになっている.電流密度の大きな放電電流は陰極からの
に必要な最小のエネルギーが仕事関数(単位:eV)である.
真空中で静止している電子のエネルギーよりも低いためであ
る.図は,金属内の自由電子のエネルギー状態を真空中に静止
してる電子のエネルギーを基準にして示している.温度OKに
おいて金属内の自由電子はフェルミエネルギーEfまで満たさ
れている.ここで研は,金属表面のエネルギー障壁の高さを
表している.フェルミエネルギーをもつ電子を金属外に取り
電子放出により維持される。電子の放出機構は,プラズマによ
って熱せられた陰極からの熱電子放出が主なる場合と,水銀な
ど融点の低い金属では電界放出による電子の供給や,中性粒子
このφwが金属の仕事関数である(PちW,Mo:約5.3∼4.3eV).
やイオンの衝突による電子放出が関与している場合など複雑で
ある.真空から大気圧領域まで広い雰囲気中にわたってアーク
プラズマは存在し,大気圧中ではアーク柱内部において電子の
半導体では,電子のエネルギー帯が図とは異なるので,上述の
平均自由行程が短いため,電子衝突電離ではなく熱電離が主で
出すには,研一島二φwより大きいエネルギーを必要とする.
説明を少し修正する必要があるが,ここでは省略する,
ある.アークプラズマはアーク柱として観測される陽光柱と,
金属や半導体に熱を加えたり,光を当てたりなどして電子に
電極付近で半径が小さく絞られている領域から構成されてい
る.アークのまわりのガス流によりアーク半径を細くする熱ピ
エネルギーを与えると,いくらかの電子は,エネルギーの障壁
を超えて外に飛び出すことができるようになる(熱電子放出,
光電子放出).仕事関数は,電子放出現象ばかりでなく,接触
ンチ現象を用いて,電流密度を高め単位体積あたりの電気的入力
を増加させることも可能である.電極と接する部分では正イオン
電位差,表面の化学的活性などを考慮する上で重要な物理量で
が多い空間電荷層となり,陰極表面には陰極点が形成されている.
ある. (茨城大工 真瀬 寛〉
真空中の電極問では,電極材料が蒸発しプラズマとなって放
電が維持される真空アークが生じる.電力用真空遮断器では真
空アークの電流遮断特性が利用されている.アークプラズマは
金属十真空
アークランプをはじめとして電気溶接,鉱石などから目的とす
る金属材料だけをとりだすプラズマ精練,高融点の金属を溶か
すプラズマ溶解,各種のガス分解処理など,熱プラズマの特性
を利用した様々な応用に使われている.高速の水流でプラズマ
を安定化させ,かつ放電管壁との熱遮蔽をしたアークプラズマ
energy
を用いた高輝度の大強度光源も実用化されている.
(東工大 石井彰三)
タウンゼントの条件式丁・wnsend’sBreakd・wnCriteri・n
電極間に加える電圧を上昇させていくと,あるところで発光
を伴う放電が突然出現する.これを気体の絶縁破壊と呼び,
し,破壊後は電流が暗流に比べて数桁増えることから,右辺の
分母が零(すなわち,歪=QQ)となるところを絶縁破壊条件と
Oxford大学のT6wnsendはこの破壊が起こる条件を次のよう
見なして導出した.
に定式化した.
この条件式は次のように解釈することもできる.陰極から出
た一個の電子は電極間を移動する問に電離衝突によりexpα4
γlexp(α4)一1}=1
個に増倍し,陽極に流れ込む.一方,電子の増加分{exp(α4)一
llに等しい数だけ生成される正イオンは陰極に進み,衝突する
この式をタウンゼントの条件式と呼ぶ.ここで,4は電極間距
離,αは電離係数と呼ばれ,一個の電子が電界方向に1cm進
と二次電子としてγ{exp(α4)一ll個の電子を陰極から放出させ
む間に起こす電離の平均回数で電界の関数,γはイオン衝突に
よる電極からの二次電子放出係数(確率)である.この式は暗流
る.タウンゼントの条件式は,これが1に等しいということで
あり,これは陰極から放出された一個の電子によって発生した
を表す式から求められる.暗流とは絶縁破壊前に電圧印加に伴
イオンの衝突により再び二次電子を一個陰極から放出すること
を意味する.すなわち,絶縁破壊条件とは電子を外部から供給
って流れる非発光電流のことであり,Townsendはこの電流」を
することなしに放電が自続する条件を表すと考えることもでき
Z=ズo/11一γlexp(α4)一ll】
る. (富士電機総合研究所 市川幸美)
と定式化(ここで∫oは外部からの供給電子による電流で定数)
1369
【本学会の方針1
【役 員】
プラズマの研究は,将来のエネルギー源として期待される核融合の地
上での実現をめざして,ここ40年程の間に大きな成果を挙げてきました.
その結果,核融合炉心プラズマの実現に大きく近づいたばかりでなく,
このために開発された技術は先端技術として応用されています.また,
プラズマに関する研究や経験は,現在特に注目されている工業へのプラ
ズマ応用と深い関わりをもっています.一方,近い将来原型核融合炉を
完成させるため,物理学,電気工学,材料工学,真空工学,原子炉工学,
放射線科学などの幅広い分野にまたがり盛んな研究開発が行われています.
この学会は,1958年湯川秀樹博士を会長として生れた研究者組織「核
融合懇談会」が母体となって,1983年学術団体「プラズマ・核融合学会」
として発足し,1988年には社団法人となりました。現在は,プラズマ理
工学及び核融合科学に携わる研究者・学生ばかりでなく,宇宙プラズマ
やプラズマ応用技術等に関心を持つ人々にも広く参加していただいてい
ます。学会としては,核融合学にとどまらず,関連する技術開発,さら
にはプラズマ応用等についての優れた情報交換の場となるよう努力して
います.
会 長
副会長
副会長
常務理事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
理 事
監 事
監 事
飯吉厚夫
伊藤智之
岸本 浩
大久保邦三(総務委員長)
安積正史
阿部勝憲
犬竹 正明(出版委員長)
大塚 道夫(財務委員長)
香山 晃
菅井 秀郎(編集委員長)
菅原 亨
日野友明
藤原正巳
松田慎三郎
三間 囹興(企画委員長)
谷津 潔
矢部 孝(広告委員長)
若谷 誠宏(プログラム委員長〉
西田 靖
成川 武文
学会賞基金へのご寄付のお願い
学会ではプラズマ・核融合分野での学術活動を奨励し,学会の発展に資するため,「プラズマ・核融合学会学会賞」規
定に基づき論文賞,技術進歩賞,学術奨励賞を授与しております.これらの賞の本賞及び副賞の直接経費に充当すること
を目的として「プラズマ・核融合学会賞基金」を設けておりますが,本基金は学会内外の皆様の寄付金により維持してお
り,本基金を発展的に運営していくためには皆様方からのご支援が不可欠です.そのため本基金の趣旨をご理解いただき,
ご寄付を賜りますようお願いいたします.常時受け付けておりますので,学会事務局までご連絡下さい.またご寄付いた
だいた方の芳名は,ご本人に了解を得た上で,学会誌上で年1回発表させていただく予定にしております.
基金残高(平成10年3月31日現在):2,769,063円
理事会
編集後記 今回・新たに編集委員会に
瞬
物処理等)の可能性や現状に関する情報の提供等により,
加わり特集・解説等の記事
総合的に見た核融合研究の進展に寄与することが学会誌
を,興味のあるなしにかかわらず目を通す機会が増えて
の一つの役割と考える.
きた.「学会誌の役割とは何か」を漠然と考えた時,以
先日,核融合エネルギーに関する国際会議が日本で開
下の2つのことが頭に浮んだので雑文として記す.勿論,
催された.講演を聴いて印象に残ったことは,プラズマ
必要があるか否か,実現できるか否かの議論は別である.
性能向上について,世界中の装置において同種の現象が
核融合プラズマ研究から始まり,広い範囲のプラズマ
観測されることとその物理的解釈に関する報告が集中し
に関連した記事が誌上を賑わせている.あくまでも私見
ていたことである.同じような現象が,いろいろな装置
であるが,現在の核融合研究は,DTプラズマ燃焼の実
でいろいろな形で報告されることは,結局,物理機構が
現,α加熱の実証を経て,実験炉建設の段階に入ったと
解明されていないことを如実に物語っているとの明解な
ころで大きな危機に直面している.核融合エネルギーの
解釈もある.一つの現象を集中的に取り上げて,ひとり
社会的受容性の特集でも取り上げられていたが,核融合
の賢人が解説としてまとめた記事も重要であるが,その
プロジェクトの社会的存在の意義は,将来のエネルギー
解釈が矛盾するかしないかは別にして,読者が自ら本質
問題に対して,環境問題や経済的な見通しを含めていか
を考えられるように特集を組むことも学会誌が担うべき
に貢献できるかにある.高温プラズマ研究から派生する
役割の一つと考える. (M.1.)
技術,例えばプラズマを用いた環境汚染の軽減化(化石
燃料からの二酸化炭素処理,核分裂炉からの放射性廃棄
編集委員会開催日について
当学会誌の編集委員会は原則として,毎月,第2水曜日に開かれています.但し,第2水曜日が休
日あるいは11日以降の場合は,第1水曜日に開かれます.
1370
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