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北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業)プロジェクト中間報告 島根県立大学短期大学部松江キャンパス 2013 年度北東アジア地域学術交流研究助成金 (共同プロジェクト研究助成事業) プロジェクト中間報告 島根県立大学短期大学部(学内コアメンバー) 山下由紀恵・鹿野一厚・矢島毅昌 2014 年 3 月 地域資源と協同的体験を 保育教育課程に生かす 『ふるさと教育』の研究 —島根県益田市モデル— 2013 年度北東アジア地域学術交流研究助成金 (共同プロジェクト研究助成事業) プロジェクト中間報告 2014 年 3 月 平成 25 年度北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業) 地域資源と協同的体験を保育教育課程に生かす「ふるさと教育」の研究 -島根県益田市モデル- A study of “Home Town Education" to found the preschool and school curriculum on local nature social resources and collaborative experiences. -On the model of Masuda City, Shimane Prefecture. 本研究は、平成 25 年度平成 26 年度の 2 か年間の研究であり、平成 24 年度島根県保育研究大会の 発表「ふるさとに生きる人づくり-保育所からの発信」 (益田市保育研究会ふるさと教育研究委員会) における「ふるさと教育」の生涯モデルを基盤としつつ、 (1) 「ふるさと教育」カリキュラムの支援 システムの作成、 (2)保幼小発達段階におけるふるさと教育の協同的体験の発達的意義の検討、を目 指しています。 具体的な研究内容は、 (1)については、益田市地域資源に関わる協議・研究、保育教育現場での 活動実態に関する調査研究、ふるさと教育の「Web シーズ・マップ」作成によるカリキュラムの具体 化を目指しています。 (2)については、 (1)をふまえた実践から保幼小交流活動での子どもの変化 を記録し、特に 4 歳から 8 歳までに焦点を絞ったふるさと教育での異年齢交流と協同的体験の発達的 意義を検討します。 (1) (2)を明らかにすることにより、益田市をモデルとしつつ、島根県の「ふるさと教育」課程 の構築に貢献することが目標です。 益田市保育研究会の保育実践では、平成 21 年度から 24 年度までの 4 年間で、29 園の 1,700 名園児 の人づくりを目指して、地域と一体化した保育研究が行われています。平成 21・22 年度は「自然を 体感する」 「食を体感する」 「文化を体感する」3 部会を構成し、保育者自らがふるさと教育プログラ ムを体感し、保育プログラムを完成させています。平成 23・24 年度は、益田を体感するプログラム をより多くの園の子どもが体験することを中心に、 「西益田小学校区」の 4 保育園により保小の教育連 携研究も行われました。 これらの保育研究に際して、地域の活動団体が協力し、 「益田市市民活動推進協議会」 、 「NPO法人 アンダンテ21」 、 「ひきみ田舎体験推進協議会」等の、社会教育実践の実績が十分に生かされていま す。この益田市保育研究が着手した「ふるさとで生きる人づくり」が生かされるには、平成 24 年度ま での保育実践で育った子どもたちが小学校へ入学して以降の、小学校段階の教育の積み重ねが引き続 き必要であり、教科教育のカリキュラムへの反映、中学校段階をふまえた地域社会人教育への連携等、 世代をつなぎ循環する教育課程の研究が必要であると思われます。さらに、 「なぜ就学前からのふるさ と教育の活動が必要か」を説明する発達的研究が必要であると思われます。 そのために、まず本研究では保育年齢以上の「ふるさと教育」カリキュラムの支援を目指して、 「Web シーズ・マップ」を作成します。学校教育段階では、教員は県内赴任校の異動により、数年ごとに異 なる地域の教育を担当しています。各地域に定住する保育関係者と社会人に比較して、教員の地域資 源学習は不利であり、各地域の「ふるさと教育」のための資源を自己学習し、様々なコーディネート を経て、フィールド学習に子どもを連れ出すには、多大な準備と労力を要すると思われます。そこで、 本研究ではこれまでにすでに実績を持つ地域の活動団体の知見・協議をふまえたフィールド研究を実 施し、保育所・幼稚園・小学校・中学校の「ふるさと教育」実践の調査をふまえて、最終的に、ネッ ト端末で利用可能なふるさと教育のシーズ(種)マップを作成することにより、 「ふるさと教育」カリ キュラムの量的・質的拡充を支援したいと考えています。 この中間報告書により、研究期間 2 か年間の中間のとりまとめを行い、平成 26 年度期間に最大限の 成果を上げたいと考えています。 平成26年3月20日 【共同プロジェクト研究チーム 学内コアメンバー】 島根県立大学短期大学部 副学長 保育学科教授 総合文化学科教授 山下由紀恵 鹿野一厚 保育学科講師 矢島毅昌 (職名は平成 25年度現在) 公立大学法人島根県立大学 北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業) 研究期間:平成 25 年度~平成 26 年度 「地域資源と協同的体験を保育教育課程に生かす「ふるさと教育」の研究 -島根県益田市 モデル-」 【共同プロジェクト研究チーム】 学内コアメンバー 島根県立大学短期大学部 保育学科教授 山下由紀恵(プロジェクト代表者) 島根県立大学短期大学部 総合文化学科教授 鹿野一厚 島根県立大学短期大学部 保育学科講師 矢島毅昌 学外コアメンバー 白梅学園大学大学院教授 無藤隆 島根県中山間地域研究センター研究統括監 藤山浩 (島根県立大学連携大学院教授) 研究協力団体 益田市保育研究会 益田市教育委員会 益田市福祉環境部 益田市市民活動推進協議会 NPO 法人アンダンテ 21 島根県中山間地域研究センター ≪中間報告書目次≫ 共同プロジェクト研究中間報告(研究経緯)――――――――――――――――――-1 白梅学園大学大学院教授無藤隆先生講演会記録 ――――――――――――――――-9 共同プロジェクト「保育教育課程とふるさと教育」事例検討研究会記録――――――31 学内コアメンバー中間報告――――――――――――――――――――――――――55 平成 25 年度北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業) 地域資源と協同的体験を保育教育課程に生かす「ふるさと教育」の研究 -島根県益田市モデル- A study of “Home Town Education" to found the preschool and school curriculum on local nature social resources and collaborative experiences. -On the model of Masuda City, Shimane Prefecture. 島根県立大学短期大学部 山下由紀恵 (研究代表者)・鹿野一厚・矢島毅昌 【研究目的】 島根県教育委員会は、「しまね教育ビジョン 21」 を策定し、「ふるさと島根への愛着を深め、 ふるさとに誇りをもつ子ども 」 「心豊かでたくましく、明日の島根を担う子ども」の育成を目指 して、学校・地域の連携協力による「ふるさと教育」を推進している。 この計画において、県は「子どもの教育は地域の大人の役割」という意識の醸成を目指し、 ① 市町村、各小中学校に交付金を交付し、②「ふるさと教育」の量的・質的充実のための教員研修 実施している。また③市町村におけるふるさと教育を中心とした推進体制構築のための働きかけ を行い、支援している。 市町村は、 「ふるさと教育を継続的に進めるための体制づくり」を担い、①ふるさと教育推 進計画策定、ネットワーク会議の開催 、②学校と地域との関係づくり推進、 ③新たな人材の発 掘と養成 ④「結集!しまねの子育て協働プロジェクト」の中で、他事業との有機的連携の促進 を 行っている。 各学校は、ふるさと教育全体計画、ふるさと教育年間指導計画を作成し、 全市町村立小中学 校、全学級において年間 35 時間以上(各教科、総合的な学習の時間等において)の「ふるさと教 育」を実施することとなっている。学校教育活動全体で進める「ふるさと教育」は、以下のとお り充実させるよう、定められている。 ① 量的充実:地域の「ひと・もの・こと」を学校教育活動全体において活用する視点をも ち、全ての教育活動で「ふるさと教育」の展開を図る。 ② 質的充実:教育活動全体で「ふるさと教育」を展開し、内容や方法が充実した活動とす る。発達の段階に応じて、地域課題に正対しふるさとの今を知ることで、 ふるさと の将来に自分が果たすべき役割に対する使命感を醸成する。 1 −1− このような島根県の教育施策上、本研究による益田市をモデルとするフィールド研究、調査研 究「シーズ・マップ」作成は、今後のふるさと教育の充実した展開のための、有効な取り組みと なるであろう。このモデル研究を活用して、県内各地に「ふるさと教育」の有効な支援システム が構築されることで、さらに教育活動は量的にも質的にも充実すると思われる。 ここでいうふるさと教育とは、子どもの生活空間を中心に子どもの体験をより豊かにするため の、子どもによる地域資源の体験である。教育課程として経験が蓄積されていくには、「どのよ うな力を育てる体験であるか」が教育の「めあて」として明確化され、体系化されなければなら ない。本研究では、Web システム作成を通して、地域資源と活動体験をカリキュラムの中で生か すための、ヒントと「指導のめあて」を実践データとして蓄積していく。 研究期間の 2 年間のうち、1 年目は、 「自然と人の暮らし」を中心に、これまでにすでに実績 を持つ地域の活動団体の知見・協議をふまえたフィールド研究を実施し、地図上にシーズを撒く べき地域資源のスポットを特定する。次に、保育所・幼稚園・小学校・中学校の「ふるさと教育」 実践の調査をふまえて、「指導のめあて」「活動記録」までのデータを蓄積する。2 年目に「Web シーズ・マップ」の作成に入り、さらに「人の暮らしと文化」についても、地域資源スポットの 特定、保育教育実践調査を実施し、その後「Web シーズ・マップ」への保育教育者によるデータ 蓄積を促進したい。最終的に「ふるさと教育」活動内容の教科課程への反映と、保幼小発達段階 におけるふるさと教育の協同的体験の発達的意義の検討については、保幼小の協力を得て、2 年 間の活動記録を縦断的に検討したいと考えている。 子どもの側から見ると、具体的経験の基盤なしには概念化・抽象化と論理操作はありえない。 ピアジェは思考の発達において、12 歳 13 歳頃からの形式的操作の前に、7 歳から 8 歳以降の具 体的操作期、7 歳以前の感情とイメージを伴う前操作期を見出している。子どもにとって、身近 な事物への感情とイメージを伴う経験、事物の具体的操作は、地域での幼年期から児童期の生活 と遊びそのものである。特に他視点取得と科学的自然理解にたどり着く前に、地域の自然・環境 を体験的に自らの感情とイメージを伴って経験することは、発達的観点から必要不可欠と思われ る。 「シーズ・マップ」にまとめられたスポットでのふるさと教育体験から、子どもが何に気付き、 どのような発達的準備をおこなっているか、この研究から「生活」 「理科「社会」 「算数」 「国語」 教育と「食育」等のとふるさと教育を結ぶ発達の道筋を示すことは、発達教育研究としても有意 義であると思われる。特に 4 歳から 8 歳までの教育課程において、「ふるさと教育」から教科課 程への反映を検討することにより、 「なぜ就学前からのふるさと教育が必要か」が発達的観点か ら明らかになると思われる。 2 −2− 【平成 25 年度研究経過】 平成 25 年度は、8 月段階まで、12 月段階まで、年度末までの 3 段階で研究を進めた。 8 月段階までに研究協力者との協議を計 4 回行い、課題の整理と 2 年間の進め方について検討 を行った。 12 月段階で、益田市で、無藤隆教授の講演会と共同プロジェクト「保育教育課程とふるさと 教育」事例検討研究会を行い、数多くの関係者の参加を得て、問題点を地域の課題として検討し た。 年度末段階までに、学内コアメンバーにより、 「環境教育」の国際的な流れ、 「生活科」と保育 内容の連携状況等、既存の研究の検討を行い、この中間報告での提言作成に至っている。 第 1 段階 ●第 1 回研究協議会 日程:平成 25 年 5 月 31 日(金)18 時~20 時 会場:益田市保健センター多目的室1 テーマ: 子どもに体験・体感させたい「自然と人の暮らし」スポット 出席者:益田市保育研究会 会長・原浜保育所長 吉村里恵 同 理事・ふるさと教育研究委員会委員長・豊川保育園長 河野利文 同 副会長・ふるさと教育研究委員会自然部会長・神田保育園長 塩満恭子 益田市教育委員会 教育長 村川修 益田市教育委員会 指導主事 大島義紹 益田市市民活動推進協議会 会長 吉田篤志 NPO 法人アンダンテ 21 理事長 豊田武雄 島根県立大学短期大学部 副学長・保育学科教授 山下由紀恵 同 総合文化学科長・総合文化学科教授 鹿野一厚 同 保育学科講師 矢島毅昌 ●第 2 回研究協議 日程:平成 25 年 7 月 13 日(土)9 時半~11 時 会場:島根県立大学短期大学部松江キャンパス 管理棟会議室 テーマ::島根県益田市モデルふるさと教育-記録をいかに取るか 出席者:無藤隆先生(白梅学園大学大学院)(学外コアメンバー) 益田市保育研究会 河野利文 塩満恭子 島根県教育委員会(義務教育課 GL・社会教育課 GL) 島根県立大学短期大学部(山下由紀恵 矢島毅昌) (講演会:午後 13 時から大講義室にて) 3 −3− ●第 3 回研究協議 日程:平成 25 年 8 月 2 日(金)18 時~20 時 会場:益田市保健センター多目的室1 テーマ:川バス企画・研修のための経路計画 出席者:益田市保育研究会 会長・原浜保育所長 吉村里恵 同 理事・ふるさと教育研究委員会委員長・豊川保育園長 河野利文 同 副会長・ふるさと教育研究委員会自然部会長・神田保育園長 塩満恭子 益田市教育委員会 教育長 村川修 益田市教育委員会 指導主事 大島義紹 益田市福祉環境部 次長 村上三恵子 益田市市民活動推進協議会 会長 吉田篤志 NPO 法人アンダンテ 21 理事長 豊田武雄 島根県中山間地域研究センター 研究員 檜谷邦茂 島根県中山間地域研究センター 研究統括監 藤山浩(学外コアメンバー) 島根県立大学短期大学部 副学長・保育学科教授 山下由紀恵 同 総合文化学科長・総合文化学科教授 鹿野一厚 同 保育学科講師 矢島毅昌 ●第 4 回研究協議 日程:平成 25 年 8 月 24 日(日)9 時~16 時 半(川バス)終了後協議 17 時半まで 川バス参加者: 指導:NPO 法人アンダンテ21吉中力 島根県中山間地域研究センタ-檜谷 邦茂(プロジェクトメンバー) 参加者:保育所・小学校・中学校参加申込者 16 名 プロジェクトメンバー8 名 経路:益田市須子町 益田市総合福祉センタ ー(発着)「高津川の生物」車中研修 益田市匹見町 匹見町レストパーク (昼食)「流域ってなに?」研修 4 −4− 第 2 段階 ●第 5 回協議 日程:平成 25 年 10 月 19 日 (土)14 時~16 時 会場:益田市保育研究会事務局 テーマ:保小連携「川遊び」活動と「生活科」活動のまとめ 参加者:益田市保育研究会 河野利文 塩満恭子 5 −5− 益田市西益田小学校 矢田久美子 島根県立大学短期大学部 学長・保育学科教授 山下由紀恵 ●第 6 回研究協議 日程:平成 25 年 12 月 7 日(土)13 時~14 時 会場:益田市ボンヌママンノブ テーマ:益田市の保育と教育の課題 参加者:無藤隆教授 益田市保育研究会 吉村里恵 塩満恭子 河野利文 島根県立大学短期大学部 副学長・保育学科教授 山下由紀恵 ●コアメンバー無藤隆教授講演会「本物の保育から、本物の学力へ」 日程:平成 25 年 12 月 7 日(土)15 時~16 時半 会場:益田市保健センター大ホール 参加者:保幼小保育教育専門職、関係行政職ほか 108 名 ●共同プロジェクト「保育教育課程とふるさと教育」事例検討研究会 日程:平成 25 年 12 月 8 日(日) 9 時半~11 時半 会場:グラントワ多目的ギャラリー 9 時半開始 ふるさと教育共同プロジェクト これまでの経緯と方向性 共同プロジェクト研究事業代表者 島根県立大学短期大学部 副学長 山下由紀恵 9 時 40 分 【益田市保育研究会】保育と学校をつなぐ地域課題(20 分) ふるさと教育研究委員会委員長 豊川保育園長 河野利文 10 時 05 分 【益田市保育研究会】保育所の視点・連携の取組み(20 分) ふるさと教育研究委員会自然部会長 神田保育園長 塩満恭子 10 時 30 分 【益田市立小学校】2年間の取組み・小学校からの視点(20 分) 西益田小学校教諭 矢田久美子 10 時 55 分 【益田市立中学校】地域をつなぐ教育・中学校からの意見(5 分) 横田中学校校長 矢富達夫 11 時 05 分 【社会教育】地域をつなぐ教育・学校外からの意見(5 分) 島根県中山間地域研究センター研究員 檜谷邦茂 11 時 15 分 無藤隆先生 講評 質疑応答 11 時半閉会 6 −6− ●第7回研究協議 日程:平成 25 年 12 月 8 日(日)11 時半~12 時半 会場:益田市グラントワ テーマ:今後のふるさと教育の進め方、考え方 参加者:無藤隆教授 益田市保育研究会 吉村里恵 塩満恭子 河野利文 益田市教育委員会教育長 村川修 益田市立西益田小学校 矢田久美子 島根県中産間地域研究所 檜谷邦茂 島根県立大学短期大学部 副学長・保育学科教授 山下由紀恵 島根県立大学短期大学部 総合文化学科 鹿野一厚 第 3 段階 ●第 8 回研究協議(学内コアメンバー) 平成 25 年 12 月 19 日(木)13 時~15 時 会場:島根県立大学短期大学部松江キャンパス テーマ:web 資源マップの作成について(平成 25 年度内計画) 参加者:島根県立大学短期大学部 総合文化学科 鹿野一厚 島根県立大学短期大学部 保育学科 矢島毅昌 島根県立大学短期大学部 副学長・保育学科 山下由紀恵 ●第 9 回研究協議(学内コアメンバー) 平成 26 年 3 月 14 日(金)15 時~17 時 会場:島根県立大学短期大学部松江キャンパス テーマ:中間報告書とりまとめについて 参加者:島根県立大学短期大学部 総合文化学科 鹿野一厚 島根県立大学短期大学部 保育学科 矢島毅昌 島根県立大学短期大学部 副学長・保育学科 山下由紀恵 【平成 25 年度のまとめ】 1.「ふるさと教育」教育課程について 上記のとおりの継続的な研究協議と、講演会、事例検討研究会の試みにより、益田市地域専門 職での保幼小連携教育に関わる理解者の広がりを成果として得た。現在策定中の益田市「教育ビ ジョン」においても「ふるさと教育」と「保幼小連携」に見直しが行われつつある。 この中間報告では、平成 26 年度のさらなる検討に向けて、学内コアメンバー鹿野教授が、国 7 −7− 際的な「環境教育」の観点から、発達段階的な「ふるさと基盤教育」の重要性についてまとめて いる。成人の段階での「環境」理解に至るまでに、教育的な取り組みはどのように積み上げられ るべきなのか、環境教育の先進国であるアメリカの動向を紹介し、発達論的な環境教育の研究者 であり推進者でもあるデイヴィド・ソベルの考えを紹介している。 2.保幼小連携カリキュラムの作成について 「幼年期からの『ふるさと教育』協同体験の発達的意義とらえ直し」については、白梅学園大 学大学院無藤隆教授(平成 24・25 年度松江キャンパス客員教授・本研究学外コアメンバー)、さ らに島根県中山間地域研究センター研究統制監藤山浩教授、の 2 名の学外コアメンバーの参加を 得て、上記経過日程表のとおり研究協議を実施した。 「保幼小交流活動での子どもの変化、特に 4 歳から 8 歳までに焦点を絞ったふるさと教育での 異年齢交流と協同的体験の発達的意義」については、共同研究コアメンバーに地域の研究協力者 を含めた、活発な研究協議とフィールドワークにより、「ふるさと教育カリキュラム」作成に向 けて具体的な検討を行うことができた。 この中間報告では、平成 26 年度の検討に向けて、学内コアメンバー山下が、保幼小連携で取 り組む「生活科」としての「ふるさと基盤教育」 の構想を提案している。 また、さらに、学内コアメンバー矢島講師は、益田市の取組み具体例を挙げて保小の連携教育 カリキュラムを検討している。この検討結果は、平成 26 年度の Web シーズ・マップ作成に応用 できるものと思われる。 【平成 26 年度に向けて】 研究期間の 2 年間のうち、1 年目は、 「自然と人の暮らし」を中心に、これまでにすでに実績 を持つ地域の活動団体の知見・協議をふまえたフィールド研究を実施し、地図上にシーズを撒く べき地域資源のスポットを特定した。次に、2 年目には、保育所・幼稚園・小学校・中学校の「ふ るさと教育」実践の調査をふまえて、「指導のめあて」「活動記録」までのデータを蓄積したい。 2 年目には、 「Web シーズ・マップ」を作成に入り、さらに「人の暮らしと文化」についても、 地域資源スポットの特定、保育教育実践調査を実施し、その後「Web シーズ・マップ」への保育 教育者によるデータ蓄積を促進したい。最終的に「ふるさと教育」活動内容の教科課程への反映 と、保幼小発達段階におけるふるさと教育の協同的体験の発達的意義の検討については、保幼小 の協力を得て、2 年間の活動記録を縦断的に検討したいと考えている。 第 2 年目の最終まとめに際しては、益田市保育研究会、益田市教育委員会、益田市福祉環境部、 益田市市民活動推進協議会等、NPO 法人アンダンテ 21 等、地域の関係者、および島根県教育委 員会等県内関係者をふくむシンポジウムを開催し、研究の成果を報告したいと考えている。 8 −8− 平成 25 年度北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業) 地域資源と協同的体験を保育教育課程に生かす「ふるさと教育」の研究 -島根県益田市モデル- 平成 25 年 12 月 7 日(土) 白梅学園大学大学院教授 無藤隆先生講演会 「本物の保育から、本物の学力へ」記録 白梅学園大学大学院教授 無藤隆先生講演会 「本物の保育から、本物の学力へ」 日時 平成25年12月7日(土)15:00~17:00 場所 益田市立保健センター大ホール ○司会 あるいはその大切さということを、いろいろな方と協議を きょうは、皆さん、ようこそお集まりくださいまして、 進めながら感じているところです。 ありがとうございます。 そこで本日は、「本物の保育から、本物の学力へ」とい ただいまから、島根県立大学北東アジア地域学術交流研 うことで、無藤先生に御協力いただきまして、この講演会 究助成金によります共同プロジェクトの講演会を始めたい の運びとなりました。無藤先生もこの共同プロジェクトの と思います。私は、御案内を差し上げました、島根県立大 学外コアメンバーとして御参加をいただいている次第です。 学短期大学部で副学長をしております山下といいます。ど 無藤先生につきましては、いろいろな著書をお持ちです うぞよろしくお願いいたします。 ので、皆さんお名前は既に御存じとは思いますが、本日の レジュメの一番後ろのところに、一番新しい本の写真が、 きょうは、皆様のお手元に資料がありますとおり、白梅 東京大学出版会のホームページに出ていましたので、それ 学園大学大学院教授、無藤隆先生にお越しいただきました。 をコピーさせていただいております。その左側のページに まず、御講演をいただきます前に、このプロジェクトの ありますとおり、たくさんの著書を、先生はお書きになっ 趣旨と、それから、簡単な説明をさせていただこうと思っ てきておられまして、皆さんの中には、学生時代に、ああ、 ております。共同プロジェクト講演会となっておりますが、 この本読んだなとかいう方もいらっしゃるかもしれません。 この共同プロジェクトは、公立大学法人島根県立大学が助 一番新しい、この10月に発刊された本が、「幼児教育 成金を出しまして、地域の方々と島根県立大学が共同して、 のデザイン 保育の生態学」ということでした。遊びとは 協力して、一つの目的に向かって研究するという趣旨のプ 何か、園の環境デザイン、音環境(サウンドスケープ)と ロジェクトでございます。 表現、身体の動き、積み木と組み立て遊び、それから、ご 今回は益田市をモデルにした「ふるさと教育」について っこ遊び」分析、造形活動とは、協同性を育てる、美への 企画を出しまして、法人のほうから採択されまして、2年 感性を育てる、感情の場としての園環境、という筋立てで、 間、平成25年度と26年度の2年間、プロジェクトを推 執筆しておられます。この著書を拝読いたしまして、先生 進することとなっております。 は、感性豊かな子ども時代というものを目指して、執筆し 明日はこれに関係しました研究会もありますが、ふるさ ておられると感じましたが。同時に無藤先生は、保育、教 と教育を、益田市の保育関係者、それから小学校、中学校 育という営みそのものがアートだというふうに感じておら の学校教育関係者、それから、社会教育の団体、諸団体で れるのかなと、そういうふうに思いながら読ませていただ すね。そうした方々で力を合わせて進めていこうという、 きました。魂の揺さぶられるような思いというのが、やは そういう趣旨を持ったプロジェクトです。 り保育や教育の中にあって、それが子どもの感性とつなが きょうは、プロジェクトに協力していただいております るときに、本物の幼児教育になっていくという、そういう 益田市保育研究会の皆様の御協力で、後ろに益田市の地図 ことを学ばせていただいたような気がしました。 と、それから、ふるさと教育に取り組んでおられるさまざ 先生のプロフィールは、その前のページ、レジュメの一 まな活動の御案内も出ております。益田市保育研究会と、 番最後のところに記載させていただいております。 それから、中山間地域研究センター、島根県の中山間地域 お茶の水女子大学子ども発達教育研究センターの教授を 研究センターの研究員の檜谷さんに御協力をいただきまし 御退職後に、平成17年から平成19年まで、白梅学園大 た。 学の学長についておられます。現在は、同大学院の研究科 こうした、さまざまな地域の取り組みを私たちは進めて 長と子ども学研究所長を兼ねておられます。大学のほうで、 おりますが、その中で、保育と教育をつなぐことの難しさ、 「子ども学」という学会誌も、このたび発行されています。 9 −9− 学会には、日本発達心理学会、それから、 日本質的心理学会の前理事長としておら れます。また、日本保育学会常任理事で もあられます。皆さん、御承知のとおり、 文部科学省中央教育審議会委員であり、 内閣府「子ども・子育て会議」の会長、 日本学術会議連携委員をしておられます。 こういった先生に、きょう、お話を伺います。ここまで み取りの力も非常に弱いということがわかっております。 のところで、さあ、これから講演が始まるぞと、皆さん思 益田、津和野町、吉賀町のこの近辺の3市町のデータも拝 われたかもしれませんが、ちょっとここで、御講演の前に 見しましたが、やはり島根県の全体のデータと同じです。 島根県の教育課題について触れさせていただきたいと思い 特徴は同じです。 ます。先生は先ほど、1時に益田に着かれたばかりですの 小学校4年生で文章、物語を読んで読み取る力が弱い。 で、御到着になって2時間で、「島根県の学力は」という 作文を書くことが弱い。これは、どういう能力の低下だと のは、ちょっと言いにくかろうと思いまして、私のほうか いうふうに、皆さんはお考えでしょうか。字は書くことが ら簡単に、学力の問題を今回タイトルの中に上げさせてい できる、漢字も書くことができる、でも作文が書けない。 ただいたということで、島根県の学力について触れさせて 文字は読める、けれども、物語の趣旨を読み取ることがで いただきます。 きない。これはどのような力の低下だとお考えでしょうか。 皆さんも、新聞やテレビのニュースで御存じと思います また、小学校の4年生の算数も、国語ほどではありませ が、平成25年4月の調査で、全国の学力調査で、島根県 んが、全国平均よりも点数はかなり低いです。益田市、津 の学力のランキングはかなり下がりました。47都道府県 和野町、それから吉賀町のデータを見ましたところ、小数、 のうち、後ろから数えたほうが早いという、そういうラン 分数、足し算、引き算、このあたりが弱いですね。この力 クになりました。 の弱さは、小学校4年生でテストの結果として出ているの この全国の学力調査は、小学校6年生の調査ですが、島 ですが、小学校3年生までの学びに問題があるということ 根県教育委員会のホームページを拝見しましたところ、県 は、誰の目にも明らかだと思います。つまり、小学校の低 教委は学力向上のページに、小学校4年生からの独自調査 学年と幼児教育ですね。そこのところを、きょうは、無藤 の結果を掲載しておられました。この小学校4年生からの 先生のお話の中でも触れていただきたいと先ほどお願いし 学力調査の結果は、11月末に各市町村の教育委員会に届 たところです。 いたそうですから、皆さんの中には、もう既に御承知の方 も多いかと思います。この小学校4年生からの全国との比 私の勤めております島根県立大学短期大学部は松江にあ 較調査の中で、島根県の小学校4年生、これは科目として りますが、私は県内のさまざまなところの保育所、幼稚園 は、国語と算数を取り上げておられましたが、2科目とも に出入りさせていただく中で、島根県の幼児教育について 全国の平均をかなり下回っているという状況でした。小学 園長先生から話を聞きながら学んでまいりました。その中 校6年生での全国ランキングというのが、大々的にニュー で、過去20年、特に近年12年ぐらいですね、幼稚園が スには出たわけですが、実は6年生ではなく、小学校4年 激減しています。益田市では、私立の幼稚園がありました 生から差がついているということです。 けれども、この3月末に3園廃園になっています。ほかの 皆さんは、このことについて、日ごろどのようにお考え 市町村でも、公立も含めて幼稚園が激減しています。幼児 でしょうか。学力が下がってきているというのは、島根県 教育の場として、幼稚園が激減したことと、過去10年来 民にとっては、きのうきょうの話ではなく、日ごろ子ども のこの島根県の学力の低下と関係がないでしょうか。皆さ たちと接する中で、力が下がってきているということはい んはどのようにお考えでしょうか。 一方で、島根県は就学前の子どもの母親の就労率では、 ろんなところで感じておいでのことだと思います。 中身を見ますと、小学校4年生の国語では、作文で20 日本で1位ですね。これも最近のニュースでありました。 点近い差が全国平均との間に開いておりました。また、読 就学前の子ども、つまり幼稚園、保育所に通っている子ど 10 − 10 − もですけれども、その子どもの母親の有業率、お勤めに出 人生の最初の15年間 ているかどうかが、島根県は75%近いんですね。4人の 保育所と幼稚園をどういうふうに合わせていくか、一体 うち3人はお勤めに出ている。したがって、島根県はこの 化していくか。これが現在進んでいる、子ども・子育て支 10数年間の間に、保育園中心の幼児教育の世界になりま 援新制度の非常に大きなテーマなんですけども、その上で した。そして、もう一度、幼稚園中心になるという見通し 今度は小学校へ、これをどうつないでいくかっていうこと はほぼないという状況です。女性が働かなければ、島根県 が、保幼と小の間の連携、接続なんです。小と中の間をど どころか日本の経済力も成り立たない。となると、こうし うつないでいくかということも課題になっております。 た幼稚園以外の場で育つ子どもたちの学力の向上というの これは、国の施策として、保育所と幼稚園というのが、 は、一体、誰がどのように責任を担っていくのか。そこに 認定こども園を中心として整理統合しましょうということ 今回の、子ども・子育て会議の設立の趣旨もあるかと思っ で、議論しておりまして、すぐにそうなるわけではありま ております。 せんけれども、そういう方向に少しずつ進むだろう。それ に対して、保育所、幼稚園と小学校の間のつながりという さらにきょう、後ろのところに、津和野町左鐙の「山の のは、数年前から国としては、施策として進めてきたんで こども園うしのしっぽ」の方々が、活動の掲示をしてくだ すけれども、これも来年度以降、もう少し強化していこう さいました。園児が3人でNPO法人でやっておられる子 という形です。 ども園です。島根県の、特に隠岐や西部では子どもの数が そして、実は小学校から中学のことですけれども、来年 増えるという見通しは、ほぼありません。となると、認可 度ぐらいから、文部科学省としては、次の学習指導要領の の保育園でも定員を維持できるかどうか、非常に難しいと 改訂の、準備の準備ぐらいですけれども、入っていくわけ ころです。子どもの数が減るという、これからの動きを見 なんですけれど。そういうところで、どういうことを目指 据えて、これから10年、あるいは20年先の、この益田 すかというときに、一つは学力の考え方というのをもう少 や津和野、吉賀町、あるいは石見部の幼児教育をどうして し広げていこうということで、これが、実は保幼と小のつ いくのか。きょうお集まりの方々は、ほぼその責任者だと ながりということとも密接に関連することになります。 思います。その方々が、この少子化の時代、少ない子ども それで、最近、「21世紀型学力」とかいろんな言い方 の保育の中で、学力の維持、子どもの教育水準の維持とい をしているんですけれど、それをどういうふうに考えてい うのをどうしていくのかを、ぜひこの機会にお考えいただ くかということと。それから、もう一つは、小学校の場合 けたらと思っています。 には低学年教育、あるいは、1年生の教育の辺をかなりレ こうした、島根県の起死回生のときに、無藤先生に来て ベルアップさせていかなければいけなくて、と思うわけで いただきました。先生、だんだん責任重大な状況になりつ すが、そのあたりが、保育所、幼稚園と小学校の接続の問 つありますが(笑声)、どうぞ、先生のお話で私たちに刺 題に密接に絡む話なんです。 激をいただけたらと思います。 もう一方で、今度は、小学校の高学年のところをどうす どうぞよろしくお願いいたします。 るかっていう、これが中学との関連になってまいりまして、 小・中の連携、接続、一貫というものと、小学校高学年か ○無藤 ら中一ぐらいのころを、やはりもうちょっとレベルアップ 大きく3つほどのことをお話ししたいと思います。 していこうということなんです。 一つは、現在、国のほうで進めている子ども・子育て支 この小・中の連携、接続、一貫というのは、全国的には 援新制度、認定こども園、その他ですけれど、少しその解 昨年度ぐらいから、大分広がってきてはいると思うんです 説をさせていただきたいと思っています。2番目は、幼保 けれど。特に本年度から来年度、文科省としては大いに力 と小の間の連携、接続のポイントというところをお話しし を入れて、来年度、全国的に、本格的に小中一貫学校設立 たいと思います。そして、3番目に学力ということもあり というようなのが出てくると思うところです。高校以降は ますので、幼保と小、さらに中学校まで考えて、どういう また別な話として進んでいるんですけれど。とりあえず、 形で学力の向上の体制を組んでいくかという話に触れたい こういう人生の最初の15年間をどうしていくかというこ と思います。中心は、幼児教育のお話になると思います。 とが、大きな課題だということだろうと思いますので、多 少それぞれについて御紹介したいということなんです。 11 − 11 − 子ども子育て支援新制度 があるんですけれど、これは新しい形にいたしまして、で まず、保育所と幼稚園の問題なんです。 きる限り認定こども園に転換しやすい、そういう環境を整 内閣府の議論というのは、2013年度の4月から始ま 備するということなんです。ですから、当分というのは、 っているんですけれども、2年間の予定で新制度を動かそ その5年間の計画の中で、幼稚園と保育所と認定こども園 うとしております。基本的には2013年度末の3月ぐら が並立するということになるんです。転換すべきところは、 いというのが一つのめどで、もう一つのめどが、5月、6 早目に転換してもらおうとなっているわけです。 月ぐらいになるという感じだと思うんです。どうしてかと いうと、これは、幼保の一体的改革なわけですけれども、 それによって何を目指しているかということですけれど、 安定財源というものが恒久的に出るわけで、これは消費税 簡単に言えば、量的に整備するということと、質的な改善、 が10%になった暁に、7,000億、毎年プラスとして 向上を目指すと、この2つということになります。 出てきて、かつ、3,000億を加えようとしているわけ 量的な整備というのは2つのことがありまして、1つは で、1兆円前後のお金ということなんですけど、これは非 大都市圏で待機児童がかなり出ている場合、これは保育所 常に大きな額なんです。現在、国として幼保、プラス学童 が足りないわけですので、保育所をふやすなり、あるいは とかなんとかってことですが、2兆数千億の予算ですが。 幼稚園から認定こども園に転換するなりして、保育所に入 それに対して、1兆円を加えるというのは、すごい大きな れる定員をふやしていこうということなんです。これは、 ことですけれども。それが何を目指しているか。 例えば、首都圏とか関西圏は待機児童が大幅に出ておりま 大ざっぱに言えば、幼稚園、保育所というものを少しず す。多分、待機児童っていうのは、厚生労働省の統計では、 つ緩やかな形で一体的にしていこうということになると思 2万数千人と言われてますが、恐らくそれより1桁多いぐ いますが、同時に整理や統合、拡充というものが必要にな らいのという数字が出てくると思いますけれども。そう考 りますし、さらにその質をどう上げていくかということを えると、相当深刻な問題なんです。もう一つの問題という 考える必要があります。 のは、今度は、幼稚園も定員割れしているけれど、保育所 このスケジュールが、基本的には2014年の6月ぐら も定員割れしているような事実、これは今度は、認定こど いまでに、ほぼ決めないと間に合わないわけです。201 も園への統合ということが問題になっています。現在、急 5年度(平成27年度)からですから、前年度の秋までに 速に進んでいるのは、むしろ大都市圏よりは、そういった は、当然予算を伴うわけですので、決めなければいけない 僻地の抱えた少子化がかなり進んでいる地域で認定こども です。国としては、遅くても9月です。概算要求というの 園に変換しているんです。 は、ほぼそのころに固まりますので。都道府県、市町村は それに伴ってどういうことが問題になるかということ もう少し遅くなりますけれども、大体、秋に次の年度の予 は、後で申し上げたいと思いますけれども。いずれにして 算が確定いたします。 もその保育、幼児教育の場を、乳幼児全体を預かる立場と 幼稚園、保育園が体制を変えたとすれば、お子さんの募 して、どうしても統合化せざるを得ない、そういう状況に 集の時期というのは、私立幼稚園は大体10月だと思いま なってきている、そういうことだと思います。 すけれども、保育所は11月ぐらいから、1月、2月ぐら そうすると、量的整備というのは簡単に言えば、幼稚園 いまでだと思います。当然ながら、それに間に合ってなけ が認定こども園に転換していく、認定こども園に転換する れば募集できませんので、その前におおむね決めなければ ということは、幼稚園が保育所を兼ねるということです。 いけないことになります。 あるいは、保育所が認定こども園に転換する。これも保育 そういうスケジュールとして考えても、かなり忙しいと 所が認定こども園を兼ねるということですので、そのため いうことになります。もちろん、平成27年度ぴったりで のさまざまな整備が必要です。これが一つの課題ですよね。 全部変えるということではなくて、27年度からの5年間 今度はもう少し踏み込みまして、具体的にどうすればい の計画ですので、各市町村としては、5年間でどういうふ いかということなんです。 うに整備するかということを目指すわけです。 どういう形で、これを整理していくかということなんで 幼稚園と新制度 すけれども。中心は、全ての幼稚園と保育所、これが全部 幼稚園としてどうするか。簡単に言いますと、幼稚園の 統合されるわけではなくて、現在も認定こども園というの 選択肢というのは、幼稚園のままでいるか認定こども園に 12 − 12 − なるかで、認定こども園にも幼稚園型と幼保連携型とある ただし、認定こども園になるということは、保育所を兼 んです。この際、ある程度保育所に相当する子どもが多い ねるという意味ですけれども、そうすると給食が必要にな なら、幼保連携型になる必要があります。なぜかといえば、 るんです。幼稚園は給食は義務ではないので、家庭からお 幼稚園型は補助金が少ないので、そういう半端なことをし 弁当を持ってきてもらってもいいんです。それに対して、 ないで、幼保連携型になったほうがずっと補助金がふえま 保育所は給食が義務になります。特に3歳未満児について すから、そのほうがいいと思います。 は、給食は必ず園内で調理して出しなさいと規定されてお では、幼稚園のままでいるというほうを選ぶか、認定こ ります。そうすると園内調理の給食を出している幼稚園も ども園になることを選ぶか、どこで決めたらいいのか。簡 ありますけれども、一般的にはそう多くはない。そういう 単に言えば、預かり保育を現在やってるか、やってないか 幼稚園が、認定こども園になるとすれば、園内に調理設備 です。もう少し正確に言うと、預かり保育を、毎日、例え をつくる必要があります。調理施設というのは、規模によ ば6時とか6時半とか、遅くまでやっていて、しかも10 ってお金がかかるわけです。これについて、国からの補助 人とか20人とか、多目にやっている。夏休みもやってい を相当出しますというのが、今回の一つの目玉なわけです。 る。というような幼稚園、これは実質的には保育所を兼ね 幼稚園が認定こども園になるための補助費用が出るという てるわけです。毎日長く預けなければいけないというのは、 ことになっています。 保護者側からすれば、多分就労されてる方ですから、本来、 保育所に預けてもいい方が幼稚園の預かりを利用してるわ 保育所と新制度 けですから。そういうようなケースについては、この際、 今度は保育所が認定こども園になるということについて 認定こども園になりなさい。ならなくてもいいんですけど、 は、どう考えるか。一つは、保育所のほうはそのままで認 なったほうがずっといい。預かり保育の補助金より、認定 定こども園になることができます。保育所が認定こども園 こども園ということは、保育所の補助金が来るというんで になるとは、幼稚園機能を持つということなんですけれど すけれども、そのほうが高いからですし。そうであれば、 も、幼稚園というのは簡単な定義をいうと、3歳以上で、 正規の保育所をきちんとしていけるということなので、そ 4時間程度の保育をしているということなんです。そうい こがポイントなんです。 たしますと、保育所は当然ながら3歳以上で4時間の保育 ただし、幼稚園の預かり保育というものはなくなるんで を含めてしています。ですから、保育所というのはそのま すけれど、幼稚園の預かり保育にかわるものとして、一時 まで認定こども園になることができます。特段、幼稚園の 預かり制度というものが幼稚園にも適用されます。現在、 定員を新たにつくる必要はない。その保育所が認定こども 保育所がやっているものですけれど、それが、幼稚園でも 園になることに何か得があるかということですが、これは その事業を行うことができます。一時預かり制度というの ほとんどメリットがない。どうしてかというと、保育所が は、本来、毎日のように預かるという趣旨ではないですけ 認定こども園になるということで、恐らく補助金はほとん れども、さまざまな必要に応じて、午後、夕方まで預けな どふえない。 ければならないから、幼稚園だと、それは一時預かり制度 では、保育所は認定こども園にならないでいいのかと、 の事業の補助金を使えるという仕組みです。ですから、多 あるいは、なっても無駄かというところでありますけれど、 少の預かりだったら、幼稚園のままで、一時預かり制度を そこにプラスの点があります。保育所の認定こども園化は 使うという仕組みで残していく。しかも、一時預かり制度 融通のきく利用と教育機能の強化に有用であろうと思いま は、3歳未満児。2歳とか1歳とかも預かりますので、比 す。どういうことかというと、保育所と認定こども園と3 較的融通がきく仕組みなんです。 歳以上4時間程度を含んでやっていますという点で同じで 各幼稚園は、そういうような事情を自分たちなりに判断 すけれども、保育所はあくまで就労をしている保護者のた して、民間ならその法人として、公立なら公立は、教育委 めの施設です。ですから、当然ながら就労をしていない家 員会が監督だと思うんですけれど、そういうところが判断 庭で養育している保護者のお子さんを預かることはできな するということになるんです。 い。就労というのはパートも含んでおりますので、フルタ ですから、なかなか一概には言えないので、その市町村 イムでなくてもいいんです。それからもちろん、厳密にい の状況とか、同じ市の中といっても、場所によって事情が うと就労以外、例えば、親が病気だとか障害があるとか、 違うと思うので、それによって、選ぶ必要があります。 保護者自身に病気があるとか、いろんな理由で、もちろん 13 − 13 − 預かることができますけれど。大ざっぱに言えば、保育所 修というのが義務づけられている。初任者研修というのは、 というのは、家庭で昼間養育するのが難しい事情があると 年間何十時間か研修に出ないといけないとか、講師がつい きに預かる場所です。そういう規定がされています。だか て、保育を見て、いろいろ助言してくれる。そういう仕組 ら、児童福祉施設になっている。 みが初任者研修です。これは、小学校ではちゃんとやって そうすると例えば、親御さんが就労していない場合には、 ます。あれと同じものが幼稚園でもやりなさいとなってい それは預かることはできない。少なくともそこに補助金は て、それに対しての国及び自治体の補助というのは出るわ 出ないという仕組みですので。例えば、地域に保育所が一 けです。保育士には、通常そういうものはないわけで、学 つしかない。幼稚園はない、その保育所一個であるという 校出て就職すると、いきなり一人前でやらなければならな 場合には、恐らく認定こども園になったほうが何かと便利 いというわけです。これは、教育職と福祉職の扱い方の違 になります。幼稚園相当のお子さんを預かることができる いがそこにあるからです。 ということになるんです。 それ以外にも、例えば、幼稚園の場合には、通常8時間 あるいは、保護者の事情が変化する場合があります。例 勤務だとして、お子さんを相手にしている時間というのは、 えば、これまでお勤めしていたけれど、いろんな事情で来 幼稚園ですから、4時間とか5時間ぐらいです。その他の 年1年は家にいたいんですけど、みたいなときに、保育所 世話があったって、6時間以内。そうすると、8時間勤務 だったらそういう方のお子さんは断らないといけないわけ のうち、2時間ぐらいはお子さんを相手にする以外の時間 です。しかし、認定こども園なら、幼稚園相当になる、帳 が勤務時間になっていて、そこで幼稚園の先生は遊んでい 簿上変えるだけで預かることができるというので。これが、 るわけではないわけで、もちろんお掃除したり、いろいろ 融通のきく仕組みだということです。 あるけれども。例えば、翌日以降の教材の準備をするとか、 記録の整理をするとか、勉強会をするとか、研修に出かけ 保育所と教育機能 るとか、いろんなことで使っています。これは、小学校の もう一つが、教育機能ということです。実は、保育所は 先生と全く同じです。小学校の先生も、例えば、5時間目、 あくまで児童福祉施設なので、法律上は教育施設ではない 6時間目で終わって、授業は3時ぐらいに終わります。勤 んです。もう少し正確に言うと、学校教育法と教育基本法 務時間がまだあるわけですけど、それで帰るわけではもち という法律ですけれども、そこで、学校とはというのが書 ろんない。会議ももちろんありますけど、教材を準備した かれていますが、そこに、幼稚園とか幼保連携型認定こど り、いろいろ整理したり、研修したり、いろんなことで忙 も園は学校であると決められておりますけれど、そこに保 しいわけです。 育所は入っておりません。したがって、保育所は学校教育 それに対して、保育所の場合には、基本的には8時間勤 としての幼児教育はやっていない。こう法律上は整理され 務というのは、お子さんを相手にする時間として設定され ております。 ているので、ずうっと子どものお世話をして、それで勤務 実際には、幼稚園教育要領と保育所保育指針を比べてい 時間が終わるわけです。そこに8時間のうち、1時間とか ただくと、幼稚園教育要領でいうと、第2章が5領域が書 2時間、勉強の時間とか、記録の整理の時間とか、教材準 いてあります。保育所保育指針は、第3章が5領域が書い 備の時間とか、園内の打ち合わせの時間は保障されていな てあります。いわゆる保育内容が書いてあるんですが。そ いわけです。これは、民間の保育所や公立の保育所の一部 れの3歳部分、3歳以上部分が同じです。これは数年前に は、自主的にやっていますけど、通常は、それは難しい。 改訂したときに同じにまずはそろえたから同じなんです。 だってクラスを持っているわけですから、あけてみんなで ですから、実質的な意味で幼稚園と保育所が違うとは、私 集まるというのは大変なんです。 は思いません、同じようにしてあるんですけれども。法律 これは、深刻な問題だと思います。例えば、保育所、保 上の整理は全然違うということになっている。それは、建 育士には数年前から、要録が義務づけられてて、要録とい 前です。それが保育の質にかかわってくる部分があります。 うのは小学校はもちろん義務づけている。幼稚園も義務づ 何かというと、これも後でまた触れますが、保育所は幼稚 けています。保育所も要録というものを書いて、小学校に 園と比べた場合に、例えば、研修時間が非常に少ないんで 送りなさいと。要録はとにかく書かなければいけない。こ す。例えば、幼稚園というのは、公立でも私立でも、とも れが、4年ぐらい前に義務づけが入りましたけれども。そ かく学校でありますから、幼稚園に就職すると、初任者研 の際に、要録を勤務時間のどこで書いて、勤務時間の保障 14 − 14 − は入らなかったんです。適当にどこかで書けということだ 今回、これらがまとめられて整理されて、大事なことは、 けなんです。だけど、ずっと子どもの世話をしている。特 これに国補助が入るということ。今まで、これは基本的に に要録書くのは年長の担任が書きますけど、要録は、ちょ は自治体のお金です。あるいは、事業所内保育所は、これ うど今ごろから1月ぐらいに書くことが多いと思いますけ は正確に言うと雇用保険のお金ですけれども、になってい ど、昼寝はもうしてないと思います。子どもさんが起きて たところに国の補助が入るということになるんです。ただ いるんで、お世話は当然ある。いつ書けばいいということ し、居宅派遣型はちょっと例外的なもので、特に市町村が になると、残業になってくるわけです。残業手当がちゃん 必要と認めた場合に、国の補助が入る。ベビーシッターは と出ればまだいいんですけれど、出なければサービス残業 民間会社でやっているもので、極めてコストが高いです。 になってくればこれは福祉職が持っている深刻な問題です ベビーシッターが家庭に行くんです。ですから、これは例 けれども、教育職の場合には、これは公立の場合には教育 外的に認めている。例外って、例えば障害が重いお子さん 職員としての義務として、研修義務とか、そういう教材準 で、特別支援学校、その他に通わせるのも大変だけれども、 備を含めて、それは保障されています。民間の学校、私立 だから親が面倒を家庭で見ているけれど、時々、手伝いが 幼稚園も含めて、これも私立学校法で教育職員に準ずる形 欲しいよみたいなケースとか。もしかしたら、過疎地域で で保障されているんです。そういう差がある。 使われる可能性があるのは、例えば、かなり山の奥のほう つまり、戻りますけれども、保育所が認定こども園にな に、お子さんが一人、二人ちっちゃい子がいて、保育が必 ることに大きなメリットはないという感じなんですが、し 要なんだけど、通わせるのに車で三、四十分かかってしま かしながら、今のような事情を考えると、保育所が認定こ って、ちっちゃい子を連れていけない。そういう場合には、 ども園になることは、幼稚園を兼ねる、つまり学校の教諭 そこに保育所とか分園をつくるよりは、ベビーシッターが を兼ねることになりますので、そういう意味で研修、教育 行ったほうが早いとかいうことがあり得ます。 等の充実というものにつながるかもしれないということに これの中心は小規模保育所と家庭的保育だと思うんです。 なるわけです。それを具体的にどうやるかは、後でまた申 小規模保育所というのは、家庭的保育を大きくしたような し上げたいと思います。 イメージなんですけれども、施設型保育と違って、設置基 基本的にはこういうようなことで、幼稚園は幼稚園のま 準を緩めにしてあります。つまり、一戸建てのおうちを借 までいてもいいけれども、認定こども園に転換することも りてもいいし、マンションの1階などを借りてもよろしい 選べる。保育所も保育所のままでいてもいいけれども、認 ということで、緩めにつくってある。それから、保育士な 定こども園にも転換することを選ぶことができる。こうい ども、保育士資格を持たない場合には研修を受ける、研修 うことになってきたというわけです。 がまだ明確に決まってませんけれども、かなり全国団体の ほうで充実した研修の仕組みをつくってあります。そのた 地域型保育 めの研修というのは、例えば1日の講習ではないです、相 もう一つ新しい制度でつくられたものがあります。それ 当何日もかかる研修ですけど、そういうものを受ける形で が、地域型保育というものです。これがもう一つのタイプ もいいというようなことにしてありまして、比較的につく としてつくられました。これは、小規模保育、家庭的保育、 りやすい。 居宅派遣型保育、事業所内保育の4タイプです。これは、 幼稚園、保育園、認定こども園と全く違う性質のもので、 このつくりやすいというのは、裏返して言うと、いろい お金の出し方も非常に違うんですが、これら、4つの類型 ろな場所でつくれる。お子さんの家庭の近くでつくれると が入ったものを地域型保育と呼んでいるんです。それぞれ、 いうことが一つと、もう一つは、人口動態の変化に応じて 簡単に定義を言いますと、小規模保育事業は、定員が19 撤退しやすいということがあるんです。この撤退しやすい 名以下です。保育所は定員が20名以上になっているので、 という条件は、これからの日本の社会で非常に重要になっ それに満たないものということなんです。家庭的保育は、 ていきます。これは、都会でもそうなんです。例えば、東 定員が5名以下です。居宅訪問型というのは、ベビーシッ 京の都心だって保育所が必要になるわけですけれども。例 ターのことです。事業所内保育というのは、よく病院など えば、保育所が、株式会社か何かがやっているんだと思う についている、病院のお医者さんや看護師さんたちのため んですけど、霞が関に保育所があるんです。 の保育施設のことなんです。 撤退しやすいという条件はどういうことかというと、預 15 − 15 − ける人がいなくなる可能性があるということです。例えば、 は、例えば、園庭も入っていないですし、比較的狭い部屋 東京で広がろうとしてるのは、大きなマンションの1階に になっていますから、2歳ぐらいで走り回るようになった つくるタイプのものですけど、認可保育所をつくってもい ら、ちょっと保育は難しくなりますから、保育所なり、幼 いわけですが、マンションというのは、特に買い取りマン 稚園なり、認定こども園に移ってもらったほうがいいんだ ションというのは、最初は赤ちゃんを預かるのが必要でも、 ろう。いずれにしても、3歳未満で預ける必要がある方に どんどんどんどん年齢が上がっていくわけです。そのうち ついては、結構、選択肢をふやそうとしている。3歳以上 小学校が必要になる。小学校が必要なころには、今度は保 で保育所に預けたい人たちは、保育所か認定こども園を選 育所が定員割れしてくるんです。そういうことがもうわか んでもらいましょうという仕組みです。こちらの1号とい っている場合には、こちらを使おう。建物が立派なのをつ うのは、もちろん幼稚園でもいいし、認定こども園でもい くっても後で困るっていう話です。 いですというふうになるわけです。 当然ながら、これが、僻地なり、少子化がかなり進んだ それぞれ、特に保育所に預ける必要があるということは、 地域でも利用されるようになると思います。小規模保育所 さっき言いましたように、基本的には就労ですから、今ま については、一応、設置基準を決めて、2014年度から でと同様に就労証明を出してもらいましょうと。現在、措 動かすことになっていますので、そこに国補助が行くとい 置点数と呼んでいますけれども、保育の必要度を認定して う意味ですけど。ですから、僻地等についてもこれが活用 順番に入ってもらう。一気に待機児童解消といかないと思 されていく。そうすると、今までの自治体補助よりは補助 いますけれど、5年間の計画の中で、待機児を全国的にな がふえるので、つくりやすいということになります。 くしていこうということになっているわけです。 基本的にはこういう仕組みなんですけれども、今の預か る側のタイプをいろいろ紹介したわけです。もう一つ考え 保育の質の改善・向上のしくみ るのは、預ける側なんですけど、これらはニーズと呼んで さて、その上で、消費税から7,000億以上入ってく いるものです。乳幼児はゼロ歳から3歳で、6歳ですけれ るとはいっても、日本全国、非常にたくさんの幼稚園、保 ども、4月年齢では5歳です。そうすると、4種類に子ど 育園があります。そこで働いている保育者、幼稚園教諭や もたちを分けることができるわけで、まず、1番目、これ 保育士の皆さんは50万人以上、60万人以上いるんだろ は3歳以上で幼稚園相当のお子さんたち。基本的には家庭 うと思いますけれども、その大部分が民間で働いています。 で養育していて、3歳以上で幼稚園ないしそれに相当する ですから、何をするにしても物すごい数なので、なかなか ところに預ける、つまり1日4時間程度預けるつもりの人 難しいと思います。 たちということです。よく1号認定と、内閣府の書類に書 まず、その最低基準を確保するというのがあります。一 かれています。2番目が、3歳以上で保育所に預ける必要 つは職員1人当たりの子どもの数の軽減、裏返すと職員数 がある、長時間預けるというタイプ。3番目が、3歳未満 をふやすという意味ですけれども。これは幼稚園でいうと で保育所に預ける必要がある人たち。4番目が、3歳未満 一番わかりやすいんですが、幼稚園の数え方というのは、 で家庭で養育しているということです。 クラス定員なんです。保育所とちょっと違いますけど。幼 そうすると、まず、3歳未満で家庭で養育している。こ 稚園の場合には、1クラス定員というのは、5歳でも4歳 れは当然ながら保育所に預ける必要はないんですけれど、 でも3歳でも、全部1クラス35人となっています。それ 子育て支援は利用するはずです。子育て支援センターは、 を担任一人で面倒見なさいというふうになっている。これ 認定こども園では、実は、義務づけられていますから、そ は、国補助の基準です。しかしながら、実際に幼稚園で、 ちらに行くとかいうことで部分的な利用があるだろう。今 公立でも民間でも、特に3歳児を1クラス35人、担任一 度は、3歳未満で保育所に預けたい人たち、ここに待機児 人でやっているところはまずないんです。通常、子どもが 童が非常が多いんです。こういう人たちはどこに預けるか 大勢いたとしても20人とか、17人とかに減らすことが といえば、保育所か認定こども園、それから、地域型保育 多い。あるいは多い場合には、もう一人先生のほうをふや です。家庭的保育とか小規模保育というのは、基本的には す。いずれにしても、手をふやすしかない。3歳の4月、 ゼロ歳、1歳を想定しています。2歳から3歳になったぐ 5月といって、保育所でずっと育っているわけでなくて、 らいで地域型のほうに移ってもらおうということでつくっ 家庭から来たお子さんだと、中にはおむつしている子もい てあるものなんです。家庭的保育とか小規模保育の基準で るんだし、お母さんから離れて泣いている子もいるわけで 16 − 16 − すから、一人で35人面倒見るというのは大変なことにな ランクですか、そういう方々のを上げたらどうか、主任ラ る。ですから、そこについては、人をふやしましょうと。 ンクというと大体早くて10年から20年ぐらいだと思う 逆に言えば、1クラスの定員を減らすか、先生1人当たり んですけれど、そのぐらいの方々のを少し上げられないか の子どもをまず減らしましょうということをしたいと。 と。これは数十万、年収をアップっていうのを狙っている わけです。月で5万円上げれば、年で60万ですから。そ 2番目は、処遇の改善ということです。全国的には、現 れによって、経験年数のある方をふやしたい、全員ずっと 在、保育士不足ということが言われていて、特に首都圏、 勤めるというふうに一気にもならないし、そうしたら一気 関西圏、これは本当に深刻なんです。保育所、4月開園で に人件費が上がり過ぎますので、無理だと思うんですけど、 すが、まだ保育士がそろっていない。そうすると、2015年 経験のある方も若い人もまじるようなふうに、どの幼稚園 度開園を目指しているところは多いんですけれども、保育 も保育所も持っていきたいということです。 士がそろわないだろうと。それも100人、200人足り 公立の保育所は、非正規は別として、正規の方は、当然 ないというレベルではなくて、数千人以上足りないかもし ながら地方公務員ですからそれに準じて給料をもらってい れない。大変な事態なんですけど。養成校からそれなりに るわけですが、民間の場合に、横軸に年齢をとり、縦軸に は卒業させているので、一番の問題は離職する人が多い、 給料をとります。そうすると、ある額から始まって、上が 早くやめるということです。保育士の方がやめる理由はい っていくわけです。ところが、国からの補助金ベースはど ろいろですが、一つの理由は、給料が安いということです。 うなっているのかということなんですけど。基本的には頭 もう一つの理由は、シフト勤務など、例えば、早朝勤務と 打ちになると。保育士の場合どの辺でなるかというと、国 か夕方以降の勤務とかで、結婚されたりして、なかなか合 ベースでいうと、二十で勤めたとして、20代後半ぐらい、 わないということがあるし、幼稚園でも保育所でも言うな 七から十年ぐらいだと思うんですけど、頭打ちになる、そ れば小さい職場です。ですから、いろいろ人間関係が合わ れ以上出ないです。だから、もし保育所によってもうちょ ないとかいろんなことがあると思いますけれども。 っと高く上げているとしたら、保育所の負担になっている、 せめて、待遇を改善したいということでありますが、さ ほかを工面しながらやってると思いますけれども。ただし、 っき言いましたように、全国で50万人、60万人働いて それは自治体によるんです。そうではあっても、やはり頭 いるというと、いきなり改善するのは非常に難しい。例え 打ちは同じです。幼稚園はこれまで経験年数で上がる仕組 ば、同規模の民間企業と比べて、年間収入、数十万円から、 みがありません。だから、保育所はまだましだっていう考 30歳以降になるともしかして100万円ぐらい差がある えもあるんですけれど。だから、幼稚園も実際に上げて保 んですよね、平均の収入ですね。それを一気に改善は不可 育所に近い形で、どこかに頭打ちを入れると。だから、私 能です。どうしてかっていえば、50万人に100万円掛 立の幼稚園とか私立の保育所というのは、全員が10年や けたら幾らか、5,000億ですから。幾らお金がふえた めなかったら、多分赤字になるんです。それを一気に構造 って、あっという間に消えちゃうので。消費税が10%ぐ を変えることは難しいので、せめて、何人かはもうちょっ らいでは無理なんです。 と処遇をよくして、勤めて、ベテランの人と若い人の組み 2つのことが、今、動いております。一つは、本年度、 合わせということを全国的にやれないかということです。 認可保育所の保育士の皆さんに1人当たり10万円近くの ボーナスが出ている。予算としてはこれで、二、三百億で それから、3番目、幼保のカリキュラムの統合と実質化 す。これは少子化対策のお金で出して、これも来年度する ということですけど、幼稚園と保育所を統合的に考えてい のではないかと思うのですけれども。ちなみにこれは、い こうとしているわけです。現在、幼保連携型認定こども園 ささか不公平がありまして、認可保育所の保育士に限定、 の保育要領というのをつくっています。これは3月までに 幼稚園には行っていないし、認可保育所でない場合にも行 つくって告示する予定です。これは大ざっぱに言うと、幼 っていない、小規模保育とかなんとかには。これをもっと 稚園教育要領と保育所保育指針をあわせたものです。多少、 広げてくれという、これが一つです。10万円でもないよ 調整してますけれども。それによって、幼保連携型認定こ りはずっといいということですけれども。 ども園の参考にしてもらおうということとともに、幼稚園 もう一つは、全員を一気に上げるのはなかなか難しいの も保育所もなるべくそれを見てもらう形で、少しずつ保育 で、ベテランとか、経験者とか、資格が高い方とか、主任 の中身をそろえたいということです。 17 − 17 − 改善・向上の仕組みについては、研修の充実ということ には難しい。けれど、週に1回でもそういうことをやるな が、私はかなめだと思うんです。この研修時間を調べてみ ら、パートで処理できる分があるので、それができないか ると、公立小学校の方々は、教育委員会が責任を持って、 ということですね。 かなりちゃんとしているわけです。公立幼稚園は、それよ さらに、外部評価とか自己評価を入れようというような りやや低目だけれども、まあまあそれに近い形をとってい ことも提言をされていると、こういうことです。 る。公立幼稚園は人手が少ない場合が多いので、研修に行 きたくても行けないという問題もあるんです。私立幼稚園 保幼小の接続 は、やる義務はあるんですけれども、なかなか人が出せな 今度は、幼保と小の間の連携、接続の問題です。小学校 いようだという厳しい状況がある。保育所はおそらくそれ に入学すると、いきなり教育の仕方が変わってしまうので、 より少ない。この傾斜は地域によってさまざまですけど。 ギャップが生まれてしまうということが言われています。 これは、要するに、行政側が保障している時間の差です。 確かに幼稚園、保育園は、先生との距離が非常に近いとか、 個別には、うちの保育所はかなりやっていますよというと あるいは45分座りっ放しということは余りない、いろい ころは当然ながらあるので、それはさまざまなんです。 ろと体を動かす遊びをいろいろ入れていると。やり方がす こうなってしまうのは、要するに、研修への費用補助に ごく違うんです。小学校に入ると、1クラス、1教室にな 違いがあるからです。教育委員会で研修をやったり、保育 って、個人机があって、45分授業というのをきちんとや 課で研修していると行政は言うかもしれないけれども。し っている。そこに子どもの負担がかなり重くなってくると、 かしながら、子どもがいるときに出ていけないわけです。 やり方がすごく違って戸惑うことがいろいろ出てくる。そ そうすると、どうしたらいいか。簡単に言えば、幼稚園、 の辺のずれがあるだろうと、こう言われています。 保育園、昼間研修に行くんなら、代替の保育者を用意しと そういう面はあると思うんですが、もう一方で、こうい かないといけないです。そこにパートの人が入ってくれば、 う面もあるんです。幼児期にかなり育ててきているのに、 少しは行けるわけです。これは幼稚園だってそうなんです。 それを小学校が余りうまく生かせないで、もう一度やり直 あるいは、園内で勉強会を開くとか、記録の整理をすると している。低くし過ぎている面があるんじゃないかと。両 か、みんなで保育をどうするか考えるとか、教育課程、保 面があるということです。例えば45分授業をずっと座っ 育課程、指導計画を一緒につくるとか、要録を書くとか、 て、1年生の4月からやるというのは、子どもにとっては いろんな作業をやっていくことがある。それをやるために かなりしんどいだろうと思うんです。考えてみれば、小学 は、8時間勤務を、全部子どもの保育に当てたらできない 校は、1年生も45分授業ですけど、6年生も45分授業 わけで、そこから外れる必要がある。そうだとすれば、そ なんです。かなり相当大変だろうと思います。ちなみに大 こにパートの人を入れて、少しだけ面倒見てもらって、1 学の、私は大学の1年生で、1学期の授業を1つ持ってい 時間でも集まれるようにすればいいわけです。その補助金 るんですけど、これも大学生だってしんどいんです。当た がもらえればできるんです。あるいは、夕方以降の時間を り前で、高校は50分授業なんです。大学は、大抵90分 とることになると、一部の人は、それは勤務時間外になる。 です。90分目いっぱいこちらがしゃべると、途中で学生 残業手当をもらえれば、勤務時間として参加できるわけで のほうが息切れしてくるのがわかります、一生懸命聞いて す。だから、研修の機会というのは、ここで補助金をもら いても。体がなれてないんです。それと同じようなことが うことでこれをかなり補っていけるわけです。それを出し いろいろ起きてくるんだろうと思います。 ましょうということです。 どうしたらいいのかということですけれども、幼児教育 ただ、十分に出せるかっていうのは、なかなか厳しくて、 側は保育所、幼稚園のほうと小学校のほうと両方の努力が 週に1回、一、二時間、認定こども園、保育所の人たちが 要るだろう。つまり、簡単に言えば、幼稚園、保育園側も 園内で集まるだけでも、年間でいうと数十億ぐらいはすぐ 小学校を意識しながら、特に年長さんぐらいになったら、 かかるので、全国では。なかなか厳しいです。だから、理 しっかりとした教育を進めていく。その一方で、小学校側 想をいえば、保育所の保育士の方も、8時間勤務のうち1 は幼稚園、保育園でやってきたことをよく踏まえながら、 時間は子どもから外れてやりなさいというのが一番簡単で それを延長線上の中で少しずつ小学校に持っていく。こう すけれど、1時間外れるためには、8分の1分の人をふや いったことが必要だろうと思うんです。 さなきゃいけないということになるので、これは多分すぐ 現在、特に年長さんぐらいになって、小学校を意識して 18 − 18 − やっていきましょうという話を「アプローチ・カリキュラ 学びに向かう力 ム」と呼ぶことがふえました。この1年生の、特に1学期 まず、「学びに向かう力」と私などが呼んでいるものが ですけれども、幼児教育からのつながりを意識してやって ありまして、これは、小学校の言い方で言えば、「教科横 いこうというのが、「スタート・カリキュラム」と呼ぶこ 断的学力」の抽出ということになります。特定の教科だけ とがふえてきました。その中身の細かい話は、横浜市のほ のことではないです。国語だけで集中すればいいわけでは うでいい資料を、幼保と小の間の接続の細かいことについ なくて、国語だろうと算数だろうと何だろうと、子どもた て出しているので、ぜひ資料をごらんいただきたいと思い ちはそこで集中し、45分頑張らなければいけないし、い ます。 ろいろ考え工夫しなきゃいけないし、難しい問題に対して 挑戦してもらわなければいけない、そういう力、これを育 接続の成果 てよう。 これの成果というのは少しずつ今、検証されつつありま 幼児教育では、それはどこで育つのか。子どもたちのま すけれども、一生懸命やっているところで出てきている成 さに「遊び」の中で育つんです。子どもたちが、例えば、 果というのは、幾つかあると思うんですが。例えば、横浜 積み木ですごく高いものをつくりたいと思う。一生懸命積 市のある小学校の成果でいえば、例えば、過去5年間で不 んでいきます。丁寧に丁寧に積んでいかなければいけない。 登校が、これまで10人ぐらいいたのにゼロになってきた。 そこに「集中力」というものがまさに養われる場ですよね。 それから、文科省の学力等で上げることができた。もう一 あるいは、空き箱や段ボールを使って大きなおうちをつく つの例は、ある小さな市で、幼保と小の連携、接続という りたいと、いろいろと切ったり張ったりつないだりしてい プランを四、五年前に出して、全部の幼稚園、保育園へ広 く、そこに窓をあけたいというときに、どういうふうに切 げていくということを一つと、もう一つは、特別支援教育 れば窓がうまくあくのか、単なる切り取るのではなくて、 に力を入れておりまして、小学校の通級学級をふやして、 窓が開くようにしたいけれど、どうすればいいだろうかと 特別支援の子どもを、幼稚園、保育園の段階で見つけて、 いうときには、「工夫する力」というのがそこで育ちます。 小学校に来たらすぐ通級に持っていってというのをやりま 子どもたちが、まさにやりたいと思う中で、こういうこと した。その5年間で、小学校の不登校をゼロにして、それ をやってみたいというイメージ、それは「目的」と呼んで から学力試験については、県平均を超えるところに来て、 いますけれども、そういうのが生まれてくる。ちなみに、 あんまりもともと学力、高くないところですけれども、と この「共同の目的を生み、見出して協力する」というのは、 いうところに持ってきています。 幼稚園教育要領や保育所の保育指針の「人間関係」の項目 その中身は何をするのかなんです。これも大ざっぱに言 に書いてあることですが。そういうものを中心にして「学 うと、まず、その「アプローチ・カリキュラム」について びに向かう力」を育てようと言っています。これが、幼児 2つのことで考えましょうと言っております。2プラス本 期に育つ力の中心になると。これが小学校に生きてくる。 当は1で、もう一つは、特別支援の問題なんですけど、き なぜかといえば、小学校の授業というのは、まさに「学 ょうはその話は省きますが。 びに向かう」力をもとにして成り立つ。きょうは算数だと いうときに、45分集中して取り組んでくれなければいけ 19 − 19 − ないし、きょう算数の2桁の繰り上がりをやるんだという、 的にわかるだけではなくて、言葉としてきちっと定義でき その問題を出されたときに、それについて一生懸命考えな ているわけです。対角線とは何ですかと、三角形とは何で きゃいけない。そんな難しいことは嫌だでなくて、難しい すかと。でも、幼児は言葉で定義したり、言葉で性質を言 からこそ挑戦する気持ちになってくる。それが学習意欲で えなくてもいいわけで、でも、感覚としてはわかっている。 す。そういうもののもとを幼児期の遊びで育てる、それが その幼児が立体図形、積み木で十分遊んで、いわば図形感 小学校の授業というものをつくっていく、ということです。 覚を身につけているんです。それをもとにして、初めて小 私の話の最初で、「21世紀型学力」といいました。そ 学校の算数の図形教育が成り立つわけです。例えば、今の れは、この「学びに向かう力」をもっと今度は、小学校、 日本にそういう子はいないんだけれども、一切積み木に触 中学校、高校と大きく広げていったときにどうなっていく れてない子がいたとします。そういう子に、小学校で図形、 のか、考えていこう。そうするともちろん、小学校高学年 これは三角、これは四角ということを教えるとしたら、大 以降になれば、例えば、コンピューター、インターネット 変だと思うんです。もちろん、そういうことはなくて、積 を活用していくとか、調べ学習をしていくとか、みんなで み木で触れているので、三角、四角の定義なんかは、45 討論していくとか、もちろん活動としてはもっと広がって 分の授業で大体教えるとわかるようになるんです。つまり、 いくわけですが、そういうことに発展させていこうという 幼稚園や保育園の遊びの中の体験で、いろんなことを感覚 ことです。これは、現在、国際的にもちょうどOECDの 的に学んでいた。その感覚的に学んでいることを「芽生 PISA調査が発表されたばっかりですけれども、ああい え」と呼んでるわけです。 うところでも、かなり強調するようになってきた。割と国 例えば、言葉の教育としての保幼小の一貫教育に触れる 際的な標準的な考えにはなったものです。 と、国語教育というのは、小学校教育のまさに中心です。 教科教育で、一番授業時間が多いのは国語なんですけれど 教科内の学力の芽生え も。ある意味で、小学校教育は言葉の教育なんです。しか もう一つの問題が、「教科内の学力の芽生え」について し、当然ながら、子どもは小学校1年生に入ったときから、 です。例えば、国語教育なら言葉で、算数ならば数とか図 言葉について学ぶわけではないわけで、言葉の教育は実は 形です。小学校の教科ごとに、そこで育てるべきことがあ 生まれてからすぐに始まっているわけです。ゼロ歳の終わ るわけだけれど、その芽生えは全て幼児期に出てきている りごろになると、喃語っていいますけれど、例えば、10 んだと。それを丁寧に育てて教科につなげるということで カ月ぐらいの赤ちゃんだったら、日本語風に聞こえるけれ す。例えば、幼稚園や保育園で積み木遊びをします。積み ど、多分余り意味はないようなことを言い出しています。 木というのは、もともと19世紀にドイツでフレーベルが あれは要するに周りの大人、親が日本語をしゃべっている 始めたものですけれど、あれもともと図形教育の教材なん とすれば聞いているわけで、そうすると、大体ゼロ歳で、 です。だから、ああいう四角とか三角になっている。それ 10カ月前後ぐらいに、赤ちゃんの発音が日本語っぽくな をだんだん自由な遊びにも使えるものに変わったんですけ っているんです。あるいは、6カ月以前にも声を少し出し ど、やはり図形なんです。立体図形ですけれども。そうす ますが、そのころは、日本語の発音に変わってくる時期な ると、例えば、ある園で見た風景ですけど、大型積み木で んです。大体、初めての言葉、まんまとか言い出すのは、 四角なんだけど、半分、直角二等辺三角形の三角柱が2つ 個人差がありますけど、ゼロ歳の終わり、満1歳のお誕生 をちょうど片づけるところを見ていたら、4歳ぐらいの子 日前後、遅い子で1歳3カ月とか、そのぐらいですけれど どもが、一つ片づけて、もう一つ探して、ああ、あっちに も、そこからどんどんどんどん言葉ってふえていきますか あったと持ってきて、ひょいと入れたわけです、それだけ ら。つまり、話し言葉というものは、乳幼児期にできるわ のことですけれども。つまり、その子たちは毎日使ってい けです。 ますから、四角というのは三角の組み合わせだとわかって 乳幼児期の終わりごろ、小学校に入る直前に子どもたち いるんです。もちろん、言葉は知らないです。四角、三角 はどのぐらいの語彙を持っているか、語彙というのは単語 ぐらいは知っているかもしれないけど、直角二等辺三角形、 数です。これは推測が難しいけど、大ざっぱに言うと、五 みたいに言われても、えっという感じでわからないのだけ 千以上だろうというのが推計で、個人差が大きいと思いま れど、感覚的にはわかる。これは、小学校ではいつ出てく すが、四、五千から七、八千ぐらいの間というのが妥当な るかというと、2年生の図形です。小学生は、これを直観 線だと思うんですが、数千ってすごく多い数です。 20 − 20 − まだ満1歳では大して学習していません。語彙がふえて 見てコップ、コップ、コップと言えばいいというわけでは いくというのは、大体満2歳のお誕生日ぐらいからです。 ない。コップの意味って何だろうというときに、水を入れ 満6歳のお誕生日まで数えるとすれば、4年間ですから。 て飲む、これがコップです。そうすると、例えば、子ども 365日掛けていただくとわかりますけど、千数百日、五、 がすごく喉が渇いてジュースが欲しいよとか言っていると 六千を千数百で割ると、1日、4から5語ぐらいの学習な きに、お母さんがコップを出してあげてから、入れて、は んです。大人になってそのぐらい英語を学習したら、あっ いって渡したときに飲む、そのときに、ああ、コップでジ という間に上手になるんです。 ュース飲むとおいしかったねって話ができる。そのときに つまり、園に帰って5歳児とおしゃべりして、普通に通 子どもの頭の中には、ジュースという言葉と飲むという言 じます。月曜日に、例えば年長さんのクラスに行って、先 葉とコップという言葉が、同時に入ってくるわけです。こ 生、土曜日にお勉強に行ったんだよって言ったら、子ども のコップで夏の暑いときに甘いジュースを飲めたおいしさ たちは、へえ、すごいね、先生も大変だねみたいなことを と、コップと、飲むという言葉がセットで入っていく。こ 言ってくれるかもしれない。ちゃんと話は通じてる、通じ れが大事です。コップという発音だけたたき込んだってだ ているってことは、言葉がわかっている、日本語の文法も めなので、言葉というのは必ず意味とセットになっている。 わかっている、最低限のところは。つまり話し言葉の基本 意味はどこにあるかというと、体験することです。 は乳幼児期にできているわけです。 ということは、子どもは乳幼児で接する大人っていうの その上で、学校教育というか小学校教育の国語は何をし は、つまり親、保護者ともう一つは幼稚園、保育園の先生 ているかというと、実は、「話し言葉」の基礎の上に、 ですよね。家庭での親御さんと園での保育者が、子どもに 「書き言葉」教育をやっているんです。もともと義務教育 対してどこまで豊かな言葉のかかわりができるか、これは というのは19世紀に導入されたわけですけれど、中心は むしろ対話と言ったほうがいいです。一方的に大人がしゃ 算数と国語です、プラス道徳が入ってはいますけれども。 べればいいわけじゃないです。べらべらとしゃべっても、 その国語というのは、言葉を教えるというよりは、文字の 途中で子どもは意味がわからなくなるので。ジュースを飲 読み書き、文章の読み書きを教えるために習うんです。 んで、ああ、おいしかったねと言えば、おいしかったねっ 「話し言葉」自体は暮らしの中で自然に覚えることなんで ていうのが入ってくる。これは2歳でも入ってくる。それ す。 はもう少し年齢が上がれば、また違う言葉が入っていくん だから幼児期には言葉の教育というのは非常に重要です。 です。 「話し言葉」としての教育。では、特に3、4、5歳の幼 子どもの語彙をふやす、もう一つの手だてがあるんです。 児期における言葉の教育の中心は何か。発音はほぼ、ゼロ 絵本です。絵本を読み聞かせると、必ずそこには新しい言 歳、1歳、2歳でできています。次に必要なのは、語彙と 葉っていうのが大抵ある。4歳ぐらいに読ませる絵本だっ 文法なんです。日本語の文法というのは、大ざっぱに言う たら、多少難しい語彙がそこに入っている。しかも、絵本 と「てにをは」です。がとか、はとか、をとか、にを使い というのは絵を見て意味がわかるものです。言葉のほうは 分けるというのが日本語の文法の特徴なんですが。これは 耳から入っていきます。そうすると、目から見て意味が入 四、五歳ぐらいまでにできる。特に幼児期にどんどんふえ り、耳から言葉が入って、頭の中で、目から入った意味と ていくのは語彙です。では、語彙をふやすというのはどう 耳から入った言葉が結びついて言葉の学習ができるものな やるのか。ここに言葉の教育の特徴があります。それは言 んです。そうすると、毎日のように絵本を読んであげる、 葉というのがふえるためには、大人が与えるしかない。子 大抵はそうしていると思うんですけれども、それによって、 どもが言葉を発明するわけではないです。机と呼ぶのも大 子どもの語彙がどんどんふえていくということになります。 人の約束ですけど、子どもが勝手に言っても困るわけで、 これが、語彙をふやすということなんです。 机は机なんです、コップはコップなわけです、大人が与え もう一つは、文字を読み、書くという、文字教育です。 ているわけです。では、どういう場面で与えているか。一 これは日本語の特徴があるんです。一つは、仮名文字とい つは、大人が子どもとやりとりする中で与えているんです。 うのは読むのに非常に易しいんですけれども、書くのが難 言葉というのは、発音と、コップという文字というか、コ しいという特徴があります。例えば、「あ」という字があ ップという日本語としての発音がある。もう一つ大事なの ったときに、これは「あ」と読むのは比較的に易しいんで は意味なんです。これがセットで言葉です。ただ、ものを す。特に名前に入っている場合、あっこちゃんとか。そう 21 − 21 − いうときには、大体、自分の名前とか友達の名前はすぐ覚 せながら、それを小学校教育に生かしていくということを えるので、「あ」とこうわかるわけですが、これを書くの やろうと、その入り口部分なんです。 は非常に難しい、どうしてかっていうと、書き順とかバラ ンスが、特に平仮名は非常に難しいからです。 個人ごとの特性・学力差 ですから、日本の子どもたちは、仮名字を読むのは早い もう一つ大事なことがあるんです。それは、「子どもの です。だけれど、書くのはかなり時間がかかるので、早い 力を見定め、個人ごとの特性を捉える」とか、「1年生の 子で年長、遅い子で、やはり小学校に入るぐらいなので、 教育の先行きの見通しを立てる」ということです。これは、 その辺の順番というのはよく考える必要がある。 既に幼児教育の中でも、小学校1年生の教育の中でも、か さて、その上で、小学校の国語の授業が成り立つんです。 なり学力の個人差は大きいということです。 例えば、小学校1年生の国語の教科書に必ずある単元の一 もともとの子どもの力もあると思いますけど、先ほどの つに、「おおきなかぶ」という、有名な童話があるんです 言葉の教育でいえば、家庭における保護者の語り方、これ けれど、これは国語の教科書は3社ぐらい出していると思 はすごく差があるんです。例えば、お母さんと子どもが一 うんですけど、どれにも入っているんです。あの「おおき 緒にいる場面を見てます。病院の待合室とかなんかで見て なかぶ」という絵本は、大抵、幼稚園までで読んでもらっ ると、子どもがいろんなことをお母さんに言うじゃないで ているわけです。それをでも、小学校でわざともう一度取 すか。子どもが、「ほら、ああいうのあったよ」とか。す り上げている。小学校の国語というのは、幼児期の経験を ると、お母さんが携帯を見ながら、「うんうんうん、わか ベースにしながら、今度はそれを「書き言葉」にしていく。 ったわかった」とか。「うるさいから」とか、「静かにし 「書き言葉」にしていくってことは2つの意味があって、 て」とかって言ってる人もいますけど。こっちでは、「あ 一つは、それを読んだり書いたりできるということなんで あそうだね」と丁寧に聞いてあげる、「そうなんだね」と すけれど、もう一つは、言葉を自覚的に使えるようにする。 興味を示して語ってあげる親もいます。どう考えても、そ 例えば、「おおきなかぶ」の絵本で例えば、大きなカブを こに非常に差がついていくわけです。つまり、家庭におけ 引き抜くときの、かけ合いの言葉で、うんとこしょ、どっ る差というのは、相当大きいだろうということです。 こいしょって言います。小学校の国語の授業の指導案はい それに加えて、もしかして、幼稚園、保育園での先生方 ろいろありますけど。例えば、うんとこしょ、どっこいし の語り方にもかなり差があれば、その差はどんどん大きく ょってどうして言うんだろうね、例えば、ほかの言葉に言 なるわけです。そういう意味での学力差っていうのは相当 いかえてみたら、えんやこらはどうだろうねとか。例えば、 あるだろうし、それが、小学校の1年生、低学年でも差を そういうふうにして、言葉を比較してみて、調子がいいと 広げる方向でやってたら、5年生、6年生になって、学力 か、力が入るとか、子どもはいろんなことを書いているわ 差はついていくだろう。そこを何とかしなくてはいけない。 けですけれど。 学力向上というのは、やはり幼児期から丁寧に考えて、小 そうやって、小学校の国語の授業は言葉を自覚的に使え 学校低学年、中学年、高学年と積み上げていかないといけ るように持っていくわけなんです。それを、1年、2年と ない。それは単にドリルをたたき込むという話ではなくて、 積み上げていく。だけど、そのベースは、今言ったように、 「学びに向かう力」とか、「教科の学力の芽生え」という 幼児期の「話し言葉」の教育にあり、いかに親や保育者が のは、乳幼児期から丁寧に見ていくべきものなのだろうと 子どもと豊かな語りかけをしているかということ。絵本を 思うわけです。 どこまで読んであげているか、この2つが幼児期の教育の 中心なんだ。それをもとにしながら、小学校の国語の教育 ○司会 というものが成り立っていく。これが、「学力の基盤をつ ありがとうございました。 くる」ということです。 先生には、現場の皆さんが、一番、今知りたいと思って そういう意味で、「スタート・カリキュラム」に、もう おられることを解説し、また御教示いただいたと思います 一度戻ると、何をするかというときに、幼児教育で行った が、ここで、何かフロアから質問がありましたらと思いま ことを小学校の教室でも発揮できるようにしてあげて、小 す。皆さん、どうですか。何か、この際、聞いておきたい 学校の授業の課題に向けていくことなんです。簡単に言え ということ、ございませんか。ありましたら、挙手をお願 ば、幼児教育の中で培った子どもたちの力を存分に発揮さ いします。はい、どうぞ御質問をお願いいたします。 22 − 22 − ○会場発言 現在、文部科学大臣は、教育予算について別な形でふや 中学校の教諭をしているものです。先生は国の中央のほ すということで、財務省とのやりとりもあります。それを うで、子ども子育ての会議をしておられますけれども、中 サポートして考えたいと思います。そういう意味では、学 央のほうでは、どれぐらい真剣に、今、先生がお話しされ 校教育が何もかも、全部を引き受けるという時代でなくな たような、これから育つ子どものことを真剣に考えてるか、 ってきたので、もう一度学校として、あるいは教員がやる 危機感を持っているのか、どんなもんなんでしょうか。 べき課題、仕事を減らす、あるいは整理するということが 先ほど、いろいろな幼稚園や保育士の方の待遇改善とい こっちで必要だと思うんです。もう一方では、教育予算の うようなこともおっしゃっていましたけれども、それがそ 拡充というのも不可欠なので、その辺を目指して、真剣に の、ただかけ声だけで終わるのか、それとも、本当に今か 考えていると思っています。ただ、壁は厚いなあとは思い ら日本とかそういったところで、真剣にやっていくのか。 ますけど。 そういったことをちょっと、聞かせていただくと、また 我々も頑張れるかなと思うんですが。 ○司会 ありがとうございました。 ○無藤 いろいろと保育制度改革について、基本的なお話を伺い 真剣という言葉の意味によるとは思いますけれど、それ ましたが、保育所の中が変わり、幼稚園の中が変わり、あ なりにそれぞれの立場の中で、一生懸命考えてると思うん るいは小学校が変わったとしても、やはり地域の大人が、 です。日本の場合に、現在の幼保に限らない、小中高まで 「ここで子どもをどう育てるか」という、そういう危機感 含めて考えたときに、少子化になってきているわけです。 を持って、コミュニティーで子どもを育てるという意欲を 少子化っていうのはいろんな意味で、必要な経費は減るは 表に出すことが、何より大事かなと思って、最後のお話を ずであるというのが財務省の理屈でありまして、教育予算 伺いました。 を減らせと言ってきております。文科省のほうは、少子化 で子どもが1割減ると、教員は1割少なくていいというふ きょうは、3時から2時間、皆さんと一緒に学んでまい うにならない、どこに行ったって最低限の教員数が必要だ りました。無藤先生に「アプローチ・カリキュラム」と し、むしろ、少子化で減る、この機会を利用して、子ども 「スタート・カリキュラム」のところで、「学びに向かう 1人当たりの教育への手間をふやそう、充実させようと、 力」、「教科内の学力の芽生え」について御指摘いただき こう言っているわけなんです。この辺で非常に対立があり ました。そこを保幼小でどうつないでいくのかということ ます。 が、私たちのこれからの課題かと思います。 そういう意味では、多分、こちらのほうの地域も非常に 冒頭、島根県の学力の、特に国語の問題について申し上 深刻な問題があると思います。例えば、小中の統廃合の問 げましたが、最後のところで、大人から子どもへの語りか 題を含めて、どうしていくかということなんですけれど。 けの部分で、子どもが体験しているときに、どう大人が語 そのときに日本は、特に幼保については、民間でやってい りかけるかということの大切さを御指摘いただきました。 る部分が非常に多くて、これまで公的な投資が非常に少な 国語の学力低下の問題には、私たち大人の世界の、言葉の かったわけで、そこを大幅にふやそうと、これは第1の改 貧困ということもあるのかなと、胸に響きました。言葉の 革なんです。小中については、いろんな課題がありますけ 教育について、ぜひ現場で研修をしていきましょう。その れども、今、大きな問題は、教員の多忙化の問題なんです。 ときに、やはり研修制度という、今回の保育制度改革のこ これは、学校に与えられた仕事に対して、教職員の数が全 とも影響してくると思います。 体として少ないということで出てきてるわけですから、学 いろいろとアドバイスをいただきまして、先生、どうも 校の仕事を減らすか、教職員をふやすかっていう話になっ ありがとうございました。これからも御指導をよろしくお てきている。いろんな整備が必要なんですけれど、一方で 願いいたします。本日の講演会は、これで終了したいと思 教育予算ふやさなければいけないと、私も思うんですけれ います。(拍手) ど。消費税が上がるという中で、じゃあ、10%になって どこまでふやせるかっていうのは、非常に厳しい壁があり ます。 23 − 23 − 「本物の保育から、本物の学力へ」講演資料 平成25年12月7日(土) 無藤隆(白梅学園大学) 1.子ども・子育て支援新制度と幼児教育の今後 1)スケジュール ・消費増税が実施された上で進められる。 ・平成25年度ないし26年度前半に新制度を具体化し、27年度からの実施に向かう。 ・平成25年秋に保育ニーズ調査を全国の自治体で行い、3歳未満児保育を要する子ども、3歳以上の長 時間保育を要する子ども、幼稚園相当の子どもの数を推計する。 ・平成25年1月・2月に行った全国の幼保の経営実態調査に基づき、保育単価を決め、公定価格と補助 金を確定する。 2)新制度の目指すもの ・子どもの最善の利益を目指す。 ・家庭の保護者が子育ての第一義的責任を持つことの上で、子育て・保育・幼児教育への社会的支援を充 実させる。 ・乳幼児期は人生の始まりであり、その後の成長と教育の土台を気づく時期であり、その時期の教育の質 を高めることが大切になる。 ・保育を必要とするすべての子どもに適切な保育の場を用意する。 ・少子化が進む中で、適切な規模の子ども集団での教育を可能にする。 3)量的整備と質的改善 ・大都市圏において待機児童・潜在保育ニーズに対応する。数万から数十万人の保育所相当定員を増やす。 幼稚園の認定こども園への転換が進むであろう。 ・過疎圏における少子化への対応。幼稚園と保育所の統合が不可避となる。 ・保育の仕組みの柔軟化を進める。特に女性・母親の生き方の多様性を尊重する。乳幼児を持つ母親の育 児・労働の両立を可能にする。フルタイムやパートや育児専業や職業訓練の選択肢を尊重する。 ・質の改善向上の仕組みを作る。 4)幼保連携型認定こども園を中心とした統合システムへの緩やかな転換 (1)幼保新制度における保育施設の多様性 ・幼稚園、保育所、認定こども園が並立する。(旧来の私学補助による私立幼稚園も一部に残りうる。) ・認定こども園への緩やかな転換を促す。預かり保育を行う幼稚園などの転換が可能である。ニーズが多 い地域での転換は促進される。 ・保育所の認定こども園化は融通の利く利用と教育機能の強化に有用であろう。 ・「幼保連携型認定こども園保育要領」を作成する。それが幼保の統合のモデルを示す。 ・幼稚園の預かり保育は(認定こども園に転換しない場合は)一時預かり制度で行うことに変わる。 (2)地域型保育(小規模保育、家庭的保育、居宅派遣型保育、事業所内保育等)の創設 ・弾力的な設置が可能である。大都市圏でも地方圏でも有効性がある。 ・基準として緩やかなものとしつつ、高めのところの補助を増やして、移行を促す。 24 − 24 − ・研修をきちんと行う。 ・融通の利く仕組みとする。 ・病児・病後児保育などの活用も期待できる。 (3)保育の必要の個別の認定 ・個々の保護者の実情と希望に応じて、保育の必要度を認定する。 ・3歳未満および3歳以上の長時間について認定を受けると、どこかの保育を受けられるとする。 ・それ以外の3歳以上の子どもはすべて幼児教育を受けることを可能にする。 ・3歳未満の家庭で養育される子どもの子育て支援を充実させる。 (4)市町村の責任。 ・市町村が全ての保育・幼児教育について直接的責任を担う。 ・保育計画を作り、実施し、結果への責任を負う。 ・当面、民間保育所は自治体が責任を負う仕組みを維持する(児童福祉法24条)。 ・都道府県は主に広域調整と認可を受け持つ。 (5)公定価格 ・公定価格は,保育時間と年齢に応じた実態に基づき,一人当たりの単価を決める。 ・少人数の園への加増を行う。 ・障害児その他の加算を行う。 ・建物の減価償却分を含める。 5)質の改善・向上の仕組み (1)最低水準を確保する ・最低基準の確保,特に職員数の増加(職員一人あたりの子どもの数の軽減)。 ・処遇の改善、民間施設での定着率の改善。 ・幼保のカリキュラムの統合と実質化。幼保連携型認定こども園保育要領と解説書や指導資料による。 ・資格の統合と上級資格の導入、インセンティブの付加の検討。 ・行政による監督。その専門性を上げる。 (2)改善・向上の仕組みを安定的に導入する ・研修の拡充,外部の研修に参加できるような費用補助。 ・園内研修の定着。 ・外部評価の導入、特に専門家による評価、評価者の訓練や評価機関の認証、優良施設の自主的公開。 6)家庭の応能負担とその軽減 (1)幼保・認定こども園のすべてにおいて応能負担とする ・所得に応じた保育料とする。 ・保育料は保育単価の一定割合として客観化・透明化する。 (2)保育料の低減を目指す ・保護者の若い層は世帯収入が低い場合が多いので、保育料の低減を目指す。 ・幼稚園の保育料の公私格差を是正する。 ・5歳児より順次、幼保・認定こども園の幼児教育部分の無償化を目指す。 25 − 25 − (3)保育が家庭の困難を補いうる。 ・その認識を広める。 ・説明責任としてデータを集める。 (4)家庭への子育て支援を進める場を作る。 ・幼保・認定こども園で強化すると同時に、他の場を作っていく。 2.小学校教育の土台としての幼児教育 1)質の改善の方策としての小学校とのつながり ・すべての幼保・認定こども園と小学校のカリキュラムをつないでいき、発達の連続性と幼児期の学びを 小学校で生かすように工夫する。 2)幼児教育におけるアプローチ・カリキュラム ・「学びに向かう力」(集中力、持続力、工夫力、等の非認知能力)を中心とする。 ・感情の育ちと教育を重視する。 ・身体の多様な動きを可能にする運動活動を広げる。 ・読み書き・算数などを園環境の活動に埋め込む。 ・人間関係を協同的活動に向けて育てる。 ・絵本、言葉などによる思い・考えの伝え合いを重視する。 ・美的表現を知的活動や人間関係と統合して進める。 3)保育の働きかけの基本 (1)保育者の働きかけとは ・保育者の表情と動きの躍動性が子どもを誘う。 ・環境の中のものや教材と子どもたちと保育者との三角の関係を作り出す。 ・子どもとの思いを形とし、言葉とする。 ・子どもの思い・考え・気付きを元に、子どもと保育者、子ども同士の対話を広げる。 (2)記録とカリキュラムを作る ・子どもの学びのエピソード(学びのストーリー)を描き出す。 ・どの子どもについても、その育ちの並行し交差する筋道としてマップする。 ・一人一人の育ちの様子を記録として保管し、見合うようにする。 ・年齢・時期毎の要点と、それが年齢を追ってどのようにつながるかを表としてカリキュラム化する。 ・各々の時期の大事な育ち・学びと、そこでの子どもの姿とそれに向けての指導上の要点を明示する。 (3)保育者の働きかけを振り返り改善する ・保育者自身の営みや働きかけを見直すようにする。 ・子どもとのやりとりや働きかけを見直せるように、互いに見合ったり、オーディオ・ビデオ・写真記録 などを活用する。 ・捉えこそなったあるいは応答し損なった子どもの動きを思い出してみる。 ・明日・来週の自分の配慮点を描いてみる。 26 − 26 − (4)園の環境設定を見直す ・子どもの動線を描き出し、各々の集中と校流を可能にする。 ・園に置かれた素材を教材として見直し、その価値を取り出す活動を促す。 ・幼児期に必要な多種多様なものとの出会いとその表現活動を可能にする。 ・子ども自身が活動を振り返られるように記録を掲示などとつなげる。 (5)保護者への伝え合いを広げる ・日々の子どもの活動の様子を具体的になるべくビジュアルに伝える。 ・数ヶ月の育ちを写真と簡単な文章で伝える。 ・子どもの育ちを巡り定期的な話し合いの機会を用意する。 ・卒園時の子どもの姿を具体的にいろいろに描き出し、その姿の実現を目指すことを伝える。 4)幼保の幼児教育とは (1)感情の教育を進める ・喜怒哀楽のエネルギーが子どもの心を育てる。 ・落ち着いた生活から生きるエネルギーが湧いてくる。 ・遊びでの肯定体験から自分を肯定・信頼し、やってみたいことが生まれる。 (2)楽しさを没頭へ向けていく。 ・何より楽しいことが幼児を動かす。 ・集中し没頭する体験により充実感が生まれる。 ・集中が長続きし、切り替えと発展を少しずつ可能にする。 (3)関わりを通して物事の特性を感じ取り、活用するようにする。 ・物事に関わる中でその対象に相応しい関わり方が出来るようになる。 ・身体の身ごなしが巧みに場に適応していく。 ・出来たこと・工夫したこと・見つけたことを次の活動で発展させる。 (4)形の中にエネルギーを活かすようにする。 ・形(ルールやマナーやチーム性や美しさ)の中でエネルギーを発揮できるようにする。 ・子どもの力を焦点化して、そこでの発揮が喜びとなるようにする。 ・力をよく発揮するところへと形を発展させていくようにする。 (5)関わりから見つけたこと・気づいたことを言葉にする。 ・気づいたことをそのものに即して言葉にする。 ・気づきから子ども同士、また子どもと保育者の対話に向けていく。 ・気づきから何故そうなるのかを問うようにしていく。 5)小学校への接続に向けてのアプローチ・カリキュラムでの指導とは (1)幼児を受け入れ、認め、自己発揮と自己肯定感を育てる。 ・やりたいことをやってよいと感じ,何にでも興味と意欲を持てる。 ・何か意味ある結果を出せると感じ、有能感が生まれる。 ・うまく出来なくても、周りがそれを受け入れてくれると分かる。 27 − 27 − (2)自己発揮と自己抑制の調整力を育てる。 ・豊かな感情を感じつつ、ほどよく収める。 ・根気よく持続して、また自分を励まして取り組む機会を増やす。 ・興奮したら自分を落ち着かせ、違うやり方を探す。 (3)あこがれの育ちと振り返りの育ちを可能にする。 ・あこがれからやってみたいことのイメージを広げる。 ・活動の先の発展へのイメージが見通しとなる。 ・発見や工夫を振り返って、他と共有する。 ・今することや出来ることと、これからやってみたいことや、既にやったことが三重の育ちとなって、 相互に刺激し合うようにする。 (4)目的的活動から「学びに向かう力」を育てる ・子どもの願いを膨らませ、大きな願いとして、仲間と一緒のことへと進める。 ・目の前に出来ていることを通して長期の達成をイメージして、目的を目ざす。 ・友達と協力する活動から相手に合わせつつ工夫し、自己を主張することを学ぶ。 ・学びに向かう力としての集中し、工夫し、挑戦し、協力する力を伸ばす。 3.小学校の始まりは学習者になること 1)スタート・カリキュラムで行うこと。 ・幼児教育で行ったことを発揮してよいと感じられるようにする。 ・子どもの模索と発揮を課題へと向けていく。 ・小学校の授業に近い活動へと自己調整できるようにしていく。 ・子どもの力を見定め、個人毎の特性をとらえる。 ・1年生の教育の先行きの見通しを立てる。 2)低学年の教育を進める。 ・幼児期の力を授業における課題への集中に変えていく。 ・教師の示す課題を自己課題として引き受け直す。 ・授業の課題を自分の目指す目的として自覚する。 ・何が分からないのか、何を分かろうとするかをとらえる。 ・教師の発問をクラスとして考えるように、子どもの発言を互いにつなげる。 ・考えの根拠が何かを明示する。 3)言葉の教育としての保幼小の一環教育 (1)言葉の基礎を育てる。 ・幼児期の終わりまでに日本語の話し言葉の基本が成り立つ。 ・小学校の国語教育は話し言葉を書き言葉として使えるようにすることであり、そのことにより、言葉を 精密に使えるようになる。 ・言葉の中心は語彙が多いことと、助詞などの文法の使い分けにある。 (2)言葉の教育を進める。 ・語彙を増やす。 28 − 28 − ・日頃の語りかけややりとりで語彙・言い回しを豊かにする。 ・絵本に触れる機会から、高度な言い回しに触れる。 ・体験や絵本のストリーの中で個々の語彙の意味を実感する。 ・言葉遊びを楽しみ、言葉をいろいろに言い換え、言葉の意味と音を分析できるようにする。。 (3)文字の読みと文章の理解の教育を始める。 ・仮名文字などを見る機会を増やす。 ・文字と発音を結びつける。 ・文字の組み合わせとしての単語を見る場を増やす。 ・語彙を組み合わせての理解に進める。 (4)文字を書く力を育てる。 ・線を引き、絵を描く活動を増やす。 ・細かい模様を描く遊びの機会を作る。 ・文字の読みが先行するので、パターンとしてその形を身に付ける。 ・字を自発的に書くようになったら、書き順を丁寧に教えることも出来る。適当な道具を使う。短い時間 とする。 (5)文章を読み取る場として国語の授業を進める。 ・個々の語彙や個々の文の意味を確定する。 ・言い換えてみると、どう文章の意味が変わるかを検討する。 ・文章の全体の意味と個々の語彙や文の意味につながりがあることを分かる。 ・言い回しの面白さや楽しさを感じる。 参考文献 無藤 隆「幼児教育の原則」ミネルヴァ書房 無藤 隆「保育の学校、全3巻」フレーベル館 無藤 隆「幼児教育のデザイン:保育の生態学」東京大学出版会 無藤隆先生プロフィール お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授退職後、平成17年から平成19年まで白梅学園大学学長。 現在は同大学院研究科長、子ども学研究所長。 日本発達心理学会前理事長、日本質的心理学会前理事長、日本保育学会常任理事、文部科学省中央教育審 議会委員、内閣府子ども子育て会議会長、日本学術会議連携委員。 29 − 29 − 無藤隆先生の著書(参考:先生のHP等) 単著 (1994) 「体験が生きる教室」 金子書房 単著 (1995) 「赤ん坊から見た世界」 講談社現代新書 編著 (1996) 「生涯発達心理学とは何か(生涯発達心理学講座第1巻)」 金子書房 共著 (1996) 「発達心理学」 岩波書店 単著 (1997) 「協同するからだとことば」 金子書房 単著 (1998) 「自ら学ぶ子を育てる」 金子書房 単著 (1998) 「早期教育を考える」 NHK出版 共著 (1998) 「児童心理学」 放送大学振興会 共編著 (1999) 「新しい教育課程と学校づくり、全5巻」 ぎょうせい 編著 (2000) 「『生活科』発『総合的な学習』」 東京書籍 編著 (2000) 「幼児期にふさわしい知的発達」 チャイルド本社 単著 (2001) 「幼児の知的好奇心を育てる-学びの3つのモード論」 フレーベル館 単著 (2001) 「学校のリ・デザイン-総合的学習による学校の改革」 東洋館出版社 編著(2002) 「『学力低下論』への挑戦」 ぎょうせい 共編著(2003) 「保育実践のフィールド心理学」 北大路書房 共著(2004) 「心理学」 有斐閣 共著(2004) 「生きる力の基礎を育む保育の実践」 萌文書林 共編著(2004) 「質的心理学(ワ-ドマップ ) 創造的に活用するコツ」 新曜社 共編著(2005 ) 「『気になる子』の保育と就学支援 ― 幼児期におけるLD・ADHD・高機能自閉症等の指 導」 東洋館出版社 単著(2007) 「現場と学問のふれあうところ―教育実践の現場から立ち上がる心理学」新曜社 共編著(2008) 「ここが変わった! new幼稚園教育要領new保育所保育指針ガイドブック」 フレ-ベ ル館 共編著(2008) 「新しい教育課程と学校づくり 、全5巻 」ぎょうせい 編著(2008) 「理科大好き!の子どもを育てる 」北大路書房 共編著(2008) 「質的心理学講座 〈1〉 育ちと学びの生成」 東京大学出版会 共編著(2008) 「子育て支援の心理学 ― 家庭・園・地域で育てる 」有斐閣 共編著(2009) 「新幼稚園教育要領・新保育所保育指針のすべて 別冊発達」ミネルヴァ書房 共編著(2009) 「よくわかる発達心理学」ミネルヴァ書房 単著(2009) 「幼児教育の原則 ― 保育内容を徹底的に考える」ミネルヴァ書房 編著(2007-2010) 「THE 保育、全3巻」フレーベル館 共編著(2010) 「小学校児童新指導要録の解説と実務 〈平成22年改訂〉」図書文化社 編著(2010) 「スキルあそび45 ― 人とのかかわり方を育てる」日本標準 共編著(2010) 「むすんでみよう子どもと自然-保育現場での環境教育実践ガイド」北大路書房 単著(2011) 「保育の学校、全3巻」フレーベル館 共編著(2011-2012 )「発達心理学、全2巻」東京大学出版会 単著(2013) 「幼児教育のデザイン:保育の生態学」東京大学出版会 30 − 30 − 平成 25 年度北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業) 地域資源と協同的体験を保育教育課程に生かす「ふるさと教育」の研究 -島根県益田市モデル- 平成 25 年 12 月 8 日(日) 共同プロジェクト「保育教育課程とふるさと教育」 事例検討研究会記録 +共同プロジェクト「保育教育課程とふるさと教育」事例検討研究会 日時 平成25年12月8日(日)9:30~11:30 場所 グラントワ多目的ギャラリー ○山下 保幼小中とかかわってこられたお立場から、地域をつなぐ おはようございます。島根県立大学短大部、山下でござ 教育について御意見をいただきたいと思っております。 います。きょうは、ふるさと教育の研究のための事例検討 このプロジェクトの概要ですが、簡単にレジュメを作っ 研究会を企画しましたところ、このように大勢の方にお集 て入れておりますのでごらんください。私どもの大学の補 まりいただきまして、感謝しております。 助金をもらってのプロジェクトですが、かかわっている団 ほとんどの方は昨日の無藤隆先生の御講演をお聞きにな 体がかなり多くなっています。といいますのも、ふるさと っていらっしゃいますね。実は今回、ふるさと教育の共同 教育を地域で取り組んでいくためにはさまざまな方のお力 プロジェクト研究事業の事例検討というのを実施しており が必要でして、どこかの団体が自分たちの事業としてふる ますが、無藤隆先生にはプロジェクトに学外コアメンバー さと教育を実施するということはあり得ないわけですね。 として御参加いただいておりまして、いろいろとアドバイ いろいろな年齢層の子どもをつないでいくためには団体を スをこれからもいただくことになると思っております。 つなぐ必要があるということで、いろいろな方に御協力を 昨日は、保幼小連携教育の原理と、それから現在の保育 いただいております。テーマは「地域資源と協同的体験を 行政改革の解説をしていただいて、また御教示をいただき 保育教育課程に生かす『ふるさと教育』の研究」となって ました。就学前の幼年期の教育の内容として、「学びに向 おりまして、島根県益田市モデルということで、公立大学 かう力」と、それから「教科の基礎学習」、このあたりが 法人島根県立大学より研究費をいただいております。 小学校の前教育として、小学校との連携の上で非常に重要 この益田市の高津川流域の保幼小中をつなぐふるさと教 であるというお話をいただきました。 育というものを一つのモデルにして、益田市のみならず島 きょうはその応用編とも言える内容になりますが、お手 根県のいろいろなところで、あるいは日本中のいろいろな、 元の資料のとおり、益田市保育研究会のこれまでの取り組 どちらかといえば地方の都市でふるさと教育を実施してい みを御紹介いただきます。また、益田市保育研究会の中の く際のモデルができるのではないか、あるいは参考になる 西益田小学校区の4園と連携をこれまで取り組んでこられ ものができ上がるのではないかと考えています。 ました益田市立西益田小学校のほうからも御報告をいただ き、さまざまなエピソードなどもお話 中学校 教科課程 しいただくことになっております。 西益田小学校のあります横田中学校 区では、保幼小中をつなぐ環境教育に 取り組んでおられまして、そのような 観点から矢冨中学校長先生には小学校 や保育所との連携についてどのように お考えか、きょうの報告を踏まえた上 でのいろいろな御意見を5分程度お伺 いしたいと思っております。 また、それぞれの取り組みに社会教 育の立場でこれまでかかわってこられ ました高津川フレンドリバー協議会の 事務局をしておられまして、現在、島 根県中山間地域研究センターの研究員 保護者 地域社会教育 【社会人活動】 小学校 教科課程 保育内容 (保育所) 益田市 保育研究会 ふるさと教育 研究委員会 【保育】 地域資源(自然・文 化・人的資源)を生か した保育実践 をしておられます檜谷さんのほうから、 31 − 31 − (幼稚 園) 地域資源(自然・ 文化・人的資源) を生かした社会教 育実践 保育実践と 社会教育を つなぐ 教育課程の 研究が 必要ではない か 益田市市民活動 推進協議会 NPO法人アンダンテ 21 ひきみ田舎体験推進 協議会 高津川フレンドリバー 協議会等 このスライドに見えますのは、最初企画しました段階で これまでの取り組みはお手元の資料のとおりです。平成 さまざまな団体の方に御説明したときの資料です。益田市 25年度と26年度の活動ですが、第1回が5月に始まり の保育研究会のほうは、後で御報告いただきますが、「地 まして、第2回は7月に松江で無藤先生にお越しいただき 域資源(自然・文化・人的資源)を生かした保育実践」と ました際に研究協議を行っています。第3回は8月に行わ いうテーマで研究を続けてきておられまして、もう数年間 れておりまして、8月末には川バスの企画を立ち上げ、保 にわたって実績を持っておられます。また一方、益田市に 育所、小学校、中学校の先生に御案内いたしました。実際 は、益田市市民活動推進協議会とか、NPO法人アンダン には、保小中から16名の先生に御参加いただきまして、 テ21とか、あるいはひきみ田舎体験推進協議会とか、高 プロジェクトメンバーと一緒に川バスに乗って、そこの写 津川フレンドリバー協議会など、さまざまな社会教育団体、 真にありますような研修をしております。教える者、立場 社会団体が教育の場でいろいろな保幼小の活動にかかわっ の側が体感して、体験して、知識を得るまでのプロセスを てきておられます。もちろん成人の活動にも力を持ってお 体験しながら考えてみよう、ふるさとの資源を学びにつな られます。こうした社会人の活動と保育の活動は地元の人 ぐための工夫を考えてみようという研修です。アンダンテ 間によって行われておりまして、引き継いでいかれるもの 21の吉中さん、それから檜谷さんにプロジェクトメンバ なんですが、途中の小学校、中学校の段階、義務教育段階、 ーとして講師になっていただきまして、高津川の生物、そ それから高等学校と、その上の成人の教育というのは人が れから匹見川レストパークでは「流域ってなに?」ってい 入れかわります。特に小・中・高の教員は異動によって三、 うテーマでの研修を受けました。改めて「流域」というこ 四年を期にまた別の地区の教育を引き受けるということに とを学んでみて、水の流れ、そこに住む生物の生命の循環、 なります。ふるさと教育の知識、それからノウハウを引き そして水が流れて雲になり、また高津川に流れてくるとい 継いでいかれなければならないんですが、そしてそれをほ う自然界のサイクルを自然とイメージできるような、そう とんどのところ一対一のマンツーマンの人間関係に依存し いった体験ができる研修でした。そういったサイクルを幼 ているんですが、先生が異動されることによってその引き 年期から成人期までの発達段階の教育課程に合わせてどの 継ぎがなされない、そこで立ち消えになってゼロからやり ように指導していくのか、そういったことが今後のカリキ 直し、校長先生がかわればなおさらゼロからというような、 ュラムのポイントになるんだろうなと思いながら、バスに そうした連携の不具合というのが出てきておりました。 揺られて帰ったような、すてきな川バスでした。 そこで、この保育実践と社会教育をつなぐ教育課程、カ こうした取り組みをしておりますが、本日はそれぞれ既 リキュラムというものを私たちが認識して、さらにそれを に長年取り組んでおられます先生方の実績を御報告いただ お手元の資料にありますような専門職のための教材として きまして、また今後の参考にしていきたいと思っておりま の教育用のマップにしてはどうか。例えば、そこには益田 す。 市の保育研究から事例をいただきまして、匹見川と高津川 では、その次第のとおりで河野先生からよろしくお願い の合流地点の活動、そこをクリックするとその自然環境の いたします。 説明、解説の資料、さらに具体的に行われた西益田小1年 生と若葉、神田保育園の活動、「高津川をつくろう:砂遊 ○河野(益田市保育研究会・ふるさと教育研究委員会委員 び」といった資料が動画や画像入りで出てきて、さらにそ 長 豊川保育園長) この指導内容については、指導の目当てとして「保育内 皆さん、改めましておはようございます。 容・環境」、「保育内容・人間関係」、これらは就学前の 今、山下先生のほうからお話がありましたように、保育 教育の五領域です。さらに小学校1年生の「生活科」、そ 研究会のほうでこれまで取り組んできたこと、そして、こ れから5年生の「理科」にどうつながっていくのかといっ れからどういうことをやっていきたいかというような話が たような専門職向けのいろいろな目当てですね。さらに活 できればいいかなと思っておりますので、よろしくお願い 動記録の記事と、それから協力団体や進め方、こういった いたします。 記事が集まった専門職向けの教材を大学がつくることがで 題は「保育と学校をつなぐ地域課題」ということで、こ きれば、そういった幾つかの段階をつないでいくうまい工 れまでさまざまな活動をしながら地域とつながる、また学 夫ができるのではないかともくろんだわけです。それでこ 校とつながるという活動をしてきましたが、その中で我々 の研究会が始まっております。 が感じてきたことという部分が、私からの話になるかと思 32 − 32 − います。 ろいろなところに取り組んでいこうという話をしました。 全体といたしまして、まず益田市の保育所の状況をごら 現在、保育研究会どういう形で動いているか。平成25 んいただきたいと思います。益田市内、29認可保育所が 年度のこれ事業計画になるんですが、上のほうに専門部会 あります。大体小規模園がほとんどで、旧村単位で、しか とあります。所長会、主任部会、調理担当者部会、男性保 も谷合いに集落がありますので、それごとに小規模園が点 育者部会、看護師部会。それと委員会活動として、そこに 在しているということになります。中心部になれば100 書いてありますふるさと教育研究委員会、研修委員会、特 名以上の定員の保育所もありますが、益田市保育研究会は 別支援委員会、保育体験推進委員会、情報発信委員会、子 認可保育所29園が所属していまして、会員数が職員35 育て支援推進委員会、親子ニコニコ交流日運営委員会と、 0名、現在受け入れの児童数としては1,802名という 非常に多岐にわたる委員会をつくって事業をしております。 ことで、就学前の児童のほとんどが保育所を利用している これは、きのう無藤先生のお話にもありましたが、保育所 状況になってきているかなというふうに思っております。 は研修の時間というのがなかなか確保されていないという 中で、できるだけ遠くの研修に行かなくても自分たちで身 近な場所で質の高い研修をできる状況をつくろうというこ とで、保育研究会としてもさまざまな研修を行ってきてい 益田市の保育所の状況 るところです。 市内に29の認可保育所 旧村単位で谷あいに 小規模園が点在 先ほどの平成21年度からの動きの中で、やはり自分た ちが足元から自分たちの地域と自分たちの保育を見直そう という話になりまして、このふるさと教育研究委員会とい うものを設置いたしました。進めていく上で、「自然を体 感する部会」、「文化を体感する部会」、「食を体感する 益田市保育研究会 所属保育園 29園 会 員 350名 受入児童数 1,802名 部会」ということで、やはり益田市にある豊かな地域資源 を考えていく上でこういう区分けをしながら進めていこう 2 ということにいたしまして、きょうお話しするのは、この 「自然を体感する部会」の中の活動が広がってきた様子を ですが、現在、益田市の今年度の人口の推移を見てみま お話しできるかというふうに思っております。 しても、今、ゼロ歳児から14歳までの子どもの数が1学 ふるさと教育研究委員会が目指すものとして、上に書い 年で大体平均で420人ぐらいです。今年度10月の保育 てあります、子どもにかかわる大人が益田のよさを感じ、 所、小学校等、就学前の子どもを含めたゼロから14歳の 益田で生きることに誇りを持つ。そして、そのことを地域 人数が1学年420人平均ぐらいなんですが、2030年 の大人が益田への思いを活動を通して子どもたちに伝えて にはそれが280人ぐらいにまで下がってくるという状況 いくということを考えまして、まずは保育者が自分たちが が見えております。平成21年度から益田市保育研究会で 体験する、そして各保育所、29園ありますので、それぞ は、これから、今でもそうですが、ずっと少子化がこれか れの保育所が取り組みやすい形にするためにプログラムを ら続いていくという中で、少子化と若者流出が進行する中 作成する、プログラムを実施してより多くの子どもたちが で、もちろん保育所を運営していくという一つの使命の中 体験したことをまた保護者や地域の方々が知って、地域の で、私たち保育研究会としてできることがもっとあるんじ 住民も益田のよさを再認識すると、そんなステップを踏ん ゃないかということを会のほうで検討いたしました。その でいけないかということを考えて取り組み始めました。 中で保育研究会の役割というものを、一つは将来の益田市 ですが、実際にはこれは保育所だけの動きではどうにも を支える人材を育てる、やはり基盤とならなければならな ならない。実際に益田を支える人材をつくると考えたとき いということ、益田市全体の保育の質をもっと向上させて には、やはり多くの地域の機関、学校現場を含めてそれぞ いかなきゃならないと考えています。もう一つは、子育て れの役割というものを明確にしながらやっていかなきゃな がしたくなる地域づくりに貢献できるのはやはり保育所だ らない。保育所で例えばふるさと教育をやっていくにして ということで、益田市の子育て環境を充実させるためにい も、まず初めからこうした俯瞰的な視点を持って始めるの 33 − 33 − と、自分たちのふるさと教育だけを考えてやるのとでは全 実は若い保育士さんも幼少期の体験不足によって草花遊び く意味が違うということで、ここまで実現できればいいな なんかも余り知らないという保育士さんもふえたのを受け ということを皆さんにお話しして、ふるさと教育研究委員 て、草花で遊ぼうというのもあえてこのプログラムから実 会をスタートさせました。 践していくということにいたしました。 まず最初の2年間は、先ほど言いました、自分たちが体 これ「川遊び」の様子なんですが、これ子どもたちがや 験する、プログラムを作成する、そしてプログラムを完成 っておりますが、子どもたちがやるのと大人も体験すると するというところまでやろうということで、自分たちが体 いうのをこれ同時にやっています。 験、気づきの共有、プログラム案作成、実践、そして完成 「海遊び」、これも今まで行っていなかった保育所が海 というこのステップを2年間で踏んでいこうということで、 遊びできるようになりました。 さまざまな取り組みをやってきました。 「山遊び」、まさにこれ保育者が体験しておるんですが、 この部会で何をしたか。「川で遊ぼう」、「海で遊ぼ 竹林を歩きながら本当にみんな歓声を上げながら楽しんで う」、「山で遊ぼう」、「雪で遊ぼう」、「草花で遊ぼう」 いました。 ということで、こう見ると意外と当たり前にやられている 「雪」はかんじきですね。かんじきを履いて歩いてみた かもしれないと思うかもしれないんですが、実際には平成 りとか、そういった活動をまず保育者が体験するというこ 21年度当初、川で遊んでいる保育園の数というのは29 とをやってみました。 園中7園ぐらいでした。海で遊んでいる園も本当数が少な 先ほどの分でいきますと、この部分までですね、この部 かったです。山で遊んでいる園も少なかった。雪で遊んで 分までとりあえず最初の2年間でつくり上げたということ いる園ももちろん少ない。草花も、身近にあるからいかに で、ただこの最初の2年間で一番意識したのは、保育者自 も保育士さんて草花遊び指導できてるかと思うんですが、 身がこれからやろうとしていることをやっぱりいいと思う、 川遊び 山あそび 2 2 海遊び 雪遊び 2 2 34 − 34 − かんじき 感動を持ってそのことを意欲的に子どもたちに伝えたいと これまで小学校と保育園、連携していなかったかという 思うかどうかという体験を大事にしてやってきました。結 と、実はいろんな校区で連携は行われていました。それは、 果的には、2年間この活動をしたことによって、この委員 例えば行事に一緒に参加するだとか、小学校に招かれて園 会に所属していた園の保育者は本当にそういう気持ちにな 児が参加するとか、そういったものというのはこれまでも って、園長に積極的に働きかける姿なんかも見られました。 あったわけですが、今回この「ふるさと教育」を、「ふる さとを体感する保育」というのをやってみて、これを広げ 次の2年間で、今つくったプログラムをやはりきちっと ていく、それを小学校と一緒にやっていくということを主 各保育所が実行できる形をつくらなきゃならないというこ 眼を置いた連携というところを新たに始めた校区というの とで、「交流保育」という形で、小規模園同士ですのでな が今年度からふえました。これから説明するのはその3つ かなかノウハウの共有って難しいんですが、例えば川遊び の校区での新たな展開のお話です。 をやっている園があればそこの園と交流保育をするという 形でやっていくということで、今までやっていなかった園 一つは豊川小学校区。保育園が校区の中に1つというケ はその形をつくることによって実際にどんどんできるよう ースです、小規模園です。もう一つは西益田小学校の小学 になったということで、ノウハウの共有のための交流保育 校区内にある保育所4つが連携した、先ほどの西益田小学 というのをしっかりとやっていきました。 校と4保育園の連携のケース、それと吉田小学校区は保育 そのことを情報発信して、保護者や地域の意識変化まで 園が3つ、幼稚園が1つと校区も広いんですが、それに加 つなげていきたいという思いでやっていたんですが、途中 えて大変複数の園から吉田小学校に上がる子が多いという で島根県保育研究大会の発表をことし益田市がしなければ 大規模校のケースということで、雪舟保育所との連携の部 ならないということになりまして、この研究をじゃあその 分をお話しできたらと思います。 まま当て込んで持っていこうということになりました。そ の際に研究指導をお願いしたのが、きょう来られている山 ①豊川小学校区での取り組み 下先生でありました。その中で、最終的にこういう冊子が 【豊川小学校と豊川保育園の連携】 できたんですけれども、自分たちがやっていても、例えば 豊川小学校 豊川保育園 保育の視点で自分たちの活動をきっちり振り返るというこ 児童数 47名 園児数 36名 とまで押さえ切れてないプログラムになっていたので、そ ういう意味ではふるさとを体感する活動自体にどんな教育 的な学びの要素があるのかということ、そしてもう一つは、 西益田小学校と神田保育園等々の連携の話を特に取り上げ て研究をしたんですが、そのことが小学校につなげていく ことというのがどれだけ意義が大きいかということをこの 2 研究を通して知ることになりました。 お互いが無理をせず続けられる交流を 先ほどの図でいきますと、この23年度、24年度のこ の2年間で、とりあえず連携のための一つの枠組みという ①交流活動(入口の活動) のは見えてきたというふうに我々は思ったところです。そ それぞれが既に取り組んでいる活動をベースに新たな時間を使わな くてもできる活動に取り組む。 れを受けて、今度はこの25年度、26年度の2年間で、 保育園 散歩の活動 今の体感する活動というのをもっとしっかり展開していく、 定着化していくのはもちろんなんですが、小学校と連携し + 小学校 地域散策(生活科) ②事前事後の連携会議(相互理解) た活動というのもやはりやっていくことによって、実は自 同じ活動を経験し、事前と事後の話合いを続けることでお互いの活 動や考え方への理解を深める。 分たちだけで勉強するよりは保育の質というのが高まって 事前の連携会議 事前に活動の内容やねらい について共有する。 いくんじゃないか、教育的視点も取り入れてしっかりとし た保育の幼児教育の活動ができていくんじゃないかという 2 思いを持ちまして、連携を広げることといたしました。 35 − 35 − 活動 事後の連携会議 活動の検証と子どもの姿に ついての振り返りをする。 いうことで、保育園のほうに学校の先生来ていただいて、 担任同士がその話をして活動を行う。事後の連携会議。こ れもちょっとした時間でコーヒーを飲みながらという話な んですけど、その中で子どもの姿の捉え方の違いだとか、 そんなところが少しずつ見えてきて、お互いにとってメリ ットがある活動に感じられ、また次の活動何にしようかと いう話になっていきます。 5月には、一番最初のおさんぽをしようということで、 益田川の土手の周辺を一緒に歩いたりしました。最終的に は益田川の河原にちょっと入ったりとかになったんですけ ど、やっぱりその活動を通じて、次、何やろうか、じゃあ まず、豊川小学校区での取り組みです。豊川小学校、児 川でもっと遊びたいという話に先生のほうからなりまして、 童数47名、豊川保育園の園児数36名ということで、小 じゃあ次の川の活動を保育園のほうもやっていますという 規模校と小規模園の連携。しかも地図にありますように、 ことで、6月、本溢川という小さな川、7月ももう一つ別 小学校と保育園は実は真裏に位置していまして、ほとんど の川でいろんな別の生き物もいますよということで、伏谷 距離がない。非常に近い距離の連携ができる都合のいい場 川というところで遊ぼうということで行いました。 所にあるかと思います。しかし、これまでの保育園と小学 この交流活動、意義をまとめるところまではまだなかな 校の連携という部分で見ると、先ほど言いましたように、 かいってなかったので、感想ということでお聞きいただけ どうしても地域行事の参加とかイベント的に終わりがちで、 たらと思います。小学校側の感想です。スタッフの手と目 お互いにとって本当に意味のある継続的な活動になってい が多くなることで、小学校単独ではなかなか実施できなか たかと言われれば、やっぱりなっていなかった。その理由 った川の活動に深く取り組めた。川遊びができる場所など としては、校長先生かわればいろいろ方針も一遍に変わる も教えてもらわないとわからないが、具体的な場所と方法 という問題と、学校の先生も例えば体育の授業に保育園が を知ることができた。小学校の活動では小さい子のお世話 一緒にお邪魔させてもらってというケースもこれまでもあ をするのが好きという姿というのはなかなか見られなかっ ったんですが、ただ、それはたまたまその先生がその活動 たけど、そういうことに初めて気づいた、子どもによって がいいと思ってやってくれただけで、次やろうと思ったと ですね。保育園の先生に相談がしやすくなった。就学児健 きにはもうそういった声をこちらからお願いに行ってとい 診がこの間あったんですが、その中で園児も教員の顔を見 う、非常に手間がかかる状況になっていました。小学校も て、もう知った顔なので安心している様子が見られました 学習指導要領の改訂によって新しい活動、新たな活動をす し、教員自体もあの子どういう子という、しっかりもう活 るというのも時間数の確保が本当に難しくなっている。む 動を通して子どもの姿がイメージができていたので戸惑い しろ、学校行事もどんどん減らしていく方向にあるという が余りなかったということをお聞きしました。事後の協議 ことが理由となっていました。ですが、こういう形なら楽 をやっぱりコーヒー飲みながらという、ちょっとした意見 にできますよという話を昨年度終わりぐらいから校長先生 交換という形で短い時間でもできたのでよかったと。 に、きょうも来られておりますけど、お話をしまして、お 保育園側としては、卒園した子どもたちの姿から自分た 互いが無理をせず続けられる交流をということで、始まり ちの保育がどうだったのかという振り返りにもつながった。 ました。まず保育園が毎日のようにやっている散歩の活動 学校の先生方の子どもの見方や教育的視点を知ることがで ですね、それがもともとあった。小学校は地域散策で同じ きた。学校の先生に相談しやすくなった。学校に対する心 ようなところを散歩している姿なんかもあったりしました のハードルが低くなった。優しく接してもらった経験など ので、その活動をベースに、新しい時間をつくらなくても から小学生に対する憧れを子どもたちが抱くようになった できる活動を一緒にやりませんかということで声かけして ということで、今後は年度末に向けて、年長児を対象とし やることになりました。大事にしたいのは、やっぱり事前 て小学校に行って授業を受ける、また掃除、給食の時間に にお互いがどういう狙いを持った活動にするのかというの 入る機会をつくっていこうという話を先日したところです。 をちょっとの時間でも話し合う時間を持たせてくださいと 36 − 36 − ②西益田小学校区での取り組み ③吉田小学校区での取り組み 【西益田小学校と西益田小学校と4保育園の連携】 【吉田小学校と雪舟保育所の連携】 西益田小学校 若葉保育園 横田保育園 梅賀山保育園 神田保育園 児童数 園児数 園児数 園児数 園児数 吉田小学校 児童数 549名 雪舟保育所 園児数 107名 184名 32名 48名 30名 54名 2 2 雪舟保育所 【西益田小学校と西益田小学校と4保育園の連携】 普段から 小丸山古墳公園 は遊び場 4園交流から小学校との連携活動へ 吉田小学校 保育園から 交流を提案 生活科 小丸山古墳公園 での活動 事前打ちあわせ 1回目の交流実施 事後の協議 2 2 西益田小学校区は、ここにごらんのとおり、184名の 児童数に対して、若葉保育園、横田保育園、梅賀山保育園、 神田保育園と小規模園が4園ということで、じゃあこうい 2回目の交流実施 と給食試食、校庭で遊ぶという学校体験を実施しておられ るそうです。ですが、それ以上の連携というのはまだ行っ ていなかった。学校側にやっぱりいろいろ事情がありまし う場合どういう連携をしていくかという一つのモデルケー て、校区内外複数の幼稚園や保育所からの入学があって、 スになると思います。まず、保育所同士が4園交流という 全ての園と交流というのはやっぱり難しいと思っている。 形で3年前から年長児が交流活動をやっていました。その 保育園との交流の時間、打ち合わせの時間をつくるのもな ベースがあって、その中で小学校と連携をしようというこ かなか大変だという事情がわかりました。 とでその連携活動が広がっていったということで、これは 雪舟保育所は、ふだんから小丸山古墳公園という、雪舟 後から塩満先生のほうから報告があると思います。 保育所の真裏にある公園ですが、そこで遊んでいます。吉 田小学校が「生活科」の授業で小丸山古墳公園で活動して 次に、吉田小学校区での取り組みです。これもまだ始ま いる姿をこれまでも見ていました。そのことから、保育園 ったばっかりですが、吉田小学校、児童数549名、雪舟 のほうから私たちと一緒に交流しませんかということで交 保育所、園児数107名と、ある程度の規模のある学校同 流がスタートしました。事前の打ち合わせ、1回目の交流 士、吉田小学校は本当にマンモス校ということで、大体徒 実施となったんですが、やっぱり事前の打ち合わせの時間 歩15分ぐらいの距離に吉田小学校と雪舟保育所がありま をとるのもなかなか大変だったというお話がありました。 す。これまでの連携はどうだったか。実は雪舟保育所の園 事後の協議と2回目の交流実施ということで、一応6月と 長先生、きょうも来られておりますが、8年前に、小学校 10月に交流を実施されています。ですが、先ほど言った に入ってから学校生活になかなか適応できない卒園児の姿 ように、保育園として学校との交流はなかなか難しいんだ を見て、少しでも距離を埋めようと、小学校に相談して、 けれども、保育園としてできることがあるだろうというこ 毎年度2月の保護者の授業参観の日に合わせて授業の見学 とで、先ほどの2月に授業参観の日に合わせて、邪魔にな 37 − 37 − らない程度のことなんでしょうけれども、学校体験をやる。 学してきたのかということを少し意識するようになったと もう一つ保育所側の工夫として、保育所給食にパック牛乳 いうことですね。大規模校の接続の課題というのは、やっ と個包装のジャム、ドレッシングを出すというのを3月に ぱり規模によって接続の課題というのは非常に違って、ま なったらやられるそうです。これは、毎年2月に給食を食 た大規模校は非常に課題が多いなというのを感じたところ べる風景を見に行ったときに、そのパック牛乳の畳み方が です。 難しいとか、あとドレッシングとか個包装のジャムとかも 切るのが大変な姿とかを子どもたちの様子を見て、だった 次に、これから益田市で保小連携を進めていくためにと らこういうのならできるということで、3月にはこういっ いうことで、一つ目に、各学校区でやっぱり連携を広げて たこともやられているそうです。 いく入り口の手法としては、保育者、教員、地域が互恵的 小学校側と保育所側の感想です。これは、6月にアサガ に学び合える、「益田を体感する保育」と「生活科の授業」 オの観察で絵を描いたときにはほとんど描けなかった子ど という連携は非常に有効だろうというふうに思っています。 もが、保育園児との活動の後に絵日記を描いたときには話 2つ目に、大規模校への複数園からの進学への対応とい し合いをしながらしっかり絵を描いたということで、こん うことを考えると、やはりある程度「スタンダードな接続 な絵を描かれたそうです。園児とのかかわりからは、ふだ のためのカリキュラム」、これは小規模な保育所が多いと ん同級生の間では見られないかかわりを見ることができた。 いう益田の特性を踏まえると、やはり接続のための何らか 保育所側は、1回目の活動では遠慮している姿も見られ のカリキュラムというのはつくっていかなければならない。 たが、2回目の活動をもう期待して待つ、次はいつか、期 そのためにも、前提となるのはやっぱり一番上の互恵的な 待して待つ園児の姿が見られた。卒園児が園児の意見を優 関係をどうつくるか。きょうも学校の関係者たくさん来ら しく聞いている姿も見られた。 れておりますが、学校の関係者と保育園関係者がどのよう この活動を通して、やっぱり大規模校は抱える課題が全 な場でどういう話をしていくか、話せる環境をどうつくる く違うということがわかりました。さまざまな規模の、し かというのがやっぱり大事だろうというふうに思いました。 かも益田市内、小規模保育所が多いので、そうした保育所 3つ目に、「体感する活動」を単なる体験で終わらせな や幼稚園から入学してくることから、小学校に入ってから いためにも、「豊かな体験活動と表現活動」、先ほどの絵 学校生活に戸惑いを見せる子どもが非常に多いと。それぞ を描くとかですね、そういった活動もやっぱり質をどんど れの保育所、幼稚園と連携を深めたいけれども、十分な時 ん高める、そういったことが大事だということを固めてカ 間がなかなかとれない。集団が大きいために校外活動の機 リキュラムを落とし込むだとか、それぞれの地域でやって 会とかフィールド、場所ですね、はなかなか限られるとい いる活動が子どもたちにとって有意義な活動、意味のある うこと。学校内の会議というのも非常に多くて、事前の打 活動にどんどんしていくような質を高めることが必要では ち合わせや振り返りの時間というのもなかなか難しいんで ないかというふうに思いましたというとこで、私のほうか すというお話でした。 らは、ここまでの連携をしながら感じたことを発表させて いただきました。 今後に向けてということで、今の3つの事例から学べた 御清聴ありがとうございました。(拍手) ことも含めてですが、やっぱりそれぞれの狙いを持ちなが ら同じ活動を一緒につくってそれを実施するということで、 ○山下 保育者と教員の考え方、それぞれの事情を、考え方とかそ ありがとうございました。 れぞれの事情ですね、それを理解し合えるようになったと 就学前とそれから小学校に上がってから、そこのところ いうことで、お互いが本当にそのお互いの状況、お互いの をつないでいく、連携するためのこの地域での問題点と、 考え方を学ぶ場になって、互恵的な学びの場になっている それからこれまで進めてきた上での方法論のまとめをして というふうに思いました。 くださいました。 もう一つは、小学校での子どもの姿に触れることによっ では、続きまして、同じ益田市保育研究会から連携の取 て、保育園時代にどんな力をつけなければならないのかと り組み内容について、塩満先生にお話しいただきます。 いうことを保育者が意識をするようになりました。学校の 先生方も、子どもが保育園でどんな力をつけて小学校に進 38 − 38 − ○塩満(益田市保育研究会・ふるさと 教育研究委員会自然部会長 神田保育 園長) 皆さん、こんにちは。益田市保育研 究会、神田保育園の塩満です。 24年度 “高津川を知ろう”小学校との連携スケジュール 月 保育・教育活動 小学校との打ち合わせ 24年度の活動依頼 12 4 担任と顔合わせ ふるさとを想う子どもたちを育てた 5 交流活動の打ち合わせ いという思いでスタートしました西益 6 第2回 川原遊び打ち合わせ 高津川を知ろう:川原遊び 指導案作成・検討 西益田小1年・若葉・神田保育園交流 7 第2回 川原遊び反省 高津川を知ろう:川遊び 川遊び打ち合わせ 西益田小1年・若葉・横田神田保育園 指導案作成・検討 交流 9 第3回 川遊び反省 高津川をつくろう:砂遊び 砂遊び打ち合わせ 西益田小1年・若葉・神田保育園交流 指導案作成・検討 砂遊び反省 田地区の保小連携について、ご報告を させていただきたいと思います。 小学校との連携の報告をする前に、 これまでの西益田地区4園での活動に ついて少し触れさせていただきます。 西益田地区には小規模な保育園4つ があります。小学校ではこの4つの保 育園からの子どもたちがともに学校生 活を送ることになり、少しでもスムー ズな小学校への移行のために、子ども同士が顔を合わせ、 平成24年度、「高津川を知ろう」というテーマで3回 ともに体験していく場をつくろうと、平成22年度から の連携活動を行っていますので、この内容を少しご報告さ 「4園交流」という名前をつけて交流保育を始めました。 せていただきます。 年4回、他園の子どもたちとの交流を通して人とかかわる まず、1年目の第1回、「川原遊び」です。このように 力を育むこと、そして保育研究会のねらいでもある、益田 子どもたちは川原で自分たちの好きな場所へ行き、生き物 にあるさまざま資源を体感し、ふるさとを想う子どもたち を探したりして遊んだり泳いだりしました。園児と小学生 を育てるという目的で実施しています。 がこんなふうに自然と交流する場面も見られました。それ そして、昨年度からこの4園と西益田小学校との連携活 ぞれの活動の後に、園児は絵を、小学生は国語の時間を使 動を始めました。1、2年生の「生活科」のねらいの中に、 って絵日記を描きました。1回目の活動終了後に描いた年 保幼小の連携、ふるさと教育、体験を通した活動などが記 長児R君の絵です。この子は本当に絵を描くことが苦手で、 載されています。これまで、ふだんの保育の中で見たり、 表現をすることが苦手な子ですが、なぐりがきで水を表現 遊んだり、泳いだりしながら親しみを持っている高津川の しています。 活動と生活をつなげ、小学校も含めたふるさと教育の体験 2回目、今度はライフジャケットを着用して「川遊び」 活動としてできないかということで提案をさせていただき を実施しました。ロープを使って川下から川上、川上から ました。西益田小学校の生活科の中には川で遊ぼうという 川下へと歩く体験、それから体の力を抜いて川の流れに乗 時間が組み入れられており、その時間を活用した交流学習 る体験などをしました。こうした体験を通して、子どもた としました。 ちは全身で川の流れを感じることができました。2回目の 活動を行うに当たり、小学校とはその都度話し合いの場 活動終了後に描いたR君の絵です。自分の体で流れを感じ を持ちました。保育所側、学校側としてのねらいや思い、 たこともあって、線で流れを表現しています。水の中で目 予想される子どもたちの姿、注意事項、担任の先生と打ち をあけたら砂があったという体験を、今度は茶色い点々で 合わせを繰り返し、指導案を作成し、当日の活動に向けて あらわしています。わずかですけれども、この川の中に自 取り組みました。また、こうした活動へは地域の方々の協 分の体も描いています。この後も夏の間中ずっと川遊びは 力もありました。地域の資源について深い知識や情報を持 続いて、8月の23日にほかの市内の2つの保育園と「川 っておられる方々とつながり、ともに活動できることは、 遊び」をしました。その後に描いた、またR君の絵です。 私たち職員にとっても安心感も違いますし、それから質の 色や線がしっかりしてきて、川の中に大きく自分の姿があ 高い保育ができます。 らわれています。一緒に遊んだ友達の姿も入っていて、川 遊びの体験がしっかりと子どもたちの中に根づいてきたの 39 − 39 − がわかります。 3回目。2回の活動を踏まえて、今 平成25年度 小学校との連携スケジュール 度は川原に高津川を自分たちでつくろ 月 うということを新たに計画しました。 7 高津川で遊ぼう:川遊び 西益田小2年生 年長 8 高津川を遊ぼう:川遊び ・・・増水のため中止 西益田小2年生 年長 9 鮎体験 西益田小2年生 横田中3年生 年長 子どもたちの発想の豊かさとか粘り強 く掘り上げる姿、それから子ども同士 が協力する姿などを見ることができま 保育・教育活動 した。この活動については、学校のほ うは「図工科」の授業としても計画し てくださったようです。その活動の終 了後、今後は年長児全員で描いた絵で す。左側に描かれている青いのが本物 対象 11 学校体験 西益田小2年生 年長 12 学校体験 西益田小2年生 年長 2 雪遊び 西益田小2年生 年長 の匹見川です。匹見川につながるよう に自分たちのつくった高津川がありま す。自分たちのつくった川の全体像を 上からの視点でしっかりと捉えて、水の流れが途中でとま 先生のお話が子どもたちにもとってもわかりやすくて、そ っている様子も見えています。 れから子どもたちの中にしっかりと意識されたこともあっ こうした3回の繰り返した活動をすることで、保育内容 て、当日の活動の中では子どもたちが発する言葉とかつぶ の環境と、それから小学校の生活が一体化した活動になっ やき、発見、それから子ども同士のやりとりだったり、私 たと思っています。 たち職員への言葉のやりとりもとても多かったように思い これは、西益田地区の高津川の取り組みをイメージ化し ます。「交流活動」の構成も、園児と小学生が同じ場所で たものです。ふるさとで生きる人づくり、教育プログラム 過ごす時間と、それから分かれて活動する時間もつくりま として定着させていくために、図のような地域全体の取り した。 組みを意識しながら、各機関へ働きかけや情報共有を行っ 先ほど「川遊び」でずっと絵を描いていたR君の、今度 ていくことを目指しています。 は入学後の絵日記です。この子は本当に表現することが苦 手で、筆圧もとても弱かった子なんですけれども、こんな そして2年目、今年度ですね。24年度の1年間で、学 ふうにしっかりと文章と絵を使って自分のやったことを表 校も保育所もふるさとの視点でともに活動することの意義 現しているということに私たちはとても成長を感じました。 や必要性を実感した上での2年目となっています。昨年度 は、この高津川での活動になれている保育園側が活動する ことを進めていましたが、今年度は学校側の教育的な視点 も入れ込んだ活動になっています。学校の先生に活動のね らいを子どもたちにお話ししてくださっている映像があり ますので、少しごらんください。動画でごらんください。 (動画) 矢田先生の説明の後に、今度は子どもたちが実際に遊ん でいるところです。 矢田先生の説明を私たちも聞かせてもらって、いつも遊 んでいる高津川が教室になったような感じを私たちも持ち ました。子どもたちの言葉や子どもたちへの投げかけが私 たち職員にとってはとても新鮮で、いつも遊んでいること がこんなふうに学校の「生活科」という学習の中に結びつ くんだということを実感させられました。この初めの矢田 40 − 40 − 最後に、2年間の交流活動で見えてきたものを少しお話 ししたいと思います。 まず1つ目は、学校を知ることができるということです。 学校との連携の中に、参観をしたり見学をしたり、それか ら公開授業的なものに参加したりという形がありますが、 これだけで保育所とか学校を見るとお互いに客観的にしか 見ていないので、もっとこうしたらいいのに、こんなかか わりはできないのかなというような思いが残ることがあり ます。でも、同じ活動を同じ目的に向かってともに指導内 「川であそぼう」 (7月17日) 容を検討したり、話し合いを積み重ねていくと、学校がど ういう思いでこの活動を進めているのか、何を意識して取 次に本年度、西益田小学校の2年生、それから横田中学 り組もうとしているのか、どういう視点で子どもたちとか 校の3年生とアユ体験を行いました。保小中とそれぞれの かわっていこうかというのがよくわかります。西益田では 時期を通じて高津川の資源を体感すること、それから異年 1学期にこうした高津川の取り組みをした後に、2学期に 齢のかかわりを通じて感じることのできる気づきや発見を は年長児は西益田小学校へ行かせていただいて、4時間目 地域の思い出として子どもたちの心の中に刻んでほしいと の授業から給食、それから昼休み、掃除を過ごさせていた 思い、取り組みました。横田中学校には2年生と3年生が だいています。先日5日にも行かせていただいたんですけ それぞれ3日間ずつ、この4つの保育園に分かれて保育実 れども、学校の思いを知った上でこうやって校内に入らせ 習に入るということがあります。この時期に合わせて、小 てもらうと、これから送り出す子どもたちのことを思い浮 学校2年生からも依頼のあったアユの体験を一緒に行いま かべ、卒園までに私たちがどんな力をつけておく必要があ した。 るのかということが明確にわかってきます。 4月の5日に稚アユの放流ということで、高津川漁協さ んとボランティアハウスの方の声かけで、年長児と、それ 2番目に、自分たちの保育の役割を再確認できます。こ から学童保育の子どもたちが既に体験をしています。その の連携で一番変化したのは、私たち保育所職員側の意識だ 活動を行った上で、9月のアユ体験になります。これもち と思っています。自分たちが今まで当たり前にやってきて ょっと動画を見てもらったらと思います。(動画) いる保育が就学後間違いなく教育の中に結びついていると 小学生と園児が来る1時間前に、中学生と園長たちで生 いうことがわかると、小学校で過ごす子どもたちの姿をつ けすをつくる仕事をしました。そのときの様子です。アユ くった基盤が私たち保育所にあるということを実感させら が逃げないようにどういうふうにしたらいいかというのも、 れます。保育所は子どもの人数に対して職員配置が多く、 高津川漁協の方とかボランティアハウスの方々に網の張り またゆったりと流れる時間が保証されています。だからこ 方なんかも教えてもらいながら、中学生が頑張って生けす そ、保育所で過ごす時間を私たちは大切に丁寧に行ってい をつくってくれました。 かなければならないと思わされます。自然環境の中で感じ つかまえたアユを塩焼きにして食べました。そばで中学 たことをしっかりと受けとめる、それからかかわる姿を見 生が見守ってくれています。 守る、子どもたちの言葉をさらに言葉にして返していく、 この子は魚がすごく苦手で、園の給食のときも食べるの その子どもたちの気持ちにしっかりと寄り添う、子どもた にいつもためらっている子ですが、一生けんめい食べてい ちを認めていくという繰り返しがとても大切だということ、 ます。 それから、自分の納得いくまで見たり、試したり、繰り返 この取り組みを地区振興センターの方が当日の活動を見 したりということが許されるこの保育所時代だからこそ、 られて、次年度からは地区振興センターも一緒に協力をし 子どもたちの姿に合わせて、思う存分没頭する、集中する、 て活動をしようということを言っていただいています。次 立ちどまって考える時間をもっともっと保証していかなけ 年度はもっと地域の範囲も広がって活動できるのではない ればいけないなということを強く感じています。 かなと思っています。 41 − 41 − 最後に、地域の子どもたちが一体となって育ち合うこと 場所がある、体験するととても楽しいんだということを、 ができるというのを感じています。今年1年生になった卒 周りにいる大人ももっと見つけたり体験したりということ 園児Aちゃんのエピソードを少しご紹介します。24年度 を繰り返していく必要があるなと思います。地域を思う大 の活動ではこのようなエピソードがありました。1年生の 人たちに囲まれて育つ子どもたちは、さらにふるさとへの 発見を聞いて不思議に思って、1年生に教えてもらったも 思いを膨らませてくれると思っています。ふるさとで生き のと同じようにするとできたという喜びを感じたAちゃん る人づくり、これから目の前にいる子どもたちと、それか でした。そのAちゃんが今年、今度は1年生となって立場 らそれにかかわる大人たちにそれぞれの立場からそれぞれ が逆転しました。1年生に去年教えてもらったのと同じよ の形で発信し続けていきたいなと思っています。 うに自分の知っていることを伝え、一緒にやりながら教え ありがとうございました。(拍手) てくれました。小学校の中では一番小さな1年生ですが、 園児と交流することで、自分の知っていることを自分の持 ○山下 っている言葉で年下の年長児に教えてくれています。こう 同じ横田中学校区の保育所の子ども、小学生、それから したかかわりの中でAちゃんはきっと自信を持ってくれた 中学生との交流についてお話しいただきました。地域の中 んではないかと思います。 で子どもが一体となって育ち合うという姿が本当に伝わっ アユ体験での中学生もまた同じです。その日の中学生の てきましたね。また、保育所の専門職として学校を知るこ 実習日誌のコメントです。自分たちで生けすを準備して、 とができる、それから自分たちの保育の役割がわかったと その生けすの中で園児が楽しんでくれている、喜んでいる いうようなまとめをしていただきました。 姿が自分の喜びにつながっているのがわかります。ふるさ では、続きまして、小学校の側の矢田先生のほうから、 とを想うとき、このすばらしい環境にかかわることももち 小学校としてはこの2年間の取り組みをどのように捉えて ろん大事なんですが、こうした「地域の中でしっかりと自 おられるかお話しいただきたいと思います。 分のことを認めてもらった」という体験が子どもたちの心 の支えにきっとなっていくんではないかなと思います。 ○矢田(益田市立西益田小学校教諭) ふるさとを想う子どもたちを育てたいと思うときに、地 こんにちは。西益田小学校の矢田と申します。よろしく 域にある資源、その場を使って小学校、中学校とともに活 お願いします。 動すること、学校とか保育所という枠を超え、子どもの育 保小交流活動2年間の取り組み、小学校からの視点とい ちを連続的にみつめる場ができます。子どもたちが地域の うことで、これからお話をさせていただきます。きょうお 環境に生き生きとかかわる姿、年齢による発見や気づきの 話をさせていただくことは、次の4つです。 違い、異年齢のかかわりを通して意欲的に学び、人とかか 1つ目、西益田小学校区のこの2年間の保小交流の流れ わることができるこうした活動をこれからも継続して、そ について。2つ目、私が2年間の交流活動を通して感じた して子どもたちの心の中にふるさとでの体験が刻まれるよ 小学校としての利点について。3つ目、交流の場の中心で うにしていきたいと考えています。 ある高津川について思うこと。そして、保小交流のキーワ ードについてです。 昨年この研究を発表した際に、こんなすばらしい川があ るからできるんだというような御意見を幾つかいただきま まず初めに、西益田地区の保小交流、この2年の流れに した。でも「ふるさと教育」は高津川があるからできるん ついてお話しします。 ではありません。何かがあるからできるとかできないでは 私は昨年度から2年続けて1年生を担任しています。西 なくて、そこにいる大人がこの地域をどう思うか、この地 益田小学校の校区には4つの保育園があります。昨年の4 域で子どもたちに何を残して何を伝えたいかということだ 月、神田保育園の塩満園長先生から交流活動しませんかと と私は思っております。 声をかけてもらい、昨年度、そして今年度と2年間、保小 そこに、昨日、今日と「おすすめ自然遊びスポット」を 交流活動を行ってきました。保育園はずっと「川遊び」の 張らせていただいています。檜谷さんに御協力いただいて 活動をしておられましたし、小学校でも「生活科」の学習 張らせていただきましたが、自分の地域の周りを見回して で川での活動を計画していました。そこで、一緒に活動す みると、これだけたくさんの資源があり、こんなに楽しい ると楽しいだろうなと思って、はあいと入れてもらった、 42 − 42 − 寄せてもらった、そこからのスタートです。 このように、川を中心に野外での交流活動を主に行って 昨年度は川を中心にした外での交流活動を4回と、保育 きています。これらの活動にはたくさんの方の協力があり、 園の皆さんに小学校に来てもらって1年生と一緒に学習を 特に市民活動推進協議会の方々、子どもたちは川のお兄さ し、給食、昼休み、縦割り掃除までともに生活するという ん、お姉さんと呼んでいましたが、自然の中でのダイナミ 交流活動を1回、計5回の交流を行いました。 ックな遊びや、道具や用具の使い方を教えてもらえる自然 2年目の今年度も、川での活動を中心に交流活動を続け 遊びのプロで、私たちの活動を支えていただきました。と ています。6月、7月の天候が不安定で川遊びが一度流れ ころが、昨年度末で川のお兄さん、お姉さんのチームが解 てしまいましたが、つい3日前の12月5日には小学校で 散してしまい、本当に残念に思っています。ぜひ復活をお の交流活動を行うことができました。活動の様子を写真で 願いしたいところです。 紹介します。 これは、先日12月5日に西益田小学校で行った交流活 これは昨年度、第1回目の「川遊び」の様子です。特に 動の様子です。この日のために何か特別な準備をしたり時 チームをつくったり遊びを設定したりしてはいませんが、 程を変えたりせずに、いつもの小学校の生活の中に保育園 自然に集まって生き物を探したり、一緒に遊んだりする姿 の年長さんに入ってもらい、ともに過ごすという内容です。 が見られました。 まず、「体育」の学習を一緒に行いました。これは「給食」 これは2回目の「川遊び」の様子です。市民活動推進協 の様子です。「昼休み」、その後の「縦割り掃除」も一緒 議会の方にライフジャケットの着用の仕方を教えてもらっ に行いました。1年生が掃除場所に連れていき、掃除の仕 て、「川流れ」に挑戦しました。 方を教えています。 これは3回目の「川遊び」で、河原に自分たちの手で川 やその流れを再現しようと、一生懸命力を合わせて土木工 事をしているところです。 これは5回目の交流で、川の上流に出かけ、「雪遊び」 をしているところです。 では次に、2年間の交流活動を通して感じた小学校とし ての利点について、私の感じていることをお話しします。 43 − 43 − 小学校の視点からということですが、保育園との交流活 動は小学校としてとてもいい活動だと思っています。利点 指導者の交流 の1つ目として、まず子ども同士の交流から生まれるよさ 子どもについての理解がより深くなる があります。子どもは遊びが好きなので、大人が仕掛けな 保育園の活動と小学校の活動に連続性が生 まれる 上乗せ くてもどんどん交流し始めます。保育園を卒園して小学生 になっても、1年間の空白なしに交流活動で出会える、子 保 ども同士の人間関係が切れないというよさがあります。保 小 育園の先生や一緒に生活していた保育園の友達に会え、つ ながっている安心感を感じながら活動することができます。 小 入学前までは一緒に生活していた子どもたちですから、何 の壁をつくることなくスムーズに交流活動に入ることがで 保 きます。また、1年生が小学校に入学すると、一番の低学 年ということで全校のみんなにかわいがられます。上級生 が一生懸命お世話をしてくれます。でも、ちょっと前まで の先生方がたくさん来てくださり、引率者がふえます。と は保育園の年長さんとしてばりばり生活していたわけです いうことは、指導者に余裕が生まれ、子どもの様子をしっ よね。ですから、小学校に入学してからはなかなか発揮す かり見取ることができるようになります。小学校だけで活 る場がなかったお兄さん、お姉さんとしての自分たちの役 動すると野外、特に川なんかに出かけると安全面だけに気 割や「有能感」、「リーダー性」を交流活動では発揮して、 を配り、一体子どもが何に目を向けて、何に気づいている 自分の成長に気づき、意欲を高めたり自信を持ったりする のか見取りがなかなかしづらいけれども、保小一緒に活動 ことができたと思います。 するとたくさんの人数で見守ることができ、安心して活動 次に、指導者の交流から生まれるよさがあります。事前 することができるというよさがありました。 の打ち合わせ、事後の振り返りなどで指導者の交流もでき 4つ目の利点は、地域教育材の発見、活用ができたとい ます。気楽に話せるような場でいろいろ気にかかる子ども うことです。小学校の教員は転勤します。3年から5年ぐ のことも話すことができたということで、子どもについて らいで新しい学校に行き、学校が変わると新たな学校で地 理解を深めることができました。そして、保育園に上がり、 域の教育材を見つけて活用するまでに労力が要ります。保 保育園の子どもを育てるためにいろいろ工夫して活動して 育園と一緒に活動すると、そのノウハウを与えてもらえま おられますが、私たちがその様子を知らないと小学校でゼ す。どういうことかというと、自然の中の遊びを保育園の ロからのスタートになって、同じ「川遊び」でももう一回 先生方はすごく知っておられます。どんな場所に行ったら 逆に戻って遊ばないといけないけれど、保育園と小学校が どんなことをして遊べるのか、この時期はどこがいいのか、 つながると、保育園で育ててもらったことをそのまま延長 高津川に関しても河原はここがいいよとか、流れるならこ して活動に連続性が生まれる、どんどん上乗せできるとい こがいいよとかすごく知っておられました。さらに、人と うのが魅力です。保小交流活動を行うために、保育園と小 のつながりも持っておられるので、檜谷さんを呼んでくる 学校が一緒になって指導案をつくり、お互いの考えを出し とかいろいろつながりがありました。保育園の財産として 合う中で、お互いの教育内容への理解を深め、子どもたち そういうものを持っておられるので、私たちはそれを受け の発達を連続的に見ることができたというのは大きな成果 取ることができました。小学校でも低学年を中心に地域の だと感じています。 自然の中で遊ぶ活動をしていますが、その情報量やノウハ 3つ目の利点は、安全・安心に活動ができるということ ウはとてもとても保育園にかなうものではありません。地 です。外での活動をするときに、小学校は1クラス30人 域をよく知っている保育園と小学校が一緒に活動すると、 ぐらいいたりして、担任が30人連れて出ようとしてもな そういう地域の教育材を共有していけるというのも小学校 かなか外で活動がしづらいです。それぞれのほかの先生方 にとっての利点だと思います。 もみんな授業を持っておられたりといろいろあるので、そ の中でもうどうにかして人員を確保して出かけるというこ このように保小交流する上で小学校としての利点がたく とになるんです。でも保育園と一緒に交流すると、保育園 さんありますが、西益田地区の保小交流活動がうまくいっ 44 − 44 − ている大きな要素は、何といっても高津川という素材がよ 番だと思います。 かったということです。高津川は地域のみんなが大切にし 無理をしないための2つ目は、「共通項を選ぶ」。どう ているすてきな川で、地域の宝です。川にいるだけで水の いうことかというと、保育園の活動と小学校の活動、同じ 動きがあります。流れの早いところやゆっくりなところや、 川遊びでも2つの丸がぴったり重なるように保育園も小学 浅いところ、深いところ、石もあれば生き物もいたり、草 校も最初から最後まで全部同じような活動をしようと考え の生えているところもあります。その中で、いろいろなも ると大変なので、できるところは一緒にして、できないと のを準備して外から持ち込まなくても、そのままで多様な ころは無理をしない、そういう気軽な気持ちでやっていま 活動ができます。そして、高津川は子どもも大人も遊びに す。例えば、高津川に行くので場は共有しましょう、一緒 没頭できる場所だったということです。保育園と小学校で に保育園と小学校から出かけていって、同じ場所で同じ時 は児童の発達レベルが違うんだけれども、小学生にとって 間を共有する、それだけで一ついいじゃないか、そのほか は楽しいけれど保育園生にとってはつまらないとか、反対 のことは気にしない、無理をして一緒に遊ばせないとか、 に保育園生にとっては楽しいけれど小学生にとっては物足 子どもにも無理をさせない。そこに一緒に放り出しておけ りないということではなくて、両方が没頭できる、そうい ば、保育園は保育園で活動するかもしれないし、小学校は う活動だった。その中でまずは一人一人がしっかり遊びに 小学校で活動するかもしれないけれど、それを無理やりひ 没頭し、そうしているうちにその遊びが自然に群れの遊び っつけるようなことはしなくてもいいよね。ただ、場を共 に変容していく、そんな活動が自然に生まれる場所、高津 有して、そこで一緒に時間を共有するだけで子どもにとっ 川を活動の中心に置くことができたというのが、保小交流 てはいい時間になるんじゃないかなと最初に話し合いまし がうまくいっている大きな要素かなと思います。 た。なれてきたら活動の重なりが出てくる場合があります。 さらに、高津川のよさだけではなくて、先ほど塩満先生 できるところは共有しましょう。もちろん、保育園と小学 もおっしゃいましたが、高津川には高津川を大切に思い、 校では狙いが違います。同じ活動をしても、保育園は保育 高津川にそれこそほれ込んでいる人たちがたくさんおられ 園の狙いを持って活動しておられますし、小学校は小学校 ます。私が出会った塩満園長先生や保育園の先生方も、高 の、「生活科」なら生活科の狙いがあります。最初から、 津川のよさに引かれ、この川で子どもたちを遊ばせたい、 ここはできそうだから一緒に活動しましょうよというとき この川のよさを伝えたいと思っておられますし、「川の活 もあるし、内容によっては、別々にしましょう、いや、2 動」を通して出会ったたくさんの人たちが熱い思いを持っ つ目の活動も一緒にしましょうというときもあります。た て高津川とかかわっておられました。子どもたちが「川遊 だ最初からこの共通項をたくさん求めないということです。 び」を通してそうした大人に出会い、自分たちの活動を支 えてくれている人たちに感謝の気持ちを持ち、自分もそん 続けよう な格好いい大人になりたいなと憧れ、将来の姿をイメージ 学習としての価値を明確にする カリキュラムとして位置付ける することができたらすばらしいな、そんなことができる活 動ではないかなと思います。川遊びを中心にした保小交流 活動は、人、もの、こと、全てをあわせた益田のよさを実 誰でも、 感できる活動だと思っています。 ずっと 続けられる!! 最後に、保小交流をする上での私たちのキーワードを紹 介します。まず、「無理をしない」。気負ってやると大変 なことになるので、何事も無理をしない。そして続けよう というのを塩満先生といつも話をしています。無理をしな そして、続けるためには、小学校は担任が変わります、 いためには、その1つ目、「今ある活動を生かす」。保小 転勤もあります。そうすると、あのときの先生は楽しいと 交流するから新しい活動をつくり出そうよとか、何かイベ 思ってやっていたけれど、次の先生が余り意味や価値を感 ントを計画して、小学生がイベントの準備をして保育園を じ取れなくてやめてしまうと続かないので、学習としてい 招待しようよとか、改まった活動をするととっても大変な いものだよということを位置づけていく、残していく必要 ので、今あるお互いがしている活動を生かすよ、それが一 45 − 45 − があるなと私は思っています。次へ引き継ぐためには学習 ます。 としての価値を明確にして、「カリキュラム」としての位 まず、「環境教育」ですが、西益田地区は昨年度から環 置づけを次の人のためにもやっておかないといけないなと 境教育総合支援事業という指定を県教委から受けておりま 思います。誰にでもできるように指導したことのメモを残 す。ことしで2年目になります。この指定のきっかけで校 したり、このやり方がいいよとかいうことは残していこう 区内の4つの保育園、それから小学校、それから中学校、 と思っています。 それから公民館が連携ができるようになっております。横 まとめとして言いたいことは、保小交流活動が小学校の 田中学校が目指してる環境教育は高津川をテーマにしてい 立場から考えてもとてもいい活動なので、ぜひお勧めです。 まして、これは小学校も保育園も一緒なんですけれども、 保育園と小学校の交流活動は、難しく考えずスタートする 高津川を取り巻く自然のすばらしさをまず体感し、そして といいですよということを皆さんに伝えたいと思ってお話 自然を大切にしようとする心情や郷土愛を育んでいく。最 しさせていただきました。これで私の話を終わります。あ 後一番大事なところは、環境を守るだけではなくて、美し りがとうございました。(拍手) い環境をつくっていこうという、そういう積極的な態度を つくっていこうということをやってます。これを中学校だ ○山下 けでやることは難しいので、小学校あるいは保育園といっ ありがとうございました。 たところで15年間を見据えて系統的にやっていこう、そ 小学校の「生活科」を中心とした取り組みの中で、子ど んな事業を展開しているわけです。今年度は横田中学校の もにとってのメリットに触れられ、活動メリットとして、 2年生と西益田小学校の5年生が合同で高津川の水質調査 人間関係が切れない、そして1年生の子どもにとって「有 をやりました。それから、先ほどもありましたけれども、 能感」が生まれるっていう言葉がとても印象的でしたね。 横田中学校の3年生と校区内の4つの保育園の園児さんと 確かに保育所では一番年長さんで頑張ってたお兄ちゃん、 で川遊び、それからアユを食べると、こういう体験を今年 お姉さんが、小学校に入るといつも指導される立場になっ はさせていただいております。 てしまう。その子どもの気持ちというのがとてもよくわか 次に、「ふるさと教育」についてお話ししますが、ふる っているという先生の視点が伝わってきました。子どもの さと教育っていうのは、地域のこと、もの、人とつながる 活動の「連続性」が生まれる。子どもの中に活動の区切り 教育であるというように思っております。したがって、横 や、それから逆戻りがないという点も子どもの側に立った 田中学校が環境教育を通して地域のいろんなこと、いろん 視点であるというふうに感じました。カリキュラム、保育 なもの、いろんな人とつながっていくことは、まさにふる 教育課程を作成していくということが今後の課題なわけで さと教育ではないかと思います。横田中学校でのふるさと すが、「無理をしない」、「場を共有するだけも意味があ 教育の舞台は高津川だけじゃなくて、保育実習も、あるい る」、同じ場を共有する中でそれぞれが狙いを持って活動 は職場体験も福祉活動も、これらは地域を舞台に地域の人 すればいいという言葉はとても示唆的だったと思っており を巻き込んでやっておりますので、全てふるさと教育って ます。学習しての価値、「カリキュラム」の位置づけは今 言えるんじゃないかと思います。 後の課題であるというお話でした。 きょうはこの後、保育実習のことについてお話しをさせ ここで、中学校の立場から、同じ小学校、それから保育 てもらいますが、その前に、「ふるさと教育」、先ほど、 所とかかわっておられる横田中学校の校長先生に短くコメ 人、もの、ことと言いましたけども、この中で一番我々が ントをいただきたいと思っております。 大事にしているのは人です。なぜかというと、例えば我々 お願いいたします。 がふるさとのことを思い出すときに何を思い出すか。1人 で川に行って遊んだとか、1人で山に登ったっていうのは、 ○矢冨(益田市立横田中学校長) 思い出にはあんまりならないんじゃないかと。山に行った では、失礼します。横田中学校の校長の矢冨といいます。 とか川に行ったときに、そこには必ず誰かがいるわけで、 中学校としての取り組みというようなことで、横田中学校 その誰かのしぐさとか表情とか言葉とか、それと一緒に思 のお話をこのテーマにちなんで発表したいと思います。 い出ができていく、それがふるさへの愛着じゃないかなと 「環境教育」、それから「ふるさと教育」、「保育実習」、 思います。したがって、我々がふるさと教育といったとき この3つのことについてお話しさせていただきたいと思い に一番大事にしているのは人とのつながりです。地域には 46 − 46 − そういった人はたくさんいます。例えば家族、友達、先生、 んでしたけど、小学校とも連携しています。こういう連携 小学生、高齢者、もちろん保育園児もその中にあります。 がこれからも続くことを願っております。 「保育実習」というのも立派なふるさと教育になってい 以上です。終わります。(拍手) るということで、最後、保育実習についてお話しします。 横田中学校では中学校2年生のときに3日間、それから中 ○山下 学校3年生のときに3日間、4つの保育園に行って保育実 ありがとうございました。先ほどの矢田先生のところで、 習をします。基本的には自分が出た保育園に行きましょう 小学校1年生にとっての「有能感」という言葉がありまし ということで行きます。保育実習は中学校では家庭科の中 たが、今、横田の矢冨先生のほうから、中学生にとっての にも位置づけられるんですけども、実は家庭科だけではな 「自己肯定感」という言葉が出たのが印象的でしたね。 くて、すごくメリットがあると思っています。中学生とい 矢冨先生、さっきのアユのつかみ取りのときの中学生の うのはとかく「自己肯定感」とか「役立ち感」とか、そう 姿が出てましたね。あれはどういう科目で参加されたんで いうものが育ちにくいというか、それを育てることが喫緊 すか、あれは「家庭科」じゃないでしょう。 の課題になってるわけですけれども、保育園児と一対一で 3日間過ごす保育実習は、逃げ場がないんですよね。この ○矢冨 ような状況の中で、中学生たちは本当、自分が頼りにされ あれは総合的な学習の時間に位置づけてやっております。 てると、そういう何か役立ち感とか、あるいは肯定感とか、 そういうものを得ることができる。これがすごく私は意味 ○山下 が大きいんじゃないかなと思っています。 はい、わかりました。ありがとうございます。 今年、たまたまこういうことがありました。横田中学校 では、続きまして、社会教育の立場からいろいろなスラ の体育祭が雨で流れて月曜日になったんですよね。幼児の イドやビデオ、映像の中にも登場しておられましたけれど 旗とりという種目があるんですが、そこへ月曜なので4つ も、島根県中山間地域研究センター研究員の檜谷さんのお の保育園から園児さんがどおっとやってきて旗が大分なく 立場でお話しをいただきたいと思います。 なって、急遽、旗をまた用意してやったんです。そのとき に中学3年生が並んでこうやって旗を持って、そこに幼児 ○檜谷 が走ってきて、「何々ちゃん、ここよ、ここよ」って、そ 改めまして、皆さん、こんにちは。島根県中山間地域研 ういう光景が見られました。月曜日に体育祭やったおかげ 究センターの檜谷です。 じゃなかったかなと思いますが、そういうこともサプライ 今回、「自然遊びのお勧めスポット」の地図を保育園の ズで実際ありました。 皆さんにつくっていただいたんですが、これが元データで さて、「保育実習」というのは、そういう意味では中学 す。中山間センターのほうではGISという地理情報シス 生にとってすごくメリットがあると、常々考えておったん テム使っていまして、それを県下でいろいろ広めていって ですが、これって保育園側から見たときのメリットって一 おります。これが元データで、このような航空写真を使っ 体何なんだろうかなと。いろいろと保育園の園長さんとか てデータを落としていくというようなことをやっています。 にお話を聞いたら、保育園児にとっても、お兄ちゃん、お 小学校や中学校も調べ学習の結果をこれに載せていくとい 姉ちゃんを3日間独占する、そういう体験ってすごく新鮮 うようなことを東部のほうでやっていますので、ぜひ西部 で得るものが多いとか、あるいは、あのような格好いいお のほうでもやっていただけたらなと思っております。 兄ちゃん、すてきなお姉ちゃんになりたいという憧れを持 私は、中山間センターにおりますが、小学校の長期自然 つんだというような話を聞いています。もう一つ、こうい 体験活動の全体指導者でもあります。これ10年ぐらい文 う話を聞きました。横田中学校では「保育実習」で出身の 科省がやっていました。制度自体はうまくいっていません 保育所に帰してるということで、保育士さんがちっちゃい が、今年度から全国体験活動指導者養成認定制度というふ ころに面倒見た子どもが中学生になって、それで自分の保 うに移行しております。ちなみに、これは写真のほうは大 育所に帰ってくると、それを見ていると何かすごくうれし 道山の遙拝登山です、ことしのですね。ぜひ1月1日、大 い気持ちになるなという話も聞いたとこです。 道山に皆さん登りましょう。島根県中山間地域研究センタ 今日は小学校との連携の話はちょっと時間的にできませ ー、飯南にあります。中山間センターは県下のいろんなデ 47 − 47 − ータを持ってまして、これ、2005年、2010年の国 各地区の人口は維持されるということはもうデータで出て 勢調査なんですが、そこで、この少子化の時代に5%以上 います。それで、これを実現すれば小学生の数もふえると 子どもがふえたところがあったわけです。というのは、松 いうことになりますが、今、益田市さんと一緒になって人 江や出雲の周辺部がふえているのかというと、決してそう 口拡大への政策なんかも出ていますので、このあたりを一 ではなくて、山間部も含めて頑張っている地域がふえてる 緒になってやらせていただいてるという状態です。ちなみ と。この5年間で1番は美郷町です。決して条件がいいと に、この5年間で小学生年代ふえてるのが鎌手とか真砂、 ころが子どもがふえてるわけではないということです。直 それから道川もですね、吉田もちょっとふえてます。決し 近5年間で、じゃあ益田の場合はどうなのかということで、 て町なかがふえてきて、周辺部が減ってるということでは 2008年、2013年の直近5年間で4歳以下がふえた、 ないということですね。 つまり赤ちゃんがどこで生まれたかということを、自治体 私のほうは、大体年間20日から30日ぐらい保育所に 単位でまとめてあります。この赤の部分が非常にふえたと 行かせてもらったり小学校に行かせてもらったりして、い ころなんですけども、例えば匹見の萩原なんかもそうです ろんな活動をさせてもらっています。こういう体験活動の し、町なかかどうかというとそうでもなかったりするんで 指導者が何を考えながら活動をつくってるかというと、 す。青のところは減ってるところです。こういった点も、 「成長」なんです。成長というのはCゾーンという考え方 非常におもしろいなと思って見ています。 を持ってます。Cゾーンって何かというと、Comfortable 30年先の小学生の人口予測もセンターのほうで出して なので「快適」とかそういうことです。つまり、自分の今 おります。特に町なかの学校等、これ学校単位じゃなくて、 の生活の中で余り恐ろしさを感じなかったり普通に過ごせ いわゆる公民館単位での小学生年代の人口の予測なんです る「安全なエリア」のことをCゾーンというんですが、こ が、高津なんかは今からすごい勢いで子どもが減っていき のCゾーンからどう踏み出せる、外に出れるかということ ます。ほかにも中西なんかも今からかなりがくっと減って ですね。踏み出すとどうなるかというと、安全でなかった るなというふうに見ています。ちょっとこの5年間で1番 り、予測できなかったり、あすどうなるのかわからないと すごかったのは道川小学校ですね、皆さん御存じのとおり。 か、不安が増したりとかいうことがあるわけです。でも、 3人が、今14人です。約5倍ですね。ここにはIターン 一番やっぱりすごいのは、結果が保証されないってことで とかUターンとか非常に地域の皆さん頑張っておられてこ すね。結果が保証されない世界へ子どもたちが足踏み出す ういう結果出されております。私もこないだ体験活動で道 というのは非常にリスキーなんですけども、それをしない 川小学校にも行かせていただきましたが、非常にいい授業 と子どもの「成長」ってのはないだろうというふうに思っ に、一緒に活動しておもしろかったなと思っております。 てまして、これを活動を通じてそのCゾーンを抜け出す、 小学生の増減率がもう出ておりまして、これ見てわかると 跳び越えるということを考えています。その活動をやる人 おり、道川なんかは、おわかりのよう に自治会全部でふえてるんですね、6 つ自治会ありますけど。道川の地区で 満遍なく子どもがふえてると、これ非 常にすばらしいなというふうに思って います。 益田市の未来の人口シナリオはもう 見えていまして、このままいくと10 年後に5,000人減ります。それを 5万人キープするためには、各地区ど れだけ定住を入れなきゃいけないかと いうことはもう数字として見えていま す。全体としては年間177組入れな いといけないですが、各地区でいうと、 例えば1組とか2組とか入れていけば、 48 − 48 − 間が、大人が必要だと、そのために指導者が要るんだとと きるかということも含めて教えています。なので、子ども いうような考え方でやっています。つまり、このCゾーン 時代に実は使えるようにさせておくべき道具は絶対にあり を越えるというのは、自分自身の変化を生んだり、もしく ますし、子ども時代にコントロールできるようにさせるべ は現状を打破する、そういうことにつながりますので、結 きですね、これなんか火なんですけども、火をコントロー 果的に今、「生きる力」、もしくは「生き抜く力」になり ルできるようにさせておく必要はあります。何かライター ます。 とかガスとかはもう道具ですんで、実は基本はこっちなん 「子どもの時間」なんですが、例えば年少から3年生ま です。ライターとかなんかは道具なんで応用編なんです。 での6年間というのは、じゃあ何時間あるのかというと、 やっぱ子ども時代に見せておく風景があると思っていま 5万2,560時間です、これは簡単な計算なんですが。 す。これは大道山の頂上ですね。で、益田の町を眺めると 大体、じゃあどういうふうに過ごしてるのかと。家庭とか いうことです。もちろん子ども時代に触れ合うべき水の流 地域とか学校とかいいますけども、ちょっとひかり保育所 れが、特に益田圏域にはあると思っています。こういった のほうに協力いただいて、今、学童保育やられてますけど 形で子どもたちに体験させています。これはいかだ流し大 も、学童保育で平日モデルとして何時間ぐらいそこにいる 会ですね。例えべそかいても子ども時代にやっておくべき のかというのをちょっと割り出してみました。大体年間7 ことが僕はあると思っておりまして、体から入れて心にし 35時間、ひかり保育所におります、学童保育としてです み込ませるというのが体験活動かなというふうに思ってい ね。そういうのを照らし合わせると、この6年間、年少さ ます。 んから、4歳から9歳までの6年間で、大体保育所に行っ さっきの話にもありましたけど、ただそれは、豊かな自 て過ごす時間が6,264時間、小学校が3,663時間、 然がどんなにあっても、それをやらせるべき大人が必ずい 学童保育、もしくは放課後児童クラブと言いかえてもいい ないと子どもは絶対にできないということだろうと思って かもしれませんが、2,205時間、家庭が2万2,90 いますし、社会教育の中で子育てという観点でいうと、実 8時間というふうに出ていまして、結局、今回保育所の はそれは大人づくりというふうに考えていまして、結局、 方々といろいろとやらせていただいて、どこを充実させて 大人をつくっていく過程なんです。なので、子どもを自分 いくのか、どの時間を充実させていくのかというのは、こ より心の強い大人に育ってほしいと思うなら、自分よりも の保育所の時間と、あと1年生から3年生までの学童保育 っと困難な体験をさせるしかない。それを意識しながら子 の時間にも直結してくる話になります。今回の指導者育成 どもに何をさせていくかと、その環境をどうつくるのかと というか、保育所の取り組み自体は。そうすると、この8, いうことだと思います。親だけではできないからこそ、さ 469時間、この6年間のうちの16%をどういう時間、 っきの「子どもの時間」も含めて考えると、地域全体であ 子どもたちの時間にするのかということの意味なんだろな ったり、小学校であったり、いろんな人たちとかかわって、 というふうに思っていまして、決してこれは保育所だけの その子どもにもっと自分より困難な経験をさせる。もっと 話ではなくて、学童保育に通っている1年生から3年生ま 違う経験をさせるということが、自分、親以上の子どもた でのことでもあるというふうに、僕自身は捉えてやってい ちを、新しい大人をつくり出していくということにつなが ます。 るんじゃないかなというふうに私自身は考えております。 時々、こういう話をすると聞かれるんですが、刃物は何 御清聴ありがとうございました。(拍手) 歳から使えるようになりますかというふうに聞かれます。 皆さん、どういうふうにお考えですかね、何歳から使うか ○山下 と。それは人それぞれなんですが、大体包丁の話が出ます ありがとうございました。檜谷さんがどういうミッショ が、これうちの子です。これは「なた」ですね、我が家は ンを持って保幼小中を指導しておられたのかわかったよう まきストーブなので、なたを使わせます。この子4歳です。 な気がしました。 これが4歳がなたを使う姿です。なたを使えるんですよ。 では、ここで、昨日、本物の保育から本物の学力へとい 軍手をつけて木を割ると。こうやって、初め、たきつけを うタイトルで御講演いただきました無藤先生に、本日の保 子どもにつくらせるというようなことを、個人的には私も 育教育課程とふるさと教育の事例内容について御意見と御 親ですんで、やっています。これはほっといてできたわけ 教授をいただきたいと思います。 ではなくて、やっぱり教えました。どうやったら安全にで 49 − 49 − ○無藤 れが、例えば中学生の誇りを生み出し、そうすると中学生 白梅学園大学の無藤でございます。 は中学生として頑張らなきゃいけないという気持ちになっ きのう講演させていただいて、ある意味ではその続きで ていくわけですよね。それは我々大人だって、親になれば もあるんですが、きょう午前中の発表、特に実践、保育所 やはり子どもがいる、子どもが見ているとそう変なことし と小学校、さらに中学生も入っておりましたけれども、そ なくなるっていう面もあるわけですけれど、それに近いと れを拝見させていただきながら、皆さん方の発言を整理し 思います。 たというぐらいなんですけれども、少しコメントさせてい もう一つは、「体験」ということですけれども、体験と ただきます。 いうのは、その場に入り込んでいくことですよね。そうす 表題として、「体験活動から学力と生きる力の基盤を作 ると、最初のほうの資料にありましたけれど、川に行くと。 る」というふうにしましたが、体験活動っていうのはそれ 川も、河原から流れを見るのと、実際にその中に水につか 自体もちろん大事なことですけれども、特に学校教育であ ること、さらに流れに身を任せて、川の水の流れを体全体 れば学力、より広くは「生きる力」を育てるというところ で感じること。だんだんだんだんその体験が深まっていく につながるものにしたい、実際私はそうなるということで、 し、子どもたちの気づきが広がっていくわけですよね。そ その要点を私が愛好している標語ですけれどもね、「小さ れは子どもたちの描いた絵でよく見えたわけですけれども。 く転んで大きく育つ」ということで、転ばない子は育たな そういうふうに、川というのは非常に総合的な場所で、水 いというか、転ばない子はいつかどこかで大きく転んで大 もあり、石もあり、虫もいて、草花もありという中に入っ けがするので、なるべく小さく転ばせるというのが大事だ ていく中でいろいろなかかわり方ができます。そこでは子 よということです。 どもたちの感覚、感性が開かれていくし、そこでいろんな まず、「交流活動」なんですけれど、やはり皆さん方お ことを感じ、考えるように変わっていくわけですよね。さ っしゃるように、交流活動の大切さというのは小さい子に らに、何人もの方がおっしゃったように、1人ではなくて とって大きな子どもたちの姿を見ること。また、大きな子 友達と行き、同級生と行き、先生と行き、小学生と幼児が どもたちは小さい子どもたちのお世話をすること。その両 一緒になり、中学生も来てという中で、その活動はより深 方の意味があるわけですね。憧れが育っていく、やってみ いものに変わっていきます。こういった体験活動というの たいことがふえていく、これは人間が育つ基本なわけなん は小さいときはやるべきだよというだけではなくて、いわ ですけれど、今の社会というのはどうしても、制度が整備 ば、そこに繰り返し立ち戻る原点になっていくものですよ されてくると基本的には年齢ごとに区切っていかざるを得 ね。 ないですよね。異年齢保育ってのもあるし、小学校も異学 例えば高津川は非常にすばらしい。それは、ここに生ま 年交流をしますけれども、でも基本的に保育や授業っての れ育った多くの大人はそう思っていても子どもたちが体験 は年齢、1年間の幅なり、2年間の幅の中でやる。それは、 していなければ、それは単にそこらにある田舎の川なんで その年齢層の力を伸ばすのに必要なことなんですけれど、 すよね。そのままで子どもたちが成長していったときに、 一方で、子どもたちは大人の姿を見、年長の子どもたちの そのときに、10年後、20年後のここに暮らしている、 姿を見ながら、ああいうことをやってみたいなという憧れ 今の子どもたちが大人になったとき、例えば自分たちのふ が絶えず広がりながら、それを目指しているわけですね。 るさとを誇りに思う。もっとはっきり言えば、多くの子ど これがうっかりすると、今の社会から消えてしまう。テレ もたちが、高校、さらに大学になれば外に出ていくと思う ビとかその他で見える大人の姿だけを見ていると、かなり んですけれども、その子どもたちは戻ってくるのか。戻れ ゆがんだものになってしまわけですよ。そういう意味で、 ないまでも常にふるさとのことを気にかけてくれるのか。 憧れをどう育てていくかということなんですね。同時に、 それはつまり、小さいときにどれほどこの地域を大事に思 子どもたちも実は世話をする、下の子の面倒を見るという えるかにかかっているんですね。特に小学校、中学校で考 ことももう一方で必要で、5歳は3歳を、3歳は1歳を、 えてみると、やはり大事にすべきことは教科の学習なんで 小学生は幼児、中学生は小学生、幼児、世話をするわけで すけれども、しかしながら、その教科の学習と、例えば体 すね。その世話をするっていうのは、単に世話のやり方を 験活動がつながりを起こすようにどう組んでいくか。小学 覚えるというよりは、世話をすることによって自分たちが 校の場合には「生活科」があり、「総合的な学習」があり 憧れられている存在だということに気づくことですね。そ ます。そこで体験することと教科と、例えば川の流れって 50 − 50 − いうことを考えたときに、理科で川の流れについて学ぶん トをつけて流れるというのは、これは大人が指導しなきゃ ですね。あるいは社会科でふるさとについて学び、川につ できない。ですから、体験活動でより豊かにするというこ いて、やはり学ぶんですね。そのときにこういう、もし体 とは当然ながら大人側の、言うなれば教材研究が必要だし、 験がなくて学べば水流というものは、そりゃ子どもはわか そこでのさまざまな用意も必要です。そういうふうにやっ りますよね、川は流れてるよねと、それから水流の実験か て何度もやってるうちに、子どもたちにとって、やってみ 何かをして、例えばよくやる実験でいえば、砂場の中に水 たいことがもっと生まれてくるし、具体化してくる。今度 を流したら流れて、たくさんの水が流れると崩れるとか。 はこういうふうにすごいことやってみたい、自分たちで川 それはもちろんできるんだけれど、じゃあ、それが現実の をつくりたい、じゃあ河原で、溝というんですかね、堀と 川とどれほど結びつくものなのか。やはり体験がなければ いうか、それをつくって自分たちの川をつくる。これは一 なかなかわからないことなんですね。そういう意味で、体 つの子どもたちの目的が生まれてくることですよね。つま 験ということと教科ということと、その両方を子どもたち り、体験活動の中で、大人の先達の中でいろいろ経験する に学習させながらつないでいく必要があります。そのつな ことが、今度は子ども自身が追求するものに変わっていく ぎ方なんですけれども、一つは、先ほど絵とかいろいろな という中に子どもたちの主体的な力、さらに難しいことに、 ものが出てきましたけれども、「体験の気づき」、それは 困難なことに挑戦する姿が生まれてきます。そういう子ど どういうふうに子どもたちがあらわすか。そこに絵にあら もたちの姿を実現し力を増していくためには、もう一つは わすとか、小学生だと作文を書くとかいったこと。つまり 先生側の、保育者、教師側のさまざまな実践的な研究が必 体験から教室のほうに持ち込むものとしての「表現活動」 要になってきます。 ですね。 一番基本となることは記録をとるということで、先ほど もう一方で、特に年齢が、学年が上がってくると「調べ いろんな紹介の中で、写真やビデオやメモや子どもの作品、 学習」をしていく。例えば高津川についてかかわるという いろんなものが出されてきました。それをきょうのような ときに、先ほどのは幼児、それから「生活科」という比較 場に発表するだけの話ではなくて、その授業を、保育を見 的小さい時期ですから、主には、まずはそこで遊びましょ 直すための資料ですよね。それは客観的な記録をとるって うと。でも、それがもう少し学年が上がってくれば、この こともあるけれども、それ以上に子どもたちの生き生きと 流域についてのさまざまな調査とか、専門家から教わった した活動の姿をみんなで見て、改めて生き生きとした子ど ことを結びつけながら、この高津川のあり方について調べ もの様子からよりよい活動、体験をどういうふうに可能に る、それをもとに体験活動をする。そうすると、いわゆる するかを考える。ふだんの教室では見られないようなもっ 教科学習と体験活動をつなぐものとして、一方で表現活動 と生き生きとした姿がそこに出てきてるのかもしれない。 があり、一方で調べ学習がありながら、両方が結びついて そして最後に、これも何人かの方がおっしゃったように、 いくように思います。 これを1回限りのこと、何とかプロジェクトができたので そういうことを通して何を育てたいかというときに、き 幸いやってみましたということだけではなくて、これを本 のうも申し上げたんですけれど、個別の教科の学習に役立 年度、来年度、全ての保育所、小学校、中学校で、それぞ つということが一方にあるんだけれど、もう一方で子ども れの環境の中でやれるものに変えていってほしい。それが たちの「集中する力」、「工夫する力」、「挑戦する力」、 「カリキュラム」ってことなんですね。カリキュラムって またその意欲、それを育てていこうじゃないか。体験でい のは毎年やりましょうよということです。つまり、一体ど ろんなことをやっている子どもたちの姿、そのときに子ど ういうふうに育てていくんだ。子どもたちの将来の姿を具 もたちがどれほど熱中し没頭するのかということですね。 体的にイメージし、共有しながら、じゃあそのためには小 そのような子どもたちの集中し没頭する姿の中で、それを 学校1年生はどういうことをしたらいいのか、幼児期には 繰り返し行う中で、いわば体験の分厚さというものが生ま どういうことが必要だろうか、もう一度見直していくって れてきます。1回切りのイベントを超えて自分たちの心の ことですし、また、その中で、保育所の中でやること、小 中に深く残るもの。 学校の中でやることとともに、保育所と小学校のつなぎを もちろんそれには先生方の指導の工夫も必要なわけで、 かなり考えなきゃいけない。御指摘のように、保育所と小 例えば子どもたちを河原につれてってただ遊んでたら水辺 学校とやってることは部分的に重なってるじゃないか、だ でばちゃばちゃやるだけですね、幼児は。ライフジャケッ から、そこをつなぎとして発展させていこう。カリキュラ 51 − 51 − 非常に大きなチャンスだというふうに実は考え カリキュラムとして持続的活動とする ているわけです。そのためのいろいろな方々の かかわるプロジェクトというのを立ち上げたつ • 持続的に可能にするためにカリキュラムに位置づける。 もりでおります。 • 小学校低学年教育の底上げにつなげる。保育と生活科の接 続、絵本活動と国語のつながり、・・・。 その中で、今は試行錯誤の段階ですが、継続 性のある、最後に無藤先生のほうからお話があ • 子どもの集中し、工夫し、表現し、振り返り、目的を目指し計 画する力の育成を、保育と小学校低学年の接続の中心的柱 とする。 りましたけれども、継続性のある力強いカリキ • 異なる校種等をつなぐために、重なるところを探し、発展させ る。 つくるということが教科教育の基礎であるとい • カリキュラムとは短い授業と単元そして長い育ちをつなぐこと である。子どもの将来の姿のイメージを具体的に描き出す。 学校までのところでの連続性が大事になります。 ュラムというものをこれからみんなでつくって いく必要があります。そうしたカリキュラムを うことであれば、義務教育の完成年齢である中 さらに、それは学校教育の「生活科」や「総合 的な学習の時間」、それから保育の中で専門職 ムっていうのは、それぞれの保育所の中のカリキュラム、 がやるべき仕事であると考えられるわけですね。と同時に、 小学校の中のカリキュラムと、保育所と小学校をつなぐカ 教科学習の源である「体験学習」であるならば、その生活 リキュラム、この両方が必要なんだよということですね。 の場を離れては体験というのはできないわけで、体験を繰 そういう中で各教科と保育をどうつなぐかっていうこと り返しながら子どもたちは学習したふるさとを、愛着のあ や、子どもたちが集中し、工夫し、表現し、振り返り、目 る地域の場として記憶にとどめるという意味でもふるさと 的を目指して計画し、挑戦していくような力っていうもの づくりにもなっていると考えます。 をどういうふうに幼児期から小学校、さらに中学校、さら もう一つ考えさせられたことがあります。それはきょう に大人にまでどう広げていくかということが、私たちの課 の保育研究会の発表のところで、「ふるさとで生きる人づ 題になってきたんではないかというふうに思いました。あ くり」カリキュラムというまとめをしてくださいまして、 りがとうございました。(拍手) そこで子どもも大人もでしたか、確かそういうふうに書い ておられました。その中でやはり、そこでいう大人という のは社会人である保育者であり、また地域の方だと思うん ○山下 ありがとうございます。 ですが、保護者はどうでしょう。保護者から子どもへの世 先生のほうからは、「ふるさと教育」というのを自分の 代的な連携、継続性ですね、そこを考えると、保育所は常 身近な生活の場での「体験学習」という言葉に置きかえて に保護者も支援の対象としていますが、その大人の中には 御説明いただいたように思います。こうした体験学習とい 保護者も入ってくるように思います。その保護者も交えた うのが教科学習を支えているのだ、さらに教科学習を活性 「ふるさと教育」、そして「体験学習」のかかわりという 化するのだというお話がございました。であるとするなら のは、日常の保育や授業中にはなかなかしがたいですね。 ば、小学校、中学校の義務教育段階での教科学習を活性化 そこで、昨日、懇親会のときに渋谷課長さんが土曜塾と し、それを下支えする身近なところでの体験学習としての いう発想を出されたんですが、渋谷課長さんおられますか。 ふるさと教育というのは、これは価値あるもので、幼年期 きょうおられないですか。あっ、おられました(笑声)。 から連続性を持って組み立てられなければならない、これ いかがでございましょうか。土曜ふるさと塾というような は誰の目にも明らかなことだと思います。 発想で保護者も巻き込むというのはちょっとどうでしょう。 せっかくですので御意見、感想と保護者との連携について お話しいただけたらと思います。 昨日は島根県の学力低下の話をしましたけれども、実は この教科学習を下支えし活性化するものとしての「体験学 ○渋谷 習」、イコール「ふるさと教育」というものに益田市が力 を入れ、これをカリキュラム化し、全ての保育所、幼稚園 何か益田市の学力の下支えをしていかなければならない から取り組むことができるのであれば、これは起死回生の んだろうなということで、土曜日の動きがありますので、 52 − 52 − 土曜塾というのを中心にやっていくことを考えています。 その中で、今考えてるのが、退職された校長先生方、教職 員の皆様にお願いをするというような格好で、それから始 めていって、その中に保護者を巻き込んだとかいうような 発想が出てくるといいのかなと思います。 担当は社会教育課になりますので、そちらのほうでタイ アップしながら進めていきたいなと考えております。 ○山下 ありがとうございました。 益田市のほうで一体となって取り組んでいただけたらと 思います。 そのほか、もう時間が過ぎておりますが、あとお一人ぐ らい御意見、御感想ございませんか。 きょうは浜田教育センターからおいでいただいてますが、 城市さんいかがでしょうか。 ○城市 はい。急な振りで大変驚いておりますが、感想というか、 まずこうやって多くの大人が、地域、子どもたちと一緒に なっていろんなことを支えていったり、進めていくという 考えをまず持ってることが、とてもすてきだなということ を感じました。私も実は教員なんですけども、今センター で、そばに子どもがいませんけども、こうやって子どもた ちと一緒に活動していくことは、私たちにとっても、とて も楽しいことだなというふうに思いながら、きょうは聞か せていただきました。 ○山下 ありがとうございました。 教員も人の親であったり地域の大人であったりするわけ で、保護者とともにこうしたふるさと教育にかかわること で、教員自身にとっても生涯学習の一つの体験になるので はないかなという印象、私も持ちました。 きょうは益田市の中で既に先駆的に行われています益田 市保育研究会と、それから横田中学校区、そして西益田小 学校区のお話を伺うことができました。これを参考に、今 後、私たちの進めていきますプロジェクトについて、いろ いろな御意見をいただけたらと思います。私たちもカリキ ュラムづくりには大学の立場で協力しながら学んでいきた いと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいた します。きょうはどうもありがとうございました。(拍手) 53 − 53 − 54 平成 25 年度北東アジア地域学術交流研究助成金(共同プロジェクト研究助成事業) 地域資源と協同的体験を保育教育課程に生かす「ふるさと教育」の研究 -島根県益田市モデル- ≪学内コアメンバー中間のまとめ≫ 一章 益田市におけるふるさと教育の新たな展開に向けて 総合文化学科教授 二章 保幼小交流でとりくむ「生活科」としての「ふるさと基盤教育」 保育学科教授 三章 鹿野一厚 山下由紀恵 保幼小連携カリキュラムとしての「ふるさと基盤教育」の意義と可能性 保育学科講師 矢島毅昌 一章 益田市におけるふるさと教育の新たな展開に向けて 鹿野 一厚(総合文化学科) 2013 年 5 月から、益田市保育研究会(以下、保育研究会と略)の方々と一緒に活動して、益田 の自然・社会・文化を体感するふるさと教育の取り組みを知った。この取り組みは 2009 年から 実施されており、保育園児を対象とした川遊びや山遊びなどのプログラムやそのノウハウなども 蓄積されてきた。そして何よりも、園児たちの楽しそうな顔が、この取り組みの素晴らしさを物 語っている。 しかし、それと同時に、保育研究会の皆さんとのお話から、子どもたちに野外体験をさせるこ とにどのような教育的意義があるのか、小学校や中学校も含めて、カリキュラムのなかにどのよ うに取り込んでゆくのかといった点は、今後の課題であることも拝察することができた。本稿で は、環境教育の先進国であるアメリカの動向を概観し、発達論的な環境教育の研究者であり推進 者でもあるデイヴィド・ソベルの考えを紹介したうえで、僭越ながら、益田市におけるふるさと 教育の今後の展開に向けた提言を行ないたい。 A. アメリカの環境教育の最新の動向 アメリカにおける「環境教育」は、1960 年代に登場したと言われている(荻原,2011)が、 21 世紀になってから大きく変貌しようとしている。そのきっかけとなったのは、ジャーナリス ト・作家であるリチャード・ルーブの『あなたの子どもには自然が足りない』 (2006) (原著:Last Child in theWoods 2005)である。 ルーブは、この本のなかで、まず第 1 に、アメリカでは子どもが自然と触れ合う機会が極度に 減少していることを示した。野外での遊びを危ないと見なす親たちが増加していること、それと 比例してテレビやコンピューターの前で過ごす子どもたちが増加していること。そして学校では、 学力重視・テスト重視の教育改革(ブッシュ政権時に誕生した「No Child Left Behind Act(落 ちこぼれをつくるな法。以下、NCLB 法と略) 」 )のあおりを受けて、子どもたちは教室に閉じ込 められるようになっていること。様々な原因が重なって、子どもたちは自然から切り離されてし まったのである。 次にルーブは、 「自然欠乏障害(nature-deficit disorder) 」という造語を用いて、自然からの隔 離が子どもに及ぼす悪影響に注意を促した。自然欠乏障害とは、肥満傾向や注意欠陥障害、学習 障害、鬱傾向などの身体的・精神的な障害を指す。幼いころに自然と直接触れ合う体験が、感覚 (五感)の健全な発達に、ひいては学習や創造性にまで影響を及ぼすというのである。 ルーブのこの著作はアメリカの環境教育運動を活性化し、2008 年 9 月、 「No Child Left Inside Act(すべての子どもたちを野外に出そう法。以下、NCLI 法と略) 」と略称される法案が下院を 通過した。 (上院では投票に付されず不成立。2009 年にも提案されたが、上下両院とも本会議に 上程されるに至らなかった。2013 年にも、再々度提案されている。 ) NCLI 法は、子どもたちのあいだに自然欠乏障害が広がることを防ぐために、自然体験を含め た環境教育や、理科・社会の学習機会を増やすことを目指している。その主張は以下のとおりで ある(荻原 2011 pp.175-176) 。 55 − 55 − ①NCLB 法により、全米的に英語や数学といった特定の教科に関心と資源が集中し、環境教育が 著しく圧迫されている。また、自然体験などの直接経験は、児童生徒にとって重要な意義がある にもかかわらず、教える時間の不足のため、圧迫され、排除されている。 ②現代の子どもたちは自然と切り離された生活を送っている。野外で過ごし、自然を学習するこ と、特に幼いころの野外経験は認知機能の増進、注意欠陥障害の改善、自己規律や情緒の安定に 効果的である。 ③アメリカ人は驚くほど環境についての基礎的知識を欠いている。 ④環境教育は基礎学力向上に役立つ。 ⑤環境リテラシーは 21 世紀の市民的・職業的教養として不可欠である。 ルーブの画期的な著作を理論面で支えているのが、デイヴィド・ソベルである。ソベルは、ア メリカ・ニューイングランドにあるアンティオーク大学の地域ベース教育センターの指導官であ る。身近な場所に根差した教育(place-based education)の重要性を提唱し、アメリカにおける 環境教育のリーダーの一人である。 本稿では、以下にソベルの考えの概略を紹介してゆく。 B. 子どもの発達段階に応じた「環境教育」 ソベルの環境教育に対する考えの根幹は、 「 (身近な)場所(place) 」を素材とした環境教育プ ログラムを提供することによってはじめて、子どもたちは環境リテラシー(または自然リテラシ ー)を身に付けることができるということである。環境リテラシーとは、読み・書き・そろばん(計 算)といった従来の 3 つのリテラシーに次ぐ第 4 のリテラシーであり、直接的な自然体験から学 び、かつそれに応答してゆく能力と捉えられている。その環境リテラシーを育むためには、教室 における勉学だけでは不足であり、 「身近な場所に基盤を置く(place-based) 」教育こそが必要不 可欠であると説いている。 さらにソベルは、過去 10 年にわたって、アメリカ、イギリス、カリブの数百人の子どもたち の描いた家周辺の地図を集め、それらの子どもたちと野外探検を行なった。そして、4 歳から 15 歳までの子どもと彼らの広がりゆく世界との関係には、次の 3 つの発達段階(ステージ)が存在 することを明らかにした。まず①子ども期初期、次に②子ども期中期、そして③思春期初期であ る。以上のことを踏まえてソベルは、 「環境教育はそれぞれのステージごとに異なる趣旨、スタイ ルで行われるべきだ(ソベル 2009 p.28) 」と考えている。 以下に、各発達段階の特徴とそれに見合った環境教育の内容を概観してゆく。 1. 子ども期初期 「子ども期初期」の段階は、およそ 4 歳から 7 歳まで続く。この段階の子どもたちの特徴は、 まず活動の範囲が狭いことである。 「家が彼らの地図の中心を占めていて、遊ぶのはたいてい家が 見え、家から声が聞こえる範囲である。家と庭が彼らの主要な世界なのだ(前掲書 p.28) 」 。もう 一つの特徴は、 「自己と他者をはっきり区別しない(前掲書 p.31) 」ということである。 「子ども たちは虫、リス、ハトなど庭や近くに生きる生きものを(地図に)描き込むことが多く、それら をとても大事にする(前掲書 p.28) 」 。 56 − 56 − ソベルは、この段階の子どもたちに対しては、自己と他者をはっきり区別しないという特徴を 活かして、子どもと自然界との「共感」を育むことを主要な目標とすべきであると述べている。 自然界との共感を育むとは、すなわち「センス・オブ・ワンダー」を育むことと考えてよい。 この時期に、身近な自然の具体的な事物と直接的な関わりを持つことによって、外界の事物が 子どもたちの内界に根付くようになる。ソベルはこれを「内なる自然」と呼んでいる。これこそ が、これ以後の子どもの健全な発達のための土台となるものであり、したがって環境リテラシー の土台となるものである。逆に、子ども期初期のこのような体験をしないと、 「自然欠乏障害」に 陥ってしまうのである。 それでは、どのようにして子どもたちの自然界への共感を育めばよいのだろうか。 『Childhood and Nature』のなかでソベルは、子どもと自然をつなぐ 7 つの原理(principle)を挙げている。 その 3 番目は、 「動物の仲間をつくる」ことである。つまり、現実と空想のなかのどちらにおいて も、 「動物と仲良くなることは、子ども期初期に共感を育てる最上の方法のひとつ(ソベル 2009 p.31) 」なのである。また、2 番目の原理として、 「ファンタジーとイマジネーション(空想) 」を 挙げている。想像のお話を物語り、歌を歌い、動物のまねをして遊ぶことも、共感を育てるうえ で欠かせないのである。 2. 子ども期中期 8 歳から 11 歳までの時期に相当するのが、 「子ども期中期」の段階である。この段階の子ども たちの特徴は、活動範囲が家とその周辺を越えて広がることにある。ソベルによると、 「子どもた ちの地図は急速に広がり、彼らの地図は紙の端いっぱいまで広がり、さらに目下探検中の領域を 描き込むために新しい紙を貼りつけたりすることがよくある。地図のなかでの家は小さくなり、 重要さを失って、地図の中心から周縁に場所を移すこともある(前掲書 p.28) 」 。 この段階の子どもたちに対しては、身近な地域を「探検」すること、あるいは探検するプログ ラムを提供することが、何よりも大切であるというのがソベルの考えである。 「身近な世界を探検 し自分のいる場所を知ることは、ランドスケープ(大地)との結びつきを形成する段階(中略) において最も重要な事柄である(前掲書 p.44) 」と述べている。 自分の足でランドスケープを歩き回ることによって、子どもたちは身近な場所(ランドスケー プ)との結びつきを形成する。ふるさと教育の目標のひとつが、ふるさと(=身近な場所)への 愛着を育むことであることを考えれば、この段階の重要性を納得することができる。つまりこの 段階は、 「ふるさと」 ( 「原風景」と言ってもよい)が子どもの心に定着する段階なのである。 子どもたちの心にランドスケープとの結びつきを形成するためには、 「川や道をたどり、ランド スケープを探検(前掲書 p.44) 」することの他にも、秘密基地作りや小さな想像の世界をつくり だすこと、そして宝探しや狩猟採集をすることも、この段階における最も重要な活動となる。ま た、前の段階に引き続いて、生きもののお世話をしたり、庭仕事や土いじりをすることも大切な 活動となる。 ソベルはまた、 「4 年生まで悲劇はなし(前掲書 p.62) 」と述べて、子ども期の初期および中期 を通じて、熱帯林の破壊や生物の絶滅などの地球環境危機の「悲劇」を扱うべきではないと述べ ている。これらの事柄は、抽象的で複雑な思考ができるようになり、感情的な強さと強固な自我 57 − 57 − を備える思春期以降に扱うべきである。さもないと、子どもの心に恐怖心を植え付け、 「自然嫌い (ecophobia) 」にしてしまう可能性があるからである。 3. 思春期初期 この段階は、12 歳から 15 歳まで続く。この段階の子どもたちの特徴は、抽象的な思考ができ るようになることと、社会的な活動に興味を持つようになることである。 「地図はどんどん範囲を 広げていき、抽象的になっていく。しかも、好きな場所は森のなかから街へと移り変わる。ショ ッピングモール、繁華街の軽食堂、街中の公園など人の集まる場所が、新たに重要性を帯びるよ うになる(前掲書 p.29) 」 。 この時期の子どもたちにとって重要な事柄は、 「通過儀礼」である。通過儀礼とは、成人式のよ うな単なる儀礼(儀式)にとどまらず、子どもから大人になるときにくぐり抜けるべき試練とい った意味で用いられている。思春期にみられる「大人たちや社会への反抗」も、通過儀礼の重要 な要素であり、自己の確立に向けた模索がこの時期に始まるのである。 しかし、それだけでなく、ソベルは、大人時代への仲間入りをするためには、独立(自立)と ともに社会的責任というチャレンジにも応える必要があると説く(前掲書 p.62) 。自立と社会的 活動は、相互に絡み合い、強め合いながら進行していくのである。 そのような思春期初期の子どもたちにとって必要なものは、 「社会貢献へのオリエンテーション (前掲書 p.74) 」である。たとえば、 「学校でのリサイクルプログラムの運営、学校行事として探 検計画を立てることや、議会の街の(ママ)条例づくりへ関わっていくこと、公聴会で自分たち の意見を述べることなど、すべてこの時期にぴったりの活動(前掲書 p.61) 」なのである。 C. 益田発ふるさと教育の今後の展開に向けて 前章までの記述を踏まえて、本章では、益田発のふるさと教育構築に向けた中間的な展望を述 べておきたい。 益田市におけるふるさと教育を発展させてゆくためには、長年にわたってアメリカの環境教育 をリードしてきたソベルらの考えに、私たちも耳を傾ける必要があると考える。 (もちろん、その まま日本に移植しても根付かない部分もあるが。 ) 「子どもたちの発達段階に応じて、適切な時に適切な場所で教育を」という呼びかけは、ソベ ルらの長年の研究に基づいており説得力がある。特に、ソベルの考えの核心である「身近な場所 に根差した教育(place-based education)」は、保育研究会(西益田小学校・横田中学校・アン ダンテ 21 なども含めて)の取り組みの肝となる部分である。日本における「身近な場所に根差 した教育」の先駆けとして、益田市における取り組みは位置づけることができる。 子ども期初期の段階の子どもたちにとって、自然界との「共感」を育むことが第 1 であるとい う主張は、保育研究会および西益田小学校の取り組みの指針となるものであると考える。自然体 験に加えて、動物の仲間を作ったり、生きものになりきったり、物語を作ったりする体験に、自 信を持ってじっくりと取り組まれることを期待したい。 益田市においては、子ども期中期、すなわち小学校中学年の子どもたちへの取り組みがまだな されていない。ソベルによると、この時期は「ふるさと」が心に定着するうえでとりわけ大事で 58 − 58 − ある。そして、そのためには、自分の足でランドスケープを歩く「探検」が重要なのであるが、 今後はこの「探検」をどのようにカリキュラムに取り入れるかが課題となるであろう。理科、社 会、および総合的な学習の時間を活用する方向で議論が進んでゆくことを期待したい。 思春期初期においては、横田中学校において環境教育の取り組みが始まっている。ソベルの環 境教育は「身近な場所に根差した教育(place-based education)」であるが、思春期における社 会との関わりからも明らかなように、実は「身近なコミュニティに根差した教育」でもある。こ れは、私たちが目指している、自然と社会・文化を包含する「ふるさと」に根差した教育に近い ものである。横田中学校が開発した環境教育カリキュラムにソベルの考えを取り入れて、思春期 初期の生徒たちを地域社会貢献に向かわせるプログラムを提供することが可能であろうか。もし それが可能となれば、ふるさとに根差した教育の実現に大きく近づくことができるであろう。 レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』ぐらいしか知らなかった私は、この機会 にあらためてアメリカの環境教育について学んでみて、そのレベルの高さと内容の豊かさに圧倒 された。1950 年代生まれの私にとって野外で遊ぶことは当たり前であり、それだからこそ、現代 の子どもたちがどのようにして育っているのかということを想像することができなかった。 しかし、アメリカの現状を知ると、日本でもこのようなことが進行しているのではないか、い や進行しているにちがいないと考えるようになった。益田市におけるふるさと教育のために役立 つことが少しでもあるならば、筆者の望外の喜びである。 引用・参考文献 Louv, Richard. 2005, Last Child in the Woods: Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder. Chapel Hill, North Carolina: Algonquin Books of Chapel Hill. (リチャード・ルーブ(春日井晶子訳) ,2006,『あなたの子どもには自然が足りない』,早 川書房。 ) 荻原 彰,2011, 『アメリカの環境教育 -歴史と現代的課題-』 ,学術出版会。 Sobel, David. 1996, Beyond Ecophobia: Reclaiming the Heart in Nature Education. Great Barrington, Massachusetts: The Orion Society. (デイヴィド・ソベル(岸 由二訳),2009,『足もとの自然から始めよう』,日経 BP 社。) ――――,2008, Childhood and Nature: Design Principles for Educators. Portland, Maine: Stenhouse Publishers. 59 − 59 − 二章 保幼小交流でとりくむ『生活科』としての『ふるさと基盤教育』 山下由紀恵(保育学科) 1.4・5 歳から 7・8 歳までの発達 知能の発達心理学の立場から見れば、4・5 歳(年中)から 7・8 歳(小 2)までは、同じ発達段 階のグループに属している。20 世紀の発達心理学者ジャン・ピアジェはこの段階を「前操作期」 の「直観的思考の段階」と呼んだ。体験的な感覚から得たイメージに基づいて、ものを比較した り並べ替えたりしながら、やがて7・8 歳で操作的な尺度に至る子どもの思考過程を、ピアジェ は連続的に描き出している。体験しながら考える子どもの姿は、「遊び」の中にも見出されてい る。「集団的象徴遊び」から「ルールのある遊び」までが、直観的な思考段階に出現する。ほぼ 同質の発達段階集団の中で、5 歳以降の子どもたちは相互にまね・まねられ、学び・教えて、「協 同的な遊び集団」となっていく。そして小学校 3 年生頃に、また次の発達段階「具体的操作期」 へと移行していくと考えられている。 「前操作期」から「具体的操作期」に移行するとき、ピアジェが「脱中心化」と呼んだ知的な 転回が起きる。たとえば「重さ」について、子どもはどのように理解しているのか。同じ重さで あることを目の前で確認した二つの粘土の塊の一方の形を目の前で変えてみせると、4 歳くらい の子どもは、形が変わったことで、重さも変化したととらえてしまう。しかし、8 歳を過ぎると、 ほとんどの子どもは「形が変わっても重さは変わらない」ことに気づく。これを「重さの保存」 と言い、この「保存」が出現することで、知覚やイメージに頼らない「重さ概念」「尺度」とい った客観的思考が成立したことがわかる。下の左図は、1963 年に、ピアジェとインヘルダーが発 表した年齢別の「重さの保存」比率である。8 歳以降に過半数の子どもがこの段階になることが わかる。しかし、二つの粘土の塊を、子ども本人に変形させたら、結果はどうなるか。下の右図 のとおり、筆者は、実験的に、他者行動で粘土が変形するときと、自己活動で粘土が変形すると きの、子どもの反応の違いを調べてみた。 年齢別ねんどの重さの保存・人数比(%) 重さの保存 (Piaget & Inhelder, 1963) 幼年期の自己活動と「重さの保存成功率(%)」 60 100 同じ重さ の確認 後に 自分で 変形させ た場合 50 90 80 40 70 60 30 50 20 40 30 10 20 0 自己活動 0 10 6歳 7歳 8歳 9歳 10歳 3歳 11歳 4歳 5歳 他者活動 6歳 結果は、右図のとおり、5 歳児、6 歳児になると、自己活動の場合なら、「重さの保存」が成立 しやすくなっていた。6 歳児は、他者活動の場合は、ピアジェらの結果と同じく10%程度しか 保存が成立しなかったが、自己活動の場合は50%近くが、「形が変わっても重さは同じ」であ 60 − 60 − ると回答した。このことは、8 歳以降の子どもが「自己活動」なしに思考しうることを、4・5 歳 以降 7・8 歳頃までの子どもは、「自己活動」をしながら思考することを示している。実際に粘土 にさわり、粘土を感じながら変形させることで、さっきと同じモノとして、重さの保存が成立し やすくなるのであろう。このように適応行動を繰り返すことで、新たな認知的水準に至る過程を ピアジェは「調節」とよんでいる。4 歳から 8 歳までは、生活と遊びの自己活動の中でこのよう な「脱中心化」に向けた調節が行われる。 一章で鹿野教授が紹介した「環境教育」理論におけるデイヴィド・ソベルの「子ども期初期」 が、ちょうどこの直観的思考の段階に相当している。この段階はまだ、自分の体と感覚を中心に 周りの世界をとらえている。純粋に客観的ではないがゆえに、共感と豊かなイメージをともなっ た体験的な記憶が成立する。このような段階での「環境教育」は、7・8 歳以降の教育とは異質で あるというデイヴィド・ソベルの指摘は、ピアジェの発達理論にも通じている。「直観的思考の 段階」の行動を基盤として、はじめて「環境」についての子どもの理解が知的に育っていくので ある。 教育の課程は、なぜかこのような知的発達と一致していない。6 歳という中途の年齢で義務教 育が始まり、8 歳以降と同じような「教室での教育」が展開する。本来は、4 歳から 8 歳くらいま での子どもは、自己活動をしながら調節を繰り返さなければならないが、「教室での教育」では、 その体験は抑制されている。この「脱中心化」に向けた調節を、おそらく目指しているのが「生 活科」という小学校 1 年生、2 年生向けの科目であろう。現在の日本の教育課程において、4 歳か ら 8 歳頃までの、いわゆる保幼小連携教育がいかに構成されているか、次に見てみよう。 2.教育上の留意点としての保幼小連携教育 平成 20 年 3 月改正「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「小学校学習指導要領」は、保育所・ 幼稚園と小学校との接続を、指導計画上の留意事項として取り上げている。また、小学校学習指 導要領の「生活科」では、「第1学年入学当初においては、生活科を中心とした合科的な指導を 行うなどの工夫をすること。」と述べられている。 【幼稚園教育要領(平成20年3月)】 第3章 第1 指導計画の作成に当たっての留意事項 2 特に留意する事項 (5) 幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続のため、幼児と児童の交流の機会を設けたり、小学校の教師との意見交換 や合同の研究の機会を設けたりするなど、連携を図るようにすること。 【保育所保育指針(平成20年3月)】 第4章 1 保育の計画(3)指導計画の作成上、特に留意すべき事項 エ 小学校との連携 (ア)子どもの生活や発達の連続性を踏まえ、保育の内容の工夫を図るとともに、就学に向けて、保育所の子どもと小学 校の児童との交流、職員同士の交流、情報共有や相互理解など小学校との積極的な連携を図るよう配慮すること。 【小学校学習指導要領(平成20年3月)】 (総則)第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項 (12) 学校がその目的を達成するため、地域や学校の実態等に応じ、家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社 61 − 61 − 会との連携を深めること。また、小学校間、幼稚園や保育所、中学校及び特別支援学校などとの間の連携や交流を図 るとともに、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習や高齢者などとの交流の機会を設けること。 (生活科) 第 3 指導計画の作成と内容の取扱い 1. 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 自分と地域の人々,社会及び自然とのかかわりが具体的に把握できるような学習活動を行うこととし,校外で の活動を積極的に取り入れること。 (2) 第 2 の内容の(7)については,2 学年にわたって取り扱うものとし,動物や植物へのかかわり方が深まるよう 継続的な飼育,栽培を行うようにすること。 (3) 国語科,音楽科,図画工作科など他教科等との関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにすること。特 に,第 1 学年入学当初においては,生活科を中心とした合科的な指導を行うなどの工夫をすること。 (4) 第 1 章総則の第 1 の 2 及び第 3 章道徳の第 1 に示す道徳教育の目標に基づき,道徳の時間などとの関連を考慮 しながら,第 3 章道徳の第 2 に示す内容について,生活科の特質に応じて適切な指導をすること。 2. 第 2 の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。 (1) 地域の人々,社会及び自然を生かすとともに,それらを一体的に扱うよう学習活動を工夫すること。 (2) 具体的な活動や体験を通して気付いたことを基に考えさせるため,見付ける,比べる,たとえるなどの多様な学 習活動を工夫すること。 (3) 具体的な活動や体験を行うに当たっては,身近な幼児や高齢者,障害のある児童生徒などの多様な人々と触れ合 うことができるようにすること。 (4) 生活上必要な習慣や技能の指導については,人,社会,自然及び自分自身にかかわる学習活動の展開に即して行 うようにすること。 小学校学習指導要領解説書「生活科」の内容(1)~(7)の位置づけ 62 − 62 − 上記の配慮事項の(2)における「見付ける、比べる、たとえるなどの多様な学習活動」は、「直 観的な思考段階」の教育的配慮を示したものであろう。具体的な身近な環境から活動を通して学 ぶという「生活科」の特徴は、「教室での教育」で抑制されているこの年齢層の本来的な活動を 目指している。 この7・8 歳までの「生活科」の活動と、保育内容との連続性については、さまざまな著者が 取り上げ、段階的に教科教育に移行する過程を解説している。 たとえば、平松(2013)は、身近な事象の中で「原体験」として「ヌルヌル」「ベタベタ」「ネ バネバ」「ザラザラ」「ツルツル」「チクチク」「フワフワ」「ゴツゴツ」「ザラザラ」などの 感覚を、地面、動植物、気象現象、天文現象等のかかわる生活場面から獲得することの重要性を 説明し、保育内容「環境」から「生活科」を経て「理科」にいたる過程を、以下のとおりまとめ ている。 領域「環境」・生活科・理科における自然とのかかわり 領域「環境」 (~小学校入学前) 生活科 (小学校1,2年生) ね ら い と 目 標 周囲の様々な環境に好奇心や探究心を持っ 【生活科の教科目標】 てかかわり、それらを生活に取り入れていこ 具体的な活動や体験を通して,自分と身近な うとする力を養う 人々,社会及び自然とのかかわりに関心をも ち,自分自身や自分の生活について考えさ 【ねらい】 せるとともに,その過程において生活上必要 ② 身近な環境に自分から関わり、発見を楽 な習慣や技能を身に付けさせ,自立への基 しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れ 礎を養う。 ようとする。 ③ 身近な事物を見たり、考えたり、扱ったり する中で、物の性質や数量、文字などに対す る感覚を豊かにする。 自 然 と の か か わ り に 関 す る 事 項 内容の取扱いより抜粋 (2)幼児期において自然の持つ意味は大き く、自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直 接触れる体験を通して、幼児の心が安らぎ、 豊かな感情、好奇心、思考力、表現力の基 礎が培われることを踏まえ、幼児が自然との かかわりを深めることができるようにするこ と。 (3)身近な事象や動植物に対する感動を伝 え合い、共感し合うことなどを通して自らかか わろうとする意欲を育てるとともに、様々なか かわり方を通して、それらに対する親しみや 畏敬の念、声明を大切にする気持ち、公共 心、探究心などが養われるようにする。 理科 (小学校3年生以降) 【理科の教科目標】 自然に親しみ、見通しを持って観察、実験 などを行い、問題解決の能力と自然を愛す る心情を育てるとともに、自然の事物・現象 についての実感を伴った理解を図り、科学 的な見方や考え方を養う。 ○自然に親しむこと 内容の取扱いより抜粋 (1) 地域の人々,社会及び自然を生かすと 自然に親しむことが、単に自然に触れた ともに,それらを一体的に扱うよう学習活動を り、慣れ親しんだりするということではない。 工夫すること。 児童が関心や意欲を持って対象とかかわ (2) 具体的な活動や体験を通して気付いた ることにより、自ら問題を見いだし、以降の ことを基に考えさせるため,見付ける,比べ 学習活動の基礎を構築することである。 る,たとえるなどの多様な学習活動を工夫す したがって、自動に自然の事物・現象を提 ること。 示したり、自然の中に連れて行ったりする 際には、自動が対象である自然の事物・現 象に関心や意欲を高めつつ、そこから問題 意識を醸成するように意図的な活動を工夫 することが必要である。 また、木村(2012)は、イギリスの「環境教育」理論を応用して、「保育(遊び)」から、「生 活科」「総合的な学習」に至る過程を、次ページの図のとおり「学びの In ・About・For」とし てまとめている。この 3 段階の考え方では、幼児期から小学校低学年までは、「自己中心性」の ある段階であり、自分にとって身近なものについて、自分の好きな遊びや自ら選んだ活動に「没 頭する体験」「夢中になる体験」「浸る体験」(In、~の中へ)から、よく学ぶ、と考えられて いる。この時期の諸感覚をフルに使った活動が、感覚(感性)的な課題発見力を育てる、と考え られている。とりわけこの時期に育つ集中力は、「ぼくは~が大好きです」などと、自信を持っ て自分を前面に出す力(主体的に生きる力)に結びつく。これが生活科の教科目標である「自立 (独り立ち)への基礎」であり、主体的に生きる人生のスタートラインであることを示している という。 63 − 63 − 学びの In・About・For 保育(遊び)→ 総合的な学習 生活科→ Fo r(~のために) ①誰のために(他者意識) ②何のために(自己の生き方) (~について) 追及の第二段階 こだわる ・調べる・知ろうとする 思考力 表現力・実行力 <知的好奇心・調べ方・学び方> About In (~の中へ) 没頭する・夢中になる・浸る 追及の第一段階 こだわりを見つける力 情報収集力 <自己中心性・直接経験・体験を通した学習> 集中力→主体性の育成 幼児期(3歳~) 低学年 中学年 「知性の土台」づくり 「わたしは○○が好きで す、得意です」 「私は~について知ってい 「私は△△についてこう考 ます」 えます」 高学年・中学生 これらの「生活科」の教育課程のとらえ方を見ると、幼児期の保育内容での土台作りから、小学 校 3 年生以降の教科教育のスタートまでの移行期に、重要な役割を果たしている科目であること がわかる。また、「直観的思考」段階として、保育内容の5領域、特に「環境」と「生活科」の 連続性について、教育課程としてつながることは明らかであり、実際の保育・教育活動で、この 課程構成を生かしていくことが必要と思われる。 就学前「保育内容」5領域と小学校「生活」の連続性 保育内容:5領域 健康 健康な心と体を育て,自ら健康で安全な生活をつくり出す 力を養う。 人間関係 他の人々と親しみ,支え合って生活するために, 自立心を育て,人とかかわる力を養う。 ( 1) 自分と身近な人々及び地域の様々な場所,公共物などとのかかわりに 環境 周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかか わり,それらを生活に取り入れていこうとする力 を養う。 (2) 自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心をもち,自然の すばらしさに気付き,自然を大切にしたり,自分たちの遊びや生活を工夫したり することができるようにする。 表現 感じたことや考えたことを自分なりに表現するこ とを通して,豊かな感性や表現する力を養い,創 造性を豊かにする。 (3) 身近な人々,社会及び自然とのかかわりを深めることを通して,自分のよ さや可能性に気付き,意欲と自信をもって生活することができるようにする。 小学校「生活」目標:第1学年・第2学年 言葉 経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉 で表現し,相手の話す言葉を聞こうとする意欲や 態度を育て,言葉に対する感覚や言葉で表現する 力を養う。 関心をもち,地域のよさに気付き,愛着をもつことができるようにするとともに, 集団や社会の一員として自分の役割や行動の仕方について考え,安全で適 切な行動ができるようにする。 (4) 身近な人々,社会及び自然に関する活動の楽しさを味わうとともに,それ らを通して気付いたことや楽しかったことなどについて,言葉,絵,動作,劇化 などの方法により表現し,考えることができるようにする。 3.子どもは社会的学習者である このような保幼小の連携教育の柱としての「生活科」であるが、保育内容「領域」とつなぎ、 就学前児と小学生が一緒に「生活科」で活動することには、どのような意味があるのだろうか。 今回、中間のまとめを作成するにあたり、西益田小学校と4保育園の保小連携活動、吉田小学校 と雪舟保育所の保小連携活動の、指導計画と事後評価を拝読した。その中で、特に保育園児の姿 として、小学生の行動をしっかりモデルとして見ている姿が伺えた。また小学生には、保育園児 64 − 64 − への配慮や世話の姿勢が見られ、わかりやすく表現し、説明する姿が見られた。同一年齢集団で は見られないこのような相互の「モデリング」の効果は、社会的存在としての就学前児・低学年 児に本来必要な経験ではないか。 西益田小学校と神田保育園の保小連携(平成 24 年 6 月)から ひとしきり川の中で遊んだ後、川原の石で遊んでいた数名の小学生。小学生 S が、「見て見て」と言いながら、自分の 濡れた体操服を指先で触り、その指先を黒く平らで、ツルツルしている石になぞる。すると、濡れた部分が黒くなるが、 一瞬で消える様を見せ、「すごいろっ!」と何度もやって見せていた。そんなやりとりをしている様子を見て、年長 A が「何やっとるん?」とそばに来た。小学生 S は、同じようにやってみせる。「わあーすごい!!A ちゃんもやってみ る」と言いながら、すぐに黒い石を探す。黒い石を見つけると S がやったのと同じように、濡れた服を触って指を濡ら し、やってみる。「わー、A ちゃんのもなった!すごい、すぐ消える!」と喜ぶ。「この石持って帰る」と大事そうに していた。その後もこの小学生は年中の子どもにもそのことを伝えていた。 西益田小学校と神田保育園の保小連携(平成 24 年 7 月)から ロープをつたって川下〜川上へ、川上〜川下へ歩く体験をした後、保育者が、「どっちが歩きやすかった?」と聞くと 小学生は、「こっち!」「こっちからの方がらくちん」と川上〜川下の方向を指差した。同じように、園児に聞くと「ど っちもかんたん!」や「こっち!」と川下〜川上と答えていた。 「じゃあ、今度泳いで、どっちが速いかやってみるか?」 と保育者がいうと「うん、やってみる。数えて!」と言い、ロープのそばを泳いでみる。川上〜川下は、8 秒。川下〜 川上は 11 秒。小学生「やっぱりこっちじゃ」と川上〜川下を指差した。その様子をそばで年中の子が見ていた。 吉田小学校と雪舟保育所の保小連携(平成 25 年 6 月)から ・年長児は 1 年生がすることを真似てつつじの葉を服にくっつけて遊んでいた。・1 年生は、同じ目線に立っての声掛 け、気遣うことばかけなど、思いやりを持って接していた。 ・1 年生は、1 週間後の生活科の時間に手紙を書いたが、グループ活動の中で、自分たちで自主的に振り返りをし始め た。「例1:ほのちゃんのグループは、場面を思い出しながら話し続けていた。あの時はこうしてあげたら○○できた のかな?○○くんもこう声をかけてあげたじゃん。図鑑があったから虫の名前がわかったよね。など手紙を書くのを忘 れるくらい話し込んでいた」「例2:鬼はじゃんけんで決めたけどルールがわかるぼくがすればよかった。負けて○○ ちゃんが鬼になったらやれんかった」 吉田小学校と雪舟保育所の保小連携(平成 25 年 10 月)から ・園児は土地勘があり虫がたくさんいるところ、木の実があるところなど教えたり、1 年生からは知らない知識を得た りして、ともに良い刺激を受けた。自分たちで考えて行動している姿が多く見られた。 ・振り返りで絵をかく年長児の様子。自分よりも先に大きいカマキリを見つけて捕まえていて「1 年生は自分よりもす ごいんだ」・絵を描くことを苦手意識を持っている子が、自分の好きなことが十分にできたことで、のびのびと絵に表 現できていた。 子どもの生活時間のほとんどが保育所や学校の「教室空間」での時間となり、次ページの写真 に見られるような、子どもの異年齢集団の生活と遊びは、近年見られなくなっている。同一年齢 に輪切りされた集団での生活と遊びは、極めて人工的なものであり、4・5 歳から 7・8 歳までの 異年齢集団での交流が、実はこの「直観的思考」段階の調節に、重要な役割をしている可能性が ある。 65 − 65 − 写真「昭和 30 年東京ベルエポック」岩波書店 1992 より 上記の保育の振り返り記録を見ても、年長児と 1 年生の間には、強い共感性が働いており、こ の共感性が年長児にとっては、新たな行動の獲得や表現活動につながり、1 年生にとっては、振 り返りと分析、説明する力、言語化や表現活動に繋がっていることがわかる。8 歳以上の、完全 に教科教育の世界の生徒となった年齢集団と年長児では、共感性は育ちにくいであろう。「生活 科」の授業での保幼小交流活動が、「生活科」の以下の教科目標を確実に成立させている。 生活科〔目標〕 (1)自分と身近な人々及び地域の様々な場所,公共物などとのかかわりに関心をもち,地域のよさに気付き,愛着をもつ ことができるようにするとともに,集団や社会の一員として自分の役割や行動の仕方について考え,安全で適切な行動 ができるようにする。 (2)自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心をもち,自然のすばらしさに気付き,自然を大切にしたり, 自分たちの遊びや生活を工夫したりすることができるようにする。 (3)身近な人々,社会及び自然とのかかわりを深めることを通して,自分のよさや可能性に気付き,意欲と自信をもって 生活することができるようにする。 日常生活で、このような社会的体験をすることが少なくなっている現状では、このような保幼 小交流で取り組む「生活科」体験が、自立への基礎として、さらに重要視されるべきであろう。 4.保幼小交流で取り組む「生活科」としての「ふるさと基盤教育」 一章のまとめで、鹿野教授は「ソベルの環境教育は『身近な場所に根差した教育(place-based education)』であるが、思春期における社会との関わりからも明らかなように、実は『身近なコ ミュニティに根差した教育』でもある」と述べている。 上述の保幼小交流で取り組む「生活科」は、まさに身近な場所に根差した教育であり、身近な コミュニティに根差した教育であるといえる。そこから教科教育が芽生える基盤としての教育と いう意味で、「ふるさと教育」というより、「ふるさと基盤教育」と呼ぶのがふさわしいと思わ れる。日常的に、園舎や教室の空間から解放されて、この年齢集団が、ともに生活と遊びの交流 集団として過ごすことができるなら、そこで互いに教え合い育ち合う自立に向けた関係が、より 強固に育つと思われる。 66 − 66 − このような「生活科」の実践が教科教育の基礎として成功するには、「生活科」の目標の(4) の項目が重要となる。 生活科〔目標〕 (4) 身近な人々,社会及び自然に関する活動の楽しさを味わうとともに,それらを通して気付いたことや楽しかったこ となどについて,言葉,絵,動作,劇化などの方法により表現し,考えることができるようにする。 体験を表現に移すとき、子どもの中で、直接的な体験を分析して俯瞰する視点が生まれる。こ のとらえ直しの視点は、上述の小学校 1 年生の交流振り返りで、話し続ける姿にも表れている。 この場合は、言葉にすることでのとらえ直しである。 絵に描くことで、空間的なとらえ直しも行われる。山下(2013)は、西益田小学校と 4 園の交 流活動の中で描かれた神田保育園年長児の描画と、西益田小学校 1 年生の描画を分析して、「川 を体感」することで、年長児の描画にダイナミックな川と人物の交流が現れたこと、次第に人物 が大きく描かれたこと、実際の体感保育により、保育園児の絵は「図式」を抜け出ることを示し た。また、小学校 1 年生に「視点」のある俯瞰的空間表象が現れたことを示した。これらの描画 の特性は、体感的な「川遊び」の成果であるが、このとらえ直しの時間、子どもたちはとても楽 しそうで集中していたとの報告があり、体験を表現に移す行動そのものが、子どもの認知発達の 「調節」機能をもっており、子どもに満足感、達成感を与えているのではないかと考えられる。 次ページの 3 枚の絵は、豊川保育園の保育の中で、自然遊びの後に年長児により描かれたもの である。もとの遊び体験が、わくわくするような楽しい体験であったことがよくわかる絵であり、 体験の質が表現活動にも大きな影響を与えているが、自分の行動の振り返りにより、 「いちじく」 の木や葉、実を、「いも」のつるや葉、触感、重さ、大きさを、「川」に飛び込む瞬間のダイナ ミックな心と体の動きを、懸命にとらえ直して表現している。このようなとらえ直しにより、「没 頭」「集中」の環境理解から、「調べ」「分析」する環境理解へのスムーズな発達段階積み上げ が可能となる。「ふるさと基盤教育」は、このようなとらえ直しが、子どもたちによって意欲的 になされるとき、教育課程として成功したといえるものであろう。その意味で、「ふるさと基盤 教育」の Outcome としての子どもの作品もまた、保幼小交流で取り組む「生活科」の一部とし て注目すべきであろう。 引用文献 木村吉彦(2012) 『生活科の理論と実践-生きる力を育む教育のあり方』日本文教出版 平松茂(2013)「自然環境とのかかわり」『子どもの生活理解と環境づくり』(岡野聡子・筒井 愛知、編著)ふくろう出版 山下由紀恵・塩満恭子・矢田久美子(2013)「『保育内容・環境』と小学校『生活』をつなぐ川 体感プロジェクト:子どもの絵画表現の変化から見る発達的意義」『島根県立大学短期大学部 松江キャンパス研究紀要』Vol.51, 23-32. 67 − 67 − 「いちじくとり たのしかった」年長児 KR さん 「かわでとびこみしたよ」年長児 SK さん 「おおきなサツマイモほったよ」年長児 OK くん 68 − 68 − 三章 保幼小連携カリキュラムとしての「ふるさと基盤教育」の意義と可能性 矢島毅昌(保育学科) 1.はじめに 保育・幼児教育から小学校教育への接続ならびに両者の連携をめぐる課題は、たとえば倉橋惣 三が、幼稚園から小学校へのつながりが滑らかに行われていないことを 1923 年に問題提起してい る(倉橋 1965, pp.360-367)ように、長きにわたり論じられてきた課題である。その課題への対 応として、保育・幼児教育における「遊び」と小学校における授業とのつながりを意識して新設 された科目が「生活」である。 その「生活」については、2008 年に改訂された『小学校学習指導要領』で「国語科、音楽科、 図画工作科など他教科等との関連を積極的に図り、指導の効果を高めるようにすること。特に、 第 1 学年入学当初においては、生活科を中心とした合科的な指導を行うなどの工夫をすること」 と規定されている。このことから、保育・幼児教育における「遊び」とは、「遊び→生活科→小 学校の各教科」という連続性を持つ学びの土台に位置づけられるものであることがわかる。「遊 び」を中核にして保幼小連携カリキュラムを構築することは、非常に理にかなった発想であると 考えられよう。しかし現状では、後述する保育・幼児教育のカリキュラム観と小学校のカリキュ ラム観との違い等の困難もあり、保幼小連携カリキュラムの内容とその意義をいっそう明確にす るべく、各地で試行錯誤が続けられている。 そこで本稿では、益田市保育研究会が「ふるさと教育」として取り組んできた自然体感プログ ラムについて、『保育所保育指針』『小学校学習指導要領』との対応関係を概観することを試み る。同プログラムの持つ保幼小連携教育としての意義と可能性について、将来的に考察を深める ための準備作業としたい。 2.益田市保育研究会の「ふるさと教育」と『保育所保育指針』『小学校学習指導要領』 先述した三者の対応関係を明らかにする準備のために作成したのが、本稿末に掲載の表である。 この表では、益田市内にある 29 の認可保育所(園)が小学校区ごとに分類され、さらに本共同研 究の山下由紀恵代表と益田市保育研究会が各保育所(園)を対象に調査した「子どもに体験・体 感させたい『自然と人の暮らし』のスポット」が校区ごとにまとめられている。そして、益田市 保育研究会によるポスター発表注)の内容をもとに、「実際に利用された活動スポット」および「活 動の説明」を保育所(園)ごとに整理した。それらのデータに加えて、筆者の解釈にもとづき『保 育所保育指針』の 5 領域の「内容」との主な対応関係を付記した。また『小学校学習指導要領』 も参照して、特に関連の大きい「生活」ならびに他教科との対応関係についても付記している。 さて、各保育所(園)による実際の活動と『保育所保育指針』との対応関係を見ると、簡潔な 説明文だけで解釈する限りにおいても、「子どもに体験・体感させたい『自然と人の暮らし』の スポット」で行われる活動は、複数の領域を横断する保育実践であるといえよう。特に「環境」 と対応する内容が多いが、「健康」「人間関係」と対応する内容も目立つ。もちろん実際の保育 活動場面においては、「言葉」に対応する内容も多く含まれるであろう。また「表現」領域につ いても、すでに山下・塩満・矢田(2013)が川体感プロジェクトによる絵画表現の変化を明らか 69 − 69 − にしているように、各スポットでの活動後の日常的な保育活動とのつながりを中心に、多くの内 容が対応していると考えられる。ただ、ここでは実際の保育の詳細にまでは踏み込まず、ポスタ ー発表の説明文にもとづき作業を進めたい。 また『小学校学習指導要領』との対応関係も見ると、「子どもに体験・体感させたい『自然と 人の暮らし』のスポット」で行われる活動が小学校教育としても意義深い学びの要素を持つとい えよう。それと同時に、『小学校学習指導要領』との対応関係は限定的であるように感じられる かもしれない。その理由として、『小学校学習指導要領』は『保育所保育指針』に比べると、活 動の場所・内容・達成目標が一連のものとして明確に規定されていることが考えられる。自然の スポットから活動の可能性が広がり、その広がりから子どもの学びや育ちの可能性も広がるとい う保育・幼児教育の発想とは、方向性が異なっている。酒井朗が指摘するように、小学校教師が 考えるカリキュラムは、めあてやねらいのために目的的に編成される活動のまとまりであるのに 対し、保育者の考えるカリキュラムは、子どもの生活をどう教育的に編成するかという視点で子 どもへの関わり・ものや他者や諸活動への出会わせ方・環境の設定の仕方を構想するものである (酒井・横井 2011, p.100)という違いが、ここに表れているといえるのではないだろうか。 また『保育所保育指針』の 5 領域は、同指針の解説書によれば「小学校の教科のように独立し て扱われたり、特定の活動を示すものではなく、保育を行う際に子どもの育ちをとらえる視点と して示され」たものである。それに対して小学校の教科は教科ごとに独立した体系性を持ち、そ の点からも、自然のスポットから活動の可能性が広がる教育とは方向性が異なっている。具体例 を挙げると「生活」においては、「第3 指導計画の作成と内容の取扱い 1」で「校外での活 動を積極的に取り入れること」と規定されているが、その活動は自然の中での遊びで中心となる 「身体を動かす」こととの関連が明確ではない。他方で「身体を動かす」ことが中心となる「体 育」においては、必ずしもその「内容」は自然の中での活動を想定したものではない。これらの 「内容」の取扱いについては、「生活」では「地域の人々、社会及び自然を生かすとともに、そ れらを一体的に扱うよう学習活動を工夫すること」と規定され、また「体育」では「地域や学校 の実態に応じて歌や運動を伴う伝承遊び及び自然の中での運動遊びを加えて指導することができ る」と規定されている。とはいえ、あらかじめ教科ごとに体系化された既存の教材に比べると、 地域の自然や文化を利用した小学校教育には多くの困難と課題があるのが現状であろう。益田市 保育研究会の「ふるさと教育」は、保幼小連携カリキュラムを具体化するためでなく、小学校教 育のさらなる発展のためにも、理論的・実践的なモデルの一つになるはずである。 神田保育園 神田の川での活動より 70 − 70 − 3.おわりに ここまで、益田市保育研究会の「子どもに体験・体感させたい『自然と人の暮らし』のスポッ ト」で行われる活動について、その保幼小連携教育としての意義と可能性を考察するための準備 作業として『保育所保育指針』『小学校学習指導要領』との対応関係を概観してきたが、地域の 自然スポットで実践される活動には、保育・幼児教育・小学校教育それぞれにとって多様かつ意 義深い学びの要素があることが示唆された。 ところで、一般的な保幼小連携カリキュラムの議論では、保育所・幼稚園から小学校への「な めらかな接続」のためのカリキュラムづくりが中心的な論点であるが、より高学年でのカリキュ ラムならびに中学校以降につながる教育のあり方を考えるとき、岩崎正弥の指摘は示唆に富んで いる。 私は大学2年生科目として「調査法」という授業の中で、街なかアンケートや農村でのヒアリング、地域住民を交 えたワークショップなどを実施しているが、学生によくいわれる。「先生、こんなの小学校以来初めてです」と。奇 妙なことに、地元を考えることは特殊な事情がない限り小学校までで、その先は中学・高校を素通りしていきなり大 学にまで飛んでしまう。郷土学習はあくまでも小学校・中学年における、より高度な思考を養うためのとっかかりの 位置づけしか与えられていないのである。 (岩崎・高野 2010, p.25) 伝統的に日本の学校教育では、段階が上がるにつれて「ふるさと」ではないものを公教育の場 で学ぶ仕組みになっていた。岩崎の言葉を借りれば「いわば〈地元を捨てさせる教育〉だったの ではないか」(前掲書, p.21)ということになる。中央集権的な近代国家の成立と学校教育の整 備とが並行して進められてきた歴史の影響が、今日のカリキュラムにも色濃く反映されているの だろう。しかし、体験的学習や課題研究を通じた教育が重要視されている現状において、最も身 近な体験的学習や課題研究の資源となる「ふるさと」の自然や文化に根差した「ふるさと基盤教 育」は、より上位の学校段階や生涯学習においても、高度な思考を養うものになるのではないだ ろうか。今後の課題として、引き続き考察を深めていきたい。 注) 平成 25 年 12 月 7 日に益田市立保健センター大ホールで発表された益田市保育研究会ポスタ ー「おすすめ自然遊びスポット」を資料とした。 参考文献 岩崎正弥・高野孝子 2010, 『場の教育:「土地に根ざす学び」の水脈』, 農文協. 倉橋惣三 1965, 『倉橋惣三選集 第二巻』, フレーベル館. 酒井朗・横井紘子 2011, 『保幼小連携の原理と実践:移行期の子どもへの支援』, ミネルヴァ書 房. 山下由紀恵・塩満恭子・矢田久美子 2013, 「『保育内容・環境』と小学校『生活』をつなぐ川体 感プロジェクト:子どもの絵画表現の変化から見る発達的意義」『島根県立大学短期大学部松 江キャンパス研究紀要』51, pp.23-32. 厚生労働省 2008, 『保育所保育指針解説書』. 文部科学省 2008, 『小学校学習指導要領』. 71 − 71 − − 72 − 2 1 益田市中吉田町 272 益田市立吉田小学校 益田市高津町 1-34-1 549 514 (H24) (小学校区) 益田市立高津小学校 児童数 小学校名 益田市高津 8 丁目 12-7 須子保育園 益田市須子町 27-17 明星保育園 益田市須子町 18-13 ■裏山でロープを使って斜面登 り、たけのこ堀り ■翔陽高校でのさつまいも堀り ■農道探索 ■蟠竜湖の遊歩道散策 益田市中須町 143-1 雪舟保育所 益田市乙吉町イ 1202 へぬける山歩き、季節によって 変わる景色 ■益田中学校横の広場での草 ■上吉田公園からの紅葉ケ丘 ■万葉公園の散策 ■空港奥の土手草すべり ■三里ケ浜の貝殻集め・わかめ (季節によってはウミウシ) ■風車裏の海でニナ・ボべ採り どんぐり拾い・虫探し 中須保育所 緑ケ丘保育所 ■大和のグランドでのお花見 ■梅林公園(空港道路途中)の 益田市高津町 1-40-13 高津保育園 保育所名 花あそび・草すべり・斜面登り ■高津川・やぶさめ公園での草 「自然と人の暮らし」のスポット 子どもに体験・体感させたい 「ふるさと教育」『保育所保育指針』 『学習指導要領』対応表 私 私 私 私 私 私 形態 設置の 90 40 60 80 70 90 定員 活動スポット 実際に利用された 活動の説明 5領域の「内容」 『保育所保育指針』 生活の「内容」 『学習指導要領』 「内容」 (1~2学年)の 同要領の他教科 − 73 − 3 益田市水分町 11-3 益田市立吉田南小学校 186 90 び・生き物さがし ■益田川(つむら橋)で草花遊 益田市水分町 7-50 吉田保育所 益田市赤城町 8-1 私 90 斜面を転がりながら ■「めだかの学校」での遊び 私 す。 れあい(牛・ヤギ・ウサギ) す!! ー」と叫んで楽しめま 子どもたちは「やっほ 頂上では海も見え、 楽しめる場所です。 もできるし、木登りも 降りるのを楽しむこと ことのできる場所で ■久城開パイでの小動物とのふ ■海辺で砂遊び・貝拾い 動物たちと触れ合う ■田んぼでの泥んこ遊び と、ちょっとした動物 開パイを進んでいく ヤギやニワトリなどの スクモ塚古墳 久城開パイ 上り下り・木登り) 葵乳児園 130 園☆☆ 牛やうさぎ、 益田市久城町 1017-7 ■大塚・中須(松林・植林) 私 ■スクモ塚古墳での遊び(坂の 原浜保育所 花あそび 葉④ 健康②、環境③、言 環境①、環境⑦ 生活(6) 生活(7) 体育A − 74 − 4 益田市遠田町 758-1 益田市立安田小学校 251 ■海岸で貝拾い散歩 (めだかの学校) ■「めだかの学校」での遊び ⑨、環境⑫ 年長さんは田植え、 せてもらっています。 稲刈り、もちつきをさ ②、環境⑦、環境 ⑬、環境①、環境 健康②、人間関係 境⑫ 健康②、環境③、環 境⑦ 健康②、環境③、環 鯉や魚もいるよ。 遊具であそべたり、 滑り台・ブランコなど プレーパーク がし れいです。地域のイ 菜の花がとってもき す。 って遊ぶことができま カ・エビ・カニなども捕 エサをあげたり、メダ がいて、鯉や野鳥に 川には様々な生き物 しをして楽しめます。 んとう虫など昆虫探 さんあり、バッタやて 遊べます。草花もたく 思いきり走ったりして り、昇り降りしたり、 土手や広い芝もあ ークもあります。 安田公民館の裏 (桜並木)川原 つむら橋 び・うのはな海岸での貝やカニさ 60 60 ベントで菜の花ウォ 益田市遠田町 783-1 私 私 ■うのはな古墳での草花あそ 景色 遠田保育園 益田市常盤町 4-22 ■上吉田公園 ■権現山の山登りと頂上からの 常盤乳児園 ■梅の木で梅ジュース作り 生活(6) 生活(3)、生活(4)、 生活(5) 生活(6)、生活(7) 体育B 体育A、体育D − 75 − 5 益田市西平原町 584 益田市立鎌手小学校 71 ■蛇岩や水仙公園からの景観 ■荒磯での磯遊び 遊び ■土田浜での海水浴や浜での 益田市西平原町 580-5 鎌手保育所 益田市大草町 1088-10 北仙道保育所 私 私 40 30 権現山 うのはな海岸 うのはな古墳 てきますよ。 現山に親しみも湧い 聴いてから登ると、権 話も数々あり、お話を おすすめです! 民 春の桜の季節は特に 田を一望でき最高!! 頂上からの景色は益 れるよ。 きなマツボックリもと 山道でどんぐりや大 よ。古墳につながり、 貝殻やカニがとれる よ。 実をとることができる まつぼっくりや木の るよ。 たりまわりを散策でき 古墳のまわりで走っ 葉⑪ 環境③、環境⑤、言 環境③、環境⑦ 健康②、環境③ 生活(6) 生活(6) 生活(6) 体育A 体育A、体育D 体育A − 76 − 7 6 益田市大谷町 347-2 益田市立豊川小学校 益田市波田町イ 266-1 益田市立真砂小学校 59 16 中・年長児が地域の 方と一緒に登ってい ます。山を登ると、頂 ■周辺の土手沿いでの草花あ そび ■韮草山登山と頂上からの景色 ホタルも多く舞いま 場所もあり、夏には す。子どもが泳げる ことができる場所で エビや魚を網ですくう ることができます。 上からは日本海を見 ことができ、毎年、年 等三角点のある山で 益田市内で唯一の一 賞 本溢川 韮草山 園児でも安全に登る 30 20 ■本嗌川での川遊び・ホタル鑑 私 私 す。傾斜も緩やかで 益田市大谷町 496-3 豊川保育園 益田市波田町イ 425 真砂保育園 ■伏谷川での川遊び 刈り体験 ■保育園田んぼでの田植え・稲 ■波田城跡地での山遊び があり、そこで遊ぶことも可能) ■蛇滝付近での小川遊び(広場 ■日晩山登山 遊び(魚釣りなど) ■真砂地区の川(小川)での川 取り) ■ワカメの養殖(植え付け・刈り 健康②、環境⑦ 係⑬、環境③ 人間関係⑩、人間関 生活(7) 生活(5),生活(6)、 生活(3),生活(6) 体育D 体育A − 77 − 8 益田市横田町 147 益田市立西益田小学校 186 たくさんあります。自 然物が多いので草花 ■忠魂山登山 道。ドングリやシイノ 自然を満喫できる 焼き体験 御庄原・生り物ロード など、自然の恵みが 50 ■鮎の放流・つかみどり・鮎の塩 私 ミ、むかご、野イチゴ 益田市神田町イ 173 神田保育園 ます。 つ様子を見守ってい 散歩の途中で苗が育 てくれており、普段の 地域の方が管理をし 作りを行っています。 をお借りして、もち米 所に保育園の田んぼ 園から徒歩 3 分の場 です。 んどんと広がる場所 境⑩ 環境⑥、環境⑦、環 人間関係⑬、環境⑦ 境⑨、環境⑩ がたくさん見つかり、 子ども達の遊びもど 環境⑥、環境⑦、環 イモリやカニ、魚など ■高津川・匹見川での川遊び ■林道の散歩 ■梅月「あんな坂 こんな坂」 田んぼ 伏谷川 す。 生活(6)、生活(7) 生活(3)、生活(7) 生活(6)、生活(7) 算数A、体育A 算数A、体育D − 78 − 生き物さがし ■園舎前での用水路で水遊び・ は雪そり) ■匹見川堤防での草すべり(冬 ■土手の草すべり 草花あそびなど 向横田の川 神田の川 忠魂山 境⑥ 多く、小さなお子さん りも楽しめます!! ールやそりで草すべ 防の斜面では、段ボ でも楽しめる場所。堤 健康②、環境③、環 現①、表現⑦ 環境③、環境⑥、表 環境③ 流れの緩やかな所が す。 て遊ぶこともできま 探しや石に絵を描い 泳ぐだけでなく、宝石 がたくさんあるので、 めます。河原には石 物足りないときに楽し もあるので浅瀬では 流れが少し速く、深さ す! 横田の町を楽しめま 山登り・頂上から見る しめます。 そび ■高城神社付近での斜面登り、 遊びなどが十分に楽 ■向横田大原河原での草花あ 生活(6) 生活(6) 生活(3) 体育A D 図画工作A、体育 体育A − 79 − 益田市横田町 86-2 若葉保育園 私 30 匹見川堤防 ガタガタ滑り台 大滝・お化けトンネル 境⑨ できるよ! って川を流れることだ 手作りのイカダにの きるよ。 もつかまえることがで もぐって泳いだり、魚 健康②、環境③、環 環境①、環境③ 境⑦ 環境③、環境⑥、環 人間関係⑩、環境① 低い所からジャンプ できるよ!! てプカプカ浮くことも ライフジャケットを着 めます! 探し、斜面登りが楽し 草花あそび、生き物 ります。 を行うドングリ林があ 児が、ドングリの植栽 と、毎年小学生と園 す。トンネルを抜ける キドキワクワクしま 通り抜けるだけでド いますが、トンネルを 増えて、明るくなって 昔よりも少しライトが 生活(6)、生活(7) 生活(6) 生活(6)、生活(7) 生活(4)、生活(7) 体育C、体育D 体育D 体育A − 80 − 益田市本俣賀町 5 梅賀山保育園 益田市横田町 1817-3 横田保育園 私 私 30 45 匹見川ふれあい公園 境⑨ り、段ボールに座って りもできますよ。 冬になれば、雪すべ しんですべってます。 小さいお友だちも楽 遅くてもへっちゃら!!! 滑れるよ。スピードが 健康②、環境⑤、環 環境③、環境④ ソリに乗って滑った び!! ワクたのしい川あそ 見るもの全てがワク ってできるよ!! 生活(5),生活(6) 生活(5),生活(6) 体育A 体育D − 81 − 12 11 10 9 益田市川登町 732-1 ど 益田市内田町ロ 297 内田分校 川登保育園 ■裏山での斜面登り・ブランコな 益田市立中西小学校 20 益田市白上町イ 1111-3 ■大道山登山 私 30 西小浜海岸 宮ヶ島 猫島 小野保育所裏の海 岩からのジャンプ な〜♪ ♪海は広いな大きい れるかな? 砂ガニ何匹みつけら 魚に会えるかな? 磯遊び、どんな貝や 40 40 20 プールづくり・磯遊び) 私 私 私 楽しいよ! まるに保育所 益田市小浜町 471-3 小野保育所 益田市上黒谷町 526-5 わかくさ保育園 り、波の動きなどを楽しむ・温泉 こ探し・波打ち際で足をつけた の海あそび(砂ガ二堀り・なみの ■西小浜海岸・宮ケ島・猫島で ■ツリーイング体験 ■白上川での川遊び 75 69 15 24 益田市白上町イ 682 益田市立中西小学校 益田市戸田町イ 952-1 益田市立戸田小学校 益田市美濃地町イ 146 益田市立美濃小学校 益田市桂平町 427 益田市立桂平小学校 環境⑦、環境⑩ 環境③、環境⑦ 健康②、表現⑩ 環境③、表現⑤ 生活(6)、生活(7) 生活(6)、生活(7) 生活(6) 生活(6) 算数A、体育D 体育D 体育C、体育D 体育D − 82 − 14 13 益田市美都町仙道 125 益田市立東仙道小学校 益田市本町 7-17 益田市立益田小学校 40 362 めるこどもたちのだい すきなばしょです ■歴史資料館見学 ■七尾町の裏路地歩き(城下 すみれ保育園 とり ジャム作り ■田中農園のいちご狩り・いちご など) 面登り・木の実つみ・山野草つみ 色・頂上での遊び(木のぼり・斜 ■四ツ山登山と頂上からの景 益田市東町 29-48 ■東町警察署裏付近のザリガニ 益田市美都町仙道 253-3 東仙道保育所 益田市東町 3-21 めばえ保育園 ■水源地の桜の木の花見 ■妙義寺の観音堂 私 20 100 一年を通してたのし 地 私 どがいっぱい! ■つくしとり・元訓練校横の空き レンジ! ツリーイングに初チャ と葉っぱや落ち葉な ■医光寺・万福寺見学 上黒谷神社 げたり下を見下ろす ■益田川染羽えび取り 町) 秋、冬は、上を見上 裏山から登ったりと 春、夏は階段からや 飲める) 住吉神社・水源地 住吉神社階段 化!! 120 130 ■権現山山登り(おいしい水が 私 私 楽しみながら足腰強 益田市七尾町 7-5 益田ひかり保育所 って登る)山登り ■観音堂(御堂の観音様をたど ■七尾城跡山登り 環境⑥ 健康②、環境⑤ 生活(6) 生活(5) 体育B 体育A − 83 − 益田市匹見町道川イ 39 益田市立道川小学校 益田市匹見町匹見イ 1324 益田市立匹見小学校 7 35 ■ブルーベリー摘み ■川遊び ■雪あそび 木・イチョウのじゅうたん ■二川小前のお寺のイチョウの ■都茂丸山鉱山跡見学 ■二川での雪遊び ■紙の宿にて卒園証書作り 1887-1 ■秦佐八郎を知る方法として菊 作り 47 益田市美都町都茂 益田市立都茂小学校 同「人間関係」の内容 ② いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。 『保育所保育指針』領域「健康」の内容 17 16 15 ■城山桜 空の観察 ■美都自然の森での川遊び・夜 然を生かした遊び ■四季を通しての草花観察や自 ド作り) ■ゆずを使った料理(マーマレー 益田市匹見町匹見イ 1225 匹見保育所 益田市美都町山本イ 5-9 都茂保育所 公 私 45 30 四つ山 流会 都茂:東仙道との交 人間関係⑩ 生活(3) − 84 − ⑩ 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりする楽しさを味わう。 ⑦ いろいろな素材や用具に親しみ、工夫して遊ぶ。 ⑤ 様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。 同「表現」の内容 ⑪ 絵本や物語などに親しみ、興味を持って聞き、想像する楽しさを味わう。 ④ したこと、見たこと、聞いたこと、味わったこと、感じたこと、考えたことを自分なりに言葉で表現する。 同「言葉」の内容 ⑫ 近隣の生活に興味や関心を持ち、保育所内外の行事などに喜んで参加する。 ⑩ 日常生活の中で数量や図形などに関心を持つ。 ⑨ 身近な物や遊具に興味を持って関わり、考えたり、試したりして工夫して遊ぶ。 ⑦ 身近な動植物に親しみを持ち、いたわったり、大切にしたり、作物を育てたり、味わうなどして、生命の尊さに気付く。 ⑥ 自然などの身近な事象に関心を持ち、遊びや生活に取り入れようとする。 ⑤ 季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。 ④ 生活の中で、様々な物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心を持つ。 ③ 自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。 ② 好きな玩具や遊具に興味を持って関わり、様々な遊びを楽しむ。 ① 安心できる人的及び物的環境の下で、聞く、見る、触れる、嗅ぐ、味わうなどの感覚の働きを豊かにする。 同「環境」の内容 ⑬ 高齢者を始め地域の人々など自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみを持つ。 ⑩ 身近な友達との関わりを深めるとともに、異年齢の友達など、様々な友達と関わり、思いやりや親しみを持つ。 − 85 − 数と計算 表現 体つくり運動 器械・器具を使っての運動遊び 走・跳の運動遊び 水遊び A B C D 同「体育」 (第 1 学年及び第 2 学年)の内容 A 同「図画工作」 (第 1 学年及び第 2 学年)の内容 A 同「算数」 (第 1 学年)の内容 をもち、大切にすることができるようにする。 (最終アクセス日:2014 年 3 月 19 日) 会員保育所(園) http://masuho-k.jp/index.php?id=5 益田市保育研究会 (7)動物を飼ったり植物を育てたりして、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもち、また、それらは生命をもっていることや成長していることに気付き、生き物への親しみ ようにする。 (6)身近な自然を利用したり、身近にある物を使ったりなどして、遊びや遊びに使う物を工夫してつくり、その面白さや自然の不思議さに気付き、みんなで遊びを楽しむことができる くしたりできるようにする。 (5)身近な自然を観察したり、季節や地域の行事にかかわる活動を行ったりなどして、四季の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付き、自分たちの生活を工夫したり楽し とができるようにする。 (4)公共物や公共施設を利用し、身の回りにはみんなで使うものがあることやそれを支えている人々がいることなどが分かり、それらを大切にし、安全に気を付けて正しく利用するこ ことができるようにする。 (3)自分たちの生活は地域で生活したり働いたりしている人々や様々な場所とかかわっていることが分かり、それらに親しみや愛着をもち、人々と適切に接することや安全に生活する 『小学校学習指導要領』 「生活」の内容